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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】電池パック及び電気機器
(51)【国際特許分類】
   H01M 50/213 20210101AFI20230511BHJP
   H01M 50/242 20210101ALI20230511BHJP
【FI】
H01M50/213
H01M50/242
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021554187
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2020036446
(87)【国際公開番号】W WO2021084990
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-21
(31)【優先権主張番号】P 2019198079
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001689
【氏名又は名称】青稜弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 敏之
(72)【発明者】
【氏名】塙 浩之
【審査官】立木 林
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-210287(JP,A)
【文献】特開2018-195542(JP,A)
【文献】特開2016-110790(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079722(WO,A1)
【文献】特開2000-228178(JP,A)
【文献】特開2012-059373(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01M 50/20-50/298
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
外枠を形成するケースと、
前記ケース内で上側に位置する上側電池セルと下側に位置する下側電池セルによって俵積みされた複数の電池セルと、
前記電池セルの長手方向において、前記上側電池セルと対向する位置に設けられた上側セル支持部と、前記下側電池セルと対向する位置に設けられた下側セル支持部と、を備え、
各電池セルに対向する前記上側セル支持部と前記下側セル支持部は互いに独立して構成され、
前記上側セル支持部及び前記下側セル支持部は、前記ケースと一体に形成されていることを特徴とする電池パック。
【請求項2】
前記上側セル支持部及び前記下側セル支持部はそれぞれ、前記電池セルの長手方向において両側に設けられていることを特徴とする請求項1に記載の電池パック。
【請求項3】
前記上側セル支持部及び前記下側セル支持部は、脆弱部を有することを特徴とする請求項1又は2に記載の電池パック。
【請求項4】
前記上側電池セルを下方から支持する支持部を有することを特徴とする請求項1乃至のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項5】
前記ケース内において、前記上側電池セルは下側電池セルよりも多く径方向に並んで俵積みされており、
前記支持部は、前記上側電池セルの端に位置する上側電池セルを下方から支持することを特徴とする請求項に記載の電池パック。
【請求項6】
前記上側電池セルは径方向に3つ並んで配置され、前記下側電池セルは径方向に2つ並んで配置されることで前記俵積みされており、
前記支持部は、前記上側電池セルの両端に位置する電池セルをそれぞれ、下方から支持することを特徴とする請求項に記載の電池パック。
【請求項7】
前記支持部は前記ケースと一体に形成されていることを特徴とする請求項乃至のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項8】
外枠を形成するケースと、
前記ケース内で上側に位置する上側電池セルと下側に位置する下側電池セルによって俵積みされた複数の電池セルであって、電池セルの径方向において前記上側電池セルは前記下側電池セルより多く並んで配置された複数の電池セルと、
前記電池セルが並んだ方向で両端に位置する前記上側電池セルを下方から支持する支持部と、を備え
前記支持部は、前記ケースと一体に形成され、前記ケースから内側に突出するよう設けられることを特徴とする電池パック。
【請求項9】
前記電池セルの長手方向において、前記上側電池セルと対向する位置に設けられた上側セル支持部と、前記下側電池セルと対向する位置に設けられた下側セル支持部と、を備え、各電池セルに対向する前記上側セル支持部と前記下側セル支持部は互いに独立していることを特徴とする請求項に記載の電池パック。
【請求項10】
前記上側セル支持部及び前記下側セル支持部はそれぞれ、前記電池セルの長手方向において両側に設けられていることを特徴とする請求項に記載の電池パック。
【請求項11】
前記上側セル支持部及び前記下側セル支持部は、脆弱部を有することを特徴とする請求項9又は10に記載の電池パック。
【請求項12】
前記上側セル支持部は、前記ケースから内側に突出するよう設けられ、前記下側セル支持部は、前記上側セル支持部より下方の位置において、前記上側セル支持部から離れた状態で前記ケースから内側に突出するよう設けられていることを特徴とする請求項1乃至乃至11のいずれか一項に記載の電池パック。
【請求項13】
請求項1乃至12のいずれか一項に記載の前記電池パックと、
前記電池パックを装着可能なレール溝と、前記レール溝に係止される係止爪を有する電池パック装着部を備えた電気機器本体を有し、
前記電気機器本体には前記電池パックから供給される電力を消費する負荷部が内蔵されることを特徴とする電気機器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はモータ、照明等の負荷装置を備えた電気機器本体に対して電源を供給する電池パックに関するものである。また、電池パックを装着することにより作業機器を作動させる電気機器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
電動工具等の電気機器が、リチウムイオン電池等の二次電池を用いた電池パックにて駆動されるようになり、電気機器のコードレス化が進んでいる。例えば、モータにより先端工具を駆動する手持ち式の電動工具においては、複数の二次電池セルを収容した電池パックが電源として用いられ、電池パックに蓄電された電気エネルギーにてモータ等の負荷装置を駆動する。電池パックは電動工具本体に着脱可能に構成され、電池パックは放電によって電圧が低下したら電動工具本体から取り外されて、外部充電器を用いて充電される。このような電池パックの例として特許文献1の技術が知られている。
【0003】
特許文献1の電池パックは、定格電圧3.6Vのリチウムイオン二次電池のセルを4本直列に接続し、それら二組を並列接続することにより定格電圧14.4Vの電池パックを実現している。このような従来の電池パックを図16にて説明する。電池パック300は合成樹脂製の上ケース310と下ケース320によって画定される空間の内部に、合計8本の電池セル341~348を収容したものである。電池パック300の上ケース310の左右両側には、電池パック300の装着方向に向けて平行に延びる2本のレール部(図では見えない)が設けられ、レール部の後方側の左右には電池パックが電動工具から脱落しないように保持するラッチ機構(図では見えない)が設けられる。電池セル341~348は下側に4本、上側に4本整然と並べられ、電池セル341~348の長手方向がレール部の延在方向(前後方向)と直交する方向、即ち、左右方向に延びるように配置される。電池セル341~348は合成樹脂製のセパレータ330にて保持される。図16の電池パック300にて18.0V出力としたい場合には、上ケース310と下ケース320の大きさを後方側に伸ばすように変更して、電池セル344、348の後方側、又は電池セル341、345の前方側にさらに2本の電池セルを追加し、上段に5本、下段に5本の電池セルを配置する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2012-051064号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
コードレス型の電気機器においては所定の稼働時間の確保や、所定の出力が要求され、二次電池の性能向上に伴い高電圧化や高出力化が図られてきた。一方で、作業性を良くするために、コンパクトで軽量な電池パックの実現が望まれている。二次電池としてリチウム電池セルを用いる場合は、普及している18650サイズの電池セルを、その長手方向が左右方向に向くように配置していた。近年、電池セルの種類として、18650サイズでなく、21700等の太径で長いものが普及してきている。この21700等の従来よりも太い電池セル(以下、「太径電池セル」と称する)を用いて電池パックを実現すると、18650サイズを10本用いた電池パックとほぼ同等容量の電池パックを、太径電池セル5本で実現できる。しかしながら、太径電池セルを従来と同じように長手方向が左右方向に並ぶように配置すると、電池パックのケースの横幅(左右方向の大きさ)や、長さ(前後方向の大きさ)が大きくなって使いにくい電池パックになる。
【0006】
一方、近年の電池パックの大容量化実現と共に、高出力の電気機器の製品が増えており、電動工具においては電池パックの高出力化に伴いモータの高出力化が進み、工具本体の重量が増加し、動作時の振動や出力が増加する傾向にあるという問題が顕在化してきた。それに伴い電池パックに要求される落下、振動に対する機械的強度の要求も高くなる。電池パック内部の部品は電池セルの質量の割合が高く、電池セルとそれを収納するケース間のがたつきを低減することが、電池セル同士や電池セルと他の部品を接続するタブ接合部の破断防止や、電池セルの変形防止などに寄与する。但し、電池セルは製造上のばらつきよりわずかながらその長さが異なり(例えば、電池セルの長さの0.1~0.3%程度)、電池パックのケースが樹脂製の場合、特に短いセルが存在した場合にがたつきが大きくなり、機械的な強度が低下する虞があることが、発明者らの検討によって判明した。
【0007】
本発明は上記背景に鑑みてなされたもので、その目的は、電池パック内の電池セルの配置方向や積み方を変更することにより、小型で軽量の電池パック及びそれを用いた電気機器を実現することにある。本発明の他の目的は、電池パックのケースに形成される電池セルを支持するセル支持部の形状を改良することにより、がたつきを抑えた電池パック及びそれを用いた電気機器を実現することにある。本発明のさらに他の目的は、電池パックに落下等の強い衝撃が加わった際に、電池セルのタブ接合部の破断や、電池セルの変形を効果的に抑制できるようにした電池パック及びそれを用いた電気機器を実現することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願において開示される発明のうち代表的な特徴を説明すれば次のとおりである。本発明の一つの特徴によれば、外枠を形成するケースと、ケース内で上側に位置する上側電池セルと下側に位置する下側電池セルによって俵積みされた複数の電池セルと、電池セルの長手方向において、上側電池セルと対向する位置に設けられた上側セル支持部と、下側電池セルと対向する位置に設けられた下側セル支持部と、を備え、各電池セルに対向する上側セル支持部と下側セル支持部は互いに独立するように構成した。上側セル支持部及び下側セル支持部は、ケースと一体に形成される。また、上側セル支持部及び下側セル支持部はそれぞれ、電池セルの長手方向において両側に設けられる。
【0009】
本発明の他の特徴によれば、上側セル支持部及び下側セル支持部は脆弱部を有するようにした。上側電池セルは下側電池セルよりも多くなるようにケース内において、径方向に並んで俵積みされ、支持部は上側電池セルの端に位置する上側電池セルを下方から支持するように構成した。
【0010】
本発明のさらに他の特徴によれば、俵積みされた複数の電池セルを有する電池パックであって、電池セルが並んだ方向で両端に位置する上側電池セルを下方から支持する支持部を備える。この支持部はケースと一体に形成される。さらに、電池セルの長手方向において、上側電池セルと対向する位置に設けられた上側セル支持部と、下側電池セルと対向する位置に設けられた下側セル支持部と、を備え、各電池セルに対向する上側セル支持部と下側セル支持部は互いに独立するように構成した。また、上側セル支持部は、ケースから内側に突出するよう設けられ、下側セル支持部は、上側セル支持部より下方の位置において、上側セル支持部から離れた状態でケースから内側に突出するよう設けられている。以上のように構成することによって、電池パックと、電池パックを装着可能なレール溝と、レール溝に係止される係止爪を有する電池パック装着部を備えた電気機器本体が実現され、電気機器本体が電池パックから供給される電力を消費するモータ等の負荷部を稼働させる構成にした。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、小型で軽量の電池パック及び電気機器を実現し、ケースに対する電池セルのがたつきを抑えることができる。また、電池セルのタブの破断や電池セルの変形を抑えることができる。また、個々に長さの異なる電池セルとケースの間のがたつきを小さくするために、セルを俵積みに並べて、電池セル毎に独立して作用するセル支持部を設けたので、落下による耐衝撃性や、電動工具の振動に対する耐振動性を向上することができる。さらに、セル支持部に複数のリブで形成される脆弱部を形成したので、脆弱部がセルの大きさに合わせて変形量が変わるため、隣り合う電池セルの大きさの影響を受ける虞がない。さらに、長さが短い電池セルの隣に、長さが長い電池セルがあってもがたつきを効果的に抑制できるので、弾性のあるスペーサの設置の必要性もなくなり、製造コストの低減に寄与できる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施例に係る電動工具本体1と、それに装着される電池パック100の斜視図である。
図2】本実施例の電池パック100の単体図であり、(A)は上面図、(B)は左側面図、(C)は背面図である。
図3】本発明の実施例に係る電池パック100の展開斜視図である(その1)。
図4図3の電池パック100の展開斜視図である(その2)。
図5図3図4のセパレータ250の組立体から、絶縁シート178を取り外した状態を示す図であり、(A)はセパレータ250の組立体を前方側から見た斜視図であり、(B)はセパレータ250の組立体を後方側から見た斜視図である。
図6図3のセパレータ250単体を示す斜視図である。
図7図3の下ケース200の上面図であって、収容される電池セル145~149の収納位置を示す図である。
図8図2のA-A部の断面図である
図9図8と同じ断面図であり、上側セル支持部211~213と電池セル145~147、下側セル支持部214、215と電池セル148、149との接触部位を強調した図である。
図10図2のB-B部の断面図である。
図11図3の下ケース200単体の斜視図である。
図12図3の下ケース200単体の図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)のC-C部の断面図であり、(C)は(A)のD-D部の断面図である。
図13図12(A)のE部の部分拡大図である。
図14図1の電池パック100の図であり、(A)は上面図、(B)は(A)のF-F部の断面図であり、()は(A)のG-G部の断面図である。
図15】(A)は図14(A)のH-H部の断面図であり、(B)は図14(A)のI-I部の断面図である。
図16】従来の電池パックの縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0013】
以下、本発明の実施例を図面に基づいて説明する。以下の図において、同一の部分には同一の符号を付し、繰り返しの説明は省略する。本明細書においては、電気機器の一例として電池パックにて動作する電動工具(インパクト工具)を例示して説明するものとする。電動工具の本体側の前後左右の方向は図1に示す方向とし、電池パックの単体で見た際の前後左右、上下の方向は、電池パックの装着方向を基準として図1図2等に示す方向であるとして説明する。
【0014】
図1は本実施例に係る電動工具本体1と、それに装着される電池パック100の斜視図である。電気機器の一形態である電動工具は、電池パック100を有し、図示しないモータによる回転駆動力を用いて先端工具や作業機器を駆動する。電動工具は種々の種類が実現されているが、図1で示すインパクト工具は先端工具9に回転力や軸方向の打撃力を加えることにより締め付け作業を行う。電動工具本体1は、外形を形成する外枠たるハウジング2を備える。ハウジング2は、図示しないモータや動力伝達機構を収容する胴体部2aと、胴体部2aから下方に延びるハンドル部2bと、ハンドル部2bの下側に形成される電池パック装着部10により構成される。ハンドル部2bの一部であって作業者が把持した際に人差し指があたる付近には、トリガ状の動作スイッチ4が設けられる。ハウジング2の前方側には出力軸たるアンビル(図では見えない)が設けられ、アンビルの先端には先端工具9を装着するための先端工具保持部8が設けられる。ここでは先端工具9としてプラスのドライバービットが装着されている。
【0015】
電池パック装着部10には、左右両側の内壁部分に前後方向に平行に延びる溝部を含むレール部11a、11bが形成され、それらの間にターミナル部20が設けられる。ターミナル部20は、合成樹脂等の不導体材料の一体成形により製造され、そこに金属製の複数の端子、例えば正極入力端子22、負極入力端子27、LD端子(異常信号端子)28が鋳込まれる。ターミナル部20は、装着方向(前後方向)の突き当て面となる垂直面20aと、水平面20bが形成され、水平面20bは電池パック100の装着時に、上段面115と隣接、対向する面となる。水平面20bの前方側には、電池パック100の隆起部132と当接する湾曲部12が形成され、湾曲部12の左右中央付近には突起部14が形成される。突起部14は左右方向に2分割で形成される電動工具本体1のハウジングのネジ止め用のボスを兼ねると共に、電池パック100の装着方向への相対移動を制限するストッパの役目も果たす。
【0016】
電池パック100は、上ケース110と下ケース200からなるケースに、定格3.6Vのリチウムイオン電池セルを5本収容したものであり、定格18Vの直流を出力する。電池パック100のスロット群配置領域120には、前方の段差部114から上段面115にて後方側に延びる複数のスロット121~128(符号は図2を参照)が形成される。電池パック100の上段面115の側面には、2本のレール部138a、138bが形成される。レール部138a、138bは、長手方向が電池パック100の装着方向と平行になるように形成される。レール部138a、138bの溝部分は、前方側端部が開放端となり、後方側端部が隆起部132の前側壁面と接続された閉鎖端となる。電池パック100を電動工具本体1から取り外すときは、左右両側にあるラッチ141a、141bを押すことにより、爪状の係止部142a(図では見えない)、142bが内側に移動して係止状態が解除されるので、その状態で電池パック100を装着方向と反対側に移動させる。
【0017】
図2は電池パック100の単体図であり、(A)は上面図、(B)は左側面図、(C)は背面図である。2本のレール部138a、138bは、前後方向に延びるように平行に形成される。レール部138a、138bに挟まれる上段面115にはスロット群配置領域120が配置され、スロット群配置領域120には8本のスロット121~128が形成される。スロット121~128は電池パック装着方向に所定の長さを有するように切り欠かれた部分であって、この切り欠かれた部分の内部には、電動工具本体1又は外部の充電装置(図示せず)の機器側端子と嵌合可能な複数の接続端子(図3で後述)が配設される。スロット121~128は下段面111側から電動工具本体側のターミナルを挿入可能なように、装着方向と平行な上面と鉛直面にそれぞれ切り欠きが形成されたものである。
【0018】
スロット121~128は、電池パック100の右側のレール部138aに近い側のスロット121が充電用正極端子(C+端子)の挿入口となり、スロット122が放電用正極端子(+端子)の挿入口となる。また、電池パック100の左側のレール部138bに近い側のスロット127が負極端子(-端子)の挿入口となる。正極端子と負極端子の間には、電池パック100と電動工具本体1や外部の充電装置(図示せず)への制御に用いる信号伝達用の複数の信号端子が配置され、ここでは信号端子用の4つのスロット123~126が電力端子群の間に設けられる。スロット123は予備の端子挿入口であり、本実施例では端子は設けられない。スロット124は電池パック100の識別情報となる信号を電動工具本体又は充電装置に出力するためのT端子用の挿入口である。スロット125は外部の充電装置(図示せず)からの制御信号が入力されるためのV端子用の挿入口である。スロット126はセルに接触して設けられた図示しないサーミスタ(感温素子)による電池の温度情報を出力するためのLS端子用の挿入口である。負極端子(-端子)の挿入口となるスロット127の左側には、さらに電池パック100内に含まれる後述する電池保護回路による異常停止信号を出力するLD端子用のスロット128が設けられる。
【0019】
電池パック100の側面後方には、ラッチ機構の操作ボタンたるラッチ141a、141bが設けられる。ラッチ141a、141bに挟まれる中央付近には、隆起部132から下方向に窪むストッパ部131が形成される。ストッパ部131は、電池パック100を、電池パック装着部10に装着した際に、突起部14(図1参照)の突き当て面となるもので、電動工具本体1側の突起部14がストッパ部131に当接するまで挿入されると、電動工具本体1に配設された複数の端子(機器側端子)と電池パック100に配設された複数の接続端子(図4にて後述)が接触して導通状態となる。
【0020】
電池パック100のストッパ部131の内側には、電池パック100の内部とつながる冷却風取入口たる複数のスリット134が設けられる。この電池パック100が電動工具本体1に装着された状態では、スリット134が外部から視認できないように覆われて閉鎖状態になる。スリット134は、電池パック100を図示せぬ充電装置に連結して充電を行う際に、電池パック100の内部に冷却用の空気を強制的に流すために用いられる風窓であって、電池パック100内に取り込まれた冷却風は下ケース200の前方壁に設けられた排気用の風窓たるスリット201a(図3で後述)から外部に排出される。なお、スリット134を排気用の風窓とし、スリット201aを冷却風取入口としても良い。
【0021】
下ケース200は、上面が開口された略直方体の形状であって、底面と、底面に対して鉛直方向に延びる前方壁201と、後方壁202と、右側側壁203と、左側側壁204により構成される。図2(B)においてラッチ141bの前方には、係止部142bがばねの作用によりレール部138bの下部で左方向に飛び出して、電動工具本体1のレール部11aに形成された図示しない凹部と係合することにより、電池パック100の脱落が防止される。尚、右側のレール部138aにも同様の係止部142aが設けられる。下ケース200の左側側壁204と右側側壁203(図では見えない)の前方下側には、内側にくぼむ窪み部203a(後述する図3参照)、204aが形成される。窪み部204aは、外面に凹凸を形成することによって下ケース200の強度を上げる効果の他に、デザイン状のポイントとなり、作業者が電池パック100を把持する際に掴みやすくなるという効果がある。
【0022】
図2(C)において、上ケース110と下ケース200の接合面は、ラッチ141a、141bのすぐ下方に位置し、上ケース110と下ケース200は図示しないネジによって固定される。下ケース200には下から上方向に貫通穴を有するネジボス207c、207dが形成される。
【0023】
図3は本発明の実施例に係る電池パック100の斜視図である。電池パック100の筐体は、上下方向に分割可能な下ケース200と上ケース110により形成される。下ケース200と上ケース110は電気を通さない部材、例えば合成樹脂製である。上ケース110には、電池パック100の装着機構と、電気機器本体との電気的接続を確立するための接続機構が設けられ、下側に開口する開口部113が形成される。下ケース200には、5本の電池セル145~149(符号は図5を参照)を収容するために形成され、上側に開口する開口部206を有する。上ケース110と下ケース200は、対向する開口部113、206を合わせるようにして、ネジボス207a~207d(207dは図2(C)参照)を貫通させる4本の図示しないネジによってお互いが固定される。
【0024】
上ケース110には電池パック装着部10に取り付けるために2本のレール部138a、138bが形成される。レール部138a、138bは、長手方向が電池パック100の装着方向と平行になるように、且つ、上ケース110の左右側面から左右方向に突出及び窪むように形成された装着機構である。レール部138a、138bは、電動工具本体1の電池パック装着部10に形成されたレール部11a、11b(図参照)と対応した形状に形成され、レール部138a、138bがレール部11a、11bと嵌合した状態で、ラッチの爪となる係止部142a、142b(図2参照)にて係止することにより電池パック100が電動工具本体1に固定される。
【0025】
上ケース110の前方側には平らな下段面111が形成され、中央付近は下段面111よりも高く形成された上段面115が形成される。下段面111と上段面115は階段状に形成され、それらの接続部分は鉛直面となる段差部114となっている。段差部114から上段面115の前方側部分がスロット群配置領域120になる。上段面115の後方側には、隆起するように形成された隆起部132が形成され、中央付近に窪み状のストッパ部131とスリット134が形成される。
【0026】
下ケース200の内部空間には、合成樹脂製のセパレータ250が収容される。セパレータ250は、5本の電池セルを積層した状態で保持するためと、上側に接続端子群を保持する回路基板150を搭載するための基台となる。回路基板150は複数の接続端子(161、162、164~168)を固定すると共に、これら接続端子と図示しない回路パターンとの電気的な接続を行う。回路基板150にはさらに、電池保護ICやマイクロコンピュータ、PTCサーミスタ、抵抗、コンデンサ等の様々な電子素子(ここでは図示していない)を搭載する。回路基板150としては、単層基板、両面基板、多層基板を用いることができる。
【0027】
正極端子161、162は回路基板150の右側に配置され、負極端子167は左側に配置される。それらの間には3つの信号端子(T端子164、V端子165、LS端子166)が設けられる。負極端子167の左側にはLD端子168が設けられる。これらの接続用の端子は、電気機器本体側の板状の接続端子と嵌合する腕部を有するもので、図16で示す従来の電池パック300で用いる接続端子と同じ部品を用いることができる。
【0028】
セパレータ250に収容される電池セル145~149(図では見えない)の長手方向の前側端部には絶縁シート178が設けられる。絶縁シート178は電気を通さない材質、例えば紙製であって、その内側部分はシール材が塗布されている。絶縁シート178により電気的な絶縁性を達成すると共に、電池セル端部に設けられる金属製の接続タブ(図5にて後述)が下ケースの支持部に当たる部分の保護をする。
【0029】
下ケース200の内部空間はセパレータ250を収容するのに好適な形状とされ、セパレータ250を安定して保持するためにセル支持部やセル側面支持部(ともに後述)が形成される。下ケース200は、収容される電池セルの本数や、それに伴って変更されるセパレータ250の大きさに合わせて設計される。ここでは、上ケース110として製品化済みの18V用電池パックに使用される上ケース110をそのまま用いて、下ケース200だけを収容する電池セルの大きさ、本数やセパレータ250に合わせて再設計して小型化したものである。
【0030】
図4図3と同じ展開斜視図であって、後ろ側から見た図である。セパレータ250の後方側にも電池セルの端部が位置して、絶縁シート179が設けられる。下ケース200の後方側壁面には2つのネジボス207c、207dが形成される。尚、本実施例の電池パック100においては、5本の電池セルを装着し、回路基板を搭載して、金属製の接続タブ(図5にて後述)と絶縁シート178(図3参照)、179を取り付けた組立体を、下ケース200の内部に収容する際に、薄いゴムシートやスポンジシート等を介在させなくても良い。但し、絶対不要という訳ではないので、薄いゴムシートやスポンジシート等を介在させることも任意である。
【0031】
図5は、図3及び図4のセパレータ250の組立体から、絶縁シート178、179だけを取り外した状態の斜視図である。図5(A)が図3と同じくセパレータ250を斜め前から見た図であり、図5(B)が図4と同じくセパレータ250を斜め後から見た図である。セパレータ250には、5本の電池セル145~149が収容される。ここでは、電池セル145~149として、直径21mm、長さ70mmのいわゆる“21700サイズ”のリチウムイオン電池セルが用いられる。電池セル145~149は、その長手方向が前後方向になるように、下側に2つ、上側に3つのセルが配置される。電池セル145~149は、いわゆる俵積み状態になるように、合成樹脂製のセパレータ250によって保持される。ここで、「俵積み」とは、円柱形の電池セルの外周面が接するような積み方であって、下段側の電池セルの上端位置をつないだ仮想面が、上段側の電池セルの下端位置をつないだ仮想面よりも上側になるように、上段側の電池セル145~147と、下段側の電池セル148~149を、電池セルの半径分だけ横方向にずらすようにして積層する方法である。前方視又は後方視において、電池セル145、148、146、149、147の順に各電池セルの径方向中心を仮想線で結ぶと、電池セル145~149は下ケース200内に略W字状に配置される。このように電池セル145~149を俵積みすることによって、2段の積層に必要な高さを2R(Rは電池セルの直径)よりも小さくすることが可能となる。ここでは、電池セル145~149同士が直接接触するような積み方では無く、セパレータ250にて外周面の大部分が覆われるようにして、電池セル145~149同士が直接当たらないようにしている。尚、電池セルの種類は、リチウムイオン電池だけに限られずに、ニッケル水素電池セル、リチウムイオンポリマー電池セル、ニッケルカドミウム電池セル等の任意の種類の二次電池を用いても良い。また、電池セルの大きさは、いわゆる“21700サイズ”だけでなく、下ケース内に収容できるならばこれよりも大きい又は小さいサイズであっても良い。
【0032】
合成樹脂製のセパレータ250(詳細は後述の図)には、円柱形の電池セル145~149を貫通させる内筒部が形成され、電池セル145~149の長手方向の両端部がセパレータ250から露出する形で保持する。その状態にて、薄い金属板からなる接続タブ171~175で隣接する電池セルと接続される。電池セル145~149の並べる向きは種々考えられるが、ここでは、上側の電池セル145~147を、軸線方向前方が負極になるように配置し、下側の電池セル148、149の軸線方向前方が正極になるように配置した。なお、正極と負極は逆の配置であっても良い。図5(A)に見ると、電池セル145~147の軸線方向前端部には、接続タブ172によって電池セル145と148が接続され、接続タブ174によって電池セル146と149が接続される。電池セル147には、負極端子167への接続用の接続タブ176が設けられる。同様にして、図5(B)に示すように、電池セル145~147の軸線方向後端部には、接続タブ173によって電池セル146の正極と電池セル148の負極が接続され、接続タブ175によって電池セル147の正極と電池セル149の負極が接続される。電池セル145の正極には、正極端子161、162への接続用の接続タブ171が設けられる。
【0033】
接続タブ171~176の電池セル145~149への固定は、4カ所のスポット溶接によって行われる。接続タブ171~176のスポット溶接を安定させるために、4カ所の溶接箇所の2つを分断するように接続タブ171~176に、上下方向に延びるスリットがそれぞれ形成される。さらに、接続タブ172~175には、図示しない保護ICによって直列接続された電池セルの中間電位を監視可能とするための引出し部172a~175aが形成される。引出し部172a、174aの端部は図示しないリード線により回路基板150に接続され、引き出し部173a、175aの端部は、回路基板150に形成された貫通穴を回路基板150の裏面側から表面側に貫通され、表面側で半田付けされる。
【0034】
図6図3のセパレータ250の単体を示す斜視図である。セパレータ250には5つの円筒状のセル収容部251~255が形成され、各電池セル145~149の軸線がそれぞれ平行になるように積み重ねる。セパレータ250の前後方向の長さは電池セル145~149とほぼ同じか、わずかに小さくされ、電池セル145~149の前側端面と後側端面がセパレータ250から露出するような状態とされる。セル収容部251~255のうち、前側開口付近の外縁は連続された壁面を有し、後ろ側開口付近の外縁も連続された壁面を有する。一方、セル収容部251~255の前後方向の中央付近は、側壁の一部が切り抜かれた状態とされ、電池セルの側面の一部がセパレータ250の外側から見えるような露出状態になる。この切り抜かれた部分は、セパレータ250の軽量化のためである。セパレータ250は、スタックした電池セル145~149が下ケース200に対して相対的に動かないように保持する。そのためセパレータ250自身も下ケース200によって上下方向及び左右方向の相対移動が制限される。上下方向の移動は、セパレータ250の脚部257、258に加えて、上側の左右両側に設けられた電池セル145と147の外周面(セパレータ250の当接部273~276(図では273、274は見えない))がセル支持部231、232、241、242(いずれも後述の図7参照)によって直接下方から支持される。セパレータ250の脚部257、258の側面には平面状の左側当接面263、264が形成される。セパレータ250のセル収容部253と255の側面接続部下側には、補強のための鉛直方向に形成される複数のリブ267、268が形成される。セパレータ250の右側側面であって、セル収容部251と254の側面接続部下側にも、同様にリブ(図では見えない)が形成される。下ケース200に対するセパレータ250の前後方向の移動規制は、左右方向でセル収容部254とセル収容部255の間で脚部257及び258の下部に設けられた三角形状の突起部290によって行われる。突起部290はセパレータ250の前後両側に設けられており、前側の突起部290はセル支持部212(後述する図7参照)に当接し、後側の突起部290はセル支持部222(後述する図7参照)に当接する。
【0035】
セパレータ250の上側には、回路基板150を固定する為のネジボス281a、281bや、回路基板150中央の位置決め穴(図示せず)に係合する支柱部282が形成される。また、セパレータ250の回路基板150よりも右側の縁部と左側の縁部には、上ケース110(図4参照)によってセパレータ250の上部を良好に当接させるための当接部283、284が形成される。当接部283、284は、平行する鉛直状のリブを等間隔で形成することによって軽量化を図り、広範囲において上ケース110の下面と当接するようにしている。回路基板150の後方側には、回路基板150の下面(裏面)と当接するように、2つの支柱状の当接部285、286が形成される。また、当接部286の先端部分は、図5に示すように、回路基板150の切り欠き150aに挿入されており、支柱部282と共にセパレータ250に対して回路基板150を位置決めするとともにセパレータ250に対する回路基板150の回転を防止している。
【0036】
セパレータ250のセル収容部251の右側壁には、下ケース200の内壁面と良好に面接触させるための当接面271が形成される。同様にセパレータ250のセル収容部253の左側壁には、下ケース200の内壁面と良好に面接触させるための当接面272が形成される。
【0037】
図7図3の下ケース200の上面図であって、収容される電池セル145~149の収納位置を示す図である。下ケース200の有効内容積の幅Wは俵積みされた電池セル145~149の3本分の横幅にほぼ相当し、長さLは電池セル145~149の長さに、接続タブ171~176の厚さと、絶縁シート178、179の厚さを加えた長さにほぼ等しい。ここで、電池セル145~149の長手方向の一方の端部(前側)には、電池セル145~149のそれぞれを保持(又は支持)するセル支持部211~215が設けられる。セル支持部211~213は、上側に位置する電池セル145~147を保持(又は支持)するものであり、セル支持部214、215は、下側に位置する電池セル148、149を保持(又は支持)するものである。同様にして、電池セル145~149の長手方向の他方の端部(後側)には、電池セル145~149のそれぞれを保持(又は支持)するセル支持部221~225が設けられる。セル支持部221~223は、上側に位置する電池セル145~147を保持(又は支持)するものであり、セル支持部224、225は、下側に位置する電池セル148、149を保持(又は支持)するものである。セル支持部211~215、221~225は下ケース200の内壁から内側に突出するよう設けられている。尚、図7では接続タブ171~176と、絶縁シート178、179の図示は省略している。
【0038】
電池セル145の右側であって、右側側壁203の内側にはセル支持部231、232が形成される。同様にして、左側側壁204の内側にはセル支持部241、242が形成される。セル支持部231、232、241、242は下ケース200の内壁から内側に突出するよう設けられている。このように、5本の電池セル145~149は、長手方向の両端側にてセル支持部に保持(又は支持)されることによって電池セル145~149が長手方向に、即ち前後方向にがたつかないように保持(又は支持)される。また、5本の電池セル145~149のうち、右側側壁203又は左側側壁204に対向する電池セル145、147、換言すると電池セル145~147が並んだ横方向の両端に位置する電池セル145、147を下方から底面側と側面側を支持するセル支持部231、232、241、242にて支持するようにした。尚、下側に並べられる電池セル148、149は、セル支持部233、234、243、244にて保持されるが図7では見えない(図12にて後述する)。
【0039】
図8図2のA-A部の断面図であり、図9図8と同じ断面図である。この断面位置では電池セル145~149の前側端部よりもやや前側である。これらの図においては、位置関係を説明するために、絶縁シート178、179の図示は省略している。セル支持部211~215と電池セル145~149を軸線方向から見たときに、セル支持部211~215と電池セルと145~149との大きさや重なり具合の関係がわかるであろう。上側セル支持部211~213は、上側の電池セル145~147が軸方向にずれないように各電池セルを支持する。その際、上側セル支持部211と213は、接続タブ172、176に当接せずに電池セル145と147を当接する形になる。実際には図示しない絶縁シート178が介在するので、上側セル支持部211と213は絶縁シート178を挟むようにして電池セル145と147を支持する。この際の接触部位211a、213aは図9に示すようになる。
【0040】
上側の電池セル146については、左右中央に形成される上側セル支持部212にて軸方向の動きが制限される。つまり、上側セル支持部212の接触部位212aにて、図示しない絶縁シート178と接続タブ174を介して電池セル146を支持する。尚、接続タブ174の形状をカスタマイズして、接続タブ174との接触部位を回避するようにした特殊な形状に形成することも可能である。しかしながら、できるだけ部品(接続タブ172、174)の共通性を保ち、生産性を向上させ、コストダウンを図るために、接続タブ172、174は同一部品を用いている。この対策としては上側セル支持部212の軸線方向の位置を他のセル支持部211、213~215と軸線方向にずらすようにしているが、その構造については図11にて後述する。
【0041】
下側の電池セル148、19は、下側セル支持部214、215によって軸方向にずれないように保持される。下側セル支持部214、215は、下側の電池セル148、149の下側の一部分を軸方向に支持する。その際、下側セル支持部214、215と電池セル148、149は、接続タブ172、174が介在せずに、図示しない絶縁シート178が介在するだけになる。そして、下側セル支持部214及び215のそれぞれの接触部位214a及び215aにて、図示しない絶縁シート178を介して電池セル148、149を支持する。
【0042】
以上のように、本実施例の下ケース200の前側壁面の内側には、電池セル145~149にそれぞれ対応する独立(分離)したセル支持部211~215を形成したので、電池セル145~149の軸線方向の動きを良好に支持(制限)することができる。また、セル支持部212を除いて残りのセル支持部211、213~215は電池セル145、147~149を直接保持する形(実際には絶縁シート178あり)になるので、がたつきが少なくて安定して電池セルを保持(又は支持)することが可能となる。また、各電池セル145~149に対向する上側セル支持部211~213と下側セル支持部214、215は、下ケース200と一体に形成されているものの、互いに独立(分離)した突起として形成されているので、それぞれの大きさや形状、特に図11にて後述する脆弱部の形成などを独自の形状とすることができ、各電池セル145~149を良好に支持できる。
【0043】
図8及び図9の断面図においては、下ケース200の前方壁201の内側に形成されたセル支持部211~215を説明したが、下ケース200の後方壁202の内側に形成されたセル支持部221~225もセル支持部211~215と同じ形状とされる。このように、上側セル支持部と下側セル支持部はそれぞれ電池セル145~149の長手方向両側端部に設けられる。
【0044】
図10図2のB-B部の断面図である。電池セル145~149はいわゆる俵積みされた状態にて下ケース200の内部に収容される。セパレータ250の左右方向の端部は、下ケース200の内壁面と良好に面接触させるための当接面271、272が形成され、セパレータ250の下ケース200に対する左右方向の位置決めを確実にしている。またセパレータ250の右側当接面261はセル支持部233に当接し、セパレータ250の左側当接面263はセル支持部243に当接することによって下側の電池セル148、149(セパレータ250)が左右方向のずれないように保持(又は支持)する。上側の電池セル145と147の外周面(円筒面)の一部は、セパレータ250を介して円弧状に形成されたセル支持部231、241によって保持される。セル支持部231、241を形成したのは、俵積みで、上側の電池セル145~147の横方向に並べる本数が3本であるのに対して、下側の電池セル148、149が2本と少ないので、上側の電池セル145、147を上下方向に安定して保持(又は支持)させるためのである。セル支持部231、241を形成したことによって、電池セル145、147は下方向に動かないように支持される。
【0045】
セパレータ250の左右両端の上側に形成されたリブ状の当接部283、284は、上ケース110の下段面111(詳細には図3において、下段面111の内、レール部138a、138bの下方のように、段差部114の前方に位置する部分よりも一段下がった部分)の下側に当接することにより、セパレータ250が上方向に動かないように固定される。以上のように、下ケース200の内壁側にセル支持部231、241を設けて、上側電池セルのうち両端に位置する電池セル145、147をそれぞれ下方から支持することにより、俵積みされた複数の電池セルを有する電池パックにおいて、上側3本、下側2本という積み方において耐衝撃性を極めて高くすることができた。
【0046】
図11図3の下ケース200の斜視図である。図11で示したように、電池セルの長手方向の後方側には、上側電池セルと対向する位置に設けられた上側セル支持部221~223が形成され、下側電池セルと対向する位置には下側セル支持部224、225が設けられる。ここで、上側セル支持部221~223と下側セル支持部224、225のセパレータ250側との接触部位は、平面ではなく上下方向に延在する複数のリブ状にて形成される。リブ状にする理由は、成形品の寸法を出し易くするためである。平面のような広い面よりもリブのような狭い面のほうが、電池セルを挟む寸法の成形精度が高まる。一方で、各セル支持部221~225において、リブが延在し各電池セルと対向する対向部(図13の基台部分214f等)に対してリブと反対側の部分(リブの裏側であって対向部と後方壁202の内側との間)には空間部が形成されている。(図13で詳述する)。この空間部によって、各セル支持部が電池セルによって電池セルの長手方向に押された際に対向部が空間部に逃げることができる。つまり、各セル支持部221~225が脆弱部を構成する空間部を有することにより各セル支持部221~225の対向部が変形し易くなる。よって電池セルの寸法誤差によらず確実に電池セルを支持することができる。なお、電池セルの長手方向の前方側に形成されたセル支持部211~215についても同様である。
【0047】
上側セル支持部221~223と下側セル支持部224、225は、後方壁202から前方への突出部分が互いに独立(分離)しているように構成される。また、上側セル支持部222の剛性を高めるために、左右に補強リブ226、227が形成されネジボス207c、207dと連結されている。図11の斜視図では下ケース200の前方壁201の内側の形状が見えないが、図で見える後方壁202の内側の形状と対称の形状である。下ケース200の底面205の中心近くには隆起部205aが形成される。これは射出成形上、材料の流動性を向上させるために形成されるものである。
【0048】
下ケース200の右側側壁203の内側部分には上側セル支持部231、232が形成され、左側側壁204の内側部分には上側セル支持部241、242が形成される。上側セル支持部232、242の形状は図10で示した上側セル支持部231、241と同じ形状である。上側セル支持部232、242の底面205付近には、セル支持部234、244が形成される。セル支持部234、244はセル支持部233、243と同じ形状であり、セル支持部234はセパレータ250の右側当接面(図面では見えない)に当接し、セル支持部24はセパレータ250の左側当接面264に当接することによって下側の電池セル148、149(セパレータ250)が左右方向のずれないように保持(又は支持)する。下ケース200の剛性をあげるために、補強リブ235、236が形成される。また、右側側壁203と左側側壁204には窪み部203a、204aが形成されるので、さらに下ケース200の剛性を高めることができる。
【0049】
以上のように、電池セル145~149が並んだ方向で長手方向両端に位置するセル支持部211~215、221~225を設け、左右両側の上側電池セルを下方から支持するセル支持部231、232、241、242を設けた。これらの支持部は合成樹脂製であって下ケース200と一体に形成されるので、きわめて剛性が高くなる。
【0050】
図12図3の下ケース200の図であり、(A)は平面図であり、(B)は(A)のC-C部の断面図であり、(C)は(A)のD-D部の断面図である。上面視においては、セル支持部231と241の横方向(左右方向又は/及び前後方向)の間隔と、セル支持部232とセル支持部242の横方向(左右方向又は/及び前後方向)の間隔は等しく形成される。また、セル支持部233と243の左右方向又は/及び前後方向の間隔と、セル支持部234とセル支持部244の左右方向又は/及び前後方向の間隔は等しく形成される。ここで、横方向(左右方向)に並べて配置される5つのセル支持部211~215の前後方向位置が同じでは無く、真ん中のセル支持部212だけがわずかに前方にオフセットされたように構成される。同様に、セル支持部221~225のうち、真ん中のセル支持部222だけがわずかに後方にオフセットされたように構成される。これらは、セル支持部212、222の間には電池セル146に加えて接続タブ173、174(ともに図5参照)の分の厚さが必要になるためである。この状態を図13を用いてさらに説明する。
【0051】
図13図12(A)のE部の部分拡大図である。ここでは上側のセル支持部212と、下側のセル支持部214、215の3つだけを示している。セル支持部214の当接面は平面状では無くて、上から下方向に延びる5本のリブ214a~214eが基台部分214fから後方側に延在するような形状とされる。このようにセル支持部214の当接面の有効面積をリブによって調整することによって、成形品の寸法を出し易くしている。平面のような広い面よりもリブのような狭い面のほうが、電池セルを挟む寸法の成形精度が高まるためである。一方で、セル支持部214において、基台部分214fに対してリブと反対側、すなわち、前方壁201の内面と基台部分214fの内面(リブの裏側)との間には空間部214gが形成されている。この空間部214gによって、セル支持部214が電池セル148によってその長手方向に押された際に基台部分214fが空間部214gに逃げることができる。つまり、セル支持部214が脆弱部を構成する空間部214gを有することによりセル支持部214の基台部分21fが変形し易くなる。よって電池セルの寸法誤差によらず確実に電池セルを支持することができる。なお、他のセル支持部211~213、215、221~225についても同様である。また、セル支持部214は、電池セル148との間に介在される絶縁シート178との協働により電池セル148の移動時の衝撃を効果的に吸収する。他のセル支持部も同様である。
【0052】
再び図12に戻る。図12(B)において、セル支持部231、232もセパレータ250との当接部分が平面では無くて4本のリブによって形成されているので強度が高く、電池セル145に加わる下方向の衝撃が生じても電池セル145を確実に支持することができる。下側のセル支持部233、234はセパレータ250の上から下方向の力を受ける部分ではなく、左右方向の動きを押さえるだけなので、その内側側面の形状は平面である。セル支持部231、232、233、234には脆弱部は形成されない。
【0053】
図12(C)では、後方壁202の内側に形成された上側のセル支持部221~223と、下側のセル支持部224、225を示している。ここではセル支持部222、224、225には上下方向に連続する5本の平行するリブが形成され、セル支持部221、223には上下方向に連続する3本の平行するリブが形成される。これらのリブは下ケース200の射出成形時に形成される一体成形部分である。
【0054】
図14は本実施例の電池パック100の図であり、(A)は上面図、(B)は(A)のF-F部の断面図であり、(C)は(A)のG-G部の断面図である。図14(B)に示すF-F部の断面は、電池パック100の左右方向中心の鉛直断面図となる。セパレータ250の前後方向の長さよりも電池セル146の方がわずかに長く形成される。電池セル146の前端の下側一部はセル支持部212によって保持され、後端の下側一部はセル支持部222によって保持される。セパレータ250の上側に突出する支柱部282は、回路基板150に形成された貫通穴に挿入される。
【0055】
図14(C)はG-G部の断面であり、電池セル147の一部と電池セル149を通る断面である。この断面位置のセパレータ250には、回路基板150を固定するためのネジボス281bが形成される。電池セル149は軸心位置よりもやや左寄りの縦断面であり、その位置においてはセル支持部212と215の間に形成される補強リブ217、セル支持部222と225の間に形成される補強リブ227を通ることになる。図から明らかなように、補強リブ217、227は電池セル149とは十分離れた位置に形成され、干渉しない位置にある。
【0056】
図15(A)は図14(A)のH-H部の断面図である。この断面位置は電池セル147の軸心位置を通る縦断面であり、セパレータ250の下側側面が通る位置である。この断面位置はセル支持部243、244の縦方向に延在するリブ部分を通る断面位置である。
【0057】
図15(B)は図14(A)のI-I部の断面図である。この断面位置は電池セル147の軸心位置よりわずかに左側の縦断面であり、セパレータ250の下側の側面が見える位置にあり、補強用のリブ267、268が確認できる。また、この断面位置はセル支持部243、244の縦方向に延在するリブ部分を通る断面位置である。る。
【0058】
本発明によれば、太径の電池セル145~149を俵積みにして高さを抑えた上に、電池セルの長手方向が横向きでなく、前後方向に並べる縦向きにしたので、コンパクトでありながら高容量の電池パック100を実現できた。また、電池セルの長さ方向の両端側でセル支持部によって軸方向のぶれを抑えるようにしたので、衝撃に強くて耐久性の優れた電池パックを実現できた。さらに、セル支持部は電池セル毎に独立(分離)して形成されるので、電池セルの長さにばらつきがあっても、良好に対応することができる。
【0059】
以上、本発明を実施例に基づいて説明したが、本発明は上述の実施例に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲内で種々の変更が可能である。例えばセパレータの形状を変更し、角柱形等の円筒形以外の電池セルに適用することもできる。また、電池セルは上側電池セルを2つ、下側電池セルを3つにしても良いし、電池セルの個数を5つ以外でも良い。また、電池セルを俵積みにする必要もなく図16に示す従来の電池パックのように、上側の各電池セルの真下に下側電池セルを配置する構成でも良い。また、電池セルのケース内での向きも図16に示す従来の電池パックのように、電池パックの長手方向が左右方向を向くように配置しても良い。
【符号の説明】
【0060】
1…電動工具本体、2…ハウジング、2a…胴体部、2b…ハンドル部、4…動作スイッチ、8…先端工具保持部、9…先端工具、10…電池パック装着部、11a,11b…レール部、12…湾曲部、14…突起部、20…ターミナル部、20a…垂直面、20b…水平面、22…正極入力端子、27…負極入力端子、28…LD端子(異常信号端子)、100…電池パック、110…上ケース、111…下段面、113…開口部、114…段差部、115…上段面、120…スロット群配置領域、121~128…スロット、131…ストッパ部、132…隆起部、134…スリット、138a,138b…レール部、141a,141b…ラッチ、142a,142b…係止部、145~149…電池セル、150…回路基板、150a…切り欠き、155a,155b…ネジ、161…正極端子、164…T端子、165…V端子、166…LS端子、167…負極端子、168…LD端子、171~176…接続タブ、172a,173a,174a,175a,176a…引出し部、178,179…絶縁シート、200…下ケース、201…前方壁、201a…スリット、202…後方壁、203…右側側壁、203a,204a…窪み部、204…左側側壁、205…底面、205a…隆起部、206…開口部、207a~207d…ネジボス、211~213…(上側)セル支持部、211a~215a…接触部位、212f…基台部分、214~215…(下側)セル支持部、214a~214e…リブ、214f…基台部分、214g…空間部、215a~215e…リブ、215f…基台部分、217,219…補強リブ、221~223…(上側)セル支持部、224~225…(下側)セル支持部、226~229…補強リブ、231~234…セル支持部、235,236…補強リブ、241~244…セル支持部、250…セパレータ、251~255…セル収容部、257,258…脚部、261,262…(セパレータの)右側当接面、263,264…(セパレータの)左側当接面、267,268…リブ、271~276…当接面(当接部)、281a,281b…ネジボス、282…支柱部、283~286…当接部、290…突起部、300…電池パック、310…上ケース、320…下ケース、330…セパレータ、341~348…電池セル
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