(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】電動作業機
(51)【国際特許分類】
B25F 5/02 20060101AFI20230511BHJP
B25F 5/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B25F5/02
B25F5/00 G
(21)【出願番号】P 2021554189
(86)(22)【出願日】2020-09-25
(86)【国際出願番号】 JP2020036448
(87)【国際公開番号】W WO2021084992
(87)【国際公開日】2021-05-06
【審査請求日】2022-04-27
(31)【優先権主張番号】P 2019198182
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000005094
【氏名又は名称】工機ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002066
【氏名又は名称】弁理士法人筒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】脇田 康平
【審査官】須中 栄治
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2009/0126964(US,A1)
【文献】特開2019-076994(JP,A)
【文献】国際公開第2018/003369(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B25F1/00-5/02
B24B23/00-23/08
B25B21/00-33/00
B25C1/00-13/00
B25D1/00-17/32
B26B15/00
B23B45/00-45/16
B23D29/00-29/02;45/16
B27B9/00-9/04;19/09
A01D34/68-34/69
A01G3/047-3/053
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力が供給されて回転する回転要素を有する電動モータと、
前記電動モータを内部に収容するハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、かつ、前記電動モータに電力を供給する電線と、
を有する、電動作業機であって、
前記ハウジングは、前記回転要素の軸方向と交差する交差方向に分割された第1部品及び第2部品を含み、
前記第1部品は、前記交差方向に向かって開口する開口部を有し、
前記開口部に前記第2部品が取り付けられた状態において、前記交差方向における前記第1部品と前記第2部品との間に前記電動モータを収容し、
前記第1部品と一体に形成され、かつ、前記電動モータを支持する
筒状のホルダを有し、
前記軸方向における位置が前記ホルダと重なるように前記第1部品
の内面と前記ホルダ
の外周面との間
に形成される空間であって、前記開口部から見て前記ホルダと重なり視認不能な領域を含む電線配置部を有する、電動作業機。
【請求項2】
電力が供給されて回転する回転要素を有する電動モータと、
前記電動モータを内部に収容するハウジングと、
前記ハウジング内に設けられ、かつ、前記電動モータに電力を供給する電線と、
を有する、電動作業機であって、
前記ハウジングは、前記回転要素の軸方向と交差する交差方向に分割された第1部品及び第2部品を含み、
前記第1部品は、前記交差方向に向かって開口する開口部を有し、
前記開口部に前記第2部品が取り付けられた状態において、前記交差方向における前記第1部品と前記第2部品との間に前記電動モータを収容し、
前記第1部品と一体に形成され、かつ、前記電動モータを支持するホルダを有し、
前記第1部品と前記ホルダとの間であって、前記開口部から見て前記ホルダと重なり視認不能な領域を含む電線配置部を有し、
前記電線配置部は、前記ハウジングと前記ホルダとの間に設けられて前記電線が通される穴を含み、
前記ホルダと前記ハウジングとをつなぐリブが、前記回転要素の径方向に沿って延びるように設けられ、
前記穴は、前記ハウジング及び前記ホルダ、前記リブによって囲われて形成され、
前記穴は、前記回転要素の回転中心線を中心として対称な2か所に形成される、電動作業機。
【請求項3】
前記ハウジング内に設けられ、かつ、前記回転要素を回転可能に支持する軸受を更に有し、
前記ホルダは、前記回転要素の径方向で前記軸受よりも外側に配置されて前記軸受を支持する、請求項
1又は2記載の電動作業機。
【請求項4】
前記第1部品は、
前記回転要素の径方向で前記電動モータの外側を取り囲む筒部と、
前記回転要素の軸方向で前記筒部の一方側に配置されて前記開口部が形成される第1本体部と、
を有し、
前記第2部品は、前記軸方向で前記筒部の一方側に配置される第2本体部を有し、
前記第1本体部と前記第2本体部との間、及び前記筒部内に亘って形成され、かつ、前記電動モータを収容するモータ収容室と、
を有し、
前記ホルダは、前記第1本体部につながっており、
前記電線配置部は、前記第1本体部と前記ホルダとの間に設けられている、請求項
1乃至3の何れか1項記載の電動作業機。
【請求項5】
前記筒部と前記ホルダとが、前記軸方向で異なる位置に配置されている、請求項
4記載の電動作業機。
【請求項6】
前記ハウジングに固定されたケースと、
前記ケースによって支持され、かつ、前記回転要素から回転力が伝達されて作動する作動部と、
を有し、
前記電動モータは、前記軸方向で前記作動部と前記ホルダとの間に配置されている、請求項
1乃至5の何れか1項記載の電動作業機。
【請求項7】
前記ハウジングは、前記軸方向に対して交差する方向に沿って配置され、かつ、ユーザが手で握るハンドルを有し、
前記回転要素の回転数を変更するためにユーザが操作する操作部材が、前記ハンドルに設けられている、請求項
1乃至6の何れか1項記載の電動作業機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電動モータと、電動モータが収容されたハウジングと、を有する電動作業機に関する。
【背景技術】
【0002】
電動モータと、電動モータが収容されたハウジングと、を有する電動作業機の例が、特許文献1に記載されている。特許文献1に記載された電動作業機はハンマドリルであり、ハンマドリルは、ハウジングとしてのモータハウジングと、モータハウジングに接続されたハンドルと、モータハウジング内に収容された電動モータと、を有する。電動モータは、回転要素としての出力軸を有する。モータハウジングにウェイトハウジングが取り付けられている。また、第1中間シャフト及び第2中間シャフトがウェイトハウジング内に設けられている。
【0003】
ハンドルに電源ケーブルが取り付けられるとともに、トリガ及びスイッチ機構が、ハンドルに設けられている。電源ケーブルは、スイッチ機構を外部電源に接続している。作業者がトリガを操作することにより、スイッチ機構と電源とが接続及び遮断される。スイッチ機構が電源に接続されて、電動モータの出力軸が回転すると、出力軸の回転力は、第1中間シャフトを経由して第2中間シャフトに伝達される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願発明者は、電源の電力を電動モータに供給する電線がハウジング内に配置される位置によって、ハウジングが回転要素の軸方向に大型化する課題があることを認識した。
【0006】
本発明の目的は、ハウジングが回転要素の軸方向に大型化することを抑制可能な電動作業機を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
一実施形態の電動作業機は、電力が供給されて回転する回転要素を有する電動モータと、前記電動モータを内部に収容するハウジングと、前記ハウジング内に設けられ、かつ、前記電動モータに電力を供給する電線と、を有する、電動作業機であって、前記ハウジングは、前記回転要素の軸方向と交差する交差方向に分割された第1部品及び第2部品を含み、前記第1部品は、前記交差方向に向かって開口する開口部を有し、前記開口部に前記第2部品が取り付けられた状態において、前記交差方向における前記第1部品と前記第2部品との間に前記電動モータを収容し、前記第1部品と一体に形成され、かつ、前記電動モータを支持する筒状のホルダを有し、前記軸方向における位置が前記ホルダと重なるように前記第1部品の内面と前記ホルダの外周面との間に形成される空間であって、前記開口部から見て前記ホルダと重なり視認不能な領域を含む電線配置部を有する。
一実施の形態の電動作業機は、電力が供給されて回転する回転要素を有する電動モータと、前記電動モータを内部に収容するハウジングと、前記ハウジング内に設けられ、かつ、前記電動モータに電力を供給する電線と、を有する、電動作業機であって、前記ハウジングは、前記回転要素の軸方向と交差する交差方向に分割された第1部品及び第2部品を含み、前記第1部品は、前記交差方向に向かって開口する開口部を有し、前記開口部に前記第2部品が取り付けられた状態において、前記交差方向における前記第1部品と前記第2部品との間に前記電動モータを収容し、前記第1部品と一体に形成され、かつ、前記電動モータを支持するホルダを有し、前記第1部品と前記ホルダとの間であって、前記開口部から見て前記ホルダと重なり視認不能な領域を含む電線配置部を有し、前記電線配置部は、前記ハウジングと前記ホルダとの間に設けられて前記電線が通される穴を含み、前記ホルダと前記ハウジングとをつなぐリブが、前記回転要素の径方向に沿って延びるように設けられ、前記穴は、前記ハウジング及び前記ホルダ、前記リブによって囲われて形成され、前記穴は、前記回転要素の回転中心線を中心として対称な2か所に形成される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、回転要素の軸方向で、電線の配置領域と、ホルダの配置領域とを、重ならせることが可能である。したがって、ハウジングが回転要素の軸方向に大型化することを抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の電動作業機の一実施形態であるハンマドリルを示す正面断面図である。
【
図2】ハンマドリルのギヤケース内を示す正面断面図である。
【
図3】ハンマドリルのハウジング内を示す正面断面図である。
【
図4】ハンマドリルに設けられる電気回路を示す模式図である。。
【
図5】
図3のハウジングを分解して示す平面図である。
【
図6】ハウジングに設けたホルダの模式的な斜視図である。
【
図7】ハウジングの一部である第1部品を示す正面図である。
【
図10】
図7に示す第1部品のII-II線における右側面断面図である。
【
図11】(A)は、第1部品を製造する金型を示す正面断面図、(B)は、
図11(A)の右側面図である。
【
図12】(A)は、
図11(B)のIII-III線における底面断面図、(B)は、
図11(B)のIV-IV線における底面断面図である。
【
図13】(A)は、
図11(A)のV-V線における右側面断面図、(B)は、
図11(A)のVI-VI線における右側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の電動作業機の一実施形態であるハンマドリルを、図面を用いて説明する。
【0011】
図1に示されたハンマドリル10は、ハウジング11、ギヤケース12、シリンダ13及び電動モータ14を有する。シリンダ13は、工具15を支持可能である。ハンマドリル10は、電動モータ14の動力で工具15を回転させる機能と、電動モータ14の動力で工具15に打撃力を与える機能と、を有する。
【0012】
ハウジング11は、モータ収容部16及びハンドル17を有する。モータ収容部16内に第1収容室18が設けられ、電動モータ14は、第1収容室18に収容されている。電動モータ14は、モータ収容部16に固定されたステータ19と、回転可能なアーマチュア20と、を有する。アーマチュア20は導電線のコイルを有し、アーマチュア20は回転軸21に取り付けられている。回転軸21は、2個の軸受22,23によって回転中心線A1を中心として回転可能に支持されている。2個の軸受22,23は、回転軸21を、回転中心線A1を中心とする径方向、及び回転中心線A1に沿った方向に位置決めする。
図1において、回転中心線A1に沿った方向は、前後方向X2と定義可能である。
【0013】
ステータ19は、回転中心線A1を中心とする径方向で、アーマチュア20よりも外側に配置されている。アーマチュア20とステータ19との間に、回転軸21の径方向の隙間がある。また、回転軸21にコンミテータ24が設けられている。コンミテータ24は、交流電源48とアーマチュア20との間で電流の方向を切り替える。アーマチュア20は、電流が流れて磁界を形成する。コンミテータ24及びアーマチュア20は、回転中心線A1に沿った方向に並べて配置されている。さらに、2個の軸受22,23は、回転中心線A1に沿った方向に間隔をおいて配置されている。コンミテータ24及びアーマチュア20は、回転中心線A1に沿った方向で軸受22と軸受23との間に配置されている。コンミテータ24は、回転中心線A1に沿った方向で軸受22とアーマチュア20との間に配置されている。さらに、回転軸21は、出力ギヤ27を有している。
【0014】
ハンドル17はモータ収容部16につながっている。
図1では、ハンドル17が、回転中心線A1に対して交差する上下方向X3に沿って配置された例を示す。なお、上下方向X3は、回転中心線A1が、略水平であることを前提として、重力の作用方向と一致する。モータ収容部16のうち、回転中心線A1に沿った方向でハンドル17がつながった箇所とは反対の箇所に、ギヤケース12が固定されている。モータ収容部16とギヤケース12とは、固定要素、例えば、ねじ部材によって固定されている。
【0015】
ギヤケース12は筒形状であり、ギヤケース12内に隔壁25が設けられている。隔壁25は、第1収容室18と、ギヤケース12の第2収容室26とを隔てる。軸受23は、隔壁25によって支持されている。回転軸21の回転中心線A1に沿った方向の端部は、第2収容室26に配置されている。出力ギヤ27は、回転軸21であって第2収容室26に配置された箇所に設けられている。
【0016】
また、絶縁材料製、例えば合成樹脂製のブラシホルダ28が、ハウジング11に設けられている。ブラシホルダ28は、第1収容室18に配置されている。ブラシホルダ28は、回転軸21の径方向で回転軸21よりも外側に配置されている。ブラシホルダ28は、複数、例えば、ブラシ57,58を支持しており、ブラシ57,58はコンミテータ24の外周面にそれぞれ接触されている。ブラシ57,58は、交流電源48とコンミテータ24とを通電可能に接続する。このように、電動モータ14は、ブラシ付きモータと定義可能である。
【0017】
ハンドル17において、モータ収容部16につながった箇所とは反対の箇所に電源ケーブル30が取り付けられている。電源ケーブル30は、交流電源に接続される。電源ケーブル30は、2つのコード31,32を絶縁材で被覆したものである。2つのコード31,32は、電気回路を介してブラシ57,58に接続されている。2つのコード31,32は、電流が流れる。
【0018】
中間シャフト33が第2収容室26に設けられている。中間シャフト33は、回転軸21の動力を工具15に伝達する要素である。2つの軸受34,35が第2収容室26に設けられている。中間シャフト33は、2つの軸受34,35により回転中心線A2を中心として回転可能に支持されている。回転中心線A2は回転中心線A1と平行であり、かつ、回転中心線A1は回転中心線A2と非同軸に配置されている。中間シャフト33の長手方向の両端部のうち、隔壁25に近い方の端部にギヤ36が固定されている。ギヤ36は中間シャフト33と共に回転し、ギヤ36は出力ギヤ27に噛み合わされている。また、中間シャフト33にギヤ37が設けられている。
【0019】
シリンダ13は、第2収容室26に設けられている。シリンダ13は、第2収容室26及びギヤケース12の外部に亘って配置されている。シリンダ13は、回転中心線A3を中心として回転可能である。回転中心線A3は、回転中心線A1,A2と平行であり、かつ、回転中心線A3は、回転中心線A1,A2に対して偏心して配置されている。
【0020】
工具15は、シリンダ13に支持されている。工具15とシリンダ13とは相対回転せず、かつ、工具15は、シリンダ13に対して回転中心線A3に沿った方向の所定範囲内で移動可能である。セカンドハンマ38が、シリンダ13内で回転中心線A3に沿った方向に移動可能に設けられている。
【0021】
ピストン39がシリンダ13内に配置されている。ピストン39は、シリンダに対して回転中心線A3に沿った方向に移動可能である。ピストン39は、筒形状である。ストライカ40が、ピストン39内に配置されている。ストライカ40は、ピストン39に対して回転中心線A3に沿った方向に移動可能である。ピストン39内に圧力室41が設けられている。ストライカ40は、圧力室41の圧力でセカンドハンマ38に近づく向きに付勢される。
【0022】
変換部42が第2収容室26に設けられている。変換部42は、例えばカム機構を有し、変換部は、中間シャフト33の回転力をピストン39の直動力に変換する。さらに、クラッチ43が第2収容室26に設けられている。ハウジング11にモード切替レバーが設けられており、作業者がモード切替レバーを操作すると、クラッチ43が作動する。クラッチ43は、中間シャフト33と変換部42との間の動力伝達経路を接続及び遮断する。ギヤ44がシリンダ13に取り付けられており、ギヤ44がギヤ37に噛み合わされている。なお、グリップ45がギヤケース12に取り付けられており、ユーザは、手でグリップ45を握る。
【0023】
トリガ46がハンドル17に設けられている。トリガ46は、ハンドル17がモータ収容部16から突出された方向でモータ収容部16に最も近い箇所に配置されている。トリガ46は、初期位置からハンドル17に対して回転中心線A1に沿った方向に作動可能である。トリガ46に対する操作力が解除されていると、トリガ46は初期位置で停止している。ユーザがトリガ46に操作力を付加すると、トリガ46は初期位置から作動する。なお、トリガ46に対する操作力が解除されると、トリガ46は、スプリングの力で初期位置へ戻って停止する。また、変速スイッチ47が、ハンドル17内に設けられている。変速スイッチ47は、トリガ46が初期位置から作動する量に応じて電動モータ14の回転速度を変更する要素である。
【0024】
図4は、交流電源48から電動モータ14に電力を供給する電気回路を示している。電源ケーブル30が交流電源48に接続されると、交流電源48と変速スイッチ47とが、2本のコード31,32によって接続される。電動モータ14の回転方向を切り替える切替スイッチ49が、ハウジング11に設けられている。ステータ19は、並列に配置された導電性のコイル50,51を有する。コイル50の第1端部は、コード52によって変速スイッチ47に接続され、コイル50の第2端部は、コード53によって切替スイッチ49に接続されている。コイル51の第1端部は、コード54によって変速スイッチ47に接続され、コイル51の第2端部は、コード55によって切替スイッチ49に接続されている。さらに、コンデンサ56が、変速スイッチ47に接続されている。
【0025】
ブラシ57は、コード59、チョークコイル60及びコード61を介して切替スイッチ49に接続されている。ブラシ58は、コード62、チョークコイル63及びコード64を介して切替スイッチ49に接続されている。これらのコード52,53,54,55,59,61,62,64は、第1収容室18またはハンドル17内に配置されている。コード52,53,54,55,59,61,62,64は、それぞれ電流が流れる。
【0026】
ハンマドリル10の使用例を説明する。まず、ユーザは第1の手でグリップ45を握り、かつ、第2の手でハンドル17を握り、かつ、工具15を対象物に押し付ける。ユーザがトリガ46に操作力を付加すると、交流電源48から電動モータ14に電力が供給されて、ステータ19とアーマチュア20との間に磁界が発生し、回転軸21が回転する。回転軸21の回転力は、ギヤ36を経由して中間シャフト33に伝達される。中間シャフト33の回転力は、ギヤ44を経由してシリンダ13に伝達され、工具15がシリンダ13と共に回転する。
【0027】
変速スイッチ47は、トリガ46が初期位置から作動する量に応じて、電動モータ14の回転軸21の回転数を調整する。トリガ46の作動量が増加すると、電動モータ14の回転軸21の回転数が上昇する。トリガ46の作動量が減少すると、電動モータ14の回転軸21の回転数が低下する。
【0028】
モード切替スイッチが操作されてドリルモードが選択されていると、クラッチ43は、中間シャフト33の回転力を変換部42に伝達しない。このため、ピストン39が停止され、工具15に打撃力は付加されない。これに対して、モード切替スイッチが操作されて、ハンマドリルモードが選択されていると、クラッチ43は、中間シャフト33の回転力を変換部42に伝達する。このため、ピストン39が往復動作し、圧力室41の圧力が上昇する。したがって、ストライカ40が作動し、セカンドハンマ38が工具15を打撃する。したがって、工具15は回転され、かつ、打撃力を受ける。
【0029】
次に、ハウジング11の構成を説明する。ハウジング11は、
図5のように第1部品65及び第2部品66を有する。第1部品65と第2部品66とは、物理的に別部材である。第1部品65及び第2部品66は、合成樹脂の表面を合成ゴムで被覆して、それぞれ構成されている。第1部品65と第2部品66とが、固定要素、例えば、ねじ部材78によって固定されている。
【0030】
第1部品65は、本体67と、本体67につながる接続部68と、本体67につながる筒部69とを有する。本体67は、回転中心線A1に沿った方向で筒部69よりも後方側に配置される。言い換えると、筒部69は、回転中心線A1に沿った方向でギヤケース12と本体67との間に配置されている。第1部品65は、
図5、
図7及び
図8のように、開口部72を有する。開口部72は、
図5に示す本体67の左側の略全面に亘って形成され、左側に向かって開口している。第1部品65を
図5のように平面視すると、開口部72は、回転中心線A1に対して交差する左右方向X1において、本体67の内部と外部とをつなげる。
【0031】
ハウジング11を
図5のように平面視すると、左右方向X1は、回転中心線A1に対して交差する。左右方向X1における左右は、ハウジング11を後方から見た状態で決定される。また、
図5に示すハウジング11おいて、回転中心線A1に沿った方向は、前後方向X2と定義可能である。
【0032】
第2部品66は、本体70と、本体70につながる接続部71と、を有する。ハウジング11を平面視すると、第1部品65の本体67及び接続部68と、第2部品66の本体70及び接続部71とが、回転中心線A1を境界として2つに分割されている。本体70は、回転中心線A1に沿った方向で本体67と同じ位置に配置されている。言い換えると、本体70は、回転中心線A1に沿った方向で筒部69の一方側に並べて配置されている。つまり、本体70は、回転中心線A1に沿った方向で筒部69の隣に配置されている。
【0033】
そして、本体70が、本体67及び筒部69に接触した状態で第1部品65と第2部品66とが固定され、モータ収容部16を構成している。本体67と本体70との間、及び筒部69内に亘って第1収容室18が設けられている。また、第2部品66は、開口部72を塞ぐように第1部品65に固定されている。第2部品66の本体70は、筒部69に接触し、第2部品66の本体70と第1部品65の本体67との間に第1収容室18が設けられている。第1部品65と第2部品66とが互いに固定されると、左右方向X1において、本体67と本体70との間に電動モータ14が配置されている。さらに、接続部68と接続部71とが接触した状態で第1部品65と第2部品66とが固定され、ハンドル17を構成している。2個のブラシホルダ28は、第1部品65及び第2部品66によって挟まれて支持されている。
【0034】
図3のように、軸受22を支持する位置決め部73が、ハウジング11に設けられている。位置決め部73は、合成樹脂製であり、位置決め部73と第1部品65とは、一体成形品である。位置決め部73は、モータ収容部16とハンドル17との接続箇所に設けられている。位置決め部73は、筒部74と、筒部74の回転中心線A1に沿った方向の端に設けた壁部75と、を有する。筒部74は、回転中心線A1の径方向で軸受22よりも外側に配置されている。回転中心線A1に沿った方向で、位置決め部73と筒部69とが、異なる位置に配置されている。
【0035】
図5及び
図7のように、筒部74と筒部69とをつなぐステー79が設けられている。位置決め部73は、軸受22を回転中心線A1に沿った方向に位置決めし、かつ、軸受22を回転中心線A1の径方向に位置決めする。
【0036】
図6のように、筒部74から回転軸21の径方向に突出されたリブ76A,76B,76C,76Dが設けられている。リブ76Aとリブ76Bとは、筒部74の円周方向で同じ位置に配置され、かつ、回転中心線A1に沿った方向で異なる位置に配置されている。リブ76A,76Bは、第1部品65につながっている。
【0037】
リブ76Aとリブ76Bとの間に、通路84が設けられている。通路84はリブ76A及びリブ76B、筒部74、本体67のそれぞれの壁面によって囲われている。換言すると、通路84は、第1部品65と筒部74との間に設けられた穴である。
【0038】
リブ76Cとリブ76Dとは、筒部74の円周方向で同じ位置に配置され、かつ、回転中心線A1に沿った方向で異なる位置に配置されている。リブ76C,76Dは、第1部品65につながっている。リブ76Cとリブ76Dとの間に、通路85が設けられている。通路85は、リブ76C及びリブ76D、筒部74、本体67のそれぞれの壁面によって囲われている。換言すると、通路85は、第1部品65と筒部74との間に設けられた穴である。
【0039】
通路84は、
図6において筒部74の上に位置し、通路85は、筒部74の下に位置する。換言すると、通路84と通路85とは、回転中心線A1を中心として点対称の位置に配置されている。
図8のように、第2部品66が第1部品65から離間されていると、ユーザは、開口部72を介して筒部74を視認可能である。
【0040】
図3のように、軸受22は筒部74内に配置され、壁部75が軸受22を回転中心線A1に沿った方向に位置決めし、筒部74が軸受22を径方向に位置決めする。そして、
図9及び
図10のように、回転中心線A1を中心とする円の径方向で、筒部74の外周面と、第1部品65の内面との間に、配置部77が設けられている。配置部77は、円弧状の空間また隙間である。配置部77は、通路84,85につながっている。そして、3本のコード52,55,61の長さ方向の一部が、通路84,85及び配置部77に亘って配置されている。
図5及び
図8のように、第2部品66が第1部品65から離間されており、ユーザが、開口部72を見ると、ホルダ73の存在により、通路85及び配置部77を視認不可能である。
【0041】
図1を参照して、ハウジング11及びギヤケース12の内部に配置されている要素の位置関係を説明する。中間シャフト33、シリンダ13、ギヤ44及び変換部42は第2収容室26に配置されている。隔壁25は、回転中心線A1に沿った方向で、第1収容室18と第2収容室26との間に配置されている。電動モータ14は、回転中心線A1に沿った方向で、隔壁25と位置決め部73との間に配置されている。
【0042】
また、ハウジング11は、回転中心線A1に沿った方向でギヤケース12の反対に位置する壁80を有する。壁80は、
図5及び
図8に示す第1部品65の縁81と、第2部品66の縁82とが突き合わされて設けられている。さらに、位置決め部73は、回転中心線A1に沿った方向でコンミテータ24と壁80との間に配置されている。そして、配置部77は、回転中心線A1を中心とする径方向で位置決め部73よりも外側に設けられている。
【0043】
そして、
図6のように、3本のコード52,55,61の長さ方向の一部が、配置部77に配置されている。つまり、回転中心線A1に沿った方向で、3本のコード52,55,61の長さ方向の一部の配置領域は、位置決め部73の配置領域内にある。したがって、ハウジング11が回転中心線A1に沿った方向に大型化することを抑制できる。
【0044】
さらに、ハウジング11を組み立てる場合、3本のコード52,55,61の長さ方向の一部が、リブ76Aとリブ76Bとの間、及びリブ76Cとリブ76Dとの間を通され、かつ、配置部77に配置されている状態で、第1部品65をユニット化できる。その後、第1部品65と第2部品66とを接触させ、かつ、ねじ部材78によって第1部品65と第2部品66とを固定することができる。したがって、3本のコード52,55,61の少なくとも一部が、第1部品65と第2部品66との間に挟まれることを回避できる。また、リブ76A,B,C,Dが設けられているため、位置決め部73の強度を確保できる。
【0045】
第1部品65を製造する金型が、
図11(A)、
図11(B)、
図12(A)、
図12(B)、
図13(A)及び
図13(B)に示されている。金型90は、コア91,92及びキャビティ93を有する。コア91は、
図12(A)において左右方向に移動可能である。コア92は、
図12(A)において上下方向に移動可能である。
図12(A)における上下方向は、
図6の第1部品65における回転中心線A1に沿った方向に相当する。キャビティ93は、
図12(A)において左右方向に移動可能である。
【0046】
コア91,92及びキャビティ93を互いに接近させて停止させた後、コア91,92及びキャビティ93によって区画された空間へ、流動状態の樹脂材料が注入され、樹脂材料が固化する。その後、コア91,92及びキャビティ93が互いに離間され、第1部品65が取り出される。
【0047】
本実施形態で開示された事項の技術的意味の一例は、次の通りである。ハンマドリル10は、電動作業機の一例である。回転軸21は、回転要素の一例である。電動モータ14は、電動モータの一例である。ハウジング11は、ハウジングの一例である。コード52,55,61は、電線の一例である。軸受22は、軸受の一例である。筒部74は、ホルダの一例である。配置部77は、配置部の一例である。第1部品65は、第1部品の一例である。第2部品66は、第2部品の一例である。本体67は、第1本体部の一例である。本体70は、第2本体部の一例である。筒部69は、筒部の一例である。第1収容室18は、モータ収容室の一例である。
【0048】
リブ76A,76B,76C,76Dは、それぞれリブの一例である。通路84,85は、穴の一例である。通路84、85、配置部77は、電線配置部の一例である。回転中心線A1は、回転中心線の一例である。ギヤケース12は、ケースの一例である。中間シャフト33、シリンダ13、ギヤ44及び変換部42は、作動部の一例である。ハンドル17は、ハンドルの一例である。トリガは、操作部材の一例である。回転中心線A1に沿った方向は、回転要素の軸方向の一例である。
【0049】
また、“ハウジングは、回転要素の軸方向と交差する交差方向に分割された第1部品及び第2部品”は、
図5及び
図10に示す左右方向X1に分割された第1部品65及び第2部品66を意味する。
【0050】
電動作業機は、実施形態で開示されたハンマドリルに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能であることは言うまでもない。例えば、電動モータは、ブラシ付きモータまたはブラシレスモータの何れでもよい。電動モータに電力を供給する電源は、交流電源または直流電源の何れでもよい。直流電源は、ハンドルに着脱される電池パックを含む。作動部は、回転する要素または直動する要素のうち、少なくとも一方の要素を含む。作動部は、ピストン、シリンダ、回転軸、ギヤ等を含む。操作部材は、レバー、アーム等を含む。操作部材は、直線状に復動可能なもの、または、所定角度の範囲内で回転可能なもの、の何れでもよい。
【0051】
ホルダは、第1構成片及び第2構成片に分割され、第1構成片が第1部品につながり、第2構成片が第2部品につながっていてもよい。この場合、第1部品と第1構成品との間、第2部品と第2構成品との間の少なくとも一方に、電線配置部を設けることが可能である。
【0052】
回転要素の第1回転中心線と、電動モータの第2回転中心線とは、同心状に配置されていてもよい。また、第1回転中心線と第2中心線とが平行に配置され、かつ、互いに偏心して配置されていてもよい。さらに、第1回転中心線と第2中心線とが交差して配置されていてもよい。
【0053】
電動モータの回転力を、ピストンの直動力に変換する変換部は、カム機構またはクランク機構の何れでもよい。電動作業機の実施形態は、ハンマドリルの他、ハンマドライバ、インパクトドライバ、インパクトレンチ、ドライバドリル、等を含む。
【符号の説明】
【0054】
10…ハンマドリル、11…ハウジング、12…ギヤケース、13…シリンダ、14…電動モータ、17…ハンドル、21…回転軸、22…軸受、33…中間シャフト、42…変換部、44…ギヤ、46…トリガ、52,55,61…コード、65…第1部品、66…第2部品、67,70…本体、69,74…筒部、76A,76B,76C,76D…リブ、77…配置部、84,85…通路、A1…回転中心線