(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 5/02 20060101AFI20230511BHJP
B66B 3/00 20060101ALI20230511BHJP
B66B 13/14 20060101ALI20230511BHJP
B66B 13/26 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B66B5/02 E
B66B3/00 L
B66B13/14 H
B66B13/14 M
B66B13/26 D
(21)【出願番号】P 2022018232
(22)【出願日】2022-02-08
【審査請求日】2022-02-08
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207826
【氏名又は名称】尾畑 誠治
(72)【発明者】
【氏名】小林 謙治
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-168962(JP,A)
【文献】特開2006-290509(JP,A)
【文献】特開平03-098983(JP,A)
【文献】実開平03-097472(JP,U)
【文献】特開2016-113226(JP,A)
【文献】特開2010-001093(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-31/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エレベータが設置される建物内に設けられた火災発生を検知する火災検知手段と、
前記エレベータの乗りかご内の乗客の有無を検知する乗客検知手段と、
前記乗りかごの昇降及びかごドアの開閉を制御する制御装置と、
前記乗りかごのかごドア戸当り部に非接触式のドア挟まれ防止検知手段のみを備えたエレベータであって、
前記火災検知手段が火災を検知したとき、
前記制御装置は、前記乗りかごを最寄階又はあらかじめ設定された避難階に直行させて前記かごドアを開放すると共に、前記非接触式のドア挟まれ防止検知手段を無効にし
、前記乗客検知手段が前記乗りかご内に乗客がいることを検知したときから所定時間経過するまでは前記かごドアの開放を継続し、
前記制御装置は、前記乗客検知手段が前記乗りかご内に乗客がいることを検知したときから所定時間経過したときは、前記かごドアを強制戸閉し、
前記制御装置は、前記かごドアを戸閉するとき、前記かごドアの戸閉に係るトルクを直接的又は間接的に検出し、
前記かごドアが全閉するまでに検出した前記トルクが所定のトルクである第2トルク制限値以上になったとき、反転戸開を行い、
前記強制戸閉するときの前記第2トルク制限値は、前記火災検知手段が火災を検知していないときの前記所定のトルクである第1トルク制限値より小さい
エレベータ。
【請求項2】
前記乗客検知手段は、前記乗りかごに備えられた荷重検出手段である
請求項
1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記乗客検知手段は、前記乗りかご内に備えられたカメラ装置である
請求項
1に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記乗客検知手段は、前記乗りかご内に備えられた人感センサである
請求項
1に記載のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災発生時に乗客を安全に乗りかご内から退避させることが可能なエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
従来エレベータは、建物に火災が発生すると、火災検知手段からの火災発生信号を受け、あらかじめ設定された避難階に直行し、所定時間ドアを開放した後、ドアを閉め、照明を消灯する。
【0003】
ところで、エレベータかごドア先端の戸当り部に、戸閉時に乗客が挟まれたことを検知し、反転戸開させるドア挟まれ防止検知手段が設けられている。
ドア挟まれ防止検知手段は、乗客がドアに挟まれたことを接触して検知する機械式ドア挟まれ防止検知手段と、非接触で乗客がドアに挟まれる前に乗客を検知する非接触式ドア挟まれ防止検知手段がある。
【0004】
ドア挟まれ防止検知手段は、機械式ドア挟まれ防止検知手段のみを設置、非接触式ドア挟まれ防止検知手段のみを設置、及び、機械式ドア挟まれ防止検知手段と非接触式ドア挟まれ防止検知手段の両方を設置される場合がある。
【0005】
ところで、非接触式ドア挟まれ防止検知手段のみが設置されたエレベータにおいて、該エレベータが設置された建物に火災が発生すると、火災検知手段からの火災発生信号を受け、最寄階又はあらかじめ設定された避難階に直行し、所定時間ドアを開放した後、ドアを閉め、照明を消灯するが、光電センサを有効にしたままにすると煙の遮光による誤検知により、検知から所定時間を経過して強制戸閉されるまで戸開が継続し、ドアを閉め、照明を消灯することができない。
そのため、非接触式ドア挟まれ防止検知手段のみが設置されたエレベータにおいては、火災検知手段からの火災発生信号を受信すると、非接触式ドア挟まれ防止検知手段を無効とにする。
【0006】
また、乗りかごが最寄階又はあらかじめ設定された避難階に直行し、ドアを開放した後、ドアを閉め、照明を消灯するが、乗りかご内に居残った乗客に乗りかごから降りることを促すため、最寄階又は避難階に到着後、かごドアの開閉を少なくとも2回繰り返して行う技術が知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、非接触式ドア挟まれ防止検知手段のみが設置されたエレベータにおいては、火災発生時に最寄階又はあらかじめ設定された避難階に直行し、所定時間ドアを開放した後、ドアを閉めるが、このときに乗客を挟むとドア挟まれ防止検知手段が無効となっているため、ドア装置にかかるトルクが所定値を超えるまで戸閉動作を継続し、所定値を超えて反転戸開するまで乗客を挟み続けることになる。
ドアに挟まれた乗客には大きな力が加わるため、不快に感じるという問題があった。
また、乗りかごから降りることを促すため、最寄階又は避難階に到着後、かごドアの開閉を少なくとも2回繰り返して行う場合であっても、同様に乗客が挟まれ、不快に感じるという問題が生じることは同様である。
【0009】
そこで、本発明は、火災発生時に乗客を安全にかご内から退避させることが可能なエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明に係るエレベータは、エレベータが設置される建物内に設けられた火災発生を検知する火災検知手段と、前記エレベータの乗りかご内の乗客の有無を検知する乗客検知手段と、前記乗りかごの昇降及びかごドアの開閉を制御する制御装置と、前記乗りかごのかごドア戸当り部に非接触式のドア挟まれ防止検知手段のみを備えたエレベータであって、前記火災検知手段が火災を検知したとき、前記制御装置は、前記乗りかごを最寄階又はあらかじめ設定された避難階に直行させて前記かごドアを開放すると共に、前記非接触式のドア挟まれ防止検知手段を無効にし、前記乗客検知手段が前記乗りかご内に乗客がいることを検知したときから所定時間経過するまでは前記かごドアの開放を継続し、前記制御装置は、前記乗客検知手段が前記乗りかご内に乗客がいることを検知したときから所定時間経過したときは、前記かごドアを強制戸閉し、前記制御装置は、前記かごドアを戸閉するとき、前記かごドアの戸閉に係るトルクを直接的又は間接的に検出し、前記かごドアが全閉するまでに検出した前記トルクが所定のトルクである第2トルク制限値以上になったとき、反転戸開を行い、前記強制戸閉するときの前記第2トルク制限値は、前記火災検知手段が火災を検知していないときの前記所定のトルクである第1トルク制限値より小さい。
【0012】
また、本発明に係るエレベータは、前記乗客検知手段は、前記乗りかごに備えられた荷重検出手段であってもよい。
【0013】
また、本発明に係るエレベータは、前記乗客検知手段は、前記乗りかご内に備えられたカメラ装置であってもよい。
【0014】
また、本発明に係るエレベータは、前記乗客検知手段は、前記乗りかご内に備えられた人感センサであってもよい。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係るエレベータによれば、火災発生時に乗客を安全に乗りかご内から退避させることが可能なエレベータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の一実施形態であるエレベータの全体構成を示す図である。
【
図2】本発明の一実施形態である非接触式のドア挟まれ防止検知手段を図である。
【
図3】本発明の一実施形態であるエレベータのかごドア開閉装置の構成を示す図である。
【
図4】本発明の一実施形態であるエレベータの乗りかご内の構成を示す斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態であるエレベータの概略構成図である。
【
図6】本発明の一実施形態であるエレベータの動作を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態であるエレベータ1について、図面1~
図6を参照しながら説明する。なお、各図において、図面の寸法比と実際の寸法比とは、必ずしも一致しておらず、また、各図面の間での寸法比も、必ずしも一致していない。また、各図において、図中に示す「D1」はかご奥行方向である水平方向D1を示し、「D2」はかご間口方向を示す水平方向D2を示し、「D3」は水平方向D1,および水平方向D2に各々直交する上下方向D3を示すものとする。
【0018】
図1に示すように、エレベータ1は、昇降路X2の最上部に機械室X1を有するトラクション式エレベータである。機械室X1に設置された駆動部5の駆動シーブ6には、主ロープ4が掛けられており、この主ロープ4の一端部に乗りかご2が連結され、他端部に釣合錘3が連結されている。また、機械室X1には、エレベータ1の動作を制御する制御装置7が設けられている。
【0019】
駆動部5のモータ(図示せず)からの回転動力が、動力伝達機構(不図示)を介して駆動シーブ6に伝達され、駆動シーブ6が回転駆動されるとこれに伴って主ロープ4が走行し、主ロープ4に吊り下げられた乗りかご2が、ガイドレール(図示せず)に案内されて昇降路X2を上下方向D3に移動する。
【0020】
エレベータ1が設置された建物には、異なる階毎に乗場10A乃至10Cが設けられており、エレベータ1の運転中、乗りかご2は、現在、着床している階の乗場(
図1では、乗場10C)から、次の行先階の乗場(例えば、乗場10A)までの昇降移動を繰り返す。乗りかご2は、行先階の乗場に到着するとかごドア9及びかごドア9と係合した乗場ドア32を開き、乗客が乗降する。
【0021】
また、機械室X1には、火災検知手段8が設けられている。火災検知手段8は建物に火災が発生したことを検知して、直接的又は間接的に制御装置7へ火災が発生したことの信号を出力する。なお、火災検知手段8は、昇降路X2にあってもよく、また、エレベータ1が設置された建物の機械室X1及び昇降路X2以外の場所に設置されてもよい。
【0022】
なお、本実施形態に係るエレベータ1は、駆動部5及び制御装置7を機械室X1の内部に配置する、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、機械室X1が備えられておらず、エレベータ1は、駆動部5及び制御装置7を昇降路X2の内部に配置する、という構成でもよい。
【0023】
また、本実施形態においては、主ロープ4の一端部が乗りかご2に固定され、主ロープ4の他端部が釣合錘3に固定されている、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、主ロープ4の両端部がそれぞれ昇降路X2の上部に固定され、主ロープ4が乗りかご2のシーブ及び釣合錘3のシーブにそれぞれ巻き掛けられることによって、主ロープ4が乗りかご2及び釣合錘3にそれぞれ接続されている、という構成でもよい。
【0024】
また、本実施形態に係るエレベータ1は、ロープ式の駆動方式である、という構成であるが、斯かる構成に限られない。例えば、エレベータ1は、油圧式の駆動方式である、という構成でもよく、また、リニアモータ式の駆動方式である、という構成でもよい。
【0025】
図2は、かごドア9及びかごドア9の戸当り側先端に設けられた非接触式のドア挟まれ防止検知手段13を説明する図である。一対のかごドア9の上端には、かごドア9を開閉案内するための、かごドアハンガー14が設けられ、各かごドアハンガー14の上端には、一対のハンガーローラ15がそれぞれ設けられている。
【0026】
非接触式のドア挟まれ防止検知手段13は、一方のかごドア9の戸当り側先端に設けれた非接触式のドア挟まれ防止検知手段13の発光体から、他方のかごドア9の戸当り側先端に設けられた非接触式のドア挟まれ防止検知手段13の受光体へビームBが照射される。一対のかごドア9間に物体が存在した場合、発光体からのビームBの一部が遮光され、受光体でビームBを検知できなくなることから、一対のかごドア9間に物体が存在することを検知する。
図2においてドア挟まれ防止検知手段13は透過型の赤外線光電センサである。
【0027】
なお、非接触式のドア挟まれ防止検知手段13は反射型の赤外線光電センサであってもよい。また、
図2のドア挟まれ防止検知手段13はカーテン状にビームBを照射する所謂マルチビーム赤外線式ドアセンサであるが、かごドア9の低中の高さ2ヶ所あるいは3ヶ所の所定高さにビームBを照射する単光軸の赤外線光電センサであってもよい。
【0028】
図3は、かごドア開閉装置31を説明する図である。かごドア開閉装置31は、断面略L字状のフレーム16に各構成が取り付けられる。フレーム16は、水平方向D1に伸びた横フレーム16Aと、横フレーム16Aの一端から上下方向D3の下方に垂下した一辺からなる縦フレーム16Bからなり、横フレーム16A及び縦フレーム16Bに各構成が取り付けられる。横フレーム16Aには、かごドア駆動部18が設けられている。かごドア駆動部18は、水平方向D1に沿った方向に軸を有する図示しないモータを備え、当該モータの軸と同軸のかごドア駆動シーブ18Aを有する。
【0029】
縦フレーム16Bには、かごドアハンガー14のハンガーローラ15が転動して案内されるドアレール17が水平方向D2に沿って設けられている。また、縦フレーム16Bには、水平方向D1に沿った方向に軸を有し、かごドア駆動シーブ18Aとの間に掛け渡された減速ベルト20によって、かごドア駆動部18の駆動力を受けるかごドア駆動シーブ18Aより径が大きい減速シーブ19が設けられている。減速シーブ19と同軸に減速シーブ19より径が小さい可動シーブ19Aが設けられ、可動シーブ19Aと水平方向D2に離れて水平方向D1に沿った方向に軸を有する可動シーブ19Aと同一径の従動シーブ21が設けられている。可動シーブ19Aと従動シーブ21の間には、無端状のかごドア駆動ベルト22が掛け渡されている。
【0030】
可動シーブ19Aと従動シーブ21の間に掛け渡されたかごドア駆動ベルト22は、可動シーブ19Aと従動シーブ21より上側の上側ごドア駆動ベルト22Aと可動シーブ19Aと従動シーブ21より下側の下側ごドア駆動ベルト22Bとからなる。上側ごドア駆動ベルト22Aは、一方のかごドアハンガー14とブラケット24を介して接続され、下側ごドア駆動ベルト22Bは、他方のかごドアハンガー14とブラケット23を介して接続される。
【0031】
図3において、かごドア駆動部18のモータが時計周りに回転すると、上側ごドア駆動ベルト22Aが
図3右側に移動し、下側ごドア駆動ベルト22Bが
図3左側に移動してかごドア9が開く。また、かごドア駆動部18のモータが反時計周りに回転すると、上側ごドア駆動ベルト22Aが
図3左側に移動し、下側ごドア駆動ベルト22Bが
図3右側に移動してかごドア9が閉まる。
【0032】
図4は、エレベータ1の乗りかご2内の構成を示す斜視図である。乗りかご2は、天井2A、乗降口11を閉塞するかご扉9,9、かご扉9,9の左右の袖壁2B,2B、側壁2C及び床2Dからなる。また、一方の袖壁2Bには、かご行先階登録装置30が設けられている。エレベータ1の利用者が、かご行先階登録装置30を操作することにより、乗りかご2の行先階が決定される。
【0033】
なお、かごドア9の枚数は、特に限定されず、例えば、本実施形態のように、かごドア9は、2枚備えられていてもよい。また、各かごドア9の移動の方向は、特に限定されず、例えば、本実施形態のように、各かごドア9は、開閉時に反対方向に移動する、所謂、センターオープンタイプとしてもよく、また、例えば、開閉時に同じ方向に移動する、所謂、片側オープンタイプとしてもよい。
【0034】
天井2Aには、乗客検知手段12であるカメラ装置12Bと人感センサ12Cが設けられている。
【0035】
乗客検知手段12である荷重検出器12Aは床2Dの床下に設けられている。荷重検出器12Aは、ロードセル等既知のセンサであってもよい。また、荷重検出器12Aは、主ロープ4の乗りかご2との接続部で荷重を検出するものであってもよい。また、また、カメラ装置12Bは撮影した映像を既知の画像認識技術を使って、乗客の有無を判断してもよい。また、人感センサ12Cは、赤外線方式や超音波方式など既知の人感センサ方式を使用したものであってもよい。なお、乗客検知手段12は、荷重検出器12A、カメラ装置12B及び人感センサ12Cのうち、少なくとも1つ設けれていればよい。
【0036】
図5に示すように、エレベータ1が設置される建物には、当該建物の火災発生を検知する火災検知手段8を備えていてもよい。火災検知手段8は、特に限定されないが、公知の空気膨張による検知器、温度上昇による検知器、煙を検知する検知器、又は紫外線や赤外線を検知する検知器等とすることができる。
【0037】
ドアモーター電流検出手段25は、かごドア9を駆動する駆動モーター(不図示)にかかる電流値を検出する。ドアモーター電流検出手段25は、特に限定されないが、直接駆動モーターに流れる電流を計測する回路計であってもよく、電流による磁界を測定し、電流を計測するクランプメータであってもよい。
【0038】
制御装置7は、例えば、実施形態のように、各情報(データ)を取得する取得部26と、各情報を記憶する記憶部27と、各情報を演算する演算部28と、駆動部5及びかごドア駆動部18を制御する制御部29を備えていてもよい。
【0039】
エレベータ1は、戸閉時にかごドア9が乗客等を挟み込み、かごドア9を駆動するかごドア駆動部18にかかるトルクが所定のトルク(トルク制限値)以上となった場合、かごドア9を反転戸開する。記憶部27は、火災が発生していないときの所定のトルクである第1トルク制限値と、火災が発生しているときの第1トルク制限値よりも小さい、所定のトルクである第2トルク制限値を記憶していてもよい。
【0040】
なお、第1トルク制限値はかごドア9及びかごドア9と係合して開閉する乗場ドア32等ドア系の運動エネルギーが3.5Jより大きく10J以下となる値であることが好ましく、第2トルク制限値は該運動エネルギーが3.5J以下となる値であることが好ましい。
【0041】
制御部7は、例えば、一つの装置で構成されていてもよく、また、例えば、互いに通信可能な複数の装置で構成されていてもよい。具体的には、制御装置7の各部26、27、28、29は、例えば、一つの装置に備えられていてもよく、また、例えば、互いに通信可能な複数の装置に分散して備えられていてもよい。
【0042】
なお、制御装置7は、CPU及びMPU等のプロセッサ(例えば演算部28、制御部29)、ROM及びRAM等のメモリ(例えば、取得部26、記憶部27)、各種インターフェイス(例えば、取得部26)等を備えるコンピュータである。そして、メモリに格納されたプログラムをプロセッサが実行し、ソフトウエア及びハードウエアが協働することによって、制御装置7の各部26、27,28,29が実現されている。
【0043】
演算部28は、例えば、本実施形態のように、火災検知手段8からの信号に基づいて、火災であるか否かを判定する火災判定部28aと、乗客検知手段12からの信号に基づいて、乗りかご2内の乗客の有無を判定する乗客判定部28bと、非接触式のドア挟まれ防止検知手段13からの信号に基づいて、かごドア9に乗客や荷物等の挟まれ有無を判定するドア挟まれ判定部28cと、ドアモーター電流検出手段25からの電流値信号に基づいて、ドアの戸閉トルクを演算するドア戸閉トルク判定部28dとを備えていてもよい。
【0044】
火災判定部28aは、例えば、エレベータ1が設置された建物で火災が発生し、火災検知手段8が火災を検知したとき、火災検知手段8から発報された信号を取得部26で取得し、当該信号に基づいて、エレベータ1が設置された建物で火災が発生したと判定する。なお、エレベータ1が設置された建物で火災が発生したとの信号は、当該建物の防災センターを経由した信号であってもよく、また、消防署やエレベータの遠隔監視センターのような当該建物の外を経由した信号であってもよい。
【0045】
制御部29は、例えば、本実施形態のように、駆動部5を制御して、乗りかご2を昇降させる駆動制御部29bと、かごドア駆動部18を制御して、かごドア9を開閉させるかごドア駆動制御部29aとを備えていてもよい。
【0046】
駆動制御部29bは、火災判定部28aによりエレベータ1が設置された建物に火災が発生したと判定された場合、駆動部5を駆動して、避難階が設定されている場合は避難階へ乗りかご2を直行させ、設定されていない場合は最寄階に乗りかご2を直行させる。
【0047】
かごドア駆動制御部29aは、例えば、かごドア9を戸閉する際にドア挟まれ判定部28cで乗客がかごドア9に挟まれたと判定した場合、かごドア駆動部18を駆動して、かごドア9を反転戸開させる。また、例えば、かごドア9を戸閉する際にかごドア敷居(不図示)にゴミが詰まり戸閉不能な状況や、非接触式のドア挟まれ防止検知手段13が故障した状況で、非接触式のドア挟まれ防止検知手段13からの電流値信号によって演算されたドア戸閉トルクが所定のトルクを超えた場合、かごドア9が乗客を挟んでいるとドア挟まれ判定部28cが判定し、かごドア駆動制御部29aは、かごドア駆動部18を駆動して、かごドア9を反転戸開させる。
【0048】
本実施形態に係るエレベータ1の構成については以上の通りであり、次に、本実施形態に係るエレベータ1の火災発生時に乗客を安全に乗りかご内から退避させる方法について、
図5及び
図6を参照しながら説明する。
【0049】
図6に示すように、エレベータ1が設置された建物に火災が発生した場合、火災検知手段8からの信号に基づいて火災判定部28aが火災発生と判定する(S1のYES)。
【0050】
この場合、駆動制御部29bは、駆動部5を駆動して、避難階が設定されている場合は避難階へ乗りかご2を直行させ、設定されていない場合は最寄階に乗りかご2を直行させる(S2)。
【0051】
避難階又は最寄階へ乗りかご2が到着すると、かごドア駆動制御部29aは、かごドア駆動部18を駆動して、かごドア9を戸開させる(S3)。
【0052】
このとき、非接触式のドア挟まれ防止検知手段13が有効なままであると、火災による煙に非接触式のドア挟まれ防止検知手段13が反応して戸閉不可となるおそれがあるため、非接触式のドア挟まれ防止検知手段13は無効とされる(S4)。
【0053】
次に、乗客検知手段12により、乗りかご2内の乗客を検知した場合、乗客判定部28bは乗りかご2内に乗客がいると判定する(S5のYES)。一方、乗客検知手段12により、乗りかご2内の乗客が検知されない場合、乗客判定部28bは乗りかご2内に乗客がいないと判定する(S5のNO)。
【0054】
乗客判定部28が乗りかご2内に乗客がいると判定してから所定時間を経過したとき(S6のYES)、所定のトルクを第1トルク制限値から第2トルク制限値へ変更し(S7)、かごドア駆動制御部29aがかごドア駆動部18を駆動し、かごドア9を強制戸閉する(S8)。また、乗客判判定部28bが乗りかご2内に乗客がいないと判定したときも(S5のNO)、かごドア駆動制御部29aがかごドア駆動部18を駆動し、かごドア9を強制戸閉する(S8)。なお、所定時間は1分以下が好ましく、より好ましくは30秒以下である。また、強制戸閉には、避難階又は最寄階に到着後、乗客が乗りかご2から降りることを促すため、かごドア9の開閉を複数回繰り返し行うことを含む。
【0055】
その後、乗りかご2は、保守員により復旧されるまで避難階又は最寄階で照明を消灯して待機する(S9)。
【0056】
なお、火災発生時に乗客を安全に乗りかご2内から退避させる方法については、斯かる方法に限られない。S3の戸開は、S5で乗りかご2内に乗客がいる場合のみ行ってもよい。また、S4の非接触式のドア挟まれ防止検知手段13を無効とするのを、S6の乗客判判定部28が乗りかご2内に乗客がいると判定してから所定時間を経過した後としてもよい。
【0057】
また、S7の所定のトルクを第1トルク制限値から第2トルク制限値へ変更するのは、S1の火災を検知した後、且つ、S8の強制戸開までの間であれば、どのタイミグで変更されてもよいことは勿論である。
【0058】
以上より、本実施形態に係るエレベータ1は、エレベータ1が設置される建物内に設けられた火災発生を検知する火災検知手段8と、乗りかご2内の乗客の有無を検知する乗客検知手段12と、前記乗りかご2の昇降及びかごドア9の開閉を制御する制御装置7と、前記乗りかご2のかごドア9戸当り部に非接触式のドア挟まれ防止検知手段13のみを備えたエレベータ1であって、前記火災検知手段8が火災を検知したとき、前記制御装置7は、前記乗りかご2を最寄階又はあらかじめ設定された避難階に直行させて前記かごドア9を開放すると共に、前記非接触式のドア挟まれ防止検知手段13を無効にし、前記乗客検知手段12が前記乗りかご2内に乗客がいることを検知している間、前記かごドア9の開放を継続する。
【0059】
斯かる構成によれば、火災が発生し、エレベータ1の乗りかご2が避難階又は最寄階でかごドア9を戸開して乗客を退避させる際、乗客検知手段12が乗りかご2内に乗客がいることを検知している間、かごドア9の開放を継続するため、非接触式のドア挟まれ防止検知手段13を無効としても乗客がかごドア9に挟まれることがなく、ドアに挟まれた乗客に大きな力が加わり、不快に感じるという問題の発生を低減することができる。
【0060】
また、本実施形態のように、エレベータ1においては、前記制御装置7は、前記乗客検知手段12が前記乗りかご2内に乗客がいることを検知したときから所定時間経過したときは、前記かごドア9を強制戸閉し、
前記制御装置7は、前記かごドア9を戸閉するとき、前記かごドア9の戸閉に係るトルクを直接的又は間接的に検出し、
前記かごドア9が全閉するまでに検出した前記トルクが所定のトルクである第2トルク制限値以上になったとき、反転戸開を行い、
前記強制戸閉するときの前記第2トルク制限値は、前記火災検知手段8が火災を検知していないときの前記所定のトルクである第1トルク制限値より小さいという構成が好ましい。
【0061】
斯かる構成によれば、火災が発生し、乗りかご2が避難階又は最寄階でかごドア9を戸開して乗客を退避させる際、乗客検知手段12が乗りかご2内に乗客がいることを検知してから所定時間経過後、かごドア9を強制戸閉しても、かごドア9が乗客を挟み込み反転戸開するための所定のトルク(トルク制限値)が、火災が発生していないときの所定のトルクより小さいため、ドアに挟まれた乗客に大きな力が加わり、不快に感じるという問題の発生を低減することができる。
【0062】
また、本実施形態のように、エレベータ1においては、前記乗客検知手段12は、前記乗りかご2に備えられた荷重検出手段12Aである、という構成が好ましい。
【0063】
斯かる構成によれば、火災により煙が充満しているような場合であっても、確実に乗りかご2内に乗客がいることを検知することができる。
【0064】
また、本実施形態のように、エレベータ1においては、前記乗客検知手段12
は、前記乗りかご内に備えられたカメラ装置12Bである、という構成が好ましい。
【0065】
斯かる構成によれば、実際のかご内の状況を撮影し、画像認識により乗客の有無を判断するため、確実に乗りかご2内に乗客がいることを検知することができる。
【0066】
また、本実施形態のように、エレベータ1においては、前記乗客検知手段12は、前記乗りかご内に備えられた人感センサ12Cである、という構成が好ましい。
【0067】
斯かる構成によれば、火災により煙が充満しているような場合であっても、確実に乗りかご2内に乗客がいることを検知することができる。
【0068】
なお、本発明に係るエレベータ1は、上記した実施形態の構成に限定されるものではなく、また、上記した作用効果に限定されるものではない。また、エレベータ1は、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【0069】
(1)上記実施形態に係るエレベータ1は、
図2に示すように非接触式のドア挟まれ防止検知手段13を所謂マルチビーム赤外線式ドアセンサとして説明したが、1台又は2台以上の単光軸の赤外線式ドアセンサであっても同様の効果を得ることができることは勿論である。
【0070】
(2)また、上記実施形態に係るエレベータ1は、機械室付エレベータとして説明したが、機械室無しエレベータであっても同様の効果を得ることができることは勿論である。
【0071】
(3)また、上記実施形態に係るエレベータ1のカメラ装置12B及び人感センサ12Cは、天井2Aに設けられている。しかしながら、カメラ装置12B及び人感センサ12Cは、袖壁12Bや側壁12Cに設けられてもよい。
【符号の説明】
【0072】
1 エレベータ
2 乗りかご
2A 天井
2B 袖壁
2C 側壁
2D 床
3 釣合錘
4 主ロープ
5 駆動部
6 駆動シーブ
7 制御装置
8 火災検知手段
9 かごドア
10 乗場
11 乗降口
12 乗客検知手段
12A 荷重検出器
12B カメラ装置
12C 人感センサ
13 非接触式のドア挟まれ防止検知手段
14 かごドアハンガー
15 ハンガーローラ
16 フレーム
16A 横フレーム
16B 縦フレーム
17 ドアレール
18 かごドア駆動部
18A かごドア駆動シーブ
19 減速シーブ
19A 可動シーブ
20 減速ベルト
21 従動シーブ
22 かごドア駆動ベルト
22A 上側かごドア駆動ベルト
22B 下側かごドア駆動ベルト
23,24 ブラケット
25 ドアモーター電流検出手段
26 取得部
27 記憶部
28 演算部
28a 火災判定部
28b 乗客判定部
28c ドア挟まれ判定部
28d ドア戸閉トルク判定部
29 制御部
29a かごドア駆動制御部
29b 駆動制御部
30 かご行先階登録装置
31 かごドア開閉装置
32 乗場ドア
X1 機械室
X2 昇降路
B ビーム
【要約】
【課題】火災発生時に乗客を安全に乗りかご内から退避させることが可能なエレベータを提供すること。
【解決手段】エレベータは、エレベータが設置される建物内に設けられた火災発生を検知する火災検知手段と、前記エレベータの乗りかご内の乗客の有無を検知する乗客検知手段と、前記乗りかごの昇降及びかごドアの開閉を制御する制御装置と、前記乗りかごのかごドア戸当り部に非接触式のドア挟まれ防止検知手段のみを備えたエレベータであって、前記火災検知手段が火災を検知したとき、前記制御装置は、前記乗りかごを最寄階又はあらかじめ設定された避難階に直行させて前記かごドアを開放すると共に、前記非接触式のドア挟まれ防止検知手段を無効にし、前記乗客検知手段が前記乗りかご内に乗客がいることを検知している間、前記かごドアの開放を継続する。
【選択図】
図5