(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】車両のフード構造
(51)【国際特許分類】
B62D 25/12 20060101AFI20230511BHJP
B62D 25/10 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B62D25/12 A
B62D25/10 D
(21)【出願番号】P 2022500276
(86)(22)【出願日】2021-01-15
(86)【国際出願番号】 JP2021001169
(87)【国際公開番号】W WO2021161713
(87)【国際公開日】2021-08-19
【審査請求日】2022-03-07
(31)【優先権主張番号】P 2020021317
(32)【優先日】2020-02-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100177460
【氏名又は名称】山崎 智子
(72)【発明者】
【氏名】片山 智行
【審査官】林 政道
(56)【参考文献】
【文献】実開平02-044576(JP,U)
【文献】中国実用新案第2841462(CN,Y)
【文献】特開2012-116421(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第105667601(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B62D 25/10-25/13
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両のフードの内面を構成するインナパネルと、
前記フードを開閉可能なように前記インナパネルの側部の後端部に設けられたヒンジ取付部に取り付けられるヒンジ部と、
前記インナパネルの前記ヒンジ部が取り付けられる面と逆側の面に取り付けられ、前記インナパネルのヒンジ取付部の周辺を補強するヒンジリンフォースと、
を備え、
前記インナパネルの、前記ヒンジ取付部より車両前後方向の後側に、車両幅方向に延在する段差部が設けられ、
前記ヒンジリンフォースは、前記インナパネルの側部に沿って車両前後方向に前記段差部まで延在する第1の補強部と、前記第1の補強部の後端から前記段差部を越えて前記インナパネルの側部の後端まで延在する第2の補強部とを有し、
前記第2の補強部には、前記第2の補強部と前記インナパネルとが接合される接合部より前側に、前記車両幅方向全体に亘って延びるビード部が形成され、
前記ビード部は、前記インナパネルとの間に上方に凸となる空間が設けられた断面形状を有していることを特徴とする車両のフード構造。
【請求項8】
前記インナパネルと前記第3の補強部とが接合される接合部は、前記段差部の近傍に設けられていることを特徴とする請求項6または7に記載の車両のフード構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、車両のフード構造に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジンルームなどを覆う車両のフードは、ヒンジ部を介し車体に支持されており、エンジンルームを開閉する。
こうしたフードはその外面を構成するアウタパネルとその内面を構成するインネパネルとを有し、アウタパネルの外周縁部と、インネパネルの外周縁部とを接合した構造が用いられる。そして、インナパネルの後端の両側に、ヒンジ部を構成するヒンジ部材を取り付けて、フードを車体との間で開閉可能としている。
【0003】
ここで、ヒンジ部材が取り付けられるインナパネルのヒンジ取付部には、フードの開閉時に応力が集中するため、応力負荷の蓄積によって変形が生じるおそれがある。
そこで、特許文献1では、インナパネルの外面に同パネルの側部から中央部に向かって延びるヒンジリンフォースを取り付けるとともに、車両前後方向に延びる稜線に沿って同ヒンジリンフォースにビードを形成することにより、インナパネルの中央側に上記応力を分散させて変形を抑える技術が提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般的に、インナパネルの中央部は歩行者保護等の観点から剛性が低く設定されているため、上下方向の応力を受けて撓み易く、応力負荷に伴う変形が生じ易い。従って、特許文献1に記載の車両のフード構造では、ヒンジ取付部に変形が生じなくとも、応力を分散させたインナパネルの中央部側において変形が生じてしまう可能性がある。
そこで、本開示の目的は、フードの開閉時の応力負荷に伴うインナパネルの変形を抑えることができる車両のフード構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の第1の態様は、車両のフードの内面を構成するインナパネルと、前記フードを開閉可能なように前記インナパネル側部の後端部に設けられたヒンジ取付部に取り付けられるヒンジ部と、前記インナパネルの前記ヒンジ部が取り付けられる面と逆側の面に取り付けられ、前記インナパネルのヒンジ取付部の周辺を補強するヒンジリンフォースと、を備え、前記インナパネルの、前記ヒンジ取付部より車両前後方向の後側に、車両幅方向に延在する段差部が設けられ、前記ヒンジリンフォースは、前記インナパネルの側部に沿って車両前後方向に前記段差部まで延在する第1の補強部と、前記第1の補強部の後端から前記段差部を越えて前記インナパネルの側部の後端まで延在する第2の補強部とを有するものとした。
【0007】
第1の態様により、フードの開閉時、ヒンジリンフォースの第1の補強部と第2の補強部を介して、ヒンジ取付部に集中する応力は、段差部によって剛性が高められたインナパネルの側部の後端へと分散される。これにより、集中する応力に伴うインナパネルの変形は抑えられる。
本開示の第2の態様においては、前記ヒンジ部と前記インナパネルとを固定する固定部は、前記段差部の近傍に設けられるものとした。
【0008】
第2の態様により、固定部への応力負荷に伴うインナパネルの変形がより抑制される。
本開示の第3の態様においては、前記第2の補強部の、前記第2の補強部と前記インナパネルとが接合される接合部より前側に、車両幅方向に延びるビード部が形成されるものとした。
第3の態様により、第2の補強部とインナパネルとが接合される接合部に分散された応力は、ビード部によっていなされる。これにより、分散された応力の負荷によって生じるインナパネル側部の変形は抑制される。
【0009】
本開示の第4の態様においては、前記ビード部は、前記段差部の稜線に沿って形成されるものとした。
第4の態様により、ビード部の形成は、平面部に形成する場合と比較して、より容易に成形が行える。
本開示の第5の態様においては、前記固定部の車両幅方向両側には、前記インナパネルと前記第1の補強部とが接合される接合部が設けられるものとした。
【0010】
第5の態様により、固定部に負荷される応力は、その両側の接合部に分散される。これにより、固定部の応力集中に伴うインナパネルの変形はより抑制される。
本開示の第6の態様においては、前記ヒンジリンフォースは、前記第1の補強部の車両幅方向の側端から車両幅方向の中央側に向かって突出しつつ、車両前後方向に沿って延在して設けられた第3の補強部をさらに有するものとした。
【0011】
第6の態様により、インナパネルの側部中央側でも応力は負荷される。これにより、より広範囲に応力は分散され、インナパネルの変形がより抑制される。
本開示の第7の態様においては、前記第1の補強部と前記第3の補強部との境界部には、車両前後方向に延在するビード部が形成されるものとした。
第7の態様により、ビード部によってインナパネルの側部中央側の剛性が高められる。これにより、インナパネルの側部中央側に分散された応力負荷に伴うインナパネルの変形は抑制される。
【0012】
本開示の第8の態様においては、前記インナパネルと前記第3の補強部とが接合される接合部は、前記段差部の近傍に設けられるものとした。
第8の態様により、インナパネルと第3の補強部とが接合される接合部は、剛性の高いダンサ部近傍に設けられる。これにより、インナパネルと第3の補強部との接合部への応力負荷に伴う変形は抑制される。
【0013】
第1の態様は、ヒンジ取付部より後側に車両幅方向に延在する段差部が設けられるとともに、ヒンジリンフォースはインナパネルの側部に沿って車両前後方向に段差部まで延在する第1の補強部と第1の補強部の後端から段差部を越えてインナパネル側部の後端まで延在する第2の補強部とを有したので、ヒンジ取付部に集中する応力は、ヒンジリンフォースの第1の補強部と第2の補強部を介して、段差部によって剛性が高められたインナパネルの側部の後端へと分散できる。
【0014】
従って、フード開閉時の応力負荷に伴うインナパネルの変形を防止することができる。
第2の態様では、前記ヒンジ部と前記インナパネルとの固定部は、前記段差部近傍に設けられることにより、固定部への応力負荷に伴うインナパネルの変形をより抑制することができる。
第3の態様では、前記第2の補強部には、前記第2の補強部と前記インナパネルとが接合される接合部より前側に車両幅方向に延びるビード部が形成されることにより、第2の補強部とインナパネルとが接合される接合部に分散された応力を、ビード部によって抑制することができ、分散された応力の負荷によって生じるインナパネル側部の変形を抑制することができる。
【0015】
第4の態様では、前記ビード部を、前記段差部の稜線に沿って形成したことにより、ビード部を形成する際、平面部に形成する場合と比較して、より容易に成形を行うことができる。
第5の態様では、前記固定部の車両幅方向両側に、前記インナパネルと前記第1の補強部とが接合される接合部を設けることにより、固定部に負荷される応力を、その両側の接合部に分散させることができ、固定部の応力集中に伴うインナパネルの変形をより抑制することができる。
【0016】
第6の態様では、前記ヒンジリンフォースは、前記第1の補強部の車両幅方向側端から車両幅方向中央側に車両前後方向に沿って延在して設けられた第3の補強部をさらに有したので、インナパネルの側部中央側でも応力を負荷させることができ、より広範囲に応力を分散させて、インナパネルの変形をより抑制することができる。
第7の態様では、前記第1の補強部と前記第3の補強部との境界部に、車両前後方向に延在するビード部を形成することにより、ビード部によってインナパネルの側部中央側の剛性を高めることができ、インナパネルの側部中央側に分散された応力負荷に伴うインナパネルの変形を抑制することができる。
【0017】
第8の態様では、前記インナパネルと前記第3の補強部とが接合される接合部が、剛性の高い段差部近傍に設けられることにより、インナパネルと第3の補強部との接合部への応力負荷に伴う変形を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本開示の一実施形態に係る態様となる車両のエンジンフードをその表側から見た斜視図。
【
図2】エンジンフードをその裏面側から見た斜視図。
【
図3】(a)はインナパネルのヒンジ取付部に取り付いたヒンジリンフォースの全体を示す斜視図、(b)は(a)中の段差部及び第2の補強部の断面を示す側断面図。
【
図4】ヒンジ取付部や、ヒンジリンフォースの第1,2の補強部や、段差部の各部を示す分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示を
図1から
図4に示す一実施形態にもとづいて説明する。
図1~
図4は、例えば車両のエンジンルームを覆うエンジンフード1(本願のフードに相当)の構造を示している。
図1はエンジンフード1の表側を示し、
図2(a)はエンジンフード1の裏側を示し、
図3(a)はエンジンフード1の裏側に取り付けられたヒンジ部材11(本願のヒンジ部に相当)を示し、
図4は同ヒンジ部材11の取付構造を示している。
【0020】
エンジンフード1は、表側の外面をなす角形のアウタパネル3の外周縁部と、裏側の内面をなす角形のインナパネル5の外周縁部同士を接合して構成される。エンジンフード1は、その中央のアウタパネル部分やインナパネル部分を上下方向にたわみやすくしたパネル構造から構成される(歩行者保護のため)。つまり、エンジンフード1は、外周側で剛性が高く、中央側で剛性が低い。
【0021】
このインナパネル5の車両幅方向両側部の後端側には、
図2(b)、
図3および
図4に示されるようにヒンジ部材11が取り付けられるヒンジ取付部7が形成されている。ヒンジ取付部7は、いずれも一点鎖線で囲まれるようにインナパネル5のパネル部分、具体的には一点鎖線のようにインナパネル5の側部に沿って車両前後方向に延在する角形の領域により形成される。インナパネル5におけるこれらヒンジ取付部7の表面及び裏面はとも、平坦面である。
【0022】
そして、ヒンジ取付面をなすヒンジ取付部7の表面にヒンジ部材11が取り付けられる。ヒンジ部材11が取り付けられる面とは逆側の面となるヒンジ取付部7の裏面に、ヒンジ取付部7の周辺を補強するヒンジリンフォース9が取り付けられる。
ここで、ヒンジ部材11は、例えば
図2(b)に示されるように、ヒンジ取付部7に配置される座面部11aと、座面部11aから車両後方へ延びるバー部11bと、車体(図示しない)に固定可能な固定座11cと、バー部11bの延出端部と固定座11cとの間を回動可能に連結する可動部11dとを有して構成される。つまり、エンジンフード1は、エンジンルーム(車体)の両側にヒンジ部材11の固定座11cをボルト止めすることにより、車体に開閉自在に組み付けられる構造となっている。
【0023】
また、インナパネル5におけるヒンジ取付部7より後側に位置する部分(例えばヒンジ取付部7の車両後端側の近傍に位置する部分)には、車両幅方向に延在する段差部15が形成されている。
すなわち、
図3および
図4に示されるように段差部15は、インナパネル5の裏面側に対して段差する階段状部、例えば裏面側へ突出するように段差する階段部分(一段)から形成される。そして、この階段部分がヒンジ取付部7の車両後端側の近傍から車両幅方向の内側に沿って延在している。これにより、ヒンジ取付部7の後側に、剛性の高められた部分を形成している。
【0024】
一方、ヒンジリンフォース9は、ヒンジ取付部7の裏面に配置される第1の補強部17と、第1の補強部17の後端から車両前後方向の後方へ延在する第2の補強部25とを有している。
第1の補強部17は、インナパネル5の側部に沿って車両前後方向に段差部15まで延在する。第1の補強部17は、例えば角形のパネル部分19から構成される。このヒンジ取付部7の裏面に配置されたパネル部分19が、パネル部分19の幅方向の中央で複数個所、例えば車両前後方向に二個所においてインナパネル5にボルト止めされたり、複数個所でインナパネル5に接合されたりしている。
【0025】
具体的には、
図3(a)および
図4に示されるように、パネル部分19におけるボルト止めは、ボルト部材(図示しない)が、ヒンジ部材11の座面部11aに設けた固定孔11eから、インナパネル5を介してパネル部分19に設けた通孔31へ挿入して、ナット33にねじ込むことにより、共締めされている。
ボルト部材で固定される部分が、本願のヒンジ部材11とインナパネル5とを固定する固定部35を形成する。そして、複数の固定部35のうち車両後方側に位置する固定部35が、段差部15近傍に設けられる。
【0026】
またパネル部分19とインナパネル5との接合では、各固定部35の車両幅方向の両側とインナパネル5とが接合され、例えば固定部35を取り囲むようスポット溶接で複数個所を溶接することによって接合されている。
図4中の「X1」は、固定部35の両側のスポット溶接位置を示している。
第2の補強部25は、パネル部分19(第1の補強部17)の後端から、段差部15を越えてインナパネル5の側部の後端まで延在するパネル部分21を有する。
【0027】
このパネル部分21の後端部とインナパネル5とが接合、例えばスポット溶接により接合されている。このスポット溶接される部分が、本願の第2の補強部25とインナパネル5とが接合される接合部29を形成する。
第2の補強部25には、
図3(a),(b)および
図4に示されるように接合部29より前側に、車両幅方向に延びるビード部27が形成されている。
【0028】
このビード部27は、段差部15の稜線15aに沿って形成される。例えばビード部27は、パネル部分21における接合部29の前側の部分を断面ハット形に折り曲げた、アウタパネル3に向かって凸となるビードで形成される。ビード部27の段差高は、ヒンジリンフォース9を固定するボルト部材の突出量より抑えてあり、エンジンフード1の歩行者保護性が損なわれることはない。
【0029】
ヒンジリンフォース9は、さらに
図3(a)および
図4に示されるように第3の補強部41を有している。
第3の補強部41は、第1の補強部17の車両幅方向の側端から車両幅方向中央側に延設したフランジ部43から構成される。フランジ部43は、第1の補強部17の側端における、第2の補強部25の近傍から車両の前方へ車両前後方向に沿って延在している。
【0030】
このフランジ部43はその延在方向の複数個所で、例えばスポット溶接によりインナパネル5に溶接される。
図3中の符号45はその接合部となる溶接部を示し、
図4中の「X3」は、そのスポット溶接位置を示している。
フランジ部43の後端側のスポット溶接位置X3は、インナパネル5の後端側に配置される段差部15の縦壁部分15bと近接する位置に定められ、インナパネル5と第3の補強部41とが接合される接合部45を段差部15の近傍に設けている。
【0031】
また第1の補強部17と第3の補強部41との境界部にはビード部、例えば凸状の曲成部分で形成されたビード部47が設けられている。
つぎに、作用効果を説明する。
車両のフード開閉時の負荷や、車両の悪路走行の負荷などにより、ヒンジ部材11を介して、インナパネル5のヒンジ取付部7に応力が加わったとする。
【0032】
ヒンジ取付部7に加わった応力は、ヒンジ取付部7を補強するヒンジリンフォース9の第1の補強部17や第2の補強部25を介して、ヒンジ取付部7の後端近傍に配置されている段差部15や第3の補強部41へ伝わる。
このとき、第1の補強部17に加わる応力は、第1の補強部17の固定部35や接合部37を介して、インナパネル5へ分散されたり、第2の補強部25のビード部27や、段差部15を伝わりエンジンフード1の後端側の領域(剛性の高い領域)へ分散されたり、第2の補強部25の接合部29を伝わり、エンジンフード1の後端側の領域(剛性の高い領域)へ分散される。ビード部27及び段差部15は、インナパネル5の中央部分と比べて剛性が高い。
【0033】
第3の補強部41に加わる応力は、フランジ部43を介して、インナパネル5の車両幅方向中央側へ伝わり分散される。
従って、ヒンジ取付部7より後側に車両幅方向に延在する段差部15が設けられ、ヒンジリンフォース9がインナパネル5の側部に沿って車両前後方向に段差部15まで延在する第1の補強部17と第1の補強部17の後端から段差部15を越えてインナパネル側部の後端まで延在する第2の補強部25とを有することにより、エンジンフード1の開閉時、ヒンジリンフォース9の第1の補強部17と第2の補強部25を介して、ヒンジ取付部7に集中する応力を、段差部15によって剛性が高められたインナパネル5の側部の後端へと分散させることができる。
【0034】
よって、集中する応力に伴うインナパネル5の変形を抑えることができ、フード開閉時の応力負荷に伴うインナパネルの変形を防止することができる。
しかも、ヒンジ部材11とインナパネル5との固定部35は、段差部15の近傍に設けられたので、固定部35への応力負荷に伴うインナパネル5の変形をより抑制することができる。
【0035】
そのうえ、第2の補強部25には、第2の補強部25とインナパネル5とが接合される接合部29より前側に、車両幅方向に延びるビード部27が形成されたので、第2の補強部25とインナパネル5とが接合される接合部29に分散された応力は、ビード部27によって抑制することができ、分散された応力の負荷によって生じるインナパネル5の側部の変形を抑制することができる。
【0036】
特にビード部27は、段差部15の稜線15aに沿って形成されたので、ビード部27を形成する際、平面部に形成する場合と比較して、より容易に成形を行うことができる。
また固定部35の車両幅方向の両側には、インナパネル5と第1の補強部17とが接合される接合部37が設けられたので、固定部35に負荷される応力は、その両側の接合部37に分散させることができ、固定部35の応力集中に伴うインナパネル5の変形をより抑制することができる。
【0037】
さらにヒンジリンフォース9は、第1の補強部17の車両幅方向の側端から車両幅方向の中央側に向かって所定長さだけ突出しつつ、車両前後方向に沿って延在して設けられた第3の補強部41をさらに有するので、インナパネル5の側部中央側にも応力を負荷することができ、より広範囲に応力を分散させて、インナパネル5の変形をより抑制することができる。
しかも、第1の補強部17と第3の補強部41との境界部には、車両前後方向に延在するビード部47が形成されたので、ビード部47によってインナパネル5の側部中央側の剛性を高めることができ、インナパネル5の側部中央側に分散された応力負荷に伴うインナパネル5の変形を抑制することができる。
【0038】
加えて、インナパネル5と第3の補強部41とが接合される溶接部45(接合部)が、剛性の高い段差部15の近傍に設けられることにより、インナパネル5と第3の補強部41との溶接部45(接合部)への応力負荷に伴う変形を抑制することができる。
なお、本開示は、上述した一実施形態に限定されるものではなく、本開示の主旨を逸脱しない範囲内で種々可変して実施しても構わない。
【0039】
本出願は、2020年2月12日に出願された日本特許出願(特願2020-021317)に基づくものであり、ここに参照として取り込まれる。
【産業上の利用可能性】
【0040】
本開示によれば、車両のフード開閉時の応力負荷に伴うインナパネルの変形を防止することができるため有用である。
【符号の説明】
【0041】
1 エンジンフード(フード)
3 アウタパネル
5 インナパネル
7 ヒンジ取付部
9 ヒンジリンフォース
11 ヒンジ部材(ヒンジ部)
15 段差部
17 第1の補強部
25 第2の補強部
27 ビード部
29,37,45 接合部
35 固定部
41 第3の補強部