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特許7276600ブロック共重合体およびその製造方法、高分子電解質材料、高分子電解質成型体、高分子電解質膜、触媒層付電解質膜、膜電極複合体、固体高分子型燃料電池ならびに水電解式水素発生装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ブロック共重合体およびその製造方法、高分子電解質材料、高分子電解質成型体、高分子電解質膜、触媒層付電解質膜、膜電極複合体、固体高分子型燃料電池ならびに水電解式水素発生装置
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/00 20060101AFI20230511BHJP
   C08G 65/40 20060101ALI20230511BHJP
   C08J 5/22 20060101ALI20230511BHJP
   C25B 1/04 20210101ALI20230511BHJP
   C25B 9/00 20210101ALI20230511BHJP
   C25B 9/23 20210101ALI20230511BHJP
   C25B 13/08 20060101ALI20230511BHJP
   H01B 1/06 20060101ALI20230511BHJP
   H01M 8/10 20160101ALI20230511BHJP
   H01M 8/1018 20160101ALI20230511BHJP
   H01M 8/1025 20160101ALI20230511BHJP
【FI】
C08G81/00
C08G65/40
C08J5/22 CEZ
C25B1/04
C25B9/00 A
C25B9/23
C25B13/08 301
H01B1/06 A
H01M8/10 101
H01M8/1018
H01M8/1025
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2022515038
(86)(22)【出願日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 JP2022008261
(87)【国際公開番号】W WO2022202123
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2022-06-14
(31)【優先権主張番号】P 2021048314
(32)【優先日】2021-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2021149191
(32)【優先日】2021-09-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003159
【氏名又は名称】東レ株式会社
(72)【発明者】
【氏名】村上 和歩
(72)【発明者】
【氏名】松井 一直
(72)【発明者】
【氏名】田中 毅
(72)【発明者】
【氏名】出原 大輔
【審査官】岡部 佐知子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/027724(WO,A1)
【文献】国際公開第2013/031675(WO,A1)
【文献】特開2012-017351(JP,A)
【文献】特開2015-122308(JP,A)
【文献】特開2020-021579(JP,A)
【文献】特開2018-110108(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 81/00
C08G 65/40
C08J 5/22
C25B 1/04
C25B 9/00
C25B 9/23
C25B 13/08
H01B 1/06
H01M 8/10
H01M 8/1018
H01M 8/1025
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イオン性基を含有するセグメント(以下「イオン性セグメント」という)と、イオン性基を含有しないセグメント(以下「非イオン性セグメント」という)と、をそれぞれ一個以上有するブロック共重合体であって、前記イオン性セグメントおよび前記非イオン性セグメントが芳香族ポリエーテル系重合体を含み、前記イオン性セグメントおよび前記非イオン性セグメントの少なくとも一方が、芳香族ポリエーテル系重合体からなる構成単位(以下「構成単位」という)と、前記構成単位間を連結する第1のリンカーと、を有し、前記イオン性セグメントと前記非イオン性セグメントとを交互に有するブロック共重合体。
【請求項2】
前記イオン性セグメントが、前記構成単位と、前記構成単位間を連結する第1のリンカーと、を有する請求項1に記載のブロック共重合体。
【請求項3】
前記第1のリンカーが下記一般式(M1)~(M8)のいずれかで表される請求項1または2に記載のブロック共重合体。
【化1】
(一般式(M1)~(M4)中、W~Zは、それぞれ独立に、H、NO、CN、CF、F、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる基を表し、r1~r4は、それぞれ独立に1~4の整数を表し、一般式(M6)中、Rは任意の有機基を表し、一般式(M7)中、Arは任意のアリーレン基を表し、一般式(M8)中、Eは酸素原子または硫黄原子を表す。一般式(M1)~(M8)は、電子求引性基でさらに置換されていても良い。*は一般式(M1)~(M8)と構成単位との結合部位を表す。)
【請求項4】
前記ブロック共重合体が、前記イオン性セグメントと前記非イオン性セグメントとの間を連結する第2のリンカー部位を有する請求項1~のいずれかに記載のブロック共重合体。
【請求項5】
前記イオン性セグメントが、芳香族ポリエーテル構造を含む請求項1~のいずれかに記載のブロック共重合体。
【請求項6】
前記イオン性セグメントが、芳香族ポリエーテルケトン構造を含む請求項に記載のブロック共重合体。
【請求項7】
前記イオン性セグメントが下記一般式(S1)で表される構造を含有する請求項1~のいずれかに記載のブロック共重合体。
【化2】
(一般式(S1)中、Ar~Arは、それぞれ独立に、置換または無置換のアリーレン基を表し、Ar~Arのうち少なくとも1つはイオン性基を有する。YおよびYは、それぞれ独立に、ケトン基またはケトン基に誘導され得る保護基を表す。*は、一般式(S1)または他の構造との結合を表す。)
【請求項8】
前記一般式(S1)で表される構造が下記一般式(S2)で表される構造である請求項に記載のブロック共重合体。
【化3】
(一般式(S2)中、YおよびYは、それぞれ独立に、ケトン基またはケトン基に誘導され得る保護基を表す。M~Mは、それぞれ独立に、水素原子、金属カチオンまたはアンモニウムカチオンを表す。n~nは、それぞれ独立に、0または1であり、n~nのうち少なくとも1つは1である。*は、一般式(S2)または他の構造との結合を表す。)
【請求項9】
前記非イオン性セグメントが芳香族ポリエーテル構造を含む請求項1~のいずれかに記載のブロック共重合体。
【請求項10】
前記非イオン性セグメントが、芳香族ポリエーテルケトン構造を含む請求項に記載のブロック共重合体。
【請求項11】
前記非イオン性セグメントが下記一般式(S3)で表される構造を含有する請求項1~10のいずれかに記載のブロック共重合体。
【化4】
(一般式(S3)中、Ar~Arは、それぞれ独立に、アリーレン基を表す。ただしAr~Arはいずれもイオン性基を有さない。YおよびYは、それぞれ独立に、ケトン基またはケトン基に誘導され得る保護基を表す。*は、一般式(S3)または他の構造との結合を表す。)
【請求項12】
前記一般式(S3)で表される構造が下記一般式(S4)で表される構造である、請求項11に記載のブロック重合体。
【化5】
(一般式(S4)中、YおよびYは、それぞれ独立に、ケトン基またはケトン基に誘導され得る保護基を表す。*は、一般式(S4)または他の構造との結合を表す。)
【請求項13】
共連続相分離構造を有する、請求項1~12のいずれかに記載のブロック共重合体。
【請求項14】
請求項1~13のいずれかに記載のブロック共重合体の製造方法であって、前記構成単位を与える化合物と、前記第1のリンカーを与える化合物とを反応させる工程(1)を少なくとも含むブロック共重合体の製造方法。
【請求項15】
前記工程(1)の後に、前記工程(1)で得た化合物と、もう一方のセグメントを与える化合物とを反応させる工程(2)を含む請求項14に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項16】
前記工程(2)の前に、イオン性セグメントを与える化合物および非イオン性セグメントを与える化合物のいずれか一方の化合物と、第2のリンカーを与える化合物とを反応させて、前記いずれか一方の化合物の両末端に第2のリンカーを導入する工程(1’)を含む請求項15に記載のブロック共重合体の製造方法。
【請求項17】
前記第1のリンカーおよび第2のリンカーを与える化合物が、下記一般式(N1)~(N8)のいずれかで表される請求項1416のいずれかに記載のブロック共重合体の製造方法。
【化6】
(一般式(N1)~(N8)中、Vは、ClまたはFを表す。一般式(N1)~(N4)中、W~Zは、それぞれ独立に、H、NO、CN、CF、F、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる基を表し、r1~r4は、それぞれ独立に1~4の整数を表し、一般式(N6)中、Rは任意の有機基を表し、一般式(N7)中、Arは任意のアリーレン基を表し、一般式(N8)中、Eは酸素原子または硫黄原子を表す。一般式(N1)~(N8)は、電子求引性基でさらに置換されていても良い。)
【請求項18】
請求項1~13のいずれかに記載のブロック共重合体を含む高分子電解質材料。
【請求項19】
請求項18に記載の高分子電解質材料を含む高分子電解質成型体。
【請求項20】
請求項18に記載の高分子電解質材料を用いてなる高分子電解質膜。
【請求項21】
請求項18に記載の高分子電解質材料を用いて構成される触媒層付電解質膜。
【請求項22】
請求項18に記載の高分子電解質材料を用いて構成される膜電極複合体。
【請求項23】
請求項18に記載の高分子電解質材料を用いて構成される固体高分子燃料電池。
【請求項24】
請求項18に記載の高分子電解質材料を用いて構成される水電解式水素発生装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ブロック共重合体およびその製造方法、ブロック共重合体を用い高分子電解質材料、高分子電解質成型体、高分子電解質膜、触媒層付電解質膜、膜電極複合体、固体高分子型燃料電池ならびに水電解式水素発生装置に関する。
【背景技術】
【0002】
燃料電池は、水素、メタノールなどの燃料を電気化学的に酸化することによって電気エネルギーを取り出す一種の発電装置であり、近年、クリーンなエネルギー供給源として注目されている。なかでも固体高分子形燃料電池は、標準的な作動温度が100℃前後と低く、かつ、エネルギー密度が高いことから、比較的小規模の分散型発電施設、自動車や船舶など移動体の発電装置として幅広い応用が期待されている。また、固体高分子形燃料電池は、小型移動機器や携帯機器の電源としても注目されており、携帯電話やパソコンにおける、ニッケル水素電池やリチウムイオン電池などの二次電池の代替用途としても期待されている。
【0003】
燃料電池は、通常、膜電極複合体(Membrane Electrode Assembly:MEA)がセパレータによって挟まれたセルをユニットとして構成されている。MEAは、電解質膜の両面に触媒層を配置し、その両側にさらにガス拡散層を配置したものである。MEAにおいては、電解質膜を挟んで両側に配置された触媒層とガス拡散層とで一対の電極層が構成され、そのうちの一方がアノード電極であり、他方がカソード電極である。アノード電極に水素を含む燃料ガスが接触するとともに、カソード電極に空気が接触することにより電気化学反応によって電力が作り出される。電解質膜は高分子電解質材料を主として構成される。高分子電解質材料は触媒層のバインダーにも用いられる。
【0004】
従来、高分子電解質材料としてフッ素系高分子電解質である“ナフィオン”(登録商標)(ケマーズ(株)製)が広く用いられてきた。一方で、“ナフィオン”(登録商標)に替わり得る、安価で、膜特性に優れた炭化水素系電解質材料の開発も近年活発化している。炭化水素系電解質材料は、低ガス透過性や耐熱性に優れており、芳香族ポリエーテルケトンや芳香族ポリエーテルスルホンを用いた電解質材料について特に活発に検討されてきた。
【0005】
中でも、低加湿条件下においても優れたプロトン伝導性を有し、かつ機械強度および化学的安定性に優れた炭化水素系高分子電解質材料として、イオン性基を含有するセグメント(以下、「イオン性基を含有する」を「イオン性」という)とイオン性基を含有しないセグメント(以下、「イオン性基を含有しない」を「非イオン性」という)が、リンカーによって連結されたブロック共重合体が提案されている(例えば、特許文献1~2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2013/002274号
【文献】特開2011-181278号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1~2に記載のブロック共重合体を用いてもなお、低加湿条件下におけるプロトン伝導性、機械強度および化学的安定性の向上効果は完全でなく、ブロック共重合体およびそれを用いた高分子電解質材料としてはさらなる向上が望まれていた。
【0008】
本発明は、かかる従来技術の背景を鑑み、低加湿条件下においても優れたプロトン伝導性を有し、機械強度および物理的耐久性にも優れたブロック共重合体およびそれを用いた高分子電解質材料を実現することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、従来技術が上記課題を有していた原因が、ブロック共重合体中のセグメントをモノマーの共重合反応のみによって、目的の数平均分子量まで合成していたことにあると考えた。そして、目的の数平均分子量より小さい数平均分子量の重合体をセグメントの構成単位として、反応性の高いリンカーによって構成単位間を連結することで、目的の数平均分子量への精密な制御も容易でプロセス性に優れ、セグメントの高分子量化も可能となることを見出した。
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のブロック共重合体は、次の構成を有する。すなわち、
イオン性基を含有するセグメント(以下「イオン性セグメント」という)と、イオン性基を含有しないセグメント(以下「非イオン性セグメント」という)と、をそれぞれ一個以上有するブロック共重合体であって、前記イオン性セグメントおよび前記非イオン性セグメントの少なくとも一方が、芳香族炭化水素系重合体からなる構成単位(以下、単に「構成単位」という)と、前記構成単位間を連結する第1のリンカー(L1)と、を有するブロック共重合体、である。
【0011】
本発明のブロック共重合体の製造方法は、次の構成を有する。すなわち、
上記ブロック共重合体の製造方法であって、前記構成単位を与える化合物と、前記第1のリンカーを与える化合物とを反応させる工程(1)を少なくとも含むブロック共重合体の製造方法、である。
【0012】
本発明の高分子電解質材料は、次の構成を有する。すなわち、
上記ブロック共重合体を含む高分子電解質材料、である。
【0013】
本発明の高分子電解質成型体は、次の構成を有する。すなわち、
上記高分子電解質材料を含む高分子電解質成型体、である。
【0014】
本発明の高分子電解質膜は、次の構成を有する。すなわち、
上記高分子電解質材料を用いてなる高分子電解質膜、である。
【0015】
本発明の触媒層付電解質膜は、次の構成を有する。すなわち、
上記高分子電解質材料を用いて構成される触媒層付電解質膜、である。
【0016】
本発明の膜電極複合体は、次の構成を有する。すなわち、
上記高分子電解質材料を用いて構成される膜電極複合体、である。
【0017】
本発明の固体高分子型燃料電池は、次の構成を有する。すなわち、
上記高分子電解質材料を用いて構成される固体高分子燃料電池、である。
【0018】
本発明の水電解式水素発生装置は、次の構成を有する。すなわち、
上記高分子電解質材料を用いて構成される水電解式水素発生装置、である。
【0019】
本発明のブロック共重合体は、前記イオン性セグメントが、前記構成単位と、前記構成単位間を連結する第1のリンカーと、を有することが好ましい。
【0020】
本発明のブロック共重合体は、前記第1のリンカーが下記一般式(M1)~(M8)のいずれかで表されることが好ましい。
【0021】
【化1】
【0022】
(一般式(M1)~(M4)中、W~Zは、それぞれ独立に、H、NO、CN、CF、F、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる基を表し、r1~r4は、それぞれ独立に1~4の整数を表し、一般式(M6)中、Rは任意の有機基を表し、一般式(M7)中、Arは任意のアリーレン基を表し、一般式(M8)中、Eは酸素原子または硫黄原子を表す。一般式(M1)~(M8)は、電子求引性基でさらに置換されていても良い。*は一般式(M1)~(M8)と構成単位との結合部位を表す。)
本発明のブロック共重合体は、前記イオン性セグメントと前記非イオン性セグメントとを交互に有することが好ましい。
【0023】
本発明のブロック共重合体は、前記ブロック共重合体が、前記イオン性セグメントと前記非イオン性セグメントとの間を連結する第2のリンカー部位を有することが好ましい。
【0024】
本発明のブロック共重合体は、前記イオン性セグメントが、芳香族ポリエーテル構造を含むことが好ましい。
【0025】
本発明のブロック共重合体は、前記イオン性セグメントが、芳香族ポリエーテルケトン構造を含むことが好ましい。
【0026】
本発明のブロック共重合体は、前記イオン性セグメントが下記一般式(S1)で表される構造を含有することが好ましい。
【0027】
【化2】
【0028】
(一般式(S1)中、Ar~Arは、それぞれ独立に、置換または無置換のアリーレン基を表し、Ar~Arのうち少なくとも1つはイオン性基を有する。YおよびYは、それぞれ独立に、ケトン基またはケトン基に誘導され得る保護基を表す。*は、一般式(S1)または他の構造との結合を表す。)
本発明のブロック共重合体は、前記一般式(S1)で表される構造が下記一般式(S2)で表される構造であることが好ましい。
【0029】
【化3】
【0030】
(一般式(S2)中、YおよびYは、それぞれ独立に、ケトン基またはケトン基に誘導され得る保護基を表す。M~Mは、それぞれ独立に、水素原子、金属カチオンまたはアンモニウムカチオンを表す。n~nは、それぞれ独立に、0または1であり、n~nのうち少なくとも1つは1である。*は、一般式(S2)または他の構造との結合を表す。)
本発明のブロック共重合体は、前記非イオン性セグメントが芳香族ポリエーテル構造を含むことが好ましい。
【0031】
本発明のブロック共重合体は、前記非イオン性セグメントが、芳香族ポリエーテルケトン構造を含むことが好ましい。
【0032】
本発明のブロック共重合体は、前記非イオン性セグメントが下記一般式(S3)で表される構造を含有することが好ましい。
【0033】
【化4】
【0034】
(一般式(S3)中、Ar~Arは、それぞれ独立に、アリーレン基を表す。ただしAr~Arはいずれもイオン性基を有さない。YおよびYは、それぞれ独立に、ケトン基またはケトン基に誘導され得る保護基を表す。*は、一般式(S3)または他の構造との結合を表す。)
本発明のブロック共重合体は、前記一般式(S3)で表される構造が下記一般式(S4)で表される構造であることが好ましい。
【0035】
【化5】
【0036】
(一般式(S4)中、YおよびYは、それぞれ独立に、ケトン基またはケトン基に誘導され得る保護基を表す。*は、一般式(S4)または他の構造との結合を表す。)
本発明のブロック共重合体は、共連続相分離構造を有することが好ましい。
【0037】
本発明のブロック共重合体の製造方法は、前記工程(1)の後に、前記工程(1)で得た化合物と、もう一方のセグメントを与える化合物とを反応させる工程(2)を含むことが好ましい。
【0038】
本発明のブロック共重合体の製造方法は、前記工程(2)の前に、イオン性セグメントを与える化合物および非イオン性セグメントを与える化合物のいずれか一方の化合物と、第2のリンカーを与える化合物とを反応させて、前記いずれか一方の化合物の両末端に第2のリンカーを導入する工程(1’)を含むことが好ましい。
【0039】
本発明のブロック共重合体の製造方法は、前記第1のリンカーおよび第2のリンカーを与える化合物が、下記一般式(N1)~(N8)のいずれかで表されることが好ましい。
【0040】
【化6】
【0041】
(一般式(N1)~(N8)中、Vは、ClまたはFを表す。一般式(N1)~(N4)中、W~Zは、それぞれ独立に、H、NO、CN、CF、F、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる基を表し、r1~r4は、それぞれ独立に1~4の整数を表し、一般式(N6)中、Rは任意の有機基を表し、一般式(N7)中、Arは任意のアリーレン基を表し、一般式(N8)中、Eは酸素原子または硫黄原子を表す。一般式(N1)~(N8)は、電子求引性基でさらに置換されていても良い。)
【発明の効果】
【0042】
本発明のブロック共重合体は、高分子電解質材料として優れた加工性を示し、良好な物理的耐久性を有しながら、低加湿条件下を含む高いプロトン伝導性を示すことができる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、目的や用途に応じて種々に変更して実施することができる。
【0044】
(ブロック共重合体)
本発明のブロック共重合体は、イオン性セグメントと、非イオン性セグメントと、をそれぞれ一個以上有するブロック共重合体である。
【0045】
本発明において、セグメントとは、ブロック共重合体を合成する際に用いるマクロモノマーの、ブロック共重合体中での部分構造である。本発明のブロック共重合体は、イオン性セグメントとともに、非イオン性セグメントを含有する。なお本発明において、非イオン性セグメントと記載するが、当該セグメントは本発明の効果に悪影響を及ぼさない範囲でイオン性基を少量含んでいても構わない。以下「イオン性基を含有しない、非イオン性」は同様の意味で用いる場合がある。
【0046】
本発明のブロック共重合体は、2種類以上の互いに不相溶なセグメント鎖、すなわち、イオン性基を含有する親水性セグメントと、イオン性基を含有しない疎水性セグメントとが連結され、1つのポリマー鎖を形成したものである。ブロック共重合体においては、化学的に異なるセグメント鎖間の反発から生じる短距離相互作用により、それぞれのセグメント鎖からなるナノまたはミクロドメインに相分離する。そして、セグメント鎖がお互いに共有結合していることから、長距離相互作用が生じ、その効果により、各ドメインが特定の秩序を持って配置することになる。各セグメント鎖からなるドメインが集合して作り出す高次構造は、ナノまたはミクロ相分離構造と呼ばれる。ここで、ドメインとは、1本または複数のポリマー鎖において、類似するセグメントが凝集してできた塊のことを意味する。高分子電解質膜のイオン伝導については、膜中におけるイオン伝導セグメントの空間配置、すなわち、ナノまたはミクロ相分離構造が重要になる。
【0047】
セグメントの分子鎖長、つまりセグメントの分子量を適切に調節することで、相分離構造を形成する際の各セグメントの凝集性が高まる。イオン性セグメントの分子鎖長を長くした場合、イオン性ドメインの構造が大きくなり、低加湿条件下におけるプロトン伝導性が向上する。非イオン性セグメントの分子鎖長を長くした場合、非イオン性ドメインの構造が大きくなり、機械強度や寸法変化率、機械的耐久性が向上する。
【0048】
本発明のブロック共重合体は、イオン性セグメントおよび非イオン性セグメントの少なくとも一方が、芳香族炭化水素系重合体からなる構成単位(以下「構成単位」という)と、その構成単位間を連結する第1のリンカーと、を有する。本発明において、構成単位とは、セグメントを構成する重合体のことである。
【0049】
本発明において、第1のリンカーとは、セグメント中に含まれる構造であって、セグメントを構成する構成単位間を連結する部位であって、構成単位とは異なる化学構造を有する部位と定義する。第1のリンカーによって連結する構成単位は、同じ構成単位であっても、異なる複数の構成単位の組み合わせであっても良い。
【0050】
本発明のブロック共重合体は、イオン性セグメントおよび非イオン性セグメントの一方にのみ第1のリンカーを含んでいても良いし、イオン性セグメントおよび非イオン性セグメントのいずれにも第1のリンカーを含んでいても良い。
【0051】
第1のリンカーは、オリゴマーのランダム化、分子鎖切断、末端の失活、その他共重合体の合成時に生じうる副反応などを抑制しながら、構成単位間を連結する。セグメント内の構成単位間をリンカーによって連結することで、セグメントの数平均分子量を目的の数平均分子量に容易にかつ精密に調節することができる。
【0052】
セグメントを与える化合物をモノマーの共重合反応のみによって合成する従来の合成法では、得られたセグメントの数平均分子量が目的の数平均分子量に対して大きくばらつくことがある。そして、目的の数平均分子量が大きくなるほど、ばらつきの振れ幅が大きくなる傾向にある。この要因として、合成に用いるモノマー、溶媒および触媒の純度や含水率、反応系中の環境、攪拌効率、反応温度等の僅かな違いなどが考えられる。これらの要因をすべて排除することは実質的に困難である。つまり、従来の合成法では、バッチ間でセグメントの数平均分子量にばらつきが生じ、目的とする数平均分子量が安定的に得られない。
【0053】
セグメントの数平均分子量が目的の数平均分子量より小さい場合あるいは大きい場合、これらのセグメントを与える化合物を用いて合成したブロック共重合体は、数平均分子量および重量平均分子量が低下することがある。これはブロック共重合体を合成する際、セグメントを与える化合物の末端比が適切な範囲から外れたためと推測している。その結果、得られたブロック共重合体の機械強度(例えば引張強伸度)が低下することがある。
【0054】
上記観点から、ブロック共重合体の製造には精密なセグメントの分子量制御が重要であり、上記分子量制御は、セグメント内の構成単位間がリンカーによって連結されていることによって可能となる。すなわち、イオン性セグメントおよび非イオン性セグメントの少なくとも一方が、構成単位間をリンカーによって連結された、本発明のブロック共重合体は、良好で安定した機械強度を有する。さらに、少なくともイオン性セグメントが、構成単位間がリンカーによって連結されていることが好ましい。
【0055】
また、セグメントの構成単位間をリンカーによって連結することで、高分子量のセグメントを合成することが可能となる。
【0056】
例えば、数平均分子量30,000の重合体を構成単位として、これを第1のリンカーによって連結すると、二量体とした場合は数平均分子量60,000のセグメントとなり、三量体とした場合は数平均分子量90,000のセグメントとなる。ただしセグメントを構成するすべての構成単位をリンカーによって連結する必要はなく、数平均分子量30,000の重合体を構成単位として、一部の構成単位のみを第1のリンカーによって連結して、数平均分子量45,000のセグメントに調節することも可能である。この場合、第1のリンカーを含む構造である二量体と、含まない構造である単量体をセグメントとして、ブロック共重合体中に含有することになり、セグメントの分子鎖長が不均一となるため、すべての構成単位間を第1のリンカーによって連結することが好ましい。
【0057】
イオン性セグメントに、構成単位間を連結する第1のリンカーを有する場合、構成単位はイオン性の構成単位であっても、非イオン性の構成単位であっても良い。ただしイオン性セグメント中の少なくとも一つの構成単位は、イオン性である。イオン性基の密度を高める観点から、イオン性セグメントの構成単位は、すべてイオン性であることが好ましい。
【0058】
非イオン性セグメントに、構成単位間を連結する第1のリンカーを有する場合、非イオン性セグメントの構成単位は、すべて非イオン性である。
【0059】
イオン性の重合体は、非イオン性の重合体と比較して、重合性が低く高分子量化や分子量の制御が難しい場合があるため、構成単位間を連結する第1のリンカーを少なくともイオン性セグメントに有することが好ましい。数平均分子量が6万以上のイオン性セグメントは、従来の合成法で得ることは難しかったが、構成単位間をリンカーによって連結することによって容易に安定的に合成することが可能となった。
【0060】
本発明における数平均分子量、重量平均分子量とは、後述の実施例に記載されるように、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定される、標準ポリスチレン換算値と定義される。
【0061】
本発明に用いられるセグメントとして、構成単位と、その構成単位間を連結する第1のリンカーと、を有するセグメントは、構成単位を(A)、第1のリンカーを(L1)と表記すると、以下一般式(C1)のように表記される。
【0062】
【化7】
【0063】
一般式(C1)中、Xは一般式(C2)で表される構造であり、nは1以上の整数を表す。一般式(C2)中、mは1以上の整数を表す。nが2以上である場合、複数存在するmは互いに同一でも異なっていても良い。mが2以上である場合、-A-の構造がL1に2個以上結合していることを示す。すなわち、セグメントが分岐構造を有することを示す。
【0064】
上記セグメントを得るためには、第1のリンカー部位となる化合物が、共重合体のランダム化やセグメント切断を抑制しながら、構成単位間を連結できるような反応性の高い化合物である必要がある。そこで、(L1)は下記一般式(M1)~(M8)などの構造を有することが好ましいが、これらに限定されるものではない。
【0065】
【化8】
【0066】
一般式(M1)~(M4)中、W~Zは、それぞれ独立に、H、NO、CN、CF、F、Cl、BrおよびIからなる群より選ばれる基を表し、r1~r4は、それぞれ独立に1~4の整数を表し、一般式(M6)中、Rは任意の有機基を表し、一般式(M7)中、Arは任意のアリーレン基を表し、一般式(M8)中、Eは酸素原子または硫黄原子を表す。一般式(M1)~(M8)は、電子求引性基でさらに置換されていても良い。*は一般式(M1)~(M8)と構成単位Aとの結合部位を表す。
【0067】
上記のような(L1)を与える化合物(以下、「リンカー化合物」という)としては、下記一般式(N1)~(N12)から選ばれた少なくとも1種が好ましいが、これらに限定されるものではない。本発明において、リンカー化合物とは、反応後にリンカー部位となるようなジハライド化合物あるいはマルチハライド化合物がある。マルチハライド化合物とは、置換基としてハライドを3つ以上有する化合物のことを指す。直鎖型のセグメントを得たい場合、ジハライド化合物をリンカーとして用いるのが好ましく、分岐型の構造をセグメント中に形成したい場合、マルチハライド化合物をリンカーとして用いるのが好ましい。またジハライド化合物とマルチハライド化合物を組み合わせて用いても良い。
【0068】
【化9】
【0069】
一般式(N1)~(N8)中、Vは、ClまたはFを表す。W~Z、r1~r4、R、ArおよびEは、一般式(M1)~(M8)におけるものと同じである。
【0070】
リンカー化合物の具体例として、(N1)を満たす化合物として、1,2-ジフルオロベンゼン、1,3-ジフルオロベンゼン、1,4-ジフルオロベンゼン、2,4-ジフルオロベンゾニトリル、1,2,4-トリフルオロベンゼン、1,3,5-トリフルオロベンゼン、1,2,3,4,-テトラフルオロベンゼン、1-クロロ-2,4,5-トリフルオロベンゼン、2,4,5-トリフルオロベンゾニトリル、1,2,4-トリフルオロ-5-ニトロベンゼン、1,2,4-トリフルオロ-5-(トリフルオロメチル)ベンゼン、ヘキサフルオロベンゼン、1-クロロ-2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゼン、2,3,4,5,6-ペンタフルオロベンゾニトリル、1,2,3,4,5-ペンタフルオロ6-(トリフルオロメチル)ベンゼン、2,3,5,6-テトラフルオロテレフタロニトリル、2,4,5,6-テトラフルオロイソフタロニトリル、2,3,5-トリフルオロイソフタロニトリル、2,4,6-トリフルオロイソフタロニトリル、1,2,3,4,5-ペンタフルオロ-6-(トリフルオロメチル)ベンゼン、1,2,3,4,5-ペンタフルオロ-6-ニトロベンゼンなどが挙げられる。
【0071】
例えば(N2)を満たす化合物として、2,2’-ジクロロ-1,1’-ビフェニル、4,4’-ジクロロ-1,1’-ビフェニル、2,2’-ジフルオロ-1,1’-ビフェニル、4,4’-ジフルオロ-1,1’-ビフェニル、デカフルオロビフェニル、2,2’,3,3’,4,4’,6,6’-オクタフルオロ-5,5’-ジニトロ-1,1’-ビフェニル、2,2’,3,3’,4,4’,5,6,6’-ノナフルオロ-5’-ニトロ-1,1’-ビフェニルなどが挙げられる。
【0072】
例えば(N3)を満たす化合物として、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、5,5’-スルホニルビス(2-フルオロベンゾニトリル)、4,4’-スルホニルビス(1-フルオロ-2-ニトロベンゼン)、4,4’-スルホニルビス(1-フルオロ-2-(トリフルオロメチル)ベンゼン)、2-フルオロ-5-((4-フルオロ-3-(トリフルオロメチル)フェニル)スルホニル)ベンゾニトリルなどが挙げられる。
【0073】
例えば(N4)を満たす化合物として、ビス(4-フルオロフェニル)ケトン、5,5’-カルボニルビス(2-フルオロベンゾニトリル)、ビス(4-フルオロ―3-(トリフルオロメチル)フェニル)ケトン、ビス(4-フルオロ―3-ニトロフェニル)などが挙げられる。
【0074】
例えば(N5)を満たす化合物として、2,6-ジフルオロピリジン、2,6-ジクロロピリジンなどが挙げられる。
【0075】
例えば(N6)を満たす化合物として、2,4-ジフルオロ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジン、2,4-ジクロロ-6-メトキシ-1,3,5-トリアジンなどが挙げられる。
【0076】
例えば(N7)を満たす化合物として、1,4-ビス(6-フルオロキノキサリン-2-イル)ベンゼン、1,4-ビス(6-クロロキノキサリン-2-イル)ベンゼンなどが挙げられる。
【0077】
例えば(N8)を満たす化合物として、3,4-ビス(4-フルオロフェニル)-1,2,5-オキサジアゾール、3,4-ビス(4-フルオロフェニル)-1,2,5-チアジアゾールなどが挙げられる。
【0078】
本発明のブロック共重合体は、イオン性セグメントおよび非イオン性セグメントの少なくとも一方に、芳香族炭化水素系重合体を有する構成単位を含有する。炭化水素系とは、パーフルオロ系以外であることを意味し、芳香族炭化水素系重合体とは、パーフルオロ系以外の重合体であって、主として芳香環から構成される重合体である。
【0079】
本発明において、芳香族炭化水素系重合体に含まれる芳香環は、炭化水素系芳香環だけでなく、ヘテロ環を含んでいてもよい。また、芳香環ユニットと共に一部脂肪族系ユニットがポリマーを構成していてもよい。芳香族炭化水素系重合体の具体例としては、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンオキシド、ポリアリーレンエーテル系ポリマー、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリパラフェニレン、ポリアリーレン系ポリマー、ポリアリーレンケトン、ポリエーテルケトン、ポリアリーレンホスフィンホキシド、ポリエーテルホスフィンホキシド、ポリベンゾオキサゾール、ポリベンゾチアゾール、ポリベンゾイミダゾール、ポリアミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリイミドスルホンから選択される構造を芳香環とともに主鎖に有するポリマーが挙げられる。この中でも、コスト、重合性の観点から、芳香族ポリエーテル系重合体が好ましい。
【0080】
芳香族ポリエーテル系重合体とは、主として芳香環から構成される重合体において、繰り返し単位中に、芳香環ユニットが連結する様式として少なくともエーテル結合が含まれているものをいう。芳香族ポリエーテル系重合体の構造として、例えば、芳香族ポリエーテル、芳香族ポリエーテルケトン、芳香族ポリエーテルエーテルケトン、芳香族ポリエーテルケトンケトン、芳香族ポリエーテルエーテルケトンケトン、芳香族ポリエーテルケトンエーテルケトンケトン、芳香族ポリエーテルイミド、芳香族ポリエーテルスルホンなどが挙げられるが、これらに限定されない。化学的安定性とコストの点から、芳香族ポリエーテルケトン系重合体、ポリエーテルスルホン系重合体であることが好ましく、機械強度、寸法安定性、物理的耐久性の観点から、芳香族ポリエーテルケトン系重合体であることが最も好ましい。
【0081】
芳香族ポリエーテルケトン系重合体とは、主として芳香環から構成される重合体において、繰り返し単位中に、芳香環ユニットが連結する様式として少なくともエーテル結合とケトン結合が含まれているものをいう。
【0082】
芳香族ポリエーテルスルホン系重合体とは、主として芳香環から構成される重合体において、芳香環ユニットが連結する様式として少なくともエーテル結合とスルホン結合が含まれているものをいう。
【0083】
本発明のブロック共重合体は、イオン性セグメントと非イオン性セグメントとを交互に有することが好ましい。これらのセグメントを交互に有することで、相分離構造やドメインサイズが厳密に制御された低加湿プロトン伝導性に優れたブロック共重合体となる。ここで交互に有するとは、イオン性セグメントと非イオン性セグメントとの間に後述する第2のリンカー部位を有してもよい。
【0084】
本発明のブロック共重合体は、イオン性セグメントと非イオン性セグメントとの間を連結する第2のリンカー(L2)部位を1個以上含有することが好ましい。本発明において、第2のリンカーとは、イオン性セグメントと非イオン性セグメントとの間を連結する部位であって、イオン性セグメントや非イオン性セグメントとは異なる化学構造を有する部位と定義する。
【0085】
第2のリンカーは、前述の第1のリンカーと同一の構造であっても良いし、異なる構造であっても良い。この第2のリンカーは、エーテル交換反応による共重合体のランダム化、セグメント切断、その他共重合体の合成時に生じうる副反応などを抑制しながら、異なるセグメントを連結する。そのため、このような第2のリンカーを与えるような化合物を原料として用いることで、それぞれのセグメントの分子量を下げることなく、ブロック共重合体を得ることができる。
【0086】
第2のリンカーの好適な具体例としては、デカフルオロビフェニル、ヘキサフルオロベンゼン、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン、2,6-ジフルオロベンゾニトリル等を挙げることができるが、本発明において、これらに限定されるものではない。
【0087】
(イオン性セグメント)
本発明のブロック共重合体としては、コスト、重合性の観点から、イオン性セグメントが、芳香族ポリエーテル構造を含むことが好ましく、機械強度、寸法安定性、物理的耐久性の観点から、芳香族ポリエーテルケトン構造を含むことが最も好ましい。芳香族ポリエーテル構造とは、主として芳香環から構成され、繰り返し単位中に、芳香環ユニットが連結する様式として少なくともエーテル結合が含まれているものをいう。芳香族ポリエーテルケトン構造とは、主として芳香環から構成され、繰り返し単位中に、芳香環ユニットが連結する様式として少なくともエーテル結合とケトン結合が含まれているものをいう。
【0088】
本発明のブロック共重合体としては、イオン性セグメントが、下記一般式(S1)で表される構造を含有することが寸法安定性、機械強度、化学的安定性の観点から、好ましい。
【0089】
【化10】
【0090】
一般式(S1)中、Ar~Arは、それぞれ独立に、置換または無置換のアリーレン基を表し、Ar~Arのうち少なくとも1つはイオン性基を有する。YおよびYは、それぞれ独立に、ケトン基またはケトン基に誘導され得る保護基を表す。*は、一般式(S1)または他の構造との結合を表す。
【0091】
またイオン性セグメントは、一般式(S1)で表される構造以外を含んでいても良い。
【0092】
ここで、Ar~Arとして好ましい芳香環は、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレンジイル基などの炭化水素系アリーレン基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイルなどのヘテロアリーレン基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0093】
本発明のブロック共重合体に使用されるイオン性基は、負電荷を有する原子団が好ましく、プロトン交換能を有するものが好ましい。このような官能基としては、下記に示されるような、スルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基、ホスホン酸基、リン酸基、カルボン酸基が好ましく用いられる。
【0094】
【化11】
【0095】
かかるイオン性基は、前記官能基(f1)~(f7)が塩となっている場合を含むものとする。このような塩を形成するカチオンとしては、任意の金属カチオン、NR (Rは任意の有機基)等を例として挙げることができる。金属カチオンには特に制限はないが、安価で、容易にプロトン置換可能なNa、K、Liが好ましい。
【0096】
これらのイオン性基はブロック共重合体中に2種類以上含むことができ、組み合わせはポリマーの構造などにより適宜決められる。中でも、高プロトン伝導度の点から少なくともスルホン酸基、スルホンイミド基、硫酸基を有することがより好ましく、原料コストの点からスルホン酸基を有することが最も好ましい。
【0097】
本発明のブロック共重合体としては、一般式(S1)で表される構造が、下記一般式(P1)で表される構造であることが、寸法安定性、原料入手性の点から好ましく、下記一般式(S2)で表される構造であることが、原料入手性と重合性の点からさらに好ましい。
【0098】
【化12】
【0099】
一般式(P1)及び(S2)中、YおよびYは、それぞれ独立に、ケトン基またはケトン基に誘導され得る保護基を表す。M~Mは、それぞれ独立に、水素原子、金属カチオンまたはアンモニウムカチオンを表す。n~nは、それぞれ独立に、0または1であり、n~nのうち少なくとも1つは1である。*は一般式(P1)、(S2)または他の構成単位との結合を表す。
【0100】
さらに原料入手性と重合性の点からn=1、n=1、n=0、n=0またはn=0、n=0、n=1、n=1であることが最も好ましい。
【0101】
イオン性セグメントに含まれる一般式(S1)で表される含有量としては、20モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上が最も好ましい。
【0102】
上記のようなイオン性セグメントを合成するために用いられるイオン性モノマーとして、例えば芳香族活性ジハライド化合物が挙げられる。イオン性セグメント中に用いる芳香族活性ジハライド化合物として、芳香族活性ジハライド化合物にイオン酸基を導入した化合物を用いることは、化学的安定性、製造コスト、イオン性基の量を精密制御が可能な点から好ましい。イオン性基としてスルホン酸基を有するモノマーの好適な具体例としては、3,3'-ジスルホネート-4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン、3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジクロロジフェニルケトン、3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロジフェニルケトン、3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジクロロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロジフェニルフェニルホスフィンオキシド等を挙げることができるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
プロトン伝導度および耐加水分解性の点からイオン性基としてはスルホン酸基が最も好ましいが、上記イオン性基を有するモノマーは他のイオン性基を有していても構わない。
【0104】
上記したスルホン酸基を有するモノマーのなかでも化学的安定性と物理的耐久性の点から、3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジクロロジフェニルケトン、3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロジフェニルケトンがより好ましく、重合活性の点から3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロジフェニルケトンが最も好ましい。
【0105】
イオン性基を有するモノマーとして、3,3'-ジスルホネート-4,4’-ジクロロジフェニルケトン、3,3'-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロジフェニルケトンを用いて合成したイオン性セグメントとしては、下記一般式(p1)で表される構成単位を含むものとなり、好ましく用いられる。該芳香族ポリエーテル系重合体は、ケトン基の有する高い結晶性の特性に加え、スルホン基よりも耐熱水性に優れる成分となり、高温高湿度条件での寸法安定性、機械強度、物理的耐久性に優れた材料に有効な成分となるのでさらに好ましく用いられる。これらのスルホン酸基は重合の際には、スルホン酸基が1価カチオン種との塩になっていることが好ましい。1価カチオン種としては、ナトリウム、カリウムや他の金属種や各種アミン類等でも良く、これらに制限される訳ではない。これら芳香族活性ジハライド化合物は、単独で使用することができるが、複数の芳香族活性ジハライド化合物を併用することも可能である。
【0106】
【化13】
【0107】
(一般式(p1)中、MおよびMは水素、金属カチオン、アンモニウムカチオン、a1およびa2は1~4の整数を表す。一般式(p1)で表される構成単位は任意に置換されていてもよい。)
また、芳香族活性ジハライド化合物としては、イオン性基を有するものと持たないものを共重合することで、イオン性基密度を制御することも可能である。しかしながら、上記イオン性セグメントとしては、プロトン伝導パスの連続性確保の観点から、イオン性基を持たない芳香族活性ジハライド化合物を共重合しないことがより好ましい。
【0108】
イオン性基を持たない芳香族活性ジハライド化合物のより好適な具体例としては、4,4’-ジクロロジフェニルスルホン、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン、4,4’-ジクロロジフェニルケトン、4,4’-ジフルオロジフェニルケトン、4,4’-ジクロロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、4,4’-ジフルオロジフェニルフェニルホスフィンオキシド、2,6-ジクロロベンゾニトリル、2,6-ジフルオロベンゾニトリル等を挙げることができる。中でも4,4’-ジクロロジフェニルケトン、4,4’-ジフルオロジフェニルケトンが結晶性付与、機械強度や物理的耐久性、耐熱水性の点からより好ましく、重合活性の点から4,4’-ジフルオロジフェニルケトンが最も好ましい。これら芳香族活性ジハライド化合物は、単独で使用することができるが、複数の芳香族活性ジハライド化合物を併用することも可能である。
【0109】
芳香族活性ジハライド化合物として、4,4’-ジクロロジフェニルケトン、4,4’-ジフルオロジフェニルケトンを用いて合成した高分子電解質材料としては、下記一般式(p2)で表される構成部位をさらに含むものとなり、好ましく用いられる。該構成単位は分子間凝集力や結晶性を付与する成分となり、高温高湿度条件での寸法安定性、機械強度、物理的耐久性に優れた材料となるので好ましく用いられる。
【0110】
【化14】
【0111】
(一般式(p2)で表される構成単位は任意に置換されていてもよいが、イオン性基は含有しない。)
またイオン性セグメントを合成するために用いられる非イオン性モノマーとして、芳香族ジフェノール化合物が挙げられ、特に後述する保護基を有する芳香族ジフェノール化合物であることが好ましい。
【0112】
以上、イオン性セグメントの構成単位を合成するために用いられるモノマーについて説明した。
【0113】
イオン性セグメントが、前記構成単位と、その構成単位間を連結する第1のリンカーと、を有する場合、一般式(S1)、(P1)及び(S2)で表される構造は、構成単位中に含まれることが寸法安定性、機械強度、化学的安定性の観点から、好ましい。
【0114】
イオン性セグメントとして、一般式(S1)で表される構造以外に含まれていてもよい構造の好ましい例としては、下記一般式(T1)および(T2)で表される構造からなる芳香族ポリエーテルケトン構造が挙げられる。
【0115】
【化15】
【0116】
一般式(T1)および(T2)中、Bは芳香環を含む2価の有機基を表す。MおよびMは、それぞれ独立に、水素原子、金属カチオンまたはアンモニウムカチオンを表す。
【0117】
この芳香族ポリエーテルケトン系共重合体において、一般式(T1)と(T2)で表される構成単位の組成比を変えることで、イオン交換容量を制御することが可能である。
【0118】
中でも、一般式(P1)で表される構造と、一般式(T1)および(T2)で表される構造とを有するイオン性セグメントが特に好ましい。このようなイオン性セグメントにおいて、一般式(P1)、(T1)および(T2)で表わされる構成単位の量を、それぞれp1、t1およびt2とするとき、t1とt2の合計モル量を100モル部として、p1が75モル部以上であることが好ましく、90モル部以上であることがより好ましく、100モル部以上であることがさらに好ましい。
【0119】
一般式(T1)および(T2)中の芳香環を含む2価の有機基Bとしては、芳香族求核置換反応による芳香族ポリエーテル系重合体の重合に用いることができる各種2価フェノール化合物の残基や、それにスルホン酸基が導入されたものを挙げることができる。
【0120】
芳香環を含む2価の有機基Bの好適な具体例としては、下記一般式(X’-1)~(X’-6)で示される基を例示できるが、これらに限定されるものではない。
【0121】
【化16】
【0122】
これらはイオン性基や芳香族基を有していてもよい。また、これらは必要に応じて併用することも可能である。なかでも、結晶性、寸法安定性、強靱性、化学的安定性の観点から、より好ましくは一般式(X’-1)~(X’-4)で示される基、最も好ましくは一般式(X’-2)および(X’-3)で示される基である。
【0123】
(非イオン性セグメント)
本発明のブロック共重合体について、コスト、重合性の観点から、非イオン性セグメントが、芳香族ポリエーテル構造を含有することが好ましく、芳香族ポリエーテルケトン系重合体であることが機械強度、寸法安定性、物理的耐久性の観点からより好ましい。芳香族ポリエーテル構造とは、芳香族基とエーテル結合を繰り返し単位の構造として含有していればよい。芳香族ポリエーテルケトン構造とは、主として芳香環から構成され、繰り返し単位中に、芳香環ユニットが連結する様式として少なくともエーテル結合とケトン結合が含まれているものをいう。
【0124】
本発明のブロック共重合体としては、非イオン性セグメントが、下記一般式(S3)で表される構造を含有することが寸法安定性、機械強度、化学的安定性の観点から、好ましい。
【0125】
【化17】
【0126】
一般式(S3)中、Ar~Arは、それぞれ独立に、アリーレン基を表す。ただしAr~Arはいずれもイオン性基を有さない。YおよびYは、それぞれ独立に、ケトン基またはケトン基に誘導され得る保護基を表す。*は、一般式(S3)または他の構造との結合を表す。
【0127】
ここで、Ar~Arとして好ましい芳香環は、フェニレン基、ナフチレン基、ビフェニレン基、フルオレンジイル基などの炭化水素系アリーレン基、ピリジンジイル、キノキサリンジイル、チオフェンジイルなどのヘテロアリーレン基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0128】
本発明のブロック共重合体としては、非イオン性セグメントが下記式(P2)で表される構造を含有することが、原料入手性の点から好ましい。中でも、下記式(S4)で表される構成単位を含有することが、結晶性による機械強度、寸法安定性、物理的耐久性の点からさらに好ましい。
【0129】
【化18】
【0130】
一般式(P2)および(S4)中、YおよびYは、それぞれ独立に、ケトン基またはケトン基に誘導され得る保護基を表す。*は、一般式(P2)および(S4)または他の構造との結合を表す。
【0131】
非イオン性セグメント中に含まれる一般式(S3)または(S4)で表される構造の含有量としては、より多い方が好ましく、20モル%以上がより好ましく、50モル%以上がさらに好ましく、80モル%以上が最も好ましい。
【0132】
非イオン性セグメントが、前記構成単位と、その構成単位間を連結する第1のリンカーと、を有する場合、一般式(S3)、(P2)及び(S4)で表される構造は、構成単位中に含まれることが寸法安定性、機械強度、化学的安定性の観点から好ましい。
(ブロック共重合体の詳細説明)
本発明のブロック共重合体は、上記一般式(S1)で表される構造を含有するイオン性セグメントと、上記一般式(S3)で表される構造を含有する非イオン性セグメントを有するブロック共重合体と、から構成されることが好ましい。
【0133】
非イオン性セグメントは、一般式(S3)で表される構造を含有する場合、結晶性を示すセグメントである。このような非イオン性セグメントを含むブロック共重合体は、少なくとも非イオン性セグメントに保護基を導入したブロック共重合体前駆体を成型した後、成型体に含有される該保護基の少なくとも一部を脱保護せしめることにより製造することができる。ブロック共重合体では、ランダム共重合体よりも、ドメインを形成したポリマーの結晶化により、加工性が不良となる傾向があるので、少なくとも非イオン性セグメントに保護基を導入し、加工性を向上させることが好ましく、イオン性セグメントについても、加工性が不良となる場合には保護基を導入することが好ましい。
【0134】
このような保護基を含む構成単位としては、例えば下記一般式(P3)および(P4)から選ばれる少なくとも1種を含有するものが好ましく挙げられる。
【0135】
【化19】
【0136】
(一般式(P3)および(P4)において、Ar11~Ar14は任意の2価のアリーレン基、RおよびRはHおよびアルキル基から選ばれた少なくとも1種の基、Rは任意のアルキレン基、EはOまたはSを表し、それぞれが2種類以上の基を表しても良い。式(P3)および(P4)で表される基は任意に置換されていてもよい。)
なかでも、化合物の臭いや反応性、安定性等の点で、前記一般式(P3)および(P4)において、EがOである、すなわち、ケトン部位をケタール部位で保護/脱保護する方法が最も好ましい。
【0137】
一般式(P3)中のRおよびRとしては、安定性の点でアルキル基であることがより好ましく、さらに好ましくは炭素数1~6のアルキル基、最も好ましく炭素数1~3のアルキル基である。また、一般式(P4)中のRとしては、安定性の点で炭素数1~7のアルキレン基であることがより好ましく、最も好ましくは炭素数1~4のアルキレン基である。Rの具体例としては、-CHCH-、-CH(CH)CH-、-CH(CH)CH(CH)-、-C(CHCH-、-C(CHCH(CH)-、-C(CHO(CH-、-CHCHCH-、-CHC(CHCH-等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0138】
前記一般式(P3)および(P4)中のAr11~Ar14として好ましい有機基は、フェニレン基、ナフチレン基、またはビフェニレン基である。これらは任意に置換されていてもよい。芳香族ポリエーテル系重合体としては、溶解性および原料入手の容易さから、前記一般式(P4)中のAr13およびAr14が共にフェニレン基であることがより好ましく、最も好ましくはAr13およびAr14が共にp-フェニレン基である。
【0139】
ここで、ケトン部位をケタールで保護する方法としては、ケトン基を有する前駆体化合物を、酸触媒存在下で1官能および/または2官能アルコールと反応させる方法が挙げられる。例えば、ケトン前駆体の4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンと1官能および/または2官能アルコール、脂肪族又は芳香族炭化水素などの溶媒中で臭化水素などの酸触媒の存在下で反応させることによって製造できる。アルコールは炭素数1~20の脂肪族アルコールである。
【0140】
ケタールモノマーを製造するための改良法は、ケトン前駆体の4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノンと2官能アルコールをアルキルオルトエステル及び固体触媒の存在下に反応させることからなる。
【0141】
ケタールで保護したケトン部位の少なくとも一部を脱保護せしめ、ケトン部位とする方法は特に限定されるものではない。前記脱保護反応は、不均一又は均一条件下に水及び酸の存在下において行うことが可能であるが、機械強度、物理的耐久性、耐溶剤性の観点からは、膜等に成型した後で酸処理する方法がより好ましい。具体的には、成型された膜を塩酸水溶液や硫酸水溶液中に浸漬することにより脱保護することが可能であり、酸の濃度や水溶液の温度については適宜選択することができる。
【0142】
ポリマーに対して必要な酸性水溶液の重量比は、好ましくは1~100倍であるけれども更に大量の水を使用することもできる。酸触媒は好ましくは存在する水の0.1~50重量%の濃度において使用する。好適な酸触媒としては塩酸、硝酸、フルオロスルホン酸、硫酸などのような強鉱酸、及びp-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンルスホン酸などのような強有機酸が挙げられる。ポリマーの膜厚等に応じて、酸触媒及び過剰水の量、反応圧力などは適宜選択できる。
【0143】
例えば、膜厚50μmの膜であれば、6N塩酸水溶液に例示されるような酸性水溶液中に浸漬し、95℃で1~48時間加熱することにより、容易にほぼ全量を脱保護することが可能である。また、25℃の1N塩酸水溶液に24時間浸漬しても、大部分の保護基を脱保護することは可能である。ただし、脱保護の条件としてはこれらに限定される物ではなく、酸性ガスや有機酸等で脱保護したり、熱処理によって脱保護しても構わない。
【0144】
芳香族ポリエーテル系重合体が直接結合等のエーテル結合以外の結合様式を含む場合においても、加工性向上の点から、導入される保護基の位置としては芳香族エーテル系重合体部分であることがより好ましい。
【0145】
具体的には、例えば前記一般式(P3)および(P4)で表される構成単位を含有する芳香族ポリエーテル系重合体は、芳香族ジフェノール化合物としてそれぞれ下記一般式(P3-1)および(P4-1)で表される化合物を使用し、芳香族活性ジハライド化合物との芳香族求核置換反応により合成することが可能である。前記一般式(P3)および(P4)で表される構成単位が芳香族ジフェノール化合物、芳香族活性ジハライド化合物のどちら側由来でも構わないが、モノマーの反応性を考慮して芳香族ジフェノール化合物由来を使用する方がより好ましい。
【0146】
【化20】
【0147】
(一般式(P3-1)および(P4-1)において、Ar11~Ar14は任意の2価のアリーレン基、RおよびRはHおよびアルキル基から選ばれた少なくとも1種の基、Rは任意のアルキレン基、EはOまたはSを表す。一般式(P3-1)および一般式(P4-1)で表される化合物は任意に置換されていてもよい。)以上、好ましい保護基について説明した。
【0148】
本発明におけるブロック共重合体を構成するイオン性セグメントの数平均分子量および/または非イオン性セグメントの数平均分子量を制御することによって、ブロック共重合体の相分離構造の平均周期サイズの調整や寸法変化率、機械的耐久性を向上することができる。例えば、イオン性セグメントの数平均分子量は、相分離構造の平均周期サイズを拡大し、プロトン伝導性を向上するという観点から、10,000~150,000の範囲が好ましく、20,000~120,000の範囲がより好ましく、45,000~100,000の範囲が特に好ましい。一方、非イオン性セグメントの数平均分子量は、寸法変化率や機械的耐久性を向上するという観点から、5,000~50,000の範囲が好ましく、10,000~40,000の範囲がより好ましく、15,000~30,000の範囲が特に好ましい。
【0149】
本発明における第1のリンカーの構造をセグメント中に有することで、モノマーの共重合反応だけでは目的の数平均分子量を達成することが困難な場合でも、セグメントの高分子量化を可能とし、上記の好ましい数平均分子量の範囲にセグメントの分子量を容易に調節することができる。
【0150】
また、本発明におけるブロック共重合体において、イオン性セグメントの数平均分子量をMn1、非イオン性セグメントの数平均分子量をMn2としたとき、下記式1を満たすことが好ましく、下記式2を満たすことがより好ましい。このようなブロック共重合体は、ブロック共重合反応が適切に進行し、高分子量のブロック共重合体を得ることができること、およびプロトン伝導に適した相分離構造を形成することができることから、好ましい。
1.7≦Mn1/Mn2≦7.0 (式1)
2.0≦Mn1/Mn2≦5.0 (式2)。
【0151】
本発明におけるブロック共重合体において、ブロック共重合体の数平分子量をMn3としたとき、下記式3を満たすことが好ましく、下記式4を満たすことがより好ましい。
Mn3/(Mn1+Mn2)>1 (式3)
Mn3/(Mn1+Mn2)≧1.2 (式4)。
【0152】
式3の関係を満たす場合、ブロック共重合体を含む高分子電解質材料においてプロトン伝導性に適した相分離が形成されやすく、低加湿条件下における高いプロトン伝導性が実現される。
【0153】
本発明のブロック共重合体のイオン交換容量は、プロトン伝導性と耐水性のバランスの点から、0.1~5meq/gが好ましく、より好ましくは1.5meq/g以上、最も好ましくは2meq/g以上である。また、3.5meq/g以下がより好ましく、最も好ましくは3meq/g以下である。
【0154】
イオン性セグメントのイオン交換容量は、低加湿条件下でのプロトン伝導性の点から、高いことが好ましく、より好ましくは2.5meq/g以上、さらに好ましくは、3meq/g以上、最も好ましくは3.5meq/g以上である。また、6.5meq/g以下がより好ましく、5meq/g以下がさらに好ましく、最も好ましいのは4.5meq/g以下である。
【0155】
非イオン性セグメントのイオン交換容量は、耐熱水性、機械強度、寸法安定性、物理的耐久性の点から、低いことが好ましく、より好ましくは1meq/g以下、さらに好ましくは0.5meq/g、最も好ましくは0.1meq/g以下である。
【0156】
ここで、イオン交換容量とは、ブロック共重合体、高分子電解質材料、および高分子電解質膜の単位乾燥重量当たりに導入されたイオン交換基のモル量である。イオン交換容量は、元素分析、中和滴定法等により測定が可能である。イオン交換基がスルホン酸基である場合、元素分析法を用い、S/C比から算出することもできるが、スルホン酸基以外の硫黄源を含む場合などは測定することが難しい。従って、本発明においては、イオン交換容量は、後述の中和滴定法により求めた値と定義する。
【0157】
(ブロック共重合体の製造方法)
本発明のブロック共重合体の製造方法を以下に例示するが、本発明はこれらに限定されない。
【0158】
本発明のブロック共重合体の製造方法は、下記工程(1)を少なくとも含むものであり、工程(1)の後に下記工程(2)を含むことが好ましい。
【0159】
工程(1):上記構成単位を与える化合物と、第1のリンカーを与える化合物とを反応させる工程。なお、この工程では構成単位間を第1のリンカーによって連結した、イオン性セグメントおよび非イオン性セグメントを与える化合物の少なくとも一方が得られる。
【0160】
工程(2):工程(1)で得た生成物、すなわち、イオン性セグメントを与える化合物または非イオン性セグメントを与える化合物と、もう一方のセグメントを与える化合物とを反応させる工程。なお、もう一方のセグメントを与える化合物とは、工程(1)で得た化合物がイオン性セグメントを与える化合物である場合は、非イオン性セグメントを与える化合物を意味し、工程(1)で得た化合物が非イオン性セグメントを与える化合物である場合は、イオン性セグメントを与える化合物を意味する。
【0161】
ここで工程(1)によって、イオン性セグメントおよび非イオン性セグメントを与える化合物のいずれか一方のみを得ても良いし、イオン性セグメントおよび非イオン性セグメントの両方の化合物を得ても良い。工程(1)で両方の化合物を得た場合、工程(2)では、工程(1)で得られた化合物同士を反応させてブロック共重合体を得る。
【0162】
これら工程(1)~工程(2)を備えることにより、プロセス性に優れ、かつ、両セグメントの交互導入によって、相分離構造やドメインサイズが厳密に制御された低加湿プロトン伝導性に優れたブロック共重合体を得ることができる。
【0163】
工程(1)において、構成単位を与える化合物と第1のリンカーを与える化合物とを反応させ、セグメントを与える化合物を得る際に、目的の数平均分子量に達しなかった場合、反応系に第1のリンカーを与える化合物を追加で加えても良い。逐次的に第1のリンカーを与える化合物を反応系中に加えることで、セグメントを与える化合物の目的の数平均分子量への調整を容易にかつ精密に行うことができる。
【0164】
本発明のブロック共重合体の製造方法は、工程(2)の前に、以下の工程(1’)を含むことがさらに好ましい。
【0165】
工程(1’):イオン性セグメントを与える化合物および非イオン性セグメントを与える化合物のいずれか一方の化合物と、第2のリンカーを与える化合物とを反応させて、いずれか一方の化合物の両末端に第2のリンカーを導入する工程。
【0166】
このとき、第2のリンカーを与える化合物と反応させるセグメントは、工程(1)で第1のリンカーを導入したセグメントであっても良いし、第1のリンカーを導入していないセグメントであっても良い。工程(1’)を有することで、ブロック共重合反応における副反応などを抑制しながら、異なるセグメント間を連結することができ、より厳密に構造が制御されたブロック共重合体を得ることができる。
【0167】
本発明におけるブロック共重合体のさらに具体的な製造方法を以下に例示する。ただし、本発明は、これらに限定されない。
【0168】
本発明に用いられる各セグメント及び構成単位は、芳香族求核置換反応によって合成することが、プロセス上容易であることから好ましい。芳香族求核置換反応は、ジハライド化合物とジオール化合物のモノマー混合物を塩基性化合物の存在下で反応させる方法である。重合は、0~350℃の温度範囲で行うことができるが、50~250℃の温度であることが好ましい。反応は、無溶媒下で行うこともできるが、溶媒中で行うことが好ましい。使用できる溶媒としては、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、N-メチル-2-ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒などを挙げることができるが、これらに限定されることはなく、芳香族求核置換反応において安定な溶媒として使用できるものであればよい。これらの有機溶媒は、単独でも2種以上の混合物として使用されても良い。
【0169】
塩基性化合物としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム等があげられるが、ジオール類を活性なフェノキシド構造にし得るものであれば、これらに限定されず使用することができる。また、フェノキシドの求核性を高めるために、18-クラウン-6などのクラウンエーテルを添加することも好適である。クラウンエーテル類は、スルホン酸基のナトリウムイオンやカリウムイオンに配位して有機溶媒に対するモノマーやポリマーのスルホン酸塩部の溶解性が向上する場合があり、好ましく使用できる。
【0170】
芳香族求核置換反応においては、副生物として水が生成する場合がある。この際は、重合溶媒とは関係なく、トルエンなどを反応系に共存させて共沸物として水を系外に除去することもできる。水を系外に除去する方法としては、モレキュラーシーブなどの吸水剤を使用することもできる。
【0171】
本発明におけるブロック共重合体は、ブロック共重合体前駆体を合成した後、前駆体に含有される保護基の少なくとも一部を脱保護させることにより製造することが出来る。
【0172】
本発明のブロック共重合体の製造方法として、上記工程(1)~(2)について具体的に例示する。ただし、本発明は、これらに限定されない。
【0173】
工程(1):両末端に-OM基(Mは、水素原子、金属カチオンまたはアンモニウムカチオンを表す。)を有する構成単位を与える化合物と、ハライド反応基を2つ以上有する第1のリンカーを与える化合物とを反応させ、構成単位間をリンカー(L1)によって連結した、両末端に-OM基を有するイオン性セグメントを与える化合物および非イオン性セグメントを与える化合物の少なくとも一方を得る工程。
【0174】
工程(1’):両末端に-OM基を有するイオン性セグメントを与える化合物および非イオン性セグメントを与える化合物のいずれか一方の化合物と、ハライド反応基を2つ以上有する第2のリンカーを与える化合物とを反応させて、いずれか一方の化合物の両末端に第2のリンカー部位を導入する工程。
【0175】
工程(2):イオン性セグメントまたは、非イオン性セグメントを与える化合物の両末端の-OM基と、もう一方のセグメントを与える化合物の両末端の第2のリンカー部位とを反応させる工程。
【0176】
両末端とも-OM基であるような一般式(S1)で表されるセグメントと、両末端とも-OM基であるような一般式(S3)で表されるセグメントを与える化合物の具体例としては、それぞれ、下記一般式(H3-1)、(H3-2)で表される構造のセグメントが挙げられる。また、一般式(H3-1)、(H3-2)で表される構造のセグメントをそれぞれ第2のリンカーとしてハライドリンカーと反応させ、両末端にリンカー(L2)を導入した後の構造としては、例えば、それぞれ下記一般式(H3-3)、(H3-4)で表される構造が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0177】
【化21】
【0178】
上記一般式(H3-1)~(H3-4)において、N、N、N、Nはそれぞれ独立して1~200の整数を表す。
【0179】
イオン性セグメントがリンカー(L1)を有するものである場合、上記工程(1)により得られる、リンカー部位を導入したイオン性セグメントを与える化合物の具体例としては、下記一般式(H3-1L)で表される構造が挙げられ、さらに第2のリンカーを両末端に導入した具体例としては、下記一般式(H3-3L)で表される構造が挙げられる。非イオン性セグメントがリンカー(L1)を有するものである場合、上記工程(1)により得られるリンカー部位を導入した非イオン性セグメントを与える化合物の具体例としては、下記一般式(H3-2L)で表される構造が挙げられ、さらに第2のリンカーを両末端に導入した具体例としては、下記一般式(H3-4L)で表される構造が挙げられる。ただし、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0180】
【化22】
【0181】
上記一般式(H3-1L)~(H3-4L)において、N5、N6、N7、N8はそれぞれ独立して1~200の整数を表す。
【0182】
一般式(H3-1)~(H3-4)、(H3-1L)~(H3-4L)において、ハロゲン原子はF、末端-OM基は-OK基、アルカリ金属はNaおよびKでそれぞれ示しているが、これらに限定されることなく使用することが可能である。また、これらの式は読み手の理解を助ける目的で挿入するものであり、ポリマーの重合成分の化学構造、正確な組成、並び方、スルホン酸基の位置、数、分子量などを必ずしも正確に表すわけではなく、これらに限定されるものでない。
【0183】
さらに、一般式(H3-1)~(H3-4)、(H3-1L)~(H3-4L)では、いずれのセグメントに対しても、保護基としてケタール基を導入したが、本発明においては、結晶性が高く溶解性が低い成分に保護基を導入すればよい。したがって、上記イオン性セグメントには必ずしも保護基が必要ではなく、耐久性や寸法安定性の観点から、保護基がないものも好ましく使用できる。
【0184】
本発明のブロック共重合体は、相分離構造を有することが好ましい。相分離構造は、イオン性セグメントと非イオン性セグメントの分子鎖長、凝集状態およびその形状を制御することによって形成できる。相分離構造の形態として、シリンダー構造、海島構造、ラメラ構造や共連続構造が挙げられる。中でも、共連続構造が好ましい。ブロック共重合体が共連続様相分離構造を有する場合は、3次元的に連続したプロトン伝導チャネルが形成されるので、優れたプロトン伝導性を実現できる。また、非イオン性の疎水性セグメントも同様に3次元的に連続したドメインを形成するので、優れた燃料遮断性、耐溶剤性や寸法安定性、機械強度、物理的耐久を有する。
【0185】
ブロック共重合体が相分離構造を有することは、ブロック共重合体を適当な溶媒に溶解あるいは分散した溶液を支持基材上に塗布、乾燥して得られた「膜」を、透過型電子顕微鏡(TEM)、小角X線散乱(SAXS)、原子間力顕微鏡(AFM)等で分析することによって確認することができる。
【0186】
また、本発明のブロック共重合体を含む、高分子電解質材料、高分子電解質成型体および高分子電解質膜も、相分離構造を有することが好ましく、共連続様相分離構造を有することが特に好ましい。詳細は後述する。
【0187】
(高分子電解質成型体)
本発明のブロック共重合体は、高分子電解質材料として好適であり、高分子電解質成型体として加工することができる。上記成型体としての形態は特に限定されるものではないが、例えば電極触媒層のバインダー、繊維、膜、棒、などが挙げられる。中でも膜、バインダーが好ましく、膜が特に好ましい。上記成型体は、相分離構造を有することが好ましく、共連続様相分離構造を有することが特に好ましい。
【0188】
(高分子電解質膜)
本発明のブロック共重合体を電解質材料として用いた高分子電解質膜は、相分離構造を有することが好ましく、共連続な相分離構造を有することが特に好ましい。相分離構造は、上記と同様に、透過型電子顕微鏡(TEM)、小角X線散乱(SAXS)、原子間力顕微鏡(AFM)等によって分析することが可能である。
【0189】
本発明のブロック共重合体を用いた高分子電解質成型体および高分子電解質膜としては、TEMによる観察を5万倍で行った場合に、相分離構造が観察され、画像処理により計測した平均周期サイズが8nm以上、300nm以下であるものが好ましい。中でも、平均周期サイズが10nm以上、200nm以下がより好ましく、最も好ましくは15nm以上、150nm以下である。なお周期サイズとは、イオン性セグメントが凝集して形成するドメインと非イオン性セグメントが凝集して形成するドメインの周期長のことである。
【0190】
本発明のブロック共重合体を膜に成型する場合、ケタール等の保護基を有する段階で、溶液状態より製膜する方法あるいは溶融状態より製膜する方法等が可能である。前者では、たとえば、該高分子電解質材料をN-メチル-2-ピロリドン等の溶媒に溶解し、その溶液をガラス板等の上に流延塗布し、溶媒を除去することにより製膜する方法が例示できる。
【0191】
製膜に用いる溶媒としては、ブロック共重合体を溶解し、その後に除去し得るものであればよく、例えば、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド、Nメチル-2ピロリドン、ジメチルスルホキシド、スルホラン、1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノン、ヘキサメチルホスホントリアミド等の非プロトン性極性溶媒、γ-ブチロラクトン、酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネートなどのカーボネート系溶媒、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル等のアルキレングリコールモノアルキルエーテル、あるいはイソプロパノールなどのアルコール系溶媒、水およびこれらの混合物が好適に用いられるが、非プロトン性極性溶媒が最も溶解性が高く好ましい。また、イオン性セグメントの溶解性を高めるために、18-クラウン-6などのクラウンエーテルを添加することも好適である。
【0192】
また、本発明において、ブロック共重合体を使用して溶液製膜する場合には、溶媒の選択は相分離構造に対して重要であり、非プロトン性極性溶媒と極性の低い溶媒を混合して使用することも好適な方法である。
【0193】
必要な固形分濃度に調製したポリマー溶液を常圧の濾過もしくは加圧濾過などに供し、高分子電解質溶液中に存在する異物を除去することは強靱な膜を得るために好ましい方法である。ここで用いる濾材は特に限定されるものではないが、ガラスフィルターや金属性
フィルターが好適である。該濾過で、ポリマー溶液が通過する最小のフィルターの孔径は、1μm以下が好ましい。
【0194】
本発明のブロック共重合体を高分子電解質膜へ転化する方法としては、例えば、該ブロック共重合体から構成される膜を上記手法により作製後、保護基で保護した部位の少なくとも一部を脱保護するものである。例えば、保護基としてケタール部位を有する場合、ケタールで保護したケトン部位の少なくとも一部を脱保護し、ケトン部位とする。この方法によれば、溶解性に乏しいブロック共重合体の溶液製膜が可能となり、プロトン伝導性と機械強度、物理的耐久性を両立することができる。
【0195】
また、含まれるイオン性基がアルカリ金属またはアルカリ土類金属の陽イオンと塩を形成した状態で電解質膜を成型した後に、当該アルカリ金属またはアルカリ土類金属の陽イオンをプロトンと交換する工程を行っても良い。この工程は、成型後の膜を酸性水溶液と接触させる工程であることが好ましく、特に成型後の膜を酸性水溶液に浸漬する工程であることがより好ましい。この工程においては、酸性水溶液中のプロトンがイオン性基とイオン結合している陽イオンと置換されるとともに、残留している水溶性の不純物や、残存モノマー、溶媒、残存塩などが同時に除去される。
【0196】
酸性水溶液は特に限定されないが、硫酸、塩酸、硝酸、酢酸、トリフルオロメタンスルホン酸、メタンスルホン酸、リン酸、クエン酸などを用いることが好ましい。酸性水溶液の温度や濃度等も適宜決定すべきであるが、生産性の観点から0℃以上80℃以下の温度で、3質量%以上、30質量%以下の硫酸水溶液を使用することが好ましい。
【0197】
本発明における高分子電解質膜の膜厚としては、実用に耐える膜の機械強度、物理的耐久性を得るには1μm以上がより好ましく、膜抵抗の低減つまり発電性能の向上のためには2,000μm以下が好ましい。膜厚のさらに好ましい範囲は3μm以上200μm以下である。膜厚は、溶液濃度あるいは基板上への塗布厚により制御することができる。
【0198】
また、本発明における高分子電解質膜は、通常の高分子化合物に使用される結晶化核剤、可塑剤、安定剤、酸化防止剤あるいは離型剤等の添加剤を、本発明の目的に反しない範囲内で含有していてもよい。
【0199】
また、本発明によって得られるブロック共重合体からなる高分子電解質膜は、前述の諸特性に悪影響をおよぼさない範囲内で、機械的強度、熱安定性、加工性などの向上を目的に、各種ポリマー、エラストマー、フィラー、微粒子、各種添加剤などを含有していてもよい。また、高分子電解質膜を、微多孔膜、不織布、メッシュ等で補強しても良い。
【0200】
本発明のブロック共重合体は、高分子電解質材料として、高分子電解質成型体、高分子電解質膜とすることで、種々の用途に適用可能である。例えば、人工皮膚などの医療用途、ろ過用途、耐塩素性逆浸透膜などのイオン交換樹脂用途、各種構造材用途、電気化学用途、加湿膜、防曇膜、帯電防止膜、脱酸素膜、太陽電池用膜、ガスバリアー膜に適用可能である。中でも種々の電気化学用途により好ましく利用できる。電気化学用途としては、例えば、固体高分子形燃料電池、レドックスフロー電池、水電解装置、クロロアルカリ電解装置、電気化学式水素ポンプ、水電解式水素発生装置が挙げられる。
【0201】
固体高分子形燃料電池、電気化学式水素ポンプ、および水電解式水素発生装置において、高分子電解質膜は、両面に触媒層、電極基材及びセパレータが順次積層された構造体で使用される。このうち、電解質膜の両面に触媒層を積層させたもの(即ち触媒層/電解質膜/触媒層の層構成のもの)は触媒層付電解質膜(CCM)と称され、さらに電解質膜の両面に触媒層及びガス拡散基材を順次積層させたもの(即ち、ガス拡散基材/触媒層/電解質膜/触媒層/ガス拡散基材の層構成のもの)は、膜電極複合体(MEA)と称されている。本発明のブロック共重合体は、こうしたCCMおよびMEAを構成する高分子電解質膜として特に好適に用いられる。
【実施例
【0202】
(1)ポリマーの分子量
ポリマーの数平均分子量、重量平均分子量をGPCにより測定した。紫外検出器と示差屈折計の一体型装置として東ソー(株)製HLC-8022GPCを、またガードカラムとして、東ソー(株)製TSKgelGuardColumnSuperH-H(内径4.6mm、長さ3.5cm)を用い、GPCカラムとして東ソー(株)製TSKgelSuperHM-H(内径6.0mm、長さ15cm)2本を用い、N-メチル-2-ピロリドン溶媒(臭化リチウムを10mmol/L含有するN-メチル-2-ピロリドン溶媒)にて、サンプル濃度0.1wt%、流量0.2mL/min、温度40℃、測定波長265nmで測定し、標準ポリスチレン換算により数平均分子量、重量平均分子量を求めた。
【0203】
(2)イオン交換容量(IEC)
以下の1]~4]に示す中和滴定法により測定した。測定は3回実施し、その平均値を取った。
1]プロトン置換し、純水で十分に洗浄したブロック共重合体の水分を拭き取った後、100℃にて12時間以上真空乾燥し、乾燥重量を求めた。
2]ブロック共重合体に5wt%硫酸ナトリウム水溶液を50mL加え、12時間静置してイオン交換した。
3]0.01mol/L水酸化ナトリウム水溶液を用いて、生じた硫酸を滴定した。指示薬として市販の滴定用フェノールフタレイン溶液0.1w/v%を加え、薄い赤紫色になった点を終点とした。
4]IECは下記式により求めた。
IEC(meq/g)=〔水酸化ナトリウム水溶液の濃度(mmol/mL)×滴下量(mL)〕/試料の乾燥重量(g)。
【0204】
(3)乾湿寸法変化率
電解質膜(検体)を3mm×20mmの長方形にカットして試料片とした。温湿度調整機能付炉を有する熱機械分析装置TMA/SS6100((株)日立ハイテクサイエンス製)のサンプルホルダーに上記試料片の長辺が測定方向となるように設置し、20mNの応力がかかるよう設定した。炉内で、23℃、50%RHで試料を1時間定常化し、この試料片の長さをゼロ点とした。炉内温度を23℃で固定し、30分かけて30%RH(乾燥条件)に湿度調整し、20分間ホールドした。次に30分かけて90%RH(加湿条件)に湿度調整した。この乾湿サイクル(30%RH-90%RH)を1サイクルとして、10サイクル目の30%RHの寸法変化率(%)と90%RHの寸法変化率(%)の差を、乾湿寸法変化率(%)とした。
【0205】
(4)透過型電子顕微鏡(TEM)による相分離構造の観察
染色剤として2重量%酢酸鉛水溶液中に試料片を浸漬させ、25℃下で72時間放置した。染色処理された試料を取りだし、エポキシ樹脂で包埋した。ウルトラミクロトームを用いて室温下で薄片80nmを切削し、得られた薄片をCuグリッド上に回収しTEM観察に供した。観察は加速電圧100kVで実施し、撮影は、写真倍率として×20,000、×40,000になるように撮影を実施した。機器としては、HT7700((株)日立ハイテク製)を使用した。
【0206】
(5)透過型電子顕微鏡(TEM)トモグラフィーによる相分離構造の観察
上記(4)記載の方法にて作成した薄片試料を、コロジオン膜上にマウントし、以下の条件に従って観察を実施した。
装置: 電界放出型電子顕微鏡(HRTEM)日本電子(株)製JEM 2100F
画像取得: DigitalMicrograph(Gatan社製)
システム: マーカー法
加速電圧: 200kV
撮影倍率: 30,000倍
傾斜角度: +60°~-62°
再構成解像度: 0 .71nm/pixel。
【0207】
3次元再構成処理は、マーカー法を適用した。3次元再構成を実施する際の位置合わせマーカーとして、コロジオン膜上に付与したAuコロイド粒子を用いた。マーカーを基準として、+61°から-62° の範囲で、試料を1°毎に傾斜しTEM像を撮影する連続傾斜像シリーズより取得した計124枚のTEM像を基にCT再構成処理を実施、3次元相分離構造を観察した。
【0208】
(6)プロトン伝導度
セルの白金電極上にイソプロパノールベースのカーボンペースト(イーエムジャパン(株)製 G7711)を塗布し、18mm×6mmにカットされた拡散層電極(E-TEK社製 ELAT GDL 140-HT)を貼り付けた。セルの電極間に30mm×8mmにカットした電解質膜を配置し、セルを1MPaで締結してMTS740のチャンバー内に格納した。電解質膜の膜厚方向のプロトン抵抗はMTS740膜抵抗測定システム(Scribner社製)で評価した。MTS740は温度制御したチャンバー内にセルを格納し、加湿器を通してチャンバー内にマスフローコントローラーで空気ガスを供給した。セルには周波数応答アナライザーPSM1735(Newtons4th社製)が接続されており、交流信号を1MHzから1KHzに掃引することにより抵抗を求めることができる。
【0209】
MTS740とPSM1735はパソコンに接続されソフトウェアでコントロールすることができる。チャンバーの温度を80℃に設定した後、90%RHの空気ガスを供給し1時間保持し電解質膜を十分湿潤させた。その後、20%RHの空気を供給し乾燥させ、30%RHの空気を供給し30分保持し抵抗を測定した。このとき周波数は1MHzから1KHzまで掃引した。その後、80%RHの空気を供給し30分保持し同様に抵抗を測定した。測定した抵抗のデータからCole-Coleプロットを作成した。1MHz付近の周波数帯はセルとPSM1735を接続するケーブルのインダクタンス成分の影響を受けるため、その影響が少ない200kHzの実軸の値を抵抗値(Ω)とした。30%RHの空気を供給した際のプロトン伝導度を低加湿プロトン伝導度、80%RHの空気を供給した際のプロトン伝導度を高加湿プロトン伝導度として、測定した抵抗値を用いて以下の式より、プロトン伝導度を算出した。
プロトン伝導度(mS/cm)=1/(抵抗値(Ω)×アクティブエリア(cm)/試料厚(cm))。
【0210】
合成例1(下記式(G1)で表される2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキソラン(K-DHBP)の合成)
攪拌器、温度計及び留出管を備えた500mLフラスコに、4,4’-ジヒドロキシベンゾフェノン49.5g、エチレングリコール134g、オルトギ酸トリメチル96.9g及びp-トルエンスルホン酸一水和物0.50gを仕込み、溶液とした。その後78~82℃で2時間保温攪拌した。更に、内温を120℃まで徐々に昇温し、ギ酸メチル、メタノール、オルトギ酸トリメチルの留出が完全に止まるまで120℃に保った。この反応液を室温まで冷却した後、反応液を酢酸エチルで希釈した。有機層を5%炭酸カリウム水溶液100mLで洗浄し分液した後、溶媒を留去した。残留物にジクロロメタン80mLを加え結晶を析出させ、これを濾過し、乾燥して、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)-1,3-ジオキソラン52.0gを得た。純度は99.9%であった。
【0211】
【化23】
【0212】
合成例2(下記式(G2)で表されるジソジウム-3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノンの合成)
4,4’-ジフルオロベンゾフェノン109.1g(アルドリッチ試薬)を発煙硫酸(50%SO)150mL(和光純薬試薬)中、100℃で10時間反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩(NaCl)200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、ジソジウム-3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノンを得た。純度は99.3%であった。
【0213】
【化24】
【0214】
合成例3(下記式(G3)で表される3,3’-ジスルホン酸ナトリウム塩-4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンの合成)
4,4-ジフルオロジフェニルスルホン109.1g(アルドリッチ試薬)を発煙硫酸(50%SO)150mL(和光純薬試薬)中、100℃で10時間反応させた。その後、多量の水中に少しずつ投入し、NaOHで中和した後、食塩200gを加え合成物を沈殿させた。得られた沈殿を濾別し、エタノール水溶液で再結晶し、3,3’-ジスルホン酸ナトリウム塩-4,4’-ジフルオロジフェニルスルホンを得た。純度は99.3%であった。
【0215】
【化25】
【0216】
実施例1
(下記一般式(G4)で表される非イオン性オリゴマーa1の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム16.59g(アルドリッチ試薬、120mmol)、合成例1で得たK-DHBP25.83g(100mmol)および4,4’-ジフルオロベンゾフェノン21.38g(アルドリッチ試薬、98mmol)を入れた。装置内を窒素置換した後、N-メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mLを加え、150℃で脱水した後、昇温してトルエンを除去し、170℃で3時間重合を行った。多量のメタノールに再沈殿精製を行い、非イオン性オリゴマーa1の末端ヒドロキシ体を得た。この非イオン性オリゴマーa1の末端ヒドロキシ体数平均分子量は20,000であった。
【0217】
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、上記非イオン性オリゴマーa1の末端ヒドロキシ体を20.0g(1mmol)入れた。装置内を窒素置換した後、NMP100mL、トルエン30mLを加え、100℃で脱水した後、昇温してトルエンを除去した。さらに、ヘキサフルオロベンゼン1.1g(アルドリッチ試薬、6mmol)を入れ、105℃で12時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記一般式(G4)で示される非イオン性オリゴマーa1(末端:フルオロ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa1の数平均分子量は21,000であった。一般式(G4)中、mは1以上の整数を表す。
【0218】
【化26】
【0219】
(下記一般式(G5)で表されるイオン性オリゴマーa2の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム27.64g(アルドリッチ試薬、200mmol)、合成例1で得たK-DHBP12.91g(50mmol)、4,4’-ビフェノール9.31g(アルドリッチ試薬、50mmol)、合成例2で得たジソジウム-3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノン41.60g(98.5mmol)および18-クラウン-6を26.40g(和光純薬100mmol)入れた。装置内を窒素置換した後、NMP300mL、トルエン100mLを加え、150℃で脱水した後、昇温してトルエンを除去し、170℃で6時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記一般式(G5)で示されるイオン性オリゴマーa2(末端:ヒドロキシ基)を得た。このイオン性オリゴマーa2の数平均分子量は45,000であった。なお、一般式(G5)において、Mは、水素原子、NaまたはKを表し、nは1以上の整数を表す。
【0220】
【化27】
【0221】
(下記一般式(G6)で表されるイオン性オリゴマーa2’の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、400mmol)およびイオン性オリゴマーa2を49.0g入れた。装置内を窒素置換した後、NMP500mLを加え、60℃で内容物を溶解させた後に、ヘキサフルオロベンゼン/NMP溶液(1wt%)を19.8g加えた。80℃で18時間反応を行い、一般式(G6)で示されるイオン性オリゴマーa2’(末端:OM)を含むNMP溶液を得た。このイオン性オリゴマーa2’の数平均分子量は90,000であった。なお、一般式(G6)において、Mは、水素原子、NaまたはKを表し、nは1以上の整数を表す。
【0222】
【化28】
【0223】
(イオン性セグメントとしてオリゴマーa2’、非イオン性セグメントとしてオリゴマーa1を含有するブロック共重合体b1の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mL SUS製重合装置に、イオン性オリゴマーa2’を49.0gおよび非イオン性オリゴマーa1を7.65g入れ、オリゴマーの総仕込み量が7wt%となるようにNMPを加えて、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコール/NMP混合液(重量比2/1)への再沈殿を行い、多量のイソプロピルアルコールで精製を行い、ブロック共重合体b1を得た。このブロック共重合体b1の数平均分子量は170,000であり、重量平均分子量は410,000であった。
【0224】
得られたブロック共重合体b1を溶解させた20重量%NMP溶液を、ガラス繊維フィルターにより加圧ろ過した後、ガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4時間乾燥し、膜状成型体を得た。この成型体を10質量%硫酸水溶液に80℃で24時間浸漬して、プロトン置換、脱保護反応した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄し、高分子電解質膜A(膜厚10μm)を得た。TEMおよびTEMトモグラフィー観察により、共連続様の相分離構造が確認でき、イオン性基を含有する親水性ドメイン、イオン性基を含有しない疎水性ドメインともに連続相を形成していた。
【0225】
実施例2
(一般式(G4)で表される非イオン性オリゴマーa3の合成)
4,4’-ジフルオロベンゾフェノンの使用量を21.45gとしたこと以外はオリゴマーa1の末端ヒドロキシ体の合成と同様にして、オリゴマーa3の末端ヒドロキシ体を得た。このオリゴマーa3の末端ヒドロキシ体の数平均分子量は25,000であった。
【0226】
オリゴマーa1の末端ヒドロキシ体の代わりにオリゴマーa3の末端ヒドロキシ体25.0gを用いたこと以外はオリゴマーa1の合成と同様にして、一般式(G4)で示される非イオン性オリゴマーa3(末端:フルオロ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa3の数平均分子量は26,000であった。
【0227】
(イオン性セグメントとしてオリゴマーa2’、非イオン性セグメントとしてオリゴマーa3を含有するブロック共重合体b2の合成)
非イオン性オリゴマーa1(7.65g)に代えて非イオン性オリゴマーa3(12.3g)を用いたこと以外はブロック共重合体b1の合成と同様にして、ブロック共重合体b2を得た。このブロック共重合体b3の数平均分子量は160,000であり、重量平均分子量は390,000であった。
【0228】
ブロック共重合体b1に代えてブロック共重合体b2を用いた以外は実施例1と同様の方法で、高分子電解質膜B(膜厚10μm)を得た。TEMおよびTEMトモグラフィー観察により、共連続様の相分離構造が確認でき、イオン性基を含有する親水性ドメイン、イオン性基を含有しない疎水性ドメインともに連続相を形成していた。
【0229】
実施例3
(下記一般式(G7)で表される非イオン性オリゴマーa1’の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)および非イオン性オリゴマーa1を20.0g(1mmol)入れた。装置内を窒素置換した後、NMP100mL、トルエン30mLを加え、100℃で脱水した後、昇温してトルエンを除去した。その後、2,6-ジフルオロベンゾニトリル0.84g(アルドリッチ試薬、6mmol)を入れ、105℃で12時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記一般式(G7)で示される非イオン性オリゴマーa1’(末端:フルオロ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa1’の数平均分子量は21,000であった。なお、一般式(G7)において、mは1以上の整数を表す。
【0230】
【化29】
【0231】
(一般式(G5)で表されるイオン性オリゴマーa4の合成)
ジソジウム-3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノンの使用量を41.38g(98.0mmol)としたこと以外はイオン性オリゴマーa2の合成と同様にして、イオン性オリゴマーa4を得た。このイオン性オリゴマーa4の数平均分子量は35,000であった。
【0232】
(下記一般式(G8)で表されるイオン性オリゴマーa4’の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、400mmol)およびイオン性基を含有するオリゴマーa4を37.16g入れた。装置内を窒素置換した後、NMP400mLを加え、60℃で内容物を溶解させた後に、2,6-ジフルオロベンゾニトリル/NMP溶液(1wt%)を11.4g加えた。80℃で18時間反応を行い、一般式(G8)で示されるイオン性オリゴマーa4’(末端:OM)を含むNMP溶液を得た。このイオン性オリゴマーa4’の数平均分子量は70,000であった。なお、一般式(G8)において、Mは、水素原子、NaまたはKを表し、nは1以上の整数を表す。
【0233】
【化30】
【0234】
(イオン性セグメントしてオリゴマーa4’、非イオン性セグメントとしてオリゴマーa1’を含有するブロック共重合体b3の合成)
イオン性オリゴマーa2’(49.0g)の代わりにイオン性オリゴマーa4’(37.16g)を用い、非イオン性オリゴマーa1’の使用量を5.80gとしたこと以外はブロック共重合体b1の合成と同様にして、ブロック共重合体b3を得た。このブロック共重合体b3の数平均分子量は、100,000であり、重量平均分子量は260,000であった。
【0235】
ブロック共重合体b1に代えてブロック共重合体b3を用いた以外は実施例1と同様の方法で、高分子電解質膜C(膜厚10μm)を得た。TEMおよびTEMトモグラフィー観察により、共連続様の相分離構造が確認でき、イオン性基を含有する親水性ドメイン、イオン性基を含有しない疎水性ドメインともに連続相を形成していた。
【0236】
実施例4
(下記一般式(G9)で表される非イオン性オリゴマーa5の合成)
4,4’-ジフルオロベンゾフェノンの代わりに、4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン(24.92g)を用いたこと以外はオリゴマーa1の末端ヒドロキシ体の合成と同様にして、オリゴマーa5の末端ヒドロキシ体を得た。このオリゴマーa5の末端ヒドロキシ体の数平均分子量は20,000であった。
【0237】
オリゴマーa1の末端ヒドロキシ体の代わりにオリゴマーa5の末端ヒドロキシ体を用いたこと以外はオリゴマーa1の合成と同様にして、一般式(G9)で示される非イオン性オリゴマーa5(末端フルオロ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa5の数平均分子量は、21,000であった。なお、一般式(G9)において、mは1以上の整数を表す。
【0238】
【化31】
【0239】
(下記一般式(G10)で表されるイオン性オリゴマーa6の合成)
ジソジウム-3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノン41.60gの代わりに合成例3で得た3,3’-ジスルホン酸ナトリウム塩-4,4’-ジフルオロジフェニルスルホン44.94g(98.1mmol)を用いたこと以外はイオン性オリゴマーa2の合成と同様にして、一般式(G10)で示されるイオン性オリゴマーa6(末端ヒドロキシ基)を得た。このイオン性オリゴマーa6の数平均分子量は41,000であった。なお、一般式(G10)において、Mは、水素原子、NaまたはKを表し、nは1以上の整数を表す。
【0240】
【化32】
【0241】
(下記一般式(G11)で表されるイオン性オリゴマーa6’の合成)
イオン性オリゴマーa2(49.0g)に代えてイオン性オリゴマーa6(45.76g)を用い、ヘキサフルオロベンゼン/NMP溶液(1wt%)19.8gに代えて2,6-ジフルオロベンゾニトリル/NMP溶液(1wt%)16.35gを用いたこと以外はイオン性オリゴマーa2’の合成と同様にして、一般式(G11)で示されるイオン性オリゴマーa6’(末端:OM)を含むNMP溶液を得た。このイオン性オリゴマーa6’の数平均分子量は82,000であった。なお、一般式(G11)において、Mは、水素原子、NaまたはKを表し、nは1以上の整数を表す。
【0242】
【化33】
【0243】
(イオン性セグメントとしてオリゴマーa6’、非イオンセグメントしてオリゴマーa5を含有するブロック共重合体b4の合成)
イオン性オリゴマーa2’(49.0g)の代わりにイオン性オリゴマーa6’(45.76g)を用い、非イオン性オリゴマーa1(7.65g)の代わりに非イオン性オリゴマーa5(13.12g)を用いたこと以外はブロック共重合体b1の合成と同様にして、ブロック共重合体b4を得た。このブロック共重合体b4の数平均分子量は、160,000であり、重量平均分子量は380,000であった。
【0244】
ブロック共重合体b1に代えてブロック共重合体b4を用いた以外は実施例1と同様の方法で、高分子電解質膜D(膜厚12μm)を得た。TEMおよびTEMトモグラフィー観察により、共連続様の相分離構造が確認でき、イオン性基を含有する親水性ドメイン、イオン性基を含有しない疎水性ドメインともに連続相を形成していた。
【0245】
実施例5
(下記一般式(G12)で表されるイオン性オリゴマー前駆体a7の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、乾燥したN,N-ジメチルアセトアミド(DMAc)200mLと、3-(2,5-ジクロロベンゾイル)ベンゼンスルホン酸ネオペンチル16.9g(42mmol)、4-クロロフェノール0.09g(0.7mmol)を入れて、窒素雰囲気下で、80℃で2時間撹拌した。その後、ビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル30g(109mmol)を入れて、4時間撹拌した。乾燥したDMAc300mLで希釈し、アセトンを1L注ぎ、凝固した後に、80℃で真空乾燥し、下記一般式(G12)で示されるイオン性オリゴマー前駆体a7(末端:ヒドロキシ基)を得た。数平均分子量は22,000であった。なお、一般式(G12)において、nは1以上の整数を表す。
【0246】
【化34】
【0247】
(下記一般式(G13)で表されるイオン性オリゴマー前駆体a7’の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、400mmol)およびイオン性オリゴマーa12を11.1g入れた。装置内を窒素置換した後、乾燥したDMAc200mLを加え、60℃で内容物を溶解させた後に、ヘキサフルオロベンゼン/DMAc溶液(1wt%)を30.6g加えた。80℃で24時間反応を行い、下記式(G13)で示されるイオン性オリゴマー前駆体a7’(末端:OM)を含むDMAc溶液を得た。イオン性オリゴマー前駆体a7’の数平均分子量は67,000であった。なお、一般式(G13)において、Mは、水素原子、NaまたはKを表し、nは1以上の整数を表す。
【0248】
【化35】
【0249】
(下記一般式(G14)で表される非イオン性オリゴマーa8の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、乾燥したNMP200mL、2,5-ジクロロベンゾフェノン10.08g(40mmol)および4-クロロフェノール0.12g(0.9mmol)を入れて、窒素雰囲気下で、80℃で2時間撹拌した。さらにビス(1,5-シクロオクタジエン)ニッケル30g(109mmol)を入れて、4時間撹拌した。乾燥したNMP300mLで希釈し、10wt%塩酸水溶液1Lに沈殿したあと、80℃で真空乾燥し、下記一般式(G14)で示される非イオン性オリゴマーa8の末端ヒドロキシ体を得た。数平均分子量は9,000であった。
【0250】
非イオン性オリゴマーa1の末端ヒドロキシ体20.0gの代わりに非イオン性オリゴマーa8の末端ヒドロキシ体9.0g(1mmol)を用いたこと以外は非イオン性オリゴマーa1の合成と同様にして、下記一般式(G14)で示される非イオン性オリゴマーa8(末端フルオロ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa8の数平均分子量は10,000であった。なお、一般式(G14)において、mは1以上の整数を表す。
【0251】
【化36】
【0252】
(下記一般式(G15)で表される、イオン性セグメントとしてイオン性オリゴマーa7”、非イオン性セグメントとしてオリゴマーa8を含有するブロック共重合体b5の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、イオン性オリゴマー前駆体a7’を11.1gおよび非イオン性オリゴマーa8を5.71g入れ、オリゴマーの総仕込み量が7wt%となるようにDMAcを加えて、105℃で24時間反応を行った。重合反応溶液をDMAc500mLで希釈し、30分撹拌し、セライトを濾過助剤に用い、濾過した。
【0253】
濾液をエバポレーターで濃縮し、残留物に臭化リチウム21.9g(0.253mol)を加え、内温110℃で7時間、窒素雰囲気下で反応させた。反応後、室温まで冷却し、アセトン3Lに注ぎ、凝固した。凝固物を濾集、風乾後、ミキサーで粉砕し、1N塩酸1500mLで攪拌しながら洗浄を行った。濾過後、生成物は洗浄液のpHが5以上となるまで、イオン交換水で洗浄した。その後、80℃で一晩乾燥し、下記一般式(G15)で表されるイオン性オリゴマーa7”を有するブロック共重合体b5を得た。一般式(G13)で表されるイオン性オリゴマー前駆体a7’の構造式及び数平均分子量から、イオン性オリゴマーa7”の数平均分子量は53,000と計算される。ブロック共重合体b5の数平均分子量は90,000であり、重量平均分子量は210,000であった。なお、一般式(G15)において、*は、非イオン性セグメントとの結合を表し、nは1以上の整数を表す。
【0254】
【化37】
【0255】
ブロック共重合体b5を、0.1g/gとなるようにNMP/メタノール=30/70(質量%)からなる溶媒に溶解させた。ガラス繊維フィルターにより加圧ろ過した後、ガラス基板上に流延塗布し、100℃にて4時間乾燥し、膜状成型体を得た。この成型体を10質量%硫酸水溶液に80℃で24時間浸漬した後に、大過剰量の純水に24時間浸漬して充分洗浄し、高分子電解質膜E(膜厚10μm)を得た。TEMおよびTEMトモグラフィー観察により、共連続様の相分離構造が確認でき、イオン性基を含有する親水性ドメイン、イオン性基を含有しない疎水性ドメインともに連続相を形成していた。
【0256】
比較例1
(一般式(G4)で表される非イオン性オリゴマーa9の合成)
4,4’-ジフルオロベンゾフェノンの使用量を20.84gとしたこと以外は非イオン性オリゴマーa1の末端ヒドロキシ体の合成と同様にして、非イオン性オリゴマーa9の末端ヒドロキシ体を得た。この非イオン性オリゴマーa9の末端ヒドロキシ体の数平均分子量は9,000であった。
【0257】
非イオン性オリゴマーa1の末端ヒドロキシ体20.0gの代わりに非イオン性オリゴマーa9の末端ヒドロキシ体9.0g(1mmol)を用いたこと以外は非イオン性オリゴマーa1の合成と同様にして、一般式(G4)で示される非イオン性オリゴマーa9(末端:フルオロ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa9の数平均分子量は10,000であった。
【0258】
(一般式(G5)で表されるイオン性オリゴマーa10の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム27.64g(アルドリッチ試薬、200mmol)、合成例1で得たK-DHBP12.91g(50mmol)、4,4’-ビフェノール9.31g(アルドリッチ試薬、50mmol、合成例2で得たジソジウム-3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノン41.47g(98.2mmol)および18-クラウン-6を26.40g(和光純薬100mmol)入れた。装置内を窒素置換した後、NMP300mL、トルエン100mLを加え、150℃で脱水した後、昇温してトルエンを除去し、170℃で6時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、一般式(G5)で示されるイオン性オリゴマーa10(末端:ヒドロキシ基)を得た。このイオン性オリゴマーa10の数平均分子量は42,000であった。
【0259】
(イオン性セグメントしてオリゴマーa10、非イオン性セグメントとしてオリゴマーa9を含有するブロック共重合体b6の合成)
イオン性オリゴマーa2’(49.0g)の代わりにイオン性オリゴマーa10(43.57g)を用い、非イオン性オリゴマーa1(7.65g)の代わりに非イオン性オリゴマーa9(10.89g)を用いたこと以外はブロック共重合体b1の合成と同様にして、ブロック共重合体b6を得た。このブロック共重合体b6の数平均分子量は140,000であり、重量平均分子量は400,000であった。
【0260】
ブロック共重合体b1に代えてブロック共重合体b6を用いた以外は実施例1と同様の方法で、高分子電解質膜F(膜厚10μm)を得た。TEMおよびTEMトモグラフィー観察により、共連続様の相分離構造が確認でき、イオン性基を含有する親水性ドメイン、イオン性基を含有しない疎水性ドメインともに連続相を形成していた。
【0261】
比較例2
(一般式(G4)で表される非イオン性オリゴマーa11の合成)
4,4’-ジフルオロベンゾフェノンの使用量を20.18gとしたこと以外は非イオン性オリゴマーa1の末端ヒドロキシ体の合成と同様にして、非イオン性オリゴマーa11の末端ヒドロキシ体を得た。この非イオン性オリゴマーa11の末端ヒドロキシ体の数平均分子量は5,000であった。
【0262】
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム2.2g(アルドリッチ試薬、16mmol)および非イオン性オリゴマーa11の末端ヒドロキシ体を10.0g入れた。装置内を窒素置換した後、NMP100mL、トルエン30mLを加え、100℃で脱水後、昇温してトルエンを除去し、ヘキサフルオロベンゼン2.2g(アルドリッチ試薬、12mmol)を入れ、105℃で12時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、一般式(G4)で示される非イオン性オリゴマーa11(末端:フルオロ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa11の数平均分子量は6,000であった。
【0263】
(イオン性セグメントとしてオリゴマーa10、非イオン性セグメントとしてオリゴマーa11を含有するブロック共重合体b7の合成)
非イオン性オリゴマーa9(10.89g)の代わりに非イオン性オリゴマーa11(6.81g)を用いたこと以外はブロック共重合体b6の合成と同様にして、ブロック共重合体b7を得た。このブロック共重合体b7の数平均分子量は130,000であり、重量平均分子量は400,000であった。
【0264】
ブロック共重合体b1に代えてブロック共重合体b7を用いた以外は実施例1と同様の方法で、高分子電解質膜G(膜厚10μm)を得た。TEMおよびTEMトモグラフィー観察により、共連続様の相分離構造が確認でき、イオン性基を含有する親水性ドメイン、イオン性基を含有しない疎水性ドメインともに連続相を形成していたが、一部連続していない構造が見られた。
【0265】
比較例3
(一般式(G9)で表される非イオン性オリゴマーa12の合成)
4,4’-ジフルオロベンゾフェノンの代わりに、4,4-ジフルオロジフェニルスルホン23.65gを用いたこと以外は非イオン性オリゴマーa1の末端ヒドロキシ体の合成と同様にして、非イオン性オリゴマーa12の末端ヒドロキシ体を得た。この非イオン性オリゴマーa12の末端ヒドロキシ体の数平均分子量は10,000であった。
【0266】
非イオン性オリゴマーa1の末端ヒドロキシ体20.0gの代わりに非イオン性オリゴマーa12の末端ヒドロキシ体10.0gを用いたこと以外は非イオン性オリゴマーa1の合成と同様にして、一般式(G9)で示される非イオン性オリゴマーa12(末端フルオロ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa12の数平均分子量は、11,000であった。
【0267】
(イオン性セグメントとしてオリゴマーa6、非イオン性セグメントとしてオリゴマーa12を含有するブロック共重合体b8の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mL SUS製重合装置に、イオン性オリゴマーa6を45.76gおよび非イオン性オリゴマーa12を8.93g入れ、オリゴマーの総仕込み量が7wt%となるようにNMPを加えて、105℃で24時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコール/NMP混合液(重量比2/1)への再沈殿を行い、多量のイソプロピルアルコールで精製を行い、ブロック共重合体b8を得た。このブロック共重合体b8の数平均分子量は120,000であり、重量平均分子量は290,000であった。
【0268】
ブロック共重合体b1に代えてブロック共重合体b8を用いた以外は実施例1と同様の方法で、高分子電解質膜H(膜厚10μm)を得た。TEMおよびTEMトモグラフィー観察により、共連続様の相分離構造が確認でき、イオン性基を含有する親水性ドメイン、イオン性基を含有しない疎水性ドメインともに連続相を形成していた。
【0269】
実施例6
(下記一般式(G16)で表される非イオン性オリゴマーa13(末端:ヒドロキシ基)の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム16.59g(アルドリッチ試薬、120mmol)、合成例1で得たK-DHBP25.83g(100mmol)および4,4’-ジフルオロベンゾフェノン20.79g(アルドリッチ試薬、95.2mmol)を入れた。装置内を窒素置換した後、N-メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mLを加え、150℃で脱水した後、昇温してトルエンを除去し、170℃で3時間重合を行った。多量のメタノールに再沈殿精製を行い、非イオン性オリゴマーa13(末端:ヒドロキシ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa13(末端:ヒドロキシ基)の数平均分子量は8,000であった。なお、一般式(G16)において、Mは、水素原子、NaまたはKを表し、mは1以上の整数を表す。
【0270】
【化38】
【0271】
(下記一般式(G17)で表される非イオン性オリゴマーa14(末端:ヒドロキシ基)の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、400mmol)および非イオン性オリゴマーa14を50.0g入れた。装置内を窒素置換した後、NMP500mLを加え、60℃で内容物を溶解させた後に、ヘキサフルオロベンゼン/NMP溶液(1wt%)を58.1g加えた。80℃で18時間反応を行い、一般式(G17)で示される非イオン性オリゴマーa14(末端:ヒドロキシ基)を含むNMP溶液を得た。このイオン性オリゴマーa2’の数平均分子量は16,000であった。なお、一般式(G17)において、Mは、水素原子、NaまたはKを表し、mは1以上の整数を表す。
【0272】
【化39】
【0273】
(下記一般式(G18)で表される非イオン性オリゴマーa15(末端:フルオロ基)の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた500mL三口フラスコに、炭酸カリウム1.1g(アルドリッチ試薬、8mmol)、上記非イオン性オリゴマーa14(末端:ヒドロキシ基)を16.0g(1mmol)入れた。装置内を窒素置換した後、NMP100mL、トルエン30mLを加え、100℃で脱水した後、昇温してトルエンを除去した。さらに、ヘキサフルオロベンゼン1.1g(アルドリッチ試薬、6mmol)を入れ、105℃で12時間反応を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、下記一般式(G18)で示される非イオン性オリゴマーa15(末端:フルオロ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa15の数平均分子量は17,000であった。なお、一般式(G18)において、mは1以上の整数を表す。
【0274】
【化40】
【0275】
(一般式(G5)で表されるイオン性オリゴマーa16の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム27.64g(アルドリッチ試薬、200mmol)、合成例1で得たK-DHBP12.91g(50mmol)および4,4’-ビフェノール9.31g(アルドリッチ試薬、50mmol)、合成例2で得たジソジウム-3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノン41.85g(99.1mmol)、を入れた。装置内を窒素置換した後、ジメチルスルホキシド(DMSO)300mL、トルエン100mLを加え、133℃で脱水後、昇温してトルエンを除去し、150℃で2時間重合し、155℃に昇温しさらに1時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、一般式(G5)で示されるイオン性オリゴマーa16(末端:ヒドロキシ基)を得た。このイオン性オリゴマーa16の数平均分子量は56,000であった。
【0276】
(イオン性セグメントとしてオリゴマーa16、非イオン性セグメントとしてオリゴマーa15を含有するブロック共重合体b9の合成)
イオン性オリゴマーa2’(49.0g)に代えてイオン性オリゴマーa16(49.0g)を用い、非イオン性オリゴマーa1(7.65g)に代えて非イオン性オリゴマーa15(12.3g)を用いたこと以外はブロック共重合体b1の合成と同様にして、ブロック共重合体b9を得た。このブロック共重合体b9の数平均分子量は170,000であり、重量平均分子量は390,000であった。
【0277】
ブロック共重合体b1に代えてブロック共重合体b9を用いた以外は実施例1と同様の方法で、高分子電解質膜I(膜厚10μm)を得た。TEMおよびTEMトモグラフィー観察により、共連続様の相分離構造が確認でき、イオン性基を含有する親水性ドメイン、イオン性基を含有しない疎水性ドメインともに連続相を形成していた。
【0278】
実施例7
(一般式(G16)で表される非イオン性オリゴマーa17(末端:ヒドロキシ基)の合成)
4,4’-ジフルオロベンゾフェノンの使用量を20.88gとしたこと以外は非イオン性オリゴマーa13(末端:ヒドロキシ基)の合成と同様にして、非イオン性オリゴマーa17(末端:ヒドロキシ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa17(末端:ヒドロキシ基)の数平均分子量は10,000であった。
【0279】
(一般式(G17)で表される非イオン性オリゴマーa18(末端:ヒドロキシ基)の合成)
ヘキサフルオロベンゼン/NMP溶液(1wt%)の使用量を46.5gとしたこと以外は非イオン性オリゴマーa14(末端:ヒドロキシ基)の合成と同様にして、非イオン性オリゴマーa18(末端:ヒドロキシ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa18(末端:ヒドロキシ基)の数平均分子量は20,000であった。
【0280】
(一般式(G18)で表される非イオン性オリゴマーa19(末端:フルオロ基)の合成)
非イオン性オリゴマーa14(末端:ヒドロキシ基)16.0gの代わりに非イオン性オリゴマーa18(末端:ヒドロキシ基)20.0g(1mmol)を用いたこと以外は非イオン性オリゴマーa15(末端:フルオロ基)の合成と同様にして、一般式(G18)で示される非イオン性オリゴマーa19(末端:フルオロ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa19の数平均分子量は21,000であった。
【0281】
(イオン性セグメントとしてオリゴマーa16、非イオン性セグメントとしてオリゴマーa19を含有するブロック共重合体b10の合成)
イオン性オリゴマーa2’(49.0g)に代えてイオン性オリゴマーa16(49.0g)を用い、非イオン性オリゴマーa1(7.65g)に代えて非イオン性オリゴマーa19(17.3g)を用いたこと以外はブロック共重合体b1の合成と同様にして、ブロック共重合体b10を得た。このブロック共重合体b10の数平均分子量は170,000であり、重量平均分子量は380,000であった。
【0282】
ブロック共重合体b1に代えてブロック共重合体b10を用いた以外は実施例1と同様の方法で、高分子電解質膜J(膜厚10μm)を得た。TEMおよびTEMトモグラフィー観察により、共連続様の相分離構造が確認でき、イオン性基を含有する親水性ドメイン、イオン性基を含有しない疎水性ドメインともに連続相を形成していた。
【0283】
実施例8
(一般式(G16)で表される非イオン性オリゴマーa20(末端:ヒドロキシ基)の合成)
4,4’-ジフルオロベンゾフェノンの使用量を21.18gとしたこと以外は非イオン性オリゴマーa13(末端:ヒドロキシ基)の合成と同様にして、非イオン性オリゴマーa20(末端:ヒドロキシ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa20(末端:ヒドロキシ基)の数平均分子量は15,000であった。
【0284】
(一般式(G17)で表される非イオン性オリゴマーa21(末端:ヒドロキシ基)の合成)
ヘキサフルオロベンゼン/NMP溶液(1wt%)の使用量を31.0gとしたこと以外は非イオン性オリゴマーa14(末端:ヒドロキシ基)の合成と同様にして、非イオン性オリゴマーa21(末端:ヒドロキシ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa21(末端:ヒドロキシ基)の数平均分子量は30,000であった。
【0285】
(一般式(G18)で表される非イオン性オリゴマーa22(末端:フルオロ基)の合成)
非イオン性オリゴマーa14(末端:ヒドロキシ基)16.0gの代わりに非イオン性オリゴマーa21(末端:ヒドロキシ基)30.0g(1mmol)を用いたこと以外は非イオン性オリゴマーa15(末端:フルオロ基)の合成と同様にして、一般式(G18)で示される非イオン性オリゴマーa22(末端:フルオロ基)を得た。この非イオン性オリゴマーa22の数平均分子量は31,000であった。
【0286】
(イオン性セグメントとしてオリゴマーa2’、非イオン性セグメントとしてオリゴマーa22を含有するブロック共重合体b11の合成)
非イオン性オリゴマーa1(7.65g)に代えて非イオン性オリゴマーa22(15.0g)を用いたこと以外はブロック共重合体b1の合成と同様にして、ブロック共重合体b11を得た。このブロック共重合体b11の数平均分子量は180,000であり、重量平均分子量は390,000であった。
【0287】
ブロック共重合体b1に代えてブロック共重合体b11を用いた以外は実施例1と同様の方法で、高分子電解質膜K(膜厚10μm)を得た。TEMおよびTEMトモグラフィー観察により、共連続様の相分離構造が確認でき、イオン性基を含有する親水性ドメイン、イオン性基を含有しない疎水性ドメインともに連続相を形成していた。
[測定結果]
実施例および比較例で得られたブロック共重合体および該ブロック共重合体を用いた高分子電解質膜の測定結果を表1に示す。
【0288】
【表1】
【0289】
参考例1
目的の数平均分子量が40,000のイオン性セグメント(オリゴマー)を下記合成法に従って同一条件で6バッチ合成した。
【0290】
(一般式(G5)で表される構成単位のオリゴマーa101~a106の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム27.64g(アルドリッチ試薬、200mmol)、合成例1で得たK-DHBP12.91g(50mmol)、4,4’-ビフェノール9.31g(アルドリッチ試薬、50mmol)、合成例2で得たジソジウム-3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノン40.11g(95.0mmol)および18-クラウン-6を26.40g(和光純薬100mmol)入れた。装置内を窒素置換した後、NMP300mL、トルエン100mLを加え、150℃で脱水した後、昇温してトルエンを除去し、170℃で6時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、一般式(G5)で示されるイオン性オリゴマーa101~a106(末端:ヒドロキシ基)を得た。これらのオリゴマーa101~a106の数平均分子量を表2に示す。
【0291】
(一般式(G8)で表されるイオン性オリゴマーa101’~a106’の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、400mmol)および上記構成単位のオリゴマー(a101~a106の中の一つ)を45.00g入れた。装置内を窒素置換した後、NMP400mLを加え、60℃で内容物を溶解させた後に、2,6-ジフルオロベンゾニトリル/NMP溶液(1wt%)を22.0g加えた。80℃で10時間反応を行い、目的の数平均分子量として40,000に達したかをGPC測定から確認した。数平均分子量40,000に達していない場合、2,6-ジフルオロベンゾニトリル/NMP溶液(1wt%)を2.0g追加し、80℃で2時間反応を行った後に、GPC測定から数平均分子量を確認する工程を、数平均分子量40,000に達するまで繰り返した。この合成法により6バッチの合成を行い、一般式(G8)で示されるイオン性オリゴマーa101’~a106’(末端:ヒドロキシ基)を含むNMP溶液を得た。
【0292】
表2に、それぞれのバッチで得られたオリゴマーの数平均分子量およびリンカーL1(2,6-ジフルオロベンゾニトリル/NMP溶液(1wt%))の添加量を示した。イオン性オリゴマーa101’~a106’の数平均分子量はいずれも40,000で、目的の数平均分子量(40,000)と同じであった。
【0293】
参考例2
目的の数平均分子量が40,000のイオン性セグメント(オリゴマー)を下記合成法に従って同一条件で6バッチ合成した。なお、この合成にはリンカー化合物は使用しなかった。
【0294】
(一般式(G5)で表されるイオン性オリゴマーa201~a206の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム27.64g(アルドリッチ試薬、200mmol)、合成例1で得たK-DHBP12.91g(50mmol)、4,4’-ビフェノール9.31g(アルドリッチ試薬、50mmol)、合成例2で得たジソジウム-3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノン41.43g(98.1mmol)および18-クラウン-6を26.40g(和光純薬100mmol)入れた。装置内を窒素置換した後、NMP300mL、トルエン100mLを加え、150℃で脱水した後、昇温してトルエンを除去し、170℃で6時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、一般式(G5)で示されるイオン性オリゴマーa201~a206(末端:ヒドロキシ基)を得た。これらの数平均分子量を表2に示す。
【0295】
6バッチの合成によって得たイオン性オリゴマーa201~a206の数平均分子量は、目的の数平均分子量に対してばらつきが大きかった。
【0296】
【表2】
【0297】
参考例3
目的の数平均分子量が90,000のイオン性セグメント(オリゴマー)を下記合成法に従って合成した。
【0298】
(一般式(G8)で表されるイオン性オリゴマーa301の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、400mmol)およびイオン性オリゴマーa2を45.0g入れた。装置内を窒素置換した後、NMP500mLを加え、60℃で内容物を溶解させた後に、2,6-ジフルオロベンゾニトリル/NMP溶液(1wt%)を15.0g加えた。80℃で18時間反応を行い、一般式(G8)で示されるイオン性オリゴマーa301(末端:ヒドロキシ基)を含むNMP溶液を得た。このイオン性オリゴマーa301の数平均分子量は90,000で、目的の数平均分子量と同じであった。
【0299】
参考例4
目的の数平均分子量が90,000のイオン性セグメント(オリゴマー)を下記合成法に従って合成した。なお、この合成にはリンカー化合物は使用しなかった。
【0300】
(一般式(G5)で表されるイオン性オリゴマーa401の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム27.64g(アルドリッチ試薬、200mmol)、合成例1で得たK-DHBP12.91g(50mmol)、4,4’-ビフェノール9.31g(アルドリッチ試薬、50mmol)、合成例2で得たジソジウム-3,3’-ジスルホネート-4,4’-ジフルオロベンゾフェノン41.93g(99.3mmol)および18-クラウン-6を26.40g(和光純薬100mmol)入れた。装置内を窒素置換した後、DMSO300mL、トルエン100mLを加え、130℃で脱水した後、昇温してトルエンを除去し、150℃で2時間重合し、155℃に昇温しさらに3時間重合を行った。多量のイソプロピルアルコールで再沈殿することで精製を行い、一般式(G5)で示されるイオン性オリゴマーa401(末端:ヒドロキシ基)を得た。この合成によって得たイオン性オリゴマーa401の数平均分子量は、56,000であり、目的の数平均分子量90,000を達成することはできなかった。
【0301】
参考例5
目的の数平均分子量が30,000の非イオン性セグメント(オリゴマー)を下記合成法に従って同一条件で6バッチ合成した。
【0302】
(一般式(G16)で表される構成単位のオリゴマーa501~a506の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム16.59g(アルドリッチ試薬、120mmol)、合成例1で得たK-DHBP25.83g(100mmol)および4,4’-ジフルオロベンゾフェノン21.19g(アルドリッチ試薬、97.1mmol)を入れた。装置内を窒素置換した後、N-メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mLを加え、150℃で脱水した後、昇温してトルエンを除去し、170℃で3時間重合を行った。多量のメタノールに再沈殿精製を行い、一般式(G16)で示される非イオン性オリゴマーa501~a506(末端:ヒドロキシ基)を得た。これらのオリゴマーa501~a506の数平均分子量を表3に示す。
【0303】
(下記一般式(G19)で表される非イオン性オリゴマーa501’~a506’の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム0.56g(アルドリッチ試薬、400mmol)および上記構成単位のオリゴマー(a501~a506の中の一つ)を50.00g入れた。装置内を窒素置換した後、NMP400mLを加え、60℃で内容物を溶解させた後に、2,6-ジフルオロベンゾニトリル/NMP溶液(1wt%)を18.0g加えた。80℃で8時間反応を行い、目的の数平均分子量として30,000に達したかをGPC測定から確認した。数平均分子量30,000に達していない場合、2,6-ジフルオロベンゾニトリル/NMP溶液(1wt%)を2.0g追加し、80℃で2時間反応を行った後に、GPC測定から数平均分子量を確認する工程を、数平均分子量30,000に達するまで繰り返した。この合成法により6バッチの合成を行い、一般式(G19)で示される非イオン性オリゴマーa501’~a506’(末端:ヒドロキシ基)を含むNMP溶液を得た。
【0304】
表3に、それぞれのバッチで得られたオリゴマーの数平均分子量およびリンカーL1(2,6-ジフルオロベンゾニトリル/NMP溶液(1wt%))の添加量を示した。イオン性オリゴマーa501’~a506’の数平均分子量はいずれも30,000で、目的の数平均分子量(30,000)と同じであった。なお、一般式(G19)において、Mは、水素原子、NaまたはKを表し、mは1以上の整数を表す。
【0305】
【化41】
【0306】
参考例6
目的の数平均分子量が30,000の非イオン性セグメント(オリゴマー)を下記合成法に従って同一条件で6バッチ合成した。なお、この合成にはリンカー化合物は使用しなかった。
【0307】
(一般式(G16)で表されるイオン性オリゴマーa601~a606の合成)
攪拌器、窒素導入管、Dean-Starkトラップを備えた2,000mLのSUS製重合装置に、炭酸カリウム16.59g(アルドリッチ試薬、120mmol)、合成例1で得たK-DHBP25.83g(100mmol)および4,4’-ジフルオロベンゾフェノン21.52g(アルドリッチ試薬、98.1mmol)を入れた。装置内を窒素置換した後、N-メチルピロリドン(NMP)300mL、トルエン100mLを加え、150℃で脱水した後、昇温してトルエンを除去し、170℃で3時間重合を行った。多量のメタノールに再沈殿精製を行い、一般式(G16)で示される非イオン性オリゴマーa601~a606(末端:ヒドロキシ基)を得た。これらの数平均分子量を表3に示す。
【0308】
6バッチの合成によって得たイオン性オリゴマーa601~a606の数平均分子量は、目的の数平均分子量に対してばらつきが大きかった。
【0309】
【表3】