(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】測定装置及びエレベーター装置
(51)【国際特許分類】
G01B 11/08 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
G01B11/08 H
(21)【出願番号】P 2023500182
(86)(22)【出願日】2021-02-17
(86)【国際出願番号】 JP2021005923
(87)【国際公開番号】W WO2022176061
(87)【国際公開日】2022-08-25
【審査請求日】2023-02-28
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000236056
【氏名又は名称】三菱電機ビルソリューションズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006013
【氏名又は名称】三菱電機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003199
【氏名又は名称】弁理士法人高田・高橋国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 康太郎
(72)【発明者】
【氏名】藤原 直
(72)【発明者】
【氏名】望月 敬太
(72)【発明者】
【氏名】森川 哲士
(72)【発明者】
【氏名】大野 佳子
【審査官】眞岩 久恵
(56)【参考文献】
【文献】特許第5769875(JP,B2)
【文献】国際公開第2015/075926(WO,A1)
【文献】特開2017-191024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 11/00-11/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1軸に沿う長尺体を撮影し、画像データを出力するカメラと、
前記第1軸に直交する第1平面に広がる光を放ち、前記長尺体に直線状の光を当てる第1光源と、
前記第1軸に直交する第2平面に広がる光を放ち、前記長尺体に直線状の光を当てる第2光源と、
前記画像データ上の前記長尺体の外径を算出する外径算出手段と、
前記画像データ上の前記第1光源からの光の位置に基づいて前記第1平面における前記カメラから前記長尺体までの第1距離を算出し、前記画像データ上の前記第2光源からの光の位置に基づいて前記第2平面における前記カメラから前記長尺体までの第2距離を算出する距離算出手段と、
前記第1距離及び前記第2距離に基づいて、前記長尺体の傾斜角度を算出する傾斜算出手段と、
前記第1距離及び前記第2距離と前記傾斜角度とに基づいて、前記外径算出手段によって算出された外径を補正する補正手段と、
を備えた測定装置。
【請求項2】
前記第1軸は鉛直であり、
前記第1光源は、前記カメラより上方に配置され、
前記第2光源は、前記カメラより下方に配置された請求項
1に記載の測定装置。
【請求項3】
かごと、
前記かごを昇降路に吊り下げるロープと、
前記ロープが巻き掛けられた駆動綱車と、
前記ロープの外径を測定するための請求項1
又は請求項
2に記載された前記測定装置と、
を備えたエレベーター装置。
【請求項4】
前記測定装置は、前記昇降路、又は前記昇降路の上方の機械室に設けられた請求項
3に記載のエレベーター装置。
【請求項5】
前記測定装置は、前記かごに設けられた請求項
3に記載のエレベーター装置。
【請求項6】
前記かごは、前記ロープが巻き掛けられた吊り車を備え、
前記測定装置は、前記ロープのうち、前記かごが最上階の乗場に停止している時に前記吊り車に巻き掛けられる部分の外径を測定することができるように前記かごに設けられた請求項
3に記載のエレベーター装置。
【請求項7】
前記ロープによって前記昇降路に吊り下げられたつり合いおもりを更に備え、
前記つり合いおもりは、前記ロープが巻き掛けられた吊り車を備え、
前記測定装置は、前記ロープのうち、前記かごが最下階の乗場に停止している時に前記吊り車に巻き掛けられる部分の外径を測定することができるように前記かごに設けられた請求項
3に記載のエレベーター装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、長尺体の外径を測定するための装置と、エレベーター装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、ワイヤロープの外径を測定するための装置が記載されている。特許文献1に記載された装置は、2台のカメラを備える。当該装置では、2台のカメラからの画像データに基づいて、ワイヤロープの外径が測定される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1に記載された装置では、ワイヤロープの外径を測定するために2台のカメラが必要になる。また、2台のカメラからの画像データを同時に記録及び処理するために、当該装置には高い処理性能が必要になる。このため、特許文献1に記載された装置は高価になるといった問題があった。
【0005】
本開示は、上述のような課題を解決するためになされた。本開示の目的は、長尺体の外径を測定できる安価な測定装置を提供することである。本開示の他の目的は、当該測定装置を備えたエレベーター装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示に係る測定装置は、第1軸に沿う長尺体を撮影し、画像データを出力するカメラと、第1軸に直交する第1平面に広がる光を放ち、長尺体に直線状の光を当てる第1光源と、第1軸に直交する第2平面に広がる光を放ち、長尺体に直線状の光を当てる第2光源と、画像データ上の長尺体の外径を算出する外径算出手段と、画像データ上の第1光源からの光の位置に基づいて第1平面におけるカメラから長尺体までの第1距離を算出し、画像データ上の第2光源からの光の位置に基づいて第2平面におけるカメラから長尺体までの第2距離を算出する距離算出手段と、第1距離及び第2距離に基づいて、長尺体の傾斜角度を算出する傾斜算出手段と、第1距離及び第2距離と傾斜角度とに基づいて、外径算出手段によって算出された外径を補正する補正手段と、を備える。
【0008】
本開示に係るエレベーター装置は、かごと、かごを昇降路に吊り下げるロープと、ロープが巻き掛けられた駆動綱車と、ロープの外径を測定するための上記測定装置と、を備える。
【発明の効果】
【0009】
本開示によれば、長尺体の外径を測定するための装置を安価に実現できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】実施の形態1におけるエレベーター装置の例を示す図である。
【
図4】カメラによって撮影された画像の例を示す図である。
【
図6】実施の形態1における測定装置の動作例を示すフローチャートである。
【
図7】距離算出部の機能を説明するための図である。
【
図8】距離算出部の機能を説明するための図である。
【
図11】測定装置の他の動作例を示すフローチャートである。
【
図12】解析装置の機能を説明するための図である。
【
図13】解析装置の機能を説明するための図である。
【
図14】エレベーター装置の他の例を示す図である。
【
図15】エレベーター装置の他の例を示す図である。
【
図16】解析装置のハードウェア資源の例を示す図である。
【
図17】解析装置のハードウェア資源の他の例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下に、図面を参照して詳細な説明を行う。重複する説明は、適宜簡略化或いは省略する。各図において、同一の符号は同一の部分又は相当する部分を示す。
【0012】
実施の形態1.
図1は、実施の形態1におけるエレベーター装置の例を示す図である。エレベーター装置は、かご1及びつり合いおもり2を備える。かご1は、昇降路3を上下に移動する。つり合いおもり2は、昇降路3を上下に移動する。かご1及びつり合いおもり2は、ロープ4によって吊り下げられる。一例として、ロープ4は、ワイヤロープである。
【0013】
図1は、1:1ローピング方式のエレベーター装置を示す。
図1に示す例では、ロープ4は、一方の端部がかご1に連結される。ロープ4は、かご1から上方に延びる。ロープ4は、昇降路3の上方の機械室5において巻上機6の駆動綱車7とそらせ車8とに巻き掛けられる。ロープ4は、そらせ車8から下方に延びる。ロープ4のもう一方の端部は、つり合いおもり2に連結される。かご1は、駆動綱車7の回転に応じて移動する。
【0014】
制御装置9は、巻上機6を制御する。即ち、かご1の移動は、制御装置9によって制御される。通信装置10は、制御装置9に接続される。通信装置10は、エレベーター装置が外部と通信を行うための装置である。例えば、通信装置10は、ネットワーク11を介して外部と通信する。当該外部には、本エレベーター装置を監視する遠隔の監視センター等が含まれる。
【0015】
図1は、巻上機6及び制御装置9が機械室5に設置される例を示す。巻上機6及び制御装置9は、昇降路3に設置されても良い。巻上機6が昇降路3に設置される場合、巻上機6は、昇降路3の頂部に設置されても良いし、昇降路3のピットに設置されても良い。
【0016】
駆動綱車7及びそらせ車8は、ロープ4が巻き掛けられた滑車の例である。ロープ4は、滑車によって繰り返し曲げられる。このため、ロープ4は、滑車との摩擦によって摩耗し、減径する。ロープ4の減径はロープ4の強度の低下に直結することから、本エレベーター装置には、ロープ4の外径を測定するための測定装置12が備えられる。
【0017】
図1は、測定装置12が機械室5に設けられる例を示す。測定装置12は、昇降路3に設けられても良い。
図1に示す例では、測定装置12は、ロープ4のうち、巻上機6のすぐ下に配置された部分の外径を測定する。以下においては、ロープ4の当該部分を他の部分と区別する必要がある場合に、符号4に替えて符号4aを付す。即ち、ロープ4aは、ロープ4のうち、巻上機6のすぐ下に配置された部分である。ロープ4aは、ロープ4の一部である。
【0018】
図2は、測定装置12の例を示す図である。
図3は、
図2のA-A断面を示す図である。測定装置12は、カメラ13、光源14、及び解析装置15を備える。
【0019】
以下においては、説明を容易にするため、
図2及び
図3に示すようにX軸、Y軸、及びZ軸を設定する。X軸、Y軸、及びZ軸は、互いに直交する。X軸は、鉛直である。YZ平面は水平であり、X軸に直交する。ロープ4aは、X軸に沿うように配置される。
【0020】
カメラ13は、所謂エリアカメラである。Z軸は、カメラ13による撮影の中心軸13aに対して平行になるように設定される。カメラ13の撮影範囲は、中心軸13aを中心にカメラ13から広がる。
図2及び
図3に示す例では、中心軸13aは、ロープ4aの中心軸Crに直交する。カメラ13は、
図2及び
図3に示すように、ロープ4aを側方から撮影する。カメラ13は、受光器16、及びレンズ17を備える。受光器16は、イメージセンサ(図示せず)を備える。レンズ17の光学中心Cは、中心軸13a上の点である。カメラ13は、受光器16によって得られた画像データを解析装置15に出力する。
【0021】
光源14は、所謂ライン光源である。光源14は、YZ平面に広がるように光を放ち、Z軸方向から見て直線状の光をロープ4aに当てる。光源14は、カメラ13とは異なる高さに配置される。即ち、光源14からの光が広がるYZ平面に中心軸13aは含まれない。
【0022】
図2及び
図3に示す例では、光源14は、カメラ13より上方に配置される。このため、光源14からの光は、中心軸13aより上方でロープ4aに当たる。光源14から放たれる光と中心軸13aとのX軸方向の距離(高さ)XAは、予め設定される。以下においては、光源14から放たれた光のうちロープ4aに当たった光を特定する場合に符号14aを付す。即ち、光14aは、光源14から放たれた光であって、ロープ4aに当たった光である。
【0023】
光源14は、カメラ13がロープ4aを撮影する方向と同じ方向、或いはほぼ同じ方向からロープ4aに光を当てる。距離XAは、光14aがカメラ13の撮影範囲に入るように設定される。即ち、光14aは、カメラ13によって撮影される。カメラ13からの画像データには、光14aを示すデータが含まれる。
【0024】
図4は、カメラ13によって撮影された画像の例を示す図である。上述したように、光源14からの光は、中心軸13aより上方でロープ4aに当たる。光14aはカメラ13によって下方から撮影されることになるため、カメラ13によって撮影された画像では、光14aは上側に膨らむように湾曲する。
【0025】
図5は、解析装置15の機能を説明するための図である。解析装置15は、画像解析部20、外径算出部21、距離算出部22、及び補正部23を備える。以下に、
図6から
図8も参照し、測定装置12の機能について詳細に説明する。
図6は、実施の形態1における測定装置12の動作例を示すフローチャートである。
【0026】
解析装置15は、カメラ13から画像データを取得する(S101)。解析装置15がS101で取得する画像データには、ロープ4aを示すデータ、及び光14aを示すデータが含まれる。
【0027】
外径算出部21は、S101でカメラ13から取得した画像データに基づいて、当該画像データ上のロープ4aの外径を算出する。具体的には、先ず、画像解析部20が、カメラ13から取得した画像データに対して閾値処理を行う(S102)。これにより、当該画像データは、ロープ4aを示す部分とそれ以外の部分とに分別される。次に、画像解析部20は、閾値処理した画像データに対してエッジ検出処理を行う(S103)。これにより、ロープ4aの左側エッジと右側エッジとが特定される。外径算出部21は、画像解析部20によって特定された左側エッジと右側エッジとの間隔から、画像データ上のロープ4aの外径を算出する(S104)。
【0028】
S104で算出される外径は、例えば、左側エッジと右側エッジとの間の画素数w[画素]で表される。S104で算出される値は、画像に表示されたロープ4aの太さ、即ち撮影倍率によって変わる。このため、S104で算出される値は、ロープ4aの実際の外径に一致する訳ではない。
【0029】
図3及び
図4において、破線で示すロープ4aは、実線で示すロープ4aよりカメラ13に接近した状態を示す。ロープ4aの位置は、かご1の位置が変化することによってZ軸方向に変わる場合がある。画像に表示されるロープ4aは、ロープ4aがカメラ13に近づくと大きくなり、ロープ4aがカメラ13から離れると小さくなる。
【0030】
また、光源14からの光が中心軸13aより上方でロープ4aに当たる場合、画像に表示される光14aは、ロープ4aがカメラ13に近づくと上方に移動し、ロープ4aがカメラ13から離れると下方に移動する。光源14からの光が中心軸13aより下方でロープ4aに当たる場合、画像に表示される光14aは、ロープ4aがカメラ13に近づくと下方に移動し、ロープ4aがカメラ13から離れると上方に移動する。解析装置15には、このような表示の変化を利用して、S104の算出結果を補正する機能が備えられている。
【0031】
距離算出部22は、カメラ13から出力された画像データ上の光14aの位置に基づいて、カメラ13からロープ4aまでの距離を算出する。
図7及び
図8は、距離算出部22の機能を説明するための図である。
図7は、
図3に相当する図である。
図8は、カメラ13によって撮影された画像の例を示す図である。以下においては、
図8に示すように、画像上のX軸方向の画素位置を符号uで示す。
【0032】
先ず、画像解析部20は、カメラ13から取得した画像データから、光14aを抽出する(S105)。レンズ17の光学中心Cから距離L0[mm]にカメラ13の焦点が合わされている場合、距離算出部22は、三角測量の原理に基づいて、カメラ13からロープ4aまでの距離、即ち撮影距離を次式から算出する(S106)。距離算出部22は、距離LAを撮影距離として算出する。
【0033】
【0034】
式1において、
dp:カメラ13のイメージセンサの1画素のサイズ[mm/画素]
f :レンズ17の焦点距離[mm]
である。
図7に示す距離LA(=L(X=XA))は、光学中心Cからロープ4aの中心軸Crまでの距離[mm]である。式1から
図7に示す距離LAを算出する場合は、X
lにXAを代入し、u
lには、光源14からの光が照射されているロープ4aのエッジ部分のX軸方向の画素位置u
A[画素]を代入すれば良い。距離算出部22は、S105で画像解析部20が抽出した結果に基づいて画素位置u
Aを決定する。
【0035】
次に、補正部23は、S104で外径算出部21によって算出されたロープ4aの外径(w[画素])を補正する(S107)。補正部23は、S106で距離算出部22によって算出された距離LAに基づいて補正を行う。具体的に、補正部23は、次式を用いることにより、画像データ上のロープ4aの外径を撮影距離で倍率補正し、ロープ4aの実際の外径W[mm]を得る。本例においては、S106で算出された距離LAを式2のL(X)に代入すれば良い。
【0036】
【0037】
解析装置15では、S108でYesと判定されるまで、S101からS107に示す一連の処理が繰り返し行われる。
【0038】
本実施の形態に示す例では、光源14を用いることにより、1台のカメラ13からの画像データに基づいてロープ4の外径W[mm]を算出することができる。本実施の形態に示す例であれば、複数台のカメラを用いる必要はない。このため、測定装置12を安価に実現できる。
【0039】
図9及び
図10は、測定装置12の他の例を示す図である。
図9は、
図2に相当する図である。
図10は、
図3に相当する図である。上述した例では、ロープ4aの中心軸CrがX軸に対して常に平行であることを前提に説明を行った。以下においては、中心軸CrのX軸に対する傾斜も考慮する例について説明する。
【0040】
図9及び
図10に示すように、測定装置12は、カメラ13、光源14、及び解析装置15に加え、光源30を更に備える。測定装置12は、照明31、及び反射板32を更に備えても良い。
【0041】
光源30は、所謂ライン光源である。光源30は、YZ平面に広がるように光を放ち、Z軸方向から見て直線状の光をロープ4aに光を当てる。光源30は、カメラ13とは異なる高さに配置される。即ち、光源30からの光が広がるYZ平面に中心軸13aは含まれない。
【0042】
また、光源30は、光源14とは異なる高さに配置される。即ち、光源30からの光が広がるYZ平面は、光源14からの光が広がるYZ平面とは異なる。以下においては、光源14からの光が広がるYZ平面を第1YZ平面ともいう。光源30からの光が広がるYZ平面を第2YZ平面ともいう。
【0043】
図9及び
図10に示す例では、光源30は、カメラ13より下方に配置される。このため、光源30からの光は、中心軸13aより下方でロープ4aに当たる。光源30から放たれる光と中心軸13aとのX軸方向の距離(高さ)XBは、予め設定される。以下においては、光源30から放たれた光のうちロープ4aに当たった光を特定する場合に符号30aを付す。即ち、光30aは、光源30から放たれた光であって、ロープ4aに当たった光である。
【0044】
光源30は、カメラ13がロープ4aを撮影する方向と同じ方向、或いはほぼ同じ方向からロープ4aに光を当てる。距離XBは、光30aがカメラ13の撮影範囲に入るように設定される。即ち、光30aは、カメラ13によって撮影される。カメラ13からの画像データには、光14aを示すデータと光30aを示すデータとの双方が含まれる。
【0045】
照明31は、カメラ13がロープ4aを撮影する方向と同じ方向、或いはほぼ同じ方向からカメラ13の撮影範囲に向けて光を放つ。
図9及び
図10に示す例では、照明31は、リング状に配置されたLEDランプを備える。照明31に備えられたLEDランプは、中心軸13aの周囲に配置される。カメラ13は、照明31の中央に開けられた孔からロープ4aを撮影する。
【0046】
反射板32は、入射した光を入射した方向に沿うように反射する再帰反射特性を有する。反射板32は、XY平面に平行に配置される。反射板32は、カメラ13から見てロープ4aの裏側に配置される。即ち、ロープ4aは、カメラ13と反射板32との間に配置される。照明31からの光は、反射板32で反射すると、Z軸に沿うように進む。一方、照明31から放たれた光のうちロープ4aに当たった光は、ロープ4aで様々な方向に反射する。このため、カメラ13からの画像データでは、反射板32はロープ4aより明るくなる。照明31及び反射板32は、画像解析部20によるエッジ検出処理の精度を上げるために用いられる。
【0047】
解析装置15は、画像解析部20、外径算出部21、距離算出部22、及び補正部23に加え、傾斜算出部24を更に備える。以下に、
図11から
図13も参照し、測定装置12の機能について詳細に説明する。
図11は、測定装置12の他の動作例を示すフローチャートである。
【0048】
図11のS201に示す処理は、
図6のS101に示す処理と同様である。解析装置15は、カメラ13から画像データを取得する(S201)。解析装置15がS201で取得する画像データには、ロープ4aを示すデータ、光14aを示すデータ、及び光30aを示すデータが含まれる。
【0049】
図12及び
図13は、解析装置15の機能を説明するための図である。
図12は、
図9に相当する図である。
図13は、カメラ13によって撮影された画像の例を示す図である。
図12及び
図13は、ロープ4aがX軸に対して角度θだけ傾いている状態を示す。
【0050】
光源30からの光は、中心軸13aより下方でロープ4aに当たる。光30aはカメラ13によって上方から撮影されることになるため、カメラ13によって撮影された画像では、光30aは下側に膨らむように湾曲する。また、ロープ4aが
図12に示すように傾斜すると、カメラ13によって撮影された画像では、ロープ4aの外径は、上方にいくほど大きくなる。
【0051】
図11のS202からS204に示す処理は、
図6のS102からS104に示す処理と同様である。外径算出部21は、S201でカメラ13から取得した画像データに基づいて、当該画像データ上のロープ4aの外径を算出する。なお、
図8に示す例では、どの画素位置uでロープ4aの外径を算出しても、S104で同じ値を得ることができる。しかし、
図13に示す例では、S204で算出される外径の値は、画素位置uによって変わる。外径算出部21は、S204において、特定の画素位置u
tにおけるロープ4aの外径w(u
t)を算出する。
【0052】
次に、距離算出部22は、カメラ13から出力された画像データ上の光14aの位置に基づいて、第1YZ平面における撮影距離、即ち
図12に示す距離LAを算出する。
図12に示す距離LAは、光学中心Cを第1YZ平面に投影した点とロープ4aの中心軸Crとの第1YZ平面上の距離である。また、距離算出部22は、カメラ13から出力された画像データ上の光30aの位置に基づいて、第2YZ平面における撮影距離、即ち
図12に示す距離LBを算出する。
図12に示す距離LBは、光学中心Cを第2YZ平面に投影した点とロープ4aの中心軸Crとの第2YZ平面上の距離である。
【0053】
上述の
図7及び
図8に示す例では、ロープ4aの中心軸CrがX軸に平行であるため、どのYZ平面においても、光学中心CをそのYZ平面に投影した点とロープ4aの中心軸Crとの距離は同じ値になる。一方、
図12及び
図13に示す例では、ロープ4aの中心軸CrがX軸に対して傾斜しているため、距離LAと距離LBとは同じ値にならない。
【0054】
先ず、画像解析部20は、カメラ13から取得した画像データから、光14aを抽出する。同様に、画像解析部20は、カメラ13から取得した画像データから、光30aを抽出する(S205)。
【0055】
レンズ17の光学中心Cから距離L
0[mm]にカメラ13の焦点が合わされている場合、距離算出部22は、三角測量の原理に基づいて、式1から距離LA及び距離LBを算出する(S206)。式1から
図12に示す距離LAを算出する場合は、X
lにXAを代入し、u
lには、光源14からの光が照射されているロープ4aのエッジ部分のX軸方向の画素位置u
A[画素]を代入すれば良い。距離算出部22は、S205で画像解析部20が抽出した結果に基づいて画素位置u
Aを決定する。
【0056】
式1から
図12に示す距離LBを算出する場合は、X
lにXBを代入し、u
lには、光源30からの光が照射されているロープ4aのエッジ部分のX軸方向の画素位置u
B[画素]を代入すれば良い。距離算出部22は、S205で画像解析部20が抽出した結果に基づいて画素位置u
Bを決定する。
【0057】
次に、傾斜算出部24は、ロープ4aのX軸に対する傾斜角度、即ち
図12に示す角度θを算出する(S207)。傾斜算出部24は、S206で距離算出部22によって算出された距離LA及び距離LBに基づいて、次式から角度θを求める。
【0058】
【0059】
補正部23は、S204で外径算出部21によって算出されたロープ4aの外径w(ut)を補正する(S208)。補正部23は、S206で距離算出部22によって算出された距離LA及び距離LBとS207で傾斜算出部24によって算出された角度θとに基づいてS208の補正を行う。
【0060】
図12に示す例では、中心軸13aからのX軸方向の距離(高さ)Xにおける撮影距離L(X)は、角度θを用いて次式で表される。
【0061】
【0062】
式4の右辺の第1項は、中心軸13a上における光学中心Cからロープ4aの中心軸Crまでの距離Lcである。
【0063】
【0064】
なお、画像データにおけるロープ4aのエッジ部分のX軸方向の画素位置u[画素]と距離X[mm]は、次式によって対応付けられる。
【0065】
【0066】
また、画像データにおけるX軸方向の画素位置u[画素]に対する、光学中心Cからロープ4aの中心軸Crまでの距離L(u)は、次式によって求められる。
【0067】
【0068】
画像データ上の画素位置u[画素]におけるロープ4aの外径W[mm]は、式7の距離L(u)と画素位置uにおける外径w(u)とを用いて次式によって求められる。
【0069】
【0070】
補正部23は、S208において式8を用いて補正を行う。解析装置15では、S209でYesと判定されるまで、S201からS208に示す一連の処理が繰り返し行われる。
【0071】
図14は、エレベーター装置の他の例を示す図である。
図14は、2:1ローピング方式のエレベーター装置を示す。
図14に示すエレベーター装置は、かご1、つり合いおもり2、ロープ4、巻上機6、制御装置9、通信装置10、及び測定装置12を備える。また、本エレベーター装置は、返し車18、及び返し車19を更に備える。返し車18及び返し車19は、昇降路3の頂部に設けられる。
【0072】
図14に示す例では、昇降路3の上方に機械室5が設けられていない。巻上機6及び制御装置9は、昇降路3に設けられる。また、かご1は、吊り車1a及び1bを備える。つり合いおもり2は吊り車2aを備える。
【0073】
ロープ4は、一方の端部4bが昇降路3の頂部に設けられる。ロープ4は、端部4bから下方に延び、かご1の吊り車1a及び1bに巻き掛けられる。ロープ4のもう一方の端部4cは昇降路3の頂部に設けられる。ロープ4は、端部4cから下方に延び、つり合いおもり2の吊り車2aに巻き掛けられる。また、ロープ4は、吊り車1bから上方に延び、返し車18、駆動綱車7、返し車19、及び吊り車2aに順次巻き掛けられる。
【0074】
図14は、測定装置12がかご1に設けられる例を示す。
図14に示す例においても、上述した例と同様に、測定装置12によってロープ4の外径を測定することができる。
【0075】
図15は、エレベーター装置の他の例を示す図である。
図15は、2:1ローピング方式のエレベーター装置を示す。
図15に示す例では、昇降路3の上方に機械室5が設けられる。巻上機6及び制御装置9は、機械室5に設置される。
【0076】
ロープ4は、一方の端部4bが機械室5に設けられる。ロープ4は、端部4bから下方に延び、かご1の吊り車1a及び1bに巻き掛けられる。ロープ4のもう一方の端部4cは機械室5に設けられる。ロープ4は、端部4cから下方に延び、つり合いおもり2の吊り車2aに巻き掛けられる。ロープ4は、吊り車1bから上方に延び、駆動綱車7、吊り車2aに順次巻き掛けられる。
【0077】
図15は、かご1が最下階の乗場に停止している例を示す。ロープ4のうち矢印Bで示す部分は、吊り車2aによって繰り返し曲げられるため、摩耗する。しかし、当該部分は、常に昇降路3に配置される。このため、測定装置12を機械室5に設置すると、測定装置12によって当該部分の外径を測定することはできない。ロープ4の当該部分の外径を測定装置12によって測定するためには、カメラ13によって当該部分を撮影することができるように測定装置12をかご1に設けることが好ましい。例えば、測定装置12は、ロープ4のうち、かご1が最下階の乗場に停止している時に吊り車2aに巻き掛けられる部分の外径を測定することができるようにかご1に設けられる。
【0078】
ロープ4のうち矢印Dで示す部分についても同様である。当該部分は、吊り車1a、或いは吊り車1a及び1bの双方によって繰り返し曲げられるため、摩耗する。しかし、当該部分は、常に昇降路3に配置される。このため、測定装置12を機械室5に設置すると、測定装置12によって当該部分の外径を測定することはできない。ロープ4の当該部分の外径を測定装置12によって測定するためには、カメラ13によって当該部分を撮影することができるように測定装置12をかご1に設けることが好ましい。例えば、測定装置12は、ロープ4のうち、かご1が最上階の乗場に停止している時に吊り車1aに巻き掛けられる部分の外径を測定することができるようにかご1に設けられる。
【0079】
本実施の形態では、エレベーター装置が測定装置12を備える例について説明した。他の例として、測定装置12は、エレベーターの保守員によって携帯される装置であっても良い。保守員は、定期点検時に測定装置12を機械室5等に設置し、ロープ4の外径を測定しても良い。
【0080】
測定装置12に備えられた解析装置15の機能は、制御装置9に備えられても良い。他の例として、解析装置15の機能は、遠隔の監視センターに備えられても良い。かかる場合、通信装置10は、カメラ13からの画像データをネットワーク11を介して監視センターに送信する。
【0081】
本実施の形態では、エレベーターで使用されるロープ4の外径を測定装置12によって測定する例について説明した。これは一例である。エレベーター以外の他の機器で使用されるロープの外径を測定装置12によって測定しても良い。また、測定装置12によって外径を測定する長尺体は、ロープに限定されない。ロープ状の長尺体、管状の長尺体、或いは筒状の長尺体の外径を測定装置12によって測定しても良い。
【0082】
本実施の形態において、符号20~24に示す各部は、解析装置15が有する機能を示す。
図16は、解析装置15のハードウェア資源の例を示す図である。解析装置15は、ハードウェア資源として、プロセッサ41とメモリ42とを含む処理回路40を備える。解析装置15は、メモリ42に記憶されたプログラムをプロセッサ41によって実行することにより、符号20~24に示す各部の機能を実現する。メモリ42として、半導体メモリ等が採用できる。
【0083】
図17は、解析装置15のハードウェア資源の他の例を示す図である。
図17に示す例では、解析装置15は、プロセッサ41、メモリ42、及び専用ハードウェア43を含む処理回路40を備える。
図17は、解析装置15が有する機能の一部を専用ハードウェア43によって実現する例を示す。解析装置15が有する機能の全部を専用ハードウェア43によって実現しても良い。専用ハードウェア43として、単一回路、複合回路、プログラム化したプロセッサ、並列プログラム化したプロセッサ、ASIC、FPGA、又はこれらの組み合わせを採用できる。
【産業上の利用可能性】
【0084】
本開示に係る測定装置は、ロープ等の長尺体の外径を測定するために利用できる。
【符号の説明】
【0085】
1 かご、 1a 吊り車、 1b 吊り車、 2 つり合いおもり、 2a 吊り車、 3 昇降路、 4 ロープ、 4b 端部、 4c 端部、 5 機械室、 6 巻上機、 7 駆動綱車、 8 そらせ車、 9 制御装置、 10 通信装置、 11 ネットワーク、 12 測定装置、 13 カメラ、 14 光源、 15 解析装置、 16 受光器、 17 レンズ、 18 返し車、 19 返し車、 20 画像解析部、 21 外径算出部、 22 距離算出部、 23 補正部、 24 傾斜算出部、 30 光源、 31 照明、 32 反射板、 40 処理回路、 41 プロセッサ、 42 メモリ、 43 専用ハードウェア