(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】電動車両の車体構造
(51)【国際特許分類】
B60K 1/04 20190101AFI20230511BHJP
B62D 25/20 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B60K1/04 Z
B62D25/20 G
(21)【出願番号】P 2023506097
(86)(22)【出願日】2022-03-24
(86)【国際出願番号】 JP2022014003
【審査請求日】2023-01-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006286
【氏名又は名称】三菱自動車工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000785
【氏名又は名称】SSIP弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】陸川 祐太郎
(72)【発明者】
【氏名】竹内 秀紀
(72)【発明者】
【氏名】平井 稔泰
(72)【発明者】
【氏名】窪田 陽考
(72)【発明者】
【氏名】舘野 湧哉
【審査官】中川 隆司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-104578(JP,A)
【文献】特開2020-111168(JP,A)
【文献】特開2017-50237(JP,A)
【文献】特開2008-195212(JP,A)
【文献】特開2016-84025(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0246943(US,A1)
【文献】特開2014-226972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60K 1/04
B62D 25/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車幅方向に延在し、車両前後方向に延在する一対のサイドメンバに接続する複数のクロスメンバのうち車両前側に配設される前側クロスメンバと、
前記前側クロスメンバの後方に前記前側クロスメンバと隣り合う後側クロスメンバと、
前記前側クロスメンバと前記後側クロスメンバとの間に配置されるバッテリ装置と、を備える電動車両の車体構造であって、
フロアパネルに沿って車室前部のダッシュパネルから前記前側クロスメンバまで車両前後方向に延在する凸状のバックボーンと、
前記バッテリ装置の上側を覆うように前記バックボーンから前記後側クロスメンバまで車両前後方向に延在するブラケットと、を備え、
前記ブラケットは、前記バックボーン、前記前側クロスメンバおよび前記後側クロスメンバにそれぞれ固定される、
電動車両の車体構造。
【請求項2】
前記ブラケットと前記バックボーンとは、前記ブラケットが前記バックボーンに対して上方から覆うように接続されるとともに、互いの稜線が車両前後方向に連続的に延在する、
請求項1に記載の電動車両の車体構造。
【請求項3】
前記ブラケットと前記バックボーンとは、車幅方向の幅が略等しい、
請求項2に記載の電動車両の車体構造。
【請求項4】
前記ブラケットは、前記バッテリ装置を跨いで車両前後方向に延び、前記前側クロスメンバおよび前記後側クロスメンバにそれぞれ固定される第1ブラケットと、前記第1ブラケットの前端部および前記バックボーンの後端部にそれぞれ接続され、前記第1ブラケットから前記バックボーンまで車両前後方向に延びる第2ブラケットとの2分割構造からなる、
請求項1から3の何れか1項に記載の電動車両の車体構造。
【請求項5】
前記第2ブラケットは、前記第1ブラケットよりも板厚が厚い、
請求項4に記載の電動車両の車体構造。
【請求項6】
前記第1ブラケットと前記第2ブラケットとの接続部は、前記第1ブラケットの前記前側クロスメンバへの固定部と車両前後方向で略同一位置に位置されている、
請求項4又は5に記載の電動車両の車体構造。
【請求項7】
前記第2ブラケットは、前記バックボーンの上面と対向して接続される上壁部と、前記バックボーンの左右両側の側面とそれぞれ対向する左右の側壁部とを有する3面構造からなる、
請求項4から6の何れか1項に記載の電動車両の車体構造。
【請求項8】
前記側壁部は、車両前後方向の途中部から後端に至るに連れて上下方向の幅が拡幅する、
請求項7に記載の電動車両の車体構造。
【請求項9】
前記側壁部は、車両前後方向の途中部から後端に至るに連れて上端が上方向に傾斜し、下端が直線状に延在する、
請求項8に記載の電動車両の車体構造。
【請求項10】
前記ブラケットは、運転席シートと助手席シートとの間に配置される、
請求項1から9の何れか1項に記載の電動車両の車体構造。
【請求項11】
前記ブラケットは、該ブラケットの側面部分の少なくとも一部が、車幅方向から見て前記運転席シート及び助手席シートのシートレールと重なるように設置される、
請求項10に記載の電動車両の車体構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電動車両の車体構造に関する。
【背景技術】
【0002】
車室内の前席シート下に、電動車両の駆動用電源装置(電池パック)を配置し、この駆動用電源装置を保護するための車体構造について種々提案されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、車両の電源装置の保護構造について開示されている。具体的には、左右一対の車両用シートの間であってバッテリパックの上側の位置に設けられたDC/DCコンバータと、DC/DCコンバータの上側を覆うように延在するプロテクタと、を備え、プロテクタは、DC/DCコンバータとの間に所定の隙間を設けて設置されることが示されている。
【0004】
さらに、プロテクタの前後方向中央部の下側を車幅方向に延在しDC/DCコンバータを車幅方向に跨ぐ補助カバーが配設されることが示されている。そして、プロテクタ及び補助カバーによって、乗員の踏み付けに対するDC/DCコンバータの保護、及びDC/DCコンバータの温度上昇による乗員への快適性低下の抑制が示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、前述のように特許文献1には、プロテクタ及び補助カバーによって、乗員の踏み付けに対するDC/DCコンバータの保護、及びDC/DCコンバータの温度上昇による乗員への快適性低下の抑制が示されるだけであり、車両衝突時(前面衝突時、側面衝突時)のバッテリパックの保護構造についての開示は見られない。また、プロテクタは前後のクロスメンバに固定されるだけであり、補助カバーはバッテリバックに固定される構造であるため、車両衝突時にバッテリパックの保護が十分に得られるか問題がある。
【0007】
本開示は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、車両衝突時に車室内の前席シート下に配設される電源装置を保護する電動車両の車体構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)上記目的を達成するため、本開示に係る電動車両の車体構造の少なくとも一つの実施形態では、車幅方向に延在し、車両前後方向に延在する一対のサイドメンバに接続する複数のクロスメンバのうち車両前側に配設される前側クロスメンバと、前記前側クロスメンバの後方に前記前側クロスメンバと隣り合う後側クロスメンバと、前記前側クロスメンバと前記後側クロスメンバとの間に配置されるバッテリ装置と、を備える電動車両の車体構造であって、フロアパネルに沿って車室前部のダッシュパネルから前記前側クロスメンバまで車両前後方向に延在する凸状のバックボーンと、前記バッテリ装置の上側を覆うように前記バックボーンから前記後側クロスメンバまで車両前後方向に延在するブラケットと、を備え、前記ブラケットは、前記バックボーン、前記前側クロスメンバおよび前記後側クロスメンバにそれぞれ固定される。
【0009】
このような構成(1)によれば、前面衝突時、ブラケットを介して、バックボーンから伝達された荷重を前側クロスメンバ及び後側クロスメンバ、ひいては左右一対のサイドメンバへと効率的に逃がすことができ、ブラケット自体の変形を抑制できる。このように、前面衝突時にブラケットとバッテリ装置とが干渉することが抑制されることで前面衝突に対してバッテリ装置を保護することができる。
【0010】
(2)幾つかの実施形態では、前記ブラケットと前記バックボーンとは、前記ブラケットが前記バックボーンに対して上方から覆うように接続されるとともに、互いの稜線が車両前後方向に連続的に延在する。
【0011】
このような構成(2)によれば、バックボーンからブラケット側へと、稜線を伝わって荷重をスムーズに伝達できる。
【0012】
(3)幾つかの実施形態では、前記ブラケットと前記バックボーンとは、車幅方向の幅が略等しい。
【0013】
このような構成(3)によれば、バックボーンからブラケット側へと、稜線を伝わって荷重をスムーズに伝達できる。
【0014】
(4)幾つかの実施形態では、前記ブラケットは、前記バッテリ装置を跨いで車両前後方向に延び、前記前側クロスメンバおよび前記後側クロスメンバにそれぞれ固定される第1ブラケットと、前記第1ブラケットの前端部および前記バックボーンの後端部にそれぞれ接続され、前記第1ブラケットから前記バックボーンまで車両前後方向に延びる第2ブラケットとの2分割構造からなる。
【0015】
このような構成(4)によれば、2分割構造のため別々の部品として成形でき、複雑な形状のブラケットに対して成形性がよい。また、第1ブラケットと第2ブラケットとの重ね合わせの部分においては板厚が厚くなるため、ブラケットの補強ができる。
【0016】
(5)幾つかの実施形態では、前記第2ブラケットは、前記第1ブラケットよりも板厚が厚い。
【0017】
このような構成(5)によれば、正面衝突時に、バックボーンから大きな荷重を受ける第2ブラケットの剛性を高めるとともに、バッテリ保護ブラケット全体として軽量化できる。
【0018】
(6)幾つかの実施形態では、前記第1ブラケットと前記第2ブラケットとの接続部は、前記第1ブラケットの前記前側クロスメンバへの固定部と車両前後方向で略同一位置に位置されている。
【0019】
このような構成(6)によれば、第1ブラケットと第2ブラケットとの接続部である重ね合わせ部分は、板厚が厚くなりブラケットを補強ができる部分であり、その重ね合わせ部分において前側クロスメンバに固定されるので、ブラケットから前側クロスメンバへの荷重伝達時における該固定部の強度を向上させることができる。
【0020】
(7)幾つかの実施形態では、前記第2ブラケットは、前記バックボーンの上面と対向して接続される上壁部と、前記バックボーンの左右両側の側面とそれぞれ対向する左右の側壁部とを有する3面構造からなる。
【0021】
このような構成(7)によれば、第2ブラケットは、上壁部と左右の側壁部との3面構造からなるので、バックボーンへの取り付けが上方より覆うように取り付けることができ容易であるとともに、複数の稜線を有することにより第2ブラケットの剛性を確保できる。
【0022】
(8)幾つかの実施形態では、前記側壁部は、車両前後方向の途中部から後端に至るに連れて上下方向の幅が拡幅する。
【0023】
このような構成(8)によれば、第1ブラケットの前端部と第2ブラケットの後端部との接合部の面積を確保でき、結合強度を確保できるとともに、第1ブラケットと第2ブラケットとの間の荷重伝達をより広い範囲で行うことができる。これにより、伝達荷重の集中に伴う第1ブラケットと第2ブラケットとの接続部分における変形を防止できる。
【0024】
(9)幾つかの実施形態では、前記側壁部は、車両前後方向の途中部から後端に至るに連れて上端が上方向に傾斜し、下端が直線状に延在する。
【0025】
このような構成(9)によれば、第1ブラケットの前端部と第2ブラケットの後端部との接合部の面積を確保でき、結合強度を確保できるとともに、第1ブラケットと第2ブラケットとの間の荷重伝達をより広い範囲で行うことができる。これにより、伝達荷重の集中に伴う第1ブラケットと第2ブラケットとの接続部分における変形を防止できる。さらに、下端が直線状に延在するので、バックボーンからの車両前後方向の荷重が第2ブラケットを介して第1ブラケットに効率よく伝達される。
【0026】
(10)幾つかの実施形態では、前記ブラケットは、運転席シートと助手席シートとの間に配置される。
【0027】
このような構成(10)によれば、車両の側面衝突時に、ブラケットによって、シートの倒れ込みによるバッテリ装置の損傷を防ぐことができる。
【0028】
(11)幾つかの実施形態では、前記ブラケットは、該ブラケットの側面部分の少なくとも一部が、車幅方向から見て前記運転席シート及び助手席シートのシートレールと重なるように設置される。
【0029】
このような構成(11)によれば、側面衝突時に、シートレールが車内側に倒れ込んだ際に、ブラケットによって、シートレールの倒れ込みに対する反力を発生させ、バッテリ装置の損傷を防ぐことができる。
【発明の効果】
【0030】
本開示に係る電動車両の車体構造の少なくとも一つの実施形態によれば、車両衝突時に車室内の前席シート下に配設されるバッテリ装置を保護することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本開示の一実施形態に係る電動車両の車体構造を示す全体斜視図である。
【
図3】バッテリ保護ブラケットにおける正面衝突時の衝突荷重の伝達状態を示す斜視図である。
【
図4】他の実施形態を示し、バッテリ保護ブラケットの前方からの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本開示の実施形態に係る電動車両の車体構造について、図面に基づいて説明する。かかる実施の形態は、本開示の一態様を示すものであり、この開示に限定するものではなく、本開示の技術的思想の範囲内で任意に変更可能である。
【0033】
(一実施形態)
図1~3及び
図7を参照して本開示の一実施形態を説明する。
図1は、電動車両1の車体構造3を示す全体斜視図である。電動車両1は、車輪を駆動する駆動モータを有する電気自動車やハイブリッド車両であり、駆動モータの電源として電池パック(バッテリ装置)5が装着されている。なお、電池パック5は、複数のバッテリモジュール及びDC/DCコンバータ等の電源装置として必要な機器を備えて一体的に構成されている。
【0034】
本実施形態においては、電池パック5は、車室7の下部を形成するほぼ水平のフロアパネル9の上であって、フロアパネル9を床下に掘り込んで形成した窪み部11内に収納されている。また、電池パック5は、右側前席シート(運転席シート)13の下から左側前席シート(助手席シート)15の下まで車幅方向に延在して配設されている(
図7参照)。
【0035】
フロアパネル9の車幅方向の左右両端部には車両前後方向に延在して車体骨格部材を構成するサイドシル17が配設され、サイドシル17の車幅方向内側には、フロアパネル9の下面側に突出し、車両前後方向に延在して車体骨格部材を構成するサイドメンバ19が配設されている。また、左右のサイドシル17間を接続すると共に、左右のサイドメンバ19にも接続して車幅方向に延在して配設されるクロスメンバ21が、車両前後方向に複数設けられている。
【0036】
そして、複数のクロスメンバのうち車両前側に配設される前側クロスメンバ21aと、前側クロスメンバの後方に前側クロスメンバ21aと隣り合う後側クロスメンバ21bとの間に、電池パック5が設置されている。
【0037】
また、車幅方向の中央部には、フロアパネル9に沿って車室前端部における車室7内外を仕切る仕切壁であるダッシュパネル23から前側クロスメンバ21aまで前後方向に延在して車室7内側に凸状に隆起したバックボーン25が形成されている(
図2参照)。
【0038】
そして、電池パック5の上側を覆うようにバックボーン25の後端部から後側クロスメンバ21bまで車両前後方向に延在するバッテリ保護ブラケット(ブラケット)27が設けられている。このバッテリ保護ブラケット27は、バックボーン25、前側クロスメンバ21a及び後側クロスメンバ21bにそれぞれ固定されている。
【0039】
なお、バックボーン25及びバッテリ保護ブラケット27の上には、センターコンソール29(
図7参照)が覆うように配設される。従って、バッテリ保護ブラケット27は、センターコンソール29の内側に配置されている。また、フロアパネル9上にはフロアカーペット31が貼られ、車室7側に突出する電池パック5の部分は、フロアカーペット31によって覆われている(
図7参照)。
【0040】
図1~3に示すように、バッテリ保護ブラケット27は、電池パック5を跨ぐように、バッテリ保護ブラケット27の上面部27aから下方に向かって延びる前側脚部33及び後側脚部35をそれぞれ左右に有している。
【0041】
さらに、バッテリ保護ブラケット27の前端部には、バックボーン25の後端部上面に固定されるバックボーン取付部37を有し、前側脚部33の下端には、前側クロスメンバ21aの上面に固定される前側取付部331を有し、後側脚部35の下端には、後側クロスメンバ21bの上面に固定される後側取付部351を有している。
【0042】
前側取付部331及び後側取付部351は、前側脚部33の下端及び後側脚部35の下端が車幅方向外側に向かって延在する脚部フランジ36(
図2、4参照)に形成され、前側クロスメンバ21a及び後側クロスメンバ21bに対してバッテリ保護ブラケット27を強固に固定できるようになっている。
【0043】
これらバックボーン取付部37、前側取付部331、及び後側取付部351の各取付部において車体側に植設されたナットにボルト締結、又は車体側に植設されたボルトにナット締結によって、バッテリ保護ブラケット27は車体に固定される。なお、前側クロスメンバ21a及び後側クロスメンバ21bの高さに応じて、バッテリ保護ブラケット27の上面部27aが略水平状態に保持されるように、前側脚部33及び後側脚部35の上下方向の長さがそれぞれ設定されている。
【0044】
さらに、
図1、2に示すように、バッテリ保護ブラケット27は、上平面視においてバックボーン25と略等しい車幅方向の幅を有し、バックボーン25に対して上方から覆うように接続され、接続されたときに、バッテリ保護ブラケット27の車幅方向の両端部に形成された稜線部28が、バックボーン25の車幅方向の両端部に形成された稜線部26に対して車両前後方向に連続的に延在する。
【0045】
また、
図1、7に示すように、バッテリ保護ブラケット27は、運転席シート13と助手席シート15の間に配置されており、運転席シート13及び助手席シート15は、それぞれシートレール41の上を前後方向にスライドするように構成され、シートクッション43及びシートバック45を有する。
【0046】
そして、バッテリ保護ブラケット27は、バッテリ保護ブラケット27の側面部分の少なくとも一部が、車幅方向視(車幅方向から見て)において運転席シート13及び助手席シート15のそれぞれのシートレール41と重なるように設置されている。
図7に示すように、シートレール41の位置とバッテリ保護ブラケット27の位置との関係は、空間Sの部分において、車幅方向視において重なる位置関係に設置されている。
【0047】
以上説明した一実施形態によれば、前面衝突時、バッテリ保護ブラケット27を介して、バックボーン25から伝達された衝突荷重F(
図3)を前側クロスメンバ21a及び後側クロスメンバ21b、ひいては左右一対のサイドシル17及びサイドメンバ19へと効率的に逃がすことができ、バッテリ保護ブラケット27自体の変形を抑制できる。このように変形の抑制によって、前面衝突時にバッテリ保護ブラケット27と電池パック5とが干渉することが抑制されることで前面衝突に対して電池パック5を保護することができる。
【0048】
図3は、前面衝突時の衝突荷重Fが、バックボーン25から前側クロスメンバ21a及び後側クロスメンバ21bへと伝達する経路を示す斜視図である。なお、
図3には、車両左側の伝達状態を示すが、車両右側においても同様である。
【0049】
また、側面衝突時おいても、バッテリ保護ブラケット27を介して、車両側面から入力される荷重を前側クロスメンバ21a及び後側クロスメンバ21b、さらに、バックボーン25側にも逃がすことができ、バッテリ保護ブラケット27自体の変形を抑制できる。さらに、バッテリ保護ブラケット27が、バックボーン25に固定されているので、バッテリ保護ブラケット27の横倒れに対する抵抗力を高めることができるため、側突時のバッテリ保護ブラケット27自体の変形をさらに抑制できる。このように、変形の抑制によって側面衝突時においてもバッテリ保護ブラケット27と電池パック5とが干渉することが抑制されることで側面衝突に対しても電池パック5を保護することができる。
【0050】
さらに、バッテリ保護ブラケット27とバックボーン25とは、車幅方向の幅が略等しく、バッテリ保護ブラケット27の稜線部28と、バックボーン25の稜線部26とが、車両前後方向に連続的に延在するので、稜線部26、28を伝わって荷重をスムーズに伝達できる。
【0051】
さらに、バッテリ保護ブラケット27は、運転席シート13と助手席シート15の間に配置されているので、車両の側面衝突時に、バッテリ保護ブラケット27によって、シートの倒れ込みによる電池パック5の損傷を防ぐことができる。
【0052】
さらに、バッテリ保護ブラケット27は、バッテリ保護ブラケット27の側面部分の少なくとも一部が、車幅方向から見て運転席シート13及び助手席シート15のそれぞれのシートレール41と重なるように設置されているので、側面衝突時に、シートレール41が車内側に倒れ込んだ際に、バッテリ保護ブラケット27によって、シートレール41の倒れ込みに対する反力を発生させ、電池パック5の損傷を防ぐことができる。
【0053】
(他の実施形態)次に、
図4~6を参照して他の実施形態を説明する。他の実施形態は、一実施形態に対してバッテリ保護ブラケット51が、第1ブラケット51aと第2ブラケット51bとの2分割構造によって構成されている。他の実施形態において、一実施形態の構成要件と同じものは同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
【0054】
バッテリ保護ブラケット51は、電池パック5を跨いで前後方向に延び、前側クロスメンバ21a及び後側クロスメンバ21bにそれぞれ固定される前側脚部33及び後側脚部35を有する第1ブラケット51aと、第1ブラケット51aの前端部およびバックボーン25の後端部にそれぞれ接続され、第1ブラケット51aからバックボーン25まで前後方向に延びる第2ブラケット51bとから構成されている。
【0055】
第1ブラケット51aの前端部には前側脚部33が形成されるとともに、前端開口部53の開口縁に沿って前端フランジ55が形成され、第1ブラケット51aの後端部には後側脚部35が形成されるとともに、後端開口部57の開口縁に沿って後端フランジ59が形成されている。
【0056】
以上説明した他の実施形態によれば、バッテリ保護ブラケット51が2分割構造のため、バッテリ保護ブラケット51を2分割した別々の部品として成形でき、複雑な形状のバッテリ保護ブラケット51に対して成形性を向上できる。
【0057】
また、第1ブラケット51aと第2ブラケット51bとを重ね合わせる接続部61においては板厚が厚くなるため、バッテリ保護ブラケット51の全体としての補強をできる。
【0058】
また、前端フランジ55及び後端フランジ59によって、第1ブラケット51aの車両左右方向の剛性が高められる。さらに、前端フランジ55及び後端フランジ59によって、前側脚部33及び後側脚部35のそれぞれの強度が向上して、前側脚部33及び後側脚部35から車体側への荷重伝達を効率的に行うことができる。
【0059】
幾つかの実施形態では、第2ブラケット51bは、第1ブラケット51aよりも板厚が厚い。すなわち、バッテリ保護ブラケット51は、2分割構造のため第1ブラケット51aと第2ブラケット51bとの材質や板厚に差つけることができ、第2ブラケット51bを第1ブラケット51aよりも板厚を厚くすることで、正面衝突時に、バックボーン25から大きな荷重を受けやすい第2ブラケット51bの剛性を高めるとともに、バッテリ保護ブラケット51の全体としては軽量化を達成できる。
【0060】
幾つかの実施形態では、
図4に示すように、2分割された第1ブラケット51aと第2ブラケット51bとが接続する接続部61は、第1ブラケット51aの前側クロスメンバ21aへの固定部である前側脚部33の前側取付部331と車両前後方向で略同一位置に位置されている。
【0061】
また、
図5、6に示すように、接続部61を形成する第1ブラケット51aの前端部は、開口形状が一段小さくなるような段差形状63に絞られ、その段差形状63の外周面に、第2ブラケット51bの後端部の内周面が重なっている。
【0062】
また、段差形状63は、第1ブラケット51aの上面部65から左右の前側脚部33の下端まで延びている。そして、
図5に示すように複数の接続箇所67で、例えば、上面部65では5箇所、左右の前側脚部33ではそれぞれ3箇所ずつスポット溶接又は一部ボルト締結によって接続される。
【0063】
このような構成によれば、第1ブラケット51aと第2ブラケット51bとの接続部61である重ね合わせ部分は、板厚が厚くなりバッテリ保護ブラケット51を補強ができる部分であり、その重ね合わせ部分において前側クロスメンバ21aに固定されるので、バッテリ保護ブラケット51から前側クロスメンバ21aへの荷重伝達時における該固定部の剛性を向上させることができる。
【0064】
また、接続部61を形成する第1ブラケット51aの前端部に段差形状63が形成されることによって、第1ブラケット51aの前端部が補強されるとともに、前側脚部33が補強されるので、前側脚部33への衝突荷重の集中に伴う前側脚部33の折れを防止することができる。
【0065】
幾つかの実施形態では、
図5に示すように、第2ブラケット51bは、バックボーン25の上面と対向して接続される上壁部69と、バックボーン25の左右両側の側面とそれぞれ対向する左右の側壁部71とを有する3面構造から構成されている。
【0066】
そして、第2ブラケット51bの後端部における上壁部69及び側壁部71の内周面は、それぞれ第1ブラケット51aの前端部に形成される段差形状63の外周面に重なり接続箇所67でスポット溶接又は一部ボルト締結によって接続される。
【0067】
第2ブラケット51bの後端部と第1ブラケット51aの前端部とが接続されると、第2ブラケット51bの車幅方向の両端部に形成される稜線部28bと、第1ブラケット51aの車幅方向の両端部に形成される稜線部28aとが連続するようになっている。
【0068】
このような構成によれば、第2ブラケット51bは、上壁部69と左右の側壁部71との3面構造からなるので、バックボーン25への取り付けが上方より覆うように取り付けることができ容易である。さらに、3面構造であるので、第2ブラケット51bの車幅方向の両端部に形成される稜線部28bによって第2ブラケット51bの剛性を確保できる。
【0069】
幾つかの実施形態では、
図5に示すように、第2ブラケット51bの側壁部71は、車両前後方向の途中部から後端に至るに連れて上下方向の幅(
図5のH)が拡幅されている。側壁部71の拡幅形状は、車両前後方向の途中部から後端に至るに連れて上端は上方向に傾斜し、下端は直線状に延在する。
【0070】
このように、第2ブラケット51bの側壁部71が、車両前後方向の途中部から後端に至るに連れて上下方向の幅が拡幅されているので、第1ブラケット51aの前端部の前側脚部33と第2ブラケット51bの後端部との重ね合わせ部分の面積を確保でき、結合強度を確保できるとともに、第1ブラケット51aと第2ブラケット51bとの間の荷重伝達をより広い範囲で行うことができる。これにより、伝達荷重の集中に伴う第1ブラケット51aと第2ブラケット51bとの接続部61における変形を防止できる。さらに、下端が直線状に延在するので、バックボーン25からの車両前後方向の衝突荷重が第2ブラケット51bを介して第1ブラケット51a側に効率よく伝達される。
【符号の説明】
【0071】
1 電動車両
3 車体構造
5 電池パック(バッテリ装置)
7 車室
9 フロアパネル9
11 窪み部
13 右側前席シート(運転席シート)
15 側前席シート(助手席シート)
17 サイドシル
19 サイドメンバ
21 クロスメンバ
21a 前側クロスメンバ
21b 後側クロスメンバ
23 ダッシュパネル
25 バックボーン
26、28、28a、28b 稜線部
27、51 バッテリ保護ブラケット(ブラケット)
33 前側脚部
331 前側取付部
35 後側脚部
351 後側取付部
37 バックボーン取付部
41 シートレール
51a 第1ブラケット
51b 第2ブラケット
53 前端開口部
55 前端フランジ
57 後端開口部
59 後端フランジ
61 第1ブラケットと第2ブラケットとの接続部
63 段差形状
67 接続箇所
69 第2ブラケットの上壁部
71 第2ブラケットの側壁部
F 前面衝突荷重
H 上下方向の幅
【要約】
車幅方向に延在し、車両前後方向に延在する一対のサイドメンバに接続する複数のクロスメンバのうち車両前側に配設される前側クロスメンバと、前記前側クロスメンバの後方に前記前側クロスメンバと隣り合う後側クロスメンバと、前記前側クロスメンバと前記後側クロスメンバとの間に配置されるバッテリ装置と、を備える電動車両の車体構造であって、フロアパネルに沿って車室前部のダッシュパネルから前記前側クロスメンバまで車両前後方向に延在する凸状のバックボーンと、前記バッテリ装置の上側を覆うように前記バックボーンから前記後側クロスメンバまで車両前後方向に延在するブラケットと、を備え、前記ブラケットは、前記バックボーン、前記前側クロスメンバおよび前記後側クロスメンバにそれぞれ固定される。