(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】支持ガラス基板及びこれを用いた積層基板
(51)【国際特許分類】
H01L 21/02 20060101AFI20230511BHJP
C03C 23/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H01L21/02 A
C03C23/00 D
H01L21/02 C
(21)【出願番号】P 2018061106
(22)【出願日】2018-03-28
【審査請求日】2021-02-05
(31)【優先権主張番号】P 2017166517
(32)【優先日】2017-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 良太
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/136348(WO,A1)
【文献】特開平09-278494(JP,A)
【文献】特開2000-223382(JP,A)
【文献】特開2016-160135(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/02
C03C 23/00
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加工基板を支持するための支持ガラス基板において、ノッチ部を有し、支持ガラス基板の表面にドットを構成単位とする情報識別部を備え、ドットから伸張するクラックの表面方向の最大長さが
1μm以上196μm以下であることを特徴とする支持ガラス基板。
【請求項2】
ドットが環状の溝で形成されていることを特徴とする請求項
1に記載の支持ガラス基板。
【請求項3】
30~380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数が30×10
-7/℃以上、且つ165×10
-7/℃以下であることを特徴とする請求項1
又は2に記載の支持ガラス基板。
【請求項4】
直径100~500mmのウエハ形状又は略円板形状を有し、板厚が2.0mm未満であり、全体板厚偏差が5μm以下であることを特徴とする請求項1~
3の何れかに記載の支持ガラス基板。
【請求項5】
各辺が300mm以上の四角形の形状を有し、板厚が2.0mm未満であり、全体板厚偏差が10μm以下であることを特徴とする請求項1~
3の何れかに記載の支持ガラス基板。
【請求項6】
少なくとも加工基板と加工基板を支持するための支持ガラス基板とを備える積層基板であって、支持ガラス基板が請求項1~
5の何れかに記載の支持ガラス基板であることを特徴とする積層基板。
【請求項7】
加工基板が、少なくとも封止材でモールドされた半導体チップを備えることを特徴とする請求項
6に記載の積層基板。
【請求項8】
少なくとも加工基板と加工基板を支持するための支持ガラス基板とを備える積層基板を用意する工程と、加工基板に対して、加工処理を行う工程と、を有すると共に、支持ガラス基板が請求項1~
5の何れかに記載の支持ガラス基板であることを特徴とする半導体パッケージの製造方法。
【請求項9】
加工処理が、加工基板の一方の表面に配線する工程を含むことを特徴とする請求項
8に記載の半導体パッケージの製造方法。
【請求項10】
加工処理が、加工基板の一方の表面に半田バンプを形成する工程を含むことを特徴とする請求項
8に記載の半導体パッケージの製造方法。
【請求項11】
ノッチ部を有し、表面にドットを構成単位とする情報識別部を備え、ドットから伸張するクラックの表面方向の最大長さが
1μm以上196μm以下であることを特徴とするガラス基板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加工基板を支持するための支持ガラス基板及びこれを用いた積層基板に関し、具体的には、半導体パッケージ(半導体装置)の製造工程で加工基板の支持に用いる支持ガラス基板及びこれを用いた積層基板に関する。
【背景技術】
【0002】
携帯電話、ノート型パーソナルコンピュータ、PDA(Personal Data Assistance)等の携帯型電子機器には、小型化及び軽量化が要求されている。これに伴い、これらの電子機器に用いられる半導体チップの実装スペースも厳しく制限されており、半導体チップの高密度な実装が課題になっている。そこで、近年では、三次元実装技術、すなわち半導体チップ同士を積層し、各半導体チップ間を配線接続することにより、半導体パッケージの高密度実装を図っている。
【0003】
また、従来のウエハレベルパッケージ(WLP)は、バンプをウエハの状態で形成した後、ダイシングで個片化することにより作製されている。しかし、従来のWLPは、ピン数を増加させ難いことに加えて、半導体チップの裏面が露出した状態で実装されるため、半導体チップの欠け等が発生し易いという問題があった。
【0004】
そこで、新たなWLPとして、fan out型のWLPが提案されている。fan out型のWLPは、ピン数を増加させることが可能であり、また半導体チップの端部を保護することにより、半導体チップの欠け等を防止することができる。
【0005】
fan out型のWLPには、チップファースト型とチップラスト型の製造方法がある。チップファースト型では、例えば、複数の半導体チップを樹脂の封止材でモールドして、加工基板を形成した後に、加工基板の一方の表面に配線する工程、半田バンプを形成する工程等を有する。チップラスト型では、例えば、支持基板上に配線層を設置した上で、複数の半導体チップを配列し、樹脂の封止材でモールドして加工基板を形成した後に、半田バンプを形成する工程等を有する。
【0006】
更に、最近では、パネルレベルパッケージ(PLP)と呼ばれる半導体パッケージも検討されている。PLPでは、支持基板1枚当たりの半導体パッケージの取れ数を増加させつつ、製造コストを低下させるために、ウエハ状ではなく矩形状の支持基板が使用される。
【0007】
これらの半導体パッケージの製造工程では、約200℃の熱処理を伴うため、封止材が変形して、加工基板に反りが発生する虞がある。加工基板に反りが発生すると、加工基板の一方の表面に対して、高密度に配線することが困難になり、また半田バンプを正確に形成することも困難になる。
【0008】
このような事情から、加工基板の反りを抑制するために、加工基板を支持するためにガラス基板を用いることが検討されている(特許文献1参照)。
【0009】
ガラス基板は、表面を平滑化し易く、且つ剛性を有する。よって、支持基板としてガラス基板を用いると、加工基板を強固、且つ正確に支持することが可能になる。またガラス基板は、紫外光、赤外光等の光を透過し易い。よって、支持基板としてガラス基板を用いると、紫外線硬化型接着剤等の接着層等を設けることにより、加工基板を容易に固定することができる。更に赤外線を吸収する剥離層等を設けることにより、加工基板を容易に分離することもできる。別の方式として紫外線硬化型テープ等により接着層等を設けることにより、加工基板を容易に固定、分離することができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、支持ガラス基板の表面に二次元コードの情報識別部(マーク)を形成(マーキング)すると、支持ガラス基板の生産情報等(例えば、ガラス基板の寸法、線熱膨張係数、ロット、全体板厚偏差、製造者名、販売者名)を管理、認識することができる。この情報識別部は、一般的に支持ガラス基板の周縁領域に形成されており、文字、記号等として、人間の目等により認識される。更に、支持ガラス基板の情報識別部は、CCDカメラ等の光学素子により自動的に識別されることがあり、この場合、情報識別部には、自動化工程でも正確に識別可能であることが要求される。
【0011】
情報識別部を形成する方法として、例えば、支持ガラス基板にレーザーを照射して、その照射前後のサーマルショックにより、支持ガラス基板にクラック(主に厚み方向のクラック)を伸張させて、情報識別部を形成する方法が知られている(特許文献2参照)。
【0012】
しかし、この方法は、fan out型のWLPとPLPの製造工程において、封止材の樹脂を硬化するために積層基板を加熱する工程を経た場合に、積層基板を加熱後、室温に冷却する際、加工基板と支持ガラス基板の僅かな熱膨張係数の差によって、支持ガラス基板が破損し易くなる。
【0013】
本発明は、上記事情に鑑み成されたものであり、その技術的課題は、表面に情報識別部を形成した場合でも、fan out型のWLPとPLPの製造工程で破損し難い支持ガラス基板を創案することである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2015-78113号公報
【文献】国際公開第2016/136348号
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明者は、種々の実験を繰り返した結果、情報識別部を構成するドットから発生するクラックの長さを所定値以下に規制することにより、上記技術的課題を解決し得ることを見出し、本発明として提案するものである。すなわち、本発明の支持ガラス基板は、加工基板を支持するための支持ガラス基板において、支持ガラス基板の表面にドットを構成単位とする情報識別部を備え、ドットから伸張するクラックの表面方向の最大長さが350μm以下であることを特徴とする。ここで、「ドットから伸張するクラックの表面方向の最大長さ」は、光学顕微鏡で観察した時に、クラックの形状に沿って測長したものであり、クラックの始点と終点を結んだに二点間距離を測長したものではなく、また厚み方向のクラックを測長したものでもない。なお、ドットから伸張するクラックの表面方向の最大長さは、パルスレーザーの照射条件(パルス幅、照射径、照射速度等)により制御可能である。
【0016】
また、本発明の支持ガラス基板は、ドットから伸張するクラックの表面方向の最大長さが0.1μm以上であることが好ましい。
【0017】
また、本発明の支持ガラス基板は、ドットが環状の溝で形成されていることが好ましい。このようにすれば、レーザーアブレーション(パルスレーザーの照射によるガラスの蒸発)によりドットを形成し易くなる。結果として、パルスレーザーを照射してドットを形成する際に、照射条件の制御により、照射領域のガラスに過剰な熱を蓄積させることなく、ドットを形成することができる。
【0018】
また、本発明の支持ガラス基板は、30~380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数が30×10-7/℃以上、且つ165×10-7/℃以下であることが好ましい。このようにすれば、加工基板内で半導体チップと封止材の割合を変更した場合に、加工基板と支持ガラス基板の熱膨張係数を厳密に整合させ易くなる。そして、両者の熱膨張係数が整合すると、加工処理時に加工基板の寸法変化(特に、反り変形)を抑制し易くなる。結果として、支持ガラス基板の反りを抑制することが可能になり、支持ガラス基板の情報識別部のクラックを起点にした支持ガラス基板の破損を減少させることが可能になる。ここで、「30~380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数」は、ディラトメーターで測定可能である。
【0019】
また、本発明の支持ガラス基板は、直径100~500mmのウエハ形状又は略円板形状を有し、板厚が2.0mm未満であり、全体板厚偏差が5μm以下であることが好ましい。ここで、「全体板厚偏差」は、支持ガラス基板全体の最大板厚と最小板厚の差であり、例えばコベルコ科研社製のSBW-331ML/dにより測定可能である。「反り量」は、支持ガラス基板全体における最高位点と最小二乗焦点面との間の最大距離の絶対値と、最低位点と最小二乗焦点面との絶対値との合計を指し、例えばコベルコ科研社製のBow/Warp測定装置SBW-331M/Ldにより測定可能である。
【0020】
また、本発明の支持ガラス基板は、各辺が300mm以上の四角形の形状を有し、板厚が2.0mm未満であり、全体板厚偏差が10μm以下であることが好ましい。
【0021】
また、本発明の積層基板は、少なくとも加工基板と加工基板を支持するための支持ガラス基板とを備える積層基板であって、支持ガラス基板が上記の支持ガラス基板であることが好ましい。
【0022】
また、本発明の積層基板は、加工基板が、少なくとも封止材でモールドされた半導体チップを備えることが好ましい。
【0023】
本発明の半導体パッケージの製造方法は、少なくとも加工基板と加工基板を支持するための支持ガラス基板とを備える積層基板を用意する工程と、加工基板に対して、加工処理を行う工程と、を有すると共に、支持ガラス基板が上記の支持ガラス基板であることが好ましい。
【0024】
また、本発明の半導体パッケージの製造方法は、加工処理が、加工基板の一方の表面に配線する工程を含むことが好ましい。
【0025】
また、本発明の半導体パッケージの製造方法は、加工処理が、加工基板の一方の表面に半田バンプを形成する工程を含むことが好ましい。
【0026】
本発明のガラス基板は、表面にドットを構成単位とする情報識別部を備え、ドットから伸張するクラックの表面方向の最大長さが350μm以下であることを特徴とする。
【0027】
以下、本発明の一実施形態を、
図1~4を参照して説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る支持ガラス基板1の平面図である。この支持ガラス基板1は、加工基板を支持するために使用することができる。同図に示すように、支持ガラス基板1は、その表面2に情報識別部3が形成されている。本実施形態では、支持ガラス基板1は略円板状をなす。また、この支持ガラス基板1の周縁部1aには位置決め部としてノッチ部4が設けられており、このノッチ部4の近傍に情報識別部3が形成されている。
【0028】
情報識別部3は、
図2に示すように、例えば複数の文字5(ここでいう文字5は、少なくとも
図2に示すように数字などの表意文字を含む。)の組み合わせからなる。また、各文字5は、
図2中のA部を拡大して示すように、それぞれ複数のドット6で構成されている。そして、ノッチ部4の円周方向中央位置C3を基準とした場合の、情報識別部3の円周方向中央位置C4の位相θ(
図2)は2°以上、且つ10°以下に設定されている。
【0029】
更に、各ドット6について説明する。
図4は、
図3のB部に示されるドット6を拡大して示したもので、同図に示すように、各ドット6は、環状の溝7で形成される。そのため、文字5を構成する各ドット6は環状に視認される(
図3及び
図4)。本実施形態では、溝7は真円環状をなしている。また、溝7の外周縁と内周縁は共に、真円形状をなしている。よって、この場合、溝7の幅寸法は全周にわたって一定である。
【0030】
環状の溝7からは、クラック8が伸張しているが、そのクラック8の表面方向の最大長さは0.5~10μmになっている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明の支持ガラス基板の一例を示す概念平面図である。
【
図2】
図1に示す支持ガラス基板の要部拡大図である。
【
図3】
図2に示す支持ガラス基板のA部拡大図である。
【
図4】
図3に示す支持ガラス基板のB部拡大図である。
【
図5】本発明の積層基板の一例を示す概念斜視図である。
【
図6】fan out型のWLPのチップファースト型の製造工程を示す概念断面図である。
【
図7】実施例に係る試料No.2の顕微鏡写真である。
【
図8】比較例に係る試料No.11の顕微鏡写真である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
本発明の支持ガラス基板は、支持ガラス基板の表面にドットを構成単位とする情報識別部を備える。
情報識別部は、文字、記号、二次元コード、及び図形を含む群から選択される1種以上の要素を有するもので、その要素が複数のドットで構成される。情報識別部は、支持ガラス基板の寸法、線熱膨張係数、ロット、偏肉率、製造者名、販売者名、及び材質コードを含む群から選択される少なくとも1つの情報を示すものであることが好ましい。なお、ここでいう「寸法」には、支持ガラス基板の厚み寸法、外径寸法、ノッチ部の寸法等が含まれるものとする。
【0033】
本発明の支持ガラス基板は、ドットから伸張するクラックの表面方向の最大長さが350μm以下であり、好ましくは300μm以下、250μm以下、0.1~180μm、0.3~100μm、0.3~50μm、0.5~30μm、0.5~20μm、0.8~10μm、特に1~5μmである。クラックの表面方向の最大長さが大き過ぎると、fan out型のWLPとPLPの製造工程で支持ガラス基板が破損し易くなる。なお、ドットから発生する表面方向のクラックを完全になくすと、fan out型のWLPとPLPの製造工程で支持ガラス基板が更に破損し難くなるが、その場合、レーザーアブレーションによりドットを短時間で形成し難くなり、情報識別部の形成効率が極端に低下してしまう。
【0034】
本発明の支持ガラス基板において、ドットから伸張するクラックの厚み方向の最大長さは、好ましくは200μm以下、100μm以下、50μm以下、30μm以下、20μm以下、10μm以下、特に5μm以下である。クラックの厚み方向の最大長さが大き過ぎると、fan out型のWLPとPLPの製造工程で支持ガラス基板が破損し易くなる。
【0035】
ドットの外径寸法は、好ましくは0.05~0.20mm、0.07~0.13mm以下、特に0.09~0.11mmである。ドットの外形寸法が小さ過ぎると、情報識別部の視認性が低下し易くなる。一方、ドットの外形寸法が大き過ぎると、支持ガラス基板の強度を確保し易くなる。
【0036】
互いに隣り合うドットの中心間距離は0.06~0.25mmが好ましい。互いに隣り合うドットの中心間距離が小さ過ぎると、支持ガラス基板の強度を確保し易くなる。一方、互いに隣り合うドットの中心間距離が大き過ぎると、情報識別部の視認性が低下し易くなる。
【0037】
情報識別部は、種々の方法で形成し得るが、本発明では、パルスレーザーを照射して、その照射領域のガラスをアブレーションして情報識別部を形成すること、つまりレーザーアブレーションにより情報識別部を形成することが好ましい。このようにすれば、照射領域のガラスに過剰な熱を蓄積させることなく、アブレーションを生じさせることができる。結果として、厚み方向のクラックの長さだけでなく、ドットから伸張する表面方向のクラックの長さを低減することができる。
【0038】
レーザーアブレーションで情報識別部を形成する場合、レーザーの照射条件は、特に規制されないが、例えばパルスレーザーのパルス幅は、ピコ秒オーダー、好ましくはフェムト秒オーダーに設定され、具体的には10fs以上、且つ500000fs(500ps)以下が好ましい。また、このパルスレーザーの波長は200nm以上、且つ2500nm以下が好ましく、その繰り返し周波数は1Hz以上、且つ1G(ギガ)Hz以下が好ましい。また、パルスレーザーのビーム径は1μm以上、且つ100μm以下が好ましく、その走査速度は1mm/s以上、且つ800mm/s以下が好ましい。なお、パルスレーザーのパルス幅が大き過ぎると、レーザー照射時に熱歪みが発生し易くなる。
【0039】
情報識別部は、ドットを構成単位とし、そのドットの形状は環状の溝であることが好ましい。このようにドットを環状の溝にすると、この環状の溝で囲まれた領域(溝より内側の領域)がレーザーにより除去されることなく残存するため、情報識別部が設けられた領域の強度低下を可及的に防止することが可能となる。また、環状の溝であれば、外径寸法が変わらない限り溝の幅寸法を小さくしたとしても視認性がそれほど大きく低下することもない。よって、溝の外径寸法を変えることなく幅寸法を小さくすれば、その分だけ溝よりも内側の領域の体積を大きくとることができ、これにより視認性を確保しつつも所要の強度を確保することが可能となる。
【0040】
ドットを形成する溝の深さ寸法は2~30μmが好ましい。溝の深さ寸法が小さ過ぎると、情報識別部の視認性が低下し易くなる。一方、溝の深さ寸法が大き過ぎると、支持ガラス基板の強度を確保し易くなる。
【0041】
支持ガラス基板のヤング率は、好ましくは60GPa以上、65GPa以上、70GPa以上、特に75~130GPaである。加工基板内で半導体チップの割合が少なく、封止材の割合が多い場合、積層基板全体の剛性が低下して、加工処理工程で加工基板が反り易くなる。そこで、支持ガラス基板のヤング率を高めると、加工基板の反りを低減し易くなり、支持ガラス基板の情報識別部のクラックを起点にした支持ガラス基板の破損を減少させることが可能になる。
【0042】
支持ガラス基板の熱膨張係数は、加工基板の熱膨張係数に整合するように規制されることが好ましい。具体的には、加工基板内で半導体チップの割合が少なく、封止材の割合が多い場合は、支持ガラス基板の熱膨張係数を上昇させることが好ましく、逆に、加工基板内で半導体チップの割合が多く、封止材の割合が少ない場合は、支持ガラス基板の熱膨張係数を低下させることが好ましい。
【0043】
支持ガラス基板の30~380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を30×10-7/℃以上、且つ50×10-7/℃未満に規制する場合、ガラス組成として、質量%で、SiO2 55~75%、Al2O3 15~30%、Li2O 0.1~6%、Na2O+K2O(Na2OとK2Oの合量) 0~8%、MgO+CaO+SrO+BaO(MgO、CaO、SrO及びBaOの合量) 0~10%を含有することが好ましく、SiO2 55~75%、Al2O3 10~30%、Li2O+Na2O+K2O(Li2O、Na2O及びK2Oの合量) 0~0.3%、MgO+CaO+SrO+BaO 5~20%を含有することも好ましく、SiO2 55~68%、Al2O3 12~25%、B2O3 0~15%、MgO+CaO+SrO+BaO 5~30%を含有することも好ましく、質量%で、SiO2 65~75%、Al2O3 1~10%、B2O3 10~20%、Li2O 0~3%、Na2O+K2O 3~9%、MgO+CaO+SrO+BaO 0~5%を含有することも好ましい。支持ガラス基板の30~380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を50×10-7/℃以上、且つ70×10-7/℃未満に規制する場合、ガラス組成として、質量%で、SiO2 55~75%、Al2O3 3~15%、B2O3 5~20%、MgO 0~5%、CaO 0~10%、SrO 0~5%、BaO 0~5%、ZnO 0~5%、Na2O 5~15%、K2O 0~10%を含有することが好ましく、SiO2 64~71%、Al2O3 5~10%、B2O3 8~15%、MgO 0~5%、CaO 0~6%、SrO 0~3%、BaO 0~3%、ZnO 0~3%、Na2O 5~15%、K2O 0~5%を含有することが更に好ましい。支持ガラス基板の30~380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を70×10-7/℃以上、且つ85×10-7/℃以下に規制する場合、ガラス組成として、質量%で、SiO2 60~75%、Al2O3 5~15%、B2O3 5~20%、MgO 0~5%、CaO 0~10%、SrO 0~5%、BaO 0~5%、ZnO 0~5%、Na2O 7~16%、K2O 0~8%を含有することが好ましく、SiO2 60~68%、Al2O3 5~15%、B2O3 5~20%、MgO 0~5%、CaO 0~10%、SrO 0~3%、BaO 0~3%、ZnO 0~3%、Na2O 8~16%、K2O 0~3%を含有することが更に好ましい。支持ガラス基板の30~380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を70×10-7/℃以上、且つ85×10-7/℃以下に規制する場合、ガラス組成として、質量%で、SiO2 10~60%、Al2O3 0~8%、B2O3 0~20%、BaO 10~40%、TiO2+La2O3 3~30%を含有することが好ましい。支持ガラス基板の30~380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を50×10-7/℃以上、且つ85×10-7/℃以下に規制する場合、ガラス組成として、質量%で、SiO2 45~65%、Al2O3 0~15%、B2O3 0~20%、MgO 0~3%、CaO 1~20%、SrO 0~20%、BaO 0~30%、ZnO 0~5%、ZrO2 0~10%、TiO2 0~20%、Nb2O5 0~20%、La2O3 0~30%、Na2O 0~5%、K2O 0~10%を含有することが好ましく、SiO2 45~60%、Al2O3 6~13%、B2O3 0~5%、MgO 0~3%、CaO 1~5%、SrO 10~20%、BaO 15~30%を含有することが更に好ましい。また、SiO2 20~60%、B2O3 0~20%、CaO 3~20%、SrO 0~3%、BaO 5~20%、ZrO2 0~10%、TiO2 0~20%、Nb2O5 0~20%、La2O3 0~30%、Na2O 0~5%、K2O 0~10%を含有することも更に好ましい。支持ガラス基板の30~380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を85×10-7/℃超、且つ120×10-7/℃以下に規制する場合、ガラス組成として、質量%で、SiO2 55~70%、Al2O3 3~13%、B2O3 2~8%、MgO 0~5%、CaO 0~10%、SrO 0~5%、BaO 0~5%、ZnO 0~5%、Na2O 10~21%、K2O 0~5%を含有することが好ましい。支持ガラス基板の30~380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を120×10-7/℃超、且つ165×10-7/℃以下に規制する場合、ガラス組成として、質量%で、SiO2 53~65%、Al2O3 3~13%、B2O3 0~5%、MgO 0.1~6%、CaO 0~10%、SrO 0~5%、BaO 0~5%、ZnO 0~5%、Na2O+K2O 20~40%、Na2O 12~21%、K2O 7~21%を含有することが好ましい。このようにすれば、熱膨張係数を管理目標範囲内に規制し易くなると共に、耐失透性が向上するため、全体板厚偏差が小さい支持ガラス基板を作製し易くなる。
【0044】
支持ガラス基板の液相温度は、好ましくは1150℃未満、1120℃以下、1100℃以下、1080℃以下、1050℃以下、1010℃以下、980℃以下、960℃以下、950℃以下、特に940℃以下である。また支持ガラス基板の液相粘度は、好ましくは104.8dPa・s以上、105.0dPa・s以上、105.2dPa・s以上、105.4dPa・s以上、特に105.6dPa・s以上である。このようにすれば、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法で板状に成形し易くなるため、表面を研磨しなくても、全体板厚偏差を低減することができる。或いは、少量の研磨によって、全体板厚偏差を2.0μm未満、特に1.0μm未満まで低減することができる。結果として、支持ガラス基板の製造コストを低廉化することもできる。なお、「液相温度」は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れた後、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定することにより算出することができる。「液相粘度」は、液相温度におけるガラスの粘度を白金球引き上げ法で測定することにより算出することができる。
【0045】
本発明の支持ガラス基板は、以下の形状を有することが好ましい。
【0046】
本発明の支持ガラス基板は、ウエハ形状又は略円板形状が好ましく、その直径は100mm以上500mm以下、特に150mm以上450mm以下が好ましい。このようにすれば、fan out型のWLPの製造工程に適用し易くなる。また、本発明の支持ガラス基板は、四角形の形状(特に矩形状)が好ましく、各辺の長さが300mm以上600mm以下、400mm以上550mm以下、415mm以上515mm以下、特に450mm以上510mm以下が好ましい。このようにすれば、fan out型のPLPの製造工程に適用し易くなる。
【0047】
本発明の支持ガラス基板において、板厚は、好ましくは2.0mm未満、1.8mm以下、1.6mm以下、1.5mm以下、1.2mm以下、1.1mm以下、1.0mm以下、特に0.9mm以下である。板厚が薄くなる程、積層基板の質量が軽くなるため、ハンドリング性が向上する。一方、板厚が薄過ぎると、支持ガラス基板自体の強度が低下して、支持基板としての機能を果たし難くなる。よって、板厚は、好ましくは0.1mm以上、0.2mm以上、0.3mm以上、0.4mm以上、0.5mm以上、0.6mm以上、特に0.7mm超である。
【0048】
本発明の支持ガラス基板において、全体板厚偏差は、好ましくは10μm以下、5μm以下、4μm以下、3μm以下、2μm以下、1μm以下、特に0.1~1μm未満である。また算術平均粗さRaは、好ましくは20nm以下、10nm以下、5nm以下、2nm以下、1nm以下、特に0.5nm以下である。表面精度が高い程、加工処理の精度を高め易くなる。特に配線精度を高めることができるため、高密度の配線が可能になる。また支持ガラス基板の強度が向上して、支持ガラス基板及び積層基板が破損し難くなる。更に支持ガラス基板の再利用回数を増やすことができる。なお、「算術平均粗さRa」は、触針式表面粗さ計又は原子間力顕微鏡(AFM)により測定可能である。
【0049】
本発明の支持ガラス基板において、反り量は、好ましくは60μm以下、55μm以下、50μm以下、1~45μm、特に5~40μmである。反り量が小さい程、加工処理の精度を高め易くなる。特に配線精度を高めることができるため、高密度の配線が可能になる。
【0050】
本発明の支持ガラス基板において、真円度は、1mm以下、0.1mm以下、0.05mm以下、特に0.03mm以下が好ましい。真円度が小さい程、fan out型のWLPとPLPの製造工程に適用し易くなる。なお、「真円度」は、ノッチ部を除き、外形の最大値から最小値を減じた値である。
【0051】
本発明の支持ガラス基板は、ノッチ部を有することが好ましく、ノッチ部の深部は平面視で略円形状又は略V溝形状であることがより好ましい。これにより、支持ガラス基板のノッチ部に位置決めピン等の位置決め部材を当接させて、支持ガラス基板を位置固定し易くなる。結果として、支持ガラス基板と加工基板の位置合わせが容易になる。特に、加工基板にもノッチ部を形成して、位置決め部材を当接させると、積層基板全体の位置合わせが容易になる。なお、ノッチ部は、位置決め部材が当接されるため、クラックが発生し易いが、本発明の支持ガラス基板は、クラック抵抗が高いため、ノッチ部を有する場合に特に有効である。
【0052】
支持ガラス基板のノッチ部に位置決め部材を当接すると、ノッチ部に応力が集中し易くなり、ノッチ部を起点にして、支持ガラス基板が破損し易くなる。特に、支持ガラス基板が外力により湾曲した時に、その傾向が顕著になる。よって、本発明の支持ガラス基板は、ノッチ部の表面と端面とが交差する端縁領域の全部又は一部が面取りされていることが好ましい。これにより、ノッチ部を起点にした破損を有効に回避することができる。
【0053】
本発明の支持ガラス基板は、ノッチ部の表面と端面とが交差する端縁領域の全部又は一部が面取りされており、ノッチ部の表面と端面とが交差する端縁領域の50%以上が面取りされていることが好ましく、ノッチ部の表面と端面とが交差する端縁領域の90%以上が面取りされていることがより好ましく、ノッチ部の表面と端面とが交差する端縁領域の全部が面取りされていることが更に好ましい。ノッチ部において面取りされている領域が大きい程、ノッチ部を起点にした破損の確率を低減することができる。
【0054】
ノッチ部の表面方向の面取り幅は、好ましくは50~900μm、200~800μm、300~700μm、400~650μm、特に500~600μmである。ノッチ部の表面方向の面取り幅が小さ過ぎると、ノッチ部を起点にして、支持ガラス基板が破損し易くなる。一方、ノッチ部の表面方向の面取り幅が大き過ぎると、面取り効率が低下して、支持ガラス基板の製造コストが高騰し易くなる。
【0055】
ノッチ部の板厚方向の面取り幅は、好ましくは板厚の5~80%、20~75%、30~70%、35~65%、特に40~60%である。ノッチ部の板厚方向の面取り幅が小さ過ぎると、ノッチ部を起点にして、支持ガラス基板が破損し易くなる。一方、ノッチ部の板厚方向の面取り幅が大き過ぎると、外力がノッチ部の端面に集中し易くなり、ノッチ部の端面を起点にして、支持ガラス基板が破損し易くなる。
【0056】
本発明の支持ガラス基板は、ガラス原料を調合、混合して、ガラスバッチを作製し、このガラスバッチをガラス溶融炉に投入した後、得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、成形装置に供給して、板状に成形し、作製されてなることが好ましい。
【0057】
本発明の支持ガラス基板は、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法で成形されてなることが好ましい。オーバーフローダウンドロー法は、耐熱性の樋状構造物の両側から溶融ガラスを溢れさせて、溢れた溶融ガラスを樋状構造物の下頂端で合流させながら、下方に延伸成形して板状に成形する方法である。オーバーフローダウンドロー法では、支持ガラス基板の表面となるべき面は樋状耐火物に接触せず、自由表面の状態で成形される。このため、少量の研磨によって、全体板厚偏差を2.0μm未満、特に1.0μm未満まで低減することができる。結果として、支持ガラス基板の製造コストを低廉化することができる。
【0058】
本発明の支持ガラス基板は、オーバーフローダウンドロー法で成形した後に、表面を研磨されてなることが好ましい。このようにすれば、全体板厚偏差を2.0μm未満、1.5μm以下、1.0μm以下、特に0.1~1.0μm未満に規制し易くなる。
【0059】
本発明の支持ガラス基板は、イオン交換処理が行われていないことが好ましく、表面に圧縮応力層を有しないことが好ましい。イオン交換処理を行うと、支持ガラス基板の全体板厚偏差を低減し難くなるが、イオン交換処理を行わなければ、そのような不具合を解消することができる。なお、本発明の支持ガラス基板は、イオン交換処理を行い、表面に圧縮応力層を形成する態様を排除するものではない。機械的強度を高める観点だけに着目すると、イオン交換処理を行い、表面に圧縮応力層を形成することが好ましい。
【0060】
本発明の積層基板は、少なくとも加工基板と加工基板を支持するための支持ガラス基板とを備える積層基板であって、支持ガラス基板が上記の支持ガラス基板であることを特徴とする。本発明の積層基板は、加工基板と支持ガラス基板の間に、接着層を有することが好ましい。接着層は、樹脂であることが好ましく、例えば、熱硬化性樹脂、光硬化性樹脂(特に紫外線硬化樹脂)等が好ましい。またfan out型のWLPとPLPの製造工程における熱処理に耐える耐熱性を有するものが好ましい。これにより、fan out型のWLPとPLPの製造工程で接着層が融解し難くなり、加工処理の精度を高めることができる。なお、加工基板と支持ガラス基板を容易に固定するため、紫外線硬化型テープを接着層として使用することもできる。
【0061】
本発明の積層基板は、更に加工基板と支持ガラス基板の間に、より具体的には加工基板と接着層の間に、剥離層を有すること、或いは支持ガラス基板と接着層の間に、剥離層を有することが好ましい。このようにすれば、加工基板に対して、所定の加工処理を行った後に、加工基板を支持ガラス基板から剥離し易くなる。加工基板の剥離は、生産性の観点から、レーザー光等の照射光により行うことが好ましい。レーザー光源として、YAGレーザー(波長1064nm)、半導体レーザー(波長780~1300nm)等の赤外光レーザー光源を用いることができる。また、剥離層には赤外線レーザーを照射することで分解する樹脂を使用することができる。また、赤外線を効率良く吸収し、熱に変換する物質を樹脂に添加することもできる。例えば、カーボンブラック、グラファイト粉、微粒子金属粉末、染料、顔料等を樹脂に添加することもできる。
【0062】
剥離層は、レーザー光等の照射光により「層内剥離」又は「界面剥離」が生じる材料で構成される。つまり一定の強度の光を照射すると、原子又は分子における原子間又は分子間の結合力が消失又は減少して、アブレーション(ablation)等を生じ、剥離を生じさせる材料で構成される。なお、照射光の照射により、剥離層に含まれる成分が気体となって放出されて分離に至る場合と、剥離層が光を吸収して気体になり、その蒸気が放出されて分離に至る場合とがある。
【0063】
本発明の積層基板において、支持ガラス基板は、加工基板よりも大きいことが好ましい。これにより、加工基板と支持ガラス基板を支持する際に、両者の中心位置が僅かに離間した場合でも、支持ガラス基板から加工基板の縁部が食み出し難くなる。
【0064】
本発明の半導体パッケージの製造方法は、少なくとも加工基板と加工基板を支持するための支持ガラス基板とを備える積層基板を用意する工程と、加工基板に対して、加工処理を行う工程と、を有すると共に、支持ガラス基板が上記の支持ガラス基板であることを特徴とする。
【0065】
本発明の半導体パッケージの製造方法は、更に積層基板を搬送する工程を有することが好ましい。これにより、加工処理の処理効率を高めることができる。なお、「積層基板を搬送する工程」と「加工基板に対して、加工処理を行う工程」とは、別途に行う必要はなく、同時であってもよい。
【0066】
本発明の半導体パッケージの製造方法において、加工処理は、加工基板の一方の表面に配線する処理、或いは加工基板の一方の表面に半田バンプを形成する処理が好ましい。本発明の半導体パッケージの製造方法では、これらの処理時に加工基板が寸法変化し難いため、これらの工程を適正に行うことができる。
【0067】
加工処理として、上記以外にも、加工基板の一方の表面(通常、支持ガラス基板とは反対側の表面)を機械的に研磨する処理、加工基板の一方の表面(通常、支持ガラス基板とは反対側の表面)をドライエッチングする処理、加工基板の一方の表面(通常、支持ガラス基板とは反対側の表面)をウェットエッチングする処理の何れかであってもよい。なお、本発明の半導体パッケージの製造方法では、加工基板に反りが発生し難いと共に、積層基板の剛性を維持することができる。結果として、上記加工処理を適正に行うことができる。
【0068】
本発明について、図面を参酌しながら更に説明する。
図5は、本発明の積層基板9の一例を示す概念斜視図である。
図5では、積層基板9は、支持ガラス基板10と加工基板11とを備えている。支持ガラス基板10は、加工基板11の寸法変化を防止するために、加工基板11に貼着されている。支持ガラス基板10と加工基板11との間には、剥離層12と接着層13が配置されている。剥離層12は、支持ガラス基板10と接触しており、接着層13は、加工基板11と接触している。
【0069】
図5から分かるように、積層基板9は、支持ガラス基板10、剥離層12、接着層13、加工基板11の順に積層配置されている。支持ガラス基板10の形状は、加工基板11に応じて決定されるが、
図1では、支持ガラス基板10及び加工基板11の形状は、何れも略円板形状である。剥離層12は、例えばレーザーを照射することで分解する樹脂を使用することができる。また、レーザー光を効率よく吸収し、熱に変換する物質を樹脂に添加することもできる。例えば、カーボンブラック、グラファイト粉、微粒子金属粉末、染料、顔料等である。剥離層12は、プラズマCVDや、ゾル-ゲル法によるスピンコート等により形成される。接着層13は、樹脂で構成されており、例えば、各種印刷法、インクジェット法、スピンコート法、ロールコート法等により塗布形成される。また、紫外線硬化型テープも使用可能である。接着層13は、剥離層12により加工基板11から支持ガラス基板10が剥離された後、溶剤等により溶解除去される。紫外線硬化型テープは、紫外線を照射した後、剥離用テープにより除去可能である。
【0070】
図6は、fan out型のWLPのチップファースト型の製造工程を示す概念断面図である。
図6(a)は、支持部材20の一方の表面上に接着層21を形成した状態を示している。必要に応じて、支持部材20と接着層21の間に剥離層を形成してもよい。次に、
図6(b)に示すように、接着層21の上に複数の半導体チップ22を貼付する。その際、半導体チップ22のアクティブ側の面を接着層21に接触させる。次に、
図6(c)に示すように、半導体チップ22を樹脂の封止材23でモールドする。封止材23は、圧縮成形後の寸法変化、配線を成形する際の寸法変化が少ない材料が使用される。続いて、
図6(d)、(e)に示すように、支持部材20から半導体チップ22がモールドされた加工基板24を分離した後、接着層25を介して、支持ガラス基板26と接着固定させる。その際、加工基板24の表面の内、半導体チップ22が埋め込まれた側の表面とは反対側の表面が支持ガラス基板26側に配置される。このようにして、積層基板27を得ることができる。なお、必要に応じて、接着層25と支持ガラス基板26の間に剥離層を形成してもよい。更に、得られた積層基板27を搬送した後に、
図6(f)に示すように、加工基板24の半導体チップ22が埋め込まれた側の表面に配線28を形成した後、複数の半田バンプ29を形成する。最後に、支持ガラス基板26から加工基板24を分離した後に、加工基板24を半導体チップ22毎に切断し、後のパッケージング工程に供される(
図6(g))。
【0071】
本発明のガラス基板は、表面にドットを構成単位とする情報識別部を備え、ドットから伸張するクラックの表面方向の最大長さが350μm以下であることを特徴とする。なお、本発明のガラス基板の技術的特徴については、本発明の支持ガラス基板の説明欄に記載済みであり、ここでは、詳細な説明を省略する。
【実施例】
【0072】
以下、本発明を実施例に基づいて説明する。なお、以下の実施例は、単なる例示である。本発明は、以下の実施例に何ら限定されない。
【0073】
表1は、本発明の実施例(試料No.1~10)と比較例(試料No.11)を示している。
【0074】
【0075】
次のようにして、試料No.1に係るガラス基板を作製した。まず、ガラス組成として、質量%で、SiO2 59.7%、Al2O3 16.5%、B2O3 10.3%、MgO 0.3%、CaO 8.0%、SrO 4.5%、BaO 0.5%、SnO2 0.2%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1550℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が1.05mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。
【0076】
次のようにして、試料No.2に係るガラス基板を作製した。まず、ガラス組成として、質量%で、SiO2 66.1%、Al2O3 8.5%、B2O3 12.4%、Na2O 8.4%、CaO 3.3%、ZnO 0.9%、SnO2 0.4%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1500℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が1.05mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。
【0077】
次のようにして、試料No.3に係るガラス基板を作製した。まず、ガラス組成として、質量%で、SiO2 65.8%、Al2O3 8.0%、B2O3 8.9%、Na2O 12.8%、CaO 3.2%、ZnO 0.9%、SnO2 0.4%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1500℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が1.05mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。
【0078】
次のようにして、試料No.4に係るガラス基板を作製した。まず、ガラス組成として、質量%で、SiO2 61.6%、Al2O3 18.0%、B2O3 0.5%、Na2O 14.5%、K2O 2.0%、MgO 3.0%、SnO2 0.4%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1650℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が1.05mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。
【0079】
次のようにして、試料No.5に係るガラス基板を作製した。まず、ガラス組成として、質量%で、SiO2 40.92%、Al2O3 5.0%、B2O3 5.0%、CaO 3.0%、SrO 11.2%、BaO 25.2%、ZnO 3.0%、TiO2 4.6%、ZrO2 2.0%、Sb2O3 0.08%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1250℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が1.05mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。
【0080】
次のようにして、試料No.6に係るガラス基板を作製した。まず、ガラス組成として、質量%で、SiO2 72.75%、Al2O3 4.3%、B2O3 15.1%、Na2O 5.7%、K2O 1.8%、CaO 0.2%、SnO2 0.15%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1600℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が1.05mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。
【0081】
次のようにして、試料No.7に係るガラス基板を作製した。まず、ガラス組成として、質量%で、SiO2 65.8%、Al2O3 8.0%、B2O3 3.7%、Na2O 18.1%、CaO 3.2%、ZnO 0.9%、SnO2 0.3%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1300℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が1.05mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。
【0082】
次のようにして、試料No.8に係るガラス基板を作製した。まず、ガラス組成として、質量%で、SiO2 65.7%、Al2O3 8.0%、B2O3 2.1%、Na2O 19.8%、CaO 3.2%、ZnO 0.9%、SnO2 0.3%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1300℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が1.05mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。
【0083】
次のようにして、試料No.9に係るガラス基板を作製した。まず、ガラス組成として、質量%で、SiO2 65.3%、Al2O3 8.0%、Na2O 22.3%、CaO 3.2%、ZnO 0.9%、SnO2 0.3%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1300℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が1.05mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。
【0084】
次のようにして、試料No.10、11に係るガラス基板を作製した。まず、ガラス組成として、質量%で、SiO2 65.7%、Al2O3 8.0%、B2O3 2.1%、Na2O 19.8%、CaO 3.2%、ZnO 0.9%、SnO2 0.3%を含有するように、ガラス原料を調合、混合し、ガラスバッチを得た後、ガラス溶融炉に供給して1650℃で溶融し、次いで得られた溶融ガラスを清澄、攪拌した上で、オーバーフローダウンドロー法の成形装置に供給し、板厚が1.05mmになるように成形した。その後、得られたガラス基板を矩形状に切断した。
【0085】
続いて、切断後のガラス基板(試料No.1~11:全体板厚偏差約4.0μm)をφ300mmにくり抜いた後、ガラス基板の両表面を研磨装置により研磨処理した。具体的には、ガラス基板の両表面を外径が相違する一対の研磨パットで挟み込み、ガラス基板と一対の研磨パッドを共に回転させながらガラス基板の両表面を研磨処理した。研磨処理の際、時折、ガラス基板の一部が研磨パッドから食み出すように制御した。なお、研磨パッドをウレタン製、研磨処理の際に使用した研磨スラリーの平均粒径を2.5μm、研磨速度を15m/分とした。得られた各研磨済みガラス基板について、コベルコ科研社製のBow/Warp測定装置 SBW-331ML/dにより、全体板厚偏差と反り量を測定した。その結果、全体板厚偏差がそれぞれ1.0μm未満であり、反り量がそれぞれ35μm以下であった。得られた各研磨済みガラス基板について、ディラトメーターにより、30~380℃の温度範囲における平均線熱膨張係数を測定した。その結果を表1に示す。
【0086】
研磨後のガラス基板に対して、パルス型フェムト秒レーザーを用いて、環状の溝からなる複数のドットを構成単位とする情報識別部を設けた。ここで、試料No.1~11については、パルス型フェムト秒レーザーのパルス幅を調整することにより、ドットから伸張するクラックの最大長さが制御されている。次に、デジタルマイクロスコープVHX-600(キーエンス株式会社製)を用いて、ドットから発生したクラックの最大長さを測定した。その結果を表1、
図7、
図8に示す。
図7は、試料No.2の顕微鏡写真である。
図8は、試料No.11の顕微鏡写真である。なお、クラックの最大長さは、クラックを長さ測長ソフトでトレースして、その長さを計測したものである。
【0087】
情報識別部を形成した後のガラス基板に対して、fan out型のWLPとPLPの製造工程を模した熱処理を行い、ガラス基板が破損しなかったものを「○」、ドットから発生したクラックに起因して、ガラス基板が破損したものを「×」として評価した。
【0088】
表1から分かるように、試料No.1~10は、ドットから発生したクラックの表面方向の最大長さが小さいため、fan out型のWLPとPLPの製造工程で破損し難いものと考えられる。一方、試料No.11は、ドットから発生したクラックの表面方向の最大長さが大きいため、fan out型のWLPとPLPの製造工程で破損し易いものと考えられる。
【符号の説明】
【0089】
1、10、26 支持ガラス基板
1a 周縁部
2 表面
2a,2b 区画領域
3 情報識別部
4 ノッチ部
5 文字
6 ドット
7 環状の溝
8 クラック
9、27 積層体
11、24 加工基板
12 剥離層
13、21、25 接着層
20 支持部材
22 半導体チップ
23 封止材
28 配線
29 半田バンプ