(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】樹脂硬化体及び立体造形物の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08L 101/12 20060101AFI20230511BHJP
C08K 3/40 20060101ALI20230511BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20230511BHJP
B33Y 70/00 20200101ALI20230511BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20230511BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20230511BHJP
B29C 64/106 20170101ALI20230511BHJP
【FI】
C08L101/12
C08K3/40
C08J5/18 CER
C08J5/18 CEZ
B33Y70/00
B33Y80/00
B33Y10/00
B29C64/106
(21)【出願番号】P 2019081790
(22)【出願日】2019-04-23
【審査請求日】2022-03-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000232243
【氏名又は名称】日本電気硝子株式会社
(72)【発明者】
【氏名】俣野 高宏
(72)【発明者】
【氏名】笛吹 容子
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 良憲
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-164253(JP,A)
【文献】特開2012-251083(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透光性樹脂と透光性粒子とを含む樹脂
硬化体であって、
透光性粒子は、屈折率及びアッベ数が異なる二種類以上の透光性粒子を含
み、
透光性粒子が、第一の透光性粒子、第二の透光性粒子を含み、
第一の透光性粒子と透光性樹脂の屈折率差を|Δnd1|、第二の透光性粒子と透光性樹脂の屈折率差を|Δnd2|、
更に、第一の透光性粒子と透光性樹脂のアッベ数差を|Δνd1|、第二の透光性粒子と透光性樹脂のアッベ数差を|Δνd2|としたとき、
|Δnd1|<|Δnd2|及び|Δνd1|<|Δνd2|を満たし、
|Δnd1|が0.025以下、|Δnd2|が0.025超であり、
更に、|Δνd1|が10以下、|Δνd2|が0.1以上であり、
透光性粒子がガラスであり、
厚み0.5mmのときのL*値が59~80であり、300~800nmにおける最大透過率が10~85%であることを特徴とする樹脂
硬化体。
【請求項2】
透光性粒子の平均粒子径D
50が、0.1~300μmであることを特徴とする請求項
1に記載の樹脂
硬化体。
【請求項3】
透光性粒子を1~70Vol%含有することを特徴とする請求項1
又は2に記載の樹脂
硬化体。
【請求項4】
透光性樹脂が、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂のうち何れかを含むことを特徴とする請求項1~
3の何れかに記載の樹脂
硬化体。
【請求項5】
樹脂
硬化体の用途が、立体造形用であることを特徴とする請求項1~
4の何れかに記載の樹脂
硬化体。
【請求項6】
樹脂組成物からなる前駆体層を形成し硬化させることにより、所定パターンを有する
樹脂硬化
体層を形成し、前記
樹脂硬化
体層上に新たな前駆体層を形成し硬化させることにより前記
樹脂硬化
体層と連続した所定パターンを有する新たな
樹脂硬化
体層を形成し、所定の立体造形物が得られるまで前記
樹脂硬化
体層の積層を繰り返すことにより立体造形物を製造する方法であって、
前記樹脂
硬化体として、請求項1~
5の何れかに記載の樹脂
硬化体を使用することを特徴とする立体造形物の製造方法。
【請求項7】
樹脂組成物からなる液状層に選択的に活性エネルギー光線を照射して所定のパターンを有する
樹脂硬化
体層を形成し、前記
樹脂硬化
体層上に新たな液状層を形成した後に活性エネルギー線を照射して前記
樹脂硬化
体層と連続した所定パターンを有する新たな
樹脂硬化
体層を形成し、所定の立体造形物が得られるまで前記
樹脂硬化
体層の積層を繰り返すことにより立体造形物を製造する方法であって、
前記樹脂
硬化体として、請求項1~
5の何れかに記載の樹脂組成物を使用することを特徴とする立体造形物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂組成物、樹脂硬化体及び立体造形物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、樹脂材料等を積層させて立体造形物を得る方法が知られている。例えば光造形法、粉末床溶融結合法(PBF)、熱溶解積層法(FDM)法等種々の方法が提案され実用化されている。
【0003】
例えば光造形法は、細やかな造形や正確なサイズ表現に優れており、広く普及している。この方法は以下のようにして立体造形物を作製するものである。まず、液状の光硬化性樹脂を満たした槽内に造形ステージを設け、造形ステージ上の光硬化性樹脂に紫外線レーザーを照射して所望のパターンの硬化層を作製する。このようにして硬化層を一層造った後、造形ステージを一層分だけ下げて、硬化層上に未硬化の樹脂を導入する。その後、同様にして紫外線レーザーを光硬化性樹脂に照射して前記硬化層上に新たな硬化層を積み上げる。この操作を繰り返すことにより、所定の立体造形物を得る。
【0004】
また、粉末床溶融結合法(PBF)は、粉末原料を一層毎に積層し、レーザー等で粉末粒子を溶融固化させて立体造形物を作製するものである。具体的には、樹脂、金属、セラミックス、ガラス等の粉末を満たした槽内に造形ステージを設け、造形ステージ上の粉末に半導体等のレーザーや電子ビームを照射し、軟化、凝固させることで所望のパターンの硬化層を作製する。その後、前記硬化層上に新たな硬化層を積み上げ、この操作を繰り返すことにより、所定の立体造形物を得る。
【0005】
また、熱溶解積層法は、溶融した材料をノズルから押出成形することで層を形成し、その層を積み上げて立体造形物を作製するものである。例えば、熱可塑性プラスチックを含む材料を線状に成形したフィラメントを材料として用い、それを半液状に熱で溶かし、ノズルの位置をコンピューターで制御しながら一層を作製する。その後、前記硬化層上に新たな硬化層を積み上げ、この操作を繰り返すことにより、所定の立体造形物を得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-26060号公報
【文献】特開2008-507619号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
一般に、樹脂のみの樹脂成形体は、機械的強度等に劣ることが指摘されている。そこで、特許文献1では、光硬化性樹脂に無機充填材を添加することが提案されている。また、特許文献2においても、熱溶解積層法に適する熱可塑性材料に、充填材として無機充填材を添加している。
【0008】
ところで、上記したような立体造形物に限らず、樹脂組成物に無機充填材を添加した場合、得られる樹脂硬化体の透明性に影響する。特に、樹脂硬化体が透明性を有する場合は上記事象が顕著である。また近年、樹脂硬化体は、工業製品だけではなく、意匠性が求められる分野に広く用いられるようになり、それに伴い、機械的強度だけではなく、重厚感や高級感等の外観に対する要求も高まりつつある。
【0009】
本発明の課題は、意匠性に優れた樹脂硬化体を作製可能な樹脂組成物、樹脂硬化体及び立体造形物の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の樹脂組成物は、透光性樹脂と透光性粒子とを含む樹脂組成物であって、透光性粒子は、屈折率及びアッベ数が異なる二種類以上の透光性粒子を含むことを特徴とする。
【0011】
このようにすることで、樹脂組成物に、光学定数が異なる二種類以上の透光性粒子を含ませることができるため、得られる樹脂硬化体内に透明性が異なる二種類以上の部分ができ、重厚感や高級感等の意匠性に優れた樹脂硬化体が得やすくなる。また、樹脂硬化体が半透明である場合は、内部の色調が表面に現れやすくなるため、樹脂組成物に添加する着色材料を低減することができる。
【0012】
なお、本発明において、「透光性樹脂」とは、0.5mm厚に成形した厚の試料を測定した際に可視域(300~800nm)のいずれかの波長の光透過率が10%以上の樹脂を意味する。また、「透光性粒子」とは、1mm厚の試料を測定した際に可視域(300~800nm)のいずれかの波長の光透過率が10%以上である粒子を意味する。更に、「屈折率nd」は、ヘリウムランプのd線(587.6nm)に対し測定した値であり、「アッベ数νd」は上記d線の屈折率と、水素ランプのF線(486.1nm)及びC線(656.3nm)の屈折率の値を用い、アッベ数(νd)=[(nd-1)/(nF-nC)]式から算出した値である。なお、本発明において、透光性樹脂の屈折率及びアッベ数は、硬化後の値である。
【0013】
本発明の樹脂組成物は、透光性粒子が、第一の透光性粒子、第二の透光性粒子を含み、第一の透光性粒子と透光性樹脂の屈折率差を|Δnd1|、第二の透光性粒子と透光性樹脂の屈折率差を|Δnd2|、更に、第一の透光性粒子と透光性樹脂のアッベ数差を|Δνd1|、第二の透光性粒子と透光性樹脂のアッベ数差を|Δνd2|としたとき、|Δnd1|<|Δnd2|及び|Δνd1|<|Δνd2|を満たすことが好ましい。
【0014】
このようにすれば、透光性樹脂と第一の透光性粒子との屈折率差及びアッベ数差を、透光性樹脂と第二の透光性粒子の屈折率差及びアッベ数差と相違させやすくなり、樹脂硬化体中に透明性が異なる二種類以上の部分を混在させることができる。その結果、樹脂硬化体の外観に重厚感や高級感等の意匠性を付与することができる。
【0015】
本発明の樹脂組成物は、|△nd1|が0.025以下、|△nd2|が0.025超であり、更に、|△νd1|が10以下、|△νd2|が0.1以上であることが好ましい。
【0016】
このようにすれば、樹脂硬化体内で、第一の透光性粒子を含む部分の透明性を高めやすくできる。一方、第二の透光性粒子を含む部分の透明性は、第一の透光性粒子を含む部分に比べて透明性を低くできる。なお、|△nd1|は△nd1の絶対値を示し、|△nd2|は△nd2の絶対値を示している。また、|△νd1|は△νd1の絶対値を示し、|△νd2|は△νd2の絶対値を示している。
【0017】
本発明の樹脂組成物は、透光性粒子が、ガラス、結晶又は結晶化ガラスのうち何れかを含むことが好ましい。
【0018】
このようにすれば、透光性粒子の光学定数を設計しやすいため、透光性樹脂との光学定数との差を制御しやすくできる。
【0019】
本発明の樹脂組成物は、透光性粒子の厚み1mmにおける300~800nmにおける最大透過率が、10%以上であることが好ましい。
【0020】
このようにすれば、樹脂硬化体の透明性を高めることができる。なお、透過率は、0.5mm厚に成形した試料の両面を鏡面にし、精密屈折率計(島津デバイス製KPR-2000)により測定した値である。
【0021】
本発明の樹脂組成物は、透光性粒子の平均粒子径D50が、0.1~300μmであることが好ましい。
【0022】
このようにすれば、樹脂組成物中において透光性粒子の沈降を防止することができる。
【0023】
本発明の樹脂組成物は、透光性粒子を1~70Vol%含有することが好ましい。
【0024】
このようにすれば、樹脂硬化体の機械的強度を高めることができる。
【0025】
本発明の樹脂組成物は、透光性樹脂が、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂又は熱可塑性樹脂のうち何れかを含むことが好ましい。
【0026】
本発明の樹脂組成物は、用途が、立体造形用であることが好ましい。
【0027】
本発明の樹脂硬化体は、樹脂組成物の硬化体であることが好ましい。
【0028】
本発明の樹脂硬化体は、厚み0.5mmのときのL*値が59~80であり、300~800nmにおける最大透過率が10~85%であることが好ましい。
【0029】
樹脂硬化体のL*値及び透過率を規制することで、所望の樹脂硬化体を得やすくできる。なお、L*値は、樹脂硬化体を肉厚0.5mmで両面を鏡面にし、色差計(ジューキ製JP7200F)で、光源D65、視野10度、測定径10mmφでサンプルを置いた後、サンプル上に黒板を設置して測定した値であり、透過率は、上記試料を分光光度計(島津製作所製UV-3100)により全光線透過率測定を行い、300~800nmにおける最大透過率を測定した値である。
【0030】
本発明の立体造形物の製造方法は、樹脂組成物からなる前駆体層を形成し硬化させることにより、所定パターンを有する硬化層を形成し、前記硬化層上に新たな前駆体層を形成し硬化させることにより前記硬化層と連続した所定パターンを有する新たな硬化層を形成し、所定の立体造形物が得られるまで前記硬化層の積層を繰り返すことにより立体造形物を製造する方法であって、前記樹脂組成物として、上記した樹脂組成物を使用することを特徴とする。
【0031】
本発明の立体造形物の製造方法は、樹脂組成物からなる液状層に選択的に活性エネルギー光線を照射して所定のパターンを有する硬化層を形成し、前記硬化層上に新たな液状層を形成した後に活性エネルギー線を照射して前記硬化層と連続した所定パターンを有する新たな硬化層を形成し、所定の立体造形物が得られるまで前記硬化層の積層を繰り返すことにより立体造形物を製造する方法であって、前記樹脂組成物として、上記した樹脂組成物を使用することが好ましい。
【発明の効果】
【0032】
本発明によれば、重厚感や高級感等の意匠性に優れた樹脂硬化体を得ることが容易になる。
【発明を実施するための形態】
【0033】
本発明の樹脂組成物は、少なくとも、透光性樹脂、第一の透光性粒子及び第二の透光性粒子を含む。
【0034】
まず、透光性樹脂について以下に説明する。本発明において、「透光性樹脂」とは、0.5mm厚に成形した樹脂が「透光性」、すなわち可視域(300~800nm)のいずれかの波長の光透過率が10%以上の樹脂を意味しており、必ずしも透明性が非常に高い、例えば非晶質の樹脂である必要はない。
【0035】
また、透光性樹脂は、0.5mm厚の試料で、可視域(300~800nm)のいずれかの波長の光透過率が10%以上であり、好ましくは、20%以上、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上である。更には、可視域(300~800nm)における平均透過率が30%以上、50%以上、特に70%以上であることが望ましい。このようにすると、樹脂硬化体の透明性が向上する。また、特に、光学定数が異なる透光性粒子を混合した場合、透光性樹脂と透光性粒子の界面における光散乱の態様に違いが出やすくなり、重厚感や高級感等の意匠性に優れた樹脂硬化体が得やすくなる。
【0036】
透光性樹脂は、光硬化性樹脂、熱硬化性樹脂、熱可塑性樹脂のいずれであってもよく、採用する造形法や、樹脂硬化体の用途に合わせて適宜選択すればよい。例えば、立体造形法を採用し、その中でも光造形法を使用する場合は液状の光硬化性樹脂を選択すればよく、また粉末焼結法を採用する場合は粉末状の熱硬化性樹脂を選択すればよい。また、押出・射出成形や、熱溶解積層法を使用する場合は、熱可塑性樹脂を選択できる。
【0037】
例えば光硬化性樹脂としては、重合性のビニル系化合物、エポキシ系化合物等種々の樹脂を選択することができる。また単官能性化合物や多官能性化合物のモノマーやオリゴマーが用いられる。これらの単官能性化合物、多官能性化合物は、特に限定されるものではない。例えば、以下に光硬化性樹脂の代表的なものを挙げるが、本発明の趣旨からも、これらに限定されるものではない。
【0038】
重合性のビニル系化合物の単官能性化合物としては、イソボルニルアクリレート、イソボルニルメタクリレート、ジンクロペンテニルアクリレート、ボルニルアクリレート、ボルニルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、プロピレングリコールアクリレート、ビニルピロリドン、アクリルアミド、酢酸ビニル、スチレン等が挙げられる。また多官能性化合物としては、トリメチロールプロパントリアクリレート、EO変性トリメチロールプロパントリアクリレート、エチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,4-ブタンジオールジアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、ジシクロペンテニルジアクリレート、ポリエステルジアクリレート、ジアリルフタレート等が挙げられる。これらの単官能性化合物や多官能性化合物の1種以上を単独又は混合物の形で使用することができる。
【0039】
ビニル系化合物の重合開始剤としては、光重合開始剤及び熱重合開始剤が用いられる。光重合開始剤としては、2,2-ジメトキシ-2-フェニルアセトフェノン、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、アセトフェノン、ベンゾフェノン、キサントン、フルオレノン、ベズアルデヒド、フルオレン、アントラキノン、トリフェニルアミン、カルバゾール、3-メチルアセトフェノン、ミヒラーケトン等が代表的なものとして挙げることができ、これらの開始剤を1種または2種以上組み合わせて使用することができる。必要に応じてアミン系化合物等の増感剤を併用することも可能である。熱重合開始剤としては、ベンゾイルパーオキサイド、t-ブチルパーオキシベンゾエート、ジクミルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、t-ブチルパ-オキサイド、アゾビスイソブチロニトリル等が代表的なものとして挙げることができる。これらの重合開始剤又は熱重合開始剤の使用量は、ビニル系化合物に対してそれぞれ0.1~10重量%であることが好ましい。
【0040】
エポキシ系化合物としては、水素添加ビスフェノールAジグリシジルエーテル、3,4-エポキシシクロヘキシルメチル-3,4-エポキシシクロヘキサンカルボキシレート、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル-5,5-スピロ-3,4-エポキシ)シクロヘキサン-m-ジオキサン、ビス(3,4-エポキシシクロヘキシルメチル)アジペート等が挙げられる。これらのエポキシ系化合物を用いる場合には、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等のエネルギー活性カチオン開始剤を用いることができる。
【0041】
さらに液状光硬化性樹脂には、レベリング剤、界面活性剤、有機高分子化合物、有機可塑剤等を必要に応じて添加してもよい。
【0042】
また、熱硬化性樹脂としては、例えば、エポキシ樹脂、熱硬化性ポリフェニレンエーテル樹脂、熱硬化性ポリイミド樹脂、ユリア樹脂、アリル樹脂、シリコーン樹脂、ベンゾオキサジン樹脂、フェノール樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ビスマレイミドトリアジン樹脂、変性マレイミド樹脂、アルキド樹脂、フラン樹脂、アルキド樹脂、メラミン樹脂、ポリウレタン樹脂、アニリン樹脂、グアナミン樹脂等が上げられる。
【0043】
また、熱可塑性樹脂は、耐熱性等の特性により、汎用樹脂、エンプラ、スーパーエンプラに分類できるが、樹脂硬化体の用途に合わせて適宜選択すればよい。例えば、連続使用温度100℃以上の耐熱性が要求される場合にはエンプラを用いることが好ましく、連続使用温度150℃以上の耐熱性が要求される場合には、スーパーエンプラを用いることが好ましい。
【0044】
以下に、熱可塑性樹脂の代表的なものを挙げるが、本発明の趣旨からこれらに限定されるものではない。熱可塑性樹脂としては、例えば、ポリオレフィン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリアクリル酸エステル樹脂、ポリオキシメチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリロニトリルースチレン樹脂、アクリロニトリルーブタジエンースチレン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、ポリビニルアルコール樹脂、ポリビニルアセタール系樹脂、メタクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂等がある。また、ポリアミド樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリカーボネート樹脂、変性ポリフェニレンエーテル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリブチレンテレフタレート樹脂、超高分子量ポリエチレン樹脂等がある。更に、スーパーエンジニアリングプラスチックとしては、ポリフェニレンスルフィド樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリイミド樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリエステルイミド系樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリアリレート樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマー樹脂、フッ素樹脂等がある。
【0045】
なお、透明性が高い樹脂の代表的なものとしては、ビニル樹脂、ポリスチレン樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、酢酸セルロース樹脂、ポリオレフィン樹脂、ポリサルフォン樹脂、ポリエーテルサルフォン樹脂、ポリエーテルイミド樹脂、ポリアリレート樹脂等が挙げられる。これらの樹脂を採用した場合、本願発明の効果を特に効率的に得ることができる。
【0046】
また、本発明の樹脂組成物は、本発明の目的が損なわれない範囲であれば、各種添加成分、例えば酸化防止剤、核剤、可塑剤、離型剤、難燃剤、顔料、カーボンブラック及び帯電防止剤等の添加剤を適量含有してもよい。なお、本発明の樹脂組成物を用いると、半透明の樹脂硬化体が得られるため、内部の色調が表面に現れやすく、樹脂組成物に添加する着色材料を低減することが可能である。
【0047】
次に、透光性粒子について以下に説明する。
【0048】
本発明では屈折率及びアッベ数が異なる二種類以上の透光性粒子を含む。透光性粒子を透光性樹脂と混合した場合、それらの界面において光散乱が起こり、得られる樹脂硬化体内に透明性が異なる二種類以上の部分ができ、重厚感や高級感等の意匠性に優れた樹脂硬化体が得やすくなる。よって、透光性粒子は、好ましくは屈折率及びアッベ数の両方が異なっていることがより好ましい。
【0049】
また、透光性粒子の種類は、二種類以上であり、好ましくは三種類以上である。このようにすると、光散乱がより複雑になり、得られる樹脂硬化体内に重厚感や高級感等の意匠性に優れた樹脂硬化体が得やすくなる。一方、透光性粒子の種類が多すぎると、樹脂組成物内の光散乱が過剰となり、透明性が損なわれやすくなり、所望の外観が得られにくくなる。そのため、透光性粒子の種類は、好ましくは十種類以下であり、八種類以下、六種類以下、五種類以下、特に四種類以下が好ましい。特に、透光性粒子は二種類にすると、透光性樹脂と透光性粒子の透明性や光散乱を調整しやすくなるため好ましい。
【0050】
なお、透光性粒子は、材質、形状ともに透光性であれば特に制限はないが、例えば材質としては、ガラス、結晶又は結晶化ガラスのうち何れかを含むことが好ましい。結晶としては、例えば、SiO2、Al2O3、MgO、β-石英固溶体等があり、これらを単独で含んでも良いし、ガラスとともに含む結晶化ガラスでいても良い。また、形状として、ガラスビーズ、円柱形状や角柱形状等のロッド等のガラスフィラー、ガラス粉末、板形状、ガラスファイバー、セラミック粉末、セラミックファイバー等を単独又は混合して使用することが可能である。特にガラスビーズは球状であることから流動性に優れている。またファイアポリッシュ等の方法で作製すれば、表面粗さの小さい表面仕上げが可能であり、より流動性を高めることができる。また、ガラスビーズは、粉砕等で作製される粉末ガラスに比べ、同じ添加量の場合、透光性樹脂の粘度上昇が抑制できるという特徴がある。
【0051】
透光性粒子は、第一の透光性粒子及び第二の透光性粒子を含む。第一の透光性粒子と第二の透光性粒子の光学定数の差が大きくなると、得られる樹脂硬化体内に透明性が異なる二種類以上の部分ができやすくなり、重厚感や高級感等の意匠性に優れた樹脂硬化体が得やすくなる。そのため、第一の透光性粒子と透光性樹脂の屈折率差(|Δnd1|)<第二の透光性粒子と透光性樹脂の屈折率差(|Δnd2|)であることが好ましい。また、|Δnd2|と|Δnd1|の差は、好ましくは0超、0.0005以上、0.0025以上、0.0075以上、0.01以上、0.02以上、0.05以上、0.07以上、特に0.1以上が好ましい。また、第一の透光性粒子と透光性樹脂のアッベ数差(|Δνd1|)<第二の透光性粒子と透光性樹脂のアッベ数差(|Δνd2|)であることが好ましい。Δνd2とΔνd1の差は、好ましくは0超、0.05以上、0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.5以上、1以上、2以上、3以上、5以上、7以上、特に10以上が好ましい。
【0052】
一方、第一の透光性粒子と第二の透光性粒子の光学定数の差が大きすぎると、第一の透光性粒子又は第二の透光性粒子の光学定数と透光性樹脂の光学定数の差が大きすぎて、樹脂硬化体が不透明になる虞がある。そのため、|Δnd2|と|Δnd1|の差は、好ましくは0.5以下、0.4以下、0.3以下、0.2以下である。また、|Δνd2|と|Δνd1|の差は、好ましくは20以下、15以下、13以下、12以下、特に11以下が好ましい。なお、本発明において、第一の透光性粒子、第二の透光性粒子として、樹脂組成物中に含まれるいずれの透光性粒子を選択してもよく、少なくとも、選択した任意の二種類の透光性粒子が規定した関係を満たしていればよい。
【0053】
また、第一の透光性粒子と透光性樹脂との光学定数の差に着目した場合、第一の透光性粒子と透光性樹脂との屈折率差(|Δnd1|)の値は、好ましくは0.025以下、0.02以下、0.01以下、0.0075以下、0.005以下である。また、第一の透光性粒子と透光性樹脂のアッベ数差(|△νd1|)は、好ましくは10以下、5.0以下、2.5以下、1.0以下、0.5以下、0.3以下である。このようにすれば、第一の透光性粒子と透光性樹脂の光学定数が整合しやすいため、得られる樹脂硬化体の透明性が向上する。なお、光学定数が透光性樹脂に近い透光性粒子は、比表面積が小さいほど樹脂と界面との散乱が抑制でき、透明性を向上させやすい。
【0054】
また、第二の透光性粒子と透光性樹脂との光学定数の差に着目した場合、第二の透光性粒子と透光性樹脂との屈折率差(|Δnd2|)は、好ましくは0.005以上、0.0075以上、0.01以上、0.02以上、0.025以上、0.025超である。また、第二の透光性粒子と透光性樹脂のアッベ数差(|△νd2|)は、好ましくは0.1以上、0.2以上、0.3以上、0.5以上、1.0以上、2.5以上、5.0以上、10以上である。このようにすれば、透光性粒子と透光性樹脂の光学定数が整合しにくくなり、得られる樹脂硬化体内に光散乱が起こりやすくなる。なお、光学定数が透光性樹脂と乖離する透光性粒子は、比表面積が小さいほど透光性樹脂との界面で散乱が起こり、不透明感を出しやすい。
【0055】
上記した第一の透光性粒子と第二の透光性粒子を併用した場合には、樹脂硬化体内の透明性や光散乱を調整しやすくなる。更に、樹脂硬化体中に透明性が異なる二種類以上の部分を混在させることが可能になる。その結果、重厚感と高級感等の意匠性に優れた外観を有する樹脂硬化体を得やすくなる。
【0056】
なお、透光性粒子は、組み合わせる樹脂にもよるが、例えば屈折率ndが、1.40~1.90、1.40~1.65、1.45~1.6、特に1.5~1.55であることが好ましく、アッべ数νdは、組み合わせる樹脂にもよるが、例えば20~65、40~65、45~60、特に50~55であることが好ましい。さらに屈折率ndが1.5~1.55、且つアッべ数νdが50~55であれば、ビニル系樹脂、エポキシ系樹脂、ABS樹脂等多くの樹脂と光学定数が整合するため幅広い用途に使用可能である。光学定数が上記範囲から外れると、樹脂と整合する光学定数を得ることが難しくなる。また透光性粒子は、可視光範囲のいずれかの波長の光透過率が10%以上のものであるが、得られる樹脂硬化体の透明性を高める観点から、可視域(300~800nm)における平均透過率が30%以上、50%以上、特に70%以上であることが望ましい。
【0057】
透光性粒子は、平均粒子径D50が、好ましくは0.1~300μmであり、1~200μm、1超~200μm、1.5~150μm、2~100μm、3~50μm、特に4~40μmであることが好ましい。また、透光性粒子の最大粒子径は、500μm以下、特に300μm以下であることが好ましく、最小粒子径は、0.1μm以上、特に0.5μm以上であることが好ましい。透光性粒子の粒度が小さくなるほど充填率を高めることができ、また、樹脂組成物の粘度を上昇させる効果が高くなる。しかし光造形法を使用する場合には、樹脂の流動性を低下させたり、界面泡が抜けにくくなったりしてしまう。一方、透光性粒子の粒度が大きいほど充填率が低下しやすくなる。
【0058】
透光性粒子は、30~100℃における熱膨張係数が20~100×10-7/℃、30~90×10-7/℃、特に40~80×10-7/℃であるガラスからなることが好ましい。フィラーの熱膨張係数が低いほど、サーマルショックによる、透光性粒子や樹脂硬化体の割れや強度劣化が起こりにくい。また、硬化時の収縮率が小さく、寸法精度の高い樹脂硬化体を得ることができる。
【0059】
透光性粒子の比表面積は、0.1~5m2/g、0.1~3.5m2/g、0.5~3.2m2/g、特に0.75~3m2/gであることが好ましい。ガラス粒子の比表面積が小さすぎると、透光性粒子径が大きくなるため、樹脂組成物中における透光性粒子の充填率が低下しやすくなる。一方、透光性粒子の比表面積が大きすぎると、得られる透光性粒子の比表面積も大きくなるため、樹脂組成物の流動性が低下したり、透光性粒子と樹脂との界面に存在する泡が抜けにくくなったりする。また、樹脂組成物中で透光性粒子が沈降分離しやすくなる。なお、樹脂組成物中の透光性粒子の沈降分離を抑制するためには、透光性粒子の比表面積と粒子径や、表面粗さの関係を適切化することが好ましい。例えば、透光性粒子の比表面積が大きい場合は、粒子径を小さくしたり、粒子の表面粗さを小さくする、もしくは、球状にしたりすることで透光性粒子の沈降分離を抑制できる。
【0060】
また、透光性粒子の比表面積は、樹脂硬化体の透明性にも影響する。例えば、光学定数が透光性樹脂に近い透光性粒子の場合は、比表面積が小さいほど樹脂と界面との散乱が抑制でき、透明性を向上させやすい。一方、光学定数が透光性樹脂と乖離する透光性粒子の場合は、比表面積が小さいほど透光性樹脂との界面で散乱が起こり、不透明感を出しやすい。
【0061】
また、透光性粒子の密度は、2.2~7g/cm3、2.35~6.5g/cm3、2.5~6g/cm3、特に2.6~5g/cm3であることが好ましい。透光性粒子の密度が低すぎると、軟化点が不当に高くなる傾向がある。一方、透光性粒子の密度が大きすぎると、樹脂組成物中で透光性粒子が沈降分離しやすくなる。なお、樹脂組成物中の透光性粒子の沈降分離を抑制するためには、透光性粒子の比表面積と密度の関係を適切化することが好ましい。例えば、透光性粒子の密度が大きい場合は比表面積を大きくする、軽い密度は比表面積を小さくすることで透光性粒子の沈降分離を抑制できる。
【0062】
透光性粒子の合量は、1~70Vol%、1超~60Vol%、5~50Vol%、10~40Vol%、特に15~30Vol%であることが好ましい。透光性粒子の含有量が少なすぎると、樹脂硬化体中に含まれる透光性粒子と樹脂界面における光散乱が起こりにくくなり、樹脂硬化体の意匠性を高めにくい。また、樹脂硬化体の機械的強度が低下しやすくなる。一方、透光性粒子の含有量が多すぎると、光散乱が過剰になり、樹脂硬化体の透明性が低下しやすくなることに加えて、かえって機械的強度が低下する傾向がある。
【0063】
透光性粒子が三種類以上の場合、第一の透光性粒子と第二の透光性粒子の合量(Vol%)/全透光性粒子の合量(Vol%)が、好ましくは0.5以上であり、0.6以上、0.7以上、0.8以上、特に、0.9%以上が好ましい。このようにすると、透光性樹脂と透光性粒子の透明性や光散乱を調整しやすくなり、重厚感と高級感等の意匠性に優れた外観を有する樹脂硬化体を得やすくできる。
【0064】
また、透光性粒子として、第一の透光性粒子と第二の透光性粒子を使用する場合は、第一の透光性粒子(Vol%)/第二の透光性粒子(Vol%)の値は、好ましくは0.1~10であり、0.2~8、0.3~7、特に、0.4~6が好ましい。このようにすると、樹脂硬化体中の全透光性粒子のうち、特に透光性樹脂と光学定数が近い第一の透光性粒子の割合を一定範囲に規制できるため、樹脂硬化体の内の透明性や光散乱を調整しやすくなる。更に、樹脂硬化体中に透明性が異なる二種類以上の部分を混在させることが可能になるため、重厚感と高級感等の意匠性に優れた外観を有する樹脂硬化体を得やすくできる。
【0065】
透光性粒子は、その表面がシランカップリング剤によって処理されていることが好ましい。シランカップリング剤で処理すれば、透光性粒子と透光性樹脂の結合力を高めることができ、より機械的強度の優れた樹脂硬化体を得ることが可能になる。さらに、透光性粒子と透光性樹脂のなじみがよくなり、界面の泡や空隙が減少し、光散乱を抑制でき、透過率が高くなる。シランカップリング剤としては、例えばアミノシラン、エポキシシラン、アクリルシラン等が好ましい。なおシランカップリング剤は、用いる樹脂によって適宜選択すればよく、例えば光硬化性樹脂としてビニル系不飽和化合物を用いる場合にはアクリルシラン系シランカップリング剤が最も好ましく、またエポキシ系化合物を用いる場合にはエポキシシラン系シランカップリング剤を用いることが望ましい。
【0066】
また、透光性粒子は、上記した光学定数を満足するものであれば組成は制限されない。例えばSiO2-B2O3-R’2O(R’はアルカリ金属元素)系ガラス、SiO2-Al2O3-RO(Rはアルカリ土類金属元素)系ガラス、SiO2-Al2O3-R’2O-RO系ガラス、SiO2-Al2O3-B2O3-R’2O系ガラス、SiO2-Al2O3-B2O3-R’2O-RO系ガラス、SiO2-R’2O系ガラス、SiO2-R’2O-RO系ガラス等が使用できる。
【0067】
また、透光性粒子は、着色を抑制するために、ガラス組成中のFe2O3、NiO、Cr2O3及びCuOの含有量が合量で1質量%以下、0.75質量%以下、特に0.5質量%以下であることが好ましい。
【0068】
またガラス組成中のLa2O3、Gd2O3、及びBi2O3の含有量は合量で20質量%以下、15質量%以下、特に10質量%以下とすることが好ましい。これらの成分の範囲を上記のように限定すれば、透光性粒子の着色を抑制しやすくなることや屈折率の上昇が抑制できることから、無色透明な樹脂硬化体を容易に得ることができる。
【0069】
また環境上の理由から、ガラス組成中の鉛、アンチモン、ヒ素、塩素、硫黄の含有量は合量で1質量%以下、0.5質量%以下、特に0.1質量%以下とすることが好ましい。
【0070】
透光性粒子の具体的な組成範囲としては、例えば質量%でSiO2 20~80%、Al2O3 0~30%、B2O3 0~50%、CaO 0~25%、Na2O 0~30%、K2O 0~30%、Li2O 0~10%、TiO2 0~15%、Nb2O5 0~20%、WO3 0~20%、F 0~10%含有するものであることが好ましい。透明性を向上させたい場合、透光性粒子の光学定数は、組み合わせる樹脂の光学定数と整合させることが重要である。
【0071】
例えば、アクリル系樹脂の屈折率ndは1.4~1.6、アッべ数νdは45~65程度であり、これに整合する光学定数が得られるガラスとして、例えば質量%でSiO2 50~80%、Al2O3 0~30%、B2O30~50%、CaO 0~25%、Na2O 0~30%、K2O 0~30%、Li2O 0~10%、TiO2 0~15%、Nb2O5 0~20%、WO3 0~20%、F 0~10%含有するガラスを使用することが好ましい。上記組成範囲のガラスは、概ね屈折率ndが1.4~1.6、アッべ数νdが45~65であり、アクリル系樹脂と組み合わせて透明な樹脂硬化体を得ることが可能である。
【0072】
組成範囲を上記のように限定した理由は、以下の通りである。なお以降の説明において特に断りのない限り「%」は質量%を意味する。
【0073】
SiO2はガラス骨格を形成する成分である。また化学耐久性の向上や失透の抑制が可能な成分である。SiO2は、50~80%、55~75%、特に60~70%であることが望ましい。SiO2が多すぎると、溶融性が低下しやすくなる。また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0074】
Al2O3はガラス化安定成分である。また化学耐久性の向上や失透の抑制が可能な成分である。Al2O3は、0~30%、2.5~25%、特に5~20%であることが望ましい。Al2O3が多すぎると、溶融性が低下しやすくなる。また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0075】
B2O3はガラス骨格を形成する成分である。また化学耐久性の向上や失透の抑制が可能な成分である。B2O3は、0~50%、2.5~40%、特に5~30%であることが望ましい。B2O3が多すぎると、溶融性が低下しやすくなる。また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0076】
CaOは、アルカリ土類であり、ガラス中で中間物質として安定化させ、溶融性を向上させ、成形時にガラスを軟化しやすくする成分である。CaOは、0~25%、0.5~20%、特に1~15%であることが望ましい。CaOが多すぎると、化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0077】
なお、CaO以外にも、MgO、SrO、BaO及びZnOを含有させてもよい。MgO、SrO、BaO及びZnOは合量で0.1~50質量%、1~40%、特に2~30%であることが好ましい。これらの成分は、CaOと同様にガラスの耐久性を大きく低下させずにガラスの粘度を低下させやすい成分である。一方、これらの成分が多すぎると、ガラスの粘度が高くなり、ガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0078】
Na2Oは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。Na2Oは、0~30%、0.1~25%、0.5~20%、特に1~15%であることが望ましい。Na2Oが多すぎると、化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0079】
K2Oは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。K2Oは、0~30%、0.1~25%、0.5~20%、特に1~15%であることが望ましい。K2Oが多すぎると、化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0080】
Li2Oは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。Li2Oは、0~10%、0.1~9%、0.5~7%、特に1~5%であることが望ましい。Li2Oが多すぎると、化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0081】
TiO2は、屈折率やアッベ数を調整できる成分であり、ガラスの粘度を低下させる成分である。また、化学耐久性を向上させる成分でもある。TiO2は0~15%、0.1~12%、0.5~10%、特に1~5%であることが望ましい。TiO2が多すぎると屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる傾向がある。またガラスに着色が起こりやすい。
【0082】
Nb2O5は、屈折率、アッベ数を調整できる成分である。また、化学耐久性を向上させる成分でもある。Nb2O5は、0~20%、0.1~15%、0.5~10%、特に1~5%であることが望ましい。Nb2O5が多すぎると屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる。さらにガラスが失透しやすくなる。
【0083】
WO3は、屈折率、アッベ数を調整できる成分であり、またガラスの粘度を低下させる成分である。WO3は、0~20%、0.1~15%、0.5~10%、特に1~5%であることが望ましい。WO3が多すぎると、屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる。さらにガラスが着色しやすくなる傾向がある。
【0084】
また、ガラス組成中のTiO2、Nb2O5、WO3の含有量は合量で0~30%、0.1~25%、1~20%、特に3~15%とすることが望ましい。これらの成分の範囲を上記のように限定すれば、屈折率やアッベ数の調整がしやすく、またガラスの失透の抑制が容易になる。また化学耐久性の高いガラスを得やすくなる。
【0085】
また、ガラス組成中のNb2O5、WO3の含有量は、合量で0~30%、0.1~25%、1~20%、特に2~10%とすることが望ましい。これらの成分の範囲を上記のように限定すれば、屈折率やアッベ数の調整がしやすくなるとともに、着色しにくくなる。またガラスの失透の抑制が容易になる。さらに化学耐久性の高いガラスを得やすくなる。
【0086】
Fは、ガラス骨格を形成する成分である。また、透過率、特に紫外領域の透過率を高めることが可能な成分である。Fは、0~10%、0.1~7.5%、0.5~5%、特に1~3%であることが望ましい。Fが多すぎると、屈折率が小さくなり、またアッベ数が大きくなる傾向がある。また化学耐久性が悪化しやすい。さらにFは揮発性が高く、例えば、ガラスビーズ作製時に昇華した成分がガラス表面に付着し、表面性状を悪化させる虞がある。
【0087】
またエポキシ系樹脂の屈折率ndは1.5~1.8、アッべ数νdは20~55であり、これに整合する光学定数が得られるガラスとして、例えば質量%でSiO2 20~70%、Al2O3 0~30%、 B2O3 0~50%、CaO 0~25%、Na2O 0~10%、K2O 0~10%、Li2O 0~10%、TiO2 0~15%、Nb2O5 0~20%、WO3 0~20%、F 0~10%含有するガラスを使用することが好ましい。上記組成範囲のガラスは、概ね屈折率ndが1.5~1.8、アッべ数νdが20~55であり、エポキシ系樹脂と組み合わせて透明な樹脂硬化体を得ることが可能である。
【0088】
組成範囲を上記のように限定した理由は、以下の通りである。
【0089】
SiO2はガラス骨格を形成する成分である。また化学耐久性の向上や失透の抑制が可能な成分である。SiO2は、20~70%、30~65%、特に40~60%であることが望ましい。SiO2が多すぎると、溶融性が低下しやすくなり、また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0090】
Al2O3はガラス化安定成分である。また化学耐久性の向上や失透の抑制が可能な成分である。Al2O3は、0~30%、2.5~25%、特に5~20%であることが望ましい。Al2O3が多すぎると、溶融性が低下しやすくなる。また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0091】
B2O3はガラス骨格を形成する成分である。また化学耐久性の向上や失透の抑制が可能な成分である。B2O3は、0~50%、2.5~40%、特に5~30%であることが望ましい。B2O3が多すぎると、溶融性が低下しやすくなり、また成形時に軟化しにくくなって製造が困難になる虞がある。
【0092】
CaOは、ガラス中で中間物質として安定化させ、溶融性を向上させ、また、成形時にガラスを軟化しやすくする成分である。CaOは、0~25%、0.5~20%、特に1~15%であることが望ましい。CaOが多すぎると、化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0093】
なお、CaO以外にも、MgO、SrO、BaO及びZnOを含有させてもよい。MgO、SrO、BaO及びZnOは合量で0.1~50%、1.0~40%、特に2~30%であることが好ましい。これらの成分は、CaOと同様にガラスの耐久性を大きく低下させずにガラスの粘度を低下させやすい成分である。一方、これらの成分が多すぎると、ガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0094】
Na2Oは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。Na2Oは、0~10%、0.1~7.5%、0.5~5%、特に1~2.5%であることが望ましい。Na2Oが多すぎると、化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0095】
K2Oは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。K2Oは、0~10%、0.1~7.5%、0.5~5%、特に1~2.5%であることが望ましい。K2Oが多すぎると、化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0096】
Li2Oは、ガラスの粘度を低下させるとともに、失透を抑制する成分である。Li2Oは、0~10%、0.1~9%、0.5~7%、特に1~5%であることが望ましい。Li2Oが多すぎると、化学耐久性が低下しやすくなり、またガラスが失透しやすくなって製造が困難になる虞がある。
【0097】
またガラス組成中のNa2O、K2O、Li2Oの含有量は合量で10%以下、7.5%以下、5%以下、2.5%以下、特に1%以下とすることが好ましい。これらの成分の合量を上記のように限定すれば、樹脂硬化時に発生するガラス中のアルカリ成分の蒸発を抑制しやすくなる。また化学耐久性の低下を抑制できることから、例えばアルカリ溶出によるエポキシ樹脂の劣化が抑制できる。それゆえ無色透明な樹脂硬化体を容易に得ることができ、また得られた樹脂硬化体の経時的な劣化を防止することができる。さらにガラスの熱膨張係数を小さくできることから、サーマルショックや硬化時の熱収縮が抑制できる。
【0098】
TiO2は、屈折率、アッベ数を調整できる成分であり、またガラスの粘度を低下させる成分である。また、化学耐久性を向上させる成分でもある。TiO2は、0~15%、0.1~12%、0.5~10%、特に1~5%であることが望ましい。TiO2が多すぎると、屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる傾向がある。またガラスが着色しやすくなる。
【0099】
Nb2O5は、屈折率、アッベ数を調整できる成分である。Nb2O5は、0~20%、0.1~15%、0.5~10%、特に1~5%であることが望ましい。Nb2O5が多すぎると、屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる傾向がある。さらにガラスが失透しやすくなる。
【0100】
WO3は、屈折率、アッベ数を調整できる成分であり、またガラスの粘度を低下させる成分である。WO3は、0~20%、0.1~15%、0.5~10%、特に1~5%であることが望ましい。WO3が多すぎると、屈折率が大きくなり、またアッベ数が小さくなる傾向がある。さらにガラスが着色しやすくなる傾向がある。
【0101】
またガラス組成中のTiO2、Nb2O5、WO3の含有量は合量で0~30%、0.1~25%、1~20%、特に3~15とすることが望ましい。これらの成分の範囲を上記のように限定すれば、屈折率やアッベ数の調整がしやすく、またガラスの失透の抑制が容易になる。さらに化学耐久性の高いガラスを得やすくなる。
【0102】
またガラス組成中のNb2O5、WO3の含有量は合量で0~30%、0.1~25%、1~20%、特に2~15%とすることが望ましい。これらの成分の範囲を上記のように限定すれば、屈折率やアッベ数の調整がしやすくなるとともに、着色しにくくなる。またガラスの失透の抑制が容易になる。さらに化学耐久性の高いガラスを得やすくなる。
【0103】
Fは、ガラス骨格を形成する成分である。また透過率、特に紫外領域の透過率を高めることができる成分である。Fは、0~10%、0.1~7.5%、0.5~5%、特に1~3%であることが望ましい。Fが多すぎると屈折率が小さくなり、またアッベ数が大きくなる傾向がある。また化学耐久性が悪化しやすい。さらにFは揮発性が高く、ガラスビーズ作製時に昇華した成分がガラス表面に付着し、表面性状を悪化させる虞がある。
【0104】
更に、本発明の樹脂組成物は、透光性粒子とは別に、可視光波長より小さい粒子であるナノフィラーを添加してもよい。ナノフィラーは、粘度を上昇させる効果があるため、樹脂組成物を任意の粘度に調整することが可能である。ナノフィラーとしては、ZrO2、Al2O3、SiO2等が使用できる。なお、ナノフィラーは、可視光波長程度かそれよりも小さい粒子であるため、一般に、光散乱を発生せず、樹脂硬化体の透明性や白色度に影響しにくい。
【0105】
ナノフィラーは、平均粒子径D50が、好ましくは0.001~0.3μmであり、0.002~0.2μm、0.003~0.1μm、0.003~0.07μm、0.005~0.05μm、特に0.005~0.03μmが好ましい。ナノフィラーの平均粒度D50が小さすぎると、材料コストが高くなる。また、樹脂の流動性が低下したり、界面泡が抜けにくくなったりする虞がある。一方、ナノフィラーの平均粒子D50が大きすぎると、樹脂の粘度を上昇させる効果が得られにくくなる。
【0106】
ナノフィラーは、樹脂組成物の粘度を上昇させる効果がある。ナノフィラーの含有量は、好ましくは0~3Vol%であり、0.01~2Vol%、0.1~1Vol%、0.2~1Vol%未満である。ナノフィラーの含有量が多すぎると、材料コストが高くなる上、樹脂の粘度が上昇しすぎる虞がある。また、樹脂の流動性が低下したり、界面泡が抜けにくくなったりする虞がある。
【0107】
本発明の樹脂組成物は、立体造形用、具体的には、光造形法、粉末焼結法、熱溶解積層(FDM)法や、その他、押出射出成形法等、いかなる成形方法も採用可能である。例えば、シート状、或いは任意の部品形状に成形し、電子部品用途やコンシューマー用途等に使用できる。また、本発明の樹脂組成物は、半透明で意匠性に優れた樹脂硬化体を得ることができるため、例えば、高透明性のエナメル質と不透明性の象牙質の二層を有する天然歯に近似した樹脂硬化体を得ることが可能である。そのため、本発明の樹脂組成物は、歯科材料用途、例えば、ペースト状のまま治療レジン用として、或いは仮歯やマウスピース造形用として用いることができる。
【0108】
次に、本発明の樹脂硬化体について説明する。
【0109】
本発明の樹脂硬化体は、厚み0.5mmのときのL*値が、59~80であることが好ましく、60~78、61~77、62~73、特に64~72である。また、300~800nmにおける最大透過率が10~85であることが好ましく、15~80、20~75、30~70、特に40~65である。L*値及び透過率に関し、一般に、材料の色調を同じにした場合、透明性が高い材料は、白色度が低く且つ透過率が高くなる傾向がある。また、透明性が低い材料は、白色度が高く且つ透過率が低くなる傾向がある。本発明の樹脂硬化体は、L*値及び300~800nmにおける最大透過率が適切な範囲にあるため、適度に透明性を呈し、重厚感や高級感等の意匠性に優れた樹脂硬化体とすることができる。更に、本発明の樹脂硬化体は、半透明であり内部の色調が表面に現れやすくなるため、樹脂組成物に添加する着色材料を低減することができる。
【0110】
例えば、本発明の樹脂硬化体は、高透明性のエナメル質と不透明性の象牙質の二層を有する天然歯に近似した樹脂硬化体とすることが可能である。そのため、本発明の樹脂硬化体は、歯科材料用途、例えば、仮歯やマウスピースとして好適に用いることができる。
【0111】
次に、本発明の立体造形物の製造方法の一例として、光造形法を用いて説明する。なお、樹脂組成物については既述の通りであり、ここでは説明を省略する。
【0112】
まず光硬化性樹脂組成物からなる1層の液状層を用意する。例えば液状の光硬化性樹脂組成物を満たした槽内に、造形用ステージを設け、ステージ上面が液面から所望の深さ、(例えば0.2mm程度)となるように位置させる。このようにすることで、ステージ上に厚さ約0.1~0.2mmの液状層を用意することができる。
【0113】
次にこの液状層に、活性エネルギー光線、例えば紫外線レーザーを照射して光硬化性樹脂を硬化させ、所定のパターンを有する硬化層を形成する。なお活性エネルギー光線としては、紫外線の他に、可視光線、赤外線等のレーザー光を用いることができる。
【0114】
続いて形成した硬化層上に、光硬化性樹脂組成物からなる新たな液状層を準備する。例えば、前記した造形用ステージを1層分下降させることにより、硬化層上に光硬化性樹脂を導入し、新たな液状層を用意することができる。
【0115】
その後、硬化層上に用意した新たな液状層に活性エネルギー線を照射して、前記硬化層と連続した新たな硬化層を形成する。
【0116】
その後、必要に応じて、得られた立体造形物の表面の少なくとも一部を機械加工してもよい。
【実施例】
【0117】
以下に本発明について、実施例に基づいて説明する。
【0118】
まず、透光性粒子として、以下のようにしてガラスフィラーA、B、Cを作製した。表2に示す組成となるように調合した原料を溶融した後、粉砕し、平均粒子径8μmの粉末ガラスを作製した。この粉末を酸素バーナーのフレームに当て、球状に成形した。その後、分級をすることで平均粒子径8μmのガラスフィラーA、B、Cを得た。また、ナノフィラーとして、平均粒子径0.007μmのナノフィラー(アエロジルRX200)を用いた。
【0119】
得られたガラスフィラーの屈折率ndやアッベ数νdは、精密屈折率計(島津デバイス製KPR-2000)により測定した。
【0120】
【0121】
次に、透光性樹脂として、アクリル系光硬化性樹脂を準備した。
【0122】
まず、イソホロンジイソシアネート、モルホリンアクリルアミドおよびジブチル錫ジラウレートをオイルバスで加熱した。グリセリンモノメタクリレートモノアクリレートにメチルヒドロキノンを均一に混合溶解させた液を入れ撹拌混合して、反応させた。次に、ペンタエリスリトールのプロピレンオキサイド4モル付加物(ペンタエリスリトールの4個の水酸基にプロピレンオキサイドをそれぞれ1モル付加したもの)を加え、反応させて、ウレタンアクリレートオリゴマーとモルホリンアクリルアミドを含む反応生成物を製造した。
【0123】
得られたウレタンアクリレートオリゴマーとモルホリンアクリルアミドを含む反応生成物に、モルホリンアクリルアミド、ジシクロペンタニルジアクリレートを添加した。さらに、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(光重合開始剤)を添加し、無色透明なアクリル系光硬化性樹脂を得た。このアクリル系光硬化性樹脂は、粘度が500Pa・s、屈折率ndが1.515、アッベ数νdが51.2であった。
【0124】
屈折率ndやアッべ数νdは、精密屈折率計(島津デバイス製KPR-2000)により測定した。
【0125】
続いて、表2に示す割合で、アクリル系光硬化性樹脂にガラスフィラーA~Cを添加し、3本ローラーにより混練を行い、均質にガラスフィラーを分散させたペースト状樹脂を得た。このペースト状樹脂をテフロン(登録商標)製の内寸30mm□の型枠に流し入れた。その後、500mW、波長364nmの光を照射して、硬化させ、80℃にてキュアを行い、樹脂硬化体を得た。
【0126】
表2に本発明の実施例(No.1~8)及び比較例(No.9、10)を示している。
【0127】
【0128】
透光性樹脂の粘度はブルックフィールド粘度計(DV-3)により測定した。
【0129】
L*値は、樹脂硬化体を肉厚0.5mmで両面を鏡面にし、色差計(ジューキ製JP7200F)で、光源D65、視野10度、測定径10mmφでサンプルを置いた後、サンプル上に黒板を設置して測定した。
【0130】
また、透過率は、上記樹脂硬化体の試料で、分光光度計(島津製作所製UV-3100)により全光線透過率測定を行い、300~800nmにおける最大透過率を測定した。
【0131】
表2から分かるように、ガラスフィラーを二種類用いた樹脂硬化体は、樹脂硬化体中に透明性が異なる二種類の部分が混在しており、外観が半透明であり、重厚感や高級感等の意匠性に優れていた。一方、透光性樹脂と光学定数が近似したガラスフィラーAのみを添加した比較例9は透明性が高くなり、透光性樹脂と光学定数が乖離したガラスフィラーBのみを添加した比較例10は透明性が低くなり、いずれも意匠性が高いとはいえなかった。また、樹脂組成物の粘度に関し、ガラスフィラーを添加することで、透光性樹脂の粘度を適切な値に上昇させることが可能であった。特に、ナノフィラーは、少量の添加でL*値や透過率を低下させることなく、樹脂組成物の粘度を上昇させる効果が高かった。
【産業上の利用可能性】
【0132】
本発明の樹脂組成物は、立体造形用、特に、光造形法、粉末焼結法、熱溶解積層(FDM)法等の立体造形用途に好適に使用できる。更に、本発明の樹脂組成物は、歯科材料用途、例えば、ペースト状のまま治療レジン用として、或いは仮歯やマウスピース造形用として好適に用いることができる。