IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社IHIの特許一覧

<>
  • 特許-熱交換システム 図1
  • 特許-熱交換システム 図2
  • 特許-熱交換システム 図3
  • 特許-熱交換システム 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】熱交換システム
(51)【国際特許分類】
   F28F 27/00 20060101AFI20230511BHJP
   G01F 1/00 20220101ALI20230511BHJP
【FI】
F28F27/00 511J
G01F1/00 H
F28F27/00 511M
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2018215356
(22)【出願日】2018-11-16
(65)【公開番号】P2020085264
(43)【公開日】2020-06-04
【審査請求日】2021-10-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100118267
【弁理士】
【氏名又は名称】越前 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】篠澤 和宏
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 久和
(72)【発明者】
【氏名】正村 晋
【審査官】岩▲崎▼ 則昌
(56)【参考文献】
【文献】特開2007-278674(JP,A)
【文献】特開2011-245413(JP,A)
【文献】特開2007-89544(JP,A)
【文献】特開2006-296283(JP,A)
【文献】特開2002-350090(JP,A)
【文献】特開2012-073234(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F28F 27/00
G01F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水ラインで外部環境から熱源水を取り込み排水ラインで熱源水を外部環境に排水することにより熱源水を流通させる熱源水ラインと、
熱媒体を循環させる循環ラインと、
前記取水ラインと前記循環ラインとの間で熱交換を行う第一熱交換器と、
前記排水ラインと前記循環ラインとの間で熱交換を行う第二熱交換器と、
前記排水ラインの前記第二熱交換器の入口温度を計測する第一温度センサと、
前記排水ラインの前記第二熱交換器の出口温度を計測する第二温度センサと、
前記循環ラインの前記第二熱交換器の入口温度を計測する第三温度センサと、
前記循環ラインの前記第二熱交換器の出口温度を計測する第四温度センサと、
前記循環ラインの流量を計測する流量計と、
前記第一温度センサ、前記第二温度センサ、前記第三温度センサ、前記第四温度センサ及び前記流量計の計測値に基づいて前記熱源水ラインの流量を算出する演算装置と、
を含むことを特徴とする熱交換システム。
【請求項2】
取水ラインで外部環境から熱源水を取り込み排水ラインで熱源水を外部環境に排水することにより熱源水を流通させる熱源水ラインと、
熱媒体を循環させる循環ラインと、
前記取水ラインと前記循環ラインとの間に介在する第一ブラインラインと、
前記排水ラインと前記循環ラインとの間に介在する第二ブラインラインと、
前記取水ラインと前記第一ブラインラインとの間で熱交換を行う第一熱交換器と、
前記排水ラインと前記第二ブラインラインとの間で熱交換を行う第二熱交換器と、
前記排水ラインの前記第二熱交換器の入口温度を計測する第一温度センサと、
前記排水ラインの前記第二熱交換器の出口温度を計測する第二温度センサと、
前記第二ブラインライン前記第二熱交換器の入口温度を計測する第三温度センサと、
前記第二ブラインライン前記第二熱交換器の出口温度を計測する第四温度センサと、
前記第二ブラインラインの流量を計測する流量計と、
前記第一温度センサ、前記第二温度センサ、前記第三温度センサ、前記第四温度センサ及び前記流量計の計測値に基づいて前記熱源水ラインの流量を算出する演算装置と、
を含むことを特徴とする熱交換システム。
【請求項3】
前記熱源水は、真水と比較して無機物又は有機物を多く含む水である、請求項1又は2に記載の熱交換システム。
【請求項4】
前記熱源水は、養殖水槽からの排水又は養殖水槽に供給される水である、請求項1又は2に記載の熱交換システム。
【請求項5】
前記熱媒体は、真水又は不凍液である、請求項1又は2に記載の熱交換システム。
【請求項6】
前記第一温度センサ及び前記第二温度センサは、コンプレッションフィッティング式である、請求項1又は2に記載の熱交換システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換システムに関し、特に、不純物を含む水を用いて熱交換する熱交換器を含むシステムに適した、熱交換システムに関する。
【背景技術】
【0002】
海水、河川水、湖水、地下水、排水等の水は、養殖設備、空調設備、発電システム、熱回収システム等の種々の分野で利用されている。これらの設備及びシステムでは、低温水を温水に変換したり、温水を低温水に変換したりする熱交換システムを備えていることが多い。
【0003】
海水、河川水、湖水、地下水、排水等の水を利用した場合、無機物・有機物等の不純物を含んでいることが多く、これらの水を流通させる配管の内面にスケールやバイオフィルムが形成されることがある。配管の内面にスケールやバイオフィルムが形成されると配管の有効断面積が小さくなってしまうことから、熱交換効率が低下することとなる。したがって、熱交換効率の低下を抑制するためには、スケールやバイオフィルムの厚さを監視する必要がある。
【0004】
例えば、特許文献1には、地熱流体利用システムの配管路に付着するスケールをモニタリングするためのスケール付着監視装置において、モニタリング熱交換器に原熱水の入口・出口温度を計測する温度計、冷却媒体の入口・出口温度を計測する温度計及び原熱水の流量を計測する流量計を配し、これらの計測データに基づいてスケール厚さを演算する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2010-090782号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、原熱水(以下、熱源水という。)の流量を流量計で直接的に計測していることから、モニタリング熱交換器に熱源水を流通させる配管にもスケールが形成されることがあり、熱源水の流量を正確に計測することが困難であるという問題がある。かかる問題は、バイオフィルムが形成される配管においても同様に生じ得る。
【0007】
本発明はかかる問題点に鑑み創案されたものであり、熱源水の流量を正確に把握することができる、熱交換システム及びそのモニタリング方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明によれば、取水ラインで外部環境から熱源水を取り込み排水ラインで熱源水を外部環境に排水することにより熱源水を流通させる熱源水ラインと、熱媒体を循環させる循環ラインと、前記取水ラインと前記循環ラインとの間で熱交換を行う第一熱交換器と、前記排水ラインと前記循環ラインとの間で熱交換を行う第二熱交換器と、前記排水ラインの前記第二熱交換器の入口温度を計測する第一温度センサと、前記排水ラインの前記第二熱交換器の出口温度を計測する第二温度センサと、前記循環ラインの前記第二熱交換器の入口温度を計測する第三温度センサと、前記循環ラインの前記第二熱交換器の出口温度を計測する第四温度センサと、前記循環ラインの流量を計測する流量計と、前記第一温度センサ、前記第二温度センサ、前記第三温度センサ、前記第四温度センサ及び前記流量計の計測値に基づいて前記熱源水ラインの流量を算出する演算装置と、を含むことを特徴とする熱交換システムが提供される。
【0010】
また、本発明によれば、取水ラインで外部環境から熱源水を取り込み排水ラインで熱源水を外部環境に排水することにより熱源水を流通させる熱源水ラインと、熱媒体を循環させる循環ラインと、前記取水ラインと前記循環ラインとの間に介在する第一ブラインラインと、前記排水ラインと前記循環ラインとの間に介在する第二ブラインラインと、前記取水ラインと前記第一ブラインラインとの間で熱交換を行う第一熱交換器と、前記排水ラインと前記第二ブラインラインとの間で熱交換を行う第二熱交換器と、前記排水ラインの前記第二熱交換器の入口温度を計測する第一温度センサと、前記排水ラインの前記第二熱交換器の出口温度を計測する第二温度センサと、前記第二ブラインライン前記第二熱交換器の入口温度を計測する第三温度センサと、前記第二ブラインライン前記第二熱交換器の出口温度を計測する第四温度センサと、前記第二ブラインラインの流量を計測する流量計と、前記第一温度センサ、前記第二温度センサ、前記第三温度センサ、前記第四温度センサ及び前記流量計の計測値に基づいて前記熱源水ラインの流量を算出する演算装置と、を含むことを特徴とする熱交換システムが提供される。
【0011】
前記熱源水は、真水と比較して無機物又は有機物を多く含む水であってもよい。
【0012】
また、前記熱源水は、養殖水槽からの排水又は養殖水槽に供給される水であってもよい。
【0013】
また、前記熱媒体は、真水又は不凍液であってもよい。
【0014】
また、前記第一温度センサ及び前記第二温度センサは、コンプレッションフィッティング式であってもよい。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明に係る熱交換システムによれば、熱源水ラインの流量を直接的に計測せずに、熱源水ラインの熱交換器の入口温度及び出口温度、循環ラインの熱交換器の入口温度及び出口温度並びに循環ラインの流量に基づいて算出するようにしたことから、熱源水ラインの配管内面にスケールやバイオフィルムが形成された場合であっても熱源水の流量を正確に把握することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の第一実施形態に係る熱交換システムを全体構成図である。
図2】第一温度センサ及び第二温度センサの一例を示す概略図であり、(a)は熱電対を挿入した状態、(b)は熱電対を引き抜いた状態、を示している。
図3】本発明の第一実施形態に係る熱交換システムのモニタリング方法を示すフロー図である。
図4】本発明の他の実施形態に係る熱交換システムを示す部分構成図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態、(c)は第四実施形態、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の実施形態について図1図4(c)を用いて説明する。ここで、図1は、本発明の第一実施形態に係る熱交換システムを全体構成図である。図2は、第一温度センサ及び第二温度センサの一例を示す概略図であり、(a)は熱電対を挿入した状態、(b)は熱電対を引き抜いた状態、を示している。
【0020】
図1に示した第一実施形態に係る熱交換システムは、魚等の海洋生物の養殖設備に使用される自己熱再生サイクルシステムに適用したものである。本実施形態に係る熱交換システムは、図1に示したように、熱源水を流通させる熱源水ライン1と、熱媒体を循環させる循環ライン2と、熱源水ライン1と循環ライン2との間で熱交換を行う二台の熱交換器3(第一熱交換器31及び第二熱交換器32)と、を備えている。なお、熱源水ライン1の上流側に配置された熱交換器3を第一熱交換器31と称し、熱源水ライン1の下流側に配置された熱交換器3を第二熱交換器32と称している。なお、図1において、説明の便宜上、熱源水ライン1を実線で図示し、循環ライン2を一点鎖線で図示している。
【0021】
熱源水ライン1は、例えば、海水を汲み取って第一熱交換器31で加温された海水を調温貯水槽4に供給する取水ライン11と、所定の温度に保持された海水を調温貯水槽4から養殖水槽5に供給する給水ライン12と、使用済みの海水を養殖水槽5から排水溝6に排水する第一排水ライン13と、排水溝6から排水を汲み取り第二熱交換器32で廃熱回収した後で外部環境に排水する第二排水ライン14と、を備えている。
【0022】
取水ライン11は、外部環境から海水を熱源水ライン1に取り込むラインである。取水ライン11は、図示しないが、海水を汲み取るポンプ、海水に含まれる異物・海洋生物等を除去するフィルタ等を備えている。取水ライン11に供給される海水は、一般に、海洋生物の養殖に適した温度よりも低い温度の低温海水であることから、第一熱交換器31で適温に近い温度まで加温される。
【0023】
調温貯水槽4は、供給された海水を海洋生物の養殖に適した温度に加温し保持する機能を有する。調温貯水槽4には、ボイラーや電気ヒータ等の加温手段41が配置される。なお、第一熱交換器31により適温まで加温することができる場合には、加温手段41を省略してもよい。
【0024】
給水ライン12は、養殖水槽5に適温の海水を供給するラインである。養殖水槽5では養殖対象の海洋生物が飼育される。養殖水槽5内の海水には、餌の残滓・糞等の不純物が混入することから、常時又は定期的に海水を入れ替える必要がある。
【0025】
第一排水ライン13は、養殖水槽5内の海水を排水溝6に排水するラインである。排水溝6は、養殖水槽5からの排水量と第二熱交換器32に排水を供給する供給量とのバランスを調整する貯水槽として機能する。
【0026】
第二排水ライン14は、排水溝6内の排水を第二熱交換器32に供給し、最終的に外部環境に排水するラインである。第二排水ライン14には、排水溝6内の排水を汲み取るポンプ14a及びポンプ14aの上流側に配置され排水内の固形分を除去するストレーナ14bが配置されている。
【0027】
本実施形態に係る熱交換システムでは、外部環境の海水を汲み取った後、第一熱交換器31及び調温貯水槽4で加温していることから、そのまま外部環境に排水した場合には、外部環境に存在する海水よりも排水の温度が高いことから、排水口に海洋生物が増殖することが予想される。そこで、本実施形態では、第二熱交換器32で排水の廃熱回収をすることにより、排水を排水先の外部環境の海水と略同じ温度まで下げることができ、排水口における海洋生物の増殖を抑制している。
【0028】
循環ライン2は、閉ループの管路を備え、ライン中に圧縮機21及び膨張弁22が配置されている。管路内に流通される熱媒体は、例えば、不凍液である。また、圧縮機21と膨張弁22との一方の中間に第一熱交換器31が配置され、圧縮機21と膨張弁22との他方の中間に第二熱交換器32が配置されている。
【0029】
第一熱交換器31は、低温の海水に熱を与えて熱媒体の熱が奪われることから凝縮器として機能する。第二熱交換器32は、加温された海水(排水)から熱を奪い熱媒体に熱を与えることから蒸発器として機能する。したがって、循環ライン2は、いわゆるヒートポンプを構成している。
【0030】
また、本実施形態に係る熱交換システムは、熱源水ライン1(第二排水ライン14)の第二熱交換器32の入口温度Tsou_inを計測する第一温度センサ7aと、熱源水ライン1(第二排水ライン14)の第二熱交換器32の出口温度Tsou_outを計測する第二温度センサ7bと、循環ライン2の第二熱交換器32の入口温度Tbra_inを計測する第三温度センサ7cと、循環ライン2の第二熱交換器32の出口温度Tbra_outを計測する第四温度センサ7dと、循環ライン2の第二熱交換器32に流通される熱媒体の流量mbraを計測する流量計7eと、第一温度センサ7a、第二温度センサ7b、第三温度センサ7c、第四温度センサ7d及び流量計7eの計測値に基づいて熱源水ライン1(第二排水ライン14)の排水の流量Msouを算出する演算装置8と、算出された熱源水ライン1(第二排水ライン14)の排水の流量Msouを表示する表示手段9と、を備えている。
【0031】
熱源水ライン1は、取水ライン11から外部環境の海水を取り込んでいることからフィルタを介しているといえども微小な無機物や有機物がラインに混入する。また、養殖水槽5では、餌の残滓・糞等の不純物が海水中に混入することから、養殖水槽5からの排水を流通させる第一排水ライン13及び第二排水ライン14の配管内面並びに排水溝6の壁面には、バイオフォルムが形成され易い環境にある。
【0032】
特に、第二熱交換器32を中継する第二排水ライン14にバイオフィルムが形成され、配管の有効断面積が小さくなった場合には熱交換効率が低下することとなる。また、本実施形態では循環ライン2がヒートポンプを構成していることから、バイオフィルムが厚くなった場合には、圧縮機21の電力消費量が増加してしまうという問題もある。
【0033】
ここで、第二排水ライン14の体積流量(m3/s)は、配管の有効断面積(m2)と平均流速(m/s)との積によって求められるところ、バイオフィルムが形成されることによって配管の有効断面積が小さくなると平均流速の数値に大きな影響を与えることとなる。また、配管内面に付着又は形成される物体の種類(バイオフィルム、スケール、貝類等)によっても平均流速は変化することとなる。
【0034】
したがって、配管内にインライン流量計を配置した場合には計測値に誤差を生じ、正確な流量を計測することは困難である。また、超音波流量計等を用いて配管の外部から流量を計測する場合であっても、配管内面の付着物によって誤差を生じ、正確な流量を計測することは困難である。
【0035】
そこで、本実施形態に係る熱交換システムでは、第二排水ライン14の流量を直接的に計測しないようにしている。具体的には、数1に示した数式によって熱源水ライン1(第二排水ライン14)の排水の流量Msouを算出している。なお、数1において、CPbraは循環ライン2を流通する熱媒体の比熱を示し、CPsouは熱源水ライン1を流通する熱源水の比熱を示している。
【0036】
【数1】
【0037】
この数1を用いた演算は演算装置8が処理を行う。演算装置8は、通常のパーソナルコンピュータであってもよいし、熱交換システムの制御装置に組み込まれた制御盤であってもよい。この演算結果は、モニタ等の表示手段9に表示される。表示手段9には、熱源水ライン1の流量Msouの数値を表示するようにしてもよいし、熱源水ライン1の流量Msouの数値が所定の基準値以上であるか否かを判断した結果を表示するようにしてもよい。
【0038】
第一温度センサ7a~第四温度センサ7dは、例えば、配管の周面から管路の中央に差し込まれた熱電対である。また、流量計7eは、例えば、循環ライン2の配管内に配置されるインライン流量計である。
【0039】
ここで、第一温度センサ7a及び第二温度センサ7bを構成する熱電対の先端は、第二排水ライン14内を流通する熱源水(排水)に曝されていることから、スケールやバイオフィルムが形成され難く、これらの付着物が温度計測に与える影響は少ないものと考えられる。
【0040】
しかしながら、より正確な温度計測が必要な場合には、図2(a)及び図2(b)に示したように、第一温度センサ7a及び第二温度センサ7bにコンプレッションフィッティング式の温度センサを用いるようにしてもよい。コンプレッションフィッティング式の温度センサを用いることにより、配管10内に排水(海水)を流通させた状態のまま熱電対10dを抜き差しすることができる。
【0041】
コンプレッションフィッティング式の温度センサは、例えば、配管10の周面に台座10aを固定し、台座10aに取付ネジ10bを螺合させ、取付ネジ10bの内部に固定用ビーズ(図示せず)を挿入し、押さえネジ10cで締め付ける構成を有している。熱電対10dは、押さえネジ10c、固定用ビーズ、取付ネジ10b、台座10a及び配管10に形成された貫通孔に挿入される。
【0042】
かかるコンプレッションフィッティング式の温度センサを用いることにより、例えば、図2(a)に示したように、熱電対10dを配管10内に常時挿入しておき、温度計測する前に、図2(b)に示したように、配管10から熱電対10dを引き抜いた後、再び、図2(a)に示したように、熱電対10dを配管10内に差し込むことができる。この熱電対10dの抜き差しにより、熱電対10dの表面に付着又は形成されたバイオフィルムを除去することができる。
【0043】
また、かかるコンプレッションフィッティング式の温度センサを用いることにより、例えば、図2(b)に示したように、熱電対10dを配管10から引き抜いた状態に保持しておき、温度計測する前に、図2(a)に示したように、配管10内に熱電対10dを挿入することができる。この処理により、熱電対10dの表面に付着又は形成されるバイオフィルムを低減することができる。
【0044】
次に、上述した本実施形態に係る熱交換システムのモニタリング方法について、図3を参照しつつ説明する。ここで、図3は、本発明の第一実施形態に係る熱交換システムのモニタリング方法を示すフロー図である。
【0045】
本実施形態に係る熱交換システムのモニタリング方法は、熱源水ライン1の第二熱交換器32の入口温度Tsou_in及び出口温度Tsou_outを計測する第一計測工程Step1と、循環ライン2の第二熱交換器32の入口温度Tbra_in及び出口温度Tbra_outを計測する第二計測工程Step2と、循環ライン2の流量mbraを計測する第三計測工程Step3と、熱源水ライン1の入口温度Tsou_in及び出口温度Tsou_out、循環ライン2の入口温度Tbra_in及び出口温度Tbra_out並びに循環ライン2の流量mbraの計測値に基づいて熱源水ライン1の流量Msouを算出する演算工程Step4と、算出された熱源水ライン1の流量Msouを監視する監視工程Step5と、を備えている。
【0046】
第一計測工程Step1において、第一温度センサ7a及び第二温度センサ7bにコンプレッションフィッティング式の温度センサを用いた場合には、入口温度Tsou_in及び出口温度Tsou_outを計測する前に、温度センサの熱電対10dを熱源水ライン1(第二排水ライン14)の配管10から抜き差しする工程を含んでいてもよいし、入口温度Tsou_in及び出口温度Tsou_outを計測する時に、温度センサの熱電対10dを熱源水ライン1(第二排水ライン14)の配管10に挿入する工程を含んでいてもよい。
【0047】
第一計測工程Step1~第三計測工程Step3により計測された計測データは演算装置8に送信される。演算工程Step4は、演算装置8によって処理される。具体的には、上述した数1によって熱源水ライン1の流量Msouが算出される。
【0048】
監視工程Step5は、算出された熱源水ライン1の流量Msouが所定の基準値以上であるか否かを監視する工程である。熱源水ライン1の流量Msouが基準値以上である場合(Y)には、バイオフィルムの厚さが薄い状態であり、所定の熱交換効率が維持できている状態であると判断することができる。したがって、この場合には、配管10の洗浄を行わずに処理を終了する。そして、所定時間経過後、第一計測工程Step1~監視工程Step5を繰り返す。
【0049】
一方、熱源水ライン1の流量Msouが基準値未満である場合(N)には、バイオフィルムの厚さが厚い状態であり、熱交換効率が低下している状態であると判断することができる。したがって、この場合には、熱源水ライン1の配管10を洗浄する洗浄工程Step6に移行する。洗浄工程Step6が終了し、所定時間経過後、第一計測工程Step1~監視工程Step5を繰り返す。
【0050】
熱源水ライン1は、上述したように、取水ライン11、給水ライン12、第一排水ライン13及び第二排水ライン14を有しているが、第二排水ライン14が最も汚れた海水(排水)を流通させるラインである。したがって、第二排水ライン14を洗浄するタイミングで、取水ライン11~第一排水ライン13及び排水溝6を洗浄するようにしてもよい。
【0051】
上述した本実施形態に係る熱交換システムのモニタリング方法によれば、熱源水ライン1の流量Msouを直接的に計測せずに、熱源水ライン1の第二熱交換器32の入口温度Tsou_in及び出口温度Tsou_out、循環ライン2の第二熱交換器32の入口温度Tbra_in及び出口温度Tbra_out並びに循環ライン2の流量mbraに基づいて算出するようにしたことから、熱源水ライン1の配管内面にスケールやバイオフィルムが形成された場合であっても熱源水の流量Msouを正確に把握することができる。
【0052】
次に、本発明の他の実施形態に係る熱交換システムについて、図4(a)~図4(c)を参照しつつ説明する。ここで、図4は、本発明の他の実施形態に係る熱交換システムを示す部分構成図であり、(a)は第二実施形態、(b)は第三実施形態、(c)は第四実施形態、を示している。なお、上述した第一実施形態と同じ構成部品については、同じ符号を付して重複した説明を省略する。
【0053】
図4(a)に示した第二実施形態に係る熱交換システムは、第一熱交換器31側にも、熱源水ライン1(取水ライン11)の第一熱交換器31の入口温度Tsou_inを計測する第一温度センサ7aと、熱源水ライン1(取水ライン11)の第一熱交換器31の出口温度Tsou_outを計測する第二温度センサ7bと、循環ライン2の第一熱交換器31の入口温度Tbra_inを計測する第三温度センサ7cと、循環ライン2の第一熱交換器31の出口温度Tbra_outを計測する第四温度センサ7dと、循環ライン2の流量mbraを計測する流量計7eと、を配置したものである。
【0054】
熱交換システムに取り込む海水の外部環境の状態によっては、取水ライン11にスケールやバイオフィルムが形成される可能性もある。そこで、第二実施形態では、第一熱交換器31の熱交換効率の低下を直接的に監視している。第一温度センサ7a、第二温度センサ7b、第三温度センサ7c、第四温度センサ7d及び流量計7eの計測データは、演算装置8に送信され、熱源水ライン1(取水ライン11)の流量Msouが算出される。
【0055】
図4(b)に示した第三実施形態に係る熱交換システムは、熱源水ライン1と循環ライン2との間に介在するブラインライン(第一真水ブラインライン15及び第二真水ブラインライン16)を備えている。具体的には、取水ライン11と循環ライン2との間に第一真水ブラインライン15を介在させ、第二排水ライン14と循環ライン2との間に第二真水ブラインライン16を介在させている。第一真水ブラインライン15及び第二真水ブラインライン16は、閉ループの管路に真水を循環させるラインであることから循環ラインの一種である。
【0056】
取水ライン11と第一真水ブラインライン15との間には第一熱交換器31が配置され、循環ライン2と第一真水ブラインライン15との間には第三熱交換器33が配置される。第二排水ライン14と第二真水ブラインライン16との間には第二熱交換器32が配置され、循環ライン2と第二真水ブラインライン16との間には第四熱交換器34が配置されている。
【0057】
また、第一温度センサ7a及び第二温度センサ7bは、第二排水ライン14に配置され、第三温度センサ7c、第四温度センサ7d及び流量計7eは、第二真水ブラインライン16に配置されている。したがって、第三実施形態における計測対象の熱媒体は真水である。
【0058】
このように、真水ブラインラインを介在させることによって、例えば、真水ブラインラインの配管が破損した場合であっても、真水が熱源水ライン1(取水ライン11又は第二排水ライン14)に混入するだけであり、養殖対象の海洋生物や排水先の外部環境に与える影響がない。
【0059】
図4(c)に示した第四実施形態に係る熱交換システムは、第三実施形態と同様に、第一真水ブラインライン15及び第二真水ブラインライン16を介在させたものである。かかる第四実施形態では、第一温度センサ7a及び第二温度センサ7bが取水ライン11及び第二排水ライン14の両方に配置され、第三温度センサ7c、第四温度センサ7d及び流量計7eが第一真水ブラインライン15及び第二真水ブラインライン16の両方に配置されている。かかる構成により、第一熱交換器31及び第二熱交換器32の両方の熱交換効率の低下を直接的に監視することができる。
【0060】
上述した実施形態において、熱源水が海水である場合について説明したが、熱源水は、河川水、湖水、地下水、排水等の水であってもよい。これらの熱源水は、真水と比較して無機物又は有機物を多く含む水である。
【0061】
本発明は、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0062】
1 熱源水ライン
2 循環ライン
3 熱交換器
4 調温貯水槽
5 養殖水槽
6 排水溝
7a 第一温度センサ
7b 第二温度センサ
7c 第三温度センサ
7d 第四温度センサ
7e 流量計
8 演算装置
9 表示手段
10 配管
10a 台座
10b 取付ネジ
10c 押さえネジ
10d 熱電対
11 取水ライン
12 給水ライン
13 第一排水ライン
14 第二排水ライン
14a ポンプ
14b ストレーナ
15 第一真水ブラインライン
16 第二真水ブラインライン
21 圧縮機
22 膨張弁
31 第一熱交換器
32 第二熱交換器
33 第三熱交換器
34 第四熱交換器
41 加温手段
Step1 第一計測工程
Step2 第二計測工程
Step3 第三計測工程
Step4 演算工程
Step5 監視工程
Step6 洗浄工程

図1
図2
図3
図4