(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】デジタル印刷装置およびデジタル印刷方法
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20230511BHJP
B41J 2/145 20060101ALI20230511BHJP
B41J 2/155 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B41J2/01 209
B41J2/01 203
B41J2/01 307
B41J2/01 401
B41J2/145
B41J2/155
(21)【出願番号】P 2020530310
(86)(22)【出願日】2018-12-12
(86)【国際出願番号】 EP2018084535
(87)【国際公開番号】W WO2019115608
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-10-15
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】506176906
【氏名又は名称】ゼイコン マニュファクチュアリング ナムローゼ フェンノートシャップ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン デル フフト, ロメイン ジャン ヴィクトール ポール
(72)【発明者】
【氏名】デブリエガー, ジャーゲン ノーバート バート
【審査官】小野 郁磨
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-347069(JP,A)
【文献】特開2015-047775(JP,A)
【文献】特開2011-121237(JP,A)
【文献】特開2006-240251(JP,A)
【文献】特開2015-037843(JP,A)
【文献】特開平11-240158(JP,A)
【文献】特開2009-061727(JP,A)
【文献】特開2012-139980(JP,A)
【文献】特開2007-185877(JP,A)
【文献】特開2009-056661(JP,A)
【文献】米国特許第6196662(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01-2/215
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
インクジェットヘッドで印刷するための方法であって、前記方法が、
nが少なくとも2である、複数nの平行ノズル列(10、20、30、40)を備えたインクジェットヘッドで印刷するステップであって、各ノズル列が複数のノズル(11、12など、21、22など、31、32など、41、42など)を備え、前記複数のノズル列のうち隣り合ったノズル列が、印刷方向(P)と垂直な線上に投影されると、前記複数のノズルが規則的なパターンを形成するように、互いに対してずれており、2つのノズル列間の距離が、前記印刷方向に見て、dである、ステップ、
を含み、前記印刷するステップが、
前記インクジェットヘッドに対して基材を印刷速度v’で前記印刷方向に移動させる工程と、
前記複数のノズルの各ノズルを作動周期f’で作動させる工程であって、前記2つのノズル列によって印刷された印刷ドット列間の距離d’が、前記印刷方向に見て、dより長くなるかまたは短くなるように、前記複数のノズル列が異なる時点(t1’’’、t1’’、t1’、t1、t2’’’、t2’’、t2’、t2など、t11、t11’、t11’’など)で作動され、
各ノズルが作動周期f’で作動され、前記作動周期f’および/または前記印刷速度v’が、f’=k×v’/d’、kが整数である、ように選択される、工程と、
を含む、方法。
【請求項2】
前記インクジェットヘッドの上流の第1の印刷ステーションで前記基材上に第1の画像を印刷するステップであって、前記基材が前記第1の印刷ステーションを離れるときに前記印刷方向に収縮または伸長している、ステップ、をさらに含み、前記インクジェットヘッドを使用して前記第1の画像上に第2の画像が印刷され、d’が、収縮の場合にはdより短く、伸長の場合にはdより長くなるように、前記複数のノズル列が異なる時点で作動される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
各ノズルの前記作動周期f’が、f’=v’/d’になるように設定される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記ノズル列が前記印刷方向と垂直に向けられており、各ノズル列の前記ノズルが略同時に作動される一方で、前記複数のノズル列のノズルの前記作動が互いに対して遅らせられるかまたは早められる、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記ノズル列間の作動タイミング差が、((d-d’)/v’±(1/f’の10%))である、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記印刷方向の所望の印刷解像度(d’/k)を設定するステップであって、kが整数である、ステップと、
前記ノズルの前記作動周期f’および/または前記印刷速度v’をf’=k×v’/d’になるように設定するステップと、
第1のノズル列の第1の作動時点t1を設定するステップであって、前記第1のノズル列が前記インクジェットヘッドを前記印刷方向と逆方向に見たときの最初のノズル列である、ステップと、
i.d’<dのとき、後の各ノズル列に、早められた作動時点t1’、t1’’を設定するステップであって、前のノズル列に対して後のノズル列が、(d-d’)/v’±(1/f’の10%)だけ早められる、ステップと、
ii.d’>dのとき、後の各ノズル列に、遅らせられた作動時点t1’、t1’’を設定するステップであって、前記前のノズル列に対して後のノズル列が、(d’-d)/v’±(1/f’の10%)だけ遅らせられる、ステップと、
を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ノズル列が、前記印刷方向に対して60°~89°の角度で向けられており、前記印刷方向に投射された、ノズル列の隣り合ったノズル間の距離が、b2であり、ノズル列内の前記複数のノズルが、同じ列の印刷された隣り合ったドットまたは隣り合ったドット群の間の距離b2’が、前記印刷方向に見て、b2より長くなるかまたは短くなるように、異なる時点で作動される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1のノズル列の第1のノズルまたはノズル群の第1の作動時点t11を設定するステップであって、前記第1のノズル列が前記インクジェットヘッドを前記印刷方向と逆方向に見たときの最初のノズル列である、ステップと、
i.b2’<b2のとき、前記第1のノズル列の後のノズルまたはノズル群に、早められた作動時点t12を設定するステップと、
ii.b2’>b2のとき、前記第1のノズル列の後のノズルまたはノズル群に、遅らせられた作動時点t12を設定するステップと、
i.b2’<b2のとき、後の列のノズルまたはノズル群に、早められた作動時点t11’を設定するステッ
プと、
ii.b2’>b2のとき、後の列のノズルまたはノズル群に、遅らせられた作動時点t11’を設定するステッ
プと、
を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
b2’<b2のとき、前のノズル列の前記ノズルまたはノズル群に対して後のノズル列の前記ノズルまたはノズル群が、(d-d’)/v’±(1/f’の10%)だけ早められ、
b2’>b2のとき、前のノズル列の前記ノズルまたはノズル群に対して後のノズル列の前記ノズルまたはノズル群が、(d’-d)/v’±(1/f’の10%)だけ遅らせられる、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
0.75×d<d’<1.25×
dである、請求項1~
9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記複数のノズル列が、第1のノズル列、第2のノズル列および第3のノズル列を含み、前記第1のノズル列と前記第2のノズル列との間の距離d12が、前記第2のノズル列と前記第3のノズル列との間の距離d23と異なり、前記第1のノズル列および前記第2のノズル列によって印刷された印刷ドット列間の距離d12’が、前記印刷方向に見て、d12より短くなるかまたは長くなり、かつ前記第2のノズル列および前記第3のノズル列によって印刷された印刷ドット列間の距離d23’が、前記印刷方向に見て、d23より長くなるかまたは短くなるように、前記複数のノズル列が異なる時点で作動される、請求項1~
10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
nが少なくとも2である、複数nの平行ノズル列(10、20、30、40)を備えたインクジェットヘッドであって、各ノズル列が複数のノズル(11、12など、21、22など、31、32など、41、42など)を備え、前記複数のノズル列のうち隣り合ったノズル列が、印刷方向と垂直な線上に投影されると、前記複数のノズルが規則的なパターンを形成するように、互いに対してずれており、2つのノズル列間の距離が、前記印刷方向に見て、dである、インクジェットヘッドと、
前記インクジェットヘッドに対して基材を印刷速度v’で前記印刷方向に移動させるように構成された移動手段と、
前記ノズル列によって印刷された印刷ドット列間の距離d’が、前記印刷方向に見て、dより長くなるかまたは短くなるように、前記複数のノズル列が異なる時点(t1’’’、t1’’、t1’、t1、t2’’’、t2’’、t2’、t2など、t11、t11’、t11’’など)で作動されるように、前記複数のノズルの各ノズルの作動を作動周期f’で制御するように構成され、
前記ノズル列の各ノズルを作動周期f’で作動させるように構成され、前記作動周期f’および/または前記印刷速度v’を、f’=k×v’/d’、kが整数である、ように制御するように構成された、コントローラと、
を備える印刷システム。
【請求項13】
前記基材上に第1の画像を印刷するように構成された第1の印刷ステーションであって、前記第1の印刷ステーションが前記印刷方向の前記基材の収縮または伸長を引き起こす、第1の印刷ステーションと、
前記インクジェットヘッドを備えた第2の印刷ステーションであって、前記第2の印刷ステーションが、前記インクジェットヘッドを使用して前記第1の画像上に第2の画像を印刷するように構成されており、前記コントローラが、d’が、収縮の場合にはdより短く、伸長の場合にはdより長くなるように、前記複数のノズル列が異なる時点で作動されるように構成されている、第2の印刷ステーションと、
を備える、請求項
12に記載の印刷システム。
【請求項14】
前記コントローラが、各ノズルの前記作動周期f’を、f’=k×v’/d’になるよう設定するように構成されている、請求項
13に記載の印刷システム。
【請求項15】
前記ノズル列が前記印刷方向と垂直に向けられており、前記コントローラが、各ノズル列の前記ノズルを略同時に作動させる一方で、前記複数のノズル列のノズルの前記作動が互いに対して遅らせられるかまたは早められるように構成されている、請求項
12~
14のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項16】
隣り合ったノズル列間の作動タイミング差が、(d-d’)/v’±(1/f’の10%)である、請求項
15に記載の印刷システム。
【請求項17】
前記コントローラが、
前記印刷方向の所望の印刷解像度(d’/k)を設定し、kが整数であり、
前記ノズルの前記作動周期f’および/または前記印刷速度v’をf’=k×v’/d’になるように設定し、
第1のノズル列の第1の作動時点t1を設定し、前記第1のノズル列が前記インクジェットヘッドを前記印刷方向と逆方向に見たときの最初のノズル列であり、
i.d’<dのとき、後の各ノズル列に、早められた作動時点t1’、t1’’を設定し、前のノズル列に対して後のノズル列が、(d-d’)/v’±(1/f’の10%)だけ早められ、
ii.d’>dのとき、後の各ノズル列に、遅らせられた作動時点t1’、t1’’を設定し、前のノズル列に対して後のノズル列が、(d’-d)/v’±(1/f’の10%)だけ遅らせられる、
ように構成されている、請求項
12~
16のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項18】
前記ノズル列が、前記印刷方向に対して60°~89°の角度で向けられており、前記印刷方向に投射された、ノズル列の隣り合ったノズル間の距離が、b2であり、前記コントローラが、ノズル列内の前記複数のノズルを、同じ列の印刷された隣り合ったドットまたは隣り合ったドット群の間の距離b2’が、前記印刷方向に見て、b2より長くなるかまたは短くなるように、異なる時点で作動させるように構成されている、請求項
12~
14のいずれか一項に記載の印刷システム。
【請求項19】
前記コントローラが、
第1のノズル列の第1のノズルまたはノズル群の第1の作動時点t11を設定し、前記第1のノズル列が前記インクジェットヘッドを前記印刷方向と逆方向に見たときの最初のノズル列であり、
i.b2’<b2のとき、前記第1のノズル列の後のノズルまたはノズル群に、早められた作動時点t12を設定し、
ii.b2’>b2のとき、前記第1のノズル列の後のノズルまたはノズル群に、遅らせられた作動時点t12を設定し、
i.b2’<b2のとき、後の列のノズルまたはノズル群に、早められた作動時点t11’を設定し、前のノズル列の前記ノズルまたはノズル群に対して後のノズル列の前記ノズルまたはノズル群が、(d-d’)/v’±(1/f’の10%)だけ早められ、
ii.b2’>b2のとき、後の列のノズルまたはノズル群に、遅らせられた作動時点t11’を設定し、前のノズル列の前記ノズルまたはノズル群に対して後のノズル列の前記ノズルまたはノズル群が、(d’-d)/v’±(1/f’の10%)だけ遅らせられる、
ように構成されている、請求項
18に記載の印刷システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の分野は、インクジェットヘッドを使用したデジタル印刷装置およびデジタル印刷方法に関し、特に、インクジェットヘッドで印刷するときの印刷方向の印刷解像度を変更するための方法に関する。より詳細な実施形態によれば、本発明は、第1の印刷ステップが第2の印刷ステップ、典型的には、第2のインクジェット印刷ステップと組み合わされる融合印刷に関する。
【背景技術】
【0002】
インクジェットプリンタは、インクジェットヘッド上に形成されたノズルからインクを吐出することによって記録媒体上に画像を記録する。インクジェットヘッドの下方では所定の速度で基材が搬送される。
【0003】
印刷方向全体にわたって必要とされるノズルの数は主に、使用されるインクジェット印刷ヘッドの所与の印刷解像度に対する所望の印刷解像度によって規定される。ノズルには最小寸法があるので、2つの隣り合ったノズル間の距離を無限に短縮することはできない。そのため、インクジェットヘッドは、印刷解像度を上げるために互いに対してずれている複数のノズル列を備えることが好ましい。
【0004】
公知のインクジェットヘッドの一例は、複数の列n、例えば4列(n=4)を備え、各列が複数のノズルm、例えば320個のノズル(m=320)を有し、各列は、印刷方向、すなわち、基材がインクジェットヘッドに対して移動する方向、と垂直な方向に向けられている。物理的な限界のために、通常各列は複数の走査線、例えばk本の走査線分だけ分離されており、kは例えば13本の走査線であり得る。インクジェットヘッドのノズルは、大きな電力ピークを回避するためにわずかな差(ナノ秒程度)が生じる場合もあるが、略同時に作動され、作動周期は、基材がある列から次の列まで移動する都度、インクジェットヘッドの全ノズルの作動がk回行われるというものである。各列は、印刷プロセスの後続のステップにおいて印刷されるドットの組み合わせが規則的なパターンを形成するように、互いに対してずれている。より詳細には、基材がインクジェットヘッドの下方で移動する間にインクジェットヘッドが全(n×m個の)ノズルを何回か作動させると、印刷方向と垂直に延在するn本の線のうちの1本の線が完成することになり、この線は(n×m)ドットを含み得る。
【0005】
公知のインクジェットヘッドの別の例は、複数の横列(n)および縦列(m)からなる配列を備え、例えば32横列(n=32)で、各横列が複数のノズル、例えば64個のノズル(m=64)を有し、各横列は、印刷方向と垂直な方向に対して小角度で向けられており、各縦列は、印刷方向に対して小角度で向けられている。印刷方向と垂直な方向に見て、複数のそうしたヘッドが互いに隣り合って設けられ得る。印刷中には、全(n×m個の)ノズルが、少なくとも基材が次の横列に移動する都度ノズルが作動するような作動周期で、略同時に作動される。またそのようなインクジェットヘッドを使用すると、隣り合った印刷ドット間の距離は、印刷方向に見て、隣り合ったノズル列間の距離より短い率になり得る。横列および縦列の数を増やすことにより、印刷方向の解像度が上がり得る。
【0006】
そのようなインクジェットヘッドの問題は、作動のタイミングおよび/または基材の位置が正確ではない場合、印刷方向と垂直な1本の線上にあるべき印刷ドットが、複数の傾いた短い線分に分散し得ることである。言い換えると、作動周期および印刷速度を、隣り合った列間の距離に完全に一致させる必要がある。さらに、インクジェットヘッドの解像度を動的に変化させることは不可能である。
【0007】
特に、融合印刷を行う場合、すなわち、第1の印刷ステップを第2のインクジェット印刷ステップと組み合わせる場合に、これが問題となり得る。例えば、第1の画像が第1の電子写真印刷プロセスまたはインクジェット印刷プロセスを使用して印刷される場合、画像を有する基材が縮むかまたは伸びて、特に印刷方向に見て、解像度がわずかに上がるかまたは下がるかした画像になる可能性がある。この第1の画像上に固定解像度で第2のインクジェット印刷を使用して第2の画像が印刷される場合には、上述したように、第2の画像は、伸びの縮みの結果として第1の画像と位置合わせされないことになる。
【発明の概要】
【0008】
本発明の実施形態の目的は、印刷方向の印刷解像度の変更を可能にするインクジェットヘッドで印刷するための方法を提供することである。
【0009】
本発明の第1の態様によれば、本方法は、nが少なくとも2である、複数nの平行ノズル列を備えたインクジェットヘッドで印刷するステップを含む。各ノズル列は、複数のノズルを含む。複数のノズル列のうち隣り合ったノズル列は、印刷方向と垂直な線上に投影されると、複数のノズルが規則的なパターンを形成するように、互いに対してずれている。2つのノズル列間の距離は、印刷方向に見て、dである。印刷するステップは、
インクジェットヘッドに対して基材を印刷速度v’で印刷方向に移動させる工程と、
前記複数のノズルの各ノズルを作動周期f’で作動させる工程であって、前記複数のノズル列が、前記2つのノズル列によって印刷された印刷ドット列間の距離d’が、印刷方向に見て、dより長くなるかまたは短くなるように、異なる時点で作動され、
各ノズルが作動周期f’で作動され、作動周期f’および/または印刷速度v’が、f’=k×v’/d’、kが整数である、ように選択される、工程と、
を含む。
【0010】
隣り合ったノズル列によって印刷された印刷ドット列間の距離d’を、印刷方向に見て、dより長くするかまたは短くすることにより、印刷方向の解像度が変更される。
【0011】
これは、複数のノズル列の作動のタイミングを変更することによって達成される。実際、インクジェットヘッドの全ノズルを先行技術と同様に略同時に作動させる代わりに、異なる列のノズルは異なる時点で作動されて、距離d’が得られる。本発明の状況では、タイミングの変更は、印刷方向に見た所望の解像度に応じて変更可能であり得るが、目に見える解像度変更が必要とされる場合、タイミング差は、好ましくは少なくとも10マイクロ秒、より好ましくは少なくとも50マイクロ秒である。「略同時」という用語が使用される場合、通常これは、作動時点の任意の差が10ミリ秒未満であることを示唆する。
【0012】
一例示的実施形態において、本方法は、インクジェットヘッドの上流の第1の印刷ステーションで基材上に第1の画像を印刷するステップであって、基材が前記第1の印刷ステーションを離れるときに印刷方向に収縮または伸長している、ステップ、をさらに含む。次に、インクジェットヘッドを使用して前記第1の画像上に第2の画像が印刷され、複数のノズル列は、d’が、収縮の場合にはdより短く、伸長の場合にはdより長くなるように、異なる時点で作動される。言い換えると、融合印刷を行う、すなわち、第1の印刷ステーションでの印刷に続いてインクジェットヘッドを備えた第2の印刷ステーションで印刷を行う場合、第1の印刷ステーションに起因する印刷方向の収縮または伸長があれば考慮に入れられ得る。実際、解像度を適切に変更することにより、第1の印刷ステーションにおける基材の収縮または伸長にもかかわらず、第2の画像を第1の画像と十分に位置合わせすることができる。そのような実施形態は、例えば、第1の印刷ステーションが、溶融ステップおよび/または硬化ステップの間などに収縮が発生し得る、乾式トナーまたは液体トナーを使用する電子写真印刷ステーションであるときに有用である。
【0013】
第1の印刷ステーションにおける基材の収縮または伸長を判断するために、カメラなどの測定手段が使用され得る。測定を支援するために、印刷された第1の画像において追加の印刷マーク、断裁マークまたは較正ストリップが付加され得る。追加マークの印刷が不要な他の実施形態では、エンコーダを使用して、第1の印刷ステーションの下流および上流で、基材がその上を通過する回転部材の角度陽電子が測定され得る。基材がその上を通過する回転部材の角位置を測定することにより、基材の速度を導出することができる。第1の印刷ステーションの上流と下流との基材の速度の差が、基材の収縮または伸長の大きさである。しかしながら、さらに別の実施形態では、収縮または伸長が分かっており、ユーザは、印刷方向の所望の解像度を表す値を入力しさえすればよい。
【0014】
一例示的実施形態において、各ノズルの作動周期f’は、f’=k×v’/d’になるように設定される。実際には、印刷速度v’=vを一定に保ち、印刷ステーションまたはステーションの他の構成要素が一定の印刷速度v=v’を得るために実施または最適化される際に作動周期f’を変更することが一般に好ましい。
【0015】
一例示的実施形態において、ノズル列は、印刷方向と垂直に向けられており、各ノズル列のノズルが略同時に作動される一方で、隣り合ったノズル列のノズルの作動が互いに対して遅らせられるかまたは早められる。そのようにして、異なる作動時点の回数を列の数に制限することができる。好ましくは、隣り合ったノズル列間の作動タイミング差は、((d-d’)/v’±(1/f’の10%))、より好ましくは((d-d’)/v’±(1/f’の5%))である。タイミングは、印刷画像においてわずかな狂いは肉眼では見えないという意味で完全でなくてもよいことに留意されたい。
【0016】
一例示的実施形態において、本方法は、
印刷方向の所望の印刷解像度(d’/k)を設定するステップであって、kが整数である、ステップと、
ノズルの作動周期f’および/または印刷速度v’をf’=k×v’/d’になるように設定するステップと、
第1のノズル列の第1の作動時点t1を設定するステップであって、第1のノズル列がインクジェットヘッドを印刷方向と逆方向に見たときの最初のノズル列である、ステップと、
d’<dのとき、後の各ノズル列に、早められた作動時点t1’、t1’’を設定するステップであって、前のノズル列に対して後のノズル列が、(d-d’)/v’±(1/f’の10%)、より好ましくは、(d-d’)/v’±(1/f’の5%)だけ早められる、ステップと、
d’>dのとき、後の各ノズル列に、遅らせられた作動時点t1’、t1’’を設定するステップであって、前のノズル列に対して後のノズル列が、(d’-d)/v’±(1/f’の10%)、より好ましくは、(d-d’)/v’±(1/f’の5%)だけ遅らせられる、ステップと、
を含む。
【0017】
一例示的実施形態において、ノズル列は、印刷方向に対して60°~89°の角度で向けられており、印刷方向に投射された、ノズル列のうち隣り合ったノズル間の距離は、b2である。異なる時点での各列の作動に加えて、ノズル列内の複数のノズルはその場合、同じ列の印刷された隣り合ったドットまたは隣り合ったドット群の間の距離b2’が、印刷方向に見て、b2より長くなるかまたは短くなるように、異なる時点で作動され得る。またそのようなより複雑なヘッドでは、本発明の方法は変更された解像度での印刷も可能にする。
【0018】
そのようなインクジェットヘッドを使用した一例示的実施形態において、本方法は、
第1のノズル列の第1のノズルまたは第1のノズル群の第1の作動時点t11を設定するステップであって、第1のノズル列がインクジェットヘッドを印刷方向と逆方向に見たときの最初のノズル列である、ステップと、
b2’<b2のとき、第1のノズル列の後のノズルまたはノズル群に、早められた作動時点t12を設定するステップと、
b2’>b2のとき、第1のノズル列の後のノズルまたはノズル群に、遅らせられた作動時点t12を設定するステップと、
b2’<b2のとき、後の列のノズルまたはノズル群に、早められた作動時点t11’を設定するステップであって、前のノズル列のノズルまたはノズル群に対して後のノズル列のノズルまたはノズル群が、(d-d’)/v’±(1/f’の10%)、より好ましくは、(d-d’)/v’±(1/f’の5%)だけ早められる、ステップと、
b2’>b2のとき、後の列のノズルまたはノズル群に、遅らせられた作動時点t11’を設定するステップであって、前のノズル列のノズルまたはノズル群に対して後のノズル列のノズルまたはノズル群が、(d’-d)/v’±(1/f’の10%)、より好ましくは、(d-d’)/v’±(1/f’の5%)だけ遅らせられる、ステップと、
をさらに含み得る。
【0019】
同じ列の隣り合ったノズル間の作動時点の「理論的に必要とされる」差が小さいので、ノズル群を扱うことが可能であることに留意されたい。例えば、1つのノズル列内で、5つの隣り合ったノズル群が規定されてもよく、同じ群内のノズルは同時に作動されてもよい。以下で詳細に説明される
図5の例も参照されたい。
【0020】
本発明の典型的な用途では、印刷方向の解像度の変更はあまり大きくなくてもよい。d’の適切な値は、0.75×d<d’<1.25×d、より好ましくは、0.90×d<d’<1.10×dの範囲内であり得る。
【0021】
一例示的実施形態によれば、複数のノズル列は、第1のノズル列、第2のノズル列および第3のノズル列を含み、第1のノズル列と第2のノズル列との間の(前述の実施形態ではdで示されたが、本実施形態ではd12で示される)距離d12は、第2のノズル列と第3のノズル列との間の距離d23とは異なる。本方法は、複数のノズル列を、前記第1のノズル列と第2のノズル列とによって印刷された印刷ドット列間の距離d12’、および前記第2のノズル列と第3のノズル列とによって印刷された印刷ドット列間の距離d23’が、印刷方向に見て、それぞれ、d12およびd23より長くなるかまたは短くなるように、異なる時点で作動させるステップを含む。これに関して、実際には、隣り合ったノズル列間の距離が異なることがしばしばあり得ることに留意されたい。例えば、4列(n=4)の場合には、以下が当てはまり得る。d12=k12×rおよびd23=k23×r、rは解像度であり、k12は13であり、k23は266であり得る、完全を期すために、前述の実施形態では第1の列と第2の列との間の走査線の本数がkで示されているが、本実施形態では、その本数が第2の列と第3の列との間の走査線の本数k23と異なり得ることを示すために、k12で示されていることに留意されたい。
【0022】
本発明の別の態様によれば、
nが少なくとも2である、複数nの平行ノズル列を備えたインクジェットヘッドであって、各ノズル列が複数のノズルを備え、複数のノズル列のうち隣り合ったノズル列が、印刷方向と垂直な線上に投影されると、複数のノズルが規則的なパターンを形成するように、互いに対してずれており、2つのノズル列間の距離が、印刷方向に見て、dである、インクジェットヘッドと、
インクジェットヘッドに対して基材を印刷速度v’で印刷方向に移動させるように構成された移動手段と、
前記2つのノズル列によって印刷された印刷ドット列間の距離d’が、印刷方向に見て、dより長くなるかまたは短くなるように、前記複数のノズル列が異なる時点で作動されるように、前記複数のノズルの各ノズルの作動を作動周期f’で制御するように構成され、
各ノズルを作動周期f’で作動させるように構成され、作動周期f’および/または印刷速度v’がf’=k×v’/d’になるように制御される、コントローラと、
を備える印刷システムが提供される。
【0023】
本印刷システムの好ましい実施形態は従属請求項に開示されており、方法請求項について説明された技術的利点はシステム請求項にも準用される。
【0024】
別の態様によれば、プログラムがコンピュータ上で動作すると、前述の実施形態のいずれか1つによる方法の1つまたは複数のステップを行う命令の機械実行可能プログラムを符号化したデジタルデータ記憶媒体が提供される。本発明のさらなる態様によれば、プログラムがコンピュータ上で動作すると、前述の実施形態のいずれか1つによる方法の1つまたは複数のステップを行うコンピュータ実行可能命令を含むコンピュータプログラムが提供される。本発明のさらなる態様によれば、上記で開示された方法の実施形態のいずれか1つの1つまたは複数のステップを行うようにプログラムされたコンピュータ装置または他のハードウェア装置が提供される。
【0025】
添付の図面は、本発明の装置の現時点での好ましい非限定的な例示的実施形態を示すために使用される。以下の詳細な説明を添付の図面と併せて読めば、本発明の特徴の上記その他の利点および目的がより明らかになり、より良く理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】本発明の一例示的実施形態において使用するためのインクジェットヘッドを概略的に示す図である。
【
図2A】可変解像度でのインクジェット印刷のための方法の一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【
図2B】可変解像度でのインクジェット印刷のための方法の一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【
図2C】可変解像度でのインクジェット印刷のための方法の一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【
図2D】可変解像度でのインクジェット印刷のための方法の一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【
図2E】可変解像度でのインクジェット印刷のための方法の一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【
図2F】可変解像度でのインクジェット印刷のための方法の一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【
図2G】可変解像度でのインクジェット印刷のための方法の一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【
図2H】可変解像度でのインクジェット印刷のための方法の一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【
図2I】可変解像度でのインクジェット印刷のための方法の一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【
図2J】可変解像度でのインクジェット印刷のための方法の一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【
図2K】可変解像度でのインクジェット印刷のための方法の一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【
図2L】可変解像度でのインクジェット印刷のための方法の一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【
図2M】可変解像度でのインクジェット印刷のための方法の一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【
図2N】可変解像度でのインクジェット印刷のための方法の一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【
図3A】
図1のインクジェットヘッドでの、解像度補正なしの印刷パターンを概略的に示す図である。
【
図3B】
図1のインクジェットヘッドでの、解像度補正ありの印刷パターンを概略的に示す図である。
【
図4】融合印刷システムの一例示的実施形態を概略的に示す図である。
【
図5】本発明の別の例示的実施形態において使用するためのインクジェットヘッドを概略的に示す図である。
【
図6A】
図5のインクジェットヘッドでの、解像度補正なしの印刷パターンを概略的に示す図である。
【
図6B】
図5のインクジェットヘッドでの、解像度補正ありの印刷パターンを概略的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1に、複数の列10、20、30、40、この場合は4列(n=4)を含む公知のインクジェットヘッドの一例を示す。各列10、20、30、40は、複数のノズル11、12、13など、21、22、23など、31、32、33など、41、42、43などを有する。各列は、m個のノズル、例えば320個のノズル(m=320)を含む。各列10、20、30、40は、印刷方向P、すなわち、基材がインクジェットヘッドの下方で移動する方向、と垂直な方向に向けられている。同じ列の2つの隣り合ったノズルの中心間の距離はdrである。
【0028】
n列のノズル列10、20、30、40は平行であり、複数のノズル列のうち隣り合ったノズル列は、印刷方向Pと垂直な方向に互いに対してずれている。図示の実施形態では、列20は列10に対して右に距離dr/n、すなわちdr/4ずれており、列30は列20に対して右に距離dr/n、すなわちdr/4ずれており、列40は列30に対して右に距離dr/n、すなわちdr/4ずれている。他の図示されていない実施形態では、ずれが異なる場合もあり、例えば、列20は列10に対して距離2×dr/4ずれており、列30は列10に対して距離dr/4ずれており、列40は列30に対して右に距離3×dr/4ずれている。他の変形も可能であることを当業者は理解する。印刷方向Pと垂直な線上に投影されると、ノズルの中心は、dr/nに対応する互いから等しい距離に配置される。
【0029】
隣り合ったノズル列間の距離は、印刷方向Pに見て、dである。この距離dは、通常、dr/nの倍数、すなわち、d=k×dr/nであり、式中、kは整数である。
図1の例では、簡単にするためにk=2であるが、実際には、kはずっと大きくなり、好ましくは10を上回り、例えば100以上になる。公知の印刷プロセスでは、基材は印刷速度vで移動され、全m×n個のノズルが作動周期f=k×v/dで略同時に作動される。大きな電力ピークを回避するためにわずかな差(ナノ秒程度)が生じ得るが、そのようなわずかな差は印刷画像においては見えないことに留意されたい。言い換えると、作動周期は、基材が距離d/kを移動する都度、インクジェットヘッドの全ノズルの作動が行われるというものである。
図3Aに示されるように、各列は、印刷プロセスの後続のステップにおいて印刷されるドットの組み合わせが規則的なパターンを形成するように、互いに対してずれている。より詳細には、基材がインクジェットヘッドの下方で移動する間に、インクジェットヘッドが全(n×m個の)ノズルを、列数のk倍(n×k)に対応する回数作動させると、印刷方向と垂直に延在するn本の線のうちの1本の線が完成することになり、この線は(n×m)ドットを含み得る。
【0030】
次に、
図2A~
図2Nを参照して本発明の印刷プロセスの一例示的実施形態を説明する。印刷プロセスは複数の印刷シーケンスを含み、各印刷シーケンスは、前記複数のノズル列10、20、30、40の複数のノズルを異なる時点で作動させることを含む。
図2A~
図2Nの例では、4列10、20、30、40が存在すると仮定されている。後続の印刷プロセスにおいて、基材は速度v’でインクジェットヘッドの下方で移動する。各ノズルは作動周期f’で作動され、作動周期および/または印刷速度は、f’=k×v’/d’、kが整数である、ように選択される。通常、v’は固定され、f’は適切な値に設定することができる。図示の例では、簡単にするためにkは2であるが、実際には、kは2より大きくてもよく、好ましくは10より大きく、おそらくは100よりもさらに大きい。例示的な値は、以下のとおりである。
v’=1m/秒;
d/k=42ミクロン(μm)
d’/k=40ミクロン(μm)
k=2
f’=25kHz
実際には、dは好ましくは500ミクロン(μm)~10mmであり、kは2より大きく(上記参照)、例えば、10~500ミクロン(μm)の値のd/kが得られることに留意されたい。
図2A~
図2Nには、(n-1)×Δt<1/f’の状況が示されている。実際、3×(d-d’)/v’<40ミリ秒である。
【0031】
図2A~
図2Dに、第1の印刷シーケンスを示す。この第1の印刷シーケンスは、以下を含む。
第4のノズル列40のノズルを時点t1’’’で作動させる、
図2A参照。
第3のノズル列30のノズルを時点t1’’で作動させる、
図2B参照。
第2のノズル列20のノズルを時点t1’で作動させる、
図2C参照。
第1のノズル列10のノズルを時点t1で作動させる、
図2D参照。
【0032】
それぞれの列の作動のタイミングは、t1’’’<t1’’<t1’<t1になるように選択される。より詳細には、作動のタイミングは好ましくは、以下のようなものである。
t1’’’=t1-3×Δt
t1’’=t1-2×Δt
t1’=t1-Δt
式中、Δt=(d-d’)/v’±(1/f’の10%)、より好ましくは、(d-d’)/v’±(1/f’の5%)。
【0033】
言い換えると、全列を同じ時点で作動させる代わりに、第4のノズル列がまず作動され、次いで第3のノズル列、次いで第2のノズル列、最後に第1のノズル列が作動される。作動間の遅れは、印刷方向に見て、所望の解像度の増加(d’/k<d/k)が得られるようなものである。そのようなタイミングを使用することにより、後の印刷ドット列間の距離がd’になる。
図2Bおよび
図2Cを参照されたい。
【0034】
図2E~
図2Hに、第2の印刷シーケンスを示す。この第2の印刷シーケンスは、以下を含む。
第4のノズル列40のノズルを時点t1’’’+1/fで作動させる、
図2E参照。この時点で、第4のノズル列40によって印刷されているドットは、第1のシーケンスの間に第4のノズル列40によってt1’’’で印刷されたドットと位置合わせされることになる。
第3のノズル列30のノズルを時点t1’’+1/f’で作動させる、
図2F参照。この時点で、第3のノズル列30によって印刷されているドットは、第1のシーケンスの間に第3のノズル列30によってt1’’で印刷されたドットと位置合わせされることになる。
第2のノズル列20のノズルを時点t1’+1/f’で作動させる、
図2G参照。
第1のノズル列10のノズルを時点t1+1/f’で作動させる、
図2H参照。
【0035】
それぞれの列の作動のタイミングは、第1のシーケンスのタイミングと同様に、第4のノズル列がまず作動され、次いで第3のノズル列、次いで第2のノズル列、最後に第1のノズル列が作動されるように選択される。作動間の遅れは、印刷方向に見て、所望の解像度の増加(d’/k<d/k)が得られるようなものである。
【0036】
図2I~
図2Lに、第3のシーケンス中の連続した時点t1’’’+2×1/f’、t1’’+2×1/f’、t1’+2×1/f’、t1+2×1/f’での印刷ドットを、第2のシーケンスについての上記の説明と同様に示す。
図2Mに、第5のシーケンスの終わりの時点t1+4×1/f’での印刷ドットを示し、
図2Nに、8シーケンスの終わりの時点t1+7×1/f’での印刷ドットを示す。図示のように、8シーケンス後に、2本(k=2)の完全な印刷ドット列d1、d2などが完成する。完全なドット列を印刷するのに必要なシーケンスの数は、(n-1)×k+1と一致し、ここでは7である。
【0037】
そのような印刷プロセスを使用して、
図3Bに示されるようなドットパターンが得られ、隣り合ったドット間の距離は、印刷方向Pに見て、d’/kである。隣り合ったドット間の距離は、印刷方向と垂直な方向に見ると、不変のままであり、d/kと等しい。
【0038】
図2A~
図2Nには、インクジェットヘッドの列の作動のタイミングを調整することによって解像度が上がる一例示的実施形態が示されている。同様の方法で、解像度は、印刷シーケンス内で、まず第1のノズル列を作動させ、次いで第2のノズル列を作動させ、次いで第3のノズル列を作動させ、最後に第4のノズル列を作動させることによって下げられ得る(すなわち、d’/k>d/k)ことを当業者は理解する。例えば、第1のシーケンスでは、印刷シーケンスは以下を含む。
第1のノズル列10のノズルを時点t1で作動させる。
第2のノズル列20のノズルを時点t1’で作動させる。
第3のノズル列30のノズルを時点t1’’で作動させる。
第4のノズル列40のノズルを時点t1’’’で作動させる。
タイミングは、以下になる。
t1’=t1+Δt
t1’’=t1+2×Δt
t1’’’=t1+3×Δt
式中、Δt=(d’-d)/v’±(1/f’の10%)、より好ましくは、(d’-d)/v’±(1/f’の5%)。
【0039】
本発明の好ましい実施形態では、本発明の方法は、印刷方向の解像度をわずかに上げるかまたは下げるために使用され得る。好ましくは、0.75×d<d’<1.25×d、より好ましくは、0.90×d<d’<1.10×dである。解像度のそのような差異は、通常、例えば、印刷の前および/または後の基材の収縮または伸長を補正するのに十分になる。
【0040】
特に、f’を、例えば100kHzとすることができることに留意されたい。これは、1/f’=10ミリ秒を示唆することになる。その場合、(n-1)×Δt>1/f’である。実際、3×(d-d’)/v’>10ミリ秒である。よって、
図2A~
図2Nに示されるステップの順序はそのような場合には異なることになる。
図Eのステップはその場合、
図2Dのステップの前に行われるはずであり、以下同様である。言い換えると、f’、v’、dおよびd’の値に応じて、ステップの順序は異なり得る。
【0041】
図4に、本発明の方法の一例示的実施形態が使用される融合印刷システムを示す。インクジェットヘッド、例えば、上述したインクジェットヘッドの一実施形態を備える第2の印刷ステーションの上流の第1の印刷ステーション410で第1の画像が基材上に印刷される。インクジェットヘッドを備えた第2の印刷ステーション420は、前記第1の画像上に第2の画像を印刷する。第1の印刷ステーション410を離れるときに基材が印刷方向Pに収縮または伸長している場合、第2の印刷ステーション410の解像度は印刷方向Pに調整され得る。上記で説明したように、各印刷シーケンスにおいて、前記複数のノズル列の複数のノズルは、d’/kが収縮の場合にはより小さく、伸長の場合にはより大きくなるように、異なる時点で作動され得る。これは、作動のタイミングを制御するコントローラ430を使用して達成することができる。収縮または伸長は、オペレータに知られ、入力インターフェース450を使用してコントローラ430に入力され得る。他の実施形態では、収縮または伸長は、感知手段444を使用して測定され、感知手段によって感知された大きさがコントローラ430に入力され得る。
【0042】
第1の印刷ステーションは、乾式トナーまたは液体トナーを使用したゼログラフィ印刷のために構成され得る。
【0043】
乾式トナーを使用した例示的なデジタル印刷システムが、参照により本明細書に含まれる、本出願人名義の米国特許第6,174,047号明細書に記載されている。
【0044】
液体トナーを使用した例示的なデジタル印刷システムが、参照によりその内容全体が組み込まれる、米国特許出願公開第2009/0052948号明細書により詳細に記載されている。典型的には、トナー液は、5%~60wt%の固体濃度を有し得る。C60/1°のコーンプレート形状および52μmのギャップを用いて25°Cで3000s-1のせん断速度で測定される、高せん断粘度は、好ましくは、5~500mPa・sの範囲内である。液体トナーを使用したさらに発展した例示的なデジタル印刷システムが、参照によりその内容全体が組み込まれる、欧州特許第17158379号明細書により詳細に記載されている。記載の印刷システムは、画像形成ユニットの下流の基材の(すなわち、印刷方向と垂直な)幅の増加を補正するために、撮像部材上に維持されたパターンを調整するように構成された制御機構を備える。そのような制御機構は、前記画像形成ユニットの下流の基材Sの幅の増加を補正するために、撮像部材上に維持されたパターンに画素を付加するように構成され得る。しかしながら、記載の装置は、印刷方向の収縮または伸長を補正しない。
【0045】
本発明の特定の実施形態は、いわゆる「連続」ウェブ、すなわち、特に、(1つもしくは複数の)同じ画像、または一連の画像、または個々に異なる画像の大きなセットでさえもの多数の写しを印刷するために、連続ロールの基材(例えば、紙、プラスチックはく、またはそれらの多層結合体)が一定の速度で印刷ステーションを通って流れる印刷システムのためのデジタル印刷装置およびデジタル印刷方法の分野に関する。
【0046】
図5に、複数の列10、20、30、40、50など、例えば32列(n=32)を含む別の公知のインクジェットヘッドの一例を示す。各列10、20、30、40、50などは、複数のノズル11、12、13、14など、21、22、23、24など、31、32、33、34など、41、42、43、44などを備える。各列は、m個のノズル、例えば64個のノズル(m=64)を備える。ノズル列10、20、30、40、50などは平行であり、印刷方向に対して60°~89°の角度で向けられている。同じ列の2つの隣り合ったノズルの中心間の距離は、印刷方向Pと垂直な線上に投影された場合、drである。drは、印刷方向と垂直な水平方向に見た所望の解像度rhの倍数である(dr=k4×rh、k4は整数である)。
【0047】
複数のノズル列のうち隣り合ったノズル列は、印刷方向Pと垂直な方向に互いに対して距離b1ずれている。図示の実施形態では、列20は列10に対して左に距離b1ずれており、列30は列20に対して左に距離b1ずれており、以下同様である。
図1について上記で説明したのと同様に、他の変形も可能であることを当業者は理解する。印刷方向Pと垂直な線上に投影されると、ノズルの中心は、b1に対応する互いから等しい距離に配置される。印刷方向に投射された、同じ列の隣り合ったノズルの中心間の距離は、b2である。b1は、印刷方向と垂直な方向の解像度rhの倍数であり、すなわち、b1=k1×rh、式中、k1は整数である。b2は、印刷方向の解像度rの倍数であり、すなわち、b2=k2×r、式中、k2は整数である。
【0048】
隣り合ったノズル列間の距離は、印刷方向Pに見て、dである。またdは、印刷方向に見た所望の解像度rの倍数である(d=k3×r、式中、k3は整数である)。公知の印刷プロセスでは、基材は印刷速度vで移動され、全m×n個のノズルが作動周期f=k×v/dで略同時に作動され、式中、kは整数である。言い換えると、作動周期は、基材が距離d/kを移動する都度、インクジェットヘッドの全ノズルの作動が行われるというものである。
図6Aに示されるように、各列は、印刷プロセスの後続のステップにおいて印刷されるドットの組み合わせが規則的なパターンを形成するように、互いに対してずれている。より詳細には、基材がインクジェットヘッドの下方で移動する間に、インクジェットヘッドが全(n×m個の)ノズルをn×k-1に対応する回数作動させた場合、印刷方向と垂直に延在するn本の線のうちの1本の線が完成することになり、この線は、互いの、印刷方向に見て解像度r、印刷方向と垂直な方向に見て解像度rhの(n×m)ドットを含み得る。
【0049】
図5のインクジェットヘッドを使用する本発明の一例示的実施形態では、印刷プロセスは、複数の印刷シーケンスを含んでいてもよく、各印刷シーケンスは、前記複数のノズル列10、20、30、40、50などの複数のノズルを異なる時点で作動させることを含む。後続の印刷プロセスにおいて、基材は速度v’でインクジェットヘッドの下方で移動する。各ノズルは、f’=k×v/d、式中、kが整数’であるように、作動周期f’で作動される。典型的には、f’は、(d’およびb2’によって決定される、d’およびb2’は印刷方向の所望の解像度r’の倍数である)印刷方向の所望の解像度r’の関数において調整されてもよく、v’=vは一定に保たれる。
【0050】
この第1の印刷シーケンスは、以下を含む。
ノズル11を時点t11で作動させる。
ノズル21を時点t11’=t11-Δtで作動させる。
ノズル31を時点t11’’=t11-2×Δtで作動させる。
ノズル41を時点t11’’’=t11-3×Δtで作動させる。
以下同様。
ノズル12を時点t12=t11-Δt’で作動させる。
ノズル22を時点t12’=t12-Δtで作動させる。
ノズル32を時点t12’’=t12-2×Δtで作動させる。
ノズル42を時点t12’’’=t12-3×Δtで作動させる。
以下同様。
ノズル13を時点t13=t11-2×Δt’で作動させる。
ノズル23を時点t13’=t13-Δtで作動させる。
ノズル33を時点t13’’=t13-2×Δtで作動させる。
ノズル43を時点t13’’’=t32-3×Δtで作動させる。
以下同様。
式中、Δt=(d-d’)/v’±(1/f’の10%)、より好ましくは、(d-d’)/v’±(1/f’の5%)であり、
Δt’=(b2-b2’)/v’±(1/f’の10%)、より好ましくは、(b2-b2’’)/v’±(1/f’の5%)である。
【0051】
ノズルの横列および縦列の数と、所望の解像度r’とに応じて、印刷方向の所望の解像度r’を得ることを可能にする様々な印刷シーケンスが決定され得る。より詳細には、解像度r’は、ノズルの作動を適切に調整することによって調整され得る。さらに、
図2A~
図2Nに関連して説明したように、f’、v’、dおよびd’の値に応じて、印刷シーケンスのステップの順序は異なり得ることに留意されたい。
【0052】
Δt’=(b2-b2’)/v’は非常に小さくなるため、特定のノズルの作動をグループ化することにしてもよい。例えば、ノズル11、ノズル12、ノズル13、ノズル14およびノズル15を同じ時点、例えば、上記で計算されたt11、t12、t13、t14およびt15の平均値で、例えば(t11-2×Δt’)で作動させることを考慮することもできる。同様に、ノズル16、ノズル17、ノズル18、ノズル19およびノズル20を同じ時点、例えば、上記で計算されたt16、t17、t18、t19およびt20の平均値で、例えば(t11-7×Δt’)で作動させることにしてもよい。同じことが、第1のノズル列のその他のノズルについて行われ得る。さらに、第2列以降の列についても、同様のグループ化が行われ得る。そのようにして、1つの印刷シーケンス内の作動時点の回数がn×m未満、好ましくはn×m/5未満、より好ましくは10未満となり得る。
【0053】
ノズルの作動の適切なタイミングを選択することにより、同じ列の印刷された隣り合ったドット間の距離r’、すなわち、印刷方向に見た解像度を、rより大きくするかまたは小さくすることができる。
【0054】
様々な上述の方法のステップをプログラムされたコンピュータによって行うことができることを当業者は容易に理解するであろう。本明細書では、いくつかの実施形態は、機械またはコンピュータ可読であり、命令の機械実行可能プログラムまたはコンピュータ実行可能プログラムを符号化した、プログラム記憶装置、例えばデジタルデータ記憶媒体を範囲とすることも意図されており、前記命令は、前記の上述の方法のステップの一部または全部を行う。プログラム記憶装置は、例えば、デジタルメモリー、磁気ディスクや磁気テープなどの磁気記憶媒体、ハードドライブ、または光学的に読取り可能なデジタルデータ記憶媒体であり得る。実施形態は、上述した方法の前記ステップを行うようにプログラムされたコンピュータを範囲とすることも意図されている。
【0055】
「コントローラ」と表示された任意の機能ブロックを含む、図示された様々な要素の機能は、専用ハードウェア、ならびに適切なソフトウェアと関連付けてソフトウェアを実行することができるハードウェアの使用によって提供され得る。プロセッサによって提供される場合、それらの機能は、単一の専用プロセッサによって、単一の共有プロセッサによって、またはその一部が共有され得る複数の個別のプロセッサによって提供され得る。「コントローラ」という用語の明示的な使用は、ソフトウェアを実行することができるハードウェアを排他的に指すものと解釈されるべきではなく、これに限定されないが、デジタル信号プロセッサ(DSP)ハードウェア、ネットワークプロセッサ、特定用途向け集積回路(ASIC)、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)、ソフトウェアを格納するための読取り専用メモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、および不揮発性記憶を暗黙的に含み得る。従来および/またはカスタムメードの他のハードウェアも含まれ得る。
【0056】
本発明の原理は特定の実施形態との関連で上述されているが、この説明は、添付の特許請求の範囲によって決定される保護範囲の限定としてではなく、例としてなされているにすぎないことを理解されたい。