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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】診断テストシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
   C12M 1/34 20060101AFI20230511BHJP
   C12M 1/24 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C12M1/34 Z
C12M1/24
【請求項の数】 30
(21)【出願番号】P 2020518468
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-12-03
(86)【国際出願番号】 AU2018051044
(87)【国際公開番号】W WO2019060950
(87)【国際公開日】2019-04-04
【審査請求日】2021-09-13
(31)【優先権主張番号】2017903919
(32)【優先日】2017-09-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】520104020
【氏名又は名称】アックスイン ピーティーワイ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】AXXIN PTY LTD
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ホッパー, ウィリアム アール
【審査官】福間 信子
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-214174(JP,A)
【文献】特開2016-158557(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0004548(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2016/0051235(US,A1)
【文献】国際公開第2017/011862(WO,A1)
【文献】国際公開第2005/118772(WO,A1)
【文献】特開2005-300164(JP,A)
【文献】特表2016-518588(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12M 1/00-3/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
診断テストシステムであって、
診断テストアセンブリと、
前記診断テストアセンブリを受け入れ、前記診断テストアセンブリと相互作用して、前記診断テストアセンブリ内の生物学的サンプルまたは環境サンプルに対して診断テストを実行する診断テスト装置と、
を含み、
前記診断テストアセンブリが、
サンプル調製リザーバであって、サンプル流体を調製するために前記サンプル調製リザーバに収容されたサンプル調製流体中に前記生物学的サンプルまたは前記環境サンプルを受け入れ、前記サンプル調製リザーバが、前記生物学的サンプルまたは前記環境サンプルを運ぶスワブを用いて、前記サンプル調製リザーバ内の前記サンプル調製流体を攪拌し、かつ前記スワブから前記サンプル調製流体中に前記生物学的サンプルまたは前記環境サンプルを洗い落とすことができるように、閉塞されていない開放容積部を最初に提供する、サンプル調製リザーバと、
前記生物学的サンプルまたは前記環境サンプルを受け入れた後の前記サンプル調製リザーバに挿入するためのサンプル供給機構と、
前記生物学的サンプルまたは前記環境サンプルおよび前記サンプル供給機構を受け入れた後の前記サンプル調製リザーバをシールするためのクロージャと、
前記サンプル調製リザーバに連結された少なくとも1つの診断テストリザーバと、
前記サンプル調製リザーバと前記少なくとも1つの診断テストリザーバとの間の流体移動を防止するために、前記サンプル調製リザーバと前記少なくとも1つの診断テストリザーバとの間にある少なくとも1つのシールと、
を含み、
前記サンプル供給機構が、前記少なくとも1つのシールを破壊して、前記サンプル流体が前記サンプル調製リザーバから前記少なくとも1つの診断テストリザーバに入るのを可能にするように、かつ診断テストおよび検出を行うために所定の部分量の前記サンプル流体を前記サンプル調製リザーバから前記少なくとも1つの診断テストリザーバに供給する一方で、前記サンプル調製リザーバと前記少なくとも1つの診断テストリザーバとの間のさらなる流体移動を防止するように動作可能である、診断テストシステム。
【請求項2】
前記サンプル調製リザーバに前記クロージャを適用する動作によってまた、前記サンプル供給機構が前記サンプル調製リザーバに挿入されるように、前記サンプル供給機構が前記クロージャに取り付けられる、請求項1に記載の診断テストシステム。
【請求項3】
ユーザによる単一の動作により、前記サンプル供給機構が、前記少なくとも1つのシールを破壊し、かつ前記サンプル流体を前記サンプル調製リザーバから前記少なくとも1つの診断テストリザーバに供給する、請求項1または2に記載の診断テストシステム。
【請求項4】
前記ユーザによる前記単一の動作が、前記サンプル調製リザーバに前記クロージャを持続的にねじ込む動作であり、前記ねじ込む動作が、前記サンプル供給機構の動作を引き起こし、かつ前記サンプル調製リザーバをシールする、請求項3に記載の診断テストシステム。
【請求項5】
前記診断テスト装置が、前記サンプル供給機構の前記動作の完了を判定し、前記判定に応じて、前記少なくとも1つの診断テストリザーバの内容物の診断テストを進めるように構成されている、請求項1~4のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項6】
前記クロージャがねじ山を含み、前記診断テスト装置が、前記クロージャの回転の程度および/またはねじ山の進行を判定するように構成された少なくとも1つの検知構成要素を含み、前記診断テスト装置が、前記少なくとも1つの検知構成要素が前記クロージャの動作が完了していないと判定した場合には、ユーザに前記クロージャの動作を完了するように促し、かつ前記クロージャの動作が完了したと判定した場合には、診断テストの次の段階に自動的に進むように構成されている、請求項1~5のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項7】
使用前に前記サンプル調製流体を前記サンプル調製リザーバ内にシールし、かつ前記生物学的サンプルまたは前記環境サンプルを前記サンプル調製リザーバに収容された前記サンプル調製流体に加えることを可能にするために取り外される第2のクロージャを含む、請求項1~6のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項8】
前記サンプル供給機構が、
前記少なくとも1つのシールに対する第2のシールを形成して、前記所定の部分量の前記サンプル流体を内部にトラップする供給チャンバと、
前記少なくとも1つのシールに少なくとも1つの開口部を形成することにより前記少なくとも1つのシールを破壊する穿刺部材と、
前記供給チャンバの内面と共にスライドシールを形成するプランジャ機構と、を含み、前記スライドシールが、前記供給チャンバの前記内面に沿ってスライドして、前記所定の部分量の前記サンプル流体を前記供給チャンバから前記少なくとも1つの開口部を通じて、前記少なくとも1つの診断テストリザーバに供給するように構成されている、請求項1~7のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項9】
前記供給チャンバが外面を含み、前記外面が、前記外面から延びる相互に離間したチャンバ位置決め特徴部を有し、前記チャンバ位置決め特徴部が、前記供給チャンバを前記サンプル調製リザーバの中心に位置合わせして、前記サンプル供給機構が前記サンプル調製リザーバに挿入される際に、前記サンプル流体が前記チャンバ位置決め特徴部の間を流れることを可能にするように構成されている、請求項8に記載の診断テストシステム。
【請求項10】
前記サンプル供給機構が、ユーザによって実行される単一の動作が前記サンプル供給機構の2つの動作段階を引き起こすように構成されており、前記2つの動作段階が、前記所定の部分量の前記サンプル流体を前記供給チャンバ内にトラップする第1の動作段階と、前記サンプル流体が前記供給チャンバから供給される第2の動作段階と、を含む、請求項8または9に記載の診断テストシステム。
【請求項11】
前記サンプル供給機構が、前記第2の動作段階を可能にするために再構成または破壊される力逐次制御構成要素を含む、請求項10に記載の診断テストシステム。
【請求項12】
前記力逐次制御構成要素が、前記サンプル供給機構の動作が前記第1の動作段階から前記第2の動作段階に進むことを可能にするために破壊するように構成された破壊可能な構成要素を含む、請求項11に記載の診断テストシステム。
【請求項13】
前記力逐次制御構成要素が、折り畳み可能なまたは圧壊可能なスペーサを含み、前記スペーサが、前記第1の動作段階では、前記供給チャンバを押圧して、前記供給チャンバにシールさせ、また前記第2の動作段階では、シールを維持するように折り畳まれまたは圧壊され、穿孔動作を実行し、前記供給チャンバから前記サンプル流体を供給するように前記プランジャ機構を動作させる、請求項11または12に記載の診断テストシステム。
【請求項14】
前記サンプル供給機構が前記サンプル調製リザーバに挿入される際に、前記サンプル流体が、前記供給チャンバの外側の周りに流された後に前記供給チャンバに流入可能となるように、前記供給チャンバが最初に構成されており、前記供給チャンバの前記外側の周りを流れる前記サンプル流体が、粒子と破片を保持および/またはトラップし、および/または前記診断テストもしくは増幅プロセスを阻害または妨害する可能性のある前記サンプル流体の成分に結合するか、または前記成分を捕捉する生物学的または化学的成分を組み込むフィルタまたは多孔質充填材を通って流される、請求項8~13のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項15】
前記サンプル調製リザーバが、前記サンプル調製流体と共に磁性粒子を収容しており、前記磁性粒子の表面が、前記磁性粒子が前記サンプル流体内で混合されたときに、前記生物学的サンプルまたは前記環境サンプルの少なくとも1つの所定のターゲット物質と結合し、前記ターゲット物質を捕捉するようにコーティングまたは機能化されており、前記サンプル供給機構が、前記サンプル供給機構が前記サンプル調製リザーバに挿入される際に、前記サンプル流体を前記供給チャンバを通じて流すように構成されており、前記サンプル流体内に含まれターゲット物質を捕捉した磁性粒子が、前記供給チャンバの前記内面に引き付けられ保持されるように、1つまたは複数の磁石が前記供給チャンバの前記内面に近接して配置されており、それにより、前記供給チャンバの前記内面と共にスライドシールを形成する前記プランジャ機構が、前記内面に保持された前記磁性粒子を収集し、前記磁性粒子を前記少なくとも1つの診断テストリザーバに供給して、前記少なくとも1つの診断テストリザーバに供給された前記所定の部分量の前記サンプル流体内の前記少なくとも1つの所定のターゲット物質の濃度を増加させる、請求項8~14のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項16】
前記クロージャおよび前記サンプル調製リザーバの少なくとも一方が、前記サンプル流体が前記診断テストアセンブリ内にシールされたままであるように、前記サンプル調製リザーバからの前記クロージャの取り外しを防止または少なくとも阻害するように構成されている、請求項1~15のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項17】
前記少なくとも1つの診断テストリザーバが、少なくとも2つの診断テストリザーバを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項18】
前記少なくとも2つの診断テストリザーバが、それぞれの異なる診断テストを行うために、および/またはそれぞれの異なるターゲットエンティティを検出するために選択された異なる診断テスト試薬および/または検出試薬を収容している、請求項17に記載の診断テストシステム。
【請求項19】
前記サンプル調製リザーバが、細胞溶解を含むサンプル調製のための試薬を収容しており、前記少なくとも2つの診断テストリザーバの少なくとも1つが、前記診断テスト装置によって測定され得る光出力により、対応する診断テスト結果を決定することが可能となるように、核酸増幅および特定のマーカの結合のために構成されている、請求項1~18のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項20】
前記少なくとも1つの診断テストリザーバが、対応するテスト結果を、前記対応する少なくとも1つの診断テストリザーバ内の1つまたは複数の特定の波長での放射および/または吸収、および/または濁度の変化として視覚的に観察できるように透明である少なくとも1つの診断テストリザーバを含む、請求項1~19のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項21】
前記少なくとも1つの診断テストリザーバのうちの少なくとも1つが透明であり、前記診断テスト装置が、前記少なくとも1つの診断テストリザーバ内の1つまたは複数の波長での放射および/または吸収の変化を検出または測定することにより、前記少なくとも1つの診断テストリザーバにおけるテスト結果を判定するように構成されており、前記診断テスト装置が、任意選択で、前記少なくとも1つの診断テストリザーバを照明して、前記検出または測定を強化し、または行うように構成されている、請求項1~20のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項22】
前記診断テスト装置および前記診断テストアセンブリがそれぞれ、位置合わせ特徴部および支持特徴部を含み、前記位置合わせ特徴部および前記支持特徴部が、前記診断テストアセンブリが前記診断テスト装置に対して所定の位置合わせで受け入れられることを確実にするために、かつ、前記生物学的サンプルまたは前記環境サンプルおよび前記サンプル供給機構を受け入れた後の前記サンプル調製リザーバに前記クロージャが適用されたときに前記位置合わせを維持するために、相互に係合するように構成される、請求項1~21のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項23】
前記診断テスト装置が、1つまたは複数の構成要素を含み、前記構成要素が、変化するおよび/または移動する磁場を前記診断テストアセンブリに適用して、前記サンプル調製リザーバおよび前記少なくとも1つの診断テストリザーバの少なくとも一方の中で磁性粒子の対応する動きを引き起こし、それにより、内部で前記生物学的サンプルまたは前記環境サンプルと前記サンプル調製流体の混合を引き起こすように構成されている、請求項1~22のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項24】
前記診断テスト装置および前記診断テストアセンブリが、前記診断テスト装置が前記サンプル調製リザーバおよび前記少なくとも1つの診断テストリザーバの温度を個々に制御できるように構成されている、請求項1~23のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項25】
前記診断テスト装置が、前記診断テストアセンブリの少なくとも一部の1つまたは複数の画像を表す画像データを生成するように構成された1つまたは複数の画像センサを含み、
前記画像が、
(i)前記少なくとも1つの診断テストリザーバと前記サンプル調製リザーバのうちの少なくとも1つの内部の流体分布であって、前記診断テスト装置が、前記サンプル流体の供給を監視するために前記画像データを処理し、前記監視によって前記供給が完了したと判定された場合には、診断テストの次の段階に進むように構成されている、流体分布と、
(ii)前記少なくとも1つの診断テストリザーバ内に収容された流体体積であって、前記診断テスト装置が、前記画像データを処理して、前記供給された流体の体積誤差を補償して、テスト結果の決定を改善できるように構成されている、流体体積と、
の少なくとも一方を表す、請求項1~24のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項26】
前記診断テスト装置が、並進ステージに取り付けられた1つまたは複数の光学センサを含み、前記並進ステージが、前記診断テストアセンブリの1つまたは複数の選択された診断テストリザーバからの光吸収または発光または蛍光を前記光学センサが測定できるように、前記診断テスト装置のコントローラの制御下にある、請求項1~25のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項27】
前記診断テスト装置が、前記診断テストアセンブリからサンプル流体が漏れた場合の汚染を防ぐために、診断テストに続いて前記診断テストアセンブリに収容されたサンプルを変性させるための少なくとも1つの紫外線(UV)放射源を含む、請求項1~26のいずれか一項に記載の診断テストシステム。
【請求項28】
診断テストアセンブリ内の生物学的サンプルまたは環境サンプルに対して診断テストを実行するように構成された診断テスト装置の受け入れポートに前記診断テストアセンブリを配置するステップと、
サンプル流体の調製のために、前記生物学的サンプルまたは前記環境サンプルを前記診断テストアセンブリのサンプル調製リザーバに収容されたサンプル調製流体に加えるステップと、
前記加えるステップの後に、サンプル供給機構を前記サンプル調製リザーバに挿入し、前記サンプル調製リザーバにクロージャを適用するステップと、
前記サンプル調製リザーバと前記診断テスト装置の少なくとも1つの診断テストリザーバとの間の少なくとも1つのシールを破壊して、サンプル流体が前記サンプル調製リザーバから前記少なくとも1つの診断テストリザーバに入ることを可能にするように、かつ診断テストおよび検出のために所定の部分量の前記サンプル流体を前記サンプル調製リザーバから前記少なくとも1つの診断テストリザーバに供給する一方で、前記サンプル調製リザーバと前記少なくとも1つの診断テストリザーバとの間のさらなる流体移動を防止するように、前記サンプル供給機構を動作させるステップと、
を含む診断テスト方法。
【請求項29】
前記サンプル調製リザーバに前記クロージャを適用する前記ステップによってまた、前記サンプル供給機構が前記サンプル調製リザーバに挿入されるように、前記サンプル供給機構が前記クロージャに取り付けられる、請求項28に記載の診断テスト方法。
【請求項30】
ユーザによる単一の動作が、前記サンプル供給機構の前記動作を引き起こし、前記単一の動作が、前記サンプル調製リザーバに前記クロージャを持続的にねじ込む動作であり、前記ねじ込む動作が、前記サンプル供給機構の動作を引き起こし、かつ前記サンプル調製リザーバをシールする、請求項29に記載の診断テスト方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、サンプル中の1つまたは複数の特定の分析物の存在または不在の検出ならびに/あるいはサンプル中のそれらの量を決定することに基づいて、環境、農業、科学、獣医学または医学診断を支援するために生物学的サンプルの診断テストまたは分析を行うための診断テストシステムおよび方法に関する。分析物は、例えば、分子DNA増幅および特定の遺伝子マーカの検出の方法を使用して検出することができる。
【背景技術】
【0002】
核酸の増幅は、医療、生医学、環境、獣医学および食品安全性テストを含む多くの分野で重要である。一般に、核酸は2つの方法のうちの1つによって増幅される。すなわち、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または等温増幅であって、両方とも以下で説明される。
【0003】
ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)
ウィキペディア(http://en.wikipedia.org/wiki/Polymerase_chain_reaction)で説明されている。
【0004】
「ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)は、分子生物学における科学的手法であり、DNAの単一または数コピーを数オーダー増幅して、特定のDNA配列の数千から数百万のコピーを生成する」
【0005】
1983年にKary Mullisによって開発されたPCRは、現在、医療および生物学研究ラボで様々な用途に使用されている一般的で、しばしば不可欠な技術である。これには、シーケンシングのためのDNAクローニング、DNAベースの系統発生、または遺伝子の機能分析、遺伝性疾患の診断、遺伝子指紋の識別(法科学および父子鑑定で使用される)、感染症の検出と診断が含まれる。1993年に、MullisはPCRに関する研究でMichael Smithと共にノーベル化学賞を受賞した。
【0006】
この方法は、DNAの融解とDNAの酵素的複製のための反応の加熱と冷却を繰り返すサイクルからなる熱サイクルに依存している。ターゲット領域に相補的な配列を含むプライマ(短いDNAフラグメント)は、DNAポリメラーゼ(後にメソッドと呼ばれる)と共に選択的かつ繰り返し増幅を可能にする重要な構成要素である。PCRが進むにつれて、生成されたDNA自体が複製のテンプレートとして使用され、DNAテンプレートが指数関数的に増幅される連鎖反応が始まる。PCRは広範囲の遺伝子操作を実行するために大幅に変更できる。
【0007】
ほとんどすべてのPCRアプリケーションは、元々は細菌Thermus aquaticusから分離された酵素であるTaqポリメラーゼなどの熱安定性DNAポリメラーゼを採用している。このDNAポリメラーゼは、一本鎖DNAをテンプレートとして使用し、DNA合成の開始に必要なDNAオリゴヌクレオチド(DNAプライマとも呼ばれる)を使用して、DNAビルディングブロックであるヌクレオチドから新しいDNA鎖を酵素的に組み立てる。PCR法の大部分は、熱サイクルを使用する。つまり、PCRサンプルを定義された一連の温度ステップまで交互に加熱および冷却する。これらの熱サイクルのステップは、まずDNA融解と呼ばれるプロセスで高温でDNA二重らせんの2つの鎖を物理的に分離するために必要である。低温では、各鎖はDNAポリメラーゼによるDNA合成のテンプレートとして使用され、ターゲットDNAを選択的に増幅する。PCRの選択性は、特定の熱サイクル条件下での増幅の対象となるDNA領域に相補的なプライマを使用することで生じる。
【0008】
PCRの原理と手順
PCRは、DNA鎖(DNAターゲット)の特定の領域を増幅するために使用される。ほとんどのPCR法では通常、最大~10キロベースペア(kb)までのDNAフラグメントを増幅するが、一部の手法では、サイズが最大40kbまでのフラグメントを増幅できる。
【0009】
基本的なPCR設定には、いくつかの構成要素と試薬が必要である。これらの構成要素は次のとおりである。
増幅されるDNA領域(ターゲット)を含むDNAテンプレート
DNAターゲットのセンス鎖とアンチセンス鎖のそれぞれの3’(3プライム)末端に相補的な2つのプライマ
Taqポリメラーゼまたは約70℃の最適温度を有する別のDNAポリメラーゼ
DNAポリメラーゼが新しいDNA鎖を合成するビルディングブロックであるデオキシヌクレオシド三リン酸(dNTP;三リン酸基を含むヌクレオチド)
DNAポリメラーゼの最適な活性と安定性のための適切な化学環境を提供する緩衝液
二価カチオン、マグネシウムまたはマンガンイオン。通常、Mg2+が使用されるが、Mn2+濃度が高いとDNA合成中に誤り率が増加するため、Mn2+をPCRを介したDNA変異誘発に利用できる。
一価カチオンカリウムイオン
【0010】
PCRは通常、サーマルサイクラ内の小さな反応チューブ(0.2~0.5ml容量)で10~200μlの反応容量で行われる。サーマルサイクラは反応チューブを加熱および冷却して、反応の各ステップで必要な温度を達成する(以下を参照)。最近のサーマルサイクラの多くはペルチェ効果を利用しており、電流を逆にするだけでPCRチューブを保持しているブロックを加熱および冷却することができる。薄壁の反応チューブにより、良好な熱伝導率が得られ、迅速な熱平衡化が可能になる。ほとんどのサーマルサイクラは、反応チューブの上部での結露を防ぐために蓋を加熱している。加熱された蓋がない古いサーモサイクラは、反応混合物の上にオイルの層またはチューブの内側にワックスのボールが必要である。
【0011】
手順
通常、PCRは、サイクルと呼ばれる20~40回の一連の温度変化で構成され、各サイクルは通常2~3回の温度ステップで構成される。多くの場合、サイクルの前に高温(>90℃)での単一の温度ステップ(ホールドと呼ばれる)が続き、最後に最終製品の延長または短時間の保管のために1つのホールドが続く。使用される温度と各サイクルで適用される時間の長さは、様々なパラメータによって異なる。これらには、DNA合成に使用される酵素、反応における二価イオンとdNTPの濃度、およびプライマの融解温度(Tm)が含まれる。
初期化ステップ:このステップは、反応を94~96℃(または非常に熱安定性のあるポリメラーゼを使用する場合は98℃)の温度に加熱することで構成され、1~9分間保持される。ホットスタートPCRによる熱活性化を必要とするDNAポリメラーゼにのみ必要である。
変性ステップ:このステップは最初の定期的なサイクルイベントで、反応を94~98℃に20~30秒間加熱することで構成される。相補的な塩基間の水素結合を破壊することにより、DNAテンプレートのDNA融解を引き起こし、一本鎖DNA分子を生成する。
アニーリングステップ:反応温度を20~40秒間50~65℃に下げ、プライマを一本鎖DNAテンプレートにアニールする。典型的には、アニール温度は、使用されるプライマのTmより約3~5℃低い。安定したDNA-DNA水素結合は、プライマ配列がテンプレート配列と非常によく一致する場合にのみ形成される。ポリメラーゼはプライマとテンプレートのハイブリッドに結合し、DNA合成を開始する。
延長/伸長ステップ:このステップの温度は、使用するDNAポリメラーゼによって異なる。Taqポリメラーゼの最適な活性温度は75~80℃であり、この酵素では通常72℃の温度が使用される。このステップで、DNAポリメラーゼは、テンプレートに5’から3’方向に相補的なdNTPを追加することにより、DNAテンプレート鎖に相補的な新しいDNA鎖を合成する。dNTPの5’-リン酸基を、新生(伸長)DNA鎖の末端にある3’-ヒドロキシル基と縮合させる。伸長時間は、使用するDNAポリメラーゼと増幅するDNAフラグメントの長さの両方に依存する。経験則として、最適温度では、DNAポリメラーゼは1分あたり1000塩基を重合する。最適な条件下では、つまり基質や試薬の制限による制限がない場合、各伸長ステップでDNAターゲットの量が2倍になり、特定のDNAフラグメントの指数関数的(幾何学的)増幅が行われる。
最終伸長:この単一ステップは、最後のPCRサイクルの後に、70~74℃の温度で5~15分間行われることがあり、残っている一本鎖DNAが完全に伸長するようにする。
最終保持:このステップは、4~15℃で無期限に行い、反応の短期保存に使用できる。
【0012】
PCRの段階
PCRプロセスは3つの段階に分けることができる。
指数関数的増幅:各サイクルで、生成物の量が2倍になる(反応効率が100%と仮定)。反応は非常に敏感である。存在する必要があるのは、ごく微量のDNAだけである。
平準化段階:DNAポリメラーゼが活性を失い、dNTPやプライマなどの試薬の消費によって制限されるため、反応が遅くなる。
プラトー:試薬と酵素の枯渇により、生成物が蓄積することはない。
【0013】
PCRの最適化
実際には、PCRは様々な理由で失敗する可能性がある。1つは、汚染に対する感度により、偽のDNA生成物の増幅を引き起こすことである。このため、PCR条件を最適化するための多くの技術と手順が開発されている。外来DNAによる汚染は、潜在的なDNA汚染物質から前PCR混合物を分離するラボのプロトコルと手順で対処される。これには通常、PCRセットアップ領域をPCR生成物の分析または精製領域から空間的に分離し、使い捨てのプラスチック製品を使用し、反応セットアップ間の作業面を完全に洗浄する。プライマ設計技術は、PCR生成物の収量を向上させ、偽生成物の形成を回避する上で重要である。代替バッファ構成要素またはポリメラーゼ酵素を使用すると、DNAの長い領域や問題のある領域の増幅に役立つ。バッファシステムにホルムアミドなどの試薬を追加すると、PCRの特異性と収量が増加する場合がある。
【0014】
DNAの増幅と定量
PCRはターゲットとするDNAの領域を増幅するため、PCRを使用して非常に少量のサンプルを分析できる。これは、痕跡量のDNAだけが証拠として利用できる場合、法医学分析にとってしばしば重要である。PCRは、数万年前の古代DNAの分析にも使用できる。これらのPCRベースの手法は、エジプトのミイラの分析からロシアの皇帝の識別に至るまでの用途で、4万年前のマンモスなどの動物やヒトDNAでうまく使用されている。
【0015】
定量的PCR法では、サンプルに存在する特定の配列の量を推定できる。この手法は、遺伝子発現のレベルを定量的に決定するためにしばしば適用される。リアルタイムPCRは、PCR増幅の各ラウンド後にDNA生成物の蓄積を測定する、DNA定量のための確立されたツールである。
【0016】
病気の診断におけるPCR
PCRは、白血病やリンパ腫などの悪性疾患の早期診断を可能にし、白血病やリンパ腫は現在、がん研究で最も進んでおり、すでに日常的に使用されている(http://www.eutos.org/content/Molecular_monitoring/information/pcr_testing/のEUTOS For CML研究記事で引用されている研究、特に注記10-13を参照されたい)。PCRアッセイをゲノムDNAサンプルに対して直接実行して、転座特異的悪性細胞を他の方法よりも少なくとも10,000倍の感度で検出することができる。
【0017】
PCRはまた、組織培養アッセイおよび動物モデルから、マイコバクテリア、嫌気性細菌、またはウイルスなどの非培養性または増殖の遅い微生物の同定を可能にする。微生物学におけるPCR診断用途の基礎は、特定の遺伝子による感染性病原体の検出と非病原性と病原性株の区別である。
【0018】
ウイルスDNAも同様にPCRで検出できる。使用するプライマは、ウイルスのDNAのターゲット配列に特異的である必要があり、PCRは、ウイルスゲノムの診断分析またはDNA配列決定に使用できる。PCRの感度が高いため、感染後すぐに、また発症前にウイルスを検出することができる。このような早期発見により、医師は治療において大きなリードを得ることができる。患者のウイルスの量(「ウイルス量」)は、PCRベースのDNA定量技術(下記参照)でも定量化することができる。
【0019】
等温増幅法
ウィキペディア(http://en.wikipedia.org/wiki/Variants_of_PCR#Isothermal_amplification_methods)では、
「PCRの代わりに使用できるいくつかのDNA増幅プロトコルが開発された。
ヘリカーゼ依存増幅は従来のPCRと似ているが、変性およびアニーリング/伸長ステップを繰り返すのではなく、一定の温度を使用する」のように説明されている。DNAを巻き戻す酵素であるDNAヘリカーゼは、熱変性の代わりに使用される。
PAN-ACはまた、増幅に等温条件を使用し、生細胞の分析に使用できる。
NEARと呼ばれるニッキング酵素増幅反応は、等温で、ポリメラーゼとニッキング酵素を使用して一定温度でDNAを複製する。
リコンビナーゼポリメラーゼ増幅(RPA):この方法では、リコンビナーゼを使用して、相同性に基づいてプライマと二本鎖DNAを特異的にペアリングし、サンプルに存在する定義済みのDNA配列からのDNA合成を指示する。ターゲット配列の存在がDNA増幅を開始させ、DNAの熱または化学的融解は必要ない。反応は急速に進行し、数ターゲットコピーから通常5~10分以内に検出可能なレベルまで特異的なDNA増幅が起こる。反応システム全体は乾燥した製剤として安定しており、冷蔵する必要はない。RPAは、様々なラボ用途でPCR(ポリメラーゼ連鎖反応)の代わりに使用でき、ユーザは独自のアッセイを設計できる。
【0020】
テストサンプル内の遺伝的ターゲットの検出
DNA増幅後に、テスト溶液中にターゲット遺伝子配列のコピーが多数存在する。診断テストアッセイでは、ターゲットシーケンスにリンクする特定のマーカを設計でき、結合すると、テストチューブの外部で検出できる光信号または光変化を提供する。この光信号は、特定の光波長でのサンプルの光吸収の変化によって測定されるサンプルの色および/または不透明度の変化であってもよい。出力信号はまた、サンプルからの直接光出力によるものであってもよく、マーカが、ターゲット結合事象によって活性化されると、生物発光光出力の放射を誘発する。光学的検出出力はまた、溶液の蛍光の変化によるものであってもよく、これは蛍光マーカビーコンからであってもよい。この場合、各マーカ分子は、蛍光原子または原子配列に近接した蛍光消光剤で構成される。このマーカ分子は、テスト溶液内のターゲットDNAシーケンスに選択的に結合すると、消光剤とフルオロフォアが分離され、フルオロフォアの作用によって強い蛍光信号を検出できるように構成される。この配置では、ターゲット溶液の全体的な蛍光強度は、テスト溶液中のターゲット一般物質の相対量を示す。次に、この信号を使用して診断テストの基礎を形成し、テスト対象のサンプル内のターゲット材料の有無と相対量を決定することができる。
【0021】
制御チャネルと多重化
単一のテストウェル内で、いくつかの異なるターゲット遺伝子DNAシーケンスへの結合に基づいて光出力を提供するいくつかの異なるマーカを存在させることが可能である。この場合、いくつかの異なるセンサが使用されるか、複数の選択的出力を持つセンサが使用される。例えば、2チャネルシステムでは、2つの異なる蛍光マーカを使用できる。これらは、それぞれの蛍光マーカに固有のそれぞれの周波数範囲で発光を検出してチャネルを区別できるように構成された2つの異なる蛍光センサによって検出される。
【0022】
この手法は、テストプロセスが正しく実行された場合に制御ターゲットが常に存在するようにテストアッセイ化学が構成されている制御チャネルを提供するために使用できる。この場合、制御チャネルの出力は、テストプロセスがシステムによって正しく実行されたことを確認し、システムによって測定された他のチャネルによって取得されたテスト結果が有効であることを確認するために使用される。
【0023】
この手法は、多重化されたテストとして各テストウェル内の複数のターゲット遺伝子シーケンスをテストするためにも使用できる。
【0024】
複数のテストウェルを使用できる。各ウェルは、異なる構成の増幅化学と異なるターゲットマーカのセットを実行する。制御チャネルは、1つまたは複数のウェルで動作し、テストの他のウェルで動作するテストをカバーすることができる。この配置により、多重化に対する異なる手法として、単一のサンプルに対して多くのテストを行うことができる。
【0025】
従来技術の診断テストシステムおよび装置、特に核酸増幅および検出機器は、典型的には大きく、複雑であり、費用がかかり、機器とは独立して行われなければならないサンプル調製ステップを必要とする。これらの準備手順では、通常、訓練を受けた技術オペレータが必要であり、このオペレータとテスト準備環境は、体液や感染性物質などの危険なサンプルにさらされる可能性があり、プロセスは、流出や不適切な試薬の追加など、誤った手動操作の危険にさらされる。
【0026】
次に、得られたテストサンプルを正確にサブサンプリングして、通常は熟練したピペット操作である手動転送ステップで転送する必要がある。この手法には、訓練を受けた技術オペレータと、多数の個別のチューブおよび移送装置が必要であり、これらはすべてサンプルによって汚染され、正しく処理して個別に廃棄する必要がある。
【0027】
これらの従来技術の手法では、テストサンプルは、サンプル調製およびテスト機器内のテストチューブへの移送のプロセス中に環境からシールされない。このサンプルへの曝露は、ユーザや他の人に感染因子のリスクをもたらす可能性があり、またテスト機器とテスト領域を汚染し、その後のテストで誤った診断結果をもたらす可能性がある。
【0028】
従来技術の1つまたは複数の困難を軽減する、または少なくとも有用な代替物を提供する診断テストシステムおよび方法を提供することが望ましい。
【0029】
本明細書中で引用されているウィキペディアのテキストは、CC-BY-SAの下でリリースされている。http://creativecommons.org/licenses/by-sa/3.0を参照されたい。
【発明の概要】
【0030】
本発明のいくつかの実施形態によれば、診断テストシステムが提供され、診断テストシステムは、
診断テストアセンブリと、
診断テストアセンブリを受け入れ、診断テストアセンブリと相互作用して、診断テストアセンブリ内の生物学的サンプルまたは環境サンプルに対して診断テストを実行する診断テスト装置と、
を含み、
診断テストアセンブリが、
サンプル調製リザーバであって、サンプル流体を調製するためにサンプル調製リザーバに収容されたサンプル調製流体中に生物学的サンプルまたは環境サンプルを受け入れ、サンプル調製リザーバが、生物学的サンプルまたは環境サンプルを運ぶスワブを用いて、サンプル調製リザーバ内のサンプル調製流体を攪拌し、かつスワブからサンプル調製流体中に生物学的サンプルまたは環境サンプルを洗い落とすことができるように、閉塞されていない開放容積部を最初に提供する、サンプル調製リザーバと、
生物学的サンプルまたは環境サンプルを受け入れた後のサンプル調製リザーバに挿入するためのサンプル供給機構と、
生物学的サンプルまたは環境サンプルおよびサンプル供給機構を受け入れた後のサンプル調製リザーバをシールするためのクロージャと、
サンプル調製リザーバに連結された少なくとも1つの診断テストリザーバと、
サンプル調製リザーバと少なくとも1つの診断テストリザーバとの間の流体移動を防止するために、サンプル調製リザーバと少なくとも1つの診断テストリザーバとの間にある少なくとも1つのシールと、を含み、
サンプル供給機構が、少なくとも1つのシールを破壊して、サンプル流体がサンプル調製リザーバから少なくとも1つの診断テストリザーバに入るのを可能にするように、かつ診断テストおよび検出を行うために所定の部分量のサンプル流体をサンプル調製リザーバから少なくとも1つの診断テストリザーバに供給する一方で、サンプル調製リザーバと少なくとも1つの診断テストリザーバとの間のさらなる流体移動を防止するように動作可能である。
【0031】
いくつかの実施形態では、サンプル調製リザーバにクロージャを適用する動作によってまた、サンプル供給機構がサンプル調製リザーバに挿入されるように、サンプル供給機構がクロージャに取り付けられる。
【0032】
いくつかの実施形態では、ユーザによる単一の動作により、サンプル供給機構が、少なくとも1つのシールを破壊し、かつサンプル流体をサンプル調製リザーバから少なくとも1つの診断テストリザーバに供給する。
【0033】
いくつかの実施形態では、ユーザによる単一の動作が、サンプル調製リザーバにクロージャを持続的にねじ込む動作であり、ねじ込む動作が、サンプル供給機構の動作を引き起こし、かつサンプル調製リザーバをシールする。
【0034】
いくつかの実施形態では、診断テスト装置が、サンプル供給機構の動作の完了を判定し、判定に応じて、少なくとも1つの診断テストリザーバの内容物の診断テストを進めるように構成される。
【0035】
いくつかの実施形態では、クロージャがねじ山を含み、診断テスト装置が、クロージャの回転の程度および/またはねじ山の進行を判定するように構成された少なくとも1つの検知構成要素を含み、診断テスト装置が、少なくとも1つの検知構成要素がクロージャの動作が完了していないと判定した場合には、ユーザにクロージャの動作を完了するように促し、かつクロージャの動作が完了したと判定した場合には、診断テストの次の段階に自動的に進むように構成される。
【0036】
いくつかの実施形態では、診断テストアセンブリが、使用前にサンプル調製流体をサンプル調製リザーバ内にシールし、かつ生物学的サンプルまたは環境サンプルをサンプル調製リザーバに収容されたサンプル調製流体に加えることを可能にするために取り外される第2のクロージャを含む。
【0037】
いくつかの実施形態では、サンプル供給機構が、
少なくとも1つのシールに対する第2のシールを形成して、所定の部分量のサンプル流体を内部にトラップする供給チャンバと、
少なくとも1つのシールに少なくとも1つの開口部を形成することにより少なくとも1つのシールを破壊する穿刺部材と、
供給チャンバの内面と共にスライドシールを形成するプランジャ機構と、を含み、スライドシールが、供給チャンバの内面に沿ってスライドして、所定の部分量のサンプル流体を供給チャンバから少なくとも1つの開口部を通じて少なくとも1つの診断テストリザーバに供給するように構成される。
【0038】
いくつかの実施形態では、供給チャンバが外面を含み、外面が、外面から延びる相互に離間したチャンバ位置決め特徴部を有し、チャンバ位置決め特徴部が、供給チャンバをサンプル調製リザーバの中心に位置合わせして、サンプル供給機構がサンプル調製リザーバに挿入される際に、サンプル流体がチャンバ位置決め特徴部の間を流れることを可能にするように構成される。
【0039】
いくつかの実施形態では、サンプル供給機構が、ユーザによって実行される単一の動作がサンプル供給機構の2つの動作段階を引き起こすように構成され、2つの動作段階が、所定の部分量のサンプル流体を供給チャンバ内にトラップする第1の動作段階と、サンプル流体が供給チャンバから供給される第2の動作段階と、を含む。
【0040】
いくつかの実施形態では、サンプル供給機構が、第2の動作段階を可能にするために再構成または破壊される力逐次制御構成要素を含む。
【0041】
いくつかの実施形態では、力逐次制御構成要素が、サンプル供給機構の動作が第1の動作段階から第2の動作段階に進むことを可能にするために破壊するように構成された破壊可能な構成要素を含む。
【0042】
いくつかの実施形態では、力逐次制御構成要素が、折り畳み可能なまたは圧壊可能なスペーサを含み、スペーサが、第1の動作段階では、供給チャンバを押圧して、供給チャンバにシールさせ、また第2の動作段階では、シールを維持するように折り畳まれまたは圧壊され、穿孔動作を実行し、供給チャンバからサンプル流体を供給するようにプランジャ機構を動作させる。
【0043】
いくつかの実施形態では、サンプル供給機構がサンプル調製リザーバに挿入される際に、サンプル流体が、供給チャンバの外側の周りに流された後に供給チャンバに流入可能となるように、供給チャンバが最初に構成され、供給チャンバの外側の周りを流れるサンプル流体が、粒子と破片を保持および/またはトラップし、および/または診断テストもしくは増幅プロセスを阻害または妨害する可能性のあるサンプル流体の成分に結合するか、または成分を捕捉する生物学的または化学的成分を組み込むフィルタまたは多孔質充填材を通って流される。
【0044】
いくつかの実施形態では、サンプル調製リザーバが、サンプル調製流体と共に磁性粒子を収容し、磁性粒子の表面が、磁性粒子がサンプル流体内で混合されたときに、生物学的サンプルまたは環境サンプルの少なくとも1つの所定のターゲット物質と結合し、ターゲット物質を捕捉するようにコーティングまたは機能化され、サンプル供給機構が、サンプル供給機構がサンプル調製リザーバに挿入される際に、サンプル流体を供給チャンバを通じて流すように構成され、サンプル流体内に含まれ、かつターゲット物質を捕捉した磁性粒子が、供給チャンバの内面に引き付けられ保持されるように、1つまたは複数の磁石が供給チャンバの内面に近接して配置され、それにより、供給チャンバの内面と共にスライドシールを形成するプランジャ機構が、内面にされた磁性粒子を収集し、磁性粒子を少なくとも1つの診断テストリザーバに供給して、少なくとも1つの診断テストリザーバに供給された所定の部分量のサンプル流体内の少なくとも1つの所定のターゲット物質の濃度を増加させる。
【0045】
いくつかの実施形態では、クロージャおよびサンプル調製リザーバの少なくとも一方が、サンプル流体が診断テストアセンブリ内にシールされたままであるように、サンプル調製リザーバからのクロージャの取り外しを防止または少なくとも阻害するように構成される。
【0046】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの診断テストリザーバが少なくとも2つの診断テストリザーバを含む。
【0047】
いくつかの実施形態では、少なくとも2つの診断テストリザーバが、それぞれの異なる診断テストを行うために、および/またはそれぞれの異なるターゲットエンティティを検出するために選択された異なる診断テスト試薬および/または検出試薬を収容する。
【0048】
いくつかの実施形態では、サンプル調製リザーバが、細胞溶解を含むサンプル調製のための試薬を収容し、少なくとも2つの診断テストリザーバの少なくとも1つが、診断テスト装置によって測定され得る光出力により、対応する診断テスト結果を決定することが可能となるように、核酸増幅および特定のマーカの結合のために構成される。
【0049】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの診断テストリザーバが、対応するテスト結果を、対応する少なくとも1つの診断テストリザーバ内の1つまたは複数の特定の波長での放射および/または吸収、および/または濁度の変化として視覚的に観察できるように透明である少なくとも1つの診断テストリザーバを含む。
【0050】
いくつかの実施形態では、少なくとも1つの診断テストリザーバのうちの少なくとも1つが透明であり、診断テスト装置が、少なくとも1つの診断テストリザーバ内の1つまたは複数の波長での放射および/または吸収の変化を検出または測定することにより、少なくとも1つの診断テストリザーバにおけるテスト結果を判定するように構成され、診断テスト装置が、任意選択で、少なくとも1つの診断テストリザーバを照明して、検出または測定を強化し、または行うように構成される。
【0051】
いくつかの実施形態では、診断テスト装置および診断テストアセンブリがそれぞれ、位置合わせ特徴部および支持特徴部を含み、位置合わせ特徴部および支持特徴部が、診断テストアセンブリが診断テスト装置に対して所定の位置合わせで受け入れられることを確実にするために、かつ、生物学的サンプルまたは環境サンプルおよびサンプル供給機構を内部に受け入れた後でサンプル調製リザーバにクロージャが適用されたときに位置合わせを維持するために、相互に係合するように構成される。
【0052】
いくつかの実施形態では、診断テスト装置が、1つまたは複数の構成要素を含み、構成要素が、変化するおよび/または移動する磁場を診断テストアセンブリに適用して、サンプル調製リザーバおよび少なくとも1つの診断テストリザーバの少なくとも一方の中で磁性粒子の対応する動きを引き起こし、それにより、内部で生物学的サンプルまたは環境サンプルとサンプル調製流体の混合を引き起こすように構成される。
【0053】
いくつかの実施形態では、診断テスト装置および診断テストアセンブリが、診断テスト装置がサンプル調製リザーバおよび少なくとも1つの診断テストリザーバの温度を個々に制御できるように構成される。
【0054】
いくつかの実施形態では、診断テスト装置が、診断テストアセンブリの少なくとも一部の1つまたは複数の画像を表す画像データを生成するように構成された1つまたは複数の画像センサを含み、
画像が、
(i)少なくとも1つの診断テストリザーバとサンプル調製リザーバのうちの少なくとも1つの内部の流体分布であって、診断テスト装置が、サンプル流体の供給を監視するために画像データを処理し、監視によって供給が完了したと判定された場合には、診断テストの次の段階に進むように構成される、流体分布と、
(ii)少なくとも1つの診断テストリザーバに収容された流体体積であって、診断テスト装置が、画像データを処理して、供給された流体の体積誤差を補償して、テスト結果の決定を改善できるように構成される、流体体積と、の少なくとも一方を表す。
【0055】
いくつかの実施形態では、診断テスト装置が、並進ステージに取り付けられた1つまたは複数の光学センサを含み、並進ステージが、診断テストアセンブリの1つまたは複数の選択された診断テストリザーバからの光吸収または発光または蛍光を光学センサが測定できるように、診断テスト装置のコントローラの制御下にある。
【0056】
いくつかの実施形態では、診断テスト装置が、診断テストアセンブリからサンプル流体が漏れた場合の汚染を防ぐために、診断テストに続いて診断テストアセンブリに収容されたサンプルを変性させるための少なくとも1つの紫外線(UV)放射源を含む。
【0057】
本発明のいくつかの実施形態によれば、診断テスト方法が提供され、診断テスト方法は、
診断テストアセンブリ内の生物学的サンプルまたは環境サンプルに対して診断テストを実行するように構成された診断テスト装置の受け入れポートに診断テストアセンブを配置するステップと、
サンプル流体の調製のために、生物学的サンプルまたは環境サンプルを診断テストアセンブリのサンプル調製リザーバに収容されたサンプル調製流体に加えるステップと、
加えるステップの後に、サンプル供給機構をサンプル調製リザーバに挿入し、サンプル調製リザーバにクロージャを適用するステップと、
サンプル調製リザーバと診断テスト装置の少なくとも1つの診断テストリザーバとの間の少なくとも1つのシールを破壊して、サンプル流体がサンプル調製リザーバから少なくとも1つの診断テストリザーバに入ることを可能にするように、かつ診断テストおよび検出のために所定の部分量のサンプル流体をサンプル調製リザーバから少なくとも1つの診断テストリザーバに供給する一方で、サンプル調製リザーバと少なくとも1つの診断テストリザーバとの間のさらなる流体移動を防止するように、サンプル供給機構を動作させるステップと、
を含む。
【0058】
いくつかの実施形態では、サンプル調製リザーバにクロージャを適用するステップによってまた、サンプル供給機構がサンプル調製リザーバに挿入されるように、サンプル供給機構がクロージャに取り付けられる。
【0059】
いくつかの実施形態では、ユーザによる単一の動作が、サンプル供給機構の動作を引き起こし、単一の動作が、サンプル調製リザーバにクロージャを持続的にねじ込む動作であり、ねじ込む動作が、サンプル供給機構の動作を引き起こし、かつサンプル調製リザーバをシールする。
【0060】
本明細書には、以下を含む診断テスト機器または装置も記載されている。
プラスチックカートリッジアセンブリを受け入れるためのアクセスポートを有する機器ハウジング
装置に挿入されたカートリッジの挿入または存在を検出するためのセンサまたはスイッチ
ソフトウェアプログラムを実行し、将来のリコールおよび使用のためにデータを保存するための、コントローラ電子機器および関連する内部電子機器、マイクロプロセッサ、およびメモリ
USB、シリアルまたはイーサネット(登録商標)接続の周辺機器インターフェースおよび外部メモリデバイスを接続するための電気インターフェースコネクタ
機器、カートリッジのシーケンス処理機能を提供し、テスト結果の解釈決定のための診断テスト測定値を取得するための組み込みソフトウェア
カートリッジアセンブリの上部サンプルチャンバセクションの加熱と温度制御を提供する温度制御されたサンプルチャンバヒータブロック
挿入されたカートリッジの上部接点固有増幅テストウェルの加熱と温度制御を提供する温度制御されたヒータブロックであり、このブロックは、温度制御を含む制御された温度をカートリッジウェル内の流体に適用できる。
テストの実行中およびテストの完了時に、テストウェル内の試薬および追加のサンプル流体反応の光吸収、蛍光、または生物発光特性を検出および測定するためのセンサ
機器装置は、1つまたは複数の光学センサを組み込むことができ、これらのセンサをテストウェルの列に沿ってスキャンして、1つまたは複数の異なるセンサを使用して各テストウェルの多数の測定値を記録することができる。
【0061】
任意選択で、機器コントローラは、リモートサーバなどの装置の物理的な本体から離れて配置され、インターネットなどの通信ネットワークを介して装置の動作を管理および制御することができる。
【0062】
任意選択で、センサの1つまたは複数は同軸蛍光センサで、発光ダイオードからの光学的にフィルタされた発光、または選択的な波長範囲のレーザ照明がセンサレンズから放射される。この照明は、テストウェル内のサンプルの光学的励起を引き起こし、同じレンズは、異なるシフトされた波長でサンプルからの蛍光発光も捕捉する。このサンプルの蛍光発光が測定され、診断テスト結果の決定に使用される測定値を形成する。
【0063】
任意選択で、1つまたは複数のセンサが、テストサンプルを光学的に励起する分離励起照明光源と、結果として生じる蛍光発光を測定する分離センサを使用して、各テストウェルに含まれるサンプル内の蛍光を検出する。
【0064】
任意選択で、1つまたは複数のセンサが特定の光学照明波長範囲の反射または透過を使用して、各テストウェル内に含まれるテストサンプル内の光学反射または吸収を測定する。
【0065】
任意選択で、センサの1つまたは複数がテストサンプルからの発光を測定する。この発光は、テストサンプル内のルミネセンスまたは生物発光によって引き起こされる。
【0066】
任意選択で、センサは一定の速度ですべてのウェルを通過してスキャンされ、多数の測定値が取得される。この測定データセットのその後の処理により、各テストウェルに割り当てる測定値が決定される。この分析では、各測定の相対位置や取得時間などの特性と、取得した測定を含む補間曲線を使用した局所的ピークを考慮する。
【0067】
任意選択で、機器装置は1つまたは複数の紫外線光源を組み込んでおり、この紫外線照明は機器コントローラによってオンまたはオフにすることができる。
【0068】
任意選択で、機器装置は、蛍光または光吸収センサの視野内に1つまたは複数の基準ターゲットを組み込んでいる。
【0069】
カートリッジ
診断テストカートリッジには、1つまたは複数の診断テストリザーバが含まれ、これは、便宜上、分離壁とカートリッジ内のサンプル調製リザーバに密接に結合された「テストチューブ」とも呼ばれる。サンプル調製リザーバは、結合されたテストチューブから完全にシールされており、通常、サンプル調製流体と取り外し可能なクロージャがあらかじめ充填された状態で供給される。
【0070】
使用中、テストカートリッジはテスト装置内で支持および加熱され、取り外し可能なクロージャが取り外されてサンプルが追加される。サンプルは、適切な診断テストおよびテスト表示化学試薬が結合されたテストチューブ内に組み込まれている任意の生物学的または化学的サンプルであり得る。
【0071】
テストカートリッジには、供給機構が取り付けられた追加のキャップが提供される。この追加のキャップには供給機構が組み込まれており、最初のキャップを取り外してサンプルを追加した後に取り付けられる。追加のキャップと供給機構が挿入され、キャップを閉めるなどの操作によってキャップが閉じられると、供給機構はサンプルチャンバのベースに穴を開け、測定された量の調製されたサンプル流体を1つまたは複数のテストチューブに供給する。このキャップは、カートリッジアセンブリ内のサンプルを閉じてシールする。
【0072】
あるいは、第1のキャップは、取り外されると、別個の操作でそれに取り付けられた供給機構を有することができ、付属の供給機構を備えた追加のキャップを形成し、供給機能を操作してカートリッジを閉じる準備ができる。
【0073】
任意選択で、サンプルが追加された後に、供給機構自体が直接挿入され、次にキャップが取り付けられ、キャップを閉めるなどのこのキャップを閉じる動作により、供給機構が作動し、カートリッジが閉じる。
【0074】
カートリッジ動作
テストサンプルの追加を可能にする取り外し可能なクロージャまたはキャップを備えたテストカートリッジであり、カートリッジには、サンプル調製を支援するバッファまたは溶解溶液などのサンプル調製流体を含むサンプル調製リザーバが組み込まれており、サンプル細胞内からのターゲットDNA物質の分離を含むことができる。カートリッジのサンプル調製流体リザーバセクションは閉じた容積部であり、リザーバと結合したテストチューブの間の別の方法でシールされた壁の穿孔を通して部分量が供給されるまで、サンプル調製溶液を確実に保持する。
【0075】
診断テストリザーバと接触する金属またはその他の熱伝導ブロックをサポートするテスト機器。ブロックに取り付けられた単一または複数のフィードバック温度センサを使用して、電子制御下で制御された温度。この加熱ブロックは、ターゲットDNAを露出させるためにサンプル内の材料でサンプルの化学反応または酵素反応を得る目的で、プラスチックウェルの壁を通して診断テストリザーバの流体内容物の温度を加熱および制御するように構成されている。
【0076】
任意選択で、金属またはその他の熱伝導性ブロックがカートリッジの流体体積と接触し、ブロックに取り付けられた単一または複数のフィードバック温度センサを使用して、電子制御下で制御された温度を提供する。このブロックは、テストウェルに流入する前に、サンプルの準備と細胞溶解のために、カートリッジの壁を通して内部テスト流体を既知の温度に加熱するように構成されている。
【0077】
任意選択で、温度センサには1つまたは複数の赤外線非接触温度センサを含めることができ、これらのセンサは、反応テストウェル内の流体のブロック温度または実際の温度を読み取るように構成されている。
【0078】
診断テストリザーバまたは「テストウェル」または任意選択で複数のテストウェルと接触する金属製またはその他の熱伝導性ブロックは、ブロックに取り付けられた単一または複数のフィードバック温度センサを使用して、電子制御下で制御された温度を提供する。この加熱されたブロックは、等温またはPCR核酸、DNA増幅を含むテスト反応を得るために、プラスチックウェルの壁を通してテストウェルの流体内容物の温度を加熱および制御するように構成されている。
【0079】
UV照明
テストの完了時に、テストウェルの内容物を含むテストカートリッジの内容物を汚染除去および変性するために、紫外線照明が使用される。
【0080】
任意選択で、紫外線照射は、テストの完了時に、各テストウェル内の核酸増幅の生成物を含む、遺伝子核酸生成物を変性および分解するために使用される。カートリッジが後で損傷したり漏れたりした場合にアンプリコンによるシステムまたはその環境の汚染を防止し、この材料が誤って後続のテストに導入されて誤ったテスト結果が引き起こされるのを防ぐための、紫外線照射による遺伝子DNA材料のこの変性および分解。
【0081】
任意選択で、紫外線照明は、複数のテストウェルに沿って機械的にスキャンできるキャリッジ上の検出センサと共に運ばれる。この構成により、制御された汚染除去スキャン中に、単一の集束紫外線源が各ウェルを順番に照明することができる。
【0082】
任意選択で、紫外線源は、1つまたは複数の紫外線発光ダイオードで構成される。
【0083】
光学測定
任意選択で、光学測定センサのセットは、テストウェルの光学窓またはポートとその周囲のヒータブロックを通してテストウェルの内容を表示し、光学吸収、蛍光または生物発光の測定値を生成することができる。
【0084】
任意選択で、光学センサはキャリッジに取り付けられ、テストウェルに沿って直線的に移動して、ウェルのセット内の各ウェルをスキャンして光学測定値を提供する。
【0085】
任意選択で、リニアスキャンは一定速度でキャリッジによって実行され、各テストウェルに関連付けられたピーク読み取り値または読み取り値の平均が、ウェルの光学読み取り値として割り当てられる。
【0086】
任意選択で、キャリッジは、ステッパモータで駆動できるリニアスライド構成で移動し、ソフトウェア制御下での正確な位置および動作制御と機器コントローラへの電気的インターフェースを提供する。
【0087】
任意選択で、ウェル測定値を取得するために使用されるセンサが基準サンプルの測定値も取得できるように、基準サンプルのセットが機器内に取り付けられる。
【0088】
任意選択で、基準サンプルの測定時に取得された特定のセンサ測定値のセットを機器コントローラ内の不揮発性メモリの場所に保存し、これらの保存された読み取り値を将来使用して、後続の読み取り値が各センサと基準サンプルの保存された読み取り値の特定の許容範囲内にあることを確認できるようにする。
【0089】
任意選択で、機器コントローラが機器のセルフテストを実行する目的で、機器内に取り付けられた基準物質のセンサの読み取り値を、同じサンプルの以前に保存された読み取り値と比較する機能。
【0090】
撮像センサと画像解析
任意選択で、コードマーク、バーコード、またはQRコード(登録商標)などの2次元コードが、カートリッジアセンブリの表面に設けられる。
【0091】
任意選択で、コード化されたマークは、レーザマーキング、レーザ変色、またはレーザエッチングによってカートリッジのプラスチック表面に印刷される。
【0092】
任意選択で、機器内に組み込まれた照明と組み合わせて機器内に組み込まれた画像またはカメラセンサは、カートリッジ上の印刷されたコードの画像を取得し、ソフトウェアでの画像解析プロセスを通じて、エンコードされた情報を抽出する。
【0093】
任意選択で、印刷されたコード内にエンコードされた情報には、テストID、テストシーケンスの詳細とカートリッジを実行するために適用される温度、固有のカートリッジシリアル番号、カートリッジの製造バッチ番号、バッチ固有の較正パラメータ、カートリッジの製造日、およびその後にカートリッジを使用してはならない有効期限などのデータの1つまたは複数が含まれる。
【0094】
任意選択で、画像センサを使用して、シーケンスの進行を確認し、カートリッジ内のテスト試薬の正しい放出とフローを確認して、ソフトウェアでテストの完全性を確認し、テスト結果の信頼性と安全性を向上させることができる。コントローラは画像センサを使用して、カートリッジ内の内部流体と機構部品を観察し、装置コントローラ内の画像解析ソフトウェアを使用して制御解釈を計算する。
【0095】
任意選択で、画像センサは、供給機構の動作と位置を確認して、カートリッジの不完全または正しい完全な動作を確認し、操作を完了するか、または、完了時に、装置プロセスの次のステップに自動的に進み、最終的なテスト結果を取得するようにユーザに促す。
【0096】
任意選択で、液体試薬は可視染料で着色され、テスト出力は蛍光信号であり、試薬の色はテスト出力に影響しないが、この色を使用してカートリッジ内のフローと供給レベルを視覚的に追跡することができる。
【0097】
任意選択で、機器内の画像センサは、カートリッジの透明なセクション内の着色試薬の画像を取り込み、特定のフロー要件が正しく機能していることをソフトウェア画像解析で確認する。
【0098】
任意選択で、画像センサによって取得された画像データと後続の画像解析は、ソフトウェアコントローラによって使用され、各テストチューブ内の供給されたサンプル流体のレベルを決定し、このレベルを使用してサンプル流体の供給プロセスが適正に完了したことを判定する。機器内のソフトウェアコントローラは、テストチューブ内の流体のレベルを使用して、供給操作の許容誤差についてテスト結果を補償することもできる。ソフトウェア内で、各テストチャンバの流体のレベルは、チューブの数学モデルを使用するか、ルックアップテーブルを使用することにより、体積に変換される。供給された量の流体は、供給された流体中に溶解すると、診断テストリザーバ内のテスト試薬の濃度に影響を与える可能性がある。供給されたサンプル流体の体積を測定することにより、各テストチューブ内の試薬の濃度が計算される。このテスト結果の影響は、以前に実施された一連の実験から、またはテスト反応のモデルから決定することができ、テスト結果に対するテスト試薬濃度の影響、および結果を解釈するためのテストの時系列測定の解釈は、装置ソフトウェア内で調整または補償することができる。
【0099】
任意選択で、画像センサと画像解析を含む装置センサによって確認された診断テストの進行ステップの詳細が、関連する電子記録またはテストの印刷された記録に含まれ、この情報を後続のテスト結果レビューアに提供し、テストの正しい動作の信頼と証拠を改善する。
【0100】
任意選択で、カートリッジには、サンプル調製と核酸増幅、遺伝子配列結合、および等温核酸増幅法を使用した光出力に必要な化学試薬と生物学的試薬が組み込まれている。
【0101】
任意選択で、カートリッジには、サンプル調製、核酸増幅、およびポリメラーゼ連鎖反応PCR、核酸増幅法を使用した遺伝子配列検出に必要な化学的および生物学的試薬が組み込まれている。
【0102】
本発明のいくつかの実施形態について、添付の図面を参照して、単なる例として以下で説明する。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1】出荷用キャップが取り付けられた、本発明の一実施形態による診断テストアセンブリまたはカートリッジを示す図である。
図2図1のカートリッジの側断面図である。
図3】出荷用キャップが取り外されたカートリッジと、サンプル材料を堆積させるためにカートリッジのサンプル調製リザーバの開放容積部に挿入されたスワブと、を示す図である。
図4】サンプル調製リザーバに挿入されようとしているキャップおよび供給機構を含む供給キャップアセンブリを示す図である。
図5】サンプル調製リザーバへの挿入中のキャップアセンブリの側断面図である。
図6】ユーザがキャップにねじ込み動作を適用するときに、サンプル調製リザーバの内部ベースに接触してそれとのシールを形成した後の供給機構の供給インサートを示す側断面図である。
図7】供給キャップアセンブリの代替形態を示す図であり、供給機構が、力逐次制御を提供し、供給インサートがサンプル調製リザーバの内部ベースとのシールを確実に形成するための折り畳み可能なスペーサを含む。
図8図7の供給キャップアセンブリの分解図である。
図9】ねじキャップがユーザによって完全に係合された後の、供給機構の供給ロッドを示す側断面図であり、カートリッジのサンプル調製リザーバと診断テストリザーバとの間のシールの穿孔を引き起こし、サンプル流体をサンプル調製リザーバから診断テストリザーバに供給する。
図10図9のようにキャップアセンブリに完全に係合した後のカートリッジの外観図である。
図11】カートリッジが所定の位置にあり、位置合わせされ、診断テスト機器で支持されている診断テストシステムを示す図である。
図12図11の機器の分解図であり、ハウジング、電子ディスプレイモジュール、上部および下部ヒータモジュールおよび検出センサを備えたカートリッジインターフェースコア、ならびに統合された電子コントローラを備えたベースアセンブリを含む、機器の構成要素を示す。
図13】内部回路基板と構造プレートに取り付けられた上部および下部のヒータモジュールと検出センサを備えた機器のカートリッジインターフェースコアを示す図である。
図14】機器の上部および下部ヒータブロック内の単一のテストリザーバカートリッジを示す図であり、機器の他の構成要素は示していない。
図15図14に示す構成要素の断面図である。
図16】単一のテストリザーバカートリッジおよび機器内に取り付けられた光学センサに対する診断テストリザーバの関係を示す図であり、機器の他の多くの構成要素は示していない。蛍光検出の例として、センサの出口レンズに出入りする同軸励起および光収集のフィールドを表す光学フォーカルコーンが含まれ、テストリザーバからの光学測定値の取得を示している。
図17】単一のテストリザーバカートリッジおよび機器内に取り付けられた光学センサに対する診断テストリザーバの関係を示す図であり、機器の他の多くの構成要素は示していない。蛍光検出の例として、センサの出口レンズに出入りする同軸励起および光収集のフィールドを表す光学フォーカルコーンが含まれ、テストリザーバからの光学測定値の取得を示している。
図18】2つの診断テストリザーバを有するカートリッジの一実施形態を示す図である。
図19図18の二重テストリザーバカートリッジの側断面図である。
図20】出荷用キャップが取り外された図18および図19のカートリッジと、サンプル材料を堆積させるために二重テストリザーバカートリッジのサンプル調製リザーバの開放容積部に挿入されたスワブと、を示す図である。
図21】キャップを含むキャップアセンブリと、二重テストリザーバカートリッジのサンプル調製リザーバに挿入されようとしている二重テストリザーバ供給機構の一実施形態と、を示す図である。
図22】二重テストリザーバ供給機構を示す図であり、その供給インサートがその供給ロッドから分離されている。
図23】供給機構を備えた二重テストリザーバカートリッジの側断面図であり、(i)部分的に挿入されている。
図24】供給機構を備えた二重テストリザーバカートリッジの側断面図であり、(ii)さらに挿入されて、供給インサートがカートリッジのベースに固定されているが、穿孔および供給の前である。
図25】供給機構を備えた二重テストリザーバカートリッジの側断面図であり、(iii)完全に挿入されて、穿孔および供給動作が完了している。
図26図25のようにキャップアセンブリを完全に係合させた後の二重テストリザーバカートリッジの外観図である。
図27】二重テストリザーバカートリッジおよび二重テストリザーバカートリッジが定位置に配置された状態で動作するように構成された機器の一実施形態の図である。
図28図27の機器の内部コアを示す図である。
図29】二重テストリザーバカートリッジおよび二重テストリザーバ機器内に取り付けられた光学センサに対する診断テストリザーバの関係を示す図であり、機器の他の多くの構成要素は示していない。蛍光検出の例として、センサの出口レンズに出入りする同軸励起および光収集のフィールドを表す光学フォーカルコーンが含まれ、テストリザーバからの光学測定値の取得を示している。2つのテストリザーバからの読み取りを可能にするために、センサが可動プレートに取り付けられており、センサのスキャン動作を制御するリニアベアリングとステッパモータが図29の端面図に示されている。センサは、リニアベアリングに取り付けられ、モータ駆動の送りねじに取り付けられているプレートに取り付けられており、これにより、カートリッジ内の2つの診断テストリザーバのそれぞれについて、各センサから光学測定値を取得することができる。
図30】二重テストリザーバカートリッジおよび二重テストリザーバ機器内に取り付けられた光学センサに対する診断テストリザーバの関係を示す図であり、機器の他の多くの構成要素は示していない。蛍光検出の例として、センサの出口レンズに出入りする同軸励起および光収集のフィールドを表す光学フォーカルコーンが含まれ、テストリザーバからの光学測定値の取得を示している。2つのテストリザーバからの読み取りを可能にするために、センサが可動プレートに取り付けられており、センサのスキャン動作を制御するリニアベアリングとステッパモータが示されている。センサは、リニアベアリングに取り付けられ、モータ駆動の送りねじに取り付けられているプレートに取り付けられており、これにより、カートリッジ内の2つの診断テストリザーバのそれぞれについて、各センサから光学測定値を取得することができる。
図31】デュアル診断テストリザーバ機器に挿入された後の、デュアル診断テストリザーバカートリッジを取り囲む2つのヒータブロックの外観図である。上部のヒータブロックはカートリッジのサンプル調製リザーバの温度制御を提供し、下部のブロックは2つのテストリザーバの温度制御を提供する。下部ブロックには光学ポートが組み込まれており、温度制御または温度サイクル下にあるテストリザーバの内容から光学測定値を取得することができる。下部ヒータブロックには光学ポートが組み込まれており、テストリザーバの内容物が制御された温度または温度プロファイルに維持されている間、テストリザーバの内容物の光学的励起および蛍光検出をポートを通じて実行することができる。
図32】デュアル診断テストリザーバ機器に挿入された後の、デュアル診断テストリザーバカートリッジを取り囲む2つのヒータブロックの断面図である。上部のヒータブロックはカートリッジのサンプル調製リザーバの温度制御を提供し、下部のブロックは2つのテストリザーバの温度制御を提供する。下部ブロックには光学ポートが組み込まれており、温度制御または温度サイクル下にあるテストリザーバの内容から光学測定値を取得することができる。下部ヒータブロックには光学ポートが組み込まれており、テストリザーバの内容物が制御された温度または温度プロファイルに維持されている間、テストリザーバの内容物の光学的励起および蛍光検出をポートを通じて実行することができる。
図33】機器の制御システムのブロック図である。
図34】機器のワークフローの流れ図である。
図35】テストリザーバ内のPCR増幅中の一連のリアルタイム測定として取り込まれた典型的な増幅曲線のグラフである。
図36】供給機構がカートリッジに押し込まれたときに混合を誘発する、図4図9のディスペンサインサートを通るおよびその周りの流体の流れを示す図である。
図37】分離した供給インサートを示す図である。
図38】供給インサートの代替実施形態を示す側断面図であり、インサートボアのベースがシールされ、サンプルおよびサンプル試薬流体は、それがカートリッジに押し込まれたときにインサートの外側バイパス領域を通ってのみ流れることができ、その後、インサートボアの上部に戻る。バイパス領域は、サンプル流体内の粒子を除去またはトラップし、これらがテスト容器に入るのを防ぐために、フィルタまたは多孔質材料またはフィラーを含むことができる。
図39】供給インサートのさらに別の実施形態を示す側断面図であり、アセンブリがカートリッジに押し込まれるとき、サンプル流体がインサートの内部ボアを通ってのみ流れることができる、この領域がブロックされているため、サンプル流体はインサートバレルをバイパスできない。また、インサートには、磁気ビーズの表面に捕捉されたDNAおよびRNAを収集および濃縮するためのボアの周りに磁石が含まれている。
【発明を実施するための形態】
【0104】
本発明の実施形態は、診断テスト装置(「機器」と呼ばれる)を含む診断テストシステムと、診断テスト機器で生物学的または環境サンプルの診断テストを実行するため使用される診断テストアセンブリ(参照の便宜上、「カートリッジ」とも呼ばれる)と、を含む。本明細書に記載されるように、カートリッジおよび機器は、一般的なテストラボの設備を必要とせずに、ユーザが操作するのが容易である。
【0105】
記載された実施形態では、診断テストアセンブリは、診断テストの前に製造された使い捨ての診断テストカートリッジの形で提供され、特定のセットの1つまたは複数の診断テストを実行するためにすべての前駆化学成分(すなわち試薬)をすでに組み込んでいる。診断テストアセンブリ/カートリッジは、環境からの汚染、ユーザまたは環境へのテスト材料の汚染、またはこれらの化学成分の干渉を引き起こしたり、その他の操作に影響を与えたりせずに安全に取り扱えるように構成されているカートリッジ、診断テスト機器との相互作用が必要である。
【0106】
本発明のいくつかの実施形態によるカートリッジおよび診断テスト機器の詳細を以下に説明する。特定のサンプル調製、増幅およびマーカ試薬をカートリッジに事前にロードすることにより、診断テストシステムは、1つまたは複数の診断テストの特定の所定のセットを実行するように構成でき、テスト結果の少なくとも1つの指標をユーザに提供する。物理的な構成は同じだが、ロードされた試薬が異なるカートリッジの異なるバージョンを製造して、幅広い種類のテストや診断アプリケーションに対応できる。いくつかの実施形態では、機器は、カートリッジの識別子(視覚的またはその他)から実行される診断テストのタイプを自動的に決定し、決定された診断テストを実行することができ、それらをユーザインターフェースディスプレイに表示することにより、および/またはそれを機器のいくつかの通信インターフェースのいずれかを介して1つまたは複数の電子記録または他の形態の電子データの形態で提供することにより診断テストの完了時に、診断テストの結果をユーザに提供することができる。
【0107】
クロージャの取り外し、ウォームアップ、サンプルの追加、サンプルの調製、サンプルの供給、カートリッジのクロージャ、およびテスト結果の測定を支援するために、カートリッジは診断テスト装置/機器によって支えられ、位置合わせされ、加熱され、測定される。いくつかの実施形態では、機器は、カートリッジ内のサンプル調製および診断テストリザーバの独立した温度制御のための別個のヒータ領域を含む。典型的なテストシーケンスでは、サンプル調製流体が入ったカートリッジが機器に挿入され、機器がカートリッジの存在を検出して、サンプル調製流体の加温を開始する。サンプル調製流体が所望の温度に到達すると、機器は、分析される生物学的サンプルまたは環境サンプルを追加するようにユーザに促す。サンプル調製流体の加熱は、迅速かつ効率的なサンプル前処理を支援するのに役立つが、一部のサンプルタイプでは必要ない場合がある。
【0108】
生物学的または環境サンプルの診断テストを実施したい診断テストシステムのユーザは、サンプルをカートリッジに導入する。クロージャが解除された状態で、カートリッジはこのステップで閉塞されていない開放容積部を提供する。つまり、生物学的または環境サンプルを運ぶスワブを使用して、サンプル調製リザーバ内のサンプル調製流体を簡単に攪拌し、このステップを妨げる障害物に遭遇することなく、スワブからサンプル調製流体に生体サンプルまたは環境サンプルを洗い流すことができる。しかしながら、これはカートリッジ内の開放容積部を特徴付けるものであるが、スワブを使用する必要がないことは当業者には明らかであり、任意の適切な形態のサンプルを適切な手段によりサンプル調製流体に加えることができる。
【0109】
生体サンプルの場合、サンプル調製リザーバ内のサンプル調製流体にサンプルを追加するステップは、サンプル希釈および細胞溶解の特定の生物学的および化学的プロセスを開始し、テストのために含まれているRNAまたはDNA核酸を含むサンプル材料を調製する。しかしながら、システムは生物学的テストに限定されず、例えば、任意のタイプのサンプル中の微量元素の存在を検出するか、またはその量を測定するために使用することができる。他の適切なタイプの診断テストは、この開示に照らして当業者には明らかであろう。
【0110】
その後に、または機器のプロンプトが表示されたら、ユーザはサンプル調製リザーバにクロージャを適用し、クロージャを操作することで、カートリッジ内のサンプルとサンプル調製流体をシールするだけでなく、サンプル調製リザーバ内の供給機構を作動させて、所定量のサブサンプルをカートリッジ内の1つまたは複数の診断テストリザーバに送る。
【0111】
次に、機器は、1つまたは複数の診断テストリザーバの温度と、その中に含まれるサンプル流体と試薬の温度を制御する。この温度制御は、固定温度を維持すること、または、例えば、PCR反応の場合、異なる固定温度間で加熱および冷却を伴う熱サイクルに供される、所定の時間変化する温度プロファイルに従うことであり得る。いずれの場合も、テストチューブの内容物の一連の光学的測定のサイクルシリーズまたは時系列が機器によって取得される。機器は、これらの測定を処理して、表示またはユーザへの出力として提供できるテスト結果を決定できる。
【0112】
カートリッジは、テストを実行する前に出荷中および保管中の試薬を保護し、診断テストの進行中のテストプロセスをサポートする。テスト試薬、増幅遺伝子生成物および汚染物質は、テストの完了時を含め、常にカートリッジ内に保持される。シールされたカートリッジは、テストの完了時に廃棄するために取り外すことができ、機器は常に流体と汚染から保護されている。
【0113】
生物学的サンプルをカートリッジに追加してシールした後に、ユーザは次のテストプロセス中および処分のためにカートリッジを取り外した後のサンプルの生物学的または化学的危険から保護される。
【0114】
図1および図2に示すように、診断テストアセンブリまたは「カートリッジ」には、サンプルリザーバまたはチャンバ1、少なくとも1つのテストリザーバまたはチャンバ(本明細書では増幅リザーバまたはチャンバとも呼ばれる)3、ならびにサンプル調製リザーバと少なくとも1つの診断テストリザーバとの間の流体の移動を防止するために、サンプル調製リザーバと少なくとも1つの診断テストリザーバとの間にある少なくとも1つのシールが含まれる。記載された実施形態では、サンプルリザーバまたはチャンバ1は、円筒状カートリッジ本体1の形であり、増幅リザーバまたはチャンバ3は、固定リングまたはクリップ4およびエラストマシール5によってカートリッジ本体に結合された増幅チューブの形である。エラストマ構成要素5は、増幅チューブ3の内容物が使用前の環境汚染の影響を受けず、使用中および使用後に漏れることができないように、増幅チューブ3とカートリッジ1の成形体との間にシールを提供する。他の結合およびシーリングの配置および構成は、この開示に照らして当業者には明らかであり、他の実施形態で使用されてもよい。
【0115】
カートリッジは、使用前の出荷時の構成で図1および図2に示され、サンプルリザーバまたはチャンバ1は、トランスポートキャップ2でシールされ、サンプル調製流体または試薬流体11で部分的に満たされており、増幅チューブ3は、核酸増幅および関連する検出プローブ試薬12で部分的に満たされている。これらの試薬11、12は、液体、ゲル、乾燥または凍結乾燥形態であってもよい。
【0116】
典型的には、サンプル試薬11は液体の形態であり、水溶液を提供して、テストサンプルDNAまたはRNAを希釈して溶液に曝露し、サンプル試薬流体11の一部が増幅チューブ3に追加されると、流体の一部が凍結乾燥または乾燥した試薬を溶解または再懸濁するように提供する。増幅試薬は、準備、ローディング、保管、出荷に最適なように、乾燥または凍結乾燥、あるいはゲルまたは液体の形式で乾燥されてもよい。
【0117】
サンプル調製流体11ならびに増幅および検出試薬12は、使用前の製造時にカートリッジ内に装填およびシールされる。
【0118】
使用前の出荷時の構成では、図1図2に示すように、キャップ2の長さは短いので、下縁8はカートリッジの本体の成形ラッチカム9に接触しない。出荷用キャップ2のこの構成は、カートリッジ本体1内のサンプル調製液試薬11をシールすることを可能にするが、キャップ2は、ユーザがテストを開始するために取り外し可能であることを可能にする。
【0119】
カートリッジ本体1は、機器内の所定の位置にあるときのカートリッジの回転を防止するために、機器内の嵌合スロットと位置合わせおよび係合する位置合わせ特徴部10を有する。この回転防止特徴部により、ユーザは出荷用キャップを簡単に取り外し、後でテストキャップを取り付けるという動作がすべて片手で行うことができる。
【0120】
カートリッジ本体1には、サンプル調製流体11が含まれているが、これは、位置7のベースにシールが含まれているため、キャップ2が取り付けられていると、テストリザーバまたはチューブ3と流体連通しないシールされたコンテナまたはリザーバを形成するためである。
【0121】
図2に示すように、記載された実施形態では、増幅チューブ3は、カートリッジ本体1のベースに成形された凹部に嵌め込まれ、エラストマシール5でシールされ、ラッチ特徴部、摩擦嵌合によって、または接着剤またはプラスチック溶接の使用によって定位置に固定される保持リング4によって保持される。いくつかの実施形態では、増幅チューブ3はまた、溶接されたプラスチック膜またはヒートシールされたフォイル膜など、その上部に追加の膜シールを組み込む。増幅チューブ3の上部にあるこの追加のシールは、カートリッジへの組立て前に増幅試薬12を保持するために使用され、別の製造操作での増幅チューブの装填と封止、およびカートリッジ本体1へのその後の組立てを容易にする。このシールはまた、カートリッジの上部サンプル試薬チャンバの壁を通る湿気の拡散に対する増幅チューブの内容の追加の保護を提供する。
【0122】
いくつかの実施形態では、増幅チューブ3は、別個のパッケージで供給され、テストを開始する直前にカートリッジ本体1上の所定の位置にのみクリップまたはねじで留められる。
【0123】
テストを実行するには、カートリッジを機器に挿入して、カートリッジ本体1を支持し、回転防止特徴部10を機器と係合させる。
【0124】
図11は、機器本体31内の所定の位置にあるカートリッジを示し、カートリッジの保持カラー13の上およびその周りをスライドするばね式のスライドカバー36によって所定の位置にロックされる。
【0125】
この構成では、出荷用キャップ2が露出してユーザが使用できるようになり、テストを開始するために取り外する。
【0126】
カートリッジは、以下のテスト機能の間、機器内で保持および加熱されるが、カートリッジの機能の図解と説明を支援するために、カートリッジのみが図3図9に示されている。
【0127】
図3は、テストを開始する前に出荷用キャップ2を取り外したカートリッジを示している。ユーザは、ソフトウェア機能と機器のユーザ表示により、キャップ2を取り外し、テストするサンプルを追加するように求められる。このプロンプトは、サンプルを加える前に、サンプルチャンバ1の加熱段階に続いて、サンプル調製流体11の温度を上昇させることができる。
【0128】
サンプルは多くのタイプのうちの1つとすることができ、流体サンプルのピペット添加または液滴添加、小さな組織サンプルまたは体液または環境、獣医学、食品もしくは農業のサンプルの添加を含むがこれらに限定されない任意の適切な方法によって、サンプル調製流体11に含まれ得る。テストは核酸増幅を使用するため、非常に感度が高くなる可能性があり、テストに効果的である必要があるのは少量のサンプル材料のみである。
【0129】
図3は、開いたカートリッジに導入されているサンプル収集スワブ15を示す。サンプル収集スワブ15が使用される場合、それは、ユーザによってサンプルチャンバ1に導入され、サンプル調製流体11で洗浄される。サンプル調製流体11は、スワブ15からサンプル材料を洗浄するように構成され、細胞を分離し、細胞壁の溶解を引き起こして、DNAまたはRNAターゲット材料を含むサンプル材料の核酸成分をサンプルチャンバ溶液に露出させる塩、希釈流体、または界面活性剤を含むことができ、後続の核酸増幅に適するようになる。
【0130】
スワブ15の代わりに、他のサンプル収集方法またはサンプルタイプをテストカートリッジに適用できる。これらのサンプル収集およびサンプル追加方法には、以下が含まれるが、これらに限定されない。
(i)ピペットの使用とサンプル流体の追加
(ii)指の刺し穴からの直接的な全血滴の使用
(iii)全血などの流体サンプルを収集し、それをサンプル調整洗浄流体11に追加するための吸収パッドまたは膜の使用
【0131】
サンプルの追加後に、機器のディスプレイは、機器ソフトウェアの制御下で、ユーザに、サンプル調製と細胞溶解プロセスが有効になるのに十分な時間を与えるために、しばらく待つように促す。
【0132】
サンプル調製期間が完了すると、ユーザは供給キャップアセンブリを挿入するよう求められる。この供給キャップアセンブリは、サンプル供給機構に取り付けられたキャップ20からなるものとして図4に示され、後者は供給ロッド21および供給インサート22を含む。
【0133】
説明される実施形態では、供給キャップアセンブリは、保護パケットに完全に組み立てられて供給され、ユーザによって取り外しおよび挿入されるが、これは、他の実施形態では必要ない。例えば、いくつかの実施形態では、キャップアセンブリを形成するために、サンプル供給機構は、ユーザによって取り外されたトランスポートキャップ2に取り付けられ得る。いくつかの他の実施形態では、供給機構は、サンプル調製リザーバ内に配置することができ、キャップ(取り外されたトランスポートキャップ2または異なるキャップのいずれか)は、キャップをサンプル調製リザーバ1に適用する行為によって供給機構に結合される。
【0134】
いずれの場合でも、サンプル供給機構は、サンプル流体がサンプル調製リザーバ1から少なくとも1つの診断テストリザーバ3に入るように、少なくとも1つのシールを破るか、さもなければ破壊または開いて、サンプル調製リザーバ1と少なくとも1つの診断テストリザーバ3の間のさらなる流体の移動を防止しながら、診断テストおよびその検出のために、所定の部分量のサンプル流体をサンプル調製リザーバから少なくとも1つの診断テストリザーバ3に供給するように動作可能である。
【0135】
説明される実施形態では、図4に示すように、供給インサート22は、供給ロッド21の一端に取り付けられる。供給ロッド21には、フランジ42が組み込まれている。フランジ42は、供給インサート22の円筒状ボアまたは「シリンダ」に挿入されると、プランジャまたはピストンを構成する。いくつかの実施形態では、ピストンは、円筒状ボアとの緊密な嵌合によってスライドシールを形成するが、他の実施形態では、シールを改善するためにエラストマシールを組み込む。図5に示す実施形態では、「O」リング24を使用して、ピストンが供給インサート22の円筒状ボア内をスライドするときのピストンのシールを改善する。
【0136】
図4に示すように、供給インサート22は、その上部セクションにスロット23の形態の開口部を組み込んでいる。これらのスロット23は、アセンブリがカートリッジに挿入されるときの供給ロッドピストンの初期構成において、内部Oリングはスロット23のベースの上に配置され、スロット23はインサート22の外径まで延びているので、流体がインサート22の円筒状ボアの外側を通り過ぎて流れることも、インサート22がサンプル調製リザーバ内にさらに押し込まれるときにその円筒状ボアを通って流れることもできる。この構成は、圧力の増加を防ぎ、挿入中のサンプル流体の混合を助ける。開口部および構成の他の適切な形態は、例えば、この機能を達成するための穴または溝など、当業者には明らかであろう。インサート22は、サンプル調製リザーバの内壁とシールを形成せず、したがって、サンプル調製リザーバ1内に保持されたサンプル流体を通って容易に移動することができる。供給インサート22の外径と形状により、サンプル調製リザーバ1が押し込まれると、サンプル調製リザーバ1内の中央に配置および位置合わせされ、挿入時にサンプル調製リザーバ内に容易に移動することができる(すなわち、サンプル流体からの大きな抵抗なしに)。これにより、供給インサート22のベースを、サンプル調製リザーバ1のベースの嵌合凹部54と正確に位置合わせすることができる。
【0137】
図5は、サンプル調製リザーバ1に挿入された途中の供給機構を示している。供給ロッド21は、シール「O」リング24を備えたピストンフランジ42と、供給ロッド21の端部のシール穿孔先端部26と、を含む。
【0138】
供給アセンブリが十分に挿入されると、キャップ20の雌ねじ28は、カートリッジの本体の雄ねじ29と係合する。
【0139】
これらのねじ28、29が相互に係合すると、ユーザはキャップ20を閉じるように促され、徐々にねじ込むことができる。閉じられたキャップ20をねじ込む動作は、内部構成要素を係合し、サンプル調製リザーバ1のベースにあるシールに穴を穿孔し、サンプル部分量のサンプル流体を、サンプル調製リザーバ1から診断テストリザーバ3に供給するために、サンプル調製リザーバ1を通る供給アセンブリの移動を容易にする機械的利点を提供する。
【0140】
図6は、カートリッジ本体1のベースと接触した後の供給インサート22を示す。この位置では、供給ロッド21が供給インサート22のボア内にさらに移動する前に追加の力が必要となるように、供給インサート22は供給ロッド21上に保持される。この追加の力により、供給インサート22のベースが摩擦下で押されるか、またはサンプル調製リザーバ1のベースの凹部54の嵌合または表面特徴部の所定の位置にスナップ留めされ、それと共に流体シールを形成する。いくつかの実施形態では、このシールの形成を助けるために、小さなエラストマシールが供給インサートまたはサンプルチューブのいずれかに含まれている。しかしながら、最も単純な実施形態では、これらの部品が相互に接触するときに加えられる圧縮力の下で流体シールを形成するには、供給インサート22のベースの射出成形形態およびサンプル調製リザーバ内の嵌合特徴部で十分である。図6は、供給ロッド21の円形溝25および供給インサート22の対応する環状リングによって形成された戻り止めを示す。この戻り止めは、戻り止め抵抗が克服されると、供給操作が完了する前に、供給インサートをサンプル調製リザーバのベースの所定の位置にロックおよびシールするための初期の離脱力を提供し、供給ロッド21は、ねじキャップ20の継続的な回転作用の下で、供給インサート22を通って移動し始める。供給インサートシール力を提供するための他の配置が利用可能であり、そしてこの開示に照らして当業者には明らかであろう。
【0141】
図7は、供給キャップと供給機構の代替的構造を示している。この実施形態では、インサート22は、供給インサートと供給ロッドから延在する係合機構92との間に捕捉される折り畳み可能または圧潰可能なスペーサ構成要素91で供給ロッド21上に取り付けられる。図8は、これと同じ供給キャップアセンブリを分解部品図で示している。
【0142】
供給キャップアセンブリがねじキャップ動作によってカートリッジに押し込まれると、供給インサートがカートリッジサンプルチャンバのベースと接触する。折り畳み可能なスペーサ91は、ねじ込み動作が力を加えてシール動作に係合することを可能にし、供給インサートの円筒状ボアのベースがカートリッジのベースの嵌合特徴部に押し込まれる。
【0143】
キャップねじ込み動作により追加の力と移動が加えられると、スペーサ91は制御された方法で折り畳まれて供給インサートを所定の位置に押し込み、供給ロッド21の「O」リングプランジャが供給機構の管状ボアセクションに入ることを可能にする。
【0144】
上記の配置では、供給インサートが所定の位置に保持またはロックされた後に、供給ロッド21上の「O」リングプランジャが供給機構のチューブ状部分に入り、ピストンおよびシリンダまたはシリンジを形成する。
【0145】
「O」リングプランジャが流体体積を供給チューブにトラップすると、供給ロッド21の穿孔先端部26は、供給インサート22のチューブのベースにあるカートリッジのプラスチックセクションに穴を開ける。この穿孔動作により、プラスチックセクションと、増幅チューブ3の上のフォイルまたはプラスチック膜に穴が開けられる。プランジャの移動を継続すると、トラップされた流体体積が増幅チューブ3に供給される。
【0146】
この円筒状のセクションに閉じ込められた流体は、サンプルチャンバのベースにある穿孔を通して、下に取り付けられた増幅チューブ3に供給される固定された所定量のサンプル流体である。
【0147】
供給動作により、固定量のサンプル流体が増幅チューブに押し込まれ、供給された流体の追加によってチューブの内容物が加圧される。増幅チューブ3のこの適度な加圧は、ほとんどのテスト用途に適しており、典型的な化学、イムノアッセイテスト、またはPCRもしくは等温増幅を妨害しない。しかしながら、増幅チューブ3の加圧の代替として、いくつかの実施形態では、図6に示す供給ロッド21は中空であり、穿孔先端部26から供給ロッド21内の内部チャネル22への通気孔27(図示せず)を含む。供給ロッド21の内部チャネル22は、サンプル流体チャンバ1の上部で空気と連通している。この通気孔は、増幅チューブ3の上部の空気体積とサンプル調製リザーバ1のサンプル流体の上の空気圧との間の圧力を等しくする。この通気構成は、チューブのアンプリコンが内圧に助けられて環境に漏れるリスクを軽減するため、一部の用途では有利である。
【0148】
複数のチューブカートリッジの実施形態
単一の増幅チューブ3内の増幅テストは、複数のDNAまたはRNAターゲットシーケンスと制御チャネルを単一の増幅チューブ3内で検出できるという点で多重化できる。システムが蛍光を検出方法として使用する場合、当技術分野では検出チャネルと呼ばれる、異なる蛍光波長で発光するプローブを使用して、異なるターゲットを検出することができる。本明細書に記載される機器には、2つの検出チャネルが含まれる。上記の単一チューブカートリッジおよび本明細書に記載の2チャネル検出機器を使用して、システムは2つの異なるDNAまたはRNAターゲットの検出を提供することができる。同じサンプルから単一の診断テストに追加のターゲットを多重化する必要がある場合には、他の実施形態では追加の増幅チューブを設けることができる。このようにして、機器内で同じ数の検出センサを使用しながら、追加のターゲットと制御チャネルを含めることができる。例えば、2つの機器センサチャネルと2つの増幅チューブを備えた実施形態の場合では、システムは、カートリッジ本体から2つの増幅チューブに調製および供給される単一のサンプルから、4つの独立したDNAまたはRNA検出チャネルを使用することができる。
【0149】
図18は、本発明の実施形態による2チューブカートリッジアセンブリを示す。増幅チューブは、カートリッジの本体に接続された個別のチューブにすることができる。しかしながら、図18に示す例では、成形プラスチックチューブ構成要素103は、カートリッジ本体101に接続された2つの独立した増幅チューブと同等の2つの内部キャビティを組み込んでいる。
【0150】
図18は、テストの開始前の出荷形態のカートリッジを示し、出荷キャップ102は、成形されたラッチ特徴部109に接触せず、キャップ102は、テストの開始時にユーザによって取り外すことができる。
【0151】
図19は、同じカートリッジを断面で示しており、チューブ構成要素103は、2つの内部増幅チューブ107、108を組み込んでいる。これらのチューブは、DNAまたはRNA増幅および検出プローブに必要な前駆体試薬を、通常は乾燥または凍結乾燥された形で運ぶ。各チューブ107、108内に組み込まれた試薬は、同じサンプルから異なるテストを実施するために異なっていてもよく、または複製された追加テスト確認を提供するために同一の試薬であってもよい。チューブ構成要素103は、カートリッジ本体101のベースの嵌合凹部特徴部104内の定位置にクリップ留めされる。エラストマシール105は、成形されたカートリッジ本体のベースとチューブアセンブリとの間に閉じ込められ、増幅チューブ107、108と環境との間の漏れを防ぐためのシールを形成する。
【0152】
カートリッジ本体は、通常は液体形態であり、通常は製造中に添加されるサンプル調製試薬111を含む。1つまたは複数の部品の別々の容器にサンプル試薬111を供給し、キャップが取り外されたとき、テスト前にこれらをカートリッジに追加することはオプションである。カートリッジは、単一の増幅チューブの実施形態について上述したのと同様に動作し、サンプル調製流体111が水溶液を形成し、サンプルが添加されるとサンプルからDNAまたはRNAを露出させて運び、部分量のサンプル希釈液が供給作用によってチューブ107、108に加えられると、増幅試薬をカートリッジのベースでこれらのチューブ107、108において再懸濁または溶解する。
【0153】
テストを実施するには、カートリッジを機器ポートに挿入して、サンプル試薬流体111を支持し、加熱を開始する。この加熱は、細胞溶解を含むサンプル調製プロセスを支援、スピードアップ、または可能にすることができる。カートリッジは機器内で支持および操作されるが、説明のために、機器の構成要素は図18図19図20図21図22図23図24図25、および図26に示されているカートリッジの図面には示されていない。
【0154】
図27は、ユーザが出荷用キャップの取り外し、サンプルの追加、適用および供給用キャップ120のねじ閉鎖によってカートリッジを操作するために利用可能な供給用キャップ120を備えた機器に完全に挿入されたカートリッジを示す。
【0155】
図20は、キャップを外して、スワブ115を備えたテスト開始時の2つのチューブカートリッジを示しており、スワブ115は、カートリッジ本体101内に含まれるサンプル試薬流体111に、スワブ115を洗浄することによってサンプル材料を加えるために用いられる。
【0156】
図21は、ユーザによってカートリッジ本体101に挿入される位置にあるキャップ120および供給機構を示す。この図のアセンブリは、次の見えている構成要素、すなわち供給キャップ120、供給ロッド121および供給インサート122で構成されている。
【0157】
図22は、供給アセンブリを分解して示している。2チューブカートリッジの上部は断面が円形で、ねじキャップを取り付けられる。しかし、下部セクションでは、カートリッジの側面が平らになっている。供給インサート122は、カートリッジの上部円形断面では緩い嵌合であるが、カートリッジの平坦化された断面部分では密接なスライド嵌合である。この密接なスライド嵌合を使用して、供給インサート122を所定の位置にガイドし、カートリッジのベースにある嵌合特徴部と位置合わせし、2つの円筒状ボアが穿孔ポイントと位置合わせして、サンプル流体がカートリッジ本体101から出て2つの増幅チューブ103に入るようにする。円形から平坦化された断面への移行は緩やかであり、その形状はねじれているため、供給アセンブリが挿入されると、自然に回転し、供給インサート122が位置合わせされるようにガイドされる。カートリッジ本体101の形態のこの円形から平坦化された移行は、蓋位置特徴部13とキャップロック特徴部109との間の本体セクションにおいて図18に示されている。
【0158】
供給アセンブリは、図22の分解組立図で示されている。供給ロッド121は、キャップ120にクリップ留めされ、自由に回転して、アセンブリが挿入されるときに、カートリッジの平坦化された断面へのその入口との供給アセンブリ122の位置合わせを助けることができる。供給ロッド121は、2つの突起305、306を有する。これらの突起305、306のそれぞれについて、その下部セクションは対応するOリングシール303、304を備えた対応するピストンを形成し、各ピストンの下に対応する鋭いポイント307、308を形成する。
【0159】
ポイント307、308は、穿孔中にポイント307、308を通過する流体の流れを助けるために、断面が形作られてもよい。例えば、記載された実施形態では、ポイントは、断面がV字形であり、ポイント307、308のそれぞれが小さな三角形のチャドを広げることを可能にし、カートリッジのベースで薄い材料部分に穴を開けて、供給された液体がポイント307、308を通過するのを助ける。
【0160】
供給インサート122が供給ロッド121上に組み立てられると、供給ロッド突起305、306の穿孔先端部307、308は、供給インサート122の円筒状ボア内に突出するが、その容積部を満たさない。これらのボアは、図23に断面で示されている。供給インサートセクションは、図21および図22に示すように、供給ロッド121の突起305、306上に、およびそれらの間にぴったりと嵌合してスライドするスライド309を有する。取り付けられると、供給インサート122は、上方にスライドして、供給ロッド上の小さなブリッジ310と接触する。小さなブリッジ310との接触は、使用前の通常の取り扱いでのさらなる移動を防止し、ロッド121上へのインサート122のスライド嵌合は、制御された方法で供給インサート122を保持および位置合わせし、通常の取り扱いで外れないようにしっかりと嵌合する。
【0161】
図23は、カートリッジアセンブリに部分的に押し込まれた2チューブ供給インサート122の断面図を示す。供給インサート122は、ロッド121へのスライド嵌合であり、小さなブリッジ310によってさらなる移動が阻止される。供給インサート122は、2つの開放端の円筒状ボア301、302を組み込んでいる。
【0162】
図24は、カートリッジ本体のねじ山と係合したねじキャップ120の雌ねじの断面を示しており、供給機構がカートリッジ内のポイントまで進んで、供給インサート122のベースがカートリッジ本体127のベースで薄い材料部分とちょうど接触している。供給インサート122のベースは、カートリッジ本体のベースと嵌合して圧入を形成する特徴部を有し、各円筒状ボア301、302のベースの周りに流体シールを形成する。供給ロッド121上のブリッジ310は、ロッドが供給インサートに十分な力を加えて、カートリッジ本体のベースのシール特徴部にしっかりと固定することを可能にしている。この部品が着座すると、ユーザによるキャップ120の継続的な回転によって引き起こされるキャップねじ山のさらなる進行により、小さなプラスチックブリッジ310が離れ、供給突起305、306が供給インサート122内にさらに進むことができる。
【0163】
この時点で、穿孔ポイント307、308がカートリッジ本体のベースにある薄い材料部分に穴を開け始め、「O」リング付きのピストンまたはシリンジの特徴部303、304が2つの円筒状ボア301、302の上部をシールするように進行する。
【0164】
さらに移動すると、ねじキャップ120がユーザによってさらに閉じられると、突起310がたわむか、または離れて、突起305、306のOリング303、304が供給バレルの上部をシールし、それぞれの供給ボア301、302内に流体の閉じた容積部を形成する。ユーザがキャップを閉じる動作を完了すると、Oリングでシールされたピストンは、係合したねじ付きキャップ120と供給インサート122がカートリッジ本体101に押し込まれる動作によって圧入され、トラップされたサンプル流体を2つの増幅またはテストリザーバ103のそれぞれに供給するために、2つの供給インサートボア301、302を通って完全な距離を移動する。
【0165】
この実施形態では、カートリッジ本体101は、通常、約1~3ミリリットルのサンプルおよびサンプル希釈流体111を有し、供給動作は、約50~100マイクロリットルのオーダーの少量のこの流体を増幅チューブ103の各々に供給する。この実施形態の形態を変更することなく、使用される部品のスケールを変更して、サンプル希釈量と、各増幅チューブ103に供給される量の両方を変更することができる。
【0166】
図25は、完全に供給された構成のカートリッジを断面図で示している。供給キャップ120は、出荷用キャップよりも長く、その下縁は、カートリッジ本体101上の成形カム特徴部109の上にラッチされた位置合わせまたは回転防止特徴部129を有する。これは、キャップ120が容易に取り外されるのを防ぎ、テストサンプルが追加されて供給キャップが取り付けられた後に、テストサンプルがカートリッジ内に完全にシールされることを確実にする。このロック機能は、オペレータの安全性とテストの信頼性に大きな利点があり、使用中およびその後の使用済みカートリッジアセンブリの取り外し、取り扱い、廃棄時にユーザとテストシステムが汚染されないように保護する。
【0167】
図26は、完全に供給された構成のカートリッジの完全な外観図を示し、供給キャップ120が完全に配置され、カートリッジ本体101にロックされている。供給アセンブリのキャップ120は、回転と取り扱いを支援するためにその形状に特徴を有するが、キャップ120の他の特徴部よりもさらに外側および/またはさらに下に突出する独自の成形特徴部129を含んでいる。機器には、この特徴部129の位置または近接を検出するセンサが組み込まれている。このセンサ出力は、機器コントローラおよびその制御ソフトウェアによって使用され、キャップ120が完全に閉じられ、完全に閉じられた位置まで回転したことを確認する。図28は、供給キャップが完全に閉じた状態のカートリッジと機器の関係を示している。完全に閉じた構成では、キャップ120は、回路基板142に取り付けられた電子センサ140の近くにあり、それによって検出される突起129を有する。記載した実施形態では、センサ140は、赤外発光ダイオードと整合光学センサの両方を組み込んだ回帰反射型光学センサである。特徴部129が近接すると、発光ダイオードからの反射された照明が近くの光学センサ140によって検出される。この信号は、機器コントローラによって使用され、キャップ120が閉じていることを確認する。典型的な機器適用ワークフローでは、上述のようにキャップが完全に閉じられた特徴部129が検出されるまで、ユーザは、供給アセンブリのキャップ120を取り付けて閉じるように促される。診断テストは、増幅、検出、およびこの検出後のテスト結果の生成にのみ進む。長時間経過してもキャップ120が検出されない場合は、オプションで故障または誤用を構成していると考えられ、エラーメッセージが機器のLCDディスプレイに表示されるか、1つまたは複数のデータインターフェースに通知される。この構成には、カートリッジが適切な時間内に正しく使用されていることが確認され、供給機能が完全に完了した場合にのみ、テストが診断結果の生成に進むという利点がある。この確認により、機器によるセルフチェックが提供され、最終テスト結果の信頼性が向上する。
【0168】
核酸増幅テスト以外のテスト
テスト前にカートリッジ内に含まれるテスト試薬は、核酸増幅を利用する必要のない他のタイプのテスト用に構成することができる。例えば、いくつかの実施形態では、直接化学反応検出を使用して、サンプル内の微量元素または添加物の存在を検出することができる。任意選択で、イムノアッセイ検出法を使用して、希釈して1つまたは複数のテストチューブに供給したサンプル材料内の特定のタンパク質に直接結合して検出することができる。
【0169】
手動操作、視覚的な読み取り、計装されていないカートリッジ操作
一部の用途では、カートリッジを機器なしで手動で使用することができ、一方の手でカートリッジを持ち、もう一方の手で第1のキャップを取り外し、サンプルを追加し、第2の(供給)キャップを取り付けてねじ込む。この場合、テストチューブが視覚的に透明である場合、テストチューブへの流体の供給を視覚的に観察し、色または濁度の変化を経時的に観察して、診断テストの読み出しまたは表示を提供することができる。この手法は、サンプルが追加されると完全にシールされたカートリッジで操作し、外部の流体移送ステップを使用せずに、測定された量の希釈され調製されたサンプル流体をテストチューブに内部で供給するという利点を利用する。
【0170】
任意選択で、第1のキャップを取り外し、サンプルを追加し、供給キャップとそれに関連する機構を取り付けて閉じるために、カートリッジを支持する単純なスタンドが提供されてもよい。
【0171】
任意選択で、カートリッジアセンブリのサンプルおよびテストチューブチャンバの温度制御を提供するために単純なヒータブロックが提供されてもよいが、カートリッジを手動で引き抜いて、1つまたは複数の結合したテストチューブで見えるテスト結果を観察する。
【0172】
機器
上述のように、カートリッジは、診断テスト装置または「機器」内で動作して、診断テストを実施することができる。診断テスト機器30は、図11から図13に示され、成形されたプラスチックまたは金属シート材料から構築され得る剛性の筐体またはハウジング31およびベース33を含む。このハウジング31内には、接触感応性LCDディスプレイ32が取り付けられている。機器は、機器ディスプレイ32上にレンダリングされたユーザインターフェース(図示せず)上の接触感応性制御を選択することによって操作される。しかしながら、他の実施形態では、ユーザインターフェースは、対応する機能を実装するための物理的な制御またはボタンとして実装されてもよい。
【0173】
機器コントローラ
図33に示すように、機器30は、機器の電気的に作動する機能のシーケンスおよび動作を制御する診断テストプロセスを実行するように構成されたマイクロプロセッサベースのコントローラ201を組み込んでいる。記載した実施形態では、マイクロプロセッサコントローラ201は、不揮発性メモリ204に格納された組み込みオペレーティングシステム202および組み込みソフトウェア203により構成され、当業者にはよく理解されているように、少なくとも1つの外部データインターフェースプロセッサ206と、データおよび制御インターフェース207上の内部アクチュエータ、ヒータ、モータおよびセンサと、通信する。しかしながら、診断テスト装置または機器30によって実行される診断テストプロセスのステップの一部またはすべてが、代替的に他の形態、例えば、フィールドプログラマブルゲートアレイ(FPGA)の構成データ、または特定用途向け集積回路(ASIC)などの完全にハードウェア形式などで実現され得ることは、当業者には明らかであろう。
【0174】
不揮発性メモリ204はまた、1つまたは複数のデータファイルまたはデータベースに格納されたデータとして、テスト結果および機器較正を格納し、不揮発性メモリ204に格納された情報およびデータは、診断テスト機器30に電力が供給されていないときでも保持される。
【0175】
機器30はまた、コントローラ201の外部にあり、コントローラ201と通信する追加の構成要素を含み、蓋センサ222、カートリッジセンサ223、ならびにヒータ素子220および温度センサ218によって温度が制御されるヒータブロック216を含む。これらの構成要素のすべては、通信および制御インターフェース208を介して、共有バス207およびオペレーティングシステム202のI/O機能を介して、コントローラ201にインターフェースされる。
【0176】
以下の表は、図33のブロック図にある各構成要素のメーカー、部品番号、および部品参照番号を示している。
【表1】
【0177】
蓋機能と蓋検出
図11に示す機器30は、ばね仕掛けのスライドカバーまたは蓋36を含む。このカバー36は、典型的には片手の親指で、ユーザが押し戻すことができる。カバー36を押し戻すと、機器の上部にあるポートが露出し、ユーザはテストの開始時にカートリッジを挿入することができる。カバー36を押し戻す動作が内部電気スイッチまたはセンサを作動させ、機器コントローラ上で実行されるソフトウェアアプリケーションが、テストが開始していることを認識し、適切なプロンプトおよびフィードバックをユーザに提供する。単一のチューブの実施形態については図1に示され、2つのチューブの実施形態については図18に示される、カートリッジは、カートリッジ本体上に環状成形特徴部13を組み込んでいる。この特徴部は、蓋36が取り付けられたカートリッジに対して閉じたときに蓋36がこの特徴部13のセクションを取り囲んでスライドするように、機器の蓋36によって係合される。この成形特徴部13のテーパー面は、カートリッジと蓋36の作用により、カートリッジを機器内に保持するように機能し、カートリッジを下向きの圧力で固定して、カートリッジを確実に配置し、増幅チューブ3、107、108が下部ヒータブロックと密接に熱接触するように保持される。
【0178】
図11に示すばね仕掛けのスライドカバー36を備えたこの構成により、ばね圧下で蓋36がカートリッジに押し付けられた状態で、カートリッジをしっかりと保持することができるが、ユーザがカートリッジキャップとカートリッジのキャップねじ部分に自由にアクセスして、サンプルの追加と処理に必要なキャップを取り外してまた取り付けることができる。カートリッジは、ばね仕掛けのカバー36を押し戻してカートリッジを解放し、次にカートリッジを引き抜くという追加の意図的な動作なしでは、ユーザが容易にまたは不注意で引き抜くことはできない。
【0179】
他の実施態様では、蓋36は、ピニオンギヤを蓋36の内部ラックギヤに対して駆動する電動モータを使用することなどによって電気的に作動させることができ、蓋36はリニアガイド内でスライドする。電気的に作動する蓋36の場合、それは、機器コントローラ201ならびにユーザのコマンドまたはテストの完了時にカートリッジが挿入または取り外されるテストシーケンスの一部に応答するソフトウェアに応答して開閉される。
【0180】
カートリッジ検出
機器の蓋36を開くと、カートリッジを機器ポートに挿入することができる。挿入されると、カートリッジは機器コントローラ201によって検出される。これにより、機器はユーザにテストを開始し、必要なテストまたはカートリッジタイプを識別するように促すことができる。図11に示す機器30は、カートリッジが挿入されて定位置に配置されるとカートリッジの検出を提供する、カートリッジポート内に組み込まれたスイッチまたはセンサを含む。
【0181】
一実施態様では、このセンサは、カートリッジポートを横切って狭いビームを形成するLED発光ダイオードと、ビームを受けて検出する関連する光電センサによって形成される。挿入されたカートリッジの存在はこのビームを遮断し、機器とそのコントローラおよびソフトウェアがカートリッジの存在を検出できるようにする。他の適切なセンサには、カートリッジの表面からの光反射の検出に依存するセンサ、またはカートリッジの挿入によってアクティブ化されるスイッチの使用、あるいはカメラおよびカートリッジの有無を確認するためのソフトウェアでの関連する画像解析の使用が含まれる。
【0182】
カートリッジの識別
診断テストシステムは、様々な種類のテストを処理するように構成でき、これらの様々なテストでは、試薬の内容が異なり、目的のターゲット診断テスト結果が異なり、異なるテスト処理条件が必要になる場合がある。機器のユーザインターフェースに入力することにより、ユーザは様々なカートリッジテストタイプを識別でき、あるいは、カートリッジアセンブリの機械識別可能なマークまたはラベルを検出することにより、機器によって自動的に識別することができる。これらの識別マーキングには、カートリッジの表面に印刷またはエッチングされた、またはカートリッジ本体または出荷用キャップに取り付けられた印刷ラベルに適用されたリニアバーコードまたは2D(QRなど)コードなどの特徴部を含めることができる。
【0183】
通常、各カートリッジコードは、カートリッジタイプと、カートリッジの処理に適用される対応する診断テストプロセスおよび分析を識別する。また、通常、機器は特定のカートリッジのバッチまたはロット番号と有効期限を読み取ることができる。このデータを使用して、ロット固有の較正を適用し、期限切れのカートリッジをテストでの使用から除外することができる。この情報は、診断テスト中にコントローラ201によって生成されたテスト結果データのメタデータとしても含まれる。
【0184】
機器は、バーコードセンサと画像センサを組み込んで、組み込みコントローラ201がカートリッジタイプを読み取り、カートリッジまたはキャップの本体に取り付けられたバーコードから関連するテスト方法を識別できるようにすることができる。このコードは、リニアバーコード、QRコード(登録商標)やDatamatrixなどの2Dコードタイプ、またはマーキングやシンボルの適切なセットであってもよい。あるいは、統合された画像センサまたはカメラが、機器コントローラ201内の画像解析を使用することにより、バーコード、2Dコードまたはカートリッジまたはそのキャップ上の識別マークの内容をデコードすることができる。あるいは、機器の外部通信ポートの1つに接続された手動操作の市販のバーコードまたは2Dコードリーダーを使用して、カートリッジ本体またはカートリッジキャップに適用されたコードのデータコンテンツを取得するようにユーザに促すことができる。コードが出荷用キャップの上部にある場合には、カートリッジを機器のポートに挿入して検出した後に、キャップを取り外す前にコードを簡単に読み取ることができる。あるいは、カートリッジIDを入力するか、ユーザインターフェースのテキストフィールドに入力するか、ユーザインターフェースのドロップダウンリストからテストタイプまたはカートリッジを選択するようにユーザに促すことができる。
【0185】
増幅前のサンプル試薬の加熱
機器には、カートリッジのサンプル流体リザーバセクションと、テストまたは増幅チューブ3、107、108と、を囲んで独立した熱入力を提供する2つの独立した温度制御ゾーンが組み込まれている。ゾーンは、加熱空気チャンバまたはヒータブロックとすることができ、あるいは機器はカートリッジのサンプルチャンバ領域内および分離したテストチューブ3、107、108内の流体を直接または間接的に加熱または冷却する別の方法を用いてもよい。
【0186】
図14は、単一の増幅チューブカートリッジのヒータゾーンの機器構成を示している。この例では、電気的に加熱されたアルミニウムブロック61、62を使用して、挿入されたカートリッジ1に熱入力を提供する。2つのブロック61、62は別々に加熱および制御され、それらが異なる温度で動作できるように機器内で十分に断熱されている。上部ブロック61は、その温度が機器コントローラ201の制御下にあるように、電気的に加熱および制御される。フィードバックセンサは、アルミニウムブロックに取り付けられ、アルミニウムブロックの温度制御は、カートリッジ内の流体に与えられる温度を加熱および予測するために機器コントローラ201によって使用される。別の実施態様では、温度センサは赤外線温度センサなどの非接触型であり、カートリッジの壁は、この直接的な内部温度測定を行うために必要な波長で適切な透過率を有する材料で構成されているので、内部カートリッジ流体の温度を直接測定するために使用される。
【0187】
典型的な用途では、サンプルヒータは、処理するサンプルのタイプと必要な細胞タイプおよび細胞溶解に応じて、摂氏40度から摂氏95度で動作する。
【0188】
典型的な等温増幅用途では、増幅ヒータブロック62は、摂氏65度などの固定温度で動作する。典型的なPCR用途では、増幅ヒータブロックは、設定された温度の間で、摂氏50度から摂氏95度の典型的な範囲で段階的に加熱および冷却する。図14の増幅ヒータブロック62は、ポート穴63を組み込んでいる。この穴63は、チューブの内容物の光学的検出を可能にし、リアルタイムおよび終点の両方の検出、および定性的または定性的テスト結果の決定を可能にする。
【0189】
図13は、機器の内部構造を示し、この図では、上部のサンプル加熱器ブロック61の統合が示されている。サンプル加熱器ブロック61は、カートリッジポートが機器の上面に提供されるように、その制御回路基板50に取り付けられる。この図では、ヒータブロック61は、所定の温度になるとヒータブロック61からの過度の熱損失を防ぐために、プラスチック絶縁カバー51によって取り囲まれている。
【0190】
機器の2つのチューブの実施態様では、ヒータゾーンの配置は同じである。カートリッジのセクションを囲む温度制御ブロックのこの配置は、サンプルヒータブロック61および増幅ヒータブロック62と共に図31に示されている。この実施態様では、増幅ヒータブロック62は、内部増幅チューブ107、108のそれぞれについて、ブロック62の両側に2つのポート穴63を有する。これらのポート63により、各センサが移動して、テスト中に各増幅チューブから光学テスト測定値を位置決めして取得することができる。図32は、カートリッジアセンブリおよび2つのヒータブロック61、62を断面で示している。
【0191】
温度制御または温度サイクル
カートリッジが機器ポートに配置されると、カートリッジのベースに取り付けられた増幅テストチューブ3または複数のテストチューブ107、108が、対応する加熱ゾーンに入る。
【0192】
この加熱は、温度制御された加熱および冷却ブロック62に直接接触または近接することを含む、温度制御されたゾーンへの挿入によって達成される。
【0193】
代替的実施態様では、テストチューブを包むキャビティ内の再循環によって固定温度に維持された空気キャビティを使用して、テストチューブ内の温度を制御する。これらの温度制御の実施態様のいずれかを使用して、テストウェル3、107、108が、等温DNA増幅では固定温度に維持され、あるいはPCRタイプのDNAまたはRNA増幅では異なる温度間で循環する。
【0194】
サンプルチャンバとテストチューブの混合
一部の診断テストでは、テストを正しく実行するため、またはテストの信頼性もしくは精度を向上させるために、サンプル調製リザーバまたはテスト/増幅リザーバのいずれかの内容を混合する必要がある。混合を達成するために、最初の製造中にカートリッジに試薬を装填するときに、小さな鋼またはフェライトボールなどの磁性インサートをサンプル調製リザーバまたはテスト/増幅リザーバ3、107、108に含めることができる。例として、これは単一の増幅カートリッジについて図2に示されている。
【0195】
図2では、鋼球14がカートリッジ本体1のサンプル室部分に含まれており、鋼球15が増幅テストチューブ3に含まれている。
【0196】
機器内では、永久磁石がアクチュエータまたは移動センサキャリッジに取り付けられており、キャリッジが各テストウェルを通過すると、磁石が粒子14、15を持ち上げ、そして、キャリッジが通過した後に、重力の下でウェルのベースに戻る。増幅チューブの流体内でのこの球の動きは、流体の混合作用を引き起こす。
【0197】
代替的実施態様では、高い磁石および低い磁石が、混合粒子または球14、15を、キャリッジが通過するときに各ウェル内の交互の位置に引くように取り付けられている。各ウェル内の混合球14、15のこの交互または往復運動はまた、ウェル流体内の混合を誘発する。この配置には、これらの粒子14、15がウェル内容物の光学測定を妨害しないように、各センサがウェルに近いときに、含まれている粒子または球14、15を優先位置に引っ張るように構成できるという利点もある。
【0198】
永久磁石または複数の磁石を近接させて磁性粒子または鋼球14、15の移動を誘発することにより外部磁場を適用する同様の手法をサンプル調製リザーバに適用して、サンプル流体内で混合を誘発することができる。サンプル調製リザーバ内での混合は、導入されたサンプル材料をサンプル調製流体と混合して、増幅のためにサンプル材料を希釈および調製するために使用することができる。この調製混合により、細胞溶解、およびサンプル内のターゲットDNAまたはRNA核酸材料の抽出と調製も改善することができる。永久磁石を物理的に移動する代わりに、機器のコントローラの制御下で、印加された電流によって1つまたは複数の電磁石を作動させることができる。これらの誘導された変化する電磁的な磁場を使用して、サンプル調製リザーバ1またはテスト/増幅リザーバ/チューブ内で磁気ビーズまたは鋼球14、15を移動させ、カートリッジ内のこれらのゾーンのいずれかで流体を混合させることができる。
【0199】
流体充填検出、画像解析
機器内に組み込まれた1つまたは複数の画像センサ214は、カートリッジのデジタル画像、および供給機構構成要素の進行、ならびにカートリッジ内に含まれる流体の状態および進行を取り込むことができる。これらのデジタル画像は、機器コントローラ内のソフトウェア画像解析によって処理され、制御およびステータス出力を提供する。1つまたは複数の画像センサ214からのデジタル出力を使用して、シーケンスの進行を確認し、カートリッジ内のテスト試薬の正しい放出および流れを確認して、コントローラ201によってテストの完全性を確認し、テスト結果の信頼性と安全性を向上させることができる。コントローラ201は、画像センサ214を使用して、カートリッジ内の内部流体および機構部品を観察し、機器コントローラによる画像解析を使用して制御解釈を計算することができる。
【0200】
画像センサ214は、供給機構の動作および位置を確認して、カートリッジの不完全または正しい完全な動作を確認し、完了時にユーザに促すか、または装置プロセスの次のステップに自動的に進んで最終テスト結果を取得することができる。
【0201】
画像センサ214によって取得された画像データおよびその後の画像解析は、コントローラ201によって使用され、テストチューブ3、107、108のそれぞれに供給されたサンプル流体のレベルを決定し、このレベルを使用して、サンプル流体の供給が適正に完了したことを判定することができる。カートリッジ内の1つまたは複数のテストチューブ3、107、108のそれぞれに供給される流体のレベルを使用して、供給動作の許容誤差についてテスト結果を補償することができる。各テストチューブを備えた流体のレベルは、チューブ3、107、108の数学的モデルを使用することによって、またはルックアップテーブルを使用することによって、コントローラ201によって体積に変換することができる。供給された量の流体は、それらが供給された流体に溶解すると、テストチャンバ流体内のテスト試薬の濃度に影響を及ぼす可能性がある。供給されたサンプル流体の量を測定することにより、各テストチューブ3、107、108内の試薬の濃度が計算される。以前に実施された一連の実験から、またはテスト反応のモデルから、テスト結果に対するテスト試薬濃度の影響、および結果を解釈するためのテストの時系列測定値の解釈を知り、装置内で調整または補償することができる。
【0202】
カートリッジに保存された流体サンプル調製試薬は、染料で着色することができる。最終的な増幅テストが蛍光を使用して検出される場合には、カートリッジのサンプルチャンバに保管されているサンプル溶解バッファなどの流体試薬に、着色された非蛍光染料が追加される。この染料は、画像センサ214によって使用されて、カートリッジテストチューブ3、107、108への着色したまたはコントラストのある流体の流れを視覚的に画像化して、供給動作を確認し、供給量を確認することができる。流体に着色された染料を追加すると、得られる画像のコントラストが向上するが、チューブの内容物からの蛍光励起および発光に悪影響を与えることはない。この手法の代替的使用として、1つまたは複数の連結されたテストチューブ3、107、108に供給された流体の画像の画像解析を使用して、チューブ3、107、108内の体積を測定することができ、この測定値は、増幅量のテスト結果の計算を補償するために使用することができる。この補償は、テストチューブ3、107、108内の試薬の濃度が測定と反応応答に影響を与える可能性がある定量的テスト結果にとって特に重要な場合がある。
【0203】
機器センサ
図16は、機器内の光学センサの配置を示している。
【0204】
2つの独立した光学センサ80、82が示されている。一方のセンサ80の光学焦点コーン81は、他方のセンサ82の光学焦点コーン83と同様に、概略的に示されている。これは、図17に同じ符号でより詳細に示されている。図17は、光学センサ焦点コーン81、83がそれぞれどのように増幅チューブ3から光学蛍光信号を励起および取得できるかを示している。これらの図では、明確にするために、増幅ヒータブロック62は示されていない。しかしながら、完全に組み立てられた機器では、これらの光学測定値は、増幅チューブ3を囲むヒータブロック62の側面のポートを通して取得される。
【0205】
図16は、レールおよびリニアベアリングブロック71、72上を直線的に移動できるプレート52に取り付けられた光学センサを示し、これらのレールおよびブロックは、この図では断面で示されている。位置モータ70は、機器コントローラ201がチューブ3に対してセンサを正確に位置決めして、チューブ3内のDNAまたはRNA検出プローブ放出を表す測定値を取得する能力を提供する。
【0206】
単一の増幅チューブカートリッジの場合、センサは、チューブ3に沿って、またベアリング、リニアレール71、72、位置モータ70が不要になるように固定配置で配置することができる。しかし、直線運動の配置と位置モータを使用すると、センサをセルフテストの基準位置に移動し、使用しない場合はセンサをチューブ位置から遠ざけることができ、これはいくつかの用途で利点がある。
【0207】
内部参照領域
機器は、検出センサの視野内またはこれらのセンサのスキャン経路内の1つまたは複数の光学参照領域で構成することができる。これらの参照領域は、センサの目的の検出モードの参照テストとして適切な既知の光反射率、吸収、または蛍光を有するように、材料または表面コーティングのいずれかの特性で構成することができる。これらの領域には、既知の安定した反射率、吸収、または蛍光を伴う単純な参照バックグラウンドを含めることができる。例えば、蛍光検出センサの場合、参照領域は、無機または有機添加剤を含む局所化されたプラスチック構成要素で、センサの適切なテスト範囲内に蛍光応答を調整することができる。
【0208】
較正のセルフテスト確認
機器内に基準領域または基準位置を含めることにより、機器はセルフテスト機能内での撮像較正の動作と精度を確認することができる。あるいは、機器はユーザに、既知の光出力またはテストチューブの場所からの応答を備えたテストカートリッジを挿入するように促すことができ、このカートリッジは、機器がセルフテストまたは較正機能を実行できるようにするために構成された参照カートリッジである。この機能により、不正な読み取りや誤ったテスト結果が発生する可能性があるシステムを使用する際に、信頼性とユーザの安全性を向上させる。
【0209】
テスト読み取り値
増幅の実行中に、テスト読み取り値が光学センサによって取得される。これらのセンサは、下部増幅ヒータブロック62の穴、光学ポートまたは窓63を通る増幅テストチューブの内容物と、テストチューブ上の対応する光学的に透明なセクションを組み込んだ光路を有するように構成されている。1つまたは複数の増幅チューブ3、107、108と参照セルフテスト領域でも検出が必要な場合は、スキャン手法を使用して、これらの複数の検出ポイントを横切ってセンサを移動し、診断テストの対象となる各ポイントで測定を行う。これらの測定では、光吸収、蛍光発光、生物発光を使用して、テストチューブ3、107、108内の特定の生物学的または遺伝子配列マーカを検出することができる。
【0210】
単一増幅フォーマットカートリッジの場合の測定配置を図16に、複数増幅チューブ構成の場合の測定配置を図29および図30に示す。図30では、光学センサ61、62がキャリッジ53に取り付けられている。キャリッジ53は、各センサが必要な光学的検出位置のそれぞれを通過できるように、リニアレール71、72に取り付けられている。
【0211】
可動キャリッジ53は親ねじに取り付けられ、このねじは中空シャフト位置モータ内に取り付けられたナットを通過する。この例では、位置モータ70は、電子機器およびコントローラ201の制御下のステッパモータである。キャリッジの位置制御を提供して光学的スキャンを提供するための他の構成は、当業者には明らかであり、リニアモータ、ベルトドライブまたはラックおよびドライブピニオンギヤ構成を含む。
【0212】
この配置は、センサ61、62を動かして、それらがカートリッジ101内の各テストチューブと連続的に位置合わせするようにすることができる。このスキャン動作を使用して、各テストウェル位置で各センサの測定値を取得することができる。このスキャンプロセスには、各センサが順番に各テストウェルに沿って配置および停止される一連の移動を含めることができる。各位置で、一組のテスト測定が行われる。一連の移動と測定が完了すると、キャリッジが開始位置に戻り、スキャンプロセスが繰り返される。
【0213】
別のセンサスキャン構成は、キャリッジとそれが運ぶセンサが一定の速度で各テストウェルの検知ウィンドウを横切って移動するように、キャリッジを一定速度で移動することである。次に、この一定速度のスキャン動作中に、連続した一連の測定値が取得される。
【0214】
この信号は多くの測定値で構成されており、これらが取得されると、コントローラ201は各テストウェル107、108に対応するピークの位置を特定することができる。これらのピークまたは最大点は、ウェルの光学的信号に対応しており、センサが各ウェル位置で正確に停止し、センサがヒータブロック62とテストウェル3、107、108を介して光学ウィンドウ63と位置合わせされている場合に取得されたものと同様の測定値である。各ウェル位置で停止せずに測定値の取得する、移動取得方法の利点は、キャリッジが各測定で停止する必要がないため、各テストウェルの全体的なスキャン時間と測定繰り返し率を大幅に改善できることである。これにより、各テストウェルの測定サンプリングレートが高くなる。
【0215】
多くの用途では、テストの結果は、テストウェル3、107、108の反応のダイナミクスによって決定され、このような用途では、テスト結果の分析とその後の決定に必要なデータを得るためのテストを実行している間に、適切なサンプルレートで一連の測定値を取得する必要がある。図35は、増幅チューブ3、107、108内からの検出放出から増幅中に取得された一連の測定値としてリアルタイムで測定された典型的な増幅曲線を示している。最終レベル、上昇中の勾配、および開始後の曲線勾配が発生する時間を含む、曲線の形状と振幅を使用して、機器によるテスト結果を判定することができる。テスト結果は、ターゲット核酸が検出された場合は陽性、検出されなかった場合は陰性などの定性的である場合もあれば、あるいは、定量的であってもよく、100万分の1などのレベルとして、または例えば、サンプル材料のDNA内のDNAのパーセンテージとして表されてもよい。
【0216】
代替的な測定方法
上記の説明はテスト結果を決定するためのテストウェルの光学的測定に言及しているが、代替的な測定方法を備えたセンサが、同じ診断テスト装置/機器および本明細書に記載の診断テストカートリッジで動作できることが認識される。これらのセンサは、テスト流体の磁気的、電気的、原子的または物理的特性を使用して、テスト結果を判定するのに適した測定値を取得することができる。
【0217】
UV変性
診断テストシステムはまた、機器アセンブリ内に取り付けられ、機器コントローラ201の制御下で動作する紫外線(UV)照明源を組み込んで、必要なときにオンおよびオフにすることができる。この光源は、適切なUV電球またはUV発光ダイオード(LED)であってもよく、増幅チューブの内容物をUV光で照明するのに適切な領域にUVを集束させるレンズなどの光学部品を含むことができる。
【0218】
この照明は、増幅チューブ3、107、108全体とカートリッジ容積部全体を照明するためのより大きな固定照明光源にすることができ、あるいは、スキャンキャリッジ内の局所光源として実装して、スキャン構成がテストウェル3、107、108を通過するときに、テストウェルの増幅された内容物を変性させることができる。いずれの場合でも、このUV照明は、テストの完了時に、おとびユーザがカートリッジを取り外すように求められる前に、電源を入れて増幅チューブとカートリッジの内容物を変性および滅菌するように、特に任意の遺伝子核酸物質を変性させるように制御される。
【0219】
この紫外線LEDには、各テストウェル3、107、108(およびスキャンが使用されている場合はスキャン中に)にUV光を集束させる集束光学系も含まれる。キャリッジは、連続的な動きとしてスキャンすることも、移動して各ウェル3、107、108で停止することもできる。どちらの方法でも、高輝度UV照明が各テストウェルに順番に適用される。UV照明レベルと露出時間は、各ウェルのDNA遺伝子アンプリコンの内容が完全に変性し、テストウェルの内容が解放されて別のテストに導入された場合にさらに増幅されないように、コントローラによって構成される。
【0220】
このテストウェルの内容物の変性は、テストウェルヒータを100℃などの高温で、テストウェル3、107、108の遺伝子物質がテストウェル溶液内で分解され変性するのに十分な時間操作することによっても達成または強化することができる。機器の制御下でヒータブロック62を使用してテストウェル3、107、108の温度を上げることと、UV照明を適用することの組み合わせを使用して、各テストウェル3、107、108内の遺伝子核酸材料の分解と破壊の効率を上げることができる。
【0221】
この機能には、増幅チューブ内に含まれるアンプリコンが機器の周囲の環境に漏れるリスクがあるという利点がある。これらのアンプリコンは、将来のテストのサンプル追加を汚染し、偽陽性の結果を引き起こす可能性がある。しかしながら、アンプリコンの放出に対する主要な保護は、アンプリコンがテストの完了時に増幅チューブ3、107、108内に保持されるようなカートリッジのシール設計である。しかし、テストの完了時にアンプリコンを破壊するか、熱またはUV照明を使用してアンプリコンを大幅に減らすと、カートリッジのシールが損なわれたり、使用済みのカートリッジが機器から取り外した後に損傷した場合に、このリスクをさらに減らすことができる。
【0222】
オプションの供給インサート流体機能
図36に示すように、供給インサートがカートリッジ本体1に挿入されると、サンプル流体はその周りを流れ、開放端の円筒状供給ボアを通る。図37は、供給インサートを等角図で示している。供給インサート22は、円筒状ボアの外側を通過する流体経路を備えたフィンを有し、その長さの一部のみをスロットに差し込む。その結果、シーリングプランジャが供給インサート22の固体または「スロットのない」部分に完全に押し込まれていない場合、円筒状ボアに入ったサンプル流体はスロットを通って出ることができる。図36は、一般的な流体のフローラインを示している。この説明は、図22に示されている2つのチューブインサート122などの複数のテストチューブカートリッジ内の供給インサートの場合にも等しく当てはまる。
【0223】
フィルタ機能
図38は、フィルタ322を含むことを可能にする供給インサート22の代替的な実施形態を示し、それにより、サンプル流体中の粒子または含有物をサンプル流体から除去することができ、サンプル流体は供給チャンバに入り、その後に、結合されたテストリザーバまたはチューブに供給される。この実施形態では、供給インサート22は、膜321によって閉じられた円筒状ボア320への下側入口を有する。サンプルが添加された後に供給インサート22がカートリッジアセンブリに押し込まれると、変位したサンプル流体のすべてが、提供された流体経路を通って閉じた円筒状ボア320の外側の周りを流れなければならない。これらの流体経路内には、図38に網掛けで示すように、1つまたは複数のフィルタ構成要素322が含まれる。これらのフィルタ322は、圧縮ガラス繊維または多孔質フォームまたは多孔質プラスチック材料などの繊維タイプの材料とすることができる。1つまたは複数のフィルタ構成要素322は、材料の単一の環状ディスク、または利用可能な流体経路のそれぞれに配置されたいくつかのより小さな部品とすることができる。
【0224】
フィルタ構成要素322は、そうでなければテストリザーバに供給されるサンプル流体を汚染するであろう粒子または材料を物理的に捕捉および収容する。フィルタ構成要素322はまた、そうでなければテストまたは増幅プロセスを阻害または妨害し得るサンプル流体の構成要素に結合または捕捉する生物学的または化学的構成要素を組み込むことができる。次に、フィルタ構成要素322を通過した流体は、部品がサンプル流体に沈められると、上部から供給スロットを通って中央円筒状供給ボア320を満たす。このフィルタ処理されたサンプル流体は、その後に、取り付けられたテストチューブへの穿孔を介したその後のシールおよび供給のために、供給ボア320内で利用可能である。
【0225】
磁気ビーズの核酸濃度
図39は、磁気ビーズ濃縮機能がカートリッジアセンブリ内で実行されることを可能にする供給インサート22の代替的な構成を示す。この実施形態では、供給インサート22は、円筒状ボア320の外側を通過する流体経路を有さず、供給インサート22がカートリッジに挿入されると、変位されたサンプル流体のすべてが円筒状ボア320を通って流れるようになる。この実施形態では、サンプル調製流体は、磁性粒子を含むか、またはこれらの粒子は、テストプロセスステップとして追加され得る。粒子の表面は、コーティングされるか、または機能化されて、サンプル流体中または溶液中に混合されたサンプル材料中の少なくとも1つの目的のターゲット物質と結合し、捕捉する。例えば、典型的な用途は、磁性粒子の機能化された表面コーティングに核酸、DNA、またはRNA材料を結合することであり、これらの粒子は、カートリッジ1のサンプル容積部6に含まれるサンプル流体内で混合する。磁性粒子は非常に小さくすることができ、通常は0.5マイクロメートルから10マイクロメートルの範囲内である。これらの磁性粒子は自由に混合し、サンプル流体内で浮遊状態を維持し、ターゲット分子と結合して表面コーティングに捕捉する。
【0226】
供給インサートまたは供給チャンバは、カートリッジの内面にスライドシールができるように構成されており、インサート322の固体部分が中央シリンダの外側を通過する流体をブロックし、サンプルチャンバ内のすべての流体が中央の円筒状ボア320を強制的に流れる。図39のフローラインは、典型的な流体経路を示している。この実施形態では、供給インサート構成要素は、構成要素の成形プラスチック内に捕捉され、円筒状ボア320の内面の近くに配置された1つまたは複数の永久磁石331を組み込んでいる。典型的な構成は、ボア320の内側を囲むリング磁石331を使用することであり、この磁石331は、インサート22が射出成形され、部品22のプラスチック構造内に捕捉されるときに成形プロセスに導入される。サンプル流体が供給シリンダを通って流れると、内部磁石331の近くで、磁性粒子が磁場によって供給シリンダの側壁に引き付けられ、捕捉されたDNAまたはRNA材料と共に円筒状供給チューブ320内に保持される。
【0227】
供給構成要素がサンプルチャンバのベースにあるシールに押し込まれ、ピストン構成要素がチャンバの上部に係合してシールすると、穿孔構成要素がサンプルチャンバ1のベースにある薄い材料を突き破る。供給プロセス中に、シリンダの内壁に対して磁気的に保持された磁気ビーズは、Oリングでシールされたプランジャによってボア320から拭き取られる。したがって、供給シリンダ内にトラップされたサンプル流体に混合され、この流体と磁気ビーズのすべてが、増幅チューブへのピストンの漸進的な移動によって、結合されたテストチューブに供給される。これにより、サンプル流体内のDNAまたはRNA材料が濃縮され、増幅チューブ107、108に送られる。これには、サンプルから抽出されたDNAまたはRNA核酸材料を濃縮および精製して、より高感度で信頼性の高い診断テストを行うことができるという利点がある。テストチューブ3、107、108内の試薬は、追加されたサンプル流体によって溶出されると、磁性粒子に選択的に結合した分子と反応することができる。テストチューブ試薬は、これらの成分の反応および検出を支援するために、テストチューブ3、107、108内の磁性粒子の表面から捕捉された物質を放出するのに適した塩または化学物質またはpHを含むことができる。
【0228】
テストの終了
テストが完了し、オプションの加熱または紫外線後処理が完了すると、機器コントローラ201は、フロントパネルLCDディスプレイのユーザインターフェースでユーザに、テストが完了し、カートリッジを機器から取り外すことができることを通知する。
【0229】
カートリッジの取り外しは、カートリッジ検出センサ223および蓋閉位置センサ222からのフィードバックを使用して、機器コントローラ201によって検出することができる。カートリッジが取り外されたことが検出されると、機器コントローラ201は、セルフテストを完了し、新しいテストを開始するための制御シーケンスをセットアップし、機器の準備ができてカートリッジを挿入してテストを実行するようユーザに促すことができる。
【0230】
本明細書に記載された実施形態は、非限定的な例としてのみ提供され、記載された実施形態の多くの変更は、本発明の範囲から逸脱することなく当業者に明らかであろう。
【0231】
この明細書における従来の出版物(またはそこから派生した情報)への言及、または公知の事柄への言及は、その従来の出版物(またはそれから派生した情報)または公知の事柄が、この明細書が関連する取り組みの分野における通常の一般的知識の一部を形成するという承認、容認、またはいかなる形の提案であるとも、みなされないし、またみなすべきではない。
図1
図2
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