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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】つらら防止装置
(51)【国際特許分類】
   E04D 13/00 20060101AFI20230511BHJP
   E04H 9/16 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
E04D13/00 B
E04H9/16 E
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021021229
(22)【出願日】2021-02-12
(65)【公開番号】P2022123725
(43)【公開日】2022-08-24
【審査請求日】2022-03-29
(73)【特許権者】
【識別番号】000235543
【氏名又は名称】飛島建設株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】505132770
【氏名又は名称】株式会社エイチ・アール・オー
(74)【代理人】
【識別番号】110000051
【氏名又は名称】弁理士法人共生国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐井 孝昭
(72)【発明者】
【氏名】筒井 隆規
(72)【発明者】
【氏名】松田 浩朗
(72)【発明者】
【氏名】桃木 昌平
(72)【発明者】
【氏名】太田 義治
【審査官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05746027(US,A)
【文献】特開昭54-112520(JP,A)
【文献】実開昭54-152529(JP,U)
【文献】米国特許第06668491(US,B1)
【文献】実開昭51-138948(JP,U)
【文献】特開2005-155297(JP,A)
【文献】実開昭52-105819(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/00
E04H 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水滴を滴下方向にガイドする非吸水性の水滴ガイドと、前記水滴ガイドを構造物に機械的に固定する固定手段とを備え、
前記固定手段は、軒先や空中に突出した構造物の下端縁を含むつららが発生しやすい位置に、少なくとも前記水滴ガイドの下端部が揺動可能となるように前記水滴ガイドの上端部を固定し、
前記水滴ガイドの揺動範囲内に位置し、揺動によって前記水滴ガイドがめくれ上がるのを防止するとともに、揺動時に前記水滴ガイドが衝突することにより前記水滴ガイドからの水滴の離脱を促進するストッパをさらに備えることを特徴とするつらら防止装置。
【請求項2】
前記水滴ガイドは、水平方向に連続する防水シート、水平方向に連続するとともに下端側から切り込みを入れた防水シート、長手方向が上端から下端に延在するリボン状の防水シート、及びチェーンのいずれかであることを特徴とする請求項1に記載のつらら防止装置。
【請求項3】
前記水滴ガイドがチェーンでない場合、前記水滴ガイドは、前記水滴ガイドの上端部側から最大1/2の長さまでは前記水滴ガイドの下端側よりは揺動を抑制するように材質又は形状を変えて形成するか、又は前記水滴ガイドの上端部側から最大1/2の長さまでの揺動を抑制するように固定することを特徴とする請求項1又は2に記載のつらら防止装置。
【請求項4】
前記水滴ガイドがチェーンでない場合、前記水滴ガイドは、下端部を前記構造物側に折返し、折りかえした下端部の先端を、上端部とは別に上端部から下方に離隔した位置でさらに固定することを特徴とする請求項1又は2に記載のつらら防止装置。
【請求項5】
水滴を滴下方向にガイドする非吸水性の水滴ガイドと、前記水滴ガイドを構造物に機械的に固定する固定手段とを備え、
前記固定手段は、軒先や空中に突出した構造物の下端縁を含むつららが発生しやすい位置に、少なくとも前記水滴ガイドの下端部が揺動可能となるように前記水滴ガイドの上端部を固定し、
前記水滴ガイドは、前記構造物の下端縁に沿って外周を連続的に囲んでスカート状の形状となるように固定されることを特徴とするつらら防止装置。
【請求項6】
水滴を滴下方向にガイドする非吸水性の水滴ガイドと、前記水滴ガイドを構造物に機械的に固定する固定手段とを備え、
前記固定手段は、軒先や空中に突出した構造物の下端縁を含むつららが発生しやすい位置に、少なくとも前記水滴ガイドの下端部が揺動可能となるように前記水滴ガイドの上端部を固定し、
前記水滴ガイドの下端側に風を集中して当たるように風の向きをガイドするガイド板を更に備えることを特徴とするつらら防止装置。
【請求項7】
前記固定手段又は前記固定手段の下方に前記水滴ガイドを直接または間接に振動させる振動手段をさらに備え、
前記振動手段は、前記水滴ガイドを直接または間接に所定の時間振動させる振動装置又は風により吹き上げられる前記水滴ガイドを元の位置に戻すように付勢して振動させる弾性体のいずれかを含むことを特徴とする請求項1、5、又は6のいずれか一項に記載のつらら防止装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、つらら防止装置に関し、特に、構造物のつららが発生しやすい場所に、非吸水性の水滴ガイドの少なくとも下端部が揺動可能に固定する構造を有し、水滴ガイドが風などの外力を受けて揺動して水滴を振り落とすことにより、つららの発生を防止するつらら防止装置に関する。
【背景技術】
【0002】
冬季に雪の多い地域では、建物の軒先などにつららが発生しやすい。一度つららが発生すると、屋根に積もった雪が建物内の暖房の熱などにより部分的に溶けるなどして、上方から流れ落ちてくる水滴が、つららを伝ってつららの先端に向けて流れていく。水滴はそのまま滴下してしまえば問題はないが、滴下する前に凍ってしまうとつららの一部となりつららを成長させることになる。
つららが成長すると、屋根や軒先の雨樋などに重量物としての負荷を与えるばかりか、根元から取れて落下すると人や物に当たり事故につながるおそれもある。
つららの発生を防止したり、発生したつららを除去したりする技術はこれまでに様々なものが検討されている。
【0003】
特許文献1には、熱伝導性に優れた金属材料で形成された筒状長尺体の内側裏面に密着して、複数本の電熱ヒータ線を取り付けると共に、筒状長尺体の上面側に、その長手方向に沿って融雪水を導く樋溝を形成し、この筒状長尺体を建築物のつらら発生部位に沿ってその下方に近接させて取り付けるつらら防止装置が開示されている。
特許文献1によれば、つららの発生部位に電熱ヒータ線で加熱される筒状長尺体を近接させて設置するため、融雪水は凍結することなく流れていくので、つららの発生を防止することができる。しかし、このために筒状長尺体を加熱する電力を供給する必要があり、つらら防止のための費用がかさんでしまうという課題がある。
【0004】
特許文献2には、低接着シートの下端に鋤状の切り込みを多数並列に形成し、かつ、上端部の片面には接着層を設けたつらら防止用シ-トが開示されている。特許文献2によれば、低接着シートにより水滴が垂れ落ちやすく、また水滴の凍結を防止するための電力なども不要であるため、簡便で費用を抑制してつらら防止を図ることが期待される。しかし、つららが発生しやすい場所が必ずしも平坦で、接着性に優れた表面であるとは限らない。そのため取り付け場所が限られたり、又貼り付けられたとしても貼り付け強度が不足したりして使用するうちにはがれてきてしまうおそれもある。
そこで、簡単な構造で維持費用を抑えつつ効果的につららの発生を防止するつらら防止装置の提供が期待される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-061118号公報
【文献】実全昭54-152529号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記従来のつらら防止装置における問題点に鑑みてなされたものであって、本発明の目的は、構造物のつららが発生しやすい場所に、非吸水性の水滴ガイドの少なくとも下端部が揺動可能に固定する構造を有し、水滴ガイドが風などの外力を受けて揺動して水滴を振り落とすことにより、つららの発生を防止するつらら防止装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためになされた本発明によるつらら防止装置は、水滴を滴下方向にガイドする非吸水性の水滴ガイドと、前記水滴ガイドを構造物に機械的に固定する固定手段とを備え、前記固定手段は、軒先や空中に突出した構造物の下端縁を含むつららが発生しやすい位置に、少なくとも前記水滴ガイドの下端部が揺動可能となるように前記水滴ガイドの上端部を固定し、前記水滴ガイドの揺動範囲内に位置し、揺動によって前記水滴ガイドがめくれ上がるのを防止するとともに、揺動時に前記水滴ガイドが衝突することにより前記水滴ガイドからの水滴の離脱を促進するストッパをさらに備えることを特徴とする。
【0008】
前記水滴ガイドは、水平方向に連続する防水シート、水平方向に連続するとともに下端側から切り込みを入れた防水シート、長手方向が上端から下端に延在するリボン状の防水シート、及びチェーンのいずれかであることが好ましい。
前記水滴ガイドがチェーンでない場合、前記水滴ガイドは、前記水滴ガイドの上端部側から最大1/2の長さまでは前記水滴ガイドの下端側よりは揺動を抑制するように材質又は形状を変えて形成するか、又は前記水滴ガイドの上端部側から最大1/2の長さまでの揺動を抑制するように固定することが好ましい。
【0009】
前記水滴ガイドがチェーンでない場合、前記水滴ガイドは、下端部を前記構造物側に折返し、折りかえした下端部の先端を、上端部とは別に上端部から下方に離隔した位置でさらに固定することが好ましい。
前記水滴ガイドは、前記構造物の下端縁に沿って外周を連続的に囲んでスカート状の形状となるように固定されることが好ましい。
前記水滴ガイドの下端側に風を集中して当たるように風の向きをガイドするガイド板を更に備えることが好ましい。
【0010】
記固定手段又は前記固定手段の下方に前記水滴ガイドを直接または間接に振動させる振動手段をさらに備え、前記振動手段は、前記水滴ガイドを直接または間接に所定の時間振動させる振動装置又は風により吹き上げられる前記水滴ガイドを元の位置に戻すように付勢して振動させる弾性体のいずれかを含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るつらら防止装置によれば、非吸水性の水滴ガイドは、構造物のつららが発生しやすい場所に、少なくとも水滴ガイドの下端部が揺動可能となるように固定されるため、風などの外力を受けて揺動して水滴を振り落とすので、ヒータなどによる加熱のための電力を使用することなく、つららが発生するのを防止することができる。特に本発明によるつらら防止装置は構造物に機械的に固定するので強風にさらされても剥がれ落ちることがない。
【0012】
また、本発明に係るつらら防止装置によれば、水滴ガイドの下端側に風を集中して当たるように風の向きをガイドするガイド板を備えるため、水滴ガイドは風が集中して揺動が促進されるので、効率よく水滴を振り落とすことができる。
【0013】
さらに、本発明に係るつらら防止装置によれば、水滴ガイドの揺動範囲内に位置し、揺動によって水滴ガイドがめくれ上がるのを防止するとともに、揺動時に水滴ガイドが衝突することにより水滴ガイドからの水滴の離脱を促進するストッパを備えるため、風によりめくり上がることがなくまたストッパとの衝突により効率よく水滴を振り落とすことができる。
【0014】
また、本発明に係るつらら防止装置によれば、固定手段又は固定手段の下方に水滴ガイドを所定の時間振動させる振動手段を備えるため、風が吹かない日が続いても振動手段により水滴ガイドを振動させて下端部を揺動させ、効率よく水滴を振り落とすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明の実施形態によるつらら防止装置の構成を概略的に示す図である。
図2】本発明の実施形態によるつらら防止装置の水滴ガイドの変形例を示す図である。
図3】本発明の実施形態によるつらら防止装置の水滴ガイドの他の変形例を示す図である。
図4】本発明の実施形態によるつらら防止装置の水滴ガイドの他の変形例を示す図である。
図5】本発明の実施形態によるガイド板を備えるつらら防止装置の構成を概略的に示す図である。
図6】本発明の実施形態によるストッパを備えるつらら防止装置の構成を概略的に示す図である。
図7】本発明の実施形態による振動手段を備えるつらら防止装置の構成を概略的に示す図である。
図8】本発明の実施形態による水滴ガイドの固定方法の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
次に、本発明に係るつらら防止装置を実施するための形態の具体例を、図面を参照しながら詳細に説明する。
図1は、本発明の実施形態によるつらら防止装置の構成を概略的に示す図である。
図1を参照すると、本発明の実施形態によるつらら防止装置1は、水滴を滴下方向にガイドする水滴ガイド20及び水滴ガイド20をつらら防止の対象とする構造物30に機械的に固定する固定手段10とを備える。
【0017】
本発明の実施形態によるつらら防止装置1は、対象とする構造物30の軒先や空中に突出した構造部分の下端縁を含むつららが発生しやすい位置に、非吸水性の水滴ガイド20の下端部が揺動可能となるように水滴ガイド20の上端部を固定することにより、構造物30の屋根や壁面から水滴ガイド20に伝わり落ちてきた水滴を、風などの力を利用して揺動させ、水滴ガイド20から垂れ落ちるようにガイドすることで水滴の凍結によるつららの発生や成長を防止する装置である。
【0018】
水滴ガイド20は容易に揺動しやすいように柔軟で可撓性のある素材が好ましく、塩化ビニルやゴム製の防水シートなどを使用するのが好ましい。短期的な使用であれば布帛などの柔軟素材の表面に超撥水性のコーティング剤を施したものでもよい。また、水滴ガイド20として素材が硬質のものを使用する場合は、図2(d)で後述する鎖状の水滴ガイドのように相互に回動可能に結合された連結体とするのが好ましい。
【0019】
水滴ガイド20を機械的に固定する固定手段10は、例えば図1に示すようにL字アングルの様な固定具12と固定ねじ11とを備え、固定具12で水滴ガイド20を構造物30との間に挟み込むようにして固定ねじ11にて固定する。図1に示す固定手段10は1つの例であり、例えば固定具12はL字状の形状に限らず、平板状でもコの字状のアングルでも構わない。また水滴ガイド20の固定も、固定具12と構造物30との間に挟み込む形態でなくても、例えば固定具12自体に水滴ガイド20を挟み込むための溝部を備え、予め水滴ガイド20を溝部で挟み込んで固定したうえで構造物30に取り付けるようにしてもよい。また固定ねじ11も木ねじのように構造物30にねじ込む形状のものでもよいし、構造物30に貫通孔を備える場合は、貫通孔を挿通するボルトとナットの様な構成としてもよいし、また万力のように構造物30の一部を挟み込んで締め付けるような先端に抑え部を備えたねじ形状としてもよい。
【0020】
図2は、本発明の実施形態によるつらら防止装置の水滴ガイドの変形例を示す図であり、図2(a)~(d)の4種類の変形例を示す。
図2(a)は水平方向に連続するシート状の防水シートからなる水滴ガイド20である。水滴ガイド20は、上端側の1辺のみが固定手段10により構造物30に固定され、下端側は幕状に垂れ下がった形で取り付けられる。構造物30から伝わり落ちてきた水滴はそのまま水滴ガイド20の表面を伝って下方に垂れ落ちていき、水滴ガイド20の下端部まで到達する。水滴ガイド20が静止した状態では、下端部まで到達した水は雫として落下する量になるまで、下端部に滞留する。もしそこで長時間滞留すると滞留した水が凍ってしまい、つららの発生及び成長の起点となるおそれがある。本発明の実施形態によるつらら防止装置1の水滴ガイド20は、上端部のみが固定されるため、風を受けると下端部が容易に揺動する。このため水滴ガイド20の下端部に滞留する水分は揺動により水滴として振り落とされ、つららの発生が防止される。
【0021】
図2(a)に示す水滴ガイド20は、連続するシート状であるために、全体として重量があり、揺動の振幅は大きくなりにくいが、風を受ける面積も大きく、風の吹き方により全体にめくれるように揺動したり、波打つように揺動したりして複雑な揺動を生じやすく、それにより水滴の落下を促進する効果が得られる。
【0022】
図2(b)は、上端側は水平方向に連続するとともに下端側から切り込みを入れた防水シートからなる水滴ガイド21を示す。水滴ガイド21の上端側の水平方向に連続する部分は広い範囲で風を受けるため、波打つような揺動を促す一方、下端側は切込みによって細くリボン状に形成されているため、部分的な風を受けても下端部は独立して大きく揺動しやすい。
【0023】
図2(c)は、図2(b)の水滴ガイド21の下端側からの切り込みを上端部近傍まで行い、長手方向が上端から下端に延在する複数のリボンが並列する形の防水シートからなる水滴ガイド22を示す。尚、水滴ガイド22の上端部は固定手段10により固定しやすいように切残し、上端部のみ互いにつながるように形成するのが好ましい。固定手段10から露出した部分では独立したリボン状に形成されるため、わずかな風で容易に揺動し、下端部に滞留する水滴を落下させやすい。
【0024】
図2(d)は、シート状ではなく、チェーンにより形成された水滴ガイド23を示す。チェーンにより形成された水滴ガイド23は、挟み込んで固定するのには向いていないため、固定手段10としてはチェーンを1本ずつ吊るして固定するように形成した固定具13を使用する。固定具13は例えば図2(d)に示すようにL字アングル状で、L字アングルの一方の面は構造物30に固定するよう貫通穴などが形成され、折れ曲がった他方の面は下端側の縁にチェーン取り付け部が形成され、またチェーン取り付け部が最下点となるようチェーン取り付け部の間には湾曲した凹部が連続して形成されるような構造とする。
【0025】
通常、鎖樋とも呼ばれるチェーンは、雨樋などから地面まで垂らされて雨水を誘導するが、本発明の実施形態による水滴ガイド23のチェーンは、下端が地面まで届かず、空中で風などの力を受けて揺動するように形成される。水滴ガイド23のチェーンは金属製でも樹脂製でもよいが、風の力を受けて揺動しやすいように図2(d)の最下段のチェーンのように耳状に風受け板を設けてもよい。
【0026】
図2で示した水滴ガイド(20、21、22、23)は、いずれも、固定手段10で固定された上端を除き全体が揺動しやすいように形成したものである。しかし構造物30の取り付け部が壁状の下端ではなく、厚さの限られた突出部の下端などの場合、揺動した水滴ガイド(20、21、22、23)がそのまま構造物30の上にめくれて乗ってしまい、水滴ガイド(20、21、22、23)の役割を果たさなくなることが起こり得る。
そこで厚さの限られた突出部の下端などに取り付ける場合の水滴ガイド(20、21、22、23)のさらなる変形例を示したのが図3である。
【0027】
図3は、本発明の実施形態によるつらら防止装置の水滴ガイドの他の変形例を示す図であり、図3(a)~(d)の4種類のさらなる変形例を示す。
図3(a)は、防水シートの上端部側を折り返し、揺動する部分の上端部側の約1/2を2重構造として形成した水滴ガイド20である。2重部分は貼り合わせても縫い合わせてもよいが、2重構造とすることにより風などの外力に対する揺動量が抑制される。このため水滴ガイド20の下端部側は大きく揺動しても、水滴ガイド20全体がめくれて乗り上げることが防止される。2重構造とする部分は長くするほど下端部の揺動が抑制されてしまうため、最大でも上端部側から下端部までの長さの1/2とするのが好ましい。
【0028】
図3(b)は、2種類の材料を貼り合わせた構造の水滴ガイドであり、下端部側にある約1/2の部分は揺動しやすい防水シートを使用した水滴ガイド20であり、上端部側の残り部分は防水シートを使用した水滴ガイド20より厚手の防水シート又は硬質の樹脂により形成された水滴ガイド24の継ぎ合わせ構造である。水滴ガイド20と水滴ガイド24の境界部は縫い合わせても接着してもよい。厚手の防水シート又は硬質の樹脂は継ぎ合わせではなく水滴ガイド20の裏打ち材としてもよい。その場合は主に水滴が流れる外表面側は水滴ガイド20で構成され、水滴ガイド20の上端部側の裏面に厚手の防水シート又は硬質の樹脂を貼り合わせるようにする。いずれの構成にしても風を受けた際に下端部側の水滴ガイド20は揺動しやすいのに対し、上端部側は揺動が抑制されるため、全体としてめくれて乗り上げるのを防止することができる。この場合も水滴ガイド24の下方に向かう長さは、最大でも貼り合わせた構造の水滴ガイド全体の上端部側から下端部までの長さの1/2となるように設けるのが好ましい。
【0029】
図3(c)、(d)は、固定手段10の形状を変更することにより水滴ガイド20のめくれによる乗り上げを防止する構造の例であり、いずれも固定手段10は、L字アングルの一方の面を幅広にした固定具14を備える。幅広にする面の幅は、最大でも水滴ガイド20全体の上端部側から下端部までの長さの1/2となるように設けるのが好ましい。
図3(c)は、水滴ガイド20の上端部側を、固定具14の幅広にした面に固定することにより上端部側の揺動を抑え、下端部側が大きく揺動してもめくれによる乗り上げを防止する構造を示す。固定具14の幅広とした面と水滴ガイド20の上端部側の固定は図3(c)に示すようにねじ止めでもよいし、接着剤を使用して貼り合わせてもよい。
【0030】
図3(d)は、水滴ガイド20の下端部側を内側に折り返し、折り返した先端部を固定具14の幅広とした面の下端部近傍に固定した構造を示す。折り返した先端部の固定もねじ止めでもよいし接着剤による接着でもよい。このように折り返して固定することにより、めくれ上がる方向への揺動が抑制され、めくれによる乗り上げを防止することができる。
【0031】
以上、シート状の水滴ガイド20を代表例としてめくれ上がりによる構造物30への乗り上げの防止について説明したが、図3(a)~(d)の構造はスリットを入れた構造の水滴ガイド21、22についても同様な構成とすることで適用が可能である。
【0032】
図4は、本発明の実施形態によるつらら防止装置の水滴ガイドの他の変形例を概略的に示す図である。
図2、3では構造物30の下辺一辺につらら防止装置1が取り付けられる形態を示すが、橋梁工事の際の片持ちに張り出した桁部などでは、構造物30の下辺の全周に沿ってつららが発生しやすい。このような場合のつらら防止装置1の概要を示すのが図4である。
【0033】
図4を参照すると、固定手段10は、それぞれがL字アングル形状であるが、構造物30の下辺の全周に沿って四角く枠状に取り付けられるように、構造物30に接する面側が台形に形成される固定具15を備える。水滴ガイド20は、上記の固定手段10により、構造物30の下端縁に沿って外周を連続的に囲んでスカート状の形状となるように固定される。
【0034】
このようにスカート状の形状にすることにより下から吹きあがってくるような風を取り込み、水滴ガイド20の下端部が複雑な揺動を生じやすくなり、水滴を有効に振り落としやすくなる。一方で各辺の水滴ガイド20はコーナー部で互いに接続されるため、全体がめくれ上がって構造物30の上に乗り上げるのを防止する。このような効果は、橋梁工事のように下端部が4辺とも空中に張り出した形状に限らず、構造物30の1つの壁面から直方体状に突出する突出部の3方向を取り囲むように水滴ガイド20を取り付ける場合にも同様の効果が得られる。
【0035】
図5は、本発明の実施形態によるガイド板を備えるつらら防止装置の構成を概略的に示す図である。
図5を参照すると、対象構造物31は勾配を有する屋根部であり、固定手段10は水滴ガイド25を屋根部の張り出した先端に沿うように固定するL字アングル状の固定具16と固定具16を軒下に固定する固定ネジ11とを備える。
【0036】
水滴ガイド25は、上端部側は水平方向に連続するシート状であり、下端部側には切り込みを入れた形状である。前述の水滴ガイド21と異なり切込みの長さは隣接する2本で長さが変えてある。このように1本1本のリボンの付け根の高さが左右で異なることにより、風を受けて揺動する際にリボンにねじれの要素が加わり、より水滴を落下させやすい。
水滴ガイド25は、上端部側の一辺を固定具16と構造物31との間に挟まれて固定され、固定具16の、折り曲げられて上方に立ち上がるL字形状の一方の面によって屋根部の先端に沿って接触する位置まで斜めに持ち上げられるようにガイドされてから、残りの下端部側が垂れ下がるように固定される。
【0037】
水滴ガイド25の構造物31側には水滴ガイド25の下端側に風を集中して当たるように風の向きをガイドするガイド板40が設置される。図5に示すガイド板40は、水滴ガイド25の下端部の下方で正面から吹付ける風を受け、ガイド板40の湾曲面に沿って風を上向きに誘導し、水滴ガイド25の背面側で水滴ガイド25に向かって吹付けるようにガイドする。これにより水滴ガイド25が直接風を受ける面積よりも広い面積に吹く風を集約してより強い風として、水滴ガイド25にガイドするため、揺動が助長され水滴の落下が促進される。図5ではガイド板40の形状として、正面からの風を水滴ガイド25に向けるようにガイドする形状としたが、側方からの風を水滴ガイド25に向かう風となるように誘導する形状としてもよい。
【0038】
図6は、本発明の実施形態によるストッパを備えるつらら防止装置の構成を概略的に示す図である。
図6図2(b)で示す水滴ガイド21の取り付け構造にさらにストッパ固定具50とストッパ51が設けられた構造を示す。ストッパ固定具50は固定具12の端部にL字形状の取り付け具などを介して固定する。別の実施形態では図示しない取り付け具を介して構造物31の軒下や壁面に取り付けるようにしてもよい。ストッパ51は水滴ガイド21の揺動範囲内に位置し、揺動によって水滴ガイド21がめくれ上がるのを防止するとともに、揺動時に水滴ガイド21が衝突することにより水滴ガイド21からの水滴の離脱を促進する。
【0039】
図6に示すストッパ51は、金属や樹脂などからなる細いワイヤ状であり、水滴ガイド21の表側と裏側に水滴ガイド21から離隔してそれぞれ複数本を設置する。このとき水滴ガイド21のある程度の揺動を制約しないように下側のストッパ51ほど表側と裏側とで離隔する距離を大きくとるようにする。
風などの外力により揺動が大きくなると、水滴ガイド21が、揺動範囲内に設けたストッパ51と衝突するようになる。揺動が大きくなり、勢いのついた水滴ガイド21がストッパ51と衝突することにより水滴ガイド21の下端部に滞留する水分が水滴として振り落とされやすくなる。しかし勢いが強いと水滴ガイド21が衝突後にストッパ51を乗り越え、ストッパ51に引っかかるおそれがある。これに対しストッパ51を複数設けることにより、水滴ガイド21がストッパ51を乗り越えることを防止する。
【0040】
図6では、ストッパ51のストッパ固定具50への取り付け部は詳細には示していないが、例えばストッパ固定具50の挿通孔に取り付けたボルトに巻き付けてナットで締め付けて固定するようにしてもよい。
図6に示すストッパ51は、1つの事例であり、配置の位置や本数は図6の例に限らない。またストッパ51は水平に張ったワイヤ状の形状としたが形状もこれに限らず、例えばワイヤの代わりに、ワイヤよりも水滴ガイド21から離隔した位置に取り付けられた支持棒から水滴ガイド21のそれぞれのリボン片に向けて櫛歯のように延伸するように配置した複数の突起状のものでもよい。但し水滴ガイド21に向かう風を阻害しないような大きさ及び形状とすることが望ましい。更にストッパ51は下端側だけがリボン状に形成された水滴ガイド21に限らず、上記で説明した各種の水滴ガイドにも有効である。
【0041】
図7は、本発明の実施形態による振動手段を備えるつらら防止装置の構成を概略的に示す図であり、図7(a)は振動手段が弾性体を含む形態であり、図7(b)は振動手段が振動装置を含む形態を示す。
図7(a)を参照すると、振動手段60は振動伝達板61と弾性体62とで構成される。図7(a)の実施形態では、固定手段10は、左右の折返し部の長さが異なるコの字状のアングルにより構成される固定具17と、固定具17を構造物30に取り付ける固定ネジ11とを備える。振動伝達板61は、固定具17の短い方の折返し部の先端に回動可能に取り付けられ、振動伝達板61と、振動伝達板61と対向する固定具17の長い方の折返し部との間に、ばね又はゴムなどの弾性体62が設置される。一方、振動伝達板61はねじなどによって水滴ガイド20に固定される。
【0042】
風で吹き上げられた水滴ガイド20は弾性体62を変形させるので、風の勢いが弱まると、水滴ガイド20は、変形された弾性体62が元に戻る力で付勢されて引き戻され、その勢いで無風状態の時の位置である中立位置を通り過ぎると、中立位置に戻そうとする逆向きの力が発生するので、結果的に中立位置を中心とする振動が発生する。このため水滴ガイド20の水滴は揺動されて滴下しやすくなる。
【0043】
図7(b)を参照すると、振動手段60は振動伝達板61と振動装置63とで構成される。図7(b)の実施形態では、固定手段10は、図2で説明したのと同様のL字アングル状の固定具12と固定ねじ11を備える。振動伝達板61は、図7(a)の例と同様、固定具12の下方に向かう折返し部の先端に回動可能に取り付けられる。さらに、振動伝達板61は水滴ガイド20とねじなどによって接合される。振動伝達板61と対向する位置には振動装置63が備え付けられる。振動装置63は例えば図7(b)のように取り付け具にて構造物30の下面に取り付けられる。振動装置63は例えば動電式の加振装置であり、外部電力を受けて振動を発生する。振動装置63の振動出力端は振動伝達板61に連結され、振動装置63で発生した水平方向の振動は振動伝達板61を介して直接に水滴ガイド20に伝達される。このため風が吹かない日が続いても、振動装置63を動作させ、水滴ガイド20を揺動させ、水滴を振り落とすように操作することが可能となる。
【0044】
振動装置63は、連続的に作動させる必要はなく、風がない日が続いたときに所定の時間作動させるようにしてもよいし、所定の時間間隔で一定時間だけ動作する間欠動作を繰り返すようにしてもよい。このような制御を行うため振動手段60にはこうした振動のタイミングを制御するタイマーを備えたマイコンなどを含む制御手段をさらに有してもよい。
【0045】
図7では振動装置63を備える振動手段60による振動は、振動伝達板61により直接水滴ガイド20に加えるように示したが、水滴ガイド20の上端部側に樹脂などの裏打ちを行う場合はこうした裏打ち材料を介して間接的に水滴ガイド20に伝達するようにしてもよい。また水滴ガイド20を挟んでから構造物30に固定する固定手段10を使用する場合は、固定手段10を介して間接的に水滴ガイド20に振動を伝達するようにしてもよい。
【0046】
図8は本発明の実施形態による水滴ガイドの固定方法の変形例を示す図である。
図8(a)、(b)は構造物30のつらら防止装置を取り付ける部分に貫通孔が設けられている場合、または貫通孔をあけることができる場合の水滴ガイド20の固定方法を示す。この場合、貫通孔を利用してボルトとナットの様な一般的な固定ねじ11が使用できるので、簡便で容易に水滴ガイド20を固定することができる。このとき水滴ガイド20に丸穴をあけてボルトを挿通するようにすることにより、図1、2などで説明したような固定具12を使用しなくても水滴ガイド20を固定することができる。但し図8(a)のように構造物30の下面側で水滴ガイド20を固定する場合、隣接する固定手段10の間は水滴ガイド20が自重で撓んで構造物30の下縁と密着しなくなる可能性があるため、固定具12を使用して下から保持しながら固定するようにすることが好ましい。
【0047】
図8(c)、(d)は構造物30に貫通穴を開けないで水滴ガイド20を取り付ける構造を示す図である。この場合、固定手段10はスポット的にクランプして固定する所定幅のU字状の固定具18を備える。固定具18は図8(c)のように上側で固定ねじ11により締め付ける固定方法と、図8(d)のように下側で固定ネジねじ11により締め付ける固定方法とを取り得るが、いずれにしても構造物30の下側に当たるU字状の固定具18の一方の腕部分は水滴ガイド20を貫通して構造物30の下側に対向させる必要があるため、水滴ガイド20には固定具18の下面側に位置する腕部分を貫通させる穴を固定具18の位置に合わせて複数箇所に設ける必要がある。
【0048】
以上、本発明の実施形態について図面を参照しながら詳細に説明したが、本発明は、上述の実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的範囲から逸脱しない範囲内で多様に変更することが可能である。
【符号の説明】
【0049】
1 つらら防止装置
10 固定手段
11 固定ねじ
12、13、14、15,16、17、18 固定具
20、21、22、23、24、25 水滴ガイド
30、31 構造物
40 ガイド板
50 ストッパ固定具
51 ストッパ
60 振動手段
61 振動伝達板
62 弾性体
63 振動装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8