(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】エレベータ
(51)【国際特許分類】
B66B 11/02 20060101AFI20230511BHJP
B66B 11/08 20060101ALI20230511BHJP
B66B 13/30 20060101ALI20230511BHJP
B66B 13/14 20060101ALI20230511BHJP
B66B 9/02 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
B66B11/02 Z
B66B11/08 A
B66B13/30 Z
B66B13/14 A
B66B9/02 Z
(21)【出願番号】P 2022074241
(22)【出願日】2022-04-28
【審査請求日】2022-04-28
(73)【特許権者】
【識別番号】000112705
【氏名又は名称】フジテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】弁理士法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】宮川 行宏
【審査官】今野 聖一
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-121021(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106185546(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114906686(CN,A)
【文献】特開2017-128422(JP,A)
【文献】特開2006-306527(JP,A)
【文献】特開2013-095524(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第109335928(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 11/00 - 11/08
B66B 13/00 - 13/30
B66B 9/00 - 9/193
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の昇降路と、
前記第1の昇降路内で昇降可能な第1の昇降駆動装置と、
前記第1の昇降駆動装置にそれぞれ結合可能な複数の乗りかごと、を備え、
前記複数の乗りかごは、第1の乗りかごと、該第1の乗りかごよりも幅方向の寸法が大きい第2の乗りかごと、を含む、エレベータ。
【請求項2】
前記第1の昇降路と前記幅方向に隣接して平行に設けられた第2の昇降路と、
前記第2の昇降路内で昇降可能な第2の昇降駆動装置と、を備え、
前記第2の乗りかごは、前記第1の昇降駆動装置及び前記第2の昇降駆動装置に跨って結合可能である、請求項1に記載のエレベータ。
【請求項3】
前記第1の昇降駆動装置を駆動する第1のモータと、
前記第2の昇降駆動装置と駆動する第2のモータと、
前記第1のモータの軸と前記第2のモータの軸とを結合する軸結合機と、を備え、
前記第2の乗りかごが、前記第1の昇降駆動装置及び前記第2の昇降駆動装置に跨って結合するとき、前記軸結合機が前記第1のモータの軸と前記第2のモータの軸とを結合した状態で、前記第1のモータが駆動するとともに、前記第2のモータが前記第1のモータに従動することで、前記第1の昇降駆動装置及び前記第2の昇降駆動装置が昇降する、請求項2に記載のエレベータ。
【請求項4】
前記第1の乗りかご及び第2の乗りかごが停止する少なくとも一つの乗場を備え、
前記少なくとも一つの乗場は、前記第1の昇降路と対向する第1の乗場出入口と、前記第2の昇降路と対向する第2の乗場出入口と、を有し、
前記第2の乗りかごは、前記第1の乗場出入口と対応する第1の乗りかご出入口と、前記第2の乗場出入口と対応する第2の乗りかご出入口と、を有する、請求項2に記載のエレベータ。
【請求項5】
前記第1の乗りかご及び第2の乗りかごが停止する少なくとも一つの乗場を備え、
前記少なくとも一つの乗場は、前記第1の昇降路と対向する位置から前記第2の昇降路と対向する位置に跨って配置される第3の乗場出入口、を有し、
前記第1の乗りかご及び前記第2の乗りかごが停止する少なくとも一つの乗場を備え、
前記第2の乗りかごは、前記第1の昇降路内から前記第2の昇降路内に跨って配置される第3のかご出入口を有する、請求項2に記載のエレベータ。
【請求項6】
前記第1の乗りかご及び前記第2の乗りかごが停止する少なくとも一つの乗場を備え、
前記少なくとも一つの乗場は、前記第1の昇降路と対向する第1の乗場出入口と、前記第2の昇降路と対向する第2の乗場出入口と、前記第1の昇降路と対向する位置から前記第2の昇降路と対向する位置に跨って配置される第3の乗場出入口と、を有し、
前記第2の乗りかごは、前記第1の昇降路内から前記第2の昇降路内に跨って配置される第3のかご出入口を有し、
前記第1の乗場出入口及び前記第2の乗場出入口を開閉可能とし且つ前記第3の乗場出入口を閉鎖する第1運転状態と、前記第1の乗場出入口及び前記第2の乗場出入口を閉鎖し且つ前記第3の乗場出入口を開閉可能とする第2運転状態と、を切り替え可能である、請求項2に記載のエレベータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、通常の乗りかごに乗せることのできない寝台等の長尺の荷物を乗せることができるエレベータに関する。
【背景技術】
【0002】
本願の発明者は、乗りかごと乗りかごを昇降させる昇降駆動装置とが分離・結合するエレベータを提案している(特許文献1)。このエレベータでは、幅方向に並ぶ2つの昇降路のそれぞれに配置された昇降駆動装置に、1つずつ乗りかごが結合可能である。また、このエレベータでは、昇降駆動装置上に設けられた横軌道を通じて、隣り合う昇降路に位置する昇降駆動装置に、乗りかごが移行できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このようなエレベータでは、昇降駆動装置に通常サイズの乗りかごが結合されているため、乗りかごに寝台等の通常の荷物よりも長尺の荷物を乗せることができなかった。
【0005】
本発明は、通常の乗りかごに乗せることのできない長尺の荷物を乗せることができるエレベータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のエレベータは、
第1の昇降路と、
前記第1の昇降路内で昇降可能な第1の昇降駆動装置と、
前記第1の昇降駆動装置にそれぞれ結合可能な複数の乗りかごと、を備え、
前記複数の乗りかごは、第1の乗りかごと、該第1の乗りかごよりも幅方向の寸法が大きい第2の乗りかごと、を含む。
【0007】
かかる構成によれば、幅方向の寸法が大きい第2の乗りかごを第1の昇降駆動装置に結合させることで、長尺の荷物を、第2の乗りかごに乗せることができる。また、第2の乗りかごよりも幅方向の小さい第1の乗りかごを第1の昇降駆動装置に結合させることで、通常の荷物(幅が大きくない荷物)を運搬する際には、乗りかご(第1の乗りかご)を使用することで、乗りかごを昇降させるためのエネルギーを抑えることができる。
【0008】
前記エレベータでは、
前記第1の昇降路と前記幅方向に隣接して平行に設けられた第2の昇降路と、
前記第2の昇降路内で昇降可能な第2の昇降駆動装置と、を備え、
前記第2の乗りかごは、前記第1の昇降駆動装置及び前記第2の昇降駆動装置に跨って結合可能であってもよい。
【0009】
かかる構成によれば、幅方向の寸法の大きい第2の乗りかごが、2つの昇降駆動装置により安定的に支持された状態で昇降できる。また、通常の荷物を運搬する際には、第1の乗りかごを2つ利用することができる。
【0010】
前記エレベータでは、
前記第1の昇降駆動装置を駆動する第1のモータと、
前記第2の昇降駆動装置と駆動する第2のモータと、
前記第1のモータの軸と前記第2のモータの軸とを結合する軸結合機と、を備え、
前記第2の乗りかごが、前記第1の昇降駆動装置及び前記第2の昇降駆動装置に跨って結合するとき、前記軸結合機が前記第1のモータの軸と前記第2のモータの軸とを結合した状態で、前記第1のモータが駆動するとともに、前記第2のモータが前記第1のモータに従動することで、前記第1の昇降駆動装置及び前記第2の昇降駆動装置が昇降してもよい。
【0011】
かかる構成によれば、第1のモータが駆動し且つこの駆動に第2のモータが従動して第1、第2の昇降駆動装置の両方が昇降することで、第1、第2の昇降駆動装置の昇降が確実に同期するため、第2の乗りかごが安定的に昇降する。
【0012】
前記エレベータでは、
前記第1の乗りかご及び第2の乗りかごが停止する少なくとも一つの乗場を備え、
前記少なくとも一つの乗場は、前記第1の昇降路と対向する第1の乗場出入口と、前記第2の昇降路と対向する第2の乗場出入口と、を有し、
前記第2の乗りかごは、前記第1の乗場出入口と対応する第1の乗りかご出入口と、前記第2の乗場出入口と対応する第2の乗りかご出入口と、を有してもよい。
【0013】
かかる構成によれば、第2の乗りかごに第1、第2の昇降路内にそれぞれ位置する2つのかご出入口があるため、第1の乗りかごに乗り込む時に使用する乗場出入口と、第2の乗りかごに乗り込むときに使用する乗場出入口とを兼用することができる。
【0014】
前記エレベータでは、
前記第1の乗りかご及び第2の乗りかごが停止する少なくとも一つの乗場を備え、
前記少なくとも一つの乗場は、前記第1の昇降路と対向する位置から前記第2の昇降路と対向する位置に跨って配置される第3の乗場出入口、を有し、
前記第1の乗りかご及び前記第2の乗りかごが停止する少なくとも一つの乗場を備え、
前記第2の乗りかごは、前記第1の昇降路内から前記第2の昇降路内に跨って配置される第3のかご出入口を有してもよい。
【0015】
かかる構成によれば、第2の乗りかごに第1、第2の昇降路に跨って配置される第3のかご出入口があり、且つ、乗場出入口が第1、第2の昇降路に跨って配置されているため、長尺の荷物を第2の乗りかごに容易に出入りさせることができる。
【0016】
前記エレベータでは、
前記第1の乗りかご及び前記第2の乗りかごが停止する少なくとも一つの乗場を備え、
前記少なくとも一つの乗場は、前記第1の昇降路と対向する第1の乗場出入口と、前記第2の昇降路と対向する第2の乗場出入口と、前記第1の昇降路と対向する位置から前記第2の昇降路と対向する位置に跨って配置される第3の乗場出入口と、を有し、
前記第2の乗りかごは、前記第1の昇降路内から前記第2の昇降路内に跨って配置される第3のかご出入口を有し、
前記第1の乗場出入口及び前記第2の乗場出入口を開閉可能とし且つ前記第3の乗場出入口を閉鎖する第1運転状態と、前記第1の乗場出入口及び前記第2の乗場出入口を閉鎖し且つ前記第3の乗場出入口を開閉可能とする第2運転状態と、を切り替え可能であってもよい。
【0017】
かかる構成によれば、第2の乗りかごに第1、第2の昇降路に跨って配置される第3のかご出入口があり、且つ、第3の乗場出入口が第1、第2の昇降路に跨って配置されているため、第1の乗りかごに対する出入りときには、第1運転状態として第1、第2の乗場出入口を使用し、第2の乗りかごに対する出入りのときには、第2運転状態として第3の乗場出入口を使用するというように、乗場出入口を切り替えて使用できる。
【発明の効果】
【0018】
以上より、本発明によれば、通常の乗りかごに乗せることのできない長尺の荷物を乗せることができるエレベータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】
図1は、本発明の一実施形態に係るエレベータにて、第2の乗りかごが昇降駆動装置に結合した状態を示す、斜視での模式図である。
【
図2】
図2は、前記エレベータにて、第1の乗りかごが昇降駆動装置に結合した状態を示す、斜視での模式図である。
【
図3】
図3は、前記エレベータにて、単体の昇降駆動装置を示す、斜視での模式図である。
【
図4】
図4は、前記エレベータにて、単体の第2の乗りかごを示す、平面視での模式図である。
【
図5】
図5は、前記エレベータ全体の構成を示す、正面視での模式図である。
【
図6】
図6は、前記エレベータにて、第2の乗りかごと乗場とを示す、平面視での模式図である。
【
図7】
図7は、変形例に係るエレベータにて、第2の乗りかごと乗場とを示す、平面視での模式図である。
【
図8】
図8は、変形例に係るエレベータにて、第2の乗りかごと乗場とを示す、平面視での模式図である。
【
図9】
図9は、変形例に係るエレベータにて、単体の第2の乗りかごを示す、斜視での模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の一実施形態について、
図1~
図5を参照しつつ説明する。
【0021】
エレベータ1は、
図1、
図2、及び、
図5に示すように、第1の昇降路11と、第1の昇降路11内で昇降可能な第1の昇降駆動装置21と、第1の昇降駆動装置21にそれぞれ結合可能な複数の乗りかご3と、を備える。また、エレベータ1は、第1の昇降路11と幅方向(
図5における左右方向)に隣接して平行に設けられた第2の昇降路12と、第2の昇降路12内で昇降可能な第2の昇降駆動装置22と、を備える。さらに、エレベータ1は、各昇降駆動装置2の移動及び各乗りかご3の移動を制御可能な制御部を備える。
【0022】
乗りかご3は、各昇降駆動装置2に分離・結合可能である。また、乗りかご3は、
図1及び
図2に示すように、第1の乗りかご31と、第1の乗りかご31よりも幅方向(
図1及び
図2における左右方向)の寸法が大きい第2の乗りかごと、を含む。幅方向とは、昇降方向及び前後方向(図示した乗りかご3への出入り方向)の両方に直交する方向である。このように、本実施形態のエレベータ1は、2つの昇降駆動装置2、及び、2種類の乗りかご3を備える。
【0023】
エレベータ1は、
図5に示すように、建物内を複数の階(フロア)に跨って上下方向に延びる昇降路10(本実施形態では、2つの昇降路10)を備えるエレベータである。また、本実施形態のエレベータ1は、乗りかご3と乗りかご3を昇降させる昇降駆動装置2とが分離・結合するエレベータ(昇降分離型エレベータ)である。このエレベータ1では、乗りかご3自体は昇降機能を有していない。
【0024】
エレベータ1は、第1の乗りかご31及び第2の乗りかご32が停止する少なくとも一つの乗場4を備える。本実施形態のエレベータ1では、昇降路10(具体的には、昇降路10の最下部)に、且つ、内部に乗りかご3と結合可能な横軌道が設けられ横方向に延びる横移動路が接続されている。このエレベータ1では、昇降駆動装置2から分離した乗りかご3を、横移動路に退避させることができる。
【0025】
本実施形態のエレベータ1では、昇降路10が図示左右に並列して2本設けられており、上下方向には地上3階分延びている。昇降路10の1階から3階の各階には乗場4が設けられている。このエレベータ1では、昇降駆動装置2は、昇降路10内を昇降して建物の地上各階に設けられる乗場4に停止可能である。また、昇降路10の上には機械室5が設けられている。
【0026】
このエレベータ1では、全ての階床において並列する昇降路10間で、乗りかご3が幅方向に移動可能なように、両昇降路10が連通している。さらに、昇降路10の1階と横移動路との間で、乗りかご3が幅方向に移動可能なように、昇降路10と横移動路とが連通している。これら連通した部分には、開閉可能なゲートを設けておき、ゲートを閉鎖することで乗りかご3の移動を制限することもできる。
【0027】
各昇降路10の内部には、一対のガイドレールGが設けられている(
図1及び
図2参照)。このガイドレールGは、1つの昇降駆動装置2に対して、昇降駆動装置2を幅方向(図示左右方向)から挟むように一対設けられている。なお、ガイドレールGは、1つの昇降駆動装置2に対して、1つ乃至3つ以上設けられていてもよい。
【0028】
エレベータ1は、第1の昇降駆動装置21を駆動する第1のモータ71と、第2の昇降駆動装置22と駆動する第2のモータ72と、第1のモータ71の軸710と第2のモータ72の軸720とを結合する軸結合機8と、を備える(
図5参照)。本実施形態のエレベータ1では、第1のモータ71は第1の昇降路11の機械室5に配置され、第2のモータ72は、第2の昇降路12の機械室5に配置されている。第1のモータ71の容量は、第2のモータ72の容量よりも大きい。本実施形態では、各モータ71、72は、それぞれインバータにより制御されている。また、第1のモータ71は、第2の乗りかご32を昇降可能な容量を備える。なお、軸結合機8は、例えば、軸710、720を機械的に軸結合するものであるが、電磁クラッチや摩擦クラッチであってもよい。
【0029】
さらに、エレベータ1は、昇降駆動装置2と連動して昇降路10内を昇降するカウンターウェイト、及び、昇降駆動装置2とカウンターウェイトとを連結するロープRを備える。この構成により、昇降駆動装置2は、昇降可能に構成されている。ここで、従来のトラクション式エレベータにおいては、ロープRに連結した乗りかごそのものを昇降させていた。これに対して、本実施形態のエレベータ1では、従来の乗りかご部分を昇降駆動装置2に置き換えている。なお、昇降駆動装置2は、自走する構成であってもよい。
【0030】
エレベータ1の制御部は、各昇降駆動装置2及び各乗りかご3に対して乗場呼びの割当等の群管理制御を行う。この群管理では、制御部は、所定の階床の乗場4において乗場呼びが入ったときに(例えば、乗場4において呼びボタンが押下されたときに)、利用者等の輸送効率が高くなるように複数の昇降駆動装置2から前記乗場呼びに対応する昇降駆動装置2を選択し、この選択された昇降駆動装置2を該乗場呼びの入った乗場4に向かわせる。
【0031】
例えば、制御部は、CPU(Central Processing Unit)、このCPUによって実行される種々のプログラムやその実行に必要なデータ等を予め記憶するROM(Read Only Memory)やEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等の不揮発性記憶素子、このCPUのいわゆるワーキングメモリとなるRAM(Random Access Memory)等の揮発性記憶素子およびその周辺回路等を備えた基盤やマイクロコンピュータ等によって構成されている。
【0032】
昇降駆動装置2は、
図3に示すように、幅方向(図示左右方向)に延びる横軌道20を備える。なお、昇降駆動装置2は、乗りかご3が結合した状態で、昇降駆動装置2から乗りかご3が落下しないで昇降可能な構成であればよい。例えば、昇降駆動装置2は、横軌道20の代わりに、幅方向成分を含む斜め方向に延びる軌道を有していてもよい。
【0033】
このエレベータ1では、昇降駆動装置2は、該昇降駆動装置2の位置を検知可能な位置センサを有する。さらに、本実施形態の昇降駆動装置2は、第1の昇降路11に配置された第1の昇降駆動装置21と、第2の昇降路12に配置された第2の昇降駆動装置22と、が隣り合ったときに、これを検知可能な隣接センサを有する。また、昇降駆動装置2は、該昇降駆動装置の速度を検知可能な速度センサを有する。さらに、昇降駆動装置2は、昇降駆動を制御するためのマイコンも有する。
【0034】
本実施形態では、第1の昇降駆動装置21の構成と、第2の昇降駆動装置22の構成は同じである。そのため、第1の昇降駆動装置21の幅寸法は、第2の昇降駆動装置22の幅寸法と同じである。なお、第1の昇降駆動装置21の構成と、第2の昇降駆動装置22の構成は異なっていてもよい。
【0035】
乗りかご3は、
図1及び
図2に示すように、利用者や荷物を載せる乗りかごである。また、乗りかご3は、例えば、利用者や荷物を載せる乗りかご本体33、及び、乗りかご本体33の背面に、幅方向に延びるように突出しており、昇降駆動装置2の横軌道20を走行するための走行部34を備える。なお、走行部34は、乗りかご本体33の側面に設けられていてもよい。
【0036】
本実施形態の乗りかご3は、該乗りかご3が横軌道20を走行するための動力を、例えば、走行部34に備えており自走する。また、乗りかご3は、例えば、横軌道20における走行を制御するマイコンを有する。なお、乗りかご3は、該乗りかご3が横軌道20を走行するための動力を備えない構成であってもよく、この場合、昇降駆動装置2に備えられた引き込み機構により隣り合う昇降駆動装置2の横軌道20に引き込まれてもよい。
【0037】
乗りかご本体33は、開閉により内外を連通させる乗りかごドア35を備える。本実施形態の乗りかごドア35は、開閉単位(一枚のドア、または、開閉の際の移動方向が同じ複数枚のドアから構成される単位)が対称に一対(二つ)設けられた両開きとされている。
【0038】
このエレベータ1では、第1の乗りかご31が、第1の昇降駆動装置21に結合しているとき、第1のモータ71が駆動することで、第1の昇降駆動装置21が昇降する。また、第1の乗りかご31が、第2の昇降駆動装置22に結合しているとき、第2のモータ72が駆動することで、第1の昇降駆動装置21が昇降する。なお、第1の乗りかご31は、第1の昇降駆動装置21の横軌道20に沿い横方向に移動することで、第2の昇降駆動装置22の横軌道20に移行できる。
【0039】
第2の乗りかご32の乗りかご本体332の幅寸法は、各昇降駆動装置2の幅寸法よりも大きい(
図1参照)。本実施形態では、第2の乗りかご32は、第1の昇降駆動装置21及び第2の昇降駆動装置22に跨って結合可能である。なお、第2の乗りかご32は、第1の昇降駆動装置21及び第2の昇降駆動装置22に跨って結合可能でなくてもよく、例えば、第1の昇降駆動装置21のみに結合可能であってもよい。
【0040】
第2の乗りかご32の乗りかごドア352は、乗りかご本体332の幅方向における中央に配置されている。また、乗りかごドア352は、乗りかご本体332の正面に配置されている。さらに、第2の乗りかご32は、第1の昇降路11内から第2の昇降路12内に跨って配置される乗りかご出入口320(第3のかご出入口)を有する。第2の乗りかご32の走行部342の幅寸法は、各昇降駆動装置2の幅寸法よりも小さい。
【0041】
図5に示すように、第2の乗りかご32が、第1の昇降駆動装置21及び第2の昇降駆動装置22に跨って結合するとき、軸結合機8が第1のモータ71の軸710と第2のモータ72の軸720とを結合した状態で、第1のモータ71(具体的には、第1のモータ71とこれに接続されたインバータ)が駆動するとともに、第2のモータ72が第1のモータ71に従動することで、第1の昇降駆動装置21及び第2の昇降駆動装置22が昇降する。第2のモータ72の第1のモータ71に対する従動は、第2のモータ72がフリーラン状態であり、第1のモータ71の軸710と第2のモータ72の軸720とが結合した状態であることにより、第1のモータ71の駆動に従って動くことである。
【0042】
第1の昇降駆動装置21及び第2の昇降駆動装置22に跨って結合した第2の乗りかご32は、第2の昇降駆動装置22が横移動路と幅方向において並んでいるとき、第1の昇降駆動装置21及び第2の昇降駆動装置22の横軌道20に沿い幅方向に移動することで、横移動路に移行できる。
【0043】
乗場4は、
図6に示すように、第1の昇降路11と対向する位置から第2の昇降路12と対向する位置に跨って配置される乗場出入口40(第3の乗場出入口)を有する。乗場4に第1の昇降駆動装置21又は第2の昇降駆動装置22に結合した第1の乗りかご31が到着した状態で、乗場出入口40を乗場4側から視たとき、乗場出入口40は、第1の乗りかご31の乗りかご出入口310と重なるよう配置されている。また、乗場4に第1の昇降駆動装置21及び第2の昇降駆動装置22に結合した第2の乗りかご32が到着した状態で、乗場出入口40を乗場4から視たとき、乗場出入口40は、第2の乗りかご32の乗りかご出入口320と重なるよう配置されている。さらに、乗場4は、第2の乗りかご32の乗りかごドア352と対応するサイズ及び開閉方式の乗場ドア45を有する。なお、本実施形態のエレベータ1では、各階床に設けられた乗場4は、同じ構成の乗場出入口40及び乗場ドア45を有する。
【0044】
以上のエレベータ1では、幅方向の寸法が大きい第2の乗りかご32を第1の昇降駆動装置21に結合させることで、長尺の荷物を、第2の乗りかご32に乗せることができる。また、第2の乗りかご32よりも幅方向の小さい第1の乗りかご31を第1の昇降駆動装置21に結合させることで、通常の荷物(幅が大きくない荷物)を運搬する際には、乗りかご3(第1の乗りかご31)を使用することで、第2の乗りかご32を第1の昇降駆動装置21に結合させて使用する場合と比べて、乗りかご3を昇降させるためのエネルギーを抑えることができる。
【0045】
本実施形態のエレベータ1では、幅方向の寸法の大きい第2の乗りかご32が、2つの昇降駆動装置21,22に跨って結合した状態で、2つの昇降駆動装置21,22により安定的に支持された状態で昇降できる。また、通常の荷物を運搬する際には、第1の乗りかご31を2つ利用することができる。
【0046】
また、本実施形態のエレベータ1では、第1のモータ71が駆動し且つこの駆動に第2のモータ72が従動して第1、第2の昇降駆動装置21、32の両方が昇降することで、第1、第2の昇降駆動装置21、32の昇降が確実に同期するため、第2の乗りかご32が安定的に昇降する。
【0047】
さらに、本実施形態のエレベータ1では、第2の乗りかご32に第1、第2の昇降路11、12に跨って配置される乗りかご出入口320(第3のかご出入口)があり、且つ、乗場出入口40が第1、第2の昇降路11、12に跨って配置されているため、長尺の荷物を第2の乗りかご32に容易に出入りさせることができる。
【0048】
なお、本発明のエレベータは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。例えば、ある実施形態の構成に他の実施形態の構成を追加することができ、また、ある実施形態の構成の一部を他の実施形態の構成に置き換えることができる。さらに、ある実施形態の構成の一部を削除することができる。
【0049】
上記実施形態では、乗場ドア45は、第2の乗りかご32の乗りかごドア352と対応する開閉方式であったが、乗りかごドア352と異なる開閉方式であってもよい。また、乗場4の乗場出入口40は、第1の乗りかご31の使用時と、第2の乗りかご32の使用時とで、広さを切り替えるように構成されていてもよい。例えば、
図7に示すように、乗場4は、第1の昇降路11と対向する乗場出入口41(第1の乗場出入口)と、第2の昇降路12と対向する乗場出入口42(第2の乗場出入口)と、第1の昇降路11と対向する位置から第2の昇降路12と対向する位置に跨って配置される乗場出入口43(第3の乗場出入口)と、を有する。乗場出入口41、42を開閉可能とし、且つ、乗場出入口43を閉鎖する第1運転状態と、乗場出入口41、42を閉鎖し且つ乗場出入口43を開閉可能とする第2運転状態と、を切り替え可能である。
【0050】
具体的に、乗場ドア45は、第1の昇降駆動装置21に結合した第1の乗りかご31が乗場4に到着した状態で、乗場4から視たとき、第1の乗りかご31の乗りかごドア351と重なる第1の乗場ドア451と、第2の昇降駆動装置22に結合した第1の乗りかご31が乗場4に到着した状態で、乗場4から視たとき、第1の乗りかご31の乗りかごドア351と重なる第2の乗場ドア452と、第1の乗場ドア451及び第2の乗場ドア452を接続する第3の乗場ドア453と、を備えてもよい。第1、第2の乗場ドア451、452は、幅方向の両外側に戸開し、第3の乗場ドア453は上下方向(例えば、上方)に戸開する。第1の運転状態では、第3の乗場ドア453を全閉状態としたまま、第1、第2の乗場ドア451、452を開閉する。第2の運転状態では、第1、第2、第3の乗場ドア451、452、453を同期させて開閉する。
【0051】
かかる構成では、第2の乗りかご32に第1、第2の昇降路11、12に跨って配置される乗りかご出入口320があり、且つ、乗場出入口43が第1、第2の昇降路11、12に跨って配置されているため、第1の乗りかご31に対する出入りときには、第1運転状態として乗場出入口41、42を使用し、第2の乗りかご32に対する出入りのときには、第2運転状態として乗場出入口43を使用するというように、乗場出入口を切り替えて使用できる。
【0052】
なお、第2の乗りかご32の乗りかご出入口320や乗場4の乗場出入口は、第1、第2の昇降路11、12に跨って配置されていなくてもよい。例えば、
図8に示すように、乗場4は、第1の昇降路11と対向する乗場出入口41(第1の乗場出入口)と、第2の昇降路12と対向する乗場出入口42(第2の乗場出入口)と、を有する。また、第2の乗りかご32は、乗場出入口41(第1の乗場出入口)と対応する乗りかご出入口3201(第1のかご出入口)と、乗場出入口42(第2の乗場出入口)と対応する乗りかご出入口3201(第2のかご出入口)と、を有する。第2の乗りかご32が乗場4に到着した時、乗りかご出入口3201が乗場出入口41に対向し、乗りかご出入口3202は乗場出入口42に対向する。
【0053】
かかる構成では、第2の乗りかご32に第1、第2の昇降路11、12内にそれぞれ配置される2つの乗りかご出入口3201、3202があるため、第1の乗りかご31に乗り込む時に使用する乗場出入口と、第2の乗りかご32に乗り込むときに使用する乗場出入口とを兼用することができる。
【0054】
上記実施形態のエレベータ1では、各階床に設けられた乗場4は、同じ構成の乗場出入口40及び乗場ドア45を有していたが、一部の乗場4で異なる構成の乗場出入口40及び乗場ドア45を有していてもよい。例えば、第2の乗りかご32の停止階が2階のみである場合、2階の乗場4は、第1、第2の昇降路11,12を跨いで配置される乗場出入口40及び乗場ドア45(
図6の構成の乗場出入口40及び乗場ドア45)とし、他の階床の乗場4は、第1、第2の昇降路11,12を跨いで配置されない乗場出入口40及び乗場ドア45(
図8の構成の乗場出入口40及び乗場ドア45)としてもよい。
【0055】
上記実施形態では、第2の乗りかご32の乗りかごドア352は、乗りかご本体332の正面に配置されていたが、乗りかご本体332の正面、及び、一対の側面のうち少なくとも1つの面に配置されていればよい。例えば、
図9に示すように、第2の乗りかご32は、乗りかご本体332の正面に配置された乗りかごドア3521に加えて、乗りかご本体332の一対の側面にそれぞれ配置された乗りかごドア3522を有してもよい。乗りかごドア3522は、寝台などの長尺の荷物を、スムーズに第2の乗りかご32に乗せることができる点で有用である。
【0056】
第2の乗りかご32内には、利用者が載る空間と、この空間と幅方向に並ぶ荷物専用の空間(トランク)と、が設けられてもよい。これにより、エレベータ1は、昇降路10の奥行きを広げたり、利用者が載る空間を狭くしたしたりすることなく、トランク付の乗りかごを備えた構成となる。なお、第2の乗りかご32は、幅方向の寸法が伸縮するものであってもよい。なお、エレベータ1が、3つ以上の複数の昇降路10を備え、各昇降路10にそれぞれ昇降駆動装置2が配置される場合、第2の乗りかご32は、3つ以上の複数の昇降駆動装置2に跨って結合してもよい。
【0057】
上記実施形態のエレベータ1では、昇降駆動装置2は2つであったが、1つ乃至3つ以上であってもよい。さらに、上記実施形態のエレベータ1では、各昇降路10に1つの昇降駆動装置2が配置されていたが、少なくとも1つの昇降路10に複数の昇降駆動装置2が配置されていてもよい。例えば、2つの昇降路11、12に、それぞれ2つずつ昇降駆動装置2が配置される場合、昇降路11、12の上側の階層にそれぞれ配置された昇降駆動装置2に第1の乗りかご31を結合し、昇降路11、12の下側の階層にそれぞれ配置された昇降駆動装置2に第2の乗りかご32を結合してもよい。
【0058】
上記実施形態のエレベータ1では、昇降路10は2つであったが、1つ乃至3つ以上であってもよい。また、上記実施形態のエレベータ1では、全ての階床において両昇降路10が連通しているが、両昇降路10の少なくとも第2の乗りかご32からの利用者の昇降が必要な階床において、両昇降路10が連通していればよい。例えば、建物の1階と2階との間で第2の乗りかご32の昇降が必要であり、残りの階床では第2の乗りかご32の昇降が不要なとき、1階及び2階において両昇降路10が連通していればよい。
【0059】
なお、第1、第2のモータ71、72を駆動するインバータの一方が、第2の乗りかご32を昇降可能な容量を備えている場合、この一方のインバータが、第1、第2の昇降駆動装置21,22を同期運転させてもよい。
【符号の説明】
【0060】
1…エレベータ、2…昇降駆動装置、3…乗りかご、4…乗場、5…機械室、8…軸結合機、10…昇降路、11…第1の昇降路(昇降路)、12…第2の昇降路(昇降路)、20…横軌道、21…第1の昇降駆動装置(昇降駆動装置)、22…第2の昇降駆動装置(昇降駆動装置)、31…第1の乗りかご、32…第2の乗りかご、33、331、332…乗りかご本体、34、341,342…走行部、35…乗りかごドア、40、41、42、43…乗場出入口、45…乗場ドア、71…第1のモータ(モータ)、72…第2のモータ(モータ)、310、320…乗りかご出入口、351、352…乗りかごドア、451…第1の乗場ドア、452…第2の乗場ドア、453…第3の乗場ドア、710、720…軸、3201、3202…乗りかご出入口、3521、3522…乗りかごドア、G…ガイドレール、R…ロープ
【要約】
【課題】通常の乗りかごに乗せることのできない長尺の荷物を乗せることができるエレベータを提供することを課題とする。
【解決手段】本発明のエレベータは、第1の昇降路と、前記第1の昇降路内で昇降可能な第1の昇降駆動装置と、前記第1の昇降駆動装置にそれぞれ結合可能な複数の乗りかごと、を備え、前記複数の乗りかごは、第1の乗りかごと、該第1の乗りかごよりも幅方向の寸法が大きい第2の乗りかごと、を含む、ことを特徴とする。
【選択図】
図1