(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】遠隔操作式排水栓装置の操作部構造
(51)【国際特許分類】
E03C 1/22 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
E03C1/22 C
(21)【出願番号】P 2019027677
(22)【出願日】2019-02-19
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000157212
【氏名又は名称】丸一株式会社
(72)【発明者】
【氏名】小林 温史
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-006971(JP,A)
【文献】特開2016-142052(JP,A)
【文献】特開2011-084915(JP,A)
【文献】特開2016-125257(JP,A)
【文献】米国特許第4796310(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E03C 1/20-1/298
A47K 1/14、1/14
F16K 31/44-31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
槽体1に設けられた排水口12と、
前記排水口12内に配置され上下動することで
前記排水口12の開閉を行う弁体2と、
前記弁体2の開閉操作を行う操作部4と、
使用者が押動する為の操作面41を備え、且つ一方向に往復動作する第一動作体5と、
前記第一動作体5の動作に連動し、且つ
前記第一動作体5の動作方向とは相違する方向に動作する第二動作体6と、
を備えた遠隔操作式排水栓装置の操作部構造において、
前記第一動作体5の動作方向を
前記第二
動作体
6の動作方向に変換する為の駆動機構部9を
前記第一動作体5及び
前記第二動作体6に構成し、
前記第一動作体5と
前記第二動作体6を、解除可能な連結手段により連結したことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置の操作部構造。
【請求項2】
前記第一動作体5は略水平方向に動作し、
前記第二動作体6は、
前記第一動作体5の動作に対して垂直方向に動作することを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造。
【請求項3】
前記駆動機構部9を駆動子91と
前記駆動子91に対応する傾斜面92とから構成するとともに、
前記駆動子91を
前記第一動作体5又は
前記第二動作体6のいずれか一方に構成し、
前記傾斜面92を、
前記駆動子91が構成されていない側の
前記第一動作体5又は
前記第二動作体6のいずれか一方に構成し、
前記連結手段として、前記駆動子91の動作をガイドする案内部7を、前記傾斜面92が構成されている側の
前記第一動作体5又は
前記第二動作体6に構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造。
【請求項4】
前記駆動子91を
前記傾斜面92としたことを特徴とする請求項3に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造。
【請求項5】
前記案内部7の一部に、
前記駆動子91を
前記案内部7に導入可能且つ解除可能にするための脱着部71を構成したことを特徴とする請求項
3又は請求項4に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造。
【請求項6】
前記駆動子91と
前記脱着部71は、
前記案内部7への導入方向に向かうほどに鋭角となる滑動部8を構成したことを特徴とする請求項5に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造。
【請求項7】
前記案内部7を溝形状とし、且つ
前記案内部7内に前記傾斜面92を構成し、前記駆動子91が
前記案内部7内でガイドされることを特徴とする請求項
3乃至請求項6のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造。
【請求項8】
前記操作部4の
前記操作面41と
前記槽体1の壁面は、
前記弁体2の開口時又は閉口時のいずれかの時に略面一となることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、浴槽や洗面台などの槽体排水口に備えられる弁体を遠隔的に操作して開閉させ、槽体内の水を排水/止水する遠隔操作式排水栓装置の操作部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、槽体の側壁に設けたオーバーフロー口に遠隔操作式排水栓装置の操作部を備え、操作部の作動をオーバーフロー管内に挿通したレリースワイヤを介して槽体底面の排水口に備えた弁体に伝達するようにした遠隔操作式排水栓装置があった。この遠隔操作式排水栓装置は、操作部の押圧操作毎に交互に弁体の開閉が行われるようにしたものである。
また、この従来の遠隔操作式排水栓装置は、上部を前後に回動可能に固定し、且つ操作部の裏面には側面視円弧部分を構成している。また、側面視円弧部分に対応する個所に傾斜面を構成した動作体を構成し、この動作体にはレリースワイヤが接続され、レリースワイヤの他端は弁体が接続されている。
この従来の遠隔操作式排水栓装置は、操作部を水平方向に押動すると、操作部が回動して操作部裏面の円弧面が動作体の傾斜面に当接し、操作部の水平移動動作が垂直方向の動作に変換され、動作体が下方に垂下する。また、リターンスプリングなどの作用により、レリースワイヤが後退すると、動作体もレリースワイヤの後退に併せて垂直方向に上動し、動作体の傾斜面に操作部の円弧部分が当接して操作部が水平方向に回動し、操作部が元の位置に位置することとなる。
以後、この操作部の押動操作の繰り返しにより、排水口の弁体が上動/下降し、排水口が開口/閉口することになる。
(特許文献1参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来例の遠隔操作式排水栓装置の操作部では以下のような問題があった。
従来から、遠隔操作式排水栓装置の弁体の開閉状態を簡単に視認できるようにしたいという課題があるが、弁体の配置箇所は槽体の底部であり、視認しにくいという問題があった。このような問題から、操作部が取り付け面から飛び出した状態、又は取り付け面と操作部の操作面が面一となった状態、の二つの状態の比較により、弁体の開閉状態を槽体からある程度離れた個所からも視認できるようにするため、動作体と操作部を連結させて、弁体の開口・閉口状態を操作部の操作面の位置により判断するものがあった。
ところが、このような操作部と動作体が接続固定されているものの場合、遠隔操作式排水栓装置を洗面台などに施工後に、例えばオーバーフロー口内部やオーバーフロー管内部を清掃したり、故障時のメンテナンスを行う場合に操作部をオーバーフロー口から取り外さないとならないが、この従来の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造では、操作部と動作体が接続固定されている為、操作部がオーバーフロー口から取り外せず、オーバーフロー口内の清掃やレリースワイヤなどの故障時のメンテナンスを行う際は、槽体ごと取り外すなど、非常に大掛かりとなり、専門業者でないと行えず、使用者が手軽に行うことができなかった。
このような問題があったため、操作部と動作体を接続しないようにしたものが前記特許文献に記載の遠隔操作式排水栓装置である。
しかしながら、操作部と動作体を連結させない構成とすると、使用者が操作部を押動した時の動作部自身の反発・反動力により操作部が動作体から離間してしまい、槽体側面から操作部が飛び出したり、最悪の場合には操作部が脱落してしまうことがあった。
また、手指が水濡れ状態で操作部を押動操作すると、操作部と動作体が接続されていないので、手指に付着した水の表面張力の作用により、操作部の操作面が使用者の指に貼りつき、弁体の開閉に関係の無い位置に飛び出してしまい、操作部を視認しても弁体の開閉が正確にわからなくなることがあった。
【0005】
以上のことから、本願発明は以下の課題を解決する。
1.施工後にオーバーフロー管や取り付け内部を清掃・メンテナンスすることができるようにする。
2.操作部を操作時に、反動などで操作部が取り付け箇所から飛び出したり脱落することを防ぐ。
3.手指に付着した水の表面張力により操作部が取り付け箇所から飛び出すことを防ぐ。
4.槽体表面から操作部操作面が飛び出す、又は面一となることを視認できるようにし、操作部の位置により弁体の開閉が認識できるようにする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造は、槽体1に設けられた排水口12と、前記排水口12内に配置され上下動することで前記排水口12の開閉を行う弁体2と、前記弁体2の開閉操作を行う操作部4と、使用者が押動する為の操作面41を備え、且つ一方向に往復動作する第一動作体5と、前記第一動作体5の動作に連動し、且つ前記第一動作体5の動作方向とは相違する方向に動作する第二動作体6と、を備えた遠隔操作式排水栓装置の操作部構造において、前記第一動作体5の動作方向を前記第二動作体6の動作方向に変換する為の駆動機構部9を前記第一動作体5及び前記第二動作体6に構成し、前記第一動作体5と前記第二動作体6を、解除可能な連結手段により連結したことを特徴とする遠隔操作式排水栓装置の操作部構造である。
【0007】
請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造は、前記第一動作体5は略水平方向に動作し、前記第二動作体6は、前記第一動作体5の動作に対して垂直方向に動作することを特徴とする請求項1に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造である。
【0008】
請求項3に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造は、前記駆動機構部9を駆動子91と前記駆動子91に対応する傾斜面92とから構成するとともに、前記駆動子91を前記第一動作体5又は前記第二動作体6のいずれか一方に構成し、前記傾斜面92を、前記駆動子91が構成されていない側の前記第一動作体5又は前記第二動作体6のいずれか一方に構成し、前記連結手段として、前記駆動子91の動作をガイドする案内部7を、前記傾斜面92が構成されている側の前記第一動作体5又は前記第二動作体6に構成したことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造である。
【0009】
請求項4に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造は、前記駆動子91を前記傾斜面92としたことを特徴とする請求項3に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造である。
【0010】
請求項5に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造は、前記案内部7の一部に、前記駆動子91を前記案内部7に導入可能且つ解除可能にするための脱着部71を構成したことを特徴とする請求項3又は請求項4に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造である。
【0011】
請求項6に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造は、前記駆動子91と前記脱着部71は、前記案内部7への導入方向に向かうほどに鋭角となる滑動部8を構成したことを特徴とする請求項5に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造である。
【0012】
請求項7に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造は、前記案内部7を溝形状とし、且つ前記案内部7内に前記傾斜面92を構成し、前記駆動子91が前記案内部7内でガイドされることを特徴とする請求項3乃至請求項6のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造である。
【0013】
請求項8に記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造は、前記操作部4の前記操作面41と前記槽体1の壁面は、前記弁体2の開口時又は閉口時のいずれかの時に略面一となることを特徴とする請求項1乃至請求項7のいずれか一つに記載の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造である。
【発明の効果】
【0014】
請求項1に記載の本発明は、第一動作体5の動作方向を第二操作体の動作方向に変換する為の駆動機構部9を第一動作体5及び第二動作体6に構成し、第一動作体5と第二動作体6を、解除可能な連結手段により連結したことにより、操作部4が不用意に飛び出したり、脱落するようなことが無い。また、遠隔操作式排水栓装置の施工後であっても、簡単に操作部を脱着することができる。
請求項2に記載の本発明は、第一動作体5は略水平方向に動作し、前記第二動作体6は、第一動作体5の動作に対して垂直方向に動作することにより、水平方向の動作方向を垂直方向に変換することができる。
請求項3に記載の本発明は、駆動機構部9を駆動子91と該駆動子91に対応する傾斜面92とから構成するとともに、該駆動子91を第一動作体5又は第二動作体6のいずれか一方に構成し、前記傾斜面92を、駆動子91が構成されていない側の第一動作体5又は第二動作体6のいずれか一方に構成し、前記連結手段として、前記駆動子91の動作をガイドする案内部7を、前記傾斜面92が構成されている側の第一動作体5又は第二動作体6に構成したことにより、操作部4が不用意に飛び出したり、脱落するようなことが無い。
請求項4に記載の本発明は、駆動子91を傾斜面92としたことにより、動作方向を別方向に変換することができる。
請求項5に記載の本発明は、案内部7の一部に、駆動子91を案内部7に導入可能且つ解除可能にするための脱着部71を構成したことにより、施工後に操作部4を取り付け、取り外しが可能となり、メンテナンスや清掃が容易となる。
請求項6に記載の本発明は、駆動子91と脱着部71は、案内部7への導入方向に向かうほどに鋭角となる滑動部8を構成したことにより、駆動子92と案内部7の導入時に滑りやすくなり、円滑に導入することが可能となる。
請求項7に記載の本発明は、案内部7を溝形状とし、且つ案内部7内に前記傾斜面92を構成したことにより、操作部4が不用意に飛び出したり、脱落するようなことが無い。
請求項8に記載の本発明は、操作部4の操作面41と槽体1の壁面は、弁体2の開口時又は閉口時のいずれかの時に略面一としたことにより、弁体2の開口/閉口が視認できるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の実施例の施工状態あって、かつ弁体の開口時を示す
図5(b)におけるB-B’断面図である。
【
図2】本発明の実施例の施工状態あって、かつ弁体の閉口時を示す
図5(b)におけるB-B’断面図である。
【
図3】本発明の実施例の遠隔操作式排水栓装置の斜視図である。
【
図4】(a)弁体の開口時を示す、
図5(b)におけるC-C’断面図である。(b)弁体の閉口時を示す、
図5(b)におけるC-C’断面図である。
【
図5】(a)弁体の開口時を示す、
図1におけるA-A’断面図である。(b)弁体の閉口時を示す、
図1におけるA-A’断面図である。
【
図6】(a)第一動作体を第二動作体に取り付ける前の状態を示す
図5(b)におけるC-C’断面図(b)第一動作体を第二動作体に取り付けている途中であって、滑動部の作用を示す
図5(b)におけるC-C’断面図(c)第一動作体を第二動作体に取り付けている途中であって、駆動子が脱着部から凹溝に導入する作用を示す
図5(b)におけるC-C’断面図
【
図7】(a)第一動作体を第二動作体から取り外し開始時を示す
図5(b)におけるC-C’断面図(b)第一動作体を第二動作体から取り外し時を示し、脱着部から駆動子が外れた状態を示す
図5(b)におけるC-C’断面図(c)第一動作体を第二動作体から取り外した状態であって、弁体が開口時の第二動作部が自重により降下した状態を示す
図5(b)におけるC-C’断面図
【
図8】本発明の実施例における第二動作体の斜視図である。
【
図9】本発明の実施例における第一動作体の斜視図である。
【
図10】本発明の実施例における第一動作体と第二動作体の位置関係を示す、オーバーフロー管を省略した斜視図である。
【
図11】本発明の実施例のオーバーフロー管を示す第一動作体と第二動作体を省略した斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【実施例1】
【0016】
本実施例の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造は、
図1乃至
図3に示すように、槽体1と、弁体2と、操作部4と、レリースワイヤ3と、第一動作体5と、第二動作体6と、駆動機構部9と、連結手段と、保持機構部34と、排水管15と、排水トラップから構成される。
槽体1は、本実施例では
図1に示す台所の流し台に取り付けられる箱体であって、その内部は水を貯水したり、排水を行う。槽体1側面は略垂直形状であって、且つ槽体1底部には排水口12を開口し、該排水口12には排水管15が接続される。また、槽体1側面は略垂直面であって、槽体1の貯水が溢れたりしないよう、溢れ水を排水管15へ排水するようオーバーフロー口14を開口している。尚、槽体1側面の略垂直とは、若干の傾斜面や角部のR形状なども含む。オーバーフロー口14にはオーバーフロー管13が接続しており、当該オーバーフロー管13は
図3に示したように、途中位置で屈曲して排水管15へ接続されている。槽体1内の水位が上昇したとしても、オーバーフロー口14まで水位がくるとオーバーフロー口14からオーバーフロー管13を介して排水管15へ排水されるので、槽体1から水が溢れるようなことはない。
また、オーバーフロー管13内壁には、
図11に示すように、第一動作体5の水平方向の動作をガイドする凹溝上のレール体16と、第二動作体の垂直方向の動作をガイドするレール体17をそれぞれ構成する。
排水管15は、上流を槽体1の排水口12に接続する管体であって、途中に排水トラップを介して下流を下水管へ接続する。槽体1内の排水を下水管へと排水する為の管体である。
排水トラップは、図示しないが排水管15の途中箇所に、内部に排水の一部を貯水して封水を構成して、下水側と室内側の流路を封水により遮断し、当該封水により下水からの害虫や臭気が室内側へ逆流しないように構成される。尚、本実施例では水封式排水トラップを採用しているが、特に水封式排水トラップに限定しない。室内側と下水側を遮断するものであれば特に問題が無い。
【0017】
操作部4は、弁体2の開閉操作を遠隔的に行うために使用者が操作を行う部分であって、使用者が操作部4を押動操作する毎に弁体2が上昇、下降を繰り返す。操作部4の槽体1側に露出する表面は操作面41であり、使用者が操作するために触れる面である。
本実施例では、槽体1のオーバーフロー口14内のオーバーフロー管13内部に操作部4を配置しており、
図1のように弁体2の開口が完了した状態時において操作面41と槽体1側面は略面一となる。また、
図2のように、弁体2の閉口が完了した状態時において、操作面41は槽体1側面から突出するように配置される。
また、操作部4の操作面41の背面には、後述する第一動作体5が一体的に構成されており、使用者が操作部4の操作面41を押し操作すると、操作部4がオーバーフロー口14内に向かって往復動作可能且つ水平方向に動作可能に配置されている。
弁体2は、槽体1の排水口12内に配置され、上下動することで排水口12の開口・閉口を行う。
図1のように弁体2が上昇して排水口12から離間している際は排水口12が開口となり、槽体1内の水が排水口12から槽体1外へ排水される。また、
図2のように弁体2が下降して排水口12に着座している際は排水口12が密閉されるので、槽体1内部に水を貯水できる。また、弁体2は、弁体2から離れた個所に構成される操作部4を操作することで、遠隔的に開閉可能である。
レバー体21は、弁体2の下方に回動可能に軸着され、レリースワイヤ3のインナーワイヤ31の進退に併せてレバーが回動し、レバー体21先端が上昇・下降する。レバー体21先端には弁体2が載置されている為、
図1のようにレバー体21が上昇した時は弁体2が上昇し、
図2のようにレバー体21が下降した際は弁体2も下降する。
レリースワイヤ3は、第二動作体6からレバー体21まで連結されており、操作部4の操作を弁体2側へ伝達する。レリースワイヤ3は、可撓性の中空管から成るアウターチューブ32と、アウターチューブ32内に進退自在に配される剛性を有した金属線から成るインナーワイヤ31と、から構成される。尚、インナーワイヤ31の進行方向とは、インナーワイヤ31が弁体2側へ進行する方向であり、退行方向とは、インナーワイヤ31が操作部4側へ進行する方向をいう。また、インナーワイヤ31は、リターンスプリング33により常時退行方向に付勢されている。本実施例では、第二動作体6とレリースワイヤ3端部はリターンスプリング33の付勢により、
図1、
図2に示すように、常時当接して連結されている。
レリースワイヤ3は、オーバーフロー管13内部にその一部が配置されるが、
図3に示すように、オーバーフロー管13の途中箇所でオーバーフロー管13の外部へ配線され、排水口12のレバー体21に連結される。
保持機構部34は、レリースワイヤ3の操作部4側端部に構成されており、レリースワイヤ3におけるインナーワイヤ31の進退を保持/解除する部材であって、ノック式ボールペンの進退を保持する保持機構に使用されるスラストロック機構を採用している。操作部4を押動すると、レリースワイヤ3のインナーワイヤ31が進行し弁体2が押し上げられ、この際に保持機構部34によってインナーワイヤ31の進行が保持される。再度操作部4を押動すると、インナーワイヤ31が退行して保持機構部34の保持が解除され、リターンスプリング33の付勢によりインナーワイヤ31が後退する。インナーワイヤ31が後退すると、弁体2が下降して排水口12に着座し閉栓する。このように、保持機構部34はインナーワイヤ31の進退を保持/解除する。
【0018】
第一動作体5は、オーバーフロー口14を介してオーバーフロー管13内に配置され、使用者が押動する為の操作面41を備えるとともに、
図9に示すように、操作面41から後方(背面方向)に向かって延出する二本の脚部51を構成し、脚部51内側面に駆動機構部9である駆動子91を構成する。第一動作体5は、オーバーフロー口14を介してオーバーフロー管13内を水平方向かつ往復可能に動作可能な部材である。また、第一動作体5は一方向に動作するが、これはある一定の方向の往復動作をすることをいう。
また、第一動作体5の脚部51側壁には、水平方向の動作をガイドするために、オーバーフロー管13内周壁に構成したレール体16にスライド自在に取り付けられる凸部52を構成する。
第二動作体6は、第一動作体5の動作方向に対して相違する方向に動作する部材であって、本実施例ではオーバーフロー配管内を垂直方向且つ往復可能に動作する。また、
図8に示すように、第二動作体6には駆動機構部9である傾斜面92を構成している。この傾斜面92は、第二動作体6に形成した凹溝61に形成され、当該凹溝61には第一動作体5の駆動子91が進退自在にはめ込まれ、傾斜面92上を駆動子91が進退自在に摺動する。また、第二動作体6は、オーバーフロー管13の内壁面に構成された溝から成るレール体17により上下動自在であるが水平方向の移動は不可となるように位置決めされる。よって、第一動作体5の水平方向の動作に併せて駆動子91が案内部7の傾斜面92上を摺動し、駆動子91の摺動動作によって第二動作体6が垂直方向に動作方向が変換されて動作する。また、第二動作体6にはレリースワイヤ3が当接されているため、操作部4の操作をレリースワイヤ3に伝達することが可能である。
また、第二動作体6の側面には、垂直方向の動作をガイドするために、オーバーフロー管13内周壁に構成したレール体17にスライド自在に取り付けられる凸部62を構成する。
案内部7は、駆動子91の動作をガイドして、駆動子91が凹溝61から不用意に脱落しないようにするものであり、第一動作体5と第二動作体6の連結手段として機能する。尚、この連結手段は脱着部71を構成していることにより解除可能となっている。本実施例では凹溝61の傾斜面92と対向する面が案内部7として機能する。この案内部7に駆動子91がガイドされることにより、駆動子91が構成されている第一動作体5と、傾斜面92が構成されている第二動作体6が連結され、通常使用時に駆動子91が傾斜面92から外れるようなことがない。よって、通常使用時に誤って槽体1から第一動作体5が脱落するようなことや、水の表面張力により第一動作体5が飛び出してしまうようなことが無い。
駆動機構部9は、
図10に示すように、第一動作体5の動作方向を第二動作体6の動作方向に変換する為の機構部であって、本実施例では、傾斜面92を利用し、第一動作体5の水平方向の動作方向を、第二動作体6の垂直方向の動作方向に変換する。
駆動機構部9は、第一動作体5に構成した駆動子91と、第二動作体6に構成した傾斜面92から構成され、駆動子91は、第二動作体6に構成された傾斜面92と合致する傾斜を備えて構成される。駆動子91の傾斜面と第二動作体6の傾斜面92は当接して配置され、第一動作体5を水平方向に押し動作させると、第一動作体5の駆動子91も第二動作体6の傾斜面92上で水平方向に移動しつつ駆動子91が第二動作体6の傾斜面92上で摺動し、
図4(a)のように、その摺動とともに第二動作体6は垂直方向下方に押し下げられる。また、レリースワイヤ3のリターンスプリング33の反発力により、レリースワイヤ3が上昇すると、
図4(b)に示すように、レリースワイヤ3が当接している第二動作体6が垂直方向上方に押し上げられる。このとき、第二動作体6の上昇に伴い、第一動作体5の駆動子91と第二動作体6の傾斜面92により垂直方向の動きが水平方向の動作に変換され、第一動作体5が水平移動し、槽体手前側へと押し戻される。
駆動子91は、駆動機構部9であって、
図9に示すように、第一動作体5の脚部51側面から側面方向に突出して凸条に構成されており、第二動作体6の傾斜面92と合致する傾斜を備えている。また、駆動子91には滑動部8を構成する。
傾斜面92は、駆動機構部9であって、
図8に示すように、第二動作体6の凹溝61に構成される。前記駆動子91の傾斜する面と合致して摺動する傾斜面92であり、本実施例では第一動作体5の複数の駆動子91に対応するよう構成されており、第一動作体5の脚部51間に構成されている。
脱着部71は、駆動子91を案内部7に簡単に導入可能且つ解除可能にするために第二動作体6に備えられる。駆動子91を案内部7へ導入させるための脱着部71は、第二動作体6の案内部7の一部を切り欠いて構成する。この案内部7により、第一動作体5と第二動作体6の導入取付を簡単かつ円滑に行うことが可能となる。また、駆動子91を案内部7から取り外すための脱着部71は、第二動作体6の案内部7の凹溝61の端部、つまり凹溝61の操作部4側端部を開口することで、第一動作体5を水平方向に引っ張ると、駆動子91が凹溝61の端部から抜ける為、引っ張るだけで簡単に取り外すことが可能となる。
滑動部8は、駆動機構部9の駆動子91に構成されており、脱着部71に向けて鋭角となる角度が構成されている。また、第二動作体6の案内部7にも、脱着部71側端部に向けて鋭角となる角度の滑動部8が構成される。この滑動部8は、操作部4である第一動作体5を第二動作体6の案内部7に導入させる際に、両者の滑動部8の傾斜面を滑動させることで導入させやすくするものである。
【0019】
槽体1内に排水が発生した際には以下のような流れとなる。
排水口12の弁体2が閉口している際には、操作部4を操作して弁体2を上昇させ、排水口12を開栓する。槽体1内の排水は、排水口12から排水管15へ流排水され、槽体1外へ排水される。排水管15に流入した排水は、排水トラップを介して最終的には下水管へと排水される。
尚、槽体1内に水を貯水する際には、排水口12の弁体2を操作して下降させ、弁体2を排水口12に着座させる。そうすると、排水口12は弁体2により閉口されるので、槽体1内に水を貯水することができる。
【0020】
上記の遠隔操作式排水栓装置の操作部構造は以下のように動作する。
図1のように排水口12の弁体2が上昇して排水口12が開口状態の際に、槽体1側面と略面一となっている操作部4の操作面41を水平方向に押動すると、操作部4背面に一体的に構成された第一動作体5の駆動子91も同様に水平方向に移動する。すると、駆動子91が第二動作体6の傾斜面92に当接し、且つ第二動作体6は上下動自在且つ水平方向移動不可に位置決めされている為、傾斜面92と駆動子91が摺動しながら第二動作体6が下方に移動する。すなわち、第一動作体5の駆動子91の水平方向の動作方向が垂直方向の動作に変換されて第二動作体6が下方へ移動する。
そうすると、第二操作体に接続されたレリースワイヤ3のインナーワイヤ31が第二動作体6の動作に併せて進行し、保持機構部34によるインナーワイヤ31の保持が解除され、レリースワイヤ3のリターンスプリング33の付勢力によりインナーワイヤ31が後退する。そうするとインナーワイヤ31の後退に併せて、レリースワイヤ3が当接している第二動作体6が垂直方向に上昇し、当該上昇に併せて駆動機構部9も連動して第一動作体5が水平方向に後退し、
図4(b)に示すように操作部4の操作面41が槽体1側面より突出した位置となる。この状態時、
図2のようにインナーワイヤ31の後退に連動して排水口12のレバー体21が下降し、排水口12に弁体2が自重により着座する。そうすると排水口12が閉口するので、槽体1内に水を貯水することが可能となる。
排水口12閉口状態から、再度操作部4の操作面41を水平方向に押動すると、操作部4背面に一体的に構成された第一動作体5の駆動子91も同様に水平方向に移動する。すると、駆動子91が第二動作体6の傾斜面92に当接し、且つ第二動作体6は上下動自在且つ水平方向移動不可に位置決めされている為、傾斜面92と駆動子91が摺動しながら第二動作体6が下方に移動する。すなわち、第一動作体5の駆動子91の水平方向の動作方向が垂直方向の動作に変換されて第二動作体6が下方へ移動する。
そうすると、レリースワイヤ3のインナーワイヤ31が進行し、インナーワイヤ31の他端に接続されているレバー体21がインナーワイヤ31の進行に連動し上昇する。そうすると、保持機構部34によりインナーワイヤ31の進行が保持される。インナーワイヤ31の保持が行われると、インナーワイヤ31は予め設定された遊び長さ分進行した後、リターンスプリング33により遊ぶ分後退する。この状態において、
図4(a)のように、操作部4の操作面41は槽体1側面と略面一となっている。また、レバー体21が上昇する為、
図1のように弁体2も併せて上昇し、排水口12が開口し、槽体1内部の水を排水口12から槽体1外へ排水することが可能となる。
以後、上記操作部4の操作の繰り返しにより排水口12の開口・閉口が可能となる。
第一動作体5と第二動作体6は案内部7に駆動子91が配置されている為に連結されている。このため、操作部4から使用者が手を離した状態において、排水口12の弁体2閉口時は、
図5(b)のように確実に操作部4の操作面41は槽体1側面より突出し、排水口12の弁体2開口時には、
図5(a)のように確実に操作部4の操作面41は槽体1側面と略面一となる。第二動作体6の位置に応じて第一動作体5の位置も確実に定まり、表面張力などにより操作部4が勝手に動いてしまうということがなくなる。
【0021】
操作部4である第一動作体5と第二動作体6の施工後の脱着は以下の手順で行われる。
第一動作体5を第二動作体6から取り外す際は、
図7(a)に示すように、操作部4を例えば吸盤などで水平方向に引っ張ると、水平方向の後退動作に併せて動く駆動子91により、
図7(b)のように第二動作体6は一旦上方に移動する為、第二動作体6の凹溝61前面の脱着部71から駆動子91を簡単に取り外すことができる。第一動作体5が外れると、
図7(c)のように第二動作体6は自重によりレリースワイヤと当接する位置まで垂直方向下方に落下する。尚、
図7(c)の状態は、弁体2が開口状態の時であり、図示しないが、弁体2が閉口状態の際には、第二動作体6は既に垂直方向上方に上昇している為、第一動作体5を取り外しても自重により第二動作体6が落下することはなく、適正箇所のまま位置される。
また、この
図6(a)の状態から、第一動作体5を第二動作体6に取り付ける際は、第一動作体5をオーバーフロー口14を介してオーバーフロー管13内部に差し込むと、第一動作体5の駆動子91が下降している第二動作体6の案内部7上部の傾斜面に当接する。案内部7上部に駆動子91が当接したまま第一動作体5をそのまま水平方向に押し込むと、案内部7と駆動子91の当接により第二動作体6が垂直方向下方に下降する。このとき、第二動作体6の下方には遊び空間が構成されている為、遊び空間分下降可能である。第二動作体6が下降すると、
図6(b)のように案内部7の滑動部8に駆動子91の滑動部8が当接し、円滑に第一動作体5の駆動子91が第二動作体6の案内部7に当接しながら、
図6(c)のように脱着部71からなめらかに凹溝51へ導入できる。このとき、滑動部8により、傾斜角度を導入方向に向かうほど鋭角とするようにしているため、導入が円滑となる。
このように、第一動作体5と第二動作体6は施工後でも取り付け、取り外しが容易である為、オーバーフロー口14内の清掃であったり、メンテナンスが簡単にできる。
【0022】
本発明は前記した実施例のほか、特許請求の範囲を越えない範囲で適宜変更は可能である。
駆動機構部9の構造は上記実施例に限定されない。第一動作体5の動作方向を第二動作体6に変換する機構であればよい。図示しないが、方向変換のためのギア構造や、アーム構造などを採用しても良い。
案内部7の形状は上記実施例に限定されない。駆動子91の動作をガイドする形状であればよい。例えば、ツメ状の凸同士を係合させても良い。
上記実施例では第一動作体5の動作方向を水平方向、第二動作体6の動作方向を垂直方向としているが、当該方向に限定されない。例えば第一動作体5を垂直方向の動作方向、第二動作体6を水平方向の動作方向としてもよいし、第一動作体5の動作方向を傾斜方向、第二動作体6の動作方向を傾斜方向、などとしてもよい。
脱着部71の形状は上記実施例に限定されない。
また、操作部の位置は上記実施例に限定されない。例えば、槽体天面に構成したり、槽体の内側面又は外側面に構成しても良い。
操作部の操作方向は槽体の面に対して水平方向に動作させても良い。
【符号の説明】
【0023】
1 槽体
12 排水口
13 オーバーフロー管
14 オーバーフロー口
15 排水管
16、17 レール体
2 弁体
21 レバー体
3 レリースワイヤ
31 インナーワイヤ
32 アウターチューブ
33 リターンスプリング
34 保持機構部
4 操作部
41 操作面
5 第一動作体
51 脚部
52 凸部
6 第二動作体
61 凹溝
62 凸部
7 案内部(連結手段)
71 脱着部
8 滑動部
9 駆動機構部
91 駆動子
92 傾斜面