(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】家具用キャスター
(51)【国際特許分類】
B60B 33/00 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B60B33/00 503D
B60B33/00 F
(21)【出願番号】P 2020531622
(86)(22)【出願日】2018-12-03
(86)【国際出願番号】 FR2018000262
(87)【国際公開番号】W WO2019115887
(87)【国際公開日】2019-06-20
【審査請求日】2021-11-19
(32)【優先日】2017-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】515270677
【氏名又は名称】テンテ ルーレッテ ポリメール-ブルアンデ
(74)【代理人】
【識別番号】100092277
【氏名又は名称】越場 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100155446
【氏名又は名称】越場 洋
(72)【発明者】
【氏名】デイ,パトリック
(72)【発明者】
【氏名】ウンベール,オリビエ
【審査官】菅 和幸
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/198754(WO,A1)
【文献】特開2005-263150(JP,A)
【文献】特開昭62-227803(JP,A)
【文献】特開2008-132942(JP,A)
【文献】米国特許第05303449(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 33/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ホイールのハウジング(10)と、
「ローリング軸線」(21)とよばれる軸線に沿って上記ハウジング中に作成されたボア(20)であって、所定値の断面を有し、上記ハウジングの側壁(11)で開口し、上記ローリング軸線が上記側壁(11)の少なくとも一部に対して実質的に垂直であるボアと、
少なくとも1つのホイール(30-1、30-2)と、
上記ハウジング(10)の上記ボア(20)が開口する側壁(11)から突起する
突出シャフト部分(41-1、41-2)を有するように設計された、上記ボア(20)内で少なくともスライドによって取付けられる、上記ボア(20)と相補の断面を有するシャフト(40)と、
上記シャフト(40)を上記ハウジング(10)に固定するための手段と、
軸受手段(35)を介して互いに連結された2つの要素(33、34)を有する装置によって構成され、この2つの要素の第1要素(33)が第2要素(34)の中心に配置される、上記突出シャフト部分(41-1、41-2)上に上記ホイール(30-1、30-2)を回転自在に取付ける手段(32)と、
第1要素(33)を突出シャフト部分(41-1;41-2)に接続する手段と、
第2要素(34)を上記ホイール(30-1、30-2)接続する手段と、
上記突出シャフト部分(41-1、41-2)の自由端(43)に係合して取付けられるプラグ(50)と、
を有
し、
第1要素(33)を突出シャフト部分(41-1;41-2)に接続する上記手段が第1要素(33)を突出シャフト部分(41-1、41-2)に結合する手段によって構成される家具用キャスターにおいて、
第1要素(33)をハウジング(10)の側壁部分(11)に
直接固定する手段をさらに含
むことを特徴とする家具用キャスター。
【請求項2】
第1要素(33)を上記突出シャフト部分(41-1、41-2)に
結合する上記手段が、上記突出シャフト部分の断面と実質的に等しい断面を有する、第1要素(33)の中心に形成された中央ボア(70)と、上記突出シャフト部分(41-1、41-2)の側面に突出して形成されたリブとを有し、突出シャフト部分は少なくとも中央ボア(70)中に少なくとも部分的に挿入されることを特徴とする請求項1に記載の家具用キャスター。
【請求項3】
第1要素(33)を突出シャフト部分(41-1、41-2)
に結合する上記手段が、突出シャフト部分の側面全体に実質的に均一に分布する複数のリブ(80、81、82・・・)を含む請求項2に記載の家具用キャスター。
【請求項4】
突出シャフト部分の側面に分布するリブ(80、81、82・・・)の数が偶数である請求項3に記載の家具用キャスター。
【請求項5】
少なくとも1つのリブ(80、81、82・・・)が回転軸(21)の方向で直線的で、その高さがその長さの少なくとも一部が変化する請求項2~4のいずれか一項に記載の家具用キャスター。
【請求項6】
上記シャフト(40)がリベットの円筒形本体(90)で形成されることを
特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の家具用キャスター。
【請求項7】
上記リベットが、上記突出シャフト部分の自由端(43)
に作成され
たオリフィス(42-1、42-2)に隣接するフランジ(91)をさらに含むことを特徴とする請求項6に記載の家具用キャスター。
【請求項8】
上記の2つの要素(33、34)の少なくとも1つが鋼で作られたリベットで構成され、このリベットが鋼とアルミニウムの2つの材料の1つで作ら
れることを特徴とする請求項6または7に記載の家具用キャスター。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は家具用のキャスター(roulettes)に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本明細書で「家具」とは、何らかの理由で任意の場所で床の上を少なくとも一つのキャスター(roulette)の回転で移動させることが可能な物体、例えばベッド、テーブル、ワードローブ(armoire)、スーツケース(valise)などを意味する。
【0003】
この場合に使用されるキャスターはホイールのハウジング(carter de roue)と、少なくとも1つのホイール(roue)、一般にはハウジングに対して略平行に取付けられた2つのホイールと、家具を移動させるためにハウジング中でホイールを回転できるようにする手段とを有し、一般にはさらに、必須ではないが、家具に対して全ての方向を取ることができるようにするために家具に対して実質的に垂直な軸線の周りをピポット運動できるようにする手段も有している。
【0004】
キャスターメーカーおよび家具業者の中には、主として広告および/または情報表示の目的で、参照番号、多くの場合には自分の商標マーク等をキャスターのホイールの目で見える側に付けることを望むものもいる。
【0005】
そうしたラベルをキャスターのホイールの目で見える側に貼付することは、もちろん常に可能であるが、キャスターを取付けた家具が移動し、ホイールが回転すると、マークが実質的に読めなくなる。すなわち、キャスターが停止し、もはや回転しなくなった時にマークが水平に対して全て方向を向く可能性があるので、マークを簡単に理解および/または読むことができなくなる。
【0006】
本出願人の[特許文献1](国際公開第WO2016/198754号公報)に記載のように、上記のようなキャスターは既に実現されている。この特許に記載のキャスターは上記の欠点を克服したもので、ホイールのハウジングと、少なくとも1つのホイールと、上記ハウジング中に「ローリング」軸線に沿って形成されかつハウジングの側壁で開口するボアと、この孔が開口するハウジングの側壁に対して突出した部分を有するように設計された、上記ボア中に取付けられるシャフトと、このシャフトを上記ハウジングに固定するための手段と、シャフトの上記部分にホイールを回転自在に取付ける2つの部分から成るロール(un roulement en deux parties)のような手段と、ローリング軸線にほぼ平行な軸線に沿ってシャフトの上記部分の自由端に形成され且つシャフトの上記部分の端部面で開口したオリフィスと、このオリフィスを塞ぐプラグとを有する。
【0007】
しかし、上記キャスターはその目的を完全に失う(annihile)という欠点がある。すなわち、シャフトおよびハウジングと接触するシャフトおよび軸受部分は、上記[特許文献1](国際公開第WO2016/198754号公報)の
図3に示すように、ハウジングに保持されているが、種々の理由で、比較的早い時間でルーズになり(緩み)、その結果、プラグ、従ってマークが回転してしまう。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】国際公開第WO2016/198754号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、上記公知文献よりも容易に達成できる方法で、極めて簡単かつ安価な実施形態で、上記の欠点を解決する(上記の全て方向を向く可能性を制限する)ことにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
具体的には、本発明の対象は、下記の(1)~(7):
(1)ホイールのハウジング、
(2)「ローリング」軸線とよばれる軸線に沿ってハウジングに作成されたボアであって、このボアは所定値の断面を有し、ハウジングの側壁で開口し、上記ローリング軸線は上記側壁の少なくとも一つの部分に対して実質的に垂直であり、
(3)少なくとも1つのホイール、
(4)上記ボアの断面と相補的な断面を有するシャフトであって、このシャフトは少なくともスライドすることによって上記ボアに取付けられ、上記ボアが開口する上記ハウジングの側壁に対して突出する部分(突出シャフト部分)を有するように設計され、
(5)上記シャフトを上記ハウジングに固定する手段、
(6)ホイールを上記突出シャフト部分に回転自在に取付ける手段であって、この手段は軸受手段によって互いに連結された2つの要素を有するデバイスで構成され、2つの要素の第1要素が第2要素の中心に配置される手段と、第1要素を上記突出シャフト部分に係合自在(en cooperation)に取付ける手段と、第2要素を上記ホイールに結合する手段、
(7)突出シャフト部分の自由端に係合自在に取付けられたプラグ、
を有する家具用のキャスターであって、
第1要素をハウジングの側壁の上記部分に固定する手段をさらに有し、第1要素を突出シャフト部分に係合自在(en cooperation)に取付ける上記手段が第1要素を突出シャフト部分に固定する手段によって構成されることを特徴とするキャスターにある。
【0011】
本発明の他の特徴および利点は、添付図面を参照した例示のための以下の説明から理解できよう。しかし、本発明が下記実施例に限定されるものではない。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本発明キャスターの構造の一部を示す原理的概略図。
【
図2】本発明キャスターの基本的要素の実施形態の斜視図。
【
図3】
図1および
図2に示す本発明キャスターの工業的実施形態の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本明細書で「実質的に」という副詞(修飾語)はその手段の質(qualificatif)に関連するもので、この質はその手段の厳密な意味または近似的な意味で理解しなければならないということを最初に指摘しておく。
以下、添付図面を参照して本発明の家具用キャスターを説明する。
【0014】
上記で言及した[特許文献1]の国際公開第WO2016/198754号公報を最も近い先行技術とみなして、特に[
図1]と[
図3]を参照して本発明を説明する。本発明キャスターはホイールのハウジング10と、このハウジング中に「ローリング」軸線21とよばれる軸線に沿って作成されたボア(percee)20とを有している。このボア20は所定値を有する断面を有し、ハウジング10の側壁11で開口している。「ローリング」軸線21は上記側壁11の少なくとも一角部分に対して実質的に垂直である。
【0015】
本発明キャスターは少なくとも1つのホイール30-1、30-2と、上記ボア20中に取付けられたシャフト40とを有し、このシャフト40はボア20の断面と相補的な断面を有する。シャフト40はさらに、ボア20が開口するハウジング10の側壁11から突出する少なくとも1つの部分(突出シャフト部分)41-1、41-2を有するように設計されている。
【0016】
本発明キャスターはさらに、シャフト40をハウジング10に固定する手段と、ホイール30-1、30-2を突出シャフト部分41-1、41-2上に回転自在に取付ける手段32とを有している。
【0017】
上記のシャフト40をハウジング10に固定する手段は種々の異なる手段にすることができるが、その構成およびボア20の構成を考えて、一般には、例えばこれらの断面を可能な限り厳密に調整することによってシャフトをボアに強制的に挿入することで得られる。
【0018】
上記のホイールを突出シャフト部分に回転自在に取付ける手段32は、軸受手段35(「ボールベアリング」「ニードルベアリング」等の名称で公知)によって互いに接続された2つの要素33、34(この2つの要素の第1要素33は第2要素34の中心に配置される)を有するデバイス(軸受デバイスとよばれる)と、第1要素33を突出シャフト部分41-1、41-2上に係合関係に取付ける手段と、第2要素34をホイール30-1、30-2に固定する手段とで構成される。
【0019】
本発明キャスターは突出シャフト部分41-1、41-2の自由端43と係合自在に取付けられたプラグ50をさらに備えている。
【0020】
本発明の一つの実施形態では、上記プラグ50を上記自由端43に係合自在に取付けるために、突出シャフト部分41-1、41-2の自由端43に形成されたオリフィス42-1、42-2をさらに備えている。このオリフィス42-1、42-2はローリング軸線21に実質的に平行な(またはローリング軸線と同じ)軸線44に沿って延び、突出シャフト部分の自由端の側面45で開口している。好ましい実施形態では上記プラグ50はこのオリフィス中に挿入される。
【0021】
第1要素33をハウジング10に固定する手段は、第1要素33をハウジング10の側壁の部分11に直接固定する手段によって構成される。この手段は当業者に公知の種々の技術、例えば接着、ピン止め、圧着、くさび止め等によって実現できる。
【0022】
本発明の極めて有利な特徴によって、軸受デバイスの第1要素33を突出シャフト部分41-1、41-2に固定する上記手段は、第1要素33の中心に形成された中央ボア(perc饅oche traversante)70と、突出シャフト部分41-1、41-2の側面に対して突出した少なくとも1つのリブ80、81、82・・・とで構成される。上記中央ボア70の断面は突出シャフト部分の断面と実質的に等しく(好ましくは少なくとも等しく)、それによって突出シャフト部分は中央ボア70中に少なくとも部分的に挿入できる。上記リブ80、81、82・・・は、突出シャフト部分が挿入された時、例えば圧入された時に、突出シャフト部分と中央ボア70の側壁との間にくさび効果として作用する。
【0023】
軸受デバイスの第1要素33を突出シャフト部分に固定するこれらの手段は突出シャフト部分の側面全体に実質的に均一に分布した複数のリブ80、81、82・・・を含むのが非常に好ましい(
図2)。より好ましくは、キャスターの良好な回転バランスを確保するために、リブ80、81、82・・・の数は偶数、例えば6にするのが好ましい。
【0024】
本発明の別の特徴では、全てではないが、少なくとも1つのリブ80、81、82・・・の高さがローリング軸線21の方向の少なくとも長さの一部にわたって変化している。
【0025】
キャスターの上記構造は上記定義の目標をより確実に達成することを可能にする。すなわち、突出シャフト部分41-1、41-2はハウジングに対する回転をロックするための2つの安全システムを構成する。すなわち、(i)シャフト40がボア20中でハウジング10に直接固定されているという事実によって得られる第1の安全システムと、(ii)軸受要素33が側壁11を介してハウジングに直接固定され且つ軸受要素33の内壁に嵌まる例えば複数のリブ80、81、82を介して突出シャフト部41に直接固定されるという事実によって得られる第1の安全システムと組み合わされる第2の安全システムとを提供する。
【0026】
これに対して、[特許文献1](国際公開第WO2016/198754号公報)のキャスターは一つの安全システムしかなく、この安全システムは作るのが比較的難しく、信頼性が低いという点に注意されたい。
【0027】
[
図2]に示すように、シャフト40はリベット(rivet)の円筒形本体90で形成できる([
図2])。これは[
図1]から極めて容易に推論でき、また、[特許文献1](国際公開第WO2016/198754号公報)の詳細も参照できる。
【0028】
さらに、このリベットはフランジ91を有しているのが有利である。このフランジ91は突出シャフト部分の自由端43に形成されたオリフィス42-1、42-2のエッジの上にくる。
【0029】
このリベットを用いることで[
図3]の断面図に示すようなキャスター、すなわち、同じシャフト40上に2つのホイール30-1、30-2を有するキャスターを極めて容易に製造することが可能になる。
【0030】
好ましくは、要素33、34の少なくとも1つ、好ましくは、第1要素33は鋼のリングで作り、リベットは鋼とアルミニウムの2つの材料の中の1つ、好ましくは鋼で作られる。
【0031】
本発明キャスターの組み立ては非常に簡単で、自動化できる。
【0032】
そのためには、軸受デバイス32(それぞれが2つの要素33、34を備えている)を備えた2つのホイールをハウジング10の各側に配置し、次にリベットを2つの要素33の中央ボア70中に導入する。この場合、フランジ91を有していないリベットの円筒形本体90の端部92を最初に導入する。
【0033】
リブ80、81、82・・・が第1要素33に達した時にフランジが第1要素33に当接するまでリベットを圧入して押し込む。
【0034】
この強制挿入時に突出シャフト部分と中央ボア70の壁との間のくさび効果でリブが押し潰ぶされ、第1要素33に圧着され、フランジ91が第1要素33に当接する([
図3]の右側にあるホイールの第1要素33)。
【0035】
上記構造を用いることによってリベットを組立てシャフトとして使用することが可能になり、必要な場合にはハウジング10、ホイール30-1、30-2、シャフト40を自動的に組み立てることができる。