(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】自動車の車体または該自動車の車体のサブアセンブリの組み立てにおいて、金属材料の2つの構成要素間に、構造接合部を作成するための方法、自動車の車体または該自動車の車体のサブアセンブリの構築において、金属材料の構成要素に対し、金属材料の補強物を適用する方法、および、自動車の構造物
(51)【国際特許分類】
B23K 11/00 20060101AFI20230511BHJP
B62D 29/04 20060101ALI20230511BHJP
B62D 65/00 20060101ALI20230511BHJP
B22F 3/105 20060101ALI20230511BHJP
B22F 7/04 20060101ALI20230511BHJP
B22F 3/16 20060101ALI20230511BHJP
B23K 26/34 20140101ALN20230511BHJP
B23K 26/21 20140101ALN20230511BHJP
【FI】
B23K11/00 570
B62D29/04 B
B62D65/00 Q
B22F3/105
B22F7/04 Z
B22F3/16
B23K26/34
B23K26/21 Z
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018222890
(22)【出願日】2018-11-28
【審査請求日】2021-09-27
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】513318515
【氏名又は名称】シー.アール.エフ. ソシエタ コンソルティレ ペル アツィオニ
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パリーニ ダニエレ
(72)【発明者】
【氏名】カッコ マッシモ
(72)【発明者】
【氏名】チャッチオ ガブリエレ
(72)【発明者】
【氏名】ダユート ファビオ
(72)【発明者】
【氏名】テデスコ ミケーレ マリア
【審査官】山下 浩平
(56)【参考文献】
【文献】特公平07-110419(JP,B2)
【文献】米国特許出願公開第2013/0101423(US,A1)
【文献】特開平08-132250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 11/00 - 11/36
B23K 26/00 - 26/70
B23K 31/00
B62D 29/04
B62D 65/00
B22F 3/105
B22F 7/04
B22F 3/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
自動車の車体または前記自動車の車体のサブアセンブリの組み立てにおいて、金属材料の2つの構成要素間に、構造接合部を作成するための方法であって、
前記方法は、前記2つの構成要素間に電気抵抗溶接スポットを実行する段階を備え、
前記方法はまた、前記電気抵抗溶接スポットの上方に、付加製造法技術により、金属材料のクラッディングを適用する段階を備え、
付加製造法技術により、前記クラッディングを適用する段階が、粗いベースクラッディングを適用するための第1の段階、および、前記ベースクラッディングの上方に、補強マイクロリブの分布を含む緻密なクラッディングを適用するための第2の段階を含む、方法。
【請求項2】
前記補強マイクロリブは、複数のセルを持つ不規則なハニカムパターンを画定し、前記複数のセルの壁は、前記補強マイクロリブの高さ方向の一様なまたはばらつきのある形状およびサイズから成る断面を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
亜鉛オーバーレイの局所的適用のためのさらなる最終的な段階を備える、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
自動車の車体または前記自動車の車体のサブアセンブリの組み立てにおいて、金属材料の2つの構成要素間に、構造接合部を作成するための方法であって、
前記方法は、前記2つの構成要素間に電気抵抗溶接スポットを実行する段階を備え、
前記方法はまた、前記電気抵抗溶接スポットの上方に、付加製造法技術により、金属材料のクラッディングを適用する段階を備え、
前記クラッディングを適用する段階の直後に、前記クラッディングの層の上方に、低温流体を供給することにより得られる局所的クエンチング段階も備える
、方法。
【請求項5】
自動車の車体または前記自動車の車体のサブアセンブリの組み立てにおいて、金属材料の2つの構成要素間に、構造接合部を作成するための方法であって、
前記方法は、前記2つの構成要素間に電気抵抗溶接スポットを実行する段階を備え、
前記方法はまた、前記電気抵抗溶接スポットの上方に、付加製造法技術により、金属材料のクラッディングを適用する段階を備え、
前記2つの構成要素により形成される構造物に型での形成段階を受けさせる前に、前記構造接合部が2つの金属シート構成要素間に作成される
、方法。
【請求項6】
自動車の車体または前記自動車の車体のサブアセンブリの構築において、金属材料の補強物を金属材料の構成要素に適用するための方法であって、
前記方法は、付加製造法技術を用いて、前記構成要素の上方に、金属材料の補強物を適用する段階を備え、
付加製造法技術により補強物を適用する前記段階は、粗いベースクラッディングを適用するための第1の段階、および、補強マイクロリブの分布を含む、緻密なクラッディングを適用するための第2の段階を含む、方法。
【請求項7】
付加製造法技術によりクラッディングを適用する前記段階は、亜鉛オーバーレイの局所的適用の最終的な段階を含む、請求項
6に記載の方法。
【請求項8】
前記クラッディングを適用する段階の直後に、前記クラッディングの上方に、低温流体を供給することにより得られる局所的クエンチング段階を備える、請求項
6に記載の方法。
【請求項9】
前記構成要素に型での形成段階を受けさせる前に、前記補強物が前記構成要素上に適用される、請求項
6に記載の方法。
【請求項10】
前記構成要素の上方に、第1の粗い金属クラッディングを適用し、互いに離間された補強金属部分を画定する段階と、
前記補強金属部分間に支持層を適用する第2の段階
と、
前記補強金属部分と前記支持層との上方に、緻密なまたは非常に緻密なクラッディングの1または複数の追加のレベルを適用する1または複数の後続の段階と、を備える、請求項
6に記載の方法。
【請求項11】
前記粗いベースクラッディングはミリメートルのオーダーの高さを有し、前記緻密なクラッディングはミクロンのオーダーの高さを有し、
前記緻密なクラッディングの上方に10分の1ミクロンのオーダーの厚みを持つ少なくとも1つの追加の非常に緻密なクラッディングが適用され、各クラッディングは、付加製造法技術により適用された1または複数の層により形成される、請求項
6に記載の方法。
【請求項12】
自動車の構造物であって、
金属材料の少なくとも2つの構成要素を備え、
前記少なくとも2つの構成要素は、互いの間に構造接合部を有し、
前記構造接合部は、
溶接接合部と、
前記溶接接合部の上方にある、粗いベースクラッディングの層と、
前記粗いベースクラッディングの層の上方にあって、補強マイクロリブの分布を含む、緻密なクラッディングのオーバーラップ部分と
を含む、
自動車の構造物。
【請求項13】
自動車の構造物であって、
金属材料の構成要素と、
前記構成要素の上方にある、金属材料の補強物と
を備え、
前記補強物は、
前記構成要素の上方にある、粗いベースクラッディングの層と、
前記粗いベースクラッディングの層の上方にあって、補強マイクロリブの分布を含む、緻密なクラッディングのオーバーラップ部分と
を有する、
自動車の構造物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に自動車の車体または該自動車の車体のサブアセンブリの構築において、金属材料の1または複数の構成要素に対し、金属材料の補強物を適用する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
「付加製造法(additive manufacturing)」技術により、金属材料の1または複数の構成要素の上方に、金属材料の補強物を適用することが既に提案されている。この技術は、しばらく前から知られ、用いられてきた。当該技術は、レーザービーム等のエネルギー源を利用し、金属粉末の複数の層を溶融し、所望の構成を持つ金属部品を層ごとに形成する。例えば、文献WO 2015 181772A1に、「付加製造法」技術を用いる、金属構成要素を製造するための機械について記載および図示されている。
[本発明の目的]
【0003】
本発明の主な目的は、特に自動車の車体または当該自動車の車体のサブアセンブリの製造において、「付加製造法」技術を用い、1または複数の金属構成要素に対し、金属の補強物を適用するための新しい方法を明らかにすることにある。
【0004】
特に、本発明の1つの目的は、金属構造物、特に自動車の構造物および該自動車の構造物のサブアセンブリを製造する新しい方法を明らかにすることにあり、当該方法は、得られる構造物の軽量性の観点および強度の観点の両方における大きな改善を可能にする。
【0005】
本発明の別の目的は、自動車の現行の製造ラインに容易に適用可能であり、結果的にその実施のために高コストを伴わない方法を用いて、上述の目的を達成することにある。
【0006】
本発明の別の目的は、特に自動車の「ホワイトボディ(body-in-white)(BIW)」の製造を最適化し、限定数の電気抵抗溶接スポットを適用して、ホワイトボディがフレーム化されることを可能にする、ことである。
【0007】
本発明のさらなる別の目的は、成形された金属シート構成要素、特に自動車の構成要素を製造するための代替的な製造技術を提供することにある。
【発明の概要】
【0008】
本説明および続く特許請求の範囲において、用語「付加製造法」は、レーザーまたはプラズマビーム等のエネルギー源を用い、様々なサイズの金属粉末または金属ワイヤの層を選択的に溶融して、構成要素の上方に、金属「クラッディング」を1層ずつ重ねて形成する方法を意味するように用いられる。本発明のクラッディングは、マルチレベルであってもよく、粗いベースクラッディング(coarse base cladding)(ミリメートルのオーダーの厚み)並びに緻密なクラッディング(fine cladding)(100ミクロンのオーダーの厚み)および/または非常に緻密なクラッディング(super-fine cladding)(10分の1ミクロンまたはそれ未満さえのオーダーの厚み)の両方を含んでよい。
【0009】
第1の態様によると、本発明は、特に自動車の車体または自動車の車体のサブアセンブリの組み立てにおいて、金属材料の2つの構成要素間に構造接合部を提供するための方法に関する。当該方法は、上記2つの構成要素間に電気抵抗溶接スポットを実行する段階を備え、当該方法は、付加製造法技術により、上記電気抵抗溶接スポットの上方に金属材料の「クラッディング」を適用する追加の段階を備えることをさらに特徴とする。
【0010】
この第1の態様によると、本発明は、付加製造法技術による上記クラッディング適用段階が、粗いベースクラッディングを適用する第1の段階と、ベースクラッディングの上方に、補強マイクロリブの分布を含む、緻密なクラッディングを適用する第2の段階とを含むことをさらに特徴とすることが好ましい。
【0011】
さらに好ましくは、これらのマイクロリブは、不規則なハニカムパターンにより、比較的薄い壁で形成され、当該壁は、壁の高さ方向の一様なまたはばらつきのある形状および寸法の断面を有してよい。
【0012】
本出願人による研究および実験によると、上記方法を、亜鉛めっきされたスティールシートメタルで構成される自動車の車体の構成要素に適用すると、付加製造方法中に生じる熱に起因し、亜鉛の外層の局所的破壊が生じ得ることが判明した。この欠点を克服するために、本発明の好ましい実施形態によると、当該方法は、付加製造法によるクラッディングを適用する段階は、付加製造法技術をまた用いて、亜鉛オーバーレイを局所的に適用する追加の段階を含むことをさらに特徴とする。
【0013】
付加製造方法中に用いられる熱の適用に由来する考え得る別の欠点は、例えば、前のクエンチング処理から得られる微結晶構造の変質に起因する、構成要素を形成する金属シートの強度特性の低下を含み得る。この考え得る欠点を克服すべく、本発明による方法は、当該方法が、クラッディング適用の段階の直後に、クラッディング上に低温流体を供給することで得られる局所的クエンチングの段階も含むことを特徴とすることが好ましい。
【0014】
すべての上述の特徴により、本発明による方法は、構造の軽量性を損なうことなく、高強度特性を有する構造接合部が金属材料の構成要素間に得られることを可能にする。用語「構造接合部」は、正確には、接合部の2つの構成要素が互いに強固に接続された状態を保持するタスクを遂行するのみでなく、それ自体で、組み立てられた構造物の一部を構成し得る接合部を指す。組み立てられた構造物の一部にも、「構造」機能が割り当てられ、すなわち、それは構造物が使用中に受けるすべての応力に耐える構造物全体の能力に大きく貢献し得る。
【0015】
この大きな利点により、上記方法は、従来の方法で通常用いられるものと比較して、より少ない数の電気抵抗溶接スポットを適用することで、特に自動車のホワイトボディのフレーミングを可能とするようにできる。
【0016】
本発明はまた、マルチレベルクラッディングを配置することで得られる補強によって、より薄いシートを用いることも可能にする。より薄いシートを用いることで、重量の低減および処理コストの削減をもたらす。というのは、シートメタルの形成は、より短いサイクルタイム、およびより少ない処理エネルギーで実現できるからである。
【0017】
本発明の別の態様によると、本発明は、自動車の構造物または自動車の構造物のサブアセンブリを製造するためのプラントに関する。上記構造物は、上で定義した方法を用いて、構成要素間に1または複数の接合部を設けることにより組み立てられる。当該プラントは、組み立てられるべき構造物をフレーミングステーションまで前進させるための運搬デバイスを備え、フレーミングステーションは、複数の電気抵抗溶接スポットを実行するロボット、および、電気抵抗溶接スポットの上方に付加製造法によるベースクラッディングを適用する上記段階を実行する1または複数のロボットを含み、上記プラントはまた、上記フレーミングステーションの下流側に、少なくとも1つの完成ステーションも含み、完成ステーションは、フレーミングステーションで適用されたベースクラッディングの上方に、緻密なクラッディングを適用する上記追加の段階の実行のためのロボットを含む、ことを特徴とする。さらに、この段階において、局所的補強物(マルチレベルクラッディング)が、平らなまたは非球面の表面(未定義のプロファイルを持つ曲面)上に、および、連結領域から遠く離れた構成要素上にも、生成されてよい。このようにして、より低いエネルギーコストおよびより短いサイクルタイムで、厚みが従来の解決手段と比較し50%も低減された、より薄いシートを使用および形成することが可能である。この場合、マルチレベルクラッディングはまた、シートそれ自体の薄化からもたらされる変形を相殺するように設計される必要がある。
【0018】
別の態様によると、本発明はまた、特に、自動車の車体または自動車の車体のサブアセンブリの構築において、金属材料の補強物を金属材料の構成要素に適用するための方法に関する。この態様によると、本発明の方法は、付加製造法技術により、金属構成要素の上方に、金属材料の補強物を適用する段階を含み、当該方法は、付加製造法技術により補強物を適用する上記段階が、粗いベースクラッディングを適用する第1の段階、および、既に上記したタイプの補強マイクロリブの分布を含む、緻密なクラッディングを適用する第2の段階を含む、ことをさらに特徴とする。
【0019】
この場合であっても、本発明による方法は、亜鉛オーバーレイの局所的適用のための追加の段階、および/または、クラッディング適用段階の直後に、上記クラッディングの上方に低温流体を適用することによる追加の局所的クエンチングの段階も提供することが好ましい。
【0020】
本方法の別の実施形態によると、上記構成要素に型での形成段階を受けさせる前に、上記補強物が付加製造法技術を用い、上記構成要素に適用される。
【0021】
本発明による方法に係るすべての上述の特徴が、現在用いられている技術と比較し、自動車の構造物の製造における一連の大きな改善に対する道を開く。
【図面の簡単な説明】
【0022】
本発明のさらなる特徴および利点が、専ら非限定的な例示として提供される添付図面を参照する、以降の詳細な説明から明らかとなろう。
【
図1】本発明による方法の一実施形態に係る第1の段階後の、2つの金属シート要素の溶接接合部の概略断面図である。
【
図2】本発明による方法の第2の段階後の、
図1と同じ溶接接合部の概略断面図である。
【
図3】付加製造法技術を用いる、本発明による方法で作成された上部構造の部分的斜視図である。
【
図5】
図4の構造の一部を形成する単一のセルの断面図を示す。
【
図7】本発明による方法で利用可能なツールの斜視図である。
【
図8】本発明による方法で利用可能なツールの斜視図である。
【
図9】本発明による方法を利用する、自動車の製造ラインのレイアウトの概略平面図である。
【
図10】本発明による方法を用い、金属シート構成要素の上方に適用された補強物の概略断面図である。
【
図11】本発明による方法を用いて得られる補強物が設けられた金属シート構成要素を形成する方法の段階を示す。
【
図12】本発明による方法を用いて得られる補強物が設けられた金属シート構成要素を形成する方法の段階を示す。
【
図13】本発明による方法の別の実施形態の例を示す。
【
図14】本発明による方法の別の実施形態の例を示す。
【
図15】本発明による方法の別の実施形態の例を示す。
【
図16】本発明による方法の別の実施形態の例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1中、参照番号1は、本発明の第1の実施形態に係る方法の第1の段階の後の、2つのスティールシート構成要素の構造接合部を全体として示す。2つのスティールシート構成要素2、3は、従来の電気抵抗溶接ヘッド(不図示)を用いて得られた電気抵抗溶接スポットWによって互いに強固に接続されたフランジ2A、3Aをそれぞれ有する。電気抵抗溶接ヘッドには2つの電極が含まれ、当該電極が2つのフランジ2A、3Aに対し反対側から押されると、圧力がかかると同時にこれらのフランジを通る電流の流れが生じ、それらの接触ゾーンに金属の局所的融合を生じさせる。
【0024】
本発明の第1の態様によると、2つのフランジ2A、3Aの溶接接合部の上方に、付加製造法技術により、粗いベース4のクラッディングが適用される。
【0025】
添付図面のうち
図7は、例示として、付加製造法のためのデバイス5を示し、デバイス5は、エラストマ材料から成る可撓管7の端部に配置されたヘッド6を備え、可撓管の内側には、金属粉末を加えるためのダクト8、レーザービームを送信するための光ガイド9、亜鉛粉末を供給するためのダクト10が配置されている。
【0026】
デバイス5は、それ自体は公知の技術により、ダクト8を通して金属粉末を供給し、金属粉末は、光ガイド9によって送信されるレーザービームによって、シートメタル構成要素2、3の上方で即座に溶融され、層ごとに、要求される構成を有する粗いクラッディングベース4を形成する。
【0027】
別の実施形態において、粉末は、ワイヤに置き換えられてよい。この場合、複数の仕上げレベル(1からnレベル)におけるクラッディングの考え得る製造として、様々な直径(1ミリメートルから10ミクロン)および異なる化学組成を持つ金属ワイヤ(またはマルチマテリアルバージョンにおいては高分子材料)から成る1または複数のコイルが設けられる。
【0028】
本発明の方法のこの実施形態によると、ベースクラッディング4が適用されると、デバイス5は、ベースクラッディング4の上方に、補強マイクロリブの分布を含む、緻密なクラッディング11のさらなるオーバーレイを適用するために用いられる。
【0029】
図3は、複数のセル13を含む概して不規則なハニカムパターンを画定する、複数のマイクロリブ12を有する緻密なクラッディング構造の第1の例を示す。
図3の例においては、マイクロリブ12が、一様な形状および寸法から成る高さ方向の断面を有するという意味において、当該パターンは二次元の構成を有している。
【0030】
図4は
図3の変形例を示し、そこでは、壁12は、ばらつきのある形状および寸法から成る高さ方向の断面を有し、
図5は当該例による拡大図を示す。
【0031】
本出願人は、緻密なオーバーレイ11のデザインに対し、
図6に示すタイプの自然界に存在する殻構造からインスピレーションを受けた。当該殻構造は、構造上の強度および軽量性の理想的な組み合わせで特徴付けられる。
【0032】
上記の特性により、少なくとも粗いベースクラッディング4を備えて、および、好ましくは緻密なクラッディング11も備えて完成された溶接接合部Wは、アセンブリ全体の構造上の強度に大きな貢献をもたらす部分を構成し得る「構造」連結部となる。
【0033】
本出願人によって認識されている上記方法の考え得る不利益な点とは、付加製造段階中に金属シート構造に加えられる熱が、シートメタル構成要素2、3に設けられてよい亜鉛の外層を局所的に破壊する可能性があること、および、さらに当該熱が、上記構成要素が既に受けたクエンチング方法により得られたシート2、3の構造上の強度の有利な点を台無しにする可能性があること、である。これらの欠点を克服すべく、デバイス5は、亜鉛粉末を付加するための上記のダクト10を含んでよく、層4および/または層11で被覆された接合部の上方の亜鉛コーティングを復元すべく、亜鉛粉末も付加製造法技術で上記構成要素の上方に適用される。さらに、例えば、マニピュレータロボット14(
図8中、部分的にのみ見える)の手首に搭載された
図8に示すタイプのデバイス5を提供することも可能であり、および、当該デバイスには、
図7を参照して説明したヘッド6に加え、ノズル15も設けられる。当該ノズルは、付加製造段階における熱の発生の後、構成要素の急激な冷却を生じさせるべく、構成要素2、3上に低温流体(例えば、窒素またはアルゴン)を加えるためのものであり、その結果、当該金属構成要素の局所的クエンチングが得られる。
【0034】
本発明による方法は、自動車の構造物の製造、特に、従来の方法と比較して、より少ない数の電気抵抗溶接スポットを持つ自動車の「ホワイトボディ」のフレーミングを可能にする。
【0035】
例えば、
図9を参照すると、自動車製造プラントはライン16を提供してよく、当該ライン16上を組み立てられるべき構造物が前進し、例えば、自動搬送タイプの車両18上で搬送される。ライン16沿いで、車両18は、フレーミングステーションFに遭遇する。フレーミングステーションFは、溶接されるべき構造物を構成する部分を正確な組み立て位置に固定するための任意の既知のタイプの固定デバイス(不図示)、および、車両18で運搬される構造物に対し複数の電気抵抗溶接を実行するための電気抵抗溶接ヘッドが備わった1または複数の溶接ロボット19を備える。また、フレーミングステーションFは、上記した手法による付加製造法技術により、溶接接合部上に、粗いクラッディングの層を適用すべく、
図7を参照して上記したタイプのデバイス5を持つ複数のロボット20を備えてもよい。
【0036】
フレーミングステーションFを出た後、溶接された構造物は完成ステーションSへ移送され、完成ステーションSでは、追加のロボット21が、ここでも再び付加製造法技術により、緻密なクラッディングの追加の層の適用を実行する。これらのロボットは、シートメタル構造物の抵抗特性を復元すべく、上記の方法により、溶接接合部の上方の亜鉛の外層の復元段階を実行し、且つ、局所的クエンチングを実行してもよい。
【0037】
図10は、粗いベースクラッディングの層23および緻密なクラッディングのオーバーラップ24が適用されたスティールシート構成要素22の断面図を示す。粗いベースクラッディングの層23および緻密なクラッディングのオーバーラップ24は両方とも、
図1、2の溶接接合部を参照して上記した付加製造法技術と同様の付加製造法技術で適用されている。
【0038】
金属シート構成要素22が成形された構成要素である場合、クラッディング23、24の層は、シートメタル要素を形成した後、適用されることが想定されてよい。しかしながら、本発明の特に興味深い実施形態においては、ベース層23およびオーバーラップ24により構成される補強要素を適用した後、型でのシートメタル構成要素の形成が実行される。オーバーラップ24は、
図3または
図4を参照して上記したタイプの構成を有することが好ましい。
【0039】
図11および12に、この実施形態の変形例を示す。これらの図は、上型25および下型26を有する型でのシートメタル構成要素22の形成を示す。
図11および12に示す事例においては、型での形成の前に、補強要素23が付加製造法技術により、シートメタル22の上方に適用される。補強部23の適用の後、2つの型部分25、26を閉じると、補強部23がシート22の厚みの中へ組み込まれ、このようにして得られる構造が型で形成される。
【0040】
図13-
図16は、マルチレベルおよびマルチマテリアルクラッディングを生成する、本発明による方法のさらなる実施形態に係る後続の段階を示す。
【0041】
図13は、構成要素22の上に、第1の粗い金属クラッディングを適用し、互いに離間する補強金属部分23を画定する、第1の段階を示す。
図14は、補強金属部分23間に、例えば、プラスチック、軽合金およびセラミック材料から選択される、より軽い材料から成る支持層27を適用する第2の段階を示す。
図15は、別のレベルの緻密なクラッディング28を適用する後続の段階を示し、
図16は、支持層28の上方に層29を作成する、非常に緻密な最終クラッディングの適用を示す。
【0042】
上記内容から明らかように、本発明による方法は、その好ましい実施形態において、マルチレベルクラッディングを提供し、マルチレベルクラッディングでは、各レベルは、付加製造法により、一連の層で作成される。レベルは、すべて金属材料で構成されてよく、または、異なる材料で作成されてよく、および、合成材料若しくはセラミック材料のレベルを含んでもよい。好ましくは、また、各種レベルは、ベースレベルから開始して、漸進的により緻密になる上のレベルに向かって、漸進的に小さくなる高さ寸法を有する。すなわち、ベースレベルは、ミリメートルのオーダー(すなわち、0.1mmから10mmの間)の高さを持つ粗いクラッディングであってよく、当該上のレベルは、ミクロン範囲(1ミクロンから200ミクロンの間)、および、それ以降は10分の1ミクロン(0.1ミクロンから1ミクロンの間)またはさらにそれ未満のオーダーの厚みを有してよい。
【0043】
上記の説明から明らかなように、本発明による方法は、自動車の製造プロセスにおいて、とりわけ、得られる構造物の強度および軽量性の理想的な組み合わせの観点から、一連の改善に向かう道を開く。さらに、説明した内容から明らかなように、本発明による方法は、高コストを伴わずに、現在使用中の製造プラントに容易に適用可能且つ適合可能である。
【0044】
もちろん、本発明の原理を損なうことなく、構成の実施形態および詳細は、専ら例示として説明および図示したものに対し、本発明の範囲から逸脱することなく、広く変形されてよい。