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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】超音波検査装置及び超音波検査方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 29/265 20060101AFI20230511BHJP
   G01N 29/28 20060101ALI20230511BHJP
   G01N 29/46 20060101ALI20230511BHJP
   G01R 31/28 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G01N29/265
G01N29/28
G01N29/46
G01R31/28 L
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019033084
(22)【出願日】2019-02-26
(65)【公開番号】P2020139746
(43)【公開日】2020-09-03
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】304027349
【氏名又は名称】国立大学法人豊橋技術科学大学
(73)【特許権者】
【識別番号】000236436
【氏名又は名称】浜松ホトニクス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【弁理士】
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100140442
【弁理士】
【氏名又は名称】柴山 健一
(74)【代理人】
【識別番号】100148013
【弁理士】
【氏名又は名称】中山 浩光
(72)【発明者】
【氏名】穂積 直裕
(72)【発明者】
【氏名】松井 拓人
(72)【発明者】
【氏名】松本 徹
(72)【発明者】
【氏名】江浦 茂
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-072292(JP,A)
【文献】特開平08-320359(JP,A)
【文献】米国特許第06430728(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01R 31/00-31/74
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
パッケージ化された半導体デバイスを検査対象とする超音波検査装置であって、
前記半導体デバイスに対向して配置される超音波振動子と、
前記超音波振動子から出力する超音波の発生に用いる駆動信号を生成する信号生成部と、
前記超音波振動子による前記超音波の照射に応じて前記半導体デバイスから出力される出力信号を解析する解析部と、を備え、
前記信号生成部は、前記半導体デバイスの表面で反射した前記超音波の強度時間波形をフーリエ変換して得られる反射周波数スペクトルに基づいて、前記半導体デバイス内での前記超音波の吸収が最大となるように前記駆動信号の最適周波数を設定する超音波検査装置。
【請求項2】
前記信号生成部は、前記超音波振動子から出力した前記超音波の強度時間波形をフーリエ変換して得られる出射周波数スペクトルと、前記反射周波数スペクトルとの比に基づいて前記駆動信号の最適周波数を設定する請求項1記載の超音波検査装置。
【請求項3】
パッケージ化された半導体デバイスを検査対象とする超音波検査装置であって、
前記半導体デバイスに対向して配置される超音波振動子と、
前記超音波振動子から出力する超音波の発生に用いる駆動信号を生成する信号生成部と、
前記超音波振動子による前記超音波の照射に応じて前記半導体デバイスから出力される出力信号を解析する解析部と、を備え、
前記信号生成部は、前記駆動信号の周波数を掃引し、掃引範囲内で前記半導体デバイスから出力される前記出力信号の強度が最も高くなる周波数を前記駆動信号の最適周波数とすることで、前記半導体デバイス内での前記超音波の吸収が最大となるように前記駆動信号の最適周波数を設定する超音波検査装置。
【請求項4】
パッケージ化された半導体デバイスを検査対象とする超音波検査装置であって、
前記半導体デバイスに対向して配置される超音波振動子と、
前記超音波振動子から出力する超音波の発生に用いる駆動信号を生成する信号生成部と、
前記超音波振動子による前記超音波の照射に応じて前記半導体デバイスから出力される出力信号を解析する解析部と、を備え、
前記信号生成部は、前記半導体デバイスの被検査領域の位置毎の最適周波数を示すマッピング情報と前記超音波振動子の位置とに基づいて前記駆動信号を生成し、前記半導体デバイス内での前記超音波の吸収が最大となるように前記駆動信号の最適周波数を設定する超音波検査装置。
【請求項5】
前記解析部は、前記半導体デバイスの被検査領域において前記出力信号の解析結果をマッピングすることにより解析画像を生成する請求項1~4のいずれか一項記載の超音波検査装置。
【請求項6】
前記信号生成部は、前記最適周波数を含む一定の範囲内で複数の周波数の駆動信号を生成し、
前記解析部は、前記複数の周波数の駆動信号に基づいて生成された複数の解析画像のうち、最もSN比が高い解析画像を選択して外部出力する請求項5記載の超音波検査装置。
【請求項7】
パッケージ化された半導体デバイスを検査対象とする超音波検査方法であって、
前記半導体デバイスに向けて超音波振動子から超音波を照射する照射ステップと、
前記超音波振動子からの前記超音波の照射に応じて前記半導体デバイスから出力される出力信号を解析する解析ステップと、を備え、
前記照射ステップでは、前記半導体デバイスの表面で反射した前記超音波の強度時間波形をフーリエ変換して得られる反射周波数スペクトルに基づいて、前記半導体デバイス内での前記超音波の吸収が最大となるように前記超音波振動子を駆動する駆動信号の最適周波数を設定する超音波検査方法。
【請求項8】
前記照射ステップでは、前記超音波振動子から出力した前記超音波の強度時間波形をフーリエ変換して得られる出射周波数スペクトルと、前記反射周波数スペクトルとの比に基づいて前記駆動信号の最適周波数を設定する請求項7記載の超音波検査方法。
【請求項9】
パッケージ化された半導体デバイスを検査対象とする超音波検査方法であって、
前記半導体デバイスに向けて超音波振動子から超音波を照射する照射ステップと、
前記超音波振動子からの前記超音波の照射に応じて前記半導体デバイスから出力される出力信号を解析する解析ステップと、を備え、
前記照射ステップでは、前記超音波振動子を駆動する駆動信号の周波数を掃引し、掃引範囲内で前記半導体デバイスから出力される前記出力信号の強度が最も高くなる周波数を前記駆動信号の最適周波数とすることで、前記半導体デバイス内での前記超音波の吸収が最大となるように前記駆動信号の最適周波数を設定する超音波検査方法。
【請求項10】
パッケージ化された半導体デバイスを検査対象とする超音波検査方法であって、
前記半導体デバイスに向けて超音波振動子から超音波を照射する照射ステップと、
前記超音波振動子からの前記超音波の照射に応じて前記半導体デバイスから出力される出力信号を解析する解析ステップと、を備え、
前記照射ステップでは、前記半導体デバイスの被検査領域の位置毎の最適周波数を示すマッピング情報と前記超音波振動子の位置とに基づいて前記超音波振動子を駆動する駆動信号を生成し、前記半導体デバイス内での前記超音波の吸収が最大となるように駆動信号の最適周波数を設定する超音波検査方法。
【請求項11】
前記解析ステップでは、前記半導体デバイスの被検査領域において前記出力信号の解析結果をマッピングすることにより解析画像を生成する請求項7~10のいずれか一項記載の超音波検査方法。
【請求項12】
前記照射ステップでは、前記最適周波数を含む一定の範囲内で複数の周波数の駆動信号を生成し、
前記解析ステップでは、前記複数の周波数の駆動信号に基づいて生成された複数の解析画像のうち、最もSN比が高い解析画像を選択して外部出力する請求項11記載の超音波検査方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、超音波検査装置及び超音波検査方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の超音波検査装置として、例えば特許文献1に記載の超音波加熱を用いた半導体集積回路配線系の検査装置がある。この従来の超音波検査装置では、被検査体である半導体集積回路に対し、定電圧源から電力を供給しながら超音波を照射する。そして、超音波の照射に応じてグランド配線に流れる電流の変化を検出することにより、半導体集積回路の電流像或いは欠陥像を生成するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平8-320359号公報
【文献】特開2018-72284号公報
【文献】特開2018-72285号公報
【非特許文献】
【0004】
【文献】松本徹、穂積直裕、「超音波刺激によるパッケージ内配線の電流変動観察」、The 36th NANO Testing Symposium (NANOTS2016), 9-11 Nov. 2016,p.235-238
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した従来の超音波検査装置では、パッケージから取り出した半導体チップが検査対象となっている。しかしながら、半導体チップをパッケージから取り出す作業が必要なことや、半導体チップの取り出しの際に回路の特性が変化してしまう可能性などを考慮すると、パッケージ化された状態のままで半導体デバイスを検査することが好適である。パッケージ化された半導体デバイスを検査する場合、観察点である半導体チップを外部から視認できないという問題がある。
【0006】
半導体デバイス内の半導体チップを検査する技術としては、例えば非特許文献1に記載の半導体デバイスの故障解析技術がある。また、半導体デバイス内の半導体チップに超音波の焦点を合わせる技術としては、例えば特許文献2,3に記載の超音波検査装置がある。更なる検査精度の向上の観点からは、超音波の照射に応じて半導体デバイスから出力される出力信号の強度を十分に高めるための工夫が必要となる。
【0007】
本開示は、上記課題の解決のためになされたものであり、超音波の照射に応じて半導体デバイスから出力される出力信号の強度を十分に高めることができる超音波検査装置及び超音波検査方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一側面に係る超音波検査装置は、パッケージ化された半導体デバイスを検査対象とする超音波検査装置であって、半導体デバイスに対向して配置される超音波振動子と、超音波振動子から出力する超音波の発生に用いる駆動信号を生成する信号生成部と、超音波振動子による超音波の入射に応じて半導体デバイスから出力される出力信号を解析する解析部と、を備え、信号生成部は、半導体デバイス内での超音波の吸収が最大となるように駆動信号の最適周波数を設定する。
【0009】
この超音波検査装置では、半導体デバイス内での超音波の吸収が最大となるように駆動信号の最適周波数を設定する。駆動信号を最適周波数とすることで、半導体デバイス内で超音波の共振を十分に生じさせることができる。このため、超音波の集束強度が高まると共に、超音波の照射位置で半導体デバイスの温度が上昇し、超音波の照射に応じて半導体デバイスから出力される出力信号の強度を十分に高めることができる。出力信号の強度を高めることで、検査精度の向上が図られる。
【0010】
信号生成部は、半導体デバイスの表面で反射した超音波の強度時間波形をフーリエ変換して得られる反射周波数スペクトルに基づいて駆動信号の最適周波数を設定してもよい。このような手法によれば、半導体デバイスから出力される出力信号を取得する際の超音波の周波数を幅広い範囲で掃引することなく、駆動信号の最適周波数を事前に精度良く導出できる。
【0011】
信号生成部は、超音波振動子から出力した超音波の強度時間波形をフーリエ変換して得られる出射周波数スペクトルと、反射周波数スペクトルとの比に基づいて駆動信号の最適周波数を設定してもよい。この場合、駆動信号の最適周波数を事前に一層精度良く導出できる。
【0012】
信号生成部は、掃引範囲内で半導体デバイスから出力される出力信号の強度が最も高くなる周波数を駆動信号の最適周波数として設定してもよい。この場合、簡単な処理で駆動信号の最適周波数を導出できる。
【0013】
信号生成部は、半導体デバイスの被検査領域の位置毎の最適周波数を示すマッピング情報に基づいて駆動信号を生成してもよい。この場合、半導体デバイスの被検査領域の構造(樹脂厚や材質など)が位置によってばらついていたとしても、常に最適な周波数の駆動信号を用いて出力信号の解析を行うことができる。
【0014】
解析部は、半導体デバイスの被検査領域において出力信号の解析結果をマッピングすることにより解析画像を生成してもよい。これにより、半導体デバイスの検査結果を解析画像に基づいて容易に把握することが可能となる。
【0015】
信号生成部は、最適周波数を含む一定の範囲内で複数の周波数の駆動信号を生成し、解析部は、複数の周波数の駆動信号に基づいて生成された複数の解析画像のうち、最もSN比が高い解析画像を選択して外部出力してもよい。この場合、半導体デバイスの被検査領域の構造(樹脂厚や材質など)が位置によってばらついていたとしても、感度の高い解析画像に基づいて半導体デバイスの検査を精度良く実施することができる。
【0016】
本開示の一側面に係る超音波検査方法は、パッケージ化された半導体デバイスを検査対象とする超音波検査方法であって、半導体デバイスに向けて超音波振動子から超音波を照射する照射ステップと、超音波振動子からの超音波の照射に応じて半導体デバイスから出力される出力信号を解析する解析ステップと、を備え、照射ステップでは、半導体デバイス内での超音波の吸収が最大となるように超音波振動子を駆動する駆動信号の最適周波数を設定する。
【0017】
この超音波検査方法では、半導体デバイス内での超音波の吸収が最大となるように駆動信号の最適周波数を設定する。駆動信号を最適周波数とすることで、半導体デバイス内で超音波の共振を十分に生じさせることができる。このため、超音波の集束強度が高まると共に、超音波の照射位置で半導体デバイスの温度が上昇し、超音波の照射に応じて半導体デバイスから出力される出力信号の強度を十分に高めることができる。出力信号の強度を高めることで、検査精度の向上が図られる。
【0018】
照射ステップでは、半導体デバイスの表面で反射した超音波の強度時間波形をフーリエ変換して得られる反射周波数スペクトルに基づいて駆動信号の最適周波数を設定してもよい。このような手法によれば、半導体デバイスから出力される出力信号を取得する際の超音波の周波数を幅広い範囲で掃引することなく、駆動信号の最適周波数を事前に精度良く導出できる。
【0019】
照射ステップでは、超音波振動子から出力した超音波の強度時間波形をフーリエ変換して得られる出射周波数スペクトルと、反射周波数スペクトルとの比に基づいて駆動信号の最適周波数を設定してもよい。この場合、駆動信号の最適周波数を事前に一層精度良く導出できる。
【0020】
照射ステップでは、駆動信号の周波数を掃引し、掃引範囲内で半導体デバイスから出力される出力信号の強度が最も高くなる周波数を駆動信号の最適周波数として設定してもよい。この場合、簡単な処理で駆動信号の最適周波数を導出できる。
【0021】
照射ステップでは、半導体デバイスの被検査領域の位置毎の最適周波数を示すマッピング情報に基づいて駆動信号を生成してもよい。この場合、半導体デバイスの被検査領域の構造(樹脂厚や材質など)が位置によってばらついていたとしても、常に最適な周波数の駆動信号を用いて出力信号の解析を行うことができる。
【0022】
解析ステップでは、半導体デバイスの被検査領域において出力信号の解析結果をマッピングすることにより解析画像を生成してもよい。これにより、半導体デバイスの検査結果を解析画像に基づいて容易に把握することが可能となる。
【0023】
照射ステップでは、最適周波数を含む一定の範囲内で複数の周波数の駆動信号を生成し、解析ステップでは、複数の周波数の駆動信号に基づいて生成された複数の解析画像のうち、最もSN比が高い解析画像を選択して外部出力してもよい。この場合、半導体デバイスの被検査領域の構造(樹脂厚や材質など)が位置によってばらついていたとしても、感度の高い解析画像に基づいて半導体デバイスの検査を精度良く実施することができる。
【発明の効果】
【0024】
本開示によれば、超音波の照射に応じて半導体デバイスから出力される出力信号の強度を十分に高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】超音波検査装置の一実施形態を示す概略構成図である。
図2】超音波振動子の構成を示す概略図である。
図3】検査実行時の超音波の焦点位置を示す概略図である。
図4】(a)は出力した超音波の時間強度波形の一例、(b)は反射した超音波の強度時間波形の一例、(c)は出射周波数スペクトルに対する反射周波スペクトルの比の一例を示す図である。
図5】最適周波数のマッピング情報の一例を示す図である。
図6】超音波の焦点位置の調整制御の一例を示す図である。
図7図6の後続の状態を示す図である。
図8】(a)は解析画像の一例、(b)は反射画像の一例、(c)は重畳画像の一例を示す図である。
図9】(a)~(c)は、異なるキャリア周波数を用いて取得した複数の解析画像の例を示す図である。
図10】複数の解析画像のSN比の算出結果の一例を示す図である。
図11】超音波検査方法の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、図面を参照しながら、本開示の一側面に係る超音波検査装置及び超音波検査方法の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0027】
図1は、超音波検査装置の一実施形態を示す概略構成図である。この超音波検査装置1は、検査対象である半導体デバイスDをパッケージ化された状態のまま検査する装置である。超音波検査装置1は、超音波Wの照射に起因する半導体デバイスDの抵抗変化を計測する手法に基づき、パッケージ化された半導体デバイスDの故障の有無及び故障位置の特定などを実施する。
【0028】
半導体デバイスDの一面側は、超音波Wが照射される検査面Dtとなっている。半導体デバイスDは、当該検査面Dtを下方に向けた状態で保持板などによって保持される。半導体デバイスDとしては、ダイオードやパワートランジスタ等を含む個別半導体素子(ディスクリート)、オプトエレクトロニクス素子、センサ/アクチュエータ、或いはMOS(Metal-Oxide-Semiconductor)構造やバイポーラ構造のトランジスタで構成されるロジックLSI(Large Scale Integration)、メモリ素子、リニアIC(IntegratedCircuit)、及びこれらの混成デバイス等が挙げられる。また、半導体デバイスDは、半導体デバイスを含むパッケージ、複合基板等であってもよい。
【0029】
図1に示すように、超音波検査装置1は、超音波振動子2と、ステージ3と、パルスジェネレータ(信号生成部)4と、反応検出部5と、ロックインアンプ6と、コンピュータ(解析部/画像生成部)7と、モニタ8とを含んで構成されている。
【0030】
超音波振動子2は、半導体デバイスDに向けて超音波Wを照射するデバイスである。超音波振動子2は、図2に示すように、パルサー11と、媒質保持部12とを有している。超音波振動子2は、例えば筒状をなし、より具体的には円筒状をなしている。超音波振動子2の先端面2aは、超音波Wを出力する部分であり、半導体デバイスDの検査面Dtと対向するように上方向きに配置されている。先端面2aは、実際には凹面状をなしており、先端面2aのそれぞれの位置で発生した超音波Wは、先端面2aから一定の距離だけ離れた位置に焦点を有する。
【0031】
先端面2aから出力される超音波Wは、例えば20kHz~10GHz程度の弾性振動波である。超音波Wの波形は、十分な帯域を有するパルス波形であれば特に制限はない。超音波Wの波形は、パルス波形に限られず、掃引されたバースト波形であってもよい。また、バースト波形には、局所周波数が掃引されたチャープ波形が含まれていてもよい。
【0032】
パルサー11は、パルスジェネレータ4から出力される駆動信号に基づいて超音波振動子2を駆動する部分である。本実施形態では、パルサー11は、半導体デバイスDの検査面で反射した超音波Wを検出するレシーバ13としての機能も有している。レシーバ13は、超音波Wの反射波を検出し、検出結果を示す検出信号をコンピュータ7に出力する。
【0033】
媒質保持部12は、超音波振動子2と半導体デバイスDとの間で媒質Mを保持する部分である。媒質保持部12によって保持される媒質Mは、本実施形態では水である。媒質Mは、半導体デバイスDのパッケージに用いられている材質とインピーダンスが整合するものであれば特に制限はなく、グリセリン等の他の液体、或いはゲル状、ゼリー状の物質などを用いてもよい。媒質保持部12は、例えばシリコーン樹脂など、可撓性及び媒質Mに対する濡れ性を十分に有する材料によって形成された筒状部材14を有している。筒状部材14は、超音波振動子2の先端面2a側の端部2bに着脱自在に嵌合している。
【0034】
筒状部材14の一部が先端面2aから突出するように筒状部材14を端部2bにスライド自在に嵌合することで、筒状部材14の内周面14aと超音波振動子2の先端面2aとによって媒質Mを保持する保持空間Sが形成される。超音波振動子2の先端面2aからの筒状部材14の突出量を調整することで、保持空間Sの容積が可変となる。これにより、パッケージの樹脂厚の異なる半導体デバイスDに対しても、媒質Mがこぼれることがない最適な保持空間Sの容積を設けることができる。また、筒状部材14の突出量の調整により、超音波振動子2から出力される超音波Wの焦点位置の範囲を調整できる。
【0035】
筒状部材14の突出量の把握を容易にするため、筒状部材14に目盛りが設けられていてもよい。目盛りが設けられる位置は、例えば筒状部材14の内周面14a或いは外周面14cである。筒状部材14の突出量は、超音波振動子2の端部2bに対する筒状部材14の位置を手動でスライドさせ、筒状部材14の嵌合量を変えることによって調整できる。超音波振動子2の端部2bに対する筒状部材14の位置は、スライド機構を用いて調整してもよい。また、筒状部材14の嵌合量を一定とした上で、異なる長さの筒状部材14に交換することによって筒状部材14の突出量を調整してもよい。
【0036】
筒状部材14の周壁部分には、保持空間Sに保持される媒質Mの保持量を調整する媒質流通口15が設けられている。媒質流通口15には、外部の媒質貯蔵部(不図示)に接続された流通管16が挿入されており、保持空間Sへの媒質Mの流入及び保持空間Sからの媒質Mの排出がなされるようになっている。媒質Mの流通量は、例えばコンピュータ7によって制御される。
【0037】
媒質流通口15は、筒状部材14の先端面14bから一定の間隔をもって設けられることが好ましい。これにより、媒質流通口15から流入する媒質Mに異物が混入した場合でも、保持空間Sにおいて異物が筒状部材14の先端面14b付近に集まることを抑制できる。筒状部材14の先端面14b付近は、超音波振動子2の先端面2a付近に比べて超音波Wが集束している。このため、先端面14b付近に異物が集まることを抑制することで、異物への超音波Wの干渉の影響を抑えられる。
【0038】
筒状部材14の内周面14aには、保持空間Sにおける媒質Mの保持量を検出するレベルセンサ(保持量検出部)17が取り付けられている。レベルセンサ17の取付位置は、例えば媒質流通口15よりも上方(先端面14b側)となっている。レベルセンサ17は、検出結果を示す検出信号をコンピュータ7に出力する。レベルセンサ17からの検出信号に基づいて、超音波Wの焦点位置を調整する際の保持空間Sの媒質Mの量の制御が実行される。筒状部材14には、半導体デバイスDとの距離を検出する距離センサが取り付けられていてもよい。これにより、後述するステージ3をZ軸方向に駆動させた際に、筒状部材14と半導体デバイスDの干渉を防ぐことができる。
【0039】
ステージ3は、図1に示すように、半導体デバイスDと超音波振動子2との相対位置を移動させる装置である。本実施形態では、ステージ3は、XYZ軸方向に駆動可能な3軸ステージとして構成され、ステージ3上に超音波振動子2が固定されている。ステージ3の駆動は、コンピュータ7からの指示信号に基づいて制御される。ステージ3が半導体デバイスDの検査面Dtの面内方向(XY軸方向)に駆動することにより、半導体デバイスDの検査面Dtにおける超音波Wの照射位置が走査される。また、ステージ3が半導体デバイスDの厚さ方向(Z軸方向)に駆動することにより、超音波Wの焦点位置が半導体デバイスDの厚さ方向に対して一定の精度をもって調整される。なお、ステージ3は、超音波振動子2ではなく、半導体デバイスDに固定されていてもよい。
【0040】
半導体デバイスDの検査の開始時には、図2に示したように、表面張力によって媒質保持部12の保持空間Sから盛り上がる程度に媒質Mが保持空間Sに供給される。そして、ステージ3が半導体デバイスDの厚さ方向に駆動することにより、媒質Mの盛り上がり部分Maが半導体デバイスDの検査面Dtに接触させられる。これにより、超音波振動子2の先端面2aから半導体デバイスDの検査面Dtに至る超音波Wの経路が媒質Mで充填される。そして、図3に示すように、ステージ3が半導体デバイスDの厚さ方向に更に駆動し、超音波Wの焦点位置が半導体デバイスD内のチップC付近で調整される。
【0041】
パルスジェネレータ4は、超音波振動子2に対する駆動信号を生成する装置である。駆動信号の周波数(以下、「キャリア周波数」と称す)は、超音波振動子2で発生させる超音波Wの周波数と等しい値に設定される。本実施形態のように、ロックインアンプ6を用いたロックイン検出を行う場合には、ロックイン周波数を別途設定し、キャリア周波数とロックイン周波数とを合成したバースト信号を駆動信号として超音波振動子2に入力する。この場合、ロックイン周波数に応じた参照信号がパルスジェネレータ4からロックインアンプ6に出力される。キャリア周波数は、例えば25MHz~300MHz程度であり、ロックイン周波数は、例えば0.1kHz~5kHz程度である。
【0042】
パルスジェネレータ4は、駆動信号の生成にあたり、半導体デバイスD内での共振による超音波Wの吸収が最大となるように駆動信号の最適周波数を設定する。パルスジェネレータ4は、例えば半導体デバイスDの表面で反射した超音波Wの周波数を解析することによって駆動信号の最適周波数を設定する。この場合、まず、リファレンス用サンプルをセットし、当該サンプルの検査面Dtにおける超音波Wの照射位置及び超音波Wの焦点位置を調整した後、超音波振動子2から出力する超音波Wの強度時間波形T0(図4(a)参照)を取得する。リファレンス用サンプルは、単一素材によって形成され、十分な厚みを有する物体であることが好ましい。また、検査対象の半導体デバイスDをセットし、当該半導体デバイスDの表面で反射した超音波Wの強度時間波形T1(図4(b)参照)を取得する。
【0043】
次に、強度時間波形T0をフーリエ変換して出射周波数スペクトルW0を導出し、強度時間波形T1をフーリエ変換して反射周波数スペクトルW1を導出する。そして、反射周波数スペクトルW1を出射周波数スペクトルW0で除算し、出射周波数スペクトルW0に対する反射周波数スペクトルW1の比Rを算出する。この比Rは、検査対象の半導体デバイスDの表面における超音波Wの反射率の周波数特性を示すものである。図4(c)は、出射周波数スペクトルW0に対する反射周波数スペクトルW1の比Rの導出結果の一例を示す図である。図4(c)の例では、周波数が46MHz~58MHzの範囲において、周波数が52MHzである場合に比Rが最小値となっている。この場合、パルスジェネレータ4は、比Rが最小値となる52MHzをキャリア周波数とする駆動信号を生成し、超音波振動子2に出力する。出射周波数スペクトルW0については、リファレンス用サンプルを用いて予め取得したデータをパルスジェネレータ4或いはコンピュータ7に記憶させておいてもよい。
【0044】
最適周波数の設定は、キャリア周波数の掃引によって実施してもよい。この場合、検査対象の半導体デバイスDをセットし、キャリア周波数を掃引しながら、当該半導体デバイスDの表面で反射した超音波Wの反射強度波形(不図示)を取得する。パルスジェネレータ4は、取得した反射強度波形に基づき、反射強度が最小値となる周波数をキャリア周波数とする駆動信号を生成し、超音波振動子2に出力する。
【0045】
キャリア周波数を掃引する方式と、上述した出射周波数スペクトルW0に対する反射周波数スペクトルW1の比Rを用いる方式とを組み合わせて最適周波数の導出を行ってもよい。この場合、例えば比Rが最小となるキャリア周波数を導出した後、当該周波数を含む所定の範囲でキャリア周波数を掃引し、反射強度が最小値となる周波数をキャリア周波数として駆動信号を生成すればよい。このような手法によれば、最適周波数を導出する際のキャリア周波数の掃引範囲を絞ることが可能となる。
【0046】
パルスジェネレータ4は、最適周波数を含む一定の範囲内で複数の周波数の駆動信号を生成してもよい。上記処理により最適周波数が52MHzと導出された場合、パルスジェネレータ4は、例えば48MHz~56MHzの範囲で2MHz刻みの駆動信号を生成してもよい。この場合、パルスジェネレータ4では、48MHz、50MHz、52MHz、54MHz、56MHzの5つのキャリア周波数に基づく駆動信号が生成され、5つの異なる周波数の超音波Wを用いて半導体デバイスDの検査が実施される。
【0047】
パルスジェネレータ4は、半導体デバイスDの被検査領域の位置毎の最適周波数を示すマッピング情報に基づいて駆動信号を生成してもよい。図5は、最適周波数のマッピング情報の一例を示す図である。同図の例では、半導体デバイスDの検査面Dtの被検査領域がマトリクス状に9つの領域に区分されており、各領域に最適周波数がそれぞれ割り当てられている。マッピング情報は、例えばステージ3を半導体デバイスDの検査面Dtの面内方向(XY軸方向)に駆動し、半導体デバイスDの被検査領域の位置毎に最適周波数を導出することによって生成される。マッピング情報は、半導体デバイスDの個体毎に生成してもよく、製品仕様などに応じて予め生成したものをパルスジェネレータ4或いはコンピュータ7に記憶させておいてもよい。
【0048】
反応検出部5は、超音波振動子2による超音波Wの照射に応じた半導体デバイスDの反応を検出する装置である。反応検出部5は、例えばロックインアンプ6の前段に接続された検出アンプによって構成されている。反応検出部5は、半導体デバイスDに定電圧又は定電流を印加する電源装置10を内蔵している。反応検出部5は、定電圧又は定電流の印加状態において、超音波Wの照射に応じた半導体デバイスDの電流又は電圧を検出し、検出結果を示す検出信号をロックインアンプ6に出力する。反応検出部5は、交流成分のみを抽出して検出信号を出力するようにしてもよい。
【0049】
ロックインアンプ6は、反応検出部5から出力される検出信号をロックイン検出する装置である。ロックインアンプ6は、パルスジェネレータ4から出力される参照信号に基づいて、反応検出部5から出力される検出信号をロックイン検出する。そして、ロックインアンプ6は、検出結果を示す検出信号をコンピュータ7に出力する。
【0050】
コンピュータ7は、物理的には、RAM、ROM等のメモリ、CPU等のプロセッサ(演算回路)、通信インターフェイス、ハードディスク等の格納部、モニタ8等の表示部を備えて構成されている。かかるコンピュータ7としては、例えばパーソナルコンピュータ、クラウドサーバ、スマートデバイス(スマートフォン、タブレット端末など)などが挙げられる。コンピュータ7は、マイクロコンピュータ或いはFPGA(field-programmable gate array)などによって構成されていてもよい。コンピュータ7は、メモリに格納されるプログラムをコンピュータシステムのCPUで実行することにより、ステージ3の動作を制御するステージ制御部21、及びロックインアンプ6からの検出信号を解析する解析部22として機能する。
【0051】
ステージ制御部21は、より具体的には、半導体デバイスDの厚さ方向に対する超音波Wの焦点位置の調整制御と、半導体デバイスDの検査面Dtに対する超音波Wの走査制御とを実行する。焦点位置の調整制御では、ステージ制御部21は、超音波振動子2のレシーバ13から出力される当該検出信号に基づいてステージ3のZ方向の制御を実行する。超音波Wの走査制御では、ステージ制御部21は、超音波Wが半導体デバイスDの検査面Dtに沿って移動するように、ステージ3のXY方向の制御を実行する。ステージ制御部21は、走査制御時のステージ3の位置情報を解析部22に順次出力する。
【0052】
図6は、焦点位置の調整制御の一例を示す図である。同図の例では、横軸が時間(超音波Wが出力されてから反射波が検出されるまでの時間)、縦軸が振幅となっており、レシーバ13からの検出信号の時間波形Kがプロットされている。この時間波形Kは、超音波Wを複数回出力させた場合の反射波の検出信号を積算したものであってもよい。
【0053】
超音波Wの焦点位置を半導体デバイスDに向けて変位させていくと、図6に示すように、半導体デバイスDのパッケージ表面での反射に対応する第1ピークP1が時間波形Kに出現する。第1ピークP1が出現した位置から更に超音波Wの焦点位置を半導体デバイスD側に変位させると、超音波Wの焦点位置が半導体デバイスDのパッケージ内に移動し、図7に示すように、半導体デバイスD内部のチップC表面での反射に対応する第2ピークP2が時間波形Kに出現する。したがって、ステージ制御部21は、第2ピークP2の振幅が最大となるようにステージ3のZ軸方向の位置を制御する。
【0054】
焦点位置の調整制御において、パッケージの樹脂厚が既知である場合、或いはパッケージの樹脂組成が既知であり、パッケージ内の超音波Wの音速が算出可能である場合が考えられる。この場合には、これらの情報に基づいて予め第2ピークP2の出現位置(出現時間)の範囲を算出し、第2ピークP2を検出する際の検出窓Aを設定するようにしてもよい。検出窓Aの設定により、第2ピークP2の出現位置の検出精度の向上及び検出時間の短縮化が図られる。半導体デバイスD内に複数層のチップCが内蔵されていることが既知である場合には、第2ピークP2以降のピークに基づいてステージ3のZ軸方向の位置を制御してもよい。
【0055】
解析部22は、半導体デバイスDの検査中にロックインアンプ6から出力される検出信号をステージ制御部21から出力されるステージ3の位置情報に基づいてマッピングし、図8(a)に示すように、解析画像31を生成する。解析画像31において、半導体デバイスDの反応(電流又は電圧の変化量)に応じた表示輝度の範囲、色、透過度などは、任意に設定可能である。
【0056】
解析部22は、半導体デバイスDの検査中にレシーバ13から出力される検出信号をステージ制御部21から出力されたステージ3の位置情報に基づいてマッピングし、図8(b)に示すように、反射画像32を生成する。反射画像32の生成にあたっては、レシーバ13からの検出信号のうち、半導体デバイスD内のチップC表面からの反射波に対応する時間の成分のみを抽出することが好適である。こうすると、半導体デバイスD内のチップCの形状を表す反射画像32を得ることができる。
【0057】
解析部22は、図8(c)に示すように、解析画像31と反射画像32とを重畳した重畳画像33を生成してもよい。解析部22は、生成した重畳画像33をモニタ8に出力する。重畳画像33では、反射画像32が示す半導体デバイスD内のチップCの形状に、解析画像31が示す半導体デバイスDの反応が重ね合され、チップCの故障位置の特定が容易なものとなる。反射画像32では、チップCの形状だけでなく、回路の剥離といった異常が確認できる場合がある。したがって、重畳画像33において、解析画像31から確認できる異常位置と反射画像32から確認できる異常位置とが重なった場合、当該異常位置を強調表示するようにしてもよい。
【0058】
パルスジェネレータ4で最適周波数を含む一定の範囲内で複数の周波数の駆動信号が生成され、異なる周波数の超音波Wを用いて半導体デバイスDの検査が実施された場合、解析部22は、これら複数の周波数の駆動信号に基づく複数の解析画像31を生成する。この場合、解析部22は、生成した複数の解析画像31のうち、最もSN比が高い解析画像31を選択して外部出力する。
【0059】
図9の例では、キャリア周波数を48MHzとした場合の解析画像31A(図9(a))、キャリア周波数を52MHzとした場合の解析画像31B(図9(b))、及びキャリア周波数を56MHzとした場合の解析画像31C(図9(c))を示す(図9では、キャリア周波数を50MHzとした場合の解析画像及びキャリア周波数を54MHzとした場合の解析画像は省略する)。画像のSN比は、例えば解析画像中の信号点とノイズ点とを指定し、これらの点での信号強度の比に基づいて算出される。
【0060】
図10は、複数の解析画像のSN比の算出結果の一例を示す図である。同図の例では、最もSN比が高い解析画像は、キャリア周波数を52MHzとした場合の解析画像である。この場合、解析部22は、複数の解析画像のうち、キャリア周波数を52MHzとした場合の解析画像を選択する。そして、解析部22は、選択した解析画像に反射画像を重畳して重畳画像を生成し、モニタ8に出力する。
【0061】
続いて、上述した超音波検査装置1を用いた超音波検査方法について説明する。
【0062】
図11は、超音波検査方法の一例を示すフローチャートである。同図に示すように、超音波検査装置1を用いて半導体デバイスDの検査を実施する場合、まず、半導体デバイスDを不図示の保持板などに配置する(ステップS01)。次に、媒質流通口15から媒質保持部12に媒質Mを流入させ、保持空間Sに媒質Mを保持する(ステップS02)。ステップS02では、上述したように、表面張力による媒質Mの盛り上がり部分Maを形成される。そして、筒状部材14の先端面14bが半導体デバイスDの検査面Dtに接触させず、かつ媒質Mの盛り上がり部分Maのみが半導体デバイスDの検査面Dtに接触させた状態で、ステージ3をZ軸方向に駆動する(図2参照)。
【0063】
媒質Mを保持した後、超音波Wの焦点位置を調整する(ステップS03)。ここでは、まず、超音波振動子2がチップCと対向する位置に来るように、ステージ3をX軸方向及びY軸方向に駆動する。次に、レシーバ13から出力される超音波Wの反射波の時間波形Kにおける第2ピークP2の出現位置に基づいて、超音波Wの焦点位置が半導体デバイスD内部のチップC表面に一致するようにステージ3をZ軸方向に駆動する(図3参照)。超音波Wの焦点位置の調整は、ステージ制御部21によって自動で実行してもよく、超音波検査装置1のユーザが時間波形Kの第2ピークP2の出現位置を目視で確認しながら手動で実行してもよい。
【0064】
超音波Wの焦点位置の調整後、半導体デバイスDの傾きを調整するステップを実行してもよい。このステップでは、例えばステージ3をX軸方向及びY軸方向に一軸ずつ駆動させたときの反射波の時間波形Kが互いに一致するように、保持板或いはステージ3の姿勢を調整する。当該ステップも、ステージ制御部21によって自動で実行してもよく、超音波検査装置1のユーザが時間波形Kを目視で確認しながら手動で行ってもよい。
【0065】
超音波Wの焦点位置の調整の後、半導体デバイスDに向けて超音波振動子2から超音波Wを照射する照射ステップを実行する。照射ステップでは、まず、超音波振動子2に入力する駆動信号のキャリア周波数を設定する(ステップS04)。ここでは、上述した出射周波数スペクトルW0に対する反射周波数スペクトルW1の比Rを用いる方式、キャリア周波数を掃引する方式、或いはこれらの方式を組み合わせることにより、半導体デバイスD内での超音波Wの吸収が最大となるように駆動信号の最適周波数を設定する。ステップS04では、最適周波数を含む一定の範囲内で複数の周波数の駆動信号を生成してもよく、半導体デバイスDの被検査領域の位置毎の最適周波数を示すマッピング情報に基づいて駆動信号を生成してもよい。
【0066】
最適周波数の設定後、半導体デバイスDの反射画像を生成する(ステップS05)。ステップS05では、ステップS04で生成した駆動信号をパルスジェネレータ4から超音波振動子2に入力し、超音波振動子2から半導体デバイスDに超音波Wを照射する。そして、半導体デバイスDからの反射波をレシーバ13で検出し、レシーバ13から出力された検出信号と、ステージ制御部21から出力されるステージ3の位置情報とに基づいてマッピングを行い、反射画像32を生成する。
【0067】
反射画像32に基づく解析位置の確認後、半導体デバイスDに定電圧(又は定電流)を印加すると共に、超音波Wの照射を行う(ステップS06)。ステップS06では、電源装置10から半導体デバイスDに定電圧(又は定電流)を印加する。また、パルスジェネレータ4から超音波振動子2に駆動信号を入力し、超音波振動子2からの超音波Wを半導体デバイスDに照射する。そして、ステージ3をXY軸方向に駆動し、超音波Wの照射に応じた半導体デバイスDの電流又は電圧の変化を半導体デバイスDの検査面Dtの各位置において検出する。半導体デバイスDの電流又は電圧の変化を反応検出部5で検出し、検出信号のAC成分を反応検出部5からロックインアンプ6に出力する。ロックインアンプ6において、反応検出部5から出力された検出信号とパルスジェネレータ4から出力された参照信号とに基づくロックイン検出を行い、その検出信号を解析部22に出力する。
【0068】
照射ステップの後、超音波振動子2からの超音波Wの照射に応じて半導体デバイスから出力される出力信号(ここではロックインアンプ6から出力される検出信号)を解析する解析ステップを実行する。解析ステップでは、ロックイン検出の検出信号に基づいて解析画像31を生成する(ステップS07)。すなわち、半導体デバイスDの検査中にロックインアンプ6から出力された検出信号を、ステージ制御部21から出力されるステージ3の位置情報に基づいてマッピングし、解析画像31を生成する。
【0069】
ステップS04において最適周波数を含む一定の範囲内で複数の周波数の駆動信号を生成する場合、ステップS07では、これら複数の周波数の駆動信号に基づく複数の解析画像31を生成する。この場合、複数の解析画像31中の信号点とノイズ点とをそれぞれ指定し、これらの点での信号強度の比に基づいて画像のSN比を算出する。そして、生成した複数の解析画像31のうち、最もSN比が高い解析画像31を選択する(ステップS08)。解析画像31を生成した後、解析画像31と反射画像32とを重畳した重畳画像33を生成し、モニタ8に重畳画像33を表示する(ステップS09)。
【0070】
以上説明したように、超音波検査装置1では、半導体デバイスD内での超音波Wの吸収が最大となるように駆動信号の最適周波数を設定する。駆動信号を最適周波数とすることで、半導体デバイスD内で超音波Wの共振を十分に生じさせることができる。この最適周波数は、共振周波数と言い換えることができる。このため、超音波Wの集束強度が高まると共に、超音波Wの照射位置で半導体デバイスDの温度が上昇し、超音波Wの照射に応じて半導体デバイスDから出力される出力信号の強度を十分に高めることができる。出力信号の強度を高めることで、解析画像31の感度を十分に確保でき、検査精度の向上が図られる。
【0071】
超音波検査装置1では、超音波振動子2から出力した超音波Wの強度時間波形T0をフーリエ変換して得られる出射周波数スペクトルW0と、半導体デバイスDの表面で反射した超音波Wの強度時間波形T1をフーリエ変換して得られる反射周波数スペクトルW1との比Rに基づいて駆動信号の最適周波数を設定する。このような手法によれば、周波数Wを幅広い範囲で掃引することなく、駆動信号の最適周波数を精度良く導出できる。また、超音波検査装置1では、掃引範囲内で出力信号の強度が最も高くなる周波数を駆動信号の最適周波数として設定する。この手法によれば、簡単な処理で駆動信号の最適周波数を導出できる。
【0072】
超音波検査装置1では、半導体デバイスDの被検査領域の位置毎の最適周波数を示すマッピング情報に基づいて駆動信号を生成する。この場合、半導体デバイスDの被検査領域の構造(樹脂厚や材質など)が位置によってばらついていたとしても、常に最適な周波数の駆動信号を用いて出力信号の解析を行うことができる。
【0073】
超音波検査装置1では、半導体デバイスDの被検査領域において出力信号の解析結果をマッピングすることにより解析画像31を生成する。これにより、半導体デバイスDの検査結果を解析画像31に基づいて容易に把握することが可能となる。また、超音波検査装置1では、最適周波数を含む一定の範囲内で複数の周波数の駆動信号を生成し、複数の周波数の駆動信号に基づいて生成された複数の解析画像31のうち、最もSN比が高い解析画像31を選択して外部出力する。これにより、半導体デバイスDの被検査領域の構造(樹脂厚や材質など)が位置によってばらついていたとしても、感度の高い解析画像31に基づいて半導体デバイスDの検査を精度良く実施することができる。
【0074】
本開示は、上記実施形態に限られるものではない。例えば上述した超音波検査装置1では、検査面Dtを下方に向けた状態で半導体デバイスDが保持され、超音波振動子2の先端面2aが検査面Dtと対向するように上方向きに配置されているが、半導体デバイスDと超音波振動子2との配置関係はこれに限られない。例えば検査面Dtを上方に向けた状態で半導体デバイスDが保持され、超音波振動子2の先端面2aが検査面Dtと対向するように下方向きに配置されていてもよい。
【0075】
また、上述した超音波検査装置1では、出射周波数スペクトルW0と、反射周波数スペクトルW1との比Rに基づいて駆動信号の最適周波数が導出されているが、演算処理の簡単化のため、反射周波数スペクトルW1のみに基づいて駆動信号の最適周波数を導出してもよい。この場合、例えば反射周波数スペクトルW1のうち、スペクトル強度が最小となる周波数を駆動信号の最適周波数として設定すればよい。
【符号の説明】
【0076】
1…超音波検査装置、2…超音波振動子、4…パルスジェネレータ(信号生成部)、22…解析部、31…解析画像、D…半導体デバイス、W…超音波。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11