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  • 特許-入力回路 図1
  • 特許-入力回路 図2
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】入力回路
(51)【国際特許分類】
   H03K 19/0175 20060101AFI20230511BHJP
   G05F 3/16 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H03K19/0175 240
G05F3/16
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019237410
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021106349
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-05-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000003551
【氏名又は名称】株式会社東海理化電機製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100084995
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 和詳
(74)【代理人】
【識別番号】100099025
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 浩志
(72)【発明者】
【氏名】鍵本 圭吾
【審査官】工藤 一光
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-196377(JP,A)
【文献】特開2010-124032(JP,A)
【文献】特開2018-121324(JP,A)
【文献】特開2019-121969(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H03K19/0175-19/0185
G05F3/16-3/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ドレインに入力電圧が入力される入力トランジスタと、
前記入力トランジスタに流れる入力電流を生成する入力電流生成部と、
前記入力トランジスタのソースと第1の電源との間に接続された第1の抵抗と、
前記入力トランジスタのソースと前記第1の抵抗の接続点にゲートが接続された出力トランジスタと、を含む
入力回路。
【請求項2】
前記入力電流生成部は、前記入力トランジスタとゲートを共通に接続された第1のトランジスタ、および前記第1のトランジスタのドレインに接続された電流源を備えたカレントミラー回路で構成されている
請求項1に記載の入力回路。
【請求項3】
前記出力トランジスタとドレインを共通に接続された第2のトランジスタと、前記第2のトランジスタとゲートを共通に接続された第3のトランジスタとからなるカレントミラー回路、および前記第3のトランジスタのドレインと前記第1の電源の電圧値よりも低い電圧値を有する第2の電源との間に接続された第2の抵抗を備えたレベルシフト部をさらに含む
請求項1または請求項2に記載の入力回路。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、入力回路、特に耐圧による制限の緩和と入力ダイナミックレンジの拡大とを両立させることが可能な入力回路に関する。
【背景技術】
【0002】
高電圧電源と低電圧電源とで動作する半導体集積回路では、入力電圧のレベルシフトとともに入力電圧のダイナミックレンジが問題となる場合がある。当該問題に関連した技術として、例えば特許文献1に開示された半導体集積回路が知られている。特許文献1に係る半導体集積回路は、レベルシフト回路と出力段回路を有する半導体集積回路において、レベルシフト回路がnチャネルMOSFETおよびpチャネルMOSFETで構成され、出力段回路のハイサイドとローサイドにnチャネルMOSFETを用い、ハイサイドのnチャネルMOSFETのゲート・ソース間に抵抗とダイオードとを並設し、該ダイオードのカソードがゲートと接続され、ダイオードのアノードがソースと接続されることを特徴としている。特許文献1では、以上の構成により、小型で消費電力が小さい、レベルシフト回路と出力段回路を有する半導体集積回路が実現できるとしている。
【0003】
図3を参照して、トランジスタの耐圧条件を充足しつつ、入力回路のダイナミックレンジを拡大する従来技術の一例について説明する。図3は、従来技術に係る入力回路100の回路図を示している。図3に示すように、入力回路100は、N型MOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタQN11、QN12、P型MOSトランジスタQP11、抵抗R11、R12、R13およびインバータIN2を含んで構成されている。入力回路100では、相対的に高い電圧値を有する高電圧電源VBBで動作する部分と、相対的に低い電圧値を有する低電圧電源VCCで動作する部分とを含んでおり、入力電圧をレベルシフトする機能を備えている。
【0004】
入力回路100では、入力電圧VinとP型MOSトランジスタQP11の閾値電圧とを比較して、該入力電圧がロウレベル(以下、「L」)であるか、ハイレベル(以下、「H」)であるかを判定している。その際、入力電圧Vinのレベルに応じて(入力電圧VinがLのとき)、P型トランジスタQP11に電流I3が流れる。N型MOSトランジスタQN11およびQN12はカレントミラーを構成しており、電流I3がミラーリングされて、抵抗R3に電流I3に応じた電流が流れる。そして、抵抗R13による電圧降下に応じて出力電圧Voutが生成され、インバータIN2を介して出力される。
【0005】
抵抗R11、R12は、入力回路100の動作条件等に応じて入力電圧Vinを分圧させ、P型MOSトランジスタQP11に入力される電圧を減少させる機能を有する。ただし、入力電圧VinがLである場合に、P型MOSトランジスタQP11がオンすることが、分圧のもうひとつの条件になる。P型MOSトランジスタQP11のゲートに入力される電圧レベルを調整するために、さらに図3に示すダイオードD1を用いる場合もある。スイッチSW2は、入力電圧Vinの論理の切り替えを模式的に示したものである。
【0006】
入力電圧Vinとして、グランドと高電圧電源VBBの電圧値との間のフルスイングを想定すると、入力回路100において、入力電圧VinがHのときは、抵抗R11、R12に電流が流れないので、ゲート-ソース間電圧Vgsが0Vとなり、P型MOSトランジスタQP11はオンしない。すなわち、出力電圧VoutはLとなる。一方、入力電圧VinがLのときは、(VBB-Vin)/(R11+R12)で求められる電流が抵抗R11、R12に流れ、抵抗R11、R12による分圧R11・(VBB-Vin)/(R11+R12)がP型MOSトランジスタQP11のゲート-ソース間に印加される。この際のゲート-ソース間電圧VgsがP型MOSトランジスタの閾値電圧以上となるように設定されているので、P型MOSトランジスタQP11はオンし、出力電圧VoutはHとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2000-58671号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ここで、使用する電源電圧の条件等に応じて、高電圧電源VBBに印加する電圧を変更したい場合がある。以下、具体的な数値を用いて、この際の入力回路100の動作について検討する。いま、ダイオードD1が接続されておらず、高電圧電源VBBの電圧値を4Vとし、分圧比R11:R12を1:3に設定したとする。また、P型MOSトランジスタQP11のゲート-ソース間耐圧<Vgs>を5Vとし、ゲート-ソース間電圧Vgsの閾値電圧を1Vとする。この場合、入力電圧がLのとき、P型MOSトランジスタQP11のゲート-ソース間電圧Vgsは1VとなるのでP型トランジスタQP11はオンし、かつゲート-ソース間耐圧<Vgs>以下となっているので耐圧的にも問題ない。
【0009】
一方、高電圧電源VBBの電圧を24Vに変更すると、P型MOSトランジスタQP11のゲート-ソース間電圧Vgsは6Vとなり、P型MOSトランジスタQP11はオンするものの、ゲート-ソース間耐圧<Vgs>を越えてしまい、回路を構成することができない。つまり、高電圧電源VBBの電圧値が低い条件で耐圧条件を満たし、かつP型MOSトランジスタQP11による入力電圧Vinの論理の切り替わりを検知できるように抵抗R11、R12の分圧比を決めると、高電圧電源VBBの電圧値を大きくした場合に、耐圧の条件を満足できなくなる場合がある。この際、図3に示すように、P型MOSトランジスタQP11のゲート-ソース間にダイオードD1(図3では、ツェナーダイオードを例示している)を接続して入力電圧Vinをクランプし、P型MOSトランジスタQP11のゲート-ソース間電圧Vgsがゲート-ソース間耐圧<Vgs>の条件を充足するように構成する方法もある。しかしながら、半導体集積回路の製造プロセスにダイオードプロセスを含まない場合もあり、必ずしもダイオードを使用できるとは限らないので、ダイオードを用いない回路構成がより好ましい。
【0010】
本発明は、上記事実を考慮し、耐圧による制限の緩和と入力ダイナミックレンジの拡大とを両立させることが可能な入力回路を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の第1実施態様に係る入力回路は、ドレインに入力電圧が入力される入力トランジスタと、入力トランジスタに流れる入力電流を生成する入力電流生成部と、入力トランジスタのソースと第1の電源との間に接続された第1の抵抗と、入力トランジスタのソースと第1の抵抗の接続点にゲートが接続された出力トランジスタと、を含む。
【0012】
第1実施態様に係る入力回路によれば、入力トランジスタのドレインに入力電圧が入力され、出力トランジスタのゲートが入力トランジスタのソースと第1の抵抗の接続点に接続されている。そのため、耐圧による制限の緩和と入力ダイナミックレンジの拡大とを両立させることが可能な入力回路を提供することができる。
【0013】
本発明の第2実施態様に係る入力回路は、入力電流生成部が、入力トランジスタとゲートを共通に接続された第1のトランジスタ、および第1のトランジスタのドレインに接続された電流源を備えたカレントミラー回路で構成されている。
【0014】
第2実施態様に係る入力回路によれば、カレントミラー回路の動作により第1のトランジスタに流れる電流と同じ電流が入力トランジスタに流れる。そのため、入力トランジスタに流れる電流を一定にすることができる。
【0015】
本発明の第3実施態様に係る入力回路は、出力トランジスタとドレインを共通に接続された第2のトランジスタと、第2のトランジスタとゲートを共通に接続された第3のトランジスタとからなるカレントミラー回路、および第3のトランジスタのドレインと第1の電源の電圧値よりも低い電圧値を有する第2の電源との間に接続された第2の抵抗を備えたレベルシフト部をさらに含む。
【0016】
第3実施態様に係る入力回路によれば、レベルシフト部が、出力トランジスタとドレインを共通に接続された第2のトランジスタと、第2のトランジスタとゲートを共通に接続された第3のトランジスタとからなるカレントミラー回路、および第3のトランジスタのドレインと第1の電源の電圧値よりも低い電圧値を有する第2の電源との間に接続された第2の抵抗を備えて構成されている。そのため、レベルシフト回路を簡易に構成することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、耐圧による制限の緩和と入力ダイナミックレンジの拡大とを両立させることが可能な入力回路を提供することができる、という優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施の形態に係る入力回路の構成の一例を示す回路図である。
図2】本発明の実施の形態に係る入力回路の各部電流を示す回路図である。
図3】従来技術に係る入力回路の構成を示す回路図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図1および図2を参照して、本発明の一実施の形態に係る入力回路10について詳細に説明する。図1は入力回路10の回路図を示し、図2は入力回路10の各部電流を示している。入力回路10は、例えば半導体集積回路への入力電圧の論理レベル(H、L)を判定する回路である。
【0020】
図1に示すように、本実施の形態に係る入力回路10は、N型MOSトランジスタQN1、QN2、P型MOSトランジスタQP1、QP2、QP3、電流源Is、インバータIN1、および抵抗R1、R2を含んで構成されている。端子1には相対的に電圧値の高い高電圧電源VBBが接続され、端子2には相対的に電圧値の低い低電圧電源VCCが接続され、端子3には入力電圧Vinが入力され、端子4から出力電圧Voutが出力される。
【0021】
本実施の形態に係る入力電圧Vinは、グランドと高電圧電源VBBの電圧値との間のフルスイング、すなわち、L=0V、H=VBBとされている。ただし、VBBは高電圧電源の電圧値である。P型MOSトランジスタQP2、QP3、抵抗R1は高電圧電源VBBに接続され、抵抗R2、インバータIN1は低電圧電源VCCに接続されている。スイッチSW1は、入力電圧Vinの論理の切り替えを模式的に示したものである。なお、P型トランジスタQP1は、本発明に係る「入力トランジスタ」の一例であり、P型MOSトランジスタQP3は「出力トランジスタ」の一例である。
【0022】
入力回路10では、入力電圧VinがP型MOSトランジスタQP1のドレインに入力されるように構成されている。P型MOSトランジスタQP1とQP2とはカレントミラーを構成しているので、図2に示すように電流源Isの電流をI1とすると、入力電圧Vinに応じて、P型MOSトランジスタQP1にも電流I1が流れる。すなわち、入力電圧VinがHのときは、Vin=VBBなので、電流I1は流れない。一方、入力電圧VinがLのときは、Vin=0Vなので、P型MOSトランジスタQP1のドレインが接地され、電流I1が流れる。
【0023】
従って、入力電圧VinがLのとき、P型MOSトランジスタQP3のゲート-ソース間には、I1・R1で示される電圧が印加される。P型MOSトランジスタQP3のゲート-ソース間電圧の閾値をVtとすると、本実施の形態ではI1・R1>Vtとなるように設定されているので、入力電圧VinがLのとき、図2に示すようにP型MOSトランジスタQP3には電流I2が流れる。ここで、本実施の形態では、P型MOSトランジスタQP1とQP2によるカレントミラー回路のミラー比を1:1としているが、これに限られず、入力回路10の設計条件等に応じて変えてもよい。なお、P型MOSトランジスタQP1、QP2、電流源Isで構成されるカレントミラー回路は、本発明に係る「入力電流生成部」の一例である。
【0024】
一方、N型MOSトランジスタQN1とQN2はカレントミラーを構成しているので、N型MOSトランジスタQN1に電流I2が流れると、I2に応じた電流(例えば、ミラー比を1:1とすればI2)が抵抗R2に流れ、出力電圧Voutを生成し、インバータIN1を介して端子4から出力される。なお、N型MOSトランジスタQN1、QN2、抵抗R2で構成されるカレントミラー回路は、本発明に係る「レベルシフト部」の一例である。
【0025】
ここで、上述したように、入力回路においては、従来耐圧による制限の緩和と入力ダイナミックレンジの拡大とを両立させることは困難であった。この問題に対応するため、本実施の形態に係る入力回路10では、入力電圧Vinを入力トランジスタであるP型MOSトランジスタQP1のドレインに入力することとした。この場合、P型MOSトランジスタQP1の耐圧は、P型MOSトランジスタQP1のドレイン-ソース間耐圧<Vds>で制約されるが、一般にドレイン-ソース間耐圧<Vds>は、ゲート-ソース間耐圧<Vgs>より高い。例えば、ゲート-ソース間耐圧<Vgs>は5V程度であるのに対し、ドレイン-ソース間耐圧<Vds>は40V程度の値を示す。このことにより、入力トランジスタであるP型MOSトランジスタQP1の耐圧による制限が緩和され、高電圧電源VBBの電圧値を高くしたことによる入力ダイナミックレンジの拡大に対応することもできる。
【0026】
さらに、本実施の形態に係る入力回路10では、出力トランジスタとしてP型MOSトランジスタQP3のゲートの電位が、高電圧電源VBBの電圧値、あるいは入力電圧Vinによらず固定されるように構成している。すなわち、上述したように入力回路10では、P型MOSトランジスタQP3のゲート電位は(VBB-R1・I1)に固定されるので、P型MOSトランジスタQP3のゲート-ソース間電圧Vgsは(R1・I1)で示される電圧で決定される。本実施の形態では電流I1の値が一定値となるように構成しているので、I1・R1>Vtとなるように設定しておけば、常にP型MOSトランジスタQP3のゲート-ソース間耐圧<Vgs>を越えず、かつVin=Lで常にオンするように構成することができる。
【0027】
以上詳述したように、本実施の形態に係る入力回路によれば、耐圧による制限の緩和と入力ダイナミックレンジの拡大とを両立させることが可能な入力回路を提供することが可能となる
【符号の説明】
【0028】
1~4・・・端子、10、100・・・入力回路、QN1~QN2、QN11~QN12・・・N型MOSトランジスタ、QP1~QP3、QP11・・・P型MOSトランジスタ、D1・・・ダイオード、R1~R2、R11~R13・・・抵抗、I1~I3・・・電流、Is・・・電流源、IN1、IN2・・・インバータ、SW1、SW2・・・スイッチ、Vin・・・入力電圧、Vout・・・出力電圧、VBB・・・高電圧電源、VCC・・・低電圧電源、<Vgs>・・・ゲート-ソース間耐圧、<Vds>・・・ドレイン-ソース間耐圧
図1
図2
図3