(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】眼内レンズ
(51)【国際特許分類】
A61F 2/16 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
A61F2/16
(21)【出願番号】P 2020543655
(86)(22)【出願日】2018-10-15
(86)【国際出願番号】 AU2018051118
(87)【国際公開番号】W WO2019079847
(87)【国際公開日】2019-05-02
【審査請求日】2021-10-06
(32)【優先日】2017-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(32)【優先日】2018-01-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(73)【特許権者】
【識別番号】520147131
【氏名又は名称】スタビレンズ ピーティーワイ リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】ミルバートン, エドワード ジョン
【審査官】岡▲さき▼ 潤
(56)【参考文献】
【文献】特表2007-515972(JP,A)
【文献】特表2002-529142(JP,A)
【文献】米国特許第04706666(US,A)
【文献】特表2016-533203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
オプティックと、前記オプティックから延びる4つのハプティックとを備え、各ハプティックが、前記オプティックの外周の近くの異なる点で前記オプティックと交わる近位端を有し、前記ハプティックが、
2つの弓状ハプティックを含む第一の対であって、前記第一の対の前記2つのハプティックのそれぞれの遠位端がその近位端よりも近い関係にあるように、湾曲が互いに向かって配向された第一の対と、
2つの弓状ハプティックを含む第二の対であって、前記第二の対の前記2つのハプティックのそれぞれの遠位端がその近位端よりも近い関係にあるように、湾曲が互いに向かって配向された第二の対とに配置されており、
前記ハプティックのうち少なくとも1つの外縁が、使用時に患者の水晶体嚢の小窩中に係合的に嵌め合うように構成された丸みのある膨らみを有し、
前記丸みのある膨らみが、0.1mm~0.3mmの曲率半径で湾曲した周囲で構成されている、眼内レンズ。
【請求項2】
前記オプティックの外周が円形である、請求項1に記載の眼内レンズ。
【請求項3】
前記眼内レンズが、第1の線について対称性を示すように構成されており、
前記第1の線が、円形である前記オプティックの外周を分割して第一の半円領域および第二の半円領域を画定しており、
前記第一の対の両方のハプティックが、前記オプティックの前記第一の半円領域で前記オプティックの外周と交わり、前記第二の対の両方のハプティックが、前記オプティックの前記第二の半円領域で前記オプティックの外周と交わり、前記第一の半円領域と前記第二の半円領域が重なり合わない、請求項2に記載の眼内レンズ。
【請求項4】
前記眼内レンズが、第1の線及び第2の線について対称性を示すように構成されており、
前記第1の線及び前記第2の線が、円形である前記オプティックの外周を分割して4つの等しい四分円を画定しており、
各ハプティックが、前記オプティックの別個の四分円で前記オプティックの外周と交わる、請求項2に記載の眼内レンズ。
【請求項5】
オプティックの前記第一の対が隣接する四分円で交わり、ハプティックの前記第二の対が隣接する四分円で交わる、請求項4に記載の眼内レンズ。
【請求項6】
前記第一の対の前記ハプティックが概して対向する凹部を有し、前記第二の対の前記ハプティックが概して対向する凹部を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項7】
前記ハプティックのスパンが、前記ハプティックの外縁と内縁との間で測定した前記ハプティックの第1の厚さ、及び前記ハプティックの前面と後面との間で測定した前記ハプティックの第2の厚さより大きい、請求項1~6のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項8】
前記ハプティックが、前記ハプティックのスパン全体にわたって中実断面を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項9】
前記眼内レンズが一体成形の構造である、請求項1~8のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項10】
前記丸みのある膨らみが前記ハプティックの前記遠位端にある、請求項1~9のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項11】
前記眼内レンズが折り畳み可能な材料で形成されている、請求項1~10のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項12】
前記折り畳み可能な材料がメモリを有する、請求項11に記載の眼内レンズ。
【請求項13】
折り畳み可能な材料で形成された前記眼内レンズが、予め装填された注射システムとの使用に適している、請求項11または12に記載の眼内レンズ。
【請求項14】
円形の周囲を有し、第一の半円領域および第二の半円領域が線X-Xによって画定されたオプティックと、前記オプティックから延び、第一の対および第二の対にグループ化された4つの弓状ハプティックとを備え、前記第一の対の各ハプティックが、前記第一の半円領域で前記オプティックの周囲と交わる近位端を有し、前記第二の対の各ハプティックが、前記第二の半円領域で前記オプティックと交わる近位端を有し、
前記ハプティックのうち少なくとも1つの外縁が、使用時に患者の水晶体嚢の小窩中に係合的に嵌め合うように構成された丸みのある膨らみを有し、
前記丸みのある膨らみが、0.1mm~0.3mmの曲率半径で湾曲した周囲で構成されている、眼内レンズ。
【請求項15】
前記オプティックが、線X-Xと、前記オプティックの中心Cで線X-Xと交差する線Y-Yとによって画定される4つの四分円を有し、各ハプティックが別個の四分円で前記オプティックの周囲と交わる、請求項14に記載の眼内レンズ。
【請求項16】
各ハプティックの遠位端が前記近位端よりもY-Yに近いように、前記ハプティックのそれぞれが線Y-Yに向かって湾曲する、請求項14または15に記載の眼内レンズ。
【請求項17】
前記眼内レンズが、X-Xで対称軸を示す、請求項14~16のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項18】
前記眼内レンズが、Y-Yで対称軸を示す、請求項14~17のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項19】
Cおよび、ハプティックと前記オプティックの周囲との間の接合部の中心点を通過する線Aと、
Cを通過し、前記ハプティックの遠位端の極点と接触する線Bと
の間の挟角が、30°~50°である、請求項15に記載の眼内レンズ。
【請求項20】
Cおよび、ハプティックと前記オプティックの周囲との間の接合部の中心点を通過する線Aと、
Cを通過し、前記遠位端の極点と接触する線Bと
の間の挟角が、35°~45°である、請求項19に記載の眼内レンズ。
【請求項21】
前記ハプティックの遠位端の内縁が、線Bに沿って前記オプティックから2 mm~3 mmオフセットされている、請求項
19又は20に記載の眼内レンズ。
【請求項22】
前記ハプティックのそれぞれの遠位端の前記外縁を通って描いた円が、11 mm~15 mmの直径を有する、請求項1~21のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項23】
前記オプティックが5.5mm~6mmの直径を有する、請求項1~22のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項24】
前記第一の対の遠位端間のオフセットが2mm~3mmであり、前記第二の対の遠位端間のオフセットが2mm~3mmである、請求項1~23のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【請求項25】
前記ハプティックが3mm~6mmのスパンを有する、請求項1~24のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は概して、ハプティックを有する眼内レンズに関する。
【背景技術】
【0002】
眼内レンズは、眼の天然レンズを置き換えるために、外科手術で眼内に移植されうる人工レンズである。典型的な眼内レンズは、オプティックと呼ばれる人工レンズ、ならびに眼の水晶体嚢内に眼内レンズを位置付けるためのハプティックと呼ばれる一つ以上の支持部材を特徴としうる。
【0003】
あるオプティックスは、例えば、レンズの異なる経線で異なる倍率を有するトーリックレンズなど、眼内でのより高度な中心合わせおよび安定性を必要としうる。トーリックレンズの回転安定性は特に重要な可能性があり、トーリックレンズが1°回転するごとに、屈折性能がおよそ3%減少する。眼内での高度な中心合わせおよび安定性を必要とするその他のオプティックスには、二焦点および多焦点レンズを含みうる。
【0004】
眼の水晶体嚢内でのオプティックの安定性を改善するハプティックを有する眼内レンズに対するニーズがある。例えば、移植後、患者の水晶体嚢内での回転安定性が改善されたトーリック眼内レンズに対するニーズがある。
【0005】
本明細書におけるすべての以前の発表(またはそれから派生する情報)、またはすべての公知の事項への参照は、以前の発表(またはそれから派生する情報)または公知の事項が、本明細書が関連する努力傾注分野において通常の一般的知識の一部を形成するものではなく、そのように解釈されるべきではない。
【発明の概要】
【0006】
本発明は、改善された特徴および特性を有する発明を提供することを目的としている。
【0007】
一態様では、本発明は、オプティックと、オプティックから延びる4つのハプティックとを備える眼内レンズを提供し、各ハプティックは、オプティックの外周の近くの異なる点でオプティックと交わる近位端を有する。
【0008】
第一の対の2つのハプティックのそれぞれの遠位端が近位端よりも近い関係にあるように、2つの弓状ハプティックを含む第一の対は湾曲が互いに向かって配向され、第二の対の2つのハプティックのそれぞれの遠位端が近位端よりも近い関係にあるように、2つの弓状ハプティックを含む第二の対は湾曲が互いに向かって配向されて、4つのハプティックが配置されることが好ましい。
【0009】
オプティックの外周は円形であることが好ましい。
【0010】
第一の対の両方のハプティックは、オプティックの第一の半円領域でオプティックの周囲と交わり、第二の対の両方のハプティックは、オプティックの第二の半円領域でオプティックの周囲と交わり、第一の半円領域と第二の半円領域は重なり合わないことが好ましい。
【0011】
それぞれのハプティックは、オプティックの別個の四分円でオプティックの外周と交わることが好ましい。
【0012】
オプティックの第一の対は隣接する四分円で交わり、ハプティックの第二の対は隣接する四分円で交わることが好ましい。
【0013】
第一の対のハプティックは、概して対向する凹部を有し、第二の対のハプティックは、概して対向する凹部を有することが好ましい。
【0014】
ハプティックは薄く細長い形態を有することが好ましい。
【0015】
ハプティックは、ハプティックのスパン全体にわたって中実断面を有することが好ましい。
【0016】
眼内レンズは一体成形の構造であることが好ましい。
【0017】
ハプティックの少なくとも1つの外縁は、丸みのある膨らみを有することが好ましい。
【0018】
丸みのある膨らみは、使用時に患者の水晶体嚢の小窩中に係合的に嵌め合うように構成されていることが好ましい。
【0019】
丸みのある膨らみは、ハプティックの遠位端にあることが好ましい。
【0020】
眼内レンズは折り畳み可能な材料で形成されることが好ましい。
【0021】
折り畳み可能な材料はメモリを有することが好ましい。
【0022】
折り畳み可能な材料で形成された眼内レンズは、予め装填された注射システムとの使用に適していることが好ましい。
【0023】
一態様では、本発明は、円形の周囲を有し、第一の半円領域および第二の半円領域が線X-Xによって画定されたオプティックと、前記オプティックから延び、第一の対および第二の対にグループ化された4つの弓状ハプティックとを備え、前記第一の対の各ハプティックが、前記第一の半円領域で前記オプティックの周囲と交わる近位端を有し、前記第二の対の各ハプティックが、前記第二の半円領域でオプティックと交わる近位端を有する、眼内レンズを提供する。
【0024】
オプティックは、線X-X、およびオプティックの中心Cで線X-Xと交差する線Y-Yによって画定される4つの四分円を有し、各ハプティックは別個の四分円でオプティックの周囲と交わる。
【0025】
各ハプティックの遠位端が近位端よりもY-Yに近いように、ハプティックのそれぞれが線Y-Yに向かって湾曲することが好ましい。
【0026】
眼内レンズは、X-Xで対称軸を示すことが好ましい。
【0027】
眼内レンズは、Y-Yで対称軸を示すことが好ましい。
【0028】
Cおよびハプティックとオプティックの周囲との間の接合部の中心点を通過する線Aと、Cを通過して遠位端の極点と接触する線Bとの間の挟角は約30°~約50°であることが好ましい。
【0029】
Cおよびハプティックとオプティックの周囲との間の接合部の中心点を通過する線Aと、Cを通過して遠位端の極点と接触する線Bとの間の挟角は約35°~約45°であることが好ましい。
【0030】
C、およびハプティックとオプティックの周囲との間の接合部の中心点を通過する線Aと、Cを通過して遠位端の極点と接触する線Bとの間の挟角は約40°であることが好ましい。
【0031】
ハプティックの遠位端の内縁は、線Bに沿ってオプティックBから約2mm~約3mmオフセットされていることが好ましい。
【0032】
ハプティックのそれぞれの遠位端の外縁を通って描いた円は、約11mm~約15mmの直径を有することが好ましい。
【0033】
オプティックの直径は約5.5mm~約6mmであることが好ましい。
【0034】
各ハプティックの曲率半径は約4mm~約6mmであることが好ましい。
【0035】
第一の対の遠位端間のオフセットは、約2mm~約3mmであることが好ましく、第二の対の遠位端間のオフセットは約2mm~約3mmであることが好ましい。
【0036】
ハプティックは、約3mm~約6mmのスパンを有することが好ましい。
【0037】
例示的な実施形態は以下の記述から明らかとなるはずであり、これは添付の図面に関連して記載される少なくとも一つの好ましいが非限定的な実施形態によって、一例としてのみ与えられるものである。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】
図1は、患者の水晶体嚢の境界内で使用する本発明による眼内レンズの実施形態を図示する。
【0039】
【
図2】
図2は、水晶体嚢の境界によって邪魔されておらず、外力を受けていない眼内レンズの実施形態を図示する。
【0040】
【
図3】
図3は、本発明による眼内レンズに実施されたFEMの画像を図示する。
【0041】
【
図4】
図4は、本発明による眼内レンズに実施されたFEMのさらなる画像を図示する。
【0042】
【
図5】
図5は、本発明による眼内レンズに実施されたFEMのさらなる画像を図示する。
【0043】
【
図6】
図6は、本発明による眼内レンズに実施されたFEMのさらなる画像を図示する。
【発明を実施するための形態】
【0044】
[符号の説明]
1…眼内レンズ
2…オプティック
3…オプティックの外周
4…第一の半円領域
5…第二の半円領域
6…ハプティック
7…ハプティックの本体部分
8…ハプティックの近位端
9…ハプティックの遠位端
10…ハプティックの外縁
11…ハプティックの内縁
12…ハプティックの第一の対
13…ハプティックの第二の対
14…水晶体嚢
15…小窩
16…くぼみ
17…膨らみ
【0045】
一例としてのみ提供される以下のモードは、好適な実施形態(複数可)の主題のより正確な理解を提供するために記載されている。
【0046】
図面では、例示的な実施形態の特徴を図示するために組み込まれた同様の参照番号は、図面全体を通して同様の部分を特定するために使用される。
【0047】
図1を参照すると、患者の眼の水晶体嚢14内に配置するように構成された眼内レンズ1が示されている。眼内レンズ1は、オプティックの外周3から延びる4つのハプティック6を有するオプティック2を備えうる。オプティックの外周3は、円形またはほぼ円形、例えば楕円形状であってもよい。図示した実施形態では、オプティックの外周3は、オプティック2が円周を有するように、円形の周囲の形態である。ハプティック6は、水晶体嚢14と係合し、それによって水晶体嚢14内のオプティック2の位置を安定化するように構成されうる。
【0048】
各ハプティック6は、遠位端9および近位端8を有してもよく、その間に延びるハプティック6の一部は、本体部分7と呼ばれる。近位端8はオプティックの外周3と交わってもよく、遠位端9は眼内レンズ1が使用されている時に水晶体嚢14と係合しうる。一実施形態では、ハプティック6は、弓状の特性を有する長くて薄い部材の形態であってもよい。ハプティック6の弓状の形状は、別の方法として円形または曲線形状として記述されうる。ハプティック6の長くて薄い性質は、例えば、フィラメント状、スレッド様、スタンド様、繊維様、細いまたは細長いとして記述されうる。4つのハプティック6のそれぞれは、オプティックの外周3の異なる部分と交わる近位端8を有しうる。別の言い方をすると、ハプティック6のそれぞれは、オプティック2の周囲の異なる領域でオプティック2から延びてもよい。オプティックの外周3は、4つの等しい領域に分割されてもよく、これらの等しい領域のそれぞれはハプティック6の1つと接合する。
【0049】
4つのハプティック6は、第一の対12および第二の対13に特徴付けられうる。一実施形態では、第一の対12の2つのハプティック6は、オプティック2から第一の方向に向かって延びてもよい。同様に、第二の対13の2つのハプティック6は、オプティック2から第二の方向に向かって延びてもよい。一実施形態では、これらの第一および第二の方向は、第一の対12のハプティック6がオプティック2から、第二の対13の延長方向とは反対、概して反対またはほぼ反対の方向に向かって延びるように、正反対である、またはほぼ正反対でありうる。
【0050】
第一の対12の各ハプティック6は、オプティック3の概して対向する部分でオプティックの外周3と交わってもよい。例えば、オプティックの外周3が円形である例示的な実施形態では、第一の対12の各ハプティック6は、第一の半円領域4の対向する端のほうでオプティックの外周3と交わってもよい。一実施形態では、第一の対12の各ハプティック6は、円形の外周/周囲を有するオプティック2の異なるが隣接する四分円でオプティックの周囲3と交わってもよい。
【0051】
同様に、第二の対13の各ハプティック6は、オプティック3の概して対向する部分でオプティックの外周3と交わってもよい。例えば、オプティックの外周3が円形である例示的な実施形態では、第二の対13の各ハプティック6は、第二の半円領域5の対向する端のほうでオプティックの外周3と交わってもよい。一実施形態では、第二の対13の各ハプティック6は、オプティック2の異なるが隣接する四分円でオプティックの外周3と交わってもよく、ここで第二の対13が交わる四分円は第一の対12が交わる四分円とは異なる。
【0052】
第一の対12の弓状で曲線形状の2つのハプティック6は、湾曲が互いに向かって配向されてオプティック2から延びてもよい。この配置により、第一の対12の2つの弓状ハプティック6の凹部は、概して対向するように、互いに向かって配向されうる。またこの配置により、さらにハプティック6の比較的長い特性によって、第一の対12の2つのハプティック6の遠位端9は、近位端8よりも近い関係にありうる。
【0053】
同様に、第二の対13の弓状で曲線形状の2つのハプティック6は、湾曲を互いに向かって配向してオプティック2から延びてもよい。この配置により、第二の対13の2つの弓状ハプティック6の凹部は、概して対向するように、互いに向かって配向されうる。またこの配置により、さらにハプティック6の比較的長い特性によって、第二の対13の2つのハプティック6の遠位端9は、近位端8よりも近い関係にありうる。
【0054】
第一の対12および第二の対13を有し、そのそれぞれが、水晶体嚢14内で圧縮された時に小窩15内に位置するように構成された遠位端9を有し、互いに向かって湾曲するハプティック6を備えることは、オプティック2の回転安定性を増加させうる。その他の自由度の安定性も結果として生じうる。
【0055】
4つのハプティック6のそれぞれは、内縁11および外縁10を有してもよく、ここで内縁11はオプティック2により近く配向され、外縁10は眼内レンズ1が使用されている時に水晶体嚢14により近く配向されている。遠位端9の外縁10は、ハプティック6の本体部分7の隣接する外縁10と比較して、膨らみを呈してもよい。この膨らみは丸みのある特性を有しうる。ハプティック6の遠位端9の外縁10の丸みのある膨らみの寸法は、水晶体嚢14の小窩15と呼ばれる水晶体嚢の外周の縁が波状の特徴と係合するように構成されうる。一実施形態では、丸みのある膨らみ17は、膨らみ17が、約0.2mmの曲率半径(弧)の縁が波状の特徴を有する小窩15内に少なくとも部分的にはまるように、約0.1mm~約0.3mm、または約0.2mmの曲率半径(弧)の湾曲した周囲で構成されてもよい。この配置により、各ハプティック6の遠位端9の外縁10の膨らみは、水晶体嚢14の小窩15内に少なくとも部分的にはまり、従って水晶体嚢14にハプティック6を固定して眼内レンズ1の安定性を促進するのを助けうる。
【0056】
オプティック2およびハプティック6を含む眼内レンズ1は、予め装填された注射システムとの使用に適したメモリを有する弾力のある折り畳み可能な材料で形成されうる。この構成により、眼内レンズ1は、外力下で変形してサイズが減少する、および/または変形することができ、その後、外力を取り止めた時に、例えば
図2の実施形態などの元の変形していない形状に戻りうる。こうしたメモリ材料は、ハプティック6に可撓性でばね様の品質を与え、これが眼の水晶体嚢14内の中央位置にオプティック2を保持するのに役立ち、また水晶体嚢14にかかる力を最小限にしうる。さらに、眼内レンズ1は一体設計であってもよく、これは代替的にユニタリデザインと呼ばれることがあり、それによってオプティック2およびハプティック6のそれぞれが単一の連続的な材料から形成される。さらに、4つのハプティック6のそれぞれは、中実構造であってもよく、それによって、近位端8から遠位端9までのハプティック6のスパン全体にわたる任意の断面がいかなる中空もない中実の特性を示す。
【0057】
第一および第二の対13の両方の可撓性で弓状のハプティック6は、それらの遠位から互いに向かってわたる湾曲を有し、遠位端9が比較的近い関係で向き合っているため、水晶体嚢14によってそこに係合したハプティック6に提供される圧縮力は、可撓性ハプティック6の遠位端9を、いかなる外力も加えられずに眼内レンズ1が水晶体嚢14の外側にある場合よりも近い関係にしうる。眼内レンズ1は、眼内レンズ1が水晶体嚢14内に制限される時に、第一および第二の対13のそれぞれのハプティック6の遠位端9が接触しないように構成されうる。一実施形態では、第一および第二の対13の両方の各ハプティック6の遠位端9は、眼内レンズ1が水晶体嚢14内で使用されている時に約1mm~約3mmの距離だけオフセットされるように構成されうる。水晶体嚢14内に制限される時に、ハプティック6の遠位端9間がオフセットするように眼内レンズ1を構成することは、各遠位端9が別個の小窩15と係合するのを促進する可能性があり、これは水晶体嚢14内の眼内レンズ1の位置の安定化を助けうる。一実施形態では、眼内レンズ1は、各ハプティック6の遠位端9の外縁10の周りに描かれた円が約11mm~約15mmの直径を有するようにサイズ設定されうる。一実施形態では、オプティック2の直径は、約5.5mm~約6mmとしうる。こうした配置は、約9mm~約13mmの水晶体嚢14の直径に適しうる。
【0058】
ここで
図2を参照すると、外部圧縮力が無い、すなわち水晶体嚢14の境界の外側の眼内レンズ1が示されている。線X-Xは、オプティック2の円形の周囲を第一の半円領域4および第二の半円領域5に分割することが示されている。第一の対12の両方のハプティック6は、第一の半円領域4でオプティックの外周3と接合しうる一方、第二の対13の両方のハプティックは、第二の半円領域5でオプティックの外周3と接合しうる。一実施形態において、第一の対12の両方のハプティック6は、第一の半円領域4でオプティックの外周3と交わりうる一方、第二の対13の両方のハプティック6は、第二の半円領域5でオプティックの外周3と交わりうる。眼内レンズ1は、線X-Xについて対称性を示しうる。
【0059】
また
図2には、線X-Xで二等分して、円形の周囲を有するオプティック2を、4つの等しい四分円に分割する線Y-Yが示されている。一実施形態では、第一の対12の2つのハプティック6のそれぞれは、異なるが隣接する四分円でオプティックの外周3と交わってもよい。同様に、第二の対13の2つのハプティック6のそれぞれは、異なるが隣接する四分円でオプティックの外周3と交わり、これらの四分円は、第一の対12のハプティック6が交わる2つの四分円とは両方とも異なる。弓状ハプティック6のそれぞれのスパンは、各ハプティック6の遠位端9が近位端8よりもY-Yに近い関係にあるように、線Y-Yに向かって湾曲しうる。さらに、ハプティック6のそれぞれの凹部は線Y-Yに向かって配向されうる。眼内レンズ1は、線Y-Yで対称性を示しうる。
【0060】
線X-XおよびY-Yは、オプティック2の円形の周囲の中心点Cで交差する。
図2には、ハプティック6の近位端8の内縁11の接合部を通って中心点Cから引かれた線Aが示されている。また
図2には、線Aがそれを通って引かれているのと同じハプティック6の遠位端9の極点に接触するように中心点Cから引かれた線Bが示されている。各ハプティック6は、線AとBとの間の挟角で測定した時、四分円のかなりの部分から、それが取り付けられるオプティックの外周3までわたるように構成されうる。一実施形態では、線AとBとの間の挟角は約30°~約50°、または約40°としうる。一実施形態では、AとBとの間の挟角は、約35°~約45°、または約40°であってもよい。線Bと線Y-Yとの間の挟角は、約5°~約20°、または約10°~約15°でありうる。線Bと線Y-Yとの間の挟角は、約30°~約50°、または約35°~約45°、または約40°でありうる。ハプティック6の遠位端9の内縁11と線Bに沿ったオプティックの外周3との間のオフセットは、約2mm~3mm、または約2.5mmとしうる。第一の対12および第二の対13の両方の2つのハプティック6の対向する遠位端9の間のオフセットは、約2mm~約3mm、または約2.5mmとしうる。ハプティック6の近位端8とハプティック6の遠位端9の極点の間をハプティック6の弓状の曲線に沿って測定した各ハプティック6のスパンは、約3mm~約6mm、または約4.5mmとしうる。各曲線形状のハプティック6の曲率半径(弧)は、約4mm~約6mm、または約5mmとしうる。
【0061】
外縁10と内縁11との間で測定したハプティック6の厚さは、近位端8から遠位端9まで変化しうる。厚さは、近位端8から遠位端9に先細りしうる。一実施形態では、近位端8におけるハプティック6の厚さは、約0.5mm~約0.7mm、または約0.6mmであってもよく、または膨らみ17のすぐ隣の遠位端9の厚さは、約0.3mm~約0.5mm、または約0.4mmであってもよい。図示した実施形態のページの中への方向の厚さである、前面と後面との間で測定したハプティック6の厚さは、約0.4mm~約0.5mmとしうる。一実施形態では、ハプティック6は、そのスパンに沿ったくぼみ16を特徴とし、最小厚さの領域を形成しうる。図示した実施形態では、くぼみ16はハプティック6の内縁に形成されうる。くぼみ16は、約0.1mm~約0.3mm、または約0.2mmの半径を有しうる。くぼみ16は、近位端8により近いハプティック6のスパンの約5分の1、または約4分の1の場所のハプティック6に形成されうる。このようにくぼみ16を提供することは、水晶体嚢14からの圧縮下にある時の最適な位置でハプティック6を曲げることを促進しうる。このようにくぼみ16を提供することで、水晶体嚢14へのハプティック6の外向きの圧力をさらに減少させうる。
【0062】
一実施形態では、ハプティック6は、眼内レンズ1が嵌合状態にある時に眼の方に向かう、前方方向に向かって約0.5°~約5°曲がってもよい。
【0063】
オプティックの外周3の近くの異なる点でオプティック2と交わる4つのハプティック6を有する本明細書に記載した眼内レンズ1は、水晶体嚢14内のレンズの安定性を改善しうる。この改善した安定性は、回転安定性、水平安定性および垂直安定性、前後安定性、およびレンズ傾斜安定性を含む、すべての方向および平面に存在しうる。こうした改善された安定性は、本明細書に記載された眼内レンズ1を、多焦点、二焦点およびトーリック眼内レンズなど、高レベルの安定性を必要とするオプティックとの使用に特に適切にしうる。
【0064】
実験シミュレーション
有限要素解析(FEA)は、生体内原位置の場合に本明細書に記載の通り、眼内レンズの一実施形態に影響する物理現象のシミュレーション後に、有限要素法(FEM)の数値手法を使用して実施された。
図3、4、5および6は、圧縮力が4つのハプティックに適用された際の、眼内レンズに対するFEMの結果を示すプログレッシブ画像を提供している。
【0065】
FEAは、12.4mm~9.0mmの様々な直径で変形された眼内レンズを示す。すべての直径において、変形した眼内レンズはオプティックに対する応力を示していないが、これは視覚がオプティックの不規則さによって影響を受けないようにするために重要である。FEAは、眼内レンズの可撓性、ならびに互いに対するハプティックの変化する関係およびオプティックに対するハプティックの変化する関係を示す。
【0066】
本発明の範囲を逸脱することなく、当業者には多くの変更が明らかとなるであろう。
[発明の項目]
[項目1]
オプティックと、前記オプティックから延びる4つのハプティックとを備え、各ハプティックが、前記オプティックの外周の近くの異なる点で前記オプティックと交わる近位端を有する、眼内レンズ。
[項目2]
前記4つのハプティックが、
2つの弓状ハプティックを含む第一の対であって、前記第一の対の前記2つのハプティックのそれぞれの遠位端がその近位端よりも近い関係にあるように、湾曲が互いに向かって配向された第一の対と、
2つの弓状ハプティックを含む第二の対であって、前記第二の対の前記2つのハプティックのそれぞれの遠位端がその近位端よりも近い関係にあるように、湾曲が互いに向かって配向された第二の対とに配置されている、項目1に記載の眼内レンズ。
[項目3]
前記オプティックの外周が円形である、項目1または項目2に記載の眼内レンズ。
[項目4]
前記第一の対の両方のハプティックが、前記オプティックの第一の半円領域で前記オプティックの周囲と交わり、前記第二の対の両方のハプティックが、前記オプティックの第二の半円領域で前記オプティックの周囲と交わり、前記第一の半円領域と前記第二の半円領域が重なり合わない、項目3に記載の眼内レンズ。
[項目5]
各ハプティックが、前記オプティックの別個の四分円で前記オプティックの外周と交わる、項目2または3に記載の眼内レンズ。
[項目6]
オプティックの前記第一の対が隣接する四分円で交わり、ハプティックの前記第二の対が隣接する四分円で交わる、項目5に記載の眼内レンズ。
[項目7]
前記第一の対の前記ハプティックが概して対向する凹部を有し、前記第二の対の前記ハプティックが概して対向する凹部を有する、項目2~6のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
[項目8]
前記ハプティックが薄く細長い形態を有する、項目1~7のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
[項目9]
前記ハプティックが、前記ハプティックのスパン全体にわたって中実断面を有する、項目1~8のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
[項目10]
前記眼内レンズが一体成形の構造である、項目1~9のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
[項目11]
前記ハプティックのうち少なくとも1つの外縁が丸みのある膨らみを有する、項目2~10のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
[項目12]
前記丸みのある膨らみが、使用時に患者の水晶体嚢の小窩中に係合的に嵌め合うように構成されている、項目11に記載の眼内レンズ。
[項目13]
前記丸みのある膨らみが前記ハプティックの前記遠位端にある、項目11または12に記載の眼内レンズ。
[項目14]
前記眼内レンズが折り畳み可能な材料で形成されている、項目1~13のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
[項目15]
前記折り畳み可能な材料がメモリを有する、項目14に記載の眼内レンズ。
[項目16]
折り畳み可能な材料で形成された前記眼内レンズが、予め装填された注射システムとの使用に適している、項目14または項目15に記載の眼内レンズ。
[項目17]
円形の周囲を有し、第一の半円領域および第二の半円領域が線X-Xによって画定されたオプティックと、前記オプティックから延び、第一の対および第二の対にグループ化された4つの弓状ハプティックとを備え、前記第一の対の各ハプティックが、前記第一の半円領域で前記オプティックの周囲と交わる近位端を有し、前記第二の対の各ハプティックが、前記第二の半円領域で前記オプティックと交わる近位端を有する、眼内レンズ。
[項目18]
前記オプティックが、線X-Xと、前記オプティックの中心Cで線X-Xと交差する線Y-Yとによって画定される4つの四分円を有し、各ハプティックが別個の四分円で前記オプティックの周囲と交わる、項目16に記載の眼内レンズ。
[項目19]
各ハプティックの遠位端が前記近位端よりもY-Yに近いように、前記ハプティックのそれぞれが線Y-Yに向かって湾曲する、項目16~18のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
[項目20]
前記眼内レンズが、X-Xで対称軸を示す、項目16~19のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
[項目21]
前記眼内レンズが、Y-Yで対称軸を示す、項目17~20のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
[項目22]
Cおよび、ハプティックと前記オプティックの周囲との間の接合部の中心点を通過する線Aと、
Cを通過し、前記遠位端の極点と接触する線Bと
の間の挟角が、約30°~約50°である、項目16~21のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
[項目23]
Cおよび、ハプティックと前記オプティックの周囲との間の接合部の中心点を通過する線Aと、
Cを通過し、前記遠位端の極点と接触する線Bと
の間の挟角が、約35°~約45°である、項目22に記載の眼内レンズ。
[項目24]
Cおよび、ハプティックと前記オプティックの周囲との間の接合部の中心点を通過する線Aと、
Cを通過し、前記遠位端の極点と接触する線Bと
の間の挟角が、約40°である、項目22に記載の眼内レンズ。
[項目25]
前記ハプティックの前記遠位端の前記内縁が、線Bに沿って前記オプティックから約2mm~約3mmオフセットされている、項目21~24のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
[項目26]
前記ハプティックのそれぞれの前記遠位端の前記外縁を通って描いた円が、約11mm~約15mmの直径を有する、項目1~25のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
[項目27]
前記オプティックが約5.5mm~約6mmの直径を有する、項目1~26のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
[項目28]
各ハプティックが約4mm~約6mmの曲率半径を有する、項目1~27のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
[項目29]
前記第一の対の前記遠位端間の前記オフセットが約2mm~約3mmであり、前記第二の対の前記遠位端間の前記オフセットが約2mm~約3mmである、項目1~28のいずれか一項に記載の眼内レンズ。
[項目30]
前記ハプティックが約3mm~約6mmのスパンを有する、項目1~29のいずれか一項に記載の眼内レンズ。