(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】濁水処理用凝集剤
(51)【国際特許分類】
C02F 1/56 20230101AFI20230511BHJP
B01D 21/01 20060101ALI20230511BHJP
C02F 1/52 20230101ALI20230511BHJP
C02F 11/148 20190101ALI20230511BHJP
【FI】
C02F1/56 B
B01D21/01 110
C02F1/52 B ZAB
C02F11/148
(21)【出願番号】P 2019129045
(22)【出願日】2019-07-11
【審査請求日】2022-05-25
(73)【特許権者】
【識別番号】511123429
【氏名又は名称】テクニカ合同株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000119988
【氏名又は名称】宇部マテリアルズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141586
【氏名又は名称】沖中 仁
(74)【代理人】
【識別番号】100102211
【氏名又は名称】森 治
(72)【発明者】
【氏名】高矢 秀樹
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 康智
(72)【発明者】
【氏名】赤坂 真吾
(72)【発明者】
【氏名】福光 邦夫
(72)【発明者】
【氏名】尾花 誠一
【審査官】松本 要
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-129309(JP,A)
【文献】特開平10-118408(JP,A)
【文献】特開平10-165825(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/52- 1/56
B01D 21/01
C02F 11/00-11/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
合成高分子凝集剤
として1300万~1500万のアニオン度30mol~50mol%の高分子凝集剤0.5w%~5w%と、600万~1200万のアニオン度10mol%~30mol%の高分子凝集剤2w%~4w%とを配合し、
天然高分子凝集剤
としてアルギン酸塩1w%~4w%を配合し、
アルカリ土類金属の中から
無水又は半水硫酸カルシウム55w%~65w%と、炭酸カルシウム0.5w%~5w%とを配合し、
アルミニウム化合物
として硫酸アルミニウム10w%~20w%と、ポリ塩化アルミニウム0.5w%~5w%とを配合し、
pH調整剤として
炭酸ナトリウム7w%~12w%を配合し、
多孔質物質
として焼成珪藻土の粉末
5w%~10w%を配合してなる
ことを特徴とする濁水処理用凝集剤。
【請求項2】
前記焼成珪藻土が、メジアン径が8~12μm、比表面積が1~5 m
2/gのものであることを特徴とする請求項
1に記載の濁水処理用凝集剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、土木工事や建設工事などから発生する濁水や、湖沼や河川、港岸などの底にたまった高含水泥土を洗浄する際に発生する濁水を簡易に処理するために用いられる濁水処理用凝集剤に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、浚渫工事から発生する高含水泥土の処理方法として、有機合成高分子凝集剤による固液分離後に水分を除き、スラリーにセメントなどを添加することによる固化処理を行う処理方法や、有機汚泥より発生する濁水にカチオン系有機合成高分子を使用し、あるいはPAC(ポリ塩化アルミニウム)や硫酸バンド、ポリ塩化第二鉄などの無機凝集剤と有機合成高分子凝集剤の水溶液添加など2段階処理による減容化処理を行う処理方法が採用されてきた。
【0003】
こうしたことを背景にして、設備の高度化、複雑化、巨大化し、山岳や沼地などのヤードが取れない工事においては、処理の長期化や汚泥運搬が困難になることが多かった。
【0004】
また、これに対処するものとして、例えば、特許文献1に開示されるように、高分子凝集剤にてフロックを作り、無機凝集剤の代わりをなすセメントなどを加えて固化材粒子を包含するフロックを形成させる高含水汚泥の処理方法の提案がされているが、セメント系の固化材が推奨されており、これは処理土のアルカリ化による建設発生土転用方法に制限を行うことに他ならない。
【0005】
また、特許文献2に開示されるように、可溶性アルミニウム化合物、鉄塩化合物、還元剤、有機合成高分子凝集剤、天然高分子凝集剤、アルカリ金属の炭酸塩及び/又はセメント粉粒体、高ゼータ電位の活性に酸化ケイ素及びアルミナを主成分とするケイ酸アルミナ系土壌鉱物粉粒体からなる凝集剤組成物の提案がされているが、具体的な撹拌方法や脱水方法にまで言及されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平9-168800号公報
【文献】特願平9-287555号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記従来の土木工事や建設工事などから発生する濁水や、湖沼や河川、港岸などの底にたまった高含水泥土を洗浄する際に発生する濁水の処理技術の有する問題点に鑑み、狭いヤードでも濁水と薬剤の撹拌を行う撹拌設備をなくし、底部に堆積するスラッジの処理方法を簡素化することを可能とするものであって、濁水処理作業の省力化及び発生する処理水やフロックをpH中性に保ちながら、フロックからの脱水を促進し、スラッジの強度発現に寄与する濁水処理用凝集剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の濁水処理用凝集剤は、合成高分子凝集剤をアニオン系から2種以上配合し、天然高分子凝集剤1種以上配合し、アルカリ土類金属の中からカルシウム系化合物を2種以上配合し、アルミニウム化合物を2種以上配合し、pH調整剤としてアルカリ土類金属から酸化マグネシウム又は炭酸塩を1種以上配合し、多孔質物質の粉末を配合してなることを特徴とする。
【0009】
より具体的には、本発明の濁水処理用凝集剤は、無水硫酸カルシウムを55w%~65w%、炭酸ナトリウムを7w%~12w%、焼成珪藻土を5w%~10w%、炭酸カルシウムを0.5w%~5w%、硫酸アルミニウムを10w%~20w%、ポリ塩化アルミニウムを0.5w%~5w%、低分子アニオンポリマーを2w%~4w%、高分子アニオンポリマーを0.5w%~5w%、アルギン酸塩を1w%~4w%で配合してなることを特徴とする。
【0010】
この場合において、前記アニオン系の合成高分子凝集剤が、高分子アニオンポリマーとして、1300万~1500万のアニオン度30mol%~50mol%の高分子凝集剤(凝集反応は遅いが、大きなフロックが生成される。)と、低分子アニオンポリマーとして、600万~1200万のアニオン度10mol%~30mol%の高分子凝集剤(具体的には、200メッシュ(75μm以下)の微粉末からなる高分子凝集剤。)(大きなフロックが生成されないが、凝集反応は早い。)を用いることができる。
【0011】
また、天然の凝集剤としては、アルギン酸塩(低分子アニオンポリマーよりも微細な粒子を対象とし、凝集反応は早い。)、キチン、キトサン等を1種以上含有することができる。また、スプレードライ乾燥などによって製造された微粉末(0.2μm~60μm)を用いることがより望ましい。
【0012】
また、カルシウム系化合物は、pHに大きな影響を与えない炭酸カルシウムや硫酸カルシウムを使用し、スラッジの凝結強度を得るため、硫酸カルシウムには半水の硫酸カルシウムや無水が望ましく、特に、硫酸カルシウムには可溶性天然無水が特に好ましい。
【0013】
また、アルミニウム系化合物には、ポリ塩化アルミニウムと硫酸アルミニウムの粉末を混合したものを用いることが望ましく、泥土汚泥などは硫酸アルミニウムの割合が多いことが特に好ましい。これは硫酸カルシウムと硫酸アルミニウムの併用による凝集作用の高さからであって、特にポリ塩化アルミニウムと天然無水硫酸カルシウムか二水硫酸カルシウムと硫酸アルミニウムとの併用が望ましい。
【0014】
また、アルミニウム系化合物によって酸性側によるpHを中性に戻すため、炭酸塩又は酸化マグネシウムを用いることが望ましく、より望ましくは凝結作用の強いMg2+を放出する酸化マグネシウムを配合することであって、最も望ましくは海水法にて製造された酸化マグネシウムが好ましい。
【0015】
また、多孔質物質の粉末は、濁水中に含まれる微細粒子や色素、放射性元素を吸着するためのもので、ゼオライト、活性炭、珪藻土の微粉を用いることが可能であって、特に本発明においては、高い透水係数を持つスラッジを形成させることを目的として、焼成珪藻土(pHが中性域(pH7.7±0.5程度)にあって、メジアン径(D50)8~12μm、比表面積1~5m2/g)を用いることが最も望ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明の濁水処理用凝集剤によれば、バキュームで吸い上げた高含水泥土に当該濁水処理用凝集剤を添加し、水中ポンプや撹拌機による撹拌を必要とせず、流水撹拌のみで浮遊粒子との凝集反応が可能であって、凝集反応の即時性を有し、pHが中性のままで高い脱水性を持つスラッジを生成し、脱水の過程で強度の高いフロックを得ることができるとともに、作られるフロックは特大であることを特徴とし、フィルタプレスの設置が難しい山岳部や狭い作業スペースしか確保できない場合であっても、凝集フロックを形成後、脱水用ろ布などで脱水させた残留物がろ布に付着しにくく、剥がれ易く、また、脱水性が良いため、透水性のフレコンバッグなどを用いた脱水を可能とし、脱水されたスラッジは徐々に強度を得ることができるため、段積みすることで作業スペースの確保などの問題を解消することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の濁水処理用凝集剤の実施の形態を、具体的な実施形態に基づいて説明する。
【0018】
本発明の濁水処理用凝集剤は、薬剤と高含水泥土又は濁水とを撹拌するための水中ポンプや撹拌機などの大型設備を必要とせず、高い凝集反応を得るために、分子量とイオン度の異なる2種類の合成高分子凝集剤を用い、微細な粒子を効果的に凝集させるために天然高分子凝集剤を1種、フロックに重量を与えるための炭酸カルシウムと脱水後に強度を付与する硫酸カルシウムを配合し、塩基度の違うアルミニウム化合物からポリ塩化アルミニウムと硫酸アルミニウムの2種以上を配合することで幅広いゼータ電位を中和できるようにし、アルミニウム化合物を使用することによるpH変動を打ち消すための調整剤として炭酸水素ナトリウムや酸化マグネシウムを用いることで高い反応性とアルミニウム飽和を防ぎ、焼成珪藻土を用いることで高透水性スラッジを作り、脱水後の強度を与えることを可能として作業スペースの確保の問題を解消するようにしたものである。
【0019】
検討を重ねた中で、特に変化が大きかった以下の条件の配合と用いる材料を変えた濁水処理試験の結果を表に示す。
なお、試験方法はビーカ2個を用い、移し替え作業を8回行った際の変化を濁度計によって測定した。
【0020】
[試験対象1]
・福島県ため池浚渫:比重1.01~1.02
・濁水pH:6.56
・濁度:500度以上(濁度計:TD-M500/オプテックス(株)製)
[試験対象2]
・栃木県採石場泥水:比重1.22(水道水希釈にて比重1.01に調整)
・濁水pH:5.86
・濁度:500度以上(濁度計:TD-M500/オプテックス(株)製)
【0021】
【0022】
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
表3~表5の結果から、好ましい配合は実験例5の付近に選択性の広い凝集効果を示すと判断し、無水硫酸カルシウムを55w%~65w%、炭酸ナトリウムを7w%~12w%、珪藻土を5w%~10w%、炭酸カルシウムを0.5w%~5w%、硫酸アルミニウムを10w%~20w%、ポリ塩化アルミニウムを0.5w%~5w%、低分子アニオンポリマーを2w%~4w%、高分子アニオンポリマーを0.5w%~5w%、アルギン酸塩を1w%~4w%で配合することが望ましいと判断した。
【0027】
【0028】
【0029】
表6~表7の結果から、本件発明で使用される珪藻土は、焼成品である焼成珪藻土が望ましく、特に、pHが中性域(pH7.7±0.5程度)にあって、メジアン径(D50)8~12μm、比表面積1~5m2/gのものがより望ましいと判断した。
【0030】
以上、本発明の濁水処理用凝集剤について、その実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態の記載に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において適宜その構成を変更することができるものである。
【産業上の利用可能性】
【0031】
本発明の濁水処理用凝集剤は、濁水処理作業の省力化及び発生する処理水やフロックをpH中性に保ちながら、フロックからの脱水を促進し、スラッジの強度発現に寄与する特性を有していることから、土木工事や建設工事などから発生する濁水や、湖沼や河川、港岸などの底にたまった高含水泥土を洗浄する際に発生する濁水を処理する用途に好適に用いることができる。