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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】コーティング及びコーティング配合物
(51)【国際特許分類】
   C09D 1/00 20060101AFI20230511BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20230511BHJP
   C09D 5/16 20060101ALI20230511BHJP
   H01L 31/048 20140101ALI20230511BHJP
【FI】
C09D1/00
C09D7/61
C09D5/16
H01L31/04 560
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019555681
(86)(22)【出願日】2018-04-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-25
(86)【国際出願番号】 EP2018059744
(87)【国際公開番号】W WO2018192908
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-03-23
(31)【優先権主張番号】17166912.0
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17180733.2
(32)【優先日】2017-07-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17192491.3
(32)【優先日】2017-09-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】521400615
【氏名又は名称】コベストロ (ネザーランズ) ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(72)【発明者】
【氏名】ハベッツ, ロベルト, アルノルドゥス, ドミニクス, マリア
(72)【発明者】
【氏名】カルクエ, カミーユ, シャーリーン, マリー-セシル
(72)【発明者】
【氏名】リアドン, ダミアン
【審査官】上條 のぶよ
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-131973(JP,A)
【文献】特開2016-204165(JP,A)
【文献】特開2016-045408(JP,A)
【文献】特開2015-021029(JP,A)
【文献】国際公開第2016/051750(WO,A1)
【文献】特開2015-075707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D,H01L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コーティング配合物であって、
i. 無機酸化物当量基準で少なくとも2wt%の少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子と、
ii. 10~120nmの範囲内の直径の細孔を形成可能なポロゲンと、
iii. 無機酸化物バインダーと、
iv. 溶媒と、
を含み、
前記ポロゲンがコア-シェルナノ粒子を含み、前記コアがカチオン性ポリマーを含み、前記シェルが無機酸化物を含み、
前記コーティング配合物が、0.5~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む、コーティング配合物。
【請求項2】
前記コーティング配合物が、0.5~25wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む、請求項1に記載のコーティング配合物。
【請求項3】
前記ポロゲンが、中空無機ナノ粒子を更に含む、請求項1又は2に記載のコーティング配合物。
【請求項4】
前記コーティング配合物が、1.0~25wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のコーティング配合物。
【請求項5】
前記ポロゲンが前記コーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の10~75wt%を占める、請求項1~4のいずれか一項に記載のコーティング配合物。
【請求項6】
前記無機酸化物バインダーが0.1~7nmの範囲内の平均直径の無機酸化物ナノ粒子を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のコーティング配合物。
【請求項7】
前記長尺状緻密無機酸化物粒子が前記コーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の5~70wt%を占める、請求項1~6のいずれか一項に記載のコーティング配合物。
【請求項8】
コーティング付き基材の作製方法であって、
- 第1の表面を有する基材を提供する工程と、
- 請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティング配合物を提供する工程と、
- 前記コーティング配合物を前記基材の前記第1の表面上に適用する工程と、
- 適用されたコーティング配合物を乾燥させる工程と、
- 乾燥させたコーティング配合物を有する前記基材を前記第1の表面上にコーティング層を含むコーティング付き基材に変換する工程と、
を含む方法。
【請求項9】
前記基材が、透明固形シート部材と、前記第1の表面と前記第1の表面上の前記コーティング層との間に介在するベースコーティング層と、を含む、請求項に記載のコーティング付き基材の作製方法
【請求項10】
前記長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物と前記コーティングの全無機酸化物との質量比が、前記コーティング付き基材の外表面に最も近いコーティングの20nmの厚さのトップ層において、緻密無機酸化物粒子に由来する前記無機酸化物と前記コーティングの全無機酸化物との平均質量比よりも高い、請求項8又は9に記載のコーティング付き基材の作製方法
【請求項11】
前記基材がソーラーモジュール用カバーガラスである、請求項8~10のいずれか一項に記載のコーティング付き基材の作製方法
【請求項12】
基材の防汚性を改善するための、請求項1~7のいずれか一項に記載のコーティング配合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の技術分野]
本発明は、反射防止コーティングに関する。より特定的には、本発明は、防汚性を示す反射防止コーティング、さらにはコーティング付き基材、コーティング配合物、及びソーラーモジュール、さらにはコーティングの防汚性を改善する方法に関する。
【0002】
本明細書には、無機酸化物と細孔とを有するコーティング層を含むコーティング付き基材が開示される。このコーティング層は改善された防汚性を示す。コーティング付き基材は、たとえばソーラーモジュールで使用しうる。さらに、コーティング配合物及びコーティング配合物の使用が開示される。
【0003】
[発明の背景]
反射防止(AR)コーティングは、ソーラーモジュール用カバーガラスや温室用ガラスなどのように高い光透過率を必要とする基材上に堆積されるコーティングであり、前記コーティングは、前記基材の反射率を低減可能である。ソーラーモジュールの性能は、いくつかある原因の中でもとくに光が透過する表面の汚れが原因で経時的に低下する傾向がある。汚れ率の高い領域では、サンドやダストの粒子のビルドアップが性能の低下に実質的に寄与することが分かった。
【0004】
[発明の目的]
本発明の目的は、改善されたコーティングを提供することである。
【0005】
本発明の他の一態様では、本発明の目的は、改善されたコーティング配合物を提供することである。
【0006】
本発明のさらなる態様では、本発明の目的は、コーティングの防汚性を改善する方法を提供することである。
【0007】
改善は、たとえば、コーティングの改善された防汚性又は本発明の他の特徴の達成でありうる。
【0008】
[発明の開示]
本発明の第1の態様では、本目的は、本明細書に記載の特許請求の範囲、実施形態、及び態様に係るコーティング配合物により達成される。
【0009】
本発明の態様では、本目的は、本明細書に記載のコーティング配合物により達成される。
【0010】
本発明のさらなる態様では、本目的は、本明細書に記載の特許請求の範囲、実施形態、及び態様に係る方法、コーティング付き基材、又は使用により達成される。
【0011】
本発明は、模範的実施形態さらには図面を参照して以下で説明される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、比較サンプルの光学的性質を示す。
図2図2は、本発明に係るサンプルの光学的性質を示す。
図3図3は、開始ダスト除去の測定の結果を示す。
図4a図4aは、長さ×1を有する長軸(主軸ともいいうる)と、長軸に垂直な長さ×2を有する短軸(副軸ともいいうる)と、少なくとも2のアスペクト比(×1/×2)と、を有する楕円体形状の本発明で使用される長尺状粒子の実施形態を模式的に描く(扁長(長尺状)回転楕円体の2D画像)。
図4b図4bは、長さ×1を有する長軸と、長軸に垂直な長さ×2を有する短軸(より小さな直径)と、少なくとも2のアスペクト比(×1/×2)と、を有するロッド状形状の本発明で使用される長尺状粒子の実施形態を模式的に描く。
図4c図4cは、長さ×1を有する第1の軸と、第1の軸に垂直な長さ×2を有する第2の軸と、約1のアスペクト比(×1/×2)と、を有する球状粒子を模式的に描く。
図4d図4dは、長さ×1を有する長軸と、長軸(粒子の一方の側から粒子の他方の側までの最長直線の長さ)に垂直な長さ×2を有する短軸(粒子のより小さな直径の最短寸法)と、少なくとも2のアスペクト比(×1/×2)と、を有する不規則形状の本発明で使用される長尺状粒子の実施形態を模式的に描く。
【0013】
[詳細な説明]
本発明は、改善されたコーティングに関する。
【0014】
かかる改善されたコーティングは、たとえば加熱によりコーティング配合物を機能性コーティングに変換することにより得られうる。
【0015】
典型的には基材上のコーティング配合物をコーティング付き基材に変換することによる。
【0016】
反射防止コーティングを含むソーラーモジュールのカバーガラスなどのコーティング付き基材は、通常、ある時点でクリーニングを必要とする。とくに世界の乾燥地域において。クリーニングは、とりわけ時間とコストがかかり、廃棄クリーニング材料を生成する。したがって、コーティング付き基材のクリーニング頻度を削減する必要性が存在する。本発明は、コーティング付き基材の改善された防汚性によりクリーニングの削減に対処する。本発明は、改善された防汚性を示すコーティング付き基材を提供する。本発明は、基材上への配合物の適用及び乾燥コーティング配合物からコーティング付き基材への変換を行った後に改善された防汚性を示すコーティング配合物を提供する。本発明は、改善された防汚性を示すソーラーモジュールを提供する。
【0017】
改善された防汚性は、ある期間たとえば3ヶ月間にわたり同一のパワー出力を用いて削減されたクリーニング頻度により実証しうる。改善された防汚性は、ある期間たとえば3ヶ月間にわたり同一のクリーニング頻度で改善されたパワー出力により実証しうる。
【0018】
防汚性は、分光光度計を用いた透過率測定を利用して透明基材上の反射防止コーティングの透過率を測定することにより決定しうる。分光光度計は、コーティング付き基材の分析に好適ないずれかの分光光度計でありうる。好適な分光光度計としては、島津(Shimadzu)UV2600分光光度計が挙げられる。他の好適な分光光度計としては、Optosol Transpec VIS-NIR分光光度計が挙げられる。
【0019】
改善された防汚性は、本明細書に定義される防汚比(ASR)の増加により実証しうる。改善された防汚性は、参照コーティング付き基材と比較して基材-コーティング防汚比(ASR)の増加により実証しうる。一態様では、改善された防汚性は、少なくとも50%の基材-コーティング防汚比ASRにより実証しうる。一態様ではASRは少なくとも75%であり、一態様ではASRは少なくとも80%であり、一態様では少なくとも85%であり、一態様ではASRは少なくとも90%である。
【0020】
一態様では、改善された防汚性は、本明細書に定義される基材-コーティング反射防止効果AREの増加により実証しうる。
【0021】
改善された防汚性は、参照コーティング付き基材と比較してAREの増加により実証しうる。一態様ではAREは少なくとも2%であり、一態様ではAREは少なくとも3%であり、一態様ではAREは少なくとも4%であり、一態様ではAREは少なくとも5%である。
【0022】
一態様では、改善された防汚性は、本明細書に定義される防汚利得(ASG)の増加により実証しうる。改善された防汚性は、参照コーティング付き基材と比較してASGの増加により実証しうる。一態様ではASGは少なくとも50%であり、一態様ではASGは少なくとも75%であり、一態様ではASGは少なくとも80%である。
【0023】
本発明に係るコーティング配合物は、改善された防汚性を提供する。
【0024】
本発明に係るコーティング配合物は、硬化後に、すなわち、たとえば摂氏400度超に加熱するなどの加熱により基材上のコーティング配合物をコーティング付き基材に変換することにより、かかる配合物から得られるコーティングに改善された防汚性を提供する。
【0025】
本発明に係る方法は、改善された防汚性を示すコーティング付き基材を提供する。
【0026】
本発明は、
i. 無機酸化物当量基準で少なくとも2wt%の少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子と、
ii. 10~120nmの範囲内の直径の細孔を形成可能なポロゲンと、
iii. 無機酸化物バインダーと、
iv. 溶媒と、
を含むコーティング配合物に関する。ただし、コーティング配合物は、0.1~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含み、好ましくは、コーティング配合物は、0.5~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。
【0027】
本発明の第1の態様では、本目的は、
i. 酸化物当量基準で少なくとも2wt%の、TEMにより測定したときに少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の平均短径とを有する無機物の長尺状無機緻密酸化物粒子と、
ii. 10~120nmの範囲内の直径の細孔を形成可能なポロゲンと、
iii. 無機酸化物バインダーと、
iv. 溶媒と、
を含むコーティング配合物により達成される。ただし、コーティング配合物は、600℃の空気中における2分間の燃焼後の全残灰を基準にして0.5~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含み、好ましくは、コーティング配合物は、600℃における燃焼後の全残灰を基準にして1.0~25wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。
【0028】
本発明の一態様では、コーティング配合物は、無機酸化物当量基準で少なくとも2wt%、少なくとも3wt%、少なくとも4wt%、少なくとも5wt%、少なくとも6wt%、少なくとも7wt%、少なくとも8wt%、少なくとも9wt%、少なくとも10wt%、少なくとも11wt%、少なくとも12wt%、少なくとも13wt%、少なくとも14wt%、少なくとも15wt%、又は少なくとも16wt%の、少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子を含む。
【0029】
本発明の一態様では、コーティング配合物は、無機酸化物当量基準で少なくとも17wt%、少なくとも18wt%、少なくとも19wt%、少なくとも20wt%、少なくとも22wt%、少なくとも25wt%の、少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子を含む。
【0030】
本発明の一態様では、コーティング配合物は、無機酸化物当量基準で多くとも28wt%、多くとも30wt%、多くとも26wt%、多くとも25wt%、多くとも22wt%、多くとも20wt%、多くとも18wt%、多くとも15wt%の、少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子を含む。本発明の一態様では、コーティング配合物は、0.1~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。本発明の一態様では、コーティング配合物は、0.5~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。本発明の一態様では、コーティング配合物は、0.5~25wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含み、1.0~25wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物、2.0~20wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。
【0031】
本発明の一態様では、コーティング配合物は、少なくとも0.1wt%、少なくとも0.5wt%、少なくとも1wt%、少なくとも2wt%、少なくとも3wt%、少なくとも5wt%、少なくとも7wt%、少なくとも10wt%、少なくとも12wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。
【0032】
本発明の一態様では、コーティング配合物は、30wt%以下、25wt%以下、22wt%以下、20wt%以下、18wt%以下、14wt%以下の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。
【0033】
本発明のさらなる態様では、本目的は、
- 基材を提供する工程と、
- 本明細書に記載の実施形態1~5のいずれか一つに記載のコーティング配合物を提供する工程と、
- コーティング配合物を基材上に適用する工程と、
- 基材上に適用されたコーティング配合物を乾燥させる工程と、
- 基材上で乾燥させたコーティング配合物をコーティング付き基材に変換する工程と、
を含むコーティング付き基材の作製方法により達成される。
【0034】
- 第1の表面を有する基材を提供する工程と、
- 本明細書に記載のコーティング配合物を提供する工程と、
- コーティング配合物を基材の第1の表面上に適用する工程と、
- 適用されたコーティング配合物を乾燥させる工程と、
- 乾燥させたコーティング配合物を有する基材をたとえば摂氏400度超に加熱するなどの加熱により第1の表面上にコーティング層を含むコーティング付き基材に変換する工程と、
を含むコーティング付き基材の作製方法。
【0035】
一態様では、本明細書に記載のベースコーティングは、基材の第1の表面の少なくとも一部を形成する。一態様では、本明細書に記載のベースコーティングは、基材の第1の表面を形成する。
【0036】
本発明のさらなる態様では、本目的は、
- 基材を提供する工程と、
- 本明細書に記載の実施形態1~5のいずれか一つに記載のコーティング配合物を提供する工程と、
- コーティング配合物を基材上に適用する工程と、
- 基材上のコーティング配合物を乾燥させる工程と、
- 基材上のコーティング配合物をコーティング付き基材に変換する工程と、
を含む方法を含めて本明細書に記載の方法により得られるコーティング付き基材により達成される。
【0037】
本発明はさらに、
i. 基材と、
ii. 基材の少なくとも一部上に配置された多孔性反射防止コーティング層と、
を含むコーティング付き基材に関する。ただし、反射防止コーティング層は、
- 10~120nm、好ましくは30~100nmの範囲内の直径の細孔と、
- 少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子と、
- 0.1~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物、好ましくは0.5~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物と、
を含む。
【0038】
本発明はさらに、
i. 基材と、
ii. 基材の少なくとも一部上に配置された多孔性反射防止コーティング層と、
を含むコーティング付き基材に関する。ただし、反射防止コーティング層は、
- 10~120nm、好ましくは30~100nmの範囲内の直径の細孔と、
- 少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子と、
- 0.1~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物、好ましくは0.5~25wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物と、
を含む。
【0039】
本発明のさらなる態様では、本目的は、基材の防汚性を改善するために少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状無機酸化物粒子を含むコーティング配合物の使用により達成される。ただし、コーティング配合物は、ポロゲンとしてコア-シェルナノ粒子を含み、コアは、カチオン性ポリマーのようなポリマーなどの有機化合物又は200℃未満の沸点の有機化合物を含み、且つシェルは、無機酸化物と600℃の空気中における2分間の燃焼後の全残灰を基準にして0.5~20wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物とを含む。
【0040】
本発明のさらなる態様では、本目的は、基材の防汚性を改善するために少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子を含むコーティング配合物の使用により達成される。ただし、コーティング配合物は、ポロゲンとしてコア-シェルナノ粒子を含み、コアは、ポリマーなどの有機化合物又は200℃未満の沸点の有機化合物を含み、シェルは、無機酸化物を含み、且つ配合物は、0.1~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。
【0041】
本発明の一態様では、ポリマーはカチオン性ポリマーでありうる。
【0042】
本明細書に開示されるコーティングは、多孔性コーティングである。コーティングは、バインダーとポロゲンとを含むコーティング配合物を用いて製造しうる。バインダーは、無機バインダー粒子たとえば金属酸化物粒子及び又は無機酸化物前駆体を含む。ポロゲンは、典型的には、昇温暴露時に分解、燃焼、蒸発、又は他の形で除去される有機材料である。典型的には、昇温は、摂氏400度以上たとえば摂氏550度以上たとえば摂氏600度以上である。典型的には、有機材料は有機ポリマーである。一態様では、ポロゲンは、有機中性ポリマー、有機カチオン性ポリマー、有機アニオン性ポリマー、高分子電解質、それらの組合せなどの有機ポリマーを含む有機材料を含む。ポロゲンは、典型的には、有機ポリマーコアとコアの周りの無機酸化物シェルとを含む。本開示に係るコーティングは、長尺状無機緻密酸化物粒子などの無機粒子を含む。長尺状無機緻密酸化物粒子及び長尺状緻密無機酸化物粒子は、本明細書では同義的に用いられることに留意されたい。長尺状無機緻密酸化物粒子及び長尺状塊状金属酸化物粒子は、本明細書では同義的に用いられることに留意されたい。
【0043】
本発明に係るコーティング配合物の一態様では、長尺状緻密無機酸化物粒子は、コーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の5~70wt%、好ましくはコーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の5~50wt%、より好ましくはコーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の10~45wt%、最も好ましくはコーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の12~30wt%を占める。本発明に係るコーティング配合物の一態様では、長尺状緻密無機酸化物粒子は、コーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の5~15wt%を占める。
【0044】
本発明に係るコーティング配合物の一態様では、長尺状緻密無機酸化物粒子は、コーティング配合物中の無機酸化物当量の全量を基準にして少なくとも5wt%、少なくとも7wt% 8wt%、少なくとも9wt%、少なくとも10wt%、少なくとも11wt%、少なくとも12wt%、少なくとも13wt%、少なくとも14wt %、少なくとも15wt%、少なくとも16wt%、少なくとも17wt%、少なくとも18wt%、少なくとも19wt%、少なくとも20wt%、少なくとも22wt%、少なくとも25wtを占める。
【0045】
本発明に係るコーティング配合物の一態様では、長尺状緻密無機酸化物粒子は、コーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の30wt%以下、28wt%以下、26wt%以下、25wt%以下、22wt%以下、20wt%以下、18wt%以下、又は15wt%以下を占める。
【0046】
本発明に係るコーティングは、1nm未満から約120nmまでの範囲内の直径の細孔を含む。細孔は、2つの粒子間の境界に沿った開口(任意選択的にコーティングの表面に接続する)などの開放細孔であってもよく、且つ/又は細孔は、(密閉)中空粒子などの密閉細孔であってもよい。コーティングは、10~120nmの直径の細孔(ポロゲン細孔という)を含むことが好ましい。10nm超の直径の細孔の場合、電子顕微鏡法により細孔直径を推定可能である。10nm未満の直径の細孔の場合、エリプソメトリーを用いてサイズを決定可能である。ポロゲン細孔は、好ましくは実質的に規則的な形状たとえば球状又は楕円体状(1つ若しくは2つの長軸を有する)の細孔である。一態様では、ポロゲン細孔は、好ましくは実質的に規則的な形状たとえば球状又は楕円体状(1つ若しくは2つの長軸を有する)の細孔であるが、コーティングの機械的性質に悪影響を及ぼすおそれがあることから5超のアスペクト比を有するべきではない。中空無機酸化物粒子などの中空粒子は、無機酸化物シェルと中空コアとを有する粒子として定義しうる。ポロゲン細孔は、たとえば中空無機酸化物粒子などの中空無機酸化物粒子により定義しうるとともに、コーティングの硬化時にポリマーが除去されるように無機酸化物(又は無機酸化物前駆体)シェルと有機ポリマー系コアとを有するコア-シェル粒子に由来しうる。コーティング配合物の硬化時、ポリマーは分解/除去されてコーティングが形成される。ポロゲン細孔は、たとえば中空無機酸化物粒子などの中空無機酸化物粒子により定義しうるとともに、コーティングの硬化時にコア材料が除去されるように無機酸化物(又は無機酸化物前駆体)シェル材料と有機ポリマー及び/又は有機化合物を含むコア材料とを有するコア-シェル粒子に由来しうる。コーティング配合物の硬化時、コア材料は、多孔性コーティングが形成されるように分解/除去されるであろう。細孔は、典型的には、有機ポロゲンに由来し、有機ポロゲンは、典型的には、コーティング配合物から機能性コーティングへの変換時に分解、燃焼、蒸発、又は他の形で除去される。
【0047】
一態様では、好適な硬化温度は少なくとも摂氏400度である。一態様では、好適な硬化温度は少なくとも摂氏550度、一態様では、少なくとも摂氏600度である。細孔はまた、無機バインダー粒子及び/又は緻密無機酸化物粒子の組合せによっても定義しうる。この場合、細孔は、典型的には、有機ポロゲンたとえばポリマー粒子又は他のポロゲンに由来し、ポロゲンは、典型的には、コーティング配合物から機能性コーティングへの変換時に分解、燃焼、蒸発、又は他の形で除去されるであろう。ポロゲンとしては、有機中性、カチオン性、及びアニオン性ポリマー又は高分子電解質が挙げられる(たとえば、Fuji,M.;Takai,C;Rivera Virtudazo,R.V.;Adv.Powder Tech.,2014,25,91-100、Zhang,X.et al.,App.Mater.Interfaces,2014,6,1415-1423を参照されたい)。
【0048】
本開示では、細孔は、典型的には、有機ポロゲンたとえばポリマー粒子又は他のポロゲンに由来し、ポロゲンは、典型的には、コーティング配合物から機能性コーティングへの変換時に分解、燃焼、蒸発、又は他の形で除去されるであろう。バインダーは無機酸化物系バインダーであり、したがって、変換は、有機物が少なくとも部分的に除去されて金属酸化物粒子が少なくとも部分的に焼結一体化される焼結型変換であるので、変換は、有機(モノマー)化合物の重合を包含しないことに注目すべきである。
【0049】
ポロゲン細孔のほか、より小さな細孔も少なくともバインダー中に存在する。したがって、本発明との関連では、バインダー細孔は、1nmから10nm未満までの直径の細孔である。バインダー細孔は、典型的には、規則的細孔ではなく、バインダーの近接粒子、緻密無機酸化物粒子、及び中空ナノ粒子(存在する場合)の間の非接触領域に延在する細孔であり、コーティングの表面又はポロゲン細孔に接続された状態であってもなくてもよいネットワークを形成しうる。
【0050】
本発明に係るコーティングは多孔性コーティングである。多孔性とは、本明細書ではコーティングが少なくとも2%の多孔度で細孔を有することを意味する。最大多孔度は、コーティング層の機械的要件に依存し、典型的には50%以下であり、好ましくは多孔度は45%未満であり、より好ましくは多孔度は40%未満である。一態様では、かかるコーティング層は2~50%の多孔度を有する。高多孔度は、一般的には反射防止性能を増加させるが、コーティングの機械的強度を低減するおそれがある。一態様では、多孔性反射防止コーティング層は、2%以上、5%以上、10%以上、15%以上、20%以上、25%以上、30%以上の多孔度を有する。一態様では、多孔性反射防止コーティング層は、50%以下、45%以下、40%以下の多孔度を有する。一態様では、多孔性反射防止コーティング層は、25~40%の多孔度を有する。一態様では、多孔性反射防止コーティング層は、30~40%の多孔度を有する。当業者には周知のように、画像解析は、SEM写真で好適に実施しうる。当業者であれば、細孔及び細孔の量をいかに同定するかを心得ており、それから多孔度を計算可能である。
【0051】
代替的に、当業者は、測定された屈折率(RI)から多孔度を計算しうる。なんら細孔を含まないコーティング材料のRIが分かれば、当業者は、どの程度の空気/細孔容積がコーティング層中に存在するかを計算可能である。本明細書のコーティング材料は、たとえば加熱によりコーティング配合物から機能性コーティングに変換した後の全無機酸化物材料である。全無機酸化物材料は、コーティング中のすべての無機酸化物材料、たとえば、バインダーの材料に加えて無機酸化物シェルの材料、さらにはアルミニウム含有化合物を含む。
【0052】
一態様では、多孔度は、基材に直交するコーティング層断面のSEM写真の画像解析により決定される。
【0053】
本発明の一態様では、コーティング付き基材のコーティング層は、2~50%の多孔度を有する。
【0054】
本発明に係るコーティングはまた、少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子を含む。好ましくは、短径は5~20nmの範囲内である。長尺状とは、粒子の寸法の少なくとも1つが、粒子の他の寸法の長さの少なくとも2、3、4、5、8、10、15、又は20倍であるなど、かなり長いことを意味する。長尺状緻密無機酸化物粒子の長さは、粒子の他の寸法の長さの50倍未満、たとえば、粒子の他の寸法の長さの多くとも50、30、25、20、又は15倍であることが好ましい。粒子が不規則形状を有する場合、アスペクト比は、粒子の一方の側から粒子の他方の側までの最長直線の長さ(とはいえ、このことは直線が粒子外にあってもよいことを意味しうる)をとにかく直線に沿って最長直線を横切る粒子の最短寸法で除算して計算される。長尺状緻密無機酸化物粒子の例は、IPA-ST-UP(日産化学(Nissan Chemical))及びビンドジル(Bindzil)15/750LS(アクゾ・ノーベル(Akzo Nobel))であり、他も市販されている。
【0055】
長尺状粒子は、少なくとも2のアスペクト比を有し、限定されるものではないが楕円体形状、ロッド形状、又は不規則形状を有しうる。本発明で使用される長尺状粒子は、×1の長さを有する長軸(主軸ともいいうる)と、長軸に垂直な×2の長さを有する短軸(副軸ともいいうる)と、少なくとも2のアスペクト比(×1/×2)と、を有する。
【0056】
アスペクト比は、最長軸の長さを短軸で除算することにより計算される。最長軸は、主軸ともいいうる。短軸は、副軸、短径、又は粒子の最短寸法ともいいうる。
【0057】
典型的には、粒子の軸の長さを決定するために、粒子の外表面が使用される。
【0058】
緻密とは、無機酸化物粒子が低多孔度又は無多孔、たとえば、5vol%未満の多孔度又は無多孔であることを意味する。長尺状緻密無機酸化物粒子は、一態様では0.5~5vol%の多孔度、一態様では1~4vol%、一態様では1~3vol%の多孔度を有する。
【0059】
ポロゲンとは、本明細書では、最終コーティング中でたとえば中空粒子となりうる、10~120nm、好ましくは30~100nmの直径の細孔を形成可能なエンティティー、コーティング配合物の硬化温度未満の沸点のコア又は硬化温度未満で燃焼可能若しくは解重合可能なコアを有するコア-シェル粒子、硬化温度未満で燃焼可能又は解重合可能な粒子を意味する。ポロゲンは、細孔形成剤ともいいうる。硬化温度未満の沸点のコアは、硬化温度未満の分解温度を有する。硬化温度未満で燃焼可能又は解重合可能なコアは、硬化時にすなわち硬化温度未満の温度で分解又は解重合又はその両方を起こすコアである。結果として、コアは除去されて細孔が形成される。
【0060】
そのため、ポロゲン又は細孔形成剤とは、本明細書では、最終コーティング中で10~120nm、好ましくは30~100nmの直径の細孔を形成可能なエンティティーを意味する。ポロゲンは、ポリマー粒子、たとえば、ポリスチレン粒子、プルロニック(Pluronic)P123粒子、及び/又はPMMA粒子でありうる。ポロゲンは、たとえば、中空粒子でありうる。ポロゲンは、たとえば、中空シリカ粒子でありうる。ポロゲンは、たとえば、コーティング配合物の硬化温度未満の沸点のコアを有するコア-シェル粒子でありうる。ポロゲンは、硬化温度未満で燃焼可能若しくは解重合可能なコアを有するコア-シェル粒子又は硬化温度未満で燃焼可能若しくは解重合可能な粒子でありうる。硬化温度未満の沸点のコアは、硬化温度未満の沸点の材料を含む。硬化温度未満で燃焼可能又は解重合可能なコアは、硬化時にすなわち硬化温度未満の温度で分解又は解重合又はその両方を起こす材料を含む。結果として、化合物は除去されて細孔が形成される。
【0061】
無機物の酸化物当量とは、本明細書では、無機種が存在する実際の化合物にかかわらず、酸化ケイ素をはじめとする金属酸化物を意味する。したがって、たとえば、テトラエトキシシランは、存在する種がテトラエトキシシラン、部分加水分解テトラエトキシシラン、又はSiOであるかにもかかわらず、SiOとして数えられよう。すなわち、無機物の酸化物当量とは、本明細書では、使用される実際の化合物又は無機酸化物前駆体から形成可能な酸化ケイ素をはじめとする金属酸化物の等価量を意味する。したがって、たとえば、ある特定量のテトラエトキシシランは、存在する種がテトラエトキシシラン、部分加水分解テトラエトキシシラン、又はSiOであるかにもかかわらず、SiO当量として表されよう。アルミナに対しても同様に、形成可能な純Alの量が計算される。酸化アルミニウム当量は、配合物に添加されたアルミナ前駆体に基づいて理論Al量に戻して計算される。
【0062】
アルミナ前駆体としては、
- AlX3(式中、Xは、F、CI、Br、Iである)形態のAl(III)ハロゲン系塩などのAl(III)錯体及びその水和物形態、
- Al(III)硝酸塩、亜硝酸塩、亜硫酸塩、硫酸塩、リン酸塩、塩化物、過塩素酸塩、炭酸塩などのAl(III)無機塩及びその水和物形態、
- アルコキシドやアミドなどの加水分解可能な酸素又は窒素ドナー系配位子を有するAl(III)錯体、並びに
- それらの組合せ
が挙げられうる。
【0063】
アルミナ前駆体としては、Al(イソプロポキシド)3、Al(sec-ブトキシド)3、Al(NO3)3、AlCl3、又はそれらの組合せのいずれかが挙げられうる。
【0064】
シリカ前駆体としては、TEOS(テトラエトキシシラン)、TMOS(テトラメトキシシラン)、アルキルシランたとえば(R)x)Si(OCH3)4-×(式中、R=CH3、C2H5、OCH3、OC2H5、又はそれらの組合せ)が挙げられうる。
【0065】
一態様では、無機酸化物当量は、600℃の空気中における2分間の燃焼後の全残灰を基準にする。当業者には公知のように、600℃の空気中における2分間の燃焼後の全残灰は、600℃の空気中における2分間の燃焼後の全残留固形材料である。
【0066】
たとえば、シリカの場合、アルコキシシランから出発する。酸化物当量が参照された場合、純SiOのみが形成されると仮定される。アルミナに対しても同様に、Al(NO3)3から出発した場合、形成可能な純Alの量が計算される。
【0067】
たとえば、10グラムのテトラエチルオルトシリケート(TEOS)の場合、無機酸化物当量の量は以下のように計算される。
【数1】
【0068】
すなわち、eq.SiO=無機物の酸化物当量=10/208,33×60,08=2,88g
【0069】
たとえば、少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の平均短径とを有する1グラムの長尺状緻密無機酸化物粒子の場合、無機酸化物当量の量は以下のように計算される。
【0070】
実施例で使用される長尺状粒子は、純SiO2であるとみなされる。したがって、1グラムの長尺状粒子は、1gの無機酸化物(この場合は1グラムのSiO2)と等価である。
【0071】
一実施形態では、ポロゲンは、コーティング配合物中の無機酸化物の全量の有意な部分を占める。好ましくは、ポロゲンは、コーティング配合物中の無機酸化物の全量の10~75wt%を占め、より好ましくは、ポロゲンは、コーティング配合物中の無機酸化物の全量の20~50wt%を占める。これは、たとえば、ポロゲンがコアシェル粒子又は中空粒子であるときの状況でありうる。
【0072】
他の一実施形態では、長尺状緻密無機酸化物粒子は、コーティング配合物中の無機酸化物の有意量を占める。好ましくは、長尺状緻密酸化物粒子は、コーティング配合物中の無機酸化物の全量の5~70wt%、より好ましくはコーティング配合物中の無機酸化物の全量の5~50wt%、さらにより好ましくはコーティング配合物中の無機酸化物の全量の10~45wt%、たとえばコーティング配合物中の無機酸化物の全量の12~30wt%を占める。本発明に係るコーティング配合物の一態様では、長尺状緻密無機酸化物粒子は、コーティング配合物中の無機酸化物の全量の5~15wt%を占める。本発明に係るコーティング配合物の一態様では、長尺状緻密無機酸化物粒子、コーティング配合物中の無機酸化物の全量を基準にして少なくとも5wt%、少なくとも7wt% 8wt%、少なくとも9wt%、少なくとも10wt%、少なくとも11wt%、少なくとも12wt%、少なくとも13wt%、少なくとも14wt%、少なくとも15wt%、少なくとも16wt%、少なくとも17wt%、少なくとも18wt%、少なくとも19wt%、少なくとも20wt%、少なくとも22wt%、少なくとも25wtを占める。本発明に係るコーティング配合物の一態様では、長尺状緻密無機酸化物粒子は、コーティング配合物中の無機酸化物の全量の30wt%以下、28wt%以下、26wt%以下、25wt%以下、22wt%以下、20wt%以下、18wt%以下、又は15wt%以下を占める。
【0073】
無機酸化物は、ガラスコーティングから公知のいずれかの酸化物でありうる。無機酸化物は、たとえば、Al、SiO、TiO、ZrO、ランタニド酸化物などの金属酸化物及びそれらの混合物(混合酸化物を含む)を含めて、ガラスコーティングから公知のいずれかでありうる。無機酸化物は、たとえば、Al、SiO、並びに任意選択的にLi2O、BeO、BaO、MgO、K2O、CaO、MnO、NiO SrO、FeO、Fe2O3、CuO、Cu2O、CoO、ZnO、PbO、GeO2、SnO2、Sb2O3、Bi2O3の1つ以上を含む化合物及び混合物である金属酸化物を含めて、ガラスコーティングから公知のいずれかでありうる。無機酸化物は、シリカを含有することが好ましい。好ましくは、無機酸化物は、少なくとも50wt%のシリカを含有し、より好ましくは、無機酸化物は、少なくとも90wt%のシリカ、たとえば、シリカからなる無機酸化物である。
【0074】
本発明に係るコーティング付き基材は、たとえば、基材を提供する工程と、本発明の第1の態様に係るコーティング配合物を提供する工程と、コーティング配合物を基材上に適用する工程と、基材上のコーティング配合物を乾燥させる工程と、基材上のコーティング配合物をコーティング付き基材に変換する工程と、を含む方法により作製しうる。変換は、有機ポリマーの重合ではなくバインダーの固結及び/又はポロゲンからコーティング細孔への変換を含むことに注目すべきである。これは、たとえば、ガラス基材のテンパープロセスと組み合わせた加熱によるものでありうるが、代替的に、かなり低い温度で行いうる溶媒テンプレート粒子中の溶媒の蒸発を含みうる。
【0075】
コアが溶媒を含む場合、たとえば、溶媒テンプレート粒子の場合、ポロゲンから細孔への変換は、たとえば、250℃未満の温度における溶媒の蒸発を含みうる。溶媒は、高くとも250℃、又は高くとも200、175、若しくは150℃の沸点を有しうる。かかる状況では、適用された本発明に係るコーティング配合物を含む基材は、適用されたコーティング配合物を250℃未満の温度に暴露することにより第1の表面上にコーティング層を含むコーティング付き基材に変換される。一態様では、適用されたコーティング配合物を200℃未満、175℃未満、又は150℃未満の温度に暴露することによる。
【0076】
IPA-ST-UP粒子(長尺状粒子)と無機バインダーとを含む反射防止コーティングは、国際公開第2007/093341号パンフレットに開示されている。しかしながら、国際公開第2007/093341号パンフレットには、防汚性との関連はなんら示唆されておらず、コーティング中の10~120nmの直径の細孔とくに30~100nmの直径の細孔の存在は開示されていない。
【0077】
コーティングがガラスシートなどの基材に適用される場合、コーティングは、基材の方向を向く内表面と基材から離れる方向を向く外表面とを有する。一実施形態では、長尺状緻密無機酸化物粒子は、コーティング中に均一に分布しない。とくに、長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との質量比がコーティングの外表面又はその近傍でより高いことが有利であることが分かった。本明細書では、外表面とは、基材から離れたコーティングの表面を意味し、この表面は、典型的には大気に暴露される。
【数2】
【0078】
分布は、たとえば、STEM-EDX又は深さプロファイリングにより決定される。そのため、コーティング中の長尺状緻密無機酸化物粒子の分布は、たとえば、STEM-EDX又は深さプロファイリングにより決定される。これは、緻密無機酸化物粒子及び全配合物の化学組成が同一でない場合にとくに有利である。
【0079】
本発明に係るコーティングの一態様では、長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との質量比は、参照コーティングと比較してコーティングの外表面又はその近傍でより高い。好適な参照コーティングは、長尺状緻密無機酸化物粒子を含まないコーティングでありうる。
【0080】
外表面に最も近いコーティングの20nmにおける比が、長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との平均質量比よりも高い場合、有利であることが分かった。一態様では、長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との比は、長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との平均比と比較して外表面に最も近いコーティングの20nmにおいて少なくとも50%高い。とくに、外表面に最も近いコーティングの20nmにおける比が、長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との平均質量比よりも高い場合、有利であることが分かった。好ましくは、長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との比は、外表面に最も近いコーティングの20nmにおいて、長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との平均比よりも少なくとも50%高く、より好ましくは、長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との比は、外表面に最も近いコーティングの20nmにおいて、長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との平均比の少なくとも2倍である。長尺状緻密無機酸化物粒子のこうした分布に伴って改善される防汚性は、長尺状緻密無機酸化物粒子がコーティングの表面近傍又は表面に配置されたときに観測される表面モルホロジーのわずかな変化に関連すると理論化しうるが、それに限定されるものではない。
【0081】
一態様では、本発明に係るコーティング付き基材は、コーティング付き基材の外表面に最も近いコーティングの20nmの厚さのトップ層において、緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との平均質量比よりも高い、長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との質量比を示す。
【0082】
一態様では、緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との質量比は、コーティングのトップ層において、長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との平均質量比よりも少なくとも50%高い。
【0083】
一態様では、長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との質量比は、コーティングのトップ層において、緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との平均質量比の少なくとも2倍である。
【0084】
本発明に係るコーティングは改善された防汚性を示す。改善された防汚性は、
【数3】

により定義される防汚比(ASR)の増加により実証しうる。式中、「T」は、分光光度計により測定される400~1200nmの平均透過率あり、Substrateは、コーティングを有していない基材を意味し、Coatingは、両面コーティングを有する基材を意味する。「0」は、汚れ試験前に測定された透過率を意味し、且つ「soil」は、汚れ試験後の透過率を意味する。400~1200nmは、1200nmを含めて400~1200nmを意味する。一態様では、「T」は、島津UV2600分光光度計により測定された400~1200nmの平均透過率である。一態様では、「T」は、Optosol Transpec VIS-NIR分光光度計により測定された400~1200nmの平均透過率である。一態様では、コーティング付き基材は、少なくとも50%のASRを示す。一態様では、コーティング付き基材は、少なくとも75%のASRを示す。一態様では、コーティング付き基材は、少なくとも80%のASRを示す。一態様では、コーティング付き基材は、少なくとも90%のASRを示す。
【0085】
改善された防汚性は、
【数4】

により定義される防汚比(ASR)の増加により実証しうる。式中、「T」は、分光光度計により測定される400~1200nmの平均透過率であり、Substrateは、コーティングを有していない基材を意味し、Coatingは、アルミナと長尺状粒子とを含むコーティングを有する両面コーティング付き基材を意味し、「0」は、汚れ試験前に測定された透過率を意味し、且つ「soil」は、汚れ試験後の透過率を意味する。一態様では、「T」は、島津UV2600分光光度計により測定された400~1200nmの平均透過率である。一態様では、「T」は、Optosol Transpec VIS-NIR分光光度計により測定された400~1200nmの平均透過率である。一態様では、コーティング付き基材は、少なくとも50%のASRを示す。一態様では、コーティング付き基材は、少なくとも75%のASRを示す。一態様では、コーティング付き基材は、少なくとも80%のASRを示す。一態様では、コーティング付き基材は、少なくとも90%のASRを示す。疑問を生じないように、「Coating with Al」は、アルミナと長尺状粒子とを含むコーティングを有する両面コーティング付き基材を意味することに留意されたい。
【0086】
一態様では、本発明は、
【数5】

で表される基材-コーティング防汚比ASRが少なくとも50%である、好ましくは基材-コーティングASRが少なくとも75%である、より好ましくは基材-コーティングASRが少なくとも80%である、最も好ましくは基材-コーティングASRが少なくとも90%である、コーティング付き基材を提供する。式中、Tは、400~1200nmの平均透過率であり、Substrateは、コーティングを有していない基材を意味し、Coatingは、両面コーティングを有する基材を意味し、0は、汚れ試験前を意味し、且つsoilは、汚れ試験後を意味する。
【0087】
本発明に係るコーティングは、コーティングが透明基材上の反射防止コーティングであり、且つ
【数6】

で表される基材-コーティング防汚比ASRが少なくとも50%であったコーティングのとき、とくに有利であることが分かった。式中、「T」は、島津(Shimadzu)UV2600分光光度計により測定された400~1200nmの平均透過率であり、Substrateは、コーティングを有していない基材を意味し、Coatingは、両面コーティングを有する基材を意味する。「0」は、汚れ試験前に測定された透過率を意味し、且つ「soil」は、汚れ試験後の透過率を意味する。汚れ試験は、実験の部に記載されるように行われる。
【0088】
汚れ試験は、
a)試験される表面を有する基材を提供することと、
b)試験される表面をクリーニングしてクリーニングされた表面を得ることと、
c)汚す前のクリーニングされた表面の400~1200nmの透過率を測定して400~1200nmの範囲内の平均透過率(T0)を決定することと、
d)試験される表面をダストで汚して汚れたダスト付着表面を得ることと、
e)ダスト付着表面を有する基材を振動させることと、
f)ダスト付着表面から過剰のダストを除去して汚れた表面を得ることと、
g)汚した後の汚れた表面の400~1200nmの透過率(汚した後の透過率)を測定して400~1200nmの範囲内の平均透過率(Tsoil)を決定することと、
を含みうる。
【0089】
こうして以下の値が得られうる。
-工程c)でTSubstrate,0:汚れ試験前の非コーティング付きガラス表面(コーティングを有していない基材)の400~1200nmの平均透過率、
-工程g)でTSubstrate,soil:汚れ試験後の非コーティング付きガラス表面の400~1200nmの平均透過率、
-工程c)でTCoating,0:汚れ試験前のコーティング付きガラス表面(両面コーティングを有するコーティング)の400~1200nmの平均透過率、
-工程g)でTCoating,soil:汚れ試験後のコーティング付きガラス表面の400~1200nmの平均透過率。
【0090】
Coating,0は、本明細書では、Tcoated substrate,0又はTcoated substrate with Al,0又はTcoated substrate without Al,0ともいいうる。
【0091】
Coating,soilは、本明細書では、Tcoated substrate,soil又はTcoated substrate with Al,soil又はTcoated substrate without Al.soilともいいうる。
【0092】
汚れ試験の工程e)では、振動は、100サイクル/分のスピードで300サイクル行いうるとともに、1サイクルは、円形ドライブディスクの完全回転、すなわち、テーバー(Taber)振動テーブルのトレイの1回の完全前進後退運動として定義される。
【0093】
汚れ試験の工程f)では、過剰のダストの除去は、テーブルトップなどの硬質表面上で基材の薄いエッジ(ガラスプレートのサイド)を手動で穏やかにタップすることにより行いうる。
【0094】
過剰のダストの除去に続いて、バック側表面を柔らかい布で穏やかにワイプすることにより汚れた基材(汚れたガラスプレート)のバック側をクリーニングしうる(フロント側は分光光度計の入射光を受ける表面である)。
【0095】
一態様では、クリーニングは、脱イオン水及び柔らかい布を用いてクリーニングすることと、実験室グレードのエタノールで濯ぐことと、一晩乾燥させることと、を含む。
【0096】
好ましくは、クリーニングは、40%未満の相対湿度で行われる。
【0097】
汚れ試験及び汚し試験は、本明細書では同義的に用いられる。
【0098】
本明細書では、400~1200nmの平均透過率とは、400~1200nmの波長範囲内の平均透過率値を意味する。
【0099】
一態様では、透過率は、Optosol Transpec VIS-NIR分光光度計を用いて測定される。
【0100】
一態様では、透過率は、島津UV2600分光光度計を用いて測定される。
【0101】
一態様では、汚れ試験とくに以上の工程d)及びe)は、テーバー振動摩耗試験機(たとえばモデル6160)を用いて実施される。
【0102】
ASRは、コーティングが基材の防汚性をどの程度良好に改善するかを示す。そのため、50%のASRは、コーティングがネイキッド基材の透過率損失と比較して透過率を半分失うにすぎないことを意味する。ネイキッド基材とは、本明細書では、コーティング層を有していない基材(たとえば、非コーティング付きガラスピース)のことである。好ましくは、コーティングの基材-コーティングASRは少なくとも75%であり、より好ましくは、基材-コーティングASRは少なくとも80%であり、最も好ましくは、基材-コーティングASRは少なくとも90%である。ASRが100%を超えることはありえない、なぜなら、これはコーティングが汚した後の方が良好であることを意味するからである。したがって、ASRは最大100%であるはずである。
【0103】
改善された防汚性は、
【数7】

で表される防汚利得(ASG)の増加により実証しうる。式中、Tは、400~1200の平均透過率であり、Coated Substrate with Alは、アルミナと長尺状粒子とを含むコーティングを有する両面コーティング付き基材を意味し、且つCoated Substrate without Alは、アルミナ及び緻密無機酸化物粒子が排除された同一コーティングを有する両面コーティング付き基材を意味する。0は、汚れ試験前を意味し、且つsoilは、汚れ試験後を意味し、0は、汚れ試験前を意味し、且つsoilは、汚れ試験後を意味する。
【0104】
一態様では、本発明に係るコーティング付き基材は、少なくとも50%、一態様では少なくとも75%の防汚利得(ASG)により実証する。本発明は、
【数8】

で表される防汚利得ASGが少なくとも50%、好ましくはASGが少なくとも75%であるコーティング付き基材を提供する。式中、Tは、400~1200nmの平均透過率であり、Coated Substrate with Alは、アルミナと長尺状粒子とを含むコーティングを有する両面コーティング付き基材を意味し、且つCoated Substrate without Alは、アルミナ及び緻密無機酸化物粒子が排除された同一コーティングを有する両面コーティング付き基材を意味し、0は、汚れ試験前を意味し、且つsoilは、汚れ試験後を意味する。
【0105】
本発明に係るコーティングは、多くの場合、本明細書に開示される実施形態3~7のいずれか一つに係るコーティング付き基材の防汚利得ASGで、
【数9】

で表される防汚利得ASGが少なくとも50%、好ましくはASGが少なくとも75%であるというコーティング付き基材の要件を満たすことも分かった。式中、Tは、島津UV2600分光光度計により測定された400~1200nmの平均透過率である。Coated Substrate with Alは、アルミナと長尺状粒子とを含むコーティングを有する両面コーティング付き基材を意味し、且つCoated Substrate without Alは、アルミナ及び緻密無機酸化物粒子が排除されたこと以外は同一のコーティングを有する両面コーティング付き基材を意味し、0は、汚れ試験前を意味し、且つsoilは、汚れ試験後を意味する。0は、汚れ試験前を意味し、且つsoilは、汚れ試験後を意味する。
【0106】
一態様では、本発明は、改善された防汚性を示す本発明に係るコーティング付き基材の作製方法により得られるコーティング付き基材を提供する。
【0107】
一態様では、本発明は、
i.基材と、
ii.基材の少なくとも一部上に配置された多孔性反射防止コーティング層と、
を含むコーティング付き基材を提供する。ただし、反射防止コーティングは、
- 10~120nm、好ましくは30~100nmの範囲内の直径の細孔と、
- 少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子と、
- 0.1~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物、好ましくは酸化アルミニウム当量で0.5~30wt%のアルミニウム含有化合物と、
を含む。
【0108】
本発明の一態様では、反射防止コーティング層は、少なくとも0.1wt%、少なくとも0.5wt%、少なくとも1wt%、少なくとも2wt%、少なくとも3wt%、少なくとも5wt%、少なくとも7wt%、少なくとも10wt%、少なくとも12wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。
【0109】
本発明の一態様では、反射防止コーティングは、30wt%以下、25wt%以下、22wt%以下、20wt%以下、18wt%以下、14wt%以下の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。
【0110】
多孔性反射防止コーティング層は、本明細書ではコーティングともいいうる。
【0111】
本発明に係るコーティング付き基材の好ましい実施形態では、コーティング付き基材は5.5m/s未満の開始ダスト除去を有し、好ましくは、開始ダスト除去は5.5m/s~4m/sである。これにより、コーティング付き基材上に付着したダストを風により容易に除去しうるとともに、コーティング付き基材のクリーニングを促進しうる。本明細書に記載の開始ダスト除去とは、汚れ除去が開始される風速、すなわち、表面上に堆積した汚れ媒体が表面から吹き飛ばされ始める風速のことである。汚れ媒体は、本明細書ではダストともいいうる。
【0112】
開始ダスト除去は、たとえば、密閉環流風洞内で決定しうる。たとえば、床上にガラススライドを水平に(チルト角0°で)配置して汚れ媒体を適用することによる。汚れ媒体の好適量としては、2~6グラム/mたとえば4g/mが挙げられる。相対湿度は、あらかじめ決められた範囲内たとえば58~62%に維持しうる。残留ダスト量は、高精度天秤により測定しうる。汚れが表面から吹き飛ばされ始めた風速は、開始ダスト除去という。これは、ある特定の速度の風を適用した後のダストを含むプレートの重量がかかる風を適用する前の重量よりも少ないことを意味する。好適な汚れ媒体としては、Belgian Brabrantian黄土が挙げられる。好適な汚れ媒体としては、石英A4粗砂(1~200μmのさまざまなサイズ)のアリゾナ(Arizona)試験ダストが挙げられる。好適な汚れ媒体としては、アリゾナISO12103-1A2細砂、アリゾナISO12103-1A4粗砂、ダストミックス「China細砂」、ダストミックス「China粗砂」が挙げられる(すべてKSL staubtechnik gmbh,Germanyで市販されている)。
【0113】
基材は、固形材料たとえばポリマーシート又はガラス部材である。基材としては、石英又はポリマーフォイルたとえばガラスフォイルが挙げられうる。ポリマー基材の例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリエチレンナフタレート(PEN)から選択される1つ以上のポリマーに基づくプラスチックフォイル及びポリマーである。ポリマー基材のさらなる例としては、ポリイミド(PI)が挙げられる。ポリマー基材は、フレキシブル太陽電池に有利である。好ましくは、基材は透明である。好ましくは、基材は、フロートガラス、化学強化フロートガラス、ボロシリケートガラス、構造化ガラス、テンパーガラス、及びたとえば20~250μmたとえば50~100μmの範囲内の厚さを有する薄い可撓性ガラスからなる群から選択されるガラス部材、さらにはガラス部材を含む基材、たとえば、部分的又は完全にアセンブルされたソーラーモジュール及びガラス部材を含むアセンブリーである。ガラス部材は、SMガラス又はMMガラスでありうる。市販のMMガラスとしては、光起電力用途のインターフロート(Interfloat)GMB SINA3.2mmソーラーガラスが挙げられる。
【0114】
本発明の一態様では、コーティング付き基材はソーラーモジュール用カバーガラスである。
【0115】
本発明はさらに、本明細書に記載のコーティング付き基材を含むソーラーモジュールに関する。
【0116】
部分的又は完全にアセンブルされたソーラーモジュールの例は、基材の第1の表面の少なくとも一部を形成するガラス部材と、薄膜透明伝導層及び/又は半導体層、バックシート、カプセル材、電気伝導性フィルム、ワイヤー、コントローラーボックス、及びフレームからなる群から選択される少なくとも1つの部材と、を含むモジュールであり、ガラス部材は、フロートガラス、化学強化フロートガラス、ボロシリケートガラス、構造化ガラス、テンパーガラス、及びたとえば20~250μmたとえば50~100μmの範囲内の厚さを有する薄い可撓性ガラスからなる群から選択される。そのため、本発明に係る方法に好ましい基材は、テンパーガラス、化学強化ガラス、温度感受性成分を含む基材、たとえば、部分的又は完全にアセンブルされた太陽電池モジュールである。一実施形態では、基材は、ベースコーティングが単一非ラミネート層のコーティング層でコーティングされる基材の第1の表面の少なくとも一部を形成するようにシート部材の第1の側にベースコーティングを有する透明固形シート部材を含む。好ましくは、ベースコーティングは、ナトリウムバリヤーコーティングなどのバリヤーコーティング及び反射防止コーティングからなる群から選択される。
【0117】
一態様では、本発明に係るコーティング付き基材は、透明固形シート部材と、第1の表面と第1のコーティングのコーティング層との間に介在するベースコーティング層と、を含み、好ましくは、ベースコーティングは、バリヤーコーティング及び反射防止コーティングからなる群から選択される。
【0118】
一態様では、基材は、ベースコーティングが基材の第1の表面の少なくとも一部を形成するようにシート部材の第1の側にベースコーティングを有する透明固形シート部材である。一態様では、基材は、ベースコーティングが基材の第1の表面を形成するようにシート部材の第1の側にベースコーティングを有する透明固形シート部材である。
【0119】
改善された防汚性は、
ARE=TCoating,0-TSubstrate,0
で表されるAREの増加により実証しうる。式中、Tは、400~1200nmの平均透過率であり、Substrateは、コーティングを有していない基材を意味し、Coated substrateは、両面コーティングを有する基材を意味し、且つ0は、汚れ試験前を意味する。
【0120】
coating,0及びTcoated substrate,0は、本明細書では同義的に用いられる。結果として、AREは、ARE=TCoated substrate,0-TSubstrate,0としても表現しうる。
【0121】
本発明に係るコーティングは、好ましくは反射防止コーティングである。本発明に係る一態様では、コーティング付き基材は、少なくとも2%、少なくとも3%、少なくとも4%、少なくとも5%のAREを示す。
【0122】
一態様では、本発明に係るコーティング付き基材は、
ARE=TCoated substrate,0-TSubstrate,0
で表される基材-コーティング反射防止効果AREが少なくとも2%、好ましくはAREが少なくとも3%、より好ましくはAREが少なくとも4%である。式中、Tは、400~1200nmの平均透過率であり、Substrateは、コーティングを有していない基材を意味し、Coated substrateは、両面コーティングを有する基材を意味し、且つ0は、汚れ試験前を意味する。一態様では、Tは、島津UV2600分光光度計により測定された400~1200nmの平均透過率である。一態様では、Tは、Optosol Transpec VIS-NIR分光光度計により測定された400~1200nmの平均透過率である。
【0123】
コーティングが透明基材上に配置されたときに、コーティングは、
ARE=TCoating,0-TSubstrate,0
で表される基材-コーティング反射防止効果AREが少なくとも2%、好ましくはAREが少なくとも3%、より好ましくはAREが少なくとも4%であることがきわめて好ましい。式中、Tは、島津UV2600分光光度計により測定された400~1200nmの平均透過率である。本明細書では、「Substrate」は、コーティングを有していない基材を意味し、且つ「Coating」は、両面コーティングを有する基材を意味する。
【0124】
本発明に係るコーティングは、透明基材たとえばいずれかのタイプのガラス基材の反射率を低減させるのにとくに好適であるので、反射防止コーティングとして使用される。
【0125】
本発明の他の一態様は、10~120nmの直径の細孔を形成可能なポロゲンと、少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子と、無機バインダーと、溶媒と、0.5~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物と、を含むコーティング配合物に関する。アルミニウム(aluminium)及びアルミニウム(aluminum)は、本明細書では同義的に用いられる。一態様では、アルミニウム含有化合物の酸化アルミニウム当量は、600℃の空気中における2分間の燃焼後の全残灰を基準にする。アルミニウムは、たとえば金属酸化物粉末として提供しうるが、より好ましくは任意選択的に溶液中又は懸濁液中の有機塩又は無機塩として提供しうる。好ましい実施形態では、コーティング配合物は1.0~25wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。なぜなら、貯蔵寿命の意味での安定性がこの範囲内のアルミニウム濃度のときに最良であることが分かったからである。安定性とは、コーティング配合物の安定性を意味する。コーティング配合物の安定性は、コーティング配合物の均一性を調べることにより評価しうる。不均一なコーティング配合物は、低い安定性及び低い貯蔵寿命を示唆する。配合物の不均一性は、液状配合物中の沈降物又はゲル化の存在により直接観測可能であるか、又は懸濁液中での経時的なコロイド粒子の成長又は凝集を介してDLS(動的光散乱)により測定可能である。不均一なコーティング配合物を用いると、典型的には不均一なコーティングを生じる。
【0126】
一態様では、本発明に係るコーティング配合物は、
i. 酸化物当量基準で少なくとも2wt%の、TEMにより測定したときに少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の平均短径とを有する無機物の長尺状無機緻密酸化物粒子と、
ii. 10~120nmの範囲内の直径の細孔を形成可能なポロゲンと、
iii. 無機酸化物バインダーと、
iv. 溶媒と、
を含む。ただし、コーティング配合物は、600℃の空気中における2分間の燃焼後の全残灰を基準にして0.5~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含み、好ましくは、コーティング配合物は、600℃における燃焼後の全残灰を基準にして1.0~25wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。
【0127】
ポロゲンは、たとえば、中空無機酸化物粒子でありうるか、又は無機酸化物(若しくは無機酸化物前駆体)シェルと、カチオン性ポリマーなどの有機化合物又は200℃未満の沸点の有機化合物を含むコアと、を有するコア-シェル粒子である。ポロゲンはまた、たとえば、有機高分子ナノ粒子のような有機ナノ粒子などの有機ポロゲンでありうるか、又はコーティング配合物から機能性コーティングへの変換時に典型的には分解、燃焼、蒸発、又は他の形で除去される他のポロゲンでありうる。有機ナノ粒子とは、本明細書では、1つ以上の有機分子を含むとともに50~150nmの範囲内のサイズを有する粒子を意味する。有機分子の例は、ポリマーたとえばアクリル系ポリマー及びラテックス並びにオリゴマーである。長尺状緻密無機酸化物粒子は以上で考察される。
【0128】
本発明の一態様では、ポロゲンは、
- コアがポリマーなどの有機化合物又は200℃未満の沸点の有機化合物を含み且つシェルが無機酸化物を含むコア-シェルナノ粒子と、
- 中空無機ナノ粒子と、
を含む。
【0129】
本発明の一態様では、ポロゲンは、コーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の10~75wt%を占める。一態様では、ポロゲンは、コーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の20~50wt%を占める。
【0130】
無機バインダーは、典型的には、0.1~7nmの範囲内の直径の無機酸化物粒子及び/又は0.1~7nmの範囲内の直径の無機酸化物前駆体を含む。無機バインダーは、好ましくは0.1~7nm程度の直径の無機酸化物粒子又は無機酸化物前駆体である。
【0131】
無機酸化物粒子は、7nm超たとえば7~10nmの範囲内の直径を有しうることに留意されたい。無機酸化物前駆体は、7nm超たとえば7~10nmの範囲内の直径を有しうることに留意されたい。
【0132】
本発明の一態様では、無機バインダーは、0.1~7nmの範囲内の平均直径の無機酸化物ナノ粒子を含む。
【0133】
一態様では、無機バインダーは、典型的には、0.1~5nmの範囲内の直径の無機酸化物粒子及び/又は0.1~5nmの範囲内の直径の無機酸化物前駆体を含む。
【0134】
無機酸化物粒子及び/又は無機酸化物前駆体の直径は、動的光散乱(DLS)を用いて測定しうる。例は、プレオリゴマー化ケイ素アルコキシドたとえばプレオリゴマー化テトラエトキシシラン、プレオリゴマー化チタンアルコキシド、及び金属酸化物ゾルゲルである。無機酸化物粒子及び/又は無機酸化物前駆体の例としては、金属酸化物ゾルが挙げられる。プレオリゴマー化ケイ素アルコキシドは、当業者によりプレオリゴマー化シリコンアルコキシドともいわれる。無機バインダーは、たとえば、国際公開第2009/106456号パンフレット(参照により本明細書に組み込まれる)に記載のように調製しうる。
【0135】
本発明に係るコーティング配合物は溶媒を含む。溶媒は、いずれかの溶媒、溶媒の組合せ、又は溶媒と添加剤たとえばコーティング配合物の安定な分散を実現可能な界面活性剤及び安定剤との組合せでありうる。典型的には、溶媒は、コーティング配合物の質量の80~98%を占める。きわめて好適な溶媒は、イソプロパノール(IPA)、水、又はIPA及び/又は水を含む溶媒の組合せである。
【0136】
本発明に係るコーティング配合物は、基材の防汚性を改善するために基材上のコーティング中に少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子を含む。緻密無機酸化物粒子の形状がコーティングの防汚性に主要な影響を及ぼすように思われること、そのため、長尺状緻密無機酸化物粒子が含まれるコーティングでコーティングすることにより基材の汚れに対する感受性を低減可能であることは、きわめて予想外であった。非球状粒子たとえば長尺状粒子とくに長尺状緻密無機酸化物粒子を含むコーティング配合物から作製されたコーティングは、長尺状緻密無機酸化物粒子を含まないコーティング配合物から作製されたコーティングと比較して改善された防汚性を示す。一態様では、非球状粒子たとえば長尺状粒子とくに長尺状緻密無機酸化物粒子を含むコーティング配合物から作製されたコーティングは、球状粒子を含むコーティング配合物から作製されたコーティングと比較して改善された防汚性を示す。言い換えると、基材の汚れに対する感受性を低減する本方法は、長尺状緻密無機酸化物粒子を含有するコーティング配合物を基材に適用する工程と、コーティング配合物をたとえば加熱により機能性コーティングに変換する工程と、を含む。
【0137】
本発明の他の一態様は、本発明の第1の態様に係るコーティング付き基材を含むソーラーモジュールに関する。本発明の他の一態様は、本明細書に記載のコーティング付き基材を含むソーラーモジュールに関する。かかるソーラーモジュールは、より低い操作コストで経時的に有意により良好な性能を呈する。クローニング頻度の低減又は同一のクリーニング頻度におけるパワー出力の改善はすべて、前記ソーラーモジュールの汚れを有意に低減する本発明のコーティングの増強された防汚性により可能になる。本発明に係るコーティング付き基材を含む他の有利なデバイスは、温室ガラス(又はポリマー膜)、集中ソーラーモジュール、ウィンドウ、ディスプレイである。たとえばルーフトップコーティングや容器表面などのいくつかの用途では、基材は非透明でありうるので、本発明の利点は、基材上への汚れの付着を低減したり又は非コーティング付き基材と比較してコーティング付き基材のクリーニング性を向上させたりする防汚コーティングの能力に重点が置かれる。
【0138】
たとえば、コーティング配合物は、当技術分野で公知のいずれかの技術、たとえば、ディッピング、ブラッシング、スピニング、スプレーイング、スロットダイコーティング、エアロゾルコーティングにより、又はローラーを用いて基材に適用しうる。スプレーイングは、エアレス若しくは従来のエア使用、又は静電若しくは大量/低圧(HVLP)若しくはエアロゾルコーティングでありうる。コーティング配合物は、ロールコーティング、エアロゾルコーティング、又はディップコーティングにより適用することが好ましい。
【0139】
機能性コーティングとは、機能性コーティングが装着される基材の機械的、光学的、及び/又は電気的性質を向上させるコーティングを意味する。本発明のコーティングでコーティングされる基材の向上可能な機械的性質の例は、非コーティング付き基材の機械的性質と比較して増加した表面硬度、増加した剛性又は耐摩耗性である。本発明のコーティングでコーティングされる基材の向上可能な光学的性質の例は、空気から直接基材を通る光の透過率と比較して空気から機能性コーティング及び基材を通る光の増加した透過率、並びに空気から直接非コーティング付き基材に向かう反射率と比較して空気から機能性コーティング及び機能性コーティングから基材に向かう界面相からの低減した反射率である。本発明のコーティングでコーティングされる基材の向上可能な電気的性質の例は、未変換コーティング付き基材及び/又は非コーティング付き基材と比較して増加した伝導率である。
【0140】
本発明の他の一態様は、基材の防汚性を改善するための少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状無機酸化物粒子を含むコーティング配合物の使用に関する。とくに、この実施形態は、ポロゲンとしてコア-シェルナノ粒子を含むコーティング配合物に関する。ただし、コアは、カチオン性ポリマーなどの有機化合物又は200℃未満の沸点の有機化合物を含み、且つシェルは、無機酸化物と600℃の空気中における2分間の燃焼後の全残灰を基準にして0.5~20wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。本発明の他の一態様は、ソーラーモジュール用カバーガラスなどの基材の防汚性を改善するための本明細書に記載のコーティング配合物の使用を含む。
【0141】
本発明の他の一態様は、基材の防汚性を改善するための少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子を含むコーティング配合物の使用を含む。ただし、コーティング配合物は、ポロゲンとしてコア-シェルナノ粒子を含み、コアは、ポリマーなどの有機化合物又は200℃未満の沸点の有機化合物を含み、シェルは、無機酸化物を含み、且つ配合物は、0.1~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。
【0142】
本発明の他の一態様は、基材の防汚性を改善するための、
- 少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子と、
- アルミニウム含有化合物と、
の組合せの使用を含む。
【0143】
本発明の他の一態様は、ソーラーモジュールの汚れを低減するための少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子の使用を含む。
【0144】
本発明の他の一態様は、ソーラーモジュールの汚れを低減するための、
- 少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子と、
- アルミニウム含有化合物と、
の組合せの使用を含む。
【0145】
本発明の実施形態は以下を含む。
【0146】
実施形態1:
i. 酸化物当量基準で少なくとも2wt%の、TEMにより測定したときに少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の平均短径とを有する無機物の長尺状無機緻密酸化物粒子と、
ii. 10~120nmの範囲内の直径の細孔を形成可能なポロゲンと、
iii. 無機酸化物バインダーと、
iv. 溶媒と、
を含むコーティング配合物。ただし、コーティング配合物は、600℃の空気中における2分間の燃焼後の全残灰を基準にして0.5~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含み、好ましくは、コーティング配合物は、600℃における燃焼後の全残灰を基準にして1.0~25wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。
【0147】
実施形態2: ポロゲンが、コアがカチオン性ポリマーなどの有機化合物又は200℃未満の沸点の有機化合物を含み且つシェルが無機酸化物を含むコア-シェルナノ粒子と、中空無機ナノ粒子と、を含む、実施形態1に係るコーティング配合物。
【0148】
実施形態3: ポロゲンがコーティング配合物中の無機酸化物の全量の10~75wt%を占める、好ましくはポロゲンがコーティング配合物中の無機酸化物の全量の20~50wt%を占める、実施形態1又は2に係るコーティング配合物。
【0149】
実施形態4: 無機バインダーが0.1~7nmの範囲内の数平均直径の無機酸化物ナノ粒子を含む、実施形態1~3のいずれか一つに係るコーティング配合物。
【0150】
実施形態5: 長尺状緻密無機酸化物粒子が、コーティング配合物中の無機酸化物の全量の5~70wt%、好ましくはコーティング配合物中の無機酸化物の全量の5~50wt%、より好ましくはコーティング配合物中の無機酸化物の全量の10~45wt%、最も好ましくはコーティング配合物中の無機酸化物の全量の12~30wt%を占める、実施形態1~4のいずれか一つに係るコーティング配合物。
【0151】
実施形態6:
- 基材を提供する工程と、
- 実施形態1~5のいずれか一つに係るコーティング配合物を提供する工程と、
- コーティング配合物を基材上に適用する工程と、
- 基材上のコーティング配合物を乾燥させる工程と、
- 基材上のコーティング配合物をコーティング付き基材に変換する工程と、
を含むコーティング付き基材の作製方法。
【0152】
実施形態7: 実施形態6の方法により得られるコーティング付き基材。
【0153】
実施形態8: ベースコーティングが基材の第1の表面の少なくとも一部を形成するように、基材が、シート部材の第1の側にベースコーティングを有する透明固形シート部材を含み、好ましくは、ベースコーティングが、バリヤーコーティング及び反射防止コーティングからなる群から選択される、実施形態7に係るコーティング付き基材。
【0154】
実施形態9:
【数10】

で表される基材-コーティング防汚比ASRが少なくとも50%である、好ましくは基材-コーティングASRが少なくとも75%である、より好ましくは基材-コーティングASRが少なくとも80%である、最も好ましくは基材-コーティングASRが少なくとも90%である、実施形態7又は8に係るコーティング付き基材。式中、Tは、島津UV2600分光光度計により測定された400~1200nmの平均透過率であり、Substrateは、コーティングを有していない基材を意味し、Coatingは、両面コーティングを有する基材を意味し、0は、汚れ試験前を意味する。
【0155】
実施形態10: コーティング付き基材の
ARE=TCoated substrate,0-TSubstrate,0
で表される基材-コーティング反射防止効果AREが少なくとも2%、好ましくはAREが少なくとも3%、より好ましくはAREが少なくとも4%である、実施形態7~9のいずれか一つに係るコーティング付き基材。式中、Tは、島津UV2600分光光度計により測定された400~1200nmの平均透過率であり、Substrateは、コーティングを有していない基材を意味し、Coated substrateは、両面コーティングを有する基材を意味する。
【0156】
実施形態11: コーティング付き基材の
【数11】

で表される防汚利得ASGが少なくとも50%、好ましくはASGが少なくとも75%である、実施形態7~10のいずれか一つに係るコーティング付き基材。式中、Tは、島津UV2600分光光度計により測定された400~1200nmの平均透過率であり、Coated Substrate with Alは、アルミナと長尺状粒子とを含むコーティングを有する両面コーティング付き基材を意味し、且つCoated Substrate without Alは、アルミナ及び緻密無機酸化物粒子が排除された以外は同一のコーティングを有する両面コーティング付き基材を意味し、0は、汚れ試験前を意味し、且つsoilは、汚れ試験後を意味する。
【0157】
実施形態12: 実施形態7~11のいずれか一つに係るコーティング付き基材を含むソーラーモジュール。
【0158】
実施形態13: 長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との質量比が、コーティング付き基材の外表面に最も近いコーティングの20nmにおいて、緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との平均質量比よりも高い、
好ましくは、緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との質量比が、外表面に最も近いコーティングの20nmにおいて、緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との平均質量比よりも少なくとも50%高い、
より好ましくは、緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との質量比が、外表面に最も近いコーティングの20nmにおいて、緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との平均質量比の少なくとも2倍である、実施形態7~11のいずれか一つに係るコーティング付き基材。
【0159】
実施形態14: 基材の防汚性を改善するための少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状無機酸化物粒子を含むコーティング配合物の使用。ただし、コーティング配合物は、ポロゲンとしてコア-シェルナノ粒子を含み、コアは、カチオン性ポリマーなどの有機化合物又は200℃未満の沸点の有機化合物を含み、且つシェルは、無機酸化物コア-シェルポロゲンと600℃の空気中における2分間の燃焼後の全残灰を基準にして0.5~20wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物とを含む。
【0160】
実施形態15: 開始ダスト除去が5.5m/s未満であり、好ましくは開始ダスト除去が5.5m/s~4m/sである、実施形態7~11のいずれか一つに係るコーティング付き基材。
【0161】
実施形態16:
i. 無機酸化物当量基準で少なくとも2wt%の少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子と、
ii. 10~120nmの範囲内の直径の細孔を形成可能なポロゲンと、
iii. 無機酸化物バインダーと、
iv. 溶媒と、
を含むコーティング配合物。ただし、コーティング配合物は、0.1~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含み、好ましくは、コーティング配合物は、0.5~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。
【0162】
実施形態17:
ポロゲンが、
- コアがポリマーなどの有機化合物又は200℃未満の沸点の有機化合物を含み且つシェルが無機酸化物を含むコア-シェルナノ粒子と、
- 中空無機ナノ粒子と、
を含む、実施形態16に係るコーティング配合物。
【0163】
実施形態18: ポロゲンがコーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の10~75wt%を占める、好ましくはポロゲンがコーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の20~50wt%を占める、実施形態16又は17に係るコーティング配合物。
【0164】
実施形態19: 無機酸化物バインダーが0.1~7nmの範囲内の平均直径の無機酸化物ナノ粒子を含む、実施形態16~18のいずれか一つに係るコーティング配合物。
【0165】
実施形態20: 長尺状緻密無機酸化物粒子がコーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の5~70wt%、好ましくはコーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の5~50wt%、より好ましくはコーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の10~45wt%、最も好ましくはコーティング配合物中の無機酸化物当量の全量の12~30wt%を占める、実施形態16~19のいずれか一つに係るコーティング配合物。
【0166】
実施形態21:
- 第1の表面を有する基材を提供する工程と、
- 実施形態1~5、16~20のいずれか一つに係るコーティング配合物を提供する工程と、
- コーティング配合物を基材の第1の表面上に適用する工程と、
- 適用されたコーティング配合物を乾燥させる工程と、
- 乾燥させたコーティング配合物を有する基材をたとえば摂氏400度超に加熱するなどの加熱により第1の表面上にコーティング層を含むコーティング付き基材に変換する工程と、
を含むコーティング付き基材の作製方法。
【0167】
実施形態22: 改善された防汚性を示す、実施形態21に係る方法により得られるコーティング付き基材。
【0168】
実施形態23:
i.基材と、
ii.基材の少なくとも一部上に配置された多孔性反射防止コーティング層と、
を含むコーティング付き基材。ただし、反射防止コーティングは、
- 10~120nm、好ましくは30~100nmの範囲内の直径の細孔と、
- 少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子と、
- 0.1~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物、好ましくは0.5~25wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物と、
を含む。
【0169】
実施形態24: 基材が、透明固形シート部材と、第1の表面と第1の表面上のコーティング層との間に介在するベースコーティング層と、を含み、好ましくは、ベースコーティングが、バリヤーコーティング及び反射防止コーティングからなる群から選択される、実施形態22又は23のいずれか1つに係るコーティング付き基材。
【0170】
実施形態25:
【数12】

で表される基材-コーティング防汚比ASRが少なくとも50%である、好ましくは基材-コーティングASRが少なくとも75%である、より好ましくは基材-コーティングASRが少なくとも80%である、最も好ましくは基材-コーティングASRが少なくとも90%である、実施形態22~24のいずれか一つに係るコーティング付き基材。式中、Tは、400~1200nmの平均透過率であり、Substrateは、コーティングを有していない基材を意味し、Coatingは、両面コーティングを有する基材を意味し、0は、汚れ試験前を意味し、且つsoilは、汚れ試験後を意味する。
【0171】
実施形態26: コーティング付き基材の
ARE=TCoated substrate,0-TSubstrate,0
で表される基材-コーティング反射防止効果AREが少なくとも2%、好ましくはAREが少なくとも3%、より好ましくはAREが少なくとも4%である、実施形態22~25のいずれか一つに係るコーティング付き基材。式中、Tは、400~1200nmの平均透過率であり、Substrateは、コーティングを有していない基材を意味し、Coated substrateは、両面コーティングを有する基材を意味し、且つ0は、汚れ試験前を意味する。
【0172】
実施形態27: コーティング付き基材の
【数13】

で表される防汚利得ASGが少なくとも50%、好ましくはASGが少なくとも75%である、実施形態22~26のいずれか一つに係るコーティング付き基材。式中、Tは、400~1200nmの平均透過率であり、Coated Substrate with Alは、アルミナと長尺状粒子とを含むコーティングを有する両面コーティング付き基材を意味し、且つCoated Substrate without Alは、アルミナ及び緻密無機酸化物粒子が排除された同一コーティングを有する両面コーティング付き基材を意味し、0は、汚れ試験前を意味し、且つsoilは、汚れ試験後を意味する。
【0173】
実施形態28: 長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との質量比が、コーティング付き基材の外表面に最も近いコーティングの20nmの厚さのトップ層において、緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との平均質量比よりも高い、好ましくは、緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との質量比が、コーティングのトップ層において、長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との平均質量比よりも少なくとも50%高い、より好ましくは、長尺状緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との質量比が、コーティングのトップ層において、緻密無機酸化物粒子に由来する無機酸化物とコーティングの全無機酸化物との平均質量比の少なくとも2倍である、実施形態22~27のいずれか一つに係るコーティング付き基材。
【0174】
実施形態29: 開始ダスト除去が5.5m/s未満である、好ましくは開始ダスト除去が5.5m/s~4m/sである、実施形態22~28のいずれか一つに係るコーティング付き基材。
【0175】
実施形態30: 基材がソーラーモジュール用カバーガラスである、実施形態7~13、22~29のいずれか一つに係るコーティング付き基材。
【0176】
実施形態31: 実施形態22~30のいずれか一つに係るコーティング付き基材を含むソーラーモジュール。
【0177】
実施形態32: 基材の防汚性を改善するための少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子を含むコーティング配合物の使用。ただし、コーティング配合物は、ポロゲンとしてコア-シェルナノ粒子を含み、コアは、ポリマーなどの有機化合物又は200℃未満の沸点の有機化合物を含み、シェルは、無機酸化物を含み、且つ配合物は、0.1~30wt%、好ましくは0.5~30wt%の酸化アルミニウム当量のアルミニウム含有化合物を含む。
【0178】
実施形態33: 基材の防汚性を改善するための、
- 少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子と、
- アルミニウム含有化合物と、
の組合せの使用。
【0179】
実施形態34: ソーラーモジュールの汚れを低減するための少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子の使用。
【0180】
実施形態35: ソーラーモジュールの汚れを低減するための、
- 少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子と、
- アルミニウム含有化合物と、
の組合せの使用。
【0181】
実施形態36: ソーラーモジュールのクリーニング頻度を低減するための少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子の使用。
【0182】
実施形態37: ソーラーモジュールのクリーニング頻度を低減するための、
- 少なくとも2のアスペクト比と3~20nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子と、
- アルミニウム含有化合物と、
の組合せの使用。
【0183】
実施形態38: 少なくとも2のアスペクト比と3~203nmの範囲内の短径とを有する長尺状緻密無機酸化物粒子と、アルミニウム含有化合物と、を含む組成物。
【0184】
[測定]
[光学測定法]
島津UV2600を用いて400~1200nmで光学的性質を測定し、最大透過率を確定した。
【0185】
[汚れ測定法]
汚れ手順:コーティングの防汚性は、KSL Staubtechnik GMBHから市販されている石英A4粗砂(1~200μmのさまざまなサイズ)の市販のアリゾナ試験ダストを汚れ媒体として用いてテーバー振動摩耗試験機(モデル6160)により試験した。試験される100×100mmガラスプレートを最初に脱イオン水及び柔らかい布を用いてクリーニングし、実験室グレードのエタノールで濯ぎ、そして一晩乾燥させた。次いで、ガラスプレートのトップ表面がトレイ内のサンプルホルダーと同一の高さになるように、コーティング付きサンプルをテーバー振動テーブルのトレイ内に配置した。次いで、ブラシを用いて20gのアリゾナ試験ダストを全ガラスプレート上に穏やかに分散させる。汚れ手順(100サイクル/分のスピードで300サイクル、1サイクルは円形ドライブディスクの完全回転、すなわち、トレイの1回の完全前進後退運動として定義される)を実施した。次いで、試験サンプルをトレイから取り出し、穏やかにタップしてその表面上の過剰量のサンドを除去した。試験環境の相対湿度は43%RHであり、温度は19.5℃であった。
【0186】
汚れ評価:コーティングの汚れの程度は、Optosol Transpec VIS-NIRを用いて測定される汚した後の透過率の相対損失により決定した。その目的で、テーバー振動摩耗試験機により人工的に汚す前及び汚した後の透過率スペクトルを記録した。続いて、400~1200nmにわたるスペクトルの最大透過率を確立した。記録された400~1200nmにわたるスペクトルの最大透過率値の得られた前後差に基づいて、汚れのレベルに関する結論つまり防汚コーティングの有効性を導出可能であった。
【0187】
[無機酸化物組成の決定法]
剃刀刃を用いて硬化サンプルから基材を削り取った。削取り部分をエタノールで基材から濯いて捕集した。1滴のエタノール懸濁液をカーボングリッドに移して乾燥させ、その後、カーボングリッドのエッジ上に配置された削取り部分に対してSTEM EDXにより元素組成を決定した。少なくとも成分Si、O、Al、及びTiを測定し、ソフトウェアのエスプリ(Esprit)1.9.により量を決定した。
【0188】
[細孔サイズの決定法]
ポロゲン細孔(すなわち、10~120nmの範囲内の直径の細孔)の細孔サイズは、SEMにより測定したときの基材の表面に直交する断面上の細孔の壁間の最長距離を表すラインの長さとして定義される。不規則細孔の場合、最長距離を表すラインは細孔外にありうる。周知のように、SEMは、Scanning Electron Microscopy(走査電子顕微鏡法)の略である。
【0189】
1~10nmの細孔サイズを有するバインダー細孔の場合、本明細書に示される方法を用いてエリプソメトリーにより細孔サイズを測定する。この方法は、細孔中への水の収着を利用するので、測定サイズは細孔の最小直径に対応する。
【0190】
[粒子サイズの決定法]
バインダー粒子のサイズ及び長尺状緻密無機粒子のサイズは、CryoTEMを用いて測定される。平均サイズは、ランダムに選択された粒子に基づく数平均サイズである。
【0191】
[エリプソメトリー]
バインダー細孔の体積分率及び細孔サイズ分布は、水の相対分圧の変動下における水収着により決定した。2~50nmの範囲内の細孔サイズレジームでは、飽和圧力(つまり細孔中の水の凝縮/蒸発)は、ケルビン式により記述される細孔の最小寸法の関数である。細孔中の水の凝縮は、水と空気との間の密度差に起因してコーティングの光学的性質を劇的に変化させる。その光学的性質をエリプソメトリーにより測定した。
【0192】
サンプル作製は基材タイプに依存する。フロートガラスの場合、バック側の反射を低減させるためにガラスのバック側にスコッチテープを適用した。SMガラスの場合、サンプル粗さにより引き起こされる光散乱を低減するために集束プローブを用いて測定を行った。SMガラスの場合、バック側にスコッチテープを適用しなかった。使用したSMガラスは、インターフロートGMB SINA3,2mmガラスであった。
【0193】
使用したエリプソメーターは、ウーラム(Woollam)M-2000UIランニングCompleteEase(ウーラム)バージョン5.20であった。
【0194】
[データ解析/モデリング法]
CompleteEaseを用いて構築された光学モデルに当てはめることにより実験データを解析した。最初にベアの非コーティング付き基材を測定し、b-スプラインモデルを用いて当てはめた。級数展開の最初の2つの項A及びBを用いてコーシーモデルによりコーティング層を記述した。モデルの評価のために、35%rHで測定したデータを使用した。
【0195】
[実施例]
[実施例1:コア-シェル粒子溶液の調製]
エタノールの代わりにイソプロパノールを用いて国際公開第2009/030703号パンフレットに開示されたものと同一の方法によりコア-シェル粒子を調製した。イソプロパノールを用いて溶液を10.0wt%のシリカ当量の濃度にさらに希釈した。135nmの粒子サイズを有していた。
【0196】
[実施例2:無機バインダーの調製]
国際公開第2011/157820号パンフレットに開示されたものと同一の方法によりテトラエトキシシランからシリカ系無機バインダーを調製し、イソプロパノールでさらに希釈して約2wt%のシリカ当量及び3~5nmの粒子サイズのバインダー溶液を達成した。
【0197】
希HClをエタノール及びチタン(IV)プロポキシドと混合して透明液体にすることにより、チタン(IV)プロポキシドからチタニア系無機バインダーを調製した。この混合物を室温でエタノール及び水に添加して、約3~5nmの粒子サイズ及び1wt%のチタニア当量の濃度を有する透明バインダー溶液を達成した。限られた貯蔵寿命を克服するために、チタン系バインダーは、コーティング配合物の調製時、無機バインダーの調製の24時間以内に使用した。
【0198】
[実施例3:ストック溶液の調製]
イソプロパノール(シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)、ロットK46556366515)とメトキシプロパノール(アルファ・エイサー(Alfa Aesar)、ロットQ14C027)との混合物にAl(NO3)3.9H2O(フルカ(Fluka)、ロットSZBG0830V)を5%の固体含有率で溶解することにより、Alストック溶液を調製した。その後、イソプロパノールを用いて溶液を2wt%のアルミナ当量にさらに希釈した。
【0199】
イソプロパノールを用いてIPA-ST-UP(日産化学、ロット111002)を2wt%の酸化物当量の濃度に希釈することにより、長尺状IPA-ST-UP粒子のストック溶液を調製した。このストック溶液を用いて表1のサンプルを調製した。
【0200】
pH1.64の氷酢酸/水混合物中にビンドジル粒子を希釈してから硝酸を添加してpH1.95にすることにより、長尺状ビンドジル15/750LSシリカ系粒子のストック溶液を調製した。イソプロパノールを用いて混合物を2wt%の無機酸化物の最終濃度にさらに希釈する。すなわち、2wt%の無機酸化物当量。ビンドジル15/750LSシリカ系は、アクゾ・ノーベル(オランダ)から得た。
【0201】
[実施例4:コーティング配合物の調製]
配合物はすべて、蓋付き500ml半透明HDPEボトル中に作製した。各成分の量は表1に示される。秤量されたコア-シェル溶液及び2-プロパノールを添加してボトルを振盪した。この混合物に無機バインダーを添加してボトルを振盪した。続いて、希釈されたAlストック溶液を添加し、最後に、長尺状粒子のストック溶液を添加した。
【0202】
[実施例5:サンプルのコーティング]
最大48時間経過したコーティング配合物を用いてコーティングを作製した。サンプルはすべて、コーティングの作製後48時間以内に汚した。2.5×11×11cmの内部サイズを有する矩形状容器に配合物を充填した。約200gのコーティング配合物を充填した。
【0203】
汚し試験に使用したコーティング付きサンプルの作製に使用したコーティング配合物は、最大48時間経過したものであった。
【0204】
使用したガラスは、10×10cmプレートにカットされた3.2mmオプチホワイト(Optiwhite)フロートガラスであった。コーティングの適用前にプレートを洗浄して乾燥させた。ディッピング条件は、18.5~19.5℃、相対湿度<20%rHであり、ディッピング速度は、表1に示されるように2.5~5.5mm/sでさまざまであった。使用したオプチホワイトフロートガラスは、オプチホワイトSであった。
【0205】
【表1】
【0206】
[実施例6:適用コーティング配合物から機能性コーティングへの変換]
650℃のオーブン中で3分間加熱することによりコーティング付きサンプルを硬化させた。この処理は、PVソーラーモジュール用カバーガラスに典型的に使用されるテンパリングプロセス時に実現される熱的変換に類似している。
【0207】
【表2】
【0208】
【表3】
【0209】
汚す前及び汚した後の比較サンプル(サンプル6)の透過率測定の例は、図1に示される。汚れは、透過率を劇的に低減することが観測される。図2には、本発明に係るサンプルの透過率測定が示される。この場合、汚す前及び汚した後の透過率は非常に近い。
【0210】
表2から、長尺状粒子が存在する場合、数日超の貯蔵寿命を有する安定なコーティング配合物を達成するために、wt%で0.3%当量超のAlを必要とすることが観測される。約1,2%当量のAlまでのアルミナ含有率の場合、Al含有率を増加させると光学的性質及びAS性能の増加がもたらされることが観測された(汚れ試験後の損失が少ない)。1,2%から、性質はプラトーに達するように思われる。より高いAlローディングでは、9,1%から43,7%まで光学性能の減少が観測された。一般的には、観測結果は表3にまとめられる。
【0211】
【表4】
【0212】
コア-シェル粒子と無機バインダーとを含有するコーティング配合物では、一様なコーティングをもたらす安定なコーティング配合物が達成されたが、同一コーティング配合物は、長尺状粒子を添加して何日か以内で開始されたコーティング配合物では、不安定になって一様でないコーティング及び沈降をもたらしたことが観測される。この配合物がさらにアルミニウム種を含有すると、得られるコーティング配合物は安定であり、達成されたコーティングは反射防止挙動及び防汚挙動の両方を示した。
【0213】
チタン種系及びケイ素種系の無機酸化物バインダーさらにはコア-シェル粒子を含有するコーティング配合物では、長尺状粒子もアルミニウム源も添加しなかった場合、コーティング配合物は不安定で一様でないコーティングをもたらすことが観測された。アルミニウム源を添加することにより、反射防止性を有するコーティングをもたらす安定な配合物が得られた。また長尺状粒子をさらに添加することにより、防汚性が達成された。
【0214】
[実施例7:開始ダスト除去]
汚れ除去が開始される風速は、ルーベン・カトリック大学(KU Leuven)の地理学研究グループ(Geography Research Group)の密閉環流風洞内でBelgium Brabrantian黄土を試験ダストとして用いで決定した。クリーンなコーティング付き及び非コーティング付き100mm×100mm×3mmピルキントン(Pilking)オプチホワイトガラススライドを風洞の大きな試験セクションの床上に試験セクションの入口から風下5m超の位置に0°のチルト角で水平に配置した。4g/mのダストを適用した。相対湿度を58~62%に維持する。その後、0m/sから8.6m/sまで風速を漸次増加させうるセクションにサンプルを移動させた。風速の各工程で、高精度天秤により残留ダスト量を測定し、開始ダスト除去を決定した。図3に結果のプロットが示される。本発明に係るサンプルzでは、開始ダスト除去は、非コーティング付きサンプル(表1のサンプルXXに対応するサンプルz)及び市販のDSM製の反射防止コーティングT2と比較して、驚くほどかなり低い風速であることが観測される。表4に結果がまとめられる。
【0215】
【表5】
【0216】
使用したオプチホワイトフロートガラスは、オプチホワイトSであった。
【0217】
[実施例8で使用した光学測定法(以下参照)]
透過率は、Optosol Transpec VIS-NIRを用いて400~1200nmで測定した。平均透過率及び最大T%(最大時λ)を決定した。結果は以下に列挙される。
【0218】
[汚れ測定法(汚れ試験)実施例8]
汚れ手順:コーティングの防汚性は、KSL Staubtechnik GMBHから市販されている石英A4粗砂(1~200μmのさまざまなサイズ)の市販のアリゾナ試験ダストを汚れ媒体として用いてテーバー振動摩耗試験機(モデル6160)により試験した。試験される100×100mmガラスプレートを最初に脱イオン水及び柔らかい布を用いてクリーニングし、実験室グレードのエタノールで濯ぎ、そして一晩乾燥させた。次いで、ガラスプレートのトップ表面がトレイ内のサンプルホルダーと同一の高さになるように、コーティング付きサンプルをテーバー振動テーブルのトレイ内に配置した。次いで、ブラシを用いて20gのアリゾナ試験ダストを全ガラスプレート上に穏やかに分散させた。汚れ手順(100サイクル/分のスピードで300サイクル、1サイクルは円形ドライブディスクの完全回転、すなわち、トレイの1回の完全前進後退運動として定義される)を実施した。次いで、試験サンプルをトレイから取り出し、穏やかにタップしてその表面上の過剰量のサンドを除去した。柔らかい布を用いて試験ガラスプレートのバック側を穏やかにワイプして、プレート下に固着するいずれのダストも除去した。試験環境の相対湿度は43%RHであり、温度は19.5℃であった。
【0219】
汚れ評価:コーティングの汚れの程度は、Optosol Transpec VIS-NIR分光光度計を用いて測定される汚した後の透過率の相対損失により決定した。その目的で、テーバー振動摩耗試験機により人工的に汚す前及び汚した後の透過率スペクトルを記録した。続いて、400~1200nmにわたる透過率の平均をスペクトルから確率した。記録された400~1200nmにわたるスペクトルの平均透過率値の得られた前後差に基づいて、汚れのレベルに関する結論つまり防汚コーティングの有効性を導出可能であった。
【0220】
[実施例8:適用コーティング配合物から機能性コーティングへの変換]
表1に列挙されるコーティング付きサンプルを室温で少なくとも15分間乾燥させ、その後、650℃のオーブン中で3分間加熱することにより硬化させた。
【0221】
この処理は、PVソーラーモジュール用カバーガラスに典型的に使用されるテンパリングプロセス時に実現される熱的変換に類似している。光学測定の結果は表5に列挙される。
【0222】
【表6】
【0223】
【表7】
【0224】
0(comp)は非コーティング付きガラスを意味する
*AS損失は、同一プレートの汚した後の透過率損失、すなわち、400~1200nmの平均T%に基づく汚す前のT-汚した後のTである
(comp):比較
【0225】
[実施例9:コーティング配合物の調製]
以上の実施例1に記載のようにコア-シェル粒子溶液の調製を行った。以上の実施例2に記載のように無機バインダーの調製を行った。
【0226】
[ストック溶液の調製:]
Al(NO:イソプロパノール(シグマアルドリッチ(Sigma Aldrich)、ロットK46556366515)とメトキシプロパノール(アルファ・エイサー(Alfa Aesar)、ロットQ14C027)との混合物にAl(NO.9H2O(フルカ(Fluka)、ロットSZBG0830V)を5%の固体含有率で溶解することにより、Alストック溶液を調製した。その後、イソプロパノールを用いて溶液を2wt%のアルミナ当量にさらに希釈した。
【0227】
Al(OiPr):Alストック溶液を次のように調製した:冷水浴中でMSA(70%)の添加により脱塩水を酸性化した。次いで、Al(OiPr)(アルファ・エイサー、ロットY09D018)を何回かに分けて添加し、粉末がすべて溶解するまで撹拌を続けた。Al含有率を2wt%のアルミナ当量に設定した。
【0228】
以上の実施例3に記載のように長尺状IPA-ST-UP粒子のストック溶液を調製した。
【0229】
以上の実施例4に記載のようにコーティング配合物の調製を行った。各成分の量は表6に示される。
【0230】
以上の実施例5に記載のようにサンプルのコーティング(コーティング配合物によるガラスのコーティング)を行った。
【0231】
表7に示される結果に対して、使用したガラスは、3.2mmオプチホワイトSフロートガラスであった。ガラスは、10×10cmプレートにカットした。コーティングの適用前にプレートを洗浄して乾燥させた。ディッピング条件は、22.5℃、相対湿度<30%rHであり、ディッピング速度は、表6に示されるように4.5~6.8mm/sでさまざまであった。
【0232】
表8に示される結果に対して、インターフロートMMガラス(テクスチャーガラス)を使用した。ディッピング速度は、約600nmの光学的厚さが得られるように設定した
【0233】
[適用コーティング配合物から機能性コーティングへの変換]
表6に列挙されるコーティング付きサンプルを室温で少なくとも15分間乾燥させ、その後、650℃のオーブン中で3.5分間加熱することにより硬化させた。この処理は、PVソーラーモジュール用カバーガラスに典型的に使用されるテンパリングプロセス時に実現される熱的変換に類似している。光学測定の結果は表7及び8に列挙される。
【0234】
光学測定法:「実施例8で使用した光学測定法」の下にあるものと同一(上記参照)。
【0235】
汚れ測定法(汚れ試験):「汚れ測定法(汚れ試験)実施例8」の下にあるものと同一(上記参照)。
【0236】
【表8】
【0237】
【表9】
【0238】
【表10】
図1
図2
図3
図4a
図4b
図4c
図4d