(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】フォトマスクの製造方法、フォトマスク、及び表示装置の製造方法
(51)【国際特許分類】
G03F 1/32 20120101AFI20230511BHJP
G03F 1/58 20120101ALI20230511BHJP
G03F 1/00 20120101ALI20230511BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G03F1/32
G03F1/58
G03F1/00 Z
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2020111317
(22)【出願日】2020-06-29
(62)【分割の表示】P 2016144998の分割
【原出願日】2016-07-24
【審査請求日】2020-06-30
(31)【優先権主張番号】P 2015189040
(32)【優先日】2015-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000113263
【氏名又は名称】HOYA株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100113343
【氏名又は名称】大塚 武史
(72)【発明者】
【氏名】吉田 光一郎
(72)【発明者】
【氏名】金台勲
(72)【発明者】
【氏名】李錫薫
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2007-0077098(KR,A)
【文献】特開2014-194531(JP,A)
【文献】特開2014-102496(JP,A)
【文献】特開平09-269590(JP,A)
【文献】特開2004-117728(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 1/20-1/84
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基板上に、透光部、第1透過制御部、及び第2透過制御部を含む転写用パターンを備えたフォトマスクの製造方法であって、
前記透明基板上に、所定の露光光透過率をもつ第1薄膜を形成したフォトマスクブランクスを用意する工程と、
前記第1薄膜をウェットエッチングすることにより、第1薄膜パターンを形成する、第1パターニング工程と、
前記第1薄膜パターンが形成された前記透明基板上に成膜された第2薄膜をウェットエッチングすることにより、第2薄膜パターンを形成する、第2パターニング工程とを含み、
前記第1薄膜の材料は、遷移金属シリサイドまたはその化合物であり、
前記透光部は、前記透明基板表面が露出してなり、
前記第1透過制御部は、前記透明基板上に、前記第1薄膜のみが形成された部分を有し、
前記第2透過制御部は、前記透明基板上に、前記第2薄膜のみが形成された部分を有し、
前記第1透過制御部と前記第2透過制御部の隣接部分は、前記第1薄膜の上に前記第2薄膜が積層し、
前記第2薄膜のみが形成された部分の第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、0<φ≦90を満たし、
前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、150≦φ≦210を満たすことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項2】
前記第1透過制御部を透過する露光光は、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たすことを特徴とする請求項1に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項3】
透明基板上に、透光部、第1透過制御部、及び第2透過制御部を含む転写用パターンを備えたフォトマスクの製造方法であって、
前記透明基板上に、所定の露光光透過率をもつ第1薄膜を形成したフォトマスクブランクスを用意する工程と、
前記第1薄膜をウェットエッチングすることにより、第1薄膜パターンを形成する、第1パターニング工程と、
前記第1薄膜パターンが形成された前記透明基板上に成膜された第2薄膜をウェットエッチングすることにより、第2薄膜パターンを形成する、第2パターニング工程とを含み、
前記第1薄膜の材料は、遷移金属シリサイドまたはその化合物であり、
前記透光部は、前記透明基板表面が露出してなり、
前記第1透過制御部は、前記透明基板上に、前記第1薄膜のみが形成された部分を有し、
前記第2透過制御部は、前記透明基板上に、前記第2薄膜のみが形成された部分を有し、
前記第1透過制御部と前記第2透過制御部の隣接部分は、前記第1薄膜の上に前記第2薄膜が積層し、
前記第2薄膜のみが形成された部分の第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、0<φ≦90を満たし、
前記第2透過制御部を透過する露光光は、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦80を満たすことを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【請求項4】
前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、φ≦90を満たすことを特徴とする請求項3に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項5】
前記第1透過制御部を透過する露光光は、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たすことを特徴とする請求項3又は4に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項6】
前記第1薄膜は、前記第2薄膜のエッチング剤に対して、耐性をもつ材料からなることを特徴とする請求項1乃至5のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項7】
前記第1薄膜は、露光光を一部透過する半透光膜であることを特徴とする請求項1乃至6のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項8】
前記第2薄膜は、露光光を一部透過する半透光膜であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項9】
前記第2薄膜は、遮光膜であることを特徴とする請求項1
又は2に記載のフォトマスクの製造方法。
【請求項10】
透明基板上に、透光部、第1透過制御部、及び第2透過制御部を含む転写用パターンを備えたフォトマスクであって、
前記転写用パターンは、所定の露光光透過率をもつ第1薄膜と、第2薄膜を含み、
前記透光部は、前記透明基板表面が露出してなり、
前記第1透過制御部は、前記透明基板上に、前記第1薄膜のみが形成された部分を有し、
前記第2透過制御部は、前記透明基板上に、前記第2薄膜のみが形成された部分を有し、
前記第1薄膜の材料は、遷移金属シリサイドまたはその化合物であり、
前記第1透過制御部と前記第2透過制御部の隣接部分は、前記第1薄膜の上に前記第2薄膜が積層し、
前記第2薄膜のみが形成された部分の第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、0<φ≦90を満たし、
前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、150≦φ≦210を満たすことを特徴とするフォトマスク。
【請求項11】
前記第1透過制御部を透過する露光光は、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たすことを特徴とする請求項10に記載のフォトマスク。
【請求項12】
透明基板上に、透光部、第1透過制御部、及び第2透過制御部を含む転写用パターンを備えたフォトマスクであって、
前記転写用パターンは、所定の露光光透過率をもつ第1薄膜と、第2薄膜を含み、
前記透光部は、前記透明基板表面が露出してなり、
前記第1透過制御部は、前記透明基板上に、前記第1薄膜のみが形成された部分を有し、
前記第2透過制御部は、前記透明基板上に、前記第2薄膜のみが形成された部分を有し、
前記第1薄膜の材料は、遷移金属シリサイドまたはその化合物であり、
前記第1透過制御部と前記第2透過制御部の隣接部分は、前記第1薄膜の上に前記第2薄膜が積層し、
前記第2薄膜のみが形成された部分の第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、0<φ≦90を満たし、
前記第2透過制御部を透過する露光光は、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦80を満たすことを特徴とするフォトマスク。
【請求項13】
前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、φ≦90を満たすことを特徴とする請求項12に記載のフォトマスク。
【請求項14】
前記第1透過制御部を透過する露光光は、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たすことを特徴とする請求項12又は13に記載のフォトマスク。
【請求項15】
前記第1薄膜は、前記第2薄膜のエッチング剤に対して、耐性をもつ材料からなることを特徴とする請求項10乃至14のいずれか一項に記載のフォトマスク。
【請求項16】
前記第1薄膜は、露光光を一部透過する半透光膜であることを特徴とする請求項10乃至15のいずれか一項に記載のフォトマスク。
【請求項17】
前記第2薄膜は、露光光を一部透過する半透光膜であることを特徴とする請求項10乃至16のいずれか一項に記載のフォトマスク。
【請求項18】
前記第2薄膜は、遮光膜であることを特徴とする請求項10
又は11に記載のフォトマスク。
【請求項19】
請求項1乃至9のいずれか一項に記載のフォトマスクの製造方法により得られるフォトマスク、または、請求項10乃至18のいずれか一項に記載のフォトマスクを用意し、露光装置を用いて、前記転写用パターンを被転写体に転写する工程を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液晶パネルや有機ELパネルに代表される表示装置の製造に有用な多階調のフォトマスク及びその製造方法、並びに、当該多階調のフォトマスクを用いた表示装置の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、液晶パネルや有機ELパネルに代表される表示装置には、より一層の微細化が要求されるようになってきており、これらを製造するためのフォトマスクのパターンにおいても、微細化傾向が顕著になっている。とくに、表示装置の微細化が望まれる理由は、画素密度の増加、ディスプレイの明るさの向上、反応速度の向上といった画像品質の高度化のみならず、省エネルギーの観点からも、有利な点があることに関係している。また、このような微細化の動向とともに、フォトマスクに対する品質要求も高まっている。
【0003】
従来、透明基板上に形成された遮光膜及び半透光膜がそれぞれパターニングされてなる転写用パターンを備えた多階調フォトマスク(グレートーンマスク)が知られている。この多階調フォトマスクは、表示装置などの製造において有用に使用される。
例えば下記特許文献1には、ハーフトーン膜タイプのグレートーンマスク及びその製造方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
この多階調フォトマスクとは、転写用パターンに、遮光部、透光部、および半透光部といった、光透過率の異なる3つ以上の部分を有し、これによって、被転写体上に、複数の残膜厚を有するレジストパターンを形成しようとするものである。このレジストパターンは、被転写体上に形成された薄膜の加工に際してのエッチングマスクとして利用される場合には、第1エッチングに次いで、レジストパターンを減膜することにより、異なる形状のエッチングマスクとして機能し、第2のエッチングができることから、多階調フォトマスクは、複数枚のフォトマスクに相当する機能をもつフォトマスクとも言えるものである。このため、主として表示装置の製造に必要なフォトマスクの枚数を低減することができものとして、生産効率向上に寄与している。
【0006】
上記多階調フォトマスクは、遮光部、透光部のほかに、露光光を一部透過する半透光膜を用いた半透光部をもつことから、この部分の光透過率や透過光に対する位相特性などを適宜制御することにより、被転写体上に形成されるレジストパターンの部分的な厚みや、その断面形状などを変化させることができる。
【0007】
また、上記特許文献1の多階調フォトマスクは、パターニングを施された複数の膜(遮光膜や、半透光膜など)が積層してなる転写用パターンをもつ。このような多階調フォトマスクは、これを露光時に使用する光に対する所望の透過率や位相特性を設定し、これに適合する膜材料や膜厚を選択し、成膜条件を整えることにより、所望の光特性をもつ多階調フォトマスクが安定して設計できる利点がある。
【0008】
ここで、従来技術である特許文献1に記載の方法を説明する。
特許文献1に記載の方法では、
図3に記載の工程によって、
図3(i)に示すグレートーンマスク200を製造する。具体的には、まず、透明基板101上に遮光膜102を形成し、その上にポジ型レジストを塗布してレジスト膜103を形成したフォトマスクブランク100を用意する(
図3(a)参照)。
【0009】
そしてこれに、レーザ描画機などを用いて描画し(第1描画)、現像する。これによって半透光部を形成する領域(
図3のA領域)ではレジスト膜が除去され、遮光部を形成する領域(
図3のB領域)及び透光部を形成する領域(
図3のC領域)には、レジスト膜が残存するレジストパターン103aが形成される(
図3(b)参照)。
【0010】
次に、形成されたレジストパターン103aをマスクとして、遮光膜102をエッチング(第1エッチング)して、遮光部(B領域)及び透光部(C領域)に対応する領域に遮光膜パターン102aを形成する(
図3(c)参照)。そして、レジストパターン103aを除去する(
図3(d)参照)。
以上説明した1回目のフォトリソグラフィ工程により、半透光部に対応する領域(A領域)が画定される。
【0011】
次に、以上により得られた遮光膜パターン付き基板の全面に半透光膜104を成膜する(
図3(e)参照)。これにより、A領域の半透光部が形成される。
更に、半透光膜104の全面にポジ型レジストを塗布してレジスト膜105を形成し(
図3(f)参照)、描画を行う(第2描画)。現像後に、透光部(C領域)ではレジスト膜105が除去され、遮光部(B領域)及び半透光部(A領域)にレジスト膜が残存するレジストパターン105aが形成される(
図3(g)参照)。
【0012】
これをマスクとして、透光部となるC領域の半透光膜104と遮光膜パターン102aをエッチング(第2エッチング)して除去する(
図3(h)参照)。ここで、半透光膜と遮光膜のエッチング特性が同一または近似しているものとすることで、連続的にエッチングが可能である。そして、上記第2エッチングの後、レジストパターン105aを除去してグレートーンマスク200が完成する(
図3(i)参照)。
【0013】
以上説明した方法により、2回のリソグラフィ工程(描画、現像、エッチング)によって、遮光膜及び半透光膜がそれぞれパターニングされ、遮光部、透光部、及び半透光部を有するグレートーンマスクが製造される。
【0014】
ところで、液晶や有機ELを搭載した表示装置においては、画像の明るさ、鮮鋭性、反応速度、消費電力の低減、更にはコストダウンなど、多くの面で、益々の技術の改良が要求されている。このような状況下、これら表示装置を製造するためのフォトマスクにも、従来以上に微細なパターンを精緻に形成するだけでなく、低コストで被転写体(パネル基板など)にパターンを転写できる機能が求められている。また、必要とされる転写用パターンのデザインも多様化し、複雑化している。
【0015】
こうした状況下、本発明者らの検討により、以下の新たな課題が見出された。
上記の特許文献1の工程によると、第2エッチングにて、半透光膜と遮光膜の2つの膜を連続して1工程でエッチング除去している(
図3(h)参照)。ここで、例えば、遮光膜がクロムを主成分とする膜であり、半透光膜がクロム化合物からなるものであるとし、前者の遮光膜のエッチング必要時間をX(例えば50秒)、後者の半透光膜のエッチング必要時間をY(例えば10秒)とすると、第2エッチングでは、X+Yのエッチング時間(例えば60秒)が必要となり、遮光膜又は半透光膜の単一膜をエッチングする場合に比べて長時間となる。
【0016】
なお、ここでエッチング方法としては、ウェットエッチングが適用される。ウェットエッチングは、表示装置製造用フォトマスクには極めて有利に適用できるからである。これは、比較的大面積(一辺が例えば300mm以上)であり、多様なサイズの基板が存在する表示装置製造用フォトマスクにとって、ウェットエッチングは、真空装置を必須とするドライエッチングに比べて、設備的にも効率的にも大変有利であるためである。
【0017】
また、ウェットエッチングは、等方エッチングの性質が強く、被エッチング膜の深さ方向のみならず、被エッチング膜面と平行な方向にもエッチング(サイドエッチング)が進行する。一般的に、エッチング時間が長く必要である場合には、エッチング量の面内ばらつきが拡大する傾向があるから、ウェットエッチングの時間が長くなるにつれて、サイドエッチング量が増加し、その量の面内におけるばらつきも増加する。このため、上記の第2エッチングにて、半透光膜と遮光膜の2つの膜を連続して1工程でエッチング除去する場合、形成される転写用パターンの線幅または寸法(CD:Critical Dimension、以下パターンの線幅または寸法の意味で使う。)精度が劣化しやすい。すなわち、上記X+Y(秒)を必要とする第2エッチングには、この点において問題がある。また、エッチング時間の長さに伴って、エッチング剤の使用量も増加し、重金属を含む廃液処理の負担も増加する。
【0018】
また、転写用パターンのデザインが複雑化したり、微細寸法(CD)のパターンがある場合には、更に、以下のような問題が生じる可能性に、本発明者らは着目した。
【0019】
上記特許文献1の方法を示した
図3(i)では、半透光部と遮光部が隣接する部分を含むパターンが形成されているが、こうしたパターンの他に、最近の表示装置製造用のフォトマスクの転写用パターンには、より複雑なものが含まれる。例えば、前記の隣接部分に加えて透光部と半透光部が隣接する部分をもつ転写用パターンなどのニーズがある。
【0020】
そこで例えば、上記
図3に示された転写用パターンに、更に透光部と半透光部が隣接する部分がある場合を考える(
図4(i)参照)。なお、
図4(f)~(i)の工程(第2フォトリソ工程)は、
図3(f)~(i)にそれぞれ対応する。
ここで、第2エッチングを示す
図4(h)のステップでは、前述の
図3(h)のステップと同様、半透光膜104と遮光膜パターン102aを、連続的にエッチング除去する部分(N)が存在する。このため、エッチング深さが大きいことに由来してエッチング時間が長くなり、更に、エッチング深さに応じて、サイドエッチング量も大きくなるため、形成されるパターン寸法(CD)に狂いが生じやすく、また、面内のCDエラーの分布も大きくなりやすい(
図4(h’)参照)。
【0021】
更に、
図4(h)のステップでは、上記の半透光膜104と遮光膜パターン102aを連続してエッチング除去する部分(N)と、半透光膜104のみがエッチング除去される部分(K)とが生じる。このとき、第2エッチングの必要時間の設定が困難になる。何故なら、後者のKの部分にT(秒)のエッチング時間を必要とするとき、前者のNの部分では、T+α(秒)に相当するエッチング時間が必要となる。
【0022】
このため、
図4(h)のステップでは、実際には、Nの部分のエッチングが終了するとき、Kの部分ではエッチングが過剰に進み、レジストパターン105aの下の半透光膜104にサイドエッチングが進行する(
図4(h’)参照)。そして、この結果、形成された半透光膜パターン104aの寸法はレジストパターン105aの寸法に対し、Kの部分において、W(μm)小さくなり、パターン寸法(CD)に狂いが生じてしまい、面内のCDエラーの分布も大きくなりやすい(
図4(i’)参照)。
【0023】
また、このような多階調フォトマスクに用いる半透光膜は、光透過率の管理が極めて重要であるところ、
図3の従来技術の方法では、半透光膜が成膜される際には、既に透明基板上に遮光膜からなるパターンが存在するため、成膜された半透光膜の光透過率の測定は容易でない。特に、表示装置製造用のフォトマスクは、面積が大きい(例えば一辺300mm以上の四角形)ため、成膜にも大型の装置(スパッタ装置など)を用いるが、成膜材料を面内均一に堆積することにも困難がある。例えば、スパッタターゲットとの相対位置などによって、面内に膜厚の分布が生じることがある。この膜厚は、正確に測定し、この傾向を正しく把握すれば、後述の本発明の製造方法における第2エッチング(遮光膜のパターニング)によって、影響を相殺することも可能であるが、
図3に記載の従来技術の方法では、面内の各位置における半透光膜の透過率を正確に測定することが困難であるという課題がある。
【0024】
従って、
図3の従来技術の方法では、より微細で、より高いCD精度、透過率精度をあわせ持つ多階調フォトマスクを製造しようとする場合には課題が残ることがわかった。
そこで、本発明は、より微細で、より高いCD精度、透過率精度をあわせ持つ多階調フォトマスクを製造することができるフォトマスクの製造方法、フォトマスク、及び当該フォトマスクを用いた表示装置の製造方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討した結果、以下の構成を有する発明によって上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の構成を有する。
【0026】
(構成1)
透明基板上に、透光部、第1透過制御部、及び第2透過制御部を含む転写用パターンを備えたフォトマスクの製造方法であって、前記透明基板上に、所定の露光光透過率をもつ第1薄膜を形成したフォトマスクブランクスを用意する工程と、前記第1薄膜をエッチングすることにより、第1薄膜パターンを形成する、第1パターニング工程と、前記第1薄膜パターンが形成された前記透明基板上に、第2薄膜を形成し、前記第2薄膜をエッチングすることにより、第2薄膜パターンを形成する、第2パターニング工程とを含み、前記第2パターニング工程においては、前記第2薄膜のみをエッチングすることを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【0027】
(構成2)
前記透光部は、前記透明基板表面が露出してなり、前記第1透過制御部は、前記透明基板上に、前記第1薄膜のみが形成された部分を有し、前記第2透過制御部は、前記透明基板上に、前記第2薄膜のみが形成された部分を有することを特徴とする構成1に記載のフォトマスクの製造方法。
(構成3)
前記第1薄膜は、前記第2薄膜のエッチング剤に対して、耐性をもつ材料からなることを特徴とする構成1又は2に記載のフォトマスクの製造方法。
【0028】
(構成4)
前記第1薄膜は、前記第2薄膜のエッチング剤によってエッチングされる材料からなることを特徴とする構成1又は2に記載のフォトマスクの製造方法。
(構成5)
前記第1パターニング工程の後、前記第2薄膜を形成する前に、前記第1薄膜パターンが形成された前記透明基板上に、エッチングストッパ膜を形成する工程を含むことを特徴とする構成4に記載のフォトマスクの製造方法。
【0029】
(構成6)
前記第2パターニング工程の後、前記透光部、又は、前記透光部と前記第1透過制御部の前記エッチングストッパ膜を除去する工程を有することを特徴とする構成5に記載のフォトマスクの製造方法。
(構成7)
前記第1薄膜は、露光光を一部透過する半透光膜であることを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【0030】
(構成8)
前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、φ≦90を満たすことを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
(構成9)
前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、φ≦90を満たし、かつ、前記第1透過制御部の光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たすことを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【0031】
(構成10)
前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、150≦φ≦210を満たすことを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
(構成11)
前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、150≦φ≦210を満たし、かつ、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たすことを特徴とする構成1乃至6のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【0032】
(構成12)
前記第2薄膜は、露光光を一部透過する半透光膜であることを特徴とする構成1乃至11のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
(構成13)
前記第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、0<φ≦90を満たすことを特徴とする構成1乃至11のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【0033】
(構成14)
前記第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、0<φ≦90を満たし、かつ、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦80を満たすことを特徴とする構成1乃至11のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
(構成15)
前記第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、150<φ≦210を満たし、かつ、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たすことを特徴とする構成1乃至11のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
【0034】
(構成16)
前記第2薄膜は、遮光膜であることを特徴とする構成1乃至11のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
(構成17)
前記第2薄膜の表面部分には、光の反射を低減する反射低減層が設けられていることを特徴とする構成16に記載のフォトマスクの製造方法。
【0035】
(構成18)
前記フォトマスクブランクスは、前記第1薄膜の上に、追加構成膜とレジスト膜を有することを特徴とする構成1乃至17のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法。
(構成19)
前記追加構成膜と前記レジスト膜との密着性は、前記第1薄膜と前記レジスト膜との密着性よりも高いことを特徴とする構成18に記載のフォトマスクの製造方法。
【0036】
(構成20)
前記第1パターニング工程の前に、前記追加構成膜をエッチングして追加構成膜パターンを形成する予備パターニング工程を有し、前記第1パターニング工程では、前記追加構成膜パターンをマスクとして、前記第1薄膜をエッチングすることを特徴とする構成18又は19に記載のフォトマスクの製造方法。
(構成21)
前記第1パターニング工程の後、前記第2パターニング工程の前に、前記追加構成膜パターンを除去することを特徴とする構成20に記載のフォトマスクの製造方法。
【0037】
(構成22)
透明基板上に、透光部、第1透過制御部、及び第2透過制御部を含み、前記第1透過制御部と前記第2透過制御部が隣接する隣接部を含む転写用パターンを備えたフォトマスクの製造方法であって、前記透明基板上に、所定の露光光透過率をもつ第1薄膜を形成したフォトマスクブランクスを用意する工程と、前記第1透過制御部となる領域に第1レジストパターンを形成して、前記第1薄膜をエッチングすることにより、第1薄膜パターンを形成する、第1パターニング工程と、前記第1薄膜パターンが形成された前記透明基板上に、第2薄膜を形成する成膜工程と、前記第2透過制御部となる領域に第2レジストパターンを形成して、前記第2薄膜をエッチングすることにより、第2薄膜パターンを形成する、第2パターニング工程とを含み、前記第2パターニング工程においては、前記隣接部において、前記第2レジストパターンが、前記第1薄膜パターンと積層する、積層部分が形成され、前記第2レジストパターンを用いて、前記第2薄膜のみをエッチングすることを特徴とするフォトマスクの製造方法。
【0038】
(構成23)
前記透光部は、前記透明基板表面が露出してなり、前記第1透過制御部は、前記透明基板上に、前記第1薄膜のみが形成された部分を含み、前記第2透過制御部は、前記透明基板上に、前記第2薄膜のみが形成された部分を含むことを特徴とする構成22に記載のフォトマスクの製造方法。
(構成24)
前記積層部分の幅M1は、0.5~2μmの範囲であることを特徴とする構成22又は23に記載のフォトマスクの製造方法。
【0039】
(構成25)
透明基板上に、透光部、第1透過制御部、及び第2透過制御部を含む転写用パターンを備えたフォトマスクであって、前記転写用パターンは、所定の露光光透過率をもつ第1薄膜と、第2薄膜を含み、前記透光部は、前記透明基板表面が露出してなり、前記第1透過制御部は、前記透明基板上に、前記第2薄膜が形成されず、前記第1薄膜が形成されてなり、前記第2透過制御部は、前記透明基板上に、少なくとも前記第2薄膜が形成されてなり、前記第1透過制御部と前記第2透過制御部の境界は、前記第1薄膜の被エッチング断面が形成されずに、前記第2薄膜の被エッチング断面が形成されていることを特徴とするフォトマスク。
【0040】
(構成26)
前記透光部は、前記透明基板表面が露出してなり、前記第1透過制御部は、前記透明基板上に、前記第1薄膜のみが形成された部分を有し、前記第2透過制御部は、前記透明基板上に、前記第2薄膜のみが形成された部分を有することを特徴とする構成25に記載のフォトマスク。
(構成27)
前記第1薄膜は、前記第2薄膜のエッチング剤に対して、耐性をもつ材料からなることを特徴とする構成25又は26に記載のフォトマスク。
【0041】
(構成28)
前記第1薄膜は、前記第2薄膜のエッチング剤によってエッチングされる材料からなり、かつ、前記第2透過制御部は、エッチングストッパ膜と、前記第2薄膜が、この順に積層されている部分を有することを特徴とする構成25に記載のフォトマスク。
(構成29)
前記第2透過制御部の、前記第1透過制御部に隣接するエッジ部分には、前記第1薄膜と前記第2薄膜の積層部分があることを特徴とする構成25乃至28のいずれかに記載のフォトマスク。
【0042】
(構成30)
前記積層部分の幅M2は、0.5~2μmの範囲であることを特徴とする構成29に記載のフォトマスク。
(構成31)
前記第1薄膜が半透光膜、前記第2薄膜が遮光膜であることを特徴とする構成25乃至30のいずれかに記載のフォトマスク。
【0043】
(構成32)
透明基板上に、透光部、第1透過制御部、及び第2透過制御部を含む転写用パターンを備えたフォトマスクであって、前記転写用パターンは、所定の露光光透過率をもつ第1薄膜からなる第1薄膜パターンと、第2薄膜からなる第2薄膜パターンを含み、前記透光部は、前記透明基板表面が露出してなり、前記第1透過制御部は、前記透明基板上に、前記第1薄膜パターンのみが形成された部分を有し、前記第2透過制御部は、前記透明基板上に、前記第2薄膜パターンのみが形成された部分を有し、前記第1透過制御部と前記第2透過制御部に挟まれた、前記第1薄膜パターンと前記第2薄膜パターンが積層する積層部分を有することを特徴とするフォトマスク。
【0044】
(構成33)
前記積層部分の幅M2は、0.5~2μmの範囲であることを特徴とする構成32に記載のフォトマスク。
(構成34)
前記第1薄膜パターン及び前記第2薄膜パターンのエッジは、前記第1薄膜及び前記第2薄膜の被ウェットエッチング断面をそれぞれ有することを特徴とする構成32又は33に記載のフォトマスク。
【0045】
(構成35)
前記第1薄膜は、露光光を一部透過する半透光膜であることを特徴とする構成32乃至34のいずれかに記載のフォトマスク。
(構成36)
前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、φ≦90を満たすことを特徴とする構成32乃至34のいずれかに記載のフォトマスク。
【0046】
(構成37)
前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、φ≦90を満たし、かつ、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たすことを特徴とする構成32乃至34のいずれかに記載のフォトマスク。
(構成38)
前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、150≦φ≦210を満たすことを特徴とする構成32乃至34のいずれかに記載のフォトマスク。
【0047】
(構成39)
前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、150≦φ≦210を満たし、かつ、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たすことを特徴とする構成32乃至34のいずれかに記載のフォトマスク。
(構成40)
前記第2薄膜は、遮光膜であることを特徴とする構成32乃至39のいずれかに記載のフォトマスク。
【0048】
(構成41)
前記第2薄膜は、露光光を一部透過する半透光膜であることを特徴とする構成32乃至39のいずれかに記載のフォトマスク。
(構成42)
前記第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、0<φ≦90を満たすことを特徴とする構成32乃至39のいずれかに記載のフォトマスク。
【0049】
(構成43)
前記第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、0<φ≦90を満たし、かつ、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦80を満たすことを特徴とする構成32乃至39のいずれかに記載のフォトマスク。
(構成44)
前記第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、150<φ≦210を満たし、かつ、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たすことを特徴とする構成32乃至39のいずれかに記載のフォトマスク。
【0050】
(構成45)
前記転写用パターンが、表示装置製造用のパターンであることを特徴とする構成25乃至44のいずれかに記載のフォトマスク。
(構成46)
構成1乃至24のいずれかに記載のフォトマスクの製造方法により得られるフォトマスク、または、構成25乃至44のいずれかに記載のフォトマスクを用意し、露光装置を用いて、前記転写用パターンを被転写体に転写する工程を含むことを特徴とする表示装置の製造方法。
【発明の効果】
【0051】
本発明によれば、第1薄膜、第2薄膜のそれぞれのエッチング工程において、それぞれの膜のみをエッチングするため、積層された複数膜を連続してエッチングする場合に比べて、エッチング時間の設定が短いため、サイドエッチングによるパターン寸法(CD)変動を低減することができる。特に、すべてのエッチング工程で、各々単一の膜をエッチングすれば、エッチング所要時間は、予め、膜質と膜厚によって算出したものを適用できるため、サイドエッチングによる寸法ばらつきを、最小化することができる。更に、本発明のフォトマスクの構成を採用すれば、第1透過制御部、及び第2透過制御部の光学特性(例えば透過率)の設計や管理がより簡便であり、正確であるため、高精細で省エネルギーを実現する高スペックの表示装置の製造には、大きな意義がある。
すなわち、本発明によれば、より微細で、より高いCD精度、光学物性(透過率など)精度をあわせ持つフォトマスクを製造することができるフォトマスクの製造方法、及びフォトマスクを提供することができる。
更に、本発明によれば、当該フォトマスクを用いて表示装置を製造することにより、高精細で省エネルギーを実現する高スペックの表示装置の製造が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0052】
【
図1】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1の実施形態の工程を示す図である。
【
図2】本発明に係るフォトマスクの製造方法の第2の実施形態の工程を示す図である。
【
図3】先行文献に開示された従来のフォトマスクの製造工程を示す図である。
【
図4】従来技術の課題を説明するための従来のフォトマスクの製造工程を示す参考図である。
【発明を実施するための形態】
【0053】
以下、図面を参照しながら、本発明を実施するための形態について詳述する。
[第1の実施形態]
本発明に係るフォトマスクの製造方法は、上記構成1にあるように、透明基板上に、透光部、第1透過制御部、及び第2透過制御部を含む転写用パターンを備えたフォトマスクの製造方法であって、前記透明基板上に、所定の露光光透過率をもつ第1薄膜を形成したフォトマスクブランクスを用意する工程と、前記第1薄膜をエッチングすることにより、第1薄膜パターンを形成する、第1パターニング工程と、前記第1薄膜パターンが形成された前記透明基板上に、第2薄膜を形成し、前記第2薄膜をエッチングすることにより、第2薄膜パターンを形成する、第2パターニング工程とを含み、前記第2パターニング工程においては、前記第2薄膜のみをエッチングすることを特徴とするものである。
以下に説明する第1の実施形態では、上記の第1透過制御部は、露光光を一部透過する半透光部、第2透過制御部を遮光部とする。そして、上記の第1薄膜を半透光膜、第2薄膜を遮光膜とする。
【0054】
図1は、本発明に係るフォトマスクの製造方法の第1の実施形態の工程を示す図である。
以下、各工程について順に説明する。
まず、透明基板1上に、所定の露光光透過率をもつ半透光膜2を形成したフォトマスクブランクス(半透光膜付き基板)10を用意する(
図1(a)参照)。
【0055】
ここで、上記透明基板1としては、石英ガラスなどからなる透明材料を平坦かつ平滑に研磨したものを使用する。表示装置製造用のフォトマスクに使用する透明基板としては、主表面が一辺300mm以上の四角形であって、厚みが5~13mmであることが好ましい。
この透明基板1の一方の主表面には、スパッタ法などの公知の成膜手段により、半透光膜2を成膜する。この半透光膜2は、フォトマスクを露光するときに用いる露光光に対して、所望の透過率をもつように、あらかじめその材料と膜厚を決定しておくことができる。
【0056】
上記露光光としては、例えば液晶用露光装置などがもつ、i線、h線、およびg線を含む光源を用いることができる。したがって、透過率の基準は、これらの波長域の光に対するものとすることができ、一般には、これらに含まれる代表波長(ここではi線とする)に対する数値として表記することができる。
【0057】
そして、上記半透光膜2の光透過率Tfは、i線に対して、5~60%(透明基板を100%とする)であることが好ましい。更には、10~40%であることが好ましい。
【0058】
ここで、Tfとは、上記のとおり、用いる半透光膜2の光透過率である。半透光膜2に微細パターンが形成されてしまうと、周囲に配置された遮光部や透光部による光の回折、干渉の影響を受け、半透光部の実効的な光透過率は、成膜時と異なることがあるが、ここでは、周囲のパターンによる光の回折、干渉の影響を受けない、当該膜固有の透過率をいうものとする。半透光膜2が積層構造であれば、その積層としての固有の透過率とする。
【0059】
また、上記半透光膜2は、露光光の代表波長に対して、所望の位相シフト作用をもつものとすることができる。多階調フォトマスクとして、被転写体上に複数の残膜厚みをもつレジストパターンを形成することを考慮したとき、半透光膜2のもつ位相シフト量(φ)は、0<φ≦90度であることが好ましく、更には、5≦φ≦60度であることが好ましい。これは多階調フォトマスクの半透光部と透光部に対応する位置で、レジストパターンの不要な突起(ポジレジストの場合)の生成を防止するためである。
勿論、位相シフト作用によって、被転写体上に形成されるレジストパターンの形状を制御するため、150≦φ≦210度程度としてもよく、又は、60≦φ≦120度としてもよい。
【0060】
上記半透光膜2の材料は、例えば、Si、Cr、Ta、Zrなどを含有する膜とすることができ、これらの酸化物、窒化物、炭化物などから適切なものを選択することができる。Si含有膜としては、Siの化合物(SiONなど)、又は遷移金属シリサイド(MoSiなど)や、その化合物を用いることができる。MoSiの化合物としては、MoSiの酸化物、窒化物、酸化窒化物、酸化窒化炭化物などが例示される。
【0061】
また、上記半透光膜2の材料をCr含有膜とする場合、Crの化合物(酸化物、窒化物、炭化物、酸化窒化物、炭化窒化物、酸化窒化炭化物)を使用することができる。
【0062】
なお、本実施形態では、上記半透光膜2は、後述する遮光膜5との間で、相互にエッチング選択性がある(エッチング特性が異なる)ことが望ましい。すなわち、半透光膜2は、遮光膜5のエッチング剤(本実施形態では、ウェットエッチングを適用するので、具体的にはエッチング液である)に対して、耐性があることが好ましい。ここで耐性とは、半透光膜2が、遮光膜5のエッチング液に対して、遮光膜5との間のエッチングレート比が、1/50以下であり、好ましくは1/100以下であることが望まれる。この観点から、例えば、遮光膜5にCrを含有する膜を使用するのであれば、上記半透光膜2はSi系(たとえば、MoSiを含むもの)を適用することができる。或いは、その逆とすることができる。
【0063】
上記半透光膜2の成膜は、スパッタ法などの公知の方法、装置を適用することができる。半透光膜2の膜厚は、フォトマスクを露光するときに用いる露光光に対して、所望の透過率をもつように、あらかじめ決定した膜厚とする。
【0064】
なお、半透光膜2の成膜後に、面内に適切な数の測定点を設定して、光透過率(絶対値及びその面内分布)を測定しておくことが好ましい。測定には例えば、分光光度計を用いることができる。成膜後の半透光膜2には、成膜装置や成膜条件に由来して、基板主表面の位置によって、何らかの膜厚分布傾向が生じる場合があるので、測定によって得たデータを保管し、製品保証の目的や、後続の工程での描画データに反映させるなどの用途に用いることができる。このように半透光膜の透過率管理がより簡便であり、正確であるため、透過率精度を上げることができる。
【0065】
次に、用意した上記のフォトマスクブランクス10の表面に、レジスト膜3を塗布形成し、レジスト付ブランクスとする。所定のパターンを描画4(第1描画)する(
図1(b)参照)。なお、必要に応じて、上記半透光膜2の表面に対し、レジスト膜3との密着性を向上させる表面処理を施すこともできる。
また、半透光膜2とレジスト膜との密着性を補うため、これらの間に、更に追加的に構成膜を配置してもよい。
この構成膜とレジスト膜との密着性は、半透光膜とレジスト膜との密着性よりも高くなるように、構成膜の素材を選択することができる。すなわち、該構成膜を配置することで、それと直接接触するレジスト膜及び半透光膜の両者との密着性を良好なものとすることができる。追加構成膜の材料は、レジスト膜との密着性が、半透光膜とレジスト膜との密着性より高いものとする。例えば、Cr化合物とすることができる。
【0066】
レジスト膜3の塗布形成は、スリットコータ、スピンコータなど、公知のものを使用することができる。ポジ型、ネガ型のいずれのレジストでも適宜使用できるが、ここでは、ポジ型を使用した例で説明する。
【0067】
第1パターニング工程を実施する。まず、塗布形成したレジスト膜3に対して、描画装置を用いて、所望のパターンに基づいた描画データによって描画4する。描画装置は、電子線、又は、レーザを適用したものが使用できるが、表示装置製造用フォトマスクとしては、レーザ描画が有用に使用できる。
【0068】
次に、描画された上記レジスト膜3を現像し、レジストパターン3a(第1レジストパターン)を形成する(
図1(c)参照)。
【0069】
次いで、形成された上記レジストパターン3aをエッチングマスクとして、半透光膜2をウェットエッチング(第1エッチング)することにより、半透光膜パターン2aを形成する(
図1(d)参照)。ここで、エッチング対象は半透光膜2のみであるので、予め把握したエッチングレートを参照し、エッチング終点を正確に設定できる。
【0070】
そして、残存する上記レジストパターン3aを剥離除去する(
図1(e)参照)。
ここで、必要に応じて半透光膜パターン2aのパターン寸法(CD)の測定を行う。パターンエッジが半透光膜のみなので、比較的容易に測定が行える。
【0071】
なお、半透光膜2とレジスト膜3の間に、追加の構成膜を形成した場合には、レジストパターン3をエッチングマスクとして、該構成膜をウェットエッチング(予備エッチング)し、形成された追加の構成膜パターンをエッチングマスクとして、半透光膜2をウェットエッチング(第1エッチング)することにより、半透光膜パターン2aを形成することができる。
この場合、以下の第2パターニング工程の前に、上記追加の構成膜パターンを除去することが好ましい。
【0072】
次に、主表面に上記半透光膜パターン2aが形成された透明基板1上の全面に、遮光膜5を成膜する(
図1(f)参照)。ここでも、上記半透光膜2の成膜の場合と同様の、既存の成膜装置を適用することができる。
【0073】
上記遮光膜5の材料としては、上記半透光膜2の材料として挙げたものと同様のものから選択できる。あるいは上述のCr、Siなどの金属の単体でもかまわない。更に、遮光膜の表面部分には、光の反射を低減(抑制)する反射低減層を設けてもよい。
【0074】
なお、前にも説明したように、本実施形態では、上記遮光膜5は、上記半透光膜2に用いた材料に対して、エッチング特性が異なるものを選択する。例えば、遮光膜5は、半透光膜2のエッチング液に対して、半透光膜2との間のエッチングレート比が、1/50以下であり、好ましくは1/100以下であることが望ましい。従って、例えば、半透光膜2にSi含有の材料を用い、遮光膜5にはCr含有の材料を用いること、或いはその逆とすることなどができる。
【0075】
また、上記遮光膜5の膜厚は、遮光性が十分に発揮できること、及び、後述のエッチングに過大な時間を要しないことを考慮して設定する。具体的には、光学濃度ODが3以上、好ましくは4以上、例えば、4≦OD≦6とすることができる。
【0076】
次に、上記遮光膜5上に、レジスト膜6(ここでもポジ型とする)を塗布形成し、所定のパターンを描画7(第2描画)する(
図1(g)参照)。描画方法は上記の第1描画の場合と同様である。
但し、上記半透光膜2の成膜後に測定して得た、面内の透過率分布データに、許容できない程度のばらつきがあり、これを遮光膜5のパターンによって修正しようとする場合には、第2描画用の描画データを加工することができる。これは、例えば遮光部が隣接する微細な半透光部においては、半透光部を透過する露光光の透過強度が下がる傾向がある。
この原理を利用し、例えば、設計値より透過率が低い領域の半透光部に対しては、その寸法を設計値より大きくすることで、露光光の透過強度を増加させる方向に補正することができる。
【0077】
次いで、描画された上記レジスト膜6を現像し、レジストパターン6a(第2レジストパターン)を形成する(
図1(h)参照)。
【0078】
次に、形成された上記レジストパターン6aをエッチングマスクとして、上記遮光膜5をウェットエッチング(第2エッチング)することにより、遮光膜パターン5aを形成する(
図1(i)参照)。ここでのエッチング対象は、遮光膜5のみなので、予め把握したエッチングレートを参照し、エッチング終点の設定に困難はない。また、上記したように、本実施形態では、上記半透光膜2は、遮光膜5のエッチング剤に対して、耐性がある材料からなるため、上記第2エッチングにおいて、半透光部形成領域上では遮光膜5のみがエッチング除去され、下層の半透光膜パターン2aにはエッチングの影響はない。
【0079】
そして、残存する上記レジストパターン6aを剥離除去し、透光部、遮光部、および半透光部を含む転写用パターンを備えたフォトマスク20(多階調フォトマスク)が完成する(
図1(j)参照)。
【0080】
なお、ここに例示したフォトマスク20(多階調フォトマスク)は、以下の構成をもつ。すなわち、透光部は、前記透明基板表面が露出してなり、半透光部(第1透過制御部)は、透明基板上に、半透光膜(前記第1薄膜)のみが形成された部分を有し、遮光部(第2透過制御部)は、透明基板上に、遮光膜(前記第2薄膜)のみが形成された部分を有する。
【0081】
また、上記フォトマスク20は、遮光部と半透光部の隣接部分をもつ。遮光部において、半透光部に接するエッジ付近には、所定の一定幅で、半透光膜(半透光膜パターン2a)と遮光膜(遮光膜パターン5a)の積層部分を設けてある。これは、上記2回の描画(第1描画および第2描画)におけるアライメントずれが生じた場合に、それによって遮光部と半透光部が隣接せず、離間する可能性を考慮し、このアライメントずれを吸収するためのアライメントマージンであって、上記第1描画又は第2描画の描画データの加工によって形成することができる。例えば、遮光部と半透光部の境界付近において、第2レジストパターンのエッジ部分が、既に形成されている、半透光膜パターンのエッジ部分と、一部積層する(重なりあう)ように、第2レジストパターンの寸法を設定しておくことができる。このとき、描画データの加工としては、積層部分の幅(M1とする。)は、特に制約されるわけではないが、例えば0.5μm以上、好ましくは0.5~2μm、より好ましくは、0.5~1μmとすることができる。
つまり、上記製造方法によるフォトマスクは、上記アライメントマージンとしての積層部分以外においては、半透光部は透明基板上に半透光膜のみが形成され、遮光部は透明基板上に遮光膜のみが形成されている。
【0082】
また、本発明は、フォトマスクについても提供するものである。
本実施形態により得られる上記フォトマスク20は次のような特徴を有するものである。
すなわち、透明基板上に、透光部、遮光部、および半透光部を含む転写用パターンを備えたフォトマスクであって、前記透光部は、前記透明基板表面が露出してなり、前記半透光部は、前記透明基板上に、前記遮光膜が形成されず、前記半透光膜が形成されてなり、前記遮光部は、前記透明基板上に、少なくとも前記遮光膜が形成されてなり、前記半透光部と前記遮光部の境界は、前記半透光膜の被エッチング断面が形成されずに、前記遮光膜の被エッチング断面が形成されていることを特徴とするフォトマスクである。
すなわち、
図1(j)からも明らかなように、半透光膜パターン及び遮光膜パターンのエッジは、半透光膜及び遮光膜の被ウェットエッチング断面をそれぞれ有するが、半透光膜パターンのエッジ位置と、遮光膜パターンのエッジ位置が一致しない。なお、ここでいう被エッチング断面は、本実施形態ではウェットエッチングによる断面である。
このように、半透光膜と遮光膜の被エッチング断面の位置が一致しないのは、上述のアライメントマージンに関係する。
【0083】
上記フォトマスクにおける上記半透光膜や遮光膜の材料については、上記にて説明したとおりであり、また、本実施形態のフォトマスクにおいては、上記半透光膜は、上記遮光膜のエッチング剤に対して、耐性をもつ材料からなる。
また、遮光部の半透光部に隣接するエッジ部分には、上記半透光膜と遮光膜の積層部分があり、この積層部分の幅M(
図1(j)参照)は、例えば0.5~2μmの範囲であることが好ましい。
また、本実施形態のフォトマスクは、上記転写用パターンが例えば表示装置製造用のパターンであり、特に表示装置の製造に有用である。
【0084】
以上説明したように、本実施形態によれば、半透光膜、遮光膜のそれぞれのエッチング工程において、それぞれの膜のみをエッチングするため、積層された複数膜を連続してエッチングする場合に比べて、エッチング時間の設定が短いため、サイドエッチングによるパターン寸法(CD)変動を低減することができる。特に、すべてのエッチング工程で、各々単一の膜をエッチングすれば、エッチング所要時間は、予め、膜質と膜厚によって算出したものを適用できるため、サイドエッチングによる寸法ばらつきを、最小化することができる。更に、本実施形態のフォトマスクの構成を採用すれば、半透光膜の透過率管理がより簡便であり、正確であるため、高精細で省エネルギーを実現する高スペックの表示装置の製造には、大きな意義がある。
すなわち、本実施形態によれば、より微細で、より高いCD精度、透過率精度をあわせ持つ多階調フォトマスクを製造することができるフォトマスクの製造方法、及びフォトマスクを提供することができる。
【0085】
なお、上記の実施形態においては、第1透過制御部は、露光光を一部透過する半透光部、第2透過制御部を遮光部とし、第1薄膜として半透光膜、第2薄膜として遮光膜を例に挙げて説明したが、本発明の製造方法は、他の薄膜を適用する場合にも、優れた作用効果が得られる。例えば、第1薄膜、第2薄膜がそれぞれ所定の露光光透過率を有する半透光膜であってもよい。この場合は、第1薄膜、第2薄膜は、それぞれ上記の半透光膜材料として例示した、Si、Cr、Ta、Zrなどを含有する膜とすることができ、これらの酸化物、窒化物、炭化物などから適切なものを選択することができる。
第1薄膜、第2薄膜がそれぞれ所定の露光光透過率を有する半透光膜である場合、両者の間に、互いのエッチング剤に対する耐性をもたせる場合には、例えば、一方をCr系、他方をSi系ないしは遷移金属シリサイド系とすることができる。
【0086】
また、本発明のフォトマスクにおいて、これらの第1薄膜および第2薄膜の適用方法として、例えばより具体的には、
a.透明基板上に上記第1薄膜のみが形成された部分を有する前記第1透過制御部を透過する露光光は、透明基板表面が露出した前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、φ≦90を満たす場合、
b.前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、φ≦90を満たし、かつ、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たす場合、
c.前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、150≦φ≦210を満たす場合、
d.前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、150≦φ≦210を満たし、かつ、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たす場合、
e.透明基板上に上記第2薄膜のみが形成された部分を有する前記第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、0<φ≦90を満たす場合、
f.前記第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、0<φ≦90を満たし、かつ、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦80を満たす場合、
g.前記第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、150<φ≦210を満たし、かつ、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たす場合、
等が有用な例として挙げられる。いずれの場合にも、CD精度が高く制御可能である、本発明の効果が得られる上、第1透過制御部、第2透過制御部に担わせる光学特性を、それぞれ独立に設計可能であるため、所望の設計値をもつ高い品質のフォトマスクが作製できる。
【0087】
例えば、第1の実施態様に説明したフォトマスクの一例として、第1薄膜に上記a.又はb.を適用し、第2薄膜に遮光膜を適用した場合には、本発明のフォトマスクとして、多階調フォトマスクが得られる。このような多階調フォトマスクは、前述のように複数枚のフォトマスクに相当する機能を奏して、表示装置の製造効率を高めたり、或いは、転写することによって段差のある立体構造物を形成するためのフォトマスクとして用いられる利点がある。
また、第1薄膜に、上記c.又はd.を適用した場合には、本発明のフォトマスクを、位相シフトマスクとして構成できる。この場合、第2薄膜に遮光膜を適用してもよく、又は、上記e.又はf.に記載した半透光膜を適用してもよい。位相シフトマスクは、透過光の位相が反転する半透光部と、反転しない透光部との境界で生じる光の干渉を利用し、コントラストやDOF(Depth of Focus)を向上させる機能を有する。
特に、第1薄膜に、上記c.又はd.を適用し、第2薄膜に上記e.又はf.を適用した場合には、多階調フォトマスクと位相シフトマスクの機能を併せ持つフォトマスクを構成することができる。
【0088】
なお、第1透過制御部、第2透過制御部がいずれも半透光部である場合、その境界付近に、第1薄膜と第2薄膜が積層する積層部分が形成される場合、その幅が十分に小さいため、該フォトマスクの光学作用を阻害することは実質的に生じない。この場合、より好ましくは積層部分の幅は、1μm以下、更には、0.75μm以下とすることができる。より好ましくは、0.25~0.75μmである。
また、描画データ上の積層部分の幅M1も同様の範囲とすることができる。
一方、第1透過率制御部、第2透過制御部(あるいは遮光部)の寸法は、最も小さい部分においても、2μmを超え、好ましくは3μmを超えるものとすることが好ましい。
【0089】
[第2の実施形態]
図2は、本発明に係るフォトマスクの製造方法の第2の実施形態の工程を示す図である。
以下、各工程を順に説明する。
まず、透明基板1上に、所定の露光光透過率をもつ半透光膜2を形成したフォトマスクブランクス10を用意する(
図2(a)参照)。
【0090】
このフォトマスクブランクス10は、前述の第1の実施形態で用意したフォトマスクブランクスと同様のものである。したがって、上記半透光膜2の光透過率Tfの範囲も、第1の実施形態と同様とすることができる。また、上記半透光膜2の材料も、第1の実施形態において例示したものの中から適宜選択すればよい。
但し、本実施形態では、後述するように半透光膜と遮光膜の間にエッチングストッパ膜を設けるため、上記半透光膜2と、後述の遮光膜5との間に、エッチング特性が異なるものとする必要はない。従って、例えば、半透光膜2の材料にCr系の材料を用い、遮光膜5もCr系材料とすることに、何らの支障もない。
【0091】
また、上記半透光膜2の成膜後、第1の実施形態と同様に、面内に適切な数の測定点を設定して、光透過率を測定しておくことが好ましい。基板上に単膜の状態で形成されているので、容易にかつ正確に測定することができる。
【0092】
次に、上記のフォトマスクブランクス10に、レジスト膜3を塗布形成し、所定のパターンを描画4(第1描画)する(
図2(b)参照)。必要に応じて、半透光膜2の表面に対し、レジスト膜との密着性を向上させる表面処理を施すこともできる。
【0093】
レジスト膜3の塗布形成は、前記のようにスリットコータ、スピンコータなど、公知のものを使用することができる。ポジ型、ネガ型のいずれのレジストでも適宜使用できるが、本実施形態においても、ポジ型を使用した例で説明する。
形成した上記レジスト膜3に対して、描画装置を用いて、所望のパターンに基づいた描画データによって描画する。描画装置は、第1の実施形態と同様、レーザを適用したものとする。
【0094】
そして、描画された上記レジスト膜3を現像し、レジストパターン3a(第1レジストパターン)を形成する(
図2(c)参照)。
【0095】
次に、形成された上記レジストパターン3aをエッチングマスクとして、上記半透光膜2をウェットエッチング(第1エッチング)することにより、半透光膜パターン2aを形成する(
図2(d)参照)。ここでも、エッチング対象は半透光膜2のみであるため、予め把握したエッチングレートを参照し、エッチング終点を正確に設定できる。
【0096】
残存する上記レジストパターン3aを剥離除去する(
図2(e)参照)。
ここで、必要に応じて半透光膜パターン2aのパターン寸法(CD)の測定を行う。パターンエッジが半透光膜のみなので、比較的容易に測定が行える。
【0097】
本実施形態では、次に、主表面に半透光膜パターン2aが形成された透明基板1上の全面に、エッチングストッパ膜8を形成する(
図2(f)参照)。
このエッチングストッパ膜8は、後述の遮光膜5のエッチング剤に対して耐性をもつ材料からなる。例えば、エッチングストッパ膜8は、遮光膜5のエッチング液に対して、遮光膜5との間のエッチングレート比が、1/50以下であり、好ましくは1/100以下であることが望ましい。
【0098】
従って、例えば、遮光膜5にはCr含有の材料を用いた場合には、エッチングストッパ膜8にはSi含有の材料を用いること、或いはその逆とすることなどができる。これらを考慮した上で、エッチングストッパ膜8の材料は、第1の実施形態にて半透光膜や遮光膜の材料として挙げたものと同様のものから選択できる。
【0099】
次いで、上記エッチングストッパ膜8上に、すなわち、上記半透光膜パターン2aとエッチングストッパ膜8が形成された透明基板1の主表面上に、更に遮光膜5を成膜する(
図2(g)参照)。
【0100】
なお、上記エッチングストッパ膜8、上記遮光膜5はともに、前記と同様の成膜装置を適用して成膜することができる。
また、上記遮光膜5の材料も、第1の実施形態において例示したものの中から適宜選択すればよいが、上記で言及したとおり、本実施形態においては、上記遮光膜5の材料は、上記半透光膜2との間で相互のエッチング選択性は必要ない。
【0101】
次に、上記遮光膜5上に、レジスト膜6(ここでもポジ型とする)を塗布形成し、所定のパターンを描画7(第2描画)する(
図2(h)参照)。描画方法は上記の第1描画の場合と同様である。
なお、前述したとおり、上記半透光膜2の成膜後に測定して得た、面内の透過率分布データに、許容できない程度のばらつきがあり、これを遮光膜5のパターンによって修正しようとする場合には、第2描画用の描画データを加工することができる。
【0102】
次いで、描画された上記レジスト膜6を現像し、レジストパターン6a(第2レジストパターン)を形成する(
図2(i)参照)。
【0103】
次に、形成された上記レジストパターン6aをエッチングマスクとして、上記遮光膜5をウェットエッチング(第2エッチング)することにより、遮光膜パターン5aを形成する(
図2(j)参照)。ここでのエッチング対象は、遮光膜5のみなので、予め把握したエッチングレートを参照し、エッチング終点の設定に困難はない。また、上記したように、本実施形態では、上記エッチングストッパ膜8は、遮光膜5のエッチング剤に対して耐性がある材料からなるため、上記第2エッチングにおいては遮光膜5のみがエッチング除去される。
【0104】
そして、残存する上記レジストパターン6aを剥離除去し、透光部、遮光部、および半透光部を含む転写用パターンを備えたフォトマスク30(多階調フォトマスク)が完成する(
図2(k)参照)。
【0105】
なお、この後必要に応じて、フォトマスク30の表面に露出している上記エッチングストッパ膜8を除去する。エッチングストッパ膜8を除去する場合には、予め、半透光膜2とエッチングストッパ膜8との間には、エッチング選択性があるものとする。すなわち、例えば、半透光膜2と遮光膜5をいずれもCr含有膜とし、エッチングストッパ膜8をSi含有膜とするか、またはその逆とすることができる。なお、フォトマスク30の半透光部や透光部での光透過率に格別影響を及ぼさない場合には、上記エッチングストッパ膜8は除去しないでおくこともできる。
【0106】
なお、本実施形態にて例示したフォトマスク30(多階調フォトマスク)も、遮光部と半透光部の隣接部分をもつ。遮光部において、半透光部に接するエッジ付近には、所定の一定幅で、半透光膜(半透光膜パターン2a)と遮光膜(遮光膜パターン5a)の積層部分を設けてある。これは、上記2回の描画(第1描画および第2描画)におけるアライメントずれが生じた場合に、それによって遮光部と半透光部が隣接せず、離間する可能性を考慮し、このアライメントずれを吸収するためのアライメントマージンであって、上記第1描画又は第2描画の描画データの加工によって形成することができる。例えば、積層部分の幅M(
図2(k)参照)は、特に制約されるわけではないが、例えば0.5~2μm、好ましくは、0.5~1μmとすることができる。これも第1の実施形態と同様である。
【0107】
また、本実施形態により得られる上記フォトマスク30についても、第1の実施形態と同様に、次のような特徴を有するものである。
すなわち、透明基板上に、透光部、遮光部、および半透光部を含む転写用パターンを備えたフォトマスクであって、前記透光部は、前記透明基板表面が露出してなり、前記半透光部は、前記透明基板上に、前記遮光膜が形成されず、前記半透光膜が形成されてなり、前記遮光部は、前記透明基板上に、少なくとも前記遮光膜が形成されてなり、前記半透光部と前記遮光部の境界は、前記半透光膜の被エッチング断面が形成されずに、前記遮光膜の被エッチング断面が形成されていることを特徴とするフォトマスクである。
【0108】
上記フォトマスクにおける上記半透光膜や遮光膜の材料については、上記にて説明したとおりであり、また、本実施形態のフォトマスクにおいては、上記半透光膜と上記遮光膜の間にエッチング選択性は必要ない。
また、遮光部の半透光部に隣接するエッジ部分には、上記半透光膜と遮光膜の積層部分があり、この積層部分は、例えば0.5~2μmの範囲の幅であることも上記のとおりである。
また、本実施形態のフォトマスクについても、上記転写用パターンが例えば表示装置製造用のパターンであり、特に表示装置の製造に有用である。
【0109】
以上説明したように、本実施形態においても、半透光膜、遮光膜のそれぞれのエッチング工程において、それぞれの膜のみをエッチングするため、積層された複数膜を連続してエッチングする場合に比べて、エッチング時間の設定が短いため、サイドエッチングによるパターン寸法(CD)変動を低減することができる。特に、すべてのエッチング工程で、各々単一の膜をエッチングすれば、エッチング所要時間は、予め、膜質と膜厚によって算出したものを適用できるため、サイドエッチングによる寸法ばらつきを、最小化することができる。更に、本実施形態のフォトマスクの構成を採用すれば、半透光膜の透過率管理がより簡便であり、正確であるため、高精細で省エネルギーを実現する高スペックの表示装置の製造には、大きな意義がある。
すなわち、本実施形態によれば、より微細で、より高いCD精度、透過率精度をあわせ持つ多階調フォトマスクを製造することができるフォトマスクの製造方法、及びフォトマスクを提供することができる。
【0110】
なお、上記の本実施形態においても、第1透過制御部は、露光光を一部透過する半透光部、第2透過制御部を遮光部とし、第1薄膜として半透光膜、第2薄膜として遮光膜を例に挙げて説明したが、これに限定されず、他の薄膜を適用する場合にも、優れた作用効果が得られる。例えば、第1薄膜、第2薄膜がそれぞれ所定の露光光透過率を有する半透光膜であってもよい。
【0111】
また、本実施形態のフォトマスクにおいても、これらの第1薄膜および第2薄膜の適用方法として、例えばより具体的には、
a.透明基板上に上記第1薄膜のみが形成された部分を有する前記第1透過制御部を透過する露光光は、透明基板表面が露出した前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、φ≦90を満たす場合、
b.前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、φ≦90を満たし、かつ、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たす場合、
c.前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、150≦φ≦210を満たす場合、
d.前記第1透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、150≦φ≦210を満たし、かつ、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たす場合、
e.透明基板上に上記第2薄膜のみが形成された部分を有する前記第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、0<φ≦90を満たす場合、
f.前記第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、0<φ≦90を満たし、かつ、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦80を満たす場合、
g.前記第2透過制御部を透過する露光光は、前記透光部を透過する露光光の代表波長に対して、位相差φ(度)が、150<φ≦210を満たし、かつ、光透過率Tf(%)が、5≦Tf≦60を満たす場合、
等が有用な例として挙げられる。いずれの場合にも、CD精度が高く制御可能である、本発明の効果が得られる上、第1透過制御部、第2透過制御部に担わせる光学特性を、それぞれ独立に設計可能であるため、所望の設計値をもつ高い品質のフォトマスクが作製できる。
また、第2の実施形態による本発明のフォトマスクについても、第1の実施形態と同様、上記のa.~g.などの構成を適宜選択し、用途に適合したものとすることができる。
【0112】
以上、本発明の第1の実施形態および第2の実施形態について説明した。
なお、以上の実施形態において、本発明の作用効果を妨げない範囲で、他の構成膜が、半透光膜2、遮光膜5、エッチングストッパ膜8のいずれかの上、下、又は中間に存在していてもよい。
【0113】
また、本発明は、たとえば上記実施形態によるフォトマスクを用意し、露光装置を用いて、転写用パターンを被転写体に転写する工程を含むことを特徴とする表示装置の製造方法についても提供するものである。本発明によれば、当該フォトマスクを用いて表示装置を製造することにより、高精細で省エネルギーを実現する高スペックの表示装置の製造が可能である。
【0114】
すなわち、本発明のフォトマスクの用途に制約はない。例えば、表示装置(例えば、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ)のパネル基板を製造するためのものとして、様々なレイヤに使用される転写用パターンを備えるものとすることができる。
【0115】
例えば、TFT(Thin Film Transistor:薄膜トランジスタ)製造用の転写用パターンを備えるものが例示される。アモルファスSiや酸化物半導体を用いたボトムゲート型TFTにおいて、半導体層とソース(Source)/ドレイン(Drain)層を1回の露光で形成する工程に利用するフォトマスクとして有利に適用される。
【0116】
または、本発明のフォトマスクは、液晶用のスペーサを感光性絶縁層によって製造する場合にも有利に適用される。感光性絶縁膜に1回の露光で段差構造を形成する工程に用いることが可能であり、セルギャップを形成するスペーサと、押圧印加時の破壊を防ぐための少し高さの低いスペーサを1回の露光で形成することなどが効率的に行える。
【0117】
本発明のフォトマスクの露光に使用するための露光装置としては、例えば、光学系の開口数(NA)が0.08~0.15、コヒレンスファクタ(σ)が0.5~0.9の等倍のプロジェクション露光方式が使用できる。あるいは、プロキシミティ露光方式を適用してもよい。もちろん縮小露光や拡大露光の露光装置に適用してもよい。
【符号の説明】
【0118】
1 透明基板
2 半透光膜
3、6 レジスト膜
4、7 描画
5 遮光膜
8 エッチングストッパ膜
10 フォトマスクブランクス(半透光膜付き基板)
20、30 フォトマスク