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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】再分散性二層型化粧料
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20230511BHJP
   A61K 8/03 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 1/14 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 19/10 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 1/12 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 17/04 20060101ALI20230511BHJP
   A61Q 1/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A61K8/73
A61K8/03
A61Q19/00
A61Q1/14
A61Q19/10
A61Q1/12
A61Q17/04
A61Q1/00
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021534391
(86)(22)【出願日】2018-12-19
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-28
(86)【国際出願番号】 IB2018001593
(87)【国際公開番号】W WO2020128555
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2021-10-26
(73)【特許権者】
【識別番号】502189579
【氏名又は名称】エルブイエムエイチ レシェルシェ
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】北村 三矢子
(72)【発明者】
【氏名】小澤 舞
(72)【発明者】
【氏名】迫田 剛嘉
【審査官】相田 元
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-193716(JP,A)
【文献】特開2010-189361(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2013-0060663(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
水相と、平均粒径が0.1~1000μmである多糖類のゲル粒子と、を含有し、
複数の前記ゲル粒子の集合体によって形成される下層と、前記水相から構成される上層とからなる、再分散性二層型化粧料。
【請求項2】
前記多糖類は、寒天、カラギナン、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、タマリンドガム、マンナン、ローカストビーンガム及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項1に記載の再分散性二層型化粧料。
【請求項3】
前記多糖類は、寒天、カラギナン及びジェランガムからなる群より選択される、請求項2に記載の再分散性二層型化粧料。
【請求項4】
前記多糖類は、寒天である、請求項2に記載の再分散性二層型化粧料。
【請求項5】
前記二層型化粧料の粘度は、25℃において、1cP以上200cP以下である、請求項1~4のいずれか一項に記載の再分散性二層型化粧料。
【請求項6】
前記水相は、ポリオールを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の再分散性二層型化粧料。
【請求項7】
前記ポリオールは、ジオール、トリオール及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項6に記載の再分散性二層型化粧料。
【請求項8】
前記ポリオールは、ブチレングリコール(1,3-ブチレングリコール)、ペンチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、グリセリン及びこれらの混合物からなる群より選択される、請求項6に記載の再分散性二層型化粧料。
【請求項9】
前記水相は、モノアルコールを含む、請求項1~のいずれか一項に記載の再分散性二層型化粧料。
【請求項10】
前記モノアルコールは、エタノール、プロパノール、イソプロパノール及びブタノールからなる群より選択される、請求項9に記載の再分散性二層型化粧料。
【請求項11】
前記モノアルコールは、エタノールである、請求項9に記載の再分散性二層型化粧料。
【請求項12】
前記水相は、アリールオキシアルカノールを含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の再分散性二層型化粧料。
【請求項13】
前記アリールオキシアルカノールは、フェノキシエタノールである、請求項12に記載の再分散性二層型化粧料。
【請求項14】
化粧水、クレンジングローション、洗顔料、美容液、化粧下地、ローションミスト、又は日焼け止めである、請求項1~13のいずれか一項に記載の再分散性二層型化粧料。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の再分散性二層型化粧料をケラチン物質に塗布することを含む、前記ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための化粧方法。
【請求項16】
前記再分散性二層型化粧料が使用前に振盪される、請求項15に記載の化粧方法。
【請求項17】
前記二層型化粧料が、それが適用されるケラチン物質に、潤い持続性及び滑らかさを付与する、請求項15又は16に記載の化粧方法。
【請求項18】
前記ケラチン物質が皮膚である、請求項15~17のいずれか一項に記載の化粧方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、再分散性二層型化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
多層型化粧料は、複数の層(例えば、粉末層と水層、水層と油層)から構成される化粧料である。多層型化粧料は優れた美的外観を有しており、消費者を引き付けることができるため、多層型化粧料に関する技術手段についてこれまでにも種々の開発がなされている。
【0003】
例えば、特開2013-177366号公報(対応EP2810639B1)には、(A)コハク酸及び/又はその塩、(B)ベントナイト、(C)親水性界面活性剤、を含む、再分散型粉末分散化粧料が開示されている。しかし、ベントナイト、セルロース及び合成ポリマー等の特定の粉末を含む水層及び粉末層から構成される二層化粧料では、粉末層の湿潤性のために成分が皮膚上に吸着され、消費者が求める潤いの持続性に影響を及ぼすことが多い。
【0004】
また、特開2007-126394号公報には、特定のポリエチレンオキサイドマクロモノマー、疎水性モノマー、及び架橋性モノマーを重合して得られる共重合体と、液状油分を5~40質量%含有し、界面活性剤の含有量が所定の範囲内である多層型化粧料が開示されている。特開2014-208634号公報には、次の成分(a)~(d);(a)25℃における粘度が30~400mm/sである非揮発性炭化水素油(b)25℃における粘度が30~400mm/sであるシリコーン油(c)水(d)イソステアリン酸とポリグリセリンとのエステルを含有することを特徴とする多層型化粧料が開示されている。
【0005】
しかし、そのような水層と油層からなる二層型化粧料は、油性のべたつき感を生じやすく、消費者が求める滑らかさに影響を与える。
【0006】
したがって、潤いの持続性及び滑らかさの両方の点で改善された二層型化粧料を提供する必要性が依然として存在する。
【0007】
本発明者らの検討により、所定のゲル粒子と、水相とから構成される新たな再分散性二層型化粧料が見いだされ、この二層型化粧料は、潤いの持続性及び滑らかさの両方が向上していることが判明した。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、水相と、平均粒径が0.1~1000μmである多糖類のゲル粒子と、を含有する再分散性二層型化粧料に関する。
本発明の「再分散性二層型化粧料」という表現は、組成物が、使用のために振盪された場合、水相(上層)に多糖類のゲル粒子(下層)が良好に再分散する一方で、使用されていないときに透明な上清を与えることができることを意味する。そのため、静置(不使用)及び振とうにより、水相中でゲル粒子の沈降及び分散が繰り返し生じる。
本発明の「二層型」化粧料という用語は、組成物が、静置した(使用していない)ときに、二つの視覚的に異なる層、すなわち、水相を含む上層と、多糖類のゲル粒子を含む下層とを呈することを意味する。
本発明の再分散性二層型化粧料は、潤いの持続性及び滑らかさが向上している。
【0009】
多糖類として、寒天を用いることができる。この場合、ゲル粒子は、ゲル形成用水相(第2の層)により膨潤させた寒天をゲル化した寒天ゲルの粉砕物を用いることができる。
【0010】
二層型化粧料の粘度は、25℃において、1cP以上200cP以下であってよい。
【0011】
水相は、ポリオールを含んでいてよく、モノアルコールを含んでいてよい。また、水相は、フェノキシエタノール等のアリールオキシアルカノールを含んでいてよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、潤いの持続性及び滑らかさが向上している再分散性二層型化粧料を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0014】
本実施形態の再分散性二層型化粧料は、水相(第1の層、つまり、上層)と、平均粒径が0.1~1000μmである多糖類のゲル粒子(第2の層、つまり、下層)と、を含有する。本明細書において「二層型化粧料」という用語は、使用していないときに二つの視覚的に異なる層、つまり、水相から分離した複数のゲル粒子を有する化粧料を指す。
【0015】
本実施形態の二層型化粧料は、静置(不使用)及び撹拌(振とう)により、水相中でゲル粒子の沈降及び分散が繰り返し生じる。すなわち、静置時(例えば、容量120mLの容器に100mL程度容れて一日以上静置したとき)においては、ゲル粒子は水相中で沈降するため、二層型化粧料は、外観上、複数のゲル粒子の集合体によって形成される下層と、下層上に存在し、水相から構成される上層とを含んでいる。なお、二層型化粧料の通常の保管温度(例えば5~30℃程度の室温)及び保管時間(例えば3年)において、ゲル粒子は水相に溶出して形状を失うことはなく、粒子同士で接着して凝集体(塊)を形成しないような成分からなっている。また、水相はゲル粒子間に存在していてもよい。一方、撹拌(振とう)時においては、ゲル粒子が水相中で分散されるため、二層型化粧料は、水相と、水相中に分散されたゲル粒子とを含んでいる。
水相(第1の層)
【0016】
水相は、水のみからなるものであっても、水と水に可溶性の成分とからなってもよい。水に可溶性の成分とは、水100gに対して0.1g以上溶解するものを意味する。
【0017】
水に可溶性の成分としては、ポリオール、モノアルコール(但し、後述する防腐剤に該当するものを除く。)、防腐剤、香料、可溶化剤、塩析剤、pH調整剤、界面活性剤、美白剤、抗炎症剤、着色剤、ゲル化能を有さない多糖類(例えば、キサンタンガム、ヒアルロン酸ナトリウム、アラビアガム、グアーガム、サクシノグリカン)等が挙げられる。
【0018】
ポリオールの価数は、例えば、2~4、又は2~3であってよい。すなわち、ポリオールは、ジオール及び/又はトリオールを含んでいてよい。ポリオールとしては、ブチレングリコール(1,3-ブチレングリコール)、ペンチレングリコール、プロパンジオール、ジプロピレングリコール、ポリアルキレングリコール(例えば、ポリエチレングリコール)等のジオール、グリセリン等のトリオールが例示できる。ポリオールは、これら1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0019】
水相がポリオールを含む又はからなる場合、ポリオールの総含有量は、二層型化粧料全質量を基準として、1~30質量%、5~20質量%、又は7~15質量%であってよい。「質量%」という用語は、重量%とも呼ばれる。
【0020】
モノアルコール(C1-C5)としてはエタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノールが挙げられる。特定の実施形態では、モノアルコールはエタノールである。モノアルコールは、これら1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水相がモノアルコールを含む又はからなる場合、モノアルコールの含有量は、二層型化粧料全質量を基準として、1~20質量%、2~15質量%又は3~10質量%であってよい。
【0021】
防腐剤としては、フェノキシエタノール等のアリールオキシアルカノール、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)二ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)四ナトリウムが挙げられる。水相は、防腐剤として、アリールオキシアルカノールを含んでいてよく、フェノキシエタノールを含むことが好ましい。防腐剤は、これら1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。水相が防腐剤を含む場合、防腐剤の含有量は、二層型化粧料全質量を基準として、0.01~5質量%、0.01~2質量%、0.1~2質量%、0.5~2質量%、又は0.7~2質量%であってよい。
【0022】
可溶化剤としては、PPG-6デシルテトラデセス-20、PPG-6デシルテトラデセス-30、PEG-60水添ヒマシ油、PEG-80水添ヒマシ油、イソステアリン酸PEG-60グリセリル、PEG-20ソルビタンココエート、イソステアリン酸PEG-20ソルビタン等が挙げられる。水相が可溶化剤を含む場合、可溶化剤の含有量は、二層型化粧料全質量を基準として、0.01~5質量%、0.05~1質量%、又は0.05~0.5質量%であってよい。
【0023】
塩析剤としては、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、硫酸ナトリウム、硫酸マグネシウム等が挙げられる。水相が塩析化剤を含む場合、塩析化剤の含有量は、二層型化粧料全質量を基準として、0.1~10質量%、0.5~5質量%、又は0.7~2質量%であってよい。
【0024】
水相の含有量は、二層型化粧料全質量を基準として、85.0~99.9質量%、90.0~99.5質量%であってよい。
多糖類のゲル粒子(第2の層)
【0025】
ゲル粒子は、ゲル化能を有する多糖類と、ゲルを形成させるための第2の層の溶媒(第2の層のゲル形成用水相)とを含む。ゲル化能を有する多糖類(以下、単に「多糖類」ともいう。)としては、例えば、寒天、カラギナン(例えばカッパカラギナン、イオタカラギナン)、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、タマリンドガム、マンナン、ローカストビーンガム、及びこれらの混合物等が挙げられる。多糖類は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。多糖類は、寒天、カラギナン及びジェランガムからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましく、寒天であることがより好ましい。ゲル形成用水相としては、上述した第1の水相として例示された成分を用いることができる。ゲル形成用水相は、上述した水相(第1の層)と同種の成分を用いてもよく、異種の成分を用いてもよい。特定の実施形態では、多糖類ゲルの形成に使用される溶媒は水である。
【0026】
ゲル粒子は、例えば、以下の方法に得ることができる。まず、ゲル化能を有する多糖類を、必要に応じ加熱することにより水相(第2の層)で膨潤させる。多糖類を膨潤させる際の温度は、例えば、70~100℃であってよく、80~90℃であってもよい。多糖類の膨潤は、攪拌しながら行ってよく、例えば、回転数1000~5000rpmの条件で攪拌しながら行ってよい。膨潤させた多糖類を静置して冷却した後粉砕することにより、又は、撹拌しながら冷却することにより、平均粒径が0.1~1000μmである多糖類のゲル粒子が得られる。粉砕は、例えば、ホモジナイザー、ディスパー、ブレンダーを用いて行うことができる。粉砕は、回転数5000rpm~20000rpmの条件で攪拌することにより行うことができる。ゲル粒子の製造過程において、必要に応じ、ゲル化剤(例えば、塩化カルシウム、塩化カリウム)を用いてもよい。多糖類をゲル化させる際にゲル化剤を用いる場合、多糖類のゼリー強度(つまり、ゲル化強度)が、例えば、1.5質量%多糖類濃度で、500g/cm以上1000g/cm以下となるようにゲル化剤を使用してよい。なお、このゲル粒子は、化粧料用の増粘剤として有効な程度の増粘作用を有しない。
【0027】
多糖類として、寒天を用いる場合、ゲル粒子は、寒天ゲルの粉砕物を用いることができる。寒天ゲルは、第2の層のゲル形成用水相により膨潤させた寒天をゲル化したものを用いることができる。寒天ゲルの粉砕物は、膨潤させた寒天を、静置して冷却した後破砕することにより、又は、撹拌しながら冷却することにより得られる。
【0028】
多糖類として、カラギーナン、ジェランガム、アルギン酸ナトリウム、タマリンドガム、マンナン及びローカストビーンガムからなる群より選ばれる少なくとも一種を用いる場合、ゲル粒子は、第2の層のゲル形成用水相により膨潤させた多糖類をゲル化した多糖類ゲルの粉砕物を用いることができる。この場合、ゲル化は、ゲル化剤を加えることにより実施することができる。
【0029】
ゲル粒子の平均粒径は、0.1μm以上、1μm以上、5μm以上、10μm以上、50μm以上、60μm以上、70μm以上、又は80μm以上であってよく、1000μm以下、500μm以下、400μm以下、300μm以下、250μm以下、200μm以下、150μm以下、又は120μm以下であってよい。ゲル粒子の平均粒径は、0.1~1000μmであり、1~500μm、5~400μm、10~300μm、50~250μm、60~200μm、70~150μm又は80~120μmであってよい。本明細書において、「平均粒径」とは、レーザー回折/散乱式粒子分布測定装置(Laser scattering particle size distribution analyzer)により測定される値として定義される。ゲル粒子の平均粒径は、例えば、多糖類のゲル粒子の製造条件(粉砕の条件等)を調整することにより、上記範囲内に調整することができる。
【0030】
多糖類が寒天である場合、多糖類のゼリー強度(つまり、ゲル化強度)は、1.5質量%多糖類濃度で、500g/cm以上、600g/cm以上、650g/cm以上、又は700g/cm以上であってよく、1000g/cm以下、900g/cm以下、800g/cm以下、又は750g/cm以下であってよい。多糖類が寒天である場合、多糖類のゼリー強度(つまり、ゲル化強度)は、滑らかさにより優れる観点から、1.5質量%多糖類濃度で、500g/cm以上1000g/cm以下、600g/cm以上900g/cm以下、650g/cm以上800g/cm以下、700g/cm以上800g/cm以下であってよい。
【0031】
ゼリー強度(つまり、ゲル化強度)は、1.5%濃度水溶液におけるゲル強度として測定される。すなわち、ゼリー強度は、多糖類を精秤し、イオン交換水を加えて十分吸水させる。次いで温イオン交換水を加えて内容量を調整し、熱水浴にて加熱溶解する。加熱中に蒸発した水分を補うために、イオン交換水を補充して内容量を調整し、ガラス容器)の上部にテープを巻きつけたものに流し入れる。室温にて放冷し、ふたをして20℃の恒温室で一晩放置する。ガラス容器からテープを取り外し、カッターで容器からはみ出している容器縁部上のゼリーをカットして廃棄する。得られたゼリーのカット面の強度をテクスチャーアナライザー等で測定する。すなわち、面積1cmの円筒形プランジャーを装着し、試料台を適当な上昇速度で動かすことにより、ゼリーが破断されるまでの力を測定する。
【0032】
多糖類の重量平均分子量は、ゲル粒子がより一層沈降しやすくなる観点から、15万以上、20万以上、25万以上又は30万以上であってよく、滑らかさにより優れる(ざらつきがより一層抑制される)観点から、50万以下、45万以下、40万以下、又は35万以下であってよい。多糖類の重量平均分子量は、15万以上50万以下、15万以上45万以下、15万以上40万以下、15万以上35万以下、20万以上50万以下、20万以上45万以下、20万以上40万以下、20万以上35万以下、25万以上50万以下、25万以上45万以下、25万以上40万以下、25万以上35万以下、30万以上50万以下、30万以上45万以下、30万以上40万以下、又は30万以上35万以下であってよい。
【0033】
多糖類の重量平均分子量は、HPLCによるゲル浸透クロマトグラフィー法に従って測定することができる。例えば、多糖類を蒸留水に95~97℃で溶解した後、50℃まで冷却して測定用サンプルとし、このサンプルを用いてゲル浸透クロマトグラフィー法で測定する。液体クロマトグラフィーの装置の一例を挙げると、島津製作所社製、LC-10AT VP,RID-10A、検出器に示差屈折計、カラムに東ソー社製TOSOH TSK-GEL for HPLC,TSK-GEL GMPWXL等を使用し、展開溶媒に0.1M硝酸ナトリウム等を用い、温度一定の下で測定する。寒天の重量平均分子量を決定するために、分子量が既知のプルラン(例えばShodex STANDARD P-82)を標準サンプルとして用いる。標準サンプルを蒸留水に溶解し、同条件にてHPLCによるゲル浸透クロマトグラフィー法で測定する。
【0034】
多糖類の含有量は、二層型化粧料全質量を基準として、0.01質量%以上、0.05質量%以上、0.10質量%以上、0.20質量%以上、0.30質量%以上又は0.40質量%以上であってよく、2.0質量%以下、1.0質量%以下、0.8質量%以下又は0.6質量%以下であってよい。多糖類の含有量は、二層型化粧料全質量を基準として、0.05~2.0質量%、特に、0.10~1.0質量%、又は0.20~0.8質量%、又は更には0.40~0.6質量%であってよい。
【0035】
多糖類のゲル粒子の含有量は、二層型化粧料全質量を基準として、5質量%以上、10質量%以上又は15質量%以上であってよく、50質量%以下、30質量%以下又は25質量%以下であってよい。多糖類のゲル粒子の含有量は、二層型化粧料全質量を基準として、5~50質量%、特に、10~30質量%、又は更には15~25質量%であってよい。
【0036】
二層型化粧料の粘度は、25℃において、200cP以下、100cP以下、50cP以下又は10cP未満であってよく、例えば、1cP以上又は5cP以上であってよい。二層型化粧料の粘度は、25℃において、1cP以上200cP以下、1cP以上100cP以下、1cP以上50cP以下、1cP以上10cP未満、5cP以上200cP以下、5cP以上100cP以下、5cP以上50cP以下、又は5cP以上10cP未満であってよい。
【0037】
二層型化粧料の粘度の測定は回転粘度計(アントンパール株式会社製 Rheolab QC)を用いた剪断粘度測定により、回転数100rpm、25℃の条件で実施することができる。このような範囲の粘度を有することで、二層型化粧料の安定性が向上し、使用感にも優れるようになる。
【0038】
再分散性二層型化粧料は、例えば、第1の層の水相と、第2の層のゲル粒子とを混合、撹拌(振とう)することで得ることができる。
【0039】
本実施形態の再分散性二層型化粧料は、化粧水、クレンジングローション、洗顔料、美容液、化粧下地、ローションミスト、日焼け止め等の用途に好適に用いることができる。
本発明はまた、本発明で定義される再分散性二層型化粧料をケラチン物質、特に皮膚に塗布することを含む、ケラチン物質をケア及び/又はメイクアップするための化粧方法に関する。
「ケラチン物質」とは、皮膚及び/又は唇、好ましくは皮膚を意味する。
再分散性二層型化粧料は、通常、使用前に振盪される。
特に、本発明の再分散性二層型化粧料は、それが適用されるケラチン物質、特に皮膚に対して潤い持続性及び滑らかさを有利に付与する。
【実施例
【0040】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。反対の指示がない限り、%は、組成物の総重量の重量%とも称される質量%である。
【0041】
以下の多糖類を準備した。
・寒天1(商品名:伊那寒天 CS-7、伊那食品工業株式会社製、INCI名:AGAR、ゼリー強度(1.5質量%濃度):730±20(g/cm)、重量平均分子量:30万)
・寒天2(商品名:伊那寒天 CS-310、伊那食品工業株式会社製、INCI名:AGAR、ゼリー強度(1.5%濃度):100±50(g/cm)、重量平均分子量:10万)
・寒天3(商品名:伊那寒天 CS-33、伊那食品工業株式会社製、INCI名:AGAR、ゼリー強度(1.5%濃度):850±50(g/cm)、重量平均分子量:70万)
・カラギナン(商品名:GENUGEL(登録商標) SWG-J、タイプ:カッパ、CPKelco社製、INCI名:CARRAGEENAN (Kappa))
・ジェランガム(商品名:KELCOGEL、CPKelco社製、INCI名:GELLAN GUM(LA type))
【0042】
寒天のゼリー強度及び重量平均分子量は、上記の測定方法に準じて測定された値である。
【0043】
上記多糖類から、以下の方法により、多糖類のゲル粒子を調製した。まず、水(第2の層のゲル形成用水相)と、多糖類とを混合し、90℃、3000rpmの条件で攪拌しながら、多糖類を膨潤させた。寒天の場合は静置して冷却し、ゲル(多糖類濃度4質量%)を得た。カッパカラギーナンの場合は塩化カリウムを、ジェランガムの場合は塩化カルシウムをゲル化剤としてそれぞれ加えて混合し、ゲル(多糖類濃度4質量%)を得た。このゲルに水(第2の層のゲル形成用水相)を加え、ワーリングブレンダーで18000rpm、2分間の条件で、粉砕して多糖類のゲル粒子を調製した(多糖類濃度2質量%)。
【0044】
実施例1、4~9において寒天のゲル粒子の平均粒径は、100μmであり、実施例2においてカラギナンのゲル粒子の平均粒径は、100μmであり、実施例3においてジェランガムのゲル粒子の平均粒径は、100μmであった。これらのゲル粒子の平均粒径は、レーザー回折/散乱式粒子分布測定装置(Laser scattering particle size distribution analyzer)により測定した。
【0045】
上記方法により得た各種多糖類のゲル粒子に表1~2に示す組成の水相(第1の層)を添加し、攪拌することによって、実施例の二層型化粧料を調製した。実施例の二層型化粧料において、多糖類の含有量は、二層型化粧料全質量に対して、表1に示す量であった。
【0046】
寒天(商品名:伊那寒天 CS-7、伊那食品工業株式会社製)と水とを混合し、90℃、3000rpmの条件で攪拌しながら、寒天を膨潤させた。膨潤させた寒天に、表1に示す組成の水相(第1の層)を添加し、攪拌することによって、比較例1~2の化粧料を調製した。ベントナイト及びカオリン(粉末第2相)と、表1に示す組成の水相(第1相)とを混合し、比較例3の二層型化粧料を調製した。表1に示す組成の油剤(第2相)と、表1に示す組成の水相(第1相)とを混合し、比較例4の二層型化粧料を調製した。比較例5の化粧料として、表2に示す組成の化粧料を準備した。
【0047】
二層型化粧料の粘度測定は、以下の方法により実施した。回転粘度計(アントンパール株式会社製 Rheolab QC)を用いた剪断粘度測定により、(回転数100rpm)、25℃の粘度を測定した。
【0048】
実施例及び比較例の化粧料について、「分離」、「再分散性」、「潤い持続性」及び「滑らかさ」の項目について、以下の基準に基づいて評価した。「潤い持続性」及び「滑らかさ」の項目については、化粧品専門評価パネルによる肌への単回使用試験により評価した。
(1)分離
振とう混合した後に室温にて一日静置し、その外観を目視にて評価した。
A:静置して半日以内に、均一な上層と均一な下層との明瞭な境界面が観察できる
B:静置して一日以内に、均一な上層と均一な下層との明瞭な境界面が観察できる
C:振とう・静置して一日以内に上層と下層の境界面が観察できるが不明瞭であり、上層または下層が不均一である
D:振とう・静置して一日以内に上層と下層の境界面が観察できない
(2)再分散性
振とう混合した後に25℃にて1ヶ月静置し、再度振とうした。
A:10回以下で均一に分散した
B:10~20回以下で均一に分散した
C:20回以上で分散したが不均一であった
D:再分散しなかった
(3)潤い持続性
A:潤いの持続性を強く感じる
B:潤いの持続性を感じる
C:潤いの持続性をほとんど感じない
D:潤いの持続性を全く感じない
(4)滑らかさ
A:滑らかさを強く感じる
B:滑らかさを感じる
C:滑らかさをほとんど感じない
D:滑らかさを全く感じない
【0049】
【表1】

用語「rem.」は、「qs100」を意味する。
【0050】
【表2】
【0051】
これらの結果は、水相と、0.1~1000μmの平均粒径を有する多糖類のゲル粒子とを含む本発明の再分散性二層型化粧料が、十分に再分散可能であり、先行技術から公知の他の二層型化粧料と比較して、潤い持続性及び滑らかさが向上していることを示した。