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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】スリッターの切断機構
(51)【国際特許分類】
   B26D 1/02 20060101AFI20230511BHJP
   B26D 7/26 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B26D1/02 A
B26D7/26
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2018229335
(22)【出願日】2018-12-06
(65)【公開番号】P2020089952
(43)【公開日】2020-06-11
【審査請求日】2021-12-02
(73)【特許権者】
【識別番号】000151667
【氏名又は名称】株式会社東伸
(74)【代理人】
【識別番号】100181250
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 信介
(72)【発明者】
【氏名】岩田 哲
(72)【発明者】
【氏名】栗塚 隆臣
(72)【発明者】
【氏名】三嶋 崇
【審査官】石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-110825(JP,A)
【文献】特開2002-224991(JP,A)
【文献】特開2006-068984(JP,A)
【文献】特開2005-254381(JP,A)
【文献】特開昭57-107793(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第107009393(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B26D 1/02
B26D 7/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウエブの流れ方向と直交する該ウエブの幅方向へ長手が延びるように配置された棒状部材と、
前記ウエブを前記流れ方向に切断するカッターが設けられたカッターホルダと、を備え、
前記カッターホルダは、
前記棒状部材に取り付けられ、該棒状部材に沿って前記幅方向へ位置変更可能に設置される第1ブロックと、
前記第1ブロックを、前記棒状部材に固定した状態または前記幅方向へ位置変更可能な状態に変更する第1位置調節手段と、
前記カッターが設けられ、第2位置調節手段によって前記第1ブロックに対して前記幅方向へ位置変更可能に構成された第2ブロックと、
前記カッターに設けられ、前記棒状部材の前記幅方向に付されたゲージの目盛りを指して、前記カッターにおける前記幅方向の位置を示す指し部と、を有し
前記棒状部材は、丸棒形状であり、該棒状部材の周面に凹むように設けられた位置決め凹部に、前記ゲージが設けられ、
前記指し部は、前記位置決め凹部に差し込むように配置され、
前記指し部に対応して前記第1ブロックに設けられた掛止部と前記位置決め凹部の壁面との引っ掛かりにより、該棒状部材に対する前記カッターホルダの周方向の回転を規制する
ことを特徴とするスリッターの切断機構。
【請求項2】
前記カッターホルダが、前記カッターを前記ウエブに交差させたカット位置と、該カット位置から該ウエブに重ならないように該カッターを退避させた退避位置とになるように、前記位置決め凹部は、前記棒状部材に対する前記掛止部の前記周方向の移動を許容するように形成されている請求項1記載のスリッターの切断機構。
【請求項3】
ウエブの流れ方向と直交する該ウエブの幅方向へ長手が延びるように配置された棒状部材と、
前記ウエブを前記流れ方向に切断するカッターが設けられたカッターホルダと、を備え、
前記カッターホルダは、
前記棒状部材に取り付けられ、該棒状部材に沿って前記幅方向へ位置変更可能に設置される第1ブロックと、
前記第1ブロックを、前記棒状部材に固定した状態または前記幅方向へ位置変更可能な状態に変更する第1位置調節手段と、
前記カッターが設けられ、第2位置調節手段によって前記第1ブロックに対して前記幅方向へ位置変更可能に構成された第2ブロックと、
前記カッターに設けられ、前記棒状部材の前記幅方向に付されたゲージの目盛りを指して、前記カッターにおける前記幅方向の位置を示す指し部と、を有し、
前記第1ブロックには、前記棒状部材を挿脱可能な開口部および該シャフトの周面に合わせて形成された底部を有する取付凹部が設けられ、
前記第1位置調節手段は、
前記第1ブロックに対して回動可能に支持された一方の軸部を中心に、他方の軸部が前記取付凹部に収容された前記棒状部材の周面に対して接離するホルダ固定部と、
前記第1ブロックに設けられ、前記他方の軸部を押さえて前記取付凹部に収容された前記棒状部材から前記第1ブロックを抜け止めする状態と、該他方の軸部における前記棒状部材の周面から離れる方向の移動を許容する状態とに変更するホルダ操作部と、を備えている
ことを特徴とするスリッターの切断機構。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、スリッターにおいてウエブを切断するカッターを備えた切断機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
スリッターは、カッターによりウエブを切断する切断機構を備えている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1の切断機構は、スリット刃を有する刃物支持部が、スライドシャフトに通して取り付けられ、スライドシャフトに沿って横方向に移動して、所定のスリット幅に応じて位置を調節できるようになっている。スリット刃の位置を変更する場合は、スリット刃固定用ハンドルを緩めて刃物支持部を移動可能な状態として、スライドシャフトまたはスライドシャフトの近傍に取り付けた位置決め用のスケ-ルを使用して、目盛りを肉眼により目視することで移動距離を測って設定し、スリット刃固定用ハンドルを締め付けて固定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平9-174484号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の切断機構は、スライドシャフトに沿って全体を横方向へ移動して位置変更する構成であり、位置変更するたびにスリット刃固定用ハンドルを操作する必要があり、特に微調整する際に煩雑である。そして、スライドシャフトまたはスライドシャフトの近傍に取り付けた位置決め用のスケ-ルとスリット刃との間が離れているので、スリット刃の位置が直感的に判りにくい。
【0005】
本発明は、従来の技術に係る前記問題に鑑み、これらを好適に解決するべく提案されたものであって、位置調節が簡単なスリッターの切断機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を克服し、所期の目的を達成するため、本願の請求項1に係る発明のスリッターの切断機構は、
ウエブの流れ方向と直交する該ウエブの幅方向へ長手が延びるように配置された棒状部材と、
前記ウエブを前記流れ方向に切断するカッターが設けられたカッターホルダと、を備え、
前記カッターホルダは、
前記棒状部材に取り付けられ、該棒状部材に沿って前記幅方向へ位置変更可能に設置される第1ブロックと、
前記第1ブロックを、前記棒状部材に固定した状態または前記幅方向へ位置変更可能な状態に変更する第1位置調節手段と、
前記カッターが設けられ、第2位置調節手段によって前記第1ブロックに対して前記幅方向へ位置変更可能に構成された第2ブロックと、
前記カッターに設けられ、前記棒状部材の前記幅方向に付されたゲージの目盛りを指して、前記カッターにおける前記幅方向の位置を示す指し部と、を有していることを要旨とする。
【0007】
請求項1に係る発明によれば、第1ブロックを棒状部材に沿って移動させて行う位置調節と、カッターを有する第2ブロックを第1ブロックに対して位置を変える位置調節とにより、カッターを段階的に位置調節できる構成とすることで、微調節を行い易くすることができる。しかも、カッターに設けられた指し部が棒状部材に設けられたゲージを指す構成であるから、前述のように段階的に位置調節可能であっても、カッターの位置を直感的に判断し易く、カッターの位置調節が簡単である。
【0008】
請求項2に係る発明では、前記棒状部材は、丸棒形状であり、該棒状部材の周面に凹むように設けられた位置決め凹部に、前記ゲージが設けられ、
前記指し部は、前記位置決め凹部に差し込むように配置され、
前記指し部に対応して前記第1ブロックに設けられた掛止部と前記位置決め凹部の壁面との引っ掛かりにより、該棒状部材に対する前記カッターホルダの周方向の回転を規制することを要旨とする。
請求項2に係る発明によれば、掛止部と棒状部材における位置決め凹部の壁面との引っ掛かりにより、棒状部材に対するカッターホルダの周方向の回転を規制することができ、ウエブに交差する方向へのカッターの位置調節が簡単である。
【0009】
請求項3に係る発明では、前記カッターホルダが、前記カッターを前記ウエブに交差させたカット位置と、該カット位置から該ウエブに重ならないように該カッターを退避させた退避位置とになるように、前記位置決め凹部は、前記棒状部材に対する前記掛止部の前記周方向の移動を許容するように形成されていることを要旨とする。
請求項3に係る発明によれば、掛止部と棒状部材における位置決め凹部の壁面との引っ掛かりにより、カット位置と退避位置とに簡単に設定できる。
【0010】
請求項4に係る発明では、前記第1ブロックには、前記棒状部材を挿脱可能な開口部および該シャフトの周面に合わせて形成された底部を有する取付凹部が設けられ、
前記第1位置調節手段は、
前記第1ブロックに対して回動可能に支持された一方の軸部を中心に、他方の軸部が前記取付凹部に収容された前記棒状部材の周面に対して接離するホルダ固定部と、
前記第1ブロックに設けられ、前記他方の軸部を押さえて前記取付凹部に収容された前記棒状部材から前記第1ブロックを抜け止めする状態と、該他方の軸部における前記棒状部材の周面から離れる方向の移動を許容する状態とに変更するホルダ操作部と、を備えていることを要旨とする。
請求項4に係る発明によれば、第1位置調節手段としてチェーンのリンクを用いることができるので、コストを抑えることができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係るスリッターの切断機構によれば、カッターの位置調節を簡単にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の実施形態に係るスリッターを概略的に示す説明図である。
図2】実施形態のスリッターの巻き出し部を示す側面図である。
図3】実施形態のスリッターの巻き出し部を、該巻き出し部の正面側から示す概略斜視図である。
図4】実施形態のスリッターの巻き出し部を、該巻き出し部の背面側から示す概略斜視図である。
図5】実施形態の巻き出し部のガイドユニットおよび連係手段を、該巻き出し部の正面側から示す概略斜視図である。
図6】実施形態の巻き出し部のアームの位置決め構造を、該巻き出し部の正面側から概略的に示す斜視図である。
図7】実施形態の巻き出し部のアームの位置決め構造を、該巻き出し部の背面側から概略的に示す斜視図である。
図8】実施形態のアームを破断して、該アームの位置決め構造を示す断面図であり、(a)は固定位置にあり、(b)は解除位置にある。
図9】実施形態の切断機構を概略的に示す斜視図である。
図10】実施形態の切断機構を示す側面図であり、(a)はカッターホルダをシャフトに取り付けた状態であり、(b)はカッターホルダをシャフトに着脱する状態を示す。
図11】実施形態のカッターホルダを、図10と反対側から示す側面図であり、(a)はカッターホルダがカット位置にあり、(b)はカッターホルダが退避位置にある。
図12】実施形態のカッターホルダを、一部切り欠いて示す平面図である。
図13】実施形態の調整ローラユニットを、巻き取り部の正面側から概略的に示す斜視図である。
図14】実施形態の調整ローラユニットの1つを概略的に示す斜視図である。
図15】実施形態の調整ローラユニットを概略的に示す側面図であり、(a)はウエブの巻き取り時の状態を示し、(b)は調整ローラユニットを処理済ロールから退避させた状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
次に、本発明に係るスリッターの切断機構につき、好適な実施例を挙げて、添付図面を参照して以下に説明する。
【0014】
ウエブに所定の処理を施すウエブ処理機としては、ウエブを必要な幅にカットしてロール状に巻き取る加工を行うスリッターや、加工ラインにおいて一旦巻き取ったウエブを仕上げ加工や2次加工などの処理をした後に再び巻き取るリワインダーなどが挙げられる。以下の実施形態では、スリッターを例示して説明する。また、ウエブとしては、合成樹脂からなるフィルム、ペーパー、アルミニウムなどの金属箔等を挙げることができ、ウエブを巻芯に巻き掛けたロール状物をロールという。そして、特に区別する場合は、ウエブが巻き出される処理前のロールを「原反ロール」といい、所定処理後のウエブを巻き取って形成されるロールを「処理済ロール」という。
【実施例
【0015】
(スリッターの概要)
図1に示すように、実施形態に係るスリッター(ウエブ処理機)10は、原反ロール14を支持する巻き出し部(ロール支持装置)18と、ウエブ12を所定幅で切断するカッター20を備えた切断機構と、所定幅に切断されたウエブ12を巻き取って処理済ロール16とする巻き取り部(巻き取り装置)22とを備えている。スリッター10には、巻き出し部18と巻き取り部22との間に設置された複数の本体ローラRによって、ウエブ12が巻き出し部18から巻き取り部22に向かって走行するパスラインが構成されている。また、スリッター10は、巻き取り部22において、巻取軸24に保持された巻芯13に巻き取るウエブ12を整える調整ローラ28,30を有する調整ローラユニット(ローラユニット)32を備えている。そして、スリッター10は、巻き出し部18に支持された原反ロール14から巻き出されたウエブ12を、パスラインの途中でカッター20によって該ウエブ12の流れ方向に切断し、所定幅にしたウエブ12を巻き取り部22で複数箇所に分けて巻芯13にそれぞれ巻き取って、所定幅のウエブ12が巻かれた処理済ロール16を得るように構成されている。
【0016】
以下の説明では、スリッター10において、巻き出し部18が設けられる側を前側とし、巻き取り部22が設けられる側を後側として、前後方向を指称する。従って、実施形態では、巻き出し部18において該巻き出し部18に作業員がアクセスする正面側が、スリッター10の前面であり、巻き取り部22において該巻き取り部22に作業員がアクセスする正面側が、スリッター10の後面である。また、スリッター10では、前後方向と交差する水平方向を左右方向といい、左右方向が巻芯13の軸方向になるように原反ロール14および処理済ロール16が支持されて、ウエブ12の幅方向が左右方向になっている。そして、巻き出し部18からパスラインを経て巻き取り部22に向かうウエブ12の走行方向を、ウエブ12の流れ方向といい、図1に示すように、ウエブ12の流れ方向は本体ローラRに案内されて向きが変化する。
【0017】
(巻き出し部)
図2図4に示すように、巻き出し部18は、原反ロール14を支持する原反ロール支持部34と、原反ロール14から巻き出されたウエブ12を案内する2基のガイドローラ38,38を備えたガイドローラユニット36とを備えている。巻き出し部18は、原反ロール支持部34で支持された原反ロール14と、ガイドローラ38,38(ガイドローラユニット36)とが同調して、左右方向(原反ロール14における巻芯13の軸方向)に移動するように構成されている。巻き出し部18は、図示しないセンサによって原反ロール14から引き出されたウエブ12の縁を検知することでウエブ12の左右方向の位置ずれを判別し、この結果をもとに、原反ロール14およびガイドローラ38,38を左右方向に往復移動させている。これにより、巻き出し部18は、原反ロール14に巻き掛けられたウエブ12が左右方向へ位置ずれしているなどに起因して、原反ロール14から引き出されたウエブ12が蛇行することを防止している。
【0018】
(巻き出し部-原反ロール支持部)
図2図4に示すように、原反ロール支持部34は、スリッター10の本体フレーム11に設けられ、本体フレーム11に対して姿勢変位可能なアームベース42と、アームベース42に左右方向に離して設けられた一対のアーム44,44とを備えている。各アーム44は、アームベース42に対して左右方向に移動可能に設けられている。原反ロール支持部34は、左右一対のアーム44,44によって巻芯13を左右方向両側から支持して、両アーム44,44の間において原反ロール14を軸周りに回転可能に保持する。
【0019】
(巻き出し部-原反ロール支持部-アームベース)
図2に示すように、アームベース42は、板状のアームベース42の前面から前方へ突き出るように設けられた一対のアーム44,44が、上下方向へ移動するように姿勢変位可能になっている。具体的には、アームベース42の後面に左右方向に離して設けられた一対のベース支持片42aの下部が、ベース回動軸(回動軸)43を介して本体フレーム11にそれぞれ取り付けられている。アームベース42は、ベース回動軸43を支点として左右方向に延びる軸周りに姿勢変位するように、昇降アクチュエータ(第1アクチュエータ)46によってベース支持片42aの後端部が動かされる。これにより、アームベース42は、アームベース42が本体フレーム11に沿って延在して、両アーム44,44が前方へ向けて水平に延びる上昇姿勢(図2(a)参照)と、上昇姿勢よりも両アーム44,44が下降するようにアームベース42が前方へ傾く下降姿勢(図2(b)参照)との間で姿勢変位する。原反ロール支持部34は、搬送してきた原反ロール14を下降姿勢において両アーム44,44の間に挟み、下降姿勢から上昇姿勢に姿勢変位させることで原反ロール14を持ち上げ、上昇姿勢において原反ロール14からウエブ12が巻き出される。図4に示すように、昇降アクチュエータ46は、左右のベース支持片42a,42aのうち、本体フレーム11の外側に配置された左側のベース支持片42aに接続されて、本体フレーム11の外側に設置されている。
【0020】
(巻き出し部-原反ロール支持部-アーム)
図3に示すように、各アーム44は、アームベース42の前面に左右方向に延びるように設けられたレールと該レールに取り付くコアとからなるアームスライダ48を介して、アームベース42に支持されている。各アーム44は、アームスライダ48によって、アームベース42に対して左右方向へ移動可能になっている。アーム44は、アームスライダ48により、アームベース42の前面と、該アームベース42の前面に対面するアーム台座44aの後面との間に隙間があいている。両アーム44,44は、連係手段52によって互いに連結されており、ガイドアクチュエータ(第2アクチュエータ)50によって、一体的に左右方向へ往復移動される。また、両アーム44,44は、連係手段52によって、ガイドローラユニット36と左右方向への動きが連動するように構成されている。
【0021】
(巻き出し部-ガイドローラユニット)
図2図4に示すように、ガイドローラユニット36は、アームベース42の上方に位置して、アーム44の根元側に設置されている。ガイドローラユニット36は、両アーム44,44に支持された巻芯13と平行するように設けられて、原反ロール14から引き出されたウエブ12を案内する2基のガイドローラ38,38を有している。ガイドローラユニット36は、本体フレーム11に、ユニットスライダ54を介して左右方向へ移動可能に設けられ、アーム44を動かすガイドアクチュエータ50によって、左右方向へ往復移動される。ここで、ガイドローラユニット36は、連係手段52によって、両アーム44,44と左右方向への動きが連動するように構成されている。
【0022】
(巻き出し部-連係手段)
図3に示すように、連係手段52は、両アーム44,44に繋がり、アームベース42と共に姿勢変位する第1連係部56と、ガイドローラユニット36に繋がり、第1連係部56の姿勢変位を許容する可変部58を介して第1連係部56と連結する第2連係部60とを備えている。図5に示すように、第1連係部56は、アームベース42の前側に配置された前支え部56aを有している。前支え部56aは、アームスライダ48におけるアームベース42の前面下側のレールを用いた連係スライダ59を介して、アームベース42に左右方向へ移動可能に取り付けられている(図3参照)。また、第1連係部56は、前支え部56aの上部から左右方向へ延びるように設けられた一対のアーム係止部57,57を有し、アーム係止部57に対して後述する位置決め構造によりアーム44が固定されている。第2連係部60は、アームベース42の上側に配置されるガイドローラユニット36に上端が固定されて、アームベース42の後側に上下方向に延びるように配置された柱状の部材である(図4参照)。可変部58は、第1連係部56の前支え部56aの下端部と、第2連係部60の下端部とを、アームベース42の下側でヒンジ接続するピボットである。連係手段52は、左右方向に延在する可変部58の軸を、アームベース42の姿勢変位の支点となるベース回動軸43と同軸的に配置してある(図3参照)。
【0023】
図4に示すように、連係手段52は、本体フレーム11と第2連係部60との間に設置されたガイドアクチュエータ50によって、第2連係部60が左右方向へ往復移動される。これにより、第2連係部60に繋がる第1連係部56のアーム係止部57に固定されたアーム44と、第2連係部60の上端部に固定されたガイドローラユニット36とが、左右方向へ一体的に移動する。また、連係手段52は、第1連係部56の前支え部56aが、ガイドローラユニット36に固定された第2連係部60に対して可変部58を支点として回動が許容されることで、アームベース42の姿勢変位につれて第1連係部56が姿勢変位する。このように、アームベース42に支持された両アーム44,44は、連係手段52によりガイドローラユニット36と左右方向へ同調して移動するが、アームベース42(両アーム44,44)は、ガイドローラユニット36と独立して上昇姿勢と下降姿勢との間で姿勢変位可能になっている。
【0024】
(巻き出し部の作用効果)
前述した巻き出し部18は、両アーム44,44を支持するアームベース42ごと左右方向に移動するのではなく、アームベース42に対して両アーム44,44および両アーム44,44に支持された原反ロール14だけが左右方向へ移動する構成である。これにより、ガイドローラユニット36と共に両アーム44,44を移動させても、ガイドアクチュエータ50の負担を抑えることができる。また、ガイドローラユニット36と独立してアームベース42が姿勢変位して、両アーム44,44を上昇姿勢または下降姿勢にする構成であるから、アームベース42を姿勢変位させる昇降アクチュエータ46の負担を軽減することができる。従って、アームベース42、アーム44,44およびガイドローラユニット36を動かすアクチュエータ46,50の大型化を回避して、巻き出し部18全体をコンパクトにすることができる。例えば、アーム44を上昇姿勢と下降姿勢にする昇降アクチュエータ46やガイドローラユニット36をアームベース42に設置するとアームベース42が大型化するが、ガイドローラユニット36、昇降アクチュエータ46およびガイドアクチュエータ50が本体フレーム11に設置されているので、アームベース42を小型化することができ、巻き出し部18の前後寸法を抑えることができる。
【0025】
巻き出し部18は、ガイドアクチュエータ50の負担が小さくなることで、ガイドアクチュエータ50の駆動に伴う両アーム44,44およびガイドローラユニット36のそれぞれについて、駆動に対する動作の応答性を向上することができる。これにより、両アーム44,44の左右移動動作と、ガイドローラユニット36の左右移動動作とのずれがなくなり、原反ロール14から巻き出したウエブ12の蛇行を適切に修正することができる。
【0026】
巻き出し部18は、ガイドアクチュエータ50の駆動を、連係手段52によってアーム44,44およびガイドローラユニット36の両方に伝える構成であるが、ガイドローラユニット36側の第2連係部60に対して、アーム44側の第1連係部56がアームベース42と共に姿勢変位することが可変部58で許容される。このように、連係手段52が、アームベース42の姿勢変位を妨げない。そして、連係手段52の可変部58とアームベース42のベース回動軸43とが同軸的に配置してあるので、アームベース42を円滑に姿勢変位させることができる。また、1つのガイドアクチュエータ50により連係手段52を移動させることで、アーム44,44およびガイドローラユニット36を左右方向へ移動させる構成なので、部品点数を少なくすることができる。しかも、アーム44,44およびガイドローラユニット36は、連係手段52で繋がっているので、同調性が高く、原反ロール14から巻き出したウエブ12の蛇行を適切に修正することができる。
【0027】
巻き出し部18は、両アーム44,44が原反ロール14を着脱する下降姿勢になるようにアームベース42を前傾させても、ガイドローラユニット36が前傾することなく本体フレーム11に沿って立ち上がった姿勢で保たれる。これにより、原反ロール14の着脱に際して、ガイドローラユニット36が邪魔になることがなく、原反ロール14のセットの作業性や安全性を向上することができる。
【0028】
(アームの位置決め構造)
次に、図6図8を主に参照して、一対のアーム44,44が相対的に近づくまたは離れる接離方向(位置調節方向:実施形態では左右方向)の間隔を保つように、各アーム44を位置決めする位置決め構造について説明する。左右のアーム44,44のそれぞれに位置決め構造を備えているが、その構成は同じなので、右側のアーム44の位置決め構造のみ説明する。
【0029】
(アームの位置決め構造-概要)
図6図8に示すように、アーム44の位置決め構造は、アームベース42の前面に沿って左右方向へ延びるように設けられて、左右方向に並べて複数の受部57aが形成されたアーム係止部57と、アーム44に設けられて、アーム係止部57の受部57aに係脱可能なアーム固定部62とを有している。アーム固定部62は、アーム係止部57に対する左右方向の移動が規制されるように受部57aに引っ掛かる固定位置(図8(a)参照)と、受部57aから外れてアーム44の左右方向の移動を許容する解除位置(図8(b)参照)との間で、前後方向(アーム44の突出方向)へ移動可能に構成されている。また、アーム固定部62は、コイルばね(実施形態)などの弾性部材64によって、固定位置になるようにアームベース42側へ向けて弾力的に付勢されている。
【0030】
(アームの位置決め構造-アーム係止部)
図5図7に示すように、アーム係止部57は、左右方向に並ぶ複数の歯57bの間にある歯溝によって受部57aが構成されたラックである。アーム係止部57は、アームスライダ48によってアームベース42に対して間隔をあけて支持されたアーム44のアーム台座44aと、アームベース42との間を通るように設けられている。また、アーム係止部57は、アーム台座44aにおけるアームベース42に相対する面から凹む台座凹部44bに、歯57bが差し込まれるように配置されて、受部57aの底(歯溝の底)がアームベース42とアーム台座44aとの間に位置している。左右のアーム44,44に対応する左右のアーム係止部57,57は、前支え部56aによって連結されており、左右のアーム係止部57,57が、ガイドアクチュエータ50によってアームベース42に対して左右方向へ一体的に移動させられる。従って、位置決め構造で固定された左右のアーム44,44は、互いの左右方向の間隔を保ったまま、アームベース42に対して左右方向へ一体的に移動するようになっている。
【0031】
(アームの位置決め構造-アーム固定部)
図6および図8に示すように、アーム固定部62は、筒状に形成されたアーム44の中空部を前後方向に通るように配置された棒状部材である。アーム固定部62は、アームベース42から前方へ突出するアーム44の突出方向(前後方向)へ沿って前方または後方へ移動可能になっている。アーム固定部62は、アーム44のアーム台座44aに、台座凹部44bの底を前後方向へ貫通するように形成された台座通孔45を通って、該アーム固定部62におけるアームベース42側の根元端部が後方へ突出しており、該根元端部が固定位置(図8(a))において解除位置(図8(b))よりも後方へ突き出るようになっている。また、アーム固定部62は、アーム44の突出端側から該アーム44の外側に露出するように設けられて、該アーム固定部62を固定位置から解除位置へ向けて移動させるように操作可能な操作部63を有している。実施形態の操作部63は、アーム44の突出端面(前端面)から前方へ突出しており、操作部63を前方へ引くことで、アーム固定部62が固定位置から解除位置へ移動される。
【0032】
図7および図8に示すように、アーム固定部62は、該アーム固定部62の根元端部に設けられて、受部57aに嵌まる嵌合片62aと、該アーム固定部62の根元端部に設けられて、嵌合片62aよりもアームベース42側(後方)へ向けて突出する姿勢保持片62b,62cとを備えている。嵌合片62aは、上下方向(位置調節方向と直交する方向)に軸が延びる円柱状の部材であり、例えば、嵌合片62aとしてスプリングピンを用いると、アーム固定部62から脱落し難くなるので好ましい。アーム固定部62の固定位置において、嵌合片62aが受部57aに嵌まり、アーム固定部62の解除位置において、嵌合片62aが受部57aから前方へ抜け出る。姿勢保持片62b,62cは、アーム固定部62の固定位置において、アーム係止部57の上面または下面に重なるように配置されており、実施形態では、アーム係止部57を上下から挟むように一対の姿勢保持片62b,62cが設けられている。一対の姿勢保持片62b,62cのうちの下側(一方)の第1姿勢保持片62bは、アーム固定部62の解除位置にあっても、受部(歯溝)57aの底を越えてアーム係止部57に重なるように形成されている。一対の姿勢保持片62b,62cのうちの上側(他方)の第2姿勢保持片62cは、アーム固定部62の解除位置において、受部(歯溝)57aの底よりも歯57bの先端側に配置されるが、歯57bと一部重なっている。なお、図8に示す符号65は、アーム44に引っ掛かって、アーム固定部62の前後移動範囲を規定する位置決め片である。
【0033】
(アームの位置決め構造の作用効果)
前述したようにアーム44は、操作部63を操作してアーム固定部62を弾性部材64の付勢に抗して固定位置から解除位置へ移動させるだけの簡単な作業で左右方向へ移動可能になり、アーム44の位置や左右のアーム44の間隔を調節することができる。アーム44の位置調節の際に、操作した操作部63をそのまま持って左右方向へ移動すればアーム44を動かすことができ、位置調節作業が簡単である。また、アーム固定部62が、弾性部材64によって固定位置になるように付勢されているので、操作部63を離すだけで、アーム固定部62が固定位置に自然に戻り、アーム44が位置決めされる。そして、アーム固定部62は、弾性部材64により力が加わっているので、アーム係止部57に対して位置決めした状態でアーム44を保持できる。しかも、操作部63が、アーム44の突出端側に設けられているので、アーム44の位置調節に関する操作を行い易い。例えば、アーム台座44aにアーム係止部57に噛み合うピンを設けると、アーム44が邪魔になってピンを手動操作することが難しくなるので、ピンをシリンダ等で駆動することなり、位置決め構造が複雑になってしまう。実施形態に係るアーム44の位置決め構造によれば、アクチュエータなどの駆動手段を用いることなく、アーム係止部57に引っ掛かるアーム固定部62とアーム固定部62を付勢する弾性部材64との簡単で、かつ少ない部品点数によって、位置調節可能なアーム44の位置決め構造を構成することができる。そして、アーム係止部57として、汎用品であるラックを用いることで、コストを下げることができる。
【0034】
アーム固定部62は、丸棒状の部材であるが、アーム固定部62に設けられた姿勢保持片62b,62cが固定位置においてアーム係止部57に引っ掛かるので、アーム固定部62が回転しないように姿勢を保持することができる。そして、アーム固定部62は、適切な姿勢が保たれるので、嵌合片62aと受部57aとの嵌合不良を回避することができ、嵌合片62aを受部57aにより確実に嵌め合わせることができる。また、アーム固定部62を解除位置に移動しても、第1姿勢保持片62bがアーム係止部57に重なったままなので、解除位置においてもアーム固定部62が回転しないように姿勢を保持することができる。しかも、解除位置であってもアーム係止部57に重なる第1姿勢保持片62bとアーム係止部57との関係が、アーム44を左右方向へ移動する際にガイドとしても機能する。
【0035】
アーム44のアーム台座44aとアームベース42との間には、アーム44を左右方向へ移動可能に支持するアームスライダ48によって隙間ができる。この隙間を用いてアーム係止部57を配置することで、スペースを有効利用している。そして、アーム係止部57の歯57bをアーム44のアーム台座44aの台座凹部44bに差し込むように配置することで、アーム台座44aとアームベース42とを近づけることができる。これにより、アーム係止部57をアーム44とアームベース42との間に設置することに起因して、アーム44が前方へ大きく張り出すことを回避でき、巻き出し部18の前後寸法をコンパクトにできる。
【0036】
(切断機構)
次に、図9図12を主に参照して、パスラインにおいてウエブ12を流れ方向に切断する切断機構について説明する。なお、実施形態では、左右方向へ離して配置される4つのカッター20によって、5つの処理済ロール16を形成するようにウエブ12を切断している。
【0037】
(切断機構-概要)
図9に示すように、切断機構は、左右方向(ウエブ12の流れ方向と直交するウエブ12の幅方向)へ長手が延びるように配置されたシャフト(棒状部材)66と、ウエブ12を流れ方向に切断するカッター20を有するカッターホルダ68とを備えている。カッターホルダ68は、シャフト66に着脱可能に取り付けられている。また、カッターホルダ68は、左右方向へ移動しないようにシャフト66に固定された固定状態と、シャフト66に沿って左右方向へ位置変更可能な調節状態とに変更可能であり、ウエブ12をカットする幅を変更することができる。シャフト66には、左右方向に離して複数のカッターホルダ68が設置されている。そして、図示しない操作機構の操作によりシャフト66を左右方向の軸周りに回動して複数のカッターホルダ68の姿勢を一括して変えることで、カッター20をウエブ12に交差させたカット位置と、カット位置からウエブ12に重ならないようにカッター20を上方へ退避させた退避位置とに切り替え可能である。
【0038】
(切断機構-カッターホルダ)
図9図12に示すように、カッターホルダ68は、丸棒形状のシャフト66に取り付けられ、シャフト66に沿って左右方向へ位置変更可能に設置される第1ブロック70と、第1ブロック70を、前記固定状態または前記調節状態に変更する第1位置調節手段72とを有している。また、カッターホルダ68は、第1ブロック70に設けられ、第2位置調節手段76によって、第1ブロック70に対して左右方向へ位置変更可能に構成された第2ブロック74を備えており、第2ブロック74にカッター20が設けられている。更に、カッターホルダ68は、カッター20に設けられ、シャフト66の左右方向に付されたゲージ67の目盛りを指して、カッター20における左右方向の位置を示す指し部78を備えている。
【0039】
(切断機構-シャフト)
シャフト66は、左右の本体フレーム11,11の間に架設され、図10および図11に示すように、シャフト66には、該シャフト66の周面から凹むように位置決め凹部66aが設けられている。そして、位置決め凹部66aに、ゲージ67が設けられている。位置決め凹部66aは、シャフト66の周面を、指し部78の周方向寸法よりも大きく開口するV字状に切り欠いて形成されている。
【0040】
(切断機構-カッターホルダ-第1ブロック)
図9図11に示すように、第1ブロック70には、丸棒状のシャフト66を挿脱可能な開口部および該シャフト66の周面に合わせて円弧状に形成された底部を有する取付凹部80が設けられている。第1ブロック70は、取付凹部80にシャフト66を収容して、該取付凹部80を形成する上側の辺部に設けられた第1位置調節手段72と、該取付凹部80を形成する下側の辺部との間にシャフト66を挟んで、シャフト66に取り付けられる。
【0041】
(切断機構-カッターホルダ-第1位置調節手段)
図11および図12に示すように、第1位置調節手段72は、チェーンのリンクにより構成されたホルダ固定部82と、ホルダ固定部82をコントロールするホルダ操作部84とを備えている。ホルダ固定部82は、左右方向に対向配置された一対のリンクプレート82a,82aと、一対のリンクプレート82a,82a間にそれぞれ架け渡して、リンクプレート82aの長手方向に離して設けられた一対の軸部82b,82cとを備えており、一般的なチェーンを構成するリンクを流用したものである。ホルダ固定部82は、第1ブロック70における取付凹部80を形成する上側の辺部を一対のリンクプレート82a,82aで左右から挟むと共に、第1軸部(一方の軸部)82bを該辺部に通して、該第1軸部82bを中心に左右方向の軸周りに回動可能に取り付けられている。ホルダ固定部82は、第2軸部(他方の軸部)82cが取付凹部80の開口部側に配置されて、第2軸部82cが取付凹部80に収容されたシャフト66の周面に対して接離するように回動する。第2軸部82cには、ローラ状の押圧片82dが設けられており、押圧片82dがシャフト66の周面に接触するようになっている。
【0042】
図10(a)に示すように、ホルダ操作部84は、第1ブロック70における取付凹部80を形成する上側の辺部にねじ込まれたハンドルであり、該ホルダ操作部84を一方へ回転することで下降して、押圧片82dをシャフト66の周面に向けて下側へ押す。図10(b)に示すように、ホルダ操作部84は、他方へ回転することで上昇して、押圧片82dがシャフト66の周面から離れるように上方へ向けた移動を許容する。第1位置調節手段72は、ホルダ操作部84で押圧片82dを押さえて取付凹部80に収容されたシャフト66から第1ブロック70を抜け止めする固定状態と、押圧片82dにおけるシャフト66の周面から離れる方向の移動を許容する調節状態とに変更し得る。調節状態では、押圧片82dによるシャフト66の周面への押圧が解除されることで、シャフト66に沿った第1ブロック70(カッターホルダ68)の左右方向の移動が許容される。そして、ホルダ操作部84を、調節状態を越えて緩めることで、押圧片82dが取付凹部80の開口部から退避可能となり、第1ブロック70(カッターホルダ68)をシャフト66に着脱可能になる。
【0043】
(切断機構-カッターホルダ-第2ブロック, 第2位置調節手段)
図12に示すように、第2ブロック74は、第1ブロック70に左右方向へ通された2つの案内軸75,75によって、第1ブロック70に対して、左右方向へ移動可能に取り付けられている。第2ブロック74には、カッター20が、該第2ブロック74における第1ブロック70と反対側の面に沿って取り付けられている。第2位置調節手段76は、つまみ76aを回すと第2ブロック74が左右方向へ移動するように構成された送りねじ構造である。第1ブロック70と第2ブロック74との間には、第2位置調節手段76の送りねじを囲むようにコイルばね86が配置されて、コイルばね86によって第2ブロック74が第1ブロック70から離れるように弾力的に付勢されている。
【0044】
(切断機構-カッターホルダ-指し部)
図9および図12に示すように、指し部78は、カッター20におけるシャフト66に相対する端部からシャフト66に向けて突出するように形成された突片であり、シャフト66の位置決め凹部66aに差し込まれるように配置されている。指し部78は、カッター20の刃先の延長線上に配置されており、指し部78の位置がカッター20の刃先の位置と同じである。第2ブロック74には、第2ブロック74におけるシャフト66に相対する端部からシャフト66に向けて突出するように差込突部74aが形成されており、指し部78と差込突部74aとが重なっている。指し部78は、シャフト66の左右方向に付されたゲージ67の目盛りを指しており、これによりカッター20の刃における左右方向の位置が判るようになっている。
【0045】
図10に示すように、第1ブロック70の取付凹部80には、指し部78および指し部78と同様に位置決め凹部66aに差し込まれる差込突部74aに対応する位置に、掛止部71が設けられている。掛止部71は、例えばピンが用いられ、指し部78および差込突部74aと左右方向に重なる位置に配置されて、指し部78および差込突部74aよりもシャフト66の周方向の寸法が大きく設定されている。図11に示すように、掛止部71は、位置決め凹部66aに差し込まれて、カッターホルダ68をシャフト66に対して周方向に回転した際に、位置決め凹部66aの壁面に引っ掛かる。カッターホルダ68は、掛止部71と位置決め凹部66aの壁面との引っ掛かりにより、シャフト66に対する周方向の回転が規制されて、周方向に位置決めできるようになっている。カッターホルダ68が、カッター20をウエブ12に交差させたカット位置(図11(a)参照)と、該カット位置からウエブ12に重ならないようにカッター20を退避させた退避位置(図11(b)参照)とになるように、位置決め凹部66aは、シャフト66に対する掛止部71の周方向の移動を許容するように形成されている。このように、切断機構は、シャフト66を回動することで、シャフト66に取り付けられた複数のカッターホルダ68をカット位置と退避位置との間で一括して切り替えるだけでなく、個々のカッターホルダ68をカット位置と退避位置との間で互いに独立して切り替えることができる。
【0046】
(切断機構の作用効果)
切断機構は、第1ブロック70をシャフト66に沿って移動させて大雑把に位置調節を行ってから第1位置調節手段72によって第1ブロック70をシャフト66に固定する。次に、第2位置調節手段76を操作して、第2ブロック74を第1ブロック70に対して左右方向へ移動することで、カッター20の位置を調節することができる。このように、第1ブロック70のシャフト66に対する位置調節と、カッター20を有する第2ブロック74を第1ブロック70に対して位置を変える位置調節とにより、カッター20を段階的に位置調節できる構成とすることで、カッター20の位置の微調節を行い易くすることができる。しかも、カッター20に設けられた指し部78がシャフト66に設けられたゲージ67を指す構成であるから、前述のように段階的に位置調節可能であっても、カッター20の位置を直感的に判断し易く、カッター20の位置調節が簡単である。そして、第1位置調節手段72としてチェーンのリンクを用いることで、コストを抑えることができる。
【0047】
カッターホルダ68は、掛止部71とシャフト66における位置決め凹部66aの壁面との引っ掛かりにより、シャフト66に対するカッターホルダ68の周方向の回転を規制することができ、ウエブ12に交差する方向へのカッター20の位置調節が簡単である。しかも、カッターホルダ68は、掛止部71を位置決め凹部66aの一方の壁面に当てることで、カッター20がウエブ12に交差するカット位置に位置決めすることができる。また、カッターホルダ68は、掛止部71を位置決め凹部66aの他方の壁面に当てることで、カッター20がウエブ12から退避する退避位置に位置決めすることができる。このように、掛止部71と位置決め凹部66aの壁面との引っ掛かりにより、カット位置と退避位置とに簡単に設定できる。
【0048】
(調整ローラユニット)
次に、図13図15を主に参照して、巻き取り部22におけるウエブ12の巻き取り時に、巻き込まれる空気量を制限することで、処理済ロール16を整える調整ローラ28,30を有する調整ローラユニット32について説明する。
【0049】
(調整ローラユニット-概要)
図13に示すように、調整ローラユニット32は、ウエブ12を巻取軸24に巻き取って処理済ロール16を形成する巻き取り部(巻き取り装置)22に設けられている。調整ローラユニット32は、処理済ロール16の厚みの変化に応じて巻取軸24に対して変位する第1調整ローラ28および第2調整ローラ30をユニットフレーム88に有しており、両調整ローラ28,30によってウエブ12の巻き取りに際する巻き込み空気量を制御している。巻き取り部22には、巻取軸24が上下方向に離して2基設けられており、上下の巻取軸24,24のそれぞれに対応して、調整ローラユニット32が設置されている。ここで、上下の調整ローラユニット32,32は、第2調整ローラ30の設置数が異なる以外は同じ構成であるので、片側のみ説明する。
【0050】
(調整ローラユニット-ユニットフレーム)
図1に示すように、調整ローラ28,30を支持するユニットフレーム88は、巻取軸24よりもウエブ12を巻き出す巻き出し部18側に配置されている。そして、ユニットフレーム88は、巻取軸24に近づけた位置から巻き出し部18側への前方に向けて、本体フレーム11に対して直線的に移動可能に設けられている(図15参照)。具体的には、図13に示すように、ユニットフレーム88は、左右に対向配置された一対のユニットプレート88a,88aを、左右方向に延びるユニットステー88bで連結して構成されている。ユニットフレーム88は、ユニットプレート88aの外側にそれぞれ設けられた直動ガイド90に左右両側から支持されて、本体フレーム11に対して前後方向へ直線的に移動可能に構成されている。ユニットフレーム88は、本体フレーム11との間に設けられたユニットアクチュエータ92の作動によって前後方向へ移動する。図14に示すように、ユニットフレーム88は、ユニットプレート88aの外側にそれぞれ設けられたユニットラック94が、左右の本体フレーム11,11間に左右方向へ延在するように支持された旋回軸96に左右方向に離して設けられた一対のピニオン98,98にそれぞれ噛み合っている。これにより、ユニットフレーム88は、左右のユニットプレート88a,88aが同期して移動するようになっている。
【0051】
図15(a)に示すように、ユニットフレーム88は、スリッター10における巻き出し部18と巻き取り部22との間において第1調整ローラ28に向けてウエブ12を案内するパスラインを構成する本体ローラRの下側のスペースに配置されている。そして、図15(b)に示すように、ユニットフレーム88は、巻き出し部18側へ向かう前方移動によりスリッター10の内側に入るように変位し、第1調整ローラ28および第2調整ローラ30が、本体ローラRの下側に位置するように退避する。
【0052】
(調整ローラユニット-第1調整ローラ)
図13および図14に示すように、第1調整ローラ28は、左右の端部がユニットフレーム88における左右のユニットプレート88a,88aにそれぞれ回転可能に支持され、左右方向に延びる軸周りに回転可能に構成されている。第1調整ローラ28は、巻取軸24における左右方向に離した複数箇所で巻き取られる処理済ロール16の全てに対応し得るように、左右方向に幅広に形成されている。第1調整ローラ28は、ウエブ12の巻き取りの際に、巻取軸24にウエブ12を巻き取って形成される処理済ロール16の周面に押し付けられるように配置される所謂タッチローラである。第1調整ローラ28は、作動制御されたユニットアクチュエータ92によりユニットフレーム88が前後方向へ直線的に移動することで、ウエブ12の巻き取りに伴う処理済ロール16の厚みの変化に応じて前方へ直線的に変位しつつ所定の押圧力で処理済ロール16を押さえ付ける(図15(a)参照)。第1調整ローラ28は、ユニットフレーム88が前方へ移動することで巻き取り部22の正面と反対側へ直線的に移動して、巻取軸24に支持された処理済ロール16から離れる位置まで退避可能になっている(図15(b)参照)。なお、第1調整ローラ28は、その中心軸が巻取軸24の中心軸と同じ高さになるように配置されている。
【0053】
(調整ローラユニット-第2調整ローラ)
図13に示すように、調整ローラユニット32には、巻取軸24における左右方向に離した複数箇所で巻き取られる処理済ロール16の1つずつに対応して、第2調整ローラ30が設けられている。上段の調整ローラユニット32には、3箇所で巻き取られる処理済ロール16に対応して、左右方向に並べて3基の第2調整ローラ30が設置され、下段の調整ローラユニット32には、2箇所で巻き取られる処理済ロール16に対応して、左右方向に並べて2基の第2調整ローラ30が設置されている。そして、第2調整ローラ30は、ウエブ12の巻き取りの際に、巻取軸24にウエブ12を巻き取って形成される処理済ロール16の周面に押し付けられるように配置される所謂タッチローラである。第2調整ローラ30は、巻取軸24よりも上方に配置されて、処理済ロール16の上端から前端にかけた周面に当たるようになっている。
【0054】
図13および図14に示すように、各第2調整ローラ30は、ユニットフレーム88における左右のユニットプレート88a,88aに架け渡されたアーム軸100に一端が固定されたローラアーム102の他端に設けられている。ローラアーム102は、その一端が固定されるアーム軸100を支点として他端が揺動変位可能になっている。第2調整ローラ30は、ローラアーム102に対して左右方向に延びる軸周りに回転可能に支持されており、1つの処理済ロール16の左右幅に合わせて、第1調整ローラ28よりも幅狭に形成されている。アーム軸100は、一方のユニットプレート88aに設置されたアームアクチュエータ104により回動され、これによりローラアーム102の一端を中心に第2調整ローラ30が揺動変位される。このように、第2調整ローラ30は、作動制御されたアームアクチュエータ104によりローラアーム102がスイング動作することで、ウエブ12の巻き取りに伴う処理済ロール16の厚みの変化に応じて、巻取軸24に対して近づくまたは遠ざかるように揺動変位しつつ所定の押圧力で処理済ロール16を押さえ付ける(図15(a)参照)。また、第2調整ローラ30は、作動制御されたユニットアクチュエータ92によりユニットフレーム88が前後方向へ直線的に移動することに伴って、巻取軸24に対して直線的に変位する。このように、第2調整ローラ30は、複合的に変位する。
【0055】
図15(b)に示すように、第2調整ローラ30は、処理済ロール16から離すように上方へ回動することで、処理済ロール16の周面に接触しないように退避させることが可能である。また、第2調整ローラ30は、ユニットフレーム88が前方へ移動することで巻き取り部22の正面と反対側へ直線的に移動して、巻取軸24に支持された処理済ロール16から離れる位置まで退避可能になっている。このように、調整ローラユニット32は、第1調整ローラ28を処理済ロール16に接した状態を保ったまま、第2調整ローラ30を処理済ロール16から退避させることが可能である。また、調整ローラユニット32は、ユニットフレーム88を前方へ退避させることで、第1調整ローラ28および第2調整ローラ30の両方を処理済ロール16から退避させることが可能である。
【0056】
(調整ローラユニット-作用効果)
前述した調整ローラユニット32は、ユニットフレーム88が、巻取軸24よりも巻き取り部22の正面側と反対になる巻き出し部18側に設けられると共に、ユニットフレーム88が巻き出し部18側へ移動する構成であるので、巻き取り部22の正面側からアクセスする際にユニットフレーム88が妨げにならない。また、第1調整ローラ28および第2調整ローラ30は、ユニットフレーム88に設けられて、ユニットフレーム88が巻き出し部18側へ移動するにつれて一緒に移動するので、巻き取り部22の正面側からアクセスする際に第1調整ローラ28および第2調整ローラ30が妨げにならない。従って、巻取軸24に巻芯13を取り付けるときや処理済ロール16を巻取軸24から取り外すときなど、巻き取り部22の正面側から行う作業に際して調整ローラユニット32が邪魔をしない。
【0057】
調整ローラユニット32は、第1調整ローラ28および第2調整ローラ30の両方が、ユニットフレーム88の巻き出し部18側への移動に伴って巻き取り部22の正面と反対側へ移動して、巻取軸24に支持された処理済ロール16から離れる位置まで退避するので、巻き取り部22の正面側からアクセスする際に邪魔にならない。また、調整ローラユニット32は、ユニットフレーム88が、本体ローラRによって構成されるウエブ12を案内するパスラインにおいて該ウエブ12を切断する前述の切断機構の下側に配置されているので、巻き取り部22の正面側から切断機構にアクセスする際に邪魔にならない。
【0058】
メインとなる第1調整ローラ28は、直線的に移動する構成であるので、揺動アームの先端に取り付けられて揺動するように変位する所謂ピボット式のタッチローラと比べて、処理済ロール16に対する押し付け力の変化を小さくすることができる。従って、第1調整ローラ28によって処理済ロール16を適当な力で押し付けて空気量を制限することができるので、ウエブ12がきれいに巻かれた処理済ロール16を得ることができる。
【0059】
調整ローラユニット32は、左右のユニットプレート88a,88aがユニットステー88bで連結されると共に、ユニットフレーム88の左右のそれぞれに設けられたラックアンドピニオン機構によって、左右がずれなく移動するようになっている。従って、左右方向に離して複数箇所でウエブ12を巻き取って形成される処理済ロール16のそれぞれを、調整ローラ28,30によって均等な力で押さえることができる。
【0060】
スリッター10は、本体ローラRを装置上部に配置して、その下側のスペースを前後に移動する調整ローラユニット32の設置に用いるように、上下方向のスペースを有効利用しているので、装置全体の前後寸法をコンパクトにすることができる。
【0061】
(変更例)
前述した構成に限らず、例えば、以下のように変更してもよい。
【0062】
(1)実施形態の巻き出し部の構成を、例えば、リワインダーであれば、支持した原反ロールからウエブを巻き出す巻き出し部と、ウエブを巻き取って処理済ロールを形成する巻き取り部の両方または何れか一方に適用することができる。
【0063】
(2)実施形態のアームの位置決め構造を、例えば、巻き取り部において巻取軸を支持するアームを位置決め固定する構造として適用してもよい。
(3)実施形態では、左右のアームの両方に前記位置決め構造を設けたが、アームの片方だけに前記位置決め構造を設ける構成であってもよい。
【0064】
(4)実施例では、掛止部とシャフトの位置決め凹部の壁面との引っ掛かりによって、カッターホルダを周方向に位置決めし得る構成であるが、これに限らず、指し部および/または差込突部とシャフトの位置決め凹部の壁面との引っ掛かりによって、カッターホルダを周方向に位置決めし得る構成であってもよい。
【0065】
(5)第2調整ローラの設置数は、前述した実施形態に限らず、適宜変更可能であり、例えば、1基であってもよい。
(6)実施形態では、調整ローラがロールに接触するように配置されるタッチローラを例示したが、これに限らず、ロールと間隔をあけて配置してロールとの間隔が所要幅になるようにコントロールされる所謂ニアローラであってもよい。
【0066】
(7)実施形態のアクチュエータとしては、油圧シリンダ、空圧シリンダ、水圧シリンダなどの流体圧シリンダあるいは電動シリンダや、ソレノイド、電動機、サーボモータなど電気を用いるものなど、各種アクチュエータを使用できる。なお、実施形態では、直動シリンダを用いている。
【符号の説明】
【0067】
12 ウエブ,20 カッター,66 シャフト(棒状部材),66a 位置決め凹部,
67 ゲージ,68 カッターホルダ,70 第1ブロック,71 掛止部,
72 第1位置調節手段,74 第2ブロック,76 第2位置調節手段,
78 指し部,80 取付凹部,82 ホルダ固定部,82b 第1軸部(一方の軸部),
82c 第2軸部(他方の軸部),84 ホルダ操作部
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