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  • 特許-セトリングチャンバ保持具 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】セトリングチャンバ保持具
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/48 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
G01N33/48 Z
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2019040542
(22)【出願日】2019-03-06
(65)【公開番号】P2020143997
(43)【公開日】2020-09-10
【審査請求日】2022-02-24
(73)【特許権者】
【識別番号】591058127
【氏名又は名称】メディカテック株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100083806
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 秀和
(74)【代理人】
【識別番号】100101247
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 俊一
(74)【代理人】
【識別番号】100095500
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 正和
(74)【代理人】
【識別番号】100098327
【弁理士】
【氏名又は名称】高松 俊雄
(72)【発明者】
【氏名】深水 祐介
(72)【発明者】
【氏名】町田 哲男
【審査官】三木 隆
(56)【参考文献】
【文献】実開昭62-083952(JP,U)
【文献】特表2011-523063(JP,A)
【文献】特開平06-213789(JP,A)
【文献】特開2011-038533(JP,A)
【文献】特表2020-509312(JP,A)
【文献】特開2014-000744(JP,A)
【文献】特開平09-004610(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02264424(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0325283(US,A1)
【文献】米国特許第04688513(US,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0007650(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N33/48-33/98
G01N1/00-1/44
G01N35/00-35/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
上下方向に延びる筒部と該筒部の底部側方へ延び出す第1脚部および第2脚部とを有するセトリングチャンバを着脱自在に保持するセトリングチャンバ保持具であって、
複数配置され、それぞれに試験用プレートを載置する凹状のプレート載置部と、
該プレート載置部に載置された前記試験用プレート上に前記セトリングチャンバを保持する保持部と、
隣り合う前記プレート載置部の間に形成された隆起部と、
を備え、
前記保持部は、前記セトリングチャンバが前記試験用プレート上に押圧されることで試験用プレート上に密着するように前記第1脚部と前記第2脚部とをそれぞれ係止し、装着された前記セトリングチャンバが引き上げられることで、前記係止を解除する係止・係止解除構造を有し、
前記係止・係止解除構造は、
前記プレート載置部の側壁に開口し前記第1脚部が差し込まれる穴部と、
前記プレート載置部の前記側壁に対向する対向側壁に開口するとともに、前記第2脚部が上方から押し込み可能なように上側に開口している凹部と、
前記凹部を形成する凹部側壁から張り出す係止用の凸部とを備え、
前記第1脚部が前記穴部に差し込まれ前記第2脚部が前記凹部に押し込まれて前記凸部を乗り越えると、前記筒部の底部下側と前記試験用プレートとが密着状態になり、
前記密着状態で前記第2脚部が前記凹部から引き出されて前記凸部を乗り越えると前記密着状態が解除される機能を備え、
前記隆起部には、前記穴部と、前記凹部および前記凸部とが形成され、前記穴部と、前記凹部および前記凸部とは、前記プレート載置部を介して対向することを特徴とするセトリングチャンバ保持具。
【請求項2】
前記係止・係止解除構造は、前記凸部を形成する回転可能な球状部材を備え、前記球状部材の一部が前記対向側壁から張り出していることを特徴とする請求項1に記載のセトリングチャンバ保持具。
【請求項3】
前記穴部および前記凹部のそれぞれ延びる方向が、前記筒部の中心軸に直交し互いに逆向きとなる方向であり、かつ、前記プレート載置部の長手方向に対して所定角度範囲内で傾斜する方向であることを特徴とする請求項1または2に記載のセトリングチャンバ保持具。
【請求項4】
前記穴部および前記凹部のそれぞれ延びる方向が、前記筒部の中心軸に直交し互いに逆向きとなる方向であり、かつ、前記プレート載置部の長手方向に対して90°をなす方向であることを特徴とする請求項1または2に記載のセトリングチャンバ保持具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セトリングチャンバを保持するセトリングチャンバ保持具に関する。
【背景技術】
【0002】
液状の試験体を用いて検査することが広く行われている(例えば、特許文献1参照)。その際、試験体中の物質を塗抹状にする場合がある。この場合、試験用プレート上にセトリングチャンバを密着させて試験用プレートとセトリングチャンバとによって容器状の空間を形成し、この空間内に試験体を入れ、塗抹状にすることがしばしば行われる。
【0003】
ここで、セトリングチャンバとしては、上下方向に延びる筒部と、筒部の底外側から水平に延び出す2本の係止用の脚部とを備えて底部が試験用プレートに密着可能なものを用いることが多い。
【0004】
このようなセトリングチャンバを保持するセトリングチャンバ保持具としては、通常、試験用プレートを載置するプレート載置部と、プレート載置部の側壁に形成されセトリングチャンバの2本の脚部がそれぞれ係止する穴部とを備えたものを用いている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2017-106884号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、セトリングチャンバをセトリングチャンバ保持具に保持させる際、セトリングチャンバ保持具に載置された試験用プレートにセトリングチャンバを密着させるために、作業者がセトリングチャンバを試験用プレートに押圧しつつセトリングチャンバを回転移動させることでセトリングチャンバ保持具に係止させている。また、セトリングチャンバを取り外すときにも同様に回転移動させて係止解除させている。
【0007】
このような着脱作業では、セトリングチャンバを回転移動させる際に作業者の指に掛かる力が大きいため、指が受ける負担が大きいという問題があった。そしてこの問題は、多数のセトリングチャンバをセトリングチャンバ保持具に取付けていく場合に特に顕著になっていた。
【0008】
そこで、本発明は、セトリングチャンバを着脱させるときの作業者の指が受ける負担を低減させたセトリングチャンバ保持具を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明に係るセトリングチャンバ保持具は、上下方向に延びる筒部と該筒部の底部側方へ延び出す第1脚部および第2脚部とを有するセトリングチャンバを着脱自在に保持するセトリングチャンバ保持具であって、試験用プレートを載置する凹状のプレート載置部と、該プレート載置部に載置された前記試験用プレート上に前記セトリングチャンバを保持する保持部とを備え、前記保持部は、前記セトリングチャンバが前記試験用プレート上に押圧されることで試験用プレート上に密着するように前記第1脚部と前記第2脚部とをそれぞれ係止し、装着された前記セトリングチャンバが引き上げられることで、前記係止を解除する係止・係止解除構造を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、セトリングチャンバを着脱させるときの作業者の指が受ける負担を低減させたセトリングチャンバ保持具を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態で、セトリングチャンバ保持具にセトリングチャンバを取付けることを説明する展開斜視図である。
図2】本発明の一実施形態で、セトリングチャンバをセトリングチャンバ保持具に取付けた状態を説明する平面図である。
図3】本発明の一実施形態で、セトリングチャンバをセトリングチャンバ保持具に取付けた状態を説明する側面図である(簡明化のため係止・係止解除構造の描画を省略)。
図4】(a)~(d)は、それぞれ、本発明の一実施形態で、セトリングチャンバをセトリングチャンバ保持具に取付ける手順を説明する側面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、実施形態を挙げ、添付図面を参照しつつ本発明の実施の形態について説明する。
【0013】
図1図4に示すように、本発明の一実施形態(以下、本実施形態という)に係るセトリングチャンバ保持具10は、試験用プレートPLを載置する凹状のプレート載置部12と、プレート載置部12に載置された試験用プレートPL上にセトリングチャンバSTを密着するように着脱自在に保持する保持部13とを備えた板状部材である。本実施形態では、セトリングチャンバ保持具10は、プレート載置部12を縦横に複数列に配列して備えている。そして、セトリングチャンバ保持具10は、隣り合うプレート載置部12の間に隆起部16を備える。
【0014】
セトリングチャンバSTは、上下方向に延びる筒部STpと、筒部STpの底部側方へ延び出す第1脚部STaおよび第2脚部STbとを有する。本実施形態では、筒部STpは底部に鍔部SRを備えており、鍔部SRの外周側から第1脚部STaおよび第2脚部STbが水平に延び出している。そして底部下側には、試験用プレートPLのプレート面に押圧されることで密着する弾性変形可能な部材(図示せず)が配置されている。この弾性変形可能な部材は、例えば、リング状のシリコーン材で構成されている。
【0015】
保持部13は、セトリングチャンバSTの係止と係止解除とを切り換えるための係止・係止解除構造14を有する。係止・係止解除構造14は、セトリングチャンバSTが試験用プレートPL上に押圧されることで試験用プレートPL上に密着するように第1脚部STaと第2脚部STbとをそれぞれ係止し、装着されたセトリングチャンバSTが引き上げられることで、係止を解除する構成になっている。
【0016】
本実施形態では、係止・係止解除構造14は、プレート載置部12の側壁12w1に開口し第1脚部STaが差し込まれるように延びる穴部14hと、側壁12w1に対向する対向側壁12w2から延びる凹部14dとを備える。凹部14dは、対向側壁12w2に開口するとともに第2脚部STbが上方から押し込み可能なように上側にも開口している。更に係止・係止解除構造14は、凹部14dを形成する凹部側壁から張り出す係止用の凸部14cを備える。
【0017】
そして、第2脚部STbが凹部14dに上方から押し込まれると第2脚部STbは凸部14cを乗り越えて、凸部14cの下方側で保持され、筒部STpの底部下側と試験用プレートPLの上面とが密着状態になる。そして、この密着状態で第2脚部STbが凹部14dから上方へ引き出されて凸部14cを乗り越えると、この密着状態が解除される構成になっている。
【0018】
なお、セトリングチャンバ保持具10は、列端部に配置されたプレート載置部12の列外側に隆起部16eを備える。この隆起部16eは、プレート載置部12を介して対向する隆起部16側に穴部14hが形成されている場合には凹部14dおよび凸部14cが形成され、対向する隆起部16側に凹部14dおよび凸部14cが形成されている場合には、穴部14hが形成されている。
【0019】
また、本実施形態では、凸部14cを形成する回転可能な球状部材14bが配置されている(すなわち、ボールプランジャーが配置された構造になっている)。本実施形態では、球状部材14bは鋼球からなり、また、球状部材14bの一部を凹部14dの延び出し方向端の側壁(凹部側壁)から張り出させるための支持部材(例えばリング状の当接部材)が配置されている。
【0020】
そして本実施形態では、穴部14hおよび凹部14dのそれぞれ延びる方向A、B(図2参照)が、筒部STpの中心軸C(図1参照)に直交し互いに逆向きとなる方向であり、かつ、プレート載置部12の長手方向D(図2参照)に対して角度θで傾斜する方向である。角度θは、隆起部16の幅の増大を十分に抑えることができ、しかもセトリングチャンバSTが十分な力で係止・係止解除構造14に保持されるように、所定角度範囲内に決められている。本実施形態では、この所定角度は65~75°の範囲である。75°以下であることにより隆起部16の幅の増大が抑え易くなり、また、65°以上であることによりセトリングチャンバSTを十分な力で係止・係止解除構造14に係止し易い。
【0021】
穴部14h、凹部14d、凸部14c(球状部材14b)のそれぞれの配置位置や寸法は、セトリングチャンバSTが試験用プレートPL上に良好にセットされ、しかも簡易に着脱できるように、決められている。
【0022】
(作用、効果)
以下、本実施形態の作用、効果を述べる。図4に示すように、セトリングチャンバSTをセトリングチャンバ保持具10に保持させるには、作業者が、セトリングチャンバSTの筒部STpを指で挟持し、プレート載置部12に試験用プレートPLを載置し、更に、セトリングチャンバSTの第1脚部STaを係止・係止解除構造14の穴部14hの差し込む(図4(a)、(b)参照)。
【0023】
そして、第2脚部STbを凸部14cの上側に当接させ(図4(c)参照)、セトリングチャンバSTに押込み力を加えることで、第2脚部STbの先端部が凸部14cを乗り越える(図4(d)参照)。この結果、第2脚部STbの先端部は凸部14cの下側に位置して、凸部14cから下方への押圧力を受け、筒部STpの底部下側が試験用プレートPLの上面に面接触して密着状態になる(係止状態)。これをプレート載置部12毎に行っていく。なお、必要なライン上にのみセトリングチャンバSTを配列してもよい。
【0024】
次に、液状の試験体を各筒部STp内に上方から入れ、所定時間の静置やエタノールでの洗浄等の必要な工程を行い、試験用プレートPLにおける筒部STpの底側部分に、検査対象となる塗抹状の物質を形成する。
【0025】
その後、セトリングチャンバSTを引き上げることで取外し(係止解除状態)、試験用プレートPLを取り出して塗抹状の物質の検査を行う。
【0026】
以上説明したように、本実施形態のセトリングチャンバ保持具10の係止・係止解除構造14は、セトリングチャンバSTが試験用プレート上に押圧されることで試験用プレート上に密着するように第1脚部STaと第2脚部STbとをそれぞれ係止し、装着されたセトリングチャンバSTが引き上げられることで、この係止を解除する構成になっている。
【0027】
従って、従来のように作業者がセトリングチャンバSTを下方へ押圧しつつ回動移動させる必要がない。よって、セトリングチャンバSTを取付けるとき及び取り外すときの作業者の指が受ける負担を大幅に低減させることができる。
【0028】
また、セトリングチャンバSTを従来のように回動させることなく係止・係止解除構造14に係止や係止解除をすることができる構造なので、穴部14hの中空部分の寸法が従来に比べて小さく、凹部14dでは中空部分が不要になる。従って、セトリングチャンバ保持具10の製作時にかかる加工時間が大きく短縮される。
【0029】
また、本実施形態では、凸部14cを形成する回転可能な球状部材14bが配置されている。これにより、第2脚部STbが凸部14cを乗り越え易くなり、しかも、乗り越えるのに必要な力が大きく低減される。
【0030】
そして、本実施形態では、球状部材14bは鋼球からなる。よって、球状部材14bが破損し難く、球状部材14bの耐久性を十分に上げることができる。
【0031】
また、本実施形態では、穴部14hおよび凹部14dのそれぞれ延びる方向A、B(図2参照)が、筒部STpの中心軸C(図1参照)に直交し互いに逆向きとなる方向であり、かつ、プレート載置部12の長手方向D(図2参照)に対して角度θで傾斜する方向である。角度θは、隆起部16の幅の増大を十分に抑えることができ、しかもセトリングチャンバSTが十分な力で係止・係止解除構造14に係止されるように、所定角度範囲内に決められている。
【0032】
従って、隆起部16の幅の増大を十分に抑えることができ、しかもセトリングチャンバSTが十分な力で係止・係止解除構造14に係止される構成にし易い。
【0033】
なお、穴部14hの延びる方向および凹部14dの延びる方向が、プレート載置部12の長手方向Dに対して90°をなす方向であってもよい。これにより、作業者にとってセトリングチャンバSTの着脱が容易である。
【0034】
以上、実施形態を説明したが、これらの実施形態は本発明の技術的思想を具体化するための例示であって、構成部品の材質、形状、構造、配置等を上記実施形態に特定するものではなく、要旨を逸脱しない範囲内で種々変更して実施できる。例えば、上記実施形態では係止・係止解除構造14としてボールプランジャーが配置されている例で説明したが、ボールプランジャーに代えて、板バネやシーソースイッチが係止部材として配置された構造であってもよい。また、両端プランジャー式のセトリングチャンバ保持具、すなわち、セトリングチャンバSTの第2脚部STbだけでなく第1脚部STaもプランジャー式で係止、係止解除をすることができるセトリングチャンバ保持具としてもよい。
【符号の説明】
【0035】
10 セトリングチャンバ保持具
12 プレート載置部
12w1 側壁
12w2 対向側壁
13 保持部
14 係止・係止解除構造
14b 球状部材
14c 凸部
14d 凹部
14h 穴部
16 隆起部
16e 隆起部
A 方向
B 方向
C 中心軸
PL 試験用プレート
SR 鍔部
ST セトリングチャンバ
STa 第1脚部
STb 第2脚部
STp 筒部
θ 角度
図1
図2
図3
図4