(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ガスコンロ
(51)【国際特許分類】
F24C 15/20 20060101AFI20230511BHJP
F24C 3/12 20060101ALI20230511BHJP
F24F 7/007 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
F24C15/20 F
F24C3/12 E
F24F7/007 C
(21)【出願番号】P 2019174093
(22)【出願日】2019-09-25
【審査請求日】2022-08-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000112015
【氏名又は名称】株式会社パロマ
(74)【代理人】
【識別番号】100104178
【氏名又は名称】山本 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100174344
【氏名又は名称】安井 雅俊
(72)【発明者】
【氏名】山田 晋也
【審査官】吉澤 伸幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-174823(JP,A)
【文献】特開2008-210533(JP,A)
【文献】特開2010-238584(JP,A)
【文献】特開昭61-036625(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-0373462(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 15/20
F24C 3/12
F24F 7/007
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、前記筐体の左右方向中央寄りに設けられ、上方に向けて延びるグリル排気筒を後部に備えるグリル庫と、排気口を後部に備える天板と、所定操作に連動して赤外線を発信する発光部とを備え、前記天板が前記筐体上に固定された状態で、前記排気口内の中央寄りの位置に、前記グリル排気筒が位置するように構成されたガスコンロであって、前記発光部から発信された前記赤外線が前記ガスコンロの上方に位置する換気扇の受信部に伝播することによって、前記換気扇を作動又は停止させるガスコンロにおいて、
前記発光部は、前記筐体の後部内側における左右の両側壁のうち少なくとも一方側において、前記赤外線の発信方向が前記グリル排気筒側に向くように設けられ、
前記筐体内における前記グリル排気筒側には、前記発光部から発信された前記赤外線を、前記グリル排気筒の左右の両側部と、前記排気口の左右の内縁部との間に形成された隙間を介して少なくとも上向きに反射させる反射部材が設けられたこと
を特徴とするガスコンロ。
【請求項2】
前記反射部材は、前記赤外線を上向き且つ前後方向に拡散して反射させる複数の反射面を有する多面構造、若しくは湾曲面を有する湾曲面構造を備えたこと
を特徴とする請求項1に記載のガスコンロ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ガスコンロに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、点火・消火等の所要の操作に連動して赤外線を前方に発信し、正面に存在するユーザに反射させ、上方に位置する受信部に伝播させることによって、換気扇を作動等させるコンロが提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記コンロでは、例えばスマートフォン等を介した遠隔操作等のように、反射対象が存在しない状態で操作された場合、換気扇と連動させることが困難であった。この問題を解決する為、例えば、天板から上方に向けて赤外線を発信する方法が考えられるが、この方法では、赤外線の発光素子が露出するので、美観が損なわれるのみならず、コンロやグリルからの熱の影響で動作不良を起こす可能性があった。また、煮汁等が発光素子にかかる可能性もあった。
【0005】
本発明の目的は、正面に人がいない場合であっても、所定操作に連動して換気扇を作動又は停止できるガスコンロを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1のガスコンロは、筐体と、前記筐体の左右方向中央寄りに設けられ、上方に向けて延びるグリル排気筒を後部に備えるグリル庫と、排気口を後部に備える天板と、所定操作に連動して赤外線を発信する発光部とを備え、前記天板が前記筐体上に固定された状態で、前記排気口内の中央寄りの位置に、前記グリル排気筒が位置するように構成されたガスコンロであって、前記発光部から発信された前記赤外線が前記ガスコンロの上方に位置する換気扇の受信部に伝播することによって、前記換気扇を作動又は停止させるガスコンロにおいて、前記発光部は、前記筐体の後部内側における左右の両側壁のうち少なくとも一方側において、前記赤外線の発信方向が前記グリル排気筒側に向くように設けられ、前記筐体内における前記グリル排気筒側には、前記発光部から発信された前記赤外線を、前記グリル排気筒の左右の両側部と、前記排気口の左右の内縁部との間に形成された隙間を介して少なくとも上向きに反射させる反射部材が設けられたことを特徴とする。
【0007】
請求項2のガスコンロの前記反射部材は、前記赤外線を上向き且つ前後方向に拡散して反射させる複数の反射面を有する多面構造、若しくは湾曲面を有する湾曲面構造を備えてもよい。
【発明の効果】
【0008】
請求項1のガスコンロによれば、反射板により発光部から発信された赤外線を上向きに反射させるので、正面に人がいない状態であっても、ガスコンロ上方の受信部に赤外線を確実に伝播させ、換気扇を作動させることができる。また、発光部は、筐体の後部内側に設けられるので、美観を損なったり、煮汁等がかかるのを防止できる。また、発光部は、筐体の後部内側における左右の両側壁のうち少なくとも一方側に設けられるので、グリル庫、及びグリル排気筒からの熱の影響を低減できる。よって、発光部の熱による故障、誤作動を防止できる。
【0009】
請求項2のガスコンロによれば、換気扇によっては、赤外線の受信部が前側にあったり、後ろ側にあったり、必ずしも統一されていない。本願においては、反射板を多面構造、若しくは湾曲面構造とし、赤外線を上向き且つ前後方向に拡散して反射するので、換気扇の受信部の位置に関わりなく、所定操作と換気扇の連動を良好に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図4】筐体2の後部内側を右斜め前方から見た部分拡大斜視図である。
【
図5】筐体2の後部内側を左斜め前方から見た部分拡大斜視図である。
【
図7】天板3における排気口7周囲の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施形態を説明する。以下に記載される装置の構造などは、特定的な記載がない限り、それのみに限定する趣旨ではなく、単なる説明例である。図面は、本発明が採用しうる技術的特徴を説明する為に用いられるものである。
【0012】
図1を参照し、コンロ1と換気装置200の構成を説明する。コンロ1はビルトインコンロであり、キッチンのキャビネット100の上面に設けた開口(図示略)に上方から落とし込まれて設置される。換気装置200は、コンロ1の上方に設置される。
【0013】
換気装置200は、換気フード201と換気扇202を備える。換気扇202は、換気フード201の内部に設けられる。換気フード201の前面には、操作部203が設けられる。操作部203の近傍には、受信部205が設けられる。受信部205は、コンロ1に設けられる後述する一対の発光ユニット601,602(
図3,
図4参照)から後述する反射部材91,92に反射して上向きに発信される赤外線を受信可能である。受信部205が赤外線を受信すると、換気装置200は、換気扇202を作動又は停止する制御を行う。
【0014】
図2,
図3を参照し、コンロ1の構成を説明する。
図2に示すように、コンロ1は筐体2と天板3を備える。筐体2は上部が開口する略直方体状である。天板3は、筐体2の上部に固定される。天板3の上面における右手前には右バーナ4、左手前には左バーナ5、中央奥側には奥バーナ6が設けられる。天板3の後方部には、平面視左右方向に長い略矩形状の凹部3A(
図3参照)が設けられる。凹部3Aは、天板3の上面よりも低い断面凹状である。凹部3Aの底面には、平面視左右方向に長い略矩形状の排気口7が設けられる。排気口7は、筐体2内に設置されたグリル庫30(
図4参照)から流れる燃焼排気を外部に排出する。凹部3Aには、排気カバー8が設置される。排気カバー8は、複数のスリットを有し、排気口7を上方から覆う。
【0015】
筐体2の前面の略中央には、グリル扉10が設けられる。グリル扉10は、手前に引き出し可能であって、グリル庫30の前側のグリル開口部(図示略)を開閉する。グリル扉10の右側には、2つの操作つまみ11、12が横方向に並んで設けられ、グリル扉10の左側には、2つの操作つまみ13、14が横方向に並んで設けられる。操作つまみ11は、右バーナ4の点火、消火及び火力調節を行う為に操作される。操作つまみ12は、グリル庫30内に設けられたグリルバーナ(図示略)の点火、消火及び火力調節を行う為に操作される。操作つまみ13は、奥バーナ6の点火、消火及び火力調節を行う為に操作される。操作つまみ14は、左バーナ5の点火、消火及び火力調節を行う為に操作される。
【0016】
図4に示すように、筐体2は、左壁部21、右壁部22、後壁部23を備える。左壁部21、右壁部22、後壁部23の夫々の上端部には、受け部211,221,231が設けられる。受け部211,221,231は、左壁部21、右壁部22、後壁部23の夫々の上端部から外側且つ略水平にフランジ状に突出する。受け部211,221,231の夫々の上面には、天板3の外周部が上方から載置され、ネジ止め固定される。
【0017】
筐体2の中央部には、グリル庫30が設けられる。グリル庫30の後部には、グリル排気筒31が設けられる。グリル排気筒31は、グリル庫30の後部から上方に延びる略四角筒状に形成される。グリル排気筒31の上端部には、グリル排気口32が設けられる。グリル排気口32は、平面視左右方向に長い略矩形状に形成される。
図3に示すように、グリル排気口32は、天板3の排気口7の直下に配置される。排気口7を上方から見た場合、グリル排気口32は、排気口7の内側における中央寄りに配置される。これにより、グリル庫30内の燃焼排気は、グリル排気筒31を流れ、グリル排気口32を介して、排気口7から外部に排出される。
【0018】
図3~
図5に示すように、筐体2の後部内側において、左壁部21の後部の内面上部には、発光ユニット601が取り付けられる。右壁部22の後部の内面上部には、発光ユニット602が取り付けられる。発光ユニット601,602は、後述する赤外線発光素子81,82を備え、グリル排気筒31側に向けて左右両側から赤外線を夫々発信する。グリル排気筒31の左側近傍には、反射部材91(
図5参照)が固定され、グリル排気筒31の右側近傍には、反射部材92(
図4参照)が固定される。筐体2の上部に天板3が固定された状態において、反射部材91は、発光ユニット601から発信された赤外線を、グリル排気筒31の左側部と、天板3の排気口7の左縁部との間に形成された隙間P1(
図3,
図7参照)を介して少なくとも上向きに反射させる。反射部材92は、発光ユニット602から発信された赤外線を、グリル排気筒31の右側部と、天板3の排気口7の右縁部との間に形成された隙間P2(
図3,
図7参照)を介して少なくとも上向きに反射させる。
【0019】
図6を参照し、発光ユニット601,602の構造を説明する。なお、発光ユニット601,602は互いに左右対称構造なので、本実施形態では、発光ユニット601の構造を説明する。発光ユニット601は、取付部材71と赤外線発光素子81を備える。
【0020】
取付部材71は、固定部711、垂下部712、水平部713、支持部714を備え、金属板を屈曲して形成される。固定部701は、平面視左右方向に長い略矩形状に形成され、左壁部21の受け部211の上面後部に位置決めされ、ネジ止め固定される。固定部711の左後方角部には、固定穴716が設けられる。垂下部712は、固定部711の左端部から垂下し、左側面視略矩形状に形成される。垂下部712の中央部には、円形状の開口部(図示略)が設けられる。水平部713は、垂下部712の下端部から右方且つ略水平に延設され、平面視左右方向に長い略矩形状に形成される。支持部714は水平部713の先端部(左端部)から垂直上方に突出し、左側面視略矩形状に形成される。支持部714の中央部には、円形状の開口部715が設けられる。垂下部712の開口部と、支持部714の開口部715は、左右方向に延びる同一軸線上に位置する。
【0021】
赤外線発光素子81は、取付部材71に対して、赤外線の発信方向がグリル排気筒31側に向くように、垂下部712の開口部と、支持部714の開口部715とに挿入して支持する。
【0022】
なお、詳述しないが、発光ユニット602も、発光ユニット601と同様に、取付部材72と赤外線発光素子82(
図3参照)を備える。取付部材72は、発光ユニット601の取付部材71と左右対称形状である。
【0023】
赤外線発光素子81,82は、コンロ1の図示外の制御部からの制御信号に基づき、操作つまみ11~14の点火又は消火操作に連動して、対応する赤外線を発信する。受信部205が赤外線を受信すると、換気装置200は、受信した赤外線に基づき、換気扇202を作動又は停止させる。
【0024】
図6を参照し、反射部材91,92の形状を説明する。なお、反射部材91,92も互いに左右対称形状なので、本実施形態では、反射部材91の形状を説明する。反射部材91は、固定部911、支持部912、反射部913を備える。固定部911は、正面視上下方向に長い略矩形状に形成され、後壁部23の内面上部で、且つグリル排気筒31と左壁部21とに挟まれる略中間位置にネジ90で固定される。
【0025】
支持部912は、固定部911の右端部からグリル排気筒31側にやや前方に屈曲して延び、正面視上下方向に長い略矩形状に形成される。支持部912の上端部には、天板固定部916が設けられる。天板固定部916は板状に形成され、前方且つ略水平に突出する。天板固定部916には、上下方向に貫通する固定穴917が設けられる。天板固定部916の上面には、天板3が載置され、固定穴917には、天板3に設けられた固定穴(図示略)を介してネジ(図示略)が締結される。これにより、天板固定部916に天板3が固定される。よって、コンロ1は、部品点数を増やすことなく、天板3を筐体2に固定する機能を追加できる。支持部912の右端部の上部には、下方から上方にかけてグリル排気筒31側に傾斜する傾斜部912Aが設けられる。
【0026】
反射部913は、傾斜部912Aから前側に屈曲して延びる。反射部913は、第一反射面914と第二反射面915を備える。第一反射面914は、傾斜部912Aから前方に下り傾斜しつつ左端側から右端側にかけて斜め上方に傾斜する。第二反射面915は、第一反射面914の前端部から前方にやや屈曲し、第一反射面914よりも浅い角度で前方に延びる。
【0027】
図4~
図7を参照し、発光ユニット601,602から発信される赤外線の反射経路を説明する。
図6に示すように、発光ユニット601において、赤外線発光素子81は、グリル排気筒31側に向けて赤外線を発信する。赤外線は、反射部材91の反射部913の第一反射面914及び第二反射面915に入射する。第一反射面914及び第二反射面915は、赤外線を上向き且つ前後方向に拡散しながら反射させる。第一反射面914は、第二反射面915よりも前側に傾斜しているので、第二反射面915よりも赤外線を前方に反射する。第一反射面914及び第二反射面915に反射した赤外線は、グリル排気筒31の左端部と、天板3の排気口7の左縁部との間に形成される隙間P1(
図3、
図7参照)を上向きに通過し、且つ前後方向に拡散しながら天板3の上方に位置する受信部205に伝播する。
【0028】
他方、発光ユニット602においても、発光ユニット601と左右対称構造であることから、赤外線は、反射部材92の反射部923(
図4参照)の反射面に入射する。反射面に反射した赤外線は、グリル排気筒31の右端部と、天板3の排気口7の右縁部との間に形成される隙間P2(
図3、
図7参照)を上向きに通過し、コンロ1の前側に、且つ斜め上方に拡散しながら天板3の上方に位置する受信部205に伝播する。これらにより、発光ユニット601,602における赤外線の発信方向は、何れも受信部205側に向けられるので、受信部205は、左右両側から発信される赤外線をより確実に受信できる。
【0029】
以上説明したように、上記実施形態のコンロ1は、筐体2と、筐体2の左右方向中央寄りに設けられ、上方に向けて延びるグリル排気筒31を後部に備えるグリル庫30と、排気口7を後部に備える天板3と、所定操作に連動して赤外線を発信する発光ユニット601,602とを備える。コンロ1は、天板3が筐体2上に固定された状態で、排気口7内の中央寄りの位置に、グリル排気筒31が位置するように構成される。発光ユニット601,602は、筐体2の後部内側における左壁部21側及び右壁部22側において、赤外線の発信方向がグリル排気筒31側に向くように設けられる。さらに、筐体2内におけるグリル排気筒31側には、反射部材91,92が設けられる。反射部材91,92は、発光ユニット601,602から発信された赤外線を、グリル排気筒31の左右の両側部と、排気口7の左右の内縁部との間に形成された隙間P1,P2を介して少なくとも上向きに反射させる。これにより、コンロ1の正面に人がいない状態であっても、コンロ1上方の受信部205に赤外線を確実に伝播させ、換気扇202を作動させることができる。また、発光ユニット601,602は、筐体2の後部内側に設けられるので、美観を損なったり、煮汁等がかかるのを防止できる。また、発光ユニット601,602は、筐体2の後部内側における左壁部21側及び右壁部22側に設けられるので、グリル庫30、及びグリル排気筒31からの熱の影響を低減できる。よって、発光ユニット601,602の熱による故障、誤作動を防止できる。
【0030】
上記説明にて、発光ユニット601,602は、本発明の「発光部」の一例である。
【0031】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、種々の変更が可能である。コンロ1はビルトインコンロであるが、テーブルコンロであってもよい。
【0032】
発光ユニット601,602は、筐体2の後部の内側における左右両側に夫々設けられるが、何れか一方だけでもよい。また、発光ユニットの数は、2以上であってもよい。
【0033】
反射部材91の反射部913は、第一反射面914及び第二反射面915の二面構造であるが、一面若しくは二面以上の多面構造でもよい。また、多面構造に代えて、赤外線を上向き且つ前後方向に拡散して反射させる湾曲面であってもよい。
【0034】
上記コンロ1は、例えばスマートフォン、専用端末、リモコン等の外部端末と通信可能であってもよい。その場合、コンロ1は、外部端末による遠隔操作が可能となる。これにより、コンロ1の正面に反射対象が存在しない状態で操作された場合においても、換気扇202と連動させることできる。
【符号の説明】
【0035】
1 コンロ
2 筐体
3 天板
7 排気口
30 グリル庫
31 グリル排気筒
32 グリル排気口
81,82 赤外線発光素子
91,92 反射部材
202 換気扇
205 受信部
601,602 発光ユニット