IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ モーゼン リミテッドの特許一覧

<>
  • 特許-最適化されたトンネル換気デバイス 図1
  • 特許-最適化されたトンネル換気デバイス 図2
  • 特許-最適化されたトンネル換気デバイス 図3
  • 特許-最適化されたトンネル換気デバイス 図4
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】最適化されたトンネル換気デバイス
(51)【国際特許分類】
   F04D 29/54 20060101AFI20230511BHJP
   F24F 7/06 20060101ALI20230511BHJP
   E21F 1/00 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
F04D29/54 C
F04D29/54 D
F04D29/54 G
F24F7/06 F
E21F1/00 Z
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2019548899
(86)(22)【出願日】2018-02-21
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-07-02
(86)【国際出願番号】 GB2018000029
(87)【国際公開番号】W WO2018203023
(87)【国際公開日】2018-11-08
【審査請求日】2021-02-19
(31)【優先権主張番号】1707147.3
(32)【優先日】2017-05-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(31)【優先権主張番号】1707467.5
(32)【優先日】2017-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】519321649
【氏名又は名称】モーゼン リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】タラダ,ファティ
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-23032(JP,A)
【文献】特開平1-237400(JP,A)
【文献】特表2012-506514(JP,A)
【文献】特表2016-509640(JP,A)
【文献】特開2013-87641(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0299402(US,A1)
【文献】特開平1-275900(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04D 29/54
F24F 7/06
E21F 1/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部空間に換気を提供するために前記内部空間に設置するためのファン組立体であって、
換気流を発生するためのファンローターであって、ファンローターへの流入はファンローターからの流出に実質的に平行である、ファンローターと、
前記ファンローターからの遠位端に後縁を有するノズルと
前記後縁に取り付けられたベルマウスと、を備え、
ファン組立体は、前記ファンローターによって発生した換気流が、ファン組立体を出る前に前記ノズルを通過して、換気される空間に入ることになるように配置されるまたは配置可能であり、
前記ノズルの後縁と前記ファンローターの中心線との間で作られる角度は垂直でなく、
前記ノズルの貫通ボアの断面積は、前記ファンローターから前記ノズルの後縁に向かって増加し、
前記ノズルの貫通ボアの側壁は、前記後縁に向かって、前記ファンローターの中心線と平行な線に対して或る角度で離れるように形成されており、
前記後縁は円を形成する、ファン組立体。
【請求項2】
前記ファンローターのそれぞれの側に設置されたノズルを有する、請求項に記載のファン組立体。
【請求項3】
前記後縁と前記ファンローターの中心線に垂直な線との間の角度は、5から60°の範囲内である、請求項1または2に記載のファン組立体。
【請求項4】
前記ベルマウスの貫通ボアの断面積は、前記ノズルに対する前記ベルマウスの取り付けの位置から、前記ファンローターから離れる方向に最小断面積まで減少する、請求項1からのいずれか一項に記載のファン組立体。
【請求項5】
前記ベルマウスの貫通ボアの断面積は、前記最小断面積の箇所を超えると、前記ファンローターから離れる方向に増加する、請求項に記載のファン組立体。
【請求項6】
前記ベルマウスは、前記ベルマウス自身の中心軸の周りに回転対称である、請求項4または5に記載のファン組立体。
【請求項7】
前記ベルマウスの後縁が前記ファンローターの中心線に垂直でないように傾斜される、請求項4から6のいずれか一項に記載のファン組立体。
【請求項8】
前記ベルマウスの貫通ボアは、前記ノズルに対する前記ベルマウスの貫通ボアの取り付けポイントにおいて、円形を有する、請求項4から7のいずれか一項に記載のファン組立体。
【請求項9】
2つのベルマウスを有し、1つのベルマウスはファン組立体のそれぞれの側に設置される、請求項3から8のいずれか一項に記載のファン組立体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
ジェットファンによる縦方向換気(longitudinal ventilation)は、通常の及び混雑した運用中における空気品質の改善のために、ならびに、火災中の煙の制御のために、トンネル及び駐車場内の空気流を確立するための確立した技法である。
【背景技術】
【0002】
本出願人によって出願された過去の特許文献1は改良型ジェットファンを記載し、ノズル後縁とノズルの中心線との間で作られる角度は垂直でなく、ノズル貫通ボア縁の少なくとも1つは、周囲トンネル表面から流れを方向転換させるために配置される。その発明は、ジェットファンから放射されるジェットのコアンダ効果(Coanda effect)を低減し、したがって、トンネル換気のエネルギー効率を改善する。
【0003】
特許文献1において周囲トンネル表面から流れを方向転換させるためにノズル貫通ボア縁の1つを傾斜させることは、ノズル貫通ボアの空力的スロート(aerodynamic throat)がファン面積に少なくとも等しいことを保証するために、ノズル後縁が大きい角度(約30°)を通して傾斜されなければならないという効果を有する。空気流は、入口ノズル平面に垂直な方向でジェットファンに入るため、そのような大きいノズル後縁角度は、流れをノズル入口で剥離させ、さらなる圧力損失をもたらす。
【0004】
特許文献2は、放出された空気がトンネル下端(tunnel soffit)から方向転換することを促進するために、円柱ケーシングの下側にアンダーカットを有するジェットファンを開示する。しかしながら、ノズル後縁が楕円として形作られるため、商業的に入手可能なベルマウスをノズル後縁上に取り付けることは実現可能でなく、取り付けることは、次に、ジェットファンを通したかなりの圧力損失を示唆する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】英国特許出願公開第2512181号明細書
【文献】特開平1-237400号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本出願人は、縦方向トンネル換気システムのエネルギー効率を改善するための余地が残っていると考える。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様によれば、内部空間に換気を提供するために内部空間に設置するためのファン組立体が提供され、ファン組立体は、
換気流を発生するためのファンローターであって、
ファンローターへの流入がファンローターからの流出に実質的に平行である、ファンローターと、
ファン組立体が設置される周囲表面に、使用時に近接している縁を有するノズル貫通ボアとを備え、
ノズルはファンからの遠位端に後縁を有し、
ファン組立体は、ファンによって発生した換気流が、組立体を出る前にノズルを通過して、換気される空間に入ることになるように配置されるまたは配置可能であり、
ノズル後縁とファンの中心線との間で作られる角度は垂直でなく、
ノズル貫通ボアの表面は非円柱であり、
ノズル貫通ボア縁は、空気がファンローターから供給されると、周囲表面から外方に流れを向けるように配置されない。
【0008】
好ましくは、ノズル貫通ボア縁は、ファンの中心線に実質的に平行である。
【0009】
好ましくは、ファンからの遠位端におけるノズル貫通ボアの縁は円を形成する。
【0010】
好ましくは、2つのノズルが設けられ、1つのノズルは、ファンのいずれかの側に設置される。
【0011】
好ましくは、後縁とファンの中心線に垂直な線との間の角度は、5から60°の範囲内である。
【0012】
本発明は、ジェットファンからの流れを周囲トンネル表面からどのように方向転換させるかについての技術的問題に対する解決策を提供し、したがって、ジェットファンを通した圧力降下を増すことなくより大きいトンネル内空力的推力(aerodynamic thrust)を達成する。
【0013】
トンネル内に放出される流れの方向転換は、ノズル後縁を傾斜させることを通して部分的に達成される。ジェットファンは、貫通ボアのより長い側が貫通ボアのより短い側に比べて周囲トンネル表面に近い状態で配置される。そのため、ノズル後縁の傾斜は、流れを周囲トンネル表面から方向転換させるのに役立つ。
【0014】
特許文献1と比較して、本発明は、貫通ボアを通したより大きい断面積を可能にする。なぜならば、面積が、角度の付いた貫通ボア縁によってもはや制限されないからである。さらに、より小さい傾斜角度が入口後縁について選択されて、任意の入口の流れ剥離の可能性及び範囲を低減し得る。ジェットファンの電力消費は、したがって、大幅に低減される。
【0015】
本発明の別の態様によれば、内部空間に換気を提供するために内部空間に設置するためのファン組立体が提供され、ファン組立体は、
換気流を発生するためのファンローターであって、ファンローターへの流入はファンローターからの流出に実質的に平行である、ファンローターと、
ファンからの遠位端に後縁を有するノズルとを備え、
ベルマウスはノズル後縁に取り付けられ、
ファン組立体は、ファンによって発生した換気流が、組立体を出る前にノズル貫通ボアを通過して、換気される内部空間に入ることになるように配置されるまたは配置可能であり、
ノズル後縁とファンの中心線との間で作られる角度は垂直でなく、
ベルマウス貫通ボアの断面積は、ノズルに対するベルマウスボアの取り付けの位置から、ファンから離れる方向に最小断面積まで減少する。
【0016】
本発明で述べるベルマウスは、ノズルの後縁に取り付けられ、後縁がファンの中心線に垂直でないように傾斜される。
【0017】
ベルマウスは、好ましくは、ベルマウスの自身の中心軸の周りに回転対称であるように配置される。そのような幾何形状は、標準的な回転生産(spinning production)技法を使用して容易に製造される。
【0018】
本発明で述べるベルマウスは、推力を改善し、2つの効果を通して電力消費を低減する。
【0019】
第1に、ベルマウスは、ノズル貫通ボア入口の最も短い縁に沿うスムーズな流れを保証し、それにより、流れ剥離(flow separation)を回避する。
【0020】
第2に、ベルマウスは、ノズルの最も長い縁から放出されるジェットを周囲トンネル表面から外方に偏向させ、それにより、コアンダ効果を低減し、トンネル内推力を高める。
【0021】
上述した第1の効果は、好ましくは、ベルマウス貫通ボアを、ノズルに対するベルマウス貫通ボアの取り付けポイントにおいて、ノズル貫通ボアの最も短い縁に実質的に平行であるように配置することによって達成され得る。この幾何学的配置構成は、ベルマウス貫通ボアが、ファンから離れる方向に、ノズルに対するベルマウス貫通ボアの取り付けポイントにおいて収束断面積を有することを示唆する。したがって、ベルマウス貫通ボアは、最小断面積まで収束することができ、最小断面積の値は、好ましくは、入口または出口の流れを阻止しないようにファン断面積を参照して選択される。
【0022】
最小ベルマウス断面積を超えて、ベルマウスは、従来の方式で配置される場合があり、好ましくは、円状または楕円状弧が、ファンから離れる方向に断面積を増加する。
【0023】
流れの方向転換が貫通ボア縁の角度付けによってのみ達成され得ることを教示する特許文献1と対照的に、本発明は、ノズル後縁の傾斜及びベルマウスによる放出流の方向転換に頼る。出願人の数値流体力学(Computational Fluid Dynamics)計算は、トンネル内への流れの適切な方向転換が、それにより達成され得ることを確認した。
【0024】
本発明は、静音化(acoustic silencing)要件に適合するために任意の長さのノズルが選択され得る点で特許文献1に勝る利点を有する。本発明は、同様に、貫通ボア縁の角度付けが全く必要とされないため、特許文献1に比べて製造するのが簡単かつ安価である。開発される平坦パターンにおいて平面内湾曲が少ないため、特許文献1と比較して、本発明の生産のためにより少ないシートメタルが必要とされる場合がある。
【0025】
特許文献2の教示と対照的に、本発明は、形状が円柱である貫通ボア表面を使用しない。これは、ベルマウスに対するノズルのよりよい一致を可能にする。
【0026】
円の形状の後縁を使用することによって、円ベルマウスがノズル入口に取り付けられ得る。そのようなベルマウスは、回転生産技法を使用して容易に製造され得る。
【0027】
本明細書で述べるノズルは、通常、静音化のために、ならびに、放出された流れをトンネル周囲表面から方向転換させるために使用され得る。
【0028】
本発明の幾つかの好ましい実施形態は、ここで、単に例によってまた添付図面を参照して述べられる。
【0029】
同様の参照数字は、図全体を通して同様の構成要素のために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明で述べるノズルがファンの両側に設置された状態の換気装置の一実施形態を通る垂直断面図である。
図2】本発明で述べるノズルがファンの一方の側に設置された状態の換気装置の一実施形態を示す図である。
図3】本発明で述べるノズルがファンの両側に設置された状態の換気装置の一実施形態を通る水平断面図である。
図4】換気装置の一実施形態を通る端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1を参照すると、図1は、完全に可逆的な方式で運転するように設計されるトンネル下端の下に設置された双方向換気装置内の本発明の一実施形態の側面断面図を示す。
【0032】
この実施形態において、モーター(4)によって駆動されるファンローター(3)を備えるファン組立体は、ファンハウジング(2)内に設置される。ファンローター(3)はファン中心線(7)に沿って取り付けられる。
【0033】
空気流(5)は、出口ノズル貫通ボア(9)及びベルマウス(1)を通して放出される前に、ベルマウス(1)及び入口ノズル貫通ボア(8)を通してファンローター(3)に入る。ノズル(6)の入口及び出口後縁は、ファン中心線(7)に対する垂線に対して或る角度(13)で傾斜する。放出される空気流は、ベルマウス(1)の上側表面によってトンネル表面から離れる方向に方向転換され、したがって、コアンダ効果を低減する。
【0034】
好ましくは、角度(13)は、5度から60度の間である。好ましくは、やはり、角度(13)は約25度である。
【0035】
より大きい幾何学的スロート(14)は、貫通ボア(14)に対する垂線と後縁(6)との間の角度(13)だけノズル後縁(6)を傾斜させることによって、ノズルの入口側及び放出側の両方に配置され得る。後縁(6)は、それにより、長さが増加し得る。
【0036】
ここで、図2が参照され、図2は、(排他的ではないが)通常、一方向方式で運転されることになる本発明の特定の実施形態の側面図を示す。
【0037】
この実施形態において、示す空気流の方向は、左から右である、すなわち、空気流(5)は、ファンローター(3)によって出口貫通ボア(9)を有する成形されたノズルに入るように加速される前に、最初に従来のノズル(16)に入る。放出される流れは、ベルマウス(1)の上側表面によって方向転換される。ベルマウス(1)は、ファン中心線(7)に対する垂線に対して或る角度(13)で設置され、それにより、使用時、放出される空気は、周囲トンネル表面から外方に流れる。
【0038】
図2において、流れ方向は、必要である場合、ファンローターを反対方向に走行させることによって反転され得る。コアンダ効果の増加によって、トンネル内空力的推力の減少は、図2に述べる実施形態において、反転流れ方向に(すなわち、右から左に)予想され得る。
【0039】
本発明の一実施形態の水平断面図を示す図3をここで参照すると、貫通ボアの側壁がファン中心線(7)に平行な線に対して或る角度(15)で分岐することがわかる。これは、貫通ボア表面の非円柱特質を明らかにし、入口及び出口平面(14)における流れ面積の増加を強調する。
【0040】
図4は、ファンからの遠位端におけるノズル貫通ボアの縁が、指定された径(17)を有する円の形態である換気装置の一実施形態を通る端面図を示す。
【0041】
本発明で述べるノズルをファンの1つまたは複数の側部に適合させるために既存のファン組立体を修正し、したがって、改善された性能の利益を獲得することが可能であることになる。
【0042】
本発明は、トンネル、地下駐車場、及び同様の内部空間の換気について同様に有利である。
【0043】
上記が、実施形態の例示及びほんの幾つかのそれらの使用例を提供するだけであることが認識されるであろう。本発明の真の範囲から逸脱することなく、実施形態に対して修正が行われ得ることを当業者は容易に理解するであろう。
図1
図2
図3
図4