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特許7276859Lrig‐1タンパク質に特異的な結合分子およびその用途
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】Lrig‐1タンパク質に特異的な結合分子およびその用途
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/13 20060101AFI20230511BHJP
   C07K 16/28 20060101ALI20230511BHJP
   C07K 16/46 20060101ALI20230511BHJP
   C12N 15/63 20060101ALI20230511BHJP
   C12N 1/15 20060101ALI20230511BHJP
   C12N 1/19 20060101ALI20230511BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230511BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 39/395 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 37/04 20060101ALI20230511BHJP
   C12P 21/08 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
C12N15/13
C07K16/28 ZNA
C07K16/46
C12N15/63 Z
C12N1/15
C12N1/19
C12N1/21
C12N5/10
A61K39/395 N
A61P35/00
A61P37/04
C12P21/08
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2019556701
(86)(22)【出願日】2018-04-18
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2020-06-18
(86)【国際出願番号】 KR2018004524
(87)【国際公開番号】W WO2018194381
(87)【国際公開日】2018-10-25
【審査請求日】2021-04-09
(31)【優先権主張番号】10-2017-0049854
(32)【優先日】2017-04-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】518426066
【氏名又は名称】グッド ティー セルズ、 インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、チョン ホ
(72)【発明者】
【氏名】キム、ポム ソク
【審査官】野村 英雄
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0239964(US,A1)
【文献】国際公開第2015/187359(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2006/0204503(US,A1)
【文献】特開平11-206391(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0105902(US,A1)
【文献】"immunoglobulin heavy chain, partial [Mus musculus]",[online], INTERNET,GenBank,2016年07月24日,AC: AAN86780.1,<URL=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/AAN86780.1?report=gpwithparts&log$=seqview>
【文献】"immunoglobulin light chain constant region kappa, partial [Mus musculus]",[online], INTERNET,GenBank,2015年06月11日,AC: CAC20700.1,<URL=https://www.ncbi.nlm.nih.gov/protein/CAC20700.1?report=gpwithparts&log$=seqview&sat=2&satkey=43809394>
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C07K 1/00-19/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
GenBank/EMBL/DDBJ/GeneSeq
UniProt/GeneSeq
PubMed
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Lrig‐1(leucine‐rich and immunoglobulin‐like domains 1)タンパク質に特異的に結合する、結合分子であって、
前記合分子が以下の(1)~(4)からなる群から選択される、結合分子:
(1)配列番号5で表される重鎖CDR1、配列番号6で表される重鎖CDR2、および配列番号7で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号8で表される軽鎖CDR1、配列番号9で表される軽鎖CDR2、および配列番号10で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む結合分子;
(2)配列番号13で表される重鎖CDR1、配列番号14で表される重鎖CDR2、および配列番号15で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号16で表される軽鎖CDR1、配列番号17で表される軽鎖CDR2、および配列番号18で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む結合分子;
(3)配列番号21で表される重鎖CDR1、配列番号22で表される重鎖CDR2、および配列番号23で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号24で表される軽鎖CDR1、配列番号25で表される軽鎖CDR2、および配列番号26で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む結合分子;および、
(4)配列番号29で表される重鎖CDR1、配列番号30で表される重鎖CDR2、および配列番号31で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号32で表される軽鎖CDR1、配列番号33で表される軽鎖CDR2、および配列番号34で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む結合分子。
【請求項2】
請求項1に記載の結合分子であって、
前記結合分子は、以下のものからなる群から選択される結合分子:
配列番号11で表される重鎖可変領域と、配列番号12で表される軽鎖可変領域とを含む結合分子;
配列番号19で表される重鎖可変領域と、配列番号20で表される軽鎖可変領域とを含む結合分子;
配列番号27で表される重鎖可変領域と、配列番号28で表される軽鎖可変領域とを含む結合分子;
配列番号35で表される重鎖可変領域と、配列番号36で表される軽鎖可変領域とを含む結合分子。
【請求項3】
前記結合分子は、Fc領域または定常領域(constant region)をさらに含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項4】
前記Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体のFc領域、またはハイブリッドFc(hybrid Fc)領域である、請求項3に記載の結合分子。
【請求項5】
前記結合分子は、配列番号37、39、41、42、43および44からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる重鎖定常領域をさらに含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項6】
前記結合分子は、配列番号38または40で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖定常領域をさらに含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項7】
前記結合分子は、
配列番号37で表されるアミノ酸配列からなる重鎖定常領域と、
配列番号38で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖定常領域とをさらに含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項8】
前記結合分子は、
配列番号39、41、42または43で表されるアミノ酸配列からなる重鎖定常領域と、
配列番号40で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖定常領域とをさらに含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項9】
前記結合分子は、配列番号44で表されるアミノ酸配列からなる重鎖定常領域をさらに含む、請求項1に記載の結合分子。
【請求項10】
請求項1に記載の結合分子であって、
前記結合分子は、以下のものからなる群から選択される結合分子:
配列番号45で表される重鎖と、配列番号46で表される軽鎖とを含む結合分子;
配列番号47で表される重鎖と、配列番号48で表される軽鎖とを含む結合分子;
配列番号49で表される重鎖と、配列番号50で表される軽鎖とを含む結合分子;および
配列番号51で表される重鎖と、配列番号52で表される軽鎖とを含む結合分子。
【請求項11】
前記結合分子は、抗体またはその断片である、請求項1に記載の結合分子。
【請求項12】
前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体(humanized antibody)、二価(bivalent)、両特異性分子、ミニボディ(minibody)、ドメイン抗体、二重特異性抗体(bispecific antibody)、抗体模倣物、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)またはその断片である、請求項11に記載の結合分子。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の結合分子をコードする、核酸分子。
【請求項14】
請求項13に記載の核酸分子が挿入されている、発現ベクター。
【請求項15】
請求項14に記載の発現ベクターがトランスフェクトされている、宿主細胞株。
【請求項16】
Lrig‐1(leucine‐rich and immunoglobulin‐like domains 1)タンパク質に特異的に結合する、抗体を含む、抗体‐薬物複合体であって、
前記抗体は、以下の(1)~(4)からなる群から選択される、抗体‐薬物複合体:
(1)配列番号5で表される重鎖CDR1、配列番号6で表される重鎖CDR2、および配列番号7で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号8で表される軽鎖CDR1、配列番号9で表される軽鎖CDR2、および配列番号10で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体;
(2)配列番号13で表される重鎖CDR1、配列番号14で表される重鎖CDR2、および配列番号15で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号16で表される軽鎖CDR1、配列番号17で表される軽鎖CDR2、および配列番号18で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体;
(3)配列番号21で表される重鎖CDR1、配列番号22で表される重鎖CDR2、および配列番号23で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号24で表される軽鎖CDR1、配列番号25で表される軽鎖CDR2、および配列番号26で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体;および、
(4)配列番号29で表される重鎖CDR1、配列番号30で表される重鎖CDR2、および配列番号31で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号32で表される軽鎖CDR1、配列番号33で表される軽鎖CDR2、および配列番号34で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む抗体。
【請求項17】
請求項1から12のいずれか一項に記載の結合分子を有効成分として含む、癌の予防または治療用薬学組成物。
【請求項18】
前記癌は、固形癌である、請求項17に記載の薬学組成物。
【請求項19】
前記癌は、胃癌、肝癌、膠細胞腫、卵巣癌、大腸癌、頭頸部癌、膀胱癌、腎細胞癌、乳癌、転移癌、前立腺癌、膵臓癌、メラノーマまたは肺癌である、請求項17に記載の薬学組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、制御性T細胞(T regulatory cell;Treg cell)の表面に存在するタンパク質であるLrig‐1(leucine‐rich and immunoglobulin‐like domains 1)タンパク質に特異的に結合することができる結合分子およびその用途に関する。
【背景技術】
【0002】
癌細胞は、腫瘍形成に対して効果的な免疫反応を誘導することができる免疫原性抗原を発現するものとして広く知られている。さらに、腫瘍微小環境は、抗‐腫瘍反応を活性化するためにTLRシグナル伝達を誘発することができる成分が豊富である(文献参照:Standiford TJ,Keshamouni VG(2012)Breaking the tolerance for tumor:Targeting negative regulators of TLR signaling.Oncoimmunology 1:340‐345)。これは、疾患の初期段階で、癌細胞が腫瘍を発症することに対する宿主‐保護および腫瘍‐モデリング作用の両方を発揮する免疫系によって認知され拒否される機会を有し得ることを意味する。それにもかかわらず、癌細胞はまた、MHC分子の下方調節または抗原プロセッシングおよび提供機構といった、抑制性サイトカインの分泌を増加させ、抑制性分子を発現することで、癌細胞に対する免疫耐性を誘導する免疫監視を回避するための多くの負の制御メカニズムを有する。そこで、癌患者は、大体、不良な免疫力を有すると考えられる。したがって、癌関連免疫抑制の逆転のための製剤または治療法の開発が依然として必要である。
【0003】
一方、抗体ベースの癌治療法は、通常の薬物に比べて潜在的に特異性が高く、副作用が少ないという特性を有する。その理由は、抗体による正常細胞と新生細胞との精密な区別が可能であり、且つこれらの作用方式が細胞毒性免疫細胞の流入および相補的な活性化のような毒性の低い免疫学的抗腫瘍メカニズムによるためである。
【0004】
抗体ベース療法のための標的は、正常細胞と新生細胞を適切に区別するだけの基礎となる特定の性質を有する必要がある。効果的で安全な抗体療法の開発において、腫瘍細胞にのみ独占的に限るか、正常組織上では全く検出されない標的が理想的であることは言うまでもない。他の面で、高度の過発現は治療機会の窓の基礎になり得、遺伝子増幅の結果として、ヒト上皮成長因子受容体タイプ2(HER‐2)によって例示される低い副作用は、抗体トラスツズマブ(ハーセプチン)の優れた標的である。
【0005】
腫瘍治療法ですでに承認を受けているか、臨床開発中の抗体の他の標的は、腫瘍細胞上の標的分子の数字上の過発現に基づいていない、固有の特性を有する。プロテオグリカンMUC‐1に対する抗体の場合、標的の骨格の中に存在するペプチド繰り返しエピトープが、腫瘍細胞でアンダーグリコシル化し、その正常なカウンターパートに変更される。CD20(リツキシマブ)、CD52(キャンパス‐1H)およびCD22(エプラツズマブ)に対する抗体の場合、抗体標的は、腫瘍細胞と正常なリンパ球上で匹敵する発現水準を示す。これに関し、標的‐陰性的な幹細胞が、正常なリンパ球レパートリーを復旧させることから、抗体による正常細胞の除去は寛容され得る。抗体標的の互いに異なる接近性の他の例は、癌胎児性抗原(CEA)とカルボニックアンヒドラーゼIX(CA9)である。これら二つの抗原は、いずれもそれぞれ結腸と腎臓の正常な上皮で発現する。しかしながら、放射能標識された造影抗体は、腫瘍組織と正常組織とをよく区別するため、細胞毒性抗体はよく寛容される。これは、IgG抗体が近付くことができない正常な上皮組織の管腔の方にのみCA9とCEAが限定して発現するためであると思われる。抗原上皮細胞接着分子(Ep‐CAM)もこのカテゴリーに属する。上皮細胞に対する相同器官細胞接着分子として、これは、細胞間空間に位置する。面白いことに、高親和性抗Ep CAM抗体は、非常に毒性が高い一方、中程度の親和性抗体はよく寛容される。これは、正常細胞に対するEp‐CAM標的の接近性だけでなく、抗体結合の動力学(kinetics)が新たな治療機会の窓を開けられることを示唆することである。
【0006】
新生組織に関する疾病を治療するにあたり、8種の抗体が承認されているが、これらのほとんどは、リンパ腫と白血病に関するものである(Adams,G.P.& Weiner,L.M.(2005)Nat.Biotechnol.23,1147‐1157)。たった3つのモノクローナル抗体、すなわち、ハーセプチン、アバスチンおよびエルビタックスのみが、癌死亡率の90%以上を占める固形癌種類に聞く。実質的に残存する医学的要請、著しい臨床的メリットが認められたmAbが既に提供されており、これらの相当な商業的成功も様々なグループの患者に対する抗体ベース療法の開発とこれらの効能増強がよく均衡をなした新たな革新的な接近法を開発する動機を提供した(Brekke,O.H.& Sandlie,I.(2003)Nat.Rev.Drug Discov.2,52‐62;Carter,P.(2001)Nat.Rev.Cancer1,118‐129)。
【0007】
アップグレードした次世代抗体ベース癌治療法の出現に関してマスターすべき課題の一つは、有利な毒性/効能プロファイルの核心因子である適切な標的分子を選択することである。
【0008】
固形癌の治療に利用可能な現行抗体は、正常組織に対するこれらの標的発現により、抗体分子に内在した作用モードの蓄積された力を十分に発揮することができない。例えば、ハーセプチンの標的であるHer2/neuは、心臓筋肉をはじめ多くの正常な人体組織で発現する(Crone,S.A.,Zhao,Y.Y.,Fan,L.,Gu,Y.,Minamisawa、S.,Liu、Y.,Peterson,K.L.,Chen、J.,Kahn,R.,Condorelli,G.et al.(2002)Nat.Med.8,459‐465)。結果、ハーセプチンは、免疫力が減少するように設計され最大有効量で投薬されることができないが、これは、そうでない場合、許容不能の毒性が現れるためである。このように、「潜在的に鋭い刃を鈍くする措置」は、ハーセプチンの治療効能に制限を加える。
【0009】
毒性に関する正常組織では発現できないようにすることに加え、腫瘍細胞表面上では強力で高い発現率を示すようにし、且つ腫瘍促進機能を示すことが、理想的な抗体標的の好ましい特徴である(Houshmand,P.& Zlotnik,A.(2003)Curr.Opin.CellBiol.15,640‐644)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
本発明の一目的は、制御性T細胞(Regulatory T cell;Treg)の表面に存在するLrig‐1タンパク質に特異的な結合分子を提供することにある。
【0011】
本発明の他の目的は、本発明に係る前記結合分子をコードする核酸分子を提供することにある。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、本発明に係る前記核酸分子が挿入された発現ベクターを提供することにある。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、本発明に係る前記発現ベクターがトランスフェクトされた宿主細胞株を提供することにある。
【0014】
本発明のさらに他の目的は、本発明に係る抗体‐薬物複合体を提供することにある。
【0015】
本発明のさらに他の目的は、本発明に係る結合分子を含む癌の予防または治療用薬学組成物を提供することにある。
【0016】
しかしながら、本発明が解決しようとする技術的課題は、以上で言及した課題に制限されず、言及していない他の課題は、以下の記載から、当業界において通常の知識を有する者が明確に理解することができる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明者らは、制御性T細胞の表面に特異的に存在するLrig‐1タンパク質を見出し、前記タンパク質の抗原決定部位(epitope)を選別し、前記Lrig‐1タンパク質に特異的に結合することができるモノクローナル抗体を作製することにより、本発明を完成するに至った。
【0018】
本発明の一具現例によると、Lrig‐1(leucine‐rich and immunoglobulin‐like domains 1)タンパク質に特異的に結合する結合分子を提供する。
【0019】
本発明で用いられている「結合分子」とは、キメラ、ヒト化またはヒトモノクローナル抗体のようなモノクローナル抗体を含む完全型(intact)免疫グロブリン(immunoglobulin)、または抗原に結合する免疫グロブリン、例えば、インフルエンザAウイルスの単量体HAまたは三量体HAとの結合のために完全型(intact)免疫グロブリンと競争する免疫グロブリン断片を含む可変性ドメインを意味する。構造とは無関係に抗原‐結合断片は、完全型(intact)免疫グロブリンによって認識された同一の抗原と結合する。抗原‐結合断片は、結合分子のアミノ酸配列の2個以上の連続基、20個以上の連続アミノ酸残基、25個以上の連続アミノ酸残基、30個以上の連続アミノ酸残基、35個以上の連続アミノ酸残基、40個以上の連続アミノ酸残基、50個以上の連続アミノ酸残基、60個以上の連続アミノ酸残基、70個以上の連続アミノ酸残基、80個以上の連続アミノ酸残基、90個以上の連続アミノ酸残基、100個以上の連続アミノ酸残基、125個以上の連続アミノ酸残基、150個以上の連続アミノ酸残基、175個以上の連続アミノ酸残基、200個以上の連続アミノ酸残基、または250個以上の連続アミノ酸残基のアミノ酸配列を含むペプチドまたはポリペプチドを含むことができる。「抗原‐結合断片」は、特に、Fab、F(ab´)、F(ab´)2、Fv、dAb、Fd、相補性決定領域(CDR)断片、一本鎖抗体(scFv)、二価(bivalent)一本鎖抗体、一本鎖ファージ抗体、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ、テトラボディ、ポリペプチドとしての特定の抗原に結合するのに十分な免疫グロブリンの一つ以上の断片を含有するポリペプチドなどを含む。前記断片は、合成によりまたは完全型免疫グロブリンの酵素的または化学的分解によって生成されるか、組み換えDNA技術によって遺伝子工学的に生成され得る。生成方法は、当業界において周知の方法である。
【0020】
本発明において、前記Lrig‐1タンパク質は、制御性T細胞の表面に存在する1091個のアミノ酸からなる膜貫通タンパク質であり、細胞外あるいはルーメン側のロイシンリッチリピート(leucine‐rich repeat(LRR))と三つの免疫グロブリン様ドメイン(immunoglobulin‐like domains)、細胞膜貫通配列および細胞質側末端部分から構成されている。LRIG遺伝子ファミリは、LRIG1、LRIG2とLRIG3が存在し、これらの間のアミノ酸は、非常に保全的に構成されている。前記LRIG1遺伝子は、正常皮膚において高く発現しており、基底と毛包細胞に発現して上皮幹細胞の増殖を調節することができる。したがって、表皮の恒常性維持に重要な役割を果たし、存在していないときに乾癬や皮膚癌に発展し得る。LRIG1が位置した染色体3p14.3部分が切断される場合には、癌細胞に発展する可能性があることが報告されており、実際、腎臓癌(renal cell carcinoma)と扁平上皮癌(cutaneous squamous cell carcinoma)では、LRIG1の発現が非常に減少していることが確認された。ところで、近年、前記Lrig‐1を発現する癌は、20~30%程度に過ぎないと明かされた。一方、本発明の目的上、前記Lrig‐1タンパク質は、ヒトまたはマウスに存在するタンパク質であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0021】
本発明において、前記Lrig‐1タンパク質は、ヒト由来の配列番号1で表されるポリペプチド、またはマウス由来の配列番号3で表されるポリペプチドであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0022】
また、本発明において、前記配列番号1で表されるLrig‐1タンパク質は、配列番号2で表されるポリヌクレオチドによりコードされるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0023】
また、本発明において、前記配列番号3で表されるLrig‐1タンパク質は、配列番号4で表されるポリヌクレオチドによりコードされるものであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0024】
本発明において、前記結合分子は、
配列番号5、13、21および29からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1;配列番号6、14、22および30からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2;配列番号7、15、23および31からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;を含む重鎖可変領域と、
配列番号8、16、24および32からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1;配列番号9、17、25および33からなる群から選択されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR2;配列番号10、18、26および34からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;を含む軽鎖可変領域とを含む結合分子であってもよい。
【0025】
本発明において、前記結合分子は、
(a)配列番号5で表される重鎖CDR1、配列番号6で表される重鎖CDR2、および配列番号7で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;
(b)配列番号13で表される重鎖CDR1、配列番号14で表される重鎖CDR2、および配列番号15で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;
(c)配列番号21で表される重鎖CDR1、配列番号22で表される重鎖CDR2、および配列番号23で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域;
(d)配列番号29で表される重鎖CDR1、配列番号30で表される重鎖CDR2、および配列番号31で表される重鎖CDR3を含む重鎖領域;からなる群から選択される重鎖可変領域と、
(e)配列番号8で表される軽鎖CDR1、配列番号9で表される軽鎖CDR2、および配列番号10で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;
(f)配列番号16で表される軽鎖CDR1、配列番号17で表される軽鎖CDR2、および配列番号18で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;
(g)配列番号24で表される軽鎖CDR1、配列番号25で表される軽鎖CDR2、および配列番号26で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;
(h)配列番号32で表される軽鎖CDR1、配列番号33で表される軽鎖CDR2、および配列番号34で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域;からなる群から選択される軽鎖可変領域とを含む結合分子であってもよい。
【0026】
本発明において、前記結合分子は、
(1)配列番号5で表される重鎖CDR1、配列番号6で表される重鎖CDR2、および配列番号7で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号8で表される軽鎖CDR1、配列番号9で表される軽鎖CDR2、および配列番号10で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む結合分子;
(2)配列番号13で表される重鎖CDR1、配列番号14で表される重鎖CDR2、および配列番号15で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号16で表される軽鎖CDR1、配列番号17で表される軽鎖CDR2、および配列番号18で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む結合分子;
(3)配列番号21で表される重鎖CDR1、配列番号22で表される重鎖CDR2、および配列番号23で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号24で表される軽鎖CDR1、配列番号25で表される軽鎖CDR2、および配列番号26で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む結合分子;
(4)配列番号29で表される重鎖CDR1、配列番号30で表される重鎖CDR2、および配列番号31で表される重鎖CDR3を含む重鎖可変領域と、配列番号32で表される軽鎖CDR1、配列番号33で表される軽鎖CDR2、および配列番号34で表される軽鎖CDR3を含む軽鎖可変領域とを含む結合分子;からなる群から選択される結合分子であってもよい。
【0027】
本発明において、前記結合分子は、
配列番号11、19、27および35からなる群から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列からなる重鎖可変領域と、
配列番号12、20、28および36からなる群から選択されるいずれか一つのアミノ酸配列からなる軽鎖可変領域とを含む結合分子であってもよい。
【0028】
本発明において、前記結合分子は、
配列番号11で表される重鎖可変領域と、配列番号12で表される軽鎖可変領域とを含む結合分子;
配列番号19で表される重鎖可変領域と、配列番号20で表される軽鎖可変領域とを含む結合分子;
配列番号27で表される重鎖可変領域と、配列番号28で表される軽鎖可変領域とを含む結合分子;および
配列番号35で表される重鎖可変領域と、配列番号36で表される軽鎖可変領域とを含む結合分子;からなる群から選択される結合分子であってもよい。
【0029】
本発明において、前記結合分子は、Fc領域(Fragment crystallization region)または定常領域(constant region)をさらに含むことができる。この際、前記Fc領域は、IgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体のFc領域であるか、それから由来したものであってもよく、あるいは、ハイブリッドFc(hybrid Fc)領域であってもよい。
【0030】
本発明において、前記Fc領域は、哺乳動物由来のIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体のFc領域であってもよく、好ましくは、ヒト由来のIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体のFc領域であってもよい。
【0031】
本発明において、前記Fc領域は、哺乳動物由来のIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体のFc領域であってもよく、好ましくは、ヒト由来のIgG1、IgG2、IgG3またはIgG4抗体のFc領域であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0032】
本発明の一例示として、前記Fc領域は、配列番号37で表されるマウス由来のIgG2aFc領域であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0033】
本発明の一例示として、前記Fc領域は、配列番号38で表されるマウス由来の兔疫グロブリンカッパ(kappa)定常領域であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0034】
本発明の一例示として、前記Fc領域は、配列番号39で表されるヒト由来のIgG1 Fc領域であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0035】
本発明の一例示として、前記Fc領域は、配列番号40で表されるヒト由来のIgG2 Fc領域であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0036】
本発明の一例示として、前記Fc領域は、配列番号41で表されるヒト由来のIgG3 Fc領域であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0037】
本発明の一例示として、前記Fc領域は、配列番号42で表されるヒト由来のIgG4 Fc領域であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0038】
本発明の一例示として、前記Fc領域は、配列番号43で表されるヒト由来の兔疫グロブリンカッパ(kappa)定常領域であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0039】
本発明の一例示として、前記Fc領域は、ヒト由来の兔疫グロブリンラムダ(lambda)定常領域であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0040】
本発明において、前記「ハイブリッドFc」は、ヒトIgGサブクラスの組み合わせまたはヒトIgDおよびIgGの組み合わせから誘導され得る。前記ハイブリッドFcは、生物学的活性分子、ポリペプチドなどに結合する場合、生物学的活性分子の血清半減期を増加させるだけでなく、Fc‐ポリペプチド融合タンパク質をコードするヌクレオチドが発現するときにポリペプチドの発現水準を高める効果がある。
【0041】
本発明の一例示として、前記ハイブリッドFc領域は、配列番号44で表されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0042】
本発明の前記結合分子において前記Fcまたは定常領域は、前記可変領域にリンカー(linker)で連結され得る。この際、前記FcのC‐末端にリンカーが連結され、前記リンカーに本発明の結合分子のN‐末端が連結されてもよいが、これに制限されるものではない。
【0043】
本発明において、前記「リンカー(linker)」は、目的とする疾患の組織または細胞内で過発現する酵素によって切断され得る配列を含むことができる。前記のように過発現する酵素によって切断され得る場合には、Fc部分によってポリペプチドの活性が低下することを効果的に防止することができる。本発明では、リンカーの好ましい例として、血液内に最も多く存在するヒトアルブミンの282番~314番目の部分に位置した33個のアミノ酸からなるペプチドリンカー、より好ましくは、292番~304番目の部分に位置した13個のアミノ酸からなるペプチドリンカーであってもよく、かかる部分は、三次元的な構造上、ほとんどが外部に露出した部分であって、体内で免疫反応を誘導する可能性が最小化した部分である。ただし、これに制限されるものではない。
【0044】
本発明の結合分子は、配列番号37、39、41、42、43および44からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる重鎖定常領域をさらに含むことができる。
【0045】
本発明の結合分子は、配列番号38または40で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖定常領域をさらに含むことができる。
【0046】
本発明の結合分子は、
配列番号37で表されるアミノ酸配列からなる重鎖定常領域と、
配列番号38で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖定常領域とをさらに含むことができる。
【0047】
本発明の結合分子は、
配列番号39、41、42または43で表されるアミノ酸配列からなる重鎖定常領域と、
配列番号40で表されるアミノ酸配列からなる軽鎖定常領域とをさらに含むことができる。
【0048】
本発明の結合分子は、
配列番号44で表されるアミノ酸配列からなる重鎖定常領域をさらに含むことができる。
【0049】
本発明の結合分子は、
配列番号45で表される重鎖と、配列番号46で表される軽鎖とを含む結合分子;
配列番号47で表される重鎖と、配列番号48で表される軽鎖とを含む結合分子;
配列番号49で表される重鎖と、配列番号50で表される軽鎖とを含む結合分子;および
配列番号51で表される重鎖と、配列番号52で表される軽鎖とを含む結合分子;からなる群から選択される結合分子であってもよい。
【0050】
本発明の結合分子は、抗体であることを特徴とするが、これに限定されるものではない。前記抗体は、モノクローナル抗体(monoclonal antibody)、完全長抗体(full‐length antibody)または抗体の一部分としてLrig‐1タンパク質に結合する能力を有し、本発明の結合分子と競争的にLrig‐1抗原決定部位に結合する抗体断片をいずれも含む。
【0051】
本発明において、前記「抗体」とは、免疫学的に特定の抗原と反応性を有する免疫グロブリン分子を含む、抗原を特異的に認識する受容体の役割をするタンパク質分子を意味する。本発明の目的上、前記抗原は、制御性T細胞(regulatory T cell)の表面に存在するLrig‐1タンパク質であってもよい。好ましくは、前記Lrig‐1タンパク質のロイシンリッチ領域(Leucine Rich Region)または免疫グロブリン様ドメインを特異的に認識するものであってもよいが、これに制限されない。
【0052】
本発明において、前記「兔疫グロブリン」は、重鎖および軽鎖を有し、それぞれの重鎖および軽鎖は、定常領域と、可変領域とを含む。軽鎖および重鎖の可変領域は、相補性決定領域(complementarity determining region、以下、「CDR」とする)と称される3つの可変領域と、4つのフレームワーク領域(Framework region)とを含む。前記CDRは、主に抗原の抗原決定基(Epitope)に結合する役割をする。それぞれの鎖のCDRは、典型的にN‐末端から始まり、順次にCDR1、CDR2およびCDR3と称し、また、特定のCDRが位置している鎖によって識別される。
【0053】
また、本発明において、前記「モノクローナル抗体」は、実質的に同一の抗体集団で取得した単一分子組成の抗体分子を指すものであり、特定の抗原決定基(Epitope)に対して単一結合特異性および親和性を示す。
【0054】
本発明において、前記「完全長抗体」は、2個の全長の軽鎖および2個の全長の重鎖を有する構造であり、それぞれの軽鎖は、重鎖とジスルフィド(Disulfide)結合で連結されており、IgA、IgD、IgE、IgM、およびIgGを含む。前記IgGは、その亜型(subtype)として、IgG1、IgG2、IgG3およびIgG4を含む。
【0055】
また、本発明において、前記「抗体の断片」とは、抗原結合機能を有している断片を意味し、Fab、Fab´、F(ab´)2およびFvなどを含む。前記Fabは、軽鎖および重鎖の可変領域と軽鎖の定常領域および重鎖の最初の定常領域(CH1ドメイン)を有する構造であり、1個の抗原結合部位を有する。また、Fab´は、重鎖CH1ドメインのC末端に一つ以上のシステイン残基を含むヒンジ領域(hinge region)を有する点で、Fabと差がある。F(ab´)2抗体は、Fab´のヒンジ領域のシステイン残基がジスルフィド結合をなして生成される。Fv(Variable fragment)は、重鎖可変領域および軽鎖可変領域のみを有している最小の抗体断片を意味する。二本鎖Fv(dsFv)は、ジスルフィド結合で重鎖領域と軽鎖領域とが連結されており、一本鎖Fv(scFv)は、一般的に、ペプチドリンカーにより重鎖の可変領域と軽鎖の可変領域とが共有結合で連結されている。前記抗体断片は、タンパク質加水分解酵素、例えば、パパインまたはペプシンを用いる場合、FabまたはF(ab´)2の断片を得ることができ、遺伝子組み換え技術により作製することができる。
【0056】
また、本発明において、前記抗体は、キメラ抗体、ヒト化抗体(humanized antibody)、二価(bivalent)、両特異性分子、ミニボディ(minibody)、ドメイン抗体、二重特異性抗体(bispecific antibody)、抗体模倣物、ダイアボディ(diabody)、トリアボディ(triabody)、テトラボディ(tetrabody)、またはその断片であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0057】
本発明において、前記「キメラ抗体」は、マウス抗体の可変領域およびヒト抗体の定常領域を組み換えた抗体であり、マウス抗体に比べて免疫反応が大幅に改善した抗体である。
【0058】
また、本発明において、前記「ヒト化抗体」とは、ヒトではない種から由来した抗体のタンパク質配列をヒトから自然に産生された抗体変異体と類似するように変形した抗体を意味する。その例として、前記ヒト化抗体は、マウス由来のCDRをヒト抗体由来のFRと組み換えてヒト化可変領域を製造し、これを好ましいヒト抗体の定常領域と組み換えてヒト化抗体を製造することができる。本発明において、前記結合分子は、Lrig‐1タンパク質に結合することができ、それ以外の他のタンパク質にも結合することができる二重特異性抗体または二重特異性抗原結合断片としても提供され得る。
【0059】
本発明において、前記二重特異性抗体および二重特異性抗原結合断片は、本発明に係る結合分子を含むことができる。本発明において、一例示として、前記二重特異性抗体および二重特異性抗原結合断片は、Lrig‐1タンパク質に結合することができる抗原結合ドメインを含み、ここで、Lrig‐1に結合することができる抗原結合ドメインは、本発明に係る結合分子を含むか、これから構成され得る。
【0060】
本発明で提供する二重特異性抗体および二重特異性抗原結合断片は、本発明に係るLrig‐1タンパク質に結合することができる結合分子である抗原結合ドメインと、他の標的タンパク質に結合することができる抗原結合ドメインとを含む。ここで、他の標的タンパク質に結合することができる抗原結合ドメインは、Lrig‐1タンパク質以外の他のタンパク質であり、例えば、PD‐1または細胞表面受容体であってもよいが、これに制限されるものではない。
【0061】
本発明に係る二重特異性抗体および二重特異性抗原結合断片は、任意の適したフォーマット、例えば、全文が本願に参照として引用された文献(参照:Kontermann MAbs 2012,4(2):182‐197)に記載のフォーマットで提供され得る。例えば、二重特異性抗体または二重特異性抗原結合断片は、二重特異性抗体接合体(例:IgG2、F(ab´)2またはCovX‐ボディ)、二重特異性IgGまたはIgG‐型分子(例:IgG、scFv4‐Ig、IgG‐scFv、scFv‐IgG、DVD‐Ig、IgG‐sVD、sVD‐IgG、または2イン(in)1‐IgG、mAb2、またはTandemab common LC)、非対称性二重特異性IgGまたはIgG‐型分子(例:kih IgG、kih IgG common LC、CrossMab、kih IgG‐scFab、mAb‐Fv、電荷対またはSEED‐ボディ)、小型二重特異性抗体分子(例:ダイアボディ(Db)、dsDb、DART、scDb、tandAbs、タンデムscFv(taFv)、タンデムdAb/VHH、トリプルボディ、トリプルヘッド、Fab‐scFv、またはF(ab´)2‐scFv2)、二重特異性FcおよびCH3融合タンパク質(例:taFv‐Fc、ジ‐ダイアボディ、scDb‐CH3、scFv‐Fc‐scFv、HCAb‐VHH、scFv‐kih‐Fc、またはscFv‐kih‐CH3)、または二重特異性融合タンパク質(例:scFv2‐アルブミン、scDb‐アルブミン、taFv‐毒素、DNL‐Fab3、DNL‐Fab4‐IgG、DNL‐Fab4‐IgG‐サイトカイン2)であってもよい。特に、文献(参照:Kontermann MAbs 2012,4(2):182‐19)の図2を参照する。当業者は、本発明に係る二重特異性抗体および二重特異性抗原結合断片を設計し、製造することができる。
【0062】
本発明において、前記二重特異性抗体を産生する方法は、例えば、全文が本願に参照として引用された文献(参照:Segal and Bast,2001.Production of Bispecific Antibodies.Current Protocols in Immunology.14:IV:2.13:2.13.1‐2.13.16)に記載されているように、還元性ジスルフィドまたは非還元性チオエーテル結合と、抗体または抗体断片の化学的架橋結合とを含む。例えば、N‐スクシンイミジル‐3‐(‐2‐ピリジルジチオ)‐プロピオネート(SPDP)は、ジスルフィド連結された二重特異性F(ab)2ヘテロダイマーを生成するために、例えば、ヒンジ領域SH‐グループによりFab断片を化学的に架橋結合させるのに使用され得る。
【0063】
また、本発明において、前記二重特異性抗体を産生するための他の方法は、例えば、文献(参照:D.M.and Bast,B.J.2001.Production of Bispecific Antibodies.Current Protocols in Immunology.14:IV:2.13:2.13.1‐2.13.16)に記載されているように、二重特異性抗体を分泌することができるクアドローマ細胞を生成するために、抗体‐産生ハイブリドーマを、例えば、ポリエチレングリコールと融合させることを含む。
【0064】
本発明に係る二重特異性抗体および二重特異性抗原結合断片はまた、例えば、両方とも全文が本願に参照として引用された文献(参照:Antibody Engineering:Methods and Protocols,Second Edition(Humana Press,2012),at Chapter 40:Production of Bispecific Antibodies:Diabodies and Tandem scFv(Hornig and Farber‐Schwarz)、またはFrench,How to make bispecific antibodies,Methods Mol.Med.2000;40:333‐339)に記載されているように、例えば、抗原結合分子のためのポリペプチドをコードする核酸作製物から発現によって組み換えにより産生され得る。
【0065】
例えば、2個の抗原結合ドメイン(すなわち、PD‐1に結合することができる抗原結合ドメインのための軽鎖および重鎖可変ドメイン、および他の標的タンパク質に結合することができる抗原結合ドメインのための軽鎖および重鎖可変ドメイン)のための軽鎖および重鎖可変ドメインをコードし、抗原結合ドメインの間の適したリンカーまたは二量体化ドメインをコードする配列を含むDNA作製物は、分子クローニング技術によって製造され得る。組み換え二重特異性抗体は、以降、適した宿主細胞(例:哺乳類宿主細胞)の中で作製物の発現(例:試験管内)によって産生され得、次いで発現された組み換え二重特異性抗体は、任意に精製され得る。
【0066】
抗体は、非変形の親抗体に比べて抗原に対する抗体の親和性が改善した変形された抗体が生成される親和性成熟工程によって生成され得る。親和性成熟抗体は、当該技術分野、例えば、文献(参照:Marks et al.,Rio/Technology 10:779‐783(1992);Barbas et al.Proc Nat.Acad.Sci.USA 91:3809‐3813(1994);Schier et al.Gene 169:147‐155(1995);Yelton et al.J.Immunol.155:1994‐2004(1995);Jackson et al.,J.Immunol.154(7):3310‐159(1995);およびHawkins et al,J.Mol.Biol.226:889‐896(1992))に開示された手続きで産生され得る。
【0067】
なお、本発明で提供する結合分子は、Lrig‐1タンパク質に特異的に結合することができる限り、前記アミノ酸配列の変異体を含むことができる。例えば、抗体の結合親和性および/またはその他の生物学的特性を改善するために、抗体のアミノ酸配列に変化を与えることができる。かかる変形は、例えば、抗体のアミノ酸配列残基の欠失、挿入および/または置換を含む。
【0068】
かかるアミノ酸変異は、アミノ酸側鎖置換体の相対的類似性、例えば、疎水性、親水性、電荷、大きさなどに基づいて行われる。アミノ酸側鎖置換体の大きさ、形状および種類に関する分析により、アルギニン、リジンとヒスチジンは、いずれも陽電荷を帯びた残基であり;アラニン、グリシンとセリンは、類似した大きさを有し;フェニルアラニン、トリプトファンとチロシンは、類似した形状を有することが分かる。したがって、かかる考慮事項に基づいて、アルギニン、リジンおよびヒスチジン;アラニン、グリシンおよびセリン;およびフェニルアラニン、トリプトファンおよびチロシンは、生物学的に機能均等物と言える。
【0069】
変異を導入する際に、アミノ酸の疎水性インデックス(hydropathic index)が考慮され得る。それぞれのアミノ酸は、疎水性と電荷によって疎水性インデックスが付与されている:イソロイシン(+4.5);バリン(+4.2);ロイシン(+3.8);フェニルアラニン(+2.8);システイン/シスタイン(+2.5);メチオニン(+1.9);アラニン(+1.8);グリシン(-0.4);トレオニン(-0.7);セリン(-0.8);トリプトファン(-0.9);チロシン(-1.3);プロリン(-1.6);ヒスチジン(-3.2);グルタメート(-3.5);グルタミン(-3.5);アスパルテート(-3.5);アスパラギン(-3.5);リジン(-3.9);およびアルギニン(-4.5)。タンパク質の相互的な生物学的機能(interactive biological function)を付与する際に、疎水性アミノ酸インデックスは非常に重要である。類似した疎水性インデックスを有するアミノ酸で置換したときに類似した生物学的活性を有することができるということは、公知の事実である。疎水性インデックスを参照して変異を導入する場合、好ましくは±2以内、より好ましくは±1以内、さらに好ましくは±0.5以内の疎水性インデックスの差を示すアミノ酸の間に置換を行う。
【0070】
一方、類似した親水性値(hydrophilicity value)を有するアミノ酸の間の置換が、均等な生物学的活性を有するタンパク質をもたらすということもよく知られている。米国特許第4,554,101号に開示されているように、次の親水性値がそれぞれのアミノ酸残基に付与されている:アルギニン(+3.0);リジン(+3.0);アスパルテート(+3.0±1);グルタメート(+3.0±1);セリン(+0.3);アスパラギン(+0.2);グルタミン(+0.2);グリシン(0);トレオニン(-0.4);プロリン(-0.5±1);アラニン(-0.5);ヒスチジン(-0.5);システイン(-1.0);メチオニン(-1.3);バリン(-1.5);ロイシン(-1.8);イソロイシン(-1.8);チロシン(-2.3);フェニルアラニン(-2.5);トリプトファン(-3.4)。親水性値を参照して変異を導入する場合、好ましくは±2以内、より好ましくは±1以内、さらに好ましくは±0.5以内の親水性値の差を示すアミノ酸の間で置換を行うことができる。
【0071】
分子の活性を全体的に変更させないタンパク質でのアミノ酸交換は、当該分野において公知のものである(H.Neurath,R.L.Hill,The Proteins,Academic Press,New York(1979))。最も通常に生じる交換は、アミノ酸残基Ala/Ser、Val/Ile、Asp/Glu、Thr/Ser、Ala/Gly、Ala/Thr、Ser/Asn、Ala/Val、Ser/Gly、Tyr/Phe、Ala/Pro、Lys/Arg、Asp/Asn、Leu/Ile、Leu/Val、Gln/Glu間の交換である。
【0072】
上述の生物学的均等活性を有する変異を考慮すると、本発明の結合分子は、配列表に記載の配列と実質的同一性(substantial identity)を示す配列も含むものと解釈される。
【0073】
本発明において、「実質的同一性」という用語は、本発明の配列と任意の他の配列をできるだけ対応するように並列し、当業界において通常用いられているアルゴリズムを用いて並列した配列を分析した場合に、少なくとも61%の相同性、より好ましくは70%の相同性、さらに好ましくは80%の相同性、最も好ましくは90%の相同性を示す配列を意味する。配列比較のためのアラインメント方法は、当業界において公知のものである。アラインメントに関する様々な方法およびアルゴリズムは、Smith and Waterman,Adv.Appl.Math.2:482(1981);Needleman and Wunsch,J.Mol.Bio.48:443(1970);Pearson and Lipman,Methods in Mol.Biol.24:307‐31(1988);Higgins and Sharp,Gene 73:237‐44(1988);Higgins and Sharp,CABIOS 5:151‐3(1989);Corpet et al.,Nuc.Acids Res.16:10881‐90(1988);Huang et al.,Comp.Appl.BioSci.8:155‐65(1992)and Pearson et al.,Meth.Mol.Biol.24:307‐31(1994)に開示されている。NCBI Basic Local Alignment Search Tool(BLAST)(Altschul et al.,J.Mol.Biol.215:403‐10(1990))は、NBCI(National Center for Biological Information)などで接近可能であり、インターネット上でblastp,blasm,blastx,tblastn and tblastxのような配列分析プログラムと連動して利用することができる。BLSATは、http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/でアクセス可能である。このプログラムを用いた配列相同性比較方法は、オンライン(http://www.ncbi.nlm.nih.gov/BLAST/blast_help.html)により確認することができる。
【0074】
本発明において、前記結合分子、好ましくは前記抗体は、抗体を産生する通常の方法により生成されてもよいが、親和性成熟(Affinity maturation)により生成されてもよい。
【0075】
本発明において、前記「親和性成熟(Affinity maturation)」とは、活性化したB細胞が免疫反応過程で抗原に対する親和性が増加した抗体を産生する過程を意味する。本発明の目的上、前記親和性成熟は、自然で生じる過程と同様、突然変異と選択の原理に基づいて親和性成熟によって生成された抗体または抗体断片を生成することができる。
【0076】
本発明で提供する結合分子、好ましくは抗体は、免疫細胞のうち、特に制御性T兔疫細胞(Treg cell)の機能を抑制し、癌を効果的に予防、改善または治療することができる。
【0077】
本発明において、前記「癌」は、哺乳類で典型的に調節されない細胞成長として特徴付けられた生理的状態を示すか指す。本発明において予防、改善または治療の対象となる癌は、実質臓器(solid organ)で非正常に細胞が成長して発生した塊からなる固形癌(solid tumor)であり得、実質臓器の部位に応じて、胃癌、肝癌、膠細胞腫、卵巣癌、大腸癌、頭頸部癌、膀胱癌、腎細胞癌、乳癌、転移癌、前立腺癌、膵臓癌、メラノーマまたは肺癌などであってもよく、好ましくは、メラノーマであってもよいが、これに制限されるものではない。
【0078】
本発明の他の具現例によると、本発明で提供する前記結合分子をコードする核酸分子を提供する。
【0079】
本発明の核酸分子は、本発明で提供する結合分子のアミノ酸配列を当業者にとって周知のように、ポリヌクレオチド配列に翻訳された核酸分子の全てを含む。そのため、ORF(open reading frame)による様々なポリヌクレオチド配列が製造され得、これも全て本発明の核酸分子に含まれる。
【0080】
本発明のさらに他の具現例によると、本発明で提供する前記単離された核酸分子が挿入された発現ベクターを提供する。
【0081】
本発明において、前記「ベクター」は、ある核酸分子が連結された他の核酸を輸送することができる前記核酸分子である。ベクターの一類型は、さらなるDNAセグメントが結紮され得る円形の二本鎖DNAを指す「プラスミド」である。他の類型のベクターは、ファージベクターである。さらに他の類型のベクターは、ウイルス性ベクターであり、さらなるDNAセグメントがウイルスゲノムに結紮され得る。あるベクターは、それらが流入された宿主細胞で自律的な複製をすることができる(例えば、バクテリア性ベクターは、バクテリア性複製起源を有するエピソーム哺乳類ベクター)。その他のベクター(例えば、非‐エピソーム哺乳類ベクター)は、宿主細胞に流入されて宿主細胞のゲノムに統合され得、それにより、宿主ゲノムとともに複製される。それだけでなく、あるベクターは、これらが作動次元で連結された遺伝子の発現を指示することができる。かかるベクターは、本願において「組み換え発現ベクター」または単に「発現ベクター」と称される。一般的に、組み換えDNA技法で有用な発現ベクターは、時々プラスミドの形態で存在する。本明細書において、「プラスミド」と「ベクター」は、プラスミドがベクターのうち最も通常に使用される形態であることから、相互交換して使用され得る。
【0082】
本発明において、前記発現ベクターの具体的な例示としては、商業的に広く使用されるpCDNAベクター、F、R1、RP1、Col、pBR322、ToL、Tiベクター;コスミド;ラムダ、ラムダ状(lambdoid)、M13、Mu、p1 P22、Qμμ、T‐even、T2、T3、T7などのファージ;植物ウイルスからなる群から選択されてもよいが、これに制限されるものではなく、当業者にとって発現ベクターとして知られている全ての発現ベクターは、本発明において使用可能であり、発現ベクターを選択する際には、目的とする宿主細胞の性質による。宿主細胞へのベクター導入の際にリン酸カルシウムトランスフェクション、ウイルス感染、DEAE‐デキストラン調節トランスフェクション、リポフェクタミントランスフェクションまたは電気穿孔法により行われ得るが、これに限定されるものではなく、当業者は、使用する発現ベクターおよび宿主細胞に適する導入方法を選択し利用することができる。好ましくは、ベクターは、一つ以上の選択マーカーを含有するが、これに限定されず、選択マーカーを含有していないベクターを用いて産生物を産生するか否かに応じて選別が可能である。選択マーカーの選択は、目的とする宿主細胞によって行われ、これは、すでに当業者にとって周知の方法を用いるため、本発明は、これを制限しない。
【0083】
本発明の核酸分子の精製を容易にするために、タグ配列を発現ベクター上に挿入し融合することができる。前記タグとしては、ヘキサ‐ヒスチジンタグ、ヘマグルチニンタグ、mycタグまたはflagタグを含むが、これに限定されるものではなく、当業者にとって周知の精製を容易にするタグは、いずれも本発明において利用可能である。
【0084】
本発明のさらに他の具現例によると、本発明で提供する前記発現ベクターがトランスフェクトされた宿主細胞株を提供する。
【0085】
本発明において、前記「宿主細胞」には、ポリペプチド挿入物の組み込みのためのベクター(ら)の受容者(recipient)であるか、または受容者であった個別の細胞または細胞培養物が含まれる。宿主細胞には、単一宿主細胞の子孫が含まれ、前記子孫は、自然な、偶発的な、または故意の突然変異のため必ずしも最初の母細胞と完全に同一(形態学上またはゲノムDNA補完体で)でないこともある。宿主細胞には、本願のポリペプチド(ら)で体内でトランスフェクトされた細胞が含まれる。
【0086】
本発明において、前記宿主細胞としては、哺乳動物、植物、昆虫、菌類または細胞性起源の細胞を含むことができ、例えば、大腸菌、ストレプトミセス、サルモネラティフィムリウムなどのバクテリア細胞;酵母細胞、ピキア・パストリスなどの菌類細胞;ドロソフィラ、スポドプテラSf9細胞などの昆虫細胞;CHO(チャイニーズハムスター卵巣細胞、Chinese hamster ovary cells)、SP2/0(マウス骨髄腫)、ヒトリンパ芽球(Human lymphoblastoid)、COS、NSO(マウス骨髄腫)、293T、ボウメラノーマ細胞、HT‐1080、BHK(ベビーハムスター腎臓細胞、Baby Hamster Kidney cells)、HEK(ヒト胎児性腎臓細胞、Human Embryonic Kidney cells)またはPERC.6(ヒト網膜細胞)の動物細胞;または植物細胞であってもよいが、これに制限されるものではなく、当業者にとって周知の宿主細胞株として使用可能な細胞はいずれも利用可能である。
【0087】
本発明のさらに他の具現例によると、本発明で提供する抗体および薬物を含む抗体‐薬物複合体(Antibody‐Drug Conjugate、ADC)を提供する。
【0088】
本発明において、前記「抗体‐薬物複合体(Antibody‐Drug Conjugate、ADC)」とは、抗体と薬物の生物学的活性を低下させないとともに、薬物と抗体を化学的に連結した形態を称する。本発明において、前記抗体‐薬物複合体は、抗体の重鎖および/または軽鎖のN‐末端のアミノ酸残基に薬物が結合した形態、具体的には、抗体の重鎖および/または軽鎖のN‐末端、α‐アミン基に薬物が結合した形態を言う。
【0089】
本発明において、前記「薬物」とは、細胞に特定の生物学的活性を有する任意の物質を意味し得、これは、DNA、RNAまたはペプチド(Peptide)を含む概念である。前記薬物は、α‐アミン基と反応して架橋することができる反応基を含む形態であってもよく、α‐アミン基と反応して架橋することができる反応基を含むリンカーが連結されている形態をも含む。
【0090】
本発明において、前記α‐アミン基と反応して架橋することができる反応基の例としては、抗体の重鎖または軽鎖のN‐末端のα‐アミン基と反応して架橋することができるものであれば、その種類は特に制限されず、当業界において公知のアミン基と反応する種類をいずれも含む。その例として、イソチオシアネート(Isothiocyanate)、イソシアネート(Isocyanates)、アシルアジド(Acyl azide)、NHSエステル(NHS ester)、スルホニルクロライド(Sulfonyl chloride)、アルデヒド(Aldehyde)、グリオキサール(Glyoxal)、エポキシド(Epoxide)、オキシラン(Oxirane)、カーボネート(Carbonate)、アリールハライド(Aryl halide)、イミドエステル(Imidoester)、カルボイミド(Carbodiimide)、アンヒドリド(Anhydride)およびフルオロフェニルエステル(Fluorophenyl ester)のいずれか一つであってもよいが、これに制限されるものではない。本発明において、前記薬物は、Lrig‐1抗体が標的とする疾患である、癌を治療することができる薬物であり、抗癌剤であってもよい。
【0091】
本発明において、前記抗癌剤は、これに制限されるものではないが、ナイトロジェンマスタード、イマチニブ、オキサリプラチン、リツキシマブ、エルロチニブ、ネラチニブ、ラパチニブ、ゲフィチニブ、バンデタニブ、ニロチニブ、セマサニブ、ボスチニブ、アキシチニブ、セジラニブ、レスタウルチニブ、トラスツズマブ、ゲフィチニブ、ボルテゾミブ、スニチニブ、カルボプラチン、ソラフェニブ、ベバシズマブ、シスプラチン、セツキシマブ、ビスカムアルバム、アスパラギナーゼ、トレチノイン、ヒドロキシカルバミド、ダサチニブ、エストラムスチン、ゲムツズマブオゾガマイシン、イブリツモマブチウキセタン、ヘプタプラチン、メチルアミノレブリン酸、アムサクリン、アレムツズマブ、プロカルバジン、アルプロスタジル、硝酸ホルミウムキトサン、ゲムシタビン、ドキシフルリジン、ペメトレキセド、テガフール、カペシタビン、ギメラシル、オテラシル、アザシチジン、メトトレキサート、ウラシル、シタラビン、フルオロウラシル、フルダラビン、エノシタビン、フルタミド、カペシタビン、デシタビン、メルカプトプリン、チオグアニン、クラドリビン、カルモフール、ラルチトレキセド、ドセタキセル、パクリタキセル、イリノテカン、ベロテカン、トポテカン、ビノレルビン、エトポシド、ビンブラスチン、イダルビシン、マイトマイシン、ブレオマイシン、ダクチノマイシン、ピラルビシン、アクラルビシン、ペプロマイシン、テムシロリムス、テモゾロミド、ブスルファン、イホスファミド、シクロホスファミド、メルファラン、アルトレタミン、ダカルバジン、チオテパ、ニムスチン、クロラムブシル、ミトラクトール、ロイコボリン、トレオニン、エキセメスタン、アミノグルテチミド、アナグレリド、オラパリブ、ナベルビン、ファドロゾール、タモキシフェン、トレミフェン、テストラクトン、アナストロゾール、レトロゾール、ボロゾール、ビカルタミド、ロムスチン、5FU、ボリノスタット、エンチノスタットおよびカルムスチンからなる群から選択され得る。
【0092】
本発明のさらに他の具現例によると、本発明で提供する結合分子または抗体‐薬物複合体(Antibody‐Drug Conjugate、ADC)を有効成分として含む癌の予防または治療用薬学組成物を提供する。
【0093】
本発明において、前記「癌」は、哺乳類で典型的に調節されない細胞成長として特徴付けられた生理的状態を示すか指す。本発明において予防、改善または治療の対象となる癌は、実質臓器(solid organ)で非正常に細胞が成長して発生した塊からなる固形癌(solid tumor)であり得、実質臓器の部位に応じて、胃癌、肝癌、膠細胞腫、卵巣癌、大腸癌、頭頸部癌、膀胱癌、腎細胞癌、乳癌、転移癌、前立腺癌、膵臓癌、メラノーマまたは肺癌などであってもよく、好ましくは、メラノーマであってもよいが、これに制限されるものではない。一方、本発明において、「予防」は、本発明の薬学組成物を用いて、疾患の症状を遮断するか、その症状を抑制または遅延する全ての行為であれば、制限なく含むことができる。
【0094】
また、本発明において、「治療」は、本発明の薬学組成物を用いて、疾患の症状が好転するか良くなる全ての行為であれば、制限なく含むことができる。
【0095】
本発明において、前記薬学組成物は、カプセル、錠剤、顆粒剤、注射剤、軟膏剤、粉末または飲料の形態であることを特徴とすることができ、前記薬学組成物は、ヒトを対象とすることを特徴とすることができる。
【0096】
本発明において、前記薬学組成物は、これらに限定されるものではないが、それぞれ通常の方法により、散剤、顆粒剤、カプセル、錠剤、水性懸濁液などの経口型剤形、外用剤、坐剤および滅菌注射溶液の形態に剤形化して使用され得る。本発明の薬学組成物は、薬学的に許容される担体を含むことができる。薬学的に許容される担体は、経口投与時には、結合剤、滑沢剤、崩壊剤、賦形剤、可溶化剤、分散剤、安定化剤、懸濁化剤、色素、香料などを使用することができ、注射剤の場合には、緩衝剤、保存剤、無痛化剤、可溶化剤、等張化剤、安定化剤などを混合して使用することができ、局所投与用の場合には、基剤、賦形剤、潤滑剤、保存剤などを使用することができる。本発明の薬学組成物の剤形は、上述のような薬剤学的に許容される担体と混合して多様に製造され得る。例えば、経口投与時には、錠剤、トローチ、カプセル、エリキシル(elixir)、サスペンション、シロップ、ウェハなどの形態に製造することができ、注射剤の場合には、単位投薬アンプルまたは多数回投薬形態に製造することができる。その他、溶液、懸濁液、錠剤、カプセル、徐放性製剤などに剤形化することができる。
【0097】
一方、製剤化に適した担体、賦形剤および希釈剤の例としては、ラクトース、デキストロース、スクロース、ソルビトール、マンニトール、キシリトール、エリトリトール、マルチトール、デンプン、アカシアガム、アルジネート、ゼラチン、カルシウムホスフェート、カルシウムシリケート、セルロース、メチルセルロース、非晶質セルロース、ポリビニルピロリドン、水、メチルヒドロキシベンゾエート、プロピルヒドロキシベンゾエート、タルク、マグネシウムステアレートまたは鉱物油などが使用可能である。また、充填剤、抗凝固剤、潤滑剤、湿潤剤、香料、乳化剤、防腐剤などをさらに含むことができる。
【0098】
本発明において、前記薬学組成物の投与経路は、これらに限定されるものではないが、口腔、静脈内、筋肉内、動脈内、骨髄内、硬膜内、心臓内、経皮、皮下、腹腔内、鼻腔内、腸管、局所、舌下または直腸が含まれる。経口または非経口投下が好ましい。
【0099】
本発明において、前記「非経口」とは、皮下、皮内、静脈内、筋肉内、関節内、滑液包内、胸骨内、硬膜内、病巣内および頭蓋骨内注射または注入技術を含む。本発明の薬学組成物はまた、直腸投与のための坐剤の形態で投与され得る。
【0100】
本発明の前記薬学組成物は、使用された特定の化合物の活性、年齢、体重、一般的な健康、性別、定式、投与時間、投与経路、排出率、薬物配合および予防または治療する特定疾患の重症度を含む様々な要因に応じて多様に変化することができ、前記薬学組成物の投与量は、患者の状態、体重、疾病の程度、薬物の形態、投与経路および期間に応じて異なるが、当業者によって適切に選択され得、1日当たり0.0001~50mg/kgまたは0.001~50mg/kg投与することができる。投与は、一日に一回投与してもよく、数回に分けて投与してもよい。前記投与量は、いかなる面でも本発明の範囲を限定するものではない。本発明に係る医薬組成物は、丸剤、糖衣錠、カプセル、液剤、ゲル、シロップ、スラリー、懸濁剤に剤形化され得る。
【発明の効果】
【0101】
本発明に係るLrig‐1タンパク質に特異的な結合分子、好ましくは抗体は、制御性T細胞の機能を抑制することで、癌の中でも特に固形癌を効果的に予防、改善または治療することができる。
【0102】
また、本発明に係るLrig‐1タンパク質に特異的な結合分子、好ましくは抗体は、既存に商業的に販売されていたLrig‐1に対する抗体と比較すると、Lrig‐1タンパク質に対してより効果的に標的化することができ、結合力にも非常に優れるというメリットがある。
【図面の簡単な説明】
【0103】
図1】本発明の一実施例によるLrig‐1タンパク質の構造を示す図である。
図2】本発明の一実施例によるLrig‐1タンパク質の構造を示す図である。
図3】本発明の一実施例によるLrig‐1タンパク質の抗原決定基(epitope)を予測した結果を示す図である。
図4】本発明の一実施例によるLrig‐1タンパク質の抗原決定基(epitope)を予測した結果を示す図である。
図5】本発明の一実施例によるLrig‐1 mRNAの発現程度を示す図である。
図6】本発明の一実施例によるLrig‐1 mRNAの発現程度を示す図である。
図7】本発明の一実施例によるLrig‐1 mRNAの発現程度を示す図である。
図8】本発明の一実施例によるLrig‐1、Lrig‐2およびLrig‐3 mRNAの発現程度を示す図である。
図9】本発明の一実施例による制御性T細胞と非制御性T細胞内のLrig‐1タンパク質の発現量比較の結果を示す図である。
図10】本発明の一実施例による制御性T細胞の表面にLrig‐1タンパク質の発現を示す図である。
図11】本発明の一実施例によるLrig‐1タンパク質特異的なモノクローナル抗体(A8、B8、D9およびH6)のLrig‐1タンパク質に対する結合力を分析した結果を示す図である。
図12】本発明の一実施例によるLrig‐1タンパク質特異的なモノクローナル抗体(A8、B8、D9およびH6)の制御性T細胞内でLrig‐1タンパク質誘導Stat3リン酸化調節メカニズムを分析した結果を示す図である。
図13】本発明の一実施例によるLrig‐1タンパク質特異的なモノクローナル抗体(A8、B8、D9およびH6)を用いた癌治療効果の実験設計図を簡単に示す図である。
図14】本発明の一実施例によるLrig‐1タンパク質特異的なモノクローナル抗体(A8、B8、D9およびH6)を用いた癌治療効果を分析した結果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0104】
本発明の一具現例によると、Lrig‐1(leucine‐rich and immunoglobulin‐like domains 1)タンパク質に特異的に結合する結合分子であって、
前記結合分子は、配列番号5、13、21および29からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR1;配列番号6、14、22および30からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR2;配列番号7、15、23および31からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる重鎖CDR3;を含む重鎖可変領域と、
配列番号8、16、24および32からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR1;配列番号9、17、25および33からなる群から選択されるアミノ酸配列で表される軽鎖CDR2;配列番号10、18、26および34からなる群から選択されるアミノ酸配列からなる軽鎖CDR3;を含む軽鎖可変領域とを含む、結合分子を提供する。
【0105】
以下、実施例により、本発明をより詳細に説明する。これらの実施例は、単に本発明をより具体的に説明するためのものであって、本発明の要旨により本発明の範囲がこれらの実施例によって制限されないということは、当業界において通常の知識を有する者にとって自明である。
【実施例
【0106】
実施例
[準備例1]T細胞亜型細胞の培養
制御性T細胞(Treg)でのみLrig‐1タンパク質が発現するか確認するために、T細胞の亜型(subset)であるTh0、Th1、Th2、Th17およびiTregを準備した。前記iTregは、自然に分離したnTregとは異なり、下記の組成を含む培地で分化を人工的に誘導した細胞を意味する。
【0107】
T細胞の亜型は、まず、マウスの脾臓から得たナイーブ(naive)T細胞を分離した後、牛胎児血清(FBS;hyclone,logan,UT)10%を含むRPMI1640(Invitrogen Gibco,Grand Island,NY)栄養培地に、下記表1の成分をそれぞれさらに含むようにし、37℃、5%CO2培養器内で72時間培養によりそれぞれの細胞に分化を誘導した。
【0108】
【表1】
【0109】
[実施例1]Lrig‐1構造の分析
制御性T細胞の表面タンパク質であるLrig‐1タンパク質に特異的な抗体を作製するために、Lrig‐1タンパク質の細胞外ドメインの三次元立体構造を予測した。
【0110】
まず、抗原決定基(Epitope)塩基配列の予測のためにLrig‐1タンパク質の細胞外ドメイン(Extracellular domain;ECD)の構造を確認するため、Uniprot(http://www.uniprot.org)とRCSB Protein Data Bank(http://www.rcsb.org/pdb)ツールを用いて三次元立体構造を予測した後、その結果を図1および図2に示した。
【0111】
図1に示されているように、Lrig‐1タンパク質の細胞外ドメインのうちLrig‐LRRドメイン(アミノ酸配列41~494番)内には、LRR1~LRR15の計15個のロイシンリッチ領域(Leucine rich region)が存在した。前記LRRドメインそれぞれは、23~27個のアミノ酸から構成され、ロイシンは、3~5個が存在した。
【0112】
また、図2に示されているように、Lrig‐1タンパク質の細胞外ドメインのうちLrig‐1タンパク質のアミノ酸配列494~781番は、免疫グロブリン様ドメイン(Immunoglobulin‐like domain)が3個存在した。
【0113】
[実施例2]Lrig‐1抗原決定基(epitope)アミノ酸配列の予測
前記塩基配列の予測は、Lrig‐1タンパク質の構造をベースとする抗原決定基予測ソフトウェア(epitope prediction software)であるElliproサーバ(http://tools.iedb.org/ellipro/)を用いた。前記Ellipro検索エンジンは、現存する抗原決定基を予測するアルゴリズムのうち最も信頼度が高いと知られた検索エンジンに相当したためこれを用いた。
【0114】
抗原決定基予測ソフトウェアに前記実施例1で分析された細胞外ドメインを入力した後、予測された抗原決定基の予測された連続または不連続アミノ酸配列を図3および図4に示した。
【0115】
図3および4に示されているように、連続した抗原決定基アミノ酸配列は、計22個が予測され、不連続の抗原決定基アミノ酸配列は、計8個が予測された。
【0116】
[製造例1~8]Lrig‐1タンパク質に特異的なモノクローナル抗体の作製
本発明に係るLrig‐1タンパク質に特異的な抗体を作製した。本抗体は、特定の抗原決定基を定めて産生せず、Lrig‐1タンパク質にいかなる部位でも結合することができる抗体を産生した。
【0117】
前記抗体を作製するために、Lrig‐1タンパク質が発現する細胞を作製した。より詳細には、配列番号2に相当するDNA断片およびpcDNA(hygro)を切断酵素で切断した後、37℃で培養してライゲーション(Ligation)することで、Lrig‐1タンパク質のDNA配列が挿入(insert)されているpcDNAを作製した。前記作製された配列番号2が挿入されたpcDNAは、L細胞にトランスフェクション(transfection)により導入されて、L細胞の表面にLrig‐1タンパク質が発現し得るようにした。
【0118】
前記細胞の表面に発現するLrig‐1に結合することができる軽鎖(Light chain)および重鎖(heavy chain)アミノ酸の配列をHuman scFv libraryから選別し、計8個の重鎖および軽鎖を選別した。
【0119】
前記選別した重鎖および軽鎖アミノ酸配列をmlgG2a Fc領域と融合し、モノクローナル抗体(monoclonal antibody)を作製した。前記モノクローナル抗体の配列は、下記表2のとおりである。
【0120】
【表2】
【0121】
[実施例3]Lrig‐1 mRNAの制御性T細胞での特異的発現の確認
Lrig‐1タンパク質が制御性T細胞に特異的なバイオマーカー(biomarker)として作用することができるか検証した。
【0122】
前記検証のために、マウスの脾臓からCD4ビーズにより磁気活性化細胞選別装置(magnet‐activated cell sorting;MACS)を用いてCD4+T細胞を分離した。次に、CD25抗体を用いて蛍光活性化細胞選別装置(FACS)を用いて制御性T(CD4+CD25+T)細胞および非制御性T(CD4+CD25-T)細胞を分離した。それぞれの細胞および前記準備例1で分化した細胞は、トリゾール(Trizol)を用いてmRNAを抽出した後、ゲノムRNAは、gDNA抽出キット(Qiagen)を用いて製造社で提供したプロトコールによってgDNAを除去した。gDNAが除去されたmRNAは、BDsprint cDNA合成キット(Clonetech)によりcDNAに合成した。
【0123】
前記cDNAでLrig‐1 mRNAの発現量を定量的に確認するために、リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(real time PCR)を行った。
【0124】
前記リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応は、SYBR Green(Molecular Probes)を用いて製造社で提供したプロトコールによって95℃で3分、61℃で15秒、72℃で30秒ずつ40サイクルの条件で、下記表3のプライマーを用いて行い、相対的な遺伝子発現量は、ΔΔCT方法を用いて計算し、HPRTを用いて一般化(normalization)し、その結果を図5図8に示した。
【0125】
【表3】
【0126】
図5に示されているように、非制御性T(CD4+CD25-T)細胞に比べて制御性T(CD4+CD25+T)細胞でLrig‐1の発現が18.1倍高いことが分かる。これは、既知の制御性T細胞のマーカーであるLag3およびIkzf4と比較したときに、約10倍程度発現量が高い水準であった。また、図6および図7に示されているように、他の種類の兔疫細胞に比べて制御性T細胞、特に、誘導性制御性T細胞(iTreg)に比べて内在性制御性T細胞(nTreg)でLrig‐1 mRNAの発現が著しく高かった。
【0127】
また、図8に示されているように、Lrigファミリに相当するLrig‐1、Lrig‐2およびLrig‐3のうち、Lrig‐1の発現が最も高かった。
【0128】
前記結果により、本発明に係るLrig‐1タンパク質は、制御性T細胞、特に、内在性制御性T細胞で特異的に発現することが分かる。
【0129】
[実施例4]Lrig‐1タンパク質の制御性T細胞での特異的発現の確認
Lrig‐1 mRNAから発現したLrig‐1タンパク質が、制御性T細胞でのみ特異的に発現するか確認した。
【0130】
制御性T細胞特異的な転写因子であるFOXP3プロモータにRFP(Red fluorescence protein)が結合したFOXP3‐RFP注入(Knock‐in)マウスを用いて、前記マウスの脾臓からCD4ビーズで磁気活性化細胞選別装置(magnet‐activated cell sorting;MACS)を用いてCD4+T細胞を分離した。次に、RFPタンパク質を用いて、蛍光活性化細胞選別装置(FACS)により制御性T(CD4+RFP+T)細胞および非制御性T(CD4+RFP-T)を分離して得た。それぞれの前記細胞は、購入したLrig‐1抗体および陰性対照群は、アイソタイプ(isotype)により染色して蛍光活性化細胞選別装置でLrig‐1の発現量を測定し、その結果を図9に示した。
【0131】
図9に示されているように、点線で表される非制御性T細胞の場合、陰性対照群とほぼ同一のLrig‐1の発現水準を示したが、制御性T細胞の場合、Lrig‐1の発現水準が高い細胞が多数存在した。
【0132】
前記結果により、本発明に係るLrig‐1タンパク質は、制御性T細胞で特異的に発現することが分かる。
【0133】
[実施例5]制御性T細胞表面でのLrig‐1タンパク質特異的発現の確認
Lrig‐1タンパク質が細胞治療の標的になるためには、制御性T細胞の表面に発現したときに、より効果的に標的治療を行うことができるため、Lrig‐1タンパク質が表面で発現するか否かを確認した。
【0134】
前記準備例1のそれぞれの分化したT細胞亜型を抗‐CD4‐APCおよび抗Lrig‐1‐PE抗体で染色し、蛍光活性化細胞選別装置(Fluorescence‐Activated Cell Sorter;FACS)を用いてそれぞれの細胞の表面でLrig‐1の発現量を測定し、その結果を図10に示した。
【0135】
図10に示されているように、活性化T細胞(activated T cell)、Th1細胞、Th2細胞、Th17細胞およびナイーブ(Naive)T細胞では、Lrig‐1の発現が0.77~15.3の量で発現する一方、分化誘導性T細胞(iTreg)では、83.9と高く発現した。
【0136】
前記結果により、本発明に係るLrig‐1タンパク質は、制御性T(Treg)細胞で特異的に発現するだけでなく、特に、Treg細胞の表面でより高く発現することが分かる。
【0137】
[実施例6]本発明に係る抗体のLrig‐1タンパク質に対する結合能の評価
前記製造例1~8で作製された本発明に係るモノクローナル抗体がLrig‐1をよく認識するかを確認するために、Lrig‐1を安定して発現するL細胞に、前記製造例1~8の抗体それぞれを結合した後、マウス抗体を認識でき、且つeFlour 670がコンジュゲート(conjugation)された二次抗体(secondary antibody)を入れた後、FACSを用いて、前記モノクローナル抗体のLrig‐1タンパク質に対する結合力を分析し、その結果を図11に示した。
【0138】
図11に示されているように、本発明に係るLrig‐1タンパク質特異的なモノクローナル抗体(A8、B8、D9およびH6)は、いずれもL細胞の表面に存在するLrig‐1タンパク質を効果的に認識して結合したことを確認することができた。
【0139】
[実施例7]本発明に係る抗体のTreg細胞内のシグナル伝達経路の調節
前記製造例1~8で作製された本発明に係るモノクローナル抗体が、Lrig‐1タンパク質によりTreg細胞内のシグナル伝達経路に如何なる影響を及ぼすかを分析するために、前記製造例1~4の抗体をTreg細胞に処理して、前記Treg細胞の表面に存在するLrig‐1を刺激した後、ホスホチロシン免疫ブロット(phosphotyrosine immunoblot)により刺激を受けたTreg細胞内に存在するStat3タンパク質のチロシンリン酸化(tyrosine phosphorylation)程度を分析し、その結果を図12に示した。
【0140】
図12に示されているように、本発明に係るLrig‐1タンパク質特異的なモノクローナル抗体(A8、B8、D9およびH6)は、Stat3のリン酸化(phosphorylation)をiTreg細胞と同一の水準に維持および減少し続けることを確認することができた。
【0141】
[実施例8]本発明に係る抗体の癌治療効果
前記製造例5~8で作製された本発明に係るモノクローナル抗体(A8、B8、D9およびH6)の固形癌に対する治療効果を確認するために、図13に示されているように、B16F10メラノーマ細胞(melanoma cell)を、マウスの背部に、3×105細胞の量で皮下注射(subcutaneous injection)した後、4日目、8日目、12日目に前記製造例5~8の抗体を200μgの量で腹腔内注射した。前記メラノーマ細胞の移植後、時間の経過に伴う腫瘍の体積変化を測定し、その結果を図14に示した。
【0142】
図14に示されているように、本発明に係るLrig‐1タンパク質特異的なモノクローナル抗体(A8、B8、D9およびH6)を処理した場合、抗体を処理していない陰性対照群に比べて腫瘍の大きさが著しく減少したことを確認することができた。
【0143】
これにより、本発明に係るLrig‐1タンパク質特異的なモノクローナル抗体は、様々な固形癌細胞の成長を抑制し、これを効果的に予防、改善または治療することができることが分かる。
【0144】
以上、本発明について詳細に説明したが、本発明の権利範囲は、これに限定されず、請求の範囲に記載の本発明の技術的思想から逸脱しない範囲内で様々な修正および変形が可能であることは、当技術分野において通常の知識を有する者にとって自明である。
【産業上の利用可能性】
【0145】
本発明は、制御性T細胞(T regulatory cell;Treg cell)の表面に存在するタンパク質であるLrig‐1(leucine‐rich and immunoglobulin‐like domains 1)タンパク質に特異的に結合することができる結合分子およびその用途として、癌の予防または治療の用途に関する。
図1
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【配列表】
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