(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】シート吊り下げ具
(51)【国際特許分類】
B42F 1/02 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
B42F1/02 B
(21)【出願番号】P 2020194797
(22)【出願日】2020-11-25
【審査請求日】2021-09-29
(73)【特許権者】
【識別番号】520461901
【氏名又は名称】有限会社斎藤塗装店
(74)【代理人】
【識別番号】100091373
【氏名又は名称】吉井 剛
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 正安
【審査官】飯野 修司
(56)【参考文献】
【文献】特開2002-046380(JP,A)
【文献】韓国登録実用新案第20-0343701(KR,Y1)
【文献】特開平06-099688(JP,A)
【文献】特開平10-054408(JP,A)
【文献】特開2005-256974(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B42F 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
閉じ付勢される一対の挟持半体から成る挟持体を開放操作部により開放操作可能に構成されたクリップと、このクリップと組み合わせて紙やフィルムなどのシート状部材を挟持状態で吊下げ可能に構成されたシート挟持体とから成るシート吊り下げ具であって、前記シート挟持体は、前記シート状部材の表面に当接する第一挟持体と、前記シート状部材の裏面に当接する第二挟持体とが開閉可能に連設された構成であり、前記第一挟持体及び前記第二挟持体の外面には、夫々前記第一挟持体及び前記第二挟持体の連設部方向に延びる突片が設けられ、前記第一挟持体及び前記第二挟持体を前記クリップで挟持した状態において、前記クリップの開放操作部を開放操作した場合、
前記クリップの挟持半体が両前記突片を押圧し前記第一挟持体及び前記第二挟持体も開放するように構成され、また、前記第一挟持体の挟持先端部は前記第二挟持体の挟持内面部に突き合せ当接するように構成され、更に、前記シート状部材を挟持した場合、前記シート状部材に当接する前記第一挟持体及び前記第二挟持体夫々の先端挟持部には、内方に突出する係止凸条が設けられていることを特徴とするシート吊り下げ具。
【請求項2】
請求項1記載の
シート吊り下げ具において、前記突片は、塑性変形可能な部材で構成されていることを特徴とする
シート吊り下げ具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、シート吊り下げ具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、紙やフィルムなどのシート状部材を挟持して固定するための器具として、特許文献1に開示されるようなクリップ(以下、「従来例」という。)が提案されている。
【0003】
この従来例は、閉じ付勢される挟持体と、この挟持体を開放操作する開放操作部とから成り、挟持体には棒材で形成された吊掛具が突設されると共に、開放操作部には吊掛孔が設けられており、一の従来例の吊掛具に他の従来例の吊掛孔を係止することで、複数の従来例を上下多段に連結することができ、例えば壁面にシート状部材を吊り下げる場面に便利なものである。
【0004】
ところで、従来例は、シート状部材を吊り下げる場合、シート状部材の上端中央部位を挟持することになるが、時間の経過とともに自重によりシート状部材の上端左右部位(挟持体が当接していない部位)が垂れ下がってしまい、よって、シート状部材の表面が見えにくくなったり、体裁が悪くなったりするという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、前述したような問題点に鑑みなされたもので、従来に無い極めて実用的なシート吊り下げ具を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
添付図面を参照して本発明の要旨を説明する。
【0008】
閉じ付勢される一対の挟持半体50a,50aから成る挟持体50を開放操作部51により開放操作可能に構成されたクリップCと、このクリップCと組み合わせて紙やフィルムなどのシート状部材Pを挟持状態で吊下げ可能に構成されたシート挟持体Sとから成るシート吊り下げ具であって、前記シート挟持体Sは、前記シート状部材Pの表面に当接する第一挟持体1と、前記シート状部材Pの裏面に当接する第二挟持体2とが開閉可能に連設された構成であり、前記第一挟持体1及び前記第二挟持体2の外面には、夫々前記第一挟持体1及び前記第二挟持体2の連設部方向に延びる突片3a,4aが設けられ、前記第一挟持体1及び前記第二挟持体2を前記クリップCで挟持した状態において、前記クリップCの開放操作部51を開放操作した場合、前記クリップCの挟持半体50a,50aが両前記突片3a,4aを押圧し前記第一挟持体1及び前記第二挟持体2も開放するように構成され、また、前記第一挟持体1の挟持先端部は前記第二挟持体2の挟持内面部に突き合せ当接するように構成され、更に、前記シート状部材Pを挟持した場合、前記シート状部材Pに当接する前記第一挟持体1及び前記第二挟持体2夫々の先端挟持部には、内方に突出する係止凸条1a,2aが設けられていることを特徴とするシート吊り下げ具に係るものである。
【0009】
また、請求項1記載のシート吊り下げ具において、前記突片3a,4aは、塑性変形可能な部材で構成されていることを特徴とするシート吊り下げ具に係るものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明は上述のように構成したから、例えばシート状部材の上端中央部位を挟持して吊り下げた場合に該シート状部材の上端左右部位が垂れ下がるのを防止できるなど、従来に無い極めて実用的なシート吊り下げ具となる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
好適と考える本発明の実施形態を、図面に基づいて本発明の作用を示して簡単に説明する。
【0013】
シート挟持体S(第一挟持体1及び第二挟持体2)をクリップCで挟持し、この状態でクリップCの開放操作部51を開放操作すると、第一挟持体1及び第二挟持体2も開放し、また、このクリップCの開放操作を解除すると、挟持半体50a,50aの閉じ付勢により第一挟持体1及び第二挟持体2も閉塞する。
【0014】
上記のようにシート挟持体SにクリップCを取り付けて開放操作部51を操作してシート状部材Pを挟持し、この状態で例えば開放操作部51を壁面に付設することで、シート状部材Pを壁面に吊り下げることができる。
【0015】
従って、例えば、既存のクリップCを採用し、また、シート挟持体Sを構成する第一挟持体1及び第二挟持体2として、例えばこの既存のクリップCの挟持半体50a,50aの左右幅よりも広い左右幅を有するものを採用することで、既存のクリップCのみでシート状部材Pを挟持して吊り下げた場合と異なり、このシート状部材Pの上端左右部位が垂れ下がるのを防止することができ、しかも、既存のクリップCを有効利用することができる。
【実施例】
【0016】
本発明の具体的な実施例について図面に基づいて説明する。
【0017】
本実施例は、閉じ付勢される一対の挟持半体50a,50aから成る挟持体50と、この挟持体50を開放操作する開放操作部51とで構成されたクリップCを組み合わせることで、紙やフィルムなどの可撓性を有するシート状部材Pを挟持状態で吊下げるためのシート挟持体Sである。尚、本実施例では、クリップCとして、金属板材を略三角形状に折り曲げて設けられ先細り遊離端部が閉じ付勢される一対の挟持半体50a,50aを有する挟持体50と、金属線材をΩ形状に折り曲げて設けられ挟持体50に回動自在に設けられて該挟持体50を開閉操作し得る一対の摘み半体51a・51aを有する開放操作部51とから成る既存のクリップC(ターンクリップ)を例に説明しているが、その他のクリップ、例えば目玉クリップや洗濯バサミのような留め具でも良いなど、本実施例の特性を発揮するものであれば適宜採用し得るものである。
【0018】
シート挟持体Sは、シート状部材Pの表面に当接する第一挟持体1と、シート状部材Pの裏面に当接する第二挟持体2とが開閉可能に連設された構成である。
【0019】
具体的には、
図1,2に図示したように適宜な合成樹脂製の部材で一体成形されたものであり、正面側に垂設される帯板状の第一挟持体1と、この第一挟持体1と基端部(上端部)同士が水平板状の連設部5を介して連設され背面側に垂設される帯板状の第二挟持体2とから成る断面コ字状体である。
【0020】
このシート挟持体S(第一挟持体1,第二挟持体2及び連設部)は合成樹脂製であるから、基端側の連設部5が撓み変形することで先端側が開閉自在となる。
【0021】
また、第一挟持体1及び第二挟持体2は、いずれも内面が凹湾曲する形状に設けられ、更に、いずれも挟持先端部(下端部)に内方に突出する係止凸条1a,2aが設けられている。尚、第一挟持体1及び第二挟持体2夫々の挟持先端部にゴムなどの滑り止め部材を設けるようにしても良い。
【0022】
また、本実施例では、第一挟持体1よりも第二挟持体2の方が長く設定されており、第二挟持体2の挟持内面部に第一挟持体1の挟持先端部が突き合せ当接するように構成されている。
【0023】
従って、第一挟持体1及び第二挟持体2でシート状部材Pを挟持した際、シート状部材Pの被挟持部位が屈曲変形することで抜け止め効果が発揮される(
図9参照)。
【0024】
また、本実施例では、第一挟持体1及び第二挟持体2はシート状部材Pの左右幅(規格寸法/本実施例はA4サイズの用紙)と同一幅若しくは近似した幅となるように設けられている。
【0025】
従って、第一挟持体1及び第二挟持体2によりシート状部材Pの前方及び後方への垂れ下がりを確実に防止することができる。
【0026】
ちなみに、壁面に吊り下げた場合には、シート状部材Pの前方への垂れ下がりのみを防止すれば良い(壁面が有って後方へは垂れ下がらない)という観点からすれば、少なくとも第一挟持体1の左右幅のみシート状部材Pの左右幅(規格寸法)と同一幅若しくは近似した幅となるように設けても良いが、後方に支える壁面など無く後方への垂れ下がりも防止することを考慮すれば、第二挟持体2の左右幅もシート状部材Pの左右幅(規格寸法)と同一幅若しくは近似した幅となるように設けた方が良い。
【0027】
尚、第一挟持体1及び第二挟持体2の双方若しくは少なくとも第一挟持体1は左右幅が可変可能(伸縮可能若しくは折り畳み可能)に設けられても良い。
【0028】
また、本実施例では、第一挟持体1の外面には一の挟持半体50aを固定する第一クリップ固定部3が設けられ、また、第二挟持体2の外面には他の挟持半体50aを固定する第二クリップ固定部4が設けられており、第一クリップ固定部3及び第二クリップ固定部4は、第一挟持体1及び第二挟持体2をクリップCで挟持した状態において、クリップCの開放操作部51を開放操作することで第一挟持体1及び第二挟持体2も開放するように構成されている。
【0029】
具体的には、第一クリップ固定部3及び第二クリップ固定部4は、
図1,2に図示したように第一挟持体1及び第二挟持体2の外面から突出し、第一挟持体1及び第二挟持体2の連設部方向(
図1中上方)に延設される突片3a,4aであり、この突片3a,4aと第一挟持体1及び第二挟持体2の外面との間にクリップCの挟持半体50a,50aが嵌合されるように構成されている。
【0030】
本実施例では、第一クリップ固定部3及び第二クリップ固定部4は、塑性変形可能な金属製の板材で構成された共通のパーツであり、第一挟持体1及び第二挟持体2夫々の外面中央位置に貼設して固着される基部3b,4bと、この基部3b,4bに突出する突片3a,4aとで構成されたものである。
【0031】
従って、シート挟持体SにクリップCを挟持させるようにして第一挟持体1及び第二挟持体2の外面に挟持半体50a,50aを配すると、挟持半体50a,50a夫々は突片3a,4aと第一挟持体1及び第二挟持体2の外面との間に挿入嵌合され、この状態で突片3a,4aを変形係止させて挟持半体50a,50aへの固定を堅固にすることができる。
【0032】
尚、挟持半体50a,50a夫々を突片3a,4aと第一挟持体1及び第二挟持体2の外面との間に挿入嵌合させるだけで弾性変形して弾圧係止するように、突片3a,4aを適宜な形状に構成しても良い。
【0033】
以上の構成から成る本実施例に係るシート挟持体Sの使用方法について説明する。
【0034】
シート挟持
体SにクリップCを挟持させるようにして第一挟持体1及び第二挟持体2の外面に挟持半体50a,50aを配すると、挟持半体50a,50a夫々は突片3a,4aと第一挟持体1及び第二挟持体2の外面との間に挿入嵌合される(
図3,4参照)。
【0035】
続いて、この状態で突片3a,4aを指で折り曲げるように変形係止させて挟持半体50a,50aを固定する(
図5,6参照)。
【0036】
このシート挟持
体S(第一挟持体1及び第二挟持体2)をクリップCで挟持した状態において、クリップCの開放操作部51を開放操作することで第一挟持体1及び第二挟持体2も開放し(
図7,8参照)。尚、このクリップCの開放操作を解除する(閉じ付勢に抗して開放操作した力を抜く)と、挟持半体50a,50aの閉じ付勢により第一挟持体1及び第二挟持体2も閉塞する。
【0037】
上記のようにシート挟持
体SにクリップCを取り付けて開放操作部51を操作してシート状部材P(A4サイズの用紙)を挟持し(
図9参照)、この状態で例えば開放操作部51を壁面(フックF)に付設することで、シート状部材Pを壁面に吊り下げることができる(
図10参照)。
【0038】
本実施例は上述のように構成したから、シート挟持体Sを構成する第一挟持体1及び第二挟持体2として、例えばクリップCの挟持半体50a,50aの左右幅よりも広い左右幅を有するものを採用することで、クリップCのみでシート状部材Pを挟持して吊り下げた場合と異なり、このシート状部材Pの上端左右部位が垂れ下がるのを防止することができ、しかも、既存のクリップCを有効利用することができる。
【0039】
また、本実施例は、前述したようにクリップCにシート状部材Pの上端左右部位が垂れ下がるのを防止する機能を付与することの他、第一挟持体1及び第二挟持体2における挟持面として挟持するシート状部材Pに合った適宜な材質や形状のものを採用することができる。
【0040】
また、本実施例は、第一クリップ固定部3及び第二クリップ固定部4は、第一挟持体1及び第二挟持体2の外面から突出し、第一挟持体1及び第二挟持体2の連設部5方向に延設される突片3a,4aであり、この突片3a,4aと第一挟持体1及び第二挟持体2の外面との間にクリップCの挟持半体50a,50aが嵌合されるように構成されているから、第一挟持体1及び第二挟持体2にクリップCの挟持半体50a,50aを簡易且つ確実に固定することができる。
【0041】
また、本実施例は、第一クリップ固定部3及び第二クリップ固定部4夫々の突片3a,4aは、塑性変形可能な部材で構成されているから、この点においても第一挟持体1及び第二挟持体2にクリップCの挟持半体50a,50aを簡易且つ確実に固定することができる。
【0042】
また、本実施例は、第二挟持体2の挟持内面部に第一挟持体1の挟持先端部が突き合せ当接するように構成されているから、シート状部材Pを良好に挟持することができる。
【0043】
また、本実施例は、第一挟持体1の左右幅は、シート状部材Pの左右幅と同一幅若しくは近似した幅となるように設けられているから、シート状部材Pの上端左右部位が垂れ下がるのを確実に防止することができる。
【0044】
また、本実施例は、第一挟持体1の左右幅が可変可能に設けられた場合には、この点においてもシート状部材Pの上端左右部位が垂れ下がるのを確実に防止することができる。
【0045】
尚、本発明は、本実施例に限られるものではなく、各構成要件の具体的構成は適宜設計し得るものである。
【符号の説明】
【0046】
C クリップ
P シート状部材
S シート挟持体
1 第一挟持体
1a 係止凸条
2 第二挟持体
2a 係止凸条
3a 突片
4a 突片
50 挟持体
50a 挟持半体
51 開放操作部