(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】III型コラーゲン産生促進剤および抗老化化粧料
(51)【国際特許分類】
A61K 8/55 20060101AFI20230511BHJP
A61K 31/683 20060101ALI20230511BHJP
A61K 38/17 20060101ALI20230511BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20230511BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20230511BHJP
A61K 9/50 20060101ALI20230511BHJP
A61K 47/06 20060101ALI20230511BHJP
A61K 8/64 20060101ALI20230511BHJP
A61Q 19/08 20060101ALI20230511BHJP
A61K 8/98 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A61K8/55
A61K31/683
A61K38/17
A61P43/00 111
A61P17/00
A61K9/50
A61K47/06
A61K8/64
A61Q19/08
A61K8/98
(21)【出願番号】P 2020198530
(22)【出願日】2020-11-30
【審査請求日】2021-11-19
(73)【特許権者】
【識別番号】592215011
【氏名又は名称】東洋ビューティ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130513
【氏名又は名称】鎌田 直也
(74)【代理人】
【識別番号】100074206
【氏名又は名称】鎌田 文二
(74)【代理人】
【識別番号】100130177
【氏名又は名称】中谷 弥一郎
(72)【発明者】
【氏名】久間 將義
(72)【発明者】
【氏名】池田 素勉
(72)【発明者】
【氏名】久間 紗苗
(72)【発明者】
【氏名】吉尾 公男
【審査官】▲高▼ 美葉子
(56)【参考文献】
【文献】韓国登録特許第10-0577196(KR,B1)
【文献】特開2011-016726(JP,A)
【文献】Beauty Opener Gel III,ID 4973211,Mintel GNPD[online],2017年7月,[検索日 2022.01.06],インターネット<https://www.portal.mintel.com>
【文献】IKEDA M , Protection of a novel nono-capsule with hydrolyzed egg shell membrane and an amphiphilic vitamin C derivative,disodium isostearyl 2-O-Lascorbyl phosphate(VCP-IS-2NA),against UVA irradiation-induced skin damage on type III collagen reconstruction.,31 st IFSCC CONGRESS YOKOHAMA 2020,21-30 OCTOBER 2020,POSTER-241,p.2880-2885,DATABASE KOSMET [Online](retrieved on 2022 Jan 06): Cosmetic & Perfume Science & Technology, Germany, Retrieved from STN,Accession No.98627
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00- 8/99
A61Q 1/00-90/00
A23L 5/40- 5/49
A23L31/00-33/29
A61K31/33-33/44
CAplus/MEDLINE/KOSMET/BIOSIS (STN)
Mintel GNPD
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の化1の式で表わされるイソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩および加水分解卵殻膜成分を水溶性成分として含有
し、前記した(イソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩)/加水分解卵殻膜成分の割合が、質量比で1/1~1/8である組成物からなるIII型コラーゲン産生促進剤。
【化1】
【請求項2】
上記組成物を微粒子カプセルの構成成分とし、前記微粒子カプセルに油溶性成分を内包させた微粒子カプセル化製剤からなる請求項
1に記載のIII型コラーゲン産生促進剤。
【請求項3】
請求項1
または2に記載のIII型コラーゲン産生促進剤を有効成分として含有する抗老化化粧料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、所定のアスコルビン酸誘導体及び卵殻膜成分を用いたIII型コラーゲン産生促進剤及びこれを含有する抗老化化粧料に関する。
【背景技術】
【0002】
皮膚は、常に外界に曝されており、加齢と共にシワ、タルミ、くすみ、色素沈着などの老化現象が生じる。なかでも、シワやタルミといった皮膚形態の変化は、真皮マトリックスの90%以上を占めるコラーゲンによる影響が大きいと考えられている。
【0003】
真皮コラーゲンの量は、加齢と共に減少し、コラーゲンの減少で真皮構造の形成が不完全になるため、皮膚は衰える。また、いわゆる「光老化皮膚」のコラーゲン量も通常の皮膚に比べて、著しくコラーゲン量が減少し、シワ、タルミの大きな要因の一つとして考えられている。
【0004】
コラーゲンの中でも特に、III型コラーゲンは、柔軟性を付与する働きがあると言われており、乳児の真皮組織中で成人の者と比べIII型コラーゲンの存在量は極めて高く、加齢に伴って急速に減少をする傾向のあることが知られている。
【0005】
また、加齢を原因とする場合も含めて、III型コラーゲンの合成不全が原因であるコラーゲン線維形成機構異常を原因とするエーラス・ダンロス症候群の臨床症状IV型では、皮膚にシワが目立つ症状が確認されることも知られている。
【0006】
ところで、皮膚の加齢による形態変化を予防する薬剤またはシワ防止化粧品の有効成分として、レチノ-ルやレチノイン酸誘導体が用いられており、これはコラーゲン産生を促進する作用が知られている。
【0007】
しかし、このような有効成分を含有する従来のシワ防止化粧品は、皮膚刺激性が強く、また有効成分が非常に不安定な物質であるという欠点がある。
【0008】
また、上記有効成分以外にコラーゲン産生促進効果のある有効成分としてアスコルビン酸が知られているが、このものは、皮膚浸透性が充分でなく、また熱や酸化に対して非常に不安定であり、使用前や使用中に不活性化されたり分解されたりしやすいため、必ずしも十分な生理作用が得られない場合がある。
【0009】
アスコルビン酸の皮膚に対する浸透性を高めるために、リン酸エステル部が分岐したアルキル基を有するL-アスコルビン酸-2-リン酸エステルまたはその塩からなるアスコルビン酸誘導体からなるコラーゲン産生促進剤が知られている(特許文献1)。
【0010】
また、アスコルビン酸の不安定性を改善するために、グルコシド化した誘導体(特許文献2)も知られている。
【0011】
一方、コラーゲンの産生またはシワ改善用に有効な素材として卵殻膜が知られている。
卵殻膜は、鶏卵などの鳥類の卵殻の内側の膜であり、内外2層から構成され、外卵殻膜は卵殻内面に密着し、内卵殻膜は卵白を包んでおり、発生中の胚を抗菌性により感染から保護している。
【0012】
卵殻膜は、コラーゲン、グルコサミン、デスモシンおよびヒアルロン酸を主成分とした強靭な線維性タンパク質などから構成される網目構造を有し、これらのタンパク質は酸、アルカリ、プロテアーゼに対して比較的安定で、水に不溶性である。
【0013】
また、卵角膜とコラーゲンを含有するコラーゲン産生促進剤(特許文献3)や加水分解卵角膜成分を含有するIII型コラーゲン産生を促進することを特徴とするシワ改善用組成物(特許文献4)や美容液(特許文献5)が知られてる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【文献】特開2008-94750号公報
【文献】特開平03-139288号公報
【文献】特開2012-153614号公報
【文献】特開2018-188405号公報
【文献】特開2019-137634号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
しかし、上記した特許文献1、2に記載されるアスコルビン酸誘導体と、特許文献3-5に記載される卵殻膜は、それぞれ単独で用いられているに留まり、せいぜい汎用のビタミンCとの偶発的な併用があったに過ぎない。
【0016】
そのため、加齢による皮膚組織の老化現象に対して十分な効果のあるIII型コラーゲン産生促進剤および抗老化化粧料については知られていない。
【0017】
そこで、この発明の課題は、皮膚に対する刺激性がなく安全であり、かつコラーゲン線維の構成成分であるIII型コラーゲン量の産生を効果的に促進することができる優れたIII型コラーゲン産生促進剤を創製し、このIII型コラーゲン産生促進剤が配合され、加齢による皮膚老化現象であるシワ・たるみに対する顕著な改善効果を奏する抗老化化粧料を創製することである。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願の発明者らは、III型コラーゲン産生促進効果が知られている成分の相乗効果を検証し、その結果、イソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩および加水分解卵殻膜成分を含有する混合組成物において、III型コラーゲン産生を促進する優れた相乗作用を発揮することを見出し、さらにその混合組成物をカプセル殻構成成分とし、油溶性成分を内包させたカプセル化製剤が前記混合組成物よりも優れた作用を発揮することも見出した。さらに、本発明の混合組成物もしくはカプセル化製剤を含有した抗老化化粧料において優れたシワ・たるみを始めとした加齢による老化現象に対する改善効果を見出し、本発明を完成するに至った。
【0019】
すなわちこの発明は、上記課題を解決するために、下記の化1の式で表わされるイソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩(イソステアリルアスコルビルリン酸金属塩)、および加水分解卵殻膜成分を水溶性成分として含有する組成物からなるIII型コラーゲン産生促進剤としたのである。
【0020】
【0021】
上記の組成物からなるIII型コラーゲン産生促進剤は、水溶性成分として、化1の式で表わされるイソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩(イソステアリルアスコルビルリン酸エステル金属塩)および加水分解卵殻膜成分を併用して配合することにより、それぞれの成分を単独で配合した場合に比べて合算した以上の相乗的な作用があり、加齢による皮膚老化現象であるシワ・たるみの格別顕著な改善効果を奏する。
【0022】
このような所期した相乗効果が奏されるように、上記組成物における(イソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩)/加水分解卵殻膜成分の割合が、質量比で1/1~1/8であることが好ましい。
【0023】
また、上記III型コラーゲン産生促進剤は、ナノメーターサイズの微粒子カプセル化製剤の剤型を採用することによって、その効果がより優れることが判明しているため、上記組成物を微粒子カプセルの構成成分とし、前記微粒子カプセルに油溶性成分を内包させた微粒子カプセル化製剤からなるIII型コラーゲン産生促進剤であることが好ましい。
【0024】
また、このようにして得られるIII型コラーゲン産生促進剤を有効成分として含有する抗老化化粧料とすることにより、抗老化性の実用性が高められ、シワ・たるみの改善効果が充分に得られる。
【発明の効果】
【0025】
この発明のIII型コラーゲン産生促進剤は、前記した化1の式で表わされるイソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩および加水分解卵殻膜成分を水溶性成分として含有する組成物からなるので、皮膚に対する刺激性がなく安全であり、かつコラーゲン線維の構成成分であるIII型コラーゲン量の産生を効果的に促進することができる優れたIII型コラーゲン産生促進剤となる。そして、このIII型コラーゲン産生促進剤が配合された抗老化化粧料は、加齢による皮膚老化現象であるシワ・たるみに対する顕著な改善効果を奏するという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】実施例1及び比較例1、2のIII型コラーゲン産生促進効果のコントロールに対する相対比率を示す図表
【
図2】実施例2-5のIII型コラーゲン産生促進効果のコントロールに対する相対比率を示す図表
【発明を実施するための形態】
【0027】
この発明のIII型コラーゲン産生促進剤の実施形態は、前記した化1の式で示されるイソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩および加水分解された卵殻膜成分を水溶性成分として混合された組成物からなる。
【0028】
また、この混合組成物をカプセル殻構成成分とし、油溶性成分を内包させた微粒子カプセル化製剤は、他の実施形態であり、さらに、これらのIII型コラーゲン産生促進剤を有効成分として含有する抗老化化粧料も他の実施形態として後述する。
【0029】
この発明に用いるイソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩(イソステアリルアスコルビルリン酸2金属塩)は、リン酸エステル部が分岐したアルキル基を有するL-アスコルビン酸―2-リン酸エステルであり、適度な脂溶性があって細胞内に取り込まれやすく、その際に生体内に広く分布するフォスファターゼによって速やかにL-アスコルビン酸およびリン脂質などに分解され、皮膚の線維芽細胞において優れたIII型コラーゲン産生促進効果がある。
【0030】
イソステアリルアスコルビルリン酸エステル金属塩の具体例としては、以下の化2の式で示されるイソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩が挙げられ、その他のアルカリ金属塩としてはカリウム塩等であってもよい。
【0031】
【0032】
この発明に用いる加水分解卵殻膜成分は、卵殻膜もしくは卵殻膜含有粉末を、酸、アルカリ、アルカリ性有機溶媒、ならびにタンパク質分解酵素を含有する溶液によりタンパク質をペプチド、オリゴペプチド、必要に応じてアミノ酸に加水分解する既知の加水分解方法によって調製することができるものであり、水相及び油相への可溶性のため皮膚への親和性は高く、皮膚細胞への接着性も良好であり、単独でもある程度のIII型コラーゲン産生促進効果を示すものである。
【0033】
この発明で使用される加水分解卵殻膜成分は、上記いずれの方法によって製造された加水分解卵殻膜成分であっても用いることができる。また加水分解卵殻膜からアルコールや水性溶媒等で抽出されたエキスは、使用性や安定性のため、凍結乾燥などの乾燥手段により得られる粉末形態として使用されることが多くあるが、この発明に用いるために、例えば水やブチレングリコールなどの溶媒などに溶解した液状物として使用することもできる。また、特許文献4、5に記載されているような市販の加水分解卵殻膜成分が周知である。
【0034】
この発明のIII型コラーゲン産生促進剤の組成例としては、イソステアリルアスコルビルリン酸エステルまたはその金属塩(イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩)1~10質量%と、加水分解卵殻膜成分1~10質量%とを、グリセリン水溶液等の水性溶媒と混合撹拌し、そこに必要に応じて1~30重量%の油性成分を加えてホモジナイザーによる分散・乳化することによって混合組成物を調製することができる。
【0035】
さらに、得られた混合組成物を薄膜旋回型高速ミキサーや高圧乳化機などの一般的な微粒子化装置を使用し、微粒子化することにより皮膚浸透性に優れたナノサイズの微粒子カプセル化製剤を製造することができる。
【0036】
また、この発明のIII型コラーゲン産生促進剤は、後述する実施例の評価試験で実証されるように、III型コラーゲン産生促進機能を有し、III型コラーゲン産生促進剤として有用である。
【0037】
この発明に係るIII型コラーゲン産生促進剤は、化粧料に有効成分として含有されて利用される他、化粧料やその他の皮膚外用剤に配合して皮膚の線維芽細胞においてIII型コラーゲン産生促進作用を発揮させることができ、III型コラーゲン産生促進作用に起因した加齢による皮膚老化現象であるシワ・たるみの改善効果などの抗老化作用などの機能を持たせ、抗老化用の皮膚外用剤などに調製できる。
【0038】
この発明に係るIII型コラーゲン産生促進剤を所要の割合に配合して抗老化化粧料とする場合、III型コラーゲン産生促進剤の1種又は2種以上を配合してもよく、その配合量は、抗老化化粧料全量中に0.05質量%以上、例えば0.05~80質量%、好ましくは0.5~50質量%にすることが有効であり、かつ配合の効率もよい。
【0039】
因みに、安全性が周知である構成成分は、過剰に配合しても安全性に問題はなく、化粧料として皮膚刺激性で実用性を失しない濃度で配合可能である。
【0040】
この発明の抗老化化粧料には、上記の必須成分の他、通常の化粧料、医薬部外品、医薬品等に用いられる各種成分、例えば油性成分、乳化剤、保湿剤、増粘剤、薬効成分、防腐剤、顔料、粉体、pH調整剤、紫外線吸収剤、抗酸化剤、香料等を適宜配合することができる。
【0041】
上記した油性成分の具体例としては、流動パラフィン、ワセリン、マイクロクリスタリンワックス、スクワラン、ホホバ油、ミツロウ、カルナウバロウ、ラノリン、オリーブ油、ヤシ油、高級アルコール、脂肪酸、イソステアリルアルコールなどの高級アルコールと脂肪酸のエステル、シリコーン油等が挙げられる。
【0042】
上記の乳化剤としては、例えばポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン界面活性剤、ステアロイル乳酸ナトリウム等のアニオン界面活性剤、大豆リン脂質等の両性界面活性剤、塩化アルキルトリメチルアンモニウム等のカチオン界面活性剤が挙げられる。
【0043】
上記の保湿剤としては、例えばグリセリン、ソルビトール、キシリトール、マルチトール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、1,3-ブチレングリコール、1,2-ペンタンジオールなどが挙げられる。
【0044】
上記の増粘剤としては、例えばカルボキシビニルポリマー、(アクリレーツ/アクリル酸アルキル)クロスポリマー、キサンタンガム、メチルセルロース、ポリビニルピロリドン、ゼラチン、ベントナイト等の粘土鉱物等が挙げられる。
【0045】
その他の薬効成分としては、例えば各種ビタミンおよびその誘導体、アラントイン、グリチルリチン酸およびその誘導体、各種動植物抽出物等の老化防止剤、保湿剤、育毛剤、発毛剤、経皮吸収促進剤、紫外線吸収剤、細胞賦活剤、抗炎症剤、美白剤、防腐防カビ剤が挙げられる。
【0046】
この発明のIII型コラーゲン産生促進剤を含む抗老化化粧料は、前記した混合組成物もしくはカプセル化製剤をIIIコラーゲン産生促進性の有効成分として配合することの他には、特に製造の条件を限定されるものではなく、周知の化粧料製造法により調製できる。
【0047】
またこの発明のIII型コラーゲン産生促進剤の用途は、国内外の法律や社会的事情などにより限定されず、医薬部外品、外用医薬品等にも適用でき、化粧料の剤型は目的に応じて選択でき、例えばクリーム状、乳液状、液状、ゲル状、軟膏状、パック状、スティック状、パウダー状等の形態を採用することができる。
【実施例】
【0048】
[参考例1]
イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩(前記化2の式で示されるもの、以下同じ)0.25質量%、市販の加水分解卵殻膜成分(卵殻膜のタンパク質をアルカリで加水分解したもの)0.1質量%、グリセリン/水が20/1(質量比)の混合液99.65質量%を混合撹拌した組成物からなる参考例1のIII型コラーゲン産生促進剤を得た。
【0049】
[比較例1、2]
イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩0.25質量%と、グリセリン/水が20/1(質量比)の混合液99.75質量%とを混合撹拌した組成物からなる比較例1を得た。
【0050】
また、市販の加水分解卵殻膜成分(卵殻膜のタンパク質をアルカリで加水分解したもの)0.1質量%、グリセリン/水が20/1(質量比)の混合液99.9質量%を混合撹拌した組成物からなる比較例2を得た。
【0051】
上記のようにして得られた
参考例1、比較例1-2について、III型コラーゲン産生能
を調べるために、以下のように試験を行ない、その結果を
図1に示した。
【0052】
<参考例1、比較例1-2の線維芽細胞によるIII型コラーゲン産生能相乗効果の評価試験>
線維芽細胞は、5%子牛血清(FBS)含有DMEMを用いて96穴マイクロプレート
により0.5%FBS含有DMEMと交換した。72時間、試料含有培地で培養したのち、24時間培養後、Nucleospin RNA Plus (Machery-Nagel GmbH & Co.KG)を用いて、総RNAを抽出した。
【0053】
この総RNAに対してPrime Script RT RCR Kit (タカラバイオ社製)を用いて逆転写を行い、cDNAを合成した。得られたcDNAを鋳型として、トロポエラスチン、GAPDHの発現量を以下のプライマー及び酵素を用いて、リアルタイムPCR(7500リアルタイムPCRシステム、アプライドバイオシステムズ社製)にて測定した。
【0054】
プライマーは、Col3a1(フォーワードプライマー:TCCCCTGAGAATCTGTGTGAATC、リバースプライマー:TGAGTCGAATTGGGGQATGT)を用いた。PCRの反応にはSYBR Select Master Mix(アプライドバイオシステムズ社製)を使用し、遺伝子発現の解析は比較Ct法にて行なった。
【0055】
<試験結果>
図1に示される結果からも明らかなように、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩および加水分解卵殻膜成分の混合物が未添加(コントロール)の場合に比べて、
参考例1、比較例1、2は、明らかに高いIII型コラーゲン産生促進効果を示した。
【0056】
さらに、参考例1のIII型コラーゲン産生促進効果は、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩のみを配合した比較例1、および加水分解卵殻膜成分のみを配合した比較例2の同促進効果の総和よりも高い効果を示した。
【0057】
以上のことから、イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩および加水分解卵殻膜成分を併せて配合した実施例1は、III型コラーゲン産生促進効果において相乗効果を有していることは明らかであった。
【0058】
[実施例2、3]
イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩1.0質量%と、市販の加水分解卵殻膜成分(卵殻膜のタンパク質をアルカリで加水分解したもの)4.0質量%と、グリセリン/水が20/1(質量比)の混合液70.0質量%とを混合し、そこに25.0質量%のイソステアリルアルコールを加えてホモジナイザーによる分散・乳化することによって混合組成物Aからなる実施例2のIII型コラーゲン産生促進剤を得た。
【0059】
また、実施例2を薄膜旋回型高速ミキサーにより、微粒子化することにより微粒子カプセル化製剤Aからなる実施例3のIII型コラーゲン産生促進剤を得た。
【0060】
得られた実施例2、3について、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA製:LA-950)を用いて粒子径を測定した結果、実施例2の平均粒子径は14.87μmであり、微粒子カプセル化製剤Aである実施例3の平均粒子径は、228nmであった。
【0061】
[実施例4、5]
イソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩1.0質量%と、市販の加水分解卵殻膜成分(卵殻膜のタンパク質をアルカリで加水分解したもの)8.0質量%と、グリセリン/水が10/1(質量比)の混合液70.0質量%とを混合し、そこに22.0質量%のイソステアリルアルコールを加えてホモジナイザーによる分散・乳化することによって混合組成物Bからなる実施例4のIII型コラーゲン産生促進剤を得た。
【0062】
また、実施例4を高圧乳化機により微粒子化して微粒子カプセル化製剤Bからなる実施例5のIII型コラーゲン産生促進剤を得た。
【0063】
得られた実施例4、5について、レーザ回折/散乱式粒子径分布測定装置(HORIBA製:LA-950)を用いて粒子径を測定した結果、実施例4の平均粒子径は8.77μmであり、微粒子カプセル化製剤Bである実施例5の平均粒子径は、128nmであった。
【0064】
上記のようにして得られた実施例2-5について、III型コラーゲン産生能を調べるために、以下のように試験を行ない、その結果を
図2に示した。
【0065】
<III型コラーゲン産生促進剤(実施例2-5)の線維芽細胞によるIII型コラーゲン産生能評価>
参考例1、比較例1-2に対するIII型コラーゲン産生能相乗効果評価試験と同様に試験を行ない、実施例2-5についてIII型コラーゲン産生促進効果を測定した。
【0066】
<試験結果>
図2に示される結果からも明らかなように、実施例2(混合組成物A)、実施例3(微粒子カプセル化製剤A)、実施例4(混合組成物B)、ならびに実施例5(微粒子カプセル化製剤B)の混合物が未添加(コントロール)の場合に比べて、実施例2-5は明らかに高いIII型コラーゲン産生促進効果を示した。
【0067】
さらに、III型コラーゲン産生促進効果は、実施例2(混合組成物A)よりも実施例3(微粒子カプセル化製剤A)の方が、混合組成物Bよりも微粒子カプセル化製剤Bの方が、高いことから、微粒子カプセル化することにより皮膚浸透性が向上し、IIIコラーゲン産生促進効果が向上することが明らかになった。
【0068】
[実施例6-17、比較例3-5]
以下の表1に示す配合割合(合計100重量%)でIII型コラーゲン産生促進剤を含有する化粧料組成物(化粧水)(実施例6~17)及びIII型コラーゲン産生促進成分としてイソステアリルアスコルビルリン酸2ナトリウム塩のみを配合した比較例3、もしくは加水分解卵殻膜成分のみを配合した比較例4、またはそれらのいずれも配合しなかった比較例5を調製した。
【0069】
これらの実施例6-17、比較例3-5に対し、以下の試験を行なって、ヒトによる抗老化効果を評価した。
<ヒトによる抗老化効果の評価試験>
加齢による皮膚老化の悩みを持つ被験者を一群20名とし、実施例6-17、比較例3-5の化粧料を毎日、朝と夜、3ヶ月間塗布使用させ、3ヶ月後に累積塗布効果を以下の判定基準により自己判定させ、さらに判定結果を以下の基準で評価し、その結果を表1中に併記した。
【0070】
[評価]
◎:被験者のうち著効、有効の示す割合(有効率)が80%以上。
○:被験者のうち著効、有効の示す割合(有効率)が60%以上80%未満。
△:被験者のうち著効、有効の示す割合(有効率)が40%以上60%未満。
×:被験者のうち著効、有効の示す割合(有効率)が40%未満。
ただし、有効性の判定基準は以下の通りとした。
著効:シワ、タルミがほとんど目立たなくなった。
有効:シワ、タルミが少し目立たなくなった。
やや有効:シワ、タルミがやや目立たなくなった。
無効:変化なし。
【0071】
【0072】
表1に示された結果からも明らかなように、実施例6-17のIII型コラーゲン産生促進剤を有効成分とする化粧料(皮膚外用剤)は有用であり、皮膚の線維芽細胞にIII型コラーゲン産生促進作用を奏し、III型コラーゲン量の富化によるシワ、タルミの改善効果等によって抗老化作用の機能を持し、抗老化化粧料として有用であることが判る。
【0073】
以下に、所定のIII型コラーゲン産生促進剤を有効成分とする実施例として、化粧料の代表的な処方例を示す。各行右端の数値は配合割合(重量%)である。なお、得られた処方例による化粧料は、有効成分量のIII型コラーゲン産生促進剤を含有し、シワ、タルミの改善効果等を奏する抗老化化粧料である。
【0074】
[処方例1](ゲル状クリーム)
混合組成物A 5.0
グリセリン 5.0
エタノール 5.0
水酸化ナトリウム 0.5
カルボキシビニルポリマー 0.8
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
【0075】
[処方例2](乳液)
微粒子カプセル化製剤A 10.0
1,3-ブチレングリコール 10.0
カルボキシビニルポリマー 0.3
スクワラン 5.0
セタノール 0.6
L-アルギニン 0.3
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残余
【0076】
[処方例3](クリーム)
微粒子カプセル化製剤B 20.0
1,3-ブチレングリコール 10.0
カルボキシビニルポリマー 0.4
スクワラン 5.0
セタノール 3.0
ミツロウ 3.0
L-アルギニン 0.3
香料 適量
防腐剤 適量
精製水 残余