(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】植物病害を治療及び防除する方法及び組成物
(51)【国際特許分類】
A01N 63/40 20200101AFI20230511BHJP
A01G 7/00 20060101ALI20230511BHJP
A01G 13/00 20060101ALI20230511BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20230511BHJP
C12N 7/00 20060101ALI20230511BHJP
C12N 15/11 20060101ALN20230511BHJP
C12N 15/34 20060101ALN20230511BHJP
C12Q 1/24 20060101ALN20230511BHJP
C12Q 1/70 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
A01N63/40
A01G7/00 605Z
A01G13/00 A
A01P3/00
C12N7/00
C12N15/11 Z ZNA
C12N15/34
C12Q1/24
C12Q1/70
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2021049427
(22)【出願日】2021-03-24
(62)【分割の表示】P 2018093746の分割
【原出願日】2013-10-18
【審査請求日】2021-04-19
【審判番号】
【審判請求日】2023-02-02
(32)【優先日】2012-10-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2013-03-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【微生物の受託番号】ATCC PTA-13097
【微生物の受託番号】ATCC PTA-13098
【微生物の受託番号】ATCC PTA-13099
【微生物の受託番号】ATCC PTA-13100
【微生物の受託番号】ATCC PTA-13101
【早期審理対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】502334319
【氏名又は名称】ザ テキサス エーアンドエム ユニヴァーシティ システム
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】コンザレス カルロス エフ.
(72)【発明者】
【氏名】アハーン ステファン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】ダス マユクー
(72)【発明者】
【氏名】ヤング レイランド エフ. ザ サード
(72)【発明者】
【氏名】ボーミック トゥーシャー サブラ
【合議体】
【審判長】阪野 誠司
【審判官】齊藤 真由美
【審判官】瀬良 聡機
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01N, A01P, A01G, C12N
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
植物においてキシレラ・ファスチジオーサ(Xylella fastidiosa
)によって引き起こされる症状又は病害を予防又は軽減する方法であって、該植物と、
キシレラ・ファスチジオーサ及
びキサントモナス
種に対して毒性のあるXfas300ファージタイプの少なくとも1種のバクテリオファージとを接触させることを含み、
前
記Xfas300ファー
ジタイプが、以下の特性:
(a)前記バクテリオファージが前記キシレラ・ファスチジオーサ及び/又はキサントモナス細菌を溶菌することができること、
(b)前記バクテリオファージがIV型線毛に結合することによって細胞に感染すること、
(c)前記バクテリオファージが
、直径58nm~68nmの範囲のカプシドサイズを有する
非収縮性尾部によって特徴付けられるポドウイルス科に特有の形態を含むこと、
(d)前記バクテリオファージのゲノムサイズが約
43300bp~
44600bpであるこ
と
を示し、
さらに、Xfas300ファージのゲノムはそれ自体の単分子DNAポリメラーゼ、並びにそれ自体の単一サブユニットRNAポリメラーゼ及びヘリカーゼをコードするゲノム構成によって特徴付けられる、
方法。
【請求項2】
植物においてキサントモナスによって引き起こされる症状又は病害を予防又は軽減する方法であって、該植物と、キシレラ・ファスチジオーサ及びキサントモナス種に対して毒性のあるXfas300ファージタイプの少なくとも1種のバクテリオファージとを接触させることを含み、
前記Xfas300ファージタイプが、以下の特性:
(a)前記バクテリオファージが、前記キシレラ・ファスチジオーサ及び/又はキサントモナス細菌を溶菌することができること、
(b)前記バクテリオファージがIV型線毛に結合することによって細胞に感染すること、
(c)前記バクテリオファージが、直径58nm~68nmの範囲のカプシドサイズを有する非収縮性尾部によって特徴付けられるポドウイルス科に特有の形態を含むこと、
(d)前記バクテリオファージのゲノムサイズが約43300bp~44600bpであること、を示し、
さらに、Xfas300ファージのゲノムはそれ自体の単分子DNAポリメラーゼ、並びにそれ自体の単一サブユニットRNAポリメラーゼ及びヘリカーゼをコードするゲノム構成によって特徴付けられる、
方法。
【請求項3】
前記ファージが配列番号3~6から成る群より選択されるゲノム配列を含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
接触が、バクテリオファージ粒子を前記植物に導入することを含
み、
前記植物が、ブドウ蔓、柑橘類、アーモンド、コーヒー、アルファルファ、キョウチクトウ、オーク、モミジバフウ、アメリカハナズオウ、ニレ、モモ、アンズ、プラム、ブラックベリー、クワ、又はチタルパ・タシュケンテンシス植物であり、
前記接触が、注入により、媒介昆虫により、根系を介して、注入により、スプレーにより、噴霧により、又は植物と散布接触する(dust contacting)ことにより、バクテリオファージを植物に導入することを含み、
(i)前記媒介昆虫がヨコバイであるか、又は(ii)前記植物に導入される前記バクテリオファージの数が1PFU/ml~1×10
12
PFU/mlである、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項5】
(i)キシレラ・ファスチジオー
サに対して毒性のある2株、3株、4株、5株又は6株のバクテリオファージが前記植物に同時に又は順次導入
される
か、
又は
(ii)前記方法は、集団においてX.ファスチジオーサによって引き起こされる症状を予防又は軽減するために植物集団とバクテリオファージとを接触させることを含むと規定される、
請求項1に記載の方法。
【請求項6】
キシレラ・ファスチジオーサ及びキサントモナスに対して毒性のある2株、3株、4株、5株又は6株のバクテリオファージが前記植物に同時に又は順次導入される、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
植物への送達用に製剤化された植物病害の生物防除組成物であって、前記組成物が、少なくとも1種の担体、及
びXfas300ファージタイプ
の少なくとも1種のバクテリオファージを含み、前記バクテリオファージがキシレラ・ファスチジオーサ及びキサントモナス種に対して毒性で
あり、
前記Xfas300ファージタイプが、以下の特性:
(a)前記バクテリオファージが、前記キシレラ・ファスチジオーサ及び/又はキサントモナス細菌を溶菌することができること、
(b)前記バクテリオファージがIV型線毛に結合することによって細胞に感染すること、
(c)前記バクテリオファージが、直径58nm~68nmの範囲のカプシドサイズを有する非収縮性尾部によって特徴付けられるポドウイルス科に特有の形態を含むこと、
(d)前記バクテリオファージのゲノムサイズが約43300bp~44600bpであること、
を示し、
さらに、Xfas300ファージのゲノムはそれ自体の単分子DNAポリメラーゼ、並びにそれ自体の単一サブユニットRNAポリメラーゼ及びヘリカーゼをコードするゲノム構成によって特徴付けられる、
組成物。
【請求項8】
前記Xfas300ファージタイプは、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6から成る群より選択されるDNA配列を含む、請求項7の植物病害の生物防除組成物。
【請求項9】
注入、スプレー、噴霧、又は植物と散布接触する(dust contacting)ことにより植物に導入するように製剤化されている、請求項7又は8に記載の組成物。
【請求項10】
植物においてキサントモナス・アクソノポディス(Xanthomonas axonopodis)病原型シトリによって引き起こされる症状又は病害を予防又は軽減する方法であって、
該植物と、キサントモナス・アクソノポディス病原型シトリに対して毒性のバクテリオファージと接触することを含み、
前記接触させることが、植物にバクテリオファージを導入することを含み、
前記バクテリオファージがXfas300ファージタイプであ
り、
前記Xfas300ファージタイプが、以下の特性:
(a)前記バクテリオファージが前
記キサントモナス細菌を溶菌することができること、
(b)前記バクテリオファージがIV型線毛に結合することによって細胞に感染すること、
(c)前記バクテリオファージが、ポドウイルス科に特有の形態である、直径58nm~68nmの範囲のカプシドサイズを有する非収縮性尾部を含むこと、
(d)前記バクテリオファージのゲノムサイズが約43300bp~44600bpであること、及び
(e)前記バクテリオファージが植物(単数又は複数)において
シトラス潰瘍病と関連する症状を予防又は軽減すること、
を示し、
さらに、Xfas300ファージのゲノムはそれ自体の単分子DNAポリメラーゼ、並びにそれ自体の単一サブユニットRNAポリメラーゼ及びヘリカーゼをコードするゲノム構成によって特徴付けられる、
方法。
【請求項11】
前記Xfas300ファージタイプが、配列番号3、配列番号4、配列番号5、及び配列番号6から成る群より選択されるDNA配列を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記植物が、シトラス(Citrus)属の1種、フォーチュネラ(Fortunella)属の1種、ポンキルス(Poncirus)属の1種、ライム、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ポメロ、又は台木に使用されるカラタチのハイブリッドである、請求項
10に記載の方法。
【請求項13】
前記バクテリオファージが、注入により、若しくは媒介昆虫により植物へと導入されるか、又は注入により、スプレーにより、噴霧により、若しくは植物に散布することにより根系を介して送達
され、前記媒介昆虫がヨコバイである、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
(i)前記植物に導入される前記バクテリオファージの数が1PFU/ml~1×10
12PFU/mlである
か、又は
(ii)前記方法が、集団において、キサントモナス・アクソノポディス及びその病原型と関連する症状を予防又は軽減するために植物集団と前記バクテリオファージ粒子とを接触することを含むと規定される、
請求項
10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、植物病理学の分野に関する。より具体的には、本発明は、細菌のウイルスであるバクテリオファージの使用を含む、バクテリオファージの単離のための、及びキシレラ・ファスチジオーサ(Xylella fastidiosa)及びキサントモナス・アクソノポディス(Xanthomonas axonopodis)によって引き起こされる植物病害を治療するための方法及び組成物に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、それらの全体が引用することにより本明細書の一部をなすものとする、2012年10月19日付で出願された米国仮出願第61/716,245号、及び2013年3月14日付で出願された同第61/785,535号の利益を主張する。
【0003】
[連邦政府による資金提供を受けた研究に関する記載]
アメリカ政府は、テキサス州ピアス病研究及び教育プログラムに対する動植物検疫局(APHIS)協力協定賞、AgriLife Researchとの協定番号11-8500-0955-
CA、及びAgriLife Researchと大塚製薬株式会社の協定番号406039に従って、本
発明において一定の権利を有する。
【0004】
[配列表の援用]
Microsoft Windows(登録商標)オペレーティングシステムにより計測され、2013年
10月17日付で作成された907キロバイトの「TAMC019WO_ST25.txt」と名前が付けられたファイルに含まれる配列表は、本明細書と共に電子出願され、引用することにより本明細書の一部をなすものとする。
【背景技術】
【0005】
細菌は、植物において、ブドウ蔓のピアス病、及び柑橘植物のミカン類潰瘍病を含む多くの病害を引き起こす可能性がある。細菌は植物組織に感染し、萎れ、生育不良、果実の損傷、更には枯死を引き起こす可能性がある。感染は、風、雨、汚染された機器、又は媒介昆虫による蔓延を通して他の植物に容易に拡散し、植物に有害な影響及び大規模な作物被害をもたらす。これらの病害の効果的な治療は、細菌を除外する植物の治療方法を必要とする。
【発明の概要】
【0006】
一態様では、本発明は、キサントモナス細菌の培養物にバクテリオファージを感染させること、上記バクテリオファージを増殖させること、及び上記培養物からバクテリオファージ粒子を単離することを含む、X.ファスチジオーサ(X. fastidiosa)をその宿主域に含む毒性バクテリオファージ(ファージ)を増殖する方法を提供する。別の実施の形態では、キサントモナス細菌は、種株EC-12を含む。別の実施の形態では、バクテリオファージは、細胞表面特徴に結合することによって細胞に感染する。別の実施の形態では、上記細胞特徴はIV型線毛である。別の実施の形態では、上記バクテリオファージは、ポドファージ、シホファージ、及びミオファージからなる群から選択される尾部を有するバクテリオファージを含む。別の実施の形態では、上記バクテリオファージは、環境、下水処理場若しくは下水、植物若しくはその表面、又は周囲の土壌から単離される。本発明の別の実施の形態では、毒性バクテリオファージを富化するため代理宿主を使用する。更に別の実施の形態では、上記バクテリオファージはキシレラ・ファスチジオーサにおいて毒性である。他の実施の形態では、バクテリオファージの成長のため寒天重層を使用する。
【0007】
別の態様では、本発明は、X.ファスチジオーサ及びキサントモナス細菌と、毒性バクテリオファージの集団を含む試料とを接触すること、並びに上記X.ファスチジオーサ及びキサントモナス細菌を溶菌することが可能な上記集団から少なくとも第1のバクテリオファージを単離することを含む、ピアス病に対する候補となる防除剤を得る方法を提供する。1つの実施の形態では、上記バクテリオファージは、細胞表面特徴に結合することによって細胞に感染する。別の実施の形態では、上記細胞表面特徴はIV型線毛である。更に別の実施の形態では、上記細胞表面特徴は、細菌宿主の病原性/毒性に必要である。他の実施の形態は、X.ファスチジオーサ及びキサントモナスの少なくとも1種の菌叢と試料とを接触させるこ、X.ファスチジオーサ及びキサントモナスと試料とを同時に接触させるこ、並びにX.ファスチジオーサ及びキサントモナスと試料とを順次に接触させることを含む。他の実施の形態では、上記バクテリオファージは、環境、下水処理場若しくは下水、植物若しくはその表面、又は周囲の土壌から単離される。別の実施の形態では、使用される上記バクテリオファージは、キシレラ・ファスチジオーサにおいて毒性である。上記方法は、宿主細菌と上記毒性バクテリオファージとを接触させた後に、溶菌した細菌宿主細胞、又はプラーク形成を検出することを更に含んでもよい。特定の実施の形態では、上記方法は、バクテリオファージの試料が導入された細菌宿主細胞のプレート寒天重層又はプレートを含む。
【0008】
他の実施の形態では、上記バクテリオファージは、X.ファスチジオーサ及びキサントモナスを含有する軟寒天重層の使用により調製され、更なる実施の形態では、融合溶菌を呈するX.ファスチジオーサ株又はキサントモナス株、例えば、EC-12を含む1又は複数の重層プレート(複数の場合がある)を採取した後に、浸軟及び遠心分離による清澄化によって、高力価ファージプレート溶菌物を調製する。濾過滅菌した後、得られた溶菌物を、例えば4℃にて保存することができる。その後、高力価ファージ溶菌物を、例えば、等密度CsCl遠心分離によって精製し、抽出したファージ溶液を透析する。得られたCsCl精製バクテリオファージは、典型的には約1×1011PFU/mlの力価を呈する。
【0009】
幾つかの実施の形態では、植物組織濾過物(PTF)中のバクテリオファージの割合は、X.ファスチジオーサ株Temeculaについて4日間、又はキサントモナス株EC-12について4時間に関し、20mlの代理宿主(選択した宿主の活発な成長培養物)に対してPTF約1mlである。
【0010】
本発明の別の態様は、植物においてX.ファスチジオーサと関連する症状又は病害を予防又は軽減する方法であって、植物と、X.ファスチジオーサをその宿主域に含むバクテリオファージとを接触させることを含み、X.ファスチジオーサと関連する症状又は病害が、葉が葉縁に沿って黄色又は赤色の外観を示し、最終的には葉縁の壊死を伴うピアス病(PD)特有の症状を含む、植物においてX.ファスチジオーサと関連する症状又は病害を予防又は軽減する方法を提供する。1つの実施の形態では、上記バクテリオファージ粒子は植物中へと導入されてもよい。別の実施の形態では、上記植物は、ブドウ蔓植物、柑橘類植物、アーモンド、コーヒー、アルファルファ、キョウチクトウ、オーク、モミジバフウ、アメリカハナズオウ、ニレ、モモ、アンズ、プラム、ブラックベリー、クワ、及びチタルパ・タシュケンテンシス(Chitalpa tashkentensis)からなる群から選択される。別の実施の形態では、上記バクテリオファージは、注入により、媒介昆虫により植物へと導入されるか、又は注入によって根系を介して送達される。他の実施の形態では、注入は、針又無針系、空気圧又は加圧注入系を含む。他の実施の形態では、上記注入は、手動で行われるか、又は1回若しくは2回以上行われる。別の実施の形態では、上記媒介昆虫はヨコバイ(glassy winged sharpshooter)である。別の実施の形態では、上記植物に導入されるバクテリオファージは、1P
FU/ml(プラーク形成単位/ml)~1012PFU/ml、104PFU/ml~1011PFU/ml、及び107PFU/ml~1010PFU/mlである。別の実施の形態では、上記バクテリオファージ粒子は、キサントモナス細菌の培養物にバクテリオファージを感染させること、上記バクテリオファージを増殖させること、及び上記培養物からバクテリオファージ粒子を単離することを含む方法によって得られる。別の実施の形態では、上記方法は、X.ファスチジオーサと関連する症状を予防又は軽減するため、植物の集団とバクテリオファージ粒子とを接触させることを含む。更に別の実施の形態では、上記バクテリオファージは、下記のXfas100ファージタイプ又はXfas300ファージタイプから選択される少なくとも1種のバクテリオファージ(ファージ)の株を含む。
【0011】
別の態様では、本発明は、植物への送達用に製剤化された植物病害の生物防除組成物を提供し、上記組成物は、少なくとも1種の希釈剤、アジュバント又は界面活性剤、及び下記のXfas100ファージタイプ又はXfas300ファージタイプからの少なくとも1種のバクテリオファージを含む。1つの実施の形態では、上記組成物は、注入、スプレー、噴霧、又は散布を介して植物へと導入するために製剤化されると更に規定される。別の実施の形態では、上記組成物は、植物への局所投与用に製剤化されると更に規定される。
【0012】
別の態様では、本発明は、ミカン類潰瘍病に対する候補となる生物防除剤を得る方法であって、キサントモナス・アクソノポディス病原型シトリ(pv. citri)細菌と、毒性バ
クテリオファージの集団を含む試料とを接触すること、及び上記キサントモナス・アクソノポディス細菌を溶菌することが可能な上記集団から少なくとも第1のバクテリオファージを単離することを含む、ミカン類潰瘍病に対する候補となる生物防除剤を得る方法を提供する。1つの実施の形態では、上記バクテリオファージは、細胞表面特徴に結合することによって細胞に感染する。別の実施の形態では、上記細胞表面特徴はIV型線毛である。更に別の実施の形態では、上記細胞表面特徴は、細菌宿主の病原性/毒性に必要である。他の実施の形態は、キサントモナスの菌叢と試料とを接触することを含む。別の実施の形態では、使用される上記バクテリオファージは、キサントモナス・アクソノポディスにおいて毒性である。
【0013】
本発明の別の態様は、植物においてキサントモナス・アクソノポディスと関連する症状又は病害を予防又は軽減する方法であって、植物と、キサントモナス・アクソノポディスをその宿主域に含むバクテリオファージとを接触することを含む、植物においてキサントモナス・アクソノポディスと関連する症状又は病害を予防又は軽減する方法を提供する。1つの実施の形態では、上記バクテリオファージ粒子は、上記植物に導入されてもよい。幾つかの実施の形態では、上記植物は、シトラス属の1種、フォーチュネラ属の1種、ポンキルス属の1種、ライム、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ポメロ、又は台木に使用されるカラタチのハイブリッドからなる群から選択される柑橘類植物である。別の実施の形態では、上記バクテリオファージは、注入により、媒介昆虫により植物へと導入されるか、又は注入によって根系を介して送達される。幾つかの実施の形態では、注入は、針又は無針系、空気圧又は加圧注入系を含む。他の実施の形態では、上記注入は手動で行われるか、又は1回若しくは2回以上行われる。別の実施の形態では、上記媒介昆虫はヨコバイである。別の実施の形態では、上記植物に導入されるバクテリオファージは、1PFU/ml(プラーク形成単位/ml)~1012PFU/ml、104PFU/ml~1011PFU/ml、及び107PFU/ml~1010PFU/mlの濃度である。別の実施の形態では、上記方法は、植物の集団においてキサントモナス・アクソノポディス及びその病原型と関連する症状を予防又は軽減するため、植物の集団と上記バクテリオファージ粒子とを接触することを含む。更に別の実施の形態では、上記バクテリオファージは、下記のXfas100ファージタイプ又はXfas300ファージタイプから選択
される少なくとも1種のバクテリオファージの株を含む。
【0014】
別の態様では、本発明は、キサントモナス・アクソノポディスに毒性の単離されたバクテリオファージ、Xfas303バクテリオファージを提供し、上記バクテリオファージの代表試料はATCCアクセッション番号PTA-13099により寄託されている。更に別の態様では、本発明は、Xfas101、Xfas102、Xfas103、Xfas104、Xfas105、Xfas106、Xfas107、Xfas108、Xfas109、Xfas110、Xfas301、Xfas302、Xfas304、Xfas305、及びXfas306からなる群から選択されるバクテリオファージの1つとして、キサントモナス・アクソノポディス及び/又はX.ファスチジオーサに毒性の単離されたバクテリオファージを提供し、上記バクテリオファージXfas103、Xfas106、Xfas302、Xfas303、Xfas304、及びXfas306の代表試料は、ATCCアクセッション番号PTA-13095、PTA-13096、PTA-13097、PTA-13098、PTA-13099、及びPTA-13100により寄託されている。
【0015】
或る特定の実施の形態では、本発明は、植物においてX.ファスチジオーサ又はキサントモナス・アクソノポディス病原型シトリと関連するか、又はそれらによって引き起こされる症状又は病害を予防又は軽減する方法であって、上記植物と、X.ファスチジオーサ及び/又はキサントモナス・アクソノポディス病原型シトリをその宿主域に含む毒性バクテリオファージとを接触させる工程を含み、さらに、上記バクテリオファージがXfas100ファージタイプ、及びXfas300ファージタイプからなる群から選択される少なくとも1種のバクテリオファージであり、上記Xfas100タイプファージが、(a)上記バクテリオファージが上記キシレラ・ファスチジオーサ及び/又はキサントモナス細菌を溶菌することができること、(b)上記バクテリオファージがIV型線毛に結合することによって細胞に感染すること、(c)上記ファージが、シホウイルス科に特有の形態である、直径55mm~77mmの範囲のカプシドを有する長い非収縮性尾部を呈する尾部を有するバクテリオファージの群に属すること、(d)上記バクテリオファージのゲノムサイズが約55500bp~56200bpであること、及び(e)上記バクテリオファージが植物(単数又は複数)においてピアス病と関連する症状を予防又は軽減することからなる群から選択される選択される少なくとも1つの特性を有し、上記Xfas300タイプファージが、(a)上記バクテリオファージが、上記キシレラ・ファスチジオーサ及び/又はキサントモナス細菌を溶菌することができること、(b)上記バクテリオファージがIV型線毛に結合することによって細胞に感染すること、(c)上記ファージが、ポドウイルス科に特有の形態である、直径58mm~68mmの範囲のカプシドを有する短い非収縮性尾部を呈する尾部を有するバクテリオファージの群に属すること、(d)上記バクテリオファージのゲノムサイズが約43300bp~44600bpであること、及び(e)上記バクテリオファージが、植物(単数又は複数)においてピアス病と関連する症状を予防又は軽減する活性を有することからなる群から選択される少なくとも1つの特性を有する、植物においてX.ファスチジオーサ又はキサントモナス・アクソノポディス病原型シトリと関連するか、又はそれらによって引き起こされる症状又は病害を予防又は軽減する方法を提供する。或る特定の実施の形態では、単一タイプの毒性バクテリオファージが植物に導入され、他の実施の形態では、2、3、4、5、6又はそれより多い毒性バクテリオファージ単離物又はタイプの組合せが、同時又は順次のいずれかで植物に導入される。或る特定の実施の形態では、上記バクテリオファージは、配列番号11~配列番号24からなる群から選択されるDNA配列、又はそれらに少なくとも90%、95%、98%、又は99%同一のDNA配列を有するゲノムを含む。よって、或る特定の実施の形態では、植物に導入される上記バクテリオファージは、Xfas101、Xfas102、Xfas103、Xfas104、Xfas105、Xfas106、Xfas107、Xfas110、Xfas301、Xfas302、Xfas303、Xfas
304、Xfas305、及びXfas306からなる群から選択される。植物への送達用に製剤化され、かかるXfas100及び/又はXfas300タイプのバクテリオファージを含む植物病害の生物防除組成物もまた意図される。上記生物防除組成物は、担体を更に含んでもよい。幾つかの実施の形態では、上記担体は希釈剤、界面活性剤、及び/又はバッファーを含んでもよい。
【0016】
本発明の特徴及び利点のより完全な理解のため、ここで、添付の図面と共に本発明の詳細な説明が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】ポドウイルス科の形態及びサイズ特性と共に、ファージXfas302、ファージXfas303、ファージXfas304及びファージXfas305のTEM画像を示す図である。
【
図2】シホウイルス科の形態及びサイズ特性と共に、ファージXfas101、ファージXfas102、ファージXfas103及びファージXfas104のTEM画像を示す図である。
【
図3】廃水から単離され、XF15及びEC-12でプラークを形成できる、X.ファスチジオーサのポドウイルス科及びシホウイルス科のバクテリオファージを示す図である。
【
図4】シホウイルス科Xfas103及びXfas106のゲノム地図を示す図である。
【
図5】シホウイルス科Xfas302、Xfas303、Xfas304及びXfas306のゲノム地図を示す図である。
【
図6】株XF54で接種後8週目の、バクテリオファージによるチャレンジ感染に供しなかった、ピアス病の症状を呈するブドウ蔓植物を示す図である。
【
図7】ブドウ蔓バクテリオファージの治療的及び予防的チャレンジ感染研究の要約を示す図である。
【
図8】ファージ接種後8週目(上)及び12週目(下)の接種したブドウ蔓における個々のバクテリオファージの移動及び持続性を示す図である。左パネル:根組織に存在するファージ。中パネル:ブドウ蔓の垣根1に存在するファージ。右パネル:ブドウ蔓の垣根2に存在するファージ。
【
図9】3週間後にファージカクテルのチャレンジ感染に供された接種したブドウ蔓におけるXF15のレベルを示す図である。ファージカクテルのチャレンジ感染の9週間後(細菌接種の12週間後)に試料を採取した。左パネル:根組織に存在する細菌。中パネル:ブドウ蔓の垣根1に存在する細菌。右パネル:ブドウ蔓の垣根2に存在する細菌。灰色の棒グラフは、XF15を接種した蔓におけるXF15のレベルを示す。黒色の棒グラフは、病原体接種の3週間後にファージカクテルのチャレンジ感染に供したXF15を接種した蔓におけるXF15のレベルを示す。矢印は、接種点を有する節を示す。各棒グラフは、3本の蔓に関する根及び2つの垣根の平均CFU/gpt(グラム植物組織)を表す。
【
図10】最初にXF15を接種し、3週間後にファージカクテルでチャレンジ感染したブドウ蔓におけるカクテルファージのレベルを示す図である。ファージカクテルのチャレンジ感染(最初の細菌接種から8週間後、10週間後及び12週間後)の5週間後、7週間後及び9週間後に試料を採取した。左パネル:根組織に存在するファージ。中パネル:ブドウ蔓の垣根1に存在するファージ。右パネル:ブドウ蔓の垣根2に存在するファージ。黒色の棒グラフは、カクテル接種植物におけるファージレベルを示す。灰色の棒グラフは、病原体接種の3週間後にファージカクテルでチャレンジ感染したXF15を接種した蔓におけるファージのレベルを示す。矢印は、接種点を有する節を示す。各棒グラフは、3本の蔓に関する根及び2つの垣根から求められたカクテル中の4種のファージの平均PFU/gpt(グラム植物組織)を表す。
【
図11】最初にファージカクテルで接種し、3週間後にXF15でチャレンジ感染したブドウ蔓におけるファージのレベルを示す図である。XF15チャレンジ感染の5週間後、7週間後及び9週間後(最初のファージ接種から8週間後、10週間後、12週間後)に試料を採取した。左パネル:根組織に存在するファージ。中パネル:ブドウ蔓の垣根1に存在するファージ。右パネル:ブドウ蔓の垣根2に存在するファージ。黒色の棒グラフは、カクテルを接種した蔓におけるファージレベルを示す。灰色の棒グラフは、ファージ接種後3週目にXF15でチャレンジ感染したカクテルを接種した蔓におけるファージのレベルを示す。矢印は、接種点を有する節を示す。各棒グラフは、3本の蔓に関する根及び2つの垣根から求められたカクテル中の4種のファージの平均PFU/gpt(グラム植物組織)を表す。
【
図12】キサントモナス・アクソノポディス病原型シトリ株に対するファージXfas303のスポット力価測定の結果を示す図である。
【0018】
配列表の簡単な説明
配列番号1 X.ファスチジオーサgyrBに合わせて設計されたX.ファスチジオーサ特異的オリゴヌクレオチドフォワードプライマー。
配列番号2 X.ファスチジオーサgyrBに合わせて設計されたX.ファスチジオーサ特異的オリゴヌクレオチドリバースプライマー。
配列番号3 バクテリオファージDNAプライマーゼ遺伝子に合わせて設計されたバクテリオファージXfas304特異的オリゴヌクレオチドフォワードプライマー。
配列番号4 バクテリオファージDNAプライマーゼ遺伝子に合わせて設計されたバクテリオファージXfas304特異的オリゴヌクレオチドリバースプライマー。
配列番号5 バクテリオファージDNAプライマーゼ遺伝子に合わせて設計されたバクテリオファージXfas303特異的オリゴヌクレオチドフォワードプライマー。
配列番号6 バクテリオファージDNAプライマーゼ遺伝子に合わせて設計されたバクテリオファージXfas303特異的オリゴヌクレオチドリバースプライマー。
配列番号7 バクテリオファージDNAヘリカーゼ遺伝子に合わせて設計されたバクテリオファージXfas103特異的オリゴヌクレオチドフォワードプライマー。
配列番号8 バクテリオファージDNAヘリカーゼ遺伝子に合わせて設計されたバクテリオファージXfas103特異的オリゴヌクレオチドリバースプライマー。
配列番号9 バクテリオファージDNAヘリカーゼ遺伝子に合わせて設計されたバクテリオファージXfas106特異的オリゴヌクレオチドフォワードプライマー。
配列番号10 バクテリオファージDNAヘリカーゼ遺伝子に合わせて設計されたバクテリオファージXfas106特異的オリゴヌクレオチドリバースプライマー。
配列番号11 バクテリオファージXfas101のゲノム配列。
配列番号12 バクテリオファージXfas102のゲノム配列。
配列番号13 バクテリオファージXfas103のゲノム配列。
配列番号14 バクテリオファージXfas104のゲノム配列。
配列番号15 バクテリオファージXfas105のゲノム配列。
配列番号16 バクテリオファージXfas106のゲノム配列。
配列番号17 バクテリオファージXfas107のゲノム配列。
配列番号18 バクテリオファージXfas110のゲノム配列。
配列番号19 バクテリオファージXfas301のゲノム配列。
配列番号20 バクテリオファージXfas302のゲノム配列。
配列番号21 バクテリオファージXfas303のゲノム配列。
配列番号22 バクテリオファージXfas304のゲノム配列。
配列番号23 バクテリオファージXfas305のゲノム配列。
配列番号24 バクテリオファージXfas306のゲノム配列。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本発明をよりよく定義するため、また本発明の実施において当業者を導くために以下の定義及び方法が提供される。特に断りのない限り、用語は、関連技術分野の当業者による従来の使用に従って理解される。
【0020】
本発明は、X.ファスチジオーサ及び/又はキサントモナス・アクソノポディス(Xa)及びその病原型の感染、その中での複製、及びそれらの溶菌が可能なバクテリオファージ(ファージ)の効率的な増殖及び単離を可能とする方法を初めて提供する。また、本発明は、植物における細菌性病害を防除する方法を提供する。本発明により防除され得る植物病害として、限定されないが、ピアス病及びミカン類潰瘍病が挙げられる。本発明による有用な細菌種として、限定されないが、キシレラ・ファスチジオーサ等のキシレラ種、又はキサントモナス・アクソノポディス等のキサントモナス種及びキサントモナス・アクソノポディス病原型シトリ(Xac)等のその病原型が挙げられる。
【0021】
本明細書で使用される「バクテリオファージ」又は「ファージ」は、細菌のウイルスを指す。本明細書で使用される「キサントモナス・アクソノポディス」又は「Xa」は、キサントモナス・アクソノポディス細菌種、又はその病原型を指し、病原型にはキサントモナス・アクソノポディス病原型シトリ(Xac)又はキサントモナス・アクソノポディスの任意の他の病原型が含まれ得る。現在、X.ファスチジオーサを溶菌することが可能なバクテリオファージの増殖は、実験室においてX.ファスチジオーサ宿主細胞及び固体形式の複雑で高価な培地を使用し、多大な労力を要する。これは、低量のバクテリオファージを得るのに7日~10日を必要とする場合がある。そのため、本発明は、バクテリオファージを迅速に産生するためキサントモナス種EC-12等の成長の早い宿主細菌においてバクテリオファージを成長させることにより、X.ファスチジオーサに感染可能なバクテリオファージの増殖を提供する飛躍的な進歩であり、これは「代理宿主」アプローチと呼ばれる。その技法は迅速で費用効率がよく、当該技術分野で利用可能な従来の培地成分と共に使用可能である。また、その技法はスケールアップしやすい。非常に複雑な培地中で多くても毎日複製する宿主を使用して、数日ではなく、標準条件下で毎時間複製することができる代理宿主においてX.ファスチジオーサ及び/又はXaを溶菌(殺菌)する毒性ファージを産生する能力は、毒性ファージの使用を含むX.ファスチジオーサ及び/又はキサントモナス・アクソノポディスが媒介する病害の防除及び治療の方法の産生及び実施を初めて実行可能とする。Xaの培養は、およそ2時間~3時間の世代時間で、栄養培地中で行うことができる。しかしながら、Xaは許容病原体であるため、培養するためにはバイオセイフティーレベル2(BL2)を必要とする。したがって、X.ファスチジオーサと同様に、Xaは大規模生産に実用的ではない場合がある。
【0022】
バクテリオファージは、X.ファスチジオーサ及び/又はキサントモナス細胞からファージの単離を可能とする軟寒天重層法により単離することができ、更なる実施形態では、高力価ファージプレート溶菌物を、融合溶菌を呈するX.ファスチジオーサ株又はキサントモナス株、例えば株EC-12の1又は複数の重層プレート(複数の場合がある)を回収した後、浸軟、遠心分離による清澄化及び濾過滅菌することにより調製する。得られた溶菌物を4℃にて保存することができる。その後、高力価ファージ溶菌物を、例えば、等密度CsCl遠心分離により精製してもよく、抽出したファージ溶液を透析することができる。その結果、約1×1011PFU/mlの力価を有するCsCl精製バクテリオファージをそのようにして得ることができる。他の実施形態では、植物組織濾過物(PTF)中のバクテリオファージを濾過してもよい。濾過の好ましい割合は、例えば、X.ファスチジオーサ株Temeculaについて4日間、又はキサントモナス株EC-12について4時間成長させた、代理宿主培養物(選択された宿主の活発な成長培養物)20mlに対してPTF1mlである。
【0023】
X.ファスチジオーサ及び/又はキサントモナス・アクソノポディス(「Xa」)病原
型に対して毒性のバクテリオファージの検出及び増殖のための方法を使用して、X.ファスチジオーサ及び/又はXaの溶菌を引き起こすことが可能な毒性バクテリオファージを、植物、廃水、及び/又は土壌水を含む環境等の所望の起源から選択することができ、本発明に従って増殖させることができる。本発明により同定され得るバクテリオファージは、カプシドの形状及び大きさ、ゲノムサイズ、遺伝子の配置及び/又は遺伝子モジュール
、形態学、並びに生活環等のCasjens et al.(Research in Microbiology, 159:340-348,
2008)によって記載される特有の特性により定義され得る。1つの実施形態では、本発
明のバクテリオファージは、毒性で、等密度で、T=7の三角形分割数(triangulation number)を有し、約60kb又は60kbの約15%以内のゲノムサイズを有してもよく、ゲノム中に直列末端反復を含んでもよい。毒性バクテリオファージを、例えば、キシレラ種及び亜種及び/又はキサントモナス・アクソノポディス等のキサントモナス種及びシトリ等のその病原型によって引き起こされる病害を防除及び予防するために使用することができる。
【0024】
現在、5つのキシレラの亜種が植物病害を引き起こすと認識されている。キシレラによって感染され得る植物種は、例えば、Hernandez-Martinez et al., (American Phytopathological Society, 97(7):857-864, 2007)、及びNunney et al., (PLoS ONE, 5(11):e15488, 2010)に記載されるwww.cnr.berkeley.edu/xylella/control/hosts.htmに列挙され、
また、限定されないが、ブドウ蔓、柑橘類、コーヒー、アーモンド、モモ、アルファルファ、アンズ、プラム、ブラックベリー、クワ等の商品作物、並びにキョウチクトウ、オーク、モミジバフウ、アメリカハナズオウ、ニレ、及びチタルパ・タシュケンテンシス等の園芸植物が挙げられ得る。本発明の1つの実施形態では、バクテリオファージを、X.ファスチジオーサがその特有の成長要求性のために成長ができない環境から単離することができる。さらに、本発明によれば、キサントモナス・アクソノポディス病原型によって感染され得る植物種として、限定されないが、シトラス属の1種、フォーチュネラ属の1種、ポンキルス属の1種、ライム、レモン、オレンジ、グレープフルーツ、ポメロ、又は台木に使用されるカラタチのハイブリッドが挙げられ得る。
【0025】
そのため、本発明は、多くの植物において病害を引き起こす、木質部に限られた、昆虫により媒介される、グラム陰性細菌であるX.ファスチジオーサによって引き起こされる植物病害の防除のためのバクテリオファージに基づく治療の開発に対する方法を提供する。中でも注目すべきは、X.ファスチジオーサは、ブドウのピアス病(PD)の病因であり、現在、テキサス州及びカリフォルニア州を含む米国の地域で高品質のワインブドウの栽培を制限する要素である。X.ファスチジオーサによって引き起こされる1つの重要な植物病害は、ブドウのピアス病(「PD」)であり、黄色くなった葉、又は葉縁が赤色の葉を含む視認される症状を引き起こす。最終的には、葉縁及び葉の乾燥及び壊死が起こる場合がある。ヨコバイ類のヨコバイ(「GWSS」)等の媒介昆虫は病害を拡散する可能性があり、またファージは、病原性細菌に感染し、生物防除効率に有用であり得る。
【0026】
現在、感染した蔓の積極的な淘汰を除き、PDに対して有効な防除手段が存在しない。本発明は、植物の治療を可能とするため費用効率の良い方式で十分なバクテリオファージ量を生み出す実行可能なシステムを初めて提供することにより、かかる病害の治療を可能とする。また、本発明は、ミカン類潰瘍病の病因であるXacを含むXaによって引き起こされる植物病害の防除のためのバクテリオファージに基づく治療の開発に対する方法を提供する。特定の実施形態では、本発明は、植物においてXaの病害を防除する方法を提供する。
【0027】
本明細書で使用される「毒性」の用語は、宿主細胞に感染し、その中で複製し、それを溶菌(殺菌)することが可能なウイルス、とりわけバクテリオファージを指す。「テンペレート」の用語は、宿主ゲノムへと組み込まれ得る(溶原化する)か、又は宿主細胞を溶
菌することができるバクテリオファージを指す。本発明の1つの実施形態では、ファージは、本明細書に記載される好適な宿主において増殖される。「宿主」の用語は、大量のバクテリオファージを産生するのに使用できる細菌細胞を指す。本明細書に提示されるバクテリオファージに基づく防除戦略の開発における一工程は、特定の細菌受容体部位を認識する毒性ファージの同定及び増殖である。病原菌に対して毒性のバクテリオファージの産生及び送達は、実行可能な生物防除の選択肢であるために経済的でなければならない。
【0028】
ファージは、受容体の認識により宿主細胞に感染する。受容体として、限定されないが、OmpA及びOmpF等の表面タンパク質、グラム陰性細菌の細菌LPSのコア及びO鎖、性線毛及びIV型線毛(例えば、Roine et al., Mol. Plant Microbe Interact., 11:1048-1056 (1998))、並びに鞭毛が挙げられる。いかなる所与の理論にも限定されない
が、バクテリオファージは、IV型線毛を介してX.ファスチジオーサ及びXaの細胞に感染し得ると考えられる。そのため、1つの実施形態では、本開示による宿主は任意のタイプの細菌、とりわけ毒性テンペレートバクテリオファージ、又は継代ファージ等のその誘導体が、IV型線毛又はTonB様タンパク質等の毒性及び/又は病原性に必要な表面受容体に吸着され、それを介して感染することができる、任意の細菌種であってもよい。「継代ファージ」は、培養された宿主細胞において1又は複数の成長期間により増殖されたファージ集団を意味する。本発明に使用される典型的な宿主は、細菌細胞、とりわけ、キシレラ及びキサントモナスの両方を含むキサントモナス科の細菌種であってもよい。幾つかの実施形態では、本発明の実施に有用な可能性のあるX.ファスチジオーサの株として、Temecula1(ATCC700964);Ann-1(ATCC700598);Dixon(ATCC700965);XF53、XF54、及びXF95(Whitehorn et al., Science, 336:351-352 (2012));XF134、XF136、XF140、
XF141、XF15-1、XF15-1-1、TM1(Jones, et al., Ann. Rev Phytopathol., 45:245-262 (2007));及びtonB1(Summer et al., J. Bacteriol. 192:179-190 (2010))が挙げられ得る。開示されるバクテリオファージ単離物の1又は複数に感受性であり、本発明に有用な可能性のあるキサントモナスの株の例として、とりわけEC12、Pres-4、及びJal-4(フロリダ州ゲインズビル、フロリダ大学のN. Wang博士により提供される)、Noth40、Ft.Basinger及びBlock2
2が挙げられる。他のキサントモナス細菌もまた、それらのXfas100及び/又はXfas300のバクテリオファージに対する感受性を考慮して利用され得る。
【0029】
本明細書で使用される「単離」の用語は、生物の混合培養物を含有する溶液からの生物の分離及び同定と定義される。単離され得る生物として、ウイルス、細菌、植物細胞等が挙げられ得る。バクテリオファージは、本明細書に記載されるように、また当該技術分野で知られているように単離され得る。1つの実施形態では、バクテリオファージを単離するための一般的な実験室的方法として、限定されないが、とりわけ培養細胞における成長、バクテリオファージアッセイ、二重寒天法、及びプラークアッセイが挙げられ得る。本発明は、両方の宿主細胞型において感染及び増殖することができるバクテリオファージを単離するため、異なる株の細菌宿主細胞を共に含む少なくとも第1の試料を重層することを含む方法によってバクテリオファージを単離する方法を提供する。
【0030】
また、本発明は、キシレラ・ファスチジオーサ及び/又はXaに毒性のウイルス(バクテリオファージ)を増殖する方法を提供する。バクテリオファージを増殖する方法は、当該技術分野において既知であり、植物病害を治療するのに十分な量のバクテリオファージを産生することが可能な任意の方法を包含し得る。1つの実施形態では、X.ファスチジオーサ及び/又はXacに毒性のバクテリオファージの増殖は、キサントモナス細菌においてバクテリオファージを成長させること、上記バクテリオファージを増殖させること、及び上記培養物からバクテリオファージ粒子を単離することを含み得る。
【0031】
X.ファスチジオーサに毒性のバクテリオファージは、軟寒天重層法を使用して調製されてもよい。高力価ファージプレート溶菌物は、例えば、X.ファスチジオーサ株Temecula又は融合溶菌を呈するキサントモナス株EC-12の重層プレートを回収した後、浸軟及び遠心分離による清澄化によって調製されてもよい。濾過滅菌の後、得られた溶菌物を4℃で保存することができる。その後、高力価ファージプレート溶菌物を、等密度CsCl遠心分離によって精製してもよく、抽出したファージ溶液を透析する。例えば、1×1011PFU/mlの力価を有するCsCl精製バクテリオファージを得ることができる。
【0032】
濾過のための植物組織濾過物(PTF)中のバクテリオファージの好ましい割合は、例えば、X.ファスチジオーサ株Temeculaについては4日間、又はキサントモナス株EC-12については4時間に亘って成長させた代理宿主培養物(選択された宿主の活発な成長培養物)20mlに対してPTF1mlである。
【0033】
また、本発明は、植物(単数又は複数)においてX.ファスチジオーサ及び/又はXa病原型と関連する症状を治療又は軽減する方法を提供する。典型的なピアス病(PD)の症状として、それぞれ、葉がわずかに黄色くなるか、又は葉縁に沿って赤くなることが挙げられ、最終的には葉縁がその領域で乾燥又は枯死する場合がある。
【0034】
意図される方法の1つの実施形態は、X.ファスチジオーサ及び/又はXaに感染した植物に、植物の治療をもたらす方式でX.ファスチジオーサ及び/又はXaに毒性のバクテリオファージ(複数の場合がある)を投与することを含む。感染に対する植物の治療は、スプレー、噴霧、散布、注入、又は当該技術分野で既知の任意の他の方法によって行われ得る。かかる適用のための組成物を製剤化する方法もまた、当該技術分野でよく知られている。例えば、X.ファスチジオーサは植物の維管束組織に感染し、そのため、本明細書に記載されるように本発明は、上記バクテリオファージがX.ファスチジオーサ細胞に感染して溶菌し、それにより植物感染症を治療することができるように、X.ファスチジオーサに感染した植物にX.ファスチジオーサに対して毒性のバクテリオファージ粒子の精製した集団を注入により導入することを含んでもよい。しかしながら、当業者は、他の方法の使用も同様に成功することを認識するであろう。Xaは葉の病原体であり、葉の気孔に直接雨がかかることにより、又は強風の間若しくは昆虫により生じた傷により、植物の葉、茎、及び果実に自然感染する。そのため、1つの実施形態では、本発明は、Xaに感染した植物にXaに毒性のバクテリオファージ粒子の精製した集団を含む組成物をスプレーすることにより導入することを含んでもよい。
【0035】
本明細書で使用される「治療、処理」、「治療、処理すること」、及び「治療、処理する」の用語は、病害、障害若しくは状態及び/又はその症状の生理学的影響を軽減又は緩和するための薬剤を用いて病害、障害、又は状態に対して作用することと定義される。本明細書で使用される「治療、処理」は、宿主(例えば、食用植物等の農業目的のもの、又は食用製品を生産するために使用されるものを含む植物種、及び観賞植物種)における病害の任意の治療を包含し、(a)植物において病害が発生するリスクを減少すること、(b)病害の発症を妨げること、及び(c)病害の緩和すること、すなわち、病害の退行及び/又は1若しくは複数の病害症状の緩和をもたらすことを含む。また、「治療、処理」は、病害又は状態がなくても効果をもたらす阻害剤の送達を包含することを意味する。例えば、「治療、処理」は、植物における増強された又は所望の効果(例えば、病原体の負荷の軽減、病害症状の軽減等)を提供する病害又は病原体の阻害剤の送達を包含する。
【0036】
また、本発明は、植物への送達用に製剤化された植物病害の生物防除組成物を提供し、上記組成物は、少なくとも1種の担体と、キシレラ・ファスチジオーサ及びXa等のキサントモナス種に毒性の少なくとも1種のバクテリオファージとを含む。
【0037】
本発明の組成物中の有効成分としてのキシレラ・ファスチジオーサ及び/又はXa等のキサントモナス種に毒性のバクテリオファージもXfas101、Xfas102、Xfas103、Xfas104、Xfas105、Xfas106、Xfas107、Xfas108、Xfas109、及びXfas110等のXfas100ファージタイプ及び/又はXfas301、Xfas302、Xfas303、Xfas304、Xfas305、及びXfas306等のXfas300ファージタイプからなる群から選択されるバクテリオファージの1つとして提供され、ここで、Xfas103、Xfas106、Xfas302、Xfas303、Xfas304、及びXfas306の上記ファージタイプは、それぞれATCCアクセッション番号PTA-13096、PTA-13095、PTA-13098、PTA-13099、PTA-13100、及びPTA-13097により寄託されている。
【0038】
本発明における有効成分としてのXfas100ファージタイプの毒性バクテリオファージは、以下の特性、(a)上記バクテリオファージは上記キシレラ・ファスチジオーサ及び/又はキサントモナス細菌を溶菌することが可能な活性を有すること、(b)上記バクテリオファージはIV型線毛に結合することによって細胞に感染すること、(c)尾部を有する上記バクテリオファージは、シホウイルス科に特有の形態である、直径55mm~77mmの範囲のカプシドを有する長い非収縮性尾部を呈すること、(d)上記バクテリオファージのゲノムサイズが約55500bp~56200bpであること、及び(e)上記バクテリオファージは植物(単数又は複数)においてピアス病と関連する症状を予防又は軽減する活性を有することの少なくとも1つを示す。
【0039】
本発明における有効成分としてのXfas300ファージタイプの毒性バクテリオファージは、少なくとも1つの特性を有し、該特性は、(a)上記バクテリオファージは、上記キシレラ・ファスチジオーサ及びキサントモナス細菌を溶菌することが可能な活性を有すること、(b)上記バクテリオファージはIV型線毛に結合することによって細胞に感染すること、(c)尾部を有するバクテリオファージの群は、ポドウイルス科に特有の形態である、直径58mm~68mmの範囲のカプシドを有する短い非収縮性尾部を呈すること、(d)上記バクテリオファージのゲノムサイズが約43300bp~44600bpであること、並びに(e)上記バクテリオファージは、植物(単数又は複数)においてピアス病と関連する症状を予防又は軽減する活性を有することである。本発明の組成物中の有効成分としての毒性バクテリオファージは、Xfas100ファージタイプ及び/又はXfas300ファージタイプから選択される少なくとも1種のバクテリオファージを更に含み、上記XfasファージタイプがXfas103及びXfas106であり、及び/又は上記Xfas300ファージタイプがXfas302、Xfas303、Xfas304及びXfas306である。
【0040】
また、本発明の組成物中の有効成分として使用されるキシレラ・ファスチジオーサ及びXa等のキサントモナス種に対して毒性のバクテリオファージは、2、3、4、5、6、又はそれより多い毒性バクテリオファージ単離物又はファージタイプのカクテル等のファージの組合せによって提供され、担体との併用を含め、同時に又は順次に提供されてもよい。「キャリア」という用語は、ファージを投与するのに用いられる希釈剤、アジュバント、界面活性剤、賦形剤、又はビヒクルを指す。そのようなキャリアは、水並びに例えば、ピーナッツ油、大豆油、鉱物油及びゴマ油等の石油、動物、植物又は合成由来のものを含む油等の無菌液体であってもよい。リン酸一水素ナトリウム、リン酸二水素カリウム等のリン酸溶液及び水性デキストロース及びグリセロール溶液を含む生理食塩水もまた、特に注射溶液用の液体キャリアとして用いることができる。好適な賦形剤としては、デンプン、グルコース、ラクトース、ショ糖、ゼラチン、麦芽、米、小麦粉、白亜、シリカゲル、ステアリン酸ナトリウム、グリセロールモノステアレート、タルク、塩化ナトリウム、
乾燥脱脂粉乳、グリセロール、プロピレングリコール、水、及びエタノール等を挙げることができる。
【0041】
また、植物病害の生物防除組成物は、所望であれば、少量の湿潤剤若しくは乳化剤、又はpH緩衝剤を含有してもよい。
【0042】
限定されないが、カゼイン系製剤、小麦粉系製剤、ショ糖、コンゴレッド、N-プロピル-ガレート、及びリグニン系製剤等の保護剤を、植物病害の生物防除組成物に添加することができる。
【0043】
効率的な病害の防除に必要なファージ濃度は、限定されないが、例えば、1×10PFU/ml~1×1012PFU/ml、1×104PFU/ml~1×1011PFU/ml、又は1×107PFU/ml~1×1010PFU/mlとすることができる。
【0044】
樹木の栽培年数に応じて、幹の太さ、根の大きさ、用量を適切に調整する。植物病害の生物防除組成物は、乾燥製品、実質的に乾燥した製品、液体製品、又は実質的に液体の製品であってもよい。幾つかの実施形態では、乾燥又は実質的に乾燥した製品を、液体(例えば、水等)において再構成した後、植物に適用することができる。他の実施形態では、かかる組成物を乾燥又は実質的に乾燥した形態で適用でき、既に植物に存在する、植物に同時に適用される、又は後に植物に生じる液体(例えば、適用、濃縮等により)が、標的細菌へのバクテリオファージの曝露を促進する。別の実施形態では、かかる組成物は、植物にスプレー、噴霧、又は散布によって適用され得る。
【0045】
植物病害の生物防除組成物は、溶液、懸濁液、乳状液、粉末、錠剤等の形態をとることができる。
【0046】
植物病害の生物防除組成物を適用するタイミングは、限定されないが、例えば、毎日、毎週、又は1週間に2回、毎月、隔月、又は3ヶ月毎であってもよい。
【0047】
また、本発明は、キシレラ・ファスチジオーサ、並びにXa等のキサントモナス種及びその病原型に毒性の単離されたバクテリオファージを提供する。
【0048】
本発明は、Xfas101~Xfas110等のXfas100ファージタイプ、及び/又はXfas301~Xfas306等のXfas300ファージタイプからなる群から選択されるバクテリオファージの1つとして単離されたバクテリオファージも提供し、ここで、Xfas103、Xfas106、Xfas302、Xfas303、Xfas304、及びXfas306は、それぞれATCCアクセッション番号PTA-13096、PTA-13095、PTA-13098、PTA-13099、PTA-13100、及びPTA-13097により寄託されている。
【0049】
かかるバクテリオファージは、キシレラ・ファスチジオーサ及び/又はキサントモナス種上にプラークを形成する能力を確認することによって検出され得る。
【0050】
寄託情報
Xfas103、Xfas106、Xfas302、Xfas303、Xfas304及びXfas306の各株の代表的なバクテリオファージの寄託、並びに本明細書において上記に開示され、特許請求項の範囲において参照されるX.アクソノポディス(X. axonopodis)EC-12の代表的な細菌の寄託は、米国20108バージニア州マナサス私
書箱1549に位置するATCCにより行われた。上記アクセッションに対する寄託の日は、2012年7月24日であり、上記寄託された株のアクセッション番号はそれぞれP
TA-13096、PTA-13095、PTA-13098、PTA-13099、PTA13100、PTA13097、及びPTA-13101である。上記寄託に対する全ての制限は、特許査定により除外され、上記寄託は、37C.F.R.第1.801節~第1.809節の全ての要求を満たすと意図される。上記寄託は、30年間、又は最後の請求から5年、又は特許の有効期間のいずれか長いものの間受託機関に維持され、必要に応じてその期間中に交換される。
【実施例】
【0051】
以下の実施例は、本発明の好ましい実施形態を実証するために含まれる。下記の実施例に開示される技法は、本発明の実施において良好に機能するように本発明者らによって見出された技法であり、ひいてはその実施について好ましい様式を構成すると考えられることが当業者によって理解される。しかしながら、当業者は、本開示に鑑みて、開示される具体的な実施形態において多くの変更を行うことができ、なおも、本発明の趣旨及び範囲から逸脱することなく類似又は同様の結果を得ることができることを理解すべきである。
【0052】
実施例1
培地、培養条件及び細菌株
本実施例は、X.ファスチジオーサ及びキサントモナス種に対して毒性のバクテリオファージの単離、増殖、並びに形態学的特性評価及びゲノム特性評価を記載する。この研究で使用される培地は、X.ファスチジオーサの成長に使用される、急速な成長を可能とするが、バクテリオファージの感染能力に影響を及ぼす標準培地とは異なる。Hill及びPurcell(Phytopathology 85(12):1368-1372, 1995)によって改変されるように最終ウシ血清アルブミン含有量が0.3%であること以外は、PW-Mと名付けられた、Sherald et al.(Plant Disease 67:849-852, 1983)によって改変されたPWブロス培地を、X.ファスチジオーサ単離物の成長に使用した。固体培地(PW-MA)及び軟寒天用に、PW-Mブロスを15g/l及び7.5g/lのPlant Cell Culture Tested agar(Sigma)でそれぞれ補正した。非X.ファスチジオーサ培養物の日
常的な維持のため、複合培地TNブロス(TNB)を使用した。固体培地(TNA)は、KNO3を欠き、20g/L寒天を追加したこと以外は、同一であった。軟寒天重層用にTN培地を7.5g/L寒天(TNSA)で補正した。植物抽出物を平板培養して菌総数を得るため、TNA培地をシクロヘキシミド(40μg/ml;TNAC)で補正した。全ての培養物を28℃で成長させ、液体培養物を、ネフェロフラスコを使用してλ=600nmでモニターした。研究に含まれるカリフォルニアX.ファスチジオーサ単離物としては、X.ファスチジオーサ亜種ファスチジオーサを代表するTemecula(XF15)、X.ファスチジオーサ亜種サンディ(sandyi)を代表するAnn1(XF108)、及びX.ファスチジオーサ亜種マルチプレックス(multiplex)を代表するDixon
(XF102)が挙げられる(Hendson et al., Applied and Environmental Microbiology 67(2):895-903, 2001)。テキサスX.ファスチジオーサ単離物としては、それぞれプラタナス・オシデンタリス(Platanus occidentalis)(XF1)、ヘリアンツス・アナ
ス(Helianthus annuus)(XF5)、アイバ・アンヌア(Iva annua)(XF18)、ブタクサモドキ(Ambrosia psilostachya)(XF23)、ラティビダ・コルムニフェラ(Ratibida columnifera)(XF37)、ヴィティス・アエスティバリス(Vitis aestivalis)(XF39)、ヴィティス・マスタンゲンシス(Vitis mustangensis)(XF41)
からの単離物、アンブロシア・トリフィダ(Ambrosia trifida)変種テキサナ(texana)(XF16、40、及び43)からの3種類の単離物、キョウチクトウ(Nerium oleander)(XF93及び95)からの2種類の単離物、及びヴィティス・ヴィニフェラ(Vitis
vinifera)(XF48、50、52、53、54、56、58、59、60、66、6
7、70、71、76、及び78)からの15種類の単離物が挙げられる。全ての単離物は、ストリーク(streak:画線)単離法により精製された単一コロニーであり、最終濃度の20%グリセロール(v/v)までPW-Mブロス培養物を補正した後に-80℃で保
存した。X.ファスチジオーサ単離物を、以前に記載されるポリメラーゼ連鎖反応(PCR)分析(Hernandez-Martinez et al., Plant Disease 90(11):1382-1388, 2006)を使
用して種及び亜種のレベルで確認した。ガスクロマトグラフィー(GC-FAME)により脂肪酸メチルエステルを分析するMIDI Sherlock(商標)Microbial Identification Systemを使用してキサントモナス種を同定した。
【0053】
実施例2
植物試料の加工及び細菌の単離
テキサス州のブラゾス郡及びワシントン郡のブドウ園からヴィティス・ヴィニフェラ、V.マスタンゲンシス(V. mustangensis)及び草の植物試料を得た。テキサス州のジェファーソン郡及びワートン郡の水田からコメ(オリザ・サティバ(Oryza sativa))植物組織及び草を得た。テキサス州ボーモントのTexas AgriLife Research Centerから種もみ試料を得た。テキサス州ブラゾス郡においてバラ植物由来の試料(バラ属の1種;ノックアウト)及びハラペーニョ(TAM-mild;カプシカム・アンナム(Capsicum annuum
))を得た。植物抽出物を得るため、10gの植物組織を乳鉢と乳棒とを使用して50mlのバクテリオファージバッファー(P-バッファー;50mM Tris-HCl pH7.5、100mM NaCl、8mM MgSO4)中ですりつぶし、ボルテックスを行い、二層のチーズクロスで濾して大きな粒子を除去した。その後、X.ファスチジオーサ及び非X.ファスチジオーサ細菌の単離のため、抽出物をそれぞれPW-M及びTNACの両方に希釈平板法を行い、28℃でインキュベートした。10日目まで毎日、成長に関してプレートを評価した。
【0054】
実施例3
植物試料からのバクテリオファージの単離、精製及び力価測定
植物組織濾過物(PTF)を得るため、清澄植物抽出物を、2回遠心分離し(10000×g、4℃にて10分間)、その組織抽出物を、0.22μmフィルター(Supor、Pall Life Sciences)を通して濾過した。PTF中のバクテリオファージの存在を、一連のX.ファスチジオーサ及びキサントモナス種の宿主の重層上に10μlの10倍希釈系列をスポッティングし、菌叢の発生後(X.ファスチジオーサ単離物については6日間~7日間、キサントモナス種単離物については18時間)のゾーン又はプラークの形成について観察することにより直接求めた。代替的には、バクテリオファージを、各濾過物1mlを20mlのX.ファスチジオーサ単離物の活発な成長培養物(4日間培養物;A600=0.30)又はキサントモナス種宿主のA600=0.25(4時間)培養物に添加することにより、PTFより富化した。X.ファスチジオーサ又はキサントモナス種の富化について、それぞれ72時間又は24時間の成長の後、培養物を遠心分離し(10000×g、4℃で10分間)、濾過滅菌(0.22μmフィルター)した。富化した上清中のバクテリオファージの存在を判定するため、10μlの10倍希釈系列を、一連のX.ファスチジオーサ及びキサントモナス種の宿主の重層上にスポットし、ゾーン又はプラークの形成を観察した。PW-MA上で成長させたX.ファスチジオーサ単離物の5日目の培養物を使用して、PW-Mブロス(A600=0.5)中の宿主懸濁液を作製し、一方、培地TNA上で成長させたキサントモナス種単離物の18時間培養物を使用してTNブロス(A600=0.5)中の懸濁液を作製し、重層の作製に使用した。バクテリオファージ活性に関して細菌上清を調査するために使用する軟寒天重層を、100μlの細菌懸濁液と7mlの溶解したPW-M又はTN軟寒天とを混合し、PW-MAプレート又はTNAプレート上に混合物を注いで、凝固させ乾燥させることにより作製した。プラーク又は透明ゾーンの形成のいずれかを示すスポットした重層を、PTF希釈物を重層する前に個々の宿主指標懸濁液と直接混合したこと以外は、上述の通り平板培養することによって更に調査した。X.ファスチジオーサ又はキサントモナス種の宿主重層のいずれかに形成された個々のプラークを切り取り、P-バッファー中に懸濁して力価測定を行った。こ
の手順を3回繰り返して単一のプラーク単離物を得た。高力価溶菌物(1×1010PFU/ml)を、5mlのP-バッファーを用いて融合溶菌を呈するプレートの重層を回収し、軟寒天重層をふやかし、遠心分離(10000×g、4℃で15分間)により溶菌物を清澄にし、0.22μmフィルターを通して濾過滅菌することにより調製した。溶菌物を4℃で保存した。
【0055】
X.ファスチジオーサの選択のため、及び総菌数を得るため、植物抽出物をそれぞれPW-M及びTNACの両方に平板培養した。アッセイした全ての植物からの植物抽出物は、何らのX.ファスチジオーサ単離物の痕跡も生じなかった。しかしながら、非選択的平板培養により、多種多様な細菌コロニータイプを生じた。黄色に着色した細菌の代表的な単一コロニーをプレートから選択し、ストリーク精製してストックを得た。そのストックを、ゾーン又はプラークの形成を観察するためにPTFがスポットされる重層を作製するために使用した。種もみ、ハラペーニョの葉、及びコメ組織の抽出物からそれぞれ得られた細菌単離物Presidio-4、Jal-4、及びEC-12を全て、ガスクロマトグラフィーによる脂肪酸メチルエステル分析(GC-FAME)を使用してキサントモナス種として同定し、PTFの評価用宿主として使用した。他のXa株も、かかる株に関して開示された1又は複数のバクテリオファージの毒性を考慮して利用してもよい。
【0056】
5日間~6日間のインキュベーション後、幾つかのPTFの希釈物が単離物XF15、XF53、XF54、XF95上にプラークを産生し、これはこれらの宿主上にプラークを形成することができるバクテリオファージが植物組織中に存在したことを示していた。抽出物から観察された初期力価は、5×101PFU/組織グラム~7×105PFU/組織グラムの範囲であった。全てのPTFがXF15、XF53、XF54及びXF95に対して同じ産生パターンを示したことから、株XF15をプラーク精製及び産生の宿主として使用した。この富化されていないPTFにおいて見出される高力価は、植物組織と関連する天然の細菌宿主が、X.ファスチジオーサの重層上にプラークを産生することができるバクテリオファージの宿主として役立つ可能性があることを示す。PTFの連続した平板培養は、大きさが均一の個々のプラークを生じた。個々のプラークを切り取り、XF15を宿主として使用してプラーク精製を3回行ってクローン単離物を得た。X.ファスチジオーサ株XF15(Jones et al., 2007)又はX.ファスチジオーサTemecula株(ATCC700964)上でバクテリオファージXfas302が増殖したことを示す、キシレラ・ファスチジオーサ宿主株Temecula(1×109PFU(プラーク形成単位/ml))を使用して精製及び増加し、キサントモナス種単離物Pres-4及びEC-12(いずれも5×107CFU(コロニー形成単位)/ml)に対して力価を測定したバクテリオファージXfas302の培養皿は、キサントモナス種株Pres-4及びEC12(ATCCアクセッション番号PTA-13101により寄託されたEC12)上にプラークを形成することができ、X.ファスチジオーサ上で増殖したバクテリオファージがキサントモナス株上で吸着、複製及びプラーク形成できるという証拠を提供した。下記に提示される宿主域研究は、これらの結果を更に実証する。
【0057】
ファージXfas101~ファージXfas105は全て、XF15菌叢上に小さな透明プラークを産生したのに対し、ファージXfas301~ファージXfas305は、同じ宿主上に大きな透明プラークを産生した。Xfas302~Xfas305及びXfas101~Xfas104のTEM画像をそれぞれ
図1及び
図2に示す。XF15を使用して産生された高力価の溶菌物を使用して、各バクテリオファージのCsCl精製調製物を得て、透過型電子顕微鏡(TEM)研究を行うために使用した。ファージXfas101~ファージXfas105は全て、直径55nm~64nmの範囲のカプシドを有する長い非収縮性尾部を呈し、そのため、シホウイルス科に属すると判断された。Xfas301~Xfas305は全て、ポドウイルス科に特有の形態である、直径58nm~65nmの範囲のカプシドを有する短い非収縮性尾部を呈した。
【0058】
実施例4
廃水からのバクテリオファージの富化
テキサス州地域のブライアンの処理施設から、清澄にした廃水試料を得た。スティルクリーク、カータークリーク、ターキークリーク、及びバートンクリークの施設から試料を得た。試料を2回遠心分離(10000×g、4℃で10分間)、組織抽出物を、0.22μmフィルターを通して濾過した。各濾過物1mlを上述の選択した宿主の活発な成長培養物20mlに添加することによりファージを富化した。X.ファスチジオーサ又はキサントモナス種の富化のため、それぞれ72時間及び24時間の成長の後、培養物を遠心分離して濾過滅菌した。富化した濾過物を、上述のように重層上にスポットして力価測定を行った。
【0059】
ファージXfas106~109及びファージXfas306を、宿主EC-12を宿主として使用して4種の廃水処理場から得られた富化試料から個別に単離した。精製したバクテリオファージ濃縮物のTEM研究は、直径68nmのカプシドを有する短い非収縮性尾部によりバクテリオファージXfas306をポドウイルス科として形態学的に同定したのに対し(
図3)、単離されたファージXfas106~109は、シホウイルス科の特性である直径約77nmのカプシドを有する長い非収縮性尾部を呈した(
図3)。バクテリオファージXfas306は、EC-12及びXF15の両方の宿主上に大きな透明プラークを産生したのに対し、ファージXfas106~109は、同じ宿主上に小さい透明プラークを産生した(
図3)。したがって、この実験で使用した方法は、X.ファスチジオーサバクテリオファージを環境試料から単離することを可能とした。
【0060】
実施例5
CsCl精製
Beckman L8-70M超遠心機において60Ti型ローターを使用する遠心分離(90000×g、5℃で2.5時間)により、濾過滅菌したバクテリオファージ懸濁液を濃縮した。ペレットをP-バッファーに再懸濁し、25℃にて2時間、1μg/mlの最終濃度でDNaseI及びRNaseA(Sigma)を用いて処理した。最終濃度0.
75g/mlでCsClをバクテリオファージ懸濁液に添加し、VTi65.2ローターにおいて遠心分離(300000×g、5℃にて18時間)した。視認することができたバクテリオファージバンドを、18ゲージシリンジ針を使用して抽出し、1M NaClに補正したP-バッファー対して4℃で一晩、P-バッファーに対して25℃で4時間2回に亘って透析し、1×1011PFU/mlの懸濁液を得た。CsCl精製バクテリオファージを4℃で保存した。
【0061】
実施例6
透過型電子顕微鏡法
P-バッファーで希釈し、新たにグロー放電ホルムバール炭素被覆グリッド上に1分間に亘って5μlを塗布することにより、CsCl精製バクテリオファージ(1×1011PFU/ml)の電子顕微鏡法を行った。その後、グリッドを脱イオン水滴上で簡単に洗浄し、2%(w/v)水性酢酸ウラニルで染色した。100KVの加速電圧で操作するJEOL 1200EX透過型電子顕微鏡上で被検査物を観察した。
【0062】
実施例7
平板効率及び宿主域
同種(増殖性)宿主に対して得られたバクテリオファージプラーク力価に対する異種(非増殖性)宿主を用いて得られたバクテリオファージプラーク力価の比を計算することによって、平板効率(EOP)を得た。固体培地上に重層する前に、100μlのバクテリオファージストック希釈物と、軟寒天(7ml)中の個々の宿主指標懸濁液(A600=
0.5)とを混合することによる適切な培地を使用して、X.ファスチジオーサ又はキサントモナス種宿主のいずれかに対してバクテリオファージストックの力価を測定した。
【0063】
XfasファージのEOPを比較する研究を表1に示す。キサントモナス種株EC-12を使用して増殖させ、その後、宿主としてX.ファスチジオーサ株XF15を使用して力価測定を行った植物試料から単離されたファージに関するEOPは、1×10-1~1×10-3の範囲であり、株XF15を使用して増殖させたバクテリオファージを、その後EC-12を宿主として使用して力価測定を行った場合に同様の結果が見られた。廃水濾過物から単離され、株EC-12上で増殖させたファージを用いる同様の研究は、1×10-1~5×10-1の範囲のEOPを呈した。ファージXfas106~109を株XF15上で増殖させ、宿主EC-12上で平板培養した場合に1×10-1~3×10-1のEOPが得られ、DNA制限及び修飾のバリアが存在し得ると同時に、1日で急速に成長する株EC-12において増殖したファージは、X.ファスチジオーサ単独では最大10日に及ぶ可能性があるプロセスである、X.ファスチジオーサ上で吸着、複製及びプラーク形成することができることを示す。
【0064】
【0065】
個々の宿主を含む同種の軟寒天シードを用いて適切な培地、PW-M(XF15用)又はTNA(EC-12用)のプレートを重層することにより、宿主の菌叢を作製した。個々のバクテリオファージ調製物の高力価溶菌物(1×109PFU/ml)を、その後、10μlの10倍希釈系列をX.ファスチジオーサ又はキサントモナス種の宿主の重層上にスポッティングすることにより、個々の菌叢に対してスポット力価測定を行った。プレートを適切な時間28℃でインキュベートした後、(EC-12に対して24時間、又はXF15に対して5日間~7日間)プレートをゾーン及びプラークの形成について評価した。
【0066】
表2に示される初期の宿主域研究は、X.ファスチジオーサ宿主であるXF15上にプラークを形成することができた全てのファージは宿主EC-12上にもプラークを形成し
たが、一方で、宿主Jal-4及びPres4は、ほとんどのシホファージに対して感受性を呈しなかったことを示す。耐性の理由は、吸着の欠如又はバクテリオファージゲノムの取り込み阻害、重感染免疫、制限修飾、及びクラスター化等間隔短回文反復配列(clustered regularly interspaced short palindromic repeats)(CRISPR)等の他の
吸着後メカニズムに及ぶ。
【0067】
【0068】
実施例8
Xfas吸着部位の予備同定
植物組織又は廃水試料のいずれかから得られた又は富化されたX.ファスチジオーサファージがX.ファスチジオーサ上にプラークを形成したという観察に基づき、細胞表面成分が吸着部位として働くことができるかどうかを判定することを目的とした。ファージの既知の吸着部位として、OmpA及びOmpF等の表面タンパク質、グラム陰性細菌の細菌LPSのコア及びO鎖、性線毛及びIV型線毛、並びに鞭毛が挙げられる。野生型、及びIV型線毛を欠く誘導体をもたらすpilAの欠失を伴う誘導突然多様体を、Xfasファージの宿主として評価した。試験した全てのバクテリオファージはXF15野生型株上にプラークを形成したが、XF15ΔpilA突然多様体上にはプラークを形成しなかった。結果は、IV型線毛がXfasファージに対する付着の主な部位である可能性を示
唆した。
【0069】
XF15-ΔpilAにより得られた結果に基づき、キサントモナス種株EC-12のpilA欠失突然多様体が、XfasファージであるXfas103、Xfas106、Xfas302、Xfas303、Xfas304及びXfas306に非感受性になり得るかどうかを判定することを目的とした。株EC-12ΔpilAは、プレート力価アッセイにおいてファージに対して非感受性であり、ファージXfas303を用いる吸着実験では宿主に対する吸着は観察されなかった。pilAに対してin transでのEC-12ΔpilA補完は、試験した全てのファージに対して感受性であった。これは、IV型線毛がX.ファスチジオーサについて観察されるようにファージに対して主な付着部位であることを更に実証した。
【0070】
実施例9
バクテリオファージDNA単離及びゲノムシークエンシング
Promega Wizard DNA clean-upキット(Promega)の変型
を使用して、濾過滅菌した高力価(1×109PFU/ml超)CsCl精製バクテリオファージ溶菌物10ml~20mlからバクテリオファージゲノムDNAを調製した。簡単には、10ml~20mlのバクテリオファージ溶菌物を、各DNaseI及びRNaseA(Sigma)10μg/mlを用いて37℃で30分間消化し、10%(w/v)ポ
リエチレングリコール8000及び1M NaClの存在下で4℃にて16時間~20時間沈殿させた。沈殿物を10000×gにて4℃で10分間遠心分離し、ペレットを0.5mlのP-バッファーに再懸濁した。Wizardキットにより供給される1mlのDNA精製樹脂を、再懸濁したバクテリオファージに添加し、ミニカラムに充填して2mlの80%(v/v)イソプロパノールで洗浄した。80℃まで予備加熱した100μlの水を添加し、直後にミニカラムの遠心分離により樹脂からDNAを溶出した。0.8%アガロースゲル上で泳動し、エチジウムブロミドで染色することによりDNAの完全性を確認し、バンドデンシトメトリーによりDNAを定量した。1%アガロースゲル(Pulsed-Field agarose、BioRad)上でのゲノムDNAのパルスフィールドゲル電気泳動(PFGE)分析及びサイズマーカー(MidRange Marker I、NEB)との比較によりバクテリオファージゲノムサイズを推定した。
【0071】
「454」パイロシークエンシング(米国コネチカット州ブランフォードのRoche/454 Life Sciences、ジョージア州アトランタのエモリー大学、エモリーGRAゲノムコアに
て)を使用してファージを配列決定した。上述のようにバクテリオファージ単離物からバクテリオファージゲノムDNAを調製し、約100ng/μlの最終濃度まで等モル量で混合した。プールしたDNAを切断し、4つのプールの各々に特異的なマルチプレックス識別子(MID)タグと連結し、製造業者のプロトコルに従って、Roche FLX Titanium sequencer上でフルプレート反応を使用するパイロシークエンシングにより配列決定した。プールしたバクテリオファージDNAは、2つのシークエンシング反応に存在した。上記反応は、39のゲノム要素を表す、合計約3331kbのゲノム配列のゲノムDNAを含有し、シークエンシングの実行により、平均405bp長の987815リードを生じ、プール全体について合計120倍のカバー率を提供した。4つのプールの各々に対応する整形FLXチタンフローグラムアウトプットを、Newbler assembler version 2.5.3(454 Life Sciences)を使
用して、1つの統合当たり単一のMID識別子を含有するリードのみを含むように条件を調整することにより、個別に統合させた。個々のコンティグの同定を、コンティグ配列及びテンプレートとして個々のバクテリオファージゲノムDNA調製物に対して作製されたプライマーを使用するPCRによって求め、バクテリオファージDNAテンプレートに由来する予測されるサイズの生成物の作製を使用して、それらのコンティグに個々のファージを一致させた。シーケンサー(Gene Codes Corporation)を配列の統合及び編集に使用
した。タンパク質コーディング領域を、Genemark(opal.biology.gatech.edu/GeneMark/gmhmm2_prok.cgi)を使用して予測し、Artemis(www.sanger.ac.uk/Software/Artemis/)において手作業で編集した(Lukashin et al., Nucleic Acids Research 26(4):1107-1115, 1998; Rutherford et al., Bioinformatics 16(10):944-945, 2000)
。DOTTER(Brodie et al., Bioinformatics 20(2): 279-281, 2004)を使用してドットプロットを作製した。予測されるタンパク質をBLAST(www.ncbi.nlm.nih.gov/blast/Blast.cgi)を使用してGenBankデータベースにおけるタンパク質と比較した。保存ドメイン、リポタンパク質プロセッシングシグナル及び膜貫通ドメイン(TMD)を、InterProScan(www.ebi.ac.uk/Tools/webservices/services/interproscan)、LipoP(www.cbs.dtu.dk/services/LipoP/)、及びTMHMM(www.cbs.dtu.dk/services/TMHMM/)をそれぞれ用いて同定した。
【0072】
【0073】
実施例10
Xfasファージのゲノム分析、並びにXfas100及びXfas300ファージタイプの説明
溶原性コロニーを感染症から単離できず、テンペレートな生活様式(リプレッサー、インテグラーゼ)と関連する遺伝子がゲノム配列中に見出されないことから、キサントモナスEC-12並びにX.ファスチジオーサ及び亜種を攻撃する能力について単離されたファージは、いずれも感染にIV型線毛を必要とし、いずれも毒性である。上記ファージは、Casjens et al.(Research in Microbiology, 159:340-348, 2008)により定義される
2つのファージタイプに更に分類され得る。
【0074】
(1)Xfas100ファージタイプ:Xfas100ファージタイプは、キサントモナス及びキシレラの毒性シホファージ(ICTVシホウイルス科)で構成され、そのプロトタイプはファージXfas101、ファージXfas102、ファージXfas103、ファージXfas104、ファージXfas105、ファージXfas106、ファージXfas107、ファージXfas108、ファージXfas109、及びファージXfas110(表12)であり、その更なる例は、nが任意の数の「Xfas1nn」で示される任意のファージとして表3に列挙される(Xfas100シリーズと呼ぶ)。この柔軟な命名システムは、Xfas1nnファージタイプの更なる多様体が単離されると予想されることから必要である。Xfas100タイプファージはシホファージであり、生活様式において毒性であり、キシレラ種及びキサントモナス種の感染にIV型線毛を必要とする。Xfas100タイプファージは、直径およそ55nm~77nmの寸法の正二十面体のカプシド頭部、及び長さおよそ200nm~262nmの柔軟な尾部を有し、いずれの寸法値も陰性染色電子顕微鏡法の標準的な精度において求められる(
図2及び
図3を参照されたい)。Xfas100シリーズのウイルスDNAは、一本鎖DNAオーバーハングを特徴とする付着(cos)末端を有し(Casjens, et al., Methods Mol Biol 502:91-111, 2009)、これは、cos DNAパッケージングが病因決定要素の送達作用を高め得る一般化された導入粒子の生成を回避することから、抗菌適用において使用されるファージに重要である。Xfas100ゲノムは、2つの相違する遺伝子クラスター、A
L及びA
RとB
L及びB
Rとにおいて整列される遺伝子を伴う特徴的な全体構成(
図4を参照されたい)を有する。Xfas100ファージタイプは、ファージの必須の構造遺伝子及び溶菌遺伝子が右方遺伝子クラスターB
Lにグループ分けされるという事実により更に区別される。Xfas100シリーズファージタイプもまた、それ自体の単一分子DNAポリメラーゼ(Xfas103gp71及びXfas106gp66)、プライマーゼ(Xfas103gp76及びXfas106gp71)及びヘリカーゼ(Xfas103gp69及びXfas106gp64)をコードすることにより区別される。
【0075】
(2)Xfas300ファージタイプ:Xfas300ファージタイプは、キサントモナス及びキシレラの毒性ポドファージ(ICTVポドウイルス科)で構成され、そのプロトタイプはファージXfas301、ファージXfas302、ファージXfas303、ファージXfas304、ファージXfas305及びファージXfas306であり、その更なる例は表3に列挙され、nが任意の数である「Xfas3nn」と示される任意のファージを指す(Xfas300シリーズと呼ぶ)。この柔軟な命名システムは、Xfas300ファージタイプの更なる多様体が単離されると予想されることから必要である。Xfas300タイプファージは、直径およそ58nm~68nmの寸法の正二十面体のカプシド頭部を有し、この寸法値は陰性染色電子顕微鏡法の標準的な精度において求められる(
図1及び
図3を参照されたい)。Xfas302~306ゲノムは、構造タンパク質領域に隣接する単一サブユニットRNAポリメラーゼをコードする。Xfas300シリーズゲノムは、ファージの複製遺伝子、構造遺伝子及び溶菌遺伝子を含む1本の鎖上に整列された遺伝子を有する特徴的な全体構成(
図5を参照されたい)を有する。Xfas300ファージタイプもまた、それ自体の単一分子DNAポリメラーゼ(Xfas302gp18、Xfas303gp17、Xfas304gp17及びXfas306gp17)、単一サブユニットRNAポリメラーゼ(それぞれ、Xfas302gp31、Xfas303gp28、Xfas304gp27及びXfas306gp30)及びヘリカーゼ(Xfas302gp15、Xfas303gp14、Xfas304gp15及びXfas306gp14)をコードすることにより区別される(ファージゲノムの概略図について
図5を参照されたい)。
【0076】
実施例11
バクテリオファージXfas304を使用するブドウ蔓における移動、チャレンジ感染及び保護の研究
バクテリオファージXfas304は、ポドウイルス科のメンバーであり、X.ファスチジオーサ及びキサントモナス種の両方を含む宿主域を有する環境試料から単離された。ここで提示される研究では、バクテリオファージを用いた植物の処理が後のX.ファスチジオーサによる感染を予防し得るかどうかを判定するため、感受性宿主の不在下でブドウ蔓においてXfas304の移動及び持続性を求めた。さらに、上記バクテリオファージがピアス病の発症を治療的に防除し得るかどうかを判定するため、最初にX.ファスチジオーサで接種したブドウ蔓を、その後、バクテリオファージXfas304を用いて病原体接種の4週間後にチャレンジ感染に供した。
【0077】
予防研究のため、ブドウ蔓を40μlのバクテリオファージXfas304懸濁液(1×1010PFU/ml)を用いて接種し、その後、X.ファスチジオーサを用いてバクテリオファージ接種の4週間後にチャレンジ感染に供した。接種に使用した細菌X.ファスチジオーサ懸濁液を分光光度的に調整した(A600=0.4;1×109CFU/ml)。Hopkins(Plant Dis. 89:1348-1352, 2005)により記載される針接種技法を使用して、40μlの細菌懸濁液を用いて反対側の第2及び第3の結節の間(1つの垣根当たり2点)で個々の垣根を接種した。上記と同じ接種点でリン酸バッファーを用いて対照蔓を模擬接種した。
【0078】
結果は、バクテリオファージXfas304は、ブドウ蔓においてX.ファスチジオーサ亜種ファスチジオーサにより引き起こされるピアス病を治療及び予防するために使用できることを示した。よって、これらの研究より同定されたバクテリオファージXfas304及び他の毒性キシレラ-キサントモナスファージは、他のX.ファスチジオーサ亜種及びキサントモナス種により引き起こされる病害に対する植物の保護及び治療における使用可能性を有する。
【0079】
本研究で使用される細菌は、それぞれ、カリフォルニア州及びテキサス州でブドウ蔓のピアス病と関連するX.ファスチジオーサ株Temecula(XF15)及びXF54を含むものであった。X.ファスチジオーサの培養物をPW-M寒天培地(Summer et al., J Bacteriol 192(1): 179-190, 2010)上で28℃にて5日間~7日間維持した。PW-MA上で成長させたX.ファスチジオーサ単離物の5日目の培養物を使用して、蔓接種用のリン酸バッファー(0.125M、pH7.1)中の細菌懸濁液を作製した。
【0080】
1103P根茎に対する休眠状態のV.ヴィニフェラcv.カベルネ・ソーヴィニヨンクローン08をVintage Nurseries(米国カリフォルニア州ワスコ)から購入した。蔓を
101 Sunshine Mix 1(カナダ、ブリティッシュコロンビア州バンクーバーのSun Gro Horticulture)を使用して7ガロンポットに植えた。ナトリウムランプからの照明を追加した16時間明(26℃、300μE/m2・s~400μE/m2・s)/8時間暗(18℃)サイクルの温室で植物を生育させた。1日おきに水道水で植物を潤した。15日毎にPeter’s General Purpose 20-20-20肥料及び微量栄養素を用いて蔓に肥料を与えた。以下の通り均一な植物を提供するために植物を積極的に刈り込んだ:100cm~150cmの2本の枝分かれしていない単一の側枝を産生する際、2本の側枝を80cmまで刈り込んだ。側枝及び芽を取り除いた。2つの垣根をくいで支えて、上記実験に蔓を使用する前に各垣根の長さが約2.5m~7.5mになるまで生育させた。
【0081】
X.ファスチジオーサ株XF15及びXF54について、また同じくバクテリオファージXfas304について標準的なqRT-PCRの線プロットを得たところ、いずれも0.9より大きいR
2値を有し、それぞれ157%、130%及び123%の効率を有し
ていた。XF15及びXF54の三連の試料に由来する二連の垣根の定量的評価は、それぞれ、葉がわずかに黄色くなる又は葉縁に沿って赤くなる、そして最終的には接種後8週目までに葉縁の乾燥又はそのゾーンの枯死等の視認される典型的なピアス病(PD)の症状を伴う、アッセイした全ての節全体に亘る病原体の分布を示した(
図6)。バクテリオファージXfas304で接種した蔓では、許容宿主の不在下で、接種後2週目、4週目及び6週目にバクテリオファージの分布の進行が観察され、8週目~12週目の間に減退して蔓の症状は見られなかった。
【0082】
実施例12
細菌及びバクテリオファージを用いたブドウ蔓の接種
バクテリオファージ処理の治療評価のため、15本の蔓(それぞれ2つの垣根)をXファスチジオーサ株XF15又はXF54で接種した。接種に使用した細菌懸濁液を分光光度的に調整した(A600=0.4;1×109CFU/ml)。3組の蔓から同様の位置にある3つの節(例えば、1/1a、1/1b、1/1c)からのqRT-PCR結果の平均を使用してCFU/グラム植物組織(gpt)及びPFU/gptを求めた。Hopkins(Plant Dis. 89:1348-1352, 2005)によって記載される針接種技法を使用して40μlの細菌懸濁液により、反対側の第2及び第3の結節の間(1つの垣根当たり2点)で個々の垣根を接種した。同じプロトコルに従ってリン酸バッファーを用いて対照蔓を模擬接種した。病原体の接種の4週間後、各処理に由来する15本の蔓を、同じ接種プロトコル及び技法を使用して40μlのバクテリオファージXfas304懸濁液(1×1010PFU/ml)を用いチャレンジ感染した。12週間に亘って週2回、症状の発症について蔓を採点し、以下に記載されるように接種時、並びに8週目、10週目及び12週目にX.ファスチジオーサ及びバクテリオファージについて三連でアッセイした。予防的な方法でバクテリオファージが作用するかどうかを判定するため、9本の蔓(それぞれ2つの垣根)を上記と同じ接種プロトコル及び接種技法を使用して40μlのバクテリオファージXfas304で接種した。バクテリオファージ接種後4週目において、上記と同じ接種プロトコルを使用して40μl(A600=0.4;1×109CFU/ml)の株XF15を用いて蔓をチャレンジ感染した。
【0083】
ブドウ蔓における細菌及びバクテリオファージの移動を評価するため、上記と同じ接種プロトコルを使用して、それぞれ15本の蔓をXF15又はXF54のいずれかで接種し、24本の蔓をバクテリオファージXfas304のみで接種した。XF15又はXF54で接種した蔓を接種直後、並びに接種後8週目、10週目及び12週目に三連でアッセイした。バクテリオファージで接種した蔓を接種直後、及び12週間に亘って2週間毎に三連でアッセイした。アッセイの方法を以下に記載する。
【0084】
バクテリオファージがどのように蔓において病原体集団及び病害発症に影響を与え得るのかを判定するため、X.ファスチジオーサ接種蔓を、病原体接種後4週目にバクテリオファージXfas304でチャレンジ感染した。XF15の接種後8週目、Xfas304によるチャレンジ感染の4週目に、蔓は何らのPD症状も示さず、チャレンジ感染に供していない蔓と比べ、バクテリオファージでチャレンジ感染した蔓において細菌集団は1ログ~3ログ低かった。バクテリオファージでチャレンジ感染していない植物はPD症状を示したのに対し(
図7、2欄)、バクテリオファージでチャレンジ感染した蔓は5週間後に何らのPD症状も示さなかった(
図7、6欄)。XF15の接種後8週間~12週間の間(Xfas304チャレンジ感染後4週間~8週間)、バクテリオファージでチャレンジ感染した蔓では何らのPD症状も観察されず、XF15集団は、バクテリオファージでチャレンジ感染していない蔓と比べてほとんど検出不可能なレベルまで減退し続けた。
【0085】
導入した宿主(XF15)の存在下及び不在下でのバクテリオファージ集団の定量的評価は、蔓において成長する感受性宿主においてバクテリオファージが複製することができ
、感受性宿主の不在下で減退したことを示した。病原体接種後4週目にXfas304でチャレンジ感染した株XF54を用いる実験は、XF15でチャレンジ感染した蔓について観察された結果と同様の結果を示した。抽出物のCFU/mlにより計測される蔓抽出物中のXF54集団は、バクテリオファージでチャレンジ感染していない蔓で観察されたものと比較して、バクテリオファージでチャレンジ感染した蔓において8週目~12週目に減退した。XF54接種後8週目~12週目(Xfas304チャレンジ感染後4週目~8週目)において、バクテリオファージでチャレンジ感染した蔓では何らのPD症状も観察されなかった(
図7、7欄)。XF54の存在下においてチャレンジ感染期間後に亘り増加し、宿主の不在下で減少したバクテリオファージ集団は、ここでも、バクテリオファージは、蔓に感受性宿主が存在する場合にその中で複製できたことを示した。チャレンジ感染研究の要約は
図7に提示され、バクテリオファージXfas304(病原体の接種後4週目)でチャレンジ感染したXF15又はXF54で接種した蔓では、5週間後に更なるPD症状は観察されなかったのに対し(
図7、6欄及び7欄)、株XF15又はXF54でそれぞれ接種した、バクテリオファージでチャレンジ感染しなかった蔓では、9週目~10週目に症状が発症した(
図7、2欄及び3欄)。
【0086】
バクテリオファージ処理の保護(予防)可能性を判定するため、バクテリオファージXfas304で接種した後、バクテリオファージ接種後4週目にXF15でチャレンジ感染した蔓を用いて更なる研究を行った。XF15によるチャレンジ感染後4週目及び8週目に蔓は何らのPD症状も示さなかったのに対し(
図7、8欄)、ファージで処理しなかった蔓は症状を発症した(
図7、2欄)。バクテリオファージ集団は、XF15の存在下でチャレンジ感染期間後8週目~12週目に増加し、宿主の不在下で減少した。
【0087】
これらの結果により、バクテリオファージ処理が、植物においてX.ファスチジオーサによるPD症状を予防又は軽減すること、及びファージ処理が植物に対して何らの副作用も引き起こさないことが確認される。
【0088】
実施例13
試料採取及び加工
各蔓に由来する二連の垣根を5~6の節に分け、下から上に節に番号を付した。各節を20mm×115mmのジェネレータ(米国コネチカット州のPRO Scientific)を備えたPRO250ホモジナイザーを使用し、15mlのP-バッファー(50mM Tris-HCl、pH7.5、100mM NaCl、8mM MgSO4)中でホモジナイズし、滅菌チーズクロス(米国、Fisher Scientific)を通して濾過して植物組織残屑を除
去した。バクテリオファージをアッセイするため、濾過物を遠心分離し(10000×gで15分間)、濾過滅菌した。濾過物をバクテリオファージDNA抽出に使用した。細菌DNA抽出用にペレットを1mlのMilli-Q水に再懸濁すること以外は、同じプロトコルを細菌アッセイについて使用した。
【0089】
実施例14
試料のプロピジウムモノアジド(PMA)処理
Nocker(J Microbiol Meth 67:310-20, 2006)により記載されるPMAプロトコルを使用して、アッセイ用及び蔓組織抽出物をアッセイするための標準曲線を作製するために使用されるアッセイからX.ファスチジオーサの死細胞を排除した。簡単には、PMA(カリフォルニア州ヘイワード、Biotium Inc.)を20%のジメチルスルホキシド(ドイツのSigma-Aldrich)に溶解して、20mMのストック溶液を得て、暗所に-20℃で保存し
た。1.25μlの容量のPMAストック溶液を500μlのX.ファスチジオーサ細胞懸濁液(A600=0.4;1×109CFU/ml)又は対照及び接種した蔓に由来する抽出物に添加した。調製物を繰り返しひっくり返しながら5分間暗所で透明な微量遠沈管中でインキュベートした。インキュベーションに続き、微量遠沈管を氷上に置き、20
cmの距離で1分間、650Wのハロゲン光源(米国のUshio)に曝露した。遠沈管を1
5秒毎に手で簡単に回転し、光照射(illumination)の30秒後にひっくり返して、利用可能なDNAの完全な架橋及び遊離PMAのヒドロキシアミノプロピジウムへの転化を確実にした。光誘導性架橋の後、遠心分離(12000×g、25℃で2分間)により生存細胞を採取し、500μlの滅菌蒸留水で洗浄し、DNA抽出のためMili-Q水に再懸濁した。
【0090】
ZR Fungal/Bacterial DNA Miniprep(米国のZymo Research)を使用し、製造業者の指示書により、PMA処理細胞調製物及び蔓抽出物から
細菌DNAを抽出した。
【0091】
Summer(Methods Mol. Biol. 502:27-46, 2009)によって記載される改変を伴うWizard DNA Clean-up system(米国ウィスコンシン州のPromega)
を使用して、対照調製物及び植物抽出物に由来するバクテリオファージDNAを抽出した。
【0092】
実施例15
リアルタイムPCRを使用するX.ファスチジオーサ及びバクテリオファージXfas304の検出
SYBR-greenベースリアルタイムPCR(RTPCR)は、7500 Real-Time PCR System(米国カリフォルニア州のApplied Biosystems)でgyrBに合わせて設計されたX.ファスチジオーサ特異的プライマーINF2 5’-GTTTGATTGATGAACGTGGTGAG-3’(配列番号1)及びINR1 5’-CATTGTTTCTTGGTAGGCATCAG-3’(配列番号2)(Bextine and Child, FEMS Microbiology Letters 276: 48-54, 2007)、並びにDNAプライマ
ーゼ遺伝子に合わせて設計されたバクテリオファージXfas304特異的プライマー304-PrimF 5’-AAGAAGCGTGGTTTGTTTGC-3’(配列番号3)及び304-PrimR 5’-CTACCGGCTTCCCTAACTCC-3’(配列番号4)を使用して実施した。1つの反応当たり、10μlのExpress SYBR GreenER SuperMix(Invitrogen)、0.4μlの両プライマー(10μMの濃度)、8.56μlの滅菌分子グレード水、0.04μlのROX参照色素(Invitrogen)、及び1μlのDNAテンプレートを使用して、マスターミックスを作製した。全ての反応について、95℃で3分の最初の変性工程、その後、40サイクルの以下のパラメーター:95℃で30秒、55℃で30秒、及び72℃で30秒による標準条件を使用した。PCRの最後に、0.5℃/10秒の速度で温度を72℃から99℃に上昇させ、10秒毎に蛍光発光を計測した。各DNA試料を三連で分析した。陽性対照として、上述の方法を使用してDNAをX.ファスチジオーサ細胞、及びバクテリオファージXfas304溶菌物から抽出した。ベースラインよりも蛍光発光が上がるPCRサイクル数を説明するサイクル閾値(Ct)を、Applied Biosystemsにより提供されるソフトウェアパッケージを使用して求めた。
【0093】
絶対定量用の標準曲線を求めるため、1ml容量のXF15及びXF54の1×108CFU/ml細胞懸濁液を、PMAプロトコルを使用して処理した。細菌DNAを上述の通り抽出し、1×10-1~1×10-5に段階希釈し、上述のリアルタイムPCRアッセイに供した。同様に、バクテリオファージDNAを1ml容量の1×109PFU/mlの上述のバクテリオファージXfas304から抽出し、1×10-1~1×10-6に希釈し、リアルタイムPCRアッセイに供した。X.ファスチジオーサ及びバクテリオファージXfas304について各々三連の試料を使用して標準曲線を作成した。X.ファスチジオーサDNA濃縮物(A260により求められる1μl当たりのLog DNA濃度)に対するリアルタイムPCRから作製されたCt値をプロットすることにより標準
曲線を構築した。効率(E)を以下の通り計算した:E=10(-1/傾き)-1(Klein et al., Electrophoresis 20:291-299, 1999)。
【0094】
実施例16
溶原菌形成アッセイ研究
ファージ溶原菌形成についてアッセイするため、ファージ感染の生存細胞(survivors
)をプロファージの存在について試験した。各ファージについて、細菌を約3のインプットMOIで感染させ、軟寒天重層法で平板培養した。コロニー成長に関してプレートをモニターした(X.ファスチジオーサ株Temeculaについては10日間~15日間、キサントモナス株EC-12については2日間~3日間)。出現した個々のコロニーを選択し、精製し(3回)、軟寒天重層において同じファージの希釈物のスポッティングによりファージ感受性について再度試験した。その後、Xfas103及びXfas106ヘリカーゼ遺伝子、又はXfas303及びXfas304プライマーゼ遺伝子に特異的なプライマー対(表5)を使用して、ファージ非感受性単離物中のプロファージ配列の存在について試験した。野生型細菌DNAを陰性対照として使用し、ファージDNAが添加された野生型細菌DNAを陽性対照とした。
【0095】
未成熟な溶原性(すなわち、阻止の確立)に関し、痕跡が見つかるかどうかを試験するため、本発明者らは、可逆的に結合したファージを3回の連続する洗浄により除去すること以外は、Gill et. al(Gill J.J., et al., J. Bacteriol., 193:5300-5313 (2011))
の手順に従った。対数的に成長するキサントモナス株EC-12の液体培養物を約0.3~0.5のOD600まで培養した。1mlのアリコートを遠心分離によりペレット化し、0.20mlのファージ溶菌物(TNB中に回収された)又は滅菌TNBに再懸濁した。25℃にて30分間のインキュベーションの後、細胞-ファージ混合物を遠心分離し、上清を除去し、力価測定を行って吸着されたファージを特定した。予備実験では、ファージが可逆的に結合されることが特定され、これは、MIO実測の計算に影響を及ぼした(Kasman, L.M., et al., J. Virol., 76:5557-5564 (2002))。この問題を回避するため、また正確なMOI実測を得るため、細胞を滅菌TNBに再懸濁し、25℃で5分間インキュベートさせ、遠心分離し、上清を除去した。結合していないファージを除去するため、この手順を3回繰り返した。各上清の力価測定を行ってPFUを求めた。ファージ曝露後に残る生存細菌を数えるため、細胞ペレットを0.20mlの滅菌TNBに再懸濁し、段階希釈して平板培養した。これらのデータより、MOI実測(すなわち、ファージを含まない対照におけるCFUの数に対する吸着されたファージの数の比)を計算した。ポアソン分布を使用して非感染細胞の予測される割合を計算するため、これらのMOI実測値を使用した。この実験をXfas103及びXfas303の両方を使用して3回繰り返した。
【0096】
溶原性。
溶原性の可能性を検査するため、X.ファスチジオーサ株Temecula及びキサントモナス株EC-12のそれぞれ40個のファージ非感受性単離物を、ファージXfas103、Xfas106、Xfas303又はXfas304によるチャレンジ感染の後に回収した。ファージ特異的プライマーを使用するPCRは、耐性単離物においてファージ溶原菌の存在を検出せず、耐性は溶原性によるものではないことを示した。さらに、未熟な溶原性の可能性を、高MOIでの感染の使用及び生存の計測(Gill et. al (2011))により調査した。表4に示されるように、感染後に、予測された生存細胞と実際の生存細胞との間に有意差はなく、高MOIでのファージ感染は阻止の確立をもたらさなかったことを示した。併せると、これらの結果は、溶原性又は阻止に関して何らの痕跡もないことを示し、4種のファージが毒性であるという結論を支持する。
【0097】
【0098】
実施例17
ファージカクテルの保護及び予防の研究
細菌株、ファージ、及び接種調製物:本研究で使用した細菌単離物は、X.ファスチジオーサ株Temecula(XF15)及びXF54(実施例3を参照されたい)であった。X.ファスチジオーサの培養物を、実施例1に記載されるPW-M上で維持した。XF15及びXF54の接種菌液を実施例11に記載されるように調製した。Xfas303、Xfas304、Xfas103及びXfas106の高力価ファージ溶菌物(1×1010PFU/ml)を、実施例3に記載されるように調製し、力価測定を行った。ファージカクテルを各々4種のファージを混合することにより調製し、カクテル中の各ファージについて1×1010PFU/mlの最終濃度を得た。
【0099】
細菌及びファージカクテルによるブドウ蔓の接種:ブドウ蔓を、X.ファスチジオーサ株XF15又はXF54のいずれかで接種して、ブドウ蔓における細菌の移動を評価した。ブドウ蔓を、接種直後(0分)、並びに接種後8週目及び12週目に三連でアッセイした。さらに、XF15又はXF54で接種したブドウ蔓を、ファージカクテルによる接種後3週目にチャレンジ感染に供し、治療効果を評価した。ファージカクテルで接種したブドウ蔓を、XF15又はXF54のいずれかのファージ接種後3週目にチャレンジ感染に供し、上記カクテルの予防効果を評価した。各処理に由来するブドウ蔓を毎週2回、症状の発症について採点した。上記カクテルを含む個々のファージの分布を特定するため、ブドウ蔓を以下に記載されるように接種後0週目、2週目、4週目、6週目、8週目、10週目及び12週目にアッセイした。ファージ又は病原体のチャレンジ感染研究のいずれかにおいて接種したブドウ蔓を、以下に記載されるように0週目、6週目、8週目、10週目及び12週目にファージ及び/又はX.ファスチジオーサ感染についてアッセイした。対照ブドウ蔓を、病原体の分布及び病害の発症をモニターするために接種後0週目、8週目及び12週目にアッセイした。全てのブドウ蔓アッセイを、2つの垣根を含む蔓を用いて三連で行った。各垣根(例えば、垣根1=S1、又は垣根2=S2)を5節~6節(5インチ)に分けた。蔓節に接種点(0)から番号を付し、5インチの節において接種点の下(-)又は上(+)として番号を付した。根部分を3つの節:R1、R2又はR3に分けた。
【0100】
試料採取及び加工:カクテルファージ及び病原体の定量のため、実施例13に記載されるように試料を得た。ファージのアッセイのため、濾過物を遠心分離し(10000×g、4℃で15分間)、濾過滅菌した。濾過物をファージDNA抽出に使用して定量的リアルタイムPCR(qRTPCR)を成し遂げた(以下を参照されたい)。qRTPCRで
使用される細菌DNAの単離のためペレットを1mlのMilli-Q水に再懸濁すること以外は、細菌アッセイに同じプロトコルを使用した。三連の蔓からの同様の位置の3つの節(例えば、0a、0b、0c)に由来するqRTPCR結果の平均を使用して、CFU及びPFUを求めた。ファージチャレンジ感染実験の結果としてファージ耐性X.ファスチジオーサが発生するかどうかを判定するため、病原体の接種後12週目のブドウ蔓から採取した試料を実施例13に記載されるように加工した。簡単には、Milli-Q水1ml中のペレットの懸濁液100μlを40μg/mlのシクロヘキシミド(PW-MAC)を追加したPW-MA(実施例1)上に平板培養し、28℃でインキュベートした。10日後~12日後に個々のコロニーを選択し、PW-MAC上で3回ストリーク精製を行った。各ブドウ蔓試料に由来する代表的な個々のコロニー(合計20コロニー)を、Hernandez-Martinez et al.(実施例1)により記載されるPCR分析を使用して種及び
亜種レベルで確認した。確認した単離物のファージ感受性を、実施例3に記載される重層上の段階希釈スポットアッセイ及び軟寒天重層法により求めた。
【0101】
PMA処理及びqRTPCR:PMA処理及びSYBR-greenベースqRTPCRプロトコルを、実施例15に記載されているように、表5に列挙されているX.ファスチジオーサ特異的プライマーINF2(配列番号1)及びINR1(配列番号2)及びバクテリオファージXfas303特異的プライマー303-PrimF(配列番号5)及び303-PrimR(配列番号6)、Xfas304特異的プライマー304-PrimF(配列番号3)及び304-PrimR(配列番号4)、Xfas103特異的プライマー103-HelF(配列番号7)及び103-HelR(配列番号8);並びにXfas106特異的プライマー106-HelF(配列番号9)、及び106-HelR(配列番号10)を使用して行った。
【0102】
【0103】
ブドウ蔓におけるX.ファスチジオーサの移動及び病害の発症:XF15又はXF54
を接種したブドウ蔓の三連の試料に由来する二連の垣根の定量的評価は、アッセイしたブドウ蔓節における病原体の分布を示した。qRTPCRは、節(Seg)S1/1(垣根1、接種点上の5インチ節1)及びS2/1において、それぞれ、平均1×104CFU/グラム植物組織(gpt)及び1×105CFU/gptのXF15の存在を検出し、接種後8週目にS1/2及びS2/2において平均1×104CFU/gptのXF54を検出した。カクテルでチャレンジ感染しなかったブドウ蔓において接種後8週目までに、葉がわずかに黄色くなるか又は葉縁が赤くなり、そして葉縁が乾燥又は壊死する等の典型的なピアス病の症状が視認された。接種後12週目において、平均1×104CFU/gpt及び1×106CFU/gptのXF15を、それぞれS1/3及びS2/2で検出した。同じアッセイ間隔で、PD症状を呈するブドウ蔓を用い、接種後12週目において、平均1×105CFU/gpt及び1×104CFU/gptのXF54を、それぞれS1/3及びS2/1で検出した。平均1×101CFU/gpt~1×102CFU/gptでの病原体接種後8週目及び12週目に、ブドウ蔓の根系において両方の病原体(XF15及びXF54)を検出した。
【0104】
ブドウ蔓におけるファージ移動及び持続性:R2値が0.9より大きく、それぞれ127%、123%、129%、及び120%の効率を有するファージXfas303、Xfas304、Xfas103及びXfas106について標準的なqRTPCR線プロットを得た。ファージカクテル(Xfas303、Xfas304、Xfas103、及びXfas106)で接種したブドウ蔓の三連の試料に由来する二連の垣根の定量的評価は、カクテル接種後2週目~8週目にアッセイしたブドウ蔓節において個別に全てのファージの分布を示した(
図8)。8週目及び12週目までに、根では個々のファージはもはや検出不可能であり、アッセイした節では何らのブドウ蔓症状も観察されずに12週目までに平均1×10
1PFU/gpt~1×10
2PFU/gptまで減退した(
図8)。
【0105】
ブドウ蔓におけるX.ファスチジオーサに対するファージの治療効果:XF15で接種したブドウ蔓を病原体接種後3週目にファージカクテルでチャレンジ感染した。8週目において(カクテルでチャレンジ感染後5週目)、チャレンジ感染しなかったブドウ蔓においてXF15集団は、チャレンジ感染したブドウ蔓と比べて平均2ログ~3ログ高かった。治療的処理をしてないブドウ蔓は典型的なPD症状を示したのに対し、チャレンジ感染したブドウ蔓はPD症状を示さなかった。XF15接種後12週目(カクテルでチャレンジ感染後9週目)において、チャレンジ感染していないブドウ蔓において細菌集団は、ファージカクテルでチャレンジ感染したブドウ蔓と比べた場合に、平均2ログ~3ログ高かった(
図9)。試験を通して(12週間)ファージでチャレンジ感染したブドウ蔓ではPD症状は観察されなかったのに対し、カクテルで処理なかったブドウ蔓は、4週目に早くも症状を呈し、それは12週間に亘り進行した。同様に、XF54接種カクテルでチャレンジ感染したブドウ蔓における細菌集団は、チャレンジ感染していないブドウ蔓と比べて8週目~12週目に顕著に減退し、カクテルでチャレンジ感染したブドウ蔓では何らの症状も観察されなかった。12週目のカクテルでチャレンジ感染したブドウ蔓に由来する植物抽出物の平板培養により、平均1×10
2CFU/gptを得た。3本の各ブドウ蔓の各垣根からX.ファスチジオーサとして確認された代表的な単離物(20ea)は、上記カクテルを構成する4種のファージに対していずれも感受性であった。
【0106】
ブドウ蔓におけるPDを予防するためのカクテル処理の予防効果:上記カクテルでブドウ蔓を最初に接種し、その後、カクテル接種後3週目にX.ファスチジオーサ株XF15又はFX54でチャレンジ感染することにより、ファージカクテルの予防効果を評価した。予防的に処理されたブドウ蔓は、カクテル接種後8週目及び12週目において何らのPD症状も示さなかった。XF15でチャレンジ感染したカクテル接種ブドウ蔓では、8週目及び12週目に調査したブドウ蔓の節において病原体集団は最大で平均1×103CFU/gptに達し、予防的に処理されていないブドウ蔓では平均1×106CFU/gp
tにまで達した。カクテルで予防的に処理した後、ファージカクテル接種後3週目にXF54でチャレンジ感染したブドウ蔓において同様の結果が観察された。12週目のカクテルでチャレンジ感染したブドウ蔓に由来する植物抽出物の平板培養により、平均3×102CFU/gptを得た。各々3本のブドウ蔓に由来する各垣根よりX.ファスチジオーサとして確認された代表的な単離物(20ea)は、上記カクテルを構成する4種のファージに対していずれも感受性であった。
【0107】
ブドウ蔓におけるファージの持続性及び複製:導入した宿主(XF15及びXF54)の存在下又は不在下において、ブドウ蔓でファージ集団を求めることを目的とした。宿主の存在下又は不在下でのファージ集団の定量により、治療的及び予防的な研究の両方において、感受性宿主がブドウ蔓に存在する場合、カクテルファージは複製し、より大きな集団を維持することができ、その後、感受性宿主の不在下では減退することを確認した(
図10及び
図11)。宿主を含まないブドウ蔓におけるファージ集団は8週目~12週目の間に減少したのに対し、XF15又はXF54を接種し、ファージカクテルでチャレンジ感染(治療的処理)したブドウ蔓では、ファージ集団は、同じ期間中に平均1ログ~2ログ増加した(
図10)。同様の結果が予防研究で得られ、ファージ集団は宿主を含まないブドウ蔓において観察されたファージ集団に対して平均1ログ~2ログ増加した(
図11)。これらの結果は、バクテリオファージ処理が植物におけるX.ファスチジオーサによるPD症状を予防又は軽減し、処理した植物に対して何らの副作用も示さないことを確認した。
【0108】
実施例18
ヨコバイによるX.ファスチジオーサの伝染
ヨコバイ(GWSS)、ホマロジスカ・ビトリペニス(Homalodisca vitripennis)は
、X.ファスチジオーサを伝染する木質部を摂食するヨコバイ類である。GWSSは、南カリフォルニア及びテキサス州のブドウ生育地域全体で流行している。GWSSによるX.ファスチジオーサ又はファージの取り込みを調査するため、3つの試験において48時間に亘って実験室で育てられたX.ファスチジオーサを伴わないGWSSにX.ファスチジオーサ又は毒性ファージXfas304のいずれかを有するカウピー(ビグナ・ウンギィクラタ亜種ウンギィクラタ(Vigna unguiculata subsp. unguiculata))植物を与えた。GWSSの細菌又はファージを植物に伝染する能力を判定するため、細菌又はファージを有するGWSSに細菌又はファージを含まない植物を与えた。細菌を有するGWSSのサブセットに、48時間又は96時間に亘ってファージを有する植物を与えることによりチャレンジ感染させた。GWSS及び植物を全ての実験において個別にアッセイし、qRTPCRを使用して細菌及び/又はファージの取り込み、伝染又は持続性を評価した。GWSSはX.ファスチジオーサ及び/又はファージを取り込んで伝達することができた。X.ファスチジオーサを有し、ファージでチャレンジ感染されたGWSSでは、ファージXfas304の力価は、X.ファスチジオーサを伴わないGWSSで観察された力価と比較して2倍増加した。ファージXfas304でチャレンジ感染した場合、チャレンジ感染しなかったものと比較して、GWSSにおいて細菌集団の2倍の減退が観察された。GWSSは、X.ファスチジオーサ及び/又はファージを植物へと伝染した。これは、GWSSによるファージ伝達の最初の報告であると考えられる。
【0109】
細菌株、ファージ及び接種調製物:X.ファスチジオーサ株XF54(実施例1を参照されたい)及びファージXfas304(実施例3を参照されたい)を本研究で使用した。XF54の培養物を実施例1に記載されるPW-M上で成長させた。PW-MA上で成長させたXF54の5日目の培養物を使用して、リン酸バッファー(0.125M、pH7.1)中の細菌懸濁液を作製した。Xfas304(1×1010PFU/ml)の高力価ファージ溶菌物を調製し、滅菌脱イオン水(SDW)中で実施例3に記載されるように力価測定を行った。
【0110】
植物成長条件及び調製:カウピー(ビグナ・ウンギィクラタ亜種ウンギィクラタ)植物をMetro-Mixを使用し、3インチのポットで24℃~29℃に維持して(それぞれ、16時間の明期及び8時間の暗期)必要に応じて水を与えて生育させた。
【0111】
ヨコバイ:実験室で育てられたGWSSは、もともと、2箇所の場所:(i)アーヴィンのカリフォルニア農業食糧省(CDFA)、又は(ii)カリフォルニア州サンマルコのカリフォルニア大学協同エクステンションのいずれかの温室において複数世代に亘って育てられた。本研究で使用した全てのGWSSは、成体の雄及び雌であり、上記2箇所から送達された。受け取った後、実験に使用する前に新しい気候に順応させるため、24℃~29℃に維持して(それぞれ、16時間の明期及び8時間の暗期)、2日間に亘り昆虫にカウピー植物を与えた。
【0112】
実験計画:各実験単位(すなわち、ケージ)は、3葉期~4葉期の15cmの長さの茎のカウピー、及び必要に応じて50mlのファージ又は細菌のSDW中の懸濁液を含む50mlの平底チューブを含むものであった。蓋の穴を通して挿入された2週間齢又は3週間齢の植物から3葉期~4葉期の葉が付いたカウピーの茎(裁断茎)を採取し、適所にパラフィルムで固定した(固定した裁断茎)。GWSS(GWSS3匹/裁断茎/ケージ)をケージに入れ、必要に応じて餌を与えた。
【0113】
GWSSによるX.ファスチジオーサ及びファージの取り込み:GWSSによるX.ファスチジオーサ及び/又はファージの取り込みを判定するため、葉が付いたカウピー裁断茎をX.ファスチジオーサ(1×109CFU/ml)又はファージXfas304(1×1010PFU/ml)の懸濁液で満たしたチューブに固定し、4時間に亘って、X.ファスチジオーサ又はファージの毛細管取り込みをさせた。対照裁断茎をSDW中に置いた。4時間に亘って適切な懸濁液を裁断茎に取り込ませた後、サブセット(裁断茎3本)をアッセイしてX.ファスチジオーサ又はXfas304を定量した。4時間の取り込み期間の後、GWSS(GWSS3匹/裁断茎/ケージ)に裁断茎を与えた。各実験セットを三連で行った(裁断茎1本×GWSS3匹×3ケージ)。48時間後、全てのカウピー裁断茎及びGWSSをアッセイして、qRTPCRによりX.ファスチジオーサ及び/又はファージの存在を定量した。同じ条件下で水を取り込む対照を全ての実験について行い、X.ファスチジオーサ及びファージについてアッセイした。
【0114】
最初の実験は、病原体又はファージを有する裁断茎からGWSSがX.ファスチジオーサ又はファージを取得できるかどうかを判定し、もしそうであれば、GWSSがX.ファスチジオーサ又はファージを他の裁断茎へと伝達できるかどうかを判定するために計画された。48時間後、裁断茎及びGWSSは、それぞれ、平均2×108±1×108CFU/グラム植物組織(gpt)及び1×106±0.7×106CFU/GWSSを有し、以前に報告されるように(Bextine et al., Biotechniques 38:184, 186, 2005)GW
SSがX.ファスチジオーサを取得できたことを確認した。GWSSが裁断茎を摂食することによりファージを取得するかどうかを判定するための平行実験において、48時間後にアッセイしたGWSSは、2×108±1×108PFU/gptを含有する裁断茎から取得された平均2×106±0.9×106PFU/GWSSを有していた。結果は、裁断茎を摂食することによってファージをGWSSが取得できたことを示した。
【0115】
GWSSによるファージの取り込み及び伝達:GWSSによるファージの取り込み及び伝達を判定するため、カウピー裁断茎(9本)をファージXfas304懸濁液(1×1010PFU/ml)で満たした50mlチューブに固定した。対照(3本の裁断茎)をSDW中に置いた。両セットの裁断茎に各培地を取り込ませた。4時間後、ファージを取り込ませた3本の裁断茎をアッセイしてファージ濃度を求めた。残りの6本の裁断茎を、
各々GWSS(GWSS3匹/裁断茎/ケージ)を含む個別のケージに入れた。48時間後、9匹のGWSS及びそれらの各3本の裁断茎をファージ含有量についてアッセイし、残りの9匹のGWSSをSDW中に固定された新たなカウピー裁断茎に移し(GWSS3匹/裁断茎×3ケージ)、さらに48時間カウピーを与えて、裁断茎へのファージ伝達を判定した。裁断茎(3本)及びGWSS(9匹)を指定期間後にファージについてアッセイした。同じ条件下で水を取り込む対照を全ての実験について行い、ファージについてアッセイした。
【0116】
ファージ及び細菌の両方がGWSSにより取得され得ることが特定されたことから、裁断茎からファージを取得したGWSSがファージ及び/又は細菌を別の裁断茎へと伝達し得るかどうかを特定することを目的とした。ファージを有するGWSSのサブセットをSDW中の新たなカウピー裁断茎へと移し、摂食させた。48時間後、裁断茎及びGWSSは、それぞれ、平均3×102±2.5×102PFU/gpt及び平均3×103±1.6×103PFU/GWSSを有し、GWSSがファージを伝達できたことを示した。
【0117】
GWSSを有するX.ファスチジオーサのファージチャレンジ感染:ファージがGWSSにおいてX.ファスチジオーサ集団に影響を与え得るかどうかを判定するため、X.ファスチジオーサを有するGWSSをファージでチャレンジ感染した。簡単には、三連の反復実験を使用する上述の方法を使用して、X.ファスチジオーサを含有する裁断茎を摂食し、X.ファスチジオーサを含有すると確認したGWSSを、ファージXfas304を取り込んだカウピー裁断茎に移して摂食させた。48時間又は96時間の摂食の後に、裁断茎及びGWSSをファージ及び/又はX.ファスチジオーサについてアッセイした。X.ファスチジオーサの取り込みについて、GWSSを導入する前にカウピー裁断茎(15本)をXF54懸濁液(1×109CFU/ml)中に4時間置いた。4時間目に、3本の裁断茎をX.ファスチジオーサについてアッセイした。12本の残りの裁断茎の各々を1本の裁断茎当たりGWSS3匹を含むケージに入れ、GWSSにX.ファスチジオーサを含有する裁断茎を48時間摂食させた。48時間後、X.ファスチジオーサを摂食したGWSS及び宿主の裁断茎を3つの群に細分した:群1をX.ファスチジオーサについてアッセイし(裁断茎3本及びGWSS9匹);群2(GWSS9匹)をSDWに置いた新たなカウピー裁断茎(3本)に移し、GWSS及び裁断茎をX.ファスチジオーサについてアッセイする前に48時間に亘り摂食させ;群3(GWSS18匹)をXFas304懸濁液(1×1010PFU/ml)に入れたカウピー裁断茎(3本)に移し、GWSS及び裁断茎をX.ファスチジオーサ及びファージについてアッセイする前に、48時間又は96時間に亘り摂食させた。同じ条件下で水を取り込む対照を全ての実験について行い、X.ファスチジオーサ及びファージの両方についてアッセイした。
【0118】
36匹のGWSSにX.ファスチジオーサ懸濁液中のカウピー裁断茎を摂食させ、その後、X.ファスチジオーサの取り込み、X.ファスチジオーサ及び/又はファージの伝達、並びにGWSSにおけるファージ及び/又はX.ファスチジオーサの効果を判定するためにアッセイした。X.ファスチジオーサ株XF54(3×109CFU/ml)の懸濁液中に入れた裁断茎を48時間摂食させたGWSS(群1)は、平均1×106±0.7×106CFU/GWSSを有すると特定され、裁断茎摂食宿主は、平均2×108±1×108CFU/gptを有すると特定された。X.ファスチジオーサ有するGWSS(群2;1×106±0.7×106CFU/GWSS)にSDW中の新たな裁断茎を48時間摂食させた後、裁断茎は平均1×103±1.3×103CFU/gptを示し、GWSSは平均2×103±1×103CFU/GWSSの残渣X.ファスチジオーサを示し、GWSSによるX.ファスチジオーサ伝達の以前の結果を再確認した。Xfas304懸濁液(2×1010PFU/ml)で裁断茎に伝達され、48時間に亘って摂食させた群3のX.ファスチジオーサを有するGWSSは、ファージの取り込み及びX.ファスチジオーサの持続を示した。アッセイしたGWSSは、48時間の摂食で、平均3×10
4±1.8×104PFU/GWSSのXfas304を有し、2×103±1.1×103CFU/GWSSのXF54を保持した。同じ時間間隔でアッセイした裁断茎は、平均3×108±2×108PFU/gpt及び2×103±0.6×103CFU/gptを含んだ。96時間に亘って摂食させたGWSSは、平均2×105±1.2×105PFU/GWSSのXfas304及び1×102±0.9×102CFU/GWSSのXF54を有し、XF54における減少及びXfas306における平均6倍の増加を示した。
【0119】
カウピー裁断茎及びGWSSの採取及びアッセイ:GWSSを-20℃で5分間凍結することにより屠殺し、滅菌カミソリでチューブキャップの接合を切断することによりカウピー裁断茎を採取した。各三連のGWSSのそれぞれを0.5mlのP-バッファー(50mM Tris-HCl、pH7.5、100mM NaCl、8mM MgSO4)を含む1.5ml微量遠沈管に入れ、滅菌プラスチックマイクロ乳棒(Fisher)を使用してホモジナイズし、滅菌チーズクロス(米国のFisher Scientific)を通して濾過して組
織残屑を除去した。各三連の裁断茎のそれぞれを計量し、滅菌したカミソリ刃を使用して交換し(commuted)、乳鉢及び乳棒を使用して1mlのP-バッファー中でホモジナイズし、滅菌チーズクロス(米国のFisher Scientific)を通して濾過して組織残屑を除去し
た。ファージをアッセイするため、濾過物を遠心分離し(10000×gで15分間)、濾過滅菌した。実施例9のようにファージDNA抽出に濾過物の一部を使用し、その後、以下に記載されるqRTPCRに使用した。濾過物の残部を使用して実施例3に記載されるようにファージの力価測定を行った。以下に記載されるようにPMA処理、細菌DNA抽出及びqRTPCRのためペレットを0.5mlの滅菌Milli-Q水に再懸濁したこと以外は、同じプロトコルを細菌アッセイ(CFU)に使用した。
【0120】
PMA処理及びqRTPCR:PMA処理及びSYBRグリーンに基づくqRTPCRプロトコルを、X.ファスチジオーサ及びファージに特異的なプライマーを使用して実施例17に記載されるように行った。
【0121】
実施例19
キサントモナス・アクソノポディス病原型シトリに対するファージ活性
以前の研究はミカン類潰瘍病の防除に対するファージの使用を評価したが、何らの決定的なデータもファージの毒性の特徴を確認しなかった(Balogh et al., Plant Disease, 92:1048-1052, 2008)。毒性で非形質導入ファージのみを持続可能なファージ生物防除系の評価及び実行に使用すべきである。それぞれ、ポドウイルス科(Xfas303)及びシホウイルス科(Xfas103)の代表的な2種の完全に特性評価された毒性ファージに対するフロリダから得られた3種のXac分野の株(North 40、Block 22、Fort Basinger)の感受性を試験した。結果は、試験した3種のXac株は、ファージXfas303にのみ感受性であったことを示す(
図12)。ファージXfas303は、試験した3種のXac株上で透明プラークを形成することができた。Xfas303ゲノムに対して454パイロシークエンシングを行い、予測した遺伝子を完全にアノテートした(annotated)。T7及びKMV(Dunn et al., J. Mol. Biol. 166:477-53521, 1983; Lavigne et al., Virology 312:49-59, 2003)等の毒性ファージの
指標である、単一サブユニットRNAポリメラーゼ(SSRNAP)の存在が見出された。さらに、上記細菌においてpilAのインフレーム欠失突然多様体を作製することにより、キサントモナス亜種株EC-12のIV型線毛がファージXfas303に対する主な受容体部位であることを特定した。ファージXfas303及びファージXfas103はいずれも吸着して株EC-12上に透明プラークを形成するが、ΔpilA誘導体には形成せず、EC-12又はEC-12ΔpilA上のファージXfas303の平板培養に関する結果のみを示す。また、IV型線毛は、ファージXfas303に対する主な受容体部位あるため、このファージが感染に必要な異なる第2の受容体部位を有し得るか
、又はファージDNAが制限されることを特定した。結果は、開発したXac非依存性の手法は、平板効率(EOP 0.75)を損なわずにXacに対して毒性のファージを単離するのに使用され得ることを示す。
【0122】
実施例20
XacにおけるIV型線毛の発現に関する証拠
文献における報告は、感染過程におけるIV型線毛の発現及び役割、並びにXacの病因と矛盾する(Brunings et al., Mol. Plant. Pathol. 4:141-57, 2003; Li et al., PLoS ONE6:e21804, 2011; Yang et al., Curr. Microbiol. 48:251-61, 2004)。上記に提
示される結果は、ファージの吸着及び感染を促進するために線毛を縮めなければならないため、試験した3種全てのXac株は機能性のIV型線毛を発現することを示す。光学顕微鏡研究を使用することにより、上記3種のXac株を、機能性のIV型線毛の指標である単攣縮運動性(twitching motility)について評価した。シュードモナス・アエルギノーザ(Pseudomonas aeruginosa)株PAO1及びキサントモナス亜種株EC-12を陽性対照として使用し、E-12ΔpilAを陰性対照として使用した。3種のXac株(North 40、Block 22及びFort Basinger)を単攣縮運動性について評価した。PAO1、EC-12、及び3種のXac株は、単攣縮運動性を呈したのに対し、EC-12ΔpilAは単攣縮運動性を呈しなかった。顕微鏡研究は、ファージ感受性試験により得られた結果を確認し、3種のXac株がファージXfas303に対する吸着部位として作用する機能性IV型線毛を有することを示した。結果は、IV型線毛がXacにより発現されるという他者(Brunings et al., Mol. Plant. Pathol. 4:141-57, 2003; Li et al., PLoS ONE 6:e21804, 2011; Yang et al., Curr. Microbiol. 48:251-61, 2004)の観察を確認する。
【受託番号】
【0123】
PTA-13095
PTA-13096
PTA-13097
PTA-13098
PTA-13099
PTA-13100
PTA-13101
【配列表】