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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】肌の弾力の維持又は向上用組成物
(51)【国際特許分類】
   A23L 33/125 20160101AFI20230511BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 31/7028 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20230511BHJP
   A61P 17/16 20060101ALI20230511BHJP
   A61K 8/60 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A23L33/125
A61Q19/00
A61K31/7028
A61P43/00 105
A61P17/16
A61K8/60
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021205748
(22)【出願日】2021-12-20
【審査請求日】2022-04-25
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000204686
【氏名又は名称】大関株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000729
【氏名又は名称】弁理士法人ユニアス国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大浦 友紀
(72)【発明者】
【氏名】山田 浩之
(72)【発明者】
【氏名】幸田 明生
(72)【発明者】
【氏名】坊垣 隆之
(72)【発明者】
【氏名】根路銘 伸介
(72)【発明者】
【氏名】東崎 愛生
(72)【発明者】
【氏名】岡崎 悟志
【審査官】小路 杏
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-124488(JP,A)
【文献】山下裕司ほか,日本酒濃縮物の経口摂取による皮膚性状の変化,千葉科学大学紀要,2014年,第7号,第97-104頁
【文献】Mitsui, M. et al.,The effect of ingestion of an ethyl α-D-glucoside, a fermented product, on human skin,Journal of Biological Macromolecules,2021年12月14日,Vol.21, No.2,p.75-87
【文献】坊垣隆之, 尾関健二,エチル-α-D-グルコシド高含有酒類の開発とその保湿機能,日本醸造協会誌,2018年,第113巻第6号,第336-345頁
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/60
A61Q 19/00
A61K 31/7028
A61P 43/00
A61P 17/16
A23L 33/10
Google Scholar
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)エチルα-D-グルコシド及びα-D-グルコピラノシルグリセロール類からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有し、
該(A)成分の含有量が、0.01~30質量%であり、
該α-D-グルコピラノシルグリセロール類が、(2R)-1-O-α-D-グルコピラノシルグリセロール、(2S)-1-O-α-D-グルコピラノシルグリセロール、及び2-O-α-D-グルコピラノシルグリセロールからなる群より選択される少なくとも1種を含み、
経口用である、肌の弾力の維持又は向上用組成物
(但し、0.2~1.7質量%のエチルα-D-グルコシドを含む肌の弾力の維持又は向上用の日本酒を除く)。
【請求項2】
少なくとも1日1回、2週間以上適用するものである、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記(A)成分の1日の適用量が、20mg以上である、請求項1又は2に記載の組成物。
【請求項4】
医薬品、医薬部外品、化粧品、又は、機能性食品である、請求項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項5】
前記(A)成分が、米を原料とした発酵物から得られるものである、請求項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌の弾力の維持又は向上をもたらすことに優れた組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
肌は人の体表を覆う皮膚であり、表皮、真皮、及び、皮下組織から構成されている。最外層に位置する表皮の角質層は、角質細胞、細胞間脂質、NMF(天然保湿因子)等が存在し、水分と油分とが交互に重なり合い、ラメラ構造を構成することにより、水分を保持し、蒸散抑制を行っている。
【0003】
また、表皮下層に位置する真皮では、コラーゲンやエラスチン等により肌を支え、ヒアルロン酸等の基質が水分を保持している。
【0004】
加齢や外部環境の変化等により、肌の構造に乱れが生じ肌の弾力が失われると、肌の物理的強度が低下し、外界に対する抵抗性が減弱する。また、肌構造の乱れにより、保持されていた水分が蒸散することで肌の乾燥をもたらし、痒みや皮膚損傷等に繋がってしまう。
【0005】
また、肌は全身に拡がる臓器であり、肌の弾力性を保つ構造が失われ、水分蒸散が進むことにより、熱中症等の脱水症状が引き起こされることもある。よって、真皮等の肌構造を保持し、肌の弾力性を維持又は向上させることは、肌の健康を守ることや、体温を適切に管理する上で重要である。
【0006】
肌の弾力性を保つ構造を維持するため、様々な成分による外用組成物が提案されている。例えば、特許文献1では、サチャインチというドウダイグサ科植物のオイルによる肌のたるみ改善、熱中症予防等の効果が報告されている。特許文献2ではシソ科タイム属植物の抽出液とビタミンE及び/又はその誘導体の一種又は二種以上とを配合した外用剤による皮膚のたるみ軽減、ハリ感アップの効果が報告されている。非特許文献1ではエーデルワイスのカルス培養エキスによる肌の弾力性改善の効果が報告されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2020-158478号
【文献】特開2000-086486号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Won Kyong Cho et al.Anti-Aging Effects of Leontopodium alpinum(Edelweiss)Callus Culture Extract through Transcriptome Profiling.Genes.2020,11,230.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
肌の弾力性維持に効果を奏する外用組成物は種々報告されているが、経口によっても効果が確認されている成分は十分な報告がない。特に、経口用である場合は、安全性の観点から、古くから飲食されてきたか等の食経験も必要となる。
【0010】
本発明は、上記に鑑みてなされたものであり、外用だけでなく経口用においても、肌の弾力の維持又は向上に効果を奏し、摂食歴の長い天然由来の成分を見出すこと、及び、その成分を用いた肌の弾力の維持又は向上用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
前記課題に鑑み、鋭意検討を行った結果、日本酒等に含まれる成分であるエチルα-D-グルコシドやその類縁化合物を有効量含有させることにより、肌の弾力の維持又は向上に資することを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0012】
すなわち、本発明は、下記に掲げる組成物を提供する。
項1.
(A)エチルα-D-グルコシド及びその類縁化合物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有し、該(A)成分の含有量が、0.01~30質量%である、肌の弾力の維持又は向上用組成物。
項2.
少なくとも1日1回、2週間以上適用するものである、項1に記載の組成物。
項3.
前記(A)成分の1日の適用量が、20mg以上である、項1又は2に記載の組成物。
項4.
経口用、又は、外用である、項1~3のいずれか1項に記載の組成物。
項5.
医薬品、医薬部外品、化粧品、又は、機能性食品である、項1~4のいずれか1項に記載の組成物。
項6.
前記(A)成分が、米を原料とした発酵物から得られるものである、項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【0013】
また、別の実施形態において、本発明は、下記に掲げるタンパク質の遺伝子発現促進剤を提供する。
項7.
(A)エチルα-D-グルコシド及びその類縁化合物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、トランスグルタミナーゼ、フィラグリン、クローディン、EGF、スフィンゴミエリナーゼ、及び、PPARからなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質の遺伝子発現促進剤。
【発明の効果】
【0014】
本発明の組成物を用いることで、摂食歴の長い天然由来の成分により、肌の弾力を維持又は向上させることが可能となる。本発明の効果は、外用組成物としてだけでなく、経口用組成物としても得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1図1は、試験例1における、試料の塗布方法(部位)を示す模式図である。
図2図2は、試験例1における、Cutometerによる、皮膚の変位量の経時的なチャートの代表例を示した図である。
図3図3は、試験例1における腕への塗布試験で、CutometerによるパラメータR2の結果を示したグラフである。
図4図4は、試験例1における腕への塗布試験で、CutometerによるパラメータR5の結果を示したグラフである。
図5図5は、試験例1における腕への塗布試験で、CutometerによるパラメータR7の結果を示したグラフである。
図6図6は、試験例2における飲用試験で、左頬をCutometerにより測定したパラメータR2の結果を示したグラフである。
図7図7は、試験例2における飲用試験で、左頬をCutometerにより測定したパラメータR5の結果を示したグラフである。
図8図8は、試験例2における飲用試験で、左頬をCutometerにより測定したパラメータR7の結果を示したグラフである。
図9図9は、試験例2における飲用試験で、両腕前腕内側をCutometerにより測定したパラメータR2の結果を示したグラフである。
図10図10は、試験例2における飲用試験で、両腕前腕内側をCutometerにより測定したパラメータR5の結果を示したグラフである。
図11図11は、試験例2における飲用試験で、両腕前腕内側をCutometerにより測定したパラメータR7の結果を示したグラフである。
図12図12は、試験例2における飲用試験で、コラーゲンスコアの結果を示したグラフである。
図13図13は、試験例3における肌改善に寄与する因子のmRNA発現増強効果を評価した結果を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
[肌の弾力の維持又は向上用組成物]
本発明の組成物は、摂食歴の長い天然由来の成分であるエチルα-D-グルコシドやその類縁化合物を有効成分として含有するものであり、肌の弾力を維持又は向上させることが可能となる。
【0017】
本明細書において、(A)エチルα-D-グルコシド及びその類縁化合物からなる群より選択される少なくとも1種は、(A)成分とも表記される。
エチルα-D-グルコシド(以下、α-EGとも言う)は、分子量208の化合物であり、調理食品の旨みや濃厚味に関与する呈味成分として知られている。その呈味は、グルコース様の爽やかな甘味と独特の苦味が特徴である。エチルα-D-グルコシドは、酒類醸造期間中に麹由来のα-グルコシダーゼの糖転移反応により生成することが知られており、清酒やみりん等の酒類中に含まれている。エチルα-D-グルコシドの構造は次式(1)で表される。
【0018】
【化1】
【0019】
エチルα-D-グルコシドの製造法としては、特に限定するものではないが、例えば、本出願人は、もち米や麹米を原料とし、酒造用酵素剤(α-グルコシダーゼ剤)を作用させること等により、エチルα-D-グルコシドを高含有する酒類を製造する方法を開示している(特開2005-185169号)。上記酵素剤は、特に限定されないが、アスペルギルス・オリゼ、アスペルギルス・ニガー等由来の酵素剤が挙げられ、例えば、四段用TG-B(天野エンザイム社製)が使用できる。
【0020】
上記の他、エチルα-D-グルコシドの製造法としては、例えば、シゾサッカロミセス・ポンベを、糖質を含有するエタノール溶液に作用させる方法(特公平5-56958号)、アスペルギルス・ニガー由来のα-グルコシダーゼを、糖質を含有するエタノール溶液に作用させる方法(特公平6-30608号)、及びアルコール発酵能を有する微生物の共存下で糖類にα-1,6-グルコシル転移活性を有する酵素を作用させる方法(特開平11-243987号)が挙げられる。
【0021】
エチルα-D-グルコシドは、上記の製造法の他、米を原料とした発酵物から得ても良く、合成によって得ても良く、市販品を用いることもできる。
【0022】
エチルα-D-グルコシドの類縁化合物としては、特に限定されないが、アルコールをアグリコンとする配糖体である化合物が好ましく、米を原料とした発酵物から得られる類縁化合物がより好ましく、α-D-グルコピラノシルグリセロール類(以下、α-GGとも言う)が更に好ましく、(2R)-1-O-α-D-グルコピラノシルグリセロール、(2S)-1-O-α-D-グルコピラノシルグリセロール、及び2-O-α-D-グルコピラノシルグリセロールからなる群より選択される少なくとも1種が特に好ましい。(2R)-1-O-α-D-グルコピラノシルグリセロール、(2S)-1-O-α-D-グルコピラノシルグリセロール、及び2-O-α-D-グルコピラノシルグリセロールの構造は、それぞれ次式(2)~(4)で表される。
【0023】
【化2】
【0024】
【化3】
【0025】
【化4】
【0026】
エチルα-D-グルコシドの類縁化合物は、酒類中に存在するため、酒類から必要により精製して得ても良く、米を原料とした発酵物から得ても良く、上記のエチルα-D-グルコシドの製造法において付随的に生成する化合物として得ても良く、市販品を用いても良い。上記の他、エチルα-D-グルコシドの類縁化合物の製造方法は特に限定されない。
【0027】
本発明の組成物は、(A)成分を有効量の濃度で含有する酒類を当該組成物として用いても良く、更に(A)成分を有効量の濃度で含有する酒類を精製処理したものでも良く、濃縮処理したものでも良い。このような処理方法は、特に限定されず公知の抽出法、精製方法、濃縮方法、合成方法、乾燥粉末化方法等を用いることができる。
【0028】
(A)成分の総含有量は、本発明の効果を顕著に奏する観点から、組成物全量に対して、0.01~30質量%とすることができる。
(A)成分の総含有量は、組成物全量に対して、例えば、0.05質量%以上、0.1質量%以上、0.15質量%以上、0.2質量%以上、0.25質量%以上、0.3質量%以上、0.4質量%以上、0.5質量%以上、0.8質量%以上、1.0質量%以上等とすることができる。
(A)成分の総含有量は、組成物全量に対して、例えば、28質量%以下、26質量%以下、24質量%以下、22質量%以下、20質量%以下、18質量%以下、16質量%以下、14質量%以下、12質量%以下、10質量%以下等とすることができる。
(A)成分の総含有量は、組成物全量に対して、例えば、0.01~30質量%、0.01~28質量%、0.01~26質量%、0.01~24質量%、0.01~22質量%、0.01~20質量%、0.01~18質量%、0.01~16質量%、0.01~14質量%、0.01~12質量%、0.01~10質量%、0.05~30質量%、0.05~28質量%、0.05~26質量%、0.05~24質量%、0.05~22質量%、0.05~20質量%、0.05~18質量%、0.05~16質量%、0.05~14質量%、0.05~12質量%、0.05~10質量%、0.1~30質量%、0.1~28質量%、0.1~26質量%、0.1~24質量%、0.1~22質量%、0.1~20質量%、0.1~18質量%、0.1~16質量%、0.1~14質量%、0.1~12質量%、0.1~10質量%、0.15~30質量%、0.15~28質量%、0.15~26質量%、0.15~24質量%、0.15~22質量%、0.15~20質量%、0.15~18質量%、0.15~16質量%、0.15~14質量%、0.15~12質量%、0.1~10質量%、0.2~30質量%、0.2~28質量%、0.2~26質量%、0.2~24質量%、0.2~22質量%、0.2~20質量%、0.2~18質量%、0.2~16質量%、0.2~14質量%、0.2~12質量%、0.2~10質量%、0.25~30質量%、0.25~28質量%、0.25~26質量%、0.25~24質量%、0.25~22質量%、0.25~20質量%、0.25~18質量%、0.25~16質量%、0.25~14質量%、0.25~12質量%、0.25~10質量%、0.3~30質量%、0.3~28質量%、0.3~26質量%、0.3~24質量%、0.3~22質量%、0.3~20質量%、0.3~18質量%、0.3~16質量%、0.3~14質量%、0.3~12質量%、0.3~10質量%、0.4~30質量%、0.4~28質量%、0.4~26質量%、0.4~24質量%、0.4~22質量%、0.4~20質量%、0.4~18質量%、0.4~16質量%、0.4~14質量%、0.4~12質量%、0.4~10質量%、0.5~30質量%、0.5~28質量%、0.5~26質量%、0.5~24質量%、0.5~22質量%、0.5~20質量%、0.5~18質量%、0.5~16質量%、0.5~14質量%、0.5~12質量%、0.5~10質量%、0.8~30質量%、0.8~28質量%、0.8~26質量%、0.8~24質量%、0.8~22質量%、0.8~20質量%、0.8~18質量%、0.8~16質量%、0.8~14質量%、0.8~12質量%、0.8~10質量%、1.0~30質量%、1.0~28質量%、1.0~26質量%、1.0~24質量%、1.0~22質量%、1.0~20質量%、1.0~18質量%、1.0~16質量%、1.0~14質量%、1.0~12質量%、1.0~10質量%等とすることができる。
【0029】
(A)成分中において、エチルα-D-グルコシドと、その類縁化合物との含有比率は、特に制限されない。エチルα-D-グルコシドの類縁化合物がα-GGである場合は、エチルα-D-グルコシドと、α-GGとの含有比率は、エチルα-D-グルコシドの1質量部に対して、α-GGの含有量が、例えば、0.01~1質量部であることが好ましく、0.05~0.5質量部であることがより好ましく、0.08~0.5質量部であることが更に好ましく、0.1~0.5質量部であることが特に好ましい。
【0030】
[用途]
本発明の組成物は、(A)成分を0.01~30質量%の含有量にて含有することにより、肌の弾力を維持し、又は、向上させることが可能となる。
【0031】
上述の通り、肌は表皮及び真皮から構成されており、表皮のラメラ構造や真皮のコラーゲン、エラスチン等により肌の弾力性が維持されている。このような肌構造が乱れることにより、肌の弾力性が失われ、肌のハリ・ツヤの低下、痒みや皮膚損傷、水分蒸散による熱中症等の脱水症状を引き起こしてしまう。よって、本発明は、肌の弾力性を維持又は向上することにより、肌のハリ又はツヤの維持又は向上、肌の痒み又は皮膚損傷の改善、熱中症の予防等に用いることも可能である。
【0032】
肌構造の乱れは、加齢、大気汚染、アレルギー、睡眠不足、栄養の偏り等の様々な生活環境、生活要因から生じ、日々肌構造の維持を心掛けることが必要であるが、多くの場合、十分な対策がなされていない状況である。また、一度肌構造が壊れ、不安定化すると、少しの生活環境の変化によっても影響を受けることがあり、例えば、荒れ肌、敏感肌、ゆらぎ肌等と称され、注意を要する肌状態となる。よって、本発明は、肌の弾力性を維持又は向上することにより、荒れ肌(肌荒れ)、敏感肌、ゆらぎ肌等に対して用いることも可能である。
【0033】
(A)成分の1日の適用量は、本発明の効果を奏する限り限定はされないが、例えば、20mg以上とすることができ、50mg以上であることが好ましく、100mg以上であることが更に好ましく、150mg以上であることが特に好ましく、200mg以上であることが最も好ましい。
(A)成分の1日の適用量は、例えば、4000mg以下とすることができ、3600mg以下であることが好ましく、3200mg以下であることが更に好ましく、2800mg以下であることが特に好ましく、2400mg以下であることが最も好ましい。
(A)成分の1日の適用量は、例えば、20~4000mgとすることができ、50~3600mgであることが好ましく、100~3200mgであることが更に好ましく、150~2800mgであることが特に好ましく、200~2400mgであることが最も好ましい。
【0034】
また、(A)成分のうち、α-EG単独での1日の適用量は、例えば、200~4000mgとすることができ、210~3600mgであることが好ましく、220~3200mgであることが更に好ましく、230~2800mgであることが特に好ましく、240~2400mgであることが最も好ましい。
【0035】
また、(A)成分のうち、α-GG単独での1日の適用量は、例えば、20~1000mgとすることができ、30~800mgであることが好ましく、40~600mgであることが更に好ましく、50~400mgであることが特に好ましく、60~150mgであることが最も好ましい。
【0036】
また、一度肌構造が壊れ不安定化すると、どのような成分を適用したとしても、即座に(瞬間的に)肌構造を修復することは困難である。よって、日頃から肌構造の維持を心掛けることが重要である。本発明の組成物を適用する場合は、例えば、少なくとも1日1回、2週間以上適用することが好ましい。
【0037】
適用回数としては、1日1回が好ましく、1日2回(朝に1回及び晩に1回、朝食前後に1回及び夕食前後に1回等)、1日3回(朝、昼及び晩に1回ずつ、朝食、昼食、夕食前後に1回ずつ等)であっても良い。
【0038】
適用期間としては、少なくとも2週間以上が好ましく、20日以上、3週間以上、4週間以上、30日以上、1ヶ月以上、2ヶ月以上、3ヶ月以上であっても良い。限定はされないが、表皮における細胞のターンオーバーにかかる期間が、約45日であることから、例えば、少なくとも1ヶ月以上がより好ましく、45日以上が更に好ましく、2ヶ月以上が特に好ましい。
【0039】
[製剤形態]
本発明の組成物は、飲食品、化粧品、医薬品、医薬部外品等の種々の形態にて用いることができ、公知の方法で製剤化することが可能である。本発明の組成物は、経口剤であっても良く、外用剤であっても良い。経口剤としては、例えば、錠剤(咀嚼錠、嚥下錠、トローチ剤、バッカル錠、舌下錠等)、カプセル剤(ソフトカプセル、ハードカプセル、シームレスカプセル等)、散剤、顆粒剤、丸剤、液剤(水剤、懸濁剤、乳剤、シロップ剤等)等が挙げられ、外用剤としては、液剤、懸濁剤、乳剤、クリーム剤、軟膏剤、ゲル剤、リニメント剤、ローション剤、エアゾール剤、パウダー剤、スプレー剤、シート剤等が挙げられる。上記の他、本発明の組成物は、注射剤等の公知の他の剤形によっても利用することが可能である。
【0040】
飲食品の形態の場合、例えば、特定保健用食品、機能性表示食品、栄養機能食品等の健康食品として用いられることの他、一般的な飲食品に配合して用いられても良い。一般的な飲食品としては、特に限定はされないが、例えば、菓子類(ゼリー、飴、錠菓及びスナック菓子等)、飲料類(清涼飲料、コーヒー、酒類等)、パン類、肉類の加工食品(ハム、ソーセージ、蒲鉾、竹輪等)、野菜類の加工食品(野菜の煮物等)、果物類の加工食品(果物の砂糖漬け、果物の缶詰等)、調味料(醤油、みりん、味噌、旨味調味料等)及び甘味料等が挙げられる。
【0041】
化粧品の形態の場合、具体的には、化粧水、乳液、ジェル、クリーム、美容液、日焼け止め、パック、美容マスク、ハンドクリーム、オールインワンジェル、オールインワンクリーム等の化粧料として用いることが可能である。
【0042】
上記の各種剤形において、公知の成分や添加剤等を配合することが可能である。必要に応じて、通常使用される賦形剤(デンプン、デキストロース等)、香料、甘味料(甘草、ステビア等)、界面活性剤、増粘剤、酸化防止剤、保存剤、防腐剤、pH調整剤、キレート剤、安定化剤、刺激軽減剤、溶解補助剤、懸濁化剤、等張化剤、緩衝剤、着色剤、分散剤、酸味料等を配合し、公知の方法により適宜の製剤形態に調製することができる。
【0043】
[適用部位]
本発明の組成物が適用される部位は、肌が関与する部位であれば特に制限されず、例えば、顔、頭、首元、胸元、背中、腕、肘、手、腋窩部、腹部、臀部、脚、指、足先及び足裏からなる群より選択される少なくとも1種であり得る。
【0044】
[適用対象者]
本発明の組成物が適用される対象者は、皮膚の弾力性が問題となる、又は、問題となり得る対象者であれば、特に制限されない。適用対象者は、肌が未成熟であったり、おむつ等の外的刺激によるお尻かぶれが生じやすい新生児(生後28日まで)、乳児(生後28日以降、1歳未満)、幼児(1歳から就学前まで)であっても良く、肌荒れを生じやすい思春期(10歳頃から18歳頃)や青年期(15歳頃から30歳頃)であっても良く、顔等の敏感肌が気になる年代(15歳頃以上)であっても良く、中年齢者(45歳頃以上55歳未満)や高年齢者(55歳以上)であっても良い。また、年齢に限らず、生活環境等によって肌構造の不調や肌構造の乱れが生じやすい方にも適用可能である。
【0045】
[遺伝子発現促進剤]
別の実施形態において、本発明は、(A)成分を有効成分として含有する、トランスグルタミナーゼ、フィラグリン、クローディン、EGF、スフィンゴミエリナーゼ、及び、PPARからなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質の遺伝子発現促進剤を提供することも可能である。
【0046】
トランスグルタミナーゼは、インボルクリンやロリクリン等の複数のタンパク質を架橋する酵素である。この架橋により、角質細胞を包む不溶性の細胞膜様構造体であるコーニファイドエンベロープが形成、成熟し、肌のバリア機能や水分保持能の維持又は向上に繋がる。
【0047】
フィラグリンは、角質層においてケラチンフィラメントの凝集効率を高めることで角質層の内部構造を強くする。また、フィラグリンの分解により生じたアミノ酸は天然保湿因子の主成分となることから、水分の維持にも必要不可欠なタンパク質である。
【0048】
クロ―ディンは、タイトジャンクションの形成に関わる主要なタンパク質である。上皮細胞外でクロ―ディン同士が結合することでタイトジャンクションストランドが形成され、体内と外部環境を隔絶して生体内の恒常性が確保される。
【0049】
EGF(上皮成長因子)は、角化細胞の細胞増殖を促すタンパク質であり、新陳代謝を加速させることで肌のターンオーバーを正常化する。
【0050】
スフィンゴミエリナーゼは、セラミドの前駆体の一つであるスフィンゴミエリンからセラミドを産生する酵素である。セラミドは脂肪酸、コレステロール等と細胞間脂質を形成し、角質細胞間の隙間を埋めることでバリア機能を強固にする。
【0051】
PPAR(ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体)は、ステロイドホルモン受容体ファミリーに属し,糖・脂質代謝に関与する核内受容体型転写因子である。PPARはα、γ、β/δの3種類のサブタイプが確認されており、その中でも、PPARβ/δは、ケラチノサイトの増殖や皮膚炎症さらには表皮のバリア機能を制御する。
【0052】
(A)成分は、上記遺伝子の発現を促進することにより、各遺伝子が関与する機能性を向上させることが可能となる。遺伝子発現促進剤として用いる場合の(A)成分の含有量、製剤形態、適用方法、適用部位、適用対象者等は、[肌の弾力の維持又は向上用組成物]の項目にて上述したものと同様である。
【実施例
【0053】
次に、実施例や試験例により本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の実施例や試験例に限定されるものではない。
【0054】
[試験例1.エチルα-D-グルコシドの塗布試験]
24歳~55歳の健常者7名(男性4名、女性3名)を被験者とした。図1の模式図に示すように、腕の先端から順に測定区画1~4を設定し、左1及び2、右3´及び4´に1つ目の試料、左3及び4、右1´及び2´に2つ目の試料をゼロタイム測定日から4週間、毎日朝晩2回塗布した。
【0055】
コントロール区には蒸留水を、エチルα-D-グルコシド塗布区には2質量%のエチルα-D-グルコシド(富士フィルム和光純薬社製)溶液を0.1ml/20cm塗布した。
【0056】
測定条件は以下のとおりである。
・測定環境:温度20±1℃、湿度50±5%
・測定環境への馴化:測定部を洗浄後、水気を拭き取り、測定環境下で20分待機
・測定箇所:上記で設定した測定区画1~4及び1´~4´を1箇所につき3点測定
・測定項目:皮膚粘弾性(Cutometer)
【0057】
測定機器として使用したCutometer(Courage&Khazaka社製)は、皮膚表面を一定の吸引圧及び時間で陰圧にすることで、プローブ開口部に引き込み、開口部に引き込まれた皮膚長を、プリズムを用いて測定することで皮膚粘弾性を評価するものである。この方法は、肌の弾力性を測定する一般的な評価法として国内外で広く用いられている。
【0058】
Cutometerによる皮膚の変位量の経時的なチャートの代表例を図2に示す。図2において、Ufは吸引時最大の皮膚の伸び、Ueは即時的な皮膚の伸び、Urは即時的な収縮、Uaは吸引解放時最大の皮膚の戻りを示す。「肌の弾力性」の指標として用いられるパラメータは下記表1に示す3つである。
【0059】
【表1】
【0060】
それぞれR2、R5、R7の値は、1に近いほど肌の弾力性が高いとされる。
R2、R5、R7の測定結果を、それぞれ図3、4、5に示す。各図中、有意差検定を行った結果は、以下の様に示す。
# :p<0.05 vs.0week
##:p<0.01 vs.0week
【0061】
図3に示す通り、総弾力性を示す指標であるR2では、試験開始後1週間で、エチルα-D-グルコシド塗布区の値がコントロール区を上回った。また、図3、4、5に示す通り、4週間後にR2、R5、R7すべての弾力性パラメータでエチルα-D-グルコシド塗布区の値がコントロール区を上回った。
【0062】
[試験例2.エチルα-D-グルコシドの飲用試験]
24歳~54歳の健常男性15名を被験者とした。被験者15名をエチルα-D-グルコシド摂取群8名(平均年齢35.1歳)と、コントロール群7名(平均年齢34.9歳)の2群に分けた。
【0063】
(エチルα-D-グルコシド摂取群)
清酒濃縮液を10倍希釈し、エチルα-D-グルコシド濃度を0.25質量%にしたサンプルAを毎晩100ml飲用した。サンプルAには、エチルα-D-グルコシドが1日の適用量として、250mg配合されており、α-GGが1日の適用量として、25mg配合されている。
【0064】
(コントロール群)
清酒濃縮液を10倍希釈した後、α-グルコシダーゼ「アマノ」SD(天野エンザイム社製)を用いて処理することによりエチルα-D-グルコシドやα-GGを分解したサンプルBを毎晩100ml飲用した。
【0065】
上記のサンプルA、及び、サンプルBの処方は以下のとおりである。
【0066】
【表2】
【0067】
両群とも、試験期間はゼロタイム測定日から8週間であった。各被験者は、サンプル以外からエチルα-D-グルコシドを摂取しないよう、試験期間中は日本酒を飲まないこと、食事及び、運動量等の生活習慣を変更しないことに留意して試験を行った。
【0068】
測定条件は以下のとおりである。
・測定環境:温度20±1℃、湿度50±5%
・測定環境への馴化:測定部を洗浄後、水気を拭き取り、測定環境下で15分待機
・測定箇所:左頬1区画及び両腕前腕内側各1区画
・測定項目:左頬1区画は皮膚粘弾性(Cutometer)のみ、両腕各1区画については皮膚粘弾性(Cutometer)及びコラーゲンスコア(DermaLab)
・測定値:測定区画内を5箇所測定し、測定値の上下2点を除外した3点の平均値を採用
【0069】
コラーゲンスコアの測定機器として使用したDermaLab(Cortex Technology社製)は皮膚専用の超音波画像撮影装置で、超音波を皮膚表面に当てることで真皮のコラーゲン密度をコラーゲンスコアとして数値化できる機械である。コラーゲンスコアの値が大きいほど真皮中のコラーゲンが豊富で状態が良いとされる。
【0070】
弾力性の評価指標は、試験例1と同様であり、表1に示した通りである。左頬におけるR2、R5、R7の測定結果を、それぞれ図6、7、8に示す。また、両腕前腕内側におけるR2、R5、R7の測定結果を、それぞれ図9、10、11に示す。また、コラーゲン量による影響を確認するため、同試験期間中のコラーゲンスコアを測定した結果を図12に示す。各図中、有意差検定を行った結果は、以下の様に示す。
# :p<0.05 vs.0week
##:p<0.01 vs.0week
* :p<0.05 vs.コントロール群
**:p<0.01 vs.コントロール群
【0071】
図6、7、8に示す通り、飲用開始から2週間後にはR2、R5、R7すべての弾力性パラメータでエチルα-D-グルコシド飲用区の値がコントロール区を上回った。試験例1で示した塗布試験だけでなく、飲用試験においても、比較的短期間で肌の弾力性の維持及び向上に顕著な効果を奏したことは予測を超える結果であった。
【0072】
特に顔の肌における弾力性の維持及び向上効果が認められたが、図9~11に示すように腕においても肌の弾力性の維持及び向上効果が認められたため、エチルα-D-グルコシドの継続的な飲用によって、全身の肌へ影響することが示唆された。
【0073】
また、図12に示すように、コラーゲンスコアの平均値が試験開始時より下降を続けたにもかかわらず、弾力性の各指標は増加傾向であったことから、エチルα-D-グルコシドによる肌の弾力性の維持及び向上効果は、コラーゲン量の増加に起因するものではないことが推測された。なお、試験期間が、季節の変わり目であったことから、コラーゲンスコアの平均値が試験開始時より下降を続けたものと推測され、本発明は、季節の変わり目にトラブルとなりやすい肌、例えば、敏感肌や、ゆらぎ肌に対して効果的であることが示された。
【0074】
[試験例3.肌改善に寄与する因子のmRNA発現増強効果]
(細胞へのサンプル供試)
ヒト表皮角化細胞(NHEK(NB);クラボウ社製)をHuMedia-KG2(クラボウ社製)で継代培養し、3代目の細胞を12穴プレートに1.5×10cells/2ml medium/wellで播種し、5%CO存在下、37℃で一晩インキュベートした。終濃度0.1%になるようにエチルα-D-グルコシドを添加したHuMedia-KG2培地(注1;分化試験用に改変)に交換し、48時間培養した。コントロール区はエチルα-D-グルコシド溶液の代わりに水を添加した。
注1:正常ヒト表皮角化細胞用基本培地500mlに対し、BPE2ml、ゲンタマイシン/アンフォテリシンB 0.5mlのみ添加し、Ca2+濃度を1.5mMに調製した。
【0075】
(RNA抽出)
培養終了後、PBS(-)で2回洗浄し、FASTGENE RNA BASIC KIT(日本ジェネティクス社製)のRL bufferを用いて細胞を回収し、添付マニュアルに従いトータルRNAを抽出した。RNA濃度は NanoDrop1000(Thermo Fisher SCIENTIFIC社製)を用いて算出した。
【0076】
(逆転写及びリアルタイムPCR)
PrimeScript RT reagent Kit with gDNA Eraser(タカラバイオ社製)を用いて、添付マニュアルに従い逆転写反応を行った。リアルタイムPCRはTB Green Premix Ex Taq II(Tli RNaseH Plus)(タカラバイオ社製)を用いて、添付マニュアルに従って実施した。ハウスキーピング遺伝子にはGAPDH(glyceraldehyde-3-phosphate dehydrogenase)を使用し、ΔΔCT法により相対定量を行った。コントロール区の各遺伝子発現を1としたときのエチルα-D-グルコシド供試区の遺伝子発現結果を表3及び図13に示す。図中、有意差検定を行った結果は、以下の様に示す。
* :p<0.05 vs.コントロール区
【0077】
【表3】
【0078】
表3及び図13に示した通り、ヒト表皮角化細胞に対して、終濃度0.1% エチルα-D-グルコシドを供することにより、上記6つの遺伝子の発現量が増加した。なお、結果は示していないが、構造上の類似性から、α-D-グルコピラノシルグリセロール類を用いた場合であっても、上記6つの遺伝子の発現量が高められることが推測される。
【0079】
エチルα-D-グルコシド等の(A)成分が、トランスグルタミナーゼ(TG)の遺伝子発現を増加させることにより、コーニファイドエンベロープの形成や成熟を促進させ、肌のバリア機能や水分保持能の維持又は向上がもたらされる。
【0080】
エチルα-D-グルコシド等の(A)成分が、フィラグリン(FLG)の遺伝子発現を増加させることにより、ケラチンフィラメントの凝集効率が高まり、角質層のバリア機能が強固になる。また、フィラグリンの分解により生じるアミノ酸は天然保湿因子の主成分となることから、皮膚の水分保持能の維持又は向上がもたらされる。
【0081】
エチルα-D-グルコシド等の(A)成分が、クロ―ディン(CLD)の遺伝子発現を増加させることにより、タイトジャンクションストランドが形成され、肌のバリア機能の維持又は向上がもたらされる。
【0082】
エチルα-D-グルコシド等の(A)成分が、上皮成長因子(EGF)の遺伝子発現を増加させることにより、角化細胞の細胞増殖が促され、肌のターンオーバーの正常化又は向上がもたらされる。
【0083】
エチルα-D-グルコシド等の(A)成分が、スフィンゴミエリナーゼ(aSMase)の遺伝子発現を増加させることにより、セラミドの前駆体の一つであるスフィンゴミエリンからセラミドを表皮細胞で産生させ、細胞間脂質の形成を促すことにより肌のバリア機能や水分保持能の維持又は向上がもたらされる。
【0084】
エチルα-D-グルコシド等の(A)成分が、ペルオキシソーム増殖剤応答性受容体β/δ(PPARβ/δ)の遺伝子発現を増加させることにより、ケラチノサイトの増殖や皮膚炎症の改善、及び、肌のバリア機能の維持又は向上がもたらされる。
【0085】
[製造例1]
公知の方法によって製造したエチルα-D-グルコシドを約1質量%含む純米酒をロータリーエバポレーターで約16倍まで濃縮することにより、ブリックス63度(BX63°)、エチルα-D-グルコシド15質量%の濃縮液を得た。このように、公知の濃縮方法を用いることにより、エチルα-D-グルコシドの濃度を高めることが可能であり、上記試験例で示した作用効果を顕著に奏することが可能である。製造例1の濃縮液において、α-GGは約1.5質量%で含有されていた。
【0086】
[製造例2]
製造例1におけるエチルα-D-グルコシド15質量%の濃縮液では、Glc(グルコース)は16.5質量%であり、Glc/αEGの比率は、約1.1となる。限定はされないが、グルコースを除去し、更にロータリーエバポレーターで濃縮することにより、エチルα-D-グルコシドが約30質量%の濃縮液を製造することが可能である。製造例2の濃縮液において、α-GGは約3質量%で含有されていた。
【0087】
[製造例3]
公知の方法によって製造したエチルα-D-グルコシドを約0.3質量%含む純米酒をロータリーエバポレーターで濃縮することにより、エチルα-D-グルコシドが約4質量%の濃縮液を製造した。製造例3の濃縮液において、α-GGは約0.4質量%で含有されていた。
【要約】
【課題】肌の弾力を維持又は向上させることにより、肌に物理的強度を与え、外界に対する抵抗性を保つことに資する組成物及び製剤を提供する。
【解決手段】(A)エチルα-D-グルコシド及びその類縁化合物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有し、該(A)成分の含有量が、0.01~30質量%である、肌の弾力の維持又は向上用組成物を調製する。また、(A)エチルα-D-グルコシド及びその類縁化合物からなる群より選択される少なくとも1種を有効成分として含有する、トランスグルタミナーゼ、フィラグリン、クローディン、EGF、スフィンゴミエリナーゼ、及び、PPARからなる群より選択される少なくとも1種のタンパク質の遺伝子発現促進剤を調製する。
【選択図】図6
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13