(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】凍結米飯の解凍加熱処理容器
(51)【国際特許分類】
A23L 3/365 20060101AFI20230511BHJP
A23L 7/10 20160101ALI20230511BHJP
B65D 81/34 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A23L3/365 A
A23L7/10 E
B65D81/34 U
(21)【出願番号】P 2022021478
(22)【出願日】2022-02-15
【審査請求日】2022-07-04
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】517115167
【氏名又は名称】株式会社銀シャリ亭
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】荒木 雪
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3159788(JP,U)
【文献】特開2021-196111(JP,A)
【文献】特開2016-39864(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L、B65D、A47J
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状米飯を収納する扁平容器と、
上下方向に貫通形成された複数個の孔を有し、扁平容器中に収納して扁平容器の底面との間にしずく貯留空間を形成する多孔中敷板と、
下面に一定密度で針状体を垂設し、上面には扁平容器蓋体との間に一定のしずく貯留空間を形成するための脚体を突設した押圧板と、
よりなることを特徴とする凍結米飯の解凍加熱処理容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、凍結米飯の解凍加熱処理容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、米飯の保存方法として、炊いた後の米飯をタッパーなどの扁平容器に入れたり、食品包装用フィルムに包んで凍結させる方法が採用されている。
【0003】
炊いた米飯を小分けして冷凍保存しておけば食事毎に電子レンジで解凍して食せるため、食事の度に米飯を炊く手間を省くことができる。これにより、米飯の冷凍保存は、特に世帯人数が少ない家庭や単身者に活用されている。
【0004】
しかしながら、炊いた米飯は強い粘着性を有するため、扁平容器や食品包装用フィルムで個包装すれば米飯粒同士が密に引っ付き、塊を形成することとなる。そこで、凍結米飯を解凍すると共に塊を解し食感を向上させる方法が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
確かに、上記先行技術によれば、凍結米飯と、水または蛋白質水溶液とを共存させて凹状容器内で加熱することにより、米飯の塊をほぐして食感に優れた米飯を提供することができる。
【0007】
しかしながら、解凍に伴って米飯から染み出す水分と、添加した水または蛋白質水溶液が凹状容器の底部に溜まり、凹状容器底部に位置する米飯をふやかす問題点があった。
【0008】
本発明は、このような問題点に鑑みてなされたものであり、凍結した米飯の解凍時の米飯塊の形成を防ぐと共に容器底部に位置する米飯のふやけを防ぐ凍結米飯の解凍加熱処理容器を提供せんとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この発明は、板状米飯を収納する扁平容器と、扁平容器中に収納して下方にしずく貯留空間を形成するための多孔中敷板と、下面に一定密度で針状体を垂設し、上面には反転させた場合に扁平容器蓋体との間に一定のしずく貯留空間を形成するための脚体を突設した押圧板と、よりなることを特徴とする凍結米飯の解凍加熱処理容器に係る。
【発明の効果】
【0010】
請求項1の発明によれば、板状米飯を収納する扁平容器と、上下方向に貫通形成された複数個の孔を有し、扁平容器中に収納して扁平容器の底面との間にしずく貯留空間を形成するための多孔中敷板と、下面に一定密度で針状体を垂設し、上面には扁平容器蓋体との間に一定のしずく貯留空間を形成するための脚体を突設した押圧板と、よりなる凍結米飯の解凍加熱処理容器ため、次の作用効果がある。
【0011】
すなわち、請求項1に係る凍結米飯の解凍加熱処理容器によって冷凍保存して、その後解凍する場合には、針状体が板状米飯の所定箇所を貫通しているため、冷凍時に米飯粒同士の密着を防ぎ、全体的に塊の無い柔軟なご飯を解凍加熱することができる。
【0012】
そして、米飯から染み出した水分は扁平容器の底部に位置するしずく貯留空間に溜まることで、米飯と水分との接触を防ぐことができる。
【0013】
次いで、かかる解凍加熱した扁平容器を押圧板の針状体を米飯に突き刺した状態のまま反転して、押圧板は下方に、多孔中敷板は上方に位置した反転状態のまま再度加熱する。この際に、扁平容器に貯留したしずく等の水分は、扁平容器の端部の蒸気穴から排出され、しかも、冷凍米飯の下面にも十分な加熱処理が行われる。次いで、更に扁平容器を反転して当初の容器状態に戻して再々加熱する。
【0014】
これによって、針状体の突き刺さった米飯は、上層、下層およびその中間部分において、針状体の表面や周辺部分を介してマイクロ波が十分に照射され、全体的に十分な加熱が行われ、冷凍米飯の全体が均一にムラの無い解凍加熱がなされ扁平容器の隅々まで伝導熱が行き渡り、偏った固化塊部分を解消することができる。
【0015】
また、凍結米飯の解凍に伴ってしずく貯留空間に溜まった水分は、加熱処理により蒸気となって扁平容器内を循環するが、その際に押圧板の下面に形成された針状体と米飯粒との間に形成された蒸気循環路を通ることで、米飯全体をふっくらとした状態に解凍することができる。
【0016】
しかも、扁平容器内を循環する蒸気が冷えて水滴を形成した場合は、針状体を伝って容器下方のしずく貯留空間へと流れ落ちるため、凍結米飯から染み出る水分のみで米飯全体をふっくらとした状態に解凍することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本実施形態に係る凍結米飯の解凍加熱処理容器の構成を示す斜視図である。
【
図2】本実施形態に係る扁平容器蓋体と扁平容器の構成を示す平面図である。
【
図3】本実施形態に係る押圧板の構成を示す説明図である。
【
図4】本実施形態に係る凍結米飯の解凍加熱処理容器の構成を側面視的に説明する端面図である。
【
図5】本実施形態に係る凍結米飯の解凍加熱処理容器を用いて凍結させた以上米飯を解凍する手順を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の要旨は、板状米飯を収納する扁平容器と、上下方向に貫通形成された複数個の孔を有し、扁平容器中に収納して扁平容器の底面との間にしずく貯留空間を形成するための多孔中敷板と、下面に一定密度で針状体を垂設し、上面には扁平容器蓋体との間に一定のしずく貯留空間を形成するための脚体を突設した押圧板と、よりなることを特徴とする。
【0019】
以下、本実施形態に係る凍結米飯の解凍加熱処理容器に関し、図面に基づき詳細に説明する。
【0020】
本実施形態に係る凍結米飯の解凍加熱処理容器Aは、
図1に示すように、板状米飯Rを収納する扁平容器10と、扁平容器10中に収納して下方にしずく貯留空間40A(
図4(b)を参照)を形成するための多孔中敷板20と、下面30aに一定密度で針状体31を垂設し、上面30bには反転させた場合に扁平容器蓋体11との間に一定のしずく貯留空間40B(
図4(b)を参照)を形成するための脚体32を突設した押圧板30と、よりなることを特徴とする。なお、
図4(a)は凍結米飯の解凍加熱処理容器Aの各構成を分解した状態を側面視的に示した端面図であり、
図4(b)は凍結米飯の解凍加熱処理容器Aの組み立て状態を側面視的に示した端面図である。
【0021】
本実施形態に係る解凍加熱処理容器Aに収納される板状米飯Rは、生米を炊いて糊化させた米飯粒rの集合体であって、調味料等と一緒に炊き上げた状態でもよいし、所謂白米の状態であってもよい。また、生米の種類としては、うるち米やモチ米など自由に一般的に市場で取引されているものを選択することができる。
【0022】
扁平容器10は、
図1および
図2(b)に示すように、上部の開放部12を扁平容器蓋体11で閉めて密閉可能な有底の浅底容器である。扁平容器10の内部収容量としては、特に限定されるものではないが、例えば茶碗1杯分、或いは1食分の板状米飯Rが容易に納まる量(略100mL~300mL)とすることができる。なお、
図2(b)は扁平容器10の平面図を示している。
【0023】
扁平容器10の素材としては、電子レンジでの加熱が可能な素材であれば自由に選択することができ、具体的には、耐熱温度140℃以上とするプラスチック、シリコン、陶器、磁器、耐熱性のあるガラス等を採用することができる。
【0024】
扁平容器蓋体11は、
図1および
図2(a)に示すように、端部に開閉自在の蒸気穴14を備えている。凍結した板状米飯Rを解凍する際に発生する過剰な蒸気は、蒸気穴14から外部へと放出される。また、この蒸気穴14は、解凍加熱処理容器Aを上下反転させて傾けた場合において、水分を同容器Aの外部へと排出する水分排出孔15として機能する。なお、
図2(a)は扁平容器蓋体11の平面図を示している。
【0025】
また、扁平容器10は、
図4(b)に示すように、しずく貯留空間40Aを下方に形成するための多孔中敷板20を収納可能としている。
【0026】
多孔中敷板20は、
図1に示すように、矩形板状の中敷板本体21と、中敷板本体21の周縁部から略下方に向けて延設された支持脚体22と、中敷板本体21の所定箇所に設けられ、上下方向に貫通形成された複数個(本実施形態では6個)の孔23とより構成されている。
【0027】
多孔中敷板20は、板厚方向を上下方向として扁平容器10の底部に収納されることにより、支持脚体22が扁平容器10の底面13と接触して中敷板本体21の位置を規制し、底面13と中敷板本体21との間にしずく貯留空間40Aを形成する。
【0028】
また、孔23によって、多孔中敷板20の上方空間(以下、「米飯収納空間41」とも称します。)としずく貯留空間40Aとを内部連通状態にすることで、米飯収納空間41に収納して凍結された板状米飯Rが解凍される時に滲み出る水分を孔23を介してしずく貯留空間40Aに滴下させることができる。
【0029】
しがたって、孔23の大きさは、蒸気や水滴は通過させるが、米飯粒rは通過させない大きさに構成することが好ましい。例えば、孔23の直径を1mm~4mmとすれば、米飯収納空間41の米飯粒rとしずく貯留空間40Aの水分とが接触しないため、解凍された米飯粒rがふやけることがない。
【0030】
また、多孔中敷板20の素材としては、扁平容器10と同じく電子レンジでの加熱が可能な素材であれば自由に選択することができ、具体的には、耐熱温度140℃以上とするプラスチック、シリコン、陶器、磁器、耐熱性のあるガラス等を採用することができる。
【0031】
押圧板30は、
図1および
図3に示すように、中敷板本体21と略同じサイズに形成された矩形板状の押圧板本体33と、押圧板本体33の下面に一定密度で垂設された複数個(本実施形態では6個)の針状体31と、押圧板本体33の上面に突設した複数個(本実施形態では3個)の脚体32と、より構成されている。なお、
図3(a)は、押圧板30の平面図、
図3(b)は押圧板30の底面図を示している。
【0032】
押圧板本体33には、上下方向に貫通形成された複数個(本実施形態では6個)の孔34が所定箇所に形成されている。孔34の径は、多孔中敷板20の孔23と略同じに構成する。
【0033】
針状体31は、直径0.5mm~2mmの先端先細の針状に形成されている。このような構成の針状体31は、扁平容器10に収納した米飯に押圧板30を突き刺して、米飯粒を潰すことなく米飯粒r、r同士を切離して板状米飯Rを全体的に米飯塊の無い柔軟なものにする。また、板状米飯Rに差し込まれた針状体31は、米飯粒rとの間に蒸気が通過可能な蒸気循環路42や電子レンジにおけるマイクロ派照射空間を形成する。これにより、凍結した板状米飯Rを解凍する際に発生する蒸気が解凍加熱処理容器A内を万遍なく行きわたり、板状米飯Rをふっくらと保湿された状態で解凍することができる。
【0034】
脚体32は、左右方向に長く形成された略板状体で形成されている。脚体32を把持すれば、押圧板30の押圧操作を容易に行うことができる。また、脚体32は、押圧板30を扁平容器10内に収納した状態で解凍加熱処理容器A全体を上下反転させた場合には、脚体32の頂部32aが扁平容器蓋体11に接触することで押圧板本体33の位置を規制する支持脚体35として機能する。これにより、解凍加熱処理容器Aを上下反転させることで、押圧板本体33と扁平容器蓋体11との間にしずく貯留空間40Bが形成される。
【0035】
以下、上述した凍結米飯の解凍加熱処理容器Aを用いて、米飯の凍結方法と、解凍方法を説明する。
【0036】
まず、本実施形態に係る米飯の凍結方法は、多孔中敷板20は扁平容器10の底面13に載置し、多孔中敷板20の上面には炊いた米飯を乗せてた後に均して広げ板状米飯Rを形成し、しかも、その上に更に押圧板30を重ねて針状体31を板状米飯Rに挿入した状態で凍結させる。
【0037】
より具体的には、容量200mlの扁平容器10の底面13に多孔中敷板20を載置し、多孔中敷板20の上面の米飯収納空間41に米飯150gを乗せた後に広げて均し板状米飯Rを形成する。次いで、押圧体30を収納した板状米飯Rに針状体31を貫通させながら押圧する。この際に、多孔中敷板20の孔23と、針状体31とを相対する位置に配置することで、針状体31は孔23を貫通して扁平容器10の底面13に接触することができる。最後に、扁平容器10上方の開放部12を扁平容器蓋体11で閉めて密閉させ、冷凍庫で凍結させる。
【0038】
このように、板状米飯Rに針状体31を貫通させた状態で凍結させることにより、以下の作用効果がある。すなわち、凍結保存する際の板状米飯Rは、容器や包装フィルムに包む際に押圧され、米飯粒r同士が密着し大型の米飯塊を形成する虞がある。しかしながら、板状米飯Rの所定箇所に針状体31を貫通させて凍結すれば、米飯粒r同士の密着を防ぎ、米飯塊の形成を抑えることができる。これにより、茶碗によそった場合に米飯塊が一部に含まれることもなく、よそった米飯を箸で掴む際には米飯の塊部分を気にすることなく、米飯塊を解す煩雑な作業を無くすことができる。
【0039】
次いで、上述した米飯の凍結方法で凍結させた解凍加熱処理容器A中の板状米飯Rを解凍する手順について説明する。
【0040】
本実施形態に係る米飯の解凍方法は、解凍加熱処理容器Aに収納して凍結させた板状米飯Rを電子レンジで解凍する方法であって、
図5に示すように、解凍加熱処理容器Aを電子レンジMの加熱室に載置して板状米飯Rを解凍する第1加熱処理S1と、解凍加熱処理容器Aを上下反転させて載置して板状米飯Rを更に加熱する第2加熱処理S2と、第1加熱処理S1と第2加熱処理S2に伴って発生した蒸気の結露であって、しずく貯留空間40Bに滴下した過剰水分を容器外方へと排出する排水処理S3と、解凍加熱処理容器Aの反転状態を元に戻して更に加熱する第3加熱処理S4と、よりなることを特徴としている。
【0041】
より具体的には、第1加熱処理S1では、凍結した板状米飯Rを収納した解凍加熱処理容器Aを電子レンジMの加熱室に載置する。次いで、500Wで略2分間加熱をし、凍結させた板状米飯Rを解凍する。
【0042】
第1加熱処理S1に伴って凍結米飯Rから滲み出た水分は結露Wとなって、針状体31を伝ってしずく貯留空間40Aへと滴下する。
【0043】
第2加熱処理S2では、第1加熱処理S1が終わった解凍加熱処理容器Aを上下反転させて載置し、更に500Wで略1分間加熱をする。
【0044】
第1加熱処理S1および第2加熱処理S2を通じて発生した過剰な蒸気は、扁平容器蓋体11に設けた蒸気穴14から抜け出すが、一部が解凍加熱処理容器A内に残り結露を形成する。これらの結露Wは、扁平容器10の内壁面や板状米飯Rに貫通させた押圧板30の針状体31を伝って押圧板本体33側へと流れ落ち、孔34や押圧板30の周縁部を介してしずく貯留空間40Bへと滴下する。
【0045】
排水処理S3では、しずく貯留空間40Bに滴下した結露Wを解凍加熱処理容器A外方へと排出する。排出の方法としては、扁平容器蓋体11の端部に設けた水分排出孔15を介して結露Wを取り除く。このように、結露Wが排出されることによって、米飯粒rと水分との接触を防ぎ、米飯粒rのふやけを防ぐことができる。
【0046】
第3加熱処理S4では、排水処理S3が終わった解凍加熱処理容器Aの反転状態を戻して載置し、更に500Wで略1分間加熱をする。
【0047】
第3加熱処理S4の際には、解凍加熱処理容器Aに残った水分が蒸気となって解凍加熱処理容器A内を循環する。蒸気が冷えたり過剰になって発生した結露Wは、針状体31を伝って扁平容器10の底面13に向けて流れ落ち、多孔中敷板20に設けた孔23や扁平容器10の壁面を伝ってしずく貯留空間40Aへと滴下する。
【0048】
そして、しずく貯留空間40Aへと滴下した水分は、電子レンジの加熱で再度蒸気となって孔23から抜け出し、蒸気循環路42を介して解凍加熱処理容器A内を循環する。
【0049】
このように、本発明に係る解凍加熱処理容器Aに収納した凍結させた板状米飯Rを電子レンジで解凍するに際して、通常載置状態での第1加熱処理S1と、反転載置状態での第2加熱処理S2と、過剰な水分を排出する排水処理S3と、通常載置状態での第3加熱処理S4とを順に行うことで、次の作用効果を奏する。
【0050】
すなわち、第1加熱処理S1では凍結させた板状米飯Rを解凍し、解凍加熱処理容器Aを上下反転させて更に加熱(第2加熱処理S2)をすることによって、結露Wが扁平容器蓋体11側に設けたしずく貯留空間40Bに滴下するため、扁平容器蓋体11に設けた水分排出孔15を介しての排水処理S3を容易に行うことができる。排水処理S3をすることによって、解凍加熱処理容器A内の水分が適量に保持される。また、その後の更なる加熱(第3加熱処理S4)では、これらの水分が蒸気となって板状米飯Rを加熱しながら保湿するため、全体的にふっくらした解凍米飯とすることができる。
【0051】
このような処理を経て解凍された解凍加熱処理容器A内の板状米飯Rは、押圧板30を引き抜けば米飯塊が無い状態で露出した状態となっており、これを茶碗に移したり、そのままの状態で食すことができる。
【0052】
以上のように実施形態を用いて説明した凍結米飯の解凍加熱処理容器Aは、上述した実施形態に限定されず、本発明の趣旨に沿う範囲内で種々の態様を採用することができる。
【0053】
例えば、本実施形態では、針状体31の数を6個とし、脚体32の数を3個、多孔中敷板20の孔23及び押圧板30の孔34をそれぞれ6個としているが、当然これらに限定されるものではなく、凍結米飯を十分に解凍し本発明の効果を奏することができる範囲で自由に選択することができる。
【0054】
また、例えば本実施形態では、脚体32の形状は、押圧板30の左右方向に向けて伸ばした略板状体としているが、解凍加熱処理容器Aを上下反転させた際に押圧板30の位置を規制し、押圧板30と扁平容器蓋体11との間にしずく貯留空間40Bを形成できれば自由な形状と配置をすることができる。例えば、脚体32は、平面視で略ロ字状や略X字状に配置されても良い。
【0055】
また、本実施形態に係る解凍加熱処理容器Aでは、押圧板30が板状米飯Rを貫通する状態で凍結させているが、この際に押圧板30と板状米飯Rとの間に空隙部が形成される構成としてもよい。空隙部は、少なくとも米飯粒rの長手方向よりも大きくなるように設けられ、後述するように解凍加熱処理容器Aを反転して加熱解凍した際に米飯粒rが板状米飯Rから離れて押圧板本体33に落下する程度の寸法であれば自由に選択することができる。
【0056】
空隙部を確実に形成するために、扁平容器10の側壁には収納する米飯の量を定める米飯収納ラインを設けることもできる。米飯収納ラインは、押圧板30を扁平容器10内に収納した状態において、押圧板本体33よりも下方に設けられる。これにより、収納される米飯が米飯収納ラインを超えない量であれば空隙部を確実に形成することができる。
【0057】
空隙部を設けることにより、押圧板30と板状米飯Rとが接触しない為、板状米飯Rが押圧されて米飯粒r同士が密着することなく、米飯粒r間に空気の層を含んだ状態で冷凍することができる。これにより、板状米飯Rをふっくらとした状態で解凍することができる。
【0058】
しかも、空隙部を備えた解凍加熱処理容器Aを上下反転させて加熱解凍する場合、すなわち、板状米飯Rの下方に空隙部が位置する状態で加熱解凍する場合、次の作用効果がある。板状米飯Rを構成する米飯粒rは、解凍に伴って解れて空隙部を介して押圧板本体33へと段階的に落下するため、落下した米飯粒r間には空気の層が形成される。また、米飯粒rに付着した結露は、落下する衝撃によって米飯粒rから離反し、しずく貯留空間40Bへと流れ落ちる。これにより、過剰な水分と米飯粒rとの接触を確実に防ぎ、板状米飯Rを全体的にふっくらと良好な水分加減を保持した状態で解凍することができる。
【符号の説明】
【0059】
A 解凍加熱処理容器
10 扁平容器
11 扁平容器蓋体
12 開放部
13 底面
14 蒸気穴
15 水分排出孔
20 多孔中敷板
21 中敷板本体
22 支持脚体
23 孔
30 押圧板
30a 下面
30b 上面
31 針状体
32 脚体
32a 頂部
33 押圧板本体
34 孔
35 支持脚体
40A しずく貯留空間
40B しずく貯留空間
41 米飯収納空間
42 蒸気循環路
R 板状米飯
r 米飯粒
S1 第1加熱処理
S2 第2加熱処理
S3 排水処理
S4 第3加熱処理
M 電子レンジ
【要約】
【課題】凍結米飯の解凍時に米飯塊の形成を防ぐと共に容器底部に位置する米飯のふやけを防ぐ凍結米飯の解凍加熱処理容器を提供する。
【解決手段】凍結米飯の解凍加熱処理容器は、板状米飯を収納する扁平容器と、扁平容器中に収納して下方にしずく貯留空間を形成するための多孔中敷板と、下面に一定密度で針状体を垂設し、上面には反転させた場合に扁平容器蓋体との間に一定のしずく貯留空間を形成するための脚体を突設した押圧板と、よりなることとした。
【選択図】
図1