(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】二次電池容量推定システム
(51)【国際特許分類】
G01R 31/387 20190101AFI20230511BHJP
G01R 31/367 20190101ALI20230511BHJP
G01R 31/382 20190101ALI20230511BHJP
G01R 31/385 20190101ALI20230511BHJP
G01R 31/389 20190101ALI20230511BHJP
H01M 10/48 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G01R31/387
G01R31/367
G01R31/382
G01R31/385
G01R31/389
H01M10/48 P
(21)【出願番号】P 2022053027
(22)【出願日】2022-03-29
【審査請求日】2022-12-06
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】595098011
【氏名又は名称】東洋システム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】弁理士法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宗像 一郎
(72)【発明者】
【氏名】猪狩 俊太郎
(72)【発明者】
【氏名】丹野 諭
(72)【発明者】
【氏名】庄司 秀樹
【審査官】永井 皓喜
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-90346(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198631(WO,A1)
【文献】特開2020-85653(JP,A)
【文献】特開2017-126462(JP,A)
【文献】特開2022-11802(JP,A)
【文献】国際公開第2020/027203(WO,A1)
【文献】特開2018-169161(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01R 31/36
H01M 10/48
H02J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の容量を推定するシステムであって、
前記二次電池の初期状態の容量に比した前記容量の変化の度合いを示す容量指標値の推定対象である対象二次電池の使用履歴を示す情報と、当該対象二次電池の初期状態の内部抵抗値に比した内部抵抗値の増加の度合いを示す抵抗指標値と、からなる対象二次電池情報を取得する対象二次電池情報取得部と、
前記対象二次電池情報に含まれる前記対象二次電池の使用履歴を示す情報と、前記抵抗指標値と、を分類モデルに入力することにより、当該対象二次電池が、使用による前記容量指標値の低下傾向の分類を示す複数の傾向グループのうちいずれに該当するかを決定するグループ決定部と、
前記分類モデルを生成する学習部と、
前記複数の傾向グループそれぞれに対応する、前記二次電池の前記抵抗指標値と前記容量指標値との相関関係を示す相関関係情報を記憶する記憶部と、
前記グループ決定部が決定した、前記対象二次電池が該当する前記傾向グループに対応する前記相関関係情報を取得して、前記対象二次電池情報に含まれる前記抵抗指標値と当該取得した相関関係情報とに基づいて、当該対象二次電池の前記容量指標値を推定する容量推定部と、を備え、
前記分類モデルは、複数のサンプル二次電池それぞれの使用履歴を示す情報と、当該複数のサンプル二次電池の前記抵抗指標値及び前記容量指標値と、からなるサンプル二次電池情報を学習データとして機械学習した学習済みモデルであり、前記対象二次電池の前記対象二次電池情報が入力された際に当該対象二次電池が該当する前記傾向グループを出力するように構成されて
おり、
前記サンプル二次電池情報に含まれる前記使用履歴を示す情報は、前記サンプル二次電池の使用履歴を示す複数の項目に関する情報よりなり、
前記分類モデルは、前記サンプル二次電池の使用履歴を示す前記項目に対する重みづけ値を用いて前記対象二次電池を前記傾向グループに分類するように構成されており、
前記学習部は、前記サンプル二次電池情報を学習データとして機械学習を行って前記項目に対する前記重みづけ値を算出し、
前記重みづけ値が所定以下である前記項目を除外した情報を学習データとして再度の機械学習を行うことにより、前記分類モデルを生成するように構成されている
ことを特徴とする二次電池容量推定システム。
【請求項2】
請求項1に記載の二次電池容量推定システムにおいて、
前記傾向グループに対応する前記相関関係情報それぞれは、前記サンプル二次電池情報を、当該サンプル二次電池情報に含まれる前記複数のサンプル二次電池が該当する前記傾向グループで分類して、各前記傾向グループに該当する当該サンプル二次電池に関する、前記抵抗指標値と前記容量指標値との相関関係を分析することにより得られた情報である
ことを特徴とする二次電池容量推定システム。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の二次電池容量推定システムにおいて、
前記相関関係情報を生成する学習部を備え、当該学習部は、
前記サンプル二次電池情報から、前記容量指標値が所定値以下である前記サンプル二次電池に関する情報を抽出し、
前記抽出された情報を前記容量指標値の低下の度合いの高低に応じた複数の前記傾向グループに分類し、
前記容量指標値の低下の度合いの高低に応じた各前記傾向グループに該当する前記サンプル二次電池に関する、前記抵抗指標値と前記容量指標値との相関関係を分析して、各当該傾向グループに対応する前記相関関係情報を生成するように構成されている
ことを特徴とする二次電池容量推定システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池の容量を推定するシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
二次電池の劣化度評価指標としては容量維持率(初期容量または定格容量に対する現在の容量の割合)や内部抵抗増加率(初期の内部抵抗値に対する現在の内部抵抗値の増加の割合)があるが、SOH(State Of Health)として容量維持率を用いることが一般的である。二次電池の容量維持率を正確に測定するには容量100%まで充電したうえで、再度0%まで放電する必要があるため時間がかかる。そのため、二次電池が搭載されている機器を運用させた状態のままの二次電池で容量維持率を実測するのは難しい。一方、内部抵抗の測定には例えば特許文献1のように、短時間で測定することが可能である。そして容量維持率と内部抵抗増加率との間には相関関係があり、その相関関係を用いて二次電池の内部抵抗増加率からその容量維持率をある程度推定することができる。
【0003】
例えば、特許文献2に記載の技術によれば、二次電池から得られた電流及び電圧の測定値に基づいて二次電池の内部抵抗を算出し、内部抵抗および電池容量の測定結果の相関を分析することにより得られた関係式を用いて、二次電池の電池容量を推定している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】再表2019/187264号報
【文献】特開2018-072346号報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
なお、現実の二次電池はたとえばEV等では二次電池の使用履歴(環境温度、充電回数、急速充電頻度、使用SOC範囲等)が様々である。そして、例えば内部抵抗増加率すなわち初期の内部抵抗値からみた現在の内部抵抗値の増加の割合が同じであっても、二次電池の容量維持率は使用履歴によって大きく異なる場合がある。従って、二次電池の内部抵抗増加率から当該二次電池の容量維持率を推定する際の推定誤差を抑制するためには、二次電池の使用履歴の違いも考慮することが求められる。
【0006】
しかしながら、特許文献2に記載の技術においては、内部抵抗および電池容量の測定結果の相関を分析してその関係式を得ており、当該関係式の導出の際に二次電池の使用履歴を考慮していない。そのため、二次電池の使用履歴が異なることにより生じる、二次電池の内部抵抗に基づく電池容量の推定誤差を抑制することができない。
【0007】
また、二次電池の容量維持率に影響を及ぼす使用履歴には上述の通りさまざまな要素が含まれており、その組み合わせは無数に存在する。そのため、無数に存在する組み合わせすべてに対応した関係式などをあらかじめ用意することは現実的ではない。
【0008】
そこで本発明は、二次電池の使用履歴が異なる場合においても、当該二次電池の内部抵抗の状態からその容量を効率的に推定することができる二次電池容量推定システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の二次電池容量推定システムは、
二次電池の容量を推定するシステムであって、
前記二次電池の初期状態の容量に比した前記容量の変化の度合いを示す容量指標値の推定対象である対象二次電池の使用履歴を示す情報と、当該対象二次電池の初期状態の内部抵抗値に比した内部抵抗値の増加の度合いを示す抵抗指標値と、からなる対象二次電池情報を取得する対象二次電池情報取得部と、
前記対象二次電池情報に含まれる前記対象二次電池の使用履歴を示す情報と、前記抵抗指標値と、を分類モデルに入力することにより、当該対象二次電池が、使用による前記容量指標値の低下傾向の分類を示す複数の傾向グループのうちいずれに該当するかを決定するグループ決定部と、
前記分類モデルを生成する学習部と、
前記複数の傾向グループそれぞれに対応する、前記二次電池の前記抵抗指標値と前記容量指標値との相関関係を示す相関関係情報を記憶する記憶部と、
前記グループ決定部が決定した、前記対象二次電池が該当する前記傾向グループに対応する前記相関関係情報を取得して、前記対象二次電池情報に含まれる前記抵抗指標値と当該取得した相関関係情報とに基づいて、当該対象二次電池の前記容量指標値を推定する容量推定部と、を備え、
前記分類モデルは、複数のサンプル二次電池それぞれの使用履歴を示す情報と、当該複数のサンプル二次電池の前記抵抗指標値及び前記容量指標値と、からなるサンプル二次電池情報を学習データとして機械学習した学習済みモデルであり、前記対象二次電池の前記対象二次電池情報が入力された際に当該対象二次電池が該当する前記傾向グループを出力するように構成されており、
前記サンプル二次電池情報に含まれる前記使用履歴を示す情報は、前記サンプル二次電池の使用履歴を示す複数の項目に関する情報よりなり、
前記分類モデルは、前記サンプル二次電池の使用履歴を示す前記項目に対する重みづけ値を用いて前記対象二次電池を前記傾向グループに分類するように構成されており、
前記学習部は、前記サンプル二次電池情報を学習データとして機械学習を行って前記項目に対する前記重みづけ値を算出し、
前記重みづけ値が所定以下である前記項目を除外した情報を学習データとして再度の機械学習を行うことにより、前記分類モデルを生成するように構成されている
ことを特徴とする。
【0010】
本発明の二次電池容量推定システムによれば、グループ決定部により、対象二次電池の使用履歴及び初期状態の内部抵抗値に比した内部抵抗値の増加の度合いを示す抵抗指標値が、分類モデルに入力されることにより、当該対象二次電池が、使用による容量指標値(二次電池の初期状態の容量に比した容量の変化の度合いを示す値)の低下傾向の分類を示す複数の傾向グループのうちいずれに該当するかが決定される。
【0011】
なお、分類モデルは、複数のサンプル二次電池それぞれの使用履歴と、当該複数のサンプル二次電池の抵抗指標値及び容量指標値とを学習データとして機械学習した学習済みモデルである。
【0012】
また分類モデルは、対象二次電池の使用履歴を示す情報及び、当該対象二次電池の抵抗指標値(すなわち対象二次電池情報)が入力された際に当該対象二次電池が該当する傾向グループを出力するように構成されている。
【0013】
そして、容量推定部により、グループ決定部が決定した、対象二次電池が該当する傾向グループに対応する相関関係情報が取得されて、対象二次電池情報に含まれる抵抗指標値と取得した相関関係情報とに基づいて、当該対象二次電池の容量指標値が推定される。
【0014】
なお、相関関係情報は複数の傾向グループそれぞれに対応する、二次電池の抵抗指標値と容量指標値との相関関係を示す情報である。
【0015】
これにより、二次電池の容量指標値の推定にあたって、抵抗指標値だけでなく、二次電池の使用履歴も考慮するので、二次電池の使用履歴が異なることにより生じる、容量指標値の推定誤差を抑制することができる。
【0016】
また、傾向グループの数に応じた数の相関関係情報を準備すればよいので、二次電池の使用履歴が様々に異なりその組み合わせが無数にある場合においても、その容量指標値を効率的に推定することが可能である。
【0017】
このように本発明によれば、二次電池の使用履歴が異なる場合においても、当該二次電池の内部抵抗の状態からその容量を効率的に推定することができる。
また、分類モデルはサンプル二次電池の使用履歴を示す複数の項目に対する重みづけ値を用いて対象二次電池を前記傾向グループに分類するように構成されている。そして、サンプル二次電池情報を学習データとして機械学習を行って算出した重みづけ値が所定以下の項目を除外した学習データで再度の機械学習を行って分類モデルが生成される。これにより、対象二次電池の傾向グループを決定するために分類モデルに入力すべき情報を、二次電池の使用履歴の情報のうち、傾向グループの決定に影響をもたらす重要度が所定程度高い項目に関する情報に絞ることができるため、少ない情報で傾向グループを決定できるので効率的である。このように本発明によれば、二次電池の使用履歴が異なることにより生じる、容量指標値の推定誤差を効率的に抑制することができる。
【0018】
また、本発明の二次電池容量推定システムにおいて、
前記傾向グループに対応する前記相関関係情報それぞれは、前記サンプル二次電池情報を、当該サンプル二次電池情報に含まれる前記複数のサンプル二次電池が該当する前記傾向グループで分類して、各前記傾向グループに該当する当該サンプル二次電池に関する、前記抵抗指標値と前記容量指標値との相関関係を分析することにより得られた情報である
ことが好ましい。
【0019】
同一の傾向グループに該当するサンプル二次電池の、抵抗指標値と容量指標値との相関関係は近似している蓋然性が高い。そして、当該相関関係が近似しているサンプル二次電池をグループ化して分析して得られた相関関係情報は、実態に即した相関関係情報となる。
【0020】
本発明によれば、傾向グループに対応する相関関係情報それぞれは、サンプル二次電池を傾向グループで分類したうえで、各傾向グループに該当するサンプル二次電池の、抵抗指標値と容量指標値との相関関係を分析することにより得られたものである。
【0021】
従って本発明によれば、実態に即した相関関係情報を対象二次電池の容量指標値の推定に用いるので、効果的に容量指標値の推定誤差を抑制することができる。
【0022】
本発明の二次電池容量推定システムは、
前記相関関係情報を生成する学習部を備え、当該学習部は、
前記サンプル二次電池情報から、前記容量指標値が所定値以下である前記サンプル二次電池に関する情報を抽出し、
前記抽出された情報を前記容量指標値の低下の度合いの高低に応じた複数の前記傾向グループに分類し、
前記容量指標値の低下の度合いの高低に応じた各前記傾向グループに該当する前記サンプル二次電池に関する、前記抵抗指標値と前記容量指標値との相関関係を分析して、各当該傾向グループに対応する前記相関関係情報を生成するように構成されている
ことが好ましい。
【0023】
二次電池の使用に伴って、二次電池の容量指標値の低下が進んでいく。そして、容量指標値の低下がそれほど進んでいない二次電池に比して、容量指標値の低下がある程度進んだ二次電池は、使用による容量指標値の低下傾向が如実に反映されている蓋然性が高い。
【0024】
本発明によれば、学習部によりサンプル二次電池情報から容量指標値が所定値以下に低下したサンプル二次電池に関する情報が抽出されて、当該抽出された情報が容量指標値の低下の度合いの高低に応じた複数の傾向グループに分類される。
【0025】
また学習部により、各傾向グループに該当するサンプル二次電池に関する情報が分析されて、各傾向グループに対応する相関関係情報が生成される。
【0026】
これにより、使用による容量指標値の低下傾向が如実に反映されている蓋然性が高い、容量指標値の低下がある程度進んだ二次電池のサンプル二次電池情報の分析結果に基づいて相関関係情報を生成できる。
【0027】
従って、二次電池の使用履歴が異なることにより生じる、容量指標値の推定誤差を効果的に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】本発明の二次電池容量推定システムの全体像の一例を示すブロック図。
【
図2】本発明の二次電池容量推定システムが処理に用いるデータの内容の一例を示す図。
【
図3】本発明の二次電池容量推定システムの処理に用いるデータの内容の一例を示すイメージ図。
【
図4】本発明の二次電池容量推定システムの処理内容の一例を示すフローチャート。
【
図5】本発明の二次電池容量推定システムの処理内容の一例を示すフローチャート。
【
図6】本発明の二次電池容量推定システムの処理内容の一例を示すイメージ図。
【
図7】本発明の二次電池容量推定システムの処理内容の一例を示すフローチャート。
【
図8】本発明の二次電池容量推定システムの出力内容の一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0034】
<二次電池容量推定システムの構成>
本実施形態の二次電池容量推定システム10は、二次電池の容量を推定するシステムであって、制御部110と、記憶部130と、入力部150と、出力部170と、を含んで構成される、例えばコンピューターである。二次電池容量推定システム10は、例えばパーソナルコンピューター、タブレット、スマートフォンなどの汎用的なコンピューターに実装されてもよく、本発明の実施専用の端末に実装されてもよい。あるいは例えば二次電池の搭載対象が自動車などの移動体であれば、カーナビゲーションシステム等の一機能として実装されてもよい。
【0035】
なお、二次電池の「容量」とは、当該二次電池を満充電したときの放電容量である。
【0036】
制御部110は、CPU(Central Processing Unit)等の演算処理装置、メモリ、及びI/O(Input/Output)デバイスなどにより構成されている、いわゆるプロセッサーである。
【0037】
制御部110は、所定のプログラムを読み込んで実行することにより例えば対象二次電池情報取得部111と、グループ決定部113と、容量推定部115と、学習部117として機能する。
【0038】
対象二次電池情報取得部111は、初期状態の容量に比した前記容量の変化の度合いを示す容量指標値の推定対象である対象二次電池50の使用履歴を示す情報と、対象二次電池50の初期状態の内部抵抗値に比した内部抵抗の増加の度合いを示す抵抗指標値と、からなる対象二次電池情報501を取得する。
【0039】
なお、初期状態の容量とは例えば、二次電池の製造時又は当該二次電池が搭載対象に搭載された時点の容量、あるいは当該二次電池の定格容量である。そして容量指標値は例えば、下記の式1に示すような計算式により、対象二次電池50の使用後の容量を、対象二次電池50の初期状態の容量で除することにより取得される、いわゆるSOHである。
【0040】
容量指標値=Cx/Co x100 [%]・・・(1)
ここで、
Cx=対象二次電池の使用後の容量
Co=対象二次電池の初期状態の容量
である。
【0041】
あるいは容量指標値は例えば、下記の式2に示すような計算式により、対象二次電池50の初期状態の容量からの容量の低下量を、対象二次電池50の初期状態の容量で除することにより取得されてもよい。変数の定義は上記と同様である。
【0042】
容量指標値=(Cx-Co)/Co x100 [%]・・・(2)
【0043】
あるいは容量指標値は、対象二次電池50の容量を例えばAh単位であらわした値であってもよく、初期状態の容量からの差分をAh単位であらわした値であってもよい。
【0044】
また初期状態の内部抵抗値とは、二次電池の製造時又は当該二次電池が搭載対象に搭載された時点の内部抵抗値である。そして、抵抗指標値は例えば、下記の式3に示すような計算式により、対象二次電池50の初期状態の内部抵抗値からの、内部抵抗値の増分を、対象二次電池50の初期状態の内部抵抗値で除することにより取得される。
【0045】
抵抗指標値=(Rx-Ro)/Ro x100 [%]・・・(3)
ここで、
Rx=対象二次電池の使用後の内部抵抗値
Ro=対象二次電池の初期状態の内部抵抗値
である。
【0046】
あるいは抵抗指標値は例えば、下記の式4に示すような計算式により、対象二次電池50の内部抵抗値を、対象二次電池50の初期状態の内部抵抗値で除することにより取得されてもよい。変数の定義は上記と同様である。
【0047】
抵抗指標値=Rx/Ro x100 [%]・・・(4)
【0048】
あるいは抵抗指標値は、対象二次電池50の内部抵抗値を例えばΩ単位であらわした値であってもよく、初期状態の内部抵抗値からの差分をΩ単位であらわした値であってもよい。
【0049】
グループ決定部113は、対象二次電池情報501に含まれる対象二次電池50の使用履歴を示す情報と、抵抗指標値と、を分類モデル131に入力することにより、対象二次電池50が、使用による容量指標値の低下傾向の分類を示す複数の傾向グループのうちいずれに該当するかを決定する。
【0050】
容量推定部115は、グループ決定部113が決定した、対象二次電池50が該当する傾向グループに対応する相関関係情報133を取得して、対象二次電池情報501に含まれる抵抗指標値と当該取得した相関関係情報133とに基づいて、対象二次電池50の容量指標値を推定する。
【0051】
学習部117は、学習対象である複数のサンプル二次電池70(70a、70b、70c…)それぞれの使用履歴を示す情報と、複数のサンプル二次電池70の抵抗指標値及び容量指標値と、からなるサンプル二次電池情報701を学習データとして機械学習した学習済モデルである、分類モデル131を生成する。
【0052】
記憶部130は、例えばROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、HDD(Hard Disk Drive)等の記憶装置により構成されている。記憶部130は、例えば分類モデル131と、相関関係情報133と、のほか、二次電池容量推定システム10の処理結果、二次電池容量推定システム10が処理に用いる情報が記憶されている。
【0053】
分類モデル131は、対象二次電池50の対象二次電池情報が入力された際に対象二次電池50が該当する傾向グループを出力するモデルである。
【0054】
相関関係情報133は、複数の傾向グループそれぞれに対応する、二次電池の容量指標値と抵抗指標値との相関関係を示す情報である。
【0055】
各傾向グループに対応する相関関係情報133それぞれは例えば、サンプル二次電池70を、各サンプル二次電池70が該当する傾向グループで分類した後に、各傾向グループに該当するサンプル二次電池70に関する、抵抗指標値を独立変数として、容量指標値を従属変数として、回帰分析を行ってその相関関係を分析することにより導出された、抵抗指標値と容量指標値との相関関係を表す関係式である。
【0056】
相関関係情報133それぞれは例えば、
図2に示すような、傾向グループ(A、B、C…)ごとのn次の多項式(f(x)、g(x)、h(x)…)である。各傾向グループに対応する関係式をグラフで示すと、例えば
図3のようになる。なお、
図3においては、各関係式を示す曲線が、容量指標値が100%であるとき以外では交わらない実施例を示しているが、後述する学習処理の結果によっては、各関係式を示す曲線が交わる場合もあり得る。
【0057】
入力部150は、対象二次電池情報501、サンプル二次電池情報701のほか、二次電池容量推定システム10の処理に必要な情報の入力を受け付ける。
【0058】
入力部150はその他、ユーザーによる入力を受け付ける例えば、接続端子、キーボード又はタッチパネル、マウスその他のポインティングデバイスを含んで構成されていてよい。
【0059】
出力部170は、二次電池容量推定システム10の操作に必要な情報、処理結果などの情報を操作者に向けて表示する例えばディスプレイ装置であるが、プリンターなどの印刷装置であってもよい。
【0060】
対象二次電池50及びサンプル二次電池70は、例えばハイブリッド自動車(HEV)、プラグインハイブリッド車(PHEV)、バッテリー式電気自動車(BEV)などの、電力を動力源として用いて駆動する移動体、業務用蓄電装置、家庭用蓄電装置、電動の輸送用機器(カート、フォークリフトなど)、パーソナルコンピューター、携帯電話などに搭載されて使用されうる種々のバッテリーであり、例えば鉛蓄電池、ニッカド電池、ニッケル水素電池、リチウム二次電池などの電池である。
【0061】
なお
図1においては、取り外された状態の対象二次電池50及びサンプル二次電池70を図示しているが、対象二次電池50及びサンプル二次電池70の搭載対象に搭載された状態で対象二次電池情報501、サンプル二次電池情報701が取得されてもよい。
【0062】
サンプル二次電池情報701に含まれる「使用履歴を示す情報」は、例えばサンプル二次電池70が放電又は充電を開始したときのSOCを示す情報、充電が急速充電によるものであるか否か、またその頻度を示す情報、サンプル二次電池70の環境温度を示す情報を時系列で記録した情報のうち少なくとも一つ、あるいはこれらの組み合わせである。
【0063】
一般的に、例えばHEVであれば30~70%の範囲で、PHEVであれば20~80%のSOCの範囲でバッテリーを使用するように設計されている。このように、二次電池には適切な稼働SOC範囲が存在しており、当該適切な稼働SOC範囲外で二次電池を稼働させると、正極、負極の材料の膨張などのストレスも大きくなり容量指標値の低下の進行が早まる。
【0064】
反対に、狭いSOC範囲で二次電池を稼働させれば、二次電池にかかるストレスを小さく抑えることができるため、結果的に容量指標値の低下の進行を緩やかに抑えることができる。このように二次電池の容量指標値の低下の進行に大きな影響をもたらす、二次電池がどのようなSOCの範囲で使用されてきたかの情報は、二次電池の容量指標値を推定するうえで重要な情報である。
【0065】
また、二次電池に対する充電を急速充電により行った場合には、通常の充電で充電を行った場合に比べて、二次電池にかかるストレスは高い。従って、二次電池に対して行われた充電が急速充電によるものであるか否か、またその頻度を示す情報は、二次電池の容量指標値を推定するうえで重要な情報である。
【0066】
さらに、例えば寒冷地で稼働を続けること、あるいは温度の高い状態で稼働を続けることは、二次電池にかかるストレスを高め、二次電池の劣化を進行させる要因となる。従って二次電池が稼働していた際の環境温度を示す情報も、二次電池の容量指標値を推定するうえで重要な情報である。
【0067】
サンプル二次電池情報701の「使用履歴を示す情報」として、上記に例示したもののほか、二次電池の容量指標値を推定するうえで重要な情報が適宜に含まれていてよい。
【0068】
また、サンプル二次電池情報701に含まれる抵抗指標値及び容量指標値は、上述した、対象二次電池50の抵抗指標値及び容量指標値の取得方法と同様の手法により取得される。
【0069】
サンプル二次電池情報701は例えば、サンプル二次電池70の搭載対象が備える記憶機構、又はサンプル二次電池70自身が備える記憶機構に記録されている。そして、例えばサンプル二次電池70が搭載されている機器の点検の際などに、点検者によりサンプル二次電池情報701が収集されて外部サーバー90などに蓄積される。あるいはサンプル二次電池情報701は、有線、無線の通信ネットワークNWを介して任意のタイミングで外部サーバー90などに蓄積されてもよい。
【0070】
またサンプル二次電池情報701には、同一のサンプル二次電池70について、複数の異なる時点における、抵抗指標値、容量指標値が含まれうる。この場合にサンプル二次電池情報701には、サンプル二次電池70を特定する情報がさらに含まれていてもよい。
【0071】
<処理の概要>
次に、本実施形態の二次電池容量推定システム10の処理内容について説明する。まず
図4を参照して、二次電池容量推定システム10による一連の処理について説明する。
図4に示すように、本実施形態の二次電池容量推定システム10は、例えば操作者による学習処理の実行指示を受け付けた場合(
図4/S11:Yes)に、対象二次電池の情報が入力された際に当該対象二次電池が該当する傾向グループを出力する分類モデルを生成するとともに各傾向グループに対応する相関関係情報を取得するための学習処理(
図4/S13)を実行する。
【0072】
また本実施形態の二次電池容量推定システム10は、例えば操作者による推定処理の実行指示を受け付けた場合(
図4/S31:Yes)に、対象二次電池の容量指標値を推定する推定処理(
図4/S33)を実行する。
【0073】
なお学習処理(
図4/S13)は例えば、推定処理(
図4/S33)の実行に先立って少なくとも1回実行される。あるいは学習処理(
図4/S13)は、例えば操作者の操作に応じて定期的に又は不定期的に繰り返し実行されてもよい。
【0074】
<学習処理>
次に、
図5を用いて、学習処理について説明する。処理を開始すると、学習部117は、学習対象である複数のサンプル二次電池それぞれの使用履歴を示す情報と、当該複数のサンプル二次電池の抵抗指標値及び容量指標値と、からなるサンプル二次電池情報701を取得する(
図5/S110)。
【0075】
学習部117は例えば、外部サーバー90に一定件数のサンプル二次電池情報701が蓄積された際に、操作者による操作に応じて、外部記憶媒体又は有線、無線の通信ネットワークNWを介して当該サンプル二次電池情報701を取得する。
【0076】
その後、学習部117は取得したサンプル二次電池情報701を機械学習する(
図5/S130)。すなわち例えば学習部117は、サンプル二次電池情報701に含まれる、学習対象である複数のサンプル二次電池70それぞれの使用履歴を示す情報と、当該複数のサンプル二次電池70の抵抗指標値及び容量指標値を学習データとして機械学習する。
【0077】
学習部117は例えば、サンプル二次電池70が放電又は充電を開始したときのSOCを示す情報から、当該サンプル二次電池70の平均使用SOC範囲の情報を取得して、使用履歴を示す情報として上記の機械学習に用いる。
【0078】
すなわち例えば学習部117は、サンプル二次電池70が放電を開始したときのSOCの値を合計し、サンプル二次電池70が放電を行った回数で除することでサンプル二次電池70が放電を開始したときのSOCの平均値(例えば80%)を算出する。
【0079】
同様に学習部117は、サンプル二次電池70が充電を開始したときのSOCの値を合計し、サンプル二次電池70が充電を行った回数で除することでサンプル二次電池70が充電を開始したときのSOCの平均値(例えば20%)を算出する。
【0080】
このようにして取得された平均値の範囲(例えば80%~20%)をサンプル二次電池70の平均使用SOC範囲として取得する。
【0081】
また例えば学習部117は、二次電池に対して行われた充電が急速充電によるものであるか否かを示す情報から、急速充電が行われた回数の情報を取得し、当該取得した情報を、二次電池に対して行われた充電の回数で除することにより、急速充電頻度の情報を算出して使用履歴を示す情報として上記の機械学習に用いる。
【0082】
あるいは例えば学習部117は、サンプル二次電池70が稼働していた際の環境温度を示す情報からその平均値を算出することにより、当該サンプル二次電池70の平均使用環境温度の情報を取得して、使用履歴を示す情報として上記の機械学習に用いる。
【0083】
なお例えば、平均使用SOC範囲、急速充電頻度、又は平均使用環境温度の情報があらかじめサンプル二次電池情報701に含まれている場合には、学習部117がこれらの情報を上記のように算出する処理は省略される。
【0084】
そして学習部117は、当該機械学習の結果に基づいて、対象二次電池50の対象二次電池情報501が入力された際に当該対象二次電池50が該当する傾向グループを出力する分類モデル131を生成(
図5/S150)又は更新して、記憶部130に記憶する。
【0085】
より具体的には、例えば学習部117は、取得したサンプル二次電池情報701を任意の数(本実施形態においては3つ)の傾向グループにクラスタリングする。これにより、容量指標値の低下傾向が類似するサンプル二次電池情報701をグループ化する。
【0086】
サンプル二次電池情報701をクラスタリングするための手法としては、K-maens、Fuzzy c-means、混合ガウスモデルなどのほか、既知のアルゴリズムが適宜に用いられてよい。
【0087】
上記の処理により、サンプル二次電池情報701に含まれるサンプル二次電池情報701の各レコードが該当する傾向グループの情報が得られる。そして学習部117は、このようにして得られた、サンプル二次電池情報701の各レコードが該当する傾向グループの情報と、サンプル二次電池情報701に含まれる、使用履歴を示す情報及び抵抗指標値と、を学習データとして、使用履歴を示す情報及び抵抗指標値と、傾向グループとの対応関係を機械学習して、分類モデル131を生成する。
【0088】
学習部117が生成する分類モデル131としては、例えば畳み込みニューラルネットワーク(Convolurional Neural Network(CNN))が用いられるほか、線形回帰モデル、多項式回帰モデル、重回帰モデルなどの任意のモデルが適宜に用いられてよい。
【0089】
図6は、そのようにして生成された分類モデル131の一例を示した図である。
図6に示す通り分類モデル131は例えば、対象二次電池50の使用履歴を示す情報、対象二次電池50の抵抗指標値の情報などを入力として、容量指標値の低下傾向の分類を示す複数の傾向グループのうち当該対象二次電池50が該当する傾向グループを出力とする、ニューラルネットワークである。分類モデル131は例えば、各傾向グループに該当する確率の値を出力するように構成される。なお
図6においては、傾向グループが、上述したA、B、Cの3つである場合を示しているが、傾向グループの個数は、2以上の任意の個数であればよい。
【0090】
続いて学習部117は、各傾向グループに対応する相関関係情報133を生成し(
図5/S170)、記憶部130に記憶する。
【0091】
より具体的には学習部117は例えば、サンプル二次電池情報701から、各傾向グループに該当するレコードを抽出して、当該抽出したレコードについて、抵抗指標値と容量指標値との相関関係を分析することにより、各傾向グループに対応する相関関係情報133を生成する。すなわち本実施形態において学習部117は、A、B、Cの各傾向グループに該当する、3つの相関関係情報133を生成する。
【0092】
このようにして学習部117は、学習処理における一連の処理を終了する。
【0093】
<推定処理>
処理を開始するとまず対象二次電池情報取得部111は、容量指標値の推定対象である対象二次電池50の使用履歴を示す情報と、当該対象二次電池の初期状態の内部抵抗値に比した内部抵抗値の増加の度合いを示す抵抗指標値と、からなる対象二次電池情報501を取得する(
図7/310)。
【0094】
対象二次電池情報501は例えば、対象二次電池50の搭載対象が備える記憶機構、又は対象二次電池50自身が備える記憶機構に記録されている。そして、対象二次電池情報取得部111は、例えば対象二次電池50が搭載されている機器の点検の際などに、点検者の操作に応じて対象二次電池情報501を取得する。あるいは対象二次電池情報取得部111は、対象二次電池情報501を、有線、無線の通信ネットワークNWを介して任意のタイミングで取得するように構成されていてもよい。
【0095】
対象二次電池情報501に含まれる「使用履歴を示す情報」は、例えば対象二次電池50が放電又は充電を開始したときのSOCを示す情報、充電が急速充電によるものであるか否かを示す情報、対象二次電池50の環境温度を示す情報を時系列で記録した情報のうち少なくとも一つ、あるいはこれらの組み合わせであり、学習部117が学習処理(
図4/S13)で用いた、サンプル二次電池情報701に含まれる「使用履歴を示す情報」と同種の情報である。
【0096】
従って、サンプル二次電池情報701の「使用履歴を示す情報」として、上記に例示したもののほか、二次電池の容量指標値を推定するうえで重要な情報が含まれている場合には、当該情報が対象二次電池情報501に含まれてよい。
【0097】
なお、学習部117による機械学習における使用履歴を示す情報として、サンプル二次電池70の平均使用SOC範囲の情報、急速充電頻度の情報、平均使用環境温度の情報が用いられている場合には、対象二次電池情報取得部111は、学習部117がサンプル二次電池情報701からこれらの情報を取得するのと同様の手法により、対象二次電池情報501から、対象二次電池50に関するこれらの情報を取得する。取得されたこれらの情報は、対象二次電池50の使用履歴を示す情報として、後続の処理において用いられる。
【0098】
その後にグループ決定部113は、対象二次電池情報501に含まれる対象二次電池50の使用履歴を示す情報と、抵抗指標値と、を記憶部130に記憶された分類モデル131に入力することにより、当該対象二次電池50が、使用による容量指標値の低下傾向の分類を示す複数の傾向グループのうちいずれに該当するかを決定する(
図7/S330)。
【0099】
より具体的にはグループ決定部113は例えば、分類モデル131の出力結果を参照して、対象二次電池50が該当する確率が最も高い傾向グループを、当該対象二次電池50が該当する傾向グループであると決定する。以下においては、対象二次電池50が該当する傾向グループがCグループであった場合について説明する。
【0100】
その後、容量推定部115は、上記において決定された傾向グループに対応する相関関係情報133を取得する(
図7/S350)。すなわち容量推定部115は、Cグループに対応する相関関係情報133を記憶部130から取得する。
【0101】
そして容量推定部115は、対象二次電池情報501に含まれる抵抗指標値と当該取得した相関関係情報133とに基づいて、対象二次電池50の容量指標値を推定する(
図7/S370)。
【0102】
すなわち例えば容量推定部115は、
図2に示すような多項式h(x)に、xの値として対象二次電池情報501に含まれる内部抵抗値増加情報を入力した結果得られた計算結果が、対象二次電池50の容量指標値であると推定する。
【0103】
その後、容量推定部115は例えば、当該推定結果を出力部170に出力して(
図7/S390)、推定処理の一連の処理を終了する。
【0104】
図8は、本実施形態の推定結果を出力内容の一例を示している。出力内容には例えば、対象二次電池50の容量指標値を示す表示171として、二次電池の容量指標値の推定結果が63%であったことが出力される。当該表示はすなわち、対象二次電池50の初期状態の容量に対する現在の容量の割合を示している。
【0105】
あるいは例えば当該表示に加えて、対象二次電池50の抵抗指標値を示す表示173、抵抗指標値と容量指標値との相関関係を示すグラフ175が出力内容に含まれていてもよい。あるいはさらに、容量指標値の推定に用いられた、平均使用SOC範囲、充足充電頻度、平均使用環境温度などを示す情報が含まれてもよい。
【0106】
以上本実施形態の二次電池容量推定システムについて説明したが、本発明の実施形態はこれに限定されない。以下において、その他の実施形態について説明する。
【0107】
<変更実施形態>
上記においては、学習処理において学習部117がクラスタリングによりサンプル二次電池情報701をグループ化する場合について説明したが、これに限定されない。
【0108】
すなわち例えば学習部117は学習処理(
図4/S13)において、以下のような流れでサンプル二次電池情報701のグループ化及びその後の処理を行うように構成されていてもよい。
【0109】
まず学習部117は、サンプル二次電池情報701から、容量指標値が所定値以下に低下しているサンプル二次電池70に関する情報を抽出する。「容量指標値が所定値以下に低下している」とは、例えば容量指標値が60%以下に低下している状態、50%以下に低下している状態などであるが、所定値としては適宜の値が採用されてよい。あるいは例えば、サンプル二次電池情報701に情報が含まれるサンプル二次電池70の容量指標値の平均値以下の容量指標値であるサンプル二次電池70に関する情報が抽出されるように構成されていてもよい。
【0110】
続いて学習部117は、上記のようにして抽出されたサンプル二次電池70に関する情報を、容量指標値の低下の度合いの高低に応じた複数の傾向グループに分類して、当該傾向グループを示す情報で各レコードにラベル付けを行う。
【0111】
学習部117が分類する傾向グループの数は、例えば、A:容量指標値の低下が緩やか、B:容量指標値の低下が中程度、C:容量指標値の低下が速い、の3つであるが、2つ以上の任意の傾向グループに分類するように構成されてよい。
【0112】
この場合に学習部117は、上記のようにして分類されたサンプル二次電池70それぞれのサンプル二次電池情報701と、該当する傾向グループを示す情報と、を学習データとして機械学習して、当該機械学習の結果に基づいて、分類モデル131を生成又は更新して、記憶部130に記憶する。
【0113】
その後に学習部117は、容量指標値の低下の度合いの高低に応じた各傾向グループに該当するサンプル二次電池70に関する、抵抗指標値と容量指標値との相関関係を分析して、各傾向グループに対応する相関関係情報133を生成する。
【0114】
より具体的には例えば学習部117はまず、容量指標値が所定値以下に低下しておりかつ、傾向グループAに該当するサンプル二次電池70に関する、抵抗指標値と容量指標値とを、サンプル二次電池情報701から抽出する。なおこのとき学習部117は、抽出条件に該当する全レコードをサンプル二次電池情報701から抽出してもよいし、所定のアルゴリズム等により、又は操作者の操作に基づいて、抽出条件に該当するレコードの一部を抽出してもよい。
【0115】
そして学習部117は、このようにして抽出されたレコードを用いてサンプル二次電池70に関する、抵抗指標値と容量指標値との相関関係を分析して、傾向グループAに対応する相関関係情報133を生成する。
【0116】
学習部117はこれらの処理を最後の傾向グループまで繰り返して実行して、各傾向グループに対応する相関関係情報133を生成する。
【0117】
このような構成とした場合に、二次電池容量推定システム10による出力内容には、例えば二次電池の傾向グループがいずれであるか及びその内容を示す情報(例えば「A:容量の低下が緩やかです。」など。)がさらに含まれていてもよい。
【0118】
二次電池の買い替えには費用がかかるので、二次電池のユーザーは、使用中の二次電池の容量指標値の低下を可能な限り進めさせずに、長い期間使用したいというニーズを持っている。そのため上記のように、二次電池の使用状態が、二次電池の容量指標値の低下を進めるような使い方であるのか、容量指標値への影響の少ない使い方であるのかをユーザーに知らせることができれば、使用中の二次電池の容量指標値の低下を可能な限り進めさせずに、長い期間使用したいというユーザーのニーズにこたえることができる。
【0119】
あるいは例えば学習部117は学習処理(
図4/S13)において、以下のような流れで分類モデル131を生成するように構成されていてもよい。
【0120】
すなわち例えば学習部117は、サンプル二次電池70の平均使用SOC範囲、急速充電頻度、平均使用環境温度等の各項目を含む学習データを機械学習して、これらの各項目に対する重みづけ値を算出する。
【0121】
そして学習部117は、このようにして算出された重みづけ値が所定以下である項目を除外した情報を学習データとして再度の機械学習を行うことにより、分類モデル131を生成する。
【0122】
なお項目の除外要否を判定するための重みづけ値の所定値としては、任意の値が適宜に設定されてよい。あるいは例えば学習部117は、全項目の重みづけ値の平均値の所定%以下の重みづけ値である項目を再度の機械学習の際の学習データから除外するように構成されていてもよい。
【0123】
以上本発明の二次電池容量推定システム10の変更実施形態について説明したが、これに限定されない。すなわち例えば上記においては、学習部117が二次電池容量推定システム10に実装されている実施形態について説明したが、学習部117は二次電池容量推定システム10と異なるコンピューターに実装されていてもよい。この場合、当該異なるコンピューターおいて学習処理(
図4/S13)が実行されて、分類モデル131が生成される。そして当該生成された分類モデル131が、通信媒体又は記録媒体等を介して二次電池容量推定システム10の記憶部130に記憶される。
【0124】
あるいは例えば、上記においてはサンプル二次電池70の搭載対象が備える記憶機構、又はサンプル二次電池70自身が備える記憶機構に、サンプル二次電池70の抵抗指標値を含むサンプル二次電池情報701が記憶されている実施例について説明したが、これに限定されない。
【0125】
すなわち例えば、サンプル二次電池70の搭載対象が備える記憶機構、又はサンプル二次電池70自身が備える記憶機構に、サンプル二次電池70の内部抵抗値が記録されており、外部サーバー90に当該サンプル二次電池70と同一の型番の二次電池の初期状態の内部抵抗値が記録されており、外部サーバー90において、サンプル二次電池70の内部抵抗値の増分を当該サンプル二次電池70と同一の型番の二次電池の初期状態の内部抵抗値で除することにより、当該サンプル二次電池70の抵抗指標値が取得されてもよい。この場合にサンプル二次電池情報701には、サンプル二次電池70の型番を示す情報が含まれる。
【0126】
同様に、上記においては対象二次電池50の搭載対象が備える記憶機構、又は対象二次電池50自身が備える記憶機構に、対象二次電池50の抵抗指標値を含む対象二次電池情報501が記憶されている実施例について説明したが、これに限定されない。
【0127】
すなわち例えば、対象二次電池50の搭載対象が備える記憶機構、又は対象二次電池50自身が備える記憶機構に、対象二次電池50の内部抵抗値が記録されており、二次電池容量推定システム10の記憶部130に当該対象二次電池50と同一の型番の二次電池の初期状態の内部抵抗値が記録されており、対象二次電池情報取得部111が、対象二次電池50の内部抵抗値の増分を当該対象二次電池50と同一の型番の二次電池の初期状態の内部抵抗値で除することにより、当該対象二次電池50の抵抗指標値が取得されてもよい。この場合に対象二次電池情報501には、対象二次電池50の型番を示す情報が含まれる。
【0128】
あるいは例えばグループ決定部113は、対象二次電池50が該当する確率が最も高い傾向グループが2つ以上あることを認識した場合には、これら2つ以上の傾向グループを、当該対象二次電池50が該当する傾向グループとして決定してもよい。この場合、容量推定部115は例えば、上記において決定された複数の傾向グループに対応する相関関係情報133を取得して、それぞれのグループに該当するとした場合の容量指標値を推定する。そして容量推定部115はこれらの推定値の平均値を当該対象二次電池50の容量指標値の推定値とする。あるいは容量推定部115はこれらの推定値の最大値と最小値が示す範囲を当該対象二次電池50の容量指標値の範囲として推定するように構成されていてもよい。
【0129】
また上記においては、学習部117が取得したサンプル二次電池情報701を任意の数の傾向グループにクラスタリング又は分類する実施形態について説明したが、これに限定されない。
【0130】
すなわち例えば、学習部117が取得するサンプル二次電池情報701はあらかじめ傾向グループでグループ化されていてもよい。この場合、学習部117がサンプル二次電池情報701を傾向グループにクラスタリング又は分類する処理は省略される。
【符号の説明】
【0131】
10…二次電池容量推定システム、50…対象二次電池、70…サンプル二次電池、110…制御部、111…対象二次電池情報取得部、113…グループ決定部、115…容量推定部、117…学習部、130…記憶部、131…分類モデル、133…相関関係情報、150…入力部、170…出力部。
【要約】
【課題】二次電池の使用履歴が異なる場合においても、当該二次電池の内部抵抗の状態からその容量を効率的に推定することができる二次電池容量推定システムを提供する。
【解決手段】 二次電池の容量を推定するシステムであって、対象二次電池情報を取得する対象二次電池情報取得部と、対象二次電池情報に含まれる対象二次電池の使用履歴と、内部抵抗値増加情報と、を分類モデルに入力することにより、対象二次電池の傾向グループを決定するグループ決定部と、対象二次電池情報と傾向グループに対応する相関関係情報とに基づいて、対象二次電池の容量指標値を推定する容量推定部とを備える。
分類モデルは、サンプル二次電池情報を学習データとして機械学習した学習済みモデルであり、対象二次電池情報が入力された際に対象二次電池が該当する傾向グループを出力するように構成される。
【選択図】
図1