(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】映像データ識別回路及びパネルシステムコントローラ
(51)【国際特許分類】
G09G 3/36 20060101AFI20230511BHJP
G09G 3/20 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G09G3/36
G09G3/20 611A
G09G3/20 611J
G09G3/20 612K
G09G3/20 612T
G09G3/20 612U
G09G3/20 621F
G09G3/20 621M
G09G3/20 623B
G09G3/20 623D
G09G3/20 623R
G09G3/20 623V
G09G3/20 623Y
G09G3/20 631B
G09G3/20 631H
G09G3/20 641C
G09G3/20 642P
G09G3/20 680G
(21)【出願番号】P 2022210878
(22)【出願日】2022-12-27
【審査請求日】2022-12-28
(31)【優先権主張番号】P 2022072775
(32)【優先日】2022-04-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】513043020
【氏名又は名称】株式会社セレブレクス
(74)【代理人】
【識別番号】100116850
【氏名又は名称】廣瀬 隆行
(74)【代理人】
【識別番号】100165847
【氏名又は名称】関 大祐
(72)【発明者】
【氏名】長野 英生
(72)【発明者】
【氏名】山野 要
(72)【発明者】
【氏名】友國 哲男
(72)【発明者】
【氏名】牧野 努
【審査官】塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-078216(JP,A)
【文献】特開2015-102594(JP,A)
【文献】特開2016-177107(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2021/0174722(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0388220(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2020/0320953(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09G 3/20-3/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
映像データ受信回路から出力された映像データを識別してソースドライバの駆動電流を制御する映像データ識別回路であって、
前記映像データ受信回路から出力された前記映像データのうち、現行の水平ラインの映像データと、前記現行の水平ラインの前のn水平ライン分(nは2以上の整数、以下同じ)の映像データとを保持するメモリと、
前記現行の水平ラインの映像データとその直前の水平ラインの映像データを比較して一致しているか否かを判定するとともに、それらが一致していない場合には前記メモリに記憶されている前記現行の水平ラインの前のn水平ライン分の映像データのパターンを読み出す画像パターン検出回路と、
前記画像パターン検出回路によって前記メモリから読み出された前記n水平ライン分の映像データのパターンに基づいて前記現行の水平ラインを駆動するための前記ソースドライバの駆動電流を設定し、その設定値を前記ソースドライバに出力する駆動電流設定回路を備える
映像データ識別回路。
【請求項2】
前記画像パターン検出回路は、
前記現行の水平ラインの一部である特定部分の映像データとその直前の水平ラインの前記特定部分に対応する部分の映像データを比較して一致しているか否かを判定するとともに、
それらが一致していない場合には、前記メモリに記憶されている前記現行の水平ラインの前のn水平ライン分の映像データのうち、前記特定部分に対応する部分の映像データのパターンを読み出し、
前記駆動電流設定回路は、
前記画像パターン検出回路によって前記メモリから読み出された前記n水平ライン分の前記特定部分に対応する部分の映像データのパターンに基づいて、前記現行の水平ラインの前記特定部分を駆動するための前記ソースドライバの駆動電流を設定する
請求項1に記載の映像データ識別回路。
【請求項3】
請求項1に記載の映像データ識別回路と、
映像データを受信して当該映像データを前記映像データ識別回路に出力する映像データ受信回路と、
前記映像データ識別回路によって設定された駆動電流で駆動し、前記映像データをディスプレイパネルのソースラインに対して所定の電圧レベルで出力する複数の出力チャンネルを有するソースドライバを備える
パネルシステムコントローラ。
【請求項4】
前記映像データ識別回路及び前記ソースドライバが一体化された1チップの半導体装置で構成されている
請求項3に記載のパネルシステムコントローラ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスプレイパネルのアナログ映像データを出力するパネルシステムコントローラやそれに含まれる映像データ識別回路に関する。具体的に説明すると、本発明は、ソースドライバの駆動電圧の誤差を最小化する回路技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ノートパソコンやタブレットパソコンなどのモバイル機器市場では、消費電力低減とコスト低減が常に求められている。一方で、パネルの解像度向上やディスプレイの画質向上に伴い、データ処理量及び動作周波数は増加の一途をたどり、消費電力低減とコスト低減は相反する大きな課題になっている。ノートパソコンやタブレットパソコンにおけるディスプレイパネルへの描画データの信号を入力する回路は、描画データ自身の演算や各種演算処理やグラフィクス処理を担当するCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)などのプロセッサと、このプロセッサから送られる描画データを入力としディスプレイパネルのタイミングコントロールや画像処理を行うタイミングコントローラ(Timing Controller:TCON)と、タイミングコントローラからの描画データを入力としディスプレイパネルの仕様に合わせて描画データをアナログ出力するソースドライバ(Source Driver:SD)などのドライバチップとによって構成される。
【0003】
ノートパソコンやタブレットパソコンなどのモバイル機器では、タイミングコントローラとソースドライバが分離されている場合が多い。例えば、
図1に示すFHD(Full High Definition:1920×1080ピクセル)ディスプレイパネルの場合、タイミングコントローラ1つと4つのソースドライバが必要になる場合が多い。また、4K2Kパネル(4000×2000ピクセルに近い解像度のパネル)の場合、タイミングコントローラ1つと8つのソースドライバが必要になる場合が多い。さらに、
図1に示したように、タイミングコントローラとソースドライバを接続するFPC(Flexible Printed Cable)がソースドライバの個数分必要になり、パネルの解像度が高くなるに伴い部品点数が増加しコストアップの要因となっていた。さらに、タイミングコントローラとソースドライバ間にインタフェースを設ける必要があるが、このインタフェースによって電力が消費されてしまう。このような背景から、
図1に示した回路構成では、コスト削減及び消費電力削減が困難な状況であった。
【0004】
そこで、部品点数と消費電力を削減するために、
図2及び
図3示すようなタイミングコントローラとソースドライバが1チップになった、いわゆるシステムドライバ(TCON+SD)も検討することができる。
図2はシステムドライバが2つ設けられた構成を示し、
図3はシステムドライバが1つに集積された構成を示している。システムドライバ化することで、部品点数が少なくなりコスト低減が可能になる。さらに、タイミングコントローラとソースドライバ間のインタフェースがなくなるため、消費電力の低減も可能になる。特に、部品点数と消費電力の低減の観点から、
図3に示すように、システムドライバは一つのみであることが好ましいといえる。しかし、システムドライバは、従前のソースドライバと同様に、液晶パネルのガラス上に実装される。描画データは、プロセッサ(CPU/GPU)からシステムドライバに直接eDPインタフェースあるいはMIPIインタフェースを介してシステムドライバに入力される。
【0005】
ここで、液晶パネルは、ソースラインとゲートラインで構成される。FHDパネルの場合、ソースラインは1920×3(RGB)ライン必要となり、ゲートラインは1080ライン必要となる。ソースラインは、描画データをソースドライバからアナログ出力するライン(データライン)であり、所定の間隔を空けて互いに平行に配線されている。ゲートラインは、1ゲートラインずつ時間的にシフトしながらソースラインの描画データを駆動していく制御線であり、ソースラインと直交する方向に所定の間隔を空けて互いに平行に配線されている。ゲートラインとソースラインとの各交差点には、表示画素(ピクセル)が設けられている。また、現在では、ソースドライバやシステムドライバが液晶ガラス上に実装される方式、いわゆるCOG(Chip On the Glass)方式が主流である。
【0006】
図4に示すように、額縁領域に4つのソースドライバが配置され、これらの4つのソースドライバからディスプレイパネル上のソースラインに映像データを出力する構成の場合、1つのソースドライバの駆動に必要なCOGの配線負荷は小さくてすみ、かつ、最長のソースラインと最短のソースラインの配線長の差も小さくてすむ。しかし、
図5に示すように、額縁領域にソースドライバとタイミングコントローラからなるシステムドライバが1つのみ配置され、1つのソースドライバからディスプレイパネル上のソースライン全てに映像データを出力する構成の場合、ドライバ出力の駆動に必要なCOGの配線負荷は各段に大きくなり、かつ、最長のソースラインと最短のソースラインの配線長の差も大きくなる。液晶パネル等のディスプレイパネルは、ソースドライバが出力する映像データのアナログ電圧の電圧レベル(電位)により映像の輝度を調整している。このため、ソースドライバの出力電圧が正しく期待値電圧レベルまで到達しないと、パネルの一部に暗所が発生するなどの表示上の問題が生じてしまう。
【0007】
液晶パネルのソースラインの配線負荷のモデルを
図6に示す。液晶パネルは、ソースドライバが実装される領域であるファンアウト領域(Fan out Area)(額縁領域に対応)と、液晶のピクセルがアレイ状に配列されているアクティブ領域(Active Area)に分かれる。
図4に示したようにソースドライバが多数実装されている場合、1つのソースドライバが駆動するファンアウト領域の負荷は小さいが、
図5に示した1チップ構成の場合やパネルのサイズが大きくなると負荷は大きくなる。ソースドライバは、このようなパネルの負荷を受けながら駆動して映像をディスプレイに表示することが求められる。
【0008】
次に、
図7に液晶パネルの1ソースラインの駆動タイミングを示す。負荷が小さいソースライン(COG配線長が短いライン)は、期待値電圧レベルに早く到達するものの、負荷が大きいライン(COG配線長が長いライン)は、期待値電圧レベルに到達するのが遅い。FHDパネルの場合、1水平ライン分の時間は7.5μs(Dual Gate Panelの場合)であるため、この時間内に期待値電圧レベルに到達する必要がある。しかし、
図5に示したような1チップ構成の場合やパネルサイズが大きい場合には、配線負荷がより大きくなるため、この駆動時間内に期待値電圧レベルに到達できない可能性がある。
【0009】
また、
図8にソースドライバの駆動電流(駆動能力)の大小によるソースラインの駆動タイミングを示す。ソースドライバの駆動電流が大きい場合は、期待値電圧レベルに早く到達するものの、駆動電流が小さい場合は、期待値電圧レベルに到達するのが遅い。このことは、期待電圧レベルに到達しない場合は表示画質に影響を及ぼすことになる。
図7に示したCOG配線長に差がある場合と同様である。さらに、駆動電流が大きいとパネルの消費電力が大きくなり、駆動電流が小さいとパネルの消費電力が小さくなる。
【0010】
このように、パネルサイズが大きくなると、ソースラインに対するパネルからの負荷が大きくなり、ソースドライバがソースラインを所定時間内に期待値電圧レベルまで駆動できないことがある。また、パネルの解像度が上がると、1ソースラインを駆動するための時間は短くなるため、パネルのソースラインの負荷容量が同じでも、ソースドライバがソースラインを期待値電圧レベルまで駆動できないことがある。さらに、タイミングコントローラとソースドライバが1チップになった構成では、駆動する必要のあるパネルのソースラインの負荷容量は大きくなり、ソースドライバがソースラインを期待値電圧レベルまで駆動できないことがある。前述のように、液晶パネル等のディスプレイパネルは、ソースドライバが出力する画像データのアナログ電圧の電圧レベルにより映像の輝度を調整しているため、ソースドライバの出力電圧が正しく期待値電圧レベルまで到達しないと表示画質に問題が生じてしまう。また、同様の理由から、ソースドライバの駆動電流(駆動能力)が小さい場合は表示画質に問題が生じてしまう。
【0011】
ノートパソコンやスマートフォンではパネルシステムの低消費電力化は重要な差別化指標となっている。このような課題に対して、ソースドライバにおいては、物理的に配線負荷の大きいソースラインに合わせて、ソースドライバ全体の駆動電流をあらかじめ大きくし、1水平ライン以内に期待値電圧レベルまで充電できるようにしておくことができる。物理的に配線負荷の大きいソースラインの例は、前述したようにCOG配線長が長いラインである。しかし、その場合、ソースドライバの駆動電流が大きくなることから、パネルの消費電力が大きくなってしまう。また、別の対策としては、パネル負荷の大きなソースラインはあらかじめ駆動電流を大きく設定しておき、パネル負荷の小さなソースラインは駆動電流をあらかじめ小さく設定することも考えられる。このように、パネル負荷に応じてソースラインごとに駆動電流を調整し、その駆動電流の設定を固定しておくことで、ある程度のパネルシステムの消費電力の適正化を行うことはできる。
【0012】
また、本願出願人は、ソースドライバの駆動電圧の誤差を最小化する回路技術を提案している(特許文献1)。特許文献1に記載されたデータ出力装置は、ディスプレイパネルの複数のソースラインを駆動するソースドライバと、期待値電圧レベルを超えた電圧レベルで所定時間ソースラインをオーバドライブするようにソースドライバを制御するオーバドライブ制御部を備える。オーバドライブ制御部は、現行の水平ラインとそれ以前の水平ラインの画像データの電圧レベルの差に応じて、オーバドライブ電圧及びオーバドライブ時間の両方又はいずれか一方が設定されたオーバドライブ設定テーブルと、このオーバドライブ設定テーブルに基づいて、現行の水平ラインを駆動するソースラインのオーバドライブ電圧及びオーバドライブ時間を制御するオーバドライブ設定制御回路を有する。このようにオーバドライブの設定電圧及び設定時間を適切に調整にすることで、液晶パネルの画質向上を実現できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
ところで、ディスプレイの画像パターンは、水平ラインごとにハイレベルかローレベルに遷移を繰り返すわけではなく、連続する水平ラインが続けて同じ電圧レベルである場合も多い。前述したように、これまでの技術では、ソースドライバは、パネル負荷の大きいソースラインでは駆動電流を大きく設定し、パネル負荷が小さいソースラインでは駆動電流を小さくすることは実施していた。しかし、同一の水平ラインにおいて、画像パターンを識別して、動的にソースドライバの駆動電流を変化させることは困難であった。これは、従来のノートパソコンのパネル構成は
図1に示すようなTCONとソースドライバが別チップにて構成されており、TCONでは入力パターン検出機能を有することができるものの、実際のソースラインを駆動するのはソースドライバICと別チップになっていたため、フレキシブルにソースドライバの駆動電流の制御が困難であったことが主な原因である。画像パターンに応じて、ソースドライバの駆動電流を動的に最適化できれば、パネルシステムの低消費電力化に大きく寄与することができる。
【0015】
なお、特許文献1にデータ出力装置のように、1水平ライン分の時間以内で、ある一定時間、期待値電圧レベルを超える電圧(オーバドライブ電圧)を動的に設定することで、立ち上がりを急峻にすることができ、期待値電圧レベルに到達する時間を早くすることができる。ソースドライバをオーバドライブ電圧で制御するには、ソースドライバの駆動電流を急激に大きくする必要があり、それにと伴って電力消費量が多くなるという課題がある。また、例えば連続する水平ラインにおいて電圧レベルが最大値から最小値まで変化するといったように、電圧レベルの変化量が大きい場合にオーバドライブ電圧にてソースドライバを制御することは、液晶パネルの画質向上の面では有効であるものの、連続する水平ラインにおいて電圧レベルに差が生じない場合のことは特許文献1では未検討である。特に、ノートパソコンやタブレットパソコンの用途においては、連続する水平ラインにおいて電圧レベルに差が生じない場合が多く、このようなケースおいて、電力消費を抑えることは、特許文献1にデータ出力装置では達成することができず、この点が課題として残っていた。さらに液晶パネルにおいて、全ソースドライバのチャンネルが連続する水平ラインにおいて電圧レベルに差が生じない場合のみならず、一部のソースドライバのチャンネルが連続する水平ラインにおいて電圧レベルに差が生じない場合に電力消費を抑えることは特許文献1では未検討である。
【0016】
そこで、本発明は、このような従来技術の課題を解決するためになされたものであり、ソースドライバの駆動電流を動的に最適値に設定して、パネルシステムの低消費電力化と画質向上を実現することを主な目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の発明者らは、従来技術の課題を解決する手段について鋭意検討した結果、現行の水平ラインとその前の2以上の水平ラインの映像データをメモリに一時的に保存し、そのメモリに記憶されている映像データのパターンに基づいて現行の水平ラインを駆動するためのソースドライバの駆動電流を動的に設定することで、パネルシステムの低消費電力化と画質向上を実現できるという知見を得た。そして、本発明者らは、上記知見に基づけば従来技術の課題を解決できることに想到し、本発明を完成させた。以下、本発明の構成について具体的説明する。
【0018】
本発明の第1の側面は、映像データ識別回路である。本発明に係る映像データ識別回路は、映像データ受信回路から出力された映像データを識別してソースドライバの駆動電流を制御するための回路である。映像データ識別回路は、基本的に、メモリ、画像パターン検出回路、及び駆動電流設定回路を備える。メモリは、映像データ受信回路から出力された映像データのうち、現行の水平ラインの映像データと、現行の水平ラインの前のn水平ライン分(nは2以上の整数、以下同じ)の映像データとを保持する。つまり、メモリには、少なくとも3水平ライン分の映像データが一時的に保存されることになる。画像パターン検出回路は、まず、現行の水平ラインの映像データとその直前の水平ラインの映像データを比較して一致しているか否かを判定する。画像パターン検出回路は、それらが一致している場合には、その旨を表す信号を駆動電流設定回路に伝達する。一方、画像パターン検出回路は、それらが一致していない場合には、メモリに記憶されている現行の水平ラインの前のn水平ライン分の映像データのパターンを読み出して、電流設定回路に伝達する。ここで、駆動電流設定回路は、現行の水平ラインの映像データとその直前の水平ラインの映像データが一致している場合には、例えば、現行の水平ラインを駆動するためのソースドライバの駆動電流を最小レベルに設定すればよい。一方、駆動電流設定回路は、それらが一致していない場合には、画像パターン検出回路によってメモリから読み出されたn水平ライン分の映像データのパターンに基づいて現行の水平ラインを駆動するためのソースドライバの駆動電流を設定する。つまり、駆動電流設定回路は、現行の水平ラインとその直前の水平ラインの映像データの関係性だけでなく、現行の水平ラインよりも前の複数の水平ラインの映像データのパターンに基づいて、現行の水平ラインの駆動電流を設定する。駆動電流設定回路により決定された駆動電流の設定値はソースドライバに出力される。なお、「最小レベル」とは、現行の水平ラインの映像データとその直前の水平ラインの映像データが一致していない場合の駆動電流よりも小さく、ゼロではない電流値のレベルを意味する。例えば、駆動電流のレベルを1~5の5段階に設定可能であるとした場合に、現行の水平ラインの映像データとその直前の水平ラインの映像データが一致していない場合は2~5のレベルに駆動電流を設定し、現行の水平ラインの映像データとその直前の水平ラインの映像データが一致している場合には駆動電流を1のレベル(すなわち最小レベル)に設定する。駆動電流の最小値は、例えば液晶のリークを防止するレベルとすればよい。なお、ここにいう駆動電流の「最小レベル」とは、現行の水平ラインとその前の水平ラインの比較結果に応じて制御される範囲での最小レベルを意味するのであって、実際にソースドライバが別の制御において上記の最小レベルよりも小さい電流値で駆動する場合が存在しても構わない。
【0019】
上記構成のように、連続する水平ラインにおいて駆動する電圧レベルに差が生じる場合には、現行の水平ラインのソースドライバの駆動電流(駆動能力)を、前ラインを含む複数ライン前の映像データの値によって最適化することが液晶パネルの画質向上と低消費電力化において有効である。例えば8ビット、256階調の液晶パネルの例で、現行の水平ラインの映像データが白レベル(255レベル)である場合を例に挙げて説明する。例えば映像データが3水平ラインで連続して黒レベル(0レベル)であり、その直後に現行の水平ラインが白レベルへの変化が生じた場合(黒・黒・黒・白の場合)と、映像データが2水平ラインで連続して白レベルで、その後1水平ラインだけ黒レベルとなった後に現行の水平ラインが白レベルへの変化が生じた場合(白・白・黒・白の場合)とでは、現行の水平ラインを駆動するのに必要なソースドライバの駆動電流が異なる。そこで、現行の水平ラインを駆動する際のソースドライバの駆動電流を、それより前の複数の水平ラインの駆動パターンに基づいて調整することで、液晶パネルの消費電力の最適化と画質向上に有効である。
【0020】
本発明に係る映像データ識別回路において、画像パターン検出回路は、現行の水平ラインの一部である特定部分の映像データとその直前の水平ラインの特定部分に対応する部分の映像データを比較して一致しているか否かを判定することとしてもよい。「特定部分」の例は、液晶パネルの左側半分50%や右側半分50%、その他左側x%や右側x%である。画像パターン検出回路は、それらが一致していない場合には、メモリに記憶されている現行の水平ラインの前のn水平ライン分の映像データのうち、上記の特定部分に対応する部分の映像データのパターンを読み出す。ここで、駆動電流設定回路は、現行の水平ラインの特定部分の映像データとその直前の水平ラインの特定部分に対応する部分の映像データが一致している場合には、例えば、現行の水平ラインの特定部分を駆動するためのソースドライバの駆動電流を最小レベルに設定すればよい。一方で、駆動電流設定回路は、それらが一致していない場合には、画像パターン検出回路によってメモリから読み出されたn水平ライン分の特定部分に対応する部分の映像データのパターンに基づいて、現行の水平ラインの特定部分を駆動するためのソースドライバの駆動電流を設定する。
【0021】
上記構成のように、前後の2つの水平ライン全体において映像データが完全に一致していなくても、前後の2つの水平ラインの一部において映像データが一致している場合には、その一致する部分においてソースドライバの駆動電流を最小レベルにすることで、消費電力を抑えることができる。例えば、液晶パネルの画面左半分50%において前後の水平ラインでソースドライバチャンネルに変化がない場合や、画面の左側25%において前後の水平ラインでソースドライバチャンネルに変化がない場合に、部分的にソースドライバの駆動電流を最小レベルに設定すればよい。
【0022】
本発明の第2の側面は、パネルシステムコントローラに関する。本発明に係るパネルシステムコントローラは、映像データ識別回路、映像データ受信回路、及びソースドライバを備える。映像データ受信回路は、前述した第1の側面に係るものである。映像データ受信回路は、外部のプロセッサ(CPUやGPU)から映像データを受信して、当該映像データを映像データ識別回路に出力する。ソースドライバは、映像データ識別回路によって設定された駆動電流で駆動し、映像データをディスプレイパネルのソースラインに対して所定の電圧レベルで出力する複数の出力チャンネルを有する。
【0023】
本発明に係るパネルシステムコントローラにおいて、映像データ識別回路及びソースドライバは、一体化された1チップの半導体装置(システムドライバ)として構成されていることが好ましい。特に、部品点数と消費電力の低減の観点から、このような1チップ型の半導体装置はディスプレイパネルに対して一つのみ設けられることが好ましい。このような1チップ型の構成では、前述したように、駆動する必要のあるパネルのソースラインの負荷容量は大きくなり、ソースドライバがソースラインを期待値電圧レベルまで駆動できずに、表示画質に問題が生じてしまうおそれがある。この点、本発明によれば、ソースドライバの出力の駆動電流を動的に制御できることから、1チップ型の構成であっても表示画質の向上が期待できる。また、映像データ識別回路、映像データ受信回路、及びソースドライバを一体化することで、各回路間の信号伝達速度を早めることができるため、ソースドライバの駆動電流をフレキシブルに制御することが可能となる。
【0024】
本発明の第3の側面は、第1の側面とは別の映像データ識別回路に関する。第3の側面に係る映像データ識別回路は、映像データ受信回路から出力された映像データを識別してソースドライバの駆動電流を制御する。映像データ識別回路は、画像パターン検出回路と駆動電流設定回路を備える。画像パターン検出回路は、映像データ受信回路から出力された映像データのうち、現行の水平ラインの特定部分の映像データとその直前の水平ラインの特定部分に対応する部分の映像データを比較して一致しているか否かを判定する。駆動電流設定回路は、現行の水平ラインの特定部分の映像データとその直前の水平ラインの特定部分に対応する部分の映像データが一致している場合には、現行の水平ラインの特定部分を駆動するためのソースドライバの駆動電流を最小レベルに設定し、その設定値をソースドライバに出力する。
【発明の効果】
【0025】
本発明によれば、ソースドライバの駆動電流を動的に最適値に設定して、パネルシステムの低消費電力化と画質向上を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】
図1は、タイミングコントローラとソースドライバが分離されたディスプレイモジュールの全体構成を示したブロック図である。
【
図2】
図2は、タイミングコントローラとソースドライバが一体化されたシステムドライバを2つ備える、ディスプレイモジュールの全体構成を示したブロック図である。
【
図3】
図3は、タイミングコントローラとソースドライバが一体化されたシステムドライバを1つのみ備える、ディスプレイモジュールの全体構成を示したブロック図である。
【
図4】
図4は、タイミングコントローラとソースドライバが分離されたディスプレイモジュールにおいて、液晶パネルの額縁領域(ファンアウト領域)とアクティブ領域におけるソースラインの配線を示す図である。
【
図5】
図5は、タイミングコントローラとソースドライバが一体化されたディスプレイモジュールにおいて、液晶パネルの額縁領域(ファンアウト領域)とアクティブ領域におけるソースラインの配線を示す図である。
【
図6】
図6は、液晶パネルのソースラインの配線の配線抵抗と配線容量の分布を示すための図である。
【
図7】
図7は、液晶パネルの配線負荷の大小(特にソースラインの配線長の長短)によって、ソースラインの電圧がどのように変化するのかを説明するための図である。
【
図8】
図8は、液晶パネルのソースドライバの駆動電流の大小によって、ソースラインの電圧がどのように変化するのかを説明するための図である。
【
図9】
図9は、水平ラインの電圧レベルが最大値から最小値まで変化する場合のソースライン毎の出力電圧波形を説明するための図である。
【
図10】
図10は、水平ラインの電圧レベルが最大値から中間値まで変化する場合のソースラインが毎の出力電圧波形を説明するための図である。
【
図11】
図11は、連続する水平ライン期間の間、映像データが変化していない場合のソースライン毎の出力電圧波形を説明するための図である。
【
図12】
図12は、本発明の一実施形態に係るパネルシステムコントローラの全体構成を模式的に示したブロック図である。
【
図13】
図13は、駆動電流設定回路によるソースドライバの制御ロジックの一例を示したフロー図である。
【
図14】
図14は、本発明におけるソースドライバの出力電圧波形と駆動電流設定値の関係性を示した図である。
【
図15】
図15は、一般的な液晶パネルの構成を示した図である。
【
図16】
図16は、メモリに保存されている複数の水平ラインの映像パターンに基づいて現行の水平ライン駆動能力を制御する方法の一例を示した図である。
【
図17】
図17は、メモリに保存されている複数の水平ラインの映像パターンに基づいて現行の水平ライン駆動能力を制御する方法の別例を示した図である。
【
図18】
図18は、オーバドライブ制御の例を示した図である。
【
図19】
図19は、液晶パネルの駆動レベルが黒レベル(最小)、白レベル(最大)、中間レベルで遷移する場合の例を示した図である。
【
図20】
図20は、液晶パネルの左側半分と右側半分のそれぞれにおいて、現行の水平ラインと直前の水平ラインの映像データを比較する場合の例を示した図である。
【
図21】
図21は、液晶パネルの水平ラインの一部において、現行の水平ラインとメモリに保存されている複数の水平ラインの映像データを比較する場合の例を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、図面を用いて本発明を実施するための形態について説明する。本発明は、以下に説明する形態に限定されるものではなく、以下の形態から当業者が自明な範囲で適宜変更したものも含む。
【0028】
図12は、本発明の一実施形態に係るパネルシステムコントローラ1を示してる。パネルシステムコントローラ1は、液晶パネルや有機ELパネルなどに代表されるディスプレイパネルの額縁領域に搭載可能な集積回路である。パネルシステムコントローラ1は、主にパネル21を構成する多数のソースラインに対してアナログ映像信号を出力するともに、各ソースラインに出力する映像信号に関する制御を行う。パネルシステムコントローラ1は、例えばノートパソコンやタブレットパソコンにおいて、映像データに対応して、ソースドライバ13の駆動電流を最適化することで、パネルシステムの低消費電力化に寄与する。さらに、パネルシステムコントローラ1は、ソースドライバ13の駆動電流を最小値にするだけではなく、ソースドライバ13へのクロック信号を停止したり、ソースドライバ13への映像データも停止することで、ソースドライバ13の内部動作もディセーブルにし、ソースドライバ13の電源がオンにしたまま、消費電力を低減することも可能である。
【0029】
パネル21の構成は一般的なものであり、主にソースライン、ゲートライン、及び表示画素を有する。ソースラインは、ガラスなどで構成されたパネル基板上に、所定の間隔を空けて互いに平行に複数本設けられている。ゲートラインは、同じパネル基板上に、ソースラインと直交する方向に沿って、所定の間隔を空けて互いに平行に複数本設けられている。表示画素は、ソースラインとゲートラインとの各交差点に設けられている。各表示画素には、スイッチング素子としてのTFT(Thin Film Transistor)が接続されている。例えば、
図15に示されるように、FHDの液晶パネルの場合、ソースラインは1920×3(RGB)ライン必要となり、ゲートラインは1080ライン必要となる。パネルシステムコントローラ1は、主にソースラインへ映像信号を出力する処理を行う。
【0030】
図12に示されるように、本実施形態に係るパネルシステムコントローラ1は、映像データ受信回路11、映像データ識別回路12、及びソースドライバ13を備える。これらの回路11,12,13は、いわゆるCOG(Chip On the Glass)方式にて、液晶ガラス上に実装されることが好ましい。
【0031】
また、本発明のパネルシステムコントローラ1では、映像データ識別回路12とソースドライバ13を1つの半導体チップに集積することもできる。もし映像データ識別回路12とソースドライバ13が別々の半導体チップで構成される場合、両者の間でデータ通信が必要になる。例えば、映像データ識別回路12をTCON(タイミングコントローラ)で実施する場合、TCONで検出したソースドライバ13の駆動電流設定値を、映像データを表示していないブランキング期間にて送信することが求められる。また、ブランキング期間中に送信したソースドライバ13の駆動電流設定値は、ソースドライバ13で受信した後、ソースドライバ13の駆動電流を変更した後ようやく変更後の駆動電流値でパネルを駆動することになる。このように、TCONに映像データが入力されてからソースドライバの駆動電流を変更するまでのレイテンシーが大きくなってしまう。これに対して、映像データ識別回路12(TCON)とソースドライバ13を1つの半導体チップに集積すれば、同一チップ内での制御になり、レイテンシーを小さくすることが可能である。
【0032】
映像データ受信回路11は、プロセッサからデジタル映像データとクロック信号を受け取るための回路である。映像データ受信回路11は、受け取った映像データを映像データ識別回路12へと伝達する。また、映像データ受信回路11は、受け取ったクロック信号を映像データ識別回路12及びソースドライバ13と共有する。映像データ受信回路11は、例えばeDPレシーバ回路やMIPIレシーバ回路など高速シリアルインタフェースで構成することができる。なお、映像データ受信回路11に入力される映像データは、
図1に示されたようなCPU(Central Processing Unit)やGPU(Graphics Processing Unit)といったプロセッサによりや各種演算処理やグラフィクス処理を行われたデータである。
【0033】
ソースドライバ13は、パネル21のソースラインを駆動するため回路である。ソースドライバ13は、複数のソースラインに接続されており、各ソースラインに駆動電圧(階調表示電圧)を印加する。パネルシステムコントローラ1は、一つのパネル21に対して複数のソースドライバ13を備えることもできるが、部品点数及び消費電力削減の観点から一つのパネル21に対してソースドライバ13を一つのみ有することが好適である。また、図示は省略するが、パネルシステムコントローラ1は、パネル21のゲートラインを駆動するゲートドライバを備えていてもよい。ただし、ゲートドライバは、本発明のパネルシステムコントローラ1にとって必須の構成ではなく、このパネルシステムコントローラ1の外部に配置することも可能である。ゲートドライバは、TFTをオンするための走査信号を各ゲートラインに順次印加する。ゲートドライバによってゲートラインに操作信号が印加されてTFTがオン状態のときに、ソースドライバ13からソースラインに駆動電圧が印加されると、それらの交点に位置する表示素子に電荷が蓄積される。これにより、表示素子の光透過率がソースラインに印加された駆動電圧に応じて変化して、表示素子を介した画像表示が行われる。また、ソースドライバ13は、各ソースラインをオーバドライブする機能を有していてもよい(特許文献1参照)。
【0034】
映像データ識別回路12は、ソースドライバ13の駆動電流設定を制御するための回路である。映像データ識別回路12は、ソースドライバ13に結合された複数のソースラインのそれぞれについて、適切な駆動電流の設定を決定することができる。映像データ識別回路12で決定されたソースドライバ13の駆動電流設定は、制御信号として、ソースドライバ13に入力される。ソースドライバ13は、ここで入力された制御信号に従って、各ソースラインの駆動を制御する。また、映像データ受信回路11から出力されたクロックは、映像データ識別回路12とソースドライバ13に入力され、それぞれの内部回路の基準クロックとなる。
【0035】
図1に示されるように、本実施形態において、映像データ識別回路12は、レベル検出回路121、メモリ122、画像パターン検出回路123、駆動電流設定回路124、及びブランキング期間検出回路125で構成されている。
【0036】
レベル検出回路121は、映像データ受信回路11から出力されたデジタル映像データを受け取り、ソースドライバ13のアナログ電圧レベルを検出する。すなわち、ソースラインレベル検出回路121は、映像データ受信回路11で受信したデジタル映像データに基づいて、ソースドライバ13からパネル21の各ソースラインに出力するアナログ電圧がどのレベルにあるか検出する。ソースラインレベル検出回路121の検出結果は、制御信号として駆動電流設定回路124へと出力される。
【0037】
メモリ122は、映像データ受信回路11から出力された映像データを所定期間保持するための記憶回路である。具体的には、メモリ122は、所定数の水平ライン分の映像データを保持できるように設定されている。映像データには、各水平ラインの期間を区切るための水平同期信号が組み込まれているため、メモリ122は、例えば、この水平同期信号に基づいて所定数の水平ライン分の映像データを保持するようにすればよい。なお、メモリ122に保持可能な映像データ長は所定値に制限されており、メモリ122は、映像データを順次記憶しながら、それと同じ分順次削除していく。また、メモリ122に保持する可能な水平ラインの所定数はレジスタの設定で適宜調整することが可能である。つまり、任意の水平ライン数ごとに、所定数を変更することができる。また、メモリ122に保持する映像データは、1水平ライン以上、例えば1水平ライン分や2水平ライン分とすることもできるし、1水平ライン未満、例えば1/2水平ラインや1/4水平ラインとすることもできる。また、例えばFHDパネル(1920x1080)の場合、1水平ラインは1920ピクセルとなることから、ソースドライバ13のアナログ電圧の出力チャンネル数は1920x3(RGB)=5760チャンネルとなる。水平ラインの所定数が1水平ライン未満の場合、所定数をこの出力チャンネル数で特定することもできる。例えばFHDパネルの場合、1/2水平ラインは2880チャンネルとなり、1/4水平ラインは1440チャンネルとなる。
【0038】
特に、本発明においては、メモリ122に保存する映像データは、3水平ライン以上に設定される。具体的には、メモリ122には、現行の水平ラインの映像データに加えて、さらにその現行の水平ラインの前の2水平ライン以上の映像データが記憶される。なお、メモリ122に新しく現行の水平ラインの映像データが記憶された場合は、メモリ122に記憶されている一番古い水平ラインの映像データが削除される。メモリ122に保存する映像データは、現行の水平ラインを含めて4水平ライン以上であってもよいし、5水平ライン以上であってもよいし、6水平ラインや7水平ライン、あるいはそれ以上であってもよい。
【0039】
なお、
図15を参照して、一般的な液晶パネルの駆動方式について説明する。縦方向のラインが映像データを駆動するソースラインであり、FHDパネルの場合は5760ライン設けられる。5760個のソースラインそれぞれソースドライバで駆動する。横方向はゲートラインといい、FHDパネルの場合1080ラインある。上方向の1ライン目から下方向の1080ライン目まで時間的に順番にオンしていく。ソースラインとゲートラインが交差した位置には液晶素子があり、ここに映像データが格納される。動作タイミングは、最初に1ライン目のゲートラインがオンとなり、全てのソースラインがオンとなり、1ライン目の液晶素子、合計5760個に映像データを書き込む。次に1ライン目のゲートラインがオフとなり、2ライン目のゲートラインがオンとなり、同様に全てのソースラインがオンとなり、2ライン目の液晶素子、合計5760個に映像データを書き込む。このように1ライン目から1080ライン目まで順番に液晶素子に画像を書き込んでいく。
【0040】
画像パターン検出回路123は、映像データ受信回路11から出力された現行の水平ラインの映像データと、メモリ122に保持されている複数の水平ライン分の映像データとが入力される。そして、画像パターン検出回路123は、まず、現行の水平ラインの映像データとその直前の水平ラインの映像データとを比較しての画像パターンの一致を検出する。このとき、画像パターン検出回路123は、現行の水平ラインとその直前の水平ラインの全チャンネルにおいて画像パターンが一致することを検出してもよいし、現行の水平ラインとその直前の水平ラインのうち、1/2水平ライン分だけ画像パターンが一致していることや、1/4水平ライン分だけ画像パターンが一致することを検出することもできる。画像パターン検出回路123に入力される映像データには、映像データ受信回路11から直接入力される現行の水平ラインの映像データと、映像データ受信回路11から一旦メモリ122を介して入力される過去の複数の水平ラインの映像データの2種類が存在する。そして、映像データ受信回路11からの現行の水平ラインの映像データは、画像パターン検出回路123にリアルタイムに入力される。なお、このとき、現行の水平ラインの映像データは、メモリ122にも同時に入力されている。一方、メモリ122には、現行の水平ラインより前の複数の水平ライン分の映像データが一時的に保持されている。このため、メモリ122からは、複数の水平ライン分の過去の映像データが画像パターン検出回路123に入力されることとなる。従って、画像パターン検出回路123は、映像データ受信回路11からは現行の水平ラインの映像データがリアルタイムに入力され、メモリ122からは過去の複数の水平ライン分の映像データが入力される。そして、画像パターン検出回路123は、まず、現行の水平ラインの映像データとその直前の水平ラインの映像データとを比較し、両者の画像パターンの一部又は全部が一致するか否かを判断する。そして、両者の画像パターンが一致すれば、少なくとも現行の水平ラインの映像データは、その直前の水平ラインの映像データから変化していないないことがわかる。画像パターン検出回路123は、このように現行の映像データと直前の映像データを比較して、両者の画像パターンが一致した場合に、その結果を制御信号として駆動電流設定回路124へと出力する。この場合、駆動電流設定回路124は、後述のとおり、現行の水平ラインを駆動するソースドライバの駆動電流を最小レベルに設定することとなる。
【0041】
一方で、画像パターン検出回路123は、上記のように現行の水平ラインの映像データとその直前の水平ラインの映像データとを比較した結果、両者の画像パターンが一致していないと判断した場合には、次に、メモリ122に保存されている過去の複数の水平ライン分の映像データのパターンを読み出し、そのパターンを制御信号として駆動電流設定回路124へと出力する。この場合、駆動電流設定回路124は、後述のとおり、メモリ122に保存されている過去の複数の水平ライン分の映像データのパターンに基づいて、現行の水平ラインを駆動するソースドライバの行動電流を設定することとなる。
【0042】
ブランキング期間検出回路125は、映像データ受信回路11から出力された映像データを受け取り、この映像データからブランキング期間を検出する。映像データには、垂直同期信号や垂直同期信号の他、水平ブランキング期間を示す信号や垂直ブランキング期間を示す信号が含まれる。ブランキング期間検出回路125は、このような映像データに基づいて、水平ブランキング期間や垂直ブランキング期間を検出した場合には、その検出結果を制御信号として駆動電流設定回路124へと出力する。なお、ブランキング期間検出回路125が検出するのは、例えば垂直ブランキング期間のみとすることも可能である。
【0043】
駆動電流設定回路124は、レベル検出回路121、画像パターン検出回路123、及びブランキング期間検出回路125のそれぞれから出力された各種の制御信号を受け取り、これらの制御信号に基づいて、ソースドライバ13の駆動電流を設定する。
【0044】
図13は、駆動電流設定回路124による制御ロジックの一例を示している。まず、駆動電流設定回路124は、ブランキング期間検出回路125からの検出信号に基づいて、現在がブランキング期間であるか否かを判定する。ブランキング期間であれば、ブランキング期間検出回路125がその検出信号を出力しているため、駆動電流設定回路124はこの検出信号を受け取った場合には、現在がブランキング期間であると判定できる。ブランキング期間においては、映像データをソースドライバ13からパネル21に出力する必要がない。このため、現在がブランキング期間である場合、駆動電流設定回路124は、ソースドライバ13の駆動電流を最小レベルに設定する。ブランキング期間には水平ブランキング期間と垂直ブランキング期間が存在するが、垂直ブランキング期間のほうが時間が長いことから、垂直ブランキング期間の間、ソースドライバ13の駆動電流を最小レベルとすることが特に有効である。同様に、水平ブランキング期間の間もソースドライバ13の駆動電流を最小レベルとすることが可能である。
【0045】
また、駆動電流設定回路124は、ブランキング期間の間、ソースドライバ13の駆動電流を最小レベルにすることに加えて、ソースドライバ13へのクロック信号の供給や、ソースドライバ13への映像データの供給を停止することとしてもよい。ソースドライバ13に映像データを供給する信号線やクロック信号を供給する信号線に、その信号線を遮断可能なスイッチ回路(不図示)を設けておき、これらのスイッチ回路に駆動電流設定回路124を接続すればよい。これにより、駆動電流設定回路124によって、ソースドライバ13に対する映像データやクロック信号の供給を制御することが可能となる。ブランキング期間の間、ソースドライバ13の内部動作もディセーブルにすることで、ソースドライバ13の電源がオンのままで、大きく消費電力を低減することが可能となる。なお、ソースドライバ13は、一般的に内部にデータラッチを有しており、電源をオンしていれば、入力クロック信号や入力映像データが停止されても、映像データは内部のラッチに映像データが保持されたままになっている。このため、クロック信号や入力映像データが停止された場合でも、ソースドライバ13からは、当該内部ラッチの映像データが出力され続けることになになり、パネル21に表示上の問題は生じない。
【0046】
一方、ブランキング期間ではない場合、駆動電流設定回路124は、画像パターン検出回路123からの検出信号に基づいて、現行の水平ラインの映像データとその直前の水平ラインの映像データの画像パターンが一致しているか否かを判定する。両者の画像パターンが一致していれば、画像パターン検出回路123がその検出信号を出力しているため、駆動電流設定回路124は、この検出信号を受け取った場合には、現行の水平ラインとその直前の画像パターンが一致していると判定できる。具体的には現行の水平ラインとその直前の水平ラインの映像データが一致する場合、直前の水平ラインから現行の水平ラインまでソースドライバ13の電圧レベルに変化がないことを示している。この場合、駆動電流設定回路124は、ソースドライバ13の全出力チャンネルにおいて、駆動電流を最小レベルにすることができる。
【0047】
また、駆動電流設定回路124は、画像パターン検出回路123からの検出信号が1水平ライン全体で画像パターンが一致していることを示している場合、すなわち、直前の水平ラインと現行の水平ラインの全出力チャンネルにおいて画像パターンが一致している場合、その画像パターンが一致している期間の間、ソースドライバ13の駆動電流を最小値にすることに加えて、ソースドライバ13へのクロック信号の供給や、ソースドライバ13への映像データの供給を停止することとしてもよい。このように、ソースドライバ13の電源を最小の駆動電流でオンにしたまま、ソースドライバ13の内部動作をディセーブルにすることで、大きく消費電力を低減することができる。なお、画像パターンが一致している期間が1水平ライン未満の場合には、ソースドライバ13をディセーブルにしてしまうと、画像パターンの異なる部分を表示できなくなることから、この場合には、ソースドライバ13には映像データやクロック信号の供給を継続する。
【0048】
一方、前述の通りノートパソコンにおいては、連続する水平ラインにおいて電圧レベルに差が生じない場合が多く、このようなケースおいても電力消費を抑えることは重要である。例えば前後の2水平ライン全てのソースドライバの駆動チャンネルで画像パターンが一致していることに加えて、前後の2水平ラインの一部のソースドライバの駆動チャンネルで画像パターンが一致しているケースにおいても、電力消費を抑えることは重要となる。このため、画像パターン検出回路123の検出信号が、例えば、1/2水平ライン分だけ画像パターンが一致していることや、1/4水平ライン分だけ画像パターンが一致していることを示している場合、駆動電流設定回路124は、ソースドライバ13の全出力チャンネルのうち、画像パターンが一致している部分に対応するの出力チャンネルだけ、駆動電流を最小値にすることもできる。例えばFHDパネル(1920x1080)の場合、1水平ラインは1920ピクセルとなることから、ソースドライバ13のアナログ電圧の出力チャンネル数は、1920x3(RGB)=5760チャンネルとなる。このソースドライバ13の5760チャンネルが、それぞれパネル21上のソースラインに接続されている。この出力チャンネルごとに映像データが異なる場合があるため、ソースドライバ13の出力チャンネルごとに駆動電流を任意に設定できるように、ソースドライバ13及び駆動電流設定回路124を構成することで、より一層細やかな消費電力の最適化が可能となる。
【0049】
次に、
図13に示されるように、ブランキング期間ではなく、また前後の水平ラインで画像パターンが不一致である場合、駆動電流設定回路124は、メモリ122に保存されている過去の複数の水平ライン分の映像データのパターンを参照する。ここでの制御を、
図16及び
図17を参照して説明する。
【0050】
連続する前後の水平ラインにおいて駆動する電圧レベルに差が生じる場合、現行の水平ラインを駆動するソースドライバの駆動電流を、直前の水平ラインを含む複数の水平ライン前のデータの値を考慮して最適化することが液晶パネルの画質向上において有効となる。ここでは8ビット、256階調の液晶パネルを例に挙げて説明する。
図16に示した例では、現行の水平ラインの映像データを図中で4ライン目とし、白レベル(255レベル)で出力することとしている。また、
図16では、現行の水平ラインから3ライン前までの映像データが3回連続して黒レベルであった直後に白レベル(現行の水平ライン)への変化が生じた場合を示している。一方、
図17では、同じく、現行の水平ラインの映像データを図中で4ライン目、現行の水平ラインの映像データを白レベル(255レベル)としているが、現行の水平ラインのから3ライン前までの映像データが、黒レベル(0レベル)、白レベル(255レベル)、黒レベル(0レベル)のように連続して変化している点で、
図16に示した例とは異なる。
【0051】
ここで、
図16及び
図17に示した例では、メモリ122に、4水平ライン分の映像データを記録できるようになっている。すなわち、現行の水平ラインの映像データに加えて、さらにその前の3水平ライン分の映像データが、メモリ122に逐次記録される。
図16に示した例では、現行の水平ラインから3ライン前までの映像データをメモリに格納できるため、駆動電流設定回路124は、このメモリ122内を参照することで、黒、黒、黒、白のパターンであることを検出できる。また、
図17に示した例でも同様に、駆動電流設定回路124は、このメモリ122内を参照することで、黒、白、黒、白のパターンであったことを検出できる。このように4ラインメモリでは過去3ライン前までの映像データのパターンを考慮することができる。
【0052】
図16に示した例では、まず、1ライン目の黒レベルの映像データがメモリ122に記憶される。このとき、1ライン目の黒レベルの映像データは、最初のデータであるから、それより前の映像データと比較することはできない。この場合は、単純に1ライン目の映像データ自体を参照して、1ライン目を駆動する際のソースドライバ13の駆動電流を設定すればよい。次に、2ライン目の黒レベルの映像データがメモリ122に記憶される。このとき、1ライン目と2ライン目の映像データを比較すると、共に黒レベル(255レベル)で一致する。従って、この場合は、前述したとおり、2ライン目を行動する際のソースドライバ13の駆動電流を最小レベルに設定すればよい。次に、3ライン目の黒レベルの映像データがメモリ122に記憶される。このとき、2ライン目と3ライン目の映像データを比較すると、共に黒レベル(0レベル)で一致する。従って、この場合も、前述したとおり、3ライン目を行動する際のソースドライバ13の駆動電流を最小レベルに設定すればよい。
【0053】
次に、4ライン目の白レベル(255レベル)の映像データがメモリ122に記憶される。これにより、メモリ122には、4つの水平ライン分の映像データが溜まったことになる。このとき、3ライン目と4ライン目の映像データを比較すると、3ライン目が黒レベルであるのに対して、4ライン目が白レベルであることから、この4ライン目(現行の水平ライン)を駆動するソースドライバ13の駆動電流は、最小レベルでは足りず、これよりも大きくしなければならない。すなわち、液晶パネルにおいては、このように同じ黒レベルから白レベルへの遷移であっても、以前のラインのデータの影響を受ける場合がある。従って、3水平ラインで連続して黒レベル(0レベル)が継続した後に現行の水平ラインが白レベル(255レベル)となった場合、この現行の水平ラインを駆動するソースドライバ13を早期に目標とする期待値電圧レベルにまで高めるためには、例えばソースドライバ13の駆動電流を最大レベルに一気に引き上げたり、特許文献1(特開2018-63332号公報)に開示されているオーバドライブ電圧及び時間(
図18参照)を掛けることが好ましい。
【0054】
一方で、
図17に示した例では、まず、1ライン目の黒レベルの映像データがメモリ122に記憶される。このとき、1ライン目の黒レベルの映像データは、最初のデータであるから、それより前の映像データと比較することはできない。この場合は、単純に1ライン目の映像データ自体を参照して、1ライン目を駆動する際のソースドライバ13の駆動電流を設定すればよい。ここまでは
図16に示した例と同様である。次に、2ライン目の白レベルの映像データがメモリ122に記憶される。このとき、1ライン目と2ライン目の映像データを比較すると、互いに不一致である。また、この時点において、メモリ122には所定ライン分の映像データが蓄積されていない。この場合は、
図13に示したフローに従い、前水平ラインと現水平ラインの電圧レベルの差分に応じて駆動電流を調整することになるが、この点についての詳細は後述する。基本的には、黒レベルから白レベルへと遷移したことにより、ソースドライバ13の駆動電流を大きく設定する必要がある。次に、3ライン目の黒レベルの映像データがメモリ122に記憶される。このとき、2ライン目と3ライン目の映像データを比較すると、互いに不一致である。この場合も、
図13に示したフローに従い、前水平ラインと現水平ラインの電圧レベルの差分に応じて駆動電流を調整することになる。基本的には、白レベルから黒レベルへと遷移したことにより、ソースドライバ13の駆動電流を大きく設定する必要がある。
【0055】
次に、4ライン目の白レベル(255レベル)の映像データがメモリ122に記憶される。これにより、メモリ122には、4つの水平ライン分の映像データが溜まったことになる。このとき、3ライン目と4ライン目の映像データを比較すると、3ライン目が黒レベルであるのに対して、4ライン目が白レベルであることから、この4ライン目(現行の水平ライン)を駆動するソースドライバ13の駆動電流も大きくしなければならない。ただし、
図16の例と
図17の例を比較したとき、
図17の例では、2ライン目が白レベルであったことから、3ライン目が黒レベルとなっていても、4ライン目を白レベルに引き上げるときに、2ライン目が白レベルあった影響を受ける。このため、
図16の例のように3ライン連続で黒レベルが続いた後に白レベルとなった場合と比較して、
図17の例では、4ライン目の白レベルを出力するためのソースドライバ13の駆動電流を抑えることができる。つまり、
図17の例の4ライン目は、
図16の例の4ライン目と比較して、ソースドライバ13の駆動電流を小さいレベルに設定すればよい。例えば、
図16の例では駆動電流のレベルを最大レベル(例えば5レベル)としていた場合には、
図17の例では駆動電流のレベルを最大レベルよりも小さいレベル(例えば4レベル)とすればよい。このようにメモリ122に保存されている複数ライン分の映像データのパターンに基づいて、現行の水平ラインを駆動するソースドライバ13の駆動電流を制御することができる。これにより、液晶パネルの消費電力の削減と画質の改善が見込まれる。
【0056】
さらに別の例を挙げて説明すると、液晶パネルの駆動に関しては、黒レベル(0レベル)と白レベル(255レベル)だけでなく、その中間階調レベル(例えば125レベル)も考慮する必要がある。このような黒レベル、白レベル、及び中間階調レベルへの駆動電流の遷移の一例を
図19に示している。この中間階調レベル(125レベル)の表示は、一般的に人の目に感度が高いと言われている。例えば、現行の水平ラインの映像データが中間階調レベル(125レベル)であるとしたとき、現行の水平ラインから3水平ライン前までの映像データがすべて黒レベル(0レベル)であった場合と、現行の水平ラインから3水平ライン前までの映像データが黒レベル、中間階調レベル、黒レベルのように変化した場合とでは、現行の水平ラインの中間階調レベル(125レベル)レベルを駆動するのに必要となるソースドライバ13の駆動電流は異なる。例えば、ソースドライバ13の駆動電流のレベルを5段階で調整できるとしたとき、メモリ122に保存されている過去の水平ラインの画像パターンを考慮して、以下のように現行の水平ライン(中間階調レベル)の駆動電流を設定すればよい。なお、以下の設定例はあくまで一例であり、駆動電流の設定は適宜調整することが可能である。
[駆動電流レベルの設定例]
1) 黒→黒→黒→中:レベル5(最大)
2) 白→白→白→中:レベル5(最大)
3) 中→白→白→中:レベル4
4) 中→黒→黒→中:レベル4
5) 中→白→黒→中:レベル4
6) 中→黒→白→中:レベル4
7) 黒→中→黒→中:レベル3
8) 黒→中→白→中:レベル3
9) 白→中→黒→中:レベル3
10)白→中→白→中:レベル3
11)中→中→黒→中:レベル2
12)中→中→白→中:レベル2
13)黒→黒→中→中:レベル1(最小)
14)白→白→中→中:レベル1(最小)
15)白→黒→中→中:レベル1(最小)
16)黒→白→中→中:レベル1(最小)
17)黒→中→中→中:レベル1(最小)
18)白→中→中→中:レベル1(最小)
【0057】
また、このような過去の複数の水平ラインの映像データのパターンに基づいて現行の水平ラインを駆動するソースドライバ13の駆動電流を設定する制御方式は、水平ライン全体の制御に限らず、水平ラインの一部の制御にも適用することができる。
【0058】
具体的に説明すると、水平ライン全体の制御を想定した場合、液晶パネルを駆動する全ソースドライバのチャネル数が例えば、FHDの場合、1920x3(R/G/B)=5760チャンネルであり、全てのソースドライバチャンネルが、現ラインと前のラインで一致するか比較し、全てのソースドライバチャンネルが一致した場合、ソースドライバの駆動能力を全てのチャンネルで下げることができる。これに限らず、
図20に示されるように、例えば、液晶パネルの画面左半分50%の領域においてのみ、現ラインと前のラインで一致するか比較し、当該画面左半分50%の全てのソースドライバチャンネルが一致した場合、ソースドライバの駆動電流を、当該画面左半分50%の全てのチャンネルだけ下げることができる。同様に、例えば、液晶パネルの画面右半分50%の領域においてのみ、現ラインと前のラインで一致するか比較し、当該画面右半分50%の全てのソースドライバチャンネルが一致した場合、ソースドライバの駆動電流を、当該画面右半分50%の全てのチャンネルだけ下げることができる。なお、
図20の例では、液晶パネルを左右50%ずつ2つの領域に区分しているが、液晶パネルを3つの領域又は4つ以上の領域に区分して、同様の処理を行うことも可能である。このように画面全部が一致するだけではなく、液晶パネルの画面を複数の領域に分割することで、その前後の2ライン全てのソースドライバの駆動チャンネルに変化がない場合、当該ソースドライバの駆動電力を削減することができる。もちろん現ラインと前のラインで変化がある場合、その変化量に応じてソースドライバの駆動能力を大きくすることができる。
【0059】
さらに、このように液晶パネルの画面を複数の領域に区分して、各領域において映像データの変化を検出する態様においても、
図16及び
図17を参照して説明したように、現行の水平ラインより前の複数の水平ラインの映像データの影響を考慮して、現行の水平ラインを駆動するソースドライバの駆動電流を最適化することができる。すなわち、
図21は、液晶パネルのタイミングチャートに示している。例えばソースドライバのチャンネル数が5760チャンネルある場合、画面左半部はソースチャンネル1から2880チャンネルであり、画面右半部はソースチャンネル2881から5760チャンネルである。また、
図21において、d1~d5760が現行の水平ラインの映像データであり、c1~c5760が現行の水平ラインの直前の水平ラインの映像データ、b1~b5760が現行の水平ラインの2つ前の水平ラインの映像データ、a1~a5760が現行の水平ラインの3つ前の水平ラインの映像データである。これらの4水平ライン分の映像データがメモリ122に保存されていることとなる。さらに、d1~d2880が現行の水平ラインのうち液晶パネルの画面左半部に対応する映像データであり、c1~c2880、b1~2880、及びa1~a2880が、この画面左半部に対応する過去の水平ラインの映像データである。
【0060】
この場合に、現行の水平ラインのうち画面左半部に対応する映像データd1~d2880を出力するソースドライバの駆動電流を設定する際には、c1~c2880、b1~2880、及びa1~a2880の画面左半部に対応する過去の水平ラインの映像データのパターンを参照すればよい。例えば、4ライン目の左半部に対応するd1~d2880の映像データと、3ライン目の左半部に対応するc1~c2880の映像データが不一致であるとする。この場合、メモリ122に保存されている1ライン目から3ライン目の左半部に対応する映像データのパターン(c1~c2880,b1~2880,a1~a2880)に基づいて、現行の4ライン目の左半部に対応するd1~d2880のソースドライバの駆動電流を決定することができる。なお、このような部分的な駆動電流の制御は、画面左半部に限らず、画面右半部についても同様に行うことができる。
【0061】
次に、再び
図13に戻り説明する。
図13に示されるように、ブランキング期間ではなく、前後の水平ラインで画像パターンが不一致であり、かつ、メモリ122に所定数の水平ライン分の映像データが記録されていない場合、駆動電流設定回路124は、レベル検出回路121の検出値に基づいて、前後の水平ラインの電圧レベルを比較し、その電圧レベルの差に応じて、ソースドライバ13の駆動電流を設定する。例えば、前の水平ラインの電圧レベルが最大値で現行の水平ラインの電圧レベルが最小値である場合、両ラインの電圧レベルの差は最大となる。この場合、駆動電流設定回路124は、ソースドライバ13の駆動電流を最大値に設定する。あるいは、前の水平ラインの電圧レベルが最大値であっても、現行の水平ラインの電圧レベルが中間値である場合、両ラインの電圧レベルの差は中程度となる。この場合、駆動電流設定回路124は、ソースドライバ13の駆動電流を中程度の値に設定する。
【0062】
図14は、駆動電流設定回路124による駆動電流の設定動作の一例を示している。
図14では、あるソースラインの電圧レベルの変化の一例を示す。このソースラインは、垂直ブランキング期間の間は電圧レベルが最小値となり、その後最初の水平ライン期間で電圧レベルが最大値となり、その次の第2の水平ライン期間でも電圧レベルは最大値のままとなり、その次の第3の水平ライン期間で電圧レベルが中程度となり、その次の第4の水平ライン期間で電圧レベルが再び最小値となり、その次の第5の水平ライン期間で電圧レベルは再び最大値となる。各水平ライン期間の間の電圧レベルの変化を見ると、第1の水平ライン期間では電圧レベルの変化量は最大となり、第2の水平ライン期間では電圧レベルは変化せず、第3の水平ライン期間では電圧レベルの変化量は中程度となり、第4の水平ライン期間では電圧レベルの変化量は再び中程度となり、第5の水平ライン期間では電圧レベルの変化量が再び最大となる。
【0063】
そして、駆動電流設定回路124は、この電圧レベルの変化量に応じて、ソースドライバ13の駆動電流を設定する。基本的に、ソースドライバ13の駆動電流は、各水平ライン期間における電圧レベルの変化量に比例する。すなわち、第1の水平ライン期間では電圧レベルの変化量は最大となることから、ソースドライバ13の駆動電流は最大値とする。また、第2の水平ライン期間では電圧レベルは変化していないことから、ソースドライバ13の駆動電流は最小値とする。また、第3の水平ライン期間では電圧レベルの変化量は中程度となることから、ソースドライバ13の駆動電流は中間値とする。また、第4の水平ライン期間では電圧レベルの変化量は再び中程度であることから、ソースドライバ13の駆動電流は中間値とする。また、第5の水平ライン期間では電圧レベルの変化量が最大ことから、ソースドライバ13の駆動電流は最大値とする。これにより、例えば、電圧レベルは変化していない第2の水平ライン期間では、ソースドライバ13の駆動電流は最小値に抑えることができるため、電力消費量を抑えることができる。また、パネル21の表示品質を保つのに必要となる分だけ、ソースドライバ13の駆動電流を設定できることから、無駄な電力消費を抑えることができる。特に、水平ライン毎にソースドライバ13の駆動電流をこまめに調整できるため、ソースドライバ13の消費電力を最適化することができる。
【0064】
以上、本願明細書では、本発明の内容を表現するために、図面を参照しながら本発明の実施形態の説明を行った。ただし、本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、本願明細書に記載された事項に基づいて当業者が自明な変更形態や改良形態を包含するものである。
【符号の説明】
【0065】
1…パネルシステムコントローラ
11…映像データ受信回路
12…映像データ識別回路
121…レベル検出回路
122…メモリ
123…画像パターン検出回路
124…駆動電流設定回路
13…ソースドライバ
21…パネル
【要約】
【課題】ソースドライバの駆動電流を動的に最適値に設定してパネルシステムの低消費電力化と画質向上を実現する。
【解決手段】映像データ受信回路11から出力された映像データを識別してソースドライバの駆動電流を制御する映像データ識別回路12であって、この映像データのうち現行の水平ラインの映像データとその前の複数の水平ライン分の映像データとを保持するメモリ122と、現行とその直前の水平ラインの映像データを比較して一致していない場合にはメモリ122に記憶されている複数の水平ライン分の映像データのパターンを読み出す画像パターン検出回路123と、この画像パターン検出回路123によってメモリ122から読み出された複数の水平ライン分の映像データのパターンに基づいて現行の水平ラインを駆動するためのソースドライバ13の駆動電流を設定する駆動電流設定回路124を備える。
【選択図】
図12