(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】熱収縮チューブ、熱収縮チューブの製造方法及び接続体
(51)【国際特許分類】
B29C 61/08 20060101AFI20230511BHJP
B29L 23/00 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
B29C61/08
B29L23:00
(21)【出願番号】P 2020532250
(86)(22)【出願日】2019-07-02
(86)【国際出願番号】 JP2019026339
(87)【国際公開番号】W WO2020021997
(87)【国際公開日】2020-01-30
【審査請求日】2022-03-21
(31)【優先権主張番号】P 2018140849
(32)【優先日】2018-07-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】599109906
【氏名又は名称】住友電工ファインポリマー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159499
【氏名又は名称】池田 義典
(74)【代理人】
【識別番号】100120329
【氏名又は名称】天野 一規
(72)【発明者】
【氏名】関口 守
【審査官】関口 貴夫
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第106363900(CN,A)
【文献】米国特許第05746253(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 61/00-61/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の電線の外周を被覆する筒状のベース層を備え、
上記ベース層の熱収縮後の形状が四角筒状である熱収縮チューブ。
【請求項2】
上記ベース層が合成樹脂を主成分とする樹脂組成物から構成され、
熱収縮温度が上記樹脂組成物の融点又は軟化点以上である請求項1に記載の熱収縮チューブ。
【請求項3】
上記ベース層
の熱収縮前の形状が、円筒状である請求項1又は請求項2に記載の熱収縮チューブ。
【請求項4】
導体及びこの導体の外周面側に積層される絶縁層を有する複数の電線と、
上記複数の電線を被覆するチューブと
を備え、
上記チューブが、
熱収縮後の熱収縮チューブから形成され、四角筒状のベース層を有し、
上記複数の電線が、上記チューブの長手方向に配設される接続体。
【請求項5】
合成樹脂を主成分とする樹脂組成物を四角筒状に押出す工程と、
上記押出す工程で押し出された四角筒状体に電離性放射線を照射する工程と、
上記照射する工程後の四角筒状体を上記樹脂組成物の融点又は軟化点以上に加熱する工程と、
上記加熱する工程による加熱後の四角筒状体を外側に拡張する工程と、
上記拡張する工程による拡張後の筒状体を冷却する工程と
を備える熱収縮チューブの製造方法。
【請求項6】
上記拡張する工程で、上記四角筒状体を円筒状に拡張する請求項5に記載の熱収縮チューブの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、熱収縮チューブ、熱収縮チューブの製造方法及び接続体に関する。
【背景技術】
【0002】
複数の電線を結束するために熱収縮チューブが用いられている。この熱収縮チューブは、被覆対象である複数の電線の外周面に被着するように収縮することで、複数の電線を結束するものである。
【0003】
複数の電線を結束するための熱収縮チューブとしては、例えばチューブの内周面側に複数の電線を挿入しやすいようチューブの軸方向の両端に亘ってスリットが形成されたものが発案されている(特開2012-131132号公報参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
本開示の一態様に係る熱収縮チューブは、複数の電線の外周を被覆する筒状のベース層を備え、上記ベース層の熱収縮後の形状が四角筒状である。
【0006】
本開示の他の一態様に係る接続体は、導体及びこの導体の外周面側に積層される絶縁層を有する複数の電線と、上記複数の電線を被覆するチューブとを備え、上記チューブが、熱収縮チューブから形成され、四角筒状のベース層を有し、上記複数の電線が、上記チューブの長手方向に配設される。
【0007】
本開示の他の一態様に係る熱収縮チューブの製造方法は、合成樹脂を主成分とする樹脂組成物を四角筒状に押出す工程と、上記押出す工程で押し出された四角筒状体に電離性放射線を照射する工程と、上記照射する工程後の四角筒状体を上記樹脂組成物の融点又は軟化点以上に加熱する工程と、上記加熱する工程による加熱後の四角筒状体を外側に拡張する工程と、上記拡張する工程による拡張後の筒状体を冷却する工程とを備える。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る熱収縮チューブを示す模式的斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の熱収縮チューブのA-A線断面図である。
【
図3】
図3は、
図1の熱収縮チューブの熱収縮後の四角筒状体を示す模式的斜視図である。
【
図5】
図5は、一実施形態に係る接続体を示す模式的斜視図である。
【
図7】
図7は、他の実施形態に係る接続体を示す模式的断面図である。
【
図8】
図8は、他の実施形態に係る接続体を示す模式的断面図である。
【
図9】
図9は、他の実施形態に係る接続体を示す模式的断面図である。
【
図10】
図10は、一実施形態に係る熱収縮チューブの製造方法を示すフロー図である。
【
図11】
図11は、
図10の熱収縮チューブの製造方法の押出す工程後の四角筒状体を示す模式的斜視図である。
【
図12】
図12は、
図10の熱収縮チューブの製造方法の拡張する工程後の円筒状体を示す模式的斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
[本開示が解決しようとする課題]
上記公報に記載されているような従来の熱収縮チューブは、複数の電線を全体として円柱状にまとめて結束するものである。一方、近年においては、車、飛行機等の乗り物、電化製品などにおいては室内空間における容積の増大が図られていることに伴い、これらの室内で複数の電線を設置する場合に高さ方向の省スペース化が求められている。
【0010】
しかしながら、上記公報に記載されているような従来の円柱状の熱収縮チューブを設置する場合、上記室内空間においてスペースの無駄が多くなるおそれがある。そのため、上記室内空間において、特に高さ方向の有効スペースを増やすことは困難である。
【0011】
本開示は、このような事情に基づいてなされたものであり、複数の電線の設置領域の省スペース化を図ることが可能な熱収縮チューブの提供を課題とする。
【0012】
[本開示の効果]
本開示によれば、複数の電線の設置領域の省スペース化を図ることができる。
【0013】
[本開示の実施形態の説明]
最初に本開示の実施態様を列記して説明する。
【0014】
本開示の一態様に係る熱収縮チューブは、複数の電線の外周を被覆する筒状のベース層を備え、上記ベース層の熱収縮後の形状が四角筒状である。
【0015】
当該熱収縮チューブは、複数の電線の外周を被覆する上記ベース層の熱収縮後の形状が四角筒状であるので、複数の電線の設置領域の省スペース化を図ることができる。
【0016】
上記ベース層が合成樹脂を主成分とする樹脂組成物から構成され、熱収縮温度が上記樹脂組成物の融点又は軟化点以上であることが好ましい。上記熱収縮温度が上記樹脂組成物の融点又は軟化点以上であることで、当該熱収縮チューブを容易に元の形状の四角筒状のチューブに収縮させることができる。
【0017】
上記ベース層が、円筒状であるとよい。このように、当該チューブのベース層が円筒状であることで、ベース層の内周面側に容易に複数の電線を整列させた状態で収容することができる。
【0018】
本開示の他の一態様に係る接続体は、導体及びこの導体の外周面側に積層される絶縁層を有する複数の電線と、上記複数の電線を被覆するチューブとを備え、上記チューブが、熱収縮チューブから形成され、四角筒状のベース層を有し、上記複数の電線が、上記チューブの長手方向に配設される。
【0019】
当該接続体は、上記複数の電線を被覆するチューブが四角筒状のベース層を有するので、複数の電線をコンパクトに収容できる。また、車等の乗り物、電化製品などの室内空間に設置される場合において、狭い領域にも配置可能であるとともに、複数の電線の設置領域の省スペース化を図ることができる。
【0020】
本開示の一態様に係る熱収縮チューブの製造方法は、合成樹脂を主成分とする樹脂組成物を四角筒状に押出す工程と、上記押出す工程で押し出された四角筒状体に電離性放射線を照射する工程と、上記照射する工程後の四角筒状体を上記樹脂組成物の融点又は軟化点以上に加熱する工程と、上記加熱する工程による加熱後の四角筒状体を外側に拡張する工程と、上記拡張する工程による拡張後の筒状体を冷却する工程とを備える。
【0021】
当該熱収縮チューブの製造方法は、上記照射する工程で、上記押出す工程で押し出された四角筒状体に電離性放射線を照射するので、ベース層の熱収縮後の形状が四角筒状である熱収縮チューブを製造できる。従って、複数の電線の設置領域の省スペース化を図ることができる熱収縮チューブを得ることができる。
【0022】
当該熱収縮チューブの製造方法は、上記拡張する工程で、上記四角筒状体を円筒状に拡張するとよい。このように、上記拡大する工程で、上記四角筒状体を円筒状に拡張することで、当該熱収縮チューブを容易に製造できるとともに、複数の電線を効率よく当該熱収縮チューブに収容できる。
【0023】
なお、本開示において、「融点」とは、JIS-K7121:2012「プラスチックの転移温度測定方法」に準拠して示差走査熱量計(DSC)により測定される融点ピーク温度をいう。「軟化点」とは、JIS-K7206:2016「プラスチック-熱可塑性プラスチック-ビカット軟化温度の求め方」に準拠して測定されるビカット軟化温度をいう。また、「主成分」とは、例えば総質量に対して60質量%以上含まれる成分をいう。
【0024】
[本開示の実施形態の詳細]
本開示の好適な実施形態について、以下に図面を参照しつつ説明する。
【0025】
<熱収縮チューブ>
図1及び
図2に示すように、当該熱収縮チューブ10は、複数の電線の外周を被覆する筒状のベース層1を備える。当該熱収縮チューブ10の形状としては、特に限定されず、円筒、楕円筒、長円筒、角筒等、種々の形状が含まれる。当該熱収縮チューブ10は、これらの中でも円筒状であることが好ましい。当該熱収縮チューブのベース層が円筒状であることで、ベース層1の内周面側に容易に複数の電線を整列させた状態で収容することができる。
【0026】
当該熱収縮チューブ10は、ベース層1のみからなる単層体である。ベース層1は、合成樹脂を主成分とする樹脂組成物から構成される。ベース層1は、複数の電線を外部から視認しやすいよう透明であってもよい。上記合成樹脂としては、例えばポリエチレン、エチレン酢酸ビニル共重合体、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニル、フッ素樹脂等が挙げられる。合成樹脂としては、これらの中でも成型性の観点から、ポリエチレンが好ましい。これらの合成樹脂は、単独で、又は2種以上を混合して用いることができる。ベース層1は、本開示の効果を損なわない範囲で必要に応じて上記合成樹脂以外の他の成分を含有していてもよく、例えば難燃剤、酸化防止剤、銅害防止剤、滑材、着色剤、熱安定剤、紫外線吸収剤等を含有していてもよい。
【0027】
上記難燃剤としては、例えば塩素化パラフィン、塩素化ポリエチレン、塩素化ポリフェニル、パークロルペンタシクロデカン等の塩素系難燃剤、1,2-ビス(2,3,4,5,6-ペンタブロモフェニル)エタン、エチレンビスペンタブロモベンゼン、エチレンビスペンタブロモジフェニル、テトラブロモエタン、テトラブロモビスフェノールA、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモビフェニルエーテル、テトラブロモ無水フタル酸、ポリジブロモフェニレンオキサイド、ヘキサブロモシクロデカン、臭化アンモニウム等の臭素系難燃剤が好ましい。臭素系難燃剤及び塩素系難燃剤は単独で使用しても2種以上を併用してもよい。
【0028】
上記酸化防止剤としては、例えばヒンダードアミン系化合物、ヒンダードフェノール系化合物、サリチル酸誘導体、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物等が挙げられ、特に架橋抑制効果に優れたヒンダードアミン系化合物が好適に使用される。これら酸化防止剤を用いることにより、耐銅害性をさらに向上できる。なお、酸化防止剤としては、上述した以外に硫黄系化合物及び亜リン酸エステル系化合物等を単独又は併用で用いることができる。
【0029】
上記銅害防止剤としては、3-(N-サリチロイル)アミノ-1,2,4-トリアゾール、デカメチレンジカルボン酸ジサリチロイルヒドラジド、2,3-ビス[3-(3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオニル]プロピオノヒドラジド等を挙げることができる。
【0030】
ベース層1の製造においては、始めにベース層1を形成するための上記樹脂組成物を四角筒状に押し出す。そして、押し出された四角筒状体を電離性放射線の照射によって架橋構造を形成し、一旦固定して四角筒状のベース層1aを備えるチューブ2を形成した後、このチューブ2を外側に拡張することでベース層1が得られる。つまり、熱収縮チューブ10は、
図3及び
図4に示す開口部12aを有する四角筒状のベース層1aを外側に拡張することで得られたものである。ベース層1は、加熱されることで、電離性放射線によって固定された四角筒状のベース層1aに戻るよう収縮する。また、この熱収縮においては、熱収縮温度が上記樹脂組成物の融点又は軟化点以上であることが好ましい。熱収縮温度が上記樹脂組成物の融点又は軟化点以上であることで、当該熱収縮チューブを容易に元の形状の四角筒状のチューブに収縮させることができる。対象となる樹脂組成物の主成分が結晶性樹脂である場合には融点を基準とし、この主成分が非晶性樹脂である場合には軟化点を基準として加熱温度を決定する。また、対象となる樹脂組成物が結晶性樹脂と非晶性樹脂との混合物である場合には、加熱温度は、非晶性樹脂の軟化点を基準とする。上記融点又は軟化点は、例えば主成分となる合成樹脂の融点と他の構成成分の融点の加重平均で求めてもよい。
【0031】
当該熱収縮チューブ10は、上記ベース層の熱収縮後の形状が四角筒状である。当該熱収縮チューブ10は、ベース層1が加熱により開口部12aを有する四角筒状のベース層1aに収縮するので、複数の電線を配設させた後に四角筒状体のチューブとして設置できる。従って、複数の電線の設置領域の省スペース化を図ることができる。なお、筒状の熱収縮チューブを四角筒状に収縮させる工程においては、全方向にわたって均一に加熱して収縮させることが好ましい。上記熱収縮チューブを四角筒状に収縮させる工程では、例えばコンベア式収縮加工機などを用いることができる。
【0032】
上記四角筒状のベース層1aの断面形状の四角は広く解釈することができる。上記四角筒状のベース層1aの断面形状としては、例えば長方形、台形、鋭角及び鈍角を有する平行四辺形が挙げられる。断面形状の角はとがっていても丸くてもよく、長丸長方形であってもよい。また、開口部12aの向かい合う短辺は直線のみならず、弓形状、湾形状等のように湾曲していてもよい。
【0033】
ベース層1は均一な厚さを有する構成とすることができる。ベース層1の平均厚さの下限としては、例えば0.1mmが好ましく、0.5mmがより好ましい。一方、ベース層1の平均厚さの上限としては、5.0mmが好ましく、2.0mmがより好ましい。なお、「平均厚さ」とは、任意の10点の厚さの平均値をいう。
【0034】
上述のように、当該熱収縮チューブ10は、複数の電線をまとめて結束するために用いられる。当該熱収縮チューブ10のベース層1が円筒状の場合、平均内径の下限としては、結束する電線のサイズや本数等によって設定可能であるが、ベース層1の平均内径の下限としては、例えば3.0mmが好ましく、6.0mmがより好ましい。一方、ベース層1の平均内径の上限としては、例えば30mmが好ましく、20mmがより好ましい。上記平均内径が上記下限に満たないと、複数の電線の挿入作業が容易でなくなるおそれがある。逆に、上記平均内径が上記上限を超えると、当該熱収縮チューブが不必要に大きくなるおそれがある。なお、「平均内径」とは等面積の真円に換算した内径をいう。
【0035】
ベース層1は、熱収縮後のチューブ2のベース層1aの開口部12aの長手方向に延在する一対の長側壁13の厚さT1が、この上記開口部12aの短手方向に延在する一対の短側壁14の厚さT2より大きくてもよい。この構成によると、当該熱収縮チューブは、一対の短側壁14の方が一対の長側壁13よりも先に収縮する。この構成によると、複数の電線が一列に並べられる場合にこれらの電線を並列方向に密着させやすい。
【0036】
当該熱収縮チューブによれば、複数の電線の外周を被覆する上記ベース層の熱収縮後の形状が四角筒状であるので、複数の電線の設置領域の省スペース化を図ることができる。
【0037】
<接続体>
図5及び
図6を参照して、当該熱収縮チューブ10を用いた一実施形態に係る接続体20について説明する。当該接続体20は、導体3a及び導体3aの外周面側に積層される絶縁層3bを有する複数の電線3と、複数の電線3を被覆するチューブ2とを備える。チューブ2は、当該熱収縮チューブ10が熱収縮したものである。チューブ2は開口部12aを有する四角筒状のベース層1aを有する。本実施形態においては、複数の電線3が、開口部12aの長手方向に一列に配設される。
【0038】
当該接続体20は、チューブ2が開口部12aを有する四角筒状のベース層1aを有するので、複数の電線がコンパクトに収容され、設置領域の省スペース化を図ることができる。
【0039】
当該接続体20は、当該熱収縮チューブ10に複数の電線3が挿入された後に、四角筒状に熱収縮されることで得られる。複数の電線3は、チューブ2の内周面側でチューブ2の長手方向に配設されている。開口部12aの長手方向長さは、複数の電線3の径を合計した長さに略等しい。また、開口部12aの短手方向長さは、複数の電線3の平均径に略等しい。
【0040】
複数の電線3の導体3aの材質としては、導電性を有する限り特に限定されるものではなく、例えば銅、銅合金、アルミニウム、ニッケル、銀、軟鉄、鋼、ステンレス鋼等が挙げられる。複数の電線3の絶縁層3bの主成分としては、例えばポリビニルホルマール、ポリウレタン、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂、ポリエステル、ポリエステルイミド、ポリエステルアミドイミド、ポリアミドイミド、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリエーテルサルフォン等の合成樹脂が挙げられる。
【0041】
なお、個々の電線3のサイズや、電線3の本数等は特に限定されるものではない。電線3の本数としては、一般的には例えば2本以上10本以下とすることができる。
【0042】
当該接続体としては、
図6に示す接続体20のような複数の電線3を1段で配設する形態以外に、1つのチューブ内に複数の電線3を複数の段でランダムに配設することもできる。
図7に示す接続体32は、開口部22a内に9本の電線3が3段に並列に配設されたチューブ22を備える。また、
図8に示す接続体52は、開口部42a内に13本の電線3が3段に並列に配設されたチューブ42を備える。当該接続体は、上記複数の電線を被覆するチューブが四角筒状のベース層を有するので、複数の電線をコンパクトに収容できるとともに、車内等における複数の電線の設置領域の省スペース化を図ることができる。
【0043】
さらに、
図9に示す接続体62のように、複数の電線が一段に並列に配設された接続体を積み上げられた構成にしてもよい。当該接続体62は、開口部12a内に複数の電線3が一段に並列に配設されたチューブ2を接着剤層18により、3段に積層させた構造を有する。この接着剤層は、例えば熱可塑性樹脂又はエラストマー等の公知の接着剤用の樹脂を主成分として用いることができる。上記熱可塑性樹脂としては、例えばポリオレフィン、ポリエステル、ポリアミド等が挙げられる。また、上記エラストマーとしては、例えばブチルゴム、アクリルゴム、天然ゴム等が挙げられる。このように、当該接続体62は、上記複数の電線を被覆するチューブが四角筒状のベース層を有するので、複数の接続体を設置する場合においても、四角筒状であることから、一か所にまとめて配置することが容易となる。
【0044】
当該接続体によれば、上記複数の電線を被覆するチューブが四角筒状のベース層を有するので、複数の電線をコンパクトに収容できるとともに、車等の乗り物、電化製品などの室内空間に設置される場合において、狭い領域にも配置可能であるとともに、複数の電線の設置領域の省スペース化を図ることができる。
【0045】
<熱収縮チューブの製造方法>
次に、
図10を参照して当該熱収縮チューブの製造方法について説明する。当該熱収縮チューブの製造方法は、合成樹脂を主成分とする樹脂組成物を四角筒状に押出す工程と、上記押出す工程で押し出された四角筒状体に電離性放射線を照射する工程と、上記照射する工程後の四角筒状体を上記樹脂組成物の融点又は軟化点以上に加熱する工程と、上記加熱する工程による加熱後の四角筒状体を外側に拡張する工程と、上記拡張する工程による拡張後の筒状体を冷却する工程とを備える。
【0046】
当該熱収縮チューブの製造方法は、上記照射する工程で、上記押出す工程で押し出された四角筒状体に電離性放射線を照射する。そして、上記電離性放射線の照射による架橋によって形状記憶された後に拡張され、この拡張状態で冷却固定されるものである。従って、当該熱収縮チューブの製造方法で得られる熱収縮チューブは加熱された場合にこの四角筒状体に戻るように収縮する。
【0047】
(押出す工程)
上記押出す工程では、ベース層1を形成するための合成樹脂を主成分とする樹脂組成物を四角筒状に押し出す。
【0048】
上記樹脂組成物は、ベース層1の主成分となる上述の合成樹脂及び必要に応じて含まれる添加剤を加えて、例えば溶融混合機により混合することで調製される。溶融混合機としては、公知のもの、例えばオープンロール、バンバリーミキサー、加圧ニーダー、単軸混合機、多軸混合機等を使用できる。
【0049】
上記樹脂組成物を公知の溶融押出成形機を用いて押出成形することで、押出成形品が形成される。具体的には、複数の電線を被覆するチューブの形状である四角筒状体、より詳しくは、当該熱収縮チューブ10の熱収縮後の形状を成形するために四角筒状のスリットを有する押出ダイスを用いて上記樹脂組成物を押出成形する。このように、上記押出す工程で上記樹脂組成物を四角筒状に押し出す。これにより
図11に示すように、当該熱収縮チューブ10の熱収縮後の形状である四角筒状体1b(押出体)が得られる。上記押出す工程において、基材層形成材料の構成材料を架橋することにより、耐熱性を向上させてもよい。
【0050】
上記押出す工程におけるダイス温度は、特に限定されないが、例えば基材層1を形成する樹脂材料の融点又は軟化点より10℃以上100℃以下高い温度とすることができる。
【0051】
上記押出す工程では、上記スリットの幅を調節することで、四角筒状体1bの開口部11aの長手方向に延在する一対の長側壁13aの厚さと開口部11aの短手方向に延在する一対の短側壁14aの厚さとを調節してもよい。例えば上記押出す工程では、四角筒状体1bの長手方向に延在する一対の長側壁13aの厚さを、短手方向に延在する一対の短側壁14aの厚さより大きくしてもよい。
【0052】
(照射する工程)
上記照射する工程では、上記押出す工程で押し出された四角筒状体1bに電離性放射線を照射する。四角筒状体1bを構成する樹脂組成物を照射により架橋させることで、四角筒状体1bの形状が固定される。これにより、当該熱収縮チューブの製造方法で得られる熱収縮チューブは、加熱されると熱収縮して四角筒状体1bに戻ることになる。
【0053】
上記照射する工程で用いる電離性放射線としては、例えば電子線、γ線、X線、α線等が挙げられ、中でも電子線が好ましい。
【0054】
上記電離性放射線の照射線量は上記樹脂組成物を十分に架橋できる限り特に限定されないが、上記照射線量の下限としては、例えば30kGyが好ましく、180kGyがより好ましい。一方、上記照射線量の上限としては、例えば500kGyが好ましく、360kGyがより好ましい。
【0055】
(加熱する工程)
上記加熱する工程では、上記照射する工程後の四角筒状体1bを上記樹脂組成物の融点又は軟化点以上に加熱する。上記加熱する工程により次工程の拡張する工程で四角筒状体1bを容易に拡張できる。上記加熱する工程では、四角筒状体1bを軸方向に搬送しつつ上記樹脂組成物の融点又は軟化点以上に加熱する。上記加熱する工程における加熱温度としては、上記樹脂組成物の融点又は軟化点に対応して設定可能であるが、上記加熱温度の下限としては、例えば70℃が好ましく、150℃がより好ましい。一方、上記加熱温度の上限としては、例えば230℃が好ましく、200℃がより好ましい。また、加熱時間としては、例えば30秒以上5分以下とできる。
【0056】
(拡張する工程)
上記拡張する工程では、上記加熱する工程で加熱され、軸方向に搬送される四角筒状体1bを外側に拡張する。上記拡張する工程は、例えば楕円柱状の内部空間を有するサイジング管を用いて行うことができる。上記拡張する工程では、例えば四角筒状体1bの端部開口からこの四角筒状体1b内に気体を供給しつつ、上記サイジング管の内部空間を減圧する。これにより、上記拡張する工程では、四角筒状体1bの内圧と、上記サイジング管の内部空間の圧力との差圧に基づいて四角筒状体1bを外側に拡張する。
【0057】
上記拡張する工程では、上述したように、拡張後の形態は特に限定されず、例えば円筒、楕円筒、長円筒、角筒等、種々の形状に拡張してもよい。これらの中でも、
図12に示すように、円筒状体1cに拡張することが好ましい。このように、上記拡大する工程で、上記四角筒状体を円筒状に拡張することで、当該熱収縮チューブを容易に製造できるとともに、複数の電線を効率よく当該熱収縮チューブに収容できる。
【0058】
(冷却する工程)
上記冷却する工程では、上記拡張する工程で拡張された筒状体を上記樹脂組成物の融点又は軟化点以下に冷却する。拡張された筒状体を上記樹脂組成物の融点又は軟化点以下に冷却することで、拡張された筒状体の形状を固定できる。上記冷却する工程における冷却温度の上限としては、例えば10℃が好ましく、23℃がより好ましい。一方、上記冷却温度の下限としては、例えば-40℃が好ましく、0℃がより好ましい。上記冷却工程における冷却方法として、例えば水冷方式の方法を用いることができる。
【0059】
なお、当該熱収縮チューブの製造方法は、上記冷却する工程後の筒状体を巻き取る工程をさらに備えていてもよい。また、当該熱収縮チューブの製造方法は、上記冷却する工程後、又は巻き取る工程後の筒状体を所望の長さに切断する工程をさらに備えていてもよい。
【0060】
当該熱収縮チューブの製造方法によれば、上記照射する工程で、上記押出す工程で押し出された四角筒状体に電離性放射線を照射するので、ベース層の熱収縮後の形状が四角筒状である熱収縮チューブを製造できる。従って、複数の電線の設置領域の省スペース化を図ることができる熱収縮チューブを得ることができる。
【0061】
[その他の実施形態]
今回開示された実施の形態は全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、請求の範囲によって示され、請求の範囲と均等の意味及び範囲内での全ての変更が含まれることが意図される。
【0062】
当該熱収縮チューブは、本開示の効果を損なわない範囲で、上記ベース層以外の他の層を有していてもよい。
【符号の説明】
【0063】
1,1a ベース層
1b 四角筒状体
1c 円筒状体
2,22,42 チューブ
3 電線
3a 導体
3b 絶縁層
10 熱収縮チューブ
11a,12a,22a,42a 開口部
13,13a 長側壁
14,14a 短側壁
18 接着剤層
20、32、52、62 接続体