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特許7276981振動制御システムを有するラウドスピーカ
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】振動制御システムを有するラウドスピーカ
(51)【国際特許分類】
   H04R 9/04 20060101AFI20230511BHJP
   H04R 9/02 20060101ALI20230511BHJP
   H04R 1/28 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H04R9/04 105Z
H04R9/02 101Z
H04R1/28 310Z
【請求項の数】 8
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018053273
(22)【出願日】2018-03-20
(65)【公開番号】P2018170762
(43)【公開日】2018-11-01
【審査請求日】2021-03-17
(31)【優先権主張番号】102017000034713
(32)【優先日】2017-03-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】517164914
【氏名又は名称】アスク インダストリーズ ソシエイタ´ パー アゾーニ
【氏名又は名称原語表記】ASK INDUSTRIES SOCIETA‘ PER AZIONI
(74)【代理人】
【識別番号】100091683
【弁理士】
【氏名又は名称】▲吉▼川 俊雄
(74)【代理人】
【識別番号】100179316
【弁理士】
【氏名又は名称】市川 寛奈
(72)【発明者】
【氏名】サンシシ,カルロ
(72)【発明者】
【氏名】チナニ,ダリオ
(72)【発明者】
【氏名】ファルツィオニ,アンドレア
【審査官】辻 勇貴
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-062298(JP,A)
【文献】特開2000-350278(JP,A)
【文献】特開平09-322294(JP,A)
【文献】実開昭61-075696(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04R 9/04
H04R 9/02
H04R 1/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動制御システムを有するラウドスピーカ(1)であって、
-下部極板(2)と上部極板(29)の間に配置されたマグネット(28)を備える磁気組立体(M)であって、前記下部極板(2)が、前記下部極板のコア(20)と上部極板(29)の間にエアギャップ(T)を作り出すような方法で前記コア(20)を備える磁気組立体(M)と、
-筒状支持物(30)により支持されたボイスコイル(3)と、
-前記磁気組立体(M)に接続されたバスケット(4)と、
-前記ボイスコイル(3)が前記エアギャップ(T)内に配置されるような方法で前記バスケット(4)および前記筒状支持物(30)に接続され、前記磁気組立体(M)に対して前記筒状支持物(30)が軸方向に動くことができるように弾性的に動くことが意図されるセンタリング機器(5)と、
-前記バスケット(4)および前記筒状支持物(30)に接続された膜(6)と、
-前記磁気組立体(M)の周囲に配置された外筒(7)と、
-前記磁気組立体(M)に対して前記外筒(7)が軸方向に動くことができるように前記外筒(7)に接続された少なくとも1つの弾性支持(8、8’)と
を備え、
前記下部極板(2)および前記上部極板(29)とそれぞれ対応する位置に配置された2つの制御コイル(71、72)をさらに備え、
前記弾性支持(8、8’)は、前記磁気組立体(M)に接続された内部の環(80)、前記外筒(7)に接続された外部の環(81)、および前記弾性支持の前記外部の環(81)に前記内部の環(80)を接続する複数の弾性的に撓むスポーク(82)を備えることを特徴とするラウドスピーカ(1)。
【請求項2】
前記外筒は、強磁性物質から作られる、請求項1に記載のラウドスピーカ(1)。
【請求項3】
前記外筒(7)が一体化された、カップ(70)を備え、前記カップ(70)が、前記磁気組立体(M)の下方に配置された底部を有する、請求項1または2に記載のラウドスピーカ(1)。
【請求項4】
前記弾性支持(8)は、前記カップ(70)を前記磁気組立体の前記下部極板(2)に接続し、塑性物質から作られた板バネ、コイルバネ、波形バネ、または弾性要素を備える、請求項3に記載のラウドスピーカ(1)。
【請求項5】
前記カップ(70)の前記底部は、弾性のある塑性物質から作られ、前記弾性支持が、少なくとも部分的に前記カップ(70)の前記底部の中に一体化される、請求項3に記載のラウドスピーカ(1)。
【請求項6】
振動制御システムを有するラウドスピーカ(1)であって、
-下部極板(2)と上部極板(29)の間に配置されたマグネット(28)を備える磁気組立体(M)であって、前記下部極板(2)が、前記下部極板のコア(20)と上部極板(29)の間にエアギャップ(T)を作り出すような方法で前記コア(20)を備える磁気組立体(M)と、
-筒状支持物(30)により支持されたボイスコイル(3)と、
-前記磁気組立体(M)に接続されたバスケット(4)と、
-前記ボイスコイル(3)が前記エアギャップ(T)内に配置されるような方法で前記バスケット(4)および前記筒状支持物(30)に接続され、前記磁気組立体(M)に対して前記筒状支持物(30)が軸方向に動くことができるように弾性的に動くことが意図されるセンタリング機器(5)と、
-前記バスケット(4)および前記筒状支持物(30)に接続された膜(6)と、
-前記磁気組立体(M)の周囲に配置された外筒(7)と、
-前記磁気組立体(M)に対して前記外筒(7)が軸方向に動くことができるように前記外筒(7)に接続された1つの弾性支持(8’)と
を備え、
前記上部極板(29)の周辺縁部に対応させて配置された1つの制御コイル(72)だけをさらに備え、前記制御コイル(72)を支持する前記外筒(7)が、前記弾性支持(8’)を用いて前記上部極板(29)に接続されることを特徴とするラウドスピーカ(1)。
【請求項7】
前記下部極板(2)が、前記マグネット(28)の直径および前記上部極板(29)の直径よりも大きな外径を有し、
前記下部極板(2)が、前記下部極板の縁部から最上部で突出する周辺カラー(24)を有し、前記上部極板(29)と前記下部極板の前記周辺カラー(24)の間にエアギャップ(T’)を形成するような方法で、外筒(7)の外側に配置され、
前記外筒(7)が、非強磁性物質から作られ、
制御コイル(72)が、前記エアギャップ(T’)内に配置される、
請求項6に記載のラウドスピーカ(1)。
【請求項8】
-前記筒状支持物(30)、前記ボイスコイル(3)、前記センタリング機器(5)、および前記膜(6)を備える第1の可動性組立体と、
-前記外筒(7)および少なくとも1つの前記制御コイル(71、72)を備える第2の可動性組立体と
を備え、
前記第2の可動性組立体の質量が、前記第1の可動性組立体の質量よりも3~5倍大きい、
請求項1~7のいずれか一項に記載のラウドスピーカ(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
産業上の発明に関する本特許出願は、ラウドスピーカにより作り出され、ラウドスピーカが搭載されたバッフル(箱、パネル、ドアパネル、背後の棚板など)上に誘起された振動を制御するための解決策に関する。
【背景技術】
【0002】
図1および図2を参照すると、従来型のラウドスピーカ(100)は、磁気組立体(M)を備え、そこでは、ギャップ(T)が作り出される。磁気組立体(M)は、下部極板(2)と上部極板(29)の間に配置されたマグネット(28)を備える。
【0003】
下部極板(2)は、「T」字形断面を有し、一般に「T-ヨーク」として知られている。下部極板(2)は、コア(20)として知られる筒状軸部を備える。マグネット(28)および上部極板(29)はトロイド形状を有する。下部極板のコア(20)と上部極板(29)の間に、ギャップ(T)が形成される。
【0004】
ボイスコイル(3)は筒状支持物(30)に搭載され、磁気組立体のエアギャップ(T)内に配置され、軸方向に動く可能性がある。バスケット(4)は、磁気組立体(M)に固定される。
【0005】
センタリング機器(5)は、磁気組立体のエアギャップ(T)内にボイスコイル(3)を維持するような方法で、バスケット(4)、およびボイスコイルの筒状支持物(30)に固定される。膜(6)は、バスケット(4)、およびボイスコイルの筒状支持物(30)に固定される。
【0006】
ラウドスピーカ(100)は、バスケット(4)の外縁部を用いて、バッフル(図示せず)に接続されるのに適している。
【0007】
放射状の磁場の中に置かれたボイスコイル(3)に電流が横切ったとき、ローレンツの法則により力が発生し、それにより、ボイスコイルの筒状支持物(30)は軸方向に動かされ、音を発生させる膜(6)の動きおよび振動が引き起こされる。したがって、膜(6)の変位のために、ラウドスピーカ(100)は音を生み出す。
【0008】
ラウドスピーカは、膜(6)と、センタリング機器(5)と、ボイスコイルを有する筒状支持物(30)とを備える可動部分を備える。可動部分の慣性質量が動くために、可動部分は、ラウドスピーカが搭載されたバッフル上に、誘起された振動を発生させる可能性がある。その結果、バッフルが振動して、不要の音を発生させる可能性がある。
【0009】
図1Aを参照すると、従来型ラウドスピーカでは、外側に分散させられ、かつ使用されない、周辺の磁気誘導線(I)が、磁気組立体(M)の周辺縁部の近辺に発生することに留意しなければならない。
【0010】
さらに、いくつかの適用例では、ラウドスピーカにより放出される低周波音と調和させてバッフルの振動を増大させる必要がある。そのような場合、バッフルの振動を効果的に制御することができるシステムが望ましい。
【0011】
米国特許第4720868号明細書が、高周波音を再現するための小型振動板、およびスピーカのマグネット組立体の近辺に追加コイル有するダイナミックスピーキング機器を開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【文献】米国特許第4720868号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明の目的は、ラウドスピーカが搭載されたバッフルの振動を制御することができる振動制御システムを有するラウドスピーカを開示することにより、従来技術の欠点を除去することである。
【0014】
別の目的は、コンパクトで、安価で、作成および設置が簡単なようなラウドスピーカを得ることである。
【課題を解決するための手段】
【0015】
これらの目的は、独立請求項である請求項1の特性を有する本発明により達成される。
【0016】
本発明の有利な実施形態は、従属請求項から明らかになる。
【0017】
ラウドスピーカが搭載されたバッフルの振動に対抗するために、本発明は、ラウドスピーカ構造物の中への加振機(shaker)の一体化を提供する。電気信号で適切に作動させられる加振機が、ラウドスピーカの可動部分の動きにより誘起される、望ましくない振動に対抗し、望ましくない振動を低減する/抑制するのに適している誘起振動をバッフル上に発生させる。
【0018】
本発明の他の特徴は、単に例示的であり、限定していない実施形態を参照する、以下の詳細な説明からより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】従来型ラウドスピーカの軸方向の断面図である。
図1A】従来型ラウドスピーカ内の磁気誘導線を示す、図1の詳細図である。
図2図1のラウドスピーカのさまざまな要素の分解斜視図である。
図3】本発明によるラウドスピーカの軸方向の断面図である。
図3A】本発明によるラウドスピーカ内の磁気誘導線を示す、図3の詳細図である。
図4図3のラウドスピーカのさまざまな部分の分解斜視図である。
図5】本発明によるラウドスピーカの他の実施形態を示す断面図である。
図6】本発明によるラウドスピーカの他の実施形態を示す断面図である。
図7】力学的に検討するための、本発明によるラウドスピーカの概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下の説明では、上記で説明した部分と同一の、またそれに対応する部分を、同じ数字で識別し、それらの詳細な説明を省略する。
【0021】
図3および図4を参照すると、全体を参照番号1で示す、本発明によるラウドスピーカが開示されている。
【0022】
ラウドスピーカ(1)は、前記磁気組立体(M)の周囲に配置された外筒(7)を備える。外筒は、強磁性物質から作られる。外筒(7)は、磁気組立体(M)の方向を向いた少なくとも1つの制御コイル(71、72)を支持する。
【0023】
少なくとも1つの弾性支持(8、8’)は、磁気組立体を基準として同軸の位置に外筒(7)を維持するような方法で、外筒(7)および磁気組立体(M)に接続される。上記を考慮すると、制御コイル(71、72)を作動させるとき、外筒(7)は、磁気組立体(M)の磁場を使用して軸方向に動くことができる。磁気組立体(M)を基準として外筒(7)が動くことにより、ラウドスピーカが搭載されたバッフル(図に示さず)上の振動を制御することができるようになる。
【0024】
磁気組立体(M)、少なくとも1つの制御コイル(71、72)を支持する外筒(7)、および弾性支持(8、8’)が、少なくとも1つの制御コイル(71、72)を慣性質量として支持する外筒(7)を有する加振機として動作する。
【0025】
図3および図4の実施例では、ラウドスピーカ(1)は、外筒(7)に搭載された第1の制御コイル(71)および第2の制御コイル(72)を備える。第1の制御コイル(71)および第2の制御コイル(72)は、それぞれ磁気組立体の下部極板(2)および上部極板(29)に配置される。
【0026】
ラウドスピーカ(1)は、
-下部極板(2)、および外筒(7)の下方縁部に固定された第1の弾性支持(8)、ならびに
-上部極板(29)、および外筒(7)の上方縁部に固定された第2の弾性支持(8’)
を備える。
【0027】
各弾性支持(8、8’)は、磁気組立体(M)に固定されるのに適した内部の環(80)、および外筒(7)に固定されるのに適した外部の環(81)を備える。複数のスポーク(82)は、内部の環(80)を弾性支持の外部の環(81)に接続する。スポーク(82)の厚さは、弾性的に曲がるように、非常に薄い。スポーク(82)は、実質的に「S」字型曲線形状を有する。外部の環(81)は、外筒(7)の縁部を受け入れるのに適した溝(83)を有する。内部の環(80)は、磁気組立体(M)上に接着されるのに適した平面を有する。
【0028】
下部極板(2)は、
-コア(20)が突出する中央部(21)、および
-中央部(21)に対してくぼんだ周辺部(22)
を備える。
【0029】
明らかに、下部極板(2)は、下部平面を有する。
【0030】
弾性支持の内部の環(80)は、下部極板の周辺部(22)に固定され、弾性支持の下面が下部極板の中央部(21)の下面と実質的に同じレベルになるように適切な厚さを具備する。
【0031】
図3Aを参照すると、磁気組立体(M)の周辺縁部と、ラウドスピーカ(1)の外筒(7)の間に、周辺磁気誘導線(I)を伴うエアギャップ(T’)が作り出される。エアギャップ(T’)に影響を及ぼす、放射状の周辺線(I’)が、前記周辺線の間に見いだされる。そのような場合、従来型ラウドスピーカと異なり、周辺磁気誘導線(I)は、外側に分散させられるのではなく、強磁性外筒(7)により運ばれ、外筒(7)に固定された制御コイル(71、72)が位置決めされたエアギャップ(T’)を放射状に通過する。電流が制御コイル(71、72)を作動させるとき、ローレンツ力により、制御コイル(71、72)、および制御コイル(71、72)が接着された外筒(7)の変位が引き起こされる。
【0032】
2つの制御コイル(71、72)は、一般に直列に接続される。制御コイル(71、72)では、電流は、一般に逆方向に循環する。
【0033】
図5は、ラウドスピーカ(1)の第2の実施形態を示し、そこでは、外筒(7)は、磁気組立体(M)の下方に広がるカップ(70)の中に一体化される。カップ(70)は、少なくとも1つの弾性支持(8)を通して磁気組立体の下部極板(2)に接続される。
【0034】
弾性支持(8)は、板バネ、コイルバネ、波形バネ、または塑性物質(ゴム、シリコーンゴム、ポリウレタンフォームなど)の弾性要素を備えることができる。図3に示すように、下部極板(2)に固定された内部の環、外筒(7)に固定された外部の環、および内部の環と外部の環を接続するスポークを備える、2つの弾性支持(8)を提供してもよい。
【0035】
外筒(7)を、カップ(70)と一体となって作ることができ、そのような場合、全体の部分が、強磁性物質から作られる。
【0036】
あるいは、カップ(70)は、カップの底部を部分的に塑性物質から作ることができる。そのような場合、カップ(70)の塑性部分は、少なくとも部分的に弾性支持を一体化することができる。カップ(70)は、強磁性物質からなる外筒(7)と、たとえば、2つの異なる物質(強磁性物質および塑性物質)を共成形(co-molding)することにより得られる塑性物質からなる底部とを備えることができる。カップ(70)の塑性部分は、2つの弾性支持を一体化することができる。
【0037】
図3および図5に示す解決策では、2つの制御コイル(71、72)と調和させて、2つのエアギャップを得る。それにもかかわらず、ラウドスピーカ(1)は、エアギャップの中に置かれた制御コイルを1つだけ具備することができる。
【0038】
図6は、上部極板(29)の周辺縁部と調和させて配置された1つの制御コイル(72)だけを具備する、ラウドスピーカ(1)の第3の実施形態を示す。そのような場合、加振機の慣性質量は、外筒(7)に固定された追加質量(図に示さず)と最終的に一体化する制御コイル(72)の質量、および外筒(7)の質量により表される。この場合、外筒がエアギャップ内の磁気誘導線に干渉するので、外筒を強磁性物質から作るべきではない。
【0039】
制御コイル(72)を支持する外筒(7)を、弾性支持(8’)を用いて上部極板(29)に固定する。
【0040】
下部極板(2)の外径は、マグネット(28)の直径および上部極板(29)の直径よりも大きい。下部極板(2)が、下部極板の縁部から上部の位置に突出し、かつ外筒(7)の外側に配置された周辺カラー(24)を有する。上記を考慮すると、上部極板(29)と、下部極板の周辺カラー(24)との間に、エアギャップ(T’)が形成される。したがって、制御コイル(72)が、前記エアギャップ(T’)内に配置される。
【0041】
本発明のラウドスピーカ(1)は、従来型ラウドスピーカの磁気組立体(M)の外側に発生した磁場内に配置された少なくとも1つの制御コイル(71、72)を有する1つの外筒(7)を提供する慣性システム(加振機)と、従来型ラウドスピーカ(振動する膜を有する)の一体化を提供する。慣性システムの制御コイル(71、72)は、
-ノイズを低減する適用例では、バッフル上に誘起された振動を低減する、または
-低音を増強する適用例(低音ブースタ)では、バッフル上に誘起された振動を増強する
ように、適切な信号で電気的に作動させられる。
【0042】
音響感覚と共に振動感覚が望まれるとき、低音ブースタ適用例が必要となる。たとえば、本発明によるラウドスピーカ(1)を座席内に一体化することにより、前記低音を増強する適用例を得ることができる。このようにして、ユーザは、加振機の動きにより生み出される座席振動が増大するのを感知し、ラウドスピーカの膜(6)の動きにより生み出された低周波の音響放出を同時に伴う。
【0043】
ラウドスピーカ(1)の制御コイルを、DSP、増幅器、およびフィルタを用いて、電気的に作動させることができる。
【0044】
本発明のラウドスピーカ(1)は、コンパクトであり、ノイズ/振動を制御する適用例で、ANC(active noise control、アクティブ・ノイズ・コントロール)システムで、またはオーディオ再生システムで低周波により発生した振動を増強するために使用される適用例で、使用することができる。
【0045】
図7を参照して、本発明によるラウドスピーカ(1)の力学的検討について説明する。
【0046】
力学では、ラウドスピーカに固定された加振機を、しばしば2-DOF(two degrees of freedom、自由度2の)TMD(Tuned Mass Damper、同調質量ダンパ)として知られる、動的振動のためのダンパとして識別し、検討することができる。TMDは、第2の振動子(加振機)を結合することにより、振動子(ラウドスピーカ)の幅を減衰させるのに適したシステムである。
【0047】
M、K、Cは、それぞれラウドスピーカの質量、剛性、および減衰を表し、一方、m、k、cは、それぞれ加振機の質量、剛性、および減衰を表す。
【0048】
図4を参照すると、ラウドスピーカの質量は、筒状支持物(30)、ボイスコイル(3)、センタリング機器(5)、および膜(6)の重さである。代わりに、加振機の質量は、外筒(7)および制御コイル(71、72)の重さである。
【0049】
x1およびx2は、それぞれMおよびmの絶対位置を表し、x2を、x2-x1と仮定する、Mを基準としたmの相対位置で置換することができる。
【0050】
減衰力が速度に比例し、かつMに対して力p0cos(ωt)が加えられると仮定し、簡略化してC=0とすると、システムの運動を、微分方程式で表すことができる。
Mx1”+Kx1+k(x1-x2)+c(x1’-x2’)=p0cos(ωt)
mx2”+k(x2-x1)+c(x2’-x1’)=0
式中x1’は、x1の時間微分であり、最初の式の代わりに2つの式の和を用いると次式を得る。
Mx1”+Kx1+mx2”=p0cos(ωt)
mx2”+k(x2-x1)+c(x2’-x1’)=0
【0051】
次いで、以下の形の周期解を得る。
x1=acos(ωt)+bsin(ωt)
x2=ccos(ωt)+dsin(ωt)
【0052】
微分方程式に代入し、以下の方程式系を得る。
【0053】
【数1】
【0054】
行列係数をMと呼ぶと、Mをブロックの形で書き表し、逆行列を得ることができる。
【0055】
【数2】
【0056】
したがって、次式となる。
【0057】
【数3】
【0058】
式中、以下の関係が成り立つ。
A=r1l,B=r2l,C=r3l-s1W,D=r4l+s1W,
r1=K-Mω,r2=-mω,r3=-k、r4=k-mω,s1=cω
【0059】
AとBを交換し、次式を得る。
【0060】
【数4】
【0061】
ここで、rおよびsを次式で定義する。
AC-BC=(r1r4-r2r3)l+s1(r1+r2)W=rl+sW
【0062】
その結果、次式となる。
【0063】
【数5】
【0064】
x1の幅A1およびx2の幅A2は次式となる。
【0065】
【数6】
【0066】
明示的に、A1およびA2を書き表すことができる。
【0067】
【数7】
【0068】
これらの式から、以下の定数を書き表すことができる。
【0069】
【数8】
【0070】
上式から、次式を得る。
c=2ξmω2
C=2ξmω
【0071】
剛性関係は、k=μKである。
【0072】
構造物の基本波でダンパを同調させるとき、ダンパ周波数の最良近似を次式で得る。
ω2=ω1
f=ω2/ω1
上式から、最適周波数は、ω2=f最適ω1である。
【0073】
次式の周期的励振を考慮する場合、
p=p0sin(Ωt)
応答が次式で与えられる。
u1=x1sin(Ωt+δ1)
u2=x2sin(Ωt+δ1+δ2)
式中、xおよびδは、それぞれ変位の幅および位相シフトを示す。臨界負荷は、共振条件Ω=ωの状態にあり、そのような場合、解が次式の形となる。
【0074】
【数9】
【0075】
ダンパがない場合の応答が次式で与えられる。
【0076】
【数10】
【0077】
これらの2つの場合を比較すると、式(1)が、等価な減衰比によって表される。
【0078】
【数11】
【0079】
式中、
【0080】
【数12】
【0081】
である。
【0082】
式(3)は、全減衰に対する、ダンパパラメータの相対寄与を表す。質量比が増大するとき、減衰が増大する。
本発明によるラウドスピーカの寸法
【0083】
ξ=0で、制動比が10%とする。式(3)を使用し、ξ=0.1を挿入することにより、μとξの間の関係を次式で得る。
【0084】
【数13】
【0085】
相対変位は、式(2)により与えられる。
【0086】
【数14】
【0087】
式(4)と(5)を組み合わせて、ξ=0を代入すると、次式を得る。
【0088】
【数15】
【0089】
式(6)を近似し、平方根と2乗を消去して、次式を得る。
【0090】
【数16】
【0091】
式(3)から、式(7)の一般形は次式となる。
【0092】
【数17】
【0093】
たとえば、x2=(x1)/20と選択すると、μの推定値に到達する。
【0094】
【数18】
【0095】
一方、式(2)から、次式を得る。
【0096】
【数19】
【0097】
剛性関係k=μKから、次式を得る。
k=μK=20K
【0098】
特殊な事例では、10%の減衰を考慮すると、式(8)から、ラウドスピーカの可動組立体の質量(M)よりも4倍大きい、加振機の可動組立体の質量(m)を得る。類似の解決策では、有利には、加振機の可動組立体の質量(m)を、ラウドスピーカの可動組立体の質量(M)よりも3~5倍大きくすることができる。
【0099】
数多くの均等の変形および修正を、本発明の本実施形態に行うことができ、それらの変形および修正は、当業者が理解できる範囲内にあり、いずれの場合にも本発明の範囲に入る。
図1
図1A
図2
図3
図3A
図4
図5
図6
図7