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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】軸流タービン
(51)【国際特許分類】
   F01D 9/02 20060101AFI20230511BHJP
   F01D 25/16 20060101ALI20230511BHJP
   F01D 25/24 20060101ALI20230511BHJP
   F02C 7/06 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
F01D9/02 101
F01D25/16 Z
F01D25/24 G
F02C7/06 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2019138830
(22)【出願日】2019-07-29
(65)【公開番号】P2021021371
(43)【公開日】2021-02-18
【審査請求日】2022-02-07
(73)【特許権者】
【識別番号】317015294
【氏名又は名称】東芝エネルギーシステムズ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001092
【氏名又は名称】弁理士法人サクラ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田島 嗣久
(72)【発明者】
【氏名】猪亦 麻子
【審査官】藤原 弘
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-078703(JP,A)
【文献】中国実用新案第206129330(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第101215977(CN,A)
【文献】実開昭60-041501(JP,U)
【文献】特開平11-303607(JP,A)
【文献】特開2017-133379(JP,A)
【文献】特開昭58-035205(JP,A)
【文献】特開昭55-007936(JP,A)
【文献】特開平06-050105(JP,A)
【文献】韓国登録特許第10-1831837(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01D 1/00-11/24
F01D 25/00-25/36
F02C 9/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンロータの回転軸が水平方向に沿っており、作動媒体が前記回転軸に沿って流れることによって前記タービンロータが回転方向に回転する軸流タービンであって、
前記作動媒体が通過する開口部および前記作動媒体が通過しない閉止部を有する部分送入構造のノズル翼列が設けられているタービン段落
を備え、
前記部分送入構造のノズル翼列において
前記開口部は、
前記部分送入構造のノズル翼列の上半部分に設けられている第1開口部と、
前記部分送入構造のノズル翼列の下半部分に設けられている第2開口部と
を含み、
前記上半部分において前記第1開口部が設けられた割合と、前記下半部分において前記第2開口部が設けられた割合とが異なっており、
前記閉止部は、
前記第1開口部よりも前記回転方向の前方であって、前記第2開口部よりも前記回転方向の後方に位置しており、前記上半部分と前記下半部分との境界を介して前記回転方向に延在している第1閉止部と、
前記第1開口部よりも前記回転方向の後方であって、前記第2開口部よりも前記回転方向の前方に位置しており、前記上半部分と前記下半部分との境界を介して前記回転方向に延在している第2閉止部と
を含み、
前記第1閉止部および前記第2閉止部は、前記上半部分と前記下半部分との境界で互いが対面する部分を有する、
軸流タービン。
【請求項2】
前記部分送入構造のノズル翼列は、前記タービンロータを回転自在に支持する軸受に加わる面圧が予め定めた範囲になるように、前記上半部分において前記第1開口部が設けられた割合と、前記下半部分において前記第2開口部が設けられた割合とが設定されている、
請求項1に記載の軸流タービン。
【請求項3】
前記部分送入構造のノズル翼列は、前記第1開口部と前記第2開口部との少なくとも一方複数設けられている、
請求項1または2に記載の軸流タービン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、軸流タービンに関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術に係る軸流タービン4を構成するタービン段落の要部について、図5を用いて説明する。図5は、鉛直面(xz面)の一部断面を模式的に示しており、縦方向が鉛直方向zであり、横方向が第1水平方向xであり、紙面に直交する方向が第2水平方向yである。図5は、作動媒体の流れ方向Mに関して太い矢印で示しており、左側が上流側Usであって右側が下流側Dsである。
【0003】
図5に示すように、軸流タービン4において、タービンロータ43は、ロータ本体部431にロータディスク432が設けられている。タービンロータ43において、ロータ本体部431は、円柱状の棒状体であって、回転軸AXが第1水平方向xに延在しており、軸受(図示省略)に回転自在に支持されている。ロータディスク432は、ロータ本体部431の外周面において凸状に突き出るように複数設けられている。複数のロータディスク432は、回転軸AXに沿った軸方向(x)において間を隔てて配置されている。そして、ロータディスク432の外周面に動翼46が設けられている。
【0004】
動翼46は、タービンロータ43の径方向において内側(図5では下側)に植込部461が設けられている。植込部461は、ロータディスク432の外周面に嵌合されている。そして、動翼46は、タービンロータ43の径方向において外側(図5では上側)に、シュラウド462が設けられている。動翼46は、翼有効部であって、タービンロータ43の回転方向R(周方向)に複数が配置されており、複数の動翼46が動翼翼列(動翼構造体)を構成している。
【0005】
タービン段落において、ノズル翼45(静翼)は、動翼46の上流側に設けられている。ノズル翼45は、ノズル内輪451とノズル外輪452との間の環状空間SP1に設けられている。ノズル内輪451は、タービンロータ43の径方向においてノズル翼45の内側に位置している。そして、ノズル内輪451の内周面には、シールフィン451fが設けられている。ノズル外輪452は、タービンロータ43の径方向においてノズル翼45の外側に位置している。そして、ノズル外輪452の内周面において、シュラウド462の外周面に対面する部分には、シールフィン452fが設けられている。ノズル翼45は、タービンロータ43の回転方向Rに複数が配置されており、複数のノズル翼45がノズル翼列(静翼構造体)を構成している。
【0006】
図示を省略しているが、軸流タービン4には、上記のように構成されるタービン段落が回転軸AXに沿った軸方向に複数設けられている。軸流タービン4を構成する複数のタービン段落においては、上流側Usから下流側Dsへ向かうに伴って、翼高さが高くなっている。軸流タービン4では、作動媒体が回転軸AXに沿った軸方向(x)に流れる。このとき、作動媒体は、回転軸AXに沿った軸方向(x)に並ぶ複数段のタービン段落のそれぞれにおいて膨張して仕事を行う。これにより、軸流タービン4においては、タービンロータ43が回転方向Rへ回転し、たとえば、タービンロータ43に連結された発電機(図示省略)が駆動する。
【0007】
図6は、関連技術に係る軸流タービンにおいて、翼高さHと2次損失ξsecとの関係を示す図である。2次損失ξsecは、通路の壁に沿って流れる境界層の流れ(2次流れ)が、壁面の影響によって渦を巻いた流れになることに起因する損失をいう。
【0008】
図6に示すように、翼高さHが小さくなるに伴って、2次損失ξsecが大きくなっている。このため、翼高さHが低いタービン段落では、2次損失ξsecが大きい。その結果、タービンの性能低下の原因になっている。
【0009】
2次損失ξsecを低減するために、翼高さHが低いタービン段落では、たとえば、部分送入構造のノズル翼列が適用されている。部分送入構造のノズル翼列では、全周送入構造の場合よりも翼高さHを大きくすることができるので、2次損失ξsecが低減し、軸流タービンの性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【文献】特開平2-78703号公報
【文献】特開昭58-35205号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
図7Aおよび図7Bを用いて、関連技術に係る軸流タービンのタービン段落における部分送入構造のノズル翼列に関して説明する。図7Aおよび図7Bにおいては、図示を省略しているが、部分送入構造のノズル翼列においてノズル内輪451とノズル外輪452との間に介在する環状空間SP1に関して、回転軸AXに沿った軸方向(x)を視線としたときの様子を示している(図5参照)。つまり、回転軸AXが直交する鉛直面における断面を示している。また、図7Aおよび図7Bでは、上半部分と下半部分とを区画する補助線を破線で示している。
【0012】
図7Aおよび図7Bに示すように、部分送入構造のノズル翼列において、環状空間SP1は、真円形状であって、作動媒体が通過する開口部51と、作動媒体が通過しない閉止部52とを含む。図示を省略しているが、開口部51には、ノズル翼45(図5参照)が設けられている。
【0013】
図7Aでは、開口部51は、円弧状であって、環状空間SP1において上半部分(破線よりも上方側)に位置する上半側空間部SP1Aの一部に設けられている。そして、閉止部52は、円弧状であって、環状空間SP1の上半側空間部SP1Aのうち開口部51が設けられた部分以外の部分と、環状空間SP1において下半部分(破線よりも下方側)に位置する下半側空間部SP1Bの全部に設けられている。この場合、開口部51が設けられた上半側空間部SP1Aでは作動媒体が通過するが、開口部51が設けられていない下半側空間部SP1Bでは作動媒体が通過しない。その結果、上半側空間部SP1Aと下半側空間部SP1Bとの間に圧力差が発生するので、図7Aに示すように、上半側から下半側へ向かう方向へ力FAが、タービンロータ43(図5参照)に作用する。
【0014】
図7Bでは、図7Aの場合と異なり、開口部51は、環状空間SP1において下半側空間部SP1Bの一部に設けられている。そして、閉止部52は、環状空間SP1の下半側空間部SP1Bのうち開口部51が設けられた部分以外の部分と、環状空間SP1の上半側空間部SP1Aの全部に設けられている。この場合、開口部51が設けられた下半側空間部SP1Bでは作動媒体が通過するが、開口部51が設けられていない上半側空間部SP1Aでは作動媒体が通過しない。その結果、上半側空間部SP1Aと下半側空間部SP1Bとの間に圧力差が発生するので、図7Bに示すように、下半側から上半側へ向かう方向へ力FBが、タービンロータ43(図5参照)に作用する。
【0015】
上記においてタービンロータ43(図5参照)に作用する力FA,FBは、大きい。その結果、タービンロータ43を支持する軸受に加わる面圧を適正範囲内に保持することが容易でなく、軸流タービン4を安定に運転することが困難になる場合がある。
【0016】
したがって、本発明が解決しようとする課題は、部分送入構造のタービン段落を有する軸流タービンにおいてタービンロータを支持する軸受に加わる面圧を容易に適正範囲内に保持可能であって、安定な運転を実行可能な軸流タービンを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
実施形態の軸流タービンは、タービンロータの回転軸が水平方向に沿っており、作動媒体が回転軸に沿って流れることによってタービンロータが回転方向に回転する。実施形態の軸流タービンは、作動媒体が通過する開口部および作動媒体が通過しない閉止部を有する部分送入構造のノズル翼列が設けられているタービン段落を備える。部分送入構造のノズル翼列において開口部は、部分送入構造のノズル翼列の上半部分に設けられている第1開口部と、部分送入構造のノズル翼列の下半部分に設けられている第2開口部とを含み、上半部分において第1開口部が設けられた割合と、下半部分において第2開口部が設けられた割合とが異なっている。閉止部は、第1開口部よりも前記回転方向の前方であって、第2開口部よりも回転方向の後方に位置しており、上半部分と下半部分との境界を介して回転方向に延在している第1閉止部と、第1開口部よりも回転方向の後方であって、第2開口部よりも回転方向の前方に位置しており、上半部分と下半部分との境界を介して回転方向に延在している第2閉止部とを含み、第1閉止部および第2閉止部は、上半部分と下半部分との境界で互いが対面する部分を有する。

【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、第1実施形態に係る軸流タービンのタービン段落において、部分送入構造のノズル翼列を模式的に示す図である。
図2図2は、第1実施形態の変形例に係る軸流タービンのタービン段落において、部分送入構造のノズル翼列を模式的に示す図である。
図3図3は、第2実施形態に係る軸流タービンのタービン段落において、部分送入構造のノズル翼列を模式的に示す図である。
図4図4は、第2実施形態に係る部分送入構造のノズル翼列において、ノズル出口流量FLと回転方向(周方向)における位置との関係を示す図である。
図5図5は、関連技術に係る軸流タービンにおいて、タービン段落が設けられた部分の要部を示す図である。
図6図6は、関連技術に係る軸流タービンにおいて、翼高さHと2次損失ξsecとの関係を示す図である。
図7A図7Aは、関連技術に係る軸流タービンのタービン段落において、部分送入構造のノズル翼列を模式的に示す図である。
図7B図7Bは、関連技術に係る軸流タービンのタービン段落において、部分送入構造のノズル翼列を模式的に示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
<第1実施形態>
第1実施形態に係る軸流タービンのタービン段落における部分送入構造のノズル翼列に関して、図1を用いて説明する。図1においては、図示を省略しているが、図7Aおよび図7Bと同様に、部分送入構造のノズル翼列においてノズル内輪451とノズル外輪452との間に介在する環状空間SP1に関して、回転軸AXに沿った軸方向(x)を視線としたときの様子を示している(図5参照)。
【0020】
図1に示すように、本実施形態に係る軸流タービンのタービン段落において、部分送入構造のノズル翼列は、開口部51および閉止部52の形態が、上記した関連技術の場合(図7Aおよび図7Bを参照)と異なっている。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、上記した関連技術の場合と同様であるため、重複する部分に関しては、適宜、説明を省略する。
【0021】
図1に示すように、本実施形態に係る部分送入構造のノズル翼列において、環状空間SP1は、作動媒体が通過する2つの開口部51A,51Bと、作動媒体が通過しない2つの閉止部52A,52Bとを含む。
【0022】
本実施形態では、環状空間SP1は、鉛直方向において上方に位置する上半部分(破線よりも上方側)と、鉛直方向において下方に位置する下半部分(破線よりも下方側)とのそれぞれに、円弧状の開口部51A,51Bが設けられている。具体的には、2つの開口部51A,51Bのうち、一方の開口部51Aは、環状空間SP1において上半部分(破線よりも上方側)に位置する上半側空間部SP1Aの一部に設けられている。2つの開口部51A,51Bのうち、他方の開口部51Bは、環状空間SP1において下半部分(破線よりも下方側)に位置する下半側空間部SP1Bの一部に設けられている。上半部分に設けられた一方の開口部51Aと下半部分に設けられた他方の開口部51Bは、回転軸AXを介して径方向で対面する部分を含むように構成されている。
【0023】
そして、2つの閉止部52A,52Bは、円弧状であって、環状空間SP1のうち2つの開口部51A,51Bが設けられた部分以外の部分に設けられている。ここでは、2つの閉止部52A,52Bのうち、一方の閉止部52Aは、上半部分に設けられた開口部51Aよりも回転方向Rの前方であって、下半部分に設けられた開口部51Bよりも回転方向Rの後方に位置している。2つの閉止部52A,52Bのうち、他方の閉止部52Bは、上半部分に設けられた開口部51Aよりも回転方向Rの後方であって、下半部分に設けられた開口部51Bよりも回転方向Rの前方に位置している。一方の閉止部52Aと他方の閉止部52Bは、回転軸AXを介して径方向で対面する部分を含むように構成されている。
【0024】
本実施形態の環状空間SP1は、上半部分において開口部51Aが設けられた割合と、下半部分において開口部51Bが設けられた割合とが異なっている。図示を省略しているが、タービンロータ43(図5参照)を回転自在に支持する軸受(図示省略)に加わる面圧が予め定めた範囲になるように、上半部分において開口部51Aが設けられた割合と、下半部分において開口部51Bが設けられた割合とが設定されている。たとえば、シミュレーションによって軸受(図示省略)に加わる面圧を算出した結果に基づいて、上半部分において開口部51Aが設けられた割合と、下半部分において開口部51Bが設けられた割合との両者を設定することができる。
【0025】
たとえば、図1では、上半部分に設けられた開口部51Aの割合が、下半部分に設けられた開口部51Bの割合よりも大きい。具体的には、上半部分に設けられた開口部51Aの断面積Saが、下半部分に設けられた開口部51Bの断面積Sbよりも広くなるように構成されている(Sa>Sb)。
【0026】
図1に示すように、上半部分に設けられた開口部51Aを作動媒体が通過することによって、上半側から下半側へ向かう方向へ力FAが発生する。また、下半部分に設けられた開口部51Bを作動媒体が通過することによって、下半側から上半側へ向かう方向へ力FBが発生する。このため、本実施形態では、上半側から下半側へ向かう方向へ力FAと、下半側から上半側へ向かう方向へ力FBとを合成した合力が、タービンロータ43(図5参照)に作用する。上半側から下半側へ向かう方向へ力FAおよび下半側から上半側へ向かう方向へ力FBは、互いに反対方向に作用するので、互いを打ち消し合う。ここでは、上半側から下半側へ向かう方向へ力FAの方が、下半側から上半側へ向かう方向へ力FBよりも大きいので、上半側から下半側へ向かう方向へ合力が、タービンロータ43に作用する。
【0027】
軸受(図示省略)において鉛直方向の下方に向けて加わる面圧が適正範囲よりも高い場合には、上記のように、上半側から下半側へ向かう方向へ合力が、タービンロータ43に作用するように、上半部分に設けられた開口部51Aの割合と下半部分に設けられた開口部51Bの割合とを調整することで、軸受(図示省略)に加わる面圧を適正範囲にすることができる。
【0028】
以上のように、本実施形態では、部分送入構造のノズル翼列による効果(翼高さHの増大化による性能の向上)を得ることができると共に、タービンロータ43に作用する力を容易に調整することができる。その結果、本実施形態では、タービンロータ43を支持する軸受に加わる面圧が過度に変化せずに適正範囲内に保持されるので、軸流タービン4の運転の安定化を容易に実現することができる。
【0029】
上記の実施形態では、上半部分に設けられた開口部51Aの割合が、下半部分に設けられた開口部51Bの割合よりも大きい場合について説明したが、これに限らない。
【0030】
図2を用いて、第1実施形態の変形例を説明する。図2に示すように、部分送入構造のノズル翼列において、環状空間SP1は、上半部分に設けられた開口部51Aの割合が、下半部分に設けられた開口部51Bの割合よりも小さくなるように構成されていてもよい。つまり、上半部分に設けられた開口部51Aの断面積Saが、下半部分に設けられた開口部51Bの断面積Sbよりも狭くなるように構成されていてもよい(Sa<Sb)。この場合、上半側から下半側へ向かう方向へ力FAの方が、下半側から上半側へ向かう方向へ力FBよりも小さいので、下半側から上半側へ向かう方向へ合力が、タービンロータ43に作用する。
【0031】
たとえば、軸受(図示省略)において鉛直方向の下方に向けて加わる面圧が、適正範囲よりも低い場合には、上記のように、下半側から上半側へ向かう方向へ合力がタービンロータ43に作用するように、上半部分に設けられた開口部51Aの割合と下半部分に設けられた開口部51Bの割合とを調整することで、軸受(図示省略)に加わる面圧を適正範囲にすることができる。
【0032】
<第2施形態>
第2実施形態に係る軸流タービンのタービン段落における部分送入構造のノズル翼列に関して、図3を用いて説明する。図3では、図1と同様に、環状空間SP1に関して、回転軸AXに沿った軸方向(x)を視線としたときの様子を示している(図5参照)。
【0033】
図3に示すように、本実施形態に係る軸流タービンのタービン段落において、部分送入構造のノズル翼列は、開口部51および閉止部52の形態が、上記した第1実施形態の場合(図1を参照)と異なっている。この点、および、これに関連する点を除き、本実施形態は、上記した関連技術の場合と同様であるため、重複する部分に関しては、適宜、説明を省略する。
【0034】
図3に示すように、本実施形態に係る部分送入構造のノズル翼列において、環状空間SP1は、作動媒体が通過する4つの開口部51A_1,51A_2,51A_3,51Bと、作動媒体が通過しない4つの閉止部52A_1,52A_2,52B_1,52B_2とを含む。
【0035】
本実施形態では、4つの開口部51A_1,51A_2,51A_3,51Bのうち3つの開口部51A_1,51A_2,51A_3が環状空間SP1において上半部分(破線よりも上方側)に位置する上半側空間部SP1Aに設けられている。残りの開口部51Bは、環状空間SP1において下半部分(破線よりも下方側)に位置する下半側空間部SP1Bに設けられている。
【0036】
そして、4つの閉止部52A_1,52A_2,52B_1,52B_2のうち、閉止部52A_1,52A_2,は、上半側空間部SP1Aにおいて、3つの開口部51A_1,51A_2,51A_3の間に介在するように設けられている。閉止部52B_1は、上半部分に設けられた開口部51A_3よりも回転方向Rの前方であって、下半部分に設けられた開口部51Bよりも回転方向Rの後方に位置している。閉止部52B_2は、上半部分に設けられた開口部51A_1よりも回転方向Rの後方であって、下半部分に設けられた開口部51Bよりも回転方向Rの前方に位置している。
【0037】
本実施形態の環状空間SP1は、上半部分において開口部51A_1,51A_2,51A_3が設けられた割合と、下半部分において開口部51Bが設けられた割合とが異なっている。図示を省略しているが、本実施形態においても第1実施形態の場合と同様に、タービンロータ43(図5参照)を回転自在に支持する軸受(図示省略)に加わる面圧が予め定めた範囲になるように、上半部分において開口部51A_1,51A_2,51A_3が設けられた割合と、下半部分において開口部51Bが設けられた割合とが設定されている。
【0038】
ここでは、図3に示すように、上半部分に設けられた開口部51A_1,51A_2,51A_3の割合が、下半部分に設けられた開口部51Bの割合よりも大きい。具体的には、上半部分に設けられた3つの開口部51Aの断面積Sa_1,Sa_2,Sa_3の合計値(Sa=Sa_1+Sa_2+Sa_3)が、下半部分に設けられた開口部51Bの断面積Sbよりも広くなるように構成されている(Sa_1+Sa_2+Sa_3=Sa>Sb)。
【0039】
図3に示すように、上半部分に設けられた開口部51A_1,51A_2,51A_3を作動媒体が通過することによって、上半側から下半側へ向かう方向へ力FA1,FA2,FA3が発生する。また、下半部分に設けられた開口部51Bを作動媒体が通過することによって、下半側から上半側へ向かう方向へ力FBが発生する。このため、本実施形態では、上半側から下半側へ向かう方向へ力FA1,FA2,FA3と、下半側から上半側へ向かう方向へ力FBとを合成した合力が、タービンロータ43(図5参照)に作用する。上半側から下半側へ向かう方向へ力FA1,FA2,FA3および下半側から上半側へ向かう方向へ力FBは、互いに反対方向に作用する成分を含むので、互いを打ち消し合う。ここでは、上半側から下半側へ向かう方向へ力FA1,FA2,FA3の合力の方が、下半側から上半側へ向かう方向へ力FBよりも大きいので、上半側から下半側へ向かう方向へ合力が、タービンロータ43に作用する。
【0040】
以上のように、本実施形態では、第1実施形態の場合と同様に、部分送入構造のノズル翼列による効果(翼高さHの増大化による性能の向上)を得ることができると共に、タービンロータ43に作用する力を容易に調整することができる。その結果、本実施形態では、タービンロータ43を支持する軸受に加わる面圧が過度に変化せずに適正範囲内に保持されるので、軸流タービン4の運転の安定化を容易に実現することができる。
【0041】
本実施形態の部分送入構造のノズル翼列における、ノズル出口流量FLと回転方向(周方向)における位置(角度θ)との関係について、図4を用いて説明する。図4において、回転方向(周方向)における位置(角度θ)は、上半部と下半部との境界の一方を基準(θ=0°)としている(図3参照)。図4においては、第2実施形態の場合(図3参照)の関係を実線で示し、第1実施形態の場合(図1参照)の関係を破線で示している。
【0042】
図4に示すように、第2実施形態の場合(実線)における開口部51A_1,51A_2,51A_3,51Bの流量変化は、第1実施形態の場合(破線)における開口部51A,51B(図1)の流量変化よりも、小さい。このため、本実施形態においては、第1実施形態の場合よりも、動翼に作用する力の変動振幅が小さくなり、動翼の破損を防止する効果を奏することができる。
【0043】
上記の本実施形態では、部分送入構造のノズル翼列の上半部分に、複数の開口部51A_1,51A_2,51A_3,51Bが設けられている場合について説明したが、これに限らない。図示を省略しているが、部分送入構造のノズル翼列の下半部分に、複数の開口部を設けてもよい。すなわち、部分送入構造のノズル翼列は、上半部分と下半部分との少なくとも一方に開口部が複数設けられていてもよい。
【0044】
<その他>
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【0045】
たとえば、上記の実施形態に係る軸流タービンに供給される作動媒体は、特に問わない。蒸気、燃焼ガス、超臨界COガスなどの種々の作動媒体が供給される軸流タービンにおいて、上記実施形態のような部分送入構造のノズル翼列を構成することによって、上述した優れた効果を奏することができる。
【0046】
また、初段から最終段までの複数のタービン段落のうち、上記実施形態に示した部分送入構造のノズル翼列を適用するタービン段落は、特に問わない。必要とする特性等に応じて、適宜、適用可能である。
【符号の説明】
【0047】
4…軸流タービン、43…タービンロータ、45…ノズル翼、46…動翼、51,51A,51A_1,51A_2,51A_3,51B…開口部、52,52A,52A_1,52A_2,52B_1,52B_2,52B…閉止部、431…ロータ本体部、432…ロータディスク、451…ノズル内輪、451f…シールフィン、452…ノズル外輪、452f…シールフィン、461…植込部、462…シュラウド、AX…回転軸、Ds…下流側、M…流れ方向、R…回転方向、SP1…環状空間、SP1A…上半側空間部、SP1B…下半側空間部、Us…上流側
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B