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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】エレベータの利用者検知システム
(51)【国際特許分類】
   B66B 3/00 20060101AFI20230511BHJP
   G06T 7/00 20170101ALI20230511BHJP
   G06T 7/11 20170101ALI20230511BHJP
   G06T 7/12 20170101ALI20230511BHJP
   G06T 7/136 20170101ALI20230511BHJP
   G06T 7/215 20170101ALI20230511BHJP
   B66B 13/26 20060101ALN20230511BHJP
【FI】
B66B3/00 L
B66B3/00 M
G06T7/00 660B
G06T7/11
G06T7/12
G06T7/136
G06T7/215
B66B13/26 F
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2021130126
(22)【出願日】2021-08-06
(65)【公開番号】P2023024068
(43)【公開日】2023-02-16
【審査請求日】2021-08-06
(73)【特許権者】
【識別番号】390025265
【氏名又は名称】東芝エレベータ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001737
【氏名又は名称】弁理士法人スズエ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榎原 孝明
(72)【発明者】
【氏名】野本 学
(72)【発明者】
【氏名】白倉 邦彦
(72)【発明者】
【氏名】木村 紗由美
【審査官】吉川 直也
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-162118(JP,A)
【文献】特開2009-266052(JP,A)
【文献】特開2012-084012(JP,A)
【文献】特開2021-031243(JP,A)
【文献】特開2005-346348(JP,A)
【文献】国際公開第2020/008538(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66B 1/00-20/00
G06T 7/00- 7/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗りかご内に設置され、上記乗りかご内を含む所定の範囲を撮影するカメラを備えたエレベータの利用者検知システムにおいて、
上記カメラの撮影画像の中で照明光が反射している部分とその周囲を含む反射領域を推定する反射推定手段と、
上記反射推定手段によって推定された上記反射領域の反射レベルに応じて、上記照明光が上記乗りかご内の利用者を介して上記反射領域において反射することに起因する過検知を抑制するように、上記撮影画像から動体を検知するときの処理を変更する動体検知手段と、
上記動体検知手段によって検知された上記動体の情報に基づいて、上記動体を人物として検知する人物検知手段と
を具備したことを特徴とするエレベータの利用者検知システム。
【請求項2】
上記反射推定手段は、
上記撮影画像の各画素の輝度値の分布に基づいて、上記反射領域を推定することを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項3】
上記反射推定手段は、
上記撮影画像から抽出されるエッジの分布に基づいて、上記反射領域を推定することを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項4】
上記動体検知手段は、
上記撮影画像として連続的に得られる各画像のエッジ変化に基づいて動体を検知する処理を有し、上記反射領域の反射レベルが高いほど、上記エッジ変化に対する閾値を上げることを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項5】
上記動体検知手段は、
上記撮影画像として連続的に得られる各画像の輝度差分とエッジ変化に基づいて動体を検知する処理を有し、上記反射領域の反射レベルが一定レベルよりも低い場合には上記輝度差分を使用し、上記反射領域の反射レベルが上記一定レベル以上の場合には上記エッジ変化を使用して動体検知を行うことを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項6】
上記人物検知手段は、
上記動体の情報として得られる動き画素の分布、動体サイズ、動体検知回数のいずれか少なくとも1つに基づいて、上記動体を人物として検知することを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項7】
上記人物検知手段は、
上記反射領域の反射レベルが一定レベル以上の場合には、上記動き画素の分布あるいは上記動体サイズの判定基準を高くすることを特徴とする請求項6記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項8】
上記人物検知手段は、
上記反射領域の反射レベルが一定レベル以上の場合には、上記動体検知回数の判定基準を高くすることを特徴とする請求項6記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項9】
上記人物が上記撮影画像上に予め設定された検知エリア内で検知された場合に、上記検知エリアに関連付けられた対応処理を実行する制御手段をさらに具備したことを特徴とする請求項1記載のエレベータの利用者検知システム。
【請求項10】
上記検知エリアは、上記乗りかご内のドア付近に設定され、
上記制御手段は、
上記対応処理として、上記乗りかごの戸開動作中に上記人物がドアに挟まれないように戸開閉動作を制御することを特徴とする請求項9記載のエレベータの利用者検知システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施形態は、エレベータの利用者検知システムに関する。
【背景技術】
【0002】
エレベータの乗りかごのドアが戸開するときに、乗りかご内にいる利用者の指などが戸袋へ引き込まれることがある。また、乗場にいる利用者が乗りかごに乗り込むときに、戸閉途中のドアの先端にぶつかることがある。このようなドアの事故を防止するため、乗りかごに設置された1台のカメラを用いて、乗場の利用者や乗りかご内の利用者を検知して、戸開閉制御に反映させるシステムが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平5-151356号公報
【文献】特許第3933453号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述したシステムでは、撮影画像のフレーム間の輝度差分によって、利用者の有無を検知していた。しかしながら、乗りかごや乗場において、照明の光が利用者を介して床面で反射している場合に、カメラに入射される光量が変化することで輝度変化が生じる。このとき、光の反射部分とその周囲に「陰」と呼ばれる現象が発生し、その「陰」が利用者として過検知される可能性がある(図7のS2参照)。なお、「過検知」とは、陰を利用者として誤って検知するといった意味で「誤検知」と同じである。
【0005】
本発明が解決しようとする課題は、照明環境に起因した陰の過検知を抑制して、乗りかご内や乗場にいる利用者を正しく検知することのできるエレベータの利用者検知システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一実施形態に係るエレベータの利用者検知システムは、乗りかご内に設置されたカメラの撮影画像の中で照明光が反射している部分とその周囲を含む反射領域を推定する反射推定手段と、上記反射推定手段によって推定された上記反射領域の反射レベルに応じて、上記照明光が上記乗りかご内の利用者を介して上記反射領域において反射することに起因する過検知を抑制するように、上記撮影画像から動体を検知するときの処理を変更する動体検知手段と、上記動体検知手段によって検知された上記動体の情報に基づいて、上記動体を人物として検知する人物検知手段とを具備する。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1図1は一実施形態に係るエレベータの利用者検知システムの構成を示す図である。
図2図2は同実施形態における乗りかご内の出入口周辺部分の構成を示す図である。
図3図3は同実施形態における実空間での座標系を説明するための図である。
図4図4は同実施形態におけるカメラの撮影画像の一例を示す図である。
図5図5は同実施形態における乗車検知エリアの構成を模式的に示す図である。
図6図6は同実施形態における引き込まれ検知エリアに生じる影の誤検知を説明するための図である。
図7図7は同実施形態における照明光の反射によって生じる陰を説明するための図である。
図8図8は同実施形態における反射領域の一例を示す図である。
図9図9は同実施形態における人物と影を含んだ撮影画像の一例を示す図である。
図10図10は上記図9の撮影画像上の人物の輝度値の変化をx軸方向に見た状態を示す図である。
図11図11は上記図9の撮影画像上の影の輝度値の変化をx軸方向に見た状態を示す図である。
図12図12は同実施形態における山型エッジの強度を算出する方法を説明するための図である。
図13図13は上記山型エッジの強度算出の具体例を示す図である。
図14図14は上記利用者検知システムの処理動作を示すフローチャートである。
図15図15は上記図14のステップS103で実行される検知処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施の形態について図面を参照して説明する。
なお、開示はあくまで一例にすぎず、以下の実施形態に記載した内容により発明が限定されるものではない。当業者が容易に想到し得る変形は、当然に開示の範囲に含まれる。説明をより明確にするため、図面において、各部分のサイズ、形状等を実際の実施態様に対して変更して模式的に表す場合もある。複数の図面において、対応する要素には同じ参照数字を付して、詳細な説明を省略する場合もある。
【0009】
図1は一実施形態に係るエレベータの利用者検知システムの構成を示す図である。なお、ここでは、1台の乗りかごを例にして説明するが、複数台の乗りかごでも同様の構成である。
【0010】
乗りかご11の出入口上部にカメラ12が設置されている。具体的には、カメラ12は、乗りかご11の出入口上部を覆う幕板11aの中にレンズ部分を直下方向、もしくは、乗場15側あるいは乗りかご11内部側に所定の角度だけ傾けて設置される。
【0011】
カメラ12は、例えば車載カメラ等の小型の監視用カメラであり、広角レンズもしくは魚眼レンズを有し、1秒間に数コマ(例えば30コマ/秒)の画像を連続的に撮影可能である。カメラ12は、例えば乗りかご11が各階の乗場15に到着したときに起動され、かごドア13付近と乗場15を含めて撮影する。なお、カメラ12は、乗りかご11の運転時に常時動作中であっても良い。
【0012】
このときの撮影範囲はL1+L2に調整されている(L1≫L2)。L1は乗場側の撮影範囲であり、かごドア13から乗場15に向けて所定の距離を有する。L2はかご側の撮影範囲であり、かごドア13からかご背面に向けて所定の距離を有する。なお、L1,L2は奥行き方向の範囲であり、幅方向(奥行き方向と直交する方向)の範囲については少なくとも乗りかご11の横幅より大きいものとする。
【0013】
各階の乗場15において、乗りかご11の到着口には乗場ドア14が開閉自在に設置されている。乗場ドア14は、乗りかご11の到着時にかごドア13に係合して開閉動作する。なお、動力源(ドアモータ)は乗りかご11側にあり、乗場ドア14はかごドア13に追従して開閉するだけである。以下の説明においては、かごドア13を戸開している時には乗場ドア14も戸開しており、かごドア13が戸閉している時には乗場ドア14も戸閉しているものとする。
【0014】
カメラ12によって連続的に撮影された各画像(映像)は、画像処理装置20によってリアルタイムに解析処理される。なお、図1では、便宜的に画像処理装置20を乗りかご11から取り出して示しているが、実際には、画像処理装置20はカメラ12と共に幕板11aの中に収納されている。
【0015】
画像処理装置20は、記憶部21と検知部22とを備える。記憶部21は、例えばRAM等のメモリデバイスからなる。記憶部21は、カメラ12によって撮影された画像を逐次保存すると共に、検知部22の処理に必要なデータを一時的に保存しておくためのバッファエリアを有する。なお、記憶部21には、撮影画像に対する前処理として、歪み補正や拡大縮小、一部切り取り等の処理が施された画像が保存されるとしても良い。
【0016】
検知部22は、例えばマイクロプロセッサからなり、カメラ12の撮影画像を用いて、乗りかご11内または乗場15にいる利用者を検知する。この検知部22を機能的に分けると、検知エリア設定部23、検知処理部24で構成される。なお、これらは、ソフトウェアによって実現しても良いし、IC(Integrated Circuit)等のハードウェアにより実現しても良いし、ソフトウェアおよびハードウェアを併用して実現しても良い。また、画像処理装置20の一部あるいは全部の機能をエレベータ制御装置30に持たせることでも良い。
【0017】
検知エリア設定部23は、カメラ12から得られる撮影画像上に利用者を検知するための検知エリアを少なくとも1つ以上設定する。本実施形態では、乗場15の利用者を検知するための検知エリアE1と、乗りかご11内の利用者を検知するための検知エリアE2,E3が設定される。検知エリアE1は、乗車検知エリアとして用いられ、乗りかご11の出入口(かごドア13)から乗場15に向けて設定される。検知エリアE2は、引き込まれ検知エリアとして用いられ、乗りかご11内の入口柱41a,41bに設定される。検知エリアE3は、検知エリアE2と同様に引き込まれ検知エリアとして用いられ、乗りかご11内の出入口側の床面19に設定される(図3参照)。
【0018】
検知処理部24は、エッジ抽出部24a、動体検知部24b、人物検知部24c、反射推定部24dを有し、カメラ12から得られる撮影画像を解析処理して、乗りかご11内または乗場15に存在する利用者を検知する。なお、エッジ抽出部24a、動体検知部24b、人物検知部24c、反射推定部24dについては、後に図7乃至図13を参照して詳しく説明する。検知処理部24によって検知された利用者が上記検知エリアE1~E3のいずれかに存在した場合に、所定の対応処理(戸開閉制御)が実行される。
【0019】
エレベータ制御装置30は、CPU、ROM、RAM等を備えたコンピュータからなる。エレベータ制御装置30は、乗りかご11の運転制御などを行う。また、エレベータ制御装置30は、戸開閉制御部31と警告部32を備える。
【0020】
戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着したときのかごドア13の戸開閉を制御する。詳しくは、戸開閉制御部31は、乗りかご11が乗場15に到着したときにかごドア13を戸開し、所定時間経過後に戸閉する。ただし、かごドア13の戸閉動作中に、検知処理部22bによって検知エリアE1内で利用者が検知された場合には、戸開閉制御部31は、かごドア13の戸閉動作を禁止して、かごドア13を全開方向にリオープンして戸開状態を維持する。
【0021】
また、かごドア13の戸開動作中に検知処理部22bによって検知エリアE2またはE3内で利用者が検知された場合には、戸開閉制御部31は、ドア事故(戸袋への引き込まれ事故)を回避するための戸開閉制御を行う。具体的には、戸開閉制御部31は、かごドア13の戸開動作を一時停止するか、逆方向(戸閉方向)に動かす、あるいは、かごドア13の戸開速度を遅くする。
【0022】
図2は乗りかご11内の出入口周辺部分の構成を示す図である。
乗りかご11の出入口にかごドア13が開閉自在に設けられている。図2の例では両開きタイプのかごドア13が示されており、かごドア13を構成する2枚のドアパネル13a,13bが間口方向(水平方向)に沿って互いに逆方向に開閉動作する。なお、「間口」とは、乗りかご11の出入口と同じである。
【0023】
乗りかご11の出入口の両側に入口柱41a,41bが設けられており、幕板11aと共に乗りかご11の出入口を囲っている。「入口柱」は、正面柱とも言い、裏側にはかごドア13を収納するための戸袋が設けられているのが一般的である。図2の例では、かごドア13が戸開したときに、一方のドアパネル13aが入口柱41aの裏側に設けられた戸袋42aに収納され、他方のドアパネル13bが入口柱41bの裏側に設けられた戸袋42bに収納される。入口柱41a,41bの一方あるいは両方に表示器43や、行先階ボタン44などが配設された操作盤45、スピーカ46が設置されている。図2の例では、入口柱41aにスピーカ46、入口柱41bに表示器43、操作盤45が設置されている。
【0024】
カメラ12は、乗りかご11の出入口上部に水平方向に配設された幕板11aの中に設けられる。ここで、乗場15の利用者を戸閉直前まで検知するため、かごドア13の戸閉位置に合わせてカメラ12が取り付けられている。具体的には、かごドア13が両開きタイプであれば、幕板11aの中央部にカメラ12が取り付けられる。また、乗りかご11内の天井面には、例えばLEDを用いた照明機器48が設置されている。
【0025】
図3に示すように、カメラ12は、乗りかご11の出入口に設けられたかごドア13と水平の方向をX軸、かごドア13の中心から乗場15の方向(かごドア13に対して垂直の方向)をY軸、乗りかご11の高さ方向をZ軸とした画像を撮影する。
【0026】
図4はカメラ12の撮影画像の一例を示す図である。上側は乗場15、下側は乗りかご11内である。図中の16は乗場15の床面、19は乗りかご11の床面を示している。E1,E2,E3は検知エリアを表している。
【0027】
かごドア13は、かごシル47上を互いに逆方向に移動する2枚のドアパネル13a,13bを有する。乗場ドア14も同様であり、乗場シル18上を互いに逆方向に移動する2枚のドアパネル14a,14bを有する。乗場ドア14のドアパネル14a,14bは、かごドア13のドアパネル13a,13bと共に戸開閉方向に移動する。
【0028】
カメラ12は乗りかご11の出入口上部に設置されている。したがって、乗りかご11が乗場15で戸開したときに、図1に示したように、乗場側の所定範囲(L1)とかご内の所定範囲(L2)が撮影される。このうち、乗場側の所定範囲(L1)に、乗りかご11に乗車する利用者を検知するための検知エリアE1が設定されている。
【0029】
実空間において、検知エリアE1は、出入口(間口)の中心から乗場方向に向かってL3の距離を有する(L3≦乗場側の撮影範囲L1)。全開時における検知エリアE1の横幅W1は、出入口(間口)の横幅W0以上の距離に設定されている。検知エリアE1は、図4に斜線で示すように、シル18,47を含み、三方枠17a,17bの死角を除いて設定される。なお、検知エリアE1の横方向(X軸方向)のサイズは、かごドア13の開閉動作に合わせて変更される構成としても良い。また、検知エリアE1の縦方向(Y軸方向)のサイズについても、かごドア13の開閉動作に合わせて変更される構成としても良い。
【0030】
図5に示すように、乗車検知エリアとして用いられる検知エリアE1は、乗車意思推定エリアE1a,近接検知エリアE1b,シル上検知エリアE1cからなる。乗車意思推定エリアE1aは、利用者が乗車意思を持って乗りかご11に向かっているか否かを推定するためのエリアである。近接検知エリアE1bは、利用者が乗りかご11の出入口に近接していることを検知するためのエリアである。シル上検知エリアE1cは、利用者がシル18,47上を通過していることを検知するためのエリアである。
【0031】
ここで、本システムでは、乗車検知用の検知エリアE1とは別に、検知エリアE2,E3を有する。検知エリアE2,E3は、引き込まれ検知エリアとして用いられる。検知エリアE2は、乗りかご11の入口柱41a,41bの内側側面41a-1,41b-1に沿って、所定の幅を有して設定される。なお、内側側面41a-1,41b-1の横幅に合わせて検知エリアE2を設定しても良い。検知エリアE3は、乗りかご11の床面19のかごシル47に沿って、所定の幅を有して設定される。
【0032】
かごドア13の戸開動作中に、検知エリアE2またはE3内で利用者が検知されると、例えばかごドア13の戸開動作を一時停止するか、逆方向(戸閉方向)に動かす、あるいは、かごドア13の戸開速度を遅くするなどの対応処理が実行される。また、音声アナウンスにより、例えば「ドアから離れてください」などの警告が発せられる。
【0033】
(検知処理の問題)
通常、引き込まれ検知は、引き込まれ検知エリアである検知エリアE2,E3内の画像の輝度変化が利用者の侵入によって正しく表れることを前提としている。ところが、検知エリアE2,E3は、乗りかご11内に設定されているため、かご室内の照明環境の影響を強く受ける。つまり、図6に示すように、利用者P1がかごドア13から離れた場所に乗車している場合であっても、照明機器48の照明光の関係で、利用者P1の影S1が検知エリアE2またはE3に入り込むことがある。検知エリアE2またはE3に影S1が入り込むと、影S1の動きに伴い、画像上で輝度変化が大きく生じ、影S1が利用者P1として過検知される可能性がある。
【0034】
これは、乗車検知処理でも同様である。すなわち、乗車検知エリアである検知エリアE1は、乗りかご11の出入口周辺の乗場15に設定される。乗場15の照明環境の関係で、検知エリアE1に影が入り込むと、画像上で輝度変化により、影の過検知が生じる可能性がある。
【0035】
・陰による輝度変化
図7は照明光の反射によって生じる陰を説明するための図であり、図7(a)は乗りかご11内に利用者P1がいない場合、同図(b)は乗りかご11内に利用者P1がいる場合を示している。
【0036】
図7(a)に示すように、乗りかご11内に利用者P1がいない場合には、照明機器48から照射された光が床面19で反射したときに、照射光とほぼ同じ量の反射光がカメラ12に入射される。ところが、図7(b)に示すように、照明機器48と床面19との間に利用者P1が立っていると、照明機器48の光が利用者P1を介して床面19で反射するので、カメラ12に入射される反射光の量が変化して輝度変化が生じる。このとき、利用者P1の近くで「陰」と呼ばれる現象が生じており、この陰が利用者P1として過検知されることがある。図中のS2が陰である。図6に示した影S1は床面19よりも暗い輝度変化となるが、陰S2は床面19よりも明るい輝度変化となる。
【0037】
乗場15でも同様であり、乗場15の照明環境によって、利用者の近くに、反射光による陰が発生すると、その陰が利用者として過検知される可能性がある。特に、照明機器として、例えばダウンライトが用いられている場合に、床面が局所的に照らされるので、反射光による陰が発生しやすい。
【0038】
そこで、本実施形態では、図1に示した画像処理装置20の検知処理部24に下記のような機能(エッジ抽出、動体検知、人物検知、反射推定部)を持たせ、撮影画像として連続的に得られる各画像間(フレーム間)のエッジ変化を利用して利用者を検知する場合に、陰が存在する反射領域を推定して、当該反射領域における検知処理を変更する構成としている。「エッジ変化」とは、画像間の同じ位置から抽出されたエッジが変化した状態を言う。「エッジ変化」は、エッジ強度の差分である「エッジ差分」を含む。以下では、エッジ変化の一例として、エッジ差分を求める場合を例にして、検知処理部24に備えられた機能(エッジ抽出、動体検知、人物検知、反射推定部)について、詳しく説明する。
【0039】
(a)反射推定
まず、反射推定について説明する。
反射推定は、「陰」の誤検知を抑制するために必要な機能の1つである。「陰」の発生場所を特定できないため、反射推定部24dは、撮影画像の中で照明光が反射している部分とその周囲(床面や陰)を含む反射領域を推定する。反射領域の推定は、撮影画像の各画素の輝度値のばらつき(輝度分布)を解析することで行う。これは、輝度値だけに着目すると、例えば白い服を着た人がいた場合に、反射領域と白い服とを区別できないからである。
【0040】
反射領域の推測は、1枚の画像、もしくは、複数枚の画像を用いて、例えば13×13画素の範囲で各画素の輝度分布を解析することで行う。輝度分布の解析範囲は固定化されていても良いし、パラメータ設定あるいは撮影対象に応じて自動変更されても良い。
【0041】
カメラ12の設置位置の高さや、照明機器のタイプなどによって輝度分布の解析範囲を変更することでも良い。カメラ12の高さが床面から離れているほど、「陰」の発生場所が広がる傾向にあるため、各画素の輝度分布を広範囲に解析することが好ましい。また、照明機器としてダウンライトが用いられている場合には、「陰」が発生しやすいので、各画素の輝度分布を広範囲に解析することが好ましい。
【0042】
また、反射領域を推定する場合には、エッジ分布を解析することでも良い。エッジ分布も各画像の輝度値のばらつきを反映したものであるため、輝度分布と同様に反射領域を推定できる。なお、エッジの抽出方法については後述する。
【0043】
図8は反射領域の一例を示す図である。図中の51は人物であり、具体的には乗りかご11内にいる利用者である。
【0044】
反射領域REは、反射レベルが異なる複数の領域RE-1~RE-4を含む。明るい輝度値を多く含む領域ほど、反射レベルが高くなる。図8の例では、人物51の近くに存在する反射領域REの反射レベルを0~4段階に分けて分類している(0<1<2<3<4,0は反射なし)。
領域RE-1:反射レベル4
領域RE-2:反射レベル3
領域RE-3:反射レベル2
領域RE-4:反射レベル1
【0045】
図8の例では、説明を簡単にするため、領域RE-1~RE-4を模式的に表したが、実際にはもっと複雑な形態になる。通常、乗りかご11内であれば、かごシル47などの金属部分で照射光が強く反射するため、反射レベルが高くなる。しかし、照明光が反射している部分の周囲に、人物51の陰が発生していると、その陰によって反射レベルが一様でなくなる。例えば、照明の光が人物51を介して床面で反射している場合に、人物51の手の指と指との隙間を通る光と、手のひらなどで遮られる光などによって、人物51の周囲の反射レベルが複雑に変わってくる。
【0046】
このように、人物51の近くで反射レベルが変化している部分、つまりは、陰か発生している部分では輝度変化が生じ、陰が人物51として過検知される可能性がある。したがって、本実施形態では、このような陰の過検知を抑制するために、人物51の近くで、輝度値がばらついている領域を陰が存在する反射領域REとして推定することで、その反射領域RE内における検知処理(後述する動体検知の処理)を変更している。
【0047】
(b)エッジ抽出
エッジ抽出は、「影」の誤検知を抑制するために必要な機能であり、「陰」の誤検知だけに着目した場合には必ずしも必要としない。エッジ抽出部24aは、カメラ12の撮影画像からエッジの情報を抽出する。この場合、1枚の画像、もしくは、複数枚の画像からエッジの情報を抽出することでも良い。「エッジ」とは、画像の各画素の輝度値が不連続に変化している境界線のことである。例えば、ソーベルフイルタやラプラシアンフイルタなどのエッジ抽出フィルタを用いて、画像上で輝度値が特徴的に変化する部分をエッジとして抽出する。エッジの情報には、輝度勾配の方向と強度などが含まれる。
【0048】
エッジ強度は、輝度勾配によって求められる。輝度勾配を求める範囲は、例えば3×3画素の範囲でも良いし、それ以外の範囲で求めても良い。また、輝度勾配を求める範囲は固定化されていても良いし、パラメータ設定あるいは撮影対象に応じて自動変更されても良い。
【0049】
・輝度勾配の方向と強度の組み合わせ
エッジ抽出部24aは、撮影画像の各画素毎に輝度勾配の方向と強度を求め、これらを組み合わせた情報に基づいて、影の領域を除いたエッジを抽出する。輝度勾配の方向には、上→下,下→上,左→右,右→左の4方向(水平垂直方向)の他に、左上→右下,左下→右上,右上→左下,右下→左上の4方向(斜め方向)がある。影の過検知を抑制するためには、少なくとも2方向以上の輝度勾配を求めることが好ましい。
【0050】
なお、共起が成立するエッジを抽出しても良い。例えば、着目画素に対して、左方向と右方向に輝度勾配の方向を有するエッジを抽出することでも良い。エッジ強度は、選定した各方向の輝度値の平均などで算出する。
【0051】
・山型エッジ
エッジ抽出部24aは、上記影の領域を除いたエッジとして、輝度値が山型状に変化するエッジを抽出する。
【0052】
図9は人物と影を含んだ撮影画像の一例を示す図である。図中の51は人物であり、具体的には乗りかご11内にいる利用者である。図中の52は乗りかご11内の床面に生じている影であり、人物51が前方に突き出した手の影を模式的に表している。図10は人物51に対応した画像53の輝度値の変化をx軸方向に見た状態を示す図である。図11は影52に対応した画像54の輝度値の変化をx軸方向に見た状態を示す図である。
【0053】
図10に示すように、人物51に対応した画像53には、人物51の手の指や服のしわなどによって、輝度値が不連続に変化するエッジが多数存在する。これに対し、図11に示すように、影52に対応した画像54の内部の輝度値の変化は平坦であり、境界部では輝度値が変化するが、輝度勾配の方向が一方向となる。したがって、影52の過検知を抑制するためには、二方向以上の輝度勾配とその強度の組み合わせを有し、輝度値が山型状に連続的に変化するエッジ(以下、山型エッジと称す)を抽出することが効果的である。このような山型エッジに着目してエッジ抽出を行うことで、撮影画像から影の領域以外のエッジを効率的に抽出することができ、そのエッジの変化つまりエッジ差分を利用して、影の動きに影響されない検知処理を実現できる。
【0054】
図12および図13を用いて、山型エッジの強度の算出方法を説明する。
例えば3×3画素の範囲の中心に位置する画素を着目画素とし、その着目画素に対し、上下左右の4つの向きの輝度差を求める。これらの輝度差を平均した値を山型エッジの強度として算出する。
【0055】
256階調において、着目画素の輝度値が「191」とする。着目画素の上に位置する画素の輝度値が「0(黒)」、着目画素の右に位置する画素の輝度値が「64」、着目画素の下に位置する画素の輝度値が「127」、着目画素の左に位置する画素の輝度値が「255(白)」であった場合、下記のような計算によって山型エッジの強度が求められる。
{(191-0)+(191-64)+(191-127)+0}/4=95.5
なお、着目画素の左に位置する画素の輝度値は、着目画素より大きいため、「0」として計算している。上記式により、当該画素の位置におけるエッジ強度は、「96(95.5を整数に正規化)」として求められる。
【0056】
(c)動体検知
動体検知は、撮影画像上で何らかの動きを有する物体を検知する機能である。通常、画像間の輝度変化(輝度差分)によって動体の有無を検知する方法が用いられる。しかしながら、「影」が発生している部分でも輝度変化が生じているため、その部分を動体(つまりは利用者)として過検知する可能性がある。
【0057】
そこで、本実施形態では、エッジ差分を利用して動体検知を行う構成としている。動体検知部24bは、エッジ抽出部24aによって抽出されたエッジを撮影画像として連続的に得られる各画像間で比較してエッジ差分を求め、このエッジ差分に基づいて動体を検知する。
【0058】
「エッジ差分」とは、具体的にはエッジ強度の差である。図13の例で説明すると、いま、1枚目の画像の着目画素におけるエッジ強度が「96」として算出されたとする。次の画像の同じ着目画素のエッジ強度が「10」であった場合、エッジ強度の差は、96-10=86である。例えば、閾値を「40」とすると、「86」は閾値以上なので、当該着目画素の部分で動きありとして判定される。
【0059】
別の方法として、エッジ強度を二値化してから差分を求めることでも良い。
例えば、閾値を「40」とした場合に、エッジ強度「96」は「255」、エッジ強度「40」は「0」に二値化される。両者の差分は、255-0=255となり、「0」ではないので、動きありとして判定される。
【0060】
図9の例で、図中の55は動きありとして判定された画素(動き画素)を示す。人物51の画像53には、手や服の部分に動き画素55が多数存在するが、影52の画像54には動き画素55が存在しない。後述するように、この動き画素55の分布から動体が人物であるか否かを判断できる。
【0061】
・エッジ差分と輝度差分
エッジ差分と輝度差分を併用して、動体検知を行う構成としても良い。この場合、動体検知部24bは、エッジ差分とは別に、撮影画像として連続して得られる各画像間の輝度差分(輝度値の差分)を求め、その輝度差分とエッジ差分とに基づいて動体を検知する。エッジ差分の結果と輝度差分の結果を統合する方法としては、以下のような論理演算(AND/OR演算など)やパラメータ変更などがある。
【0062】
AND演算:エッジ差分と輝度差分の両方で画像上の動き画素が検知された場合に、当該動き画素を含む所定の範囲に動体が存在するものと判定する。
【0063】
OR演算:エッジが多い領域(影の可能性が少ない領域)に対しては輝度差分を用い、エッジが少ない領域(影の可能性が高い領域)に対してはエッジ差分を用いる。「エッジが多い領域」とは、エッジ抽出部24aによって抽出されたエッジの数(画素数)が影の判定基準として定められた規定数以上の領域のことである。「エッジが少ない領域」とは、エッジ抽出部24aによって抽出されたエッジの数(画素数)が影の判定基準として定められた規定数より少ない領域のことである。
【0064】
パラメータ変更:エッジが多い領域(影の可能性が少ない領域)に対しては輝度差分のパラメータを検知しやすくし(つまり、輝度差分の閾値を標準値よりも下げておく)、エッジが少ない領域(影の可能性が高い領域)に対しては輝度差分のパラメータを検知しにくくする(つまり、輝度差分の閾値を標準値よりも上げておく)。
【0065】
・反射領域を考慮した動体検知
輝度変化の要因は「影」だけでなく、照明光によって生じる「陰」にもある。したがって、単純にエッジ変化だけで動体検知を行うと、陰が発生している部分を動体(つまりは利用者)として過検知する可能性がある。図8で説明したように、撮影画像上で陰が発生している領域は、照明光が反射している部分とその周囲を含む反射領域によって推定される。
【0066】
動体検知部24bは、反射推定部24dによって推定された反射領域の反射レベルに応じて、撮影画像から動体を検知するときの処理を変更する。「撮影画像から動体を検知するときの処理を変更する」とは、具体的には、エッジ差分に対する閾値を変更することである。この場合、反射レベルが高い領域(つまり、明るい領域)ほど、陰による過検知が発生しやすい領域と考えられる。したがって、エッジ差分に対する閾値を標準値よりも上げて、動体として検知しづらくする。
【0067】
例えば、エッジ差分に対する閾値をTH1とすると、図8に示した反射レベル1の領域RE-4ではTH1を1段階上げる。同様にして、反射レベル2の領域RE-3ではTH1を2段階上げ、反射レベル3の領域RE-3ではTH1を3段階上げ、反射レベル4の領域RE-4ではTH1を4段階上げる。
【0068】
なお、輝度差分だけを利用して動体検知する構成とした場合でも、反射レベルに応じて輝度差分に対する閾値を段階的に変更するようにしても良い。これにより、反射レベルが高い領域に対する輝度差分の判定が厳しくなり、陰による過検知を抑制することができる。
【0069】
また、輝度差分とエッジ差分を併用して動体検知する構成としても良い。この場合、動体検知部24bは、反射領域の反射レベルに応じて輝度差分とエッジ差分を使い分ける。つまり、反射領域の反射レベルが一定レベルよりも低い場合(陰による過検知が発生しにくい領域)には輝度差分を使用し、反射領域の反射レベルが一定レベル以上の場合(陰による過検知が発生しやすい領域)にはエッジ差分を使用して動体検知を行う。上記「一定レベル」は、任意に設定可能であり、例えば反射レベル0~4の中のレベル3としても良い。
【0070】
(d)人物検知
人物検知部24cは、動体検知部24bによって検知された動体の情報に基づいて、上記動体を人物として検知する。「人物」とは、具体的には乗りかご11内または乗場15に存在する利用者のことである。「動体の情報」は、動き画素の分布、動体サイズ、動体検知回数のいずれか少なくとも1つを含む。
【0071】
「動き画素の分布」は、所定範囲内における動き画素の分布状態を示す。例えば、20×20画素の範囲の中に動き画素が40個(つまり、10%程度)以上存在すれば、人物の動きであると判断する。「動体サイズ」は、動き画素が連続する集合体のサイズを示す。例えば、40個以上の動き画素が連続した集合体として存在すれば、人物の動きであると判断する。「動体検知回数」は、各画像毎に動体として検知された回数を示す。例えば、画像上の同じ位置で一定回数以上、動体として検知されていれば、人物の動きであると判断する。
【0072】
・エッジの情報と動体の情報
エッジの情報と動体の情報を併用して人物検知を行う構成としても良い。この場合、人物検知部24cは、エッジの情報に基づいて、動体の情報として得られる動き画素の分布、動体サイズ、動体検知回数のいずれかを用いた人物検知の判定基準を変更して、人物検知を行う。
【0073】
詳しくは、人物検知部24cは、撮影画像の中でエッジが多い領域(影の可能性が少ない領域)に対しては、動き画素の分布あるいは動体サイズをエッジが少ない領域よりも小さくして、人物検知を行う。あるいは、撮影画像の中でエッジが多い領域(影の可能性が少ない領域)に対し、動体検知回数をエッジが少ない領域よりも少なくし、例えば1回でも動体として検知されている領域は人物と判定しても良い。
【0074】
・反射レベルに応じて人物検知のパラメータを変更
反射推定部24dによって推定された反射領域の反射レベルに応じて、人物検知のパラメータを変更する構成としても良い。例えば、反射領域の反射レベルが一定レベル以上の場合(陰による過検知が発生しやすい領域)には、動き画素の分布あるいは動体サイズの判定基準を他の領域よりも高くして人物検知を行う。また、反射領域の反射レベルが一定レベル以上の場合(陰による過検知が発生しやすい領域)には、動体検知回数の判定基準を他の領域よりも高くし、一定回数以上、動体として検知された場合に人物と判定する。上記「一定レベル」は、任意に設定可能であり、例えば反射レベル0~4の中のレベル3としても良い。
【0075】
本システムは、上記のような構成を有する検知処理部24を用いて撮影画像の中から人物(利用者)を検知し、その人物が図3に示した検知エリアE1~E3のいずれかに存在した場合に、所定の対応処理(戸開閉制御)を実行する。以下に、引き込まれ検知を例にして、本システムの処理動作について説明する。
【0076】
図14は本システムの処理動作を示すフローチャートである。このフローチャートで示される処理は、図1に示した画像処理装置20とエレベータ制御装置30とで実行される。
【0077】
まず、初期設定として、画像処理装置20に備えられた検知部22の検知エリア設定部23によって検知エリア設定処理が実行される(ステップS100)。この検知エリア設定処理は、例えばカメラ12を設置したとき、あるいは、カメラ12の設置位置を調整したときに、以下のようにして実行される。
【0078】
すなわち、検知エリア設定部22aは、かごドア13が全開した状態で、出入口から乗場15に向けて距離L3を有する検知エリアE1を設定する。図4に示したように、検知エリアE1は、シル18,47を含み、三方枠17a,17bの死角を除いて設定される。ここで、かごドア13が全開した状態では、検知エリアE1の横方向(X軸方向)のサイズはW1であり、出入口(間口)の横幅W0以上の距離を有する。また、検知エリア設定部22aは、乗りかご11の入口柱41a,41bの内側側面41a-1,41b-1に沿って、所定の幅を有する検知エリアE2を設定すると共に、乗りかご11の床面19のかごシル47に沿って所定の幅を有する検知エリアE3を設定する。
【0079】
通常の運転中において、乗りかご11が任意の階の乗場15に到着すると(ステップS101のYes)、エレベータ制御装置30は、かごドア13の戸開動作を開始する(ステップS102)。この戸開動作に伴い、カメラ12によって乗場側の所定範囲(L1)とかご内の所定範囲(L2)が所定のフレームレート(例えば30コマ/秒)で撮影される。なお、カメラ12の撮影は、乗りかご11が戸閉した状態から連続的に行われていても良い。
【0080】
画像処理装置20は、カメラ12で撮影された画像を時系列で取得し、これらの画像を記憶部21に逐次保存しながら、以下のような検知処理(引き込まれ検知処理)をリアルタイムで実行する(ステップS103)。なお、撮影画像に対する前処理として、歪み補正や、拡大縮小、画像の一部の切り取りなどを行っても良い。
【0081】
図15に上記ステップS103で実行される検知処理を示す。この検知処理は、画像処理装置20の検知処理部24によって実行される。以下では、撮影画像から山型エッジを抽出する場合を想定して説明する。
【0082】
まず、撮影画像に含まれる「陰」の影響を排除するため、検知処理部24は、カメラ12の撮影画像(原画像)を取得したときに(ステップS201)、当該撮影画像の各画素の輝度値の分布を解析して、輝度分布を表した画像(以下、輝度分布のばらつき画像と称す)を作成する(ステップS202)。図8に示したように、反射領域REには、照明光の反射部分の明るい輝度値と、床や陰の暗い輝度値が混在しており、輝度分布のばらつきが大きい。
【0083】
検知処理部24は、輝度分布のばらつき画像を用いて反射領域REを推定する(ステップS302)。検知処理部24は、この反射領域REに含まれる各領域RE-1~RE4の反射レベルに基づいて、エッジ差分の閾値画像を作成する(ステップS303)。「エッジ差分の閾値画像」とは、エッジ差分を二値化するときに用いられる閾値TH1を画素単位で表した画像のことである。閾値TH1は、各領域RE-1~RE4の反射レベルによって設定される。この場合、反射レベルが高いほど、陰による過検知が発生しやすい領域であるため、閾値TH1は標準値よりも高く設定される。逆に、反射レベルが低いほど、陰による過検知が発生しにくい領域であるため、閾値TH1は標準値よりも低く設定される。
【0084】
このようにして、各領域RE-1~RE4の反射レベルに応じて閾値TH1が設定されると、検知処理部24は、記憶部21から各画像(原画像)を時系列順に取得し(ステップS201)、これらの画像毎に山型エッジのみで構成される画像を作成する(ステップS202)。詳しくは、検知処理部24は、二方向以上の輝度勾配の方向と強度の組み合わせを有し、輝度値が山型状に変化するエッジを山型エッジとして抽出し、山型エッジのみで構成される画像(以下、山型エッジ画像と称す)を作成する。
【0085】
続いて、検知処理部24は、上記ステップS303で作成された閾値画像を用いて、山型エッジ画像の差分二値化を行う(ステップS203)。詳しくは、図13で説明したように、検知処理部24は、山型エッジ画像の各画素毎に輝度勾配を求め、その輝度勾配の強度を次の画像の同じ画素位置で比較したときのエッジ差分を求める。検知処理部24は、上記閾値画像から反射領域毎に設定された閾値TH1を取得し、この閾値TH1に基づいてエッジ差分を二値化する。この場合、反射レベルが高い領域(陰による過検知が発生しやすい領域)では、閾値TH1が高く設定されているので、陰による過検知を抑制して、山型エッジ画像の差分二値化を行うことができる。
【0086】
また、検知処理部24は、撮影画像である原画像の差分二値化を行う(ステップS204)。詳しくは、検知処理部24は、画像の各画素の輝度値を次の画像の同じ画素位置で比較して輝度差分を求め、その輝度差分を予め設定された閾値TH2で二値化する。このときの閾値TH2についても、上記閾値TH1と同様に、反射領域の反射レベルを反映させて、反射レベルに応じた値に設定しておくことでも良い。
【0087】
検知処理部24は、山型エッジ画像から求められた各画素のエッジ差分を二値化した値と原画像から求められた各画素の輝度差分を二値化した値とを統合処理し(ステップS205)、その統合処理した結果から動体の有無を検知する(ステップS206)。エッジ差分と輝度差分を統合する方法については、上述したように論理演算(AND/OR演算など)やパラメータ変更などがある。
【0088】
このようにして、動体(動き画素)が検知されると、検知処理部24は、その動体の情報に基づいて人物を検知する(ステップS207)。詳しくは、検知処理部24は、動体の情報として得られる動き画素の分布、動体サイズ、動体検知回数のいずれか少なくとも1つに基づいて、当該動体が人物の動きであるか否かを判定する。例えば、動き画素の分布によって人物検知を行う場合であれば、所定の画素範囲の中に動き画素が10%程度以上存在すれば、人物検知部24cは、当該動き画素を含む範囲を人物の動きと判定する。
【0089】
また、検知処理部24は、反射領域の反射レベルに応じて、人物検知のパラメータを変更する。例えば、反射領域の反射レベルが一定レベル以上の場合(陰による過検知が発生しやすい領域)には、動き画素の分布あるいは動体サイズの判定基準を高くして人物検知を行う。あるいは、動体検知回数の判定基準を高くし、一定回数以上、動体として検知された場合に人物と判定する。
【0090】
本実施形態において、「人物」とは、乗りかご11内または乗場15にいる利用者のことであり、撮影画像上では、その利用者の服や手の動きなどが動き画素として表れる(図7参照)。
【0091】
なお、図15の例では、エッジ差分と輝度差分を併用したが、エッジ差分のみで動体検知処理を行い、検知結果として得られる動き画素の分布などから人物(利用者)を検知することでも良い。この場合、図15のステップS204とS205の処理は不要となる。
【0092】
図14に戻って、戸開動作中に上記検知処理によって利用者が検知された場合、検知処理部24は、当該利用者が乗りかご11内に引き込まれ検知エリアとして設定された検知エリアE2または検知エリアE3内にいるか否かを判断する(ステップS104)。当該利用者が検知エリアE2または検知エリアE3内にいれば(ステップS104のYes)、検知処理部24からエレベータ制御装置30に対して引き込まれ検知信号が出力される。これにより、エレベータ制御装置30は、引き込まれ検知エリアに関連した対応処理として、戸開閉制御部31を通じてかごドア13の戸開動作を一時停止し、数秒後にその停止位置から戸開動作を再開する(ステップS105)。
【0093】
上記対応処理として、かごドア13の戸開速度を通常より遅くすることや、あるいは、かごドア13を逆方向(戸閉方向)に若干移動させてから戸開動作を再開することでも良い。また、エレベータ制御装置30の警告部32の起動により、乗りかご11内のスピーカ46を通じて音声アナウンスを行い、利用者に対してかごドア13から離れるように注意を喚起することで良いし、警告音を鳴らすことでも良い(ステップS106)。検知エリアE2または検知エリアE3内で利用者が検知されている間、上記処理が繰り返される。これにより、例えば利用者がかごドア13の近くにいる場合に、戸袋42aまたは42bに引き込まれることを未然に防ぐことができる。
【0094】
(乗車検知処理)
図14の例では、引き込まれ検知処理を例にして説明したが、乗車検知処理でも同様である。すなわち、乗りかご11が任意の階で戸閉を開始したときに、図15で説明した検知処理が実行される。この場合、乗場15の照明環境によって生じる「陰」を考慮して、乗場15における照明光の反射部分とその周囲を含む反射領域を推定し、その反射領域の反射レベルに応じてエッジ差分の閾値を設定しておく。なお、輝度差分の閾値についても、反射領域の反射レベルに応じて設定しておくことでも良い。
【0095】
上述したように、撮影画像のエッジ差分と輝度差分とに基づいて利用者が検知されると、乗場15に乗車検知エリアとして設定された検知エリアE1内にいるか否かが判断される。当該利用者が検知エリアE1内にいて、かつ、乗りかご11のドア13に向かっていることが検知された場合に、検知処理部24からエレベータ制御装置30に対して乗車検知信号が出力される。これにより、エレベータ制御装置30は、乗車検知エリアに関連した対応処理として、戸開閉制御部31を通じてかごドア13の戸閉動作を一時停止するか、かごドア13を逆方向(戸閉方向)に動かす、あるいは、かごドア13の戸開速度を通常よりも下げる。
【0096】
このように本実施形態によれば、照明光の反射部分とその周囲を含む反射領域を推定し、その反射領域の反射レベルに応じて動体検知の処理を変更することで、照明光によって生じる陰の過検知を抑制して、利用者を検知することができる。
【0097】
特に、エッジ差分を利用して検知処理を行う構成とした場合に、反射領域の反射レベルに応じてエッジ差分の閾値を設定することで、陰の影響を確実に排除して利用者を正しく検知することができ、その検知結果に応じた対応処理を実現することができる。
【0098】
なお、上記実施形態では、撮影画像全体から利用者を検知する場合を想定して説明したが、撮影画像上に予め設定されている検知エリア毎に利用者を検知する構成としても良い。例えば、戸開動作中であれば、図4に示した検知エリアE2,E3内の画像に着目し、当該画像のエッジ差分により検知エリアE2またはE3にいる利用者を検知する。また、戸閉動作中であれば、図4に示した検知エリアE1内の画像に着目し、当該画像のエッジ差分により検知エリアE1内にいる利用者を検知する。
【0099】
また、上記実施形態では、エッジ変化の一例として、エッジ差分(エッジ強度の差分)を例にして説明したが、例えば正規化相関のような矩形を用いてエッジの変化を判定することでも良い。要は、画像間でエッジが変化している状態を検出できれば、エッジ差分に限られず、どのような方法を用いても良い。
【0100】
以上述べた少なくとも1つの実施形態によれば、照明環境に起因した陰の過検知を抑制して、乗りかご内や乗場にいる利用者を正しく検知することのできるエレベータの利用者検知システムを提供することができる。
【0101】
なお、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0102】
11…乗りかご、11a…幕板、12…カメラ、13…かごドア、13a,13b…ドアパネル、14…乗場ドア、14a,14b…ドアパネル、15…乗場、17a,17b…三方枠、18…乗場シル、47…かごシル、48…照明機器、20…画像処理装置、21…記憶部、22…検知部、23…検知エリア設定部、24…検知処理部、24a…エッジ抽出部、24b…動体検知部、24c…人物検知部、24d…反射推定部、30…エレベータ制御装置、31…戸開閉制御部、32…警告部、E1,E2,E3…検知エリア。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15