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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】コンパクトなミリメートル波システム
(51)【国際特許分類】
   H01S 1/06 20060101AFI20230511BHJP
   G04F 5/14 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
H01S1/06
G04F5/14
【請求項の数】 19
(21)【出願番号】P 2020563509
(86)(22)【出願日】2019-05-10
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-09-16
(86)【国際出願番号】 US2019031654
(87)【国際公開番号】W WO2019217777
(87)【国際公開日】2019-11-14
【審査請求日】2022-05-09
(31)【優先権主張番号】62/669,598
(32)【優先日】2018-05-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】16/400,010
(32)【優先日】2019-04-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】507107291
【氏名又は名称】テキサス インスツルメンツ インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】230129078
【弁護士】
【氏名又は名称】佐藤 仁
(72)【発明者】
【氏名】アダム ジョセフ フリューリング
(72)【発明者】
【氏名】ジュアン アレハンドロ ハーブソマー
(72)【発明者】
【氏名】アルグリオス デリス
【審査官】東松 修太郎
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2016/0291549(US,A1)
【文献】特表2018-515012(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0169134(US,A1)
【文献】特開2015-149671(JP,A)
【文献】国際公開第2013/190437(WO,A1)
【文献】特開2016-111683(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01S 1/00- 1/06
H03L 1/00- 9/00
G04F 1/00- 5/16
G01R 33/00-33/26
H05K 1/00- 1/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミリメートル波装置であって、
基板
前記基板に対して第1の固定位置におけるトランシーバ
前記基板に対して第2の固定位置におけるガスセル
前記基板に対して取り付けられる第1の導波路であって、前記トランシーバに結合される第1の端部と、前記ガスセルの第1の部分の近傍に第2の端部を有する第1の次元に沿った部分とを有する、前記第1の導波路
前記基板に対して取り付けられる第2の導波路であって、前記トランシーバに結合される第1の端部と、前記ガスセルの第2の部分の近傍に第2の端部を有する第2の次元に沿った部分とを有する、前記第2の導波路
前記第1の次元とは異なる第3の次元に沿って、前記第1の導波路の第2の端部と前記ガスセルの第1の部分との間に結合される第3の導波路
前記第2の次元とは異なる第4の次元に沿って、前記第2の導波路の第2の端部と前記ガスセルの第2の部分との間に結合される第4の導波路
を含む、ミリメートル波装置。
【請求項2】
請求項1に記載のミリメートル波装置であって、
前記第1の次元前記第2の次元が同じ次元である、ミリメートル波装置。
【請求項3】
請求項2に記載のミリメートル波装置であって、
前記第3の次元前記第4の次元が前記同じ次元に対してほぼ垂直である、ミリメートル波装置。
【請求項4】
請求項1に記載のミリメートル波装置であって、
前記第3の導波路前記第4の導波路が矩形導波路を含む、ミリメートル波装置。
【請求項5】
請求項1に記載のミリメートル波装置であって、
前記第3の導波路前記第4の導波路が、前記トランシーバから前記ガスセルに空気媒体を介して波を通信するための金属導波路を含む、ミリメートル波装置。
【請求項6】
請求項1に記載のミリメートル波装置であって、
前記第3の導波路前記第4の導波路が接着剤を含む、ミリメートル波装置。
【請求項7】
請求項1に記載のミリメートル波装置であって、
前記第3の導波路前記第4の導波路がポリマーを含む、ミリメートル波装置。
【請求項8】
請求項1に記載のミリメートル波装置であって、
前記第3の導波路前記第4の導波路がはんだボールを含み、前記導波路が前記はんだボールにより囲まれるエリアによって形成される、ミリメートル波装置。
【請求項9】
請求項1に記載のミリメートル波装置であって、
前記第2の固定位置において前記ガスセルを保持するための装置を更に含む、ミリメートル波装置。
【請求項10】
請求項9に記載のミリメートル波装置であって、
前記保持するための装置が、前記ガスセルが位置するキャビティを含むレセプタクル部材を含む、ミリメートル波装置。
【請求項11】
請求項10に記載のミリメートル波装置であって、
前記レセプタクル部材が前記基板に取り付けられる、ミリメートル波装置。
【請求項12】
請求項11に記載のミリメートル波装置であって、
前記ガスセルの少なくとも一部接して取り付けられるカバーを更に含み、前記カバーが前記レセプタクル部材に対して更に取り付けられる、ミリメートル波装置。
【請求項13】
請求項9に記載のミリメートル波装置であって、
前記保持するための装置が、前記ガスセルの少なくとも一部接して取り付けられるカバーを含み、前記カバーが前記基板に対して更に取り付けられる、ミリメートル波装置。
【請求項14】
請求項9に記載のミリメートル波装置であって、
前記保持するための装置が前記ガスセルを受けるためのキャビティを有し、
前記保持するための装置が前記第3の導波路前記第4の導波路を含む、ミリメートル波装置。
【請求項15】
請求項14に記載のミリメートル波装置であって、
前記第3の導波路が、前記ガスセルの第1の部分において、前記第1の導波路と第1の電磁波通路との間で波を結合するように構成され、
前記第4の導波路が、前記ガスセルの第2の部分において、前記第2の導波路と第2の電磁波通路との間で波を結合するように構成される、ミリメートル波装置。
【請求項16】
請求項1に記載のミリメートル波装置であって、
前記ガスセルが、第1のキャビティ領域を有する第1の半導体ウエハ層、第2のキャビティ領域を有する第2の半導体ウエハ層を含む、ミリメートル波装置。
【請求項17】
請求項16に記載のミリメートル波装置であって、
前記第1のキャビティ領域前記第2のキャビティ領域の各々が台形断面を含む、ミリメートル波装置。
【請求項18】
請求項1に記載のミリメートル波装置であって、
前記ガスセルにストアされるガスを更に含む、ミリメートル波装置。
【請求項19】
請求項18に記載のミリメートル波装置であって、
前記ガスが、HCNDCNOCSCHCNで構成されるから選択される、ミリメートル波装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、クロックセルにおける回転量子応答に基づき動作する分子クロックなどの、精密でコンパクトなミリメートル波システム(30GHz~300GHz)に関する。
【背景技術】
【0002】
ベース周波数源として直接的に用いられ得る、或いは、ベース周波数源の数倍に変換(例えば、分割)される精密クロック信号は、種々の回路及び構成から生成され得る。一つの精密クロック信号の例は原子クロックであり、そのように呼ばれるのは、原子クロックの信号が、或る励起源に対する原子又は分子の自然及び量子応答に応答して生成されるからである。一つのアプローチにおいて、そのような原子は、チャンバにストアされたアルカリ金属の形態であり、励起源は、セルに向けられる一つ又は複数のレーザであり得、チャンバ原子の応答は、レーザ周波数が或るレンジにわたって掃引する際、チャンバを通過するレーザエネルギー(フォトン)の量を測定することによって検出される。別のアプローチにおいて、そのような分子は、やはりチャンバにストアされた双極ガスの形態であり、この場合、励起源は、チャンバを介して伝搬する電磁波であり、チャンバ原子の応答は、エネルギー源が或るレンジにわたって掃引する際、チャンバを通過する電磁エネルギーの量を測定することによって検出される。
【0003】
上記に加えて、ミリメートル波原子クロックの一例が、本明細書において参照により本願に完全に組み込まれる、2016年12月27日に発行された米国特許番号US9,529,334(「‘334特許」)において説明されており、これは、本願と同じ譲受人に対して共同譲渡されている。‘334特許は、とりわけ、双極ガスをストアする封止されたキャビティを含む原子クロック装置を図示し、キャビティの第1の端部付近の、電磁波(又はフィールド)が入射する電磁入口と、キャビティの第2の端部付近の、電磁波が出射する電磁波出口とを備える。そのように出射する電磁波は、双極ガスによる吸収量(又は双極ガスを介する透過量)を判定するために測定され、そうした測定は、ガスの量子応答を波周波数の関数として表す。
【発明の概要】
【0004】
説明される例はミリメートル波装置を含み、ミリメートル波装置は、基板と、基板に対して第1の固定位置にあるトランシーバと、基板に対して第2の固定位置にあるガスセルとを備える。また、このクロック装置は、少なくとも4つの導波路、すなわち、(a)基板に対して取り付けられる第1の導波路であって、トランシーバに結合される第1の端部と、ガスセルの第1の部分の近傍に第2の端部を有する第1の次元に沿った部分とを有する、第1の導波路、(b)基板に対して取り付けられる第2の導波路であって、トランシーバに結合される第1の端部と、ガスセルの第2の部分の近傍に第2の端部を有する第2の次元に沿った部分とを有する、第2の導波路、(c)第1の次元とは異なる第3の次元に沿って、第1の導波路の第2の端部とガスセルの第1の部分との間に結合される第3の導波路、及び、(d)第2の次元とは異なる第4の次元に沿って、第2の導波路の第2の端部とガスセルの第2の部分との間に結合される第4の導波路を含む。
【図面の簡単な説明】
【0005】
図1A】コンパクトな分子クロックシステムの一部の平面図である。
【0006】
図1B】原子クロックセルアセンブリに結合されるトランシーバを付加した、図1Aのシステムを図示する。
【0007】
図1C図1Aのシステムのコプレーナ導波路の断面図を図示する。
【0008】
図2A図1のガスセルアセンブリの分解図である。
【0009】
図2B】種々の例示の実施形態の構造を介する波経路の一部の斜視図である。
【0010】
図3図2Aのガスセルの一部の分解図である。
【0011】
図4A】代替のコンパクトな分子クロックシステムの平面図である。
図4B】代替のコンパクトな分子クロックシステムの断面図である。
【0012】
図5A】代替のコンパクトな分子クロックシステムの平面図である。
図5B】代替のコンパクトな分子クロックシステムの断面図である。
【0013】
図5C】代替のコンパクトな分子クロックシステムの断面図である。
【0014】
図6】代替のコンパクトな分子クロックシステムの断面図である。
【0015】
図7A】代替のコンパクトな分子クロックシステムの平面図である。
図7B】代替のコンパクトな分子クロックシステムの断面図である。
【0016】
図8A】代替のコンパクトな分子クロックシステムの平面図である。
図8B】代替のコンパクトな分子クロックシステムの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
図1A図1Cは、例示の実施形態のコンパクトな分子クロックシステム100の種々の図を図示する。特に、図1Aは、印刷回路基板(PCB)などの基板102の平面図を図示し、この基板102に対して、付加的なアイテムが、分子クロックシステムを形成するために付加される。一例において、基板102は、長さ(L)×幅(W)の寸法を備える矩形であり、例えば、Lは3~4インチであり得、Wは2~3インチであり得る。基板102は、種々の電気的/電子的要素を物理的に支持し、また、種々のこれらの要素間の電気的接続性を促進する。このように、種々のブロック及び電気的トレースが例として総称的に示されている。また、基板102は、例えば多層PCBスタックアップ(stackup)の場合に、多くの層を含み得る。
【0018】
図1Bは原子クロックセルアセンブリ106に結合されるトランシーバ104を含む、図1Aのシステム100を図示する。例えば、トランシーバ104は、信号を送信及び受信するように動作する集積回路である。一例として、トランシーバ104は、テキサス・インスツルメンツ・インコーポレイテッドから市販されているAWR1642などの集積回路レーダーである。AWR1642は、76~81GHzの帯域におけるレーダーセンサを備える自己完結型(self-contained)周波数変調連続波レーダー(FMCW)センサである。AWR1642は、一つ又は複数のプロセッサ(例えば、デジタル信号プロセッサ)を含み、複数の送信及び受信レーダーチャネル、無線構成、制御、較正、及び、幅広いセンサ実装を可能にするためのモデルチェンジのプログラミング、をサポートする。FMCWは単に、一例としてのアプローチの一つであり、トランシーバ104によって用いられる代替の送信/変調方式を有するその他の実施形態が可能である。従って、後述するように、トランシーバ104は、トランシーバ104と原子クロックセルアセンブリ106との間のレーダー導波路と通信するように結合される。
【0019】
トランシーバ104と原子クロックセルアセンブリ106との間のレーダー導波路は、例えば、概して108及び110において図示されるコプレーナ導波路によって実現され得る。一方のコプレーナ導波路108が、トランシーバ104から第1のアンテナ112(図1A)を介してセルアセンブリ106に波を送信し得、別のコプレーナ導波路110が、セルアセンブリ106から波を受信し、その波を、第2のアンテナ114(同様に図1A)を介してトランシーバ104に通信し得る。電流図が単一の送信導波路及び単一の受信導波路を提供しているが、複数のそのような導波路も可能である。実際、PCB又は他の構成上の制約に適応するために、二つの送信導波路及び二つの受信導波路が、軸対象の相補デバイスと共に用いられることがある。いずれにしても、コプレーナ導波路108(及び110)は、一例として、基板102の表面上又は基板102の層内に、形成、めっき、又はエッチングされ得る。例えば、図1Cは、コプレーナ導波路108の部分断面図を図示する。従って、図1Cの図は、「コプレーナ(同一平面)」という用語のための文脈を提供する。というのも、導波路108が、例としてマイクロストリップとして形成される中央導体108CCを含むからである。中央導体108CCとの同一平面は接地平面108GPであり、この接地平面108GPは、中央導体108CCと共に、部分的に誘電体層108DL1の頂上にある金属層であり、中央導体108CC及び接地平面108GPの外側縁部間に間隙108GAを残す。導波路108は、中央導体108CCに沿って、電磁波エネルギーの大部分を伝搬及び維持するために良好に適している。
【0020】
また、導波路108は、接地平面108GPから下方に延在して、以下のように、一つ又は複数の共通の接地埋め込み層に接続するために、導電性ビア108CV1を用い得る。第1の接地埋め込み層108GBL1が、誘電体層108DL1と第2の誘電体層108DL2との間の導電性材料の薄い部分として示され、これにより、接地したコプレーナ導波路が形成される。この接地したコプレーナ導波路は、多くの場合、波通信にとって一層望ましいが、共通の接地を達成するために付加的な構造を必要とする。第2の接地埋め込み層108GBL2が、誘電体層108DL2より厚い誘電体層108DL3によって層108GBL1から離間される。図2Bに関連して更に後述するように、誘電体層108DL3及び第2の接地埋め込み層108GBL2の一部が、第1のアンテナ112又は第2のアンテナ114より下に延在し(図1A)、それにより、これらの部分は、それぞれのアンテナを介して波を誘導するため、及びエネルギーが横方向に放散することを制限するためのリフレクタを提供する。再び図1A及び1Bを参照すると、導波路108及び110がアセンブリ106に接近するとき、各々は、アセンブリ106のそれぞれの平坦な縁部106Eに対してほぼ直交する方向に曲がり、その結果、各導波路108及び110は、インターポーザの裏側上に形成されたそれぞれの凹み(図2Aにおけるインターポーザ204の裏側上の凹み204Rを参照)に入り得、ここで、各凹みは、それぞれの縁部106Eから、基板102上の第1のアンテナ112又は第2のアンテナ114のそれぞれまで形成されており、これが、望ましくはクロストークを低減させる。
【0021】
図2Aは、基板102の一部に関するアセンブリ106の分解図であり、図2Aを参照して、原子クロックセルアセンブリ106が説明される。或る例示の実施形態において、アセンブリ106は、4つのアイテム、すなわち、後部プレート202、インターポーザ204、原子ガスセル206、及び頂部プレート208を含み、それら全てが基板102に対して位置付けられる。これらのアイテムの各々は後に詳述される。
【0022】
後部プレート202は金属であり得、基板102の一方の側(例えば、底部)上に置かれる。基板102に対する後部プレート202の適合について、後部プレート202は、基板102におけるそれぞれの開口212を介して適合する一つ又は複数の整合ピン210を含む。また、後述される理由のため、後部プレート202は4つの(例えば、ねじ切りされた)開口214を含み、一つのそのような開口が、後部プレート202の角の各々の付近にある。後部プレート202が基板102に取り付けられるとき、開口214の各々は、基板102を介するそれぞれの開口216と整合する。
【0023】
インターポーザ204は、銅、アルミニウムなどの金属でつくられ得、又は、プラスチック又はポリマーでつくられた後に、銅、銀、又は金でめっきされ得、好ましくは高導電性である。一方、これとは対照に、後部プレート202及び頂部プレート208は、必ずしも高い導電性材料を含まない。インターポーザ204は、基板102の、後部プレート202が置かれる側とは反対側(例えば、頂部)上に位置する。或る例示の実施形態において、後部プレート202の整合ピン210は、基板102における開口212内へだけでなく、基板102を介して延在し、そのため、これらのピン210の先端は、基板102に接するインターポーザ204の表面上のそれぞれの開口内に適合する(図2Aの視点ではその表面は見えない)。また、インターポーザ204が基板102に対して置かれた後、4つの留め具(例えば、ねじ、図示せず)が、インターポーザ204における4つのそれぞれの皿穴開口218を介し、基板102におけるそれぞれの開口216を介して取り付けられ、後部プレート202におけるそれぞれの開口214内に取り付けられる(例えば、ねじ込み圧力適合される)。従って、これらの留め具は、後部プレート202及びインターポーザ204を、それらの間で圧縮される基板102に取り付けることにより、保持のための圧縮力と、基板102に対するインターポーザ204の確立又は強化された整合とを保証する。また、更にインターポーザ204に関して、インターポーザ204は、例えば、形状が概ね平行六面体のキャビティ220を含み、後述するように、ガスセル206を受けて、導波路と物理的セルラウンチとの間の整合を強化する。第1の矩形開口222がキャビティ220の第1の端部の近傍にあり、第2の矩形開口224がキャビティ220の第2の端部の近傍にあり、ここで、矩形開口222及び224の各々は、キャビティ220から、インターポーザ204の金属材料の残りを介して延在する。この点に関して、インターポーザ204が基板102に取り付けられるとき、コプレーナ導波路108の一部が、インターポーザ204と基板102との間に位置することになり、その部分は、インターポーザ204の裏側に沿った凹み204R内に整合する。また、インターポーザ204の矩形開口222は、導波路108に接続される第1のアンテナ112と整合する。同様に、インターポーザ204が基板102に取り付けられるとき、コプレーナ導波路110の一部が、インターポーザ204と基板102との間に位置することになり、その部分は、矩形開口224に対して、インターポーザ204の裏側に沿った別の凹み(図示せず)内に整合する。また、矩形開口224は、導波路110に接続される第2のアンテナ114と整合する。
【0024】
第1のアンテナ112及び第2のアンテナ114(上述)は、矩形開口222及び224の外側形状に概ね合致する外側形状を備える金属カプラなどで形成される。それゆえ、図示される例において、各アンテナ112及び114のために、外側矩形金属形状が、各矩形内に例えば同心円状に位置するなどの、中央開口を備える。これらのアンテナ112及び114又は結合構造は、連続的幾何構造を維持し、それにより、開口222及び224に対するインピーダンス不整合と挿入損失の両方を最小化し、このようにしてガスセル206への及びガスセル206からの信号を効率的に伝えるように設計される。寸法(及び形状)は、更に後述される波信号を、例えばその信号の周波数帯域に従って、通信するように設計され得る。本願において提供される例において、形状は、電磁波を誘導するための「矩形導波路」(RW)構造を提供するが、必ずしもこれに限定されず、そのような構造は、送信ラインと呼ばれることもある。また、後述される理由のため、インターポーザ204は、基板102から離れて面する表面上に、4つのねじ切りされた開口226を含み、好ましくは、これらのねじ切りされた開口226の各々は、インターポーザ204の厚みを完全に通り抜けて延在しない。
【0025】
セル206は、ガスがストアされる封止された内部を含む。より具体的には、セル206は、セルの密閉されたキャビティの内側に、水蒸気又は任意のその他の双極分子ガスなどの双極ガスをストアし、キャビティは、比較的低い(例えば、0.1ミリバールの)圧力で双極ガスを密閉するために組み合わされる形状、積層などの性質によって封止される。好ましくは、特定の双極ガスが、注目の周波数範囲に基づいて選択される。例えば、76~8lGHzの周波数範囲を提供するトランシーバ104の場合、適切な双極ガスは、HCN、DCN、OCS、HO、CHCN等であり得る。また、セル206は、半導体基板に対して取り付けられる複数の層を含み得る集積回路ウエハに接続して形成され得る(例えば、参照により組み込まれる米国特許番号US9,529,334を参照)。好ましくは、セル206の外側周辺は、インターポーザ204のキャビティ220の内壁/形状に隣接して適合するように成形される。従って、インターポーザ204(及び後部プレート202)が基板102に対して固定された後、キャビティ220は本質的にレセプタクルを提供し、そのレセプタクル内に、セル206が置かれ得、所望又は必要な場合、後に除去/置換され得る。また、セル206及びそのような整合に関して、キャビティ220の底部と整合するセル206の底部表面228は、図2Aの視点からは見えない。しかし、点線に示すように、底部表面228は第1の矩形アンテナ遷移部230を含み、第1の矩形アンテナ遷移部230は、セル206がキャビティ220内に在るとき、開口222と整合し、及び、開口222と波通信し、そのため、アンテナ遷移部230は、波ラウンチとして機能する。同様に、底部表面228は第2の矩形アンテナ遷移部232を含み、第2の矩形アンテナ遷移部232は、セル206がキャビティ220内に在るとき、開口224と整合し、及び、開口224と波通信し、そのため、アンテナ遷移部232もまた波ラウンチとして機能する。導波路234が、遷移部230及び232間に形成され、セルキャビティの形状及び/又は材料によって形成され得、更に、セルキャビティの表面の一つ又は複数に沿って金属を含有することよって強化され得、その一例が後述される。
【0026】
インターポーザ204を介する、基板102とセル206との間の波通信経路を図示及び説明してきたが、図2Bは、そうした経路の一部の斜視図を図示する。図2Bにおいて、幾つかの参照番号(上述)が繰り返されている。従って、インターポーザ204は基板102の近隣にあり、コプレーナ導波路108の一部が、基板102上に示され、インターポーザ204の凹み204R内を通る。コプレーナ導波路108の側部に沿って、複数のほぼ等間隔の導電性ビア108CV1が位置する。コプレーナ導波路108は、インターポーザ204の矩形開口222と整合して示されるアンテナ112において終端する。図示しないが、アンテナ112の下には、接地埋め込み層108GBL1(図1C)を介する例えば矩形の開口があり、そのため、第2の接地埋め込み層108GBL2(図1C)からの反射が、誘電体層108DL3(図1C)を介してアンテナ112に達し得る。アンテナ112の外側周辺の辺りには、導電性ビア108CV1より長い導電性ビア108CV2が在り、導電性ビア108VC2は、接地埋め込み層108GBL2(図1C)に達するように基板102の層内へ一層深く延在する。このようにして、そうした接地埋め込み層108GBL2と、その上の誘電体層108DL3(図1C)とが、コプレーナ導波路108に沿った開口222内の波移動に関して、上述のリフレクタ機能性を促進する。
【0027】
図3は、セル206の一方の端部の例示の構成の分解部分図であり、他方の端部も同等に構成されると理解される。セル206は、好ましくは、二つの同様の寸法の(例えば、同じ厚みの)半導体ウエハ層302及び304から形成される。各ウエハ層302及び304は、均一のエッチング形状及び寸法を実現するために、同じ時間にエッチングされ得る。或る例示の実施形態において、ウエハ層エッチングは、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)エッチングを用いて、及び、層302及び304のそれぞれの長さに沿ってそれぞれの台形断面セルキャビティ領域306及び308を形成するように、実現され得る。そのような形状は、EバンドにおいてTI AWR1642とインターフェースするために望ましいものであり得る。また、例として水酸化カリウム(KOH)、深反応性イオンエッチング(DRIE)、反応性エッチング(RIE)、二フッ化キセノン(XeF2)等を含むその他の断面も可能である。また、エッチングは、一層小さな寸法のエッチングのための現行のプロセスにおいて制限されることがあり、そうしたエッチングに沿って角度を形成する際、エッチングプロセスによって、また、必須ではないが仕様によって、台形の脚角度がほぼ54.7度に固定され得る。いずれにせよ、エッチング特性は、セル206における分子の吸収周波数に基づいて選択され得る。エッチングされたキャビティの幅及び深さは、キャビティの全ての側部がプロセスフローにおいて後に金属化されるときに形成される「金属導波路」の断面を画定する。金属導波路の寸法は、それ以下では電磁導波路伝搬がないカットオフ周波数と、一層高いカットオフ周波数とを画定し、これらは一般に知られている知識である。その後、キャビティの寸法は、良好な電磁信号伝搬を保証するために、セルにおいて問い合わせされるべき量子遷移がこのカットオフ周波数を少なくとも10GHz上回るように設計されるべきである。例えば、73GHzの或るトランシーバ/インターポーザ/セルは、182GHzで同じ分子に問い合わせするための構造の同じセットのほぼ2倍のサイズである。その他のそのような構造の例は、同一人が所有する米国特許番号US9,529,334及びUS10,131,115において、並びに、同一人が所有する米国特許出願公開番号US2019/0074233及びUS2019/0071306A1において見つけることができ、これらの文献の全てがここで参照により完全に本願に組み込まれる。この例において、単一ウエハにおいてそのようなエッチングを用いると、エッチングの底部(エッチングの深部における台形のベース幅)が、エッチングの頂部(ウエハの上側表面におけるエッチングのベース幅)よりかなり短くなる。しかし、或る例示の実施形態において、二つのウエハ302及び304をエッチングし、その後、後述するようにそれらを組み合わせることにより、エッチング制約は、単に、全体の深さが一層短い場合に各ウエハに適用される。従って、例えば、各ウエハ302及び304は0.7mmの深さまでエッチングされ、その結果の底部ベース縁部はほぼ2mmの長さであり、頂部ベース縁部はほぼ3.1mmである。それゆえ、ウエハ302及び304が図3に図示されるようにその後に互いに対向するとき、キャビティ領域306及び308を含むその結果のキャビティ309は六角形断面形状を有し、ほぼ1.4mmの総高を有する。それとは反対に、キャビティを形成するために単一ウエハにおいて単一台形エッチングが成される場合、TMAHエッチングの固定された台形脚角度は、一層短い底部をもたらし得(例えば、1mm又はそれ以下)、これは、キャビティがその導波路機能をその後に行う際、望ましくない可能性があり得る。キャビティ309は例として六角形として示されているが、キャビティ309が円形導波路及び/又は円偏光伝搬モードを提供する断面を有する代替の実施形態も可能である。
【0028】
また、セル206の積層に関する付加的な態様が、次に説明するように図3に示されている。層302に関して、上述の台形エッチングに加えて、開口310が、キャビティ領域306の一端の近傍に、キャビティ領域306から層302の表面312まで形成される。それゆえ、開口310は、二つの上述の矩形アンテナ遷移部230及び232の一方のための電磁波通路を形成し、一方で同様に、図3の部分図に示さないが、類似の第2の開口が、二つの上述の矩形アンテナ遷移部230及び232の他方のための電磁波通路を形成するように、キャビティ領域306の反対の端部の近傍に形成される。また、表面312は、金属化層314を形成するために金属化され、これは、既知のプロセスを用いて実現され得る。その後、キャビティ306は、層302と層304との間の、好ましくは、キャビティ領域306及び308の外側境界をちょうど超えて位置するボンディングリング316を用いて、キャビティ308に対向するように位置する。ボンディングリング316は、共晶金属であり得、例えば、スパッタリング、電子ビーム蒸着、又は電気めっきによって配置され得、ボンディングウエハ302及び304を共にアシストするために用いられ得、それにより、キャビティ領域306及び308から単一キャビティ309をつくる。また、図示しないが、キャビティ309の内部を信号導波路として促進及び改善するために、及び、キャビティに含まれるガスに対する表面反応性を最小化するため又は側壁からキャビティ内へのガス放出を防ぐために、キャビティ領域306及び308の一方又は両方が、導電性又は誘電体を積層することなどの付加的な態様を含むように、加工、裏打ち、被膜、又はその他の処理が成され得る。このように、導波路は、波を、つくられた単一キャビティ309に沿って、キャビティの一方の端部における開口310から、キャビティの他方の端部における他方の開口(図示しないが、遷移230及び232の一つと関連するものとして図2Aに表す)へ通信する。
【0029】
図3を締めくくると、セル206は、ガラスシート318及び金属結合リング320も含み得る。ガラスシート318は、層302及び304と概ね同じ外側寸法を有し、例えば、200~300ミクロンの厚みであり得る。ガラスシート318は平面を提供し、その平面上には、その頂部表面上にパターン化されたアンテナが在り得、キャビティ309内への波信号のラウンチを可能にする。この平面のための(ガラスシート318のための)材料としたガラスの選択は、ガラスが約4~5の誘電率を提供し、200~300ミクロンの決まった厚みを可能にするので、望ましいものであり得る。それとは反対に、例えば、シリコンが用いられると、13の誘電率が提供され、これは、100ミクロンをかなり下回る層の厚みを示唆し、これが機械的構成をより一層複雑にする。実際、そのような薄い膜は、セルの内側と外側との圧力差を保てない可能性がある。また、熱膨張係数に関してシリコンと合致し、低誘電率を提供するその他の材料も、層318の候補となる。金属結合リング320は、開口310と整合する位置でガラスシート318に取り付けられ、中央開口322を備える金属構造を提供するという点でリングとして説明される。ここでも、周囲金属及び開口322はいずれも矩形であり、本願におけるその他の矩形導波路と適合する。
【0030】
再び図2A、及び図3に関連して詳述したセル206を参照すると、インターポーザ204のキャビティ220内に、セル206のガラスシート318側を配置することで、アンテナ112及び114間の波経路が完成される。それゆえ、例えば、トランシーバ104は、波を、導波路108に沿って、基板102と平行の第1の次元に沿って、送信アンテナとしてのアンテナ112へ送信し得る。アンテナ112から、波は、第1の次元とは異なる第2の次元(すなわち、基板102と平行ではない)に進み、ここで、図2Aの例において、この第2の次元は第1の次元に対して垂直(又はほぼ垂直、例えば90度から±10度)である。図示される例では、第2の次元は、矩形導波路としての、インターポーザ204の第1の矩形開口222の内側の空気媒体を介し、更に、金属結合リング320の中央開口322(図3)、ガラスシート318、及びキャビティ領域306の一方の端部の近傍の開口310を介して波を誘導し、これら全てが、第1の矩形アンテナ遷移部230として機能しており、それにより、セル206の結果として得られるキャビティ309に波が入る。波が、セル206のそうした結果として得られるキャビティ309に沿って移動した後、波は、セルの内側の双極ガスの原子を問い合わせし得、セルは問い合わせ波の周波数に基づいて応答し得る。このように、波は、キャビティ309に沿って続き、その後、類似の中央開口(図示せず)から出て、再び第2の次元において、ガラスシート318、及びその後別の金属結合リング(図示せず)を通過する。これら全てが、第2の矩形アンテナ遷移部232として機能しており、その別の金属結合リングから、波は、この場合も矩形導波路としての、インターポーザ204の第2の矩形開口224の内側の空気媒体を介してアンテナ114へ続き得る。波がアンテナ114に達した後、波は、第1の次元において、対になっている導波路110によってトランシーバ104に通信される。その結果、トランシーバ104は、受信した信号応答を評価し得、例えば、送信された波信号のエネルギーと比較して、励起波の周波数がセルにおける双極ガスの回転量子遷移周波数に適合するかどうか(又は、いつ適合するか)など、種々の判定をする。
【0031】
図2Aを締めくくると、頂部プレート208は、プレート208をインターポーザ204に取り付けることによって、セル206の一部又は全部の頂上に固定される。より具体的には、頂部プレート208がセル206の頂上に接してインターポーザ204の近隣に置かれた後、4つの留め具(例えば、ねじ、図示せず)が、頂部プレート208における4つのそれぞれの皿ねじ開口236を介して取り付けられ、インターポーザ204におけるそれぞれの開口226内に(例えば、ねじ切り可能に)取り付けられる。従って、これらの留め具によって、セル206とインターポーザ204との間の圧縮力、並びに確立された整合及びリテンションが保証される。
【0032】
上記から、システム100は、インターポーザが直接的にPCBラウンチに波経路を提供するコンパクトなミリメートル波システムを提供し、ここで、インターポーザは、WR-12フランジなどの標準WR構造といった別の導波路を含む。その結果、標準的なラボ設備を用いてインターポーザ内にガスセルを置くことによって、PCBラウンチに直接的にウエハプロービングする必要なく、ガスセルが簡単及び迅速にテストされ得る。これは、場合によってはかなりの利点である。というのも、特にミリメートル波幾何形状におけるウエハプローブの代替は、コストがかかり、時間がかかり、また、著しい反復性の課題を有するからである。これに対し、例示の実施形態は、部品及び設備の両方に対してはるかに少ないリスクで、各ピースを共に取り付けること(例えば、ねじ留め)を促進する。また、アセンブルされた物理的セル/インターポーザが、非常に精密な顕微鏡の光学的整合なしに迅速にテストされ得、その後、ミリメートル波トランシーバPCBに容易にアセンブルされ得る。また、この例示のミリメートル波クロックの例は、クロックガスセル206から離れた基板102(例えば、PCB)上に置かれる既存のトランシーバ104(例えば、TI AWR1642)を用い得る。システム100は更に、(a)基板102に(例えば、基板102の頂上に、基板102内に)取り付けられ、トランシーバ104とガスセル206の端部との間を延在する送信及び受信導波路108、110と、(b)二つの付加的な導波路222、224とを含み、導波路222、224は各々、対になっている導波路のそれぞれの一方から、対になっている導波路の次元以外の次元(例えば、垂直)において、ガスセルの端部まで延在する。また、多数のその他の態様が、システム100に関連して示されている。例えば、先ほど説明した波経路から、波は、セルに入り得、セルを介して移動し得、第2の次元を介して、導波路の別の対の次元に再び戻り、トランシーバまで戻り得る。別の例として、セルは、レセプタクルに位置し得、ここで、レセプタクルは、波が伝搬する際、特に、異なるインピーダンスの媒体を通過する際、潜在的な信号損失を低減するように、基板上のアンテナに対して堅牢に取り付けられる。また、種々のその他の例示の実施形態が可能であり、そうした実施形態は、本説明の範囲内で個別に考慮され得、そうした実施形態から、異なる実施形態の選択された特徴が、更なる例示の実施形態を形成するために組み合わされ得る。
【0033】
また上記から、上述した種々の教示及び後述されるその他の教示が、他のミリメートル波システムに適用され得る。特に、例示のテストが、機械、手動、及び/又は器械誘導或いは器械実装のプロービングのいずれかによって実現され得る。この文脈においてたびたび、基板(例えば、PCB)が、その基板上に、十字線に似たプリントされた案内線を有し、テストプローブ整合が、充分な倍率(例えば、250倍)を備える(時に粗い)顕微鏡を用いることを試みつつ、プローブ先端が、その先端を適正な着地点と接触させながら観察され得るように、こうした案内線に沿って整合され得る。場合によっては、複数のプローブがそのように同時に移動され、誤差の余地はほとんどなく、同時のそれぞれの着地点に対する各プローブの適正で同時の誘導が必要とされる。また、そうした努力は、送信ミリメートル波経路及び受信ミリメートル波経路の両方に対して繰り返されなければならない。そのようなアプローチは非常に時間がかかり、エラーを起こしやすい。これに対し、例示の実施形態は、ミリメートル波通信基板に取り付けられ、基板上の目標箇所に対応する導波路を有するインターポーザを提供し、これにより、インターポーザは、こうした目標箇所に関して整合され、そうでなければ、上述のプロービングが必要となり得る。従って、インターポーザは、テストされるべきミリメートル波経路アイテムに対して既に整合されたテストメカニズムを提供する。それゆえ、本願において提供される例において、インターポーザ204は、第1のアンテナ112及び第2のアンテナ114によって表されるミリメートル波通信ポイントに既に整合された、固定されたキャビティ220を提供する。従って、更なるテスト又はミリメートル波通信は、直接的にこれらの通信ポイントに対するものである必要はなく、その代わりに、インターポーザを介して成され得る。それゆえ、ミリメートル波クロックの例において、インターポーザ204は、既に整合されたレセプタクルとして機能し、原子ガスセル206は、原子ガスセル206を第1のアンテナ112及び第2のアンテナ114と正確に整合させるため、及び、原子ガスセル206をそれらに直接的に取りつけるために必要とされるよりもはるかに少ない複雑性及び時間で、このレセプタクル内に置かれ得る。
【0034】
図4Aは、或る代替のコンパクトな分子クロックシステム400の平面図であり、図4Bはその断面図である。システム400は、基板402(例えば、PCB等)と、基板402に取り付けられるトランシーバ404とを含む。トランシーバ404は、基板402に対して固定される他の装置と電気的に通信し得る。そのような通信は、概して408及び410で示されるコプレーナ導波路による、トランシーバ404と原子クロックセル406との間を含む。図示される実施形態において、導波路408及び410は、基板402上又は基板402内に位置する金属層411から、好ましくは同じ平面において適切な経路をエッチングすることによって形成され得る。導波路408は第1のアンテナエリア412と通信し得、導波路410は第2のアンテナエリア414と通信し得る。
【0035】
システム400の幾つかの態様は、図1A図3のシステム100とは異なる。例えば、セル406はやはり二つの半導体ウエハ416及び418を含み、各々が、それぞれの台形キャビティを備え、連続的な結果として得られるキャビティ420を形成するように互いに面して取り付けられ、この例示的な実施形態において、キャビティ420は、波が第1のアンテナエリア412と第2のアンテナエリア414との間を伝搬するように、方向を2回垂直に変化させる、部分的に蛇行した経路を有する。また、セル406は、上側ガラス層422と下側ガラス層424の両方を含み、セル406は、レセプタクル装置において密閉されない。その代わりに、セル406は、好ましくは左右対称に位置する導電性取り付け部材426の一群によって、基板402に電気的に(及び物理的に)接続及び結合され、導電性取り付け部材426は、図示される例示の実施形態では、はんだボールである。また、図4A及び図4Bの例において、導電性取り付け部材の一群は、概ね行/列方位に配され得、それにより、下側ガラス層424と基板402の表面との間にボールグリッドアレイ(BGA)又は銅スタッド又はバンプを形成する。しかし、導電性取り付け部材426(例えば、はんだボール)は、第1のアンテナエリア412及び第2のアンテナエリア414には(又は導波路408及び410の経路には)提供されない。その結果、図4Aに最も良く示されているように、これらのエリアに導体が無いこと、及び、これらのエリア周辺近辺の周囲導体が、アンテナエリア412及び414から、図4Bにおいて垂直に、下側ガラス層424を介して上方に向かって、金属導波路を形成する。従って、例えば、波が、トランシーバ404の送信チャネルから導波路408を介して第1のアンテナエリア412へ移動し得、空中を及び下側ガラス層424を介して上方に向かい、セル406内へ及びその蛇行経路を介し、その後、セル406を出て、再び下側ガラス層424を介し、空中を介して第2のアンテナエリア414へ、その後、導波路410を介してトランシーバ404の受信チャンネルへ移動し得る。この例示の実施形態(及びその他のもの)において、種々の導波路構造経路が、誘導されている波の波長より少なくとも一桁小さい寸法とされる場合、波は、その通信経路を連続的導体として効果的に「認識する」。すなわち、波経路に沿った信号損失が比較的小さい。従って、種々の例示の実施形態において、波経路構造により、アンテナエリア412及び414の少なくとも近くにおいて、導電性取り付け部材426の間隔が、波の10分の1波長又はそれ以下である通路を提供する。しかし、基板402の残りの部分については、取り付け部材426の間隔は、熱応力のための機械設計上の考慮によって変更又は決定され得る。
【0036】
図5Aは、或る代替のコンパクトな分子クロックシステム500の平面図であり、図5Bはその断面図である。システム500は、図4A及び図4Bにおけるシステム400の種々の同じ部材及び接続性を含み、それゆえ、そのようなアイテムに対して、同様の参照番号がシステム400からシステム500に流用されている。しかし、システム500の場合、導電性取り付け部材に対するものとして、(好都合な誘電率及び損失正接を備える)接着剤502の層が、セル406を、基板402に対して取り付けるために用いられる。また、金属化層504が、下側ガラス層424の外側に形成され、これは、図3の層314に似た金属化層として実現され得る。しかし、ここで、第1のアンテナエリア506及び第2のアンテナエリア508をつくるように、及び、ここでも上記と適合する波通信のための電子的帯域ギャップ構造(EBG)をつくるように、金属化層504において、開口が(例えば、蒸着及びパターン形成によって)つくられて、その開口を介した波の通過が可能であるようにされる。このように、波が、第1のアンテナエリア506のエリアにおける一つの導波路408から、接着剤502の媒体及び下側ガラス層424を介し、金属化層504における第1の開口によって誘導されて、セル406内へ入り得る。その後、波は、セル406を介して進み、その後、第2のアンテナ508のエリアにおける金属化層504の第2の開口によって誘導されて、下側ガラス層424及び接着剤502の媒体を通過することによって、セル406の反対の端部から出て、その後、導波路410へ続く。また、或る例示の実施形態において、不要なクロストーク又は信号損失を防ぐため、金属化層504及び金属層411が平行プレート導波路として作用するのを防ぐように接着剤502の厚みは充分に薄い。
【0037】
図5Cは、図5のコンパクトな分子クロックシステム500の代替の断面図を図示し、従って、図5Cにおいて、システムはシステム510として示される。この場合も、上述した図面に類似のアイテムが図5Cに在る場合、同じ参照番号が繰り越される。システム510は、図5Bの接着剤層502を、高誘電率ポリマーのセクション514及び516で置き換えている。それゆえ、システム510において、波経路は、接着剤(例えば、図5B)又は空気(例えば、図4B)ではなく、高誘電率ポリマーセクション514及び516を介しており、これは、幾つかの実装にとって一層好都合であり得る。実際、ちょうどアンテナエリアにおいて高誘電率ポリマーセクション514及び516を有することによって、アンテナからガスセル間のエネルギーの伝送が増加又は最大化される。従って、挿入損失が実質的に改善され得る。というのも、電磁波が、高誘電体領域に集中することを好み得、送信機及び受信機間の伝搬を最小化し得、クロストークを低減するからである。クロストークは、他の技法(例えば、送信機及び受信機間の狭帯域のためのEBG)を用いて緩和され得、一方で、アンテナのエリアに配置される低損失高誘電率ポリマーの使用が、平行プレート電磁モードに対して大いにアシストし、そうでなければ、送信機/受信機クロストークが励起され、増加し得る。また、ポリマーセクション514及び516の厚みは、誘導された波の波長に従って選択され、ここでは、好ましくは、そうした厚みは4分の1波長以下又は4分の1波長と等しい。
【0038】
図6は、別の代替のコンパクトな分子クロックシステム600の断面図を図示する。この場合も、上述した図に類似のアイテムが図6に在る場合、同じ参照番号が繰り越される。システム600において、レセプタクルエリア602が、基板402におけるキャビティとして形成され、それにより、セル406が位置するレセプタクルが形成される。導波路604及び606(606は、断面からは見えないので破線によって示され、604は見える)は、トランシーバ404とレセプタクルエリア602との間を、まず垂直に、その後水平に(必須ではないが、水平或いは同一平面上に)延在し、第1のアンテナエリア608及び第2のアンテナエリア610を提供する。従って、波が、金属化層504におけるそれぞれの開口と下側ガラス層424とを通過することによって、セル406と、アンテナエリア608及び610のそれぞれ1つとの間で通信され得る。また、構造的リテンション(及び、場合によっては整合)のため、カバー612も、セル406の一部或いは全ての頂上に取り付けられ、これが、取り付け部材614によって更に保持され得る。実際、このようにセル406のリテンションがあると、更に下にある整合支持が不要となり、それゆえ、導波路604及び606の水平の延在は、(下側ガラス層424の外部表面上に形成される)金属化層504に直接に接し得る。
【0039】
図7Aは、別の代替のコンパクトな分子クロックシステム700平面図であり、図7Bはその断面図である。この場合も、上述した図面に類似のアイテムが図7A及び図7Bに在る場合、同じ参照番号が繰り越される。図5A及び図5Bのシステム500と種々の点において類似するシステム700において、セル406は基板402より上に位置する。しかし、システム700の場合、対となっているカバー702及び704がセル406の頂上に含まれ、これらが、取り付け部材706によって更に保持され得る。システム600と同様に、一つ又は複数のカバー702及び704によるセル406の物理的リテンション及び整合を備えるシステム700において、更に下にある整合支持は不要であり、それゆえ、導波路408及び410の水平の延在は、金属化層504に直接に接し得る。
【0040】
図8Aは、別の代替のコンパクトな分子クロックシステム800の平面図であり、図8Bはその断面図である。この場合も、図8A及び図8Bにおいて、上述した図面に類似のアイテムが在る場合、同じ参照番号が繰り越される。図5A及び図5Bのシステム500と種々の点において類似するシステム800において、セル406は基板402より上に位置する。しかし、システム800において、そのような位置決めは、基板402とガラス層424との間に多くのはんだパッド802を含むランドグリッドアレイ(LGA)接続によって実現される。図4A及び図4Bのように、エリア412及び414の近くにおけるLGA接続は、波の10分の1波長又はそれ以下である通路を提供するために離間される。各パッドは、金属層間に位置するはんだペーストを含み得、ここで、これらの金属層の第1の層は、送信機/受信機導波路が形成される同じ金属層411であり得、これらの層の第2の層は、金属化層504の一部から成り得る。その後、はんだペーストは、第1のアンテナエリア412及び第2のアンテナエリア414に対してセル406を整合及び取り付けるために、例えばリフロープロセスの間、溶融される。
【0041】
上記において、多数の例示の実施形態が提供され、コンパクトな分子クロックシステムを表した。例示の実施形態は種々の利点を有し得る。例えば、例示の実施形態は、異なる媒体を介して波を伝搬するなどのために、通信アンテナに対して原子ガスセルの適切な整合を提供する。この異なる媒体には、空気、接着剤、及びポリマーが含まれるが、更なる伝搬媒体が含まれ得、及び/又は置換され得る。別の例として、いくつかの例示の実施形態が、クロックセルの除去及び置換を可能にし、一方でまた、例えば人の手によるものを含め、レセプタクル内の整合を促進する。更に別の例として、整合が、信号損失を低減又は最小化するために、異なる例示の実施形態のための種々の方式において実現される。
【0042】
特許請求の範囲内で、説明された実施形態における付加的な改変が可能であり、その他の実施形態が可能である。
図1A
図1B
図1C
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
図5C
図6
図7A
図7B
図8A
図8B