(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】ロータに対するガスタービンケーシングの偏心を測定するためのシステムおよび方法
(51)【国際特許分類】
G01B 21/22 20060101AFI20230511BHJP
F01D 25/00 20060101ALI20230511BHJP
F02C 7/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G01B21/22
F01D25/00 V
F02C7/00 A
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2019042167
(22)【出願日】2019-03-08
【審査請求日】2022-03-01
(32)【優先日】2018-03-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390041542
【氏名又は名称】ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ
(74)【代理人】
【識別番号】100105588
【氏名又は名称】小倉 博
(74)【代理人】
【識別番号】100129779
【氏名又は名称】黒川 俊久
(74)【代理人】
【識別番号】100113974
【氏名又は名称】田中 拓人
(72)【発明者】
【氏名】トラヴィス・エドウィン・リプステイン
(72)【発明者】
【氏名】サンドラ・ビバリー・コルヴィック
【審査官】國田 正久
(56)【参考文献】
【文献】韓国公開特許第10-2015-0066848(KR,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0241393(US,A1)
【文献】特開2010-048822(JP,A)
【文献】特開平09-014267(JP,A)
【文献】特開平11-237238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01B 21/22 - 21/26
G01B 11/26 - 11/275
G01B 7/31 - 7/315
F01D 25/00
F02C 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ガスタービン(10)のロータ(30)に対するケーシング(14)の偏心を決定するためのシステム(1000)であって、
当該システム(1000)
が、
(i)第1の軸方向平面に沿った既知の円周方向位置で前記ケーシング(14)に設置された一組の静止距離検出器(120)であって、前記一組の静止距離検出器(120)
が、第1の距離検出器(120A)と、第2の距離検出器(120B)と、第3の距離検出器(120C)とを備え、
前記第1の距離検出器(120A)
が、第1のハウジング(122)と、前記第1のハウジング(122)内に収容された第1のマイクロコントローラ(12
8)と、前記第1のハウジング(122)に結合された第1のアンテナ(130)と、前記第1のアンテナ(130)の遠位端部に結合された第1の無線ネットワークトランシーバ(12
6)とを備え、
前記第2の距離検出器(120B)
が、第2のハウジング(122)と、前記第2のハウジング(122)内に配置された第2のマイクロコントローラ(12
8)と、前記第2のハウジング(122)に結合された第2のアンテナ(130)と、前記第2のアンテナ(130)の遠位端部に結合された第2の無線ネットワークトランシーバ(12
6)とを備え、
前記第3の距離検出器(120C)
が、第3のハウジング(122)と、前記第3のハウジング(122)内に配置された第3のマイクロコントローラ(12
8)と、前記第3のハウジング(122)に結合された第3のアンテナ(130)と、前記第3のアンテナ(130)の遠位端部に結合された第3の無線ネットワークトランシーバ(12
6)とを備える、一組の静止距離検出器(120)と、
(ii)前記第1の軸方向平面で
又はその近傍で前記ガスタービン(10)の回転構成要素に固着される回転距離検出器(200)であって、前記回転構成要素
が、前記ロータ(30)、圧縮機ブレード(16)
及びタービンブレード(16)のうちの1つであり、前記回転距離検出器(200)
が、第4のハウジング(202)と、前記第4のハウジング(202)内に配置された第4のマイクロコントローラ(
228)と、前記第4のマイクロコントローラ(
228)に結合された第4の無線ネットワークトランシーバ(
226)とを備え、
前記第1の距離検出器(120A)
が、第1の無線信号(170)を前記第2の距離検出器(120B)に送信し、前記第2の距離検出器(120B)から第2の無線信号(172)を受信して前記第1の距離検出器(120A)と前記第2の距離検出器(120B)との間の第1の距離を測定し、
前記第1の距離検出器(120A)
が、第3の無線信号(170)を前記第3の距離検出器(120C)に送信し、前記第3の距離検出器(120C)から第4の無線信号(172)を受信して前記第1の距離検出器(120A)と前記第3の距離検出器(120C)との間の第2の距離を測定し、
前
記ロータ(30)がスピンすると、前記回転距離検出器(200)
が、一連の第5の無線信号(170)を前記第1の距離検出器(120A)、前記第2の距離検出器(120B)
及び前記第3の距離検出器(120C)に送信し、それによって前記
回転距離検出器
(200)と前記第1の距離検出器(120A)、前記第2の距離検出器(120B)
及び前記第3の距離検出器(120C)の各々との間のそれぞれの第3の距離を示す一連の経路長さを規定し、
前記第1の距離検出器(120A)
及び前記回転距離検出器(200)の1つ
又は複数
が、無線ローカルエリアネットワーク(475)を介して前記第1の距離、前記第2の距離
及び前記それぞれの第3の距離の測定値を送信する、回転距離検出器(200)と、
(iii)前記第1の距離、前記第2の距離
及び前記それぞれの第3の距離の測定値を前記第1の軸方向平面の前記ロータ(30)に対する前記ケーシング(14)の偏心プロット(700、800)に処理するためのリモートコンピューティングデバイス(500)と
を備える、システム(1000)。
【請求項2】
前記ケーシング(14)が、複数のケーシング貫通部(102、104、106、108、110)を規定し、前記第1の距離検出器(120A)、前記第2の距離検出器(120B)
及び前記第3の距離検出器(120C)の前記それぞれのアンテナ(130)の各々が、前記複数のケーシング貫通部(102、104、106、108、110)のそれぞれを通して配置され、前記第1のハウジング(122)、前記第2のハウジング(122)
及び前記第3のハウジング(122)の各々が、前記ケーシング(14)の半径方向外側に配置される、請求項1に記載のシステム(1000)。
【請求項3】
前記第2の距離検出器(120B)が、第6の無線信号(170)を前記第3の距離検出器(120C)に送信し、前記第3の距離検出器(120C)から第7の無線信号(172)を受信して前記第2の距離検出器(120B)と前記第3の距離検出器(120C)との間の第4の距離を測定する、請求項1に記載のシステム(1000)。
【請求項4】
前記一組の静止距離検出器(120)が、第5のハウジング(122)と、前記第
5のハウジング(122)内に配置された第5のマイクロコントローラ(12
8)と、前記第5のハウジング(122)に結合された第5のアンテナ(130)と、前記第5のアンテナ(130)の遠位端部に結合された第5の無線ネットワークトランシーバ(12
6)とを備える第4の距離検出器(120D)を備え、前記第1の距離検出器(120A)が、第8の無線信号(170)を前記第4の距離検出器(120D)に送信し、前記第4の距離検出器(120D)から第9の無線信号(172)を受信して前記第1の距離検出器(120A)と前記第4の距離検出器(120D)との間の第5の距離を測定する、請求項3に記載のシステム(1000)。
【請求項5】
前記ケーシング(14)が、前記第1の軸方向平面に沿って円形断面を有し、前記第1の距離検出器(120A)、前記第2の距離検出器(120B)、前記第3の距離検出器(120C)
及び前記第4の距離検出器(120D)が、前記円形断面の各象限がそれぞれの距離検出器(120)を有するように、前
記ケーシング(14)を中心に円周方向に間隔を置いて配置される、請求項4に記載のシステム(1000)。
【請求項6】
前記第1の距離検出器(120A)、前記第2の距離検出器(120B)、前記第3の距離検出器(120C)
及び前記第4の距離検出器(120D)が、等間隔で円周方向に間隔を置いて配置される、請求項5に記載のシステム(1000)。
【請求項7】
前記第1の距離検出器(120A)、前記第2の距離検出器(120B)、前記第3の距離検出器(120C)
及び前記第4の距離検出器(120D)の各々が、前記ハウジング(122)内の前記マイクロコントローラ(12
8)に結合された追加の無線ネットワークトランシーバ(
13
6)を備える、請求項4に記載のシステム(1000)。
【請求項8】
前記回転距離検出器(200)が、前記ハウジング(202)内に配置されたバッテリ(246)と、前記マイクロコントローラ(128、228)に結合された電源スイッチ(244)とをさらに備える、請求項1に記載のシステム(1000)。
【請求項9】
前記回転距離検出器(200)の前記第4のハウジング(202)が、固着された複数の磁石(260)を有する表面(206)を備え、前記複数の磁石(260)を有する前記表面(206)が、前記回転構成要素の表面と接触して配置される、請求項1に記載のシステム(1000)。
【請求項10】
ガスタービン(10)のロータ(30)に対するケーシング(14)の偏心を決定するための方法(600)であって、
(a)第1の軸方向平面に沿った既知の円周方向位置に、第1の距離検出器(120A)と、第2の距離検出器(120B)と、第3の距離検出器(120C)とを備える一組の静止距離検出器(120)を前記ケーシング(14)に設置する
ステップ(622)であって、前記第1の距離検出器(120A)、前記第2の距離検出器(120B)
及び前記第3の距離検出器(120C)の各々
が、ハウジング(122)と、前記ハウジング(122)内に配置されたマイクロコントローラ(12
8)と、前記ハウジング(122)に結合されたアンテナ(130)と、前記アンテナ(130)の遠位端部に結合された無線ネットワークトランシーバ(12
6)とを備える
、ステップと、
(b)前記第1の軸平面に
又はその近傍に、回転距離検出器(200)を回転構成要素に設置する
ステップ(624)であって、前記回転距離検出器(200)
が、ハウジング(202)と、前記ハウジング(202)内に配置されたマイクロコントローラ(
228)と、無線ネットワークトランシーバ(
226)とを備え、前記回転構成要素
が、圧縮機ブレード(16)、タービンブレード(16)
及び前記ロータ(30)のうちの1つを備える
、ステップと、
(c)前記第1の距離検出器(120A)、前記第2の距離検出器(120B)
及び前記第3の距離検出器(120C)の間で、無線ローカルエリアネットワーク(475)を介して無線信号(170、172)を送信
及び受信することによってそれぞれの対の前記第1の距離検出器(120A)、前記第2の距離検出器(120B)
及び前記第3の距離検出器(120C)の間のそれぞれの距離の第1の一連の測定値を取得する
ステップ(630)と、
(d)前記ロータ(30)が低速でスピンすると、前記第1の距離検出器(120A)、前記第2の距離検出器(120B)、前記第3の距離検出器(120C)
及び前記回転距離検出器(200)の間で、前記無線ローカルエリアネットワーク(475)を介して無線信号(170、172)を送信
及び受信することによって前記回転距離検出器(200)と前記第1の距離検出器(120A)、前記第2の距離検出器(120B)
及び前記第3の距離検出器(120C)の各々との間のそれぞれの距離の第2の一連の測定値を取得する
ステップ(650)と、
(e)前記第1の一連の測定値
及び前記第2の一連の測定値をリモートコンピューティングデバイス(500)に送信する
ステップ(660)であって、前記リモートコンピューティングデバイス(500)
が、計算を実行し、前記第1の軸方向
平面の偏心プロット(700、800)を生成する
、ステップと、
(f)前記第1の軸方向
平面の前記偏心プロット(700、800)をレビューのためにリモートビューイングデバイス(560)に送達し(670)、前記偏心が所定の仕様内にあるかどうかを決定する
ステップ(680)と
を含む、方法(600)。
【請求項11】
前記第1の軸方向
平面の前記偏心が前記所定の仕様外である場合、前記ロータ(30)
の位置を調整する
ステップ(690)をさらに含む、請求項
10に記載の方法(600)。
【請求項12】
前記ロータ(30)
の位置を調整した後に少なくともステップ(d)、(e)
及び(f)を繰り返すことをさらに含む、請求項
11に記載の方法(600)。
【請求項13】
前記第1の軸方向平面から遠位の第2の軸方向平面でステップ(a)~(f)を繰り返すことをさらに含む、請求項
10に記載の方法(600)。
【請求項14】
前記第1の軸方向
平面の前記偏心と前記第2の軸方向
平面の前記偏心の両方が前記所定の仕様外である場合、前記ロータ(30)
の位置を調整する
ステップ(690)をさらに含む、請求項
13に記載の方法(600)。
【請求項15】
前記第1の軸方向平面
が前記ガスタービン(10)の圧縮機(12)に配置され、
かつ前記第2の軸方向平面
が前記ガスタービン(10)のタービン(28)に配置される
か、或いは前記第1の軸方向平面及び前記第2の軸方向平面が、前記ガスタービン(10)の圧縮機(12)又は前記ガスタービン(10)のタービン(28)に配置される、請求項
13に記載の方法(600)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、ガスタービンケーシングまたはシェルを有するガスタービンに関し、より具体的には、ロータに対するガスタービンケーシングの偏心を測定するためのシステムおよび方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ガスタービンシステムなどのいくつかの従来のターボ機械は、電力を生成するために利用される。一般に、ガスタービンシステムは、圧縮機と、1つまたは複数の燃焼器と、タービンとを含む。空気は、その入口を介して圧縮機内に引き込まれることができ、そこで空気は、多段の回転ブレードおよび静止ノズルを通過することによって圧縮される。圧縮空気は、1つまたは複数の燃焼器に導かれ、そこで燃料が導入され、そして燃料/空気混合物が点火されて燃焼され、燃焼生成物を形成する。燃焼生成物は、タービンの動作流体として機能する。
【0003】
次いで、動作流体は、各組の回転ブレードおよび各対応する組の静止ノズルがタービン段を規定するように、複数の回転ブレードと回転ブレードの間に配置された複数の静止ノズルとの間に規定される流体流路を通って流れる。発電に使用されるタービンの中には、3段を有するものもあれば、4段を有するものもある。複数の回転ブレードがガスタービンシステムのロータを回転させると、ロータに結合された発電機は、ロータの回転から電力を生成することができる。タービンブレードの回転はまた、ロータに結合される圧縮機ブレードの回転を引き起こす。
【0004】
ガスタービンロータのガスタービンケーシングに対する適切な位置合わせを確実にすることにより、ガスタービンが最も効率的に動作することを可能にし、圧縮機ブレード先端が圧縮機ケーシングに擦り付けられる可能性、またはタービンブレードがタービンシェルに擦り付けられる可能性を低減し、ガスタービンを通る不均一な空気流から生じ得る不均一な部分摩耗の可能性を低減する。位置合わせプロセスは、ガスタービンの初期構築中または設置中に実行され、ガスタービンケーシングおよび/またはロータが移動している運転停止中にも実行することができる。ガスタービンのオペレータが、回転圧縮機またはタービンブレードとガスタービンケーシングのそれぞれの部分との間の位置ずれおよび/または望ましくないクリアランスを修正することができることにより、動作効率が確保され、発電出力が維持される。
【0005】
1つまたは複数の軸方向に間隔を置いて配置された段でロータに対するガスタービンケーシングの偏心を迅速かつ正確に測定するためのシステムが必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【0007】
簡単に言えば、本開示は、ガスタービンのケーシングおよびロータの偏心を決定するためのシステムおよび方法に関する。システムは、既知の円周方向位置でケーシングに結合された複数の静止距離検出器と、静止距離検出器によって規定された軸方向平面でロータまたはブレードに結合された回転距離検出器とを含む。静止距離検出器は、無線信号を互いに送信し、各対の静止距離検出器の間の第1の一連の距離測定値を決定する。回転距離検出器は、ロータがスピンすると、無線信号を静止距離検出器の各々に送信し、第2の一連の距離測定値を生成する。測定値は、無線ローカルエリアネットワークを介して、距離測定値を偏心プロットに処理するリモートコンピューティングデバイスに送信される。任意選択の基地局を使用して、無線ネットワークを生成してもよい。
【0008】
より具体的には、ガスタービンのロータに対するケーシングの偏心を決定するためのシステムは、第1の軸方向平面に沿った既知の円周方向位置でケーシングに設置された一組の静止距離検出器を含み、一組の静止距離検出器は、第1の距離検出器と、第2の距離検出器と、第3の距離検出器と、回転距離検出器と、リモートコンピューティングデバイスとを備える。第1の距離検出器は、第1のハウジングと、第1のハウジング内に収容された第1のマイクロコントローラと、第1のハウジングに結合された第1のアンテナと、第1のアンテナの遠位端部に結合された第1の無線ネットワークトランシーバとを含む。第2の距離検出器は、第2のハウジングと、第2のハウジング内に配置された第2のマイクロコントローラと、第2のハウジングに結合された第2のアンテナと、第2のアンテナの遠位端部に結合された第2の無線ネットワークトランシーバとを含む。第3の距離検出器は、第3のハウジングと、第3のハウジング内に配置された第3のマイクロコントローラと、第3のハウジングに結合された第3のアンテナと、第3のアンテナの遠位端部に結合された第3の無線ネットワークトランシーバとを含む。第1の軸方向平面でまたはその近傍でガスタービンの回転構成要素に固着される回転距離検出器は、第4のハウジングと、第4のハウジング内に配置された第4のマイクロコントローラと、第4のマイクロコントローラに結合された第4の無線ネットワークトランシーバとを含む。回転構成要素は、ロータ、圧縮機ブレード、およびタービンブレードのうちの1つである。第1の距離検出器は、第1の無線信号を第2の距離検出器に送信し、第2の距離検出器から第2の無線信号を受信して第1の距離検出器と第2の距離検出器との間の第1の距離を測定する。第1の距離検出器は、第3の無線信号を第3の距離検出器に送信し、第3の距離検出器から第4の無線信号を受信して第1の距離検出器と第3の距離検出器との間の第2の距離を測定する。圧縮機ロータがスピンすると、回転距離検出器は、一連の第5の無線信号を第1の距離検出器、第2の距離検出器、および第3の距離検出器に送信し、それによって第4の距離検出器と第1の距離検出器、第2の距離検出器、および第3の距離検出器の各々との間のそれぞれの第3の距離を示す一連の経路長さを規定する。第1の距離検出器および回転距離検出器の1つまたは複数は、第1の距離、第2の距離、およびそれぞれの第3の距離の測定値を送信する。リモートコンピューティングデバイスは、第1の距離、第2の距離、およびそれぞれの第3の距離の測定値を第1の軸方向平面のロータに対するケーシングの偏心プロットに処理する。
【0009】
ガスタービンの圧縮機ロータに対する圧縮機ケーシングの偏心を決定するための方法もまた、本明細書で提供される。方法は、(a)第1の軸方向平面に沿った既知の円周方向位置に、第1の距離検出器と、第2の距離検出器と、第3の距離検出器とを備える一組の静止距離検出器をケーシングに設置するステップであって、第1の距離検出器、第2の距離検出器、および第3の距離検出器の各々は、ハウジングと、ハウジング内に配置されたマイクロコントローラと、ハウジングに結合されたアンテナと、アンテナの遠位端部に結合された無線ネットワークトランシーバとを備えるステップと、(b)第1の軸平面にまたはその近傍に、回転距離検出器を回転構成要素に設置するステップであって、回転距離検出器は、ハウジングと、ハウジング内に配置されたマイクロコントローラと、無線ネットワークトランシーバとを備え、回転構成要素は、圧縮機ブレードおよび圧縮機ロータのうちの1つを備えるステップと、(c)第1の距離検出器、第2の距離検出器、および第3の距離検出器の間で、無線ローカルエリアネットワークを介して無線信号を送信および受信することによってそれぞれの対の第1の距離検出器、第2の距離検出器、および第3の距離検出器の間のそれぞれの距離の第1の一連の測定値を取得するステップと、(d)圧縮機ロータが低速でスピンすると、第1の距離検出器、第2の距離検出器、および第3の距離検出器の間で、無線ローカルエリアネットワークを介して無線信号を送信および受信することによって回転距離検出器と第1の距離検出器、第2の距離検出器、および第3の距離検出器の各々との間のそれぞれの距離の第2の一連の測定値を取得するステップと、(e)第1の一連の測定値および第2の一連の測定値をリモートコンピューティングデバイスに送信するステップであって、リモートコンピューティングデバイスは、計算を実行し、第1の軸方向段の偏心プロットを生成するステップと、(f)第1の軸方向段の偏心プロットをレビューのためにリモートビューイングデバイスに送達し、偏心が所定の仕様内にあるかどうかを決定するステップとを含む。
【0010】
本明細書は、当業者を対象として、本システムおよび方法の完全かつ可能な開示を、それを使用する最良の形態を含んで記載する。本明細書は、添付の図を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本偏心測定システムを用いることができるガスタービンシステムの概略図である。
【
図2】異なる圧縮機段のケーシング貫通部を示す、
図1のガスタービンシステムの圧縮機の概略図である。
【
図3】本開示の偏心測定システムの一部として使用することができる、静止距離検出器の側面断面図である。
【
図7】
図1の圧縮機またはタービンのいずれかのケーシングの周りに設置された、一組の静止距離検出器の概略図である。
【
図8】本偏心測定システムと共に使用することができる基地局の俯瞰斜視図である。
【
図9】
図8の基地局と共に使用するための一対のアンテナの斜視図である。
【
図10】本偏心測定システムの静止距離検出器とリモートコンピューティングデバイスとの間の無線通信の概略図である。
【
図11】ケーシングに設置された(
図3におけるような)2つの静止距離検出器の各々と複数の他の静止距離検出器との間の無線通信の概略図である。
【
図12】本偏心測定システムの(
図3におけるような)それぞれの対の静止距離検出器の間の無線通信の概略図である。
【
図13】本偏心測定システムの一部として
図1のガスタービンの回転構成要素に装着することができる、回転距離検出器の分解俯瞰図である。
【
図16】
図13の回転距離検出器が取り付けられている例示的なブレードの斜視図である。
【
図17】
図16の回転ブレードに装着された回転距離検出器を示す、(
図3の)静止距離検出器のうちの1つと(
図13の)回転距離検出器との間の無線通信の概略図である。
【
図18】(
図3の)別の静止距離検出器と(
図13の)回転距離検出器との間の無線通信の概略図である。
【
図19】
図17および
図18に示すような、静止距離検出器と回転距離検出器との間の無線通信から導出された点のプロットの概略図である。
【
図20】本偏心測定システムを使用してガスタービンケーシングとロータとの位置合わせを確実にするプロセスを概説するフローチャートである。
【
図21】本偏心システムを使用して行われた測定値の例示的なプロット図である。
【
図22】
図3の静止距離検出器(3つのユニット)と、
図13の回転距離検出器(1つのユニット)と、任意選択で、
図8の基地局と、
図9の少なくとも1つのアンテナとを含む本開示の偏心測定システムの構成要素を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
現在の偏心測定システムを明確に説明するために、本開示の範囲内の関連する機械構成要素を参照し説明するために特定の専門用語を使用する。可能な限り、一般的な業界専門用語が、用語の一般的な意味と一致する方法で使用されて用いられる。別途記載のない限り、このような専門用語は、本出願の文脈および添付の特許請求の範囲と一致する広義の解釈を与えられるべきである。当業者であれば、多くの場合、特定の構成要素がいくつかの異なるまたは重複する用語を使用して参照されることがあることを理解するであろう。単一の部品であるとして本明細書に記載され得るものは、複数の構成要素からなるものとして別の文脈を含み、かつ別の文脈で参照されてもよい。あるいは、複数の構成要素を含むものとして本明細書に記載され得るものは、単一の部品として他の場所で参照されてもよい。
【0013】
加えて、以下に記載されるように、いくつかの記述的用語が本明細書で規則的に使用され得る。本明細書で使用する場合、「下流」および「上流」は、タービンエンジンを通る作動流体などの流体の流れに対する方向を示す用語である。「下流」という用語は、流体の流れの方向に対応し、「上流」という用語は、流れとは反対の方向(すなわち、流体が流れてくる方向)を指す。「前方」および「後方」という用語は、別途指定のない限り、相対的な位置を指し、「前方」は、エンジンの前方(または圧縮機)端部に向かって位置した構成要素または表面を表すために使用され、「後方」は、エンジンの後方(またはタービン)端部に向かって位置した構成要素を表すために使用される。さらに、「先導する」および「後続する」という用語は、それぞれ、「前方」および「後方」という用語と同様の記述で使用され、および/または理解することができる。「先導する」は、例えば、流体が最初に流れるタービンブレードの表面を表すために使用され得、「後続する」は、流体が最終的に流れるタービンブレードの表面を表すために使用され得る。
【0014】
多くの場合、異なる半径方向、軸方向および/または円周方向の位置にある部品を説明することが要求される。
図1に示すように、「A」軸は、軸方向を表す。本明細書で使用する場合、「軸方向の」および/または「軸方向に」という用語は、タービンシステム(特に、ロータセクション)の回転軸と実質的に平行な軸Aに沿った物体の相対的な位置/方向を指す。さらに本明細書で使用する場合、「半径方向の」および/または「半径方向に」という用語は、軸Aと実質的に垂直であり、ただ1つの場所において軸Aと交差する軸(R)に沿った物体の相対的な位置または方向を指す。最後に、「円周方向の」という用語は、軸A(例えば、軸「C」)周りの移動または位置を指す。「円周方向の」という用語は、任意の適切な形状(例えば、多角形)の中心の周りに延びる寸法を指すことがあり、円形形状の中心の周りに延びる寸法に限定されない。
【0015】
本開示は、一般に、圧縮機ケーシングおよびタービンシェルを有するガスタービンに関し、より具体的には、ガスタービンロータに対する圧縮機ケーシングおよびタービンシェルの一方または両方の偏心を測定するためのシステムおよび方法に関する。そのような測定は、製造中、およびガスタービンが停止している運転停止中(例えば、検査または保守期間中)に必要となる可能性がある。本明細書における「ケーシング」(「a casing」または「the casing」)へのあらゆる言及は、特に明記しない限り、圧縮機ケーシングまたはタービンシェルのいずれかを包含するように読まれるべきである。ケーシングは、単壁ケーシングまたは二重壁ケーシングであってもよく、圧縮機ケーシングとタービンシェルの両方が同じ数の壁を含むことは必要ではない。本明細書における「回転ブレード」への言及は、特に明記しない限り、圧縮機ブレードまたはタービンブレードのいずれかを指すものとして理解されるべきである。
【0016】
システムおよび方法の様々な実施形態は、
図1~
図22を参照して以下に説明される。しかし、当業者であれば、これらの図に関して本明細書に与えられた詳細な説明は例示のためのものであり、限定するものとして解釈すべきではないことを容易に理解するであろう。
【0017】
図1は、例示的なガスタービンシステム10の概略図を示す。ガスタービンシステム10は、圧縮機ケーシング14内に段階的に配置された、複数の回転ブレード16(
図16に示す)と、静止ベーンとを含む圧縮機12を含むことができる。空気18は、圧縮機入口13に入り、多段のブレードおよびベーンを通って流れ、圧縮空気流20を発生する。圧縮機12は、圧縮空気20の流れを燃焼器22に送達する。燃焼器22内では、圧縮空気20の流れが燃料24の流れと混合され、得られた混合物が燃焼されて燃焼ガス26の流れを生成する。単一の燃焼器22のみが示されているが、ガスタービンシステム10は、任意の数の燃焼器22を含むことができる。
【0018】
燃焼ガス26の流れは次に、同様に段階的に配置された、典型的には複数の回転ブレードおよび静止ベーンを含むタービン28に送達される。燃焼ガス26の流れは、タービン28を駆動して機械的仕事を発生する。タービン28で発生された機械的仕事は、タービン28を通って延びるロータ30を介して圧縮機12を駆動し、発電機などの外部負荷40を駆動するために使用することができる。ロータ30は、中実ロータまたは(例えば、
図17に示すように)中空コアを有する積層ロータであり得る。
【0019】
ガスタービンシステム10はまた、排気フレーム34を含むことができる。
図1に示すように、排気フレーム34は、ガスタービンシステム10のタービン28に隣接して配置することができる。より具体的には、排気フレーム34は、タービン28に隣接して、かつその実質的に下流に配置することができる。本明細書で説明するように、排気フレーム34の一部(例えば、外側ケーシング)は、タービン28のエンクロージャまたはシェル36に直接結合することができる。
【0020】
燃焼ガス26がタービン28を通って流れてタービン28を駆動した後、燃焼ガス26は、排気フレーム34を通って流れ方向(D)に排気、流入、および/または排出され得る。
図1に示す非限定的な例では、燃焼ガス26は、流れ方向(D)に排気フレーム34を通って流れることができ、ガスタービンシステム10から(例えば、大気に)排出され得る。ガスタービンシステム10が複合サイクル発電プラント(例えば、ガスタービンシステムおよび蒸気タービンシステムを含む)の一部である別の非限定的な例では、燃焼ガス26は、排気フレーム34から排出され、流れ方向(D)で複合サイクル発電プラントの排熱回収ボイラに流入してもよい。
【0021】
図2、および引き続き
図1を参照すると、ガスタービンシステム10の一部が示されている。具体的には、
図2は、圧縮機セクション12およびそのケーシング14を概略的に示す。上述のように、空気18は、圧縮機12の上流端部で入口13を通って入り、圧縮機ケーシング14の内部に結合された第1段の回転圧縮機ブレードおよび第1段の静止ベーンに遭遇する。本明細書でさらに説明するように、ロータ30は、ロータ30に結合されかつロータ30の周りに円周方向に配置された複数のブレード16(そのうちの1つが
図17に示される)を含むことができ、ロータ30の回転は、タービンセクション28の回転ブレードによって駆動することができる。圧縮機セクション12の各ブレード16は、ロータ30から半径方向に延び、圧縮機セクション12を通って流れる空気18の流路内に配置された翼形部を含むことができる。
【0022】
圧縮機ケーシング14は、ボアスコープなどの検査ツールの進入を容易にするためにケーシング貫通部102、104、106(すなわち、ケーシング14を通る孔)を含む。図示の例示的な配置では、ケーシング貫通部102は、圧縮機12の入口13にまたはその近傍に配置され、ケーシング貫通部104は、圧縮機12の中間段の近傍に配置され、ケーシング貫通部106は、圧縮機12の後方(または出口)端部にまたはその近傍に配置される。
【0023】
(
図1に示すような)同様のケーシング貫通部108、110は、それぞれタービン28の入口でまたはその近傍で、かつタービン28の後方(または出口)端部でまたはその近傍でタービン28を囲むタービンシェル36を通して規定することができる。二組のケーシング貫通部のみが記載されているが、タービン28の各段がそれ自体の組のケーシング貫通部を有することができることが理解されるべきである。
【0024】
各段において、圧縮機ケーシング14内でもタービンシェル36内でも、ケーシング貫通部は、共通の軸方向平面に沿って配置される。場合によっては、単一の段のケーシング貫通部(例えば、ケーシング貫通部102)は、隣接するケーシング貫通部102の間に等距離の円周方向間隔で配置されてもよい。場合によっては、単一の段のケーシング貫通部は、円周方向間隔が(90度間隔で)等距離であるか不均一であるかにかかわらず、360度ケーシング14の象限毎に少なくとも1つのケーシング貫通部と配置される。他の例では、単一の段の対の隣接するケーシング貫通部は、ケーシング14の外側の他のハードウェアを収容するように円周方向に不均一に間隔を置いて配置されてもよい。本偏心測定システム1000は、本明細書に記載の測定値を収集するために、所与の軸方向平面内(例えば、ケーシング貫通部102、104、106、108、または110のいずれか)のケーシング貫通部の間に均一または等距離の円周方向間隔を必要としない。
【0025】
図3、
図4、
図5、および
図6は、本偏心測定システムの一部である、静止距離検出器120の様々な図を示す。静止距離検出器120は、圧縮機ケーシング14のそれぞれのケーシング貫通部102、104、もしくは106またはタービンシェル36のケーシング貫通部108もしくは110を通して設置するように構成される。
図3に示すように、ケーシング14または36の半径方向外側表面112には、距離検出器120(または他の機器)を設置するための滑らかな表面を提供するために皿穴または凹状領域114を設けることができる。ケーシング貫通部(例えば、102)は、ケーシング14または36を通って皿穴領域114からケーシング14または36の半径方向内側表面113へと半径方向内側に延びる。
【0026】
ケーシング装着型または静止距離検出器とも呼ばれる距離検出器120は、上部(半径方向外側)表面121および底部(半径方向内側)表面125を有する円筒形本体123を有するハウジング122と、本体123の底部表面125から半径方向外側に延びるアンテナ130とを含む。本体123は、回路基板アセンブリ124を収容し、回路基板アセンブリ124は、プラットフォーム127に装着されて本体123内に回路基板アセンブリ124の位置を維持することができる。一次無線トランシーバ126およびマイクロコントローラ128が、一対の電気コネクタ(別々に示されていない)と共に、回路基板アセンブリ124に設置される。
【0027】
ハウジング122の本体123は、電源コード140が供給される開口部141を含む。ケーシング装着型距離検出器120が静止しているので、電源150は、(
図7に示すように)距離検出器120から離れていてもよい。あるいは、ケーシング装着型距離検出器120には、回路基板アセンブリ124に接続するバッテリなどの、ハウジング122の本体123の内部にある電源を設けることができる。そのような場合(別々には示されていない)、電源と通信するスイッチは、距離検出器をオン/オフするために使用される。必要に応じて、回路基板アセンブリ124は、静止距離検出器120がオンになっていることを示す、またはバッテリ式検出器の場合、バッテリのバッテリレベルを示す1つまたは複数のLEDライト(図示せず)に接続されてもよい。
【0028】
アンテナ130は、圧縮機ケーシング14のケーシング貫通部102、104、もしくは106、またはタービンシェル36のケーシング貫通部108もしくは110内に嵌合するように構成された円筒形状を有する。アンテナ130は、ハウジング122の本体123から遠位の端部に二次無線トランシーバ136を含む。アンテナ130は、トランシーバ136がケーシング14または36の半径方向内側表面113と面一になることを可能にする長さを有し、その結果、アンテナ130は、偏心測定プロセスの後半で起こるような、圧縮機ブレード16またはタービンブレードそれぞれの回転によって妨害されない。
【0029】
二次無線トランシーバ136によって受信されたデータは、回路基板アセンブリ124のマイクロコントローラ128に送信され、一次無線トランシーバ126にデータを分析のためにリモートコンピューティングデバイス500に送信させる(
図10に示す)。マイクロコントローラ128は、メモリ(別々に示されていない)を含む。マイクロコントローラ128のメモリは、規定された測定期間にわたるデータ測定値を記憶する。測定期間の終わりに、無線トランシーバ126は、(以下に説明する
図10に示すように)サーバまたはコンピュータなどのリモートコンピューティングデバイス500に送達される単一のメッセージで距離検出器120からの(データ)信号の無線送信を可能にする。送信は、限定はしないが、802.11b、802.11g、および802.11nを含む、任意の適切なWi-Fiネットワークプロトコルを介して行われ得る。別々に示されているが、無線トランシーバ126は、いくつかの実施形態ではマイクロコントローラ128と統合されてもよい。
【0030】
図5は、上部表面121から見た静止距離検出器120を示す。ハウジング122の上部表面121は、その内部にアクセスするためにハウジング122から取り外し可能であり得る。
図5に示すように、ねじ142または他の取り付け手段を使用して、上部表面121をハウジング122に接続することができる。
図6は、底部から見た静止距離検出器120を示し、アンテナ130の底部表面125および無線トランシーバ136を示す。
【0031】
ハウジング122およびアンテナ130は、三次元印刷などの付加製造技術を使用して、一体化された(単一の)構成要素として、または後で共に結合される2つの別々の構成要素としてプラスチックから製造することができる。あるいは、ハウジング122および/またはアンテナ130は、成形、鋳造、または他の適切な技術によって製造することができる。
【0032】
図7は、圧縮機ケーシング14またはタービンシェル36の静止距離検出器120の例示的な配置を示す。説明を容易にするために、静止距離検出器120には、「120A」、「120B」、および「120C」のような追加のアルファベット記号が与えられる。ケーシング14(またはシェル36)は、地理的中心15を有し、これはプラス記号で示されている。
【0033】
静止距離検出器120は、圧縮機ケーシング14のそれぞれのケーシング貫通部102(または104もしくは106)またはタービンシェル36のケーシング貫通部108もしくは110を通って共通の軸方向平面に配置され、互いから等距離に間隔を置いて配置することができるが、そのような同等の間隔は必須ではない。ロータ30に対するガスタービンケーシングの偏心を決定するための読み取りを行う技術者は、各静止距離検出器120A、120B、120Cの相対的な円周方向位置をリモートコンピューティングデバイス500(コンピュータまたはサーバなど)でホストされるコンピュータプログラム(図示せず)に、またはリモートビューイングデバイス560(例えば、タブレットコンピュータ)でホストされるスマートデバイスアプリケーションに入力する。
【0034】
各静止距離検出器120A、120B、120Cには、距離検出器120A、120B、120Cを電源150に接続するそれぞれの電源コード140を設けることができる。あるいは、各距離検出器120A、120B、および120C(など)には、電力をマイクロコントローラ128および他の構成要素に供給するそれ自体のバッテリを設けることができる。
【0035】
静止距離検出器120がデータをサーバ500などのリモートコンピューティングデバイスに、そして最終的にはリモートビューイングデバイス560(タブレットコンピュータなど)に無線で送信するためには、
図10に示すように、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)475を用いることが有利である。
図8および
図9は、距離検出器120からの無線送信を増強するための基地局400および一対のアンテナ450を含み、一方が利用不可能である場合に無線ネットワークを形成するように使用され得る構成要素を示す。無線ルータとして機能する基地局400は、携帯用収納ボックス402に収容される。保護シールド404は、Wi-Fiチップ(無線トランシーバ)と、マイクロコントローラとを含む回路基板(図示せず)への損傷を防止する。保護シールド404は、電気コンセント406と、スイッチ408とを含む。ファン410を使用して、回路基板を冷却することができる。一対のアンテナポート412もまた、設けられる。
【0036】
図9は、アンテナ450を示し、各アンテナ450は、円形基部452と、延長シャフト454とを有する。基部452は、ガスタービンシステム10への装着を容易にする磁石を含むことができる。アンテナ450は、ケーブル456を介して、基地局400のアンテナポート412に接続される。アンテナ450は、距離測定値が取得される軸方向段に応じて、例えば、圧縮機12またはタービン28の半径方向外側のタービンスタンドに配置することができる。あるいは、または加えて、1つまたは複数のアンテナを、静止距離検出器120および回転距離検出器200が設置される軸方向平面の場所に応じて、ケーシング14もしくは36内または排気フレーム34内に配置することができる。
【0037】
図10は、静止距離検出器120Aと静止距離検出器120Bおよび120Cとの間の無線信号送信を示す。電源が投入されると、距離検出器120Aは、(無線トランシーバ136によって生成された)無線信号170を距離検出器120Bの無線トランシーバ136に送信する。送信された無線信号170を受信すると、距離検出器120Bの無線トランシーバ136は、無線応答信号172を距離検出器120Aに送信する。無線信号170の送信と無線応答信号172の受信との間の「飛行時間」は、距離検出器120Aのマイクロコントローラ128のメモリに記録され、距離検出器120Aと距離検出器120Bとの間の距離を計算するためにリモートコンピューティングデバイス500によって使用される。プロセスは、距離検出器120Aと距離検出器120Cとの間で繰り返される。任意選択で、プロセスは、距離検出器120Bと距離検出器120Cとの間で繰り返される。
【0038】
静止距離検出器120A、120B、および/または120Cからのデータは、基地局400によって生成された無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)475を使用して、アンテナ450を介して無線で送信される。データ測定値は、以下に説明するように、データプロットを生成するために測定値に計算を実行するリモートコンピューティングデバイス500によって受信される。リモートコンピューティングデバイス500(すなわち、コンピュータまたはサーバ)は、MQテレメトリトランスポート(MQTT)メッセージングプロトコル、または別の適切なメッセージングプロトコルを使用してリモートビューイングデバイス560にロードされたアプリケーションと通信し、偏心測定プロセスが完了したときに結果が技術者によってレビューされ得る。
【0039】
図11は、圧縮機ケーシング14またはタービンシェル36の周りの4つ以上の静止距離検出器120の使用を示す。この例示的な配置では、静止距離検出器120A、120C、120D、および120Fは、互いに対して等距離の円周方向間隔で配置されるが、そのような均一な間隔は必須ではない。距離検出器120Bおよび120Eは、それぞれの対の距離検出器120の間の中間位置(すなわち、距離検出器120Bは120Aと120Cとの間、距離検出器120Eは120Dと120Fとの間)に配置される。
図11において、静止距離検出器120Aは、他の静止距離検出器120B、120C、120D、120E、および120Fの各々に無線信号を送信し、そこから無線応答信号を受信する。同様に、図示のように、静止距離検出器120Fは、他の静止距離検出器120A、120B、120C、120D、および120Eの各々に無線信号を送信し、そこから無線応答信号を受信する。
【0040】
圧縮機ケーシング14またはタービンシェル36の中心15をより正確に決定するために、各距離検出器120A~120Fは、
図12に示すように、一連のそれぞれの対で無線信号を送信および受信する。静止距離検出器120の数が増加するにつれて、以下に示す式F1に従って、対応する距離測定値の数も増加し、式中、n=距離検出器の数であり、M=測定値の数である:
【0041】
【数1】
実用上、nは、3以上でなければならない。したがって、6つの静止距離検出器120を有する
図12に示す配置の場合、それぞれの対の静止距離検出器の間の結果として生じる通信は、15個の距離測定値をもたらす。リモートコンピューティングデバイス500(例えば、サーバまたはコンピュータ)は、距離測定値を使用して圧縮機ケーシング14またはタービンシェル36の内部表面を表す円を生成し、この円から、ケーシング14またはシェル36の中心15を決定する。
【0042】
図13、
図14、および
図15は、圧縮機12の回転構成要素(例えば、圧縮機ロータ30または圧縮機ブレード16)に装着される第2のタイプの距離検出器200の様々な図を示す。
【0043】
回転距離検出器200は、隣接する圧縮機ブレード16またはタービンブレードの間に嵌合するように概して長方形の形状および薄型のハウジング202を含む。ハウジング202は、上部表面204と、上部表面の反対側の底部表面206(
図14参照)と、上部表面204と底部表面206の長辺を接続する一対の対向して配置された側壁203、205と、上部表面204と底部表面206の短辺を接続する一対の対向して配置された端部壁207、209とを含む。回転距離検出器200がブレード16またはロータ30に設置される場合、上部表面204は、ブレード16またはロータ30の半径方向外側に配置される表面であり、底部表面206は、ブレード16またはロータ30と接触するかまたはそれに近接する表面である。ハウジング202の上部表面204は、
図13に示すように、その内部にアクセスするためにハウジング202から取り外し可能であり得る。ねじ242、または他の取り付け手段を使用して、上部表面204をハウジング202に接続することができる。
【0044】
ハウジング202は、回路基板アセンブリ224と、1つまたは複数のワイヤ241を介して回路基板アセンブリ224に接続されたバッテリ246とを収容する。回路基板アセンブリ224は、第1の(ケーシング装着型)距離検出器(単数または複数)120と通信するように構成されたマイクロコントローラ228および無線トランシーバ226を含む。回路基板アセンブリ224はまた、重力に対する距離検出器200の角度位置を連続的に決定する加速度計などの傾斜センサ250を含むことができる。加速度計250は、本システム1000が広範囲のロータ速度にわたって動作することを可能にする、求心加速度などの非重力効果を除去するための埋め込みアルゴリズムを収容することができる。
【0045】
側壁203に配置されて示されている電源ボタンまたはスイッチ244は、回路基板アセンブリ224に配線される。電源ボタン244の位置は、設計上の好みに従って変えることができ、側壁203の図示の位置は、単なる例示である。電源ボタンまたはスイッチ244が起動されると、マイクロコントローラ228は、バッテリ246から電力を引き出す。
【0046】
バッテリ246は、充電式バッテリとすることができ、側壁203、205または端部壁207、209に配置されたUSBポート(図示せず)を介して充電することができる。必要に応じて、回路基板224は、回転距離検出器200がオンになっていることを示す、またはバッテリ246のバッテリレベルを示す、基板に接続される1つまたは複数のLEDライト(図示せず)を含んでもよい。
【0047】
図16は、ブレード16のうちの1つに回転距離検出器200を設置する例を示す。回転距離検出器200は、ハウジング202の底部表面206に配置された複数の磁石260によってブレード16(またはロータ30、図示せず)に固定することができ、底部表面206は、
図14に最も明確に示されている。距離検出器200を固定する他の手段が代わりに使用されてもよいことが理解されるべきである。そのような手段は、ラッチ/スロットまたは摺動要素/トラックを含む距離検出器200を保持するためのブラケットを形成すること、ストラップを供給することができるスロットをハウジングに設けること、およびジップタイまたはゴムバンドなどの使い捨て手段を使用することを含むことができる。
【0048】
図17は、回転(ブレード装着型)距離検出器200と第1の静止(ケーシング装着型)距離検出器120Aとの間の無線通信を示す。回転距離検出器200は、静止距離検出器120によって規定されたのと同じ軸方向平面でまたはほぼ同じ軸方向平面で、圧縮機12またはタービン28のいずれかにおいて、ロータ30(この例では、中空コアロータ)に取り付けられたブレード16のうちの1つに装着される。ロータ30が低速でスピンすると(例えば、ターニングギアを使用して)、回転距離検出器200は、無線信号を連続的に送信し、その瞬間の位置と圧縮機ケーシング14またはタービンシェル36に設置された様々な静止距離検出器120との間で一連の測定を行う。
【0049】
静止距離検出器120Aは、無線信号を受信し、飛行時間および/または信号強度を記録する。回転距離検出器200を担持するブレード16が静止距離検出器120Aに近づくにつれて、飛行時間は最短となり、信号強度は最大となる。回転距離検出器200を担持するブレード16が静止距離検出器120Aから離れた位置に移動するにつれて、飛行時間は増加し、信号強度は減少する。
【0050】
図18は、回転(ブレード装着型)距離検出器200と第2の静止(ケーシング装着型)距離検出器120Bとの間の無線通信を示す。静止距離検出器120Bは、回転距離検出器200から送信された無線信号を受信し、飛行時間および/または信号強度を記録する。回転距離検出器200を担持するブレード16が静止距離検出器120Bに近づくにつれて、飛行時間は最短となり、信号強度は最大となる。回転距離検出器200を担持するブレード16が静止距離検出器120Bから離れた位置に移動するにつれて、飛行時間は増加し、信号強度は減少する。
【0051】
測定値は、
図10に示すように、基地局400によって生成された無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)475を使用して、アンテナ450を介して無線で送信される。測定値は、
図19および
図21に示すように、かつ以下に説明するように、データプロット800を生成するために測定値に計算を実行するリモートコンピューティングデバイス500によって受信される。リモートコンピューティングデバイス500は、MQテレメトリトランスポート(MQTT)メッセージングプロトコル、または別の適切なメッセージングプロトコルを使用してリモートビューイングデバイス560にロードされたアプリケーションと通信し、結果が技術者によってレビューされ得る。
【0052】
複数の回転距離検出器200を使用して、必要に応じて、追加の距離測定値を得ることができることに留意されたい。さらに、複数の検出器の場合、検出器200をそれぞれのブレード16に配置する必要はない。例えば、1つの回転検出器200をブレード16に装着することができ、別の回転検出器200をロータ30の軸方向に近い場所に装着することができる。加えて、回転検出器200がそれぞれのブレード16に装着される場合、検出器200をブレード16の同じ場所に配置する必要はない。本システム1000の機能は、回転検出器(単数または複数)200が静止検出器120とほぼ同じ軸方向平面にある限り、回転検出器(単数または複数)200の場所に影響されない。
【0053】
図19は、
図17および
図18に関して説明したように、静止距離検出器120と回転距離検出器200との間の無線通信から導出された点のプロットの概略図である。円800を点のプロットに最もよく適合させることによって、リモートコンピューティングデバイス500(例えば、コンピュータまたはサーバ)は、ロータ中心815を計算することができる。ロータ中心815が計算されると、ロータ中心815をケーシング中心15と比較して、ロータ30に対するケーシング14またはタービンシェル36の偏心が所定の仕様内にあるかどうかを決定することができる。
【0054】
図20は、本偏心測定システム1000を使用してケーシング14とロータ30との適切な位置合わせを確実にするプロセス600を概説するフローチャートである。ステップ610において、距離検出器120、200と、任意選択で、基地局400とを収容するシステム1000は、距離検出器120、200および基地局400が適切な作動順序にあることを確実にするために開梱されてベンチテストされる。
【0055】
ステップ620において、システムは、セットアップされて使用の準備がされる。具体的には、ステップ622において、一組の(少なくとも3つの)静止距離検出器120は、単一の軸方向平面でケーシング貫通部102(または104または106または108または110)を通して設置される。ロータ30に対するケーシング14の偏心を決定するための読み取りを行う技術者は、各距離検出器120A、120B、および120Cの相対的な円周方向位置をリモートコンピューティングデバイス500でホストされるコンピュータプログラム(図示せず)に、またはリモートビューイングデバイス560(例えば、タブレットコンピュータ)でホストされるスマートデバイスアプリケーションに入力する。
【0056】
ステップ624において、回転距離検出器200は、静止している第1の距離検出器120Aとほぼ同じ軸方向平面で回転構成要素(例えば、圧縮機12またはタービン28のロータ30またはブレード16)に装着される。
【0057】
任意選択のステップ626において、既存の無線ネットワークが利用不可能であるかまたは強度が不十分である場合、基地局400は、ガスタービン10の近傍にセットアップされ、アンテナ(単数または複数)480は、ガスタービン10に近接した適切な場所に装着され、基地局400のアンテナポート412に接続される。ステップ622、ステップ624、および任意選択のステップ626は、任意の順序で行われ得る。
【0058】
ステップ630において、一連の測定値がそれぞれの対の静止距離検出器120の間で取得され、その結果、ケーシング14または36の中心15を計算することができる(ステップ660)。上述のように、測定値の数は、互いに距離を置いて信号を送信する静止距離検出器120の数と共に増加する。
【0059】
ステップ640において、タービン軸受用のリフト油を収容する潤滑システムが起動され、ロータ30は、低速(例えば、5rpm)で回転される。これは、ターニングギアを使用することによって達成することができる。
【0060】
ステップ650において、ロータ30がスピンすると、回転構成要素に装着された回転距離検出器200がロータ30の周りの経路で搬送され、移動中、その瞬間の位置とケーシング14または36に設置された静止距離検出器120の少なくとも2つとの間の距離の一連の測定を行う。
【0061】
ステップ660において、測定データは、基地局400によって生成され得た無線ネットワーク475を介して、距離検出器120および/または200から無線で送信される。データは、無線ネットワーク475を介してリモートコンピューティングデバイス500に送信され、リモートコンピューティングデバイス500がデータのプロットを生成し、計算を実行して(
図21に示すように)データに最も適合する円を生成する。
【0062】
ステップ670において、結果として得られたデータの編集は、タブレットコンピュータなどのリモートビューイングデバイス560にプッシュされ、そこでデータは、該目的のために設計されかつ該デバイス560にロードされたアプリの技術者によってレビューされる。
【0063】
ステップ680において、技術者は、測定データが、ロータ30に対するケーシング14または36の偏心が所定の仕様内にあることを示すかどうかを決定する。ケーシング14または36とロータ30との偏心が仕様の範囲内である場合、検査は完了し、システム1000は取り外される(ステップ695)。
【0064】
しかし、ケーシング14または36とロータ30との偏心が仕様の範囲内にない場合、ロータ30の位置が調整され(ステップ690)、ステップ630またはステップ640のいずれかで始まる次の走査が実行される。調整および走査プロセスは、偏心が仕様の範囲内になるまで繰り返されてもよい。
【0065】
ステップ620~695のプロセスを第2の軸方向段で繰り返し、第1の軸方向段と第2の軸方向段との間のロータ30の傾斜を決定することができる。
【0066】
図21は、距離検出器120、200からリモートコンピューティングデバイス500(
図10に示すサーバなど)に搬送されるデータ700、800それぞれの例示的なパイロットプロット表示を示し、リモートコンピューティングデバイス500がデータに計算を実行し、結果をリモートビューイングデバイス560にインストールされたアプリに送信する。静止距離検出器120から収集されたデータ700の例示的なプロット表示は、ケーシング14または36の内部表面113およびその中心15(大きい「+」記号によって表される)を表し、一方、回転距離検出器200から収集されたデータ800の例示的なプロット表示は、距離検出器200がロータ30の中心を回転したときの距離検出器200の経路を表す。円をデータ点800に最もよく適合させることによって、ロータ中心815(小さい「+」記号によって表される)をリモートコンピューティングデバイス500によって計算することができる。
【0067】
リモートコンピューティングデバイス500は、直交距離回帰の最小値を見つけるための任意の反復最適化の方法を使用して、円700、800をデータセットに適合させる。例示的な実施では、いかなる導関数の計算またはいかなる行列の解も必要としないため、Nedler-Mead(Simplex)最適化が使用される。
【0068】
ケーシング中心15とロータ中心815との間の距離は、XおよびY軸に沿ってインチ(または他の単位)で報告されてもよい。アプリは、偏心が仕様の範囲内であるかどうかを技術者が決定するのに役立つように、「X」と「Y」のオフセットを表示することができる。特定のガスタービンについての所定の仕様は、アプリに予めロードされていてもよく、その結果、アプリは、偏心が仕様の範囲外であるときにアラート通知を伝達する。あるいは、技術者に所定の仕様を提供してもよく、偏心が仕様の範囲内であるかどうかを手動で評価してもよい。
【0069】
多くの状況において、特定の段(例えば、後段)におけるケーシング14または36の目標中心は、ロータ中心815と一致しない。むしろ、(ガスタービン10が加熱されるにつれて)ガスタービンシステム10の動作中に起こると予想され得るような、ロータ30の位置およびケーシング14または36の幾何学的形状の変化に対応するために規定量のオフセットが用いられる。本システムは、技術者がケーシング14または36の実際の中心15を決定することを可能にし、ロータ30の計算中心815をケーシング14の中心15からオフセットされ得る所定の目標中心(図示せず)に調整する方向を提供する。
【0070】
さらに、前方の圧縮機段におけるロータ30の計算中心815と後段におけるロータ30の計算中心815を比較することにより、技術者は、ロータ30が圧縮機12を通って延びるときにロータ30が傾斜しているかどうか(上向きか下向きか)を決定することが可能になる。必要ならば、(存在する場合)所望の偏心および傾斜度を達成するために、圧縮機ロータ30を支持する軸受に調整を行うことができる。
【0071】
同様に、前方のタービン段におけるロータ30の計算中心815と後方のタービン段におけるロータ30の計算中心815を比較することにより、技術者は、ロータ30がタービン28を通って延びるときにロータ30が傾斜しているかどうか(上向きか下向きか)を決定することが可能になる。必要ならば、(存在する場合)所望の偏心および傾斜度を達成するために、ロータ30、またはタービンシェル36を支持する軸受に調整を行うことができる。
【0072】
利用可能な距離検出器120、200の数に応じて、圧縮機12および/またはタービン28の前段、中段、および後段の測定値を同時にまたは順次に取得することができることを理解されたい。あるいは、場合によっては、ロータ30に対するケーシング14の偏心の測定は、単一の段(例えば、前段)でのみ行われてもよい。
【0073】
図22は、本偏心測定システム1000を示す。システム1000は、圧縮機12および/またはタービン28の1つまたは複数の段のロータ30に対するケーシング14または36の偏心を測定するために集合的に使用される、少なくとも3つの静止(ケーシング装着型)距離検出器120および少なくとも1つの回転距離検出器200(ロータまたはブレードに装着される)を含む。複数の段で(例えば、圧縮機12の前段および後段で、タービン28の前段および後段で、または圧縮機12の前段およびタービン28の後段で)測定を行うことによって、測定されたスパンにわたるロータ30の傾斜を決定することができる。距離検出器120、200は、無線ローカルエリアネットワーク475を介して互いに無線で通信する。無線ネットワークがガスタービン10の近傍で利用不可能である、または強度が不十分である場合、基地局400および1つまたは複数のアンテナ450を使用して、信号を送信するための無線ローカルエリアネットワークを生成することができる。
【0074】
本システム1000は、無線(ラジオ周波数)信号を生成する距離検出器120、200を使用する。他のタイプの検出器を、代わりに使用してもよいと考えられる。他のシステムの例は、必ずしもこれらに限定されないが、音響位置決めシステム(例えば、長、短、または超短周波数の音波を伴う超音波、ソナー、ドップラー、およびベースラインシステムを使用する)、構造化光システム(例えば、3D空間マッピング技術において使用され得るような、白色光または青色光を使用する)、他のタイプの電磁エネルギー(例えば、飛行時間、位相シフト、位相干渉、信号強度減衰、広帯域遅延ロックループ、およびレーダ測定などの測定技術で使用することができる電波、円柱状の光/レーザ波、および赤外線波)、および全地球測位システム(GPS)を含む。
【0075】
他のタイプの波放射を使用する上記システムの多くでは、特定の(例えば、2つの)ケーシング装着型距離検出器を、放射を送信および受信するように構成し、残りの距離検出器には放出されたエネルギーを発信側検出器に戻す反射面を設けることができるようにすることが可能である。例えば、信号の飛行時間は、エネルギーが発信側検出器から受信側検出器に移動し、受信側検出器で反射され、そして発信側検出器に戻るまでに要する時間として計算される。同様に、回転構成要素に装着された距離検出器には、エネルギー送信をケーシング装着型検出器に戻す反射面を設けることができる。
【0076】
本明細書で使用される専門用語は、単に特定の実施形態を説明するためのものに過ぎず、本開示を限定するものではない。本明細書で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」および「この(the)」は、特に明示しない限り、複数形も含むことが意図される。「備える(comprise)」および/または「備えている(comprising)」という用語は、本明細書で使用する場合、記載した特徴、整数、ステップ、動作、要素、および/または構成要素が存在することを明示するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、構成要素、および/またはそれらの組が存在することまたは追加することを除外しないことがさらに理解されよう。「任意選択の(optional)」または「任意選択で(optionally)」は、続いて記載されたステップまたは事象が生じてもよいし、また生じなくてもよいことを意味し、かつ、その説明が、ステップまたは事象が起こる場合と、それが起こらない場合と、を含むことを意味する。
【0077】
本開示の記述は、例示および説明の目的で提示されたもので、網羅的であることも、または本開示を開示した形態に限定することも意図されていない。多くの変更および変形は、本開示の範囲および趣旨から逸脱することなく、当業者には明らかであろう。本偏心測定システムおよび方法の原理ならびに実際の応用を最もよく説明し、想定される特定の使用に適するように様々な変更を伴う様々な実施形態の本開示を他の当業者が理解することができるようにするために、実施形態を選択し説明した。
【符号の説明】
【0078】
10 ガスタービンシステム、ガスタービン
12 圧縮機、圧縮機セクション
13 圧縮機入口
14 圧縮機ケーシング
15 地理的中心
16 圧縮機ブレード、回転ブレード
18 空気
20 圧縮空気、圧縮空気流
22 燃焼器
24 燃料
26 燃焼ガス
28 タービンセクション、タービン
30 圧縮機ロータ
34 排気フレーム
36 タービンシェル
40 外部負荷
102 ケーシング貫通部
104 ケーシング貫通部
106 ケーシング貫通部
108 ケーシング貫通部
110 ケーシング貫通部
112 半径方向外側表面
113 半径方向内側表面、内部表面
114 皿穴領域、凹状領域
120 静止距離検出器
120A 第1の静止距離検出器
120B 第2の静止距離検出器
120C 静止距離検出器
120D 静止距離検出器
120E 静止距離検出器
120F 静止距離検出器
121 上部表面
122 ハウジング
123 円筒形本体
124 回路基板アセンブリ
125 底部表面
126 一次無線トランシーバ
127 プラットフォーム
128 マイクロコントローラ
130 アンテナ
136 二次無線トランシーバ
140 電源コード
141 開口部
142 ねじ
150 電源
170 無線信号
172 無線応答信号
200 回転距離検出器
202 ハウジング
203 側壁
204 上部表面
205 側壁
206 底部表面
207 端部壁
209 端部壁
224 回路基板アセンブリ、回路基板
226 無線トランシーバ
228 マイクロコントローラ
241 ワイヤ
242 ねじ
244 電源ボタン、スイッチ
246 バッテリ
250 加速度計、傾斜センサ
260 磁石
400 基地局
402 携帯用収納ボックス
404 保護シールド
406 電気コンセント
408 スイッチ
410 ファン
412 アンテナポート
450 アンテナ
452 円形基部
454 延長シャフト
456 ケーブル
475 無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)
500 リモートコンピューティングデバイス、サーバ
560 リモートビューイングデバイス
600 プロセス
700 データ、円
800 データ、データ点、データプロット、円
815 ロータ中心、計算中心
1000 偏心測定システム
A 軸
C 軸
D 流れ方向
R 軸
X 軸
Y 軸