(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】核酸の精製のための等速電気泳動
(51)【国際特許分類】
C12N 15/10 20060101AFI20230511BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20230511BHJP
G01N 27/447 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
C12N15/10 112Z
C12N15/10 Z
C12M1/00 A
G01N27/447 335A
(21)【出願番号】P 2018559168
(86)(22)【出願日】2017-01-28
(86)【国際出願番号】 US2017015519
(87)【国際公開番号】W WO2017132630
(87)【国際公開日】2017-08-03
【審査請求日】2020-01-28
(32)【優先日】2016-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】518267768
【氏名又は名称】ピューリジェン バイオシステムズ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】マーシャル, ルイス エー.
(72)【発明者】
【氏名】ヒデッセン, エイミー エル.
(72)【発明者】
【氏名】ホバーター, ネイサン ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ローズ, クリント エー.
(72)【発明者】
【氏名】サンティアゴ, ホアン ジー.
【審査官】上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2015/0191717(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2009/0250345(US,A1)
【文献】特表2008-539443(JP,A)
【文献】特開平03-087648(JP,A)
【文献】Journal of Chromatography A,2014年,Vol.1335,pp.105-120
【文献】Analytical Chemistry,2010年,Vol.82,pp.9631-9635
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 15/00-15/90
C12M 1/00-3/10
G01N 27/447
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)マイクロ流体チップの第1のチャネルに、(i)第1の核酸および第1の汚染物質を含む第1の試料、(ii)第1の終局イオンを含む第1の終局電解質緩衝液であって、前記第1の終局イオンの実効移動度の大きさが、前記第1の核酸の実効移動度の大きさよりも小さい、第1の終局電解質緩衝液、ならびに(iii)第1の先導イオンを含む第1の先導電解質緩衝液であって、前記第1の先導イオンの実効移動度の大きさが、前記第1の核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きい、第1の先導電解質緩衝液を装入するステップ、
(b)前記マイクロ流体チップの第2のチャネルに、(i)第2の核酸および第2の汚染物質を含む第2の試料、(ii)第2の終局イオンを含む第2の終局電解質緩衝液であって、前記第2の終局イオンの実効移動度の大きさが、前記第2の核酸の実効移動度の大きさよりも小さい、第2の終局電解質緩衝液、および(iii)第2の先導イオンを含む第2の先導電解質緩衝液であって、前記第2の先導イオンの実効移動度の大きさが、前記第2の核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きい、第2の先導電解質緩衝液を装入するステップ、
(c)前記マイクロ流体チップに接続している第1の電気回路を独立して制御して、前記第1のチャネル中で、前記第1の終局イオン、前記第1の核酸および前記第1の先導イオンを用いた等速電気泳動を行い、第2の電気回路を独立して制御して、前記第2のチャネル中で、前記第2の終局イオン、前記第2の核酸および前記第2の先導イオンを用いた等速電気泳動を行い、これらにより、前記第1の汚染物質から前記第1の核酸を、および前記第2の汚染物質から前記第2の核酸を同時に精製するステップ、ならびに
(d)前記第1の電気回路の印加電流を変更して、前記第1のチャネルと流体連通している第1の溶出緩衝液用チャネル中で、ステップ(c)の前記第1の終局イオン、ステップ(c)の前記第1の核酸、および第1の溶出用緩衝液を用いた等速電気泳動を行い、ここで、前記第1の溶出用緩衝液が、前記第1の先導電解質緩衝液と異なるイオン強度を有し、そして、前記第1の溶出用緩衝液中に精製された核酸を溶出するステップ、および前記第2の電気回路の印加電流を変更して、前記第2のチャネルと流体連通している第2の溶出緩衝液用チャネル中で、ステップ(c)の前記第2の終局イオン、ステップ(c)の前記第2の核酸、および第2の溶出用緩衝液を用いた等速電気泳動を行い、ここで、前記第2の溶出用緩衝液が、前記第2の先導電解質緩衝液と異なるイオン強度を有し、そして
、前記第2の溶出用緩衝液中に精製された核酸を溶出するステップ
を含む、少なくとも2つの異なる試料から核酸を同時に精製するための方法。
【請求項2】
前記第1の試料および前記第2の試料が、異なる試料タイプである、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の核酸および前記第2の核酸が、異なるタイプまたは長さの核酸である、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の終局電解質緩衝液または前記第1の先導電解質緩衝液が、溶解剤または組織破壊剤をさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記溶解剤または前記組織破壊剤が、約12よりも大きなpHを有する溶液、プロテイナーゼ、尿素、チオ尿素および界面活性剤からなる群から選択される1種または複数の作用剤を含む、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第1の試料または前記第2の試料が溶解した固形組織、溶解した細胞、固定化細胞、固定化組織または包埋組織を含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の試料が、前記等速電気泳動を行うステップ中に、前記第2の試料と接触しない、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
(e)前記マイクロ流体チップの第3のチャネルに、(i)第3の核酸および第3の汚染物質を含む第3の試料、(ii)第3の終局イオンを含む第3の終局電解質緩衝液であって、前記第3の終局イオンの実効移動度の大きさが、前記第3の核酸の実効移動度の大きさよりも小さい、第3の終局電解質緩衝液、ならびに(iii)第3の先導イオンを含む第3の先導電解質緩衝液であって、前記第3の先導イオンの実効移動度の大きさが、前記第3の核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きい第3の先導電解質緩衝液を装入するステップ、ならびに
(f)前記マイクロ流体チップに接続している第3の電気回路を独立して制御して、前記第3のチャネル中、前記第3の終局イオン、前記第3の核酸および前記第3の先導イオンを用いた等速電気泳動を行い、これにより、前記第1の汚染物質から前記第1の核酸、前記第2の汚染物質から前記第2の核酸、および前記第3の汚染物質から前記第3の核酸を同時に精製するステップ、
をさらに含む、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1および第2の電気回路が、異なる一式の電極から発生する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記第1および第2のチャネルが、独立したセンサーに連結されている、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記独立したセンサーからのフィードバック信号を使用して、前記第1および第2の電気回路を独立して制御する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記独立したセンサーが電圧を検出し、前記フィードバック信号を使用して、前記第1および第2のチャネル内の電流を制御するか、または前記独立したセンサーが電流を検出し、前記フィードバック信号を使用して、前記第1および第2のチャネル内の電圧を制御する、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記フィートバック信号が、前記第1のチャネルまたは第2のチャネルの電圧、導電度、または温度を含み、前記方法が、測定された前記電圧、導電度、または温度に少なくとも部分的に基づいて、前記第1の電気回路または第2の電気回路を独立して調節するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記センサーが温度センサーであり、前記第1のチャネルまたは前記第2のチャネルの溶出用レザーバーから約5ミリメートル(mm)以内に位置する、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記第1のチャネルと前記第2のチャネルとの間のリーク速度が、1マイクロリットル(μL)/時未満である、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のチャネルが前記第2のチャネルから電気的に隔離されている、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のチャネルと第2のチャネルとの間のリーク電流が、1マイクロアンペア(μA)未満である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第1のチャネルと第2のチャネルとの間のインピーダンスが、1メガオーム(MΩ)より大きい、請求項16に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のチャネルおよび第2のチャネルの各々は、等速電気泳動を行うための一式の専用の電極および電気回路を含む、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記核酸がDNAまたはRNAを含む、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
マイクロ流体システムであって、
(a)i.第1の流体チャネル、
ii.第1の試料レザーバー、
iii.第1の緩衝液用レザーバー、および
iv.第2の緩衝液用レザーバー
を含むマイクロ流体チップ中の第1の等速電気泳動領域であって、前記第1の流体チャネル、前記第1の試料レザーバー、前記第1の緩衝液用レザーバーおよび前記第2の緩衝液用レザーバーが互いに流体連通している、第1の等速電気泳動領域;
(b)i.第2の流体チャネル、
ii.第2の試料レザーバー、
iii.前記第2の流体チャネルに流体連通している第3の緩衝液用レザーバー、および
iv.第4の緩衝液用レザーバー
を含む前記マイクロ流体チップ中の第2の等速電気泳動領域であって、前記第2の流体チャネル、前記第2の試料レザーバー、前記第3の緩衝液用レザーバーおよび前記第4の緩衝液用レザーバーが互いに流体連通している、第2の等速電気泳動領域であって;
ここで、前記第1の等速電気泳動領域が、前記第2の等速電気泳動領域と流体連通しておらず、前記マイクロ流体システムが、前記第1の等速電気泳動領域に電流を印加する第1の電気回路と前記第2の等速電気泳動領域に電流を印加する第2の電気回路とを独立して制御するよう構成されており、
(c)前記第1の流体チャネルと流体連通している第1の溶出緩衝液用チャネルであって、ここで、等速電気泳動を行うために前記第1の電気回路の印加電流が変更され、前記第1の溶出緩衝液用チャネルは第1の溶出用緩衝液を含み、前記第1の溶出用緩衝液中で等速電気泳動を行うように構成されている、第1の溶出緩衝液用チャネル;ならびに
(d)前記第2の流体チャネルと流体連通している第2の溶出緩衝液用チャネルであって、ここで、等速電気泳動を行うために前記第2の電気回路の印加電流が変更され、前記第2の溶出緩衝液用チャネルは第2の溶出用緩衝液を含み、前記第2の溶出用緩衝液中で等速電気泳動を行うように構成されている、第2の溶出緩衝液用チャネル
を含む、マイクロ流体システム。
【請求項22】
前記第1の等速電気泳動領域と前記第2の等速電気泳動領域との間のリーク速度が、1マイクロリットル/時未満であるか、または前記第1の等速電気泳動領域と前記第2の等速電気泳動領域との間のリーク電流が1マイクロアンペア未満である、請求項21に記載のマイクロ流体システム。
【請求項23】
前記第1の流体チャネルと前記第2の流体チャネルとの間の電気インピーダンスが、0.1メガオームより大きい、請求項21または22に記載のマイクロ流体システム。
【請求項24】
前記第1の流体チャネルが、100マイクロリットルより多い液体体積を保持する、請求項21から23のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項25】
前記第1の流体チャネルが、前記第1の流体チャネルの幅の多くとも5分の1である距離の分、前記第2の流体チャネルから離されている、請求項21から24のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項26】
前記マイクロ流体システムが、前記第2の電気回路と同時に、かつ前記第2の電気回路と独立して、前記第1の電気回路を制御するよう構成されている、請求項21から25のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項27】
前記第1および第2の流体チャネルとそれぞれ流体連通している第1および第2の溶出用レザーバーをさらに含み、温度センサーが前記第1および第2の溶出用レザーバーのそれぞれから最大約10mm以内に配置されている、請求項21から26のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項28】
請求項1から20のいずれか一項に記載の方法であって、前記第1の溶出緩衝液用チャネルの第1の排出レザーバーから精製済みの前記第1の核酸を含む第1の排出溶液を溶出させ、前記第2の溶出緩衝液用チャネルの第2の排出レザーバーから精製済みの前記第2の核酸を含む第2の排出溶液を溶出させるステップをさらに含む、方法。
【請求項29】
前記マイクロ流体システムが、前記第1の緩衝液用レザーバーと前記第2の緩衝液用レザーバーとの間で電流を印加する前記第1の電気回路、および前記第3の緩衝液用レザーバーと前記第4の緩衝液用レザーバーとの間で電流を印加する前記第2の電気回路のそれぞれを独立して制御するよう構成される、請求項27に記載のマイクロ流体システム。
【請求項30】
前記第1の流体チャネルが第1の独立したセンサーに連結されており、前記第2の流体チャネルが第2の独立したセンサーに連結されている、請求項21から27および29のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム。
【請求項31】
前記第1の独立したセンサーからの第1のフィードバック信号が、前記第1の電気回路を独立して制御するよう構成され、前記第2の独立したセンサーからの第2のフィードバック信号が、前記第2の電気回路を独立して制御するよう使用されている、請求項30に記載のマイクロ流体システム。
【請求項32】
(a)前記第1のフィードバック信号を使用して前記第1の流体チャネル内の電流を独立して制御し、前記第2のフィードバック信号を使用して前記第2の流体チャネル内の電流を独立して制御するか、または(b)前記第1のフィードバック信号を使用して前記第1の流体チャネル内の電圧を独立して制御し、前記第2のフィードバック信号が、前記第2の流体チャネル内の電圧を独立して制御するように構成されている、請求項31に記載のマイクロ流体システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
相互参照
本願は、2016年1月29日に出願され、「核酸の精製のための等速電気泳動」(弁護士件名整理番号:43647-712.101)とのタイトルの米国仮出願第62/288,930号の利益を主張し、その全体の内容を、本明細書において参照により援用する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究の記載
本発明は、アメリカ国立衛生研究所により与えられた連絡番号1R43HG007620-01下の米国政府の支援によりなされた。米国政府は、本発明における一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料は、1世紀を超える間、収集され、調製され、保管されて、大きな組織バンクにアーカイブ保管されてきた。2008年時点で、4億個超のFFPE試料が世界中のバイオバンクに保管されており、この数は増え続けている。これらの試料は、多くの場合、一次診断、治療レジメンおよび経過観察データなどの臨床情報を伴い、これにより、治療剤の開発、ならびにゲノムおよびトランスクリプトームバイオマーカーの発見にとって、上記の試料は重要な情報源となっている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
FFPE試料から核酸を抽出して精製するための試料調製の方法は、依然として、手作業集約的で、かつ労力が必要なものとなっている。FFPE抽出および精製に関する手法は、広く様々であるが、多くの場合、ワックス除去、遠心分離、緩衝液交換、温度制御、架橋低減および酵素処理という、自動化困難かつ加速困難なステップを含む。FFPEは、一般に、ホルマリンを使用して試料中のタンパク質を架橋して、パラフィン(ワックス)中に試料を包埋することを指す。試料のFFPE処理により、多くの場合、試料を長い期間、保存することが可能になり、とりわけ、長期保管に有用となり得る。架橋化タンパク質は、試料中のDNAおよびRNAを束ね、これにより、一般に、増幅、ライブラリ調製またはシークエンシングなどの下流での用途が利用不能になる。
【0005】
FFPE試料中のパラフィンおよびタンパク質架橋の除去は、困難なプロセスとなり得る。脱パラフィンは、慣用的に、可燃性の高いキシレンを使用して行われる。交互にまたは連続して、試料は他の溶媒、鉱物油およびアルカリ化学品および/または高温により処理され得る。脱パラフィン後、試料中のタンパク質は、異なる作用剤により処理されることがあり、またはさらなる時間および労力が必要となり得る条件に付されることがある。
【0006】
消化および変性の終わりに、架橋化核酸と非架橋化核酸との混合物が残留する恐れがある。非架橋化物質の除去は、高い品質にとって重要となり得、増幅またはシークエンシングなどのアッセイに起因する。一部の場合、非架橋化物質の割合が少なすぎる場合、下流でのアッセイを行うことができず、試料自体ばかりでなく、労力、時間および情報源の損失をもたらす恐れがある。
【0007】
等速電気泳動(ITP)は、実効移動度の大きさがより高い先導電解質(LE)および実効移動度の大きさがより低い(例えば、LEに対して)終局電解質(trailing electrolyte)(TE)を含有する非連続的緩衝液を使用して、終局電解質より高い実効移動度の大きさを有するが、先導電解質よりも小さい実効移動度の大きさを有する試料化学種を集めることができる、電気泳動技法である。ITPは、5分未満に、試料から核酸を10,000倍超、選択的に集めることができる。本開示は、抽出、精製、富化および非常に感度の高い定量を含めた、試料調製のためのITPを使用するおよび自動化する方法ならびにデバイスを提供し、特に、FFPE試料および他の生物学的試料に由来する核酸を調製ならびに精製するのに有用である。
【0008】
試料調製は、ゲノム解析にとって重要であるが、いまだに解析変動性の一次原因であり、多大な手作業での労力を必要とし得る。本開示は、核酸の抽出および精製のためのオンチップ等速電気泳動(ITP)を使用することなどによって、この難題に対処するための技法およびデバイスを含む。これらの技法は、より高い収率およびより高い品質の核酸試料調製を可能にするため、ならびにFFPEおよび他の保存試料または新しい試料から、使用に一層適した試料(例えば、品質確認による不合格数(quality-check rejection)の低減)を生成するための、非架橋化核酸を富化(濃縮)する方法を含む。
【0009】
本開示は、固形組織試料、溶解した固形組織試料、保存組織試料もしくは固定化組織試料(例えば、FFPE)、全血液、血漿および血清、口内スワブ、乾燥血痕および他の法医学試料、新しい組織もしくは新しい凍結(FF)組織、生検組織、器官組織、固形器官組織、細胞間の結合(例えば、ギャップ結合、密着結合、接着結合)を含む試料、血液もしくは組織、大便および体液(例えば、唾液、尿)に由来する培養細胞もしくは収穫細胞、またはそれらの任意の組合せを含めた試料からの核酸試料調製を自動化するための技法およびデバイスを含む。試料は、真核生物と原核生物の両方、またはそれらの任意の組合せ物に関する、細胞性核酸および細胞不含核酸を含むことができる。本開示の技法は、既存手法と比べて、組織の開始量が少ないおよび多いかのどちらにとっても、より迅速で、それほど手作業集約的ではなく、一層好適なものとなり得、試料からのより高い収率および試料の一層高い品質の解析を実現することができる。
【0010】
本開示の態様は、(a)流体デバイスに、(i)溶解した固形組織を含む組織試料であって、前記溶解した固形組織は核酸および汚染物質を含む、組織試料、(ii)前記核酸の実効移動度の大きさよりも小さい大きさを有する実効移動度を有する第1の終局電解質イオンを含む終局電解質緩衝液、ならびに(iii)第2の実効移動度を有する第1の先導電解質イオンを含む先導電解質緩衝液を装入する(load)ステップであって、前記第2の実効移動度が、前記核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きな大きさを有する、ステップ、ならびに(b)前記流体デバイス内に電場を印加して、前記第1の終局電解質イオン、前記核酸および前記第1の先導電解質イオンを用いた等速電気泳動を行い、これにより、前記組織試料中の前記汚染物質から前記核酸を精製するステップを含む、試料精製方法を提供する。
【0011】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の終局電解質イオンの前記実効移動度は、前記汚染物質の実効移動度の大きさよりも大きな大きさを有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記流体デバイスは、マイクロ流体チップであり、前記組織試料、前記終局電解質緩衝液および前記先導電解質緩衝液が、前記マイクロ流体チップの第1のゾーンに装入される。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、前記マイクロ流体チップの前記第1のゾーン中に、(1)包埋材の除去、(2)組織の破壊、(3)細胞の溶解、(4)前記核酸の脱架橋、(5)タンパク質の消化および(6)前記核酸の消化からなる群から選択される少なくとも1つの試料調製手順を前記組織試料に行うステップをさらに含むことができる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記等速電気泳動は、前記マイクロ流体チップの第2のゾーン中で行われ、前記第2のゾーンは、前記第1のゾーンから離されており、前記第1のゾーンに流体接続されている。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記固形組織は、固形器官に由来する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶解した固形組織は、化学固定剤を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記化学固定剤は、ホルマリンである。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記固形組織はホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE)である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶解した固形組織は尿素またはチオ尿素を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、細胞間結合、細胞外マトリックスまたは結合組織を破壊して、前記溶解した固形組織を得るステップをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶解した固形組織は、固形粒子を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記核酸は、分散した核酸または溶媒和した核酸を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記汚染物質は、架橋化核酸、包埋材、組織細片、化学固定剤、タンパク質、阻害剤およびそれらの組合せからなる群から選択される。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記汚染物質は架橋化核酸を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は、前記装入前に、前記終局電解質緩衝液と一緒にされる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は、前記装入前に、前記先導電解質緩衝液と一緒にされる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記先導電解質緩衝液の前記装入は、前記組織試料の前記装入前に行われる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記固形組織は、前記組織試料の前記装入前に、前記先導電解質緩衝液中において溶解される。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記固形組織は、前記組織試料の前記装入前に、前記終局電解質緩衝液中において溶解される。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料調製手順は、前記電場の前記印加前に、少なくとも約1分間の期間、少なくとも約37℃の温度で、前記流体デバイス中で前記組織試料をインキュベートすることにより、包埋材を除去することを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記温度は、約40℃~約80℃である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記期間は、約1分間~約120分間である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料調製手順は、前記組織試料に機械応力を適用することにより、組織を破壊することまたは細胞を溶解することを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料調製手順は、前記組織試料に熱を適用することにより、組織を破壊することまたは細胞を溶解することを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記熱を適用すると、前記組織試料の温度は約30℃~約80℃となる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料調製手順は、少なくとも10のpHを有する溶液に前記組織試料を接触させる、または前記組織試料をタンパク質分解により消化させることによる、組織を破壊することまたは細胞を溶解することを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記タンパク質による消化は、約25℃より高い温度で行われる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料調製手順は、前記組織試料に少なくとも1つの界面活性剤を適用することにより、組織を破壊することまたは細胞を溶解することを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料調製手順は、前記組織試料または細胞試料に尿素を含む溶液を適用することにより、組織を破壊することまたは細胞を溶解することを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶液は、チオ尿素をさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶液中の前記尿素の濃度は、約4M~約9Mの範囲内にあり、前記溶液中の前記チオ尿素の濃度は、約0.5M~約3.5Mの範囲にある。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶液中の前記尿素の濃度は、約6.5M~約7.5Mであり、前記溶液中の前記チオ尿素の濃度は、約1.5M~約2.5Mである。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料調製手順は、プロテイナーゼKを用いて架橋タンパク質を消化することによって、前記核酸を脱架橋することを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料調製手順は、DNアーゼまたはRNアーゼを用いて、前記核酸を消化することを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、前記流体デバイスの排出用レザーバーから前記精製済み核酸を含む排出溶液を溶出させることをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記排出溶液中の前記精製済み核酸の濃度は、前記組織試料中の前記核酸の濃度よりも少なくとも約2倍高い。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記排出溶液中の前記組織試料および前記精製済み核酸は架橋化核酸を含み、前記排出溶液中の前記架橋化核酸の濃度は、前記組織試料中の前記架橋化核酸の濃度の多くとも約2分の1である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記汚染物質は、前記組織試料中の前記汚染物質の濃度の多くとも2分の1である濃度で前記排出溶液に存在する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の終局電解質イオンはカプロン酸を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の先導電解質イオンは塩化物イオンを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質緩衝液は、前記第1の終局電解質イオンとは異なる実効移動度を有する第2の終局電解質イオンを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の終局電解質イオンは、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)またはMOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の終局電解質イオンは、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を含み、前記第1の終局電解質イオンは、カプロン酸を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の終局電解質イオンは、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)を含み、前記第1の終局電解質イオンは、カプロン酸を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の終局電解質イオンは、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を含み、前記第1の終局電解質イオンは、MOPSを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質緩衝液は、第2の実効移動度を有する第2の終局電解質イオンを含み、前記第2の実効移動度は、前記汚染物質の前記実効移動度の前記大きさとほぼ同じ大きさ、またはそれより小さい大きさを有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記流体デバイスに装入される前記組織試料は、少なくとも50μlの体積を有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、前記マイクロ流体チップの前記第1のゾーン中で、前記組織試料に対して第1の試料の処理手順を行うこと、および前記マイクロ流体チップの第2のゾーン中で、前記組織試料に対して酵素反応を行うことをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の試料処理手順は、包埋材の除去、組織の破壊または細胞溶解を含み、前記酵素反応は、前記核酸の脱架橋、タンパク質の消化または核酸の消化を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1のゾーンおよび前記第2のゾーンはそれぞれ、37℃より高い温度までそれぞれ加熱される。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1のゾーンは、前記第1の試料処理手順の間に、約60℃~100℃の温度に加熱され、前記第2のゾーンは、40℃~60℃の温度に加熱される。
【0012】
本開示の態様は、(a)マイクロ流体チップの第1のチャネルに、(i)第1の核酸および第1の汚染物質を含む第1の試料、(ii)第1の終局イオンを含む第1の終局電解質緩衝液であって、前記第1の終局イオンの実効移動度の大きさが、前記第1の核酸の実効移動度の大きさよりも小さい、第1の終局電解質緩衝液、ならびに(iii)第1の先導イオンを含む第1の先導電解質緩衝液であって、前記第1の先導イオンの実効移動度の大きさが、前記第1の核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きい、第1の先導電解質緩衝液を装入するステップ、(b)前記マイクロ流体チップの第2のチャネルに、(i)第2の核酸および第2の汚染物質を含む第2の試料、(ii)第2の終局イオンを含む第2の終局電解質緩衝液であって、前記第2の終局イオンの大きさが、前記第2の核酸の実効移動度の大きさよりも小さい、第2の終局電解質緩衝液、ならびに(iii)第2の先導イオンを含む第2の先導電解質緩衝液であって、前記第2の先導イオンの実効移動度の大きさが、前記第2の核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きい、第2の先導電解質緩衝液を装入するステップ、ならびに(c)前記マイクロ流体チップ内に第1の電場を印加して、前記第1のチャネル中で、前記第1の終局イオン、前記第1の核酸および前記第1の先導イオンを用いた等速電気泳動を行い、第2の電場を印加して、前記第2のチャネル中で前記第2の終局イオン、前記第2の核酸および前記第2の先導イオンを用いた等速電気泳動を行い、これらにより、前記第1の汚染物質から前記第1の核酸を、および前記第2の汚染物質から前記第2の核酸を同時に精製するステップを含む、少なくとも2つの異なる試料から核酸を同時に精製する方法を提供する。
【0013】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の試料および前記第2の試料は、異なる試料タイプである。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の核酸および前記第2の核酸は、異なるタイプまたは長さの核酸である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の終局電解質緩衝液または前記第1の先導電解質緩衝液は、溶解剤または組織破壊剤をさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶解剤または前記組織破壊剤は、約12よりも大きなpHを有する溶液、プロテイナーゼ、尿素、チオ尿素および界面活性剤からなる群から選択される1種または複数の作用剤を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の試料は溶解した固形組織を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の試料は、溶解した細胞を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の試料は、前記等速電気泳動を行う間、前記第2の試料と接触しない。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、前記マイクロ流体チップの第3のチャネルに、(i)第3の核酸および第3の汚染物質を含む第3の試料、(ii)第3の終局イオンを含む第3の終局電解質緩衝液であって、前記第3の終局イオンの実効移動度の大きさが、前記第3の核酸の実効移動度の大きさよりも小さい、第3の終局電解質緩衝液、ならびに(iii)第3の先導イオンを含む第3の先導電解質緩衝液であって、前記第3の先導イオンの実効移動度の大きさが、前記第3の核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きい第3の先導電解質緩衝液を装入することをさらに含み、前記電場を前記マイクロ流体チップ内に印加して、前記第3のチャネル中、前記第3の終局イオン、前記第3の核酸および前記第3の先導イオンを用いた前記等速電気泳動を行い、これにより、前記第1の汚染物質から前記第1の核酸、前記第2の汚染物質から前記第2の核酸、および前記第3の汚染物質から前記第3の核酸を同時に精製する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1および第2の電場は、単一の電極対から発生する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1および第2の電場は、異なる電極対から発生する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1および第2のチャネルは、独立したセンサーに連結されている。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記独立センサーからのフィードバックを使用して、前記第1および第2の電場を独立して制御する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記独立センサーは電圧を感知し、前記フィードバックを使用して、前記第1および第2のチャネル内の電流(または抵抗)を制御する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記核酸はDNAを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記核酸はRNAを含む。
【0014】
本開示の態様は、(a)流体デバイスに、(i)固定化細胞、固定化組織または包埋組織を含む試料であって、核酸を含む試料、(ii)終局電解質を含む終局電解質緩衝液であって、前記終局電解質が前記核酸よりも低い実効移動度を有する、終局電解質緩衝液、および(iii)先導電解質を含む先導電解質緩衝液であって、前記先導電解質が前記核酸よりも高い実効移動度を有する、先導電解質緩衝液を装入するステップ、ならびに(b)前記流体デバイスに電場を印加して、前記終局電解質イオン、前記核酸および前記先導電解質を用いた等速電気泳動を行い、これにより、前記試料中の汚染物質から前記核酸を精製するステップを含む、試料精製方法を提供する。
【0015】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記汚染物質は、架橋化核酸、包埋材、化学固定剤、酵素および阻害剤からなる群から選択される。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料は、前記固定化細胞、前記固定化組織、または前記固定化細胞と前記固定化組織の両方を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料は、ホルマリン固定されている。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料は、前記包埋組織を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料は、パラフィンに包埋されている前記組織を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料は組織生検体を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料は切除したホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、前記核酸の特徴を他の試料に由来する核酸の特徴と比較することをさらに含み、前記特徴は、発現レベル、核酸配列、分子量、核酸完全性、核酸の鎖性(例えば、二本鎖対一本鎖)または核酸純度である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料は、腫瘍試料である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質緩衝液は、約7より大きなpHを有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、前記電場の前記印加前に、少なくとも約1分間の期間、少なくとも約37℃の温度で、前記流体デバイス中で前記組織試料をインキュベートすることをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記温度は、約40℃~約80℃である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記期間は、約1分間~約120分間である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記先導電解質緩衝液はプロテイナーゼKを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、前記プロテイナーゼKを使用して、前記核酸からタンパク質架橋を除去することをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、前記電場の前記印加後に、熱を使用して、前記核酸からタンパク質架橋を除去することをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、前記流体デバイスの排出用レザーバーから前記精製済み核酸を含む排出溶液を溶出させることをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記排出溶液中の前記精製済み核酸の濃度は、前記組織試料中の前記核酸の濃度よりも少なくとも約2倍高い。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記排出溶液中の前記架橋化核酸の濃度は、前記組織試料中の前記架橋化核酸の濃度の多くとも約2分の1である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記排出溶液は、約50μLに等しい体積またはそれ未満の体積を有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は、少なくとも約1ngの質量を有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は、25μLより多い体積を有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質は、前記汚染物質より高い実効移動度を有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質は、(i)前記汚染物質よりも大きな実効移動度の大きさを有する第1のイオン、(ii)前記汚染物質とほぼ同じ、またはそれより小さな実効移動度の大きさを有する第2のイオンを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記等速電気泳動の実施は、前記組織試料のpHを約7.5までクエンチする。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、前記装入前に、前記試料に脱パラフィンを行うことをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、前記核酸の濃度を検出することをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記濃度は、約1ピコグラム/マイクロリットル(pg/μL)未満であるか、またはそれに等しい。
【0016】
本開示の態様は、(a)流体デバイスに、(i)溶解した固形組織および核酸を含む組織試料、(ii)第1の実効移動度を有する終局電解質イオンを含む終局電解質緩衝液であって、前記第1の実効移動度が、前記核酸の実効移動度の大きさよりも小さい大きさを有する、前記終局電解質緩衝液、(iii)第1の先導電解質用レザーバー中の、第2の実効移動度を有する第1の先導電解質イオンを含む第1の先導電解質緩衝液であって、前記第2の実効移動度が、前記核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きな大きさを有する、前記第1の先導電解質緩衝液、ならびに(iv)第2の先導電解質用レザーバー中の、第3の実効移動度を有する第2の先導電解質イオンを含む第2の先導電解質緩衝液であって、前記第3の実効移動度が、前記核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きな大きさを有しており、前記第1の先導電解質緩衝液は、前記第2の先導電解質緩衝液とは異なる、前記第2の先導電解質緩衝液を装入するステップ、(b)前記終局電解質イオン、前記核酸および前記第1の先導電解質イオンを用いた第1の等速電気泳動を行い、これにより、前記組織試料中の前記汚染物質から前記核酸を精製するステップ、ならびに(c)前記終局電解質イオン、前記核酸および前記第2の先導電解質イオンを用いた第2の等速電気泳動を行うステップを含む、試料精製方法を提供する。
【0017】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の等速電気泳動を行うステップは、第1のチャネルから第2のチャネルまでの印加電流を変更することを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の先導電解質イオンは前記第2の先導電解質イオンと同じであり、前記第1の先導電解質緩衝液中の前記第1の先導電解質イオンの濃度は、前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの濃度とは異なる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の実効移動度は、前記第3の実効移動度の前記大きさよりも大きな大きさを有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の先導電解質イオンは、前記第2の先導電解質イオンとは異なる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の先導電解質イオンは前記第2の先導電解質イオンと同じであり、前記第1の先導電解質緩衝液中の前記第1の先導電解質イオンの濃度は、前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの濃度と同じであり、前記第1の先導電解質緩衝液は第3の先導電解質イオンを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の先導電解質イオンは前記第2の先導電解質イオンと同じであり、前記第1の先導電解質緩衝液中の前記第1の先導電解質イオンの濃度は、前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの濃度と同じであり、前記第2の先導電解質緩衝液は第3の先導電解質イオンを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、前記第2の先導電解質用レザーバー中に前記核酸を収集すること、および前記第2の先導電解質用レザーバーから前記核酸を除去することをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の等速電気泳動を行うステップおよび前記第2の等速電気泳動を行うステップは、単一の電場を印加することにより行われる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の等速電気泳動を行うステップおよび前記第2の等速電気泳動を行うステップは、1つより多くの電場を印加することにより行われる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの濃度は、50mM未満である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の先導電解質緩衝液は、50mM Tris HClを含む。
【0018】
本開示の態様は、(a)(i)第1の流体チャネルと流体連通している第1の試料用レザーバー、(ii)前記第1の流体チャネルと流体連通している第1の緩衝液用レザーバー、および(iii)前記第1のチャネルと流体連通している第2の緩衝液用レザーバーを含む、マイクロ流体チップ中の第1の等速電気泳動領域、ならびに(b)(i)第2の流体用チャネルと流体連通している第2の試料用レザーバー、(ii)前記第2の流体チャネルと流体連通している第3の緩衝液用レザーバー、および(iii)前記第2のチャネルと流体連通している第4の緩衝液用レザーバーを含む、前記マイクロ流体チップ中の第2の等速電気泳動領域を含む、マイクロ流体デバイスであって、前記第1の等速電気泳動領域は前記第2の等速電気泳動領域と流体連通しておらず、前記マイクロ流体デバイスは、前記第1の等速電気泳動領域に電流を印加する第1の電気回路と前記第2の等速電気泳動領域に電流を印加する第2の電気回路とを独立して制御するよう構成されている、マイクロ流体デバイスを提供する。
【0019】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の等速電気泳動領域と第2の等速電気泳動領域との間のリーク率は、1時間あたり1μl未満である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の等速電気泳動領域と第2の等速電気泳動領域との間の電流リークは、1μA未満である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、インピーダンスは、1メガオームより大きい。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の流体チャネルは、100μlより多い液体体積を保持する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の流体チャネルは、前記第1のチャネルの幅の多くとも5分の1である距離の分、前記第2の流体チャネルから離されている。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記マイクロ流体デバイスは、前記第2の電気回路と同時に前記第1の電気回路を制御するよう構成されている。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、前記第1のチャネルと流体連通している溶出用レザーバーをさらに含み、温度センサーは、前記溶出用レザーバーの5mm以内に位置している。
【0020】
本開示の態様は、(a)チャネルと流体連通している試料投入用レザーバーを含む界面動電流体デバイスを用意するステップ、(b)試料体積を前記試料投入用レザーバーに装入するステップ、(c)前記試料投入用レザーバーに追加体積分を添加することなく、前記試料体積の少なくとも50%を前記試料投入用レザーバーから前記チャネルに移動させるステップ、および(d)前記チャネルにイオン電流を印加するステップを含む、方法を提供する。
【0021】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記移動させるステップは、重力を利用して行われる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記イオン電流は、前記チャネルに実質的に流れない。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料体積の前記少なくとも50%は、前記試料体積の少なくとも80%を占める。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料体積は、核酸を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料体積は、組織試料またはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、イオン電流を前記印加するステップは、等速電気泳動を行うステップを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料投入用レザーバーに装入される試料体積の合計は、前記投入用レザーバーの内部体積未満であるかまたはそれに等しい。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料投入用レザーバーは、テーパー型領域を介して底部領域に接続された上部領域を含み、前記上部領域は第1の直径を有しており、前記底部領域は第2の直径を有しており、前記試料投入用レザーバーから前記チャネルに前記試料体積の少なくとも50%を前記移動させるステップを促進するため、前記第1の直径は前記第2の直径よりも少なくとも2倍、長い。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料体積は、少なくとも25μlである。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料体積は、少なくとも50μlである。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料体積は、少なくとも100μlである。
【0022】
本開示の態様は、第1の試料投入用レザーバーであって、テーパー型領域を介して底部領域に接続されている上部領域を含み、前記上部領域は第1の水力内径を有し、前記底部領域は第2の水力内径を有し、前記第1の水力内径は、前記第2の水力内径よりも少なくとも2倍、長く、前記第1の試料投入用レザーバーは、第1のチャネルと流体連通している、第1の試料投入用レザーバー、前記第1のチャネルと流体連通している第1の緩衝液用レザーバーであって、前記第1の試料用レザーバー中の液体の自由表面が前記第1の緩衝液用レザーバー中の液体に対して無視できる程の緩衝液ヘッド高差を有するよう、前記第1の試料用レザーバーが構成されている、第1の緩衝液用レザーバー、および前記第1のチャネルと流体連通している第2の緩衝液用レザーバーを含むマイクロ流体チップを提供する。
【0023】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の水力内径は、約1mm~約15mmの範囲である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の水力内径は、約0.5mm~約5mmの範囲である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の試料用レザーバーは、少なくとも100μlの試料体積を保持するよう構成されている。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記マイクロ流体チップは、真空が前記マイクロ流体チップに適用されると、前記第1の試料用レザーバーから前記第1のチャネルに前記試料体積の少なくとも50%が移動するよう構成されている。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記マイクロ流体チップは、前記第1のチャネルに入る試料に等速電気泳動を行うよう構成されている。
【0024】
本開示の態様は、(a)細胞または組織を含む生物学的試料を、尿素またはチオ尿素を含む溶液に曝露させて、これにより、前記生物学的試料中の前記細胞または組織を溶解して、細胞溶解物を生成するステップ、(b)デバイスに前記細胞溶解物を導入するステップ、および(c)前記デバイスを用いて等速電気泳動を行って、前記細胞溶解物から核酸を単離するステップを含む、核酸を抽出する方法を提供する。
【0025】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、プロテイナーゼKにより前記試料を消化するステップをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶液は、尿素およびチオ尿素を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶液は、約2対1の尿素対チオ尿素の比を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶液中の前記尿素の濃度は、約4M~約9Mであり、前記溶液中の前記チオ尿素の濃度は、約0.5M~約3.5Mである。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶液中の前記尿素の濃度は、約6.5M~約7.5Mであり、前記溶液中の前記チオ尿素の濃度は、約1.5M~約2.5Mである。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶液は、終局電解質イオンもしくは先導電解質イオン、または終局電解質イオンと先導電解質イオンとの両方を含む。
【0026】
本開示の態様は、(a)流体デバイスに、(i)ゲノムDNAおよび汚染物質を含む細胞試料であって、前記流体デバイスに前記細胞試料を装入する前または後に、前記細胞試料を溶解緩衝液に接触させる、細胞試料、(ii)第1の実効移動度を有する終局電解質イオンを含む、終局電解質緩衝液であって、前記第1の実効移動度が、高分子量核酸の実効移動度の大きさよりも小さい大きさを有し、かつ前記汚染物質の大きさよりも大きな大きさを有する、前記終局電解質緩衝液、ならびに(iii)第2の実効移動度を有する第1の先導電解質イオンを含む、第1の先導電解質緩衝液であって、前記第2の実効移動度は、前記高分子量核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きな大きさを有する、前記第1の先導電解質緩衝液を装入するステップ、(b)前記終局電解質イオン、前記高分子量核酸および前記第1の先導電解質イオンを用いた等速電気泳動を行い、これにより前記汚染物質から前記高分子量核酸を分離し、等速電気泳動ゾーン中に前記高分子量核酸を富化させるステップ、ならびに(c)排出用レザーバー中の溶液に、前記ゲノムDNAを溶出させるステップであって、前記溶液中の核酸の質量の50%を超える量が、30キロベースよりも大きい、ステップを含む、組織試料から高分子量核酸を精製する方法を提供する。
【0027】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶解緩衝液は、アルカリ緩衝液を含まない。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶解緩衝液は、オクチルフェノールエトキシレートを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶液中の核酸の質量の50%を超える量が、50キロベースを超える。
【0028】
本開示の態様は、(a)溶解した固形組織を含む組織試料を含む試料投入用レザーバー、第1の先導電解質緩衝液を含む第1の緩衝液用レザーバー、及び終局電解質緩衝液を含む第2の緩衝液用レザーバーと流体連通している第1のチャネルを含む流体デバイスを用意するステップ、(b)第1の電極を前記第1の緩衝液用レザーバー中の前記第1の先導電解質緩衝液に接触させるステップ、(c)第2の電極を前記第2の緩衝液用レザーバー中の前記終局電解質緩衝液に接触させるステップ、および(d)前記流体デバイス内に電場を印加して、等速電気泳動を行うステップであって、前記組織試料と前記第1および第2の電極との間の直接接触なしに前記等速電気泳動を行う、ステップを含む、等速電気泳動を行う方法を提供する。
【0029】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記流体デバイスは、前記第1のチャネルおよび前記第1の緩衝液用レザーバーと流体連通している第3の緩衝液用レザーバーをさらに含み、前記第3の緩衝液用レザーバーは、前記第1の緩衝液用レザーバーよりも低い濃度の前記第1の先導電解質緩衝液を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第3の緩衝液用レザーバーおよび前記第1の緩衝液用レザーバーを、1つまたは複数のキャピラリーバリアを含む第2のチャネルによって接続して、前記第2のチャネル内の圧力駆動流、および前記第3の緩衝液用レザーバーと前記第1の緩衝液用レザーバーとの間の圧力駆動流を制限する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記流体デバイスは溶出用レザーバーをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶出用レザーバーは、第4の緩衝液用レザーバーと流体連通している。
【0030】
本開示の態様は、マイクロ流体システムであって、(a)第1のチャネル、および前記第1のチャネルと流体連通している第1のレザーバーを含むマイクロ流体チップであって、前記第1のチャネルおよび前記第1のレザーバーが、第1の合流点で出会う、マイクロ流体チップ、および(b)第1の歯を含む機械部材であって、前記第1の歯を介して、前記第1のチャネルに機械圧力をかけて、前記第1のチャネルの少なくとも1つの壁の可塑的変形によって前記第1のチャネルを少なくとも一部閉鎖するように、および前記第1のチャネルと前記第1のレザーバーとの間の流体抵抗を増大するように構成されている、前記機械部材を含む、マイクロ流体システムを提供する。
【0031】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記マイクロ流体チップは、前記第1のレザーバーと流体連通している第2のレザーバー、および前記第1のレザーバーと前記第2のレザーバーを接続している第2のチャネルをさらに含み、前記機械部材が、前記第2のチャネルに機械圧力をかけて前記第2のチャネルを可塑的に閉鎖するように、および前記第1のレザーバーと前記第2のレザーバーとの間の流体連通を防止するように構成されている第2の歯をさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の歯は、前記第1の合流点に機械的圧力をもたらして、前記第1のチャネルの少なくとも1つの壁の可塑的変形によって前記第1のチャネルを閉鎖するように構成されている。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の歯は、前記第1のチャネルを加熱するよう構成されている。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記機械部材は、前記第1のチャネルのヤング弾性率よりも大きなヤング弾性率を有する材料を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記マイクロ流体システムは、等速電気泳動を行うよう構成されている。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の歯は、加熱素子と熱的に連結されている。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の歯は、前記第1のチャネルの前記少なくとも1つの壁のガラス転移温度より高い温度に加熱される。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、前記マイクロ流体システムを使用して、可塑的変形により、前記第1のチャネルを少なくとも一部閉鎖し、これにより、前記第1のチャネルと前記第1のレザーバーとの間の流体流動に対する抵抗を増大させるステップを含む、流体システムにおけるプロセスを完了する方法を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記機械部材の前記第1の歯は、前記第1のチャネルに少なくとも0.25lbの力を加える。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記流体システムにおける前記プロセスは、等速電気泳動である。
【0032】
本開示の態様は、(a)マイクロ流体チップの第1のレザーバーに核酸を含む前記試料を装入するステップ、(b)前記マイクロ流体チップの第2のレザーバーに終局電解質緩衝液を装入するステップであって、前記終局電解質緩衝液は、前記核酸の実効移動度の大きさよりも小さい大きさを有する実効移動度を有する第1の終局電解質イオンを含む、ステップ、(c)前記マイクロ流体チップの第3のレザーバーに先導電解質緩衝液を装入するステップであって、前記第3のレザーバーは、第2の実効移動度を有する第1の先導電解質イオンを含み、前記第2の実効移動度は、前記核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きな大きさを有する、ステップ、(d)前記マイクロ流体チップ内に電場を印加して、前記第1の終局電解質イオン、前記核酸および前記第1の先導電解質イオンを用いた等速電気泳動を行い、これにより、前記核酸またはその一部を等速電気泳動ゾーンに閉じ込めるステップ、および(e)前記等速電気泳動ゾーン中またはその近傍の温度変化を感知するために温度センサーを使用するステップであって、前記温度センサーからのフィードバックを使用して、前記電場を制御するステップを含む、核酸を含む試料に等速電気泳動を行う方法を提供する。
【0033】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記電場の前記制御により、溶出用レザーバー中、または前記マイクロ流体チップの領域中に、前記核酸またはその一部が位置することになる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記温度センサーは、前記溶出用レザーバーの多くとも8mm以内に配置される。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記温度変化は、約0.2℃~5℃の範囲内にある。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、電場を前記印加するステップにより、前記先導電解質および前記終局電解質は、等速電気泳動界面で出会い、前記温度センサーが、前記等速電気泳動界面を感知する。
【0034】
本開示の態様は、(a)(i)第1の流体チャネルと流体連通している第1の試料用レザーバー、(ii)前記第1の流体チャネルと流体連通している第1、第2および第3の緩衝液用レザーバーであって、前記第1および第2の緩衝液用レザーバーがキャピラリーバリアによって離されている、第1、第2および第3の緩衝液用レザーバー、ならびに(iii)前記第1の流体チャネルと流体連通している溶出用レザーバーを含む、マイクロ流体チップ中の第1の等速電気泳動領域、(b)前記第1の等速電気泳動領域内の前記第1の流体チャネルにおける、温度変化を検出するよう構成されているセンサー、ならびに(c)前記第1の等速電気泳動領域内の前記第1のチャネル内に電流を供給するよう置かれている装置を含む、マイクロ流体デバイスを提供する。
【0035】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態は、前記センサーが熱的信号を受信すると、前記電流の低下または解除を作動するよう構成されている制御装置をさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記温度変化は、約0.2℃~5℃の範囲内の温度上昇である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記マイクロ流体デバイスは、前記センサーが温度変化を検出した後に、前記溶出用レザーバー中の核酸の試料を単離するようさらに構成されている。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記核酸の前記感知は、前記溶出用レザーバーの多くとも8mm以内に配置されているセンサーにより行われる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1のチャネルは、単一センサーを含む。
【0036】
本開示の態様は、(a)請求項111に記載の前記マイクロ流体デバイス、請求項165に記載の前記マイクロ流体デバイスまたは請求項128に記載の前記マイクロ流体チップ、(b)終局電解質を含む終局電解質緩衝液、および(c)先導電解質を含む先導電解質緩衝液を含む、キットを提供する。
【0037】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質緩衝液は、異なる実効移動度を有する少なくとも2つの電解質の混合物を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記混合物は、(i)核酸よりも低い実効移動度の大きさおよび汚染物質よりも高い実効移動度の大きさを有する第1の電解質、および(ii)前記汚染物質よりも低い実効移動度の大きさを有する第2の電解質を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の電解質はカプロン酸を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の電解質は、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記キットは、試料用緩衝液をさらに含み、前記試料用緩衝液は、先導電解質緩衝液、終局電解質緩衝液または尿素を任意の組合せで含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記キットは、尿素およびチオ尿素を含む試料用緩衝液をさらに含む。
【0038】
本開示の態様は、(a)流体デバイスに、(i)核酸および汚染物質を含む組織試料であって、非溶解全血試料を含まない組織試料、(ii)前記汚染物質の実効移動度の大きさよりも大きく、かつ前記核酸の実効移動度の大きさよりも小さい大きさを有する実効移動度を有する終局電解質イオンを含む、終局電解質緩衝液、ならびに(iii)第2の実効移動度を有する先導電解質イオンを含む先導電解質緩衝液を装入するステップであって、前記第2の実効移動度が、前記核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きな大きさを有するステップ、ならびに(b)前記流体デバイス内に電場を印加して、前記終局電解質イオン、前記核酸および前記先導電解質イオンを用いた等速電気泳動を行い、これにより、前記組織試料中の前記汚染物質から前記核酸を精製するステップを含む、試料精製方法を提供する。
【0039】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は全血液試料ではない。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質イオンはカプロン酸を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記先導電解質イオンは塩化物イオンを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質緩衝液は、前記第1の終局電解質イオンとは異なる実効移動度を有する第2の終局電解質イオンを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の終局電解質イオンは、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の終局電解質イオンは、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の終局電解質イオンは、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を含み、第1の終局電解質イオンはカプロン酸を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の終局電解質イオンは、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)を含み、第1の終局電解質イオンはカプロン酸を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の終局電解質イオンは、HEPESを含み、第1の終局電解質イオンは、MOPSを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質緩衝液は、第2の実効移動度を有する第2の終局電解質イオンを含み、前記第2の実効移動度は、前記汚染物質の前記実効移動度の前記大きさとほぼ同じ大きさ、またはそれより小さい大きさを有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記汚染物質は、架橋化核酸、包埋材、化学固定剤、タンパク質、阻害剤およびそれらの組合せからなる群から選択される。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記汚染物質は架橋化核酸を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は、前記装入前に、前記終局電解質緩衝液と混合される。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は、前記装入前に、前記先導電解質緩衝液と混合される。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記先導電解質緩衝液を前記装入するステップは、前記組織試料の前記装入前に行われる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、本方法は、前記流体デバイスの排出用レザーバーから前記精製済み核酸を含む排出溶液を溶出させるステップをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記排出溶液中の前記精製済み核酸の濃度は、前記組織試料中の前記核酸の濃度よりも少なくとも約2倍高い。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記排出溶液中の前記架橋化核酸の濃度は、前記組織試料中の前記架橋化核酸の濃度の多くとも約2分の1である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記排出溶液は、前記汚染物質を含まない。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は、新しい組織である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は、新しい凍結(FF)組織である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料はホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE)である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、本方法は、前記組織試料の前記装入前に、前記組織試料を溶解または破壊するステップをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶解または破壊するステップは、尿素またはチオ尿素を使用して行われる。
【0040】
本開示の態様は、(a)流体デバイスの第1のチャネルに、(i)第1の核酸および第1の汚染物質を含む第1の組織試料、(ii)第1の終局イオンを含む第1の終局電解質緩衝液であって、前記第1の終局イオンの実効移動度の大きさが、前記第1の核酸の実効移動度の大きさよりも小さい、第1の終局電解質緩衝液、ならびに(iii)第1の先導イオンを含む第1の先導電解質緩衝液であって、前記第1の先導イオンの実効移動度の大きさが、前記第1の核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きい、第1の先導電解質緩衝液を装入するステップ、(b)前記流体デバイスの第2のチャネルに、(iv)第2の核酸および第2の汚染物質を含む第2の組織試料、(v)第2の終局イオンを含む第2の終局電解質緩衝液であって、前記第2の終局イオンの大きさが、前記第2の核酸の実効移動度の大きさよりも小さい、第2の終局電解質緩衝液、ならびに(vi)第2の先導イオンを含む第2の先導電解質緩衝液であって、前記第2の先導イオンの実効移動度の大きさが、前記第2の核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きい、第2の先導電解質緩衝液を装入するステップ、ならびに(c)前記流体デバイス内に電場を印加して、前記第1のチャネル中で、前記第1の終局イオン、前記第1の核酸および前記第1の先導イオンを用いた等速電気泳動を行い、前記第2のチャネル中で前記第2の終局イオン、前記第2の核酸および前記第2の先導イオンを用いた等速電気泳動を行い、これらにより、前記第1の汚染物質から前記第1の核酸を精製し、かつ前記第2の汚染物質から前記第2の核酸を精製するステップを含む、試料精製方法を提供する。
【0041】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の終局電解質緩衝液または前記第1の先導電解質緩衝液は、溶解剤または組織破壊剤をさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の終局電解質緩衝液または前記第2の先導電解質緩衝液は、溶解剤または組織破壊剤をさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶解剤または前記組織破壊剤は、約12よりも大きなpHを有する溶液、プロテイナーゼ、尿素、チオ尿素および界面活性剤からなる群から選択される1種または複数の作用剤を含む。
【0042】
本開示の態様は、(a)流体デバイスの第1のゾーンに、(i)核酸および汚染物質を含む組織試料、(ii)終局イオンを含む終局電解質緩衝液であって、前記終局イオンの実効移動度の大きさが、前記核酸の実効移動度の大きさよりも小さい、終局電解質緩衝液、ならびに(iii)先導イオンを含む先導電解質緩衝液であって、前記先導イオンの実効移動度の大きさが、前記核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きい、先導電解質緩衝液を装入するステップ、ならびに(b)前記流体デバイスに電場を印加して、前記流体デバイスの第2のゾーンにおいて、前記終局イオン、前記核酸および前記先導イオンを用いた等速電気泳動を行い、これにより、前記汚染物質から前記核酸を精製するステップであって、前記印加するステップの間、前記第1のゾーンは、第1の温度に維持されて、前記第2のゾーンは、前記第1の温度とは異なる第2の温度に維持されるステップを含む、試料精製方法を提供する。
【0043】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質緩衝液または前記先導電解質緩衝液は、溶解剤または組織破壊剤をさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶解剤または前記組織破壊剤は、約12よりも大きなpHを有する溶液、プロテイナーゼ、尿素、チオ尿素および界面活性剤からなる群から選択される1種または複数の作用剤を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の温度は、約4℃~約40℃の間である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の温度は、約40℃~約80℃の間である。
【0044】
本開示の態様は、(a)流体デバイスの第1のゾーンに、(i)核酸を含む組織試料、(ii)終局イオンを含む終局電解質緩衝液であって、前記終局イオンの実効移動度の大きさが、前記核酸の実効移動度の大きさよりも小さい、終局電解質緩衝液、および(iii)先導イオンを含む先導電解質緩衝液であって、前記先導イオンの実効移動度の大きさが、前記核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きい、先導電解質緩衝液を装入するステップ、(b)前記第1のゾーン中で、(1)包埋材の除去、(2)組織の破壊、(3)細胞の溶解、(4)核酸の脱架橋、(5)タンパク質の消化および(6)核酸の消化からなる群から選択される少なくとも1つの試料調製を、前記組織試料に行うステップ、ならびに(c)前記流体デバイス内に電場を印加して、前記流体デバイスの第2のゾーンにおいて、前記終局イオン、前記核酸および前記先導イオンを用いた等速電気泳動を行い、これにより、前記組織試料中の汚染物質から前記核酸を精製するステップを含む、試料精製方法を提供する。
【0045】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、包埋材の前記除去または細胞の前記溶解は、前記電場の前記印加前に、少なくとも約1分間の期間、少なくとも約37℃の温度で、前記流体デバイス中で前記組織試料をインキュベートすることを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記温度は、約40℃~約80℃である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記期間は、約1分間~約60分間である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織の破壊または前記細胞の溶解は、前記試料に機械応力を適用することを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織の破壊または前記細胞の溶解は、前記試料に熱を適用することを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記熱の適用により、前記組織試料の温度は約30℃~約65℃となる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織の破壊または前記細胞の溶解は、少なくともpH12の溶液を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織の破壊または前記細胞の溶解は、タンパク質による消化を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記タンパク質による消化は、約25℃より高い温度で行われる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記温度は、約30℃~約65℃である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織の破壊または前記細胞の溶解は、前記組織または前記細胞に少なくとも1つの界面活性剤を適用することを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織の破壊または前記細胞の溶解は、前記組織または前記細胞に尿素を含む溶液を適用することを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶液は、チオ尿素をさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶液中の前記尿素の濃度は、約4M~約9Mであり、前記溶液中の前記チオ尿素の濃度は、約0.5M~約3.5Mである。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記溶液中の前記尿素の濃度は、約6.5M~約7.5Mであり、前記溶液中の前記チオ尿素の濃度は、約1.5M~約2.5Mである。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記核酸を脱架橋するステップは、プロテイナーゼKを用いて架橋タンパク質を消化するステップを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記核酸を消化するステップは、DNアーゼまたはRNアーゼを用いて行われる。
【0046】
本開示の態様は、(a)流体デバイスに、(i)核酸を含む組織試料であって、包埋または固定化されている前記組織試料、(ii)終局電解質を含む終局電解質緩衝液であって、前記終局電解質が前記核酸よりも低い実効移動度を有する、終局電解質緩衝液、および(iii)先導電解質を含む先導電解質緩衝液であって、前記先導電解質が前記核酸よりも高い実効移動度を有する、先導電解質緩衝液を装入するステップ、ならびに(b)前記流体デバイスに電場を印加して、前記終局電解質、前記核酸および前記先導電解質を用いた等速電気泳動を行い、これにより、前記組織試料中の汚染物質から前記核酸を精製するステップを含む、試料精製方法を提供する。
【0047】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記汚染物質は、架橋化核酸、包埋材、化学固定剤、酵素および阻害剤からなる群から選択される。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記包埋材はパラフィンを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は、ホルマリン固定されている。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は、包埋されて、固定されている。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料はホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は、切除した組織試料である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記切除した組織試料は、切除したFFPE試料である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、本方法は、前記核酸の特徴と他の試料に由来する核酸の特徴とを比較するステップをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記特徴は発現レベルである。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記特徴は核酸配列である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記特徴は分子量である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記特徴は核酸完全性である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記特徴は核酸純度である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、本方法は、前記核酸の前記特徴に基づく薬物を投与するステップをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は腫瘍試料である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質緩衝液は、pH約7を有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質緩衝液は、約7より大きなpHを有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、本方法は、前記電場の前記印加前に、少なくとも約1分間の期間、少なくとも約37℃の温度で、前記流体デバイス中で前記組織試料をインキュベートするステップをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記温度は、約40℃~約80℃である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記期間は、約1分間~約60分間である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記先導電解質緩衝液はプロテイナーゼKを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、本方法は、前記プロテイナーゼKを使用して、前記核酸からタンパク質架橋を除去するステップをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、本方法は、前記電場の前記印加後に、熱を使用して、前記核酸からタンパク質架橋を除去するステップをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、本方法は、前記流体デバイスの排出用レザーバーから前記精製済み核酸を含む排出溶液を溶出させるステップをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記排出溶液中の前記精製済み核酸の濃度は、前記組織試料中の前記核酸の濃度よりも少なくとも約2倍高い。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記排出溶液中の前記架橋化核酸の濃度は、前記組織試料中の前記架橋化核酸の濃度の多くとも約2分の1である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記排出溶液は、前記汚染物質を含まない。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記排出溶液は、約50μLに等しい体積またはそれ未満の体積を有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は、少なくとも約1ngの質量を有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は、約500μLより少ない体積を有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質は、前記汚染物質より高い実効移動度を有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質は、(i)前記汚染物質よりも大きな実効移動度の大きさを有する第1のイオン、および(ii)前記汚染物質とほぼ同じ、またはそれより小さな実効移動度の大きさを有する第2のイオンを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記等速電気泳動の実施は、前記組織試料のpHを約7までクエンチする。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、本方法は、前記装入前に、前記組織試料に脱パラフィンを行うステップをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記組織試料は、前記核酸の特徴を異なる組織試料に由来する異なる核酸の特徴と比較するステップをさらに含む、慣用的なホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料である。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、本方法は、前記核酸の濃度を検出するステップをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記濃度は、約1ピコグラム/マイクロリットル(pg/μL)未満であるか、またはこれに等しい。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記濃度は、約0.5pg/μL未満であるか、またはこれに等しい。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記濃度は、少なくとも約1ピコグラム/マイクロリットル(pg/μL)である。
【0048】
本開示の態様は、(a)第1のゾーン、(b)前記第1のゾーンに配置されている試料導入口、(c)前記第1のゾーンと流体連通している終局電解質用レザーバー、(d)前記第1のゾーンと流体連通している第2のゾーン、(e)前記第2のゾーンと流体連通している先導電解質用レザーバー、(f)前記第2のゾーンと流体連通している試料排出口、(g)前記第1のゾーンと熱的連通している第1のヒータ、および(h)前記第2のゾーンに熱を伝播するよう構成されている第2のヒータを含む流体デバイスであって、前記第1のゾーンが前記第2のゾーンから実質的に熱的に隔離されている、流体デバイスを提供する。
【0049】
本開示の態様は、(a)第1のゾーン、(b)前記第1のゾーンに配置されている試料導入口、(c)前記第1のゾーンと流体連通している終局電解質用レザーバー、(d)前記第1のゾーンと流体連通している第2のゾーン、(e)前記第2のゾーンと流体連通している先導電解質用レザーバー、(f)前記第2のゾーンと流体連通している試料排出口、および(g)前記第1のゾーンおよび前記第2のゾーンと熱的連通しているヒータを含む、試料精製領域を含む流体デバイスを提供する。
【0050】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、本デバイスは、第2の試料精製領域をさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1のゾーンは脱パラフィンゾーンである。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1のゾーンは破壊ゾーンである。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2のゾーンは等速電気泳動ゾーンである。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1のゾーンまたは前記第2のゾーンは約1mm未満の幅を有する。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1のゾーンまたは前記第2のゾーンは約0.5mm未満の幅を有する。
【0051】
本開示の態様は、本明細書において提供されているデバイス、終局電解質を含む終局電解質緩衝液、および先導電解質を含む先導電解質緩衝液を含むキットを提供する。
【0052】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質緩衝液は、異なる実効移動度を有する少なくとも2つの電解質の混合物を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記混合物は、(i)核酸よりも小さい実効移動度の大きさおよび汚染物質よりも大きい実効移動度の大きさを有する第1の電解質、ならびに(ii)前記汚染物質よりも小さい実効移動度の大きさを有する第2の電解質を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記汚染物質は架橋化核酸を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の電解質はカプロン酸を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の電解質はHEPESを含む。
【0053】
本開示の態様は、(a)流体デバイスに、(i)核酸を含む組織試料、(ii)第1の実効移動度を有する終局電解質イオンを含む終局電解質緩衝液であって、前記第1の実効移動度が、前記核酸の実効移動度の大きさよりも小さい大きさを有する、前記終局電解質緩衝液、(iii)第1の先導電解質用レザーバー中の、第2の実効移動度を有する第1の先導電解質イオンを含む第1の先導電解質緩衝液であって、前記第2の実効移動度が、前記核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きな大きさを有する、前記第1の先導電解質緩衝液、および(iv)第2の先導電解質用レザーバー中の、第3の実効移動度を有する第2の先導電解質イオンを含む第2の先導電解質緩衝液であって、前記第3の実効移動度が、前記核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きな大きさを有し、前記第1の先導電解質緩衝液は、前記第2の先導電解質緩衝液とは異なる前記第2の先導電解質緩衝液を装入するステップ、(b)前記終局電解質イオン、前記核酸および前記第1の先導電解質イオンを用いた第1の等速電気泳動を行い、これにより、前記組織試料中の前記汚染物質から前記核酸を精製するステップ、ならびに(c)前記終局電解質イオン、前記核酸および前記第2の先導電解質イオンを用いた第2の等速電気泳動を行うステップを含む、試料精製方法を提供する。
【0054】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の等速電気泳動を行うステップは、第1のチャネルから第2のチャネルまでの印加電流を変更することを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の先導電解質イオンは前記第2の先導電解質イオンと同じであり、前記第1の先導電解質緩衝液中の前記第1の先導電解質イオンの濃度は、前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの濃度とは異なる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の先導電解質緩衝液中の前記第1の先導電解質イオンの前記濃度は、少なくとも1.5x倍、前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの前記濃度とは異なる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の先導電解質イオンは、前記第2の先導電解質イオンとは異なる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の先導電解質イオンは前記第2の先導電解質イオンと同じであり、前記第1の先導電解質緩衝液中の前記第1の先導電解質イオンの濃度は、前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの濃度と同じであり、前記第1の先導電解質緩衝液は第3の先導電解質イオンを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の先導電解質イオンは前記第2の先導電解質イオンと同じであり、前記第1の先導電解質緩衝液中の前記第1の先導電解質イオンの濃度は、前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの濃度と同じであり、前記第2の先導電解質緩衝液は第3の先導電解質イオンを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、本方法は、前記第2の先導電解質用レザーバー中に前記核酸を収集するステップをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、本方法は、前記第2の先導電解質用レザーバーから前記核酸を除去するステップをさらに含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記終局電解質緩衝液は、前記第1の先導電解質用レザーバーおよび前記第2の先導電解質用レザーバーとは別である終局電解質用レザーバーに装入される。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の等速電気泳動を行うステップおよび前記第2の等速電気泳動を行うステップは、1つの電場を印加することにより行われる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の等速電気泳動を行うステップおよび前記第2の等速電気泳動を行うステップは、1つより多くの電場を印加することにより行われる。
【0055】
本開示の態様は、(a)第1のゾーン、および前記第1のゾーンと流体連通している第2のゾーンを含むチャネル、(b)それぞれが前記第1のゾーンと流体連通している、試料導入口、終局電解質緩衝液を含む終局電解質用レザーバー、および第1の先導電解質緩衝液を含む第1の先導電解質用レザーバー、および(c)第2の先導電解質緩衝液を含む第2の先導電解質用レザーバーを含む、試料精製領域を含む流体デバイスであって、前記第2の先導電解質緩衝液は、前記第2のゾーンと流体連通しており、前記第2の先導電解質緩衝液は、前記第1の先導電解質緩衝液とは異なる、流体デバイスを提供する。
【0056】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料導入口は、少なくともある非液体の生物学物質を含む試料を受けとることができる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第2の先導電解質緩衝液は、前記第1の先導電解質緩衝液とは異なる先導電解質共イオンを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の先導電解質緩衝液は第1の先導電解質イオンを含み、前記第2の先導電解質緩衝液は、前記第1の先導電解質イオンと同じ第2の先導電解質イオンを含み、前記第1の先導電解質緩衝液中の前記第1の先導電解質イオンの濃度は、前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの濃度とは異なる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の先導電解質緩衝液は第1の先導電解質イオンを含み、前記第2の先導電解質緩衝液は第2の先導電解質イオンを含み、前記第1の先導電解質緩衝液中の前記第1の先導電解質イオンの前記濃度は、前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの前記濃度とは、少なくとも1.5x倍、異なる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の先導電解質緩衝液は第1の先導電解質イオンを含み、前記第2の先導電解質緩衝液は、前記第1の先導電解質イオンとは異なる第2の先導電解質イオンを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の先導電解質緩衝液は第1の先導電解質イオンを含み、前記第2の先導電解質緩衝液は、前記第1の先導電解質イオンと同じ第2の先導電解質イオンを含み、前記第1の先導電解質緩衝液中の前記第1の先導電解質イオンの濃度は、前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの濃度と同じであり、前記第1の先導電解質緩衝液が、第3の先導電解質イオンを含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記第1の先導電解質緩衝液は第1の先導電解質イオンを含み、前記第2の先導電解質緩衝液は、前記第1の先導電解質イオンと同じ第2の先導電解質イオンを含み、前記第1の先導電解質緩衝液中の前記第1の先導電解質イオンの濃度は、前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの濃度と同じであり、前記第2の先導電解質緩衝液は第3の先導電解質イオンを含む。
【0057】
本開示の態様は、(a)チャネルと流体連通しているレザーバーを含む界面動電流体デバイスを用意するステップ、(b)試料体積を前記レザーバーに装入するステップ、(c)前記試料体積の少なくとも50%を、前記レザーバーから前記チャネルに移動させるステップ、および(d)前記チャネルにイオン電流を印加するステップを含む、方法を提供する。
【0058】
本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記移動させるステップは、重力を利用して行われる。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記イオン電流は、前記レザーバーに実質的に流れない。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料体積の前記少なくとも50%は、前記試料体積の少なくとも80%を占める。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料体積は、核酸を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料体積は、組織試料を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、前記試料体積は、ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料を含む。本明細書において提供されている態様の一部の実施形態では、イオン電流を前記印加するステップは、等速電気泳動(ITP)を行うステップを含む。
【0059】
本開示の追加の態様および利点は、以下の詳細説明から当業者には容易に明白となり、本開示の例示的な実施形態しか示されて記載されていない。認識される通り、本開示は、他の実施形態および異なる実施形態が可能であり、そのいくつかの詳細は、すべて本開示から逸脱することなく、様々な明白な点で修正が可能である。したがって、図面および説明は、本質的に例示として見なされるべきであり、限定と見なされるべきではない。
参照による組み込み
【0060】
本明細書において明記されている、刊行物、特許および特許出願はすべて、あたかも個々の刊行物、特許または特許出願のそれぞれが、具体的かつ個々に、参照により組み込まれて示されているかのごとく、同じ程度にそれらの全体が参照により本明細書に組み込まれている。
【0061】
本発明の新規な特徴は、添付の特許請求の範囲に、詳細に説明されている。本発明の特徴および利点のよりよい理解は、本発明の原理が利用されている例示的な実施形態を説明している以下の詳細説明、および以下の添付の図面を参照することにより得られる。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
(a)流体デバイスに
(i)溶解した固形組織を含む組織試料であって、前記溶解した固形組織は核酸および汚染物質を含む、組織試料、
(ii)前記核酸の実効移動度の大きさよりも小さい大きさを有する実効移動度を有する第1の終局電解質イオンを含む終局電解質緩衝液、および
(iii)第2の実効移動度を有する第1の先導電解質イオンを含む先導電解質緩衝液であって、前記第2の実効移動度が、前記核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きな大きさを有する、先導電解質緩衝液を装入するステップ、ならびに
(b)前記流体デバイス内に電場を印加して、前記第1の終局電解質イオン、前記核酸および前記第1の先導電解質イオンを用いた等速電気泳動を行い、これにより、前記組織試料中の前記汚染物質から前記核酸を精製するステップ
を含む、試料精製方法。
(項目2)
前記第1の終局電解質イオンの前記実効移動度が、前記汚染物質の実効移動度の大きさよりも大きな大きさを有する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記流体デバイスが、マイクロ流体チップであり、前記組織試料、前記終局電解質緩衝液および前記先導電解質緩衝液が、前記マイクロ流体チップの第1のゾーンに装入される、項目1に記載の方法。
(項目4)
前記マイクロ流体チップの前記第1のゾーン中で、(1)包埋材の除去、(2)組織の破壊、(3)細胞の溶解、(4)前記核酸の脱架橋、(5)タンパク質の消化および(6)前記核酸の消化からなる群から選択される少なくとも1つの試料調製手順を、前記組織試料に行うステップをさらに含む、項目1から3のいずれか一項に記載の方法。
(項目5)
前記等速電気泳動が、前記マイクロ流体チップの第2のゾーン中で行われ、前記第2のゾーンは、前記第1のゾーンから離されており、前記第1のゾーンに流体接続されている、項目1から4のいずれか一項に記載の方法。
(項目6)
前記固形組織が固形器官に由来する、項目1から5のいずれか一項に記載の方法。
(項目7)
前記溶解した固形組織が化学固定剤を含む、項目1から6のいずれか一項に記載の方法。
(項目8)
前記化学固定剤がホルマリンである、項目7に記載の方法。
(項目9)
前記固形組織がホルマリン固定パラフィン包埋組織(FFPE)である、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記溶解した固形組織が尿素またはチオ尿素を含む、項目1から9のいずれか一項に記載の方法。
(項目11)
細胞間結合、細胞外マトリックスまたは結合組織を破壊して、前記溶解した固形組織を得るステップをさらに含む、項目1から10のいずれか一項に記載の方法。
(項目12)
前記溶解した固形組織が固形粒子を含む、項目1から10のいずれか一項に記載の方法。
(項目13)
前記核酸が分散したまたは溶媒和した核酸を含む、項目1から12のいずれか一項に記載の方法。
(項目14)
前記汚染物質が、架橋化核酸、包埋材、組織細片、化学固定剤、タンパク質、阻害剤およびそれらの組合せからなる群から選択される、項目1から13のいずれか一項に記載の方法。
(項目15)
前記汚染物質が架橋化核酸を含む、項目1から14のいずれか一項に記載の方法。
(項目16)
前記組織試料が、前記装入するステップ前に、前記終局電解質緩衝液と一緒にされる、項目1から15のいずれか一項に記載の方法。
(項目17)
前記組織試料が、前記装入するステップ前に、前記先導電解質緩衝液と一緒にされる、項目1から16のいずれか一項に記載の方法。
(項目18)
前記先導電解質緩衝液を前記装入するステップが、前記組織試料を前記装入するステップ前に行われる、項目1から17のいずれか一項に記載の方法。
(項目19)
前記固形組織が、前記組織試料を前記装入するステップ前に、前記先導電解質緩衝液において溶解される、項目1から18のいずれか一項に記載の方法。
(項目20)
前記固形組織が、前記組織試料を前記装入するステップ前に、前記終局電解質緩衝液において溶解される、項目1から19のいずれか一項に記載の方法。
(項目21)
前記試料調製手順が、前記電場を前記印加するステップ前に、少なくとも約1分間の期間、少なくとも約37℃の温度で、前記流体デバイス中で前記組織試料をインキュベートすることにより、包埋材を除去するステップを含む、項目4から20のいずれか一項に記載の方法。
(項目22)
前記温度が約40℃~約80℃である、項目21に記載の方法。
(項目23)
前記期間が、約1分間~約120分間である、項目21に記載の方法。
(項目24)
前記試料調製手順が、前記組織試料に機械応力を適用することにより、組織を破壊するステップまたは細胞を溶解するステップを含む、項目4から23のいずれか一項に記載の方法。
(項目25)
前記試料調製手順が、前記組織試料に熱を適用することにより、組織を破壊するステップまたは細胞を溶解するステップを含む、項目4から24のいずれか一項に記載の方法。
(項目26)
前記熱を適用することにより、前記組織試料の温度が約30℃~約80℃の範囲内となる、項目4から25のいずれか一項に記載の方法。
(項目27)
前記試料調製手順が、少なくとも10のpHを有する溶液に前記組織試料を接触させる、または前記組織試料をタンパク質分解により消化させることによる、組織を破壊するステップまたは細胞を溶解するステップを含む、項目4から26のいずれか一項に記載の方法。
(項目28)
前記タンパク質分解による消化が、約25℃より高い温度で行われる、項目27に記載の方法。
(項目29)
前記試料調製手順が、前記組織試料に少なくとも1つの界面活性剤を適用することにより、組織を破壊するステップまたは細胞を溶解するステップを含む、項目4から28のいずれか一項に記載の方法。
(項目30)
前記試料調製手順が、前記組織試料または細胞試料に尿素を含む溶液を適用することにより、組織を破壊するステップまたは細胞を溶解するステップを含む、項目4から29のいずれか一項に記載の方法。
(項目31)
前記溶液がチオ尿素をさらに含む、項目30に記載の方法。
(項目32)
前記溶液中の前記尿素の濃度が、約4M~約9Mの範囲内にあり、前記溶液中の前記チオ尿素の濃度が、約0.5M~約3.5Mの範囲にある、項目31に記載の方法。
(項目33)
前記溶液中の前記尿素の濃度が、約6.5M~約7.5Mであり、前記溶液中の前記チオ尿素の濃度が、約1.5M~約2.5Mである、項目31に記載の方法。
(項目34)
前記試料調製手順が、プロテイナーゼKを用いて架橋タンパク質を消化することによって、前記核酸を脱架橋するステップを含む、項目4から33のいずれか一項に記載の方法。
(項目35)
前記試料調製手順が、DNアーゼまたはRNアーゼを用いて、前記核酸を消化するステップを含む、項目4から34のいずれか一項に記載の方法。
(項目36)
前記流体デバイスの排出用レザーバーから前記精製済み核酸を含む排出溶液を溶出させるステップをさらに含む、項目1から35のいずれか一項に記載の方法。
(項目37)
前記排出溶液中の前記精製済み核酸の濃度が、前記組織試料中の前記核酸の濃度よりも少なくとも約2倍高い、項目36に記載の方法。
(項目38)
前記排出溶液中の前記組織試料および前記精製済み核酸が架橋化核酸を含み、前記排出溶液中の前記架橋化核酸の濃度が、前記組織試料中の前記架橋化核酸の濃度の多くとも約2分の1である、項目36に記載の方法。
(項目39)
前記汚染物質が、前記組織試料中の前記汚染物質の濃度の多くとも2分の1である濃度で前記排出溶液中に存在する、項目36に記載の方法。
(項目40)
前記第1の終局電解質イオンがカプロン酸を含む、項目1から39のいずれか一項に記載の方法。
(項目41)
前記第1の先導電解質イオンが塩化物イオンを含む、項目1から40のいずれか一項に記載の方法。
(項目42)
前記終局電解質緩衝液が、前記第1の終局電解質イオンとは異なる実効移動度を有する第2の終局電解質イオンを含む、項目1から41のいずれか一項に記載の方法。
(項目43)
前記第2の終局電解質イオンが、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)またはMOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)を含む、項目42に記載の方法。
(項目44)
前記第2の終局電解質イオンが、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を含み、前記第1の終局電解質イオンがカプロン酸を含む、項目42に記載の方法。
(項目45)
前記第2の終局電解質イオンが、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)を含み、前記第1の終局電解質イオンがカプロン酸を含む、項目42に記載の方法。
(項目46)
前記第2の終局電解質イオンが、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を含み、前記第1の終局電解質イオンがMOPSを含む、項目42に記載の方法。
(項目47)
前記終局電解質緩衝液が、第2の実効移動度を有する第2の終局電解質イオンを含み、前記第2の実効移動度が、前記汚染物質の前記実効移動度の前記大きさとほぼ同じ大きさ、またはそれより小さい大きさを有する、項目1から46のいずれか一項に記載の方法。
(項目48)
前記流体デバイスに装入された前記組織試料が、少なくとも50μlの体積を有する、項目1から47のいずれか一項に記載の方法。
(項目49)
前記マイクロ流体チップの前記第1のゾーン中で、前記組織試料に、第1の試料処理手順を行うステップ、および前記マイクロ流体チップの第2のゾーン中で、前記組織試料に酵素反応を行うステップをさらに含む、項目1から48のいずれか一項に記載の方法。
(項目50)
前記第1の試料処理手順が、包埋材の除去、組織の破壊または細胞溶解を含み、前記酵素反応が、前記核酸の脱架橋、タンパク質の消化または核酸の消化を含む、項目49に記載の方法。
(項目51)
前記第1のゾーンおよび前記第2のゾーンがそれぞれ、37℃より高い温度までそれぞれ加熱される、項目49に記載の方法。
(項目52)
前記第1のゾーンが、前記第1の試料処理手順の間に、約60℃~100℃の温度に加熱され、前記第2のゾーンが、40℃~60℃の温度に加熱される、項目49に記載の方法。
(項目53)
(a)マイクロ流体チップの第1のチャネルに、(i)第1の核酸および第1の汚染物質を含む第1の試料、(ii)第1の終局イオンを含む第1の終局電解質緩衝液であって、前記第1の終局イオンの実効移動度の大きさが、前記第1の核酸の実効移動度の大きさよりも小さい、第1の終局電解質緩衝液、ならびに(iii)第1の先導イオンを含む第1の先導電解質緩衝液であって、前記第1の先導イオンの実効移動度の大きさが、前記第1の核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きい、第1の先導電解質緩衝液を装入するステップ、
(b)前記マイクロ流体チップの第2のチャネルに、(i)第2の核酸および第2の汚染物質を含む第2の試料、(ii)第2の終局イオンを含む第2の終局電解質緩衝液であって、前記第2の終局イオンの大きさが、前記第2の核酸の実効移動度の大きさよりも小さい、第2の終局電解質緩衝液、および(iii)第2の先導イオンを含む第2の先導電解質緩衝液であって、前記第2の先導イオンの実効移動度の大きさが、前記第2の核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きい、第2の先導電解質緩衝液を装入するステップ、ならびに
(c)前記マイクロ流体チップ内に第1の電場を印加して、前記第1のチャネル中で、前記第1の終局イオン、前記第1の核酸および前記第1の先導イオンを用いた等速電気泳動を行い、第2の電場を印加して、前記第2のチャネル中で、前記第2の終局イオン、前記第2の核酸および前記第2の先導イオンを用いた等速電気泳動を行い、これらにより、前記第1の汚染物質から前記第1の核酸を、および前記第2の汚染物質から前記第2の核酸を同時に精製するステップ
を含む、少なくとも2つの異なる試料から核酸を同時に精製する方法。
(項目54)
前記第1の試料および前記第2の試料が、異なる試料タイプである、項目53に記載の方法。
(項目55)
前記第1の核酸および前記第2の核酸が、異なるタイプまたは長さの核酸である、項目53に記載の方法。
(項目56)
前記第1の終局電解質緩衝液または前記第1の先導電解質緩衝液が、溶解剤または組織破壊剤をさらに含む、項目1から53のいずれか一項に記載の方法。
(項目57)
前記溶解剤または前記組織破壊剤が、約12よりも大きなpHを有する溶液、プロテイナーゼ、尿素、チオ尿素および界面活性剤からなる群から選択される1種または複数の作用剤を含む、項目56に記載の方法。
(項目58)
前記第1の試料が溶解した固形組織を含む、項目53から57のいずれか一項に記載の方法。
(項目59)
前記第2の試料が溶解した細胞を含む、項目58に記載の方法。
(項目60)
前記第1の試料が、前記等速電気泳動を行うステップ中に、前記第2の試料と接触しない、項目53から59のいずれか一項に記載の方法。
(項目61)
前記マイクロ流体チップの第3のチャネルに、(i)第3の核酸および第3の汚染物質を含む第3の試料、(ii)第3の終局イオンを含む第3の終局電解質緩衝液であって、前記第3の終局イオンの実効移動度の大きさが、前記第3の核酸の実効移動度の大きさよりも小さい、第3の終局電解質緩衝液、ならびに(iii)第3の先導イオンを含む第3の先導電解質緩衝液であって、前記第3の先導イオンの実効移動度の大きさが、前記第3の核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きい第3の先導電解質緩衝液を装入するステップをさらに含み、前記電場を前記マイクロ流体チップ内に印加して、前記第3のチャネル中、前記第3の終局イオン、前記第3の核酸および前記第3の先導イオンを用いた前記等速電気泳動を行い、これにより、前記第1の汚染物質から前記第1の核酸、前記第2の汚染物質から前記第2の核酸、および前記第3の汚染物質から前記第3の核酸を同時に精製する、項目53から60のいずれか一項に記載の方法。
(項目62)
前記第1および第2の電場が、単一の電極対から発生する、項目53から61のいずれか一項に記載の方法。
(項目63)
前記第1および第2の電場が、異なる電極対から発生する、項目53から62のいずれか一項に記載の方法。
(項目64)
前記第1および第2のチャネルが、独立したセンサーに連結されている、項目63に記載の方法。
(項目65)
前記独立したセンサーからのフィードバックを使用して、前記第1および第2の電場を独立して制御する、項目64に記載の方法。
(項目66)
前記独立したセンサーが電圧を検出し、前記フィードバックを使用して、前記第1および第2のチャネル内の電流を制御する、項目64に記載の方法。
(項目67)
前記核酸がDNAを含む、項目1から66のいずれか一項に記載の方法。
(項目68)
前記核酸がRNAを含む、項目1から66のいずれか一項に記載の方法。
(項目69)
(a)流体デバイスに
(i)固定化細胞、固定化組織または包埋組織を含む試料であって、核酸を含む試料、
(ii)終局電解質を含む終局電解質緩衝液であって、前記終局電解質が前記核酸よりも低い実効移動度を有する、終局電解質緩衝液、および
(iii)先導電解質を含む先導電解質緩衝液であって、前記先導電解質が前記核酸よりも高い実効移動度を有する、先導電解質緩衝液を装入するステップ、ならびに
(b)前記流体デバイスに電場を印加して、前記終局電解質、前記核酸および前記先導電解質を用いた等速電気泳動を行い、これにより、前記試料中の汚染物質から前記核酸を精製するステップ
を含む、試料精製方法。
(項目70)
前記汚染物質が、架橋化核酸、包埋材、化学固定剤、酵素および阻害剤からなる群から選択される、項目69に記載の方法。
(項目71)
前記試料が、前記固定化細胞、前記固定化組織、または前記固定化細胞と前記固定化組織の両方を含む、項目69に記載の方法。
(項目72)
前記試料がホルマリン固定されている、項目69に記載の方法。
(項目73)
前記試料が前記包埋組織を含む、項目69に記載の方法。
(項目74)
前記試料がパラフィンに包埋されている前記組織を含む、項目69に記載の方法。
(項目75)
前記試料がホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)組織試料である、項目69に記載の方法。
(項目76)
前記試料が組織生検体を含む、項目69に記載の方法。
(項目77)
前記試料が切除したホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料である、項目75に記載の方法。
(項目78)
前記核酸の特徴を他の試料に由来する核酸の特徴と比較するステップをさらに含み、前記特徴が、発現レベル、核酸配列、分子量、核酸完全性、核酸純度または核酸の鎖性である、項目69に記載の方法。
(項目79)
前記試料が腫瘍試料である、項目69に記載の方法。
(項目80)
前記終局電解質緩衝液が、約7より大きなpHを有する、項目69に記載の方法。
(項目81)
前記電場を前記印加するステップの前に、少なくとも約1分間の期間、少なくとも約37℃の温度で、前記流体デバイス中で前記組織試料をインキュベートするステップをさらに含む、項目69に記載の方法。
(項目82)
前記温度が約40℃~約80℃である、項目81に記載の方法。
(項目83)
前記期間が、約1分間~約120分間である、項目81に記載の方法。
(項目84)
前記先導電解質緩衝液がプロテイナーゼKを含む、項目60に記載の方法。
(項目85)
前記プロテイナーゼKを使用して、前記核酸からタンパク質架橋を除去するステップをさらに含む、項目84に記載の方法。
(項目86)
前記電場を前記印加するステップの後に、熱を使用して、前記核酸からタンパク質架橋を除去するステップをさらに含む、項目60に記載の方法。
(項目87)
前記流体デバイスの排出用レザーバーから前記精製済み核酸を含む排出溶液を溶出させるステップをさらに含む、項目60に記載の方法。
(項目88)
前記排出溶液中の前記精製済み核酸の濃度が、前記組織試料中の前記核酸の濃度よりも少なくとも約2倍高い、項目87に記載の方法。
(項目89)
前記排出溶液中の架橋化核酸の濃度が、前記組織試料中の前記架橋化核酸の濃度の多くとも約2分の1である、項目87に記載の方法。
(項目90)
前記排出溶液が、約50μLに等しい体積またはそれ未満の体積を有する、項目87に記載の方法。
(項目91)
前記組織試料が、少なくとも約1ngの質量を有する、項目60に記載の方法。
(項目92)
前記組織試料が、25μLより多い体積を有する、項目60に記載の方法。
(項目93)
前記終局電解質が、前記汚染物質より高い実効移動度を有する、項目60に記載の方法。
(項目94)
前記終局電解質が、(i)前記汚染物質よりも大きな実効移動度の大きさを有する第1のイオン、および(ii)前記汚染物質とほぼ同じ、またはそれより小さな実効移動度の大きさを有する第2のイオンを含む、項目60に記載の方法。
(項目95)
前記等速電気泳動を行うステップが、前記組織試料のpHを約7.5までクエンチする、項目60に記載の方法。
(項目96)
前記装入するステップ前に、前記試料に脱パラフィンを行うステップをさらに含む、項目60に記載の方法。
(項目97)
前記核酸の濃度を検出するステップをさらに含む、項目60に記載の方法。
(項目98)
前記濃度が、約1ピコグラム/マイクロリットル(pg/μL)未満であるか、またはそれに等しい、項目88に記載の方法。
(項目99)
(a)流体デバイスに、
(i)溶解した固形組織および核酸を含む組織試料、
(ii)第1の実効移動度を有する終局電解質イオンを含む終局電解質緩衝液であって、前記第1の実効移動度が、前記核酸の実効移動度の大きさよりも小さい大きさを有する、前記終局電解質緩衝液、
(iii)第1の先導電解質用レザーバー中の、第2の実効移動度を有する第1の先導電解質イオンを含む第1の先導電解質緩衝液であって、前記第2の実効移動度が、前記核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きな大きさを有する、前記第1の先導電解質緩衝液、ならびに
(iv)第2の先導電解質用レザーバー中の、第3の実効移動度を有する第2の先導電解質イオンを含む第2の先導電解質緩衝液であって、前記第3の実効移動度が、前記核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きな大きさを有する、前記第2の先導電解質緩衝液を装入するステップであって、前記第1の先導電解質緩衝液が、前記第2の先導電解質緩衝液とは異なる、ステップ
(b)前記終局電解質イオン、前記核酸および前記第1の先導電解質イオンを用いた第1の等速電気泳動を行い、これにより、前記組織試料中の汚染物質から前記核酸を精製するステップ、ならびに
(c)前記終局電解質イオン、前記核酸および前記第2の先導電解質イオンを用いた第2の等速電気泳動を行うステップ
を含む、試料精製方法。
(項目100)
前記第2の等速電気泳動を行うステップが、第1のチャネルから第2のチャネルまでの印加電流を変更するステップを含む、項目99に記載の方法。
(項目101)
前記第1の先導電解質イオンが前記第2の先導電解質イオンと同じであり、前記第1の先導電解質緩衝液中の前記第1の先導電解質イオンの濃度が、前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの濃度とは異なる、項目99または100に記載の方法。
(項目102)
前記第2の実効移動度が、前記第3の実効移動度の前記大きさよりも大きな大きさを有する、項目99、100または101に記載の方法。
(項目103)
前記第1の先導電解質イオンが、前記第2の先導電解質イオンとは異なる、項目99から102のいずれか一項に記載の方法。
(項目104)
前記第1の先導電解質イオンが前記第2の先導電解質イオンと同じであり、前記第1の先導電解質緩衝液中の前記第1の先導電解質イオンの濃度が、前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの濃度と同じであり、前記第1の先導電解質緩衝液が第3の先導電解質イオンを含む、項目99から103のいずれか一項に記載の方法。
(項目105)
前記第1の先導電解質イオンが前記第2の先導電解質イオンと同じであり、前記第1の先導電解質緩衝液中の前記第1の先導電解質イオンの濃度が、前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの濃度と同じであり、前記第2の先導電解質緩衝液が第3の先導電解質イオンを含む、項目99から104のいずれか一項に記載の方法。
(項目106)
前記第2の先導電解質用レザーバー中の前記核酸を収集するステップ、および前記第2の先導電解質用レザーバーから前記核酸を除去するステップをさらに含む、項目99から105のいずれか一項に記載の方法。
(項目107)
前記第1の等速電気泳動を行うステップおよび前記第2の等速電気泳動を行うステップが、単一の電場を印加することにより行われる、項目99から106のいずれか一項に記載の方法。
(項目108)
前記第1の等速電気泳動を行うステップおよび前記第2の等速電気泳動を行うステップが、1つより多い電場を印加することにより行われる、項目99から107のいずれか一項に記載の方法。
(項目109)
前記第2の先導電解質緩衝液中の前記第2の先導電解質イオンの濃度が、50mM未満である、項目99から108のいずれか一項に記載の方法。
(項目110)
前記第2の先導電解質緩衝液が、50mM Tris HClを含む、項目99から108のいずれか一項に記載の方法。
(項目111)
(a)i.第1の流体チャネルと流体連通している第1の試料用レザーバー、
ii.前記第1の流体チャネルと流体連通している第1の緩衝液用レザーバー、および
iii.前記第1のチャネルと流体連通している第2の緩衝液用レザーバーを含むマイクロ流体チップ中の第1の等速電気泳動領域、ならびに
(b)i.第2の流体チャネルと流体連通している第2の試料用レザーバー、
ii.前記第2の流体チャネルと流体連通している第3の緩衝液用レザーバー、および
iii.前記第2のチャネルと流体連通している第4の緩衝液用レザーバーを含む前記マイクロ流体チップ中の第2の等速電気泳動領域
を含む、マイクロ流体デバイスであって、
前記第1の等速電気泳動領域が、前記第2の等速電気泳動領域と流体連通しておらず、前記マイクロ流体デバイスが、前記第1の等速電気泳動領域に電流を印加する第1の電気回路と前記第2の等速電気泳動領域に電流を印加する第2の電気回路とを独立して制御するよう構成されている、マイクロ流体デバイス。
(項目112)
第1の等速電気泳動ゾーンと第2の等速電気泳動ゾーンとの間のリーク速度が、1μl/時未満である、項目111に記載のマイクロ流体デバイス。
(項目113)
前記第1の領域と前記第2の領域との間のリーク電流が1μA未満である、項目111または112に記載のマイクロ流体デバイス。
(項目114)
インピーダンスが、1メガオームより大きい、項目111、112または113に記載のマイクロ流体デバイス。
(項目115)
前記第1の流体チャネルが、100μlより多い液体体積を保持する、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
(項目116)
前記第1の流体チャネルが、前記第1のチャネルの幅の多くとも5分の1である距離の分、前記第2の流体チャネルから離されている、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
(項目117)
前記マイクロ流体デバイスが、前記第2の電気回路と同時に、かつ前記第2の電気回路と独立して、前記第1の電気回路を制御するよう構成されている、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
(項目118)
前記第1のチャネルと流体連通している溶出用レザーバーをさらに含み、温度センサーが前記溶出用レザーバーの5mm以内に配置されている、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
(項目119)
(a)チャネルと流体連通している試料投入用レザーバーを含む界面動電流体デバイスを用意するステップ、
(b)前記試料投入用レザーバーに試料体積を装入するステップ、
(c)前記試料投入用レザーバーに追加体積分を添加することなく、前記試料体積の少なくとも50%を前記試料投入用レザーバーから前記チャネルに移動させるステップ、および
(d)前記チャネルを介してイオン電流を印加するステップ
を含む、方法。
(項目120)
前記移動させるステップが、重力を利用して行われる、項目119に記載の方法。
(項目121)
前記イオン電流が前記チャネルを実質的に通らない、項目119または120に記載の方法。
(項目122)
前記試料体積の前記少なくとも50%が、前記試料体積の少なくとも80%を含む、項目119、120または121に記載の方法。
(項目123)
前記試料体積が核酸を含む、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目124)
前記試料体積が、組織試料またはホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料を含む、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目125)
前記イオン電流を印加するステップが、等速電気泳動を行うことを含む、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目126)
前記試料投入用レザーバーに装入される試料体積の合計が、前記投入用レザーバーの内部体積未満であるか、またはそれに等しい、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目127)
前記試料投入用レザーバーが、テーパー型領域を介して底部領域に接続された上部領域を含み、前記上部領域が第1の直径を有しており、前記底部領域が第2の直径を有しており、前記第1の直径が前記第2の直径よりも少なくとも2倍長いことにより、前記試料投入用レザーバーから前記チャネルに前記試料体積の少なくとも50%を前記移動させるステップが円滑化される、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目128)
前記試料投入用レザーバーに装入される前記試料体積が少なくとも25μlである、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目129)
第1の試料投入用レザーバーであって、テーパー型領域を介して底部領域に接続されている上部領域を含み、前記上部領域は第1の水力内径を有し、前記底部領域は第2の水力内径を有し、前記第1の水力内径は、前記第2の水力内径よりも少なくとも2倍大きく、前記第1の試料投入用レザーバーは、第1のチャネルと流体連通している、第1の試料投入用レザーバー、
前記第1のチャネルと流体連通している第1の緩衝液用レザーバーであって、前記第1の試料用レザーバー中の液体の自由表面が前記第1の緩衝液用レザーバー中の液体に対して無視できる程の緩衝液ヘッド高差を有するよう、前記第1の試料用レザーバーが構成されている、第1の緩衝液用レザーバー、および
前記第1のチャネルと流体連通している第2の緩衝液用レザーバー
を含む、マイクロ流体チップ。
(項目130)
前記第1の水力内径が、約1mm~約15mmの範囲内である、項目129に記載のマイクロ流体チップ。
(項目131)
前記第2の水力内径が、約0.5mm~約5mmの範囲である、項目129または項目130に記載のマイクロ流体チップ。
(項目132)
前記第1の試料用レザーバーが、少なくとも100μlの試料体積を保持するよう構成されている、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップ。
(項目133)
真空が前記マイクロ流体チップに適用されると、前記第1の試料用レザーバーから前記第1のチャネルに前記試料体積の少なくとも50%が移動するよう構成されている、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップ。
(項目134)
前記第1のチャネルに入る試料に等速電気泳動を行うよう構成されている、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体チップ。
(項目135)
(a)細胞または組織を含む生物学的試料を、尿素またはチオ尿素を含む溶液に曝露させて、これにより、前記生物学的試料中の前記細胞または組織を溶解して、細胞溶解物を生成するステップ、
(b)デバイスに前記細胞溶解物を導入するステップ、および
(c)前記デバイスを用いて等速電気泳動を行って、前記細胞溶解物から核酸を単離するステップ
を含む、核酸を抽出する方法。
(項目136)
プロテイナーゼKにより前記試料を消化するステップをさらに含む、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目137)
前記溶液が、尿素およびチオ尿素を含む、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目138)
前記溶液が、約2対1の尿素対チオ尿素の比を含む、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目139)
前記溶液中の前記尿素の濃度が、約4M~約9Mであり、前記溶液中の前記チオ尿素の濃度が、約0.5M~約3.5Mである、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目140)
前記溶液中の前記尿素の濃度が、約6.5M~約7.5Mであり、前記溶液中の前記チオ尿素の濃度が、約1.5M~約2.5Mである、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目141)
前記溶液が、終局電解質イオンもしくは先導電解質イオン、または終局電解質イオンと先導電解質イオンの両方を含む、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目142)
組織試料から高分子量核酸を精製する方法であって、
(a)流体デバイスに、
(i)ゲノムDNAおよび汚染物質を含む細胞試料であって、前記流体デバイスに前記細胞試料を装入する前または後に、前記細胞試料を溶解緩衝液に接触させる、前記細胞試料、
(ii)第1の実効移動度を有する終局電解質イオンを含む、終局電解質緩衝液であって、前記第1の実効移動度が、前記高分子量核酸の実効移動度の大きさよりも小さい大きさを有し、かつ前記汚染物質の大きさよりも大きな大きさを有する前記終局電解質緩衝液、ならびに
(iii)第2の実効移動度を有する第1の先導電解質イオンを含む、第1の先導電解質緩衝液であって、前記第2の実効移動度は、前記高分子量核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きな大きさを有する、第1の先導電解質緩衝液を装入するステップ、
(b)前記終局電解質イオン、前記高分子量核酸および前記第1の先導電解質イオンを用いた等速電気泳動を行い、これにより前記汚染物質から前記高分子量核酸を分離し、等速電気泳動ゾーン中に前記高分子量核酸を富化させるステップ、ならびに
(c)排出用レザーバー中の溶液に前記ゲノムDNAを溶出させるステップであって、前記溶液中の核酸の質量の50%を超える量が、30キロベースよりも大きい、ステップ
を含む、方法。
(項目143)
前記溶解緩衝液が、アルカリ緩衝液を含まない、項目142に記載の方法。
(項目144)
前記溶解緩衝液が、オクチルフェノールエトキシレートを含む、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目145)
前記溶液中の核酸の質量の50%を超える量が、50キロベースより大きい、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目146)
(a)溶解した固形組織を含む組織試料を含む試料投入用レザーバー、第1の先導電解質緩衝液を含む第1の緩衝液用レザーバー、及び終局電解質緩衝液を含む第2の緩衝液用レザーバーと流体連通している第1のチャネルを含む流体デバイスを用意するステップ、
(b)第1の電極を前記第1の緩衝液用レザーバー中の前記第1の先導電解質緩衝液に接触させるステップ、
(c)第2の電極を前記第2の緩衝液用レザーバー中の前記終局電解質緩衝液に接触させるステップ、および
(d)前記流体デバイス内に電場を印加して、等速電気泳動を行うステップであって、前記組織試料と前記第1および第2の電極との間の直接接触なしに前記等速電気泳動を行う、ステップ
を含む、等速電気泳動を行う方法。
(項目147)
前記流体デバイスが、前記第1のチャネルおよび前記第1の緩衝液用レザーバーと流体連通している第3の緩衝液用レザーバーをさらに含み、前記第3の緩衝液用レザーバーが、前記第1の緩衝液用レザーバーよりも低い濃度の前記第1の先導電解質緩衝液を含む、項目146に記載の方法。
(項目148)
前記第3の緩衝液用レザーバーおよび前記第1の緩衝液用レザーバーを、1つまたは複数のキャピラリーバリアを含む第2のチャネルによって接続して、前記第2のチャネル内の圧力駆動流、および記第3の緩衝液用レザーバーと前記第1の緩衝液用レザーバーとの間の圧力駆動流を制限する、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目149)
前記流体デバイスが溶出用レザーバーをさらに含む、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目150)
前記溶出用レザーバーが、第4の緩衝液用レザーバーと流体連通している、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目151)
(a)第1のチャネル、および前記第1のチャネルと流体連通している第1のレザーバーを含むマイクロ流体チップであって、前記第1のチャネルおよび前記第1のレザーバーが、第1の合流点で出会う、マイクロ流体チップ、および
(b)第1の歯を含む機械部材であって、前記第1の歯を介して、前記第1のチャネルに機械圧力をかけて、前記第1のチャネルの少なくとも1つの壁の可塑的変形によって前記第1のチャネルを少なくとも一部閉鎖するように、および前記第1のチャネルと前記第1のレザーバーとの間の流体抵抗を増大するように構成されている、前記機械部材
を含む、マイクロ流体システム。
(項目152)
前記マイクロ流体チップが、前記第1のレザーバーと流体連通している第2のレザーバー、および前記第1のレザーバーと前記第2のレザーバーを接続している第2のチャネルをさらに含み、前記機械部材が、前記第2のチャネルに機械圧力をかけて前記第2のチャネルを可塑的に閉鎖するように、および前記第1のレザーバーと前記第2のレザーバーとの間の流体連通を防止するように構成されている第2の歯をさらに含む、項目151に記載のマイクロ流体システム。
(項目153)
前記第1の歯が、前記第1の合流点に機械的圧力をもたらして、前記第1のチャネルの少なくとも1つの壁の可塑的変形によって前記第1のチャネルを閉鎖するように構成されている、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム。
(項目154)
前記第1の歯が、前記第1のチャネルを加熱するよう構成されている、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム。
(項目155)
前記機械部材が、前記第1のチャネルのヤング弾性率より大きなヤング弾性率を有する材料を含む、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム。
(項目156)
等速電気泳動を行うよう構成されている、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム。
(項目157)
前記第1の歯が、加熱素子と熱的に連結されている、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム。
(項目158)
前記第1の歯が、前記第1のチャネルの前記少なくとも1つの壁のガラス転移温度より高い温度に加熱される、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体システム。
(項目159)
項目151に記載の前記マイクロ流体システムを使用して、可塑的変形により、前記第1のチャネルを少なくとも一部閉鎖し、これにより、前記第1のチャネルと前記第1のレザーバーとの間の流体流動に対する抵抗を増大させるステップを含む、流体システムにおけるプロセスを完了する方法。
(項目160)
前記機械部材の前記第1の歯が、前記第1のチャネルに少なくとも0.25lbの力を加える、項目159に記載の方法。
(項目161)
前記流体システムにおける前記プロセスが、等速電気泳動である、項目159に記載の方法。
(項目162)
(a)マイクロ流体チップの第1のレザーバーに核酸を含む試料を装入するステップ、
(b)前記マイクロ流体チップの第2のレザーバーに終局電解質緩衝液を装入するステップであって、前記終局電解質緩衝液は、前記核酸の実効移動度の大きさよりも小さい大きさを有する実効移動度を有する第1の終局電解質イオンを含む、ステップ、
(c)前記マイクロ流体チップの第3のレザーバーに先導電解質緩衝液を装入するステップであって、前記第3のレザーバーは、第2の実効移動度を有する第1の先導電解質イオンを含み、前記第2の実効移動度が、前記核酸の前記実効移動度の前記大きさよりも大きな大きさを有するステップ、
(d)前記マイクロ流体チップ内に電場を印加して、前記第1の終局電解質イオン、前記核酸および前記第1の先導電解質イオンを用いた等速電気泳動を行い、これにより、前記核酸またはその一部を等速電気泳動ゾーンに閉じ込めるステップ、および
(e)前記等速電気泳動ゾーン中またはその近傍の温度変化を感知するために温度センサーを使用するステップであって、前記温度センサーからのフィードバックを使用して、前記電場を制御するステップ
を含む、核酸を含む試料に等速電気泳動を行う方法。
(項目163)
前記電場の前記制御により、溶出用レザーバー中、または前記マイクロ流体チップの領域中に、前記核酸またはその一部が位置することになる、項目162に記載の方法。
(項目164)
前記温度センサーが、前記溶出用レザーバーの多くとも8mm以内に配置される、項目162または163に記載の方法。
(項目165)
前記温度変化が約0.2℃~5℃の範囲内にある、項目162、163または164に記載の方法。
(項目166)
前記印加された電場が、前記先導電解質および前記終局電解質が、等速電気泳動界面で出会い、前記温度センサーが、前記等速電気泳動界面を感知する、先行する項目のいずれか一項に記載の方法。
(項目167)
(a)i.第1の流体チャネルと流体連通している第1の試料用レザーバー
ii.前記第1の流体チャネルと流体連通している第1、第2および第3の緩衝液用レザーバーであって、前記第1および第2の緩衝液用レザーバーがキャピラリーバリアによって離されている、第1、第2および第3の緩衝液用レザーバー、ならびに
iii.前記第1の流体チャネルと流体連通している溶出用レザーバー
を含む、マイクロ流体チップ中の第1の等速電気泳動領域、
(b)前記第1の等速電気泳動領域内の前記第1の流体チャネルにおける、温度変化を検出するよう構成されているセンサー、ならびに
(c)前記第1の等速電気泳動領域内の前記第1のチャネル内に電流を供給するよう置かれている装置
を含む、マイクロ流体デバイス。
(項目168)
前記センサーが熱的信号を受信すると、前記電流の低下または解除を作動するよう構成されている制御装置をさらに含む、項目167に記載のマイクロ流体デバイス。
(項目169)
前記温度変化が、約0.2℃~5℃の範囲内の温度上昇である、項目167または168に記載のマイクロ流体デバイス。
(項目170)
前記センサーが温度の変化を検出した後に、前記溶出用レザーバー中の核酸の試料を単離するようさらに構成されている、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
(項目171)
前記核酸の前記感知が、前記溶出用レザーバーの多くとも8mm以内に配置されているセンサーにより行われる、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
(項目172)
前記第1のチャネルが、単一センサーを含む、先行する項目のいずれか一項に記載のマイクロ流体デバイス。
(項目173)
(a)項目111に記載の前記マイクロ流体デバイス、項目167に記載の前記マイクロ流体デバイスまたは項目129に記載の前記マイクロ流体チップ、
(b)終局電解質を含む終局電解質緩衝液、および
(c)先導電解質を含む先導電解質緩衝液
を含むキット。
(項目174)
前記終局電解質緩衝液が、異なる実効移動度を有する少なくとも2つの電解質の混合物を含む、項目173に記載のキット。
(項目175)
前記混合物が、(i)核酸よりも小さい実効移動度の大きさ、かつ汚染物質よりも大きい実効移動度の大きさを有する第1の電解質、および(ii)前記汚染物質よりも小さい実効移動度の大きさを有する第2の電解質を含む、項目174に記載のキット。
(項目176)
前記第1の電解質がカプロン酸を含む、項目175に記載のキット。
(項目177)
前記第2の電解質がHEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)を含む、項目175または176に記載のキット。
(項目178)
試料用緩衝液をさらに含み、前記試料用緩衝液が、先導電解質緩衝液、終局電解質緩衝液または尿素を任意の組合せで含む、項目175から177のいずれか一項に記載のキット。
(項目179)
尿素およびチオ尿素を含む試料用緩衝液をさらに含む、項目178に記載のキット。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1A】
図1Aは、試料処理および核酸抽出または精製に関する例示的なプロトコルを示している。
【0063】
【
図1B】
図1Bは、自動化された試料処理および核酸抽出または精製に関する例示的なプロトコルを示している。
【0064】
【
図2A】
図2Aは、汚染物質からDNAおよびRNAを等速電気泳動による分離および精製の例示的な概略図を示す。
【0065】
【
図2B】
図2Bは、パラフィン、ならびにプロテイナーゼを媒介とする組織破壊および核酸の脱架橋に伴う他の考えられる試料の汚染物質からの、核酸の等速電気泳動による分離および精製の例示的な概略図を示す。
【0066】
【
図3】
図3は、典型的な固相カラム抽出キットからの例示的な結果と比較した、流体デバイス中の自動化等速電気泳動によるDNA抽出および精製の例示的な結果を示している。
【0067】
【
図4A】
図4Aは、等速電気泳動を使用した、試料濃度比で混合された、GCリッチおよびATリッチ合成DNAオリゴヌクレオチドの偏りのない(例えば、配列に関する)抽出の例示的な結果を示している。
【0068】
【
図4B】
図4Bは、等速電気泳動を使用した、偏りのない(例えば、サイズまたは分子量に関する)DNA分子量ラダーの精製前および精製後の例示的な結果を示している。2種の固相カラムをベースとする核酸精製方法との比較が示されている。
【0069】
【
図5A】
図5Aは、試料調製ゾーンおよび等速電気泳動精製ゾーンを有するチャネルの例示的な概略図を示す。
【0070】
【
図5B】
図5Bは、
図5A中に示されている、最大8つの試料を同時処理するための、8つの並列な流体チャネルおよびレザーバーを備える、例示的な流体デバイスカートリッジを示す。
【0071】
【
図5C】
図5Cは、
図5Bに示されている流体デバイスカートリッジ用の1つのチャネルおよびその接続したレザーバーの例示的な上部概略図を示しており、該流体デバイスカートリッジ内のチャネルに外部圧または真空を適用するための、ガスポートの使用をさらに例示している。
【0072】
【
図5D】
図5Dは、
図5B中に示されている流体デバイスカートリッジの例示的な側面概略図を示している。
【0073】
【
図5E】
図5Eは、
図5B中に示されている流体デバイスカートリッジの例示的な端面概略図を示している。
【0074】
【
図6A】
図6Aは、流体デバイスカートリッジの例示的な上部概略図を示している。
【0075】
【
図6B】
図6Bは、流体デバイスカートリッジの例示的な側面概略図を示している。
【0076】
【
図6C】
図6Cは、流体デバイスカートリッジの例示的な底部概略図を示している。
【0077】
【
図6D】
図6Dは、流体デバイスカートリッジの三次元の例示的な上部からの全体の概略図を示している。
【0078】
【
図7A】
図7Aは、流体デバイスカートリッジの例示的な上部概略図を示している。
【0079】
【
図7B】
図7Bは、流体デバイスカートリッジの例示的な側面概略図を示している。
【0080】
【
図7C】
図7Cは、流体デバイスカートリッジの例示的な底部概略図を示している。
【0081】
【
図7D】
図7Dは、流体デバイスカートリッジの三次元の例示的な底部からの全体の概略図を示している。
【0082】
【
図8A】
図8Aは、流体デバイスカートリッジの例示的な上部概略図を示している。
【0083】
【
図8B】
図8Bは、流体デバイスカートリッジの例示的な側面概略図を示している。
【0084】
【
図8C】
図8Cは、流体デバイスカートリッジの例示的な底部概略図を示している。
【0085】
【
図8D】
図8Dは、流体デバイスカートリッジの三次元の例示的な底部からの全体の概略図を示している。
【0086】
【
図9A】
図9Aは、
図5B中に示されている8つの並列なチャネルを含む流体デバイスカートリッジの例示的な概略図を示している。
【0087】
【
図9B】
図9Bは、2つの熱制御装置の例示的な概略図を示し、その各々が、
図9Aに示されている8つの並列なチャネルのゾーンと整列している。
【0088】
【
図10A】
図10Aは、キャピラリーバリアを含むことができる、例示的なガス用チャネルを示している。
【0089】
【0090】
【
図11】
図11は、例示的な低損失試料用レザーバーを示している。
【0091】
【
図12A】
図12Aは、圧力を適用して流体デバイスのチャネルを閉鎖するために使用することができる、例示的な機械部材を示している。
【0092】
【0093】
【
図12C】
図12Cは、櫛のような機械部材および流体デバイスのチャネルの整列を示している。
【0094】
【
図13A】
図13Aは、流体デバイスカートリッジでの自動化試料調製および等速電気泳動を行うための例示的な卓上型デバイスを示している。
【0095】
【
図13B】
図13Bは、本明細書において提供される方法を実施するようプログラム化されているか、またはそうでない場合、そのように構成されている、例示的なコンピュータ制御システムを示している。
【0096】
【
図14】
図14は、等速電気泳動を使用する、核酸の滴定系列に関する、蛍光をベースとする測定および定量の例示的な結果を示している。
【0097】
【
図15】
図15は、チャネル/デバイスおよび自動化等速電気泳動に流体の自動化装入を行うための、接続されているレザーバー、非接触式電極(これは、導電度センサーとして使用することができる)およびガスポートを有する、流体用チャネルの例示的な設計の概略図を示している。
【0098】
【
図16】
図16は、実行中のITPチャネルにおける、経時的な電圧測定のグラフを示している。
【0099】
【0100】
【
図18】
図18は、溶出用レザーバー近傍のITPチャネルにおける、経時的な導電度測定の一例を示している。
【0101】
【
図19】
図19は、C4Dセンサー実装の例示的な概略図を示している。
【0102】
【
図20A】
図20Aは、熱探知カメラを使用して撮影した、ITPチャネルの例示的な温度マップを示している。
【0103】
【0104】
【
図21】
図21は、ITP実効中の経時的な温度測定および温度の導関数のグラフを示している。
【0105】
【
図22A】
図22Aは、垂直(または、カラム)なITP設定の例示的な概略図を示している。
【0106】
【
図22B】
図22Bは、DNA ITPバンドにより設定した垂直なITPの例示的な画像を示している。
【0107】
【
図23】
図23は、等速電気泳動を使用した、FFPE試料に由来する架橋化DNAに由来する、増幅可能な(例えば、脱架橋化)DNAの抽出および分離の例示的な画像および対応する蛍光強度トレースを示している。
【0108】
【
図24A】
図24Aは、等速電気泳動を使用した、FFPE試料からのDNA抽出および精製の例示的な画像を示している。
【0109】
【
図24B】
図24Bは、典型的な固相カラム抽出キットからの例示的な結果と比較した、等速電気泳動を使用したFFPE試料からのDNAの抽出および精製のための、定量的PCRによって測定された、例示的なDNA収量を示している。
【0110】
【
図25】
図25Aは、可視化するために、色素を用いて染色された核酸(ヒト細胞に由来するRNA抽出および消化)を装入した、単一チャネルITPチップの画像を示している。
図25Bは、可視化するために、色素を用いて染色された核酸(ヒト細胞に由来するRNA抽出および消化)を装入した、単一チャネルITPチップの画像を示している。
【0111】
【
図26A】
図26Aは、精製中のチップチャネルにおける、RNA ITPバンドの画像を示している。
【0112】
【
図26B】
図26Bは、精製中のチップチャネルにおける、全核酸のITPバンドの画像を示している。
【0113】
【0114】
【0115】
【
図27A】
図27Aは、開始試料における全血液の体積パーセントの関数としての、マウス全血液のカラム(菱形、Qiagen QiaAmp)抽出と比較した、ITP(正方形)に関するDNA収量(ng)の結果を示している。
【0116】
【
図27B】
図27Bは、チップ上の溶解したマウスの全血液のITP精製中のITPバンドにおける全核酸の画像を示している。
【0117】
【
図27C】
図27Cおよび
図27Dは、50体積%の全血液溶解物のITP精製前および精製後の、溶出用チャネルおよびレザーバーからの、試料/先導電解質用チャネルにおける、ヘムの物理的分離を示すITPチップチャネルの白色光と蛍光との重ね合わせ画像を示している。核酸は、溶出用ウェル中で、可視化するために緑色色素により染色されている。
図27Cは、ITP前(チップ中に装入した血液溶解物およびITP緩衝液;溶出用ウェル中には緩衝液のみ)のチップを示している。
図27Dは、ITP後(チップ中に装入した血液溶解物およびITP緩衝液;溶出用ウェル中には精製DNA)のチップを示している。
【
図27D】
図27Cおよび
図27Dは、50体積%の全血液溶解物のITP精製前および精製後の、溶出用チャネルおよびレザーバーからの、試料/先導電解質用チャネルにおける、ヘムの物理的分離を示すITPチップチャネルの白色光と蛍光との重ね合わせ画像を示している。核酸は、溶出用ウェル中で、可視化するために緑色色素により染色されている。
図27Cは、ITP前(チップ中に装入した血液溶解物およびITP緩衝液;溶出用ウェル中には緩衝液のみ)のチップを示している。
図27Dは、ITP後(チップ中に装入した血液溶解物およびITP緩衝液;溶出用ウェル中には精製DNA)のチップを示している。
【0118】
【0119】
【0120】
【
図28】
図28は、固相抽出と比較した、ITPの場合の高分子量DNA精製の結果を示している。
【0121】
【0122】
【
図29B】
図29Bは、各チャネルの溶出用レザーバーに隣接する第2のチャネル閉鎖位置の拡大顕微鏡図を示している。
【0123】
【
図29C】
図29Cは、流体デバイスに適用した力の関数として計算した、閉鎖パーセントを示している。
【0124】
【0125】
【
図30】
図30は、ITP実行中の経時的な電圧測定および電圧の導関数のグラフを示している。
【0126】
【
図31A】
図31Aは、デバイスの試料用チャネル領域中の8つの試料の各々における、集束DNAを有するITPバンドの顕微鏡写真を示している。
【0127】
【
図31B】
図31Bは、経時的な、8つのチャネルのそれぞれに関する、固定電流における独立電圧信号データを示している。
【0128】
【
図31C】
図31Cは、溶出用レザーバー中で溶出された試料に由来する集束DNAを含む同じ8つのITPバンドの顕微鏡写真を示している。
【0129】
【発明を実施するための形態】
【0130】
概略
【0131】
試料調製は、ほとんどすべてのゲノムおよびトランスクリプトーム解析に対する第1のステップであり、依然として、解析変動の主要原因となり得る。試料調製はまた、特に、試料が架橋タンパク質を含有するホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料である場合、手作業集約的となり得る。
【0132】
本開示は、パラフィン包埋試料または化学的固定化試料(例えば、FFPE試料、固形組織を含有する試料)などの、ある方法で処理された試料を含めた、組織および細胞試料からの核酸抽出および精製の効率を改善するための、方法およびデバイスを提供する。本明細書において提供される方法は、先導電解質イオンおよび終局電解質イオンを組み込む方法を使用し、等速電気泳動を行う前に、このような処理された試料のオンチップまたはオフチップ調製の方法を含む。一部の例では、本方法は、試料に等速電気泳動を行う前に、終局電解質緩衝液または先導電解質緩衝液中で、固定化されている固形組織を処理(包埋材の除去、溶解、酵素による破壊)することを含む。本方法はまた、増幅または他の酵素によるアッセイのような下流での処理と適合する試料を生成するために、イオン強度がより小さな第2の先導電解質緩衝液の使用を含むことができる。本明細書において提供されているデバイスおよびシステムは、試料処理チャネル内の温度変化を検出する熱センサーを含んでもよい、並列処理フィーチャおよび自動化フィードバック制御機構を有するマイクロ流体デバイスを含めた、組織から誘導された試料に等速電気泳動を行うのに好適なデバイスを含む。
【0133】
本開示の方法およびデバイスは、試料から、とりわけ、存在量が少ない試料(例えば、100ng未満の核酸)、比較的多い量(例えば、全量が25μlより多い、全量が、50μlより多い、全量が、100μlより多い、またはそれより多い)または固形粒子を含有する液体試料からの核酸回収量の改善を実現することができる。本明細書において提供されている方法およびデバイスはまた、高い再現性、および短鎖核酸に対する偏りの低減を実現することができる。本明細書において提供されているデバイスは、1つのデバイス内での試料調製(例えば、架橋用物質または包埋材の除去)および核酸抽出操作を統合することができる。本開示のデバイスおよび方法はまた、プロセスの自動化との適合、下流でのプロセスとの統合、インライン定量との統合(例えば、単一ピコグラム分割時)、ならびに/または核酸の長さおよび配列分布解析との統合を実現することができる。
【0134】
本明細書において提供される方法は、多くの場合、ある種の試料、とりわけFFPE試料に由来する核酸を抽出するのに好適な条件下で、等速電気泳動を行う方法である。一部の例では、開示されている方法は、実効移動度の大きさが異なる少なくとも2種のイオンを含有する、終局電解質緩衝液を使用する、等速電気泳動を行う方法を含む。本方法はまた、2種の異なる先導電解質緩衝液を使用して、等速電気泳動を行う方法を含むことができ、その1つは、試料の溶出用緩衝液として働くことができる。本方法は、複数の試料のプロセス自動化および並列処理を含むことができる。
【0135】
本開示はまた、緩衝液およびスペーサー化学を使用するプロトコルを含む。これらの緩衝液およびスペーサー化学は、ITPを行うための、複数の化学種の電解質の使用を含むことができる。例えば、終局電解質は、試料中の汚染物質から、非架橋化核酸または架橋化核酸と非架橋化核酸の両方のどちらかを分離すると同時に、架橋化核酸から非架橋化核酸を分離することが可能な、電解質化学種の混合物を含むことができる。
【0136】
本明細書において提供されているデバイスは、複数の様式でITPを行うことが可能な並列試料処理チャネルを備えた射出成形された流体デバイス、および熱的デバイスに接続されている2つまたはそれより多い領域を有するITPデバイスを含む。本開示の技法は、ITPを使用して、抽出したRNAおよびDNAを同時に回収する、精製するおよび集める、オンチップで全抽出核酸量を定量する(例えば、非常に少ない量へのインラインITP支援による濃度、またはインターカレーター性蛍光色素を用いる標識化)、およびロボットによるピペット操作と適合する並列排出用レザーバーへと核酸を下流に送り込むことができる。
【0137】
本開示の技法は、固体支持体に試料物質を結合させないで、試料物質(例えば、核酸)の精製を可能にすることができる。本開示の技法は、液相抽出の使用なしに、試料物質(例えば、核酸)の精製を可能にすることができる。これは、溶解度差に依存しないで、精製を可能にすることができるものである。
【0138】
本開示のデバイスの操作は、自動化、大部分を自動化、または一部を自動化することができる。一部の場合、本開示の方法は、溶液(例えば、尿素および/またはチオ尿素(thourea)を含む、アルカリ溶液、溶解溶液または緩衝溶液)に試料(例えば、FFPE切片)を分注する単一オフチップ混合ステップと、その後のさらなるオンデバイス試料調製(例えば、脱パラフィン、組織破壊および細胞溶解、プロテアーゼ消化、タンパク質による消化、またはタンパク質変性を含めた他の処理、またはヌクレアーゼ消化)、および核酸抽出、精製、富化、インライン定量、およびサイジングまたは分別(例えば、サイズ選択)のために、流体デバイスのレザーバーに試料を装入するステップしか含まない。一部の場合、本開示の方法は、オンデバイス試料調製(例えば、脱パラフィン、組織破壊および細胞溶解、プロテアーゼ消化、タンパク質変性を含めた他の処理、またはヌクレアーゼ消化)、および核酸抽出、精製、富化、インライン定量、およびサイジングまたは分別(例えば、サイズ選別)のために、溶液(例えば、尿素および/またはチオ尿素を含む、アルカリ溶液、溶解溶液または緩衝溶液)をあらかじめ充填した、流体デバイスのレザーバーまたはチャネル(例えば、カートリッジ)に、試料(例えば、FFPE切片または他の組織試料)を分注するステップを含む。一部の場合、本開示の方法は、オフチップでの、試料の組織の破壊および/またはその細胞の溶解、その後のさらなるオンデバイス試料調製(例えば、脱パラフィン、プロテアーゼ消化、またはタンパク質変性を含めた他の処理、またはヌクレアーゼ消化)、および核酸抽出、精製、富化、インライン定量およびサイジングまたは分別(例えば、サイズ選別)のための流体デバイスのレザーバーに、溶解した固形組織および核酸の均質混合物または非均質混合物とすることができる試料を装入するステップを含む。ヌクレアーゼ消化は、DNA不含RNA抽出を行うためのDNA除去、またはRNA不含DNA抽出を行うためのRNA除去を含むことができる。本明細書において提供されている流体デバイスは、卓上システムと共に使用されて、試料からDNAおよびRNAを抽出するための、電場をベースとする方法を自動化することができる。
【0139】
本開示のデバイスは、加熱(例えば、37℃~80℃の温度)、試料調製(例えば、脱パラフィン、組織破壊および細胞溶解)、緩衝液交換、核酸抽出および精製、非架橋化核酸または増幅可能な核酸の富化(例えば、それを分離すること、および架橋化核酸から個別に送達することによる)、および手作業またはロボットによるピペット操作と適合可能なアレイなどの排出用レザーバーへの精製核酸の送達を、オンチップで自動化および統合することができるシステムを含む。例えば、本開示は、標準的なロボットによる自動化に適合可能なマイクロタイタープレートフォーマットにおける8つのチャネルカートリッジ、ならびに緩衝液および他の流体を装入する自動化制御をもたらすことができる統合型卓上制御装置プロトタイプ、温度および電場のデバイスへの適用、および並行した試料の自動化開始および終了実行処理を含む。このシステムは、必要な場合、将来、容易に改変して、より大きな、診断的または臨床検査室における使用(例えば、96ウェル試料フォーマット)のための、高い高速処理化を実現することができる。
【0140】
例えば、
図1Aは、本開示の技法を使用する、試料処理および核酸抽出に関する例示的な方法の図式を示している。試料は101で準備されて、緩衝液、溶解または包埋材の除去(存在する場合)との混合などの、任意の前処理ステップ102が施され得る。次に、試料(および、例えば緩衝液)は、流体デバイス103に装入され得る。次に、包埋材(存在する場合、および前処理の間に既に除去されていない場合)の除去、組織破壊、細胞溶解、タンパク質またはタンパク質による消化および(例えば)ヌクレアーゼ消化などの、試料調製ステップ104が流体デバイスで行われ得る。次に、等速電気泳動105を行い、試料内の汚染物質(例えば、細胞細片、包埋材、架橋化核酸、ホルマリンなどの固定剤、阻害剤、消化または制限酵素などの酵素)から核酸を分離して精製する。架橋化核酸の脱架橋化(例えば、熱またはプロテアーゼ消化による)などの他のステップが、等速電気泳動と同時に行われ得る。等速電気泳動中またはその後に、核酸は検出されて106で定量することができる。一旦、核酸が抽出または精製されると、次に、溶出されて、デバイス107から回収することができる。
【0141】
図1Bは、自動化ITPに関する例示的な処理作業フローを示している。ステップ110において、卓上型デバイスで図形式のユーザーインターフェースを使用するなどのプロトコルを選択することができる。ユーザーインターフェースソフトウェアにより、使用が簡単になるか、または手を使用しない操作が可能になり得る。例えば、ユーザーは、メニュー(例えば、ドロップダウンメニュー)から選択することができる。代替として、デバイスは、行われる予定のプロトコルを表示することができる、試料または流体デバイスチップに関係付けられたバーコード(例えば、光学式バーコード、RFIDチップ)をスキャンすることができる。ステップ111において、機器の蓋は、開けることができる(例えば、手動またはモータによる自動)。電動化した蓋の開口は、ロボットによる実験室の自動化と適合可能である。ステップ112において、ユーザーは、卓上機器にチップ(例えば、流体デバイス)を装入することができる。このチップは、自動化ITP向けのモノリシックな多重チャネルSLAS標準マイクロタイタープレート(MTP)フットプリントを含むことができる。ステップ113において、ITP液体をチップウェルに装入することができる。ITP流体およびユーザーの試料用のレザーバーは、多重チャネルピペット(例えば、9mmピッチのSLAS標準マイクロタイタープレートフォーマット)などにより、装入が容易になるよう設計することができる。レザーバーをITPチャネルに接続するチャネルの幾何学的設計(例えば、キャピラリーバリア)により、操作前の重力による流れまたはチャネルへの液体の湿潤が起きないようにすることができる。これらの構造は、先導電解質/終局電解質インターフェースの確立を含めた、ITPチャネル内の定められた位置で流体を停止させることができ、かつ気泡を起こさない装入が可能になる。一部の場合、操作前に、空圧式駆動を適用して、チャネルに注入することができる。チップ材料は、流体がチャネル内を湿らせる、またはウイッキングするのを防止または抵抗するよう選択することができる(例えば、疎水特性または高い接触角を有するプラスチック)。ユーザーは、チップ上にITP試薬および緩衝液(例えば、5種の異なる流体)を装入することができる。代替として、チップは、事前装入される試薬と一緒に供給することができる。ステップ114において、ユーザーまたはデバイスは、デバイスの蓋を閉じることができる。試料の装入は、チップ上のガスポートまたは空圧式ポートから作動させることができる。湿潤および/または重力による流動を使用して、例えば、能動的な圧力の適用なしに、チャネルに液体を満たすことができる。
【0142】
ステップ115において、機器は、圧力を適用して、チップに流体を装入し、チャネルに注入することができる。ステップ116において、デバイスは、チャネルが適切に準備されたことを確認することができる。例えば、光学式(例えば、反射率)、電気的、圧力および/または流量センサーを使用して、流体がチップ内の正確な位置へ装入されたことを確認することができる。センサーおよびデバイスソフトウェアにより、液体の装入のリアルタイムモニタリングおよび制御が可能になり得る。ITP試薬および緩衝液の装入は、チップに試料を装入する前に行うことができ、その結果、装入に失敗した場合、試料物質は浪費されない。チャネルが適切に注入されていない場合、デバイスは、エラー報告130を行うことができる。ステップ117において、デバイスの蓋を開くことができる。ステップ118において、デバイスに試料を装入することができる。試料の装入は、ユーザーにより手作業で行うことができるか、または実験室の自動化ロボットによるなどの自動化法で行うことができる。他の試料調製ステップも行うことができる。例えば、パラフィン包埋試料(例えば、FFPE)を装入することができ、次に、デバイスは、試料を脱パラフィンするための試料用レザーバー内の温度を制御することができる。ステップ119において、デバイスの蓋を閉じることができる。ステップ120において、デバイスは、自己試験を行うことができる。例えば、オンチップレザーバーとインターフェースで接続しているデバイス電極からの電気的フィードバックを使用して、液体の注入が首尾良く行われたかを自己試験することができる(例えば、気泡検出)。光学的センサーを使用して、液体の注入状態(例えば、液体が指定のキャピラリーバリアに達したか否か)に関するフィードバックが可能となる。本明細書において開示されているものなどの、他の感知機構も使用することができる。デバイスが適切に準備されていないと自己試験が判定した場合、デバイスは、エラー報告131を行うことができる。
【0143】
ステップ121において、ITPに基づく精製を行うことができる。本明細書に記載されているセンサーを使用するフィードバック制御および処理タイミング(例えば、作動)を使用して、ITP精製を制御および/または自動化することができる。デバイスは、精製が首尾良く行われたかを判定することができ、そうでない場合、デバイスはエラー報告132を行うことができる。ステップ122において、例えば、蛍光、UV、または他の光学的検出による、デバイス上のセンサー(例えば、光学的センサー)を使用して、試料を定量することができる。試料サイジングも行うことができる。デバイスが試料が適切に定量されなかったと判定するか、または他の問題を発見した場合、デバイスは、エラー報告133を行うことができる。ステップ123において、導電度の変化を検出することができ、これを使用して、ITP実行の終了のタイミングを表示することができる(例えば、核酸が指定溶出場所またはレザーバーに到達した時)。温度または駆動電圧などの本明細書に記載されている他の検出法を使用して、実行タイミングの終了または他の作動を決定することもできる。ITPプロセスを自動化するために、例えば、温度または電圧センサーを使用して、デバイス内のチャネルに印加された電場を制御することができる。一例として、電場をチャネルに印加して、ITP精製を開始してもよい。感知された電圧変化を使用して、溶出用レザーバーまたはその近傍などの、チャネル内の固定位置に、温度または他の感知の開始を作動させてもよい。閉じ込められた核酸を含むITPゾーンが移動するにつれて、電圧が変わることがある。ITPゾーンが断面積の減少区域などのチャネルフィーチャを通過したことの指標となる変化は、電圧センサーにより感知することができ、例えば、フィードバックを使用し、印加電流の低下によって電場を変えることができる。溶出用レザーバーまたはその近傍において、ITPゾーンが温度センサーを通り過ぎると、温度変化を検出することができ、例えば、センサーからのフィードバックを使用して、ITP実行を終了するために電場を除くことにより電場を制御することができる。ステップ124において、デバイスは、例えば、作動信号に基づいて、実行を終了することができる。ITP実施が終了すると、核酸は、溶出用レザーバーまたは領域内に位置することができるかまたは単離することができる。ステップ125において、デバイスはチャネルを閉鎖することができ、溶出のための一定体積を維持するよう、溶出体積を固定することができる(例えば、溶出体積からピペット操作で取り出す間に、溶出用レザーバーまたは排出用レザーバーに流れないようにする、またはこれを防止することにより)。溶出体積の固定は、容易な使用の一助となり得、溶出した試料物質の濃度を報告する手助けとなり得る。ステップ126において、デバイスの蓋を開くことができる(例えば、ユーザーによりまたは自動)。
【0144】
ステップ127において、精製済み試料をデバイスから抽出することができる。チップおよび/またはデバイスは、本明細書において議論されている通り、所与の溶出量とするよう設計することができる。デバイスからの精製済み物質の回収は、ピペット操作により、または他には、チップから該物質を取り出すことにより行うことができる。代替として、試料抽出は、ITPチップを別の流体チップまたはシステム(例えば、溶出用レザーバーの非存在下で)とインターフェースにより接続することによって行うことができる。次に、次世代シークエンシング(NGS)ライブラリ調製、PCR、ddPCRなどの試料分析、他のシークエンシング操作または他の下流のプロセスなどの、他の流体システムを使用して、精製済み試料物質に他の操作を行うことができる。ステップ128において、デバイスは、試料量および/または試料濃度などの、試料に関する定量的データを報告することができる。デバイスは、測定値(例えば、蛍光信号)を試料定量値に変換するためのアルゴリズムまたは他のソフトウェアを含有することができ、そのデータをユーザーに報告することができる。ステップ129において、このプロセスは終了する。
【0145】
これらの問題は、貴重で回収が困難な、または存在量が少ない(例えば、100ng未満の核酸、または損傷を受けていないまたは非架橋化核酸の存在量が少なく保持されている試料)試料にとって対処するのがとりわけ重要となり得る。このような試料の場合、電流プロトコルは、再現性が欠如する、試料物質の損失をまねく、短鎖または長鎖核酸標的に対する偏りをまねく、核酸標的の配列に対する偏りをまねく、および/または再現性が欠如する恐れがある。このようなプロトコルはまた、プロセス自動化または下流での解析との適合性に欠けることがある。核酸調製に関する電流プロトコルは、フェノール-クロロホルム抽出またはTrizol抽出、および固相抽出(SPE)などの液相抽出(LPE)を含むことができる。SPEタイプの手法は、充填ビーズ、モノリシックな多孔質構造および/または磁気ビーズを含めた構造を使用することができる。一部の場合、LPEおよびSPEのタイプの手法は、処理中に機械的せん断をもたらし得、このことは、長鎖または高分子量核酸の断片化を誘発する、および/またはその収率を低下させる恐れがある。
【0146】
本明細書において提供されている等速電気泳動法およびデバイスは、固形または半固形組織の溶解物から核酸の抽出を行うのにとりわけ良好に適する。固相抽出(SPE)技法は、通常、カラムの表面上の核酸を選択的に吸着させるために、カラムに溶解物試料の全体積をポンプ注入することによって溶解物を処理する。液体-粒子の混合物を含むことがある複雑な溶解物のこのようなポンプ注入は、多孔質カラムにより、核酸抽出の効率を低下させる恐れのある、カラムの詰まりまたはファウリングをもたらし得る。対照的に、本明細書に記載されている等速電気泳動法およびデバイスは、多くの場合、溶解物試料の全体積をカラムにポンプ注入するまたは「ろ過する」ことを含まない。むしろ、複雑な試料溶解物全体に分散している帯電している溶媒和した核酸を、試料の連続液相にまたはこの相から移動させるために、電場を溶解物に印加することができる。核酸は、試料溶解物中の他の溶質、細片または汚染物質よりも、比較的大きな電気泳動による移動度の大きさを含むことがある。試料中の溶質は、比較的低い電気泳動による移動度を有することができ、先導電解質と終局電解質との間の界面に位置する等速電気泳動ゾーンに集中させるにはあまりに低すぎることがある。電場の適用により、核酸を移動させることができる一方、粒子および/または他の組織細片(例えば、細胞細片、非溶解細胞、または細胞を他の細胞に結合させることができる組織)は後に残る。したがって、本明細書において提供されている等速電気泳動法およびデバイスは、SPEにおけるような混合物全部をカラムにより処理する必要なしに、複雑な溶解した固形組織試料から、電荷を帯びた溶媒和している核酸を抽出するのに、良好に適し得る。
【0147】
本明細書で使用する場合、「粒子」とは、試料の連続液相(例えば、水溶液)とは異なる相である、試料混合物または試料溶解混合物の構成成分を指すことができる。粒子は、試料混合物の非液体構成成分であってもよい。粒子は、例えば、懸濁固形粒子、または試料内に懸濁しているコロイド本体とすることができる。このような粒子は、約1ナノメートル(nm)~約1ミリメートル(mm)の範囲の様々な特徴的な長さスケールを有することができる。一部の例では、粒子は、単細胞生物または細胞ではないことがある。
【0148】
本明細書において提供されている等速電気泳動法およびデバイスは、典型的なSPE法と比べて、試料がチャネルを移動するにつれて、ひずみ速度の低下を実現することができる。一部の場合、本明細書において提供されている方法およびデバイスは、約250s-1、500s-1、750s-1、1000s-1、2000s-1、3000s-1、4000s-1、5000s-1、6000s-1、7000s-1、8000s-1、9000s-1または10,000s-1未満のひずみ速度を有する。一部の場合、本明細書において提供されている方法およびデバイスは、約250s-1、500s-1、750s-1、1000s-1、2000s-1、3000s-1、4000s-1、5000s-1、6000s-1、7000s-1、8000s-1、9000s-1または10,000s-1を超えるひずみ速度を有する。一部の場合、本明細書において提供される方法は、遠心分離なしで行うことができる。
【0149】
等速電気泳動化学および操作
【0150】
図2Aは、等速電気泳動(ITP)による核酸精製プロセスの例示的な概略図を示している。試料201、例えば、核酸(DNAおよびRNA)202および汚染物質203を含む溶解した固形組織試料は、終局電解質(TE)204に装入されて、先導電解質(LE)205を含有する等速電気泳動チャネル200に入る。等速電気泳動チャネル210に印加された電場220の影響下では、核酸212は、移動して汚染物質213から離れる。この電場はまた、終局電解質214を、一般に核酸の後にある位置に、チャネルを通って移動させて、先導電解質215を、一般に核酸の前方に、チャネルを通って移動させる。先導電解質の実効移動度の大きさは、核酸の実効移動度の大きさよりも大きく、次に、この核酸の実効移動度の大きさは、汚染物質の実効移動度の大きさよりも大きい終局電解質の実効移動度の大きさよりも大きい。
【0151】
図2Bは、流体デバイス上で等速電気泳動(ITP)を使用し、核酸を脱架橋すると同時に、架橋化核酸および汚染物質(例えば、パラフィン)から脱架橋化核酸を分離するプロセスの例示的な概略図を示している。一部の例では、汚染物質は、架橋化核酸を含んでもよい。組織溶解および最初の脱パラフィンを行うため、パラフィン包埋試料をアルカリ緩衝液中で流体デバイスに装入し、pH約10および約50℃~約80℃の温度で、10~30分間、インキュベートする。インキュベートは、等速電気泳動を行うための電場の印加前または印加中に行うことができる。代替として、試料は、先導電解質緩衝液に装入することができる。インキュベート後、第1の時間点240において、架橋化核酸236およびパラフィン237を含む試料は、終局電解質232を有するITPチャネルに配置している。先導電解質(LE)ゾーン238では、先導電解質231およびプロテイナーゼK酵素233は、ITPチャネルの前方にある。第2の時間点250では、50℃で、ITP推進性のpHクエンチによりpHが低下し、プロテイナーゼK酵素は、架橋化核酸に接触して脱架橋し、非架橋化核酸235を生成して、終局電解質と先導電解質との間のITPゾーン239に集まる。pHの低下(例えば、約10~12から約7(または約6.5~約8.5)の範囲まで)により、酵素活性に適度な環境が供給されて、核酸の化学安定性が改善され得る。第3の時間点260では、プロテイナーゼKは一層多くの核酸を脱架橋し、遊離タンパク質234となり、脱架橋化核酸は、パラフィン、遊離タンパク質および他の汚染物質から上流にさらに移動する。このようなプロセスの操作は、流体デバイスにより、または卓上システムにより、自動化することができる。
【0152】
一部の場合、試料は、等速電気泳動を行うために使用される先導電解質205、231の濃度とは異なる先導電解質205、231の濃度を含む試料用緩衝液に装入されてもよい。一部の場合、試料は、先導電解質215とは異なる第2の先導電解質を含む試料用緩衝液に装入されてもよい。第2の先導電解質は、核酸の実効移動度の大きさよりも大きな実効移動度の大きさを有することができる。第2の先導電解質は、先導電解質215の実効移動度の大きさよりも小さな実効移動度の大きさを有することができる。
【0153】
一部の場合、試料のpHは、等速電気泳動を行うことによりクエンチされてもよい。一部の例では、試料のpHは、約6.5~約8.5の範囲内、例えば、約7または7.5でクエンチされ得る。
【0154】
様々な先導電解質および終局電解質を用いて、ITPを行うことができる。先導電解質は、抽出標的(例えば、核酸)よりも大きな実効移動度の大きさを有するように選択することができ、終局電解質は、抽出標的よりも小さな実効移動度の大きさを有するよう選択することができる。先導電解質および/または終局電解質は、約10mM~約200mMの濃度で存在することができる。先導電解質および/または終局電解質は、約10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mMまたは200mMの濃度で存在することができる。先導電解質および/または終局電解質は、少なくとも約10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mMまたは200mMの濃度で存在することができる。先導電解質および/または終局電解質は、多くとも約10mM、20mM、30mM、40mM、50mM、60mM、70mM、80mM、90mM、100mM、110mM、120mM、130mM、140mM、150mM、160mM、170mM、180mM、190mMまたは200mMの濃度で存在することができる。ITPの具体的な例において使用される先導電解質は、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種またはそれより多い異なるイオン種を含むことができる。ITPの具体的な例において使用される終局電解質は、1種、2種、3種、4種、5種、6種、7種、8種、9種、10種またはそれより多い異なるイオン種を含むことができる。先導電解質および/または終局電解質中の異なるイオン種は、異なる濃度で存在することができる。終局電解質または先導電解質内などの、イオンの異なる濃度は、間隔ゾーンのサイズを操作するよう選択することができる。間隔ゾーンを使用して、タンパク質架橋化核酸から脱架橋化核酸を分離するなどの、別のものから標的とする1つのタイプのものをさらに分離することができる。
【0155】
終局電解質は、実効移動度の異なる大きさを有するイオンの混合物を含むことができる。第1の実効移動度の大きさを有する第1の終局電解質イオン、および第1のイオンの実効移動度の大きさよりも小さな第2の実効移動度の大きさを有する第2の終局電解質イオンを使用すると、タンパク質架橋化核酸から非架橋化核酸を分離すると同時に、汚染物質から両方(または少なくとも脱架橋化核酸)を分離することができる。このような例では、非架橋化核酸は、架橋化核酸よりも大きな実効移動度の大きさを有することができる第1の終局電解質イオンよりも大きな実効移動度の大きさを有することができ、次に、この架橋化核酸は、第2の終局電解質イオンよりも大きな実効移動度の大きさを有することができ、次に、第2の終局電解質イオンは、汚染物質よりも大きな実効移動度の大きさを有することができる。例えば、架橋化核酸および非架橋化核酸は、先導電解質、および第1のイオンとしてカプロン酸および第2のイオンとしてHEPESなどの2種の終局電解質を使用して、等速電気泳動を行うことにより、個別に富化することができる。
【0156】
電解質イオンはまた、酸性度(例えば、pKa)に基づいて選択することができる。特定のpKaを有するイオンは、例えば、ITPチャネルに沿って、pH変化を行うように選択することができる。イオンはまた、下流のプロセス(例えば、PCRなどの酵素プロセスまたは次世代シークエンシングライブラリ調製)との適合性などの電気泳動によらない理由で選択することもできる。例えば、カプロン酸、MOPSおよびHEPESは、良好な下流での酵素適合性を理由に選択することができる。
【0157】
例示的な先導電解質イオンには、以下に限定されないが、塩酸、酢酸、2-クロロイソクロトン酸、サリチル酸、クロロクロトン酸、ニコチン酸、没食子酸、トリクロロ乳酸、酪酸、スルファニル酸、安息香酸、クロトン酸、トリクロロアクリル酸、プロピオン酸、レブリン酸、ソルビン酸、オロチン酸、吉草酸、ピクリン酸、2-ナフタレンスルホン酸(naphtalenesulfonic acid)、サッカリン、ジニトロフェノール、p-トルエンスルホン酸、アスパラギン酸、トリメチルアクリル酸、イソカプロン酸、カプロン酸、オクチルスルホン酸、ニトロフェノール、GABA、カコジル酸、トリメチルピルビン酸(trimetylpyruvic acid)、エチルマレイン酸、エチルフマル酸、トルイル酸、エナント酸、マンデル酸、桂皮酸、クレゾール、グルタミン酸、MES、それらの異性体およびそれらの組合せが含まれる。
【0158】
例示的な終局電解質イオンには、以下に限定されないが、カプリル酸、グルコン酸、バニリン酸、デシルスルホン酸、アスピリン、グルクロン酸、ペラルゴン酸、ベンジルアスパラギン酸、アスコルビン酸、ドデシルスルホン酸、MOPS(3-(N-モルホリノ)プロパンスルホン酸)、ジクロロフェノール、カプロン酸、カプリン酸、チロシン、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)、それらの異性体およびそれらの組合せが含まれる。
【0159】
異なる終局電解質イオンの混合物を使用して、移動度による二段階分離(bracketed separation)(例えば、汚染物質から架橋化核酸、架橋化核酸から非架橋化核酸の分離)、下流でのアッセイとの適合、流体と流体デバイス材料との間の有利な表面エネルギーまたは接触角、緩衝化能および全イオン溶解度を実現することができる。
【0160】
等速電気泳動は、試料のpHを中性またはほぼ中性にクエンチすることができる。局所pH(例えば、ナトリウムイオン(Na+))に影響を及ぼすイオンは、等速電気泳動中に試料ゾーンから置き換えられ、これにより、試料ゾーン中のpHを中性側にシフトすることができる。
【0161】
等速電気泳動は、電圧、電流および場の強度の範囲で行うことができる。例えば、等速電気泳動は、約100V~約1500Vの電圧で行うことができる。等速電気泳動は、約100V、200V、300V、400V、500V、600V、700V、800V、900V、1000V、1100V、1200V、1300V、1400Vまたは15000Vの電圧で行うことができる。等速電気泳動は、少なくとも約100V、200V、300V、400V、500V、600V、700V、800V、900V、1000V、1100V、1200V、1300V、1400Vまたは15000Vの電圧で行うことができる。等速電気泳動は、多くとも約100V、200V、300V、400V、500V、600V、700V、800V、900V、1000V、1100V、1200V、1300V、1400Vまたは15000Vの電圧で行うことができる。等速電気泳動は、約10nA~約10mAの電流で行うことができる。等速電気泳動は、約10nA、20nA、30nA、40nA、50nA、60nA、70nA、80nA、90nA、100nA、200nA、300nA、400nA、500nA、600nA、700nA、800nA、900nA、1mA、2mA、3mA、4mA、5mA、6mA、7mA、8mA、9mAまたは10mAの電流で行うことができる。等速電気泳動は、少なくとも約10nA、20nA、30nA、40nA、50nA、60nA、70nA、80nA、90nA、100nA、200nA、300nA、400nA、500nA、600nA、700nA、800nA、900nA、1mA、2mA、3mA、4mA、5mA、6mA、7mA、8mA、9mAまたは10mAの電流で行うことができる。等速電気泳動は、多くとも約10nA、20nA、30nA、40nA、50nA、60nA、70nA、80nA、90nA、100nA、200nA、300nA、400nA、500nA、600nA、700nA、800nA、900nA、1mA、2mA、3mA、4mA、5mA、6mA、7mA、8mA、9mAまたは10mAの電流で行うことができる。等速電気泳動は、約10V/cm~約100V/cmの場の強度で行うことができる。等速電気泳動は、約10V/cm、15V/cm、20V/cm、25V/cm、30V/cm、35V/cm、40V/cm、45V/cm、50V/cm、55V/cm、60V/cm、65V/cm、70V/cm、75V/cm、80V/cm、85V/cm、90V/cm、95V/cmまたは100V/cmの場の強度で行うことができる。等速電気泳動は、少なくとも約10V/cm、15V/cm、20V/cm、25V/cm、30V/cm、35V/cm、40V/cm、45V/cm、50V/cm、55V/cm、60V/cm、65V/cm、70V/cm、75V/cm、80V/cm、85V/cm、90V/cm、95V/cmまたは100V/cmの場の強度で行うことができる。等速電気泳動は、多くとも約10V/cm、15V/cm、20V/cm、25V/cm、30V/cm、35V/cm、40V/cm、45V/cm、50V/cm、55V/cm、60V/cm、65V/cm、70V/cm、75V/cm、80V/cm、85V/cm、90V/cm、95V/cmまたは100V/cmの場の強度で行うことができる。
【0162】
等速電気泳動を使用して、試料中の核酸を濃縮することができる。試料中の核酸の濃度は、等速電気泳動後に、少なくとも約2倍、5倍、10倍、100倍、1,000倍、10,000倍、100,000倍、1,000,000倍、10,000,000倍、100,000,000倍または1,000,000,000倍、高めることができる。等速電気泳動によって核酸を濃縮するための操作時間は、約5時間、4.5時間、4時間、3.5時間、3時間、2.5時間、2時間、1.5時間、1時間、50分間、40分間、30分間、20分間、10分間、9分間、8分間、7分間、6分間、5分間、4分間、3分間、2分間、1分間、45秒、30秒、20秒、10秒または1秒未満、またはこれらに等しいとすることができる。一部の場合、等速電気泳動を使用して、約2分間未満または約2分間で、1,000,000倍、試料中の核酸の濃度を高めることができる。一部の場合(例えば、25μLの血液溶解物の試料から)、等速電気泳動を使用して、約5分間未満または約5分間で、100,000倍、試料中の核酸の濃度を高めることができる。
【0163】
本開示の技法を使用して、試料中の架橋化核酸の濃度を低下させることができる。試料中の架橋化核酸の濃度は、等速電気泳動後に、多くとも約2分の1、5分の1、10分の1、100分の1、1,000分の1、10,000分の1、100,000分の1、1,000,000分の1、10,000,000分の1、100,000,000分の1または1,000,000,000分の1に低下させることができる。等速電気泳動を使用して、試料中の汚染物質の濃度を低下させることができる。試料中の汚染物質濃度は、等速電気泳動後に、多くとも約2分の1、5分の1、10分の1、100分の1、1,000分の1、10,000分の1、100,000分の1、1,000,000分の1、10,000,000分の1、100,000,000分の1または1,000,000,000分の1に低下させることができる。
【0164】
核酸試料は、約0.1ピコグラム(pg)~約25マイクログラム(μg)を含有することができる。例えば、核酸試料は、約5pg~約5μg、含有することができる。核酸試料は、約0.1pg、0.2pg、0.3pg、0.4pg、0.5pg、0.6pg、0.7pg、0.8pg、0.9pg、1pg、2pg、3pg、4pg、5pg、6pg、7pg、8pg、9pg、10pg、20pg、30pg、40pg、50pg、60pg、70pg、80pg、90pg、100pg、200pg、300pg、400pg、500pg、600pg、700pg、800pg、900pg、1ナノグラム(ng)、2ng、3ng、4ng、5ng、6ng、7ng、8ng、9ng、10ng、20ng、30ng、40ng、50ng、60ng、70ng、80ng、90ng、100ng、200ng、300ng、400ng、500ng、600ng、700ng、800ng、900ng、1μg、2μg、3μg、4μg、5μg、6μg、7μg、8μg、9μg、10μg、11μg、12μg、13μg、14μg、15μg、16μg、17μg、18μg、19μg、20μg、21μg、22μg、23μg、24μgまたは25μgを含有することができる。
【0165】
核酸試料は、デオキシリボ核酸(DNA)、一本鎖DNA、二本鎖DNA、ゲノムDNA、相補性DNA、リボ核酸(RNA)、リボソームRNA、転移RNA、伝達RNA、マイクロRNAなど、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。核酸試料は、少なくとも約0.5、1、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450または500kBまたはそれを超える長さを含むことができる。本開示の技法を使用して、流体デバイスの様々なチャネル中で、異なる試料タイプを抽出することができる。例えば、様々なチャネルを使用して、異なる長さおよび/または異なるタイプの核酸を抽出することができる。
【0166】
一部の例では、核酸試料の特徴は、別の試料に由来する1つまたは複数の核酸と比較することができる。この特徴は、例えば、発現レベル、核酸配列、分子量、核酸完全性、核酸の鎖性または核酸純度とすることができる。
【0167】
核酸試料は、抽出もしくは他の処理の前および/またはそれらの後に、特定の品質となり得る。核酸品質は、以下に限定されないが、RNA完全性番号(RIN)、DNA完全性番号(DIN)、サイズ分布(例えば、電気泳動を使用する)および増幅能(例えば、PCRによる)を含めた様々な指標により評価することができるか、または他には、酵素により処理することができる(例えば、断片化、ライゲーション、a-テーリング、または次世代シークエンシングライブラリ調製のためのハイブリダイゼーション)。本開示の技法を使用して、核酸を抽出して処理し、少なくとも約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9または10.0のRINを有する抽出または処理済み核酸をもたらすことができる。本開示の技法を使用して、核酸を抽出して処理し、多くとも約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9または10.0のRINを有する抽出または処理済み核酸をもたらすことができる。本開示の技法を使用して、核酸を抽出して処理し、少なくとも約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9または10.0のDINを有する抽出または処理済み核酸をもたらすことができる。本開示の技法を使用して、核酸を抽出して処理し、多くとも約1.0、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2.0、2.1、2.2、2.3、2.4、2.5、2.6、2.7、2.8、2.9、3.0、3.1、3.2、3.3、3.4、3.5、3.6、3.7、3.8、3.9、4.0、4.1、4.2、4.3、4.4、4.5、4.6、4.7、4.8、4.9、5.0、5.1、5.2、5.3、5.4、5.5、5.6、5.7、5.8、5.9、6.0、6.1、6.2、6.3、6.4、6.5、6.6、6.7、6.8、6.9、7.0、7.1、7.2、7.3、7.4、7.5、7.6、7.7、7.8、7.9、8.0、8.1、8.2、8.3、8.4、8.5、8.6、8.7、8.8、8.9、9.0、9.1、9.2、9.3、9.4、9.5、9.6、9.7、9.8、9.9または10.0のDINを有する抽出または処理済み核酸をもたらすことができる。本開示の技法を使用して、核酸を抽出して処理し、試料の核酸の質量の少なくとも10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%、95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または99.99%が、少なくとも約0.5、1、2、5、10、20、30、40、50、60、70、80、90、100、150、200、250、300、350、400、450もしくは500kBまたはこれより大きな分子量を有するよう、抽出または処理済み核酸をもたらすことができる。一部の場合、処理済み核酸の質量の約90%~約100%は、約10~約1000bp、約200~約2000bp、または約200~5000bpである。
【0168】
等速電気泳動を使用して、所与の核酸の開始量から、核酸のパーセント収率として特徴付けられる、抽出効率または収率で核酸を抽出することができる。本開示の技法により、少なくとも約10%、15%、20%、25%、30%、35%、40%、45%、50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、96%、97%、98%、99%または99.9%の収率で抽出核酸を得ることができる。本開示の技法は、約10
4ナノグラム(ng)、10
3ng、10
2ng、10
1ng、10
0ng、10
-1ngまたは10
-2ng未満またはそれらを含めて、低い投入量の核酸の場合でさえも、高い収率を実現することができる。
図3は、例えば、核酸の幅広い異なる投入量および源からの例示的な核酸収率を示している。核酸の高い収率および/または低い損失量は、次世代シークエンシングライブラリ調製にとって重要となり得る。核酸の回収は、100%またはそれに近くすることができる。
【0169】
本開示の技法は、配列偏りを少なくまたは全くなしに、核酸を抽出することができる。すなわち、抽出および精製した核酸の配列組成(例えば、GCリッチ核酸とATリッチ核酸との比)は、投入核酸の配列組成に類似しているか、またはそれと同じとすることができる(例えば、
図4Aを参照されたい)。投入核酸の配列組成に由来する抽出核酸の配列組成中の差異は、約20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%または1%未満、またはこれらに等しいものとなり得る。
【0170】
本開示の技法は、長さの偏りを少なく、または全くなしに、核酸を抽出することができる。すなわち、抽出核酸の鎖長分布(例えば、異なるサイズの核酸の割合)は、投入核酸の鎖長分布に類似しているか、またはそれと同じとすることができる(例えば、
図4Bを参照されたい)。投入核酸の鎖長分布に由来する抽出核酸の鎖長分布中の差異は、約20%、15%、10%、5%、4%、3%、2%または1%未満、またはこれらに等しいものとなり得る。例えば、短鎖核酸(例えば、約10~約300bp)、長鎖核酸(例えば、約10kB、20kB、30kB、40kB、50kB、60kB、70kB、80kB、90kB、100kBまたはそれより大きい)、または短鎖核酸と長鎖核酸の両方が、損失または偏りの低下を伴って、抽出することができる。固相カラムは、一部の場合、短鎖および/または長鎖核酸物質の最大100%が失われる可能性がある。本開示の技法は、サイズが単一塩基から数百キロベースまでのヌクレオチドを回収することができる。本開示の技法は、試料中に存在している短鎖および/または長鎖核酸の少なくとも約10%、20%、30%、40%、50%、60%、70%、80%、90%または95%、96%、97%、98%、99%、99.9%または100%を回収することができる。
【0171】
本開示の技法は、試料から汚染物質を除去することができる。汚染物質は、以下に限定されないが、包埋材、細胞細片、細胞外マトリックス構成成分、組織細片、包埋細片、脂質、炭水化物、酵素、ライゲーション副生物、プライマー、非結合プローブまたは結紮物、二価金属、洗剤、保存剤、固定剤、抗凝固剤、コラーゲン繊維およびPCR阻害剤を含むことができる。汚染物質は、試料の組織または細胞、試料に使用された保存剤もしくは包埋材、または試料に行われた以前の調製、反応もしくはアッセイに由来し得る。例えば、制限ヌクレアーゼなどの酵素は、フィンガープリントアッセイ用のDNAの調製、およびその後の消化(例えば、DNアーゼ消化)に使用することができ、DNAは、酵素から分離することができる。
【0172】
試料
【0173】
本開示の技法は、以下に限定されないが、生物学的試料、固形組織、生検体、組織生検体、液体生検体、器官、腫瘍、新しい組織、固形器官、保存組織(例えば、FFPE)、切除したFFPE、新しく凍結した組織、固定化試料、固定化組織、包埋試料、溶解試料、非溶解試料、細胞間結合(例えば、ギャップ結合、密着結合、接着結合)を含む試料、溶解した固形組織および核酸を含む試料、多相試料、不均質液体または溶液(組織、全血液または非溶解細胞懸濁液など)、ゲノムDNAを含む生物学的試料、溶解および非溶解全血液、血漿および血清、口内スワブ、乾燥血痕および他の法医学試料、新しい組織または新しい凍結(FF)組織、血液もしくは組織から培養または収穫した細胞(溶解および非溶解)、固定化細胞、便および体液(例えば、唾液、尿)、あるいはそれらの任意の組合せを含めた、様々なタイプの試料を処理することができる。固形器官の非限定例には、肝臓、膵臓、脳、心臓、胆嚢、結腸、肺および生殖器官が含まれる。試料は、真核生物と原核生物の両方に関する、細胞性核酸および細胞不含核酸を含むことができる。固定化試料は、化学的に固定化または物理的に固定化(例えば、加熱または凍結)することができる。例えば、試料は、ホルマリン、中性緩衝化ホルマリン(NBF)、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒド、グルタルアルデヒド、グリオキサール、塩化水銀、亜鉛塩、Bouin流体、アルコール-ホルマリン-酢酸(AFAまたはFAA)、クエン酸塩-アセトン-ホルマリン(CAF)、アセトン、メタノール、エタノール、Clarke流体、Carnoy流体またはPuchtlerのメタカルンなどの化学固定剤で化学的に固定することができる。包埋試料は、以下に限定されないが、ワックス(例えば、パラフィン)、寒天、ゼラチンまたはプラスチック樹脂を含めた物質に包埋することができる。ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)試料は、本開示の技法を使用して処理することができる。試料は、口内スワブ、血痕および他の法医学試料を含むことができる。試料は、臨床試料、微細針吸引物、生検体、全血液、溶解血液、血清、血漿、尿、細胞培養用溶解物または新しく収穫した細胞(例えば、血液細胞、解離した新しい組織、幹細胞)溶解物、血液細胞、循環細胞(例えば、循環腫瘍細胞(CTC))、血液または他の体液に由来する核酸、および他の試料分類を含むことができる。細胞不含核酸(例えば、cfDNAまたはcfRNA)は、本開示の技法を使用して、非溶解全血液などから回収することができる。多くの場合、細胞不含核酸は、循環細胞不含核酸である。試料は、以下に限定されないが、正常組織、良性新生物、悪性新生物、幹細胞、ヒト組織、動物組織、植物組織、細菌、ウイルスおよび環境源(例えば、水)を含めた、様々な起源に由来することができる。ヒトまたは動物組織は、以下に限定されないが、上皮組織、結合組織(例えば、血液、骨)、筋組織(例えば、平滑筋、筋骨格、心筋)、および神経組織(例えば、脳、脊髄)を含むことができる。
【0174】
試料は、懸濁液中に1つまたは複数の粒子を含むことができる。1つまたは複数の粒子は、コロイド状サイズから目視可能なものまでの範囲とすることができる。1つまたは複数の粒子は、少なくとも約1ナノメートル(nm)、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、950nm、1マイクロメートル(μm)、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、150μm、175μm、200μm、225μm、250μm、275μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μm、600μm、650μm、700μm、750μm、800μm、850μm、900μm、950μmまたは1ミリメートル(mm)のサイズを有することができる。1つまたは複数の粒子は、多くとも約1ナノメートル(nm)、10nm、20nm、30nm、40nm、50nm、60nm、70nm、80nm、90nm、100nm、150nm、200nm、250nm、300nm、350nm、400nm、450nm、500nm、600nm、700nm、800nm、900nm、950nm、1マイクロメートル(μm)、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、60μm、70μm、80μm、90μm、100μm、150μm、175μm、200μm、225μm、250μm、275μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μm、600μm、650μm、700μm、750μm、800μm、850μm、900μm、950μmまたは1ミリメートル(mm)のサイズを有することができる。1つまたは複数の粒子は、同じサイズまたは異なるサイズとすることができる。試料は、例えば、サイズが1nm~500μmの範囲の複数の粒子を含んでもよい。
【0175】
様々な体積の試料が、流体デバイス(例えば、核酸を抽出および精製するため)上で処理することができる。例えば、試料体積(緩衝液を含むまたは含まない)は、少なくとも、約1ナノリットル(nL)、10nL、20nL、50nL、100nL、200nL、500nL、1マイクロリットル(μL)、10μL、20μL、30μL、40μL、50μL、60μL、70μL、80μL、90μL、100μL、150μL、175μL、200μL、225μL、250μL、275μL、300μL、350μL、400μL、450μL、500μL、600μL、700μL、800μL、900μL、1ミリリットル(mL)、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mLまたは10mLとすることができる。試料体積(緩衝液を含むまたは含まない)は、多くとも、約1ナノリットル(nL)、10nL、20nL、50nL、100nL、200nL、500nL、1マイクロリットル(μL)、10μL、20μL、30μL、40μL、50μL、60μL、70μL、80μL、90μL、100μL、200μL、300μL、400μL、500μL、600μL、700μL、800μL、900μL、1ミリリットル(mL)、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mLまたは10mLとすることができる。一部の場合、試料体積は、約1nL~約10nLとすることができる。試料体積(緩衝液を含むまたは含まない)は、少なくとも、約1ナノリットル(nL)、10nL、20nL、50nL、100nL、200nL、500nL、1マイクロリットル(μL)、10μL、20μL、30μL、40μL、50μL、60μL、70μL、80μL、90μL、100μL、200μL、300μL、400μL、500μL、600μL、700μL、800μL、900μL、1ミリリットル(mL)、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mLまたは10mLとすることができる。一部の場合、試料体積は、約1nL~約10nLとすることができる。
【0176】
様々な数の細胞を含む試料が、流体デバイス(例えば、核酸を抽出および精製するため)上で処理することができる。例えば、試料は、約20,000個の細胞、15,000個の細胞、10,000個の細胞、9,000個の細胞、8,000個の細胞、7,000個の細胞、6,000個の細胞、5,000個の細胞、4,500個の細胞、4,000個の細胞、3,500個の細胞、3,000個の細胞、2,500個の細胞、2,000個の細胞、1,500個の細胞、1,000個の細胞、900個の細胞、800個の細胞、700個の細胞、600個の細胞、500個の細胞、400個の細胞、300個の細胞、200個の細胞、100個の細胞、90個の細胞、80個の細胞、70個の細胞、60個の細胞、50個の細胞、40個の細胞、30個の細胞、20個の細胞、10個の細胞、5個の細胞、2個の細胞または1個細胞未満、またはそれらに等しく含有することができる。一部の場合、試料は、少なくとも約10,000,000個の細胞、5,000,000個の細胞、1,000,000個の細胞、500,000個の細胞、100,000個の細胞、50,000個の細胞、20,000個の細胞、15,000個の細胞、10,000個の細胞、9,000個の細胞、8,000個の細胞、7,000個の細胞、6,000個の細胞、5,000個の細胞、4,500個の細胞、4,000個の細胞、3,500個の細胞、3,000個の細胞、2,500個の細胞、2,000個の細胞、1,500個の細胞、1,000個の細胞、900個の細胞、800個の細胞、700個の細胞、600個の細胞、500個の細胞、400個の細胞、300個の細胞、200個の細胞または100個の細胞を含有する。
【0177】
様々な質量の試料が、流体デバイス(例えば、核酸を抽出および精製するため)上で処理することができる。例えば、試料は、約0.001ミリグラム(mg)~約10mgの組織を含有することができる。試料は、多くとも、約0.001mg、0.002mg、0.003mg、0.004mg、0.005mg、0.006mg、0.007mg、0.008mg、0.009mg、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mgまたは10mgの組織を含有することができる。試料は、少なくとも、約0.001mg、0.002mg、0.003mg、0.004mg、0.005mg、0.006mg、0.007mg、0.008mg、0.009mg、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mgまたは10mgの組織を含有することができる。試料は、約0.001mg、0.002mg、0.003mg、0.004mg、0.005mg、0.006mg、0.007mg、0.008mg、0.009mg、0.01mg、0.02mg、0.03mg、0.04mg、0.05mg、0.06mg、0.07mg、0.08mg、0.09mg、0.1mg、0.2mg、0.3mg、0.4mg、0.5mg、0.6mg、0.7mg、0.8mg、0.9mg、1mg、2mg、3mg、4mg、5mg、6mg、7mg、8mg、9mgまたは10mgの組織を含有することができる。
【0178】
様々な量の核酸を含む試料が、流体デバイス(例えば、核酸を抽出および精製するため)上で処理することができる。例えば、試料は、約1マイクログラム(1μg)、100ナノグラム(ng)、10ng、1ng、100ピコグラム(pg)、10pgまたは1pg未満またはそれらに等しい核酸を含有することができる。一部の場合、試料は、約1マイクログラム(1μg)、100ナノグラム(ng)、10ng、1ng、100ピコグラム(pg)、10pgまたは1pgより多く、またはそれらに等しい核酸を含有することができる。
【0179】
試料は、終局電解質または先導電解質を含む緩衝液に装入することができる。試料は、ITPを行うために使用される先導電解質とは異なる第2の先導電解質を含む緩衝液に装入することができる。試料は、アルカリ緩衝水溶液または中性緩衝水溶液などの、緩衝液に装入することができる。例示的なアルカリ溶液または緩衝液(例えば、DNA抽出の場合)は、約10~13のpHにおいて、30~120mMのNaOH(一部の場合、40~80mM NaOH)を含むことができる(一部の場合、少なくとも1つの付加的な構成成分を用いる)。一部の例では、試料がチップ上に装入される前に、アルカリ溶液または緩衝液を用いた処理によって溶解される場合、この溶解試料は、続いて、等速電気泳動を行う前に、酸性溶液または緩衝液を加えることによりクエンチされて、約7.5~約8.5の範囲内の溶解試料のpHにすることができる。例示的な水性緩衝液(例えば、DNAまたはRNA抽出の場合)は、少なくとも1つの追加の構成成分と共に、2~150mMのTris-HCl(約7~約8のpH)またはBisTris-HCl(約5.8~約7.3のpH)を含むことができる。緩衝液中で使用されるさらなる構成成分は、非イオン性界面活性剤または洗剤、イオン性または双性イオン性界面活性剤または洗剤、カオトロピック剤、ジスルフィド結合還元剤、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、および核酸を抽出、精製、富化または他には単離するため、核酸を消化、変性、破壊もしくは分解する他の添加物または構成成分を含むことができる。
【0180】
非イオン性界面活性剤または洗剤は、以下に限定されないが、以下のクラス:オクチルフェノールエトキシレート、ポリソルベート、ポロキサマーまたはポリオキシエチレンからの界面活性剤を含むことができる。オクチルフェノールエトキシレート界面活性剤は、以下に限定されないが、分岐状オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(IGEPAL CA-630)、t-オクチルフェノキシポリエトキシエタノール(Triton(商標)X-100)、または芳香族炭化水素親油性基もしくは疎水性基を有する他のポリエチレンオキシド鎖を含むことができる。ポリソルベート界面活性剤は、以下に限定されないが、モノラウリン酸ポリエチレングリコールソルビタン(Tween(登録商標)20)、モノオレイン酸ポリエチレングリコールソルビタン(Tween(登録商標)80)またはモノオレイン酸ソルビタン(Span(登録商標)80)を含むことができる。ポロキサマー界面活性剤(すなわち、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドをベースとするブロックコポリマー)は、以下に限定されないが、ポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー(Pluronic(登録商標)F-68)またはポリエチレン-ポリプロピレングリコールブロックコポリマー(Pluronic(登録商標)F-127)を含むことができる。ポリオキシエチレン界面活性剤は、以下に限定されないが、ノニルフェノキシポリエトキシルエタノール(NP-40)を含むことができる。
【0181】
非イオン性界面活性剤または洗剤は、以下に限定されないが、IGEPAL(登録商標)(例えば、IGEPAL(登録商標)CA-630)、Triton(商標)X-100、Tween(登録商標)20、Tween(登録商標)80、NP-40、他のブロックコポリマー(Pluronic(登録商標)(例えば、F-68またはF-127)を含む)、Span(登録商標)80、およびペグ化ポリマーまたはコポリマーを含むことができる。非イオン性界面活性剤または洗剤を使用して、チャネル壁への生物学的分子の吸着を低減もしくは防止する、または流体デバイスへの試料の装入を制御するため、流体の湿潤特性および/もしくは表面張力特性を制御することができる。非イオン性界面活性剤または洗剤は、約0.0005~5%(v/vまたはw/v)の濃度で存在することができる。例えば、IGEPAL CA-630は、約0.05~0.5%v/vで使用することができる。イオン性界面活性剤または洗剤は、以下に限定されないが、ドデシル硫酸ナトリウム(例えば、0.01~2%w/v)、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム(例えば、0.01~2%w/v)、コレステリル硫酸ナトリウム(例えば、0.01%~2%w/v)およびデオキシコール酸ナトリウム(例えば、約10~1000mM)を含むことができる。カオトロピック剤は、以下に限定されないが、尿素(例えば、約0.5~9.5M、または一部の場合、5~9.5M)、チオ尿素、ブタノール、エタノール、塩化グアニジニウム、過塩素酸リチウム、酢酸リチウム、塩化リチウム、塩化マグネシウム、フェノールおよびプロパノールを含むことができる。例えば、RNAまたはDNA抽出のどちらか一方の場合、また全核酸を抽出する場合、5~50mM Tris-HCl(一部の場合、10~20mM Tris-HCl)緩衝溶液中で、7.0Mの尿素および2.0Mのチオ尿素を使用することができる。尿素とチオ尿素との比は、少なくとも約1:1、1.5:1、2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1または8:1とすることができる。ジスルフィド結合の還元剤は、以下に限定されないが、DTT(例えば、約0.1~40mM、または一部の場合、約10mM)およびベータメルカプトエタノール(例えば、約0.5~2%、または一部の場合、約1%)を含むことができる。プロテアーゼは、以下に限定されないが、プロテイナーゼK、プロテアーゼ、エンドプロテイナーゼ(例えば、トリプシン、LysC、GluC、AspN)、ペプチダーゼ、ペプシンおよびパパインを含むことができる。ヌクレアーゼは、以下に限定されないが、DNアーゼI(例えば、DNA不含RNA抽出物を調製するため)を含めたDNアーゼ、およびRNアーゼA、RNアーゼTまたはそれらの組合せなどのRNアーゼ(例えば、RNA不含DNA抽出物を調製するため)などの非特異的な核酸消化酵素を含むことができる。ヌクレアーゼはまた、特定の核酸配列で切断することができる、および予測可能な断片サイズおよび断片サイズ分布を生成することができる特異的な核酸消化酵素(例えば、制限酵素)を含むことができる。一部の場合、本明細書において提供されている1つまたは複数の方法または処理は、ヌクレアーゼを使用しないで、DNアーゼを使用しないで、またはRNアーゼを使用しないで行われる。例えば、本明細書において提供される方法は、DNアーゼを使用しないRNA抽出を含む。
【0182】
制限酵素は、以下に限定されないが、タイプ1~タイプVの制限酵素、BamHI、EcoP15I、EcoRI、EcoRII、EcoRV、HaeIII、HgaI、HindIII、HinFI、KpnI、NotI、PstI、PvuII、SacI、SalI、SmaI、SpeI、SphI、XbaIおよびStuIを含むことができる。ヌクレアーゼは、50~400μg/mLを含む濃度で使用することができる。ヌクレアーゼ消化は、約20℃~約37℃を含む温度で行うことができる。トランスポサーゼ、リガーゼ、ポリメラーゼおよびホスファターゼなどの他の核酸改変酵素を使用することができる。リゾチームなどの他のタンパク質またはポリヌクレオチド消化剤または分解剤を使用することができる。
【0183】
流体デバイスに装入する前に、試料に、様々な程度の前処理を施すことができる。一部の場合、試料は、流体デバイスに装入する前に、緩衝液に単に装入することができ、他の任意の必要なまたは所望の試料調製ステップをデバイス上で行うことができる。他の場合では、試料は、溶液または緩衝液などの処理用流体をあらかじめ充填した試料用レザーバーに加えることができる。他の場合では、流体デバイスに装入する前に、試料に包埋材の除去、組織破壊、細胞溶解または消化を施すことができる。一例では、試料は、流体デバイスに装入する前に、脱パラフィンされ、核酸の脱架橋を流体デバイス上で行う。別の例では、試料は、流体デバイスに装入する前に、脱パラフィンされて破壊され、溶解され、場合により、核酸の脱架橋を流体デバイスで行う。別の例では、試料は、流体デバイスに装入する前に、脱パラフィンされ、組織破壊および細胞溶解が流体デバイス上で行われる。別の例では、試料は流体デバイスに装入され、脱パラフィン、組織破壊、細胞溶解、および核酸の脱架橋はすべて、流体デバイス上で行われる。試料調製ステップは、本開示でさらに議論される。
【0184】
試料調製
【0185】
試料は、等速電気泳動前に調製することができる。試料調製は、以下に限定されないが、包埋材の除去、組織破壊、細胞溶解、タンパク質の消化、核酸架橋の解除、等温酵素プロセス、酵素増幅、酵素消化、細胞間結合の破壊、細胞外マトリックスの破壊、結合組織の破壊およびそれらの組合せを含むステップを含むことができる。試料調製は、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)または他の核酸増幅、目的の物質(例えば、細胞、核酸)の単離または精製、プローブハイブリダイゼーションおよび抗体ハイブリダイゼーション(例えば、抗体のヌクレオソームへのハイブリダイゼーション)などの技法を含むことができる。一部の場合、試料は、さらなる分析のために、試料に由来する細胞から物質の一部を単離することにより調製することができる。例えば、循環腫瘍細胞は、フローサイトメータまたは磁化カラムなどの細胞選別デバイスを使用して、細胞の不均質集団から単離することができる。別の例では、末梢血液リンパ球(PBL)または末梢血単核球細胞(PBMC)は、血液試料から単離することができる。試料調製は、オンデバイスまたはオフデバイスで行うことができる。一部の場合、一部の試料調製ステップは、オフデバイスで行われ、次に、試料は、さらなる試料調製ステップが行われる流体デバイスに装入される。
【0186】
包埋試料中の生物学的物質(例えば、細胞、組織、核酸)は、包埋材から取り出すことができる。例えば、パラフィン包埋試料は脱パラフィンされ得る。包埋材の除去は、以下に限定されないが、加熱処理、化学的処理(例えば、酸または塩基)、酵素処理およびそれらの組合せを含む技法を使用して行うことができる。脱パラフィンは、試料の化学的処理によって、試料を熱処理することによって、試料の酵素処理によって、または他の方法によって行うことができる。例えば、脱パラフィンは、中性緩衝液または多少酸性の緩衝液(例えば、pH約5.5まで低下)、または多少塩基性(最大でpH約9)またはアルカリ溶液(例えば、pH約12~約13)の存在下、高温(例えば、約50℃~約80℃)で行うことができる。包埋材の除去は、オフデバイスまたはオンデバイスとすることができる。一例において、包埋試料は、容器中、高温でインキュベートし、続いて、流体デバイスに装入することができる。別の例では、包埋試料は流体デバイスに装入して、デバイス上で、例えばチャネルまたはレザーバー中で、高温でインキュベートすることができる。
【0187】
包埋材の除去は、加熱処理によって行うことができる。包埋材を除去するためのインキュベートは、少なくとも約35℃、37℃、40℃、45℃、50℃、55℃、60℃、65℃、70℃、75℃、80℃、85℃、90℃、95℃、96℃、97℃、98℃、99℃、99.5℃または100℃の温度で行うことができる。包埋材を除去するためのインキュベートは、約40℃~約80℃、約50℃~約80℃、約50℃~約99.9℃または約95~約99.5℃の温度で行うことができる。包埋材を除去するためのインキュベートは、少なくとも、約1分間、2分間、3分間、4分間、5分間、6分間、7分間、8分間、9分間、10分間、15分間、20分間、25分間、30分間、35分間、40分間、45分間、50分間、55分間、60分間、65分間、70分間、75分間、80分間、85分間、90分間、95分間、100分間、105分間、110分間、115分間または120分間の期間、行うことができる。包埋材を除去するためのインキュベートは、約1分間~約20分間、約1分間~約30分間、約1分間~約60分間、約1分間~約120分間または約5分間~約20分間の期間、行うことができる。包埋材を除去するためのインキュベートは、例えば、少なくとも約1分間の期間、少なくとも約37℃の温度で行うことができる。包埋材を除去するためのインキュベートは、アルカリ緩衝液または中性緩衝液(例えば、溶解緩衝液)の存在下で行うことができる。アルカリ緩衝液(例えば、溶解緩衝液)は、少なくとも、約8.5、9.0、9.5、10.0、10.5、11.0、11.5、12.0、12.5、13.0または13.5のpHを有することができる。中性緩衝液は、約7.0(例えば、約7~約8)のpHを有することができる。
【0188】
組織または細胞は、分離、精製または抽出のために、破壊または溶解されて、核酸を放出することができる。組織破壊または細胞溶解は、以下に限定されないが、機械応力、音波照射、電気穿孔法、浸透圧、化学的処理(例えば、酸または塩基)、酵素処理、加熱処理およびそれらの組合せを含む技法を使用して行うことができる。例えば、圧力を使用して、機械的に組織を破壊するため、または細胞を溶解するための構造体(例えば、チャネル、フリットもしくは多孔質樹脂などの樹脂、またはガラス材料)により組織に駆動することができる。一部の場合、終局電解質緩衝液は、1種または複数の組織破壊剤および/または細胞溶解剤を含むことができる。一部の場合、先導電解質緩衝液は、1種または複数の組織破壊剤および/または細胞溶解剤を含むことができる。一部の場合、包埋材の除去は、組織破壊または細胞溶解と同じ処理によって達成することができる。例えば、高温(例えば、約30℃~約80℃、約50℃~約80℃または約30℃~約65℃)でのインキュベートにより、包埋材の除去、組織破壊および細胞溶解を達成することができる。組織破壊または細胞溶解は、オフデバイスまたはオンデバイスで行うことができる。一例において、組織試料は、容器内で破壊され、続いて、流体デバイスに装入される。別の例では、流体デバイスに以前に装入された組織試料が、デバイスで破壊される。
【0189】
組織または細胞を含む試料は、等速電気泳動と適合性のある溶解溶液または緩衝液を使用して、流体デバイスに装入する前またはその後に溶解することができる。等速電気泳動と適合性の溶解緩衝液は、非イオン性界面活性剤または洗剤、イオン性または双性イオン性界面活性剤または洗剤、カオトロピック剤、ジスルフィド結合還元剤、プロテアーゼ、ヌクレアーゼ、および核酸を抽出、精製、富化(濃縮)または他の方法で単離するため、核酸を消化、変性、破壊もしくは分解する他の添加物または構成成分を含むことができる。一部の場合、溶解緩衝液は、アルカリ緩衝液を含んでもよい。一部の場合、溶解緩衝液は、アルカリ緩衝液を含まなくてもよい。例示的な溶解緩衝液は、本明細書に記載されている通り、0.5M~9.5M、4M~9Mまたは6.5M~7Mの尿素を含むことができる。例示的な溶解緩衝液は、本明細書に記載されている通り、0.5M~3.5Mまたは1.5M~2.5Mのチオ尿素を含むことができる。例示的な溶解緩衝液は、本明細書に記載されている非イオン性界面活性剤と共に、0.5~9.5Mの尿素およびチオ尿素、例えば、7Mの尿素および2Mのチオ尿素を含むことができる。尿素を単独で、またはチオ尿素と組み合わせて使用すると、核酸精製のための細胞を溶解することができる。組み合わせる場合、尿素およびチオ尿素は、相乗的に作用して細胞を溶解することができ、核酸精製のための電荷を帯びていない等速電気泳動適合性緩衝液を供給することができる。
【0190】
例示的な溶解緩衝液は、本明細書に記載されている0.05~0.5%v/vのIGEPAL CA-630などの非イオン性界面活性剤を含むことができる。一部の場合、溶解緩衝液は、1つまたは複数の終局電解質を含むことができる。一部の場合、溶解緩衝液は、本明細書に記載されている組織破壊または細胞溶解用の添加物を含む終局電解質緩衝液を含むことができる。一部の場合、溶解緩衝液は、1つまたは複数の先導電解質を含むことができる。一部の場合、溶解緩衝液は、本明細書に記載されている組織破壊または細胞溶解用の添加物を含む先導電解質緩衝液を含むことができる。一部の場合、溶解緩衝液は、1つまたは複数の先導電解質(leading electrolye)、および1つまたは複数の終局電解質を含むことができる。一部の場合、溶解緩衝液は、本明細書に記載されている組織破壊または細胞溶解用の添加物を含む、1つまたは複数の先導電解質および1つまたは複数の終局電解質を含むことができる。
【0191】
一部の場合、本明細書における方法または処理は、溶解反応中に、DNAおよび/またはRNAの機械的破壊を最小化する溶解緩衝液を使用して、細胞または組織試料を溶解することを含むことができる。例えば、細胞または組織は、HCl(例えば、1mM、5mM、10mM HCl)および非イオン性界面活性剤を含む、Tris(例えば、5mM、10mM、20mM、30mM Tris)を含有する緩衝溶液中に溶解することができる。非イオン性洗剤(例えば、IGEPAL CA-630)は、溶解緩衝液中、約1%、約2%、約3%、約4%またはそれより多く、または約1%未満で存在することができる。細胞または組織は、反転および低速(自動化ピペット)などにより穏やかに混合することによって、溶解緩衝液中に溶解することができる。プロテイナーゼKなどの酵素は、一部の場合、溶解物または溶解緩衝液中に含まれていることがある。一部の場合、溶解は、遠心分離なしに行われる。一部の場合、遠心分離は、溶解方法で使用される。溶解物は、高分子量DNA断片などの所望の分析対象を精製するため、等速電気泳動デバイスに導入することができる。
【0192】
試料中のタンパク質は、例えば、プロテアーゼによる酵素消化により消化され得る。プロテアーゼは、以下に限定されないが、プロテイナーゼK、プロテアーゼ、エンドプロテイナーゼ(例えば、トリプシン、LysC、GluC、AspN)、ペプチダーゼ、ペプシンおよびパパインを含むことができる。リゾチームなどの他のタンパク質またはポリヌクレオチド消化または分解剤を使用することができる。タンパク質の消化は、架橋化核酸から架橋タンパク質を除去して、架橋化核酸を非架橋化核酸に変換することができる。タンパク質の消化は、室温または本明細書に記載されている高温(例えば、約25℃より高い)で行うことができる。
【0193】
試料体積がレザーバーを通過してチャネルに入り、20%未満の試料体積がレザーバーに残るよう、試料はデバイス(例えば、少なくとも1つのチャネルに接続されている少なくとも1つのレザーバーを備えた界面動電デバイスまたはシステム)で処理され得、次いで、イオン電流がチャネル中の試料体積に印加され得る。イオン電流は、実質的にチャネルを通過し得ない。一部の場合、50%、45%、40%、35%、30%、25%、20%、19%、18%、17%、16%、15%、14%、13%、12%、11%、10%、9%、8%、7%、6%、5%、4%、3%、2%または1%未満の試料体積が、レザーバーに残る。
【0194】
レザーバーを通過してチャネルに入る試料体積が、レザーバーに装入された試料体積の少なくとも50%となるよう、試料はデバイス(例えば、少なくとも1つのチャネルに接続されている少なくとも1つのレザーバーを備えた界面動電デバイスまたはシステム)で処理され得、次いで、イオン電流がチャネル中の試料体積に印加され得る。一部の場合、試料体積の少なくとも50%、55%、60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、99%またはそれより多くが、レザーバーからチャネルに移動される。一部の例では、レザーバーに装入された全体積は、レザーバーの内部体積未満であるか、またはそれに等しい。イオン電流は、実質的にチャネルを通過し得ない。一部の場合、イオン電流の印加は、等速電気泳動を行うことを含む。
【0195】
等速電気泳動デバイス
【0196】
等速電気泳動および/または試料調製(例えば、脱パラフィン、消化、溶解)は、流体デバイス、例えばマイクロ流体チップ中で行うことができる。例えば、
図5Aは、試料導入口501および終局電解質用レザーバー502を有する試料調製(例えば、脱パラフィン)ゾーン500、先導電解質用レザーバー511を有する精製(例えば、等速電気泳動)ゾーン510、および溶出排出口520を有するチャネルの概略図を示している。キャピラリーバリアは、電圧を印加する前に、試料流体と先導電解質緩衝液との間に界面を設けることができる。キャピラリーバリアは、試料流体および終局電解質緩衝液の混合または圧力駆動流を制限する、低減するまたは防止するために、試料調製ゾーン500と終局電解質用レザーバー502との間に設けることができる。キャピラリーバリアは、ゾーン510の内容物および先導電解質用レザーバー511の混合または圧力駆動流を制限する、低減するまたは防止するよう、精製ゾーン510と先導電解質用レザーバー511との間に設けることができる。別の例では、脱パラフィンは最初にオフチップで行うことができるか、または出発原料により不必要とすることができ、この場合、チャネルは、溶解および消化ゾーン(例えば、pH7、56℃)ならびに架橋解除および精製(例えば、等速電気泳動)ゾーン(例えば、pH7、80℃)を含むことができる。別の例では、脱パラフィンは最初にオフチップで行うことができるか、または出発原料により不必要とすることができ、この場合、チャネルは、溶解および消化ゾーン(例えば、pH7、温度T1)ならびに架橋解除および/または精製(例えば、等速電気泳動)ゾーン(例えば、pH7、温度T2)を含むことができる。別の例では、脱パラフィンは最初にオフチップで行うことができるか、または出発原料により不必要とすることができ、この場合、チャネルは、破壊および/または溶解ゾーン(例えば、pH7、温度T1)ならびに消化および/または精製(例えば、等速電気泳動)ゾーン(例えば、pH7、温度T2)を含むことができる。別の例では、脱パラフィンは最初にオフチップで行うことができるか、または出発原料により不必要とすることができ、この場合、チャネルは、破壊および/または溶解ゾーン(例えば、pH7、温度T1)および等温酵素増幅ゾーン(例えば、pH7、温度T2)を含むことができる。別の例では、脱パラフィンは最初にオフチップで行うことができるか、または出発原料により不必要とすることができ、この場合、チャネルは、破壊および/または溶解ゾーン(例えば、pH7、温度T1)ならびに等温酵素消化ゾーン(例えば、pH7、温度T2)を含むことができる。一部の場合、チャネルは、3つのゾーン、例えば、破壊および/または溶解ゾーン(例えば、pH7および温度T1)、等温酵素増幅ゾーン(例えば、pH7、温度T2)および精製(例えば、等速電気泳動)ゾーン(例えば、pH7および温度T3)を含むことができる。
図5Bは、
図5A中に示されている、8つの並列なチャネルをそれぞれ含む例示的な流体デバイスカートリッジを示している。
図5Cは、
図5B中で示されている流体デバイスの上部概略図を示す一方、
図5Dおよび
図5Eは、それぞれ、側面図および端面図を示している。デバイスは、試料導入口またはレザーバー530、ITP電解質緩衝液用レザーバー531、および試料溶出排出口またはレザーバー532を含むことができる。チャネルおよび/またはレザーバーは、1つまたは複数の空圧式ポートに連結されていてもよい。流体デバイスの8つの並列なチャネルはそれぞれ、他のチャネルのそれぞれとは、独立して操作され得る。一部の場合、各チャネルは、ITPを駆動するための一式の専用の電極および電気回路を有する。電極は、電極が試料物質に直接接触しないよう、例えば、終局電解質用レザーバー502および先導電解質用レザーバー511に配置してもよい。
【0197】
一部の例では、並列チャネル間に、流体またはイオン流はほとんど、または全く存在しない。一部の場合、並列チャネルは、互いに、流体連通していなくてもよい。並列チャネル間の流体リーク速度は、1時間あたり、約0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9または1μL未満とすることができる。
【0198】
一部の例では、並列チャネルは互いに電気的に隔離されているよう、並列チャネル間の電気的連通はほとんど、または全く存在しない。並列チャネルはそれぞれ、チャネルの各々に独立した電場を印加するよう、独立して電気的に制御することができる。一部の例では、チャネル間のリーク電流は、約0.1マイクロアンペア(μA)、0.2μA、0.3μA、0.4μA、0.5μA、0.6μA、0.7μA、0.8μA、0.9μAまたは1μA未満である。一部の例では、チャネル間のインピーダンスは、0.1メガオーム(MOhm)、0.2MOhm、0.3MOhm、0.4MOhm、0.5MOhm、0.6MOhm、0.7MOhm、0.8MOhm、0.9MOhm、1MOhm、5MOhm、10MOhm、20MOhm、30MOhm、40MOhmまたは50MOhmより大きいものとなり得る。
【0199】
一部の例では、等速流体デバイス(isotachofluidic device)における各ゾーンは加熱され得る。一部の例では、ゾーンは同一温度に加熱される。一部の例では、個々のゾーンは異なる温度に加熱される。一部の例では、第1のゾーンは、37℃よりも高い温度、例えば約60℃~約100℃の範囲内に加熱され得る。一部の例では、第2のゾーンは、37℃よりも高い温度、例えば約40℃~約60℃の範囲内に加熱され得る。
【0200】
等速電気泳動流体デバイスは、以下に限定されないが、緩衝液装入用レザーバー、試料装入用レザーバー(固体、多相液体もしくは他の不均質液体、または組織、全血液もしくは非溶解細胞懸濁液などの溶液を収容するレザーバーを含む)、先導電解質用レザーバー、終局電解質用レザーバー、試薬用レザーバー、溶出用レザーバー(例えば、処理済み試料を取り出すため)およびガスまたは空気用レザーバーを含めた、1つまたは複数のレザーバーを含むことができる。一部の場合、緩衝液の装入および試料の装入などの多目的用に、1つの物理的レザーバーを使用することができる。液体または空気用レザーバーを使用して、液体を装入するために、外部圧を適用することができる(例えば、液体ウェルに陽圧、またはガス専用レザーバーに真空)。
【0201】
レザーバーは、熱源または冷却源と熱的連通することができ、これにより、レザーバーおよび内部の任意の物質(例えば、試薬、試料、生成物)の温度の制御が可能になる。例えば、溶出用レザーバーは、溶出した生成物の温度を、流体デバイス内にある間、制御するよう(構造、完全性を保存するため)、熱的に制御することができる。
【0202】
試薬用レザーバーを使用して、等速電気泳動前、その間またはその後に、試料を処理するための1種または複数の試薬を装入することができる。試薬は、サイズを基準に分離するための、消化試薬、増幅試薬、逆転写試薬、線状ポリマー溶液、ハイブリダイゼーション反応用のプローブ、ライゲーション試薬、色素、トレーサー、標識および他の試薬を含むことができる。試薬用レザーバーは、反応が行われ得る、反応チャネル、または別のチャネルの反応区域に接続することができる。加熱または冷却を適用して(例えば、本明細書において議論されている熱制御装置を用いて)、反応(核酸またはタンパク質を用いる酵素反応など)を触媒すること、核酸をハイブリダイズもしくは溶解すること、または核酸からインタカレート色素を除去する(例えば、溶出前)ことができる。加熱および冷却をやはり使用して、ITPを行うために、固定した操作温度を制御する(例えば、ジュール加熱の作用を低減するために冷却を適用することができる)、または精製済み核酸の安定な保管のためなどの固定温度(例えば、室温より冷たい)にレザーバー(例えば、溶出用レザーバー)を維持することができる。光学的インターロゲーション(interrogation)、蛍光励起および反応エネルギーまたは触媒作用を含めた目的のために、光を適用することができる(例えば、本明細書において議論されている光源を用いる)。
【0203】
ガスもしくは空気用レザーバー、またはガスもしくは空気排出口は、ガス用チャネルを介して、流体デバイス内部の液体用チャネルに接続して、流体デバイスから空気または他のガスをパージすることが可能になる(例えば、流体デバイスに液体を充填中)。ガスもしくは空気用レザーバー、または空圧式ポートは、ガス用チャネルを介して、液体用チャネルに接続して、流体デバイス上またはその内部の流体をポンプ注入することが可能になる(例えば、レザーバーからチャネルに流体をポンプ注入するため)。
【0204】
デバイスは、互いに接続された複数の精製(例えば、等速電気泳動)ゾーンを含むことができる。例えば、第2の等速電気泳動ゾーンは、第1の等速電気泳動ゾーンから分かれる、およびそれと並行してつながることができ、これにより、並行処理するため、特定の比(例えば、2つのゾーン間の電流比に基づく)で、試料バンドを分けることが可能になる。
【0205】
流体デバイスは、並行した(例えば、
図5Cを参照されたい)複数の精製ゾーンを含むことができる。例えば、流体デバイスは、関連レザーバー、導入口、排出口、チャネル、および本明細書に記載されている任意の他の構成要素(例えば、試料調製ゾーン、電極、ヒータ、検出器)をそれぞれ並行して、互いに個別に備えた、一組を超える精製ゾーンを含むことができ、それぞれが、試料を独立して処理することができる。流体デバイスは、並列して、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、48、96またはそれより多い精製ゾーンを含むことができる。流体デバイスは、並列した多重チャネルを含むことができる。流体デバイスは、並列して、少なくとも2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、24、48、96またはそれより多いチャネルを含むことができる。並列に配置されている精製ゾーンまたはチャネルなどの構成要素は、様々なデバイス層(例えば、水平層または垂直層)に並べて配置され得るか、または異なる配列に置くことができる。並列構成要素は、同一とすることができるか、または異なって設計され得るが、等価またはほぼ等価に機能することができる。例えば、並列チャネルは、様々な形状を有して、より小さな総合的な流体デバイスフットプリントを可能にするが、依然として同様に機能する。代替として、並列構成要素は、異なって機能するよう設計されて、例えば、様々なタイプの試料を並行して処理する、または試料に様々な操作を施すことができる。一部の場合、並列構成要素は、異なる試料タイプに様々な操作を並行して施すよう設計することができる。一部の場合、並列構成要素は、同一試料タイプに様々な操作を並行して施すよう設計することができる。一部の場合、並列構成要素は、異なる試料タイプに同一操作を並行して施すよう設計することができる。一部の場合、並列構成要素は、同一試料タイプに同一操作を並行して施すよう設計することができる。一部の場合、並列構成要素は、2つまたはそれより多い試料に、並行して1つまたは複数の操作を、同時におよび/または独立して施すよう設計することができる。一部の場合、2つまたはそれより多いチャネル間のリーク速度(または、2つもしくはそれより多い精製ゾーン間の)は、0.5μl/時未満、1μl/時未満、5μl/時未満、10μl/時未満である。一部の実施形態では、2つまたはそれより多いチャネル間のリーク電流量(または、2つもしくはそれより多い精製ゾーン間の)は、0.5μA未満、1μA未満、5μA未満または10μA未満である。一部の実施形態では、チャネルまたはゾーン間のインピーダンスは、0.5メガオームより大きい、1メガオームより大きい、5メガオームより大きい、または10メガオームより大きい。
【0206】
本明細書において議論されている通り、流体デバイスは、異なる試料体積を処理するよう設計され得る。例えば、
図6A、
図6B、
図6Cおよび
図6Dは、約200μLより多いまたはそれに等しい試料体積の場合の、迅速精製ITP流体デバイス600の、それぞれ、上部、側面、底部および上部からの斜め図を示している。デバイスは、試料投入用ウェル601、ITP緩衝液用ウェル602および試料排出(溶出)用ウェル603に接続されているチャネル600を含む。ITP緩衝液用ウェル602は、溶出緩衝液用レザーバー605、先導電解質用レザーバー606、先導電解質緩衝液用レザーバー607および終局電解質用レザーバー608を含むことができる。溶出用レザーバー603は、溶出緩衝液用チャネル609によって、溶出緩衝液用レザーバー605に接続されてもよい。キャピラリーバリアは、溶出緩衝液用レザーバー605の内容物と溶出用レザーバー603の内容物との間の混合または圧力駆動流を低減または防止するため、溶出緩衝液用チャネル609に設けられてもよい。先導電解質用レザーバー606は、先導電解質緩衝液用チャネル610によって、先導電解質緩衝液用レザーバー607に接続されてもよい。キャピラリーバリアは、先導電解質緩衝液用レザーバー607の内容物と先導電解質用レザーバー606の内容物との間の混合または圧力駆動流を低減または防止するため、先導電解質緩衝液用チャネル610に設けられてもよい。緩衝液用レザーバー605は、溶出用レザーバー603中のものよりも高いイオン強度の溶出用緩衝液電解質を含有することができる一方、緩衝液用レザーバー607は、先導電解質用レザーバー606中のものよりも高いイオン強度の先導電解質を含有することができる。デバイスは、例えば、卓上機器の真空源である、空圧式デバイスに連結するよう構成されている、その縁に沿って、空圧式ポート604をさらに含んでもよい。空圧式ポート604は、本明細書に記載されているガス用チャネルによって、チャネル600およびレザーバーに連結されてもよい。空圧式ポート604に吸引を適用すると、試料、先導電解質および溶出用緩衝液をチャネル600に装入することができる。一部の場合、終局電解質緩衝液流体は、終局電解質用レザーバー608に留まる。吸引は、チャネル600に、それぞれ、同時にまたは段階的に装入するよう、同時にまたは逐次に空圧式ポート604に適用することができる。試料は、チャネル600において、第1のゾーン、または180°という小さな分散曲がり角で、終局電解質用レザーバー608からキャピラリーバリア611まで延在しているチャネル600のサブチャネルに装入することができる。混合または圧力駆動流を制限する、低減するまたは防止するよう、装入している間、試料と先導電解質緩衝液との間の界面にキャピラリーバリア611を設けてもよい。終局電解質用レザーバー608の内容物と試料との間の混合または圧力駆動流を制限する、低減するまたは防止するよう、終局電解質用レザーバー608と第1のゾーンまたはサブチャネルとの間に、キャピラリーバリアを設けてもよい。先導電解質は、第2のゾーン、またはキャピラリーバリア611からキャピラリーバリア612まで延在するチャネル600のサブチャネルに装入されてもよい。キャピラリーバリア612は、先導電解質緩衝液と溶出用緩衝液との間の界面に設けられてもよい。溶出用緩衝液は、第3のゾーン、またはキャピラリーバリア612から溶出用レザーバー603まで延在するチャネル600のサブチャネルに装入されてもよい。一部の実施形態では、ITP緩衝液用ウェル602は、終局電解質用レザーバー608中のものよりも高いイオン強度の終局電解質を含有している終局電解質緩衝液用レザーバー(図示せず)をさらに含んでもよい。終局電解質緩衝液用レザーバーは、終局電解質緩衝液用チャネル(図示せず)によって、終局電解質用レザーバー608に接続されてもよい。終局電解質緩衝液用チャネルは、終局電解質緩衝液用レザーバーの内容物と終局電解質用レザーバー608の内容物との間の混合または圧力駆動流を制限、低減または防止するために、キャピラリーバリアを含んでもよい。
【0207】
電極は、電極が試料物質に直接接触しないよう、例えば、終局電解質用レザーバー608、終局電解質緩衝液用レザーバー(図示せず)、先導電解質用レザーバー606および/または先導電解質緩衝液用レザーバー607に配置してもよい。電極は、センサー、例えば本明細書に記載されている、電圧、電流、導電度または温度センサーからのフィードバックに応答して、印加された電場を変更または制御するよう作動され得る。例えば、ITPゾーン内の核酸の、チャネル600の第2のゾーンからチャネル600の第3のゾーンまでの経路が検出され得、検出器からのフィードバックが、印加電流を変化させるよう作動することができる。電流は、機器のプロトコルに従って、例えば、増大されてもよく、低下されてもよく、または終了されてもよい。電流は、核酸のオンチップ定量を可能にするため、例えば、休止してもよい(例えば、一時的に零まで低下させる)。代替として、または組み合わせて、第3のゾーン内での等速電気泳動を減速させて、先導電解質緩衝液から溶出用緩衝液(または、第2の先導電解質緩衝液)の時間に移ると、分散することができる核酸が、溶出用ウェル603に到達する前にさらに濃縮することを可能にするため、電流を低下させてもよい。
【0208】
本明細書において提供されている方法および処理は、本明細書において提供されているデバイスのいずれかを使用する方法および処理を含む。複数の試料を並行して処理するための多重チャネルを備えた、本明細書において提供されているデバイスは、様々な状況で使用されてもよい。一部の場合、方法は、ある種の特徴(例えば、固形組織溶解物、細胞溶解物、固形組織、固定化組織)を共有する複数の試料を処理する(例えば、このような試料に等速電気泳動を行うことにより)ためのデバイスの使用を含むことができる。一部の場合、複数の試料は異なる試料であってもよい。例えば、本方法は、デバイスの1つのゾーン中で、組織試料に等速電気泳動を行い、同時にではあるが、独立して、細胞試料、または架橋核酸を含む試料などの様々な試料に等速電気泳動を行うことを含むことができる。
【0209】
一部の場合、本明細書において提供されている方法または多重処理は、同一または類似の先導電解質および/または終局電解質緩衝液を使用して、チャネル中での試料への等速電気泳動を、第2のチャネルにおける第2の試料への等速電気泳動の実施と並行して行うことを含むことができる。一部の場合、チャネルの1つにおける試料は、第1の先導電解質緩衝液を使用して処理され、様々なチャネル中の試料は、第1の先導電解質緩衝液とは異なる第2の先導電解質緩衝液を使用して処理される。例えば、第1の先導電解質緩衝液は、第2の先導電解質緩衝液に含有されているものとは異なる1つまたは複数の先導電解質イオンを含有することができる。別の例では、第1の先導電解質緩衝液は、第2の先導電解質緩衝液に含有されているものと同じ1つまたは複数の先導電解質イオンを含有することができるが、第1の先導電解質緩衝液中のこのような先導電解質イオンの濃度は、第2の先導電解質緩衝液中のこのようなイオンの濃度とは異なる。一部の場合、本明細書において提供されている方法または処理は、同一または類似の終局電解質または終局電解質緩衝液を使用して、チャネル中での試料への等速電気泳動を、第2のチャネルにおける第2の試料への等速電気泳動の実施と並行して行うことを含むことができる。一部の場合、チャネルの1つにおける試料は、第1の終局電解質緩衝液を使用して処理され、様々なチャネル中の試料は、第1の終局電解質緩衝液とは異なる第2の終局電解質緩衝液を使用して処理される。例えば、第1の終局電解質緩衝液は、第2の終局電解質緩衝液に含有されているものとは異なる1つまたは複数の終局電解質イオンを含有することができる。別の例では、第1の終局電解質緩衝液は、第2の終局電解質緩衝液に含有されているものと同じ1つまたは複数の終局電解質イオンを含有することができ、第1の終局電解質緩衝液中のこのような終局電解質イオンの濃度は、第2の終局電解質緩衝液中の濃度とは異なる。
【0210】
一部の実施形態では、1つまたは複数のレザーバーは、2つのチャネルまたはサブチャネルに接続されていてもよい。例えば、溶出用レザーバー603は、チャネル600と溶出緩衝液用チャネル609の両方に接続されていてもよい。代替として、または組み合わせて、先導電解質用レザーバー606は、チャネル600と先導電解質緩衝液用チャネル610の両方に接続されていてもよい。代替として、または組み合わせて、終局電解質用レザーバー608は、600と終局電解質緩衝液用チャネルの両方に接続されていてもよい。代替として、または組み合わせて、試料投入用ウェル601は、チャネル600が投入用ウェル601の左側(第1のサブチャネルとして)および右側(第2のサブチャネルとして)に延在するよう、チャネル600の中間点に接続されていてもよい。2つのチャネルまたはサブチャネルは、少なくとも約5°、10°、20°、30°、40°、45°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、135°、140°、150°、160°、170°または180°となる2つのチャネル(流体デバイスの主要面に伸びている)間の角度で、1つまたは複数のレザーバーに接続されていてもよい。2つのチャネルまたはサブチャネルは、多くとも約5°、10°、20°、30°、40°、45°、50°、60°、70°、80°、90°、100°、110°、120°、130°、135°、140°、150°、160°、170°または180となる2つのチャネル(流体デバイスの主要面に伸びている)間の角度で、1つまたは複数のレザーバーに接続されていてもよい。
【0211】
本デバイスは、例えば、示されているように、8つのチャネルを含むことができる。各チャネルは、約50μL~約275μLの試料体積、および全体積約500μLを保持することができる。各チャネルにおいて、180°という分散曲がり角が小さいために、標準SLASフットプリントによる8チャネルという多重チャネルプレートにおいて、このような多量の試料体積を容易にすることができる。
【0212】
図7A、
図7B、
図7Cおよび
図7Dは、約100μLより少ないまたはそれに等しい試料体積の場合の、迅速精製ITP流体デバイス700の、それぞれ、上部、側面、底部、および底部からの斜め図を示している。デバイスは、試料投入用ウェル701、ITP緩衝液用ウェル702および試料排出(溶出)用ウェル703を含む。デバイス700は、チャネルにおける180°の曲がり角を含まない、様々なチャネル形状(および対応するレザーバー形状)を有するが、デバイス600と実質的に類似することができる。
【0213】
本デバイスは、例えば、示されている通り、8つのチャネルを含むことができる。各チャネルは、約10μL~約100μLの試料体積を保持することができる。より少ない試料体積を有するデバイスは、PCRクリーンアップもしくは他の反応のクリーンアップ用途にとって、またはより少ない試料サイズ(例えば、細胞数の少ない試料または少量の組織を有する試料)にとって有用となり得る。
【0214】
図8A、
図8B、
図8Cおよび
図8Dは、約100μLより少ないまたはそれに等しい試料体積の場合の、別の迅速精製ITP流体デバイス800の、それぞれ、上部、側面、底部、および底面からの斜め図を示している。デバイスは、試料投入用ウェル801、ITP緩衝液用ウェル802および試料排出(溶出)用ウェル803を含む。デバイス800は、単一チップに複数の様々なチャネル形状を含むが、デバイス600および700と実質的に類似することができる。
【0215】
流体デバイスは、流体デバイス、または流体デバイスの一部に電場を印加する1つまたは複数の電極を含むことができる。印加電場は、等速電気泳動を行うために使用することができる。流体デバイスは、流体デバイスのチャネルすべてに単一の電場を印加する1つまたは複数の電極を含むことができる。流体デバイスは、流体デバイスに1つより多い電場、例えば、デバイスのチャネルあたり1つの電場を印加する、1つまたは複数の電極を含むことができる。一部の例では、第1および第2の電場は、単一の電極対から発生する。一部の例では、第1および第2の電場は、異なる電極対から発生する。電場は、同時に、逐次に、および/または独立してもしくは相互に印加することができる。電極は、レザーバーに入れられるワイヤなど、外部とすることができる。電極は、マイクロ製造された、印刷された、または流体デバイスの製造に含まれる他の埋め込まれた素子など、内部とすることができる。電極材料は、以下に限定されないが、金属(例えば、白金、チタン)および炭素を含むことができる。
【0216】
流体デバイスの1つまたは複数の電極は、流体デバイス、または流体デバイスの一部に電場を印加する1つまたは複数の電気回路の一部であってもよい。流体デバイスは、流体デバイスのすべてのチャネルまたはそのゾーンの等速電気泳動(isotachoporesis)領域に単一電場を印加する1つまたは複数の電気回路を含むことができる。流体デバイスは、流体デバイスに1つより多い電場、例えば、デバイスのチャネルあたり1つの電場を印加する、1つまたは複数の電気回路を含むことができる。一部の例では、第1および第2の電場は、単一電気回路から発生することができる。一部の例では、第1および第2の電場は、異なる電気回路から発生することができる。電場は、1つまたは複数の電気回路によって、同時に、逐次に、および/または独立してもしくは相互に印加することができる。一部の例では、デバイス(または卓上機器)は、第2の電気回路と同時におよび独立して、第1の電気回路を制御するよう構成され得る。
【0217】
電極は、緩衝液用チャネルによって、試料用レザーバーから離され得る、終局電解質用レザーバーおよび先導電解質用レザーバーなどのレザーバー中に配置することができる。一部の場合、電極は、緩衝液用チャネルまたは緩衝液用レザーバーに位置する。電解質用レザーバーまたは電解質緩衝液用レザーバー中の電極の位置は、試料物質による電極の汚染を低減または排除するために、核酸などの分析対象から電極を隔離することができる。この手法により、試料間の交差汚染を伴わないで、電極の再使用が可能になる。一例では、終局電解質用レザーバーまたは終局電解質用チャネルは、緩衝液用チャネルによって、終局電解質イオンおよび電極を含む緩衝液用レザーバーに接続されており、終局電解質用レザーバーは、試料用レザーバーまたは試料用チャネルにやはり接続されており、次に、試料用レザーバーまたは試料用チャネルは、先導電解質用チャネルにより先導電解質用レザーバーに接続されている。先導電解質用レザーバーもまた、緩衝液用チャネルによって、先導電解質および電極をやはり含む、緩衝液用レザーバーに接続されている。別の例では、または先の例の続きとして、溶出用緩衝液を含む溶出用レザーバーは、溶出用チャネルによって先導電解質用レザーバーに接続されており、溶出用緩衝液電解質および電極を含む緩衝液用レザーバーにやはり接続されている。緩衝液用レザーバーとその対応するレザーバーとの間の緩衝液用チャネルは、本明細書に記載されている通り、混合および圧力駆動流を制限、低減または防止するために、キャピラリーバリアおよび/または小さな断面積を含むことができる。緩衝液用レザーバーは、その対応するレザーバーと同じイオン強度、またはそれより高いイオン強度の電解質を含有することができる。例えば、溶出用レザーバーは、溶出用レザーバーと同じイオン強度もしくは濃度、またはそれより高いイオン強度もしくは濃度の溶出用緩衝液電解質を含有する緩衝液用レザーバーに接続され得る。終局電解質用レザーバーは、終局電解質用レザーバーと同じイオン強度もしくは濃度、またはそれより高いイオン強度もしくは濃度の終局電解質を含有する緩衝液用レザーバーに接続され得る。先導電解質用レザーバーは、先導電解質用レザーバーと同じイオン強度もしくは濃度、またはそれより高いイオン強度もしくは濃度の先導電解質を含有する緩衝液用レザーバーに接続され得る。緩衝液用レザーバーが専用で溶出用レザーバーに接続されている場合、終局電解質用レザーバーおよび/またはより高いイオン強度を有する先導電解質用レザーバーは、試料がチャネルを通って移動するにつれて、チャネル中のpHおよび導電度を維持するために、追加のイオンだめを設けることができる。
【0218】
流体デバイスは、1つまたは複数の熱制御装置と共に使用することができる。例えば、
図9Aは、
図5Aに示されている設計の、8つの並列なチャネル900を含む、8重の試料調製および等速電気泳動デバイスの概略図を示している。
図9Bは、第1および第2の熱制御装置901、902の概略図を示している。温度T1(例えば、80℃)の第1の熱制御装置901は、チャネルの試料調製ゾーンと一列に並んでおり、温度T2(例えば、50℃)の第2の熱制御装置902は、チャネルの等速電気泳動ゾーンと一列に並んでいる。一部の場合、追加の熱制御装置が、チャネルの追加ゾーンと一列に並んでもよく(図示せず)、例えば、温度T3の第3の熱制御装置は、温度T3の第3のゾーンと一列に並んでもよい。一部の場合、各チャネルの各ゾーンは、他のチャネルの個々のゾーンと共通の熱制御装置を共有するというよりも、それ自体の個別の熱制御装置を有することができる。他の場合では、ゾーンまたはチャネルはすべて、1つの熱制御装置を共有することができる。他の場合では、1つより多いが、合計より少ないゾーンまたはチャネルが、1つの熱制御装置を共有することができる。熱制御装置は、以下に限定されないが、抵抗ヒータ、流体をベースとする加熱または冷却システム、およびペリティエデバイスを含む構成要素を含むことができる。熱制御装置は、以下に限定されないが、金属(例えば、白金、チタン、銅、金)、炭素、および酸化インジウムスズ(ITO)を含む物質から製造することができる。熱制御装置は、制御されている温度をモニタリングして、熱制御のために温度フィードバックを供給するために使用することができる、温度センサーを含むことができる。熱制御装置は、本開示においてさらに議論されている、コンピュータ制御システムと共に使用することができる。一部の場合、熱制御装置は、温度フィードバックなしに操作される。熱制御装置は、流体デバイスに統合され得るか、または卓上システム内などの外部に配置することができる。
【0219】
流体デバイスは、1つまたは複数の光源と共に使用することができる。光源は、流体デバイスに統合され得るか、または卓上システム内もしくは個別のデバイス中など、流体デバイスの外部に配置することができる。光源は、光学的インターロゲーション、蛍光励起、温度感知、反応エネルギーまたは触媒作用、および他の目的のために光を供給することができる。
【0220】
流体デバイスは、それらの最も外側の骨格または寸法がマイクロタイタープレート標準(例えば、SLASマイクロタイタープレート標準)を満たすよう、設計することができる。流体デバイスは、液体用レザーバーとして、マイクロタイタープレート(例えば、SLAS標準マイクロタイタープレート)の規定されたポートを使用するよう設計することができ、空圧式駆動ポートは、液体レザーバーの外側の未使用表面に配置されている。空圧式ポートは、液体用レザーバーにかかる空圧式駆動による公差汚染を回避するよう、および上記のポートが空圧式ハードウェアに容易に接近できるよう、マイクロタイタープレート適合可能レイアウトを有する流体デバイスの縁部に配列することができる。それらの他の機能に加えて、空圧式駆動のために、規定された副ポートをやはり使用することができる。一部の場合、流体デバイスは、流体デバイスを卓上システムに整列するための配列機構および以下の第1の部分と相互連動するかみ合い機構を含めた、2つの相互連動部分:チャネルユニット(例えば、容易なフィルム接合を可能にする平坦な表面を有する層)、ウェルおよび空圧式ポートを含む第1の挿入口、およびマイクロタイタープレート標準(例えば、SLASマイクロタイタープレート寸法標準)に適合する第2の外輪に設計されて、製造することができる。ウェルは、射出成形により適合し得る、突起部を形成するよう接続され得る。
【0221】
流体デバイスは、以下に限定されないが、ガラス(例えば、ホウケイ酸塩ガラス)、ケイ素、プラスチックおよびエラストマーを含めた、様々な材料から作製することができる。プラスチックは、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、環式オレフィンコポリマー(COC)、環式オレフィンポリマー(COP)、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、高密度ポリエチレン(HDPE)および低密度ポリエチレン(LDPE)を含むことができる。エラストマーは、ポリジメチルシロキサン(PDMS)を含むことができる。
【0222】
流体デバイスの製造に使用される材料は、それらの光学特性を理由に選択することができる。例えば、低い自家蛍光、低散乱、および目的とする波長(例えば、核酸の標識または色素に対する励起および発光波長)において高い透過性を示す材料を使用することができる。様々な材料を1つの流体デバイスに使用することができる。例えば、検出領域は、有用な光学特性を示す材料を用いて製造することができる一方、デバイスの他の領域は、他の材料を含むことができる。
【0223】
流体デバイスの製造に使用するための材料は、それらの熱的特性を理由に選択することができる。例えば、高い熱伝導度を理由に材料を選択することができる。代替として、低い熱伝導度を理由に(例えば、流体デバイスまたは流体デバイスの領域を断熱するため)材料を選択することができる。様々な材料を1つの流体デバイスに使用することができる。例えば、加熱領域は、熱制御装置との熱的連通を改善するために、高い熱伝導度を有する材料を有することができるが、この加熱領域は、デバイスの他の領域からの熱的な隔離のために、低い熱伝導度を有する物質により取り囲まれている。
【0224】
流体デバイスまたはその内部のマイクロチャネルの製造に使用される材料は、それらのエラストマー特性または変形特性を理由に選択することができる。例えば、材料は、本明細書に記載されている通り、可塑によるチャネル閉鎖を可能にするよう、低い弾性を理由に選択することができる。代替として、高い弾性を理由に材料を選択することができる。様々な材料を1つの流体デバイスに使用することができる。例えば、ポリ(メタクリル酸メチル)(PMMA)、環式オレフィンコポリマー(COC)、環式オレフィンポリマー(COP)などが、単一流体デバイスに使用することができる。材料は、少なくとも1GPa、1.5GPa、2GPa、2.5GPa、3GPa、3.5GPa、4GPa、4.5GPaまたは5GPaの弾性率を有することができる。材料は、多くとも1GPa、1.5GPa、2GPa、2.5GPa、3GPa、3.5GPa、4GPa、4.5GPaまたは5GPaの弾性率を有することができる。材料は、少なくとも10MPa、20MPa、30MPa、40MPa、50MPa、60MPa、70MPa、80MPa、90MPa、100MPa、110MPa、120MPa、130MPa、140MPa、150MPa、160MPa、170MPa、180MPa、190MPa、200MPaの引張強度を有することができる。材料は、多くとも10MPa、20MPa、30MPa、40MPa、50MPa、60MPa、70MPa、80MPa、90MPa、100MPa、110MPa、120MPa、130MPa、140MPa、150MPa、160MPa、170MPa、180MPa、190MPa、200MPaの引張強度を有することができる。
【0225】
一部の場合、流体デバイスの表面は、表面処理またはコーティングなしに使用することができる。他の場合では、流体デバイスの表面は、疎水的処理、親水的処理、または選択的結合剤(例えば、抗体)などの表面コーティングと共に使用することができる。流体デバイスの異なる領域は、異なる表面処理(または、それがない)を含むことができる。例えば、一部のチャネル、レザーバーまたはその一部は、疎水性であり得る一方、他は親水性である。
【0226】
流体デバイスは、以下に限定されないが、キャピラリーバリア、空気排出用レザーバー、ガス/空気ライン、充填レベルモニター(例えば、電極測定によって)、特定のレザーバー形状、チャネルの特定の流体抵抗および流体の装入順序を含めた、幅広い流量制御ユニットおよび技法を含むことができる。
【0227】
キャピラリーバリアは、空気をパージする(例えば、気泡防止のため)ための空気排出用レザーバーと一対とすることができ、これにより、(i)等速電気泳動に必要な先導電解質溶液と終局電解質溶液との間、ならびに(ii)緩衝液用レザーバーと先導電解質溶液もしくは終局電解質溶液および/または試料溶液との間の液-液界面が位置決めされて、首尾良く確立される。キャピラリーバリアは、好ましい順序で、チャネルの充填を自動化するためのチャネル形状と組み合わされて設計され得る。チャネル抵抗は、チャネル寸法の設計などによって選択され、流体抵抗に差異をもたらすことができる。液体の装入順序によって、界面動電学的プロセスを行うために、気泡なしに、液-液界面の正確な形成が可能になる。一例では、終局イオン用レザーバーは、分析対象または試料用チャネルに直接、接続されている。
【0228】
ガス(例えば、空気)用チャネルまたはラインは、流体デバイスのキャピラリーバリアまたは他の領域への空圧式駆動をもたらすために使用することができる。ガス用チャネルは、空圧式ポートを介して、外部のガス圧力源に接続することができる。ガス用チャネルは、例えば、ガス用チャネルへの液体の流入を低減または防止するため、それらが圧力を供給する液体用チャネルより高い流体抵抗を有することができる。例えば、ガス用チャネルは、等速電気泳動チャネル本体の断面積の半分未満を有することができる。複数のガス用チャネルを単一ガスレザーバーまたはポート(例えば、分岐用チャネルを有する)に接続することができる。上流の液体の移動を防止するために、分岐した空気ラインを有するキャピラリー弁を使用することができる。
図10Aは、試料1004と先導電解質緩衝液1005サブチャネルとの間の液体用チャネルの界面1003に接続されているキャピラリーバリア1002を含むことができる、例示的なガス用チャネル1001を示している。
図10Bは、空圧式ポート1006の方向に上流の液体が移動するのを防止するキャピラリーバリア1002を強調した、ガス用チャネル1001の拡大概略図である。
【0229】
流体用チャネルに装入するため、ガスポートを介して、陰圧または真空をガス用チャネルに適用することができる。マイクロ流体デバイスの流体用チャネルはそれぞれ、同時に、または相互に独立して(例えば、逐次に)、装入することができる。チャネル内部では、流体は、同時に、または相互に独立して、装入することができる。例えば、試料を装入する前、それと同時に、または装入した後に、先導電解質緩衝液、高濃度先導電解質緩衝液、終局電解質緩衝液、高濃度終局電解質緩衝液、溶出用緩衝液、高濃度溶出用緩衝液またはそれらの任意の組合せを装入することができる。例えば、陰圧をチップの一端のガスポートに適用して、1つまたは複数の流体(例えば終局電解質緩衝液、溶出用緩衝液など)を装入することができる。続いて、陰圧をチップのもう一方の端のガスポートに適用して、さらなる流体(例えば、先導電解質緩衝液)を装入することができる。代替として、陰圧は、チャネルに接続されているガスポートのすべてに、同時に適用されてもよい。試料は、等速電気泳動緩衝液を装入する前、その間またはその後に、陰圧または真空を適用することにより装入することができる。試料は、例えば、湿らせることにより、または重力により、陰圧または真空を適用することなく、装入することができる。
【0230】
センサー(例えば、電極)を使用して、液体の充填レベルまたは気泡を検出し(例えば、電流または電圧感知を介して)、フィードバックを提供することができる。幾何学的な特徴(例えば、閉塞、膨張またはねじれ)を、チャネルのインピーダンス、およびこれにより等速電気泳動の時間進行をモニタリングするための電極と組み合わせて使用することができる。例えば、ITPの間、核酸が集まり、電圧を使用して、開始から終了までのチャネルにおける集約したバンドの位置を追跡することができる。一例では、より小さな断面積を有する接続チャネルからレザーバー(溶出用レザーバーなど)に流体が膨張するのをモニタリングすることを使用して、分析対象が溶出させる時間を決定することができ、これにより、自動化溶出およびプロセスの終了という制御が可能になる。別の例では、チャネルの閉塞は、反応が起こるまたは光学的検出事象が起こるチャネルゾーンに、着目分析対象が進入した時などの、界面動電学的プロセスにおける、ステップのタイミング(または、作動)の検出が可能となるよう設計することができ、これにより、反応のタイミングまたは検出作動の制御が可能になる。
【0231】
レザーバーおよびチャネル機構は、圧力駆動流を制御または防止するよう設計することができる。例えば、レザーバー(例えば、試料および溶出用レザーバー)は、液体の高さの大きな変化により、
図11に示されている所期のヘッド高さにある内部体積のわずかに小さな変動が生じるよう設計された内部形状を有することができる。これにより、レザーバーに含まれている液体の体積のより正確な制御を実現することができる。他のレザーバーの場合、液体の体積は、分離プロセスに不具合をもたらすことなく、様々とすることができる。このようなレザーバーは、小さな液体高さの変化に応答して、大きな体積変化を有するよう設計することができ、流体デバイス全体の液体の高さを安定化する一助となり得る。レザーバー間の低い流体抵抗を使用して、ヘッド圧の平衡時間の迅速性を可能にし、界面動電学的プロセスの前、その間またはその後の、チャネルにおける液体の流れを最小限にすることができる。
【0232】
レザーバーは、一定体積または固定体積を維持するため、例えば、レザーバー内の表面積を制御することにより、蒸発を最小限にするよう設計することができる。レザーバーは、例えば、デッドゾーンを最小限にするよう立案された角度壁設計の使用により、レザーバーからの液体の回収を最大限にするよう設計することができる。レザーバーは、抜き取りの間、チャネルをレザーバーに接続する際に、液体の流れを防止するよう設計することができ、これにより、取り出し中の物質(例えば、核酸)の純度または分離を維持する一助とすることができる。レザーバーは、例えば、ピペット先端を収容するよう適した寸法を持たせることにより、または典型的なピペット操作の範囲内の体積を持たせることにより、ピペット操作によって、容易な装入または抜き取りができるよう設計することができる。例えば、溶出用レザーバーは、核酸の抽出用のピペット先端を収容するよう構成されてもよい。レザーバーは、マルチチャネルピペッターを収容するよう設計する、または間隔を設けることができる(例えば、約9mmピッチを有する)。
【0233】
レザーバー(例えば、試料用レザーバー)は、充填されるチャネルより上に直接位置することができ、これにより、レザーバーとそれらを満たすチャネルとの間の接続チャネルにおける、液体の損失を最小化することができる。レザーバー(例えば、試料用レザーバー)は、円錐形状の底部および円筒状のスルー-ホールを有することができる。このようなレザーバーの上部の大きな内径により、レザーバーの底部の液体メニスカスがより小さな内径を有しながらも、大きな体積を維持することが可能になり、分注後に後に残る液体の量が低減される。このような設計はまた、凹面の角に湿潤性流体のウイッキングを低減または防止することができる。一部の場合、レザーバー(例えば、試料用レザーバー)からチャネルへのスルー-ホールは、約2ミリメートル(mm)未満であるか、またはそれに等しい。
【0234】
図11は、連結チャネル1101まで試料を移動させた後、レザーバー1100に残る(または失われる)試料の量を低減するよう構成されている試料用レザーバー1100を示している。低損失試料用レザーバー1100は、接続されているチャネル1101に試料を送達した後または送達中に、試料用レザーバー1100に、追加体積分(試料または他の流体)を添加またはポンプ注入することなく、接続されているチャネル1101に試料を移動させた後にレザーバー1100に残る試料の量を低減することができる。低損失試料用レザーバー1100は、チャネル1101に試料を装入する前に試料体積を含むよう構成されている、水力内径D
1を有する上側または上部1102、チャネル1101に試料を装入した後に、試料体積を含有するよう構成されている、水力内径またはスルー-ホールD
2および高さH
1を有する、下側または底部1103、ならびにそれらの間に先端が細いまたは円錐部分1104を含むことができる。一部の場合、上側部分1102および/または下側部分1103は非対称であり、この場合、寸法D
1からD
2は、それぞれ、上側部分および/または下側部分1102、1103にわたる最大寸法となり得る。
【0235】
試料用レザーバー1100は、チャネル1101での圧力駆動流および混合を制限、防止または低減するため、チャネル1101に接続されている他のレザーバー1110中の緩衝液のヘッド高さH3に等しい、またはほぼ等しい、後に残る試料のヘッド高さH2を生じるよう構成され得る。標準的な緩衝液レザーバー1110は、水力内径D3を有する上側部分1112および水力内径D4を有する下側部分1113を含むことができる。試料ウェル中とは異なり、D3は、ヘッド高さH2およびH3が等しいまたはほぼ等しい場合、試料ウェル1100と比較して、流体のより大きな体積が緩衝液用ウェル1110内に維持されるよう、D4と実質的に同様であってもよい。
【0236】
試料用レザーバー1100は、少なくとも、約1ナノリットル(nL)、10nL、20nL、50nL、100nL、200nL、500nL、1マイクロリットル(μL)、10μL、20μL、30μL、40μL、50μL、60μL、70μL、80μL、90μL、100μL、200μL、300μL、400μL、500μL、600μL、700μL、800μL、900μL、1ミリリットル(mL)、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mLまたは10mLの試料体積(緩衝液を含むまたは含まない)を保持するよう構成され得る。一部の場合、試料用レザーバー1100は、約1nL~約10nLの範囲内の試料体積を保持するよう構成され得る。
【0237】
水力内径D1は、スルー-ホール水力径D2より大きくてもよい。上側部分の水力内径D1は、少なくとも約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mmまたは15mmとすることができる。上側部分の水力内径D1は、多くとも約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mmまたは15mmとすることができる。下側部分の水力内径D2は、少なくとも約0.5mm、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mmまたは5mmとすることができる。下側部分の水力内径D2は、多くとも約0.5mm、1mm、1.5mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mmまたは5mmとすることができる。
【0238】
D1とD2との比により、試料がチャネルに移動した後、試料用レザーバーに残る試料の量が決まり得る。一部の場合、D1とD2との比は、少なくとも約2:1、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1または50:1である。一部の場合、D1とD2との比は、多くとも約2:1、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1または50:1である。D1とD2との比は、低損失試料用レザーバー1100からチャネル1101に試料体積の少なくとも50%を移動させるのを促進するため、2:1より大きくすることができる。
【0239】
上側部分の断面積は、少なくとも、約3mm2、5mm2、10mm2、15mm2、20mm2、25mm2、30mm2、35mm2、40mm2、45mm2、50mm2、55mm2、60mm2、65mm2、70mm2、75mm2とすることができる。上側部分の断面積は、多くとも、約3mm2、5mm2、10mm2、15mm2、20mm2、25mm2、30mm2、35mm2、40mm2、45mm2、50mm2、55mm2、60mm2、65mm2、70mm2、75mm2とすることができる。下側部分の断面積は、少なくとも、約0.2mm2、0.3mm2、0.4mm2、0.5mm2、1mm2、1.5mm2、2mm2、2.5mm2、3mm2、3.5mm2、4mm2、4.5mm2、5mm2、6mm2、7mm2、8mm2、9mm2、10mm2、11mm2、12mm2とすることができる。下側部分の断面積は、多くとも、約0.2mm2、0.3mm2、0.4mm2、0.5mm2、1mm2、1.5mm2、2mm2、2.5mm2、3mm2、3.5mm2、4mm2、4.5mm2、5mm2、6mm2、7mm2、8mm2、9mm2、10mm2、11mm2、12mm2とすることができる。
【0240】
上側部分の断面積と下側部分の断面積との比により、試料がチャネルに移動した後、試料用レザーバーに残る試料の量が決まり得る。一部の場合、上側部分の断面積と下側部分の断面積との比は、少なくとも約4:1、5:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、150:1、200:1、250:1、300:1、350:1、400:1、450:1、500:1、600:1、700:1、800:1、900:1、1000:1、1500:1、2000:1または2500:1である。一部の場合、上側部分の断面積と下側部分の断面積との比は、多くとも、約4:1、5:1、10:1、20:1、30:1、40:1、50:1、60:1、70:1、80:1、90:1、100:1、150:1、200:1、250:1、300:1、350:1、400:1、450:1、500:1、600:1、700:1、800:1、900:1、1000:1、1500:1、2000:1または2500:1である。
【0241】
上側部分と下側部分との間にある先端が細い部分は、下側部分への試料の湿潤、および低損失試料用ウェルからチャネルへの試料の移動を促進するような角度を含むことができる。一部の場合、低損失試料用レザーバーの先端が細い部分は、約10°、20°、30°、40°、45°、50°、60°、70°、80°または90°未満となる、上側部分と下側部分との間の半分の角度を含むことができる。一部の場合、低損失試料用レザーバーの先端が細い部分は、約10°、20°、30°、40°、45°、50°、60°、70°、80°または90°より大きな、上側部分と下側部分との間の半分の角度を含むことができる。
【0242】
一部の場合、下側部分の高さH1は、チャネル中の圧力駆動流および混合を制限、防止または低減するために、チャネルに接続している他のレザーバー中の緩衝液のヘッド高さに等しいまたはほぼ等しい、後に残る試料のヘッド高さを生じるよう構成することができる。下側部分の高さH1は、少なくとも、約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mmまたは10mmとすることができる。下側部分の高さH2は、多くとも、約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mmまたは10mmとすることができる。
【0243】
レザーバー(例えば、溶出用レザーバー)は、レザーバーから分析対象が拡散するのを低減するため、分析対象(例えば、核酸)の拡散長さ規模と比較して、大きな直径を有することができる。一部の場合、レザーバー直径の長さ規模は、ミリメートルの程度とすることができ、レザーバーからの分析対象の得られた拡散時間は、数時間程度とすることができる。チャネルとレザーバー(例えば、溶出用レザーバー)との間の接続は、鋭角なしに設計することができ、これにより、これらの接続部において高い電場領域が発生するのを低減してレザーバー内の分析対象の滞留時間を増大させる。一部の場合、電場に垂直なレザーバー(例えば、溶出用レザーバー)の断面は、電場に垂直なチャネルの断面よりもかなり大きくすることができ、これにより、レザーバーにおける電場強度を低下させて、レザーバー内の分析対象の滞留時間を増大させる。
【0244】
一部の場合、溶出用チャネルおよび/または溶出用レザーバーは、チャネル本体に使用される第1の先導電解質緩衝液とは異なるタイプまたは濃度の第2の先導電解質緩衝液を含むことができる。これにより、第2の先導電解質緩衝液(例えば、溶出用緩衝液または排出溶液)中に精製された物質を溶出させることが可能になる。第2の先導電解質緩衝液内の第2の先導電解質イオンの実効移動度の大きさは、核酸の実効移動度の大きさよりも大きくすることができる。第2の先導電解質緩衝液は、低いイオン強度、例えば、下流でのアッセイ(例えば、qPCR、次世代シークエンシング)に適合可能なイオン強度を有することができる。一部の場合、第2の先導電解質緩衝液は、第1の先導電解質緩衝液と同一であるが、異なる濃度またはイオン強度で存在する(例えば、第1の先導電解質緩衝液のそれよりも小さなイオン強度)。例えば、第1の先導電解質緩衝液は、70~100mM(例えば、70~100mM Tris HCl)の電解質イオン濃度を有することができる一方、第2の先導電解質緩衝液は、70mM未満、60mM未満、または50mM未満(例えば、50mM Tris HCl未満)の電解質イオン濃度を有することができる。
【0245】
流体デバイスのチャネルは閉鎖することができる。例えば、機械部材に連結された機械的作動装置を使用して圧力を適用し、チャネルを完全にまたは部分的に閉鎖することができる(例えば、チャネルの変形による)。溶出用レザーバーは、固定した溶出体積を規定するため、ITPチャネルから遮断することができる。チャネルの閉鎖により、流れが低減され得るか、または流れが完全に遮断され得る。チャネル閉鎖により、流体流動に対して抵抗が高まり得る。一部の例では、チャネル閉鎖は、少なくとも、2倍、3倍、4倍、5倍、10倍、20倍、30倍、40倍、50倍、60倍、70倍、80倍、90倍または100倍、流体抵抗を高めることができる。
【0246】
図12Aは、流体デバイス1210のチャネル1201を閉鎖または少なくとも部分的に閉鎖するために圧力を適用するために使用することができる例示的な機械部材1200を示しており、流体デバイス1210は、並列した多重チャネルを含む(例えば、
図6Cのデバイスは、独立した8つの並列チャネルを含む)。機械部材1200は、
図12Bに示されているチップの8つのチャネルのそれぞれにおいて、2つの場所1204、1205と一直線に並んだ歯1202を有する櫛のような構造を含むことができる。溶出用レザーバー1203への液体の流れの出入りを制限、低減または防止して、溶出体積を制御するため、歯1202によって機械的圧力を適用して、恒久的にもしくは可塑的に閉鎖、または少なくとも部分閉鎖することができる。チャネル1201を少なくとも部分的に閉鎖すると、チャネル1201と溶出用レザーバー1203との間の流体流動に対する抵抗を高めることができる。機械部材1200は、機械部材1200の歯1202によって、チャネル1201に適用される力を生じる機械的駆動装置に連結され得る。機械部材1200は、チャネル1201のヤング弾性率よりも高いヤング弾性率を有する材料を含むことができる。機械部材1200の1つまたは複数の歯1202は、チャネル1201を加熱するよう構成され得る。機械部材1200の1つまたは複数の歯1202は、ヒータまたは加熱素子に熱的に連結され得る。機械部材1200は、ヒータまたは加熱素子を場合により含むことができる。熱は、歯1202により任意選択で適用されて、チャネル1201を恒久的または可塑的に閉鎖することができる。1つまたは複数の歯1202は、1つまたは複数のチャネル1201の少なくとも1つの壁のガラス転移温度より高い温度まで加熱されてもよい。
図12Cは、機械部材1200の16個の歯1202がどのようにチップ1210(チャネルあたり2つ)上の16個の位置1204、1205と一直線に並んでいるかを示している。歯1202はそれぞれ、チャネル1201の少なくとも1つの壁を可塑的に変形させるために、チャネル1201に機械的圧力をもたらすよう構成することができる。各チャネル1201は、機械部材1200によって接触しており、第1の閉鎖位置1204および第2の閉鎖位置1205において可塑的に変形し、溶出用レザーバー体積を隔離して、チャネル1201とレザーバー1203との間の流体抵抗を高める。一部の例では、歯1202は、レザーバー1203の上流のチャネル位置1204に機械的圧力を適用することができる。一部の例では、歯1202は、レザーバー1203とチャネル1201が出くわす合流点に機械的圧力を適用することができる。一部の例では、歯1202は、レザーバー1203と緩衝液用レザーバーとの間の流体連通を防止するため、レザーバーと緩衝液用チャネルが出くわす合流点1205に機械的圧力を適用することができる。
【0247】
一部の場合、機械部材1200は、第1の閉鎖位置1204と一列に並んでいる、チャネルあたり1つの歯1202を含むことができる。例えば、
図5A中に示されているチャネルは、溶出用レザーバーに接続されている緩衝液チャネルまたはレザーバーを含んでおらず、したがって、溶出用レザーバーの後に第2の閉鎖位置1205を必要とし得ない。一部の場合、機械部材1200は、1つまたは複数の位置で、チップ1210上のチャネル1201のそれぞれを閉鎖するように構成されている。一部の場合、機械部材1200は、チップ1210上の1つまたは複数のチャネル1201を開口状態にして、チップ1210上のチャネル1201のほんの一部のみが閉鎖されるように構成されている。
【0248】
機械部材1200は、歯1202により、チャネルあたり少なくとも0.25lbの力を適用することができる。機械部材1200の歯1202はそれぞれ、チャネル1201に対して、少なくとも、0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、0.9、1、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、2、3、4または5ポンドの力を適用することができる。
【0249】
流体デバイスのチャネル(例えば、試料調製ゾーン、等速電気泳動ゾーン)は、包埋材などの汚染物質(例えば、パラフィン)が、流体流動のために適切な余地をチャネル内に依然として残しながらも、チャネル壁上に堆積することができるほど、十分に大きな幅、高さまたは直径を有することができる。一部の場合、流体デバイスのチャネルは、20ミリメートル(mm)、19mm、18mm、17mm、16mm、15mm、14mm、13mm、12mm、11mm、10mm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mm、1mm、0.9mm、0.8mm、0.7mm、0.6mm、0.5mm、0.4mm、0.3mm、0.2mmまたは0.1mm未満またはこれらに等しい、幅、高さまたは直径を有する。一部の場合、流体デバイスのチャネルは、少なくとも0.1mm、0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mmまたは20mmの幅、高さまたは直径を有する。一部の場合、流体デバイスのチャネルは、約1mm~約3.8mmの範囲内の幅を有する。一部の場合、流体デバイスのチャネルは、約0.1mm~約1.2mmの範囲内の高さを有する。
【0250】
一部の場合、流体デバイスのチャネルは、少なくとも、約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、25mm、30mm、35mm、40mm、45mm、50mm、60mm、70mm、80mm、90mm、100mm、110mm、120mm、130mm、140mm、150mm、160mm、170mm、180mm、190mm、200mm、210mm、220mm、230mm、240mm、250mm、260mm、270mm、280mm、290mm、300mm、310mm、320mm、330mm、340mm、350mm、360mm、370mm、380mm、390mm、400mm、410mm、420mm、430mm、440mm、450mm、460mm、470mm、480mm、490mmまたは500mmの長さを有する。一部の場合、流体デバイスのチャネルは、約500mm、490mm、480mm、470mm、460mm、450mm、440mm、430mm、420mm、410mm、400mm、390mm、380mm、370mm、360mm、350mm、340mm、330mm、320mm、310mm、300mm、290mm、280mm、270mm、260mm、250mm、240mm、230mm、220mm、210mm、200mm、190mm、180mm、170mm、160mm、150mm、140mm、130mm、120mm、110mm、100mm、90mm、80mm、70mm、60mm、50mm、45mm、40mm、35mm、30mm、25mm、20mm、19mm、18mm、17mm、16mm、15mm、14mm、13mm、12mm、11mm、10mm、9mm、8mm、7mm、6mm、5mm、4mm、3mm、2mmもしくは1mm未満、またはそれらに等しい長さを有する。
【0251】
流体デバイスのチャネルは、大量の試料体積を収容するよう、十分に大きな幅、高さまたは直径を有することができる。一部の場合、流体デバイスのチャネルは、チャネル中のジュール加熱による昇温を低減するよう、その高さよりも大きな幅を有する。一部の場合、流体デバイスのチャネルは、少なくとも、2:1、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1または100:1の幅対高さ比を有する。一部の場合、流体デバイスのチャネルは、多くとも、2:1、5:1、10:1、15:1、20:1、25:1、30:1、35:1、40:1、45:1、50:1、55:1、60:1、65:1、70:1、75:1、80:1、85:1、90:1、95:1または100:1の幅対高さ比を有する。一部の場合、流体デバイスのチャネルは、約0.1mm2、0.2mm2、0.3mm2、0.4mm2、0.5mm2、0.6mm2、0.7mm2、0.8mm2、0.9mm2、1mm2、1.1mm2、1.2mm2、1.3mm2、1.4mm2、1.5mm2、1.6mm2、1.7mm2、1.8mm2、1.9mm2、2mm2、2.1mm2、2.2mm2、2.3mm2、2.4mm2、2.5mm2、2.6mm2、2.7mm2、2.8mm2、2.9mm2、3mm2、3.1mm2、3.2mm2、3.3mm2、3.4mm2、3.5mm2、3.6mm2、3.7mm2、3.8mm2、3.9mm2、4mm2、4.1mm2、4.2mm2、4.3mm2、4.4mm2、4.5mm2、4.6mm2、4.7mm2、4.8mm2、4.9mm2、5mm2、6mm2、7mm2、8mm2、9mm2、10mm2、11mm2、12mm2、13mm2、14mm2または15mm2未満の断面積を有する。一部の場合、流体デバイスのチャネルは、約0.1mm2、0.2mm2、0.3mm2、0.4mm2、0.5mm2、0.6mm2、0.7mm2、0.8mm2、0.9mm2、1mm2、1.1mm2、1.2mm2、1.3mm2、1.4mm2、1.5mm2、1.6mm2、1.7mm2、1.8mm2、1.9mm2、2mm2、2.1mm2、2.2mm2、2.3mm2、2.4mm2、2.5mm2、2.6mm2、2.7mm2、2.8mm2、2.9mm2、3mm2、3.1mm2、3.2mm2、3.3mm2、3.4mm2、3.5mm2、3.6mm2、3.7mm2、3.8mm2、3.9mm2、4mm2、4.1mm2、4.2mm2、4.3mm2、4.4mm2、4.5mm2、4.6mm2、4.7mm2、4.8mm2、4.9mm2、5mm2、6mm2、7mm2、8mm2、9mm2、10mm2、11mm2、12mm2、13mm2、14mm2または15mm2より大きな断面積を有する。一部の場合、流体デバイスのチャネルは、約1マイクロメートル(μm)、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μmまたは600μm未満の、放熱用の最小長さ規模を有する。一部の場合、流体デバイスのチャネルは、約1マイクロメートル(μm)、5μm、10μm、20μm、30μm、40μm、50μm、100μm、150μm、200μm、250μm、300μm、350μm、400μm、450μm、500μm、550μmまたは600μm超の、放熱用の最小長さ規模を有する。
【0252】
一部の場合、流体デバイスのチャネルは、少なくとも、約1マイクロリットル(μL)、10μL、20μL、30μL、40μL、50μL、60μL、70μL、80μL、90μL、100μL、150μL、175μL、200μL、225μL、250μL、275μL、300μL、350μL、400μL、450μL、500μL、600μL、700μL、800μL、900μL、1ミリリットル(mL)、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、11mL、12mL、13mL、14mL、15mL、16mL、17mL、18mL、19mL、20mL、25mL、30mL、35mL、40mL、50mL、55mL、60mL、65mL、70mL、75mL、80mL、85mL、90mL、95mLまたは100mLの全体積を有する。一部の場合、流体デバイスのチャネルは、多くとも、約1マイクロリットル(μL)、10μL、20μL、30μL、40μL、50μL、60μL、70μL、80μL、90μL、100μL、150μL、175μL、200μL、225μL、250μL、275μL、300μL、350μL、400μL、450μL、500μL、600μL、700μL、800μL、900μL、1ミリリットル(mL)、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、11mL、12mL、13mL、14mL、15mL、16mL、17mL、18mL、19mL、20mL、25mL、30mL、35mL、40mL、50mL、55mL、60mL、65mL、70mL、75mL、80mL、85mL、90mL、95mLまたは100mLの全体積を有する。
【0253】
一部の場合、流体デバイスは、1つより多いチャネルを含む。チャネルは、所与の密度で流体デバイス内に、間隔を設けて配置され得る。一部の場合、チャネル間の縁と縁の距離は、少なくとも、約0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.25mm、1.5mm、1.75mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、5.5mm、6mm、6.5mm、7mm、7.5mm、8mm、8.5mm、9mm、9.5mmまたは10mmである。一部の場合、チャネル間の縁と縁の距離は、多くとも、約0.2mm、0.3mm、0.4mm、0.5mm、0.6mm、0.7mm、0.8mm、0.9mm、1mm、1.25mm、1.5mm、1.75mm、2mm、2.5mm、3mm、3.5mm、4mm、4.5mm、5mm、5.5mm、6mm、6.5mm、7mm、7.5mm、8mm、8.5mm、9mm、9.5mmまたは10mmである。チャネルの密度は、チャネルの幅とチャネル間の空間(または距離)との比として定義することができる。一部の場合、チャネル幅とチャネル間の距離との比は、少なくとも約2:1、2.5:1、3:1、3.5:1、4:1、4.5:1、5:1、5.5:1、6:1、6.5:1、7:1、7.5:1、8:1、8.5:1、9:1、9.5:1、10:1、11:1、12:1、13:1、14:1、15:1、16:1、17:1、18:1、19:1または20:1である。
【0254】
一部の場合、マイクロ流体デバイス内のすべてのチャネル(例えば、チップ)の全体積は、1マイクロリットル(μL)、10μL、20μL、30μL、40μL、50μL、60μL、70μL、80μL、90μL、100μL、150μL、175μL、200μL、225μL、250μL、275μL、300μL、350μL、400μL、450μL、500μL、600μL、700μL、800μL、900μL、1ミリリットル(mL)、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、11mL、12mL、13mL、14mL、15mL、16mL、17mL、18mL、19mL、20mL、25mL、30mL、35mL、40mL、50mL、55mL、60mL、65mL、70mL、75mL、80mL、85mL、90mL、95mLまたは100mLである。一部の場合、マイクロ流体デバイス内のすべてのチャネル(例えば、チップ)の全体積は、多くとも、約1マイクロリットル(μL)、10μL、20μL、30μL、40μL、50μL、60μL、70μL、80μL、90μL、100μL、150μL、175μL、200μL、225μL、250μL、275μL、300μL、350μL、400μL、450μL、500μL、600μL、700μL、800μL、900μL、1ミリリットル(mL)、2mL、3mL、4mL、5mL、6mL、7mL、8mL、9mL、10mL、11mL、12mL、13mL、14mL、15mL、16mL、17mL、18mL、19mL、20mL、25mL、30mL、35mL、40mL、50mL、55mL、60mL、65mL、70mL、75mL、80mL、85mL、90mL、95mLまたは100mLである。
【0255】
流体デバイスの導入口および/または排出口は、それらが、標準の流体取り扱いフォーマットと適合するよう、配列して間隔を設けることができる。例えば、導入口および/または排出口は、5”×3.33”のタイタープレート上のウェルと一直線に並ぶよう、間隔を設けることができる。デバイスは、標準的な8先端ピペッターならびに/または標準的な24、48または96ウェルプレートの寸法における8つのウェルに相当するよう間隔を設けられた8つの導入口および/または排出口を含むことができる。デバイスは、標準的な12先端ピペッターならびに/または標準的な96ウェルプレートの寸法における12のウェルに相当するよう間隔を設けられた12の導入口および/または排出口を含むことができる。デバイスは、標準的な16先端ピペッターならびに/または標準的な384ウェルプレートの寸法における16のウェルに相当するよう間隔を設けられた16の導入口および/または排出口を含むことができる。デバイスは、標準的な24先端ピペッターならびに/または標準的な384ウェルプレートの寸法における24のウェルに相当するよう間隔を設けられた24の導入口および/または排出口を含むことができる。これにより、例えば、ロボットピペットシステムまたは他の多重ピペットにより、このようなプレートからデバイス上への流体の取り扱いを容易にすることが可能になり得る。
【0256】
等速電気泳動は、卓上システムまたはベースステーションを使用して行うことができる。例えば、
図13Aは、流体デバイスカートリッジ1301上で試料調製および等速電気泳動を行うための卓上システム1300を示している。流体デバイスカートリッジは、示されている卓上システムに装入されて、適合カバーおよび制御1302を有する蓋を、流体デバイスカートリッジの上に下げることができる。この卓上システムはまた、システムの操作のために、ユーザーインターフェース(例えばタッチスクリーン)を備えた制御パネル1303を含むことができる。
【0257】
この卓上システムは、流体デバイス上で流体(例えば、試料、緩衝液、試薬、酵素溶液、電解質溶液)を取り扱うために圧力を供給する圧力制御を含むことができる。この卓上システムは、流体の取り扱いを調節または制御するために、圧力フィードバック信号を受信することができる。流体取り扱いは、流体デバイスに流体(例えば、試薬、緩衝液、試料)を装入するために使用することができる。流体取り扱いを使用して、流体デバイスの乾燥チャネルに流体(例えば、試薬溶液)を注入することができる。圧力は、例えば、ソレノイド弁を使用して、調節することができる。
【0258】
この卓上システムは、電極または電気接触点を含むことができる。電極は、電気回路の一部とすることができ、流体デバイスのレザーバーまたは他の開口部に挿入されて、完成回路により、流体デバイス内の電場の印加が可能になる。電気接触点は、流体デバイス、例えば、一体型電極を有する流体デバイスへの対応する接触点に連結することができる。
【0259】
この卓上システムは、本開示においてさらに記載されている検出器を含めた、光学検出器、反射センサー、赤外(IR)検出器、電気検出器、熱センサー、流量センサーおよび圧力センサーなどの、1つまたは複数の検出器またはセンサーを含むことができる。光学検出器は、以下に限定されないが、3軸点検出器(three-axis point detector)、相補性金属酸化物半導体(CMOS)検出器、電荷結合素子(CCD)検出器、フォトダイオード光センサー、フォトレジスタ、光電子増倍管および光トランジスタを含むことができる。電気検出器は、電極、または電圧、電圧差、電流、電荷もしくは他の電気特性を検出することが可能な他の検出器を含むことができる。例えば、終局電解質と先導電解質との間の界面における導電度の変化を検出することによる電気検出器を使用して、抽出または精製済み核酸のバンドの経路を検出することができる。熱センサーは、赤外(IR)センサー、プローブ温度センサー、サーミスター、負温度係数(NTC)サーミスター、抵抗温度検出器(RTD)、熱電対、半導体をベースとするセンサーなどを含むことができる。
【0260】
1つまたは複数の検出器またはセンサーを、同時にまたは独立して、操作または制御することができる。一部の例では、単一チャネルが、専用センサー、例えば熱または電圧センサーを有しており、これらは、マイクロ流体デバイスの他のチャネル専用の他のセンサーとは独立して操作する。独立センサーからのフィードバックを使用して、デバイスの1つまたは複数の電場を独立して制御することができる。例えば、センサーは、本明細書に記載されている通り、ウェル内の経時的な電圧変化を検出することができ、そのセンサーからのフィードバックを使用して、チャネル内の電流を制御することができる。第2のセンサーが、同様に、しかし独立して、第2のチャネルに作用することができる。一部の場合、センサーは、ウェル内の経時的な電流変化を検出することができ、そのセンサーからのフィードバックを使用して、チャネル内の電圧を制御することができる。
【0261】
卓上システムは、流体デバイス、または流体デバイスの一部の温度を制御する1つまたは複数の熱制御装置を含むことができる。熱制御装置は、以下に限定されないが、抵抗ヒータ、流体をベースとする加熱または冷却システム、およびペルティエ素子を含む構成要素を含むことができる。熱制御装置は、以下に限定されないが、金属(例えば、白金、チタン、銅、金)、炭素、および酸化インジウムスズ(ITO)を含む材料から製造することができる。熱制御装置は、制御されている温度をモニタリングして、熱制御のために温度フィードバックを供給するために使用され得る、温度センサーを含むことができる。熱制御装置は、本開示においてさらに議論されている、コンピュータ制御システムと共に使用することができる。例えば、温度センサー(例えば、赤外センサー)を使用して、チップのチャネルにおける温度変化をモニタリングすることができる。このような温度変化は、ITPプロセスの間の、ITPバンド(例えば、核酸のバンド)の位置の指標となり得、その温度差異は、先導電解質と終局電解質との間の導電度変化によるものとすることができる。一部の場合、熱制御装置は、温度フィードバックなしに操作される。
【0262】
本開示の技法(例えば、本明細書において議論されている流体デバイスおよび/または卓上システムの使用を含む)は、迅速な処理時間を実現することができる。例えば、核酸を含む試料を調製することができ(例えば、包埋材の除去、組織破壊、細胞溶解、核酸の脱架橋)、この試料は、後の分析、使用または保管のために、抽出または精製された核酸を有する。
【0263】
検出および定量
【0264】
本開示の技法は、1つまたは複数の検出器を使用することができる。検出器は、流体デバイスに統合され得るか、または流体デバイスの外部に配置することができる。検出器は、例えば、蛍光測定または紫外線(UV)照射(例えば、A260/A280の測定などによる量または純度の測定の場合)によって、試料中の核酸の定量のため、または試料中の核酸の品質測定のために使用することができる。核酸は、流体デバイス上に位置している間、例えば、精製ゾーン(例えば、ITPチャネル)またはレザーバー(例えば、溶出用レザーバー)内にある間に、検出することができる。核酸の濃度を検出することができる(または、本明細書に記載されている通り、溶出用ウェル中などの、既知の体積中での測定量に基づいて算出する)。核酸は、色素を用いるなどにより標識することができ、核酸の蛍光強度は、検出器によって測定することができ、存在する核酸を定量するために使用することができる(例えば、
図14を参照されたい)。核酸は、流体デバイスに装入する前、流体デバイス中にある間、または流体デバイスから回収した後に標識することができる。
【0265】
検出器の使用により、高感度または検出の下限値で、試料からの核酸の定量が可能となり得る。例えば、核酸は、約1000ピコグラム/マイクロリットル(pg/μL)、100pg/μL、10pg/μL、1pg/μL、0.9pg/μL、0.8pg/μL、0.7pg/μL、0.6pg/μL、0.5pg/μL、0.4pg/μL、0.3pg/μL、0.2pg/μLもしくは0.1pg/μL未満、またはこれらに等しい検出限界で検出(例えば、等速電気泳動チャネルにおいてインラインで)することができる。核酸は、約1000ピコグラム(pg)、100pg、10pg、1pgまたは0.1pg未満、またはこれらに等しい検出限界で検出(例えば、等速電気泳動チャネルにおいてインラインで)することができる。
【0266】
検出器の使用により、試料中の核酸の同定または定量が可能になり得る。例えば、核酸増幅(例えば、PCR、リアルタイムPCRおよび逆転写PCRを含む)、ハイブリダイゼーション(例えば、蛍光インシチュハイブリダイゼーション(FISH)およびQ-FISHを含む)およびシークエンシングなどの技法を使用して、試料中の核酸内の特定の配列の存在または非存在を特定することができ、任意選択で、定量することができる。
【0267】
検出器は、核酸抽出または精製操作の制御に使用することができる。例えば、検出器は、等速電気泳動によって濃縮された核酸のバンドを検出することができる。濃縮された核酸がデバイス内のある位置に到着すると、このプロセスは終了し(例えば、電場をオフにすることができる)、抽出または精製された試料をデバイスから回収することができる。
【0268】
検出器は、以下に限定されないが、光学検出器および電気検出器、熱センサー、および圧力センサー(例えば、圧力変換器)を含むことができる。光学検出器は、以下に限定されないが、3軸点検出器、相補性金属酸化物半導体(CMOS)検出器、電荷結合素子(CCD)検出器、フォトダイオード光センサー、フォトレジスタ、光電子増倍管および光トランジスタを含むことができる。光学的検出は、光ダイオード検出と一対になったLED照射によって達成することができる。電気検出器は、電極、または電圧、電圧差、電流、電荷または他の電気特性を検出することが可能な他の検出器を含むことができる。例えば、電気検出器は、抽出または精製済み核酸のバンドの経路を検出するために使用することができる。
【0269】
実行作動の終了
【0270】
ITPを使用して試料を精製する場合、試料ITPゾーンが溶出場所(例えば、チャネルまたはレザーバー)にある場合、電流の印加を正確に停止することが重要となり得る。本開示は、ITPゾーンの位置を評価するための技法を提供し、これを使用して、精製実行の終了を作動することができる。これらの技法は、駆動電圧の測定、導電度の測定、および温度の測定を含むことができる。
【0271】
図15は、緩衝用溶出電極(EH)レザーバー1501および緩衝用先導電解質(LEH)レザーバー1502に置かれた駆動電極、ならびに緩衝用終局電解質(TEH)レザーバー1503に置かれている接地電極を有する、ITPチャネル1500の概略図を示している。図の左側に示されている通り、導電度検出器(例えば、容量結合非接触型電気伝導度検出器(C4D))電極1504は、溶出用レザーバー1505の近傍などのチップの外側に配置することができる。チャネルはまた、先導電解質用レザーバー1506および試料用レザーバーまたは注入点1507を含むことができる。ガスポートは、チャネルからかなり離れた左側および右側の縁に小さな円により表示されている。ガスポートを使用して、自動的に装入するか、または例えば真空もしくは適用した圧力を使用して、取り付けられているレザーバーからチャネルに流体を注入することができる。
【0272】
ITPバンドの位置を測定するための方法の1つは、駆動電極と接地電極との間などの、チャネルの電圧または抵抗を測定することである。2つより多い電極を備えたシステムでは、この測定は、任意の一対の電極間で行うことができる。電圧が駆動する電気泳動もやはり測定電圧であるので、この測定は容易に行うことができる。精製プロセス全体にわたり、終局イオンがチャネルを満たすにつれて、電圧は増加し得る。しかし、溶出用レザーバーは、大きな断面積を有することができ、したがって、全体の抵抗への寄与は小さい。したがって、この領域における緩衝液の導電度の変化は、チャネル全体の抵抗に強力に影響を及ぼすことはなく、電圧は、ITPゾーンが溶出用レザーバーに入ると、上昇が止まり得る。これを、電流印加を停止して実行を停止するための信号として使用することができる。
【0273】
この電圧変化を評価するため、例えば、
図16に示されている通り、電圧の導関数を計算することができる。Lanzcos微分法を使用して、高周波数ノイズを抑制することができる。閾値は、導関数用に設定することができ、微分値が閾値を超えると、作動が実施される。一部の場合、追加の作動を導入すると、制御のロバスト性を改善することができる。例えば、
図16は、4つの作動点を示している。一部の場合、これらの作動のわずか2つしか、駆動電流を変化させるのに使用されていない(例えば、作動1および4)一方、その他(例えば、作動2および3)は、実行時における時間点に印を付けるために使用され、これにより、作動4のタイミングを改善することができる。
図17は、
図16中の電圧の微分解析を示しており、矢印は、作動点を選択するために使用される微分閾値を表している。
【0274】
図16は、駆動電圧の測定からのデータ例を示している。垂線はそれぞれ、作動点を表す。2本の線は、接地電極に対する、2つの電極、すなわちEHおよびLEHレザーバーにおける電極を表している。点A、B、CおよびDは、ITPゾーンが、
図15において印が付けられている対応する位置における時間を示している(A、B、CおよびD;それぞれ、1508、1509、1510および1511と標識が付けられている)。一部の場合、チャネルにおけるどの場所の導電度も、全駆動電圧に影響を及ぼす可能性があり、これにより、溶出用レザーバー近傍で発生していることを評価することを一層困難にし得る。
【0275】
ITPバンドの位置を検出するための第2の方法は、導電度の局所測定を行うことである。これは、容量結合非接触型電気伝導度検出器(C4D)を使用して行うことができる。この方法は、高周波数交流電流を使用して、チャネル壁に流し、電解質を結合させることができる。この局所測定は、溶出用レザーバーそれ自体で行うことができる。この技法は、チャネル全体に行われる測定に関連する曖昧さを低減またはなくすことができる。この技法では、実行作動の終了は、例えば、
図18に示されている通り、溶出用レザーバー導電度検出器における導電度に変化が観察されると直ちに選択することができる。
【0276】
C4D検出は、溶出用チャネルより下に置かれている電極を用いて行うことができる。電極面積を最大化すると、必要な駆動周波数を低下させることができる。例えば、約100kHz~約10MHzとなる駆動周波数を使用することができ、電極接触パッドは、約0.2mm
2~約50mm
2の間となる。C4Dセンサーは、レジスタ、キャパシタ、ダイオードブリッジおよび高周波オペアンプを含めた、電気構成要素を用いて行うことができ、高周波数信号源は、ダイレクトデジタルシンセサイザなどからである。
図19は、C4Dセンサー実装の例示的な概略図を示している。
【0277】
ITPバンドの位置を検出するための第3の方法は、溶出用レザーバー近傍の温度の局所測定を行うことである。この測定は、熱電対または赤外温度センサーを含めた、温度センサーを用いて行うことができる。このセンサーは、溶出用レザーバー近傍のチャネルの下に置くことができ、経時的に温度をモニタリングすることができる。移動度がより低い終局イオンが、移動度がより高い先導イオンに置き換わると(例えば、ITPゾーンのLE-TE界面)、チャネルにおける電場が増大し得、温度は上昇し得る。等速電気泳動中、移動度がより低い終局電解質イオンおよび移動度がより高い先導電解質イオンが、等速電気泳動の界面で出会うことができる。ITP界面は、先導電解質イオンと終局電解質イオンとの間で、濃縮された試料核酸を含むことができる。昇温により、移動度がより高い先導イオンと移動度がより低い終局イオンとの間のITP界面の存在を検出することができ、したがって、それらの間の核酸の存在をやはり示す。この昇温は、1~10℃とすることができる。
【0278】
図20Aおよび
図20Bは、熱探知カメラを使用した、例示的な温度測定結果を示している。これらの画像は、終局イオンがチャネルに入ると、温度が明確に上昇することを示している。
図20Aは、熱探知カメラを使用して撮影した、ITPチャネルの温度マップを示している。チャネルの配向は、
図15におけるものと同じである。
図20Bは、
図20A中のカーソル1の位置における経時的な温度のプロットを示している。約450秒では、ITP界面および終局イオンはこの領域に入り、昇温を引き起こしている。この昇温が検出されて、チャネルに印加される電流を変更するための作動信号として使用することができる。
【0279】
温度は、溶出用レザーバーまたはその近傍の検出場所で測定することができる(例えば、
図21に示されているように)。一部の例では、検出場所は、溶出用レザーバーから少なくとも約5mmのところに位置し得る。一部の例では、検出場所は、溶出用レザーバーから、少なくとも、約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、21mm、22mm、23mm、24mmまたは25mmのところに位置し得る。一部の例では、検出場所は、溶出用レザーバーから、多くとも、約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、21mm、22mm、23mm、24mmまたは25mmのところに位置し得る。一部の例では、温度センサーは、溶出用レザーバーから、少なくとも、約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、21mm、22mm、23mm、24mmまたは25mmのところに位置し得る。一部の例では、温度センサーは、溶出用レザーバーから、多くとも、約1mm、2mm、3mm、4mm、5mm、6mm、7mm、8mm、9mm、10mm、11mm、12mm、13mm、14mm、15mm、16mm、17mm、18mm、19mm、20mm、21mm、22mm、23mm、24mmまたは25mmのところに位置し得る。
【0280】
温度センサーは、温度変化が感知されると、電流変化を作動させることができる。一部の例では、温度の検出変化は、約0.2℃~約5℃の範囲内である。一部の例では、温度の検出変化は、少なくとも、約0.2℃、0.3℃、0.4℃、0.5℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または10℃である。一部の例では、温度の検出変化は、多くとも、約0.2℃、0.3℃、0.4℃、0.5℃、1℃、2℃、3℃、4℃、5℃、6℃、7℃、8℃、9℃または10℃である。
【0281】
一部の場合、1つまたは複数の作動点における、例えば、電圧モニタリング、導電度測定または温度感知によるITPゾーンの検出により、卓上型制御装置が、マイクロ流体チップに印加される電流を変更することができる。この変更は、検出時、または所定の遅延後、直ちに適用され得る。ITPゾーンの検出により、電流の低下、増大または除去が作動し得る。例えば、点C1510においてITPゾーンを検出すると、溶出用レザーバーに続くチャネルにおける、ITPゾーンの滞留時間を増大するため、電流の低下が作動され得る。代替として、または組み合わせて、溶出用レザーバー、ウェル、またはチャネルもしくはチップの領域内のITPゾーン(および核酸)またはその一部を位置決めするため、溶出用レザーバーまたはその近傍に配置されている点D1511においてITPゾーンを検出すると、電流の除去が作動され得る。一部の例では、ITPゾーンの検出により、所定量の時間後に、電流の変化が作動し得る。例えば、検出場所(例えば、1504またはカーソル1の位置)は、ITPゾーンが検出場所と溶出用レザーバーとの間を移動するのに必要な時間が、所与の電流に対して算出することができるよう、既知の距離にある溶出用レザーバーまたはその近傍に位置され得る。制御装置は、移動時間を事前に決定することができ、検出場所においてITPゾーンが検出されると、所定量の時間後に電流除去の遅延が作動し得る。一部の例では、特定の検出場所におけるITPゾーンの検出は、他の感知方法以外の一層正確な作動をもたらし得る、ITPゾーンの空間-時間関係をもたらすことができる。
【0282】
一部の場合、作動点におけるITPゾーンの検出は、マイクロ流体チップに印加される電流の方向または経路を変化させることができる。例えば、ITPゾーンが、チャネル内の進行方向を反転させるよう、電流の反転を作動することができる。別の例では、本システムは、一対の第1の電極間への電流の印加を停止して、一対の第2の電極への電流の印加を開始して、異なる経路に沿って、イオン流を推進させるよう作動され得る。例えば、チャネルは、「y形状」とすることができ、第1のチャネルは、異なる方向で第1のチャネルから分かれる2つのサイドチャネルに導かれる。電流は、それぞれ、第1のチャネルおよび第1のサイドチャネルに接続されている、第1および第2の電極間に最初に駆動することができる。ITPゾーンは、電流の中断なしに、第1のチャネルから第1のサイドチャネルまで移動することができる。第1のチャネルと2つのサイドチャネルとの間の接続点においてITPゾーンが検出されると、それぞれ、第1および第2の電極は駆動電流を停止するよう作動し、第1のチャネルおよび第2のサイドチャネルに接続している第3および第4の電極は駆動電流を開始するよう作動することができる。次に、ITPゾーンは、第1のチャネルから第2のサイドチャネルまで移動する。一部の場合、第1および第3の電極は、同一電極である。このように、この作動は、ITPゾーンの経路がチャネルに沿って変化するよう、電流を変化させることができる。
【0283】
精製された試料のさらなる処理および使用
【0284】
抽出または精製した核酸は、シークエンシング、遺伝子型判定、変異または多形の解析、遺伝子発現レベルの解析、疾患診断、疾患予測、細胞診断学的分類、起源もしくは家系解析、または示唆される処置モダリティの適応に使用することができる。
【0285】
抽出または精製した核酸は、以下に限定されないが、ループ介在等温増幅(LAMP)、鎖置換増幅(SDA)、ヘリカーゼ-依存増幅(HDA)、ローリングサークル増幅(RCA)、ニッキング酵素増幅反応(NEAR)、PCR、逆転写PCR、リアルタイムPCR、定量的PCR(qPCR)、デジタルPCRおよびメチル化特異的PCRを含めた、増幅反応に使用することができる。
【0286】
抽出または精製した核酸は、Maxam-Gilbertシークエンシング、鎖停止シークエンシング(例えば、Sangerシークエンシング),ショットガンシークエンシング、パイロシークエンシング、架橋PCR、コロニーシークエンシング、ポロニーシークエンシング、合成によるシークエンシング、イオン半導体シークエンシング、ナノポアシークエンシング,ナノボールシークエンシング、ライゲーションによるシークエンシング、ハイブリダイゼーションによるシークエンシングおよび一分子リアルタイムシークエンシングを含めたシークエンシング反応に使用することができる。
【0287】
抽出または精製した核酸は、DNAフットプリンティングアッセイなどのタンパク質結合アッセイに使用することができる。例えば、DNアーゼ(例えば、DNアーゼI)は、目的とするDNA分子を無差別に切断するために使用することができる。本開示の技法は、DNアーゼ酵素から消化されたDNAを分離し、さらなる消化を防止するために使用することができる。一部の場合、DNアーゼ消化は、流体デバイス外で行うことができ、次に、精製のため、試料を流体デバイスに装入することができる。他の場合では、DNアーゼ消化は、流体デバイス上で行うことができ、消化が一旦行われると、核酸は流体デバイス上で精製することができる。
【0288】
固定化または包埋試料(例えば、FFPE試料)などの試料は、縦断検討、ゲノムワイド関連検討および集団にわたる他の大規模解析に使用することができる。
【0289】
垂直型またはカラムITP
【0290】
本明細書において議論されているものなどの、平面のITPデバイス設計は、移動するITPバンドにとって水平な空間を利用することができる。96ウェルプレートフォーマットにおけるものなどのハイスループットで試料を処理するため、9mm×9mmフットプリントなどの所与のフットプリントにおいて、試料にITP分離システム全体に適合させることが有利となり得る。これを行う方法の1つは、より多量の試料体積を収容するために、システムの高さを増大することである。これは、全試料体積をミリリットル範囲まで増加する選択肢を提供し、依然として、妥当な実行時間で試料を処理することができる。
【0291】
一部の場合、このようなシステムによる、重量推進流および/または浮力流を低減または防止することが重要となり得る。電解質を混合することなく、ITPに必要な電解質ゾーンを組み立てることもまた重要となり得る。
【0292】
垂直型またはカラム型ITPシステムは、いくつかのITP段を含むことができ、この場合、各段は、底部にゲル(例えば、アガロース)または類似物質を有するカラム(例えば、プラスチック)を含む。ゲルは、高い導電度を有することができる。各段は、ゲルの上部に電解質を導入することにより調製することができる。ゲルは、液体の流れを減速または防止することができる。カラムを作製するために、段には、上部に終局電解質を、底部に先導電解質を積み重ねることができる。次に、このシステムに電流が駆動され得る。精製された分析対象は、カラムの積層を解き、ピペットにより取り出すことにより回収することができる。
【0293】
図22Aは、垂直型(または、カラム型)ITP設定の例示的な概略図を示している。各段中のゲルは、上に水の重量(例えば、水性電解質溶液)を支持することができる。カラムの断面積は、約9mm×9mmとすることができる。このようなシステムは、約9mm×9mmのカラム断面積により、試料を処理することができる。この設計は、例えば、デバイスの全寸法が標準マイクロタイタープレートに適合する、例えば、96試料(カラム)にサイズを合わせることができる。
図22Bは、DNA ITPバンドにより設定した垂直型ITPの例示的な画像を示している。段は、終局電解質(高)(TEH)、試料、先導電解質(LE)および先導電解質(高)(LEH)である。ITPゾーンは、このシステムを通って下に移動する。この画像は、分析対象の最終目的場所にあたる、溶出段(E、
図22Aに示されている)を示していない。
【0294】
コンピュータ制御システム
【0295】
本開示は、本開示の方法を実施するためにプログラム化されるコンピュータ制御システムを提供する。
図13Bは、プログラム化されているか、または他には試料調製、試料抽出もしくは精製、または検出を制御するよう構成されている、コンピュータシステム1304を示している。コンピュータシステム1304は、例えば、圧力または電場の適用、熱制御、検出、定量、フィードバック、およびプロセスの開始または終了などの、本開示の抽出、精製および検出プロセスの様々な態様を調節することができる。コンピュータシステム1304は、電子デバイスに対して遠隔に配置されている、ユーザーの電子デバイスまたはコンピュータシステムとすることができる。電子デバイスは、携帯型電子デバイスとすることができる。
【0296】
コンピュータシステム1304は、並列処理するために、シングルコアもしくはマルチコアプロセッサ、または複数のプロセッサとすることができる、中央処理装置(CPU、本明細書では、「プロセッサ」および「コンピュータプロセッサ」でもある)1305を含む。コンピュータシステム1304はまた、メモリまたはメモリ位置1310(例えば、ランダムアクセスメモリ、読み出し専用メモリ、フラッシュメモリ)、電子記憶ユニット1315(例えば、ハードディスク)、1つまたは複数の他のシステムと通信するための通信インターフェース1320(例えば、ネットワークアダプタ)、ならびにキャッシュ、他のメモリ、データ記憶および/または電子ディスプレイアダプタなどの周辺デバイス1325を含む。メモリ1310、記憶ユニット1315、インターフェース1320および周辺デバイス1325は、マザーボードなどのコミュニケーションバス(実線)によって、CPU1305と通信する。記憶ユニット1315は、データを記憶するためのデータ記憶ユニット(またはデータリポジトリ)とすることができる。コンピュータシステム1304は、通信インターフェース1320の支援を受けて、コンピュータネットワーク(「ネットワーク」)1330に、操作可能に連結することができる。ネットワーク1330は、インターネット、インターネットおよび/もしくはエクストラネット、またはインターネットと通信するイントラネットおよび/もしくはエクストラネットとすることができる。一部の場合、ネットワーク1330は、テレコミュニケーションおよび/またはデータネットワークである。ネットワーク1330は、1つまたは複数のコンピュータサーバーを含むことができ、これは、クラウドコンピューティングなどの分散コンピューティングを可能にすることができる。コンピュータシステム1304の支援による一部の場合、ネットワーク1330は、ピアツーピアネットワークを実行することができ、これにより、コンピュータシステム1304に連結されているデバイスは、クライアントまたはサーバーとして挙動することが可能になり得る。
【0297】
CPU1305は、プログラムまたはソフトウェアに埋め込まれ得る、機械読み取り可能な一連の命令を実行することができる。この命令は、メモリ1310などのメモリ場所に記憶され得る。命令は、CPU1305に指示することができ、CPUは、続いて、プログラムを動かすか、またはそうでない場合、CPU1305を設定して、本開示の方法を実施する。CPU1305によって行われる操作の例は、フェッチ、デコード、実行およびライトバックを含むことができる。
【0298】
CPU1305は、集積回路などの回路の一部とすることができる。システム1304の1つまたは複数の他の構成要素は、回路に含まれ得る。一部の場合、回路は、特定用途向け集積回路(ASIC)である。
【0299】
記憶ユニット1315は、ドライバ、ライブラリおよびセーブしたプログラムなどのファイルを記憶することができる。記憶ユニット1315は、ユーザーデータ、例えば、ユーザーのお気に入りおよびユーザープログラムを記憶することができる。一部の場合、コンピュータシステム1304は、イントラネットまたはインターネットによりコンピュータシステム1304と通信する遠隔サーバーに置かれているなどの、コンピュータシステム1304の外部にある1つまたは複数の追加のデータ記憶ユニットを含むことができる。
【0300】
コンピュータシステム1304は、ネットワーク1330により、1つまたは複数の遠隔コンピュータシステムと通信することができる。例えば、コンピュータシステム1304は、ユーザーの遠隔コンピュータシステムと通信することができる。遠隔コンピュータシステムの例は、パーソナルコンピュータ(例えば、携帯型PC)、据え置き型またはタブレットPC(例えば、Apple(登録商標)iPad(登録商標)、Samsung(登録商標)Galaxy Tab)、電話、スマートフォン(例えば、Apple(登録商標)iPhone(登録商標)、Android対応デバイス、Blackberry(登録商標))または携帯情報端末を含む。ユーザーは、ネットワーク1330を介してコンピュータシステム1304にアクセスすることができる。
【0301】
本明細書に記載されている方法は、例えば、メモリ1310または電子記憶ユニット1315上などの、コンピュータシステム1304の電子記憶場所に記憶される機械(例えば、コンピュータプロセッサ)実行可能コードにより実施することができる。機械実行可能な、または機械読み取り可能なコードは、ソフトウェアの形態で提供することができる。使用中、コードは、プロセッサ1305によって実行することができる。一部の場合、コードは記憶ユニット1315から取り出され、プロセッサ1305により即時アクセスするためにメモリ1310に記憶される。一部の状況では、電子記憶ユニット1315は除外することができ、機械実行可能な命令がメモリ1310に記憶される。
【0302】
コードは、コードを実行するようになされているプロセッサを有する機械により使用するために、あらかじめ編集して構成されるか、または実行時間中に編集され得る。コードは、事前編集されたまたは編集されたままの形式で、コードを実行することが可能となるよう選択され得る、プログラム言語で供給され得る。
【0303】
コンピュータシステム1304などの本明細書において提供されるシステムおよび方法の態様は、プログラミング時に具体化することができる。本技術の様々な態様は、通常、機械読み取り可能な媒体のタイプで実施される、または具体化される機械(またはプロセッサ)実行可能なコードおよび/または関連データの形態の、「製品」または「製造物品」として考えることができる。機械実行可能なコードは、メモリ(例えば、読み取り専用メモリ、ランダムアクセスメモリ、フラッシュメモリ)またはハードディスクなどの、電子記憶ユニットに記憶することができる。「記憶」タイプの媒体は、様々な半導体メモリ、テープドライブ、ディスクドライブなどの、コンピュータ、プロセッサなどの有形メモリ、またはそれらの関連モジュールのいずれかまたはすべてを含むことができ、これらは、ソフトウェアプログラミングのために、任意の時に、非一過性記憶を提供することができる。ソフトウェアのすべてまたは一部は、時として、インターネット、または様々な他のテレコミュニケーションネットワークにより通信することができる。このような通信は、例えば、1つのコンピュータまたはプロセッサから別のコンピュータまたはプロセッサへの、例えば、管理サーバーまたはホストコンピュータからアプリケーションサーバーのコンピュータプラットホームへの、ソフトウェアの装入を可能にし得る。したがって、ソフトウェア要素を有し得る別のタイプの媒体は、有線ネットワークおよび光回線ネットワークを介して、ならびに様々なエアリンク上で、ローカルデバイス間の物理インターフェース上で使用されるような、光波、電波および電磁波を含む。有線リンクもしくは無線リンク、光リンクなどのこのような波を搬送する物理的要素もまた、ソフトウェアを有する媒体として見なされ得る。本明細書で使用する場合、非一過性の有形の「記憶」媒体に制限されない限り、コンピュータまたは機械「読み取り可能な媒体」などの用語は、実行のためにプロセッサに命令を提供することに関与する任意の媒体を指す。
【0304】
したがって、コンピュータ実行可能なコードなどの機械読み取り可能な媒体は、以下に限定されないが、有形の記憶媒体、搬送波媒体または物理送信媒体を含めた、多数の形態を取り得る。不揮発性記憶媒体は、例えば、図面に示されているデータベースなどを実装するために使用され得るものなどの、任意のコンピュータなどにおける記憶デバイスのうちの任意のものなど光ディスクまたは磁気ディスクを含む。揮発性記憶媒体は、このようなコンピュータプラットホームのメインメモリなどの動的メモリを含む。有形送信媒体は、同軸ケーブル(コンピュータシステム内にバスを構成するワイヤを含む、銅線および光ファイバー)を含む。搬送波送信媒体は、無線周波数(RF)通信および赤外線(IR)データ通信の間に生成されるものなどの、電気信号もしくは電磁信号、または音波もしくは光波の形態を取り得る。したがって、コンピュータ読み取り可能な媒体の一般的な形態は、例えば、フロッピーディスク(登録商標)、フレキシブルディスク、ハードディスク、磁気テープ、任意の他の磁気媒体、CD-ROM、DVDもしくはDVD-ROM、任意の他の光媒体、パンチカード紙テープ、穴パターンを有する任意の他の物理記憶媒体、RAM、ROM、PROMおよびEPROM、FLASH-EPROM、任意の他のメモリチップもしくはカートリッジ、データもしくは命令を伝える搬送波、このような搬送波を送信するケーブルもしくはリンク、またはコンピュータがプログラミングコードおよび/もしくはデータを読み出すことができる任意の他の媒体を含む。コンピュータ読み取り可能な媒体のこれらの形態のうちの多くは、1つまたは複数の命令の1つまたは複数のシークエンスを、実行するためにプロセッサへ搬送することに関与することができる。
【0305】
コンピュータシステム1304は、例えば、操作パラメータ(例えば、処理時間、温度、場の強度)、核酸定量情報または他の情報を提供するための、ユーザーインターフェース(UI)1340を備えた電子ディスプレイ535を含むこと、またはこれと通信することができる。UIの例は、非限定的に、グラフィカルユーザーインターフェース(GUI)およびウェブベースのユーザーインターフェースを含む。
【0306】
本開示の方法およびシステムは、1つまたは複数のアルゴリズムによって実施され得る。アルゴリズムは、中央処理装置1305による実行時にソフトウェアによって実施され得る。このアルゴリズムは、例えば、熱制御装置の調節、核酸定量の算出、プロセス機能の制御、およびプロセスの開始または終了を行うことができる。
【0307】
キット
【0308】
この開示は、等速電気泳動プロセスを行うために有用なキットを提供する。一般に、このようなキットは、本明細書において提供されているマイクロ流体デバイス、および1つまたは複数の緩衝液を含む。緩衝液は、1つまたは複数の試料用緩衝液、1つまたは複数の先導電解質緩衝液、1つまたは複数の終局電解質緩衝液、1つまたは複数の溶解緩衝液および/または1つまたは複数の溶出用緩衝液を任意の組合せで含むことができる。一部の場合、本キットは、1つまたは複数の酵素(例えば、RNアーゼ、DNA、ヌクレアーゼ、プロテアーゼ、プロテイナーゼ、ポリメラーゼ)を含むことができる。緩衝液は、個々の管で供給され得る。一部の場合、マイクロ流体デバイスには、1つまたは複数の緩衝液があらかじめ装入されている。本キットは、デバイスの操作および/または試料の処理のための一式の指示書を含むことができる。
【実施例】
【0309】
(実施例1)
FFPE試料からのDNA抽出
【0310】
ヒト患者からFFPE試料を得る。1.1×アルカリ緩衝水溶液(溶液A1)は、ヌクレアーゼ不含蒸留水または脱イオン水中、80mM NaOH、11mM DTTおよび0.5%v/v Igepal CA-630を用いて調製する。10×クエンチ用溶液(溶液A2)は、ヌクレアーゼ不含蒸留水または脱イオン水中で、776mM HClおよび100mM Tris塩基またはTrizma塩基を用いて調製する。市販のプロテイナーゼK溶液およびRNアーゼも供給する。代替として、0~80mM NaCl、5~10mM DTTおよび0.1~0.5%v/v IGEPAL CA-630を含む、5~50mM Tris-HCl中性緩衝(例えば、pH約7.0~約8.0)溶液は、ヌクレアーゼ不含蒸留水または脱イオン水中で調製することができる。
【0311】
FFPE切片またはスクロール(scroll)を、1.5~2.0mLマイクロ遠心管に加える。175μLの溶液A1をこの管に加える。管の内容物を50~99.9℃で1~20分間、インキュベート(一部の場合、管の内容物を95~99.9℃で5~20分間、インキュベートする)して、試料を脱パラフィンする。20μLの溶液A2を管に加えて、溶液A1をクエンチし、pH約7~8.25を有する緩衝液を得た。代替として、FFPE切片またはスクロールは、クエンチした緩衝液または中性緩衝液(例えば、pH約7.0~約8.0)195μL中、50~80℃で1~30分間、インキュベートして、試料を脱パラフィンすることができる。使用することができる他の脱パラフィンプロトコルは、(1)試料をキシレンにより処理し、次いで、96%~100%エタノールを用いて、室温で1回または複数回、洗浄し、次いで、組織を乾燥する、(2)pH約7~pH約8.25の緩衝水溶液中、1~30分間、試料を高温(例えば、50~100℃)でインキュベートする、(3)アルカリ水溶液中、1~30分間、高温(例えば、50~100℃)で試料をインキュベートし、次いで、pH約7~約8.25を有する緩衝液にクエンチする、または(4)鉱物油中、1~30分間、高温(例えば、50~100℃)で試料をインキュベートすることを含む。
【0312】
プロテイナーゼK溶液5μLを脱パラフィンした試料溶液に加えて、最終濃度400~1000μg/mL(通常、600~700μg/mL)および最終体積200μLにする。次に、この溶液を約56℃で15~60分間、インキュベートする。任意選択で、この溶液を80~90℃で2~60分間、さらにインキュベートする。任意選択で、RNアーゼA 3μL(または約50~200μg/mLのRNアーゼA)を上記の溶液に加える。等速電気泳動(ITP)などによりさらに処理するため、次に、この溶液を室温まで冷却し、FFPE溶解物を流体デバイスに装入する。
(実施例2)
DNA抽出収率の比較
【0313】
(i)PCR後クリーンアップとしてqPCR緩衝液(
図3、三角形のデータ点)、および(ii)細胞培養溶解物(
図3、正方形のデータ点)から、流体デバイス中で等速電気泳動を自動化する卓上型制御装置デバイスを使用して、DNAを抽出し、収率はqPCRを使用して算出した。慣用的な固相抽出カラム(SPE;
図3、菱形データ点)を使用する、公表されているDNA収率データを比較のために提示する。
図3は、DNA収率対投入DNA質量を示している。等速電気泳動に使用した先導電解質緩衝液は、44mM HClを含む88mM Trisを含んだ。終局電解質は、終局電解質用レザーバーに装入し、0.3Mカプロン酸および0.6M MOPSを含む1.2M Trisを含んだ。細胞溶解物試料は、5.6mM HClを含む10mM Trisを含む第2の先導電解質緩衝液(試料用緩衝液)中で調製した。ヒトJurkat細胞培養溶解物からのDNAの抽出は、投入したDNA質量約10
-2ナノグラム(ng)~約10
3ngに対して、収率約60%~約90%で行った。細胞を、40mM NaOHを含む水溶液中で1分間、溶解し、続いて、緩衝酸性溶液を用いて1:1の体積比でクエンチし、最終細胞溶解物試料を5.6mM HClおよび20mM NaClを含む10mM Tris(pH8)にした。細胞溶解物試料体積内での最終濃度400μg/mlまでプロテイナーゼKを加え、56℃で10分間、インキュベートした。次に、溶解試料を室温にし、等速電気泳動用の流体デバイスに装入した。10mM Tris-HCl(pH8)を含む緩衝液にスパイクしたゲノムDNA(市販のSPEキットを使用してヒトJurkat細胞からあらかじめ精製した)の抽出を、DNA投入質量約10
-1ng~約10
3ngに対して、約90%~約100%の収率で行った。
【0314】
慣用的なSPEカラムキットと比べて、本明細書で使用した等速電気泳動法およびデバイスは、より高い収率が可能となった。これは、示されている溶解化学による、より高いオフチップ溶解効率と、その後の等速電気泳動を使用する核酸のより効率的な回収によるものとすることができる。本明細書に記載されている等速電気泳動法およびデバイスは、標準カラムと比較して、チップの表面に、より少ない核酸試料の吸着、および/またはカラムよりも流体デバイス内に、より少ない死体積を実現することができる。本明細書に記載されている等速電気泳動法およびデバイスは、長さおよび/または配列に基づく核酸の、偏りがそれほどないまたは偏りがない回収を可能にすることができ、これにより、一層高い回収効率をやはり実現することができる。スパイクインを行ったゲノムDNA試料は、非常に高い回収率(収率)を有し、このことは、等速電気泳動は、等速電気泳動プロセスそれ自体による、試料の系統的損失が非常に少ないことを示し得る(一方、細胞溶解物試料は、使用される溶解化学などの効率の損失に起因する他の要因を有する可能性があり、これは、一層高い収率となるよう改善することができる)。
(実施例3)
架橋化核酸と非架橋化核酸の分離
【0315】
架橋化核酸および非架橋化核酸を含む、脱パラフィンして溶解したマウスFFPE組織試料(実施例1において記載されている通り処理した)を、先導電解質および終局電解質を含む等速電気泳動用の流体デバイスに装入した。試料は実施例1に記載されている通り溶解し、先導電解質溶液中で、5.6mM HClを含む10mM Trisの最終濃度に調製した。先導電解質は、70mM HClを含む140mM Trisを含んだ。終局電解質は、スペーサーイオンとして、HEPESよりも実効移動度の大きさがより大きな0.5Mカプロン酸を含む2.1M Tris、およびイオンとして、実効移動度の大きさがより小さな0.7M HEPESからなる混合物を含んだ。等速電気泳動中、より高い実効移動度の大きさを有する非架橋化核酸は、カプロン酸ゾーンの前方、かつ先導電解質ゾーンの後に集まる。架橋化核酸および試料汚染物質は、カプロン酸ゾーンの後ろ、および架橋度およびその実効移動度の大きさに応じて、HEPESゾーンの前方またはその中のどちらかに集まる。
図23は、DNAから架橋タンパク質を除去するために、2時間(上側)または一晩(下側)消化した後の、等速電気泳動チャネル中のDNA分離の2枚の画像を示している。消化するため、プロテイナーゼKを最終濃度700μg/mlで脱パラフィンした溶解組織(pH8.2にクエンチ)に加えた。スペーサーイオンによって、チャネルの右端の増幅可能な非架橋化DNAから分離された架橋化DNAが、チャネルの左端に現われている。
図23のグラフは、2時間2301および一晩2302消化した場合の、チャネル中のDNA信号強度対位置を示している。
(実施例4)
肺および肝臓FFPE試料に由来するDNAの抽出および精製
【0316】
ホルマリン固定パラフィン包埋(FFPE)マウスの肺および肝臓試料を得た(例えば、Zyagen)。7つの対のFFPE切片(1cm×1cm×5~10μm)を処理し、各対からの1つの切片をオンデバイス等速電気泳動により処理し、比較のために、1つの切片を異なる方法(Promega ReliaPrep FFPE DNAキット)により処理した。等速電気泳動に使用した先導電解質緩衝液は、44mM HClを含む88mM Trisを含んだ。終局電解質は、終局電解質用レザーバーに装入し、0.3Mカプロン酸および0.6M MOPSを含む1.2M Trisを含んだ。80℃で約1分間、pH8.0で、10mM DTT、72mM NaClおよび0.5% IGEPAL CA-630を含む10mM Tris-HCl緩衝液中でインキュベートすることにより、試料を脱パラフィンし、続いて、同一溶液中、56℃で60分間、プロテイナーゼKにより処理した。次に、消化した試料を90℃で15分間、インキュベートした。包埋組織細片およびFFPE組織細片を含む、あらかじめ処理した試料混合物200μLを流体デバイスの試料導入口に分注することにより、各対の切片から1つの試料に対してITPを行った。製造業者のプロトコルに従い、PromegaのReliaPrep FFPE gDNAキットを使用して、各対からの他の切片を抽出した。
図24Aは、可視化するためにインタカレート色素により標識化されている、FFPE試料に由来するDNAを含む、流体デバイス上の2つの近隣ITPチャネルの画像を示している。試料から抽出したDNAは、qPCRを用いて定量した。
図24Bは、7つの試料対のそれぞれの場合の、ナノグラム(ng)で定量した抽出DNAを示している。各対について、暗い方の左側の棒は、ITPの場合の結果を示しており、明るい方の右側の棒は、ReliaPrepキットの場合の結果を示している。最も左端の2つの試料対はヒト肝臓試料であり、残りの5つの試料対はヒト肺試料である。7つの試料対のすべてについて、ITPにより抽出した増幅可能な核酸の量は、ReliaPrepキットにより抽出された核酸の量よりもかなり多い(通常、約1.5~8倍高い増幅可能な収率)。
(実施例5)
核酸のITPに基づく定量
【0317】
ITPを使用する核酸の定量を試験し、qPCRと比較した。RNアーゼPヒト参照遺伝子アッセイ(ABI)を使用して、試料量の全範囲にわたる比較を行った。標準品または較正曲線は、50回のqPCRの実施(10回の複製で、それぞれ5桁高い濃度)から生成し、DNA量のこの範囲のqPCR測定の不確実性を定量するために使用した。
【0318】
標準キット(例えば、Invitrogen PureLink Genomic DNAキット)を使用して、400万個のJurkat細胞からDNAを抽出した。オンデバイスITPの場合、pH12.7 NaOH溶液を使用して、Jurkat細胞をオフチップで2分間、溶解し、塩酸およびTris塩基の溶液を使用して、pH7.5~8の緩衝液にクエンチし、次に、pH8および56℃で10分間、プロテイナーゼKにより処理した。
【0319】
あらかじめ精製したDNAをITPにより処理し、蛍光強度によってITPチャネル中で定量した。等速電気泳動に使用した先導電解質緩衝液は、44mM HClを含む88mM Trisを含んだ。終局電解質は、終局電解質用レザーバーに装入し、0.3Mカプロン酸および0.6M MOPSを含む1.2M Trisを含んだ。試料は、5.6mM HClを含む10mM Trisを含む先導電解質緩衝液(試料用緩衝液)中で調製した。
図14は、既知のDNA試料の質量と比較した、DNAから測定された蛍光強度の滴定曲線を示しており、0.4ピコグラム(pg)から約10
6pgまでの7桁の範囲にわたり、線形である。
図14の上側左の挿入図は、ITPチャネル中の250ngのDNAの画像を示している。
図14の下側右の挿入図は、250pg、2.5ng、25ngおよび250ngのDNAにおける、ITPチャネル中でITPにより抽出したDNAに対する、対数スケールでの点検出器の蛍光信号強度を示している。
(実施例6)
ITP抽出および精製は偏りがない
【0320】
合成した100塩基を標識したDNAオリゴヌクレオチド(63%A-T含量(37% G-C含量、HEX標識)を含む)とDNAオリゴヌクレオチド(68%G-C含量(FAM標識)を含む)との混合物を、3種の濃度(1ng/μL、正方形のデータ点;10ng/μL、菱形のデータ点;100ng/μL、三角形のデータ点)、および5種の濃度比(全体のGCリッチ対ATリッチ率は0.1~10)で調製した。比は、処理前および処理後に得られた、蛍光プレートリーダー測定値から算出した。
図4Aは、ITP処理の場合の、排出物のGCリッチ対ATリッチ比対投入物のGCリッチ対ATリッチ比の比較を示しており、ITPプロセスに偏りがないことを実証している。
【0321】
Experion 12k DNA分析キット(BioRad)からのエレクトロフェログラムピークの積分信号を使用して、処理前および処理後の、1kbのDNAラダー(New England Biosciences)からのオリゴヌクレオチドの混合物の長さを測定した。処理前および処理後の試料内のサイズ分布を、オンデバイスITP(
図4B、上部)、Qiagen QiaAmpカラムキット(
図4B、中央)、およびInvitrogen PureLinkカラムキット(
図4B、下部)について比較した。等速電気泳動に使用した先導電解質緩衝液は、44mM HClを含む88mM Trisを含んだ。終局電解質は、終局電解質用レザーバーに装入し、0.3Mカプロン酸および0.6M MOPSを含む1.2M Trisを含んだ。試料は、5.6mM HClを含む10mM Trisを含む先導電解質緩衝液(試料用緩衝液)中で調製した。各比較については、上部列は、回収した排出物のフラクション中のサイズ分布を示しており、底部列は、試料中の初期サイズ分布を示している。
(実施例7)
細胞溶解物の核酸のオフチップまたはオンチップでのプロテイナーゼKによる消化
【0322】
図25Aは、可視化するために、色素を用いて染色した核酸(ヒト細胞に由来するRNA抽出およびタンパク質消化)を装入した、単一チャネルITPチップの画像を示している。左側の2501は、試料用緩衝液中の200μg/mLプロテイナーゼKを装入する前のオフチップ処理された試料に由来するITPバンドであり、右側の2502は、プロテイナーゼKにより処理しなかった試料である。等速電気泳動に使用した先導電解質緩衝液は、50mM HClを含む100mM Trisを含んだ。終局電解質は、終局電解質用レザーバーに装入し、1Mカプロン酸および1M MOPSを含む1.8M Trisを含んだ。試料は、5.6mM HClを含む10mM Trisを含む先導電解質緩衝液(試料用緩衝液)中で調製した。
図25Bは、可視化するために、色素を用いて染色した核酸(ヒト細胞に由来するRNA抽出およびタンパク質消化)を装入した、単一チャネルITPチップの画像を示している。左側の2501は、先導電解質中、200μg/mLのプロテイナーゼKでオンチップで処理された試料に由来するITPバンドである一方、右側の2502は、プロテイナーゼKにより処理しなかった試料である。両方の場合で、プロテイナーゼKにより処理された試料は、より強いITPバンドを示しており、核酸がタンパク質を伴っていない(より大きな実効移動度の大きさ)ことを示している一方、プロテイナーゼKにより処理されなかった試料は汚れたバンドを示し、核酸が、様々な量のタンパク質(より低い実効移動度の大きさ)を伴っていることを示している。
(実施例8)
オフチップ溶解およびオンチップITP精製を使用するヒト細胞からのRNA抽出
【0323】
図26Aは、消化したDNAを含む細胞溶解物(Jurkat細胞)からのRNAの抽出および精製中の、チップチャネルにおけるRNA ITPバンド2601の画像を示している。
図26Bは、消化したDNAを含まない細胞溶解物(Jurkat細胞)からのRNAの抽出および精製中の、チップチャネルにおける全核酸ITPバンド2602の画像を示している。等速電気泳動に使用した先導電解質緩衝液は、50mM HClを含む100mM Trisを含んだ。終局電解質は、終局電解質用レザーバーに装入し、1Mカプロン酸および1M MOPSを含む1.8M Trisを含んだ。試料は、5.6mM HClを含む10mM Trisを含む先導電解質緩衝液(試料用緩衝液)中で調製した。
図26Cおよび
図26Dは、それぞれ
図26Aおよび
図26B中で示されている試料用のRNA品質エレクトロフェログラム(BioRad Experionを使用して測定した)のグラフを示している。細胞溶解およびDNアーゼ消化は、本明細書において議論されている、7M尿素、2Mチオ尿素および非イオン性界面活性剤を含有する、pH8の緩衝溶液中で行った。これらの結果は、DNA消化を含むまたは含まない、高品質RNAの調製を実証している。
(実施例9)
ITPおよび200μlチップデバイスを使用する、溶解した全血液の抽出
【0324】
図27Aは、開始試料における全血液の体積パーセントの関数としての、マウス全血液のカラム(菱形、Qiagen QiaAmp)抽出と比較した、ITP(正方形)の場合のDNA収量(ng)の結果を示している。
図27Bは、チップ上の溶解したマウスの全血液のITP精製中のITPバンド2401における全核酸の画像を示している。等速電気泳動に使用した先導電解質緩衝液は、130mM HClを含む260mM Trisを含んだ。終局電解質は、終局電解質用レザーバーに装入し、0.5Mカプロン酸および0.7M MOPSを含む2.1M Trisを含んだ。試料は、5.6mM HClを含む10mM Trisを含む先導電解質緩衝液(試料用緩衝液)中で調製した。
【0325】
図27Cおよび
図27Dは、50体積%の全血液溶解物2702のITP精製前およびその後の、溶出用チャネルおよびレザーバー2704からの、試料用チャネルおよび先導電解質(または分離)チャネル2703における、血液試料からのヘムの物理的分離を示すITPチップチャネルの白色光と蛍光の重ね合わせ画像を示している。精製核酸は、溶出用ウェル中で、可視化するために緑色色素により染色されている。
図27Cは、ITP前(チップ中に装入した血液溶解物およびITP緩衝液;溶出用ウェル中の純粋な緩衝液でありDNAは存在しない)のチップを示している。
図27Dは、ITP後(チップ中に装入した血液溶解物およびITP緩衝液;溶出用ウェル中には純粋な緩衝液およびDNA)のチップを示している。
図27Eは、チップITP後精製を示しており、チップチャネルの白色光画像は、単一チャネルチップデバイスにおける、試料ウェル2705中、ならびに溶出用チャネルおよびレザーバー2706からの先導電解質(または分離)チャネル中の血液試料からのヘムの物理的分離を示している(血液量の50体積%)。
図27Fは、チップITP後精製を示しており、チップチャネルの白色光画像は、単一チャネルチップデバイスにおける、試料ウェル2705中、ならびに溶出用チャネルおよびレザーバー2706からの先導電解質(または分離)チャネル中で血液試料からのヘムの物理的分離を示している(血液量の25体積%)。
(実施例10)
オフチップ溶解およびオンチップITP精製を使用する培養ヒトがん細胞からの高分子量DNAの抽出
【0326】
図28は、所与の長さ(Kb)よりも短い断片を有する精製試料中の、DNA質量の百分率としての、培養ヒトJurkat細胞の固相抽出(SPE;破線、Qiagen MagAttract)と比較した、ITPの場合の高分子量DNA精製の結果(実線)を示している。細胞溶解は、5.6mM HClおよび0.2%v/v IGEPAL CA-630を含む、10mM Trisを含有する緩衝化溶解溶液中、オフチップで行った。緩衝溶液は、細胞を溶解し、溶解中、DNAの機械的破壊を低減するように構成した。細胞ペレットを溶解溶液に溶解し、溶解物の均質化を補助するため、反転およびゆっくりとした速度(自動化ピペッター)のワイドボアチップのピペット操作(例えば、Rainin 200μlのワイドボアチップ)により穏やかに混合した。この溶解物に、最終濃度500μg/mlのプロテイナーゼKを加え、60℃で20分間、インキュベートした。先導電解質として44mM HClを含む88mM Tris、および終局電解質として、0.3Mカプロン酸および0.6M MOPSを含む1.2M Trisを含む溶解物にITPを行った。固相構成成分の欠如または抽出プロセス中の高いせん断力(例えば、遠心分離から)のため、SPEと比べると等速電気泳動中のDNAの機械的せん断が小さいことが一部理由となって、ITPをベースとする精製は、ビーズをベースとするPSEキットに比べて、2~3倍大きな平均DNA断片長さとなった。ITP精製されたDNAは、約75Kbの平均長さを有するDNAを与えるSPE精製と比較して、約175Kbの平均DNA長さ(すなわち、DNA質量の50%は、約175Kbより大きなDNA断片を含有した)を有した。ITPにより抽出したDNAの質量の60%を超えるものが、150kBより大きな平均断片長さを含有した。ITPは、SPE法よりも、少なくとも150kBのサイズを有するDNA断片を少なくとも約3倍、多く生成した。
(実施例11)
機械部材を使用するチャネルの閉鎖
【0327】
図29Aは、8つの閉鎖チャネルを含む流体デバイスを示している。各チャネルは、
図12Aの櫛のような機械部材により、デバイスに1秒間、150℃の温度および30ポンドの圧力(全部で16の場所;すなわち1.875ポンド/歯)を適用することにより、
図12Bに示されている2つの場所2902、2902において、恒久的に閉鎖した。
図29Bは、各チャネルの溶出用レザーバー2903に隣接する第2のチャネル閉鎖位置2902の拡大顕微鏡図を示している。
図29Cは、チップに適用した力の関数として計算した、閉鎖パーセントを示している。チャネル閉鎖の程度は、チャネルに装入した流体なしに評価した。閉鎖は、一定圧力を適用して、チャネルを流れる空気流速を測定することにより測定した。5つのチップを評価した。菱形は、第1の閉鎖位置2901から得た閉鎖データを示しており、三角形は、第2の閉鎖位置2902から得られた閉鎖データを示している。力を適用することなく、チャネルは開口された、またはほとんどが開口された。デバイス全体への10ポンドの力は、チャネルの大部分を閉鎖するのに十分であった一方、デバイス全体への30ポンドの力により、チャネルのすべてまたはほとんどすべてが繰り返し閉鎖された。
図29Dは、チャネルが閉鎖されるかどうかを判定するために、導電度測定器による導電度を測定した結果を示している。チップレザーバーおよびチャネルに、
図12A~12Dまたは
図15(先導電解質、緩衝用の高濃度の先導電解質、終局電解質、溶出用緩衝液、緩衝用の高濃度の溶出用緩衝液、および生物学的試料を含まない試料用緩衝液)に記載されているITP緩衝液を装入した。チャネルは機械部材を使用して閉鎖し、次に、溶出用レザーバー2903中の流体をレザーバーからピペット操作で取り出して収集した。溶出流体の導電度を測定し、元の(あらかじめ装入した)溶出用緩衝液(チップに最初に装入したものと同じ緩衝液)の導電度の測定値と比較した。チャネルの閉鎖が、溶出用レザーバー2903とチャネルとの間の第1のチャネル閉鎖位置2901、および溶出用レザーバー2903を溶出緩衝液用レザーバーに接続しているチャネル(溶出緩衝液用チャネルを介する;図示せず)内の第2のチャネル閉鎖位置2902において、十分な流体の抵抗がもたらされる場合、測定される流体の導電度は、元の溶出用緩衝液と同じになることが予期された。チャネルが完全に閉鎖されている場合、溶出した体積の導電度(ITPを行わない)は、溶出用緩衝液単独の導電度に等しくなり得、収集中に、流体またはイオンの移動がないことを示している。4つの状態、すなわち、閉鎖がない(完全に開口したチャネル)場合、第1の閉鎖位置2901が閉鎖されている(部分閉鎖)場合、両方の位置2901、2902が閉鎖(完全閉鎖)されている場合、またはどのレザーバーも閉鎖されているが、溶出用レザーバーがフィルム(「マジックヘルメット(Magic Helmet)」)により密封されている場合を試験した。マジックヘルメットの状態では、チャネルは、機械部材によって物理的に変形されてはいないが、代わりに流体流動に対する抵抗を向上させるため、作業者により適用したフィルムを用いて密閉した。部分閉鎖したチャネルからの溶出体積は、完全に閉鎖したチャネルに比べて、導電度の向上を示した。マジックヘルメットを用いた非溶出用レザーバーの密封は、やはり完全に閉鎖したチャネルと比べて向上したが、一般に溶出用緩衝液の2×の導電度未満のままであった。しかし、これらの導電度レベルは、チャネル閉鎖のない溶離液から得られたものよりはるかに低いものであった。
(実施例12)
電圧測定および実行終了の作動
【0328】
図30は、チャネルの1つにおける、電流の低下または除去を作動させる駆動電圧の測定を使用する、例示的な例を示している。8つのチャネルを備えた流体デバイスのチャネルのそれぞれに、ITP緩衝液(44mM HClを含む88mM Trisを含む先導電解質緩衝液、緩衝用の高濃度の先導電解質、0.3Mカプロン酸および0.6M MOPSを含む1.2M Trisを含む終局電解質緩衝液、5.6mM HClを含む10mM Trisを含む溶出用緩衝液、緩衝用の高濃度の溶出用緩衝液)を装入した。本明細書に記載されている方法を使用して溶解した、50,000個の不死化ヒト細胞を含む試料を調製し、チャネルのそれぞれに装入した。事前溶出等速電気泳動分離は、1900秒間、チャネルに、チャネルあたり900μAを駆動することにより行った。1900秒後(3001)、電流を低下させて、各チャネルに250μAを印加し、核酸を溶出用レザーバーに送り込んだ。等速電気泳動を開始して100秒後、データ源としての駆動電極に電圧を使用する信号処理を開始した(3002)。示されている上の線は、電圧を表し、下の線は、電圧の導関数を表す。2つの作動を使用して、駆動電流を変化させる(それぞれ、位置CおよびDにおける、
図16に記載されている作動1および4に対応する)。溶出用レザーバーまたはチャネルに入る低導電性イオン(例えば試料イオンまたは終局電解質)は、電圧の導関数におけるピークまたは最大値をモニタリングすることにより検出することができる。第1の作動点(作動1)3001に電流をオンにして、核酸を溶出用緩衝液を含むチャネルに導き、その直後に信号処理3002を開始した。核酸が溶出用レザーバーに入ると、作動点3(3003)において第1の増大が検出され、終局電解質が溶出用レザーバーに入り始めると、作動点4(3004)において第2の増大が検出された。溶出用ウェル中の試料核酸を位置づけるまたは単離するよう、作動点4(3004)における第2の増大の検出後に、電流を除去した。
(実施例13)
温度感知および実行終了の作動
【0329】
図21は、チャネルの1つにおける、電流の低下または除去を作動させる赤外熱センサーを使用する、例示的な温度測定を示している。8つのチャネルを備えた流体デバイスのチャネルのそれぞれに、ITP緩衝液(44mM HClを含む88mM Trisを含む先導電解質緩衝液、緩衝用の高濃度の先導電解質、0.3Mカプロン酸および0.6M MOPSを含む1.2M Trisを含む終局電解質緩衝液、5.6mM HClを含む10mM Trisを含む溶出用緩衝液、緩衝用の高濃度の溶出用緩衝液)を装入した。本明細書に記載されている方法を使用して溶解した、50,000個の不死化ヒト細胞を含む試料を調製し、チャネルのそれぞれに装入した。事前溶出等速電気泳動分離は、1900秒間、チャネルに、チャネルあたり900μAを駆動することにより行った。1900秒後、電流を低下させて、各チャネルに250μAを印加し、核酸を溶出用レザーバーに送り込んだ。等速電気泳動を開始して100秒後、温度データを使用した信号処理をTMP007赤外温度センサーによって収集した。温度は、溶出用ウェル2106から約4.5mmの中央にある溶出用レザーバー2106の近傍の溶出用チャネル中の位置2105で検出した。温度センサーは、流体用チャネルの底部表面より約1mm~3mm下に置いた。温度センサーは、溶出用レザーバー2106から、約4.5mmの中央に置くことができる(溶出用レザーバーから、約3.55mm~約5.45mmの縁部を含む)。温度センサーは、チャネルにおける、電気泳動によるジュール加熱による、温度変化を検出するよう構成した。チャネル体積あたりの電気泳動によるジュール放熱は、一定電流では、導電度に逆比例し得る。等速電気泳動中、ITPゾーンがチャネルを通って移動するにつれて、導電度の低い方のイオン(終局電解質)は、導電度の高い方のイオン(先導電解質)と置き換わることができる。温度センサーは、検出場所におけるチャネル内の温度上昇として、検出場所2105を通過するITPゾーン、およびITPゾーンが移動した際のイオンの置き換わりを感知することができる。
【0330】
上の線は、検出場所2105における温度を示しており、下の線は、温度の導関数を示している。温度は、導電度がより低い緩衝液ゾーンを検出するため、高い導関数についてリアルタイムでモニタリングした。垂直線は、重要な事象がモニタリング中に発生したときを示している。左から右まで、第1の線2101は、電流の電源がオンになった時間を示しており、第2の線2102は、その直後の信号処理の開始を示している。第3の線2103は、温度の導関数の増大の第1の検出を示しており、第4の線2104は、温度の導関数の増大の第2の検出を示しており、この時点で、レザーバーにおいて電圧が低下するよう、および溶出用レザーバー中の核酸を位置づけて単離するよう、電流を停止して電圧を無効にした。
(実施例14)
8つのチャネルの流体デバイスでの同時ITP
【0331】
図31A、
図31B、
図31Cおよび
図31Dは、流体デバイスの8つのチャネルにおいて、等速電気泳動を同時に行った結果を示している。DNAは、モノリシックな8つのチャネルの流体デバイスにおいて等速電気泳動を自動化する卓上型制御装置デバイスを使用して、細胞培養溶解物から抽出した。44mM HClおよび0.002%Tween20を含む88mM Trisを含有する先導電解質緩衝液を、各チャネルの先導電解質用レザーバーに装入した。0.002%Tween20を含む、0.3Mカプロン酸および0.6M MOPSを含む1.2M Trisを含む終局電解質を、各チャネルの終局電解質用レザーバーに装入した。各チャネルの試料は、0.002%Tween20を含む5.6mM HClを含む10mM Trisを含む第2の先導電解質緩衝液(例えば、試料用緩衝液)中で調製した。各試料は、細胞溶解物を含んだ。試料あたりヒトCOLO320細胞の総数は、100,000個の二倍体ゲノム等価体であることを示した。細胞をペレット化して、オフチップで、40mM NaOHを含む溶解溶液中で2分間、溶解し、続いて、酸性緩衝溶液を用いて1:1の体積比でクエンチし、最終細胞溶解物試料を5.6mM HClおよび20mM NaClを含む10mM Tris(pH8)にした。細胞溶解物試料体積内での最終濃度400μg/mlまでプロテイナーゼKを加えた。8つの試料のうちの4つは、最終濃度200μg/mlでRNアーゼAにより処理し、室温で2分間、静置した。次に、8つの試料のすべてを56℃で10分間、インキュベートした。次に、これらの溶解試料を室温にし、等速電気泳動の準備で、チャネルA~Hと表示した、マイクロ流体デバイスで個々の8つの試料用レザーバー/チャネルに装入した。RNアーゼAにより処理しなかった4つの試料を、チャネルB、D、FおよびHに装入した。RNアーゼAにより処理した4つの試料は、チャネルA、C、EおよびGに装入した。RNアーゼAにより処理した試料は、最適RNアーゼ活性を可能にするさらなる緩衝用イオンを含有しており、したがって、固定した電流(ITP条件)下では、RNアーゼにより処理しなかった試料とは異なる電圧データトレースをもたらす、イオン強度がより高いまたは導電度がより高い試料となることを示した。チャネルA~Hの独立した電気回路の制御により、デバイスの異なるチャネルのそれぞれに対して、自動化制御および実行終了の作動のための電圧信号およびフィードバック制御が可能になった。
図31Aは、デバイスの試料用チャネル領域中の8つの試料の各々における、集束DNA3101を有するITPバンドの顕微鏡写真を示している。DNA3101のITPバンドは、印加電場に応答して、チャネル内に移動する。ITPバンドは、まず、終局電解質用レザーバーから離れて、矢印3102によって示されている方向に移動する。次に、ITPバンド3101は、印加電場に応答して、180°の小さい分散曲がり角を通過し、反対の方向(チップに対して)3103の溶出用レザーバーに向かってチャネルを移動し続ける。
図31Bは、経時的な、8つのチャネルのそれぞれに関する、固定電流における独立電圧信号データを示している。
図31Cは、独立して制御された実行終了という電圧をベースとする作動により、溶出用レザーバー中に溶出された試料から集束したDNA3101を有する同一の8つのITPバンドの顕微鏡写真を示している(この画像は、電場の自動的な遮断による実行終了を表す)。
図31Dは、
図31B中に示されている作動に使用される、電圧の追跡(モニタリング)の拡大区分である。他のチャネルのそれぞれと独立して各チャネルに印加した電場の変化(この場合、終了)を作動させるため、各チャネルの電流はチャネルに独立して印加し、各チャネルの電圧は独立してモニタリングした。
【0332】
本明細書で使用する場合、用語「または」は、特に明記しない限り、「および/または」を意味する。
【0333】
用語「約」は、本明細書で使用する場合、特に示さない限り、この語により修飾されている値の上下10%以内の値を指す。例えば、用語「約-20℃」は、-22℃~-18℃の範囲を意味する。別の例として、「約1時間」は、54分間~66分間の範囲を意味する。
【0334】
本発明の好ましい実施形態が本明細書に示され、記載されているが、このような実施形態は、単なる例として提示されているに過ぎないことは当業者にとって明白である。これより、多数の変形、変更および置換が、本発明から逸脱することなく、当業者に想起されよう。本明細書に記載されている本発明の実施形態に対する様々な代替が、本発明を実施する際に使用され得ることを理解することができる。以下の特許請求の範囲が、本発明の範囲を定義すること、ならびにこれらの特許請求の範囲の方法および構造、およびそれらの均等物がこれにより包含されていることが意図される。