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特許7277055植物形質を向上するための方法および組成物
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】植物形質を向上するための方法および組成物
(51)【国際特許分類】
   A01H 3/00 20060101AFI20230511BHJP
   C12N 15/74 20060101ALI20230511BHJP
   C12N 15/09 20060101ALI20230511BHJP
   C12N 1/21 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
A01H3/00
C12N15/74 Z ZNA
C12N15/09
C12N1/21
【請求項の数】 28
(21)【出願番号】P 2020189397
(22)【出願日】2020-11-13
(62)【分割の表示】P 2018502160の分割
【原出願日】2016-07-13
(65)【公開番号】P2021045141
(43)【公開日】2021-03-25
【審査請求日】2020-12-11
(31)【優先権主張番号】62/192,009
(32)【優先日】2015-07-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/213,567
(32)【優先日】2015-09-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】518011220
【氏名又は名称】ピボット バイオ, インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100078282
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 秀策
(74)【代理人】
【識別番号】100113413
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 夏樹
(74)【代理人】
【識別番号】100181674
【弁理士】
【氏名又は名称】飯田 貴敏
(74)【代理人】
【識別番号】100181641
【弁理士】
【氏名又は名称】石川 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】230113332
【弁護士】
【氏名又は名称】山本 健策
(72)【発明者】
【氏名】カルステン テム
(72)【発明者】
【氏名】アルヴィン タムシー
(72)【発明者】
【氏名】サラ ブロック
(72)【発明者】
【氏名】ローズマリー クラーク
(72)【発明者】
【氏名】エミリー トゥン
【審査官】大久保 元浩
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第1552846(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0101373(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0266332(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0192605(US,A1)
【文献】特開2015-113274(JP,A)
【文献】特開2015-037385(JP,A)
【文献】特開2014-096996(JP,A)
【文献】国際公開第2013/132518(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2015/0128670(US,A1)
【文献】Journal of Applied Microbiology (2007), Vol.103, No.3, pp.613-20
【文献】FEMS Microbiology Letters (1981), Vol.10, No.1, pp.37-41
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N
A01H
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS/WPIDS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
圃場内のトウモロコシ植物における大気由来窒素の量を増加させる方法であって、
圃場内のトウモロコシ植物を、nifHの発現または活性を増加させる、窒素固定の遺伝子調節ネットワークに導入された少なくとも1つの遺伝子変異を含む複数の操作されたジアゾ栄養生物に曝露するステップであって、前記導入された少なくとも1つの遺伝子変異が、前記複数の操作されたジアゾ栄養生物と同じ属の少なくとも1種の生物に由来する遺伝物質を含み、前記複数の操作されたジアゾ栄養生物は、異なる属の生物から導入された遺伝物質を含まない、ステップ
を含み、それにより、前記操作されたジアゾ栄養生物に曝露された前記トウモロコシ植物が、前記操作されたジアゾ栄養生物と同じ種の、同量の操作されていないジアゾ栄養生物に曝露されたトウモロコシ植物と比べて増加した量の大気由来窒素を含む、方法。
【請求項2】
前記導入された少なくとも1つの遺伝子変異が、前記操作されたジアゾ栄養生物と同じ種のジアゾ栄養生物からの遺伝物質の挿入を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記複数の操作されたジアゾ栄養生物と同じ属のジアゾ栄養生物に由来する前記遺伝物質が、調節エレメントを含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記調節エレメントが異種性調節エレメントである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記調節エレメントがプロモーターである、請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記プロモーターが、環境窒素の存在下で活性なプロモーターである、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記複数の操作されたジアゾ栄養生物がさらに、窒素同化の遺伝子調節経路内に改変を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記複数の操作されたジアゾ栄養生物が、GlnE、AmtB、ntrB、ntrC、グルタミン合成酵素をコードするポリヌクレオチド、glnA、glnB、glnK、dr
aT、グルタミナーゼをコードするポリヌクレオチドおよびglnDからなる群より選択される遺伝子の活性または発現を変化させる改変を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
nifHの発現または活性を増加させる、窒素固定の遺伝子調節ネットワークに導入された前記少なくとも1つの遺伝子変異が、非窒素制限条件下でnifHの発現または活性を増加させる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の操作されたジアゾ栄養生物が圃場内にあるとき、同じ圃場内の同じ種の複数の操作されていないジアゾ栄養生物と比べて増加したnifHの発現または活性を有する、請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の操作されたジアゾ栄養生物が着生菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記複数の操作されたジアゾ栄養生物が内部寄生菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記複数の操作されたジアゾ栄養生物が根圏菌を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項14】
nifHの増加した発現もしくは活性、nifAの増加した発現もしくは活性、およびnifLの低下した発現もしくは活性のうち1つまたは複数をもたらす、窒素固定の遺伝子調節ネットワークまたは窒素同化の遺伝子調節ネットワークに導入された少なくとも1つの遺伝子変異を含む操作された微生物と、
トウモロコシ植物種子と
を含む組成物であって、前記少なくとも1つの遺伝子変異が、前記操作された微生物と同じ属に由来する遺伝物質を含み、前記操作された微生物は、異なる属の生物から導入された遺伝物質を含まない、組成物。
【請求項15】
前記操作された微生物が前記トウモロコシ植物種子上にコーティングとして存在する、請求項14に記載の組成物。
【請求項16】
前記操作された微生物が前記トウモロコシ植物種子の一部の上にコーティングされる種子コーティング内にある、請求項15に記載の組成物。
【請求項17】
前記操作された微生物が操作された細菌である、請求項14に記載の組成物。
【請求項18】
前記操作された微生物が操作されたジアゾ栄養性細菌である、請求項14に記載の組成物。
【請求項19】
前記操作された微生物が、窒素固定の遺伝子調節ネットワーク内に導入された遺伝子変異を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項20】
前記操作された微生物が、窒素同化の遺伝子調節ネットワーク内に導入された遺伝子変異
を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項21】
前記操作された微生物がさらに、amtB、ntrB、ntrC、グルタミン合成酵素をコードするポリヌクレオチド、glnA、glnB、glnK、draT、グルタミナーゼをコードするポリヌクレオチドおよびglnDからなる群より選択される遺伝子の活性または発現を変化させる遺伝子変異を含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項22】
前記操作された微生物と同じ属に由来する前記遺伝物質が調節エレメントを含む、請求項14に記載の組成物。
【請求項23】
前記調節エレメントがプロモーターである、請求項22に記載の組成物。
【請求項24】
前記プロモーターが、外来性窒素の存在下で活性である、請求項23に記載の組成物。
【請求項25】
前記操作された微生物が着生菌である、請求項14に記載の組成物。
【請求項26】
前記操作された微生物が内部寄生菌である、請求項14に記載の組成物。
【請求項27】
前記操作された微生物が根圏菌である、請求項14に記載の組成物。
【請求項28】
前記操作された微生物の前記遺伝物質が、前記操作された微生物と異なる種に由来する遺伝物質を含まない、請求項14に記載の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願は、2015年7月13日に出願された米国仮特許出願第62/192,009号および2015年9月2日に出願された米国仮特許出願第62/213,567号の優先権を主張し、それらの全体は本明細書に参照により組み込まれる。
【0002】
本発明は、米国国立科学財団により与えられたSBIR助成金1520545の下、米国政府の支援によりなされた。政府は、本開示の主題における一定の権利を有する。
【背景技術】
【0003】
植物は、共通のメタボロームを介してマイクロバイオームに繋がっている。特定の作物の形質と基本的なメタボロームとの多次元的な関係性は、多数の局所最大値を有するランドスケープにより特徴付けられる。メタボロームに対するマイクロバイオームの影響を変更することによって下位の局所最大値からより良好な形質を表す別の局所最大値へと最適化することは、作物最適化のため等の様々な理由で望ましい場合がある。増加し続ける世界人口の必要性を満たすため、経済的に、環境的に、さらに社会的に持続可能な農業および食糧生産の手法が求められている。国連食糧農業機関は、増加し続ける人口の必要性を満たすために、2050年までに総食糧生産が70%増加しなければならないと予測している。この難問は、真水資源の減少、耕地競合の増加、エネルギー価格の上昇、投入コストの増加、および作物が、より乾燥し温暖化したより極端な全地球的気候の圧力に適応する必要がある可能性が高いことなど、多数の要因のためにさらに難しいものになっている。
【0004】
興味深い1つの分野は、窒素固定の向上である。窒素ガス(N)は、地球の大気の主成分である。加えて、窒素元素(N)は、生命体を形成する多数の化合物の重要な成分である。しかしながら、多くの生物は、成長および生殖等の生理学的なプロセスで使用される化学物質を合成するために、Nを直接使用することができない。Nを利用するためには、Nを水素と化合させなければならない。水素とNの化合は、窒素固定と呼ばれる。窒素固定は、化学的に達成される場合でもまたは生物学的に達成される場合でも、大量のエネルギー投資を必要とする。生物系では、ニトロゲナーゼとして公知の酵素により、窒素固定をもたらす反応が触媒される。窒素固定研究の重要な目標は、この表現型を、非マメ科植物、特に、小麦、米、およびトウモロコシ等の重要な農業学的イネ科植物に拡張することである。根粒菌とマメ科植物との間で発達した窒素固定共生の理解が大きく進歩したにも関わらず、その知識を使用して非マメ科作物に窒素固定根粒を誘導する目処は依然として立っていない。そうするうちにも、例えば肥料に十分な補充的窒素供給源を提供するという課題は、食糧生産増加の必要性が増加すると共に増加し続けると予想される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記に照らして、関連するマイクロバイオームにより付与される植物の形質を向上させる必要性が存在する。本開示は、この必要性に取り組むと共に、追加の利点を提供するものである。一部の場合では、マイクロバイオームを構成する種とそれらの基本的遺伝的特徴はどちらも、メタボロームに対する微生物影響を調整するための標的である。
【0006】
一態様では、本開示は、非マメ科植物における窒素固定を増加させるための方法であって、植物を複数の細菌に曝露するステップを含み、複数の各メンバーが、細菌が外来性窒素の存在下で大気窒素を固定できるように、細菌の窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの1つもしくは複数の遺伝子または非コードポリヌクレオチドに導入された1つまたは複数の遺伝子変異を含み、細菌が、属間微生物(intergeneric microorganism)ではなく、細菌が、植物における固定窒素の1%またはそれよりも多くを植物内で産生する、方法を提供する。
【0007】
一部の実施形態では、細菌は、植物における固定窒素の5%またはそれよりも多くを植物内で産生する。一部の実施形態では、細菌は、植物における固定窒素の10%またはそれよりも多くを植物内で産生する。
【0008】
一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子変異は、窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークのうちの1つまたは複数の遺伝子に作動可能に連結した導入制御配列を含む。さらなる実施形態では、制御配列は、プロモーターである。さらなる実施形態では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。一部の実施形態では、細菌は、窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの遺伝子に作動可能に連結した構成的プロモーターを含まない。一部の実施形態では、細菌は、nif遺伝子クラスターの遺伝子に作動可能に連結した構成的プロモーターを含まない。
【0009】
一部の実施形態では、細菌は、窒素固定の窒素含有産物を植物内で排出する。一部の実施形態では、植物に曝露した複数の細菌は、外因性非大気窒素の取り込み増加を刺激しない。
【0010】
一部の実施形態では、植物は、1エーカー当たり約50lbの窒素含有肥料を与えた圃場に由来する土壌で栽培され、窒素含有肥料は、少なくとも5重量%の窒素を含む。さらなる実施形態では、窒素含有肥料は、アンモニウムまたはアンモニウム含有分子を含む。一部の実施形態では、外来性窒素は、グルタミン、アンモニア、アンモニウム、尿素、硝酸塩、亜硝酸塩、アンモニウム含有分子、硝酸塩含有分子、および亜硝酸塩含有分子のうちの1つまたは複数を含む肥料から選択される。
【0011】
一部の実施形態では、複数の細菌は、少なくとも2つの異なる種の細菌を含む。一部の実施形態では、複数の細菌は、同じ種の細菌の少なくとも2つの異なる菌株を含む。一部の実施形態では、複数の細菌は、Enterobacter属である。一部の実施形態では、複数の細菌は、内部寄生性、着生性、または根圏性(rhizospheric)である。一部の実施形態では、複数の細菌は、植物にコロニーを形成し、植物の生重量1グラム当たり少なくとも10cfuで植物中に存在する。
【0012】
一部の実施形態では、細菌の窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの1つもしくは複数の遺伝子または非コードポリヌクレオチドは、以下のものからなる群から選択される:nifA、nifL、ntrB、ntrC、グルタミン合成酵素をコードするポリヌクレオチド、glnA、glnB、glnK、drat、amtB、グルタミナーゼをコードするポリヌクレオチド、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQ。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子変異は、以下のうちの1つまたは複数をもたらす突然変異である:NifAもしくはグルタミナーゼの発現もしくは活性の増加;NifL、NtrB、グルタミン合成酵素、GlnB、GlnK、DraT、AmtBの発現もしくは活性の減少;GlnEのアデニリル除去活性の減少;またはGlnDのウリジリル除去活性の減少。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子変異は、(A)ノックアウト突然変異であるか、(B)標的遺伝子の調節配列を変更もしくは消失させるか、または(C)異種性調節配列を挿入することを含む。
【0013】
一部の実施形態では、植物は、農業作物植物である。さらなる実施形態では、農業作物植物は、ソルガム、キャノーラ、トマト、イチゴ、大麦、米、トウモロコシ、および小麦から選択される。さらなる実施形態では、植物は、遺伝子改変生物である。さらなる実施形態では、植物は、遺伝子改変生物ではない。一部の実施形態では、植物は、効率的な窒素使用のために遺伝子操作されているかまたは品種改良されている。
【0014】
一態様では、本開示は、細菌が外来性窒素の存在下で大気窒素を固定できるように、細菌の窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの1つもしくは複数の遺伝子または非コードポリヌクレオチドに導入された1つまたは複数の遺伝子変異を含む細菌を含む細菌集団であって、細菌が、属間微生物ではなく、細菌が、細菌の集団の存在下で栽培される植物における固定窒素の1%またはそれよりも多くを植物内で産生する細菌集団を提供する。
【0015】
一部の実施形態では、細菌は、植物における固定窒素の5%またはそれよりも多くを植物内で産生する。一部の実施形態では、細菌は、植物における固定窒素の10%またはそれよりも多くを植物内で産生する。
【0016】
一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子変異は、窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークのうちの1つまたは複数の遺伝子に作動可能に連結した導入制御配列を含む。さらなる実施形態では、制御配列は、プロモーターである。さらなる実施形態では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。一部の実施形態では、細菌は、窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの遺伝子に作動可能に連結した構成的プロモーターを含まない。一部の実施形態では、細菌は、nif遺伝子クラスターの遺伝子に作動可能に連結した構成的プロモーターを含まない。
【0017】
一部の実施形態では、細菌は、窒素固定の窒素含有産物を植物内で排出する。一部の実施形態では、植物に曝露した複数の細菌は、外因性非大気窒素の取り込み増加を刺激しない。一部の実施形態では、外来性窒素は、グルタミン、アンモニア、アンモニウム、尿素、硝酸塩、亜硝酸塩、アンモニウム含有分子、硝酸塩含有分子、および亜硝酸塩含有分子のうちの1つまたは複数を含む肥料から選択される。
【0018】
一部の実施形態では、細菌集団は、少なくとも2つの異なる種の細菌を含む。一部の実施形態では、細菌集団は、同じ種の細菌の少なくとも2つの異なる菌株を含む。一部の実施形態では、複数の細菌は、Enterobacter属である。一部の実施形態では、複数の細菌は、内部寄生性、着生性、または根圏性(rhizospheric)である。一部の実施形態では、複数の細菌は、植物にコロニーを形成し、植物の生重量1グラム当たり少なくとも10cfuで植物中に存在する。
【0019】
一部の実施形態では、細菌の窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの1つもしくは複数の遺伝子または非コードポリヌクレオチドは、以下のものからなる群から選択される:nifA、nifL、ntrB、ntrC、グルタミン合成酵素をコードするポリヌクレオチド、glnA、glnB、glnK、drat、amtB、グルタミナーゼをコードするポリヌクレオチド、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQ。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子変異は、以下のうちの1つまたは複数をもたらす突然変異である:NifAもしくはグルタミナーゼの発現もしくは活性の増加;NifL、NtrB、グルタミン合成酵素、GlnB、GlnK、DraT、AmtBの発現もしくは活性の減少;GlnEのアデニリル除去活性の減少;またはGlnDのウリジリル除去活性の減少。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子変異は、(A)ノックアウト突然変異であるか、(B)標的遺伝子の調節配列を変更もしくは消失させるか、または(C)異種性調節配列を挿入することを含む。
【0020】
一部の実施形態では、植物は、農業作物植物である。さらなる実施形態では、農業作物植物は、ソルガム、キャノーラ、トマト、イチゴ、大麦、米、トウモロコシ、および小麦から選択される。さらなる実施形態では、植物は、遺伝子改変生物である。さらなる実施形態では、植物は、遺伝子改変生物ではない。一部の実施形態では、植物は、効率的な窒素使用のために遺伝子操作されているかまたは品種改良されている。
【0021】
一態様では、本開示は、本開示の細菌集団を含む組成物を提供する。一部の実施形態では、組成物は、種子の表面にコーティングされた細菌集団を含む。一部の実施形態では、組成物は、液剤または粉末として製剤化される。
【0022】
一態様では、本開示は、ATCC受託番号PTA-122293またはPTA-122294として寄託されている単離された細菌を提供する。
【0023】
一態様では、本開示は、細菌が外来性窒素の存在下で大気窒素を固定できるように、細菌の窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの1つもしくは複数の遺伝子または非コードポリヌクレオチドに導入された1つまたは複数の遺伝子変異を含む、非属間細菌(non-intergenic bacterium)を提供する。
【0024】
一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子変異は、窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークのうちの1つまたは複数の遺伝子に作動可能に連結した導入制御配列を含む。さらなる実施形態では、制御配列は、プロモーターである。さらなる実施形態では、プロモーターは、誘導性プロモーターである。一部の実施形態では、細菌は、窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの遺伝子に作動可能に連結した構成的プロモーターを含まない。一部の実施形態では、細菌は、nif遺伝子クラスターの遺伝子に作動可能に連結した構成的プロモーターを含まない。
【0025】
一部の実施形態では、細菌の窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの1つもしくは複数の遺伝子または非コードポリヌクレオチドは、以下のものからなる群から選択される:nifA、nifL、ntrB、ntrC、グルタミン合成酵素をコードするポリヌクレオチド、glnA、glnB、glnK、drat、amtB、グルタミナーゼをコードするポリヌクレオチド、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQ。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子変異は、以下のうちの1つまたは複数をもたらす突然変異である:NifAもしくはグルタミナーゼの発現もしくは活性の増加;NifL、NtrB、グルタミン合成酵素、GlnB、GlnK、DraT、AmtBの発現もしくは活性の減少;GlnEのアデニリル除去活性の減少;またはGlnDのウリジリル除去活性の減少。一部の実施形態では、1つまたは複数の遺伝子変異は、(A)ノックアウト突然変異であるか、(B)標的遺伝子の調節配列を変更もしくは消失させるか、または(C)異種性調節配列を挿入することを含む。
【0026】
一部の実施形態では、細菌は、Enterobacter属に由来する。一部の実施形態では、細菌は、内部寄生性、着生性、または根圏性である。
【0027】
一態様では、本開示は、1つまたは複数の細菌を産生するための方法を提供する。一実施形態では、方法は、(a)第1の植物の組織または土壌から細菌を単離するステップ;(b)遺伝子変異(例えば、1つまたは複数の遺伝子変異)を、細菌のうちの1つまたは複数に導入して、1つまたは複数の変異細菌を産生するステップ;(c)複数の植物を変異細菌に曝露するステップ;(d)複数の植物のうち1つの組織または土壌から細菌を単離するステップであって、細菌を単離した植物が、複数の植物中の他の植物と比べて向上された形質を有する、ステップ;および(e)ステップ(d)で単離された細菌を用いてステップ(b)~(d)を繰り返すステップを含む。向上された形質は、細菌を単離した植物中および/または細菌に曝露した植物における窒素固定の増強であってもよい。遺伝子変異は、以下のものからなる群から選択される遺伝子の変異であってもよい:nifA、nifL、ntrB、ntrC、glnA、glnB、glnK、draT、amtB、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQ。遺伝子変異は、以下のものからなる群から選択される機能性を有するタンパク質をコードする遺伝子の変異であってもよい:グルタミン合成酵素、グルタミナーゼ、グルタミン合成酵素アデニリルトランスフェラーゼ、転写活性化因子、抗転写活性化因子、ピルビン酸フラボドキシンオキシドレダクターゼ、フラボドキシン、またはNAD+二窒素レダクターゼADP-D-リボシルトランスフェラーゼ。一部の実施形態では、遺伝子変異は、以下のうちの1つまたは複数をもたらす突然変異である:NifAもしくはグルタミナーゼの発現もしくは活性の増加;NifL、NtrB、グルタミン合成酵素、GlnB、GlnK、DraT、AmtBの発現もしくは活性の減少;GlnEのアデニリル除去活性の減少;またはGlnDのウリジリル除去活性の減少。遺伝子変異は、ノックアウト突然変異であってもよく、タンパク質ドメインの活性の排除もしくは消失をもたらしてもよく、標的遺伝子の調節配列を変更もしくは消失させてもよく、および/または異種性調節配列の挿入を含んでもよい。一部の実施形態では、遺伝子変異は、遺伝子変異が導入されている細菌に対応する細菌種または属のゲノム内に見出される調節配列の挿入を含む。調節配列は、任意選択で、細菌培養物のまたは植物組織内の遺伝子の発現レベルに基づいて選択してもよい。遺伝子変異は、ランダムな位置でのランダム突然変異、標的部位でのランダム突然変異、または標的部位に特異的に導入される所定の遺伝子変異であってもよい。遺伝子変異は、1つまたは複数のヌクレオチドの挿入、欠失、または置換、またはそれらの任意の組合せを含んでもよい。遺伝子変異は、化学的突然変異誘発により生成してもよい。一部の実施形態では、方法は、植物を生物ストレス因子または非生物ストレス因子に曝露することをさらに含む。一部の実施形態では、ステップ(b)~(d)を1回または複数回繰り返した後で単離された細菌は、第1の植物と同じタイプの第2の植物または細菌に曝露した植物における窒素の1%またはそれよりも多く(例えば、少なくとも2%、5%、10%、またはそれよりも多く)を産生する。さらに、そのような産生は、第2の植物が、グルタミン、アンモニア、または窒素の他の化学的供給源で補充された肥料の存在下で栽培される場合に達成されてもよい。一部の実施形態では、ステップ(b)~(d)を1回または複数回繰り返した後で単離された細菌は、第1の植物から単離された細菌と比較して、少なくとも2倍増(例えば、少なくとも5倍増)の窒素固定を示す。第1の植物または複数の植物中の植物は、大麦、米、トウモロコシ、小麦、ソルガム、スイートコーン、サトウキビ、玉ねぎ、トマト、イチゴ、またはアスパラガスから選択される植物等の農業作物植物であってもよい。第1の植物または複数の植物中の植物は、Setaria属、Brachypodium属、またはArabidopsis属から選択される植物等のモデル植物であってもよい。一部の実施形態では、ステップ(a)は、単離された細菌の遺伝子分析を実施することをさらに含む。一部の実施形態では、ステップ(b)は、選択圧を加えて、遺伝子変異を含む細菌を富化すること、および任意選択で、選択圧を生き残った細菌を単離することをさらに含む。選択圧は、標的部位に導入された遺伝子変異が欠如したゲノムを切断し、切断が、標的部位の100ヌクレオチド内で生じることを含んでもよい。切断は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPRヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼからなる群から選択されるヌクレアーゼ等の部位特異的ヌクレアーゼにより指示することができる。一部の場合では、CRISPRヌクレアーゼが好ましい場合がある。ステップ(b)~(d)を1回または複数回繰り返した後で単離された細菌は、内部寄生性、着生性、または根圏性である。細菌は、植物組織(例えば、種子)から単離してもよい。細菌は、複数の異なる細菌分類群を含んでもよい。一部の実施形態では、ステップ(a)での細菌単離は、第1の植物の種子から細菌を単離することを含む。
【0028】
一態様では、本開示は、植物における窒素固定を増加させるための方法を提供する。一実施形態では、方法は、植物を、窒素固定を調節する1つまたは複数の遺伝子に導入された1つまたは複数の遺伝子変異を含む細菌に曝露するステップを含み、細菌は、植物における窒素の1%またはそれよりも多く(例えば、少なくとも2%、5%、10%、またはそれよりも多く)を産生する。細菌は、グルタミン、アンモニア、または補充窒素の他の化学的供給源で補充された肥料の存在下で窒素を産生することができる。一部の実施形態では、遺伝子変異は、以下のものからなる群から選択される遺伝子の変異である:nifA、nifL、ntrB、ntrC、グルタミン合成酵素、glnA、glnB、glnK、draT、amtB、グルタミナーゼ、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQ。遺伝子変異は、以下のうちの1つまたは複数をもたらす突然変異であってもよい:NifAもしくはグルタミナーゼの発現もしくは活性の増加;NifL、NtrB、グルタミン合成酵素、GlnB、GlnK、DraT、AmtBの発現もしくは活性の減少;GlnEのアデニリル除去活性の減少;またはGlnDのウリジリル除去活性の減少。一部の実施形態では、遺伝子変異(a)は、ノックアウト突然変異であるか、(B)標的遺伝子の調節配列を変更もしくは消失させるか、または(c)異種性調節配列の挿入を含む。細菌は、内部寄生性、着生性、または根圏性であってもよい。一部の場合では、細菌は、Enterobacter属またはRahnella属である。細菌は、複数の異なる細菌分類群を含んでもよい。一部の実施形態では、植物は、ソルガム、キャノーラ、トマト、イチゴ、大麦、米、トウモロコシ、および小麦から選択される植物等の農業作物植物である。植物は、非マメ科植物であってもよい。植物は、遺伝子改変生物(GMO;例えば、異種性遺伝子を保持するように変更されたゲノムを有する植物)であってもよく、非遺伝子改変生物(非GMO)であってもよく、または効率的な窒素使用のために遺伝子操作もしくは品種改良されていてもよい。
【0029】
一態様では、本開示は、細菌集団を提供する。一実施形態では、細菌集団は、窒素固定を調節する1つまたは複数の遺伝子に導入された1つまたは複数の遺伝子変異を含む細菌を含み、細菌は、細菌の集団の存在下で栽培された植物における窒素の1%またはそれよりも多く(例えば、少なくとも2%、5%、10%、またはそれよりも多く)を産生する。細菌は、グルタミン、アンモニア、または補充窒素の他の化学的供給源で補充された肥料の存在下で窒素を産生することができる。一部の実施形態では、遺伝子変異は、以下のものからなる群から選択される遺伝子の変異である:nifA、nifL、ntrB、ntrC、グルタミン合成酵素、glnA、glnB、glnK、draT、amtB、グルタミナーゼ、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQ。遺伝子変異は、以下のうちの1つまたは複数をもたらす突然変異であってもよい:nifAまたはグルタミナーゼの発現の増加;nifL、ntrB、グルタミン合成酵素、glnB、glnK、draT、amtBの発現の減少;GlnEのアデニリル除去活性の減少;またはGlnDのウリジリル除去活性の減少。一部の実施形態では、遺伝子変異は、(a)ノックアウト突然変異であるか、(B)標的遺伝子の調節配列を変更もしくは消失させるか、または(c)異種性調節配列の挿入を含む。細菌は、内部寄生性、着生性、または根圏性であってもよい。一部の場合では、細菌は、Enterobacter属またはRahnella属である。細菌は、複数の異なる細菌分類群を含んでもよい。
【0030】
一態様では、本開示は、本明細書に記載の細菌集団等の細菌集団を含む組成物を提供する。組成物は、種子の表面にコーティングされた細菌集団を含んでもよい。一部の実施形態では、組成物は、液剤または粉末として製剤化される。
【0031】
一態様では、本開示は、ATCC寄託番号PTA-122293を有する細菌を提供する。一態様では、本開示は、ATCC寄託番号PTA-122294を有する細菌を提供する。
【0032】
参照による組込み
本明細書で述べられる刊行物、特許、および特許出願は全て、それぞれ個々の刊行物、特許、または特許出願が参照により具体的かつ個々に組み込まれることが示唆されるのと同程度に参照により本明細書に組み込まれる。
【0033】
本発明の新規な特徴は、特に添付の特許請求の範囲に示される。本発明の特徴および利点は、本発明の原理が利用されている例示的な実施形態を示す以下の詳細な記載および添付の図面を参照すればより良好に理解されると予想される。
本発明は、例えば、以下の項目を提供する。
(項目1)
非マメ科植物中での窒素固定を増加させるための方法であって、
前記植物を複数の細菌に曝露するステップを含み、前記複数の各メンバーが、前記細菌が外来性窒素の存在下で大気窒素を固定できるように、前記細菌の窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの1つもしくは複数の遺伝子または非コードポリヌクレオチドに導入された1つまたは複数の遺伝子変異を含み、前記細菌が、属間微生物ではなく、前記細菌が、前記植物における固定窒素の1%またはそれよりも多くを植物内で産生する、方法。
(項目2)
前記1つまたは複数の遺伝子変異が、前記窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの前記1つまたは複数の遺伝子と作動可能に連結した導入された制御配列を含む、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記制御配列が、プロモーターである、項目2に記載の方法。
(項目4)
前記プロモーターが、誘導性プロモーターである、項目3に記載の方法。
(項目5)
前記細菌が、前記窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの遺伝子と作動可能に連結した構成的プロモーターを含まない、項目1に記載の方法。
(項目6)
前記細菌が、nif遺伝子クラスターの遺伝子と作動可能に連結した構成的プロモーターを含まない、項目1に記載の方法。
(項目7)
前記細菌が、窒素固定の窒素含有産物を植物内で排出する、項目1に記載の方法。
(項目8)
前記植物に曝露された前記複数の細菌が、外来性非大気窒素の取り込み増加を刺激しない、項目1に記載の方法。
(項目9)
前記植物が、1エーカー当たり少なくとも50lbの窒素含有肥料を与えた圃場に由来する土壌で栽培され、前記窒素含有肥料が、少なくとも5重量%の窒素を含む、項目1に記載の方法。
(項目10)
前記窒素含有肥料が、アンモニウムまたはアンモニウム含有分子を含む、項目9に記載の方法。
(項目11)
前記複数の細菌が、少なくとも2つの異なる種の細菌を含む、項目1に記載の方法。
(項目12)
前記複数の細菌が、同じ種の細菌の少なくとも2つの異なる菌株を含む、項目1に記載の方法。
(項目13)
前記外来性窒素が、グルタミン、アンモニア、アンモニウム、尿素、硝酸塩、亜硝酸塩、アンモニウム含有分子、硝酸塩含有分子、および亜硝酸塩含有分子のうちの1つまたは複数を含む肥料から選択される、項目1に記載の方法。
(項目14)
前記細菌が、前記植物における前記固定窒素の5%またはそれよりも多くを植物内で産生する、項目1に記載の方法。
(項目15)
前記細菌が、前記植物における前記固定窒素の10%またはそれよりも多くを植物内で産生する、項目1に記載の方法。
(項目16)
前記細菌の窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの前記1つもしくは複数の遺伝子または非コードポリヌクレオチドが、nifA、nifL、ntrB、ntrC、グルタミン合成酵素をコードするポリヌクレオチド、glnA、glnB、glnK、drat、amtB、グルタミナーゼをコードするポリヌクレオチド、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQからなる群から選択される、項目1に記載の方法。
(項目17)
前記1つまたは複数の遺伝子変異が、NifAもしくはグルタミナーゼの発現もしくは活性の増加;NifL、NtrB、グルタミン合成酵素、GlnB、GlnK、DraT、AmtBの発現もしくは活性の減少;GlnEのアデニリル除去活性の減少;またはGlnDのウリジリル除去活性の減少のうちの1つまたは複数をもたらす突然変異である、項目1に記載の方法。
(項目18)
前記1つまたは複数の遺伝子変異が、(A)ノックアウト突然変異であるか、(B)標的遺伝子の調節配列を変更もしくは消失させるか、または(C)異種性調節配列の挿入を含む、項目1に記載の方法。
(項目19)
前記複数の細菌が、Enterobacter属、Rahnella属、Kosakonia属、Burkholderia属、またはKlebsiella属を含む属である、項目1に記載の方法。
(項目20)
前記複数の細菌が、内部寄生性、着生性、または根圏性である、項目1に記載の方法。
(項目21)
前記複数の細菌が、少なくとも前記植物の根でコロニー化し、前記細菌が、組織の生重量1グラム当たり少なくとも約10cfuの量で前記植物中に存在する、項目1に記載の方法。
(項目22)
前記植物が、農業作物植物である、項目1に記載の方法。
(項目23)
前記農業作物植物が、ソルガム、キャノーラ、トマト、イチゴ、大麦、米、トウモロコシ、および小麦から選択される、項目22に記載の方法。
(項目24)
前記植物が、遺伝子改変生物である、項目22に記載の方法。
(項目25)
前記植物が、遺伝子改変生物ではない、項目22に記載の方法。
(項目26)
前記植物が、効率的な窒素使用のために遺伝子操作されているかまたは品種改良されている、項目22に記載の方法。
(項目27)
細菌が外来性窒素の存在下で大気窒素を固定できるように、前記細菌の窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの1つもしくは複数の遺伝子または非コードポリヌクレオチドに導入された1つまたは複数の遺伝子変異を含む細菌を含む細菌集団であって、前記細菌が属間微生物ではなく、前記細菌が、前記細菌の集団の存在下で栽培される植物における固定窒素の1%またはそれよりも多くを植物内で産生する、細菌集団。
(項目28)
前記1つまたは複数の遺伝子変異が、前記窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの前記1つまたは複数の遺伝子と作動可能に連結した導入された制御配列を含む、項目27に記載の細菌集団。
(項目29)
前記制御配列が、プロモーターである、項目28に記載の細菌集団。
(項目30)
前記プロモーターが、誘導性プロモーターである、項目29に記載の細菌集団。
(項目31)
前記細菌が、前記窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの遺伝子と作動可能に連結した構成的プロモーターを含まない、項目27に記載の細菌集団。
(項目32)
前記細菌が、前記nif遺伝子クラスターの遺伝子と作動可能に連結した構成的プロモーターを含まない、項目27に記載の細菌集団。
(項目33)
前記細菌が、窒素固定の前記窒素含有産物を植物内で排出する、項目27に記載の細菌集団。
(項目34)
前記植物に曝露された前記細菌が、外来性非大気窒素の取り込み増加を刺激しない、項目27に記載の細菌集団。
(項目35)
少なくとも2つの異なる種の細菌を含む、項目27に記載の細菌集団。
(項目36)
同じ種の細菌の少なくとも2つの異なる菌株を含む、項目27に記載の細菌集団。
(項目37)
前記外来性窒素が、グルタミン、アンモニア、アンモニウム、尿素、硝酸塩、亜硝酸塩、アンモニウム含有分子、硝酸塩含有分子、および亜硝酸塩含有分子のうちの1つまたは複数を含む肥料から選択される、項目27に記載の細菌集団。
(項目38)
前記細菌が、前記植物における前記固定窒素の5%またはそれよりも多くを植物内で産生する、項目27に記載の細菌集団。
(項目39)
前記細菌が、前記植物における前記固定窒素の10%またはそれよりも多くを植物内で産生する、項目27に記載の細菌集団。
(項目40)
前記細菌の窒素固定または同化遺伝子調節ネットワークの前記1つもしくは複数の遺伝子または非コードポリヌクレオチドが、nifA、nifL、ntrB、ntrC、グルタミン合成酵素をコードするポリヌクレオチド、glnA、glnB、glnK、drat、amtB、グルタミナーゼをコードするポリヌクレオチド、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQからなる群から選択される、項目27に記載の細菌集団。
(項目41)
前記1つまたは複数の遺伝子変異が、NifAもしくはグルタミナーゼの発現もしくは活性の増加;NifL、NtrB、グルタミン合成酵素、GlnB、GlnK、DraT、AmtBの発現もしくは活性の減少;GlnEのアデニリル除去活性の減少;またはGlnDのウリジリル除去活性の減少のうちの1つまたは複数をもたらす突然変異である、項目27に記載の細菌集団。
(項目42)
前記1つまたは複数の遺伝子変異が、(A)ノックアウト突然変異であるか、(B)標的遺伝子の調節配列を変更もしくは消失させるか、または(C)異種性調節配列の挿入を含む、項目27に記載の細菌集団。
(項目43)
前記複数の細菌が、Enterobacter属、Rahnella属、Kosakonia属、Burkholderia属、またはKlebsiella属を含む属である、項目27に記載の細菌集団。
(項目44)
前記複数の細菌が、内部寄生性、着生性、または根圏性である、項目27に記載の細菌集団。
(項目45)
前記植物が、農業作物植物である、項目27に記載の細菌集団。
(項目46)
前記農業作物植物が、ソルガム、キャノーラ、トマト、イチゴ、大麦、米、トウモロコシ、および小麦から選択される、項目45に記載の細菌集団。
(項目47)
前記植物が、遺伝子改変生物である、項目45に記載の細菌集団。
(項目48)
前記植物が、遺伝子改変生物ではない、項目45に記載の細菌集団。
(項目49)
前記植物が、効率的な窒素使用のために遺伝子操作されているかまたは品種改良されている、項目45に記載の細菌集団。
(項目50)
前記複数の細菌が、前記植物でコロニー化し、前記細菌が、前記植物の生重量1グラム当たり少なくとも約10cfuの量で前記植物中に存在する、項目27に記載の細菌集団。
(項目51)
項目27から50のいずれか1項に記載の細菌集団を含む組成物。
(項目52)
種子の表面にコーティングされた前記細菌集団を含む、項目51に記載の組成物。
(項目53)
液剤または粉末として製剤化されている、項目51に記載の組成物。
(項目54)
ATCC受託番号PTA-122293またはPTA-122294として寄託されている単離された細菌。
(項目55)
細菌が外来性窒素の存在下で大気窒素を固定できるように、前記細菌の窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの1つもしくは複数の遺伝子または非コードポリヌクレオチドに導入された1つまたは複数の遺伝子変異を含む、非属間細菌。
(項目56)
前記1つまたは複数の遺伝子変異が、前記窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの前記1つまたは複数の遺伝子と作動可能に連結した導入された制御配列を含む、項目55に記載の細菌。
(項目57)
前記制御配列が、プロモーターである、項目56に記載の細菌。
(項目58)
前記プロモーターが、誘導性プロモーターである、項目57に記載の細菌。
(項目59)
前記細菌が、前記窒素固定または同化の遺伝子調節ネットワークの遺伝子と作動可能に連結した構成的プロモーターを含まない、項目55に記載の細菌。
(項目60)
前記細菌が、前記nif遺伝子クラスターの遺伝子と作動可能に連結した構成的プロモーターを含まない、項目55に記載の細菌。
(項目61)
前記細菌の窒素固定または同化遺伝子調節ネットワークの前記1つもしくは複数の遺伝子または非コードポリヌクレオチドが、nifA、nifL、ntrB、ntrC、グルタミン合成酵素をコードするポリヌクレオチド、glnA、glnB、glnK、drat、amtB、グルタミナーゼをコードするポリヌクレオチド、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQからなる群から選択される、項目55に記載の細菌。
(項目62)
前記1つまたは複数の遺伝子変異が、NifAもしくはグルタミナーゼの発現もしくは活性の増加;NifL、NtrB、グルタミン合成酵素、GlnB、GlnK、DraT、AmtBの発現もしくは活性の減少;GlnEのアデニリル除去活性の減少;またはGlnDのウリジリル除去活性の減少のうちの1つまたは複数をもたらす突然変異である、項目55に記載の細菌。
(項目63)
前記1つまたは複数の遺伝子変異が、(A)ノックアウト突然変異であるか、(B)標的遺伝子の調節配列を変更もしくは消失させるか、または(C)異種性調節配列の挿入を含む、項目55に記載の細菌。
(項目64)
前記細菌が、Enterobacter属、Rahnella属、Kosakonia属、Burkholderia属、またはKlebsiella属を含む属に由来する、項目55に記載の細菌。
(項目65)
前記細菌が、内部寄生性、着生性、または根圏性である、項目55に記載の細菌。
(項目66)
1つまたは複数の細菌を産生するための方法であって、
(a)第1の植物の組織または土壌から細菌を単離するステップ、
(b)前記細菌のうちの1つまたは複数に遺伝子変異を導入して、1つまたは複数の変異細菌を産生するステップ、
(c)複数の植物を前記変異細菌に曝露するステップ、
(d)前記複数の植物のうち1つの組織または土壌から細菌を単離するステップであって、前記細菌を単離した前記植物が、前記複数の植物中の他の植物と比較して向上された形質を有する、ステップ、および
(e)ステップ(d)で単離された細菌を用いてステップ(b)~(d)を繰り返すステップ
を含む方法。
(項目67)
前記向上された形質が、細菌を単離した前記植物における窒素固定増強である、項目66に記載の方法。
(項目68)
前記遺伝子変異が、nifA、nifL、ntrB、ntrC、glnA、glnB、glnK、draT、amtB、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQからなる群から選択される遺伝子の変異である、項目66に記載の方法。
(項目69)
前記遺伝子変異が、グルタミン合成酵素、グルタミナーゼ、グルタミン合成酵素アデニリルトランスフェラーゼ、転写活性化因子、抗転写活性化因子、ピルビン酸フラボドキシンオキシドレダクターゼ、フラボドキシン、またはNAD+二窒素レダクターゼADP-D-リボシルトランスフェラーゼからなる群から選択される機能性を有するタンパク質をコードする遺伝子の変異である、項目66に記載の方法。
(項目70)
前記遺伝子変異が、NifAもしくはグルタミナーゼの発現もしくは活性の増加;NifL、NtrB、グルタミン合成酵素、GlnB、GlnK、DraT、AmtBの発現もしくは活性の減少;GlnEのアデニリル除去活性の減少;またはGlnDのウリジリル除去活性の減少のうちの1つまたは複数をもたらす突然変異である、項目66に記載の方法。
(項目71)
前記遺伝子変異が、ノックアウト突然変異である、項目66に記載の方法。
(項目72)
前記遺伝子変異が、タンパク質ドメインの活性の排除または消失をもたらす、項目66に記載の方法。
(項目73)
前記遺伝子変異が、標的遺伝子の調節配列を変更または消失させる、項目66に記載の方法。
(項目74)
前記遺伝子変異が、異種性調節配列の挿入を含む、項目66に記載の方法。
(項目75)
前記遺伝子変異が、前記遺伝子変異が導入されている前記細菌に対応する細菌種または属のゲノム内に見出される調節配列の挿入を含む、項目66に記載の方法。
(項目76)
前記調節配列が、細菌培養物のまたは植物組織内の遺伝子の発現レベルに基づいて選択される、項目75に記載の方法。
(項目77)
前記遺伝子変異が、化学的突然変異誘発により生成される、項目66に記載の方法。
(項目78)
ステップ(c)が、前記植物を、生物ストレス因子または非生物ストレス因子に曝露することをさらに含む、項目66に記載の方法。
(項目79)
ステップ(b)~(d)を1回または複数回繰り返した後で単離された細菌が、前記第1の植物と同じタイプの第2の植物における窒素の1%またはそれよりも多くを産生する、項目67に記載の方法。
(項目80)
ステップ(b)~(d)を1回または複数回繰り返した後で単離された細菌が、前記第1の植物から単離された細菌と比較して、少なくとも2倍増の窒素固定を示す、項目67に記載の方法。
(項目81)
前記第2の植物が、グルタミン、アンモニア、または窒素の他の化学的供給源で補充された肥料の存在下で栽培される、項目80に記載の方法。
(項目82)
前記第1の植物が、農業作物植物である、項目66に記載の方法。
(項目83)
前記農業作物植物が、大麦、米、トウモロコシ、小麦、ソルガム、スイートコーン、サトウキビ、タマネギ、トマト、イチゴ、またはアスパラガスから選択される、項目82に記載の方法。
(項目84)
前記複数の植物における前記第1の植物が、モデル植物である、項目66に記載の方法。
(項目85)
前記モデル植物が、Setaria属、Brachypodium属、またはArabidopsis属から選択される、項目84に記載の方法。
(項目86)
前記遺伝子変異が、標的部位に特異的に導入された所定の遺伝子変異である、項目66に記載の方法。
(項目87)
前記遺伝子変異が、前記標的部位内のランダム突然変異である、項目66に記載の方法。
(項目88)
ステップ(a)が、単離された細菌の遺伝子分析を実施することをさらに含む、項目66に記載の方法。
(項目89)
ステップ(b)が、前記遺伝子変異を含む細菌を富化するように選択圧を加えることをさらに含む、項目66に記載の方法。
(項目90)
前記選択圧が、標的部位に導入された前記遺伝子変異が欠如したゲノムを切断し、切断が、前記標的部位の100ヌクレオチド内で生じることを含む、項目89に記載の方法。
(項目91)
前記選択圧を生き残った細菌を単離することをさらに含む、項目89に記載の方法。
(項目92)
切断が、対抗選択可能なマーカー、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPRヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼからなる群から選択される部位特異的ヌクレアーゼにより指示される、項目91に記載の方法。
(項目93)
前記部位特異的ヌクレアーゼが、CRISPRヌクレアーゼである、項目92に記載の方法。
(項目94)
前記遺伝子変異が、1つまたは複数のヌクレオチドの挿入または欠失である、項目66に記載の方法。
(項目95)
ステップ(b)~(d)を1回または複数回繰り返した後で単離された細菌が、内部寄生性、着生性、または根圏性である、項目66に記載の方法。
(項目96)
ステップ(b)~(d)を1回または複数回繰り返した後で単離された細菌が、複数の異なる細菌分類群を含む、項目66に記載の方法。
(項目97)
前記細菌が、植物組織から単離される、項目66に記載の方法。
(項目98)
ステップ(a)での細菌単離が、前記第1の植物の種子から細菌を単離することを含む、項目66に記載の方法。
(項目99)
細菌種の細胞のゲノムを改変するための方法であって、
(a)前記細菌種に由来する配列からなる部分配列を含むポリヌクレオチドを提供するステップであって、前記部分配列が、5’から3’の方向で、第1の相同配列、プロモーター、および第2の相同配列を含む、ステップ;ならびに
(b)前記ゲノムの標的遺伝子座と前記ポリヌクレオチドとの相同組換えを誘導して組換え配列を産出するステップであって、(i)前記標的遺伝子座が、前記第1および第2の相同配列を端部に有する標的配列を含み、(ii)前記標的遺伝子座に隣接する1つまたは複数の第2の遺伝子の発現を増強する、ステップ
を含む方法。
(項目100)
(b)(iii)相同組換えが、前記標的配列を含む第1の遺伝子の発現を妨害することをさらに含む、項目99に記載の方法。
(項目101)
(c)前記組換え配列を含む細菌細胞を単離するステップをさらに含む、項目99に記載の方法。
(項目102)
前記プロモーターが、環境条件下において閾値レベルを超える発現活性に基づいて選択される、項目99に記載の方法。
(項目103)
前記環境条件が、栄養素利用能、栄養欠乏、窒素ストレス、窒素への曝露の増加、熱、寒さ、浸透圧ストレス、乾燥、洪水、塩分、種間シグナル伝達化合物の有無、病原体の有無、および殺虫剤、除草剤、殺昆虫剤、殺線虫剤、殺真菌剤、または殺細菌剤の有無からなる群から選択され、曝露の増加または減少が、基準状態に対するものである、項目102に記載の方法。
(項目104)
前記プロモーターの選択が、(a)前記細菌種の細胞を、前記環境条件に曝露すること、(b)前記細胞の転写物の発現レベルを測定すること、および(c)閾値レベルを超えるレベルを有する転写物の発現を駆動する前記プロモーターを特定することを含む、項目103に記載の方法。
(項目105)
前記部分配列が、前記細菌種のタンパク質をコードしない、項目99に記載の方法。
(項目106)
前記部分配列が、選択可能なマーカーをコードしない、項目99に記載の方法。
(項目107)
細菌細胞を単離するステップが、前記組換え配列が欠如した細胞に対してネガティブセレクションを適用することを含む、項目101に記載の方法。
(項目108)
ネガティブセレクションが、前記組換え配列が欠如したゲノムを切断することを含み、切断が、前記標的配列の100ヌクレオチド内で生じる、項目107に記載の方法。
(項目109)
前記切断が、対抗選択可能なマーカー、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPRヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼからなる群から選択される部位特異的ヌクレアーゼにより指示される、項目108に記載の方法。
(項目110)
前記部位特異的ヌクレアーゼが、CRISPRヌクレアーゼである、項目109に記載の方法。
(項目111)
前記第1の遺伝子が、前記1つまたは複数の第2の遺伝子の負の調節因子である、項目99に記載の方法。
(項目112)
前記第1の遺伝子、前記1つまたは複数の第2の遺伝子、または両方が、窒素固定経路のメンバーである、項目99に記載の方法。
(項目113)
前記第1の遺伝子が、NifL、NtrB、グルタミン合成酵素、GlnB、GlnK、DraT、およびAmtBからなる群から選択される、項目99に記載の方法。
(項目114)
前記1つまたは複数の第2の遺伝子が、NifAおよびグルタミナーゼからなる群から選択される、項目99に記載の方法。
(項目115)
前記単離された細菌細胞が、内部寄生性、着生性、または根圏性である、項目99に記載の方法。
(項目116)
前記単離された細菌細胞が、宿主植物の細胞中の窒素の5%またはそれよりも多くを産生する、項目115に記載の方法。
(項目117)
前記単離された細菌が、グルタミン、アンモニア、または補充窒素の他の化学的供給源で補充された肥料の存在下で前記窒素を産生する、項目116に記載の方法。
(項目118)
細菌種の細胞の標的遺伝子を妨害するための、前記細菌種に由来する配列からなる部分配列を含むポリヌクレオチドであって、
(a)前記部分配列が、5’から3’の方向で、第1の相同配列、プロモーター、および第2の相同配列を含み、
(b)前記第1および第2の相同配列が、標的配列の端部にある配列に相当し、前記標的配列が、前記部分配列と前記標的配列を含む標的遺伝子座との間の相同組換え時に欠失され、
(c)前記標的配列は、少なくとも第1の遺伝子の第1のタンパク質をコードする部分を含み、
(d)前記部分配列が、前記細菌種のタンパク質をコードしない、ポリヌクレオチド。
(項目119)
前記部分配列が、選択可能なマーカーをコードしない、項目118に記載のポリヌクレオチド。
(項目120)
前記プロモーターが、環境条件下において閾値レベルを超える発現活性を有する遺伝子のプロモーターである、項目118に記載のポリヌクレオチド。
(項目121)
前記環境条件が、窒素への曝露の増加であり、曝露の増加が、基準条件に対するものある、項目120に記載のポリヌクレオチド。
(項目122)
前記標的配列が、1つまたは複数の第2の遺伝子に隣接している、項目118に記載のポリヌクレオチド。
(項目123)
前記第1の遺伝子、前記1つまたは複数の第2の遺伝子、または両方が、窒素固定経路のメンバーである、項目122に記載のポリヌクレオチド。
(項目124)
前記第1の遺伝子が、NifL、NtrB、グルタミン合成酵素、GlnB、GlnK、DraT、およびAmtBからなる群から選択される、項目118に記載のポリヌクレオチド。
(項目125)
前記細胞が、内部寄生性、着生性、または根圏性である細菌である、項目118に記載のポリヌクレオチド。
(項目126)
項目118から125のいずれかに記載のポリヌクレオチドを含む発現ベクター。
(項目127)
項目126に記載の発現を含む細胞。
(項目128)
前記複数の細菌が、Enterobacter属である、項目1に記載の方法。
(項目129)
前記複数の細菌が、Rahnella属である、項目1に記載の方法。
(項目130)
前記複数の細菌が、Kosakonia属である、項目1に記載の方法。
(項目131)
前記複数の細菌が、Burkholderia属である、項目1に記載の方法。
(項目132)
前記複数の細菌が、Klebsiella属である、項目1に記載の方法。
(項目133)
前記複数の細菌が、Enterobacter属である、項目27に記載の細菌集団。
(項目134)
前記複数の細菌が、Rahnella属である、項目27に記載の細菌集団。
(項目135)
前記複数の細菌が、Kosakonia属である、項目27に記載の細菌集団。
(項目136)
前記複数の細菌が、Burkholderia属である、項目27に記載の細菌集団。
(項目137)
前記複数の細菌が、Klebsiella属である、項目27に記載の細菌集団。
(項目138)
Enterobacter属に由来する、項目55に記載の細菌。
(項目139)
Rahnella属に由来する、項目55に記載の細菌。
(項目140)
Kosakonia属に由来する、項目55に記載の細菌。
(項目141)
Burkholderia属に由来する、項目55に記載の細菌。
(項目142)
Klebsiella属に由来する、項目55に記載の細菌。
(項目143)
(b)(iii)相同組換えが、前記標的配列を含む第1の遺伝子の発現を妨害すること、および
(c)前記組換え配列を含む細菌細胞を単離するステップをさらに含む、項目99に記載の方法。
【図面の簡単な説明】
【0034】
図1図1A~Bは、窒素固定細菌の富化および単離を示す。(A)Nfb寒天プレートを使用して、窒素固定細菌の単一コロニーを単離した。(B)半固体Nfb寒天をBalchチューブに流した。矢印は、豊化された窒素固定細菌のペリクルを指す。
【0035】
図2図2は、代表的なnifH PCRスクリーニングを示す。このスクリーニングでは2つのコロニーで、約350bpに陽性バンドが観察された。その下にあるバンドは、プライマー二量体を表す。
【0036】
図3図3は、CRISPR-Cas-選択突然変異誘発に由来するコロニーのPCRスクリーニングの例を示す。CI006コロニーを、nifL遺伝子座に特異的なプライマーでスクリーニングした。野生型PCR産物は、約2.2kbであることが予想されるが、突然変異体は、約1.1kbであることが予想される。スクリーニングした10個のコロニーのうちの7個が、所望の欠失を明白に示す。
【0037】
図4-1】図4A~Dは、種々の菌株のin vitro表現型を示す。0~10mMグルタミンで補充された窒素固定培地で増殖させた菌株CI010の突然変異体(図4A)および菌株CI006の突然変異体(図4B)のアセチレン還元アッセイ(ARA)活性。図4Cには、追加の菌株のARA活性が示され、図4Dには、2つの菌株の経時的なアンモニウム排出プロファイルが示される。
図4-2】図4A~Dは、種々の菌株のin vitro表現型を示す。0~10mMグルタミンで補充された窒素固定培地で増殖させた菌株CI010の突然変異体(図4A)および菌株CI006の突然変異体(図4B)のアセチレン還元アッセイ(ARA)活性。図4Cには、追加の菌株のARA活性が示され、図4Dには、2つの菌株の経時的なアンモニウム排出プロファイルが示される。
【0038】
図5図5は、ジアゾトロフィック(diazaotrophic)窒素固定に関与する菌株CI006の9個の異なる遺伝子の培養発現プロファイルを示す。数値は、各転写物の計数を表す。種々の条件(0、1、10mMのグルタミン、および0%、10%、20%のN2中大気空気)が示される。
【0039】
図6図6は、トウモロコシ根のCI006コロニー化を示す。トウモロコシ実生に、RFP発現プラスミドを内包するCI006を接種した。適切な抗生物質と共に灌水することによる2週間の増殖およびプラスミド維持の後、根を回収し、蛍光顕微鏡で画像化した。根細胞間隙のコロニー化を観察する。
【0040】
図7図7は、WT(CI050)菌株および最適化(CM002)菌株の微生物レベルに由来する窒素を示す。
【0041】
図8図8は、Micro-Tom果実質量アッセイの実験設定を示す。
【0042】
図9図9は、Micro-Tom植物果実質量の増加に関する、10個の菌株のスクリーニングを示す。6回の重複測定の結果が示されている。3列目は、p=0.07。7列目は、p=0.05。
【0043】
図10-1】図10A~Cは、0~10mMグルタミンで補充された窒素固定培地で増殖した候補微生物および対応する候補突然変異体のARA活性に関する追加の結果を示す。
図10-2】図10A~Cは、0~10mMグルタミンで補充された窒素固定培地で増殖した候補微生物および対応する候補突然変異体のARA活性に関する追加の結果を示す。
【0044】
図11図11は、それが由来した単一の突然変異体よりも高いアンモニア排出を示す二重突然変異体を示す。
【0045】
図12図12は、施肥条件下のトウモロコシ植物のNDFAを測定するための15Nガス取り込み実験から得られたNDFAを示す(曝露日数を使用して外挿した)。
【0046】
図13図13は、施肥条件下のSetaria属植物のNDFAを測定するための15Nガス取り込み実験から得られたNDFA値を示す(曝露日数を使用して外挿した)。
【0047】
図14A図14Aは、15Nガスの取り込み率を示す。進化させた菌株を接種した植物は、未接種の植物と比較して、15Nガス取り込みの増加を示した。
【0048】
図14B図14Bは、植栽4週間後には、進化させた菌株を接種した植物における窒素の最大7%が、微生物的に固定された窒素に由来することを示す。
【0049】
図14C図14Cは、葉面積(および他のバイオマス測定、データ非表示)が、未接種または野生型の接種済み植物と比較して、進化させた菌株を接種した植物で増加することを示す。
【0050】
図15A図15Aは、進化させた菌株が、植物内トランスクリプトーム研究により測定すると、根組織において著しくより高いnifH産生を示すことを示す。
【0051】
図15B図15Bは、植物組織に見出される固定窒素の割合が、その特定の植物がHoME最適化菌株によりコロニー化されている割合と相関することを示す。
【0052】
図16A図16Aは、コロニー化を試験した種々の圃場土壌の土壌テクスチャマップを示す。少数の微生物のそもそもの発生源である土壌には、星印が示されている。
【0053】
図16B図16Bは、4つの異なる土壌タイプ(円)にわたって試験した菌株1および菌株5のコロニー化率を示す。両菌株は、多様な土壌タイプにわたって比較的ロバストなコロニー化プロファイルを示した。
【0054】
図16C図16Cは、成長季節の期間にわたって圃場試験で試験した菌株1のコロニー化を示す。菌株1は、植栽後12週目までトウモロコシ組織に存在し続け、その期間後、コロニー化の低下を示し始める。
【発明を実施するための形態】
【0055】
用語「ポリヌクレオチド」、「ヌクレオチド」、「ヌクレオチド配列」、「核酸」、および「オリゴヌクレオチド」は、同義的に使用される。それらは、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチドのいずれかの、任意の長さのヌクレオチドのポリマー形態、またはそれらの類似体を指す。ポリヌクレオチドは、あらゆる3次元構造も有してもよく、公知か未知かに関わらず、あらゆる機能を発揮してもよい。ポリヌクレオチドの非限定的な例としては、下記:遺伝子または遺伝子断片のコードまたは非コード領域、連鎖解析で規定された遺伝子座、エキソン、イントロン、メッセンジャーRNA(mRNA)、トランスファーRNA(tRNA)、リボソームRNA(rRNA)、低分子干渉RNA(siRNA)、短鎖ヘアピンRNA(shRNA)、マイクロRNA(miRNA)、リボザイム、cDNA、組換えポリヌクレオチド、分岐ポリヌクレオチド、プラスミド、ベクター、任意の配列の単離されたDNA、任意の配列の単離されたRNA、核酸プローブ、およびプライマーが挙げられる。ポリヌクレオチドは、メチル化ヌクレオチドおよびヌクレオチド類似体等のうちの1つまたは複数の修飾ヌクレオチドを含んでもよい。ヌクレオチド構造への修飾は、存在する場合、ポリマー構築の前に付与されてもよく、または後に付与されてもよい。ヌクレオチドの配列は、非ヌクレオチド成分により中断されてもよい。ポリヌクレオチドは、標識成分とのコンジュゲーション等によって、重合後にさらに修飾されてもよい。
【0056】
「ハイブリダイゼーション」は、1つまたは複数のポリヌクレオチドを反応させて、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合により安定化される複合体を形成する反応を指す。水素結合は、ワトソン-クリック型塩基対により生じてもよく、フーグスティン結合により生じてもよく、または塩基相補性による任意の他の配列特異的様式で生じてもよい。複合体は、二本鎖構造を形成する2本の鎖、複数鎖複合体を形成する3本またはそれよりも多くの鎖、単一の自己ハイブリダイズ鎖、またはそれらの任意の組合せを含んでもよい。ハイブリダイゼーション反応は、PCRの開始、またはエンドヌクレアーゼによるポリヌクレオチドの酵素切断等の、より広範なプロセスのステップを構成してもよい。第1の配列に相補的な第2の配列は、第1の配列の「相補体」と呼ばれる。用語「ハイブリダイズ可能な」は、ポリヌクレオチドに適用される場合、ポリヌクレオチドが、ハイブリダイゼーション反応にて、ヌクレオチド残基の塩基間の水素結合により安定化される複合体を形成する能力を指す。
【0057】
「相補性」は、核酸が、従来のワトソン-クリック型または他の非従来型のいずれかにより別の核酸配列と水素結合を形成する能力を指す。相補性パーセントは、第2の核酸配列と水素結合(例えば、ワトソン-クリック型塩基対)を形成することができる、核酸分子中の残基のパーセントを示す(例えば、10個のうち5、6、7、8、9、10個は、それぞれ50%、60%、70%、80%、90%、および100%相補性である)。「完全に相補的」は、核酸配列の隣接残基が全て、第2の核酸配列中の同数の隣接残基と水素結合することになることを意味する。「実質的に相補的」は、本明細書で使用される場合、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、20、21、22、23、24、25、30、35、40、45、50個、またはそれよりも多くのヌクレオチドの領域にわたって、少なくとも60%、65%、70%、75%、80%、85%、90%、95%、97%、98%、99%、または100%である相補性の度合いを指すか、またはストリンジェントな条件下でハイブリダイズする2つの核酸を指す。相補性パーセントを評価する目的のため等の配列同一性は、これらに限定されないが、Needleman-Wunschアルゴリズム(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_needle/nucleotide.htmlで入手可能なEMBOSS Needleアライナーを参照。任意選択で初期設定を使用してもよい)、BLASTアルゴリズム(例えば、blast.ncbi.nlm.nih.gov/Blast.cgiで入手可能なBLASTアラインメントツールを参照。任意選択で初期設定を使用してもよい)、またはSmith-Watermanアルゴリズム(例えば、www.ebi.ac.uk/Tools/psa/emboss_water/nucleotide.htmlで入手可能なEMBOSS Waterアライナーを参照。任意選択で初期設定を使用してもよい)を含む任意の好適なアラインメントアルゴリズムにより測定することができる。初期設定パラメータを含む、選択したアルゴリズムの任意の好適なパラメータを使用して、最適なアラインメントを評価することができる。
【0058】
一般的に、ハイブリダイゼーションのための「ストリンジェントな条件」は、標的配列との相補性を有する核酸が、主に標的配列とハイブリダイズするが、非標的配列とは実質的にハイブリダイズしない条件を指す。ストリンジェントな条件は、一般的に配列依存性であり、幾つかの要因に応じて様々である。一般的に、配列が長いほど、その配列がその標的配列と特異的にハイブリダイズする温度は高くなる。ストリンジェントな条件の非限定的な例は、Tijssen(1993年)、Laboratory Techniques In Biochemistry And Molecular Biology-Hybridization With Nucleic Acid Probes Part I、第2章「Overview of principles of hybridization and the strategy of nucleic acid probe assay」、Elsevier、N.Y.に詳細に記載されている。
【0059】
本明細書で使用される場合、「発現」は、ポリヌクレオチドがDNA鋳型から(mRNAまたは他のRNA転写物へと等)転写されるプロセス、および/または転写されたmRNAが引き続きペプチド、ポリペプチド、もしくはタンパク質へと翻訳されるプロセスを指す。転写物およびコードポリペプチドは、「遺伝子産物」と総称される場合がある。ポリヌクレオチドが、ゲノムDNAに由来する場合、発現は、真核細胞でのmRNAスプライシングを含む場合がある。
【0060】
用語「ポリペプチド」、「ペプチド」、および「タンパク質」は、本明細書では同義的に使用され、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。ポリマーは、直鎖であってもよくまた分岐していてもよく、修飾アミノ酸を含んでもよく、非アミノ酸により中断されてもよい。また、これら用語は、修飾されているアミノ酸ポリマー、例えば、ジスルフィド結合形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化、または標識成分とのコンジュゲーション等の任意の他の操作を包含する。用語「アミノ酸」は、本明細書で使用される場合、グリシンおよびDまたはLの両光学異性体を含む天然および/もしくは非天然または合成アミノ酸、ならびにアミノ酸類似体およびペプチド模倣体を含む。
【0061】
本明細書で使用される場合、用語「約」は、用語「およそ」と同義的に使用される。例示的には、量に関する用語「約」の使用は、数値が、言及されている数値のわずかに外側にあること、例えば、プラスまたはマイナス0.1%~10%であることを示す。
【0062】
用語「生物学的に純粋な培養物」または「実質的に純粋な培養物」は、培養物の複製を妨げたり、または通常の細菌学的技法によって検出されたりするほどの量の他の細菌種を含まない、本明細書に記載の細菌種の培養を指す。
【0063】
「植物生産性」は、一般的に、植物を成長させる根拠となる植物の成長または発達のあらゆる態様を指す。穀物または野菜等の食用作物の場合、「植物生産性」は、特定の作物から収穫される穀物または果実の収穫高を指す場合がある。本明細書で使用される場合、植物生産性の向上は、穀物、果実、花、または種々の目的で収穫される他の植物部分の収穫高の向上;茎、葉、および根を含む植物部分の成長の向上;植物成長の促進;葉における高葉緑素含有量の維持;果実数または種子数の増加;果実重量または種子重量の増加;窒素肥料使用量の削減によるNO排出削減;および植物の成長および発達の類似の向上を、幅広く指す。
【0064】
食用作物内および周囲の微生物は、それら作物の形質に影響を及ぼす場合がある。微生物により影響を受ける場合がある植物形質としては、以下のものが挙げられる:収穫高(例えば、穀物生産、バイオマス生成、果実形成、着花);栄養(例えば、窒素、リン、カリウム、鉄、微量栄養素の獲得);非生物ストレス管理(例えば、乾燥耐性、耐塩性、耐熱性);および生物ストレス管理(例えば、害虫、雑草、昆虫、真菌、および細菌)。作物形質を変更するための戦略としては、以下のものが挙げられる:重要な代謝物濃度を増加させること;重要な代謝物に対する微生物影響の経時的動態を変更すること;微生物代謝物産生/分解を新しい環境的要因と関連させること;負の代謝物を減少させること;および代謝物またはそれらの根底をなすタンパク質のバランスを向上させること。
【0065】
本明細書で使用される場合、「制御配列」は、オペレーター、プロモーター、サイレンサー、またはターミネーターを指す。
【0066】
本明細書で使用される場合、「植物内」は、植物の中を指し、植物は、葉、根、茎、種子、胚珠、花粉、花、果実等をさらに含む。
【0067】
一部の実施形態では、本開示の遺伝子の天然または内因性制御配列は、1つまたは複数の属内制御配列と置換されている。
【0068】
本明細書で使用される場合、「導入」は、天然の導入ではなく、現代的なバイオテクノロジーによる導入を指す。
【0069】
一部の実施形態では、本開示の細菌は、修飾されており、天然の細菌ではない。
【0070】
一部の実施形態では、本開示の細菌は、植物の生重量または乾燥重量の1グラム当たり、少なくとも10cfu、10cfu、10cfu、10cfu、10cfu、10cfu、10cfu、1010cfu、1011cfu、または1012cfuの量で植物中に存在する。一部の実施形態では、本開示の細菌は、植物の生重量または乾燥重量の1グラム当たり、少なくとも約10cfu、約10cfu、約10cfu、約10cfu、約10cfu、約10cfu、約10cfu、約1010cfu、約1011cfu、または約1012cfuの量で植物中に存在する。一部の実施形態では、本開示の細菌は、植物の生重量または乾燥重量の1グラム当たり、少なくとも10~10、10~10、10~10、10~10、10~10、10~1010、10~10cfuの量で植物中に存在する。
【0071】
本開示の肥料および外来性窒素は、以下の窒素含有分子:アンモニウム、硝酸塩、亜硝酸塩、アンモニア、グルタミン等を含んでもよい。本開示の窒素源としては、以下のものを挙げることができる:無水アンモニア、硫酸アンモニア、尿素、リン酸二アンモニウム、尿素の形態、リン酸一アンモニウム、硝酸アンモニウム、窒素溶液、硝酸カルシウム、硝酸カリウム、硝酸ナトリウム等。
【0072】
本明細書で使用される場合、「外来性窒素」は、アンモニア、アンモニウム、硝酸塩、亜硝酸塩、尿素、尿酸、アンモニウム酸等を含む、非窒素制限条件下で存在する、土壌、圃場、または増殖培地で容易に利用可能な非大気窒素を指す。
【0073】
本明細書で使用される場合、「非窒素制限条件」は、Kantら、(2010年、J. Exp. Biol.、62巻(4号):1499~1509頁)に開示されているような、約4mM窒素を超える濃度で土壌、圃場、培地で利用可能な非大気窒素を指す。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0074】
本明細書で使用される場合、「属間微生物」は、元々は異なる分類学的属の生物から単離された遺伝物質の意図的な組合せにより形成されている微生物である。「属間突然変異」は、「属間微生物」と同義的に使用される場合がある。例示的な「属間微生物」は、レシピエント微生物とは異なる属の微生物で最初に同定された可動遺伝要素を含有する微生物を含む。さらなる説明は、特に、連邦規則集第40巻セクション725.3に見出すことができる。
【0075】
本明細書で使用される場合、「属内微生物」は、元々は同じ分類学的属の生物から単離された遺伝物質の意図的な組合せにより形成されている微生物である。「属内突然変異」は、「属内微生物」と同義的に使用される場合がある。
【0076】
本明細書で使用される場合、「導入された遺伝物質」は、レシピエントのゲノムに付加され、レシピエントのゲノムの成分として残留する遺伝物質を意味する。
【0077】
一部の実施形態では、窒素固定および同化の遺伝子調節ネットワークは、遺伝子をコードするポリヌクレオチドならびに微生物の窒素固定および/または同化を指示、調整、および/または調節する非コード配列を含み、nifクラスター(例えば、nifA、nifB、nifC、...nifZ)のポリヌクレオチド配列、窒素調節タンパク質Cをコードするポリヌクレオチド、窒素調節タンパク質Bをコードするポリヌクレオチド、glnクラスター(例えば、glnAおよびglnD)のポリヌクレオチド配列、draT、およびアンモニア輸送体/パーミアーゼを含んでもよい。
【0078】
一部の実施形態では、本開示の肥料は、重量で少なくとも5%、6%、7%、8%、9%、10%、11%、12%、13%、14%、15%、16%、17%、18%、19%、20%、21%、22%、23%、24%、25%、26%、27%、28%、29%、30%、31%、32%、33%、34%、35%、36%、37%、38%、39%、40%、41%、42%、43%、44%、45%、46%、47%、48%、49%、50%、51%、52%、53%、54%、55%、56%、57%、58%、59%、60%、61%、62%、63%、64%、65%、66%、67%、68%、69%、70%、71%、72%、73%、74%、75%、76%、77%、78%、79%、80%、81%、82%、83%、84%、85%、86%、87%、88%、89%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%の窒素を含む。
【0079】
一部の実施形態では、本開示の肥料は、重量で少なくとも約5%、約6%、約7%、約8%、約9%、約10%、約11%、約12%、約13%、約14%、約15%、約16%、約17%、約18%、約19%、約20%、約21%、約22%、約23%、約24%、約25%、約26%、約27%、約28%、約29%、約30%、約31%、約32%、約33%、約34%、約35%、約36%、約37%、約38%、約39%、約40%、約41%、約42%、約43%、約44%、約45%、約46%、約47%、約48%、約49%、約50%、約51%、約52%、約53%、約54%、約55%、約56%、約57%、約58%、約59%、約60%、約61%、約62%、約63%、約64%、約65%、約66%、約67%、約68%、約69%、約70%、約71%、約72%、約73%、約74%、約75%、約76%、約77%、約78%、約79%、約80%、約81%、約82%、約83%、約84%、約85%、約86%、約87%、約88%、約89%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、または約99%の窒素を含む。
【0080】
一部の実施形態では、本開示の肥料は、重量で約5%~50%、約5%~75%、約10%~50%、約10%~75%、約15%~50%、約15%~75%、約20%~50%、約20%~75%、約25%~50%、約25%~75%、約30%~50%、約30%~75%、約35%~50%、約35%~75%、約40%~50%、約40%~75%、約45%~50%、約45%~75%、または約50%~75%の窒素を含む。
【0081】
一部の実施形態では、窒素固定の増加および/または植物における窒素の1%またはそれよりも多くの産生は、本開示の細菌に曝露していない対照植物と比較して測定される。細菌の増加または減少は全て、対照細菌と比較して測定される。植物の増加または減少は全て、対照植物と比較して測定される。
【0082】
本明細書で使用される場合、「構成的プロモーター」は、ほとんどの条件下でおよび/またはほとんどの発生段階中で活性なプロモーターである。バイオテクノロジーで使用される発現ベクターの構成的プロモーターを使用することには、トランスジェニック細胞または生物を選択するために使用されるタンパク質の高レベル産生;容易な検出および定量化を可能にするレポータータンパク質またはスコア化可能なマーカーの高レベル発現;転写調節系の一部である転写因子の高レベル産生;生物中で遍在活性が必要とされる化合物の産生;および全ての発生段階中に必要とされる化合物の産生等の幾つかの利点がある。非限定的で例示的な構成的プロモーターとしては、CaMV 35Sプロモーター、オパインプロモーター、ユビキチンプロモーター、アルコールデヒドロゲナーゼプロモーター等が挙げられる。
【0083】
本明細書で使用される場合、「非構成的プロモーター」は、ある特定の条件下で、ある特定のタイプの細胞で、および/またはある特定の発生段階中に活性なプロモーターである。例えば、組織特異的、組織優先的、細胞タイプ特異的、細胞タイプ優先的な誘導性プロモーター、および発生制御下にあるプロモーターは、非構成的プロモーターである。発生制御下にあるプロモーターの例としては、ある特定の組織で優先的に転写を開始させるプロモーターが挙げられる。
【0084】
本明細書で使用される場合、「誘導性」または「抑制可能な」プロモーターは、化学因子または環境因子の制御下にあるプロモーターである。誘導性プロモーターによる転写に影響を及ぼし得る環境条件の例としては、嫌気条件、ある特定の化学物質、光の存在、酸性または塩基性条件等が挙げられる。
【0085】
本明細書で使用される場合、「組織特異的」プロモーターは、ある特定の組織でのみ転写を開始させるプロモーターである。遺伝子の構成的発現とは異なり、組織特異的な発現は、幾つかの遺伝子調節レベルの相互作用の結果である。したがって、当技術分野では、時には、同種のまたは緊密に関連する種に由来するプロモーターを使用して、特定の組織における効率的で信頼性の高い導入遺伝子の発現を達成することが好ましい。これは、特定の組織から単離された組織特異的プロモーターが大量に、科学文献および特許文献の両方に見出されることの主な理由の1つである。
【0086】
本明細書で使用される場合、用語「作動可能に連結した」は、一方の機能が他方により調節されるように、核酸配列を単一の核酸断片上で関連させることを指す。例えば、プロモーターは、コード配列の発現を調節することが可能な(つまり、コード配列がプロモーターの転写制御下にある)場合、そのコード配列と作動可能に連結している。コード配列は、センス配向性で調節配列に作動可能に連結してもよく、またはアンチセンス配向性で調節配列に作動可能に連結してもよい。別の例では、本開示の相補的RNA領域は、標的mRNAの5’に、または標的mRNAの3’に、または標的mRNA内に、直接または間接のいずれかで作動可能に連結してもよい。または、第1の相補的領域が5’であり、その相補体は標的mRNAの3’である。
【0087】
本明細書に記載の方法による調節の標的となり得る1つの形質は、窒素固定である。窒素肥料は、農場における最も大きな運営上の出費であり、トウモロコシおよび小麦のような条植え作物の収穫高を向上させる最大の誘因である。本明細書には、非マメ科作物に再生可能な形態の窒素を送達することができる微生物製品が記載されている。一部の内部寄生菌は、純粋培養での窒素固定に必要な遺伝的特徴を有するが、根本的な技術的難問は、穀類およびイネ科植物の野生型内部寄生菌は、施肥圃場では窒素固定を中止してしまうことである。化学肥料の施肥および圃場土壌中の残留窒素レベルは、微生物に対して、窒素固定の生化学経路を停止するようにシグナルを送る。
【0088】
肥料の存在下でも窒素を固定してトウモロコシへと移行させることが可能な微生物を開発するには、窒素固定調節ネットワークの転写レベルおよび翻訳後レベルを変更することが必要である。そのため、本明細書には、調節ネットワークを的確に進化させ、新規の表現型を誘発させるための宿主微生物進化(HoME)技術が記載されている。また、本明細書には、トウモロコシから単離された窒素固定内部寄生菌の固有の独自ライブラリーが、窒素ストレスおよび窒素過剰のような異なる環境条件下での微生物および宿主植物の相互作用を取り巻く広範なオーミクスデータと対にして記載されている。これにより、内部寄生菌の遺伝子調節ネットワークを的確に進化させて、圃場に肥料が存在する場合であっても活発に窒素を固定する微生物を産生することが可能になる。また、本明細書には、トウモロコシ根組織をコロニー化し、施肥されている植物のために窒素を産生する微生物に進化させる技術的可能性のが評価ならびに微生物を現代的窒素管理戦略に統合する実現可能性を決定するために、内部寄生菌と、標準的製剤化慣例および多様な土壌との適合性の評価が記載されている。
【0089】
窒素元素(N)を化学合成に利用するために、生命体は、窒素固定として公知であるプロセスにおいて、大気中で利用可能な窒素ガス(N)を水素と化合させる。生物学的窒素固定は性質がエネルギー集約的であるため、ジアゾ栄養生物(大気窒素ガスを固定する細菌および古細菌)は、環境中の酸素および利用可能な窒素に応答してnif遺伝子クラスターを精巧および厳密に調節するように進化している。Nif遺伝子は、窒素固定に関与する酵素(ニトロゲナーゼ複合体等の)および窒素固定を調節するタンパク質をコードする。Shamseldin(2013年、Global J. Biotechnol. Biochem.、8巻(4号):84~94頁)には、nif遺伝子およびそれらの産物の詳細な記載が開示されている。この文献は、参照により本明細書に組み込まれる。本明細書には、向上された形質を有する植物を産生するための方法であって、第1の植物から細菌を単離するステップ;単離された細菌のnif遺伝子に遺伝子変異を導入するステップ;第2の植物を変異細菌に曝露するステップ;第1の植物と比べて向上された形質を有する第2の植物から細菌を単離するステップ;および第2の植物から単離された細菌を用いてステップを繰り返すステップを含む方法が記載されている。
【0090】
プロテオバクテリアでは、nifクラスターの正の転写制御因子である、σ54依存性エンハンサー結合タンパク質NifAが、窒素固定の調節に中心的な役割を果たす。活性NifAの細胞内レベルは、2つの主な因子:nifLAオペロンの転写およびNifLとのタンパク質間相互作用によるNifA活性の阻害により制御される。これらプロセスは両方とも、PIIタンパク質シグナル伝達カスケードを介して、細胞内(intraceullar)グルタミンレベルに応答性である。このカスケードは、GlnDにより媒介され、GlnDは、グルタミンを直接的に感知し、結合グルタミンの非存在または存在に応答して、2つのPII調節タンパク質GlnBおよびGlnKのウリジリル化または脱ウリジリル化をそれぞれ触媒する。窒素過剰条件下では、未修飾GlnBが、nifLAプロモーターの非活性化シグナルを送る。しかしながら、窒素制限条件下では、GlnBは翻訳後修飾を受け、それによりその活性が阻害され、nifLAオペロンの転写に結び付く。このように、nifLA転写は、PIIタンパク質シグナル伝達カスケードにより、環境窒素に応答して厳密に制御されている。NifAの翻訳後レベル調節では、GlnKは、細胞内の遊離GlnKの全体的レベルに依存する様式(matter)でNifL/NifA相互作用を阻害する。
【0091】
NifAは、nifLAオペロンから転写され、そのプロモーターは、別のσ54依存性制御因子であるリン酸化NtrCにより活性化される。NtrCのリン酸化状態は、ヒスチジンキナーゼNtrBにより媒介され、NtrBは、脱ウリジリル化GlnBとは相互作用するが、ウリジリル化GlnBとは相互作用しない。窒素過剰条件下では、高い細胞内(intraceullular)レベルのグルタミンは、GlnBの脱ウリジリル化に結び付き、脱ウリジリル化されたGlnBは、その後NtrBと相互作用して、そのリン酸化活性を不活化し、そのホスファターゼ活性を活性化させて、NtrCの脱リン酸化およびnifLAプロモーターの不活化がもたらされる。しかしながら、窒素制限条件下では、低レベルの細胞内グルタミンは、GlnBのウリジリル化をもたらし、それにより、NtrBとのその相互作用が阻害され、NtrCのリン酸化およびnifLAオペロンの転写を可能にする。このように、nifLA発現は、PIIタンパク質シグナル伝達カスケードにより、環境窒素に応答して厳密に制御される。nifA、ntrB、ntrC、およびglnBは全て、本明細書に記載の方法で突然変異させることができる遺伝子である。
【0092】
また、NifAの活性は、最も典型的にはNifA活性のNifL媒介性阻害により、環境窒素に応答して翻訳後に調節される。一般的に、NifLとNifAとの相互作用は、GlnKを介したPIIタンパク質シグナル伝達カスケードにより影響を受けるが、GlnKとNifL/NifAとの相互作用の性質は、ジアゾ栄養生物間で著しく異なる。Klebsiella pneumoniaeでは、両形態のGlnKが、NifL/NifA相互作用を阻害し、GlnKとNifL/NifAとの相互作用は、細胞内の遊離GlnKの全体的レベルにより決定される。窒素過剰条件下では、脱ウリジリル化GlnKは、アンモニウム輸送体AmtBと相互作用し、これは、AmtBによるアンモニウム取り込みを阻止すると共に、GlnKを膜に隔離し、NifLによるNifAの阻害を可能にする役目を果たす。一方、Azotobacter vinelandiiでは、NifL/NifA相互作用およびNifA阻害には、脱ウリジリル化GlnKとの相互作用が必要であるが、GlnKのウリジリル化は、NifLとの相互作用を阻害する。nifL遺伝子が欠如したジアゾ栄養生物では、NifA活性は、窒素過剰条件下では、GlnKおよびGlnBの両方の脱ウリジリル化形態との相互作用により直接的に阻害されるという証拠が存在する。その機序に関わらず、ほとんどの公知ジアゾ栄養生物では、NifAの翻訳後阻害は、nifクラスターの重要な制御因子である。加えて、nifL、amtB、およびglnKは、本明細書に記載の方法で突然変異させることができる遺伝子である。
【0093】
多くのジアゾ栄養生物は、nif遺伝子クラスターの転写調節に加えて、ニトロゲナーゼ遮断として公知である、ニトロゲナーゼ酵素自体の直接的翻訳後修飾および阻害の機序を進化させている。これは、窒素過剰条件下でのFeタンパク質(NifH)のADPリボシル化により媒介される。それにより、MoFeタンパク質複合体(NifDK)との相互作用が妨害され、ニトロゲナーゼ活性が消失する。DraTは、Feタンパク質のADPリボシル化およびニトロゲナーゼの遮断を触媒し、DraGは、ADPリボースの除去およびニトロゲナーゼの再活性化を触媒する。nifLA転写およびNifA阻害の場合と同様に、ニトロゲナーゼ遮断は、PIIタンパク質シグナル伝達カスケードによっても調節される。窒素過剰条件下では、脱ウリジリル化GlnBは、DraTと相互作用してDraTを活性化し、脱ウリジリル化GlnKは、DraGおよびAmtBの両方と相互作用して複合体を形成し、DraGを膜に隔離する。窒素制限条件下では、GlnBおよびGlnKのウリジリル化形態は、それぞれDraTおよびDraGと相互作用せず、DraTの不活化およびDraGのFeタンパク質への拡散に結び付き、そこでADPリボースが除去され、ニトロゲナーゼが活性化される。また、本明細書に記載の方法では、nifH、nifD、nifK、およびdraT遺伝子に遺伝子変異を導入することが企図される。
【0094】
一部の内部寄生菌は、in vitroで窒素を固定する能力を有するが、この遺伝的特徴は、しばしば、圃場では高レベルの外因性化学肥料によりサイレンシングされる。圃場に基づく窒素固定を容易にするために、外来性窒素の感知をニトロゲナーゼ酵素の発現と切り離すことができる。さらに、ニトロゲナーゼ活性の統合を経時的に向上させることは、作物により利用される窒素の産生を増大させる役目を果たす。本明細書に記載の方法を使用して圃場に基づく窒素固定を容易にする遺伝子変異のための具体的な標的としては、nifA、nifL、ntrB、ntrC、glnA、glnB、glnK、draT、amtB、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQからなる群から選択される1つまたは複数の遺伝子が挙げられる。
【0095】
本明細書に記載の方法を使用して圃場に基づく窒素固定を容易にする遺伝子変異のための追加の標的は、NifAタンパク質である。NifAタンパク質は、典型的には、窒素固定遺伝子発現の活性化因子である。NifAの産生を増加させることにより(構成的にまたは高アンモニア条件中のいずれかで)、天然アンモニア感知経路が回避される。加えて、NifAの公知阻害剤であるNifLタンパク質の産生を低減することは、遊離活性NifAレベルの増加にも結び付く。加えて、nifALオペロンの転写レベルを増加させることは(構成的にまたは高アンモニア条件中のいずれかで)、全体的により高いレベルのNifAタンパク質にも結び付く。nifAL発現のレベル上昇は、プロモーター自体を変更することにより、またはNtrB(元々は高窒素条件中にnifALオペロンの遮断をもたらすことになるntrBおよびntrCシグナル伝達カスケードの一部)の発現を低減させることにより達成される。これらまたは本明細書に記載の任意の他の方法により達成される高レベルのNifAは、内部寄生菌の窒素固定活性を増加させる。
【0096】
本明細書に記載の方法を使用して圃場に基づく窒素固定を容易にする遺伝子変異のための別の標的は、GlnD/GlnB/GlnK PIIシグナル伝達カスケードである。細胞内グルタミンレベルは、GlnD/GlnB/GlnK PIIシグナル伝達カスケードにより感知される。GlnDのウリジリル除去活性を消失させるGlnDの活性部位突然変異は、窒素感知カスケードを妨害する。加えて、GlnB濃度の低減は、グルタミン感知カスケードを短絡させる。こうした突然変異により、細胞を「騙して」窒素制限状態であると認識させ、それにより窒素固定レベル活性を増加させる。
【0097】
amtBタンパク質も、本明細書に記載の方法を使用して圃場に基づく窒素固定を容易にする遺伝子変異のための標的である。環境からのアンモニア取り込みは、amtBタンパク質の発現レベルを減少させることにより低減させることができる。細胞内アンモニアが存在しないと、内部寄生菌は、アンモニアのレベルが高いことを感知することができず、窒素固定遺伝子の下方制御が防止される。細胞内区画への進入を果たしたアンモニアは全てグルタミンに変換される。細胞内グルタミンレベルは、窒素を感知するための主要な媒介物である。細胞内グルタミンレベルを減少させることにより、細胞が、環境中のアンモニウムレベルが高いことを感知することが防止される。これは、グルタミンをグルタメートに変換する酵素であるグルタミナーゼの発現レベルを増加させることにより行うことができる。加えて、細胞内グルタミンは、グルタミン合成酵素(アンモニアをグルタミンに変換する酵素)を減少させることによっても低減させることができる。ジアゾ栄養生物では、固定されたアンモニアは、細胞プロセスに使用されることになるグルタミンおよびグルタメートへと迅速に同化される。アンモニア同化の妨害は、固定窒素を転換して、アンモニアとして細胞から搬出されることを可能にする場合がある。固定されたアンモニアは、主にglnAによりコードされているグルタミン合成酵素(GS)によりグルタミンへと、その後はグルタミンオキソグルタル酸アミノトランスフェラーゼ(GOGAT)によりグルタミンへと同化される。一部の例では、glnSは、グルタミン合成酵素をコードする。GSは、GSアデニリルトランスフェラーゼ(GlnE)、つまり、それぞれアデニリルトランスフェラーゼ(AT)ドメインおよびアデニリル除去(AR)ドメインの活性によりGSのアデニリル化および脱アデニリル化の両方を触媒する、glnEによりコードされた二機能性酵素により、翻訳後に調節される。窒素制限条件下では、glnAが発現され、GlnEのARドメインは、GSを脱アデニリル化し、GSの活性化を可能にする。窒素過剰条件下では、glnA発現は中止され、GlnEのATドメインは、グルタミンによりアロステリック的に活性化され、GSのアデニリル化および非活性化が引き起こされる。
【0098】
さらに、draT遺伝子もまた、本明細書に記載の方法を使用して圃場に基づく窒素固定を容易にする遺伝子変異のための標的であってもよい。細胞により窒素固定酵素が産生されると、ニトロゲナーゼ遮断が、細胞が高窒素条件で固定活性を下方制御する別のレベルを表す。この遮断は、DraTの発現レベルを減少させることにより除去することができる可能性がある。
【0099】
新しい微生物表現型を付与するための方法は、転写レベル、翻訳レベル、および翻訳後レベルで実施することができる。転写レベルでは、プロモーターを変更すること(プロモーターの全てまたは一部の欠失を含む、転写因子に対するシグマ因子親和性または結合部位の変更等)または転写ターミネーターおよびアテニュエータを変更することが含まれる。翻訳レベルでは、リボソーム結合部位での変更、およびmRNA分解シグナルを変更することが含まれる。翻訳後レベルでは、酵素の活性部位を突然変異させること、およびタンパク質間相互作用を変更させることが含まれる。こうした変更は、数多くの方法で達成することができる。発現レベルの低減(または完全な消失)は、天然リボソーム結合部位(RBS)またはプロモーターを、強度/効率がより低いものと交換することにより達成することができる。ATG開始部位を、GTG、TTG、またはCTG開始コドンと交換してもよい。それにより、コード領域の翻訳活性の低減がもたらされる。発現の完全な消失は、遺伝子のコード領域をノックアウト(欠失)することにより行うことができる。オープンリーディングフレーム(ORF)をフレームシフトすると、ORFに中途終止コドンがもたらされ、非機能性の短縮産物が作成されることになる可能性がある。同様に、インフレーム終止コドンの挿入も、非機能性の短縮産物を作成することになる。N末端またはC末端に分解タグを付加することでも、特定の遺伝子の有効濃度を低減することができる。
【0100】
反対に、本明細書に記載されている遺伝子の発現レベルは、より強力なプロモーターを使用することにより達成することができる。高窒素レベル条件(または任意の他の条件)中のプロモーター活性を確実に高くするために、高窒素レベル条件における全ゲノムの転写プロファイルを取得し、そのデータセットから、所望の転写レベルを有する活性プロモーターを選択して、弱いプロモーターを置換してもよい。弱い開始コドンを、より良好な翻訳開始効率のATG開始コドンと交換してもよい。また、弱いリボソーム結合部位(RBS)を、より高い翻訳開始効率を有する異なるRBSと交換してもよい。また、加えて、部位特異的突然変異を実施して、酵素の活性を変更してもよい。
【0101】
植物に生じる窒素固定のレベルを増加させることは、作物生産に必要とされる化学肥料の量の低減に結びつき、温室効果ガス排出(例えば、亜酸化窒素)を削減することができる。
【0102】
連続継代
植物形質(例えば、窒素固定)を向上させる細菌の産生は、連続継代により達成することができる。これは、1つまたは複数の植物に1つまたは複数の向上された形質を付与することが可能な細菌および/または組成物を同定することに加えて、微生物叢により影響を受ける特定の向上された形質を有する植物を選択することにより行うことができる。植物形質を向上させる細菌を産生するための1つの方法は、(a)第1の植物の組織または土壌から細菌を単離するステップ;(b)細菌のうちの1つまたは複数に遺伝子変異を導入して、1つまたは複数の変異細菌を産生するステップ;(c)複数の植物を変異細菌に曝露するステップ;(d)複数の植物のうち1つの組織または土壌から細菌を単離するステップであって、細菌を単離した植物が、複数の植物中の他の植物と比べて向上された形質を有する、ステップ;および(e)向上された形質を有する植物から単離された細菌(ステップ(d))を用いて、ステップ(b)~(d)を繰り返すステップを含む。ステップ(b)~(d)は、植物の向上された形質が所望のレベルに達するまで、何回でも(例えば、1回、2回、3回、4回、5回、10回、またはそれよりも多く)繰り返すことができる。さらに、複数の植物は、10~20個の植物、または20個もしくはそれよりも多く、50個もしくはそれよりも多く、100個もしくはそれよりも多く、300個もしくはそれよりも多く、500個もしくはそれよりも多く、または1000個もしくはそれよりも多くの植物等の、2個を超える植物であってもよい。
【0103】
向上された形質を有する植物を得ることに加えて、1つまたは複数の遺伝子(例えば、窒素固定を調節する遺伝子)に導入された1つまたは複数の遺伝子変異を含む細菌を含む細菌集団が得られる。上述のステップを繰り返すことにより、目的の植物形質と相関する集団の最も適切なメンバーを含む細菌の集団を得ることができる。遺伝子分析および/または表現型分析等により、この集団内の細菌を同定して、それらの有益な特性を決定することができる。ステップ(a)にて、単離された細菌の遺伝子分析を行ってもよい。表現型および/または遺伝子型の情報は、以下のものを含む技法を使用して得ることができる:植物由来の化学成分のハイスループットスクリーニング;遺伝物質のハイスループット配列決定を含む配列決定技法;ディファレンシャルディスプレイ技法(DDRT-PCRおよびDD-PCRを含む);核酸マイクロアレイ技法;RNA-seq(全トランスクリプトームショットガンシーケンシング);およびqRT-PCR(定量リアルタイムPCR)。得られた情報を使用して、系統発生分析、またはrRNAオペロンもしくは他の分類学的に有益な遺伝子座の成分をコードする核酸のマイクロアレイに基づくスクリーニング等、存在する細菌の同一性および活性に関する群生プロファイル情報を得ることができる。分類学的に有益な遺伝子座の例としては、16S rRNA遺伝子、23S rRNA遺伝子、5S rRNA遺伝子、5.8S rRNA遺伝子、12S rRNA遺伝子、18S rRNA遺伝子、28S rRNA遺伝子、gyrB遺伝子、rpoB遺伝子、fusA遺伝子、recA遺伝子、coxl遺伝子、nifD遺伝子が挙げられる。集団に存在する分類群を決定するための分類学的プロファイリングの例示的な方法は、米国特許出願公開第20140155283号に記載されている。細菌の同定は、窒素固定経路に関連する遺伝子等の、1つもしくは複数の遺伝子または1つもしくは複数のシグナル経路の活性を特徴付けることを含んでもよい。また、異なる細菌種間の相乗効果的な相互作用(2つの成分を組み合わせることにより、付加的な量を超えて所望の効果が増加すること)が、細菌集団に存在している場合がある。
【0104】
遺伝子変異は、以下のものからなる群から選択される遺伝子であってもよい:nifA、nifL、ntrB、ntrC、glnA、glnB、glnK、draT、amtB、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQ。遺伝子変異は、以下のものからなる群から選択される機能性を有するタンパク質をコードする遺伝子の変異であってもよい:グルタミン合成酵素、グルタミナーゼ、グルタミン合成酵素アデニリルトランスフェラーゼ、転写活性化因子、抗転写活性化因子、ピルビン酸フラボドキシンオキシドレダクターゼ、フラボドキシン、またはNAD+二窒素レダクターゼaDP-D-リボシルトランスフェラーゼ。遺伝子変異は、以下のうちの1つまたは複数をもたらす突然変異であってもよい:NifAもしくはグルタミナーゼの発現もしくは活性の増加;NifL、NtrB、グルタミン合成酵素、GlnB、GlnK、DraT、AmtBの発現もしくは活性の減少;GlnEのアデニリル除去活性の減少;またはGlnDのウリジリル除去活性の減少。遺伝子変異の導入は、1、2、3、4、5、10、25、50、100、250、500個、またはそれよりも多くのヌクレオチド等の、標的部位のうちの1つまたは複数のヌクレオチドの挿入および/または欠失を含んでもよい。本明細書に開示されている方法の1つまたは複数の細菌に導入された遺伝子変異は、ノックアウト突然変異(例えば、プロモーターの欠失、中途終止コドンを生成する挿入または欠失、全遺伝子の欠失)であってもよく、または、タンパク質ドメインの活性の排除または消失(例えば、活性部位に影響を及ぼす点突然変異、またはタンパク質産物の関連部分をコードする遺伝子の部分の欠失)であってもよく、または標的遺伝子の調節配列の変更または消失であってもよい。また、異種性調節配列、および遺伝子変異が導入されている細菌に対応する細菌種または属のゲノム内に見出される調節配列を含む、1つまたは複数の調節配列を挿入してもよい。さらに、調節配列は、細菌培養物のまたは植物組織内の遺伝子の発現レベルに基づいて選択してもよい。遺伝子変異は、標的部位に特異的に導入される所定の遺伝子変異であってもよい。遺伝子変異は、標的部位内のランダム突然変異であってもよい。遺伝子変異は、1つまたは複数のヌクレオチドの挿入または欠失であってもよい。一部の場合では、形質向上を評価するために細菌を植物に曝露する前に、複数の異なる遺伝子変異(例えば、2、3、4、5、10個、またはそれよりも多く)が、単離された細菌のうちの1つまたは複数に導入される。複数の遺伝子変異は、上記のタイプのいずれであってもよく、同じタイプであってもよく、または異なるタイプであってもよく、任意の組合せであってもよい。一部の場合では、複数の異なる遺伝子変異は、複数の遺伝子変異が細菌に蓄積され、向上された形質が関連する植物に徐々に付与されるように、連続的に、第1の単離ステップ後に第1の遺伝子変異を導入し、第2の単離ステップ後に第2の遺伝子変異を導入する等で導入される。
【0105】
一般的に、用語「遺伝子変異」は、基準ゲノムもしくはその部分または基準遺伝子もしくはその部分等の基準ポリヌクレオチドと比べた、ポリヌクレオチド配列に導入される任意の変更を指す。遺伝子変異は、「突然変異」と呼ばれる場合もあり、遺伝子変異を含む配列または生物は、「遺伝子変異体」または「突然変異体」と呼ばれる場合がある。遺伝子変異は、遺伝子発現、代謝、および細胞シグナル伝達を含むある生物活性の増加または減少等の、任意の数の効果を示してもよい。遺伝子変異は、標的部位に特異的に導入されてもよく、またはランダムに導入されてもよい。遺伝子変異を導入するための様々な分子ツールおよび方法が利用可能である。例えば、遺伝子変異は、ポリメラーゼ連鎖反応突然変異誘発、オリゴヌクレオチド指定突然変異誘発、飽和突然変異誘発、断片シャッフリング突然変異誘発(fragment shuffling mutagenesis)、相同組換え、CRISPR/Cas9系、化学的突然変異誘発、およびそれらの組合せにより導入することができる。遺伝子変異を導入するための化学的方法としては、DNAを、化学的突然変異原、例えば、エチルメタンスルホン酸(EMS)、メチルメタンスルホン酸(MMS)、N-ニトロソ尿素(ENU)、N-メチル-N-ニトロ-N’-ニトロソグアニジン、4-ニトロキノリンN-オキシド、硫酸ジエチル、ベンゾピレン、シクロホスファミド、ブレオマイシン、トリエチルメラミン、アクリルアミドモノマー、ナイトロジェンマスタード、ビンクリスチン、ジエポキシアルカン(例えば、ジエポキシブタン)、ICR-170、ホルムアルデヒド、塩酸プロカルバジン、エチレンオキシド、ジメチルニトロソアミン、7,12ジメチルベンズ(a)アントラセン、クロラムブシル、ヘキサメチルホスホラミド、およびビスルファン(bisulfan)等に曝露することが挙げられる。放射線突然変異誘導因子としては、紫外線、γ線、X線、および高速中性子衝撃が挙げられる。また、例えば、トリメチルソラレンを紫外光と共に使用して、核酸に遺伝子変異を導入することができる。可動DNA要素、例えば転位因子のランダムな挿入または標的挿入は、遺伝子変異を生成するための別の好適な方法である。遺伝子変異は、例えば、エラープローンPCR等のポリメラーゼ連鎖反応(PCR)技法を使用して、無細胞in vitro系での増幅中に核酸に導入してもよい。遺伝子変異は、DNAシャッフリング技法(例えば、エクソンシャッフリングおよびドメインスワッピング等)を使用して、in vitroで核酸に導入してもよい。また、遺伝子変異は、細胞のDNA修復酵素の欠損の結果として核酸に導入することができる。例えば、DNA修復酵素突然変異体をコードする突然変異遺伝子が細胞に存在すると、その細胞のゲノムには、高頻度の突然変異(つまり、約1個の突然変異/100遺伝子~1個の突然変異/10,000遺伝子)が生成されることが予想される。DNA修復酵素をコードする遺伝子の例としては、これらに限定されないが、Mut H、Mut S、Mut L、およびMut U、ならびに他の種におけるそれらの相同体(例えば、MSH 16、PMS 12、MLH1、GTBP、およびERCC-1等)が挙げられる。遺伝子変異を導入するための種々の方法の例示的な記載は、例えば、Stemple(2004年)Nature、5巻:1~7頁;Chiangら(1993年)PCR Methods Appl、2巻(3号):210~217頁;Stemmer(1994年)Proc. Natl. Acad. Sci. USA、91巻:10747~10751頁;ならびに米国特許第6,033,861号および同第6,773,900号に提供されている。
【0106】
サイクル増幅技法として、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)突然変異誘発では、変異原性プライマーを使用して、所望の突然変異を導入する。PCRは、変性、アニーリング、および伸長のサイクルで実施される。PCRによる増幅後、突然変異DNAの選択および親プラスミドDNAの除去は、以下のようにして達成することができる:1)PCR中にdCTPをヒドロキシメチル化dCTPで置換し、その後制限酵素で消化して、非ヒドロキシメチル化親DNAのみを除去する;2)抗生物質耐性遺伝子および研究対象遺伝子を両方とも同時に突然変異誘発させ、プラスミドを異なる抗生物質耐性を有するように変化させ、新たな抗生物質耐性により、その後の所望の突然変異の選択が容易になる;3)所望の突然変異を導入した後、メチル化DNAのみを切断する制限酵素Dpnlにより親メチル化鋳型DNAを消化し、それにより突然変異誘発非メチル化鎖を回収する;または4)突然変異PCR産物を、追加のライゲーション反応で環状化して、突然変異DNAの形質転換効率を増加させる。例示的な方法のさらなる記載は、例えば、米国特許第7132265号、米国特許第6713285号、米国特許第6673610号、米国特許第6391548号、米国特許第5789166号、米国特許第5780270号、米国特許第5354670号、米国特許第5071743号、および米国特許出願公開第20100267147号に見出すことができる。
【0107】
指定部位突然変異誘発と呼ばれるオリゴヌクレオチド指定突然変異誘発では、典型的には、合成DNAプライマーが利用される。この合成プライマーは、所望の突然変異を含有し、目的の遺伝子のDNAとハイブリダイズすることができるように、突然変異部位付近が鋳型DNAと相補的である。突然変異は、単一塩基の変更(点突然変異)、複数塩基の変更、欠失、または挿入、またはこれらの組合せであってもよい。その後、DNAポリメラーゼを使用して、一本鎖プライマーを伸長させ、それにより遺伝子の残りを複製する。このように複製された遺伝子は、突然変異部位を含有し、その後ベクターとしての宿主細胞に導入し、クローニングしてもよい。最後に、突然変異体をDNA配列決定により選択して、それらが所望の突然変異を含有することを確認することができる。
【0108】
遺伝子変異は、エラープローンPCRを使用して導入してもよい。この技法では、目的の遺伝子は、配列複製のフィデリティーが不十分である条件下でDNAポリメラーゼを使用して増幅される。その結果、増幅産物は、少なくとも1つのエラーを配列に含有する。遺伝子を増幅し、得られた反応産物が、鋳型分子と比較して1つまたは複数の変更を配列に含有する場合、得られた産物は、鋳型と比較して突然変異誘発されている。ランダム突然変異を導入する別の手段は、細胞を、ニトロソグアニジンまたはエチルメタンスルホン酸等の化学的突然変異原に曝露し(Nestmann、Mutat Res、1975年6月;28巻(3号):323~30頁)、その後、その遺伝子を含むベクターを宿主から単離することである。
【0109】
飽和突然変異誘発は、別の形態のランダム突然変異誘発であり、特異的部位にまたは遺伝子の狭い領域に、全てのまたはほぼ全ての考え得る突然変異を生成しようするものである。一般的な意味では、飽和突然変異誘発は、突然変異誘発させようとする確定ポリヌクレオチド配列(突然変異誘発させようとする配列の長さは、例えば15~100,000塩基である)に変異原性カセットの完全なセット(各カセットの長さは、例えば1~500塩基である)を突然変異誘発させることで構成されている。したがって、一群の突然変異(例えば、1から100個までの範囲の突然変異)が、突然変異誘発させようとする各カセットに導入される。1つのカセットに導入される突然変異のグループ分けは、飽和突然変異誘発の1ラウンドを施している間に第2のカセットに導入される突然変異の第2のグループ分けと異なっていてもよく、または同じであってもよい。そのようなグループ分けは、欠失、付加、特定のコドンのグループ分け、および特定のヌクレオチドカセットのグループ分けにより例示される。
【0110】
DNAシャッフリングとも呼ばれる断片シャッフリング突然変異誘発は、有益な突然変異を迅速に増幅させる方法である。シャッフリングプロセスの一例では、DNAseを使用して、1セットの親遺伝子を、例えば長さが約50~100bpの小片に断片化する。その後、プライマーを用いないポリメラーゼ連鎖反応(PCR)が続き、十分な重複相同性配列を有するDNA断片が互いにアニーリングすることになり、その後DNAポリメラーゼにより伸長される。DNA分子の幾つかが親遺伝子のサイズに到達した後も、このPCR伸長を数ラウンド行う。その後、これら遺伝子を、今度は、鎖の末端に相補的になるように設計したプライマーを添加した別のPCRで増幅してもよい。プライマーは、クローニングベクターへのライゲーションに必要とされる制限酵素認識部位の配列等の追加の配列が、それらの5’末端に付加されてもよい。シャッフリング技法のさらなる例は、米国特許出願公開第20050266541号に提供されている。
【0111】
相同組換え突然変異誘発は、外因性DNA断片と標的ポリヌクレオチド配列との間の組換えを含む。二本鎖切断が生じた後、切断の5’末端付近のDNAの区画は、切除と呼ばれるプロセスで切り離される。その後のストランド侵入ステップでは、切断されたDNA分子の突出3’末端が、切断されていない類似のまたは同一のDNA分子に「侵入」する。この方法を使用すると、遺伝子を欠失させ、エキソンを除去し、遺伝子を付加し、点突然変異を導入することができる。相同組換え突然変異誘発は、恒久的であってもよく、または暫定的であってもよい。典型的には、組換え鋳型も提供される。組換え鋳型は、別のベクターの成分であってもよく、別個のベクターに含有されていてもよく、または別個のポリヌクレオチドとして提供されてもよい。一部の実施形態では、組換え鋳型は、部位特異的ヌクレアーゼによりニックまたは切断される標的配列内または付近等で相同組換えの鋳型としての役目を果たすように設計されている。鋳型ポリヌクレオチドは、長さが約10個もしくはそれよりも多く、約15個もしくはそれよりも多く、約20個もしくはそれよりも多く、約25個もしくはそれよりも多く、約50個もしくはそれよりも多く、約75個もしくはそれよりも多く、約100個もしくはそれよりも多く、約150個もしくはそれよりも多く、約200個もしくはそれよりも多く、約500個もしくはそれよりも多く、約1000個もしくはそれよりも多く、またはそれよりも多くのヌクレオチド等、任意の好適な長さであってもよい。一部の実施形態では、鋳型ポリヌクレオチドは、標的配列を含むポリヌクレオチドの部分に相補的である。鋳型ポリヌクレオチドは、最適にアランメントされる場合、標的配列のうちの1つまたは複数のヌクレオチドと重複してもよい(例えば、約1個もしくはそれよりも多く、約5個もしくはそれよりも多く、約10個もしくはそれよりも多く、約15個もしくはそれよりも多く、約20個もしくはそれよりも多く、約25個もしくはそれよりも多く、約30個もしくはそれよりも多く、約35個もしくはそれよりも多く、約40個もしくはそれよりも多く、約45個もしくはそれよりも多く、約50個もしくはそれよりも多く、約60個もしくはそれよりも多く、約70個もしくはそれよりも多く、約80個もしくはそれよりも多く、約90個もしくはそれよりも多く、約100個もしくはそれよりも多く、またはそれよりも多くのヌクレオチド)。一部の実施形態では、鋳型配列および標的配列を含むポリヌクレオチドが最適にアランメントされる場合、鋳型ポリヌクレオチドの最も近いヌクレオチドは、標的配列から、約1個、5個、10個、15個、20個、25個、50個、75個、100個、200個、300個、400個、500個、1000個、5000個、10000個またはそれよりも多くのヌクレオチド内にある。相同組換えの方法に有用な部位指定ヌクレアーゼの非限定的な例としては、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPRヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ、およびメガヌクレアーゼが挙げられる。そのようなヌクレアーゼの使用に関するさらなる記載は、例えば、米国特許第8795965号および米国特許出願公開第20140301990号を参照されたい。
【0112】
CRISPR/Cas9(クラスターを形成し規則正しい間隔を持つ短いパリンドロームリピート、Clustered regularly interspaced short palindromic repeats)/CRISPR関連(Cas)系は、CRISPR RNA(crRNA)を使用して、侵入核酸のサイレンシングをガイドすることにより、ウイルスおよびプラスミドに対する適応免疫を細菌および古細菌に提供する。Cas9タンパク質(またはその機能的等価体および/もしくは変異体、つまりCas9様タンパク質)は、このタンパク質と、crRNAおよびtracrRNA(ガイドRNAとも呼ばれる)と呼ばれる2つの天然または合成RNA分子との結合に依存するDNAエンドヌクレアーゼ活性を天然で含有する。一部の場合では、2つの分子は、共有結合で連結され、単一分子(単鎖ガイドRNA(「sgRNA」)とも呼ばれる)を形成する。したがって、Cas9またはCas9様タンパク質は、DNAを標的とするRNA(この用語は、2分子ガイドRNA構成および単一分子ガイドRNA構成を両方とも包含する)と結合し、それによりCas9またはCas9様タンパク質を活性化し、このタンパク質が標的核酸配列にガイドされる。Cas9またはCas9様タンパク質は、その天然酵素機能が維持されている場合、標的DNAを切断して、二本鎖切断を作成し、それによりゲノム変更(つまり、編集:欠失、挿入(ドナーポリヌクレオチドが存在する場合)、置換等)をもたらすことができ、それにより遺伝子発現が変更される。Cas9の一部の変異体(変異体は、用語Cas9様により包含される)は、DNA切断活性の減少を示すように変更されている(一部の場合では、標的DNAの両鎖ではなく1本の鎖を切断し、他の場合には、著しく還元されて、DNA切断活性を示さない)。遺伝子変異を導入するためのCRISPR系のさらなる例示的な記載は、例えば、米国特許第8795965号に見出すことができる。
【0113】
化学的突然変異原または放射線を含む、主として点突然変異、ならびに短い欠失、挿入、転換、および/または転移を作成する突然変異原を使用して、遺伝子変異を作成してもよい。突然変異原としては、これらに限定されないが、エチルメタンスルホン酸、メチルメタンスルホン酸、N-エチル-N-ニトロソ尿素(nitrosurea)、トリエチルメラミン、N-メチル-N-ニトロソ尿素、プロカルバジン、クロラムブシル、シクロホスファミド、硫酸ジエチル、アクリルアミドモノマー、メルファラン、ナイトロジェンマスタード、ビンクリスチン、ジメチルニトロソアミン、N-メチル-N’-ニトロ-ニトロソグアニジン、ニトロソグアニジン、2-アミノプリン、7,12ジメチル-ベンズ(a)アントラセン、エチレンオキシド、ヘキサメチルホスホラミド、ビスルファン、ジエポキシアルカン(ジエポキシオクタン、ジエポキシブタン等)、2-メトキシ-6-クロロ-9[3-(エチル-2-クロロ-エチル)アミノプロピルアミノ]アクリジン二塩酸塩、およびホルムアルデヒドが挙げられる。
【0114】
遺伝子変異の導入は、不完全なプロセスであってもよく、細菌の処置集団中の一部の細菌は、所望の突然変異を保持するが、他のものは保持していない。一部の場合では、所望の遺伝子変異を保持する細菌が富化されるように、選択圧を加えることが望ましい。伝統的には、遺伝子変異が成功した変異体の選択は、抗生物質耐性遺伝子の挿入または非致死性化合物を致死性代謝物へと変換することが可能な代謝活性の消失の場合等、遺伝子変異により機能が付与または消失されたものを選択することまたはそれらに対して選択することを含んでいた。所望の遺伝子変異のみを導入すればよい(例えば、選択可能なマーカーさえ必要としない)ように、ポリヌクレオチド配列自体に基づく選択圧を加えることも可能である。この場合、選択圧は、遺伝子変異を導入することが求められている基準配列に対して選択が効果的に向けられるように、標的部位に導入される遺伝子変異が欠如したゲノムを切断することを含んでもよい。典型的には、切断は、標的部位の100個ヌクレオチド内で生じる(例えば、標的部位から75個、50個、25個、10個、またはそれより少数のヌクレオチド内、標的部位でのまたは標的部位内での切断を含む)。切断は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPRヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ(TALEN)、またはメガヌクレアーゼからなる群から選択される部位特異的ヌクレアーゼにより指示されてもよい。そのようなプロセスは、相同組換えの鋳型が提供されないこと以外は、標的部位での相同組換えを強化するためのプロセスに類似する。その結果、所望の遺伝子変異が欠如した細菌は、修復されずに細胞死に至る切断を受ける可能性がより高い。その後、選択を生き残った細菌を単離し、植物に曝露して、向上された形質の付与を評価するために使用することができる。
【0115】
CRISPRヌクレアーゼを部位特異的ヌクレアーゼとして使用して、標的部位に切断を指示してもよい。突然変異微生物の選択の向上は、Cas9を使用して非突然変異細胞を死滅させることにより得ることができる。その後、植物に突然変異微生物を接種して共生を再確認し、進化的圧力を作成して、効率的な共生生物を選択する。その後、微生物を植物組織から再単離してもよい。非変異体に対する選択に用いられるCRISPRヌクレアーゼ系は、相同組換えの鋳型が提供されないこと以外は、遺伝子変異の導入に関して上述されているものと同様のエレメントを用いることができる。したがって、標的部位に指示された切断は、影響を受ける細胞の死を増強する。
【0116】
標的部位での切断を特異的に誘導するための他の選択肢は、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ(TALEN)系、およびメガヌクレアーゼ等が利用可能である。ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFN)は、ジンクフィンガーDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合させることにより生成された人工DNAエンドヌクレアーゼである。ZFNは、所望のDNA配列を標的とするように操作することができ、それにより、ジンクフィンガーヌクレアーゼは、固有の標的配列を切断することが可能になる。ZFNは、細胞内に導入される場合、二本鎖切断を誘導することにより細胞の標的DNA(例えば、細胞のゲノム)を編集するために使用することができる。転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)は、TAL(転写活性化因子様)エフェクターDNA結合ドメインをDNA切断ドメインに融合させることにより生成された人工DNAエンドヌクレアーゼである。TALENは、事実上任意の所望のDNA配列に結合するよう迅速に操作することができ、TALENは、細胞内に導入される場合、二本鎖切断を誘導することにより細胞の標的DNA(例えば、細胞のゲノム)を編集するために使用することができる。メガヌクレアーゼ(ホーミングエンドヌクレアーゼ)は、大型認識部位(12~40塩基対の二本鎖DNA配列)により特徴付けられるエンドデオキシリボヌクレアーゼである。メガヌクレアーゼを使用して、高度に標的化された様式で配列を置換、排除、または修飾することができる。タンパク質工学によりそれらの認識配列を修飾することにより、標的配列を変更することができる。メガヌクレアーゼは、細菌、植物、または動物に関わらず、あらゆるゲノムタイプの修飾に使用することができ、通例では、4つのファミリー:LAGLIDADGファミリー、GIY-YIGファミリー、His-Cystボックスファミリー、およびHNHファミリーに分類される。例示的なホーミングエンドヌクレアーゼとしては、I-SceI、I-CeuI、PI-PspI、PI-Sce、I-SceIV、I-CsmI、I-PanI、I-SceII、I-PpoI、I-SceIII、I-CreI、I-TevI、I-TevII、およびI-TevIIIが挙げられる。
【0117】
本開示の方法は、様々な望ましい形質のうちの1つまたは複数を導入または向上させるために用いることができる。導入または向上される形質の例としては、以下のものが挙げられる:根バイオマス、根長、植物丈、苗条長、葉数、水利用効率、全体的バイオマス、収穫高、果実サイズ、穀粒サイズ、光合成速度、乾燥耐性、耐熱性、耐塩性、線虫ストレス耐性、真菌病原体耐性、細菌病原体耐性、ウイルス病原体耐性、代謝物のレベル、およびプロテオーム発現。植物丈、全体的バイオマス、根および/または苗条バイオマス、種子発芽、実生生存、光合成効率、蒸散率、種子/果実数または質量、植物穀物または果実の収穫高、葉葉緑素含有量、光合成速度、根長、またはそれらの任意の組合せを含む望ましい形質を使用して、成長を測定することができ、同一条件下で栽培された基準農業植物(例えば、向上された形質を有していない植物)の成長速度と比較することができる。導入または向上される好ましい形質は、本明細書に記載されているような窒素固定である。一部の場合では、本明細書に記載の方法から生じる植物は、同じ土壌条件下で栽培された基準農業植物よりも少なくとも約5%大きな、例えば、少なくとも約5%、少なくとも約8%、少なくとも約10%、少なくとも約15%、少なくとも約20%、少なくとも約25%、少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、少なくとも約60%、少なくとも約75%、少なくとも約80%、少なくとも約80%、少なくとも約90%、または少なくとも100%、少なくとも約200%、少なくとも約300%、少なくとも約400%、またはそれを超えて大きな形質の差異を示す。
【0118】
向上される形質は、1つまたは複数の生物ストレス因子または非生物ストレス因子を適用することを含む条件下で評価してもよい。ストレス因子の例としては、非生物ストレス(熱ストレス、塩ストレス、乾燥ストレス、寒冷ストレス、および低栄養ストレス等)および生物ストレス(線虫ストレス、昆虫草食ストレス、真菌病原体ストレス、細菌病原体ストレス、およびウイルス病原体ストレス等)が挙げられる。
【0119】
本開示の方法および組成物により向上された形質は、以前は窒素固定が可能ではなかった植物におけるものを含む窒素固定であってもよい。一部の場合では、本明細書に記載の方法により単離された細菌は、植物の窒素の1%またはそれよりも多く(例えば、2%、3%、4%、5%、6%、7%、8%、9%、10%、15%、20%、またはそれよりも多く)を産生する。これは、一切の遺伝子変異を導入する前の第1の植物から単離された細菌と比較して、少なくとも2倍(例えば、3倍、4倍、5倍、6倍、7倍、8倍、9倍、10倍、20倍、50倍、100倍、1000倍、またはそれよりも多く)の窒素固定能力の増加に相当する場合がある。一部の場合では、細菌は、植物の窒素の5%またはそれよりも多くを産生する。窒素固定の所望のレベルは、遺伝子変異を導入するステップ、複数の植物に曝露するステップ、および向上された形質を有する植物から細菌を単離するステップを、1回または複数回(例えば、1、2、3、4、5、10、15、25回、またはそれよりも多く)繰り返した後で達成されてもよい。一部の場合では、窒素固定の増強されたレベルは、グルタミン(gluamine)、アンモニア、または窒素の他の化学的供給源で補充された肥料の存在下で達成される。窒素固定の度合いを評価するための方法は公知であり、それらの例は、本明細書に記載されている。
【0120】
窒素固定
本明細書には、植物における窒素固定を増加させるための方法であって、植物を、窒素固定を調節する1つまたは複数の遺伝子に導入された1つまたは複数の遺伝子変異を含む細菌に曝露するステップを含み、細菌が、植物における窒素の1%またはそれよりも多く(例えば、2%、5%、10%、またはそれよりも多く)を産生し、産生が、細菌の非存在下における植物と比較して、少なくとも2倍の窒素固定能力に相当してもよい方法が記載されている。細菌は、グルタミンまたはアンモニアで補充された肥料の存在下で窒素を産生することができる。遺伝子変異は、上記で提供されている例を任意の数および任意の組合せで含む、本明細書に記載されている任意の遺伝子変異であってもよい。遺伝子変異は、nifA、nifL、ntrB、ntrC、グルタミン合成酵素、glnA、glnB、glnK、draT、amtB、グルタミナーゼ、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQからなる群から選択される遺伝子に導入されてもよい。遺伝子変異は、以下のうちの1つまたは複数をもたらす突然変異であってもよい:NifAもしくはグルタミナーゼの発現もしくは活性の増加;NifL、NtrB、グルタミン合成酵素、GlnB、GlnK、DraT、AmtBの発現もしくは活性の減少;GlnEのアデニリル除去活性の減少;またはGlnDのウリジリル除去活性の減少。本明細書に開示されている方法のうちの1つまたは複数の細菌に導入される遺伝子変異は、ノックアウト突然変異であってもよく、または標的遺伝子の調節配列を消失させてもよく、または異種性調節配列の挿入、例えば、同じ細菌種または属のゲノム内に見出される調節配列の挿入を含んでもよい。調節配列は、細菌培養物のまたは植物組織内の遺伝子の発現レベルに基づいて選択することができる。遺伝子変異は、化学的突然変異誘発により生成されてもよい。ステップ(c)にて栽培された植物を、生物ストレス因子または非生物ストレス因子に曝露してもよい。
【0121】
本明細書に記載の植物に生じる窒素固定の量は、幾つかの方法で、例えばアセチレン還元(AR)アッセイにより測定することができる。アセチレン還元アッセイは、in vitroまたはin vivoで実施することができる。特定の細菌が植物に固定窒素を提供している証拠としては、以下のものを挙げることができる:1)接種すると、総植物Nが著しく増加し、好ましくはそれに伴って植物におけるN濃度が増加すること;2)接種すると、窒素欠乏症状がN制限条件下で緩和されること(緩和には、乾燥物質の増加が含まれるべきである);3)N固定が、15N手法(同位体希釈実験であってもよく、15還元アッセイであってよく、または15N天然存在量アッセイであってもよい)の使用により確認されること;4)固定されたNが、植物タンパク質または代謝物に組み込まれること;および5)これら効果の全てが、未接種の植物または接種菌株の突然変異体を接種した植物で見られる訳ではないこと。
【0122】
野生型の窒素固定調節カスケードは、入力OおよびNH がNORゲートを通過し、その出力が、ATPに加えてANDゲートに入力されるデジタル論理回路として表すことができる。一部の実施形態では、本明細書に開示されている方法は、微生物が施肥圃場であっても窒素を産生することができるように、この回路に対するNH の影響を調節カスケードの複数地点で妨害する。しかしながら、本明細書に開示されている方法では、上記回路に対するATPまたはOの影響を変更すること、または回路を細胞の他の調節カスケードと置換すること、または窒素固定以外の遺伝子回路を変更することも起想される。異種性調節系の制御下で機能性産物を生成するように遺伝子クラスターを再操作してもよい。遺伝子クラスターのコード配列の外部および内部の天然調節エレメントを排除することにより、およびそれらを代替調節系と置換することにより、複雑な遺伝子オペロンおよび他の遺伝子クラスターの機能性産物を制御することができ、および/または天然遺伝子が由来していた種以外の異なる種の細胞を含む異種性細胞に移動させることができる。合成遺伝子クラスターは、再操作されると、遺伝子回路または他の誘導可能な調節系により制御され、それにより産物の発現を所望のように制御することができる。ロジックゲート、パルス発生器、発振器、スイッチ、またはメモリデバイスとして作用するような発現カセットを設計してもよい。制御性発現カセットは、発現カセットが、酸素、温度、接触、浸透圧ストレス、膜ストレス、または酸化還元センサ等の環境センサとして機能するように、プロモーターに連結されてもよい。
【0123】
例として、nifL、nifA、nifT、およびnifX遺伝子を、nif遺伝子クラスターから排除してもよい。各アミノ酸配列をコードするDNAをコドンランダム化することにより合成遺伝子を設計してもよい。コドン選択を実施して、コドン使用頻度を天然遺伝子のコドン使用頻度からできるだけ逸脱するよう特定する。提案された配列を、制限酵素認識部位、トランスポゾン認識部位、反復配列、シグマ54およびシグマ70プロモーター、潜在性リボソーム結合部位、およびrho非依存性ターミネーター等の、あらゆる望ましくない特徴について走査する。合成リボソーム結合部位を、遺伝子の開始コドンを取り囲む150bp(-60から+90まで)が蛍光遺伝子に融合されている蛍光レポータープラスミドを構築すること等により、各々対応する天然リボソーム結合部位の強度と一致するように選択する。このキメラをPtacプロモーターの制御下で発現させ、フローサイトメトリーにより蛍光を測定することができる。合成リボソーム結合部位を生成するために、合成発現カセットの150bp(-60~+90)を使用するレポータープラスミドのライブラリーを生成する。手短に言えば、合成発現カセットは、ランダムDNAスペーサー、RBSライブラリーをコードする縮重配列、および各合成遺伝子のコード配列からなってもよい。複数のクローンをスクリーニングして、天然リボソーム結合部位に最も良好に一致した合成リボソーム結合部位を同定する。このようにして天然オペロンと同じ遺伝子からなる合成オペロンを構築し、機能的な相補性について試験する。合成オペロンのさらなる例示的な記載は、米国特許出願公開第20140329326号に提供されている。
【0124】
細菌種
本明細書に開示されている方法および組成物に有用な微生物は、天然植物の表面または組織から微生物を抽出することにより;種子を粉砕して微生物を単離することにより;多様な土壌試料に種子を植栽し、組織から微生物を回収することにより;または植物に外因性微生物を接種し、微生物が植物組織に出現するか否かを決定することにより得ることができる。植物組織の非限定的な例としては、種子、実生、葉、挿穂、植物、球根、または塊茎が挙げられる。一部の場合では、細菌は、種子から単離される。試料を処理するためのパラメータを変化させて、根圏菌、着生菌、または内部寄生菌等の、異なるタイプの付随微生物を単離することができる。また、細菌は、第1の植物から初期に分離する代わりに、環境菌株コレクション等のレポジトリを供給源としてもよい。微生物は、単離された微生物のゲノムを配列決定することにより;植物内群生の組成物をプロファイリングすることにより;群生もしくは単離された微生物のトランスクリプトーム機能性を特徴付けることにより;または選択培地もしくは表現型培地(例えば、窒素固定またはリン酸可溶化表現型)を使用して微生物の特徴をスクリーニングすることにより、遺伝子型および表現型を決定することができる。選択する候補菌株または集団は、配列データ;表現型データ;植物データ(例えば、ゲノム、表現型、および/または収穫高データ);土壌データ(例えば、pH、N/P/K含有量、および/またはバルク土壌生物群生);またはこれらの任意の組合せにより得ることができる。
【0125】
本明細書に記載の細菌および細菌を産生するための方法は、有害な植物防御反応を誘導せずに、葉表面、根表面、もしくは内部植物組織で効率的に自己増幅することができる細菌、または植物防御応答に耐性である細菌に適用してもよい。本明細書に記載の細菌は、窒素が添加されていない培地で植物組織抽出物または葉表面洗浄液を培養することにより単離してもよい。しかしながら、細菌は、培養可能でない場合があり、すなわち、培養可能かどうか公知でないか、当技術分野で公知の標準的方法の使用では培養が困難である場合がある。本明細書に記載の細菌は、内部寄生菌、または着生菌、または植物根圏に生息する細菌(根圏細菌)であってもよい。遺伝子変異を導入するステップ、複数の植物に曝露するステップ、および向上された形質を有する植物から細菌を単離するステップを、1回または複数回(例えば、1、2、3、4、5、10、15、25回、またはそれよりも多く)繰り返した後で得られる細菌は、内部寄生性、着生性、または根圏性であってもよい。内部寄生菌は、疾患症状を引き起こさずに、または共生構造の形成を誘発せずに、植物の内部に進入する生物であり、植物成長を増強し、植物の栄養を向上させる(例えば、窒素固定により)ことができるため農耕学的に興味深い生物である。細菌は、種子伝染性内部寄生菌であってもよい。種子伝染性内部寄生菌としては、成熟し乾燥した無損傷の(例えば、ひび割れ、目に見える真菌性感染、または早期発芽がない)種子に見出される種子伝染性細菌性内部寄生菌等の、イネ化植物または植物の種子に付随するまたは由来する細菌が挙げられる。また、種子伝染性細菌性内部寄生菌は、種子の表面に付随もしくは由来してもよく、その代わりにまたはそれに加えて、内部種子区画(例えば、表面滅菌種子の)に付随もしくは由来してもよい。一部の場合では、種子伝染性細菌性内部寄生菌は、植物組織内で、例えば種子の内部で複製することが可能である。また、一部の場合では、種子伝染性細菌性内部寄生菌は、乾燥を生き抜くことが可能である。
【0126】
本開示の方法により単離される細菌は、複数の異なる細菌分類群を組合せで含むことができる。例として、細菌としては、プロテオバクテリア(Pseudomonas、Enterobacter、Stenotrophomonas、Burkholderia、Rhizobium、Herbaspirillum、Pantoea、Serratia、Rahnella、Azospirillum、Azorhizobium、Azotobacter、Duganella、Delftia、Bradyrhizobium、Sinorhizobium、およびHalomonas等)、Firmicutes(Bacillus、Paenibacillus、Lactobacillus、Mycoplasma、およびAcetobacterium等)、およびActinobacteria(Streptomyce)、Rhodococcus、Microbacterium、およびCurtobacterium等)が挙げられる。本明細書に開示されている方法により産生することができる細菌としては、Azotobacter sp.、Bradyrhizobium sp.、Klebsiella sp.、およびSinorhizobium sp.が挙げられる。細菌は、以下のものからなる群から選択されてもよい:Azotobacter vinelandii、Bradyrhizobium japonicum、Klebsiella pneumoniae、およびSinorhizobium meliloti)。細菌は、Enterobacter属およびRahnella属であってもよい。
【0127】
細菌は、その土壌、植物、真菌、動物(無脊椎動物を含む)、ならびに湖および川の堆積物、水、および生物相を含む他の生物相を含む任意の一般的陸生環境;海洋環境、その生物相および堆積物(例えば、海水、海泥、海洋植物、海洋無脊椎動物(例えば、海綿動物)、海洋脊椎動物(例えば、魚類));陸生および海洋性地圏(表土および岩石、例えば、粉砕された地中岩石、砂、および粘土);氷雪圏およびその融雪氷水;大気(例えば、濾過空気粉塵、雲、および雨滴);都市環境、工業環境、および他の人為的環境(例えば、コンクリート、道路側溝、屋根表面、および道路表面に蓄積された有機物および無機物)から得ることができる。
【0128】
細菌が得られる植物は、1つまたは複数の望ましい形質を有する植物、例えば、特定の環境でまたはある特定の目的の条件下で自然に成長する植物であってもよい。例として、ある特定の植物は、砂質土壌および高塩分の砂地で、もしくは極端な温度下で、もしくは水がほとんどなくとも自然に成長することができ、または環境に存在するある特定の害虫または疾患に耐性であってもよく、商品作物は、そのような条件下で成長することが望ましい場合があり、そのような条件が、例えば特定の地理的位置において利用可能な唯一の条件である場合は特にそうである。さらなる例としては、細菌は、そのような環境で栽培された商品作物から、またはより具体的には、任意の特定の環境で栽培された作物のうち目的の形質を最も良好に示す作物植物個体:例えば、塩分制限土壌で栽培された作物のうち最も迅速に成長する植物、深刻な虫害もしくは疾患流行に曝露された作物のうち最も被害が少なかった植物、または繊維含量および油分含量等を含む、ある特定の代謝物および他の化合物の所望の量を有する植物、または望ましい色、味、もしくは匂いを示す植物から収集してもよい。細菌は、以前に参照されているような環境中の真菌および他の動物相および植物相、土壌、水、堆積物、ならびに他の要素を含む、目的の環境に生じる目的の植物または任意の物質から収集してもよい。
【0129】
細菌は、植物組織から単離してもよい。この単離は、例えば、根、茎葉、および植物再生組織を含む、植物の任意の適切な組織から行ってもよい。例として、植物から単離するための従来の方法は、典型的には、目的の植物物質(例えば、根長、または茎長、葉)を無菌切除すること、適切な溶液(例えば、2%次亜塩素酸ナトリウム)で表面を滅菌してから、植物物質を、微生物培養用の栄養培地に配置することを含む。あるいは、表面を滅菌した植物物質を滅菌液中(通常は、水)で粉砕し、粉砕した植物物質の小片を含む懸濁液を、選択的であってもよくまたは非選択的であってもよい(例えば、リンの供給源としてフィチン酸のみを含有する)1つまたは複数の好適な固体寒天培地の表面に播種してもよい。この手法は、単離されたコロニーを形成し、個々に摘取して栄養培地のプレートから分離することができ、さらに周知の方法により単一種に精製することができる細菌に特に有用である。あるいは、植物根または葉試料を表面滅菌せず、穏やかな洗浄のみを行って、表面に生息する着生微生物を単離プロセスに含めてもよく、または植物の根、茎、もしくは葉の小片を寒天培地の表面に押しつけてから離し、その後上述のように個々のコロニーを単離することにより、着生微生物を別々に単離してもよい。この手法は、例えば、細菌に特に有用である。あるいは、根に付着している少量の土を洗い流さずに、したがって植物根圏でコロニー化する微生物を含むように、根を処理してもよい。そうでなければ、根に付着している土壌を取り出し、希釈し、好適な選択的および非選択的培地の寒天上に播種して、根圏細菌の個々のコロニーを単離してもよい。
【0130】
Rahnella aquatilisおよびEnterobacter sacchariの生物学的な純粋培養物を、2015年7月14日に、アメリカ培養細胞系統保存機関(ATCC;国際寄託機関)、マナサス、VA、米国に寄託し、それぞれATTC特許寄託指定番号PTA-122293およびPTA-122294を割り当てられた。これら寄託は、特許手続きのための微生物寄託の国際承認および規制に関するブダペスト条約(Budapest Treaty on the International Recognition of the Deposit of Microorganisms for the Purpose of Patent Procedure and the Regulations)(ブダペスト条約)の条項に基づいてなされた。
【0131】
組成物
また、本明細書に記載の方法により産生される細菌または細菌集団を含み、および/または本明細書に記載のような特徴を有する組成物を使用して、植物形質を向上させることができる。細菌集団を含む組成物は、種子の表面にコーティングしてもよく、液体形態であってもよい。組成物としては、商業的に重要な農業作物、例えば、ソルガム、キャノーラ、トマト、イチゴ、大麦、米、トウモロコシ、および小麦の種子コーティング剤が挙げられる。また、組成物は、植物地上部分に噴霧してもよく、または植物種子が植栽される畝間内に挿入することにより、土壌に灌水することにより、または組成物の懸濁液に根を浸漬することにより根に適用してもよい。組成物は、細胞生存、および宿主植物での人為的接種およびコロニー化の能力を維持する好適な様式で脱水してもよい。細菌種は、10~1010CFU/mlの間の濃度で組成物中に存在してもよい。組成物は、モリブデンイオン、鉄イオン、マンガンイオン、またはこれらイオンの組合せ等の微量金属イオンで補充されてもよい。本明細書に記載の組成物中のイオンの濃度は、約0.1mM~約50mMの間であってもよい。また、組成物は、ベータ-グルカン、カルボキシルメチルセルロース(CMC)、細菌性細胞外ポリマー物質(EPS)、糖、畜乳、または他の好適な担体等の担体と共に製剤化されてもよい。あるいは、泥炭または植栽用物質を担体として使用してもよく、または組成物がバイオポリマーに捕捉されているバイオポリマーを担体として使用してもよい。本明細書に記載の細菌集団を含む組成物は、植物成長の促進、葉中の高葉緑素含有量の維持、果実数または種子数の増加、および果実単位重量または種子単位重量の増加等、植物形質を向上させることができる。
【0132】
本明細書に記載の細菌集団を含む組成物は、種子の表面上にコーティングしてもよい。そのため、本明細書に記載のうちの1つまたは複数の細菌でコーティングされた種子を含む組成物も企図される。種子コーティングは、細菌集団を、多孔性の化学的に不活性な粒状担体と混合することにより形成することができる。あるいは、組成物は、種子が植栽される畝間内に直接挿入してもよく、植物葉に噴霧してもよく、または根を組成物の懸濁液に浸漬することにより適用してもよい。有効量の組成物を使用して、植物の根に隣接する土壌下領域に生存可能な細菌増殖を定植させてもよく、または植物の葉に生存可能な細菌増殖を定植させてもよい。一般的に、有効量は、向上された形質(例えば、所望のレベルの窒素固定)を有する植物をもたらすのに十分な量である。
【0133】
本明細書に記載の細菌組成物は、農業的に許容される担体を使用して製剤化することができる。これら実施形態に有用な製剤は、粘着付与剤、微生物安定化剤、殺真菌剤、抗細菌剤、除草剤、殺線虫剤、殺昆虫剤、植物成長調節剤、肥料、殺鼠剤、防湿剤、および栄養素からなる群から選択される少なくとも1つのメンバーを含んでもよい。例えば、本明細書に記載の組成物はいずれも、農業的に許容される担体(例えば、非天然肥料等の肥料、非天然付着剤等の付着剤、および非天然殺虫剤等の殺虫剤のうちの1つまたは複数)を含んでもよい。非天然付着剤は、例えば、ポリマー、コポリマー、または合成ろうであってもよい。例えば、本明細書に記載されているコーティングされた種子、実生、または植物はいずれも、種子コーティングにそのような農業的に許容される担体を含有することができる。本明細書に記載されている組成物または方法のいずれにおいても、農業的に許容される担体は、非天然化合物(例えば、非天然肥料;ポリマー、コポリマー、もしくは合成ろう等の非天然付着剤;または非天然殺虫剤)であってもよく、または含んでもよい。農業的に許容される担体の非限定的な例は、下記に記載されている。農業的に許容される担体の追加の例は、当技術分野で公知である。
【0134】
一部の場合では、細菌は、農業的に許容される担体と混合されてもよい。担体は、固体担体であってもよくまたは液体担体であってもよく、ミクロスフェア、粉末、およびエマルジョン等を含む種々の形態であってもよい。担体は、安定性、湿潤性、または分散性の増加等の様々な特性を付与する幾つかの担体のいずれか1つまたは複数であってもよい。非イオン性界面活性剤であってもよく、またはイオン性界面活性剤であってもよく、またはそれらの組合せであってもよい天然または合成界面活性剤等の湿潤剤が、組成物中に含まれてもよい。また、単離された細菌を含む組成物を製剤化するために、油中水型エマルジョンを使用してもよい(例えば、米国特許第7,485,451号を参照)。調製することができる好適な製剤としては、水和性粉末、顆粒、ゲル、寒天片またはペレット、および増粘剤等、およびマイクロカプセル化粒子等、流動性水溶液、水性懸濁液、油中水型エマルジョン等の液体等が挙げられる。製剤は、穀物またはマメ科植物産物、例えば地上穀物または豆、穀物または豆に由来するブロスまたは粉末、デンプン、糖、または油を含んでもよい。
【0135】
一部の実施形態では、農業担体は、土壌であってもよく、または植物生育培地であってもよい。使用することができる他の農業担体としては、水、肥料、植物系の油、保湿剤、またはそれらの組合せが挙げられる。あるいは、農業担体は、顆粒、ペレット、または懸濁液を含む、ケイソウ土、ローム、シリカ、アルギン酸塩、粘土、ベントナイト、バーミキュライト、種嚢、他の植物および動物産物、または組合せ等の固形物であってもよい。これらに限定されないが、ローム、砂、または粘土等の中のペスタ(pesta)(粉末およびカオリン粘土)、寒天または粉末に基づくペレット等の、前述の成分のいずれかの混合物も担体として企図される。製剤は、大麦、米、または種子等の他の生物学的材料;植物部分;サトウキビバガス;穀物処理に由来する殻または柄;建築現場廃物に由来する地上植物材料または木材;紙、繊維、または木材の再利用に由来するおがくずまたは繊維片等の、細菌の食料源を含んでもよい。
【0136】
例えば、肥料を使用して、成長促進を支援してもよく、種子、実生、または植物への栄養素供給を支援してもよい。肥料の非限定的な例としては、窒素、亜リン酸(phosphorous)、カリウム、カルシウム、硫黄、マグネシウム、ホウ素、塩化物、マンガン、鉄、亜鉛、銅、モリブデン、およびセレン(またはそれらの塩)が挙げられる。肥料の追加の例としては、1つまたは複数のアミノ酸、塩、炭水化物、ビタミン、グルコース、NaCl、酵母抽出物、NHPO、(NHSO、グリセロール、バリン、L-ロイシン、乳酸、プロピオン酸、コハク酸、リンゴ酸、クエン酸、酒石酸水素カリウム、キシロース、リキソース、およびレシチンが挙げられる。一実施形態では、製剤は、他の活性剤が物質(例えば、種子の表面)に結合するのを支援するために、粘着付与剤または粘着剤(接着剤と呼ばれる)を含んでもよい。そのような薬剤は、他の化合物(例えば、生物学的ではない制御因子)を含有してもよい担体を細菌と組み合わせて、コーティング組成物を産出するために有用である。そのような組成物は、植物または種子の周囲にコーティングを作成して、微生物および他の薬剤と植物または植物部分との接触の維持を支援する。一実施形態では、接着剤は、以下のものからなる群から選択される:アルギン酸塩、ゴム、デンプン、レシチン、ホルモノネチン、ポリビニルアルコール、アルカリホルモノネチネート、ヘスペリチン、ポリ酢酸ビニル、ケファリン、アラビアゴム、キサンタンガム、鉱油、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリビニルピロリドン(PVP)、アラビノ-ガラクタン、メチルセルロース、PEG400、キトサン、ポリアクリルアミド、ポリアクリレート、ポリアクリロニトリル、グリセロール、トリエチレングリコール、酢酸ビニル、ジェランガム、ポリスチレン、ポリビニル、カルボキシメチルセルロース、ガッチゴム、およびポリオキシエチレン-ポリオキシブチレンブロックコポリマー。
【0137】
一部の実施形態では、接着剤は、例えば、カルナウバろう、みつろう、中国ろう、セラックろう、鯨ろう、カンデリラろう、キャスターろう、オーリクリーろう、および米ぬかろう等のろう、ポリサッカライド(例えばデンプン、デキストリン、マルトデキストリン、アルギン酸塩、およびキトサン)、脂肪、油、タンパク質(例えば、ゼラチンおよびゼイン)、アラビアガム、ならびにシェラックであってもよい。接着剤は、非天然化合物、例えばポリマー、コポリマー、およびろうであってもよい。例えば、接着剤として使用することができるポリマーの非限定的な例としては、以下のものが挙げられる:ポリ酢酸ビニル、ポリ酢酸ビニルコポリマー、エチレン酢酸ビニル(EVA)コポリマー、ポリビニルアルコール、ポリビニルアルコールコポリマー、セルロース(例えば、エチルセルロース、メチルセルロース、ヒドロキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、およびカルボキシメチルセルロース)、ポリビニルピロリドン、塩化ビニル、塩化ビニリデンコポリマー、リグノスルホン酸カルシウム、アクリルコポリマー、ポリビニルアクリレート、ポリエチレンオキシド、アシルアミドポリマーおよびコポリマー、ポリヒドロキシエチルアクリレート、メチルアクリルアミドモノマー、ならびにポリクロロプレン。
【0138】
一部の例では、付着剤、抗真菌剤、成長調節剤、および殺虫剤(例えば、殺昆虫剤)のうちの1つまたは複数は、非天然化合物(例えば、任意の組合せの)である。農業的に許容される担体の追加の例としては、分散剤(例えば、ポリビニルピロリドン/ビニルアセテートPVPIVA S-630)、界面活性剤、結合剤、および充填剤が挙げられる。
【0139】
また、製剤は、界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤の非限定的な例としては、Prefer28(Cenex)、Surf-N(US)、Inhance(Brandt)、P-28(Wilfarm)、およびPatrol(Helena)等の窒素界面活性剤配合物が挙げられる。エステル化種子油としては、Sun-It II(AmCy)、MSO(UAP)、Scoil(Agsco)、Hasten(Wilfarm)、およびMes-100(Drexel)が挙げられる。有機シリコーン界面活性剤としては、Silwet L77(UAP)、Silikin(Terra)、Dyne-Amic(Helena)、Kinetic(Helena)、Sylgard309(Wilbur-Ellis)、およびCentury(Precision)が挙げられる。一実施形態では、界面活性剤は、0.01%v/v~10%v/vの間の濃度で存在する。別の実施形態では、界面活性剤は、0.1%v/v~1%v/vの間の濃度で存在する。
【0140】
ある特定の場合では、製剤は、微生物安定化剤を含む。そのような薬剤としては、乾燥剤として分類することができる任意の化合物または化合物の混合物を含む乾燥剤を挙げることができ、化合物は、液体接種物に対して実際に乾燥効果を有するような濃度で使用されるか否かを問わない。そのような乾燥剤は、理想的には、使用される細菌集団と適合性を有し、微生物集団が種子へと適用されても生存し、乾燥しても生存する能力を促進すると予想される。好適な乾燥剤の例としては、トレハロース、スクロース、グリセロール、およびメチレングリコールのうちの1つまたは複数が挙げられる。他の好適な乾燥剤としては、これらに限定されないが、非還元糖および糖アルコール(例えば、マンニトールまたはソルビトール)が挙げられる。製剤に導入される乾燥剤の量は、重量/容積で約5%から約50%まで、例えば、約10%~約40%の間、約15%~約35%の間、または約20%~約30%の間の範囲であってもよい。一部の場合では、製剤は、殺真菌剤、抗細菌剤、除草剤、殺線虫剤、殺昆虫剤、植物成長調節剤、殺鼠剤、または栄養剤等の薬剤を含有することが有利である。成長調節剤の非限定的な例としては、ブラシノステロイド、サイトカイニン(例えば、キネチンおよびゼアチン)、オーキシン(例えば、インドリル酢酸およびアスパラギン酸インドリルアセチル)、フラボノイドおよびイソフラボノイド(isoflavanoid)(例えば、ホルモノネチンおよびジオスメチン)、フィトアレキシン(phytoaixin)(例えば、グリセオリン)、およびフィトアレキシン誘導性オリゴ糖(例えば、ペクチン、キチン、キトサン、ポリガラクツロン酸(polygalacuronic acid)、およびオリゴガラクツロン酸)、ならびにジベレリン(gibellerin)が挙げられる。そのような薬剤は、理想的には、製剤が適用される農業種子または実生と適合性を有する(例えば、植物の成長または健康に有害であるべきではない)。さらに、薬剤は、理想的には、ヒト、動物、または工業使用に関して安全性の懸念を引き起こさないものである(例えば、安全性の問題がないか、または化合物は、十分に不安定であり、植物に由来する商品植物製品に含まれる化合物の量は無視できる程度である)。
【0141】
液体形態、例えば、溶液または懸濁液の場合、細菌集団は、水または水溶液に混合または懸濁されてもよい。好適な液体希釈剤または担体としては、水、水溶液、石油蒸留物、または他の液体担体が挙げられる。
【0142】
固形組成物は、泥炭、小麦、ふすま、バーミキュライト、粘土、タルク、ベントナイト、ケイソウ土、フラー土、および低温滅菌土等の適切に分割された固体担体内にまたは固体担体上に細菌集団を分散させることにより調製することができる。そのような製剤が水和性粉末として使用される場合、非イオン性、陰イオン性、両性、または陽イオン性の分散剤および乳化剤等の、生物学的に適合性の分散剤を使用することができる。
【0143】
製剤時に使用される固体担体としては、例えば、カオリン粘土、パイロフィライト、ベントナイト、モンモリロナイト、ケイソウ土、酸性白土、バーミキュライト、およびパーライト等の鉱物担体;ならびに硫酸アンモニウム、リン酸アンモニウム、硝酸アンモニウム、尿素、塩化アンモニウム、および炭酸カルシウム等の無機塩が挙げられる。また、小麦粉、小麦ふすま、および米ぬか等の有機微細粉末を使用してもよい。液体担体としては、大豆油および綿実油等の植物油、グリセロール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。
【0144】
植物種
本明細書に記載の方法および細菌は、Hordeum属、Oryza属、Zea属、およびTriticeae属の植物等の、様々な植物のいずれにも好適である。好適な植物の他の非限定的な例としては、コケ類、地衣類、および藻類が挙げられる。一部の場合では、植物は、食用作物、繊維作物、油用作物、森林またはパルプおよび製紙業界の植物、バイオ燃料生産用の原料、および/または観賞植物等の、経済的、社会的、および/または環境的な価値を有する。作物植物の非限定的な例としては、トウモロコシ、米、小麦、大麦、ソルガム、雑穀、オートムギ、ライ小麦、ソバ、スイートコーン、サトウキビ、玉ねぎ、トマト、イチゴ、およびアスパラガスが挙げられる。
【0145】
また、本明細書に開示されている方法および組成物を使用して得ることができるかまたは向上させることができる植物としては、パイナップル、バナナ、ココナッツ、ユリ、および芝生;ならびに、例えば、エンドウ、アルファルファ、オオブドウホオズキ、メロン、ヒヨコマメ、チコリー、クローバ、ケール、レンズマメ、大豆、タバコ、ジャガイモ、サツマイモ、ダイコン、キャベツ、アブラナ、リンゴの木、ブドウ、綿、ヒマワリ、シロイヌナズナ、キャノーラ、柑橘類(オレンジ、マンダリン、キンカン、レモン、ライム、グレープフルーツ、タンジェリン、タンジェロ、シトロン、およびザボンを含む)、コショウ、豆、およびレタス等の双子葉植物が挙げられる。
【0146】
一部の場合では、向上される植物は、実験条件に容易に適合しない。例えば、作物植物は、十分に成長するのに時間が長くかかり過ぎるため、向上された形質を複数の繰り返しで連続的に評価することが実際上できない場合がある。したがって、細菌が最初に単離される第1の植物および/または遺伝子操作した細菌を適用する複数の植物は、所望の条件下での評価をより行い易い植物等のモデル植物であってもよい。モデル植物の非限定的な例としては、Setaria属、Brachypodium属、およびArabidopsis属が挙げられる。その後、モデル植物を使用して本開示の方法により単離された細菌の能力を、別のタイプの植物(例えば、作物植物)に適用して、向上された形質の付与を確認することができる。
【0147】
本明細書に開示されている方法により向上させることができる形質としては、例えば、成長速度、植物丈、重量、色、味、臭い、植物による1つまたは複数の化合物(例えば、代謝物、タンパク質、薬物、炭水化物、油、および任意の他の化合物を含む)の産生の変化を含む植物の任意の観察可能な特徴が挙げられる。遺伝子型情報に基づいて植物を選択することも起想される(例えば、細菌に応答した植物遺伝子発現のパターンを含むこと、または窒素固定の増加に関連するもの等の遺伝子マーカーの存在を同定すること)。また、植物は、ある特定の特徴または形質(望ましい特徴または形質等)の存在ではなく、ある特定の特徴または形質(望ましくない特徴または形質等)の非存在、抑制、または阻害に基づいて選択してもよい。
【実施例
【0148】
本明細書に提供される実施例には、細菌単離、細菌および植物分析、および植物形質向上の方法が記載される。こうした実施例において、説明は目的であるに過ぎず、いかなる点でも限定として解釈されるべきではない。
【0149】
(実施例1)
植物組織からの微生物の単離
カリフォルニア中部の種々の農業地域から表土を得た。重粘土、泥炭粘土ローム、シルト質粘土、および砂質ロームを含む、多様なテクスチャ特徴を有する20種の土壌を収集した。表1に示されているように、種々の飼料用トウモロコシ、スイートコーン、古代トウモロコシ、およびトマトの種子を、各土壌に植栽した。
【表1】
【0150】
2~4週間の栽培後に植物を引き抜き、根表面の過剰な土壌を脱イオン水で除去した。土壌を除去した後、植物を漂白剤で表面滅菌し、滅菌水で入念にすすいだ。洗浄された、1cm区画の根を植物から切除し、3mmの鋼鉄ビーズを含有するリン酸緩衝生理食塩水に入れた。Qiagen TissueLyser IIで溶液を激しく振とうすることにより、スラリーを生成した。
【0151】
根および生理食塩水スラリーを希釈し、種々のタイプの増殖培地に接種し、根圏微生物、内部寄生微生物、着生微生物、および他の植物関連微生物を単離した。R2AおよびNfb寒天培地を使用して、単一コロニーを得て、半固形Nfb傾斜培地を使用して、窒素固定細菌の集団を得た。半固形Nfb傾斜培地で2~4週間インキュベーションした後、微生物集団を収集し、R2A寒天にストリークして、図1A~Bに示されるように単一コロニーを得た。単一コロニーを、R2Aとグリセロールの混合物に再懸濁し、PCR分析にかけ、後の分析のために-80℃で凍結した。およそ1,000個の単一コロニーが得られ、それらを「単離された微生物」と称した。
【0152】
その後、ジアゾ栄養生物を同定するために、単離菌をコロニーPCRスクリーニングにかけて、nifH遺伝子の存在を検出した。スクリーニングで90%を超えるジアゾ栄養生物が検出されることが示されている、以前に記載のプライマーセットUeda 19F/388Rを使用して、各単離菌におけるnifクラスターの存在を調査した(Uedaら、1995年;J.Bacteriol.、177巻:1414~1417頁)。精製した単離菌の単一コロニーを摘取し、PBSに再懸濁し、図2に示されているように鋳型としてコロニーPCRに使用した。陽性PCRのバンドを示した単離菌のコロニーを再びストリークし、コロニーPCRおよび再ストリークプロセスを2回繰り返して、ジアゾ栄養生物の偽陽性同定を防止した。その後、精製された単離菌を、「候補微生物」と称した。
【0153】
(実施例2)
単離された微生物の特徴付け
配列決定、分析、および系統学的特徴付け
515f-806rプライマーセットによる16S rDNAの配列決定を使用して、単離された候補微生物の予備的な系統学的同一性を生成した(例えば、Vernonら、BMC Microbiol.、2002年12月23日;2巻:39頁を参照)。微生物は、表2に示されているように、以下のものを含む多様な属を含む:Enterobacter、Burkholderia、Klebsiella、Bradyrhizobium、Rahnella、Xanthomonas、Raoultella、Pantoea、Pseudomonas、Brevundimonas、Agrobacterium、およびPaenibacillus。
【表2】
【0154】
続いて、39個の候補微生物のゲノムを、Illumina Miseqプラットフォームを使用して配列決定した。純粋培養に由来するゲノムDNAを、QIAmp DNAミニキット(QIAGEN)を使用して抽出し、配列決定用の全DNAライブラリーを、サードパーティ供給業者(SeqMatic、ヘイワード)により調製した。その後、A5パイプラインによりゲノム構築を実施した(Trittら、2012年;PLoS One、7巻(9号):e42304頁)。遺伝子を同定し、注釈を付け、窒素固定の調節および発現と関連するものを、突然変異誘発の標的として記録した。
【0155】
候補微生物のトランスクリプトームプロファイリング
菌株CI010のトランスクリプトームプロファイリングを実施して、環境窒素の存在下で活性であるプロモーターを同定した。菌株CI010を、10mMグルタミンで補充された限定無窒素培地で培養した。これら培養から全RNAを抽出し(QIAGEN RNeasyキット)、Illumina HiSeq(SeqMatic、フリーモント、CA)によりRNAseq配列決定にかけた。配列決定リードを、Geneiousを使用してCI010ゲノムデータにマッピングし、近位転写プロモーターの制御下で高度に発現された遺伝子を同定した。表3A~3Cには、全RNAのRNASeq配列決定により測定された、遺伝子およびそれらの相対的発現レベルが列挙されている。nif経路、窒素利用関連経路、または所望の発現レベルを示す他の遺伝子の突然変異誘発に使用するための近位プロモーターの配列が記録されている。
【0156】
遺伝子取り扱い易さの評価
候補微生物を、形質転換性および遺伝子取り扱い易さに基づいて特徴付けた。最初に、至適炭素源利用を、少数パネルの関連培地での増殖ならびに無窒素培地および窒素富化培地の両方での増殖曲線により決定した。第2に、各菌株の天然抗生物質耐性を、スポットプレーティング、および突然変異誘発の選択マーカーとして使用される抗生物質のパネルを含有する液体培養での増殖により決定した。第3に、各菌株を、1群のプラスミドのエレクトロポレーションにより、その形質転換性に関して試験した。プラスミド群は、7個の複製開始点、つまりp15a、pSC101、CloDF、colA、RK2、pBBR1、およびpRO1600、ならびに4個の抗生物質耐性マーカー、つまりCmR、KmR、SpecR、およびTetRのコンビナトリアル展開を含む。開始点および耐性マーカー適合性に関するこの系統的評価を使用して、候補微生物でのプラスミドに基づく突然変異誘発用のベクターを同定した。
【0157】
(実施例3)
候補微生物の突然変異誘発
Lambda-Red媒介性ノックアウト
プラスミドpKD46またはカナマイシン耐性マーカーを含有する誘導体を使用して、候補微生物の幾つかの突然変異体を生成した(Datsenkoら、2000年;PNAS、97巻(12号):6640~6645頁)。標的遺伝子を端部に有する250bp相同性を有するノックアウトカセットを設計し、オーバーラップ伸長PCRにより生成した。候補微生物をpKD46で形質転換し、アラビノースの存在下で培養して、Lambda-Red機械的発現を誘導し、エレクトロポレーション用に調製し、ノックアウトカセットで形質転換して、候補突然変異体菌株を産生した。表4に示されているように、4個の候補微生物および1個の実験室菌株Klebsiella oxytoca M5A1を使用して、窒素固定調節遺伝子nifL、glnB、およびamtBの13個の候補突然変異体を生成した。
【表4】
【0158】
Cas9選択によるオリゴ指定突然変異誘発
オリゴ指定突然変異誘発を使用して、E.coliDH10BのrpoB遺伝子をゲノム変化の標的とし、突然変異体をCRISPR-Cas系で選択した。rpoB遺伝子への4bp突然変異によりリファンピシン耐性を付与するように、変異原性オリゴ(ss1283:「GATCAGACCGATGTTCGGACCTTCcaagGTTTCGATCGGACATACGCGACCGTAGTGGGTCGGGTGTACGTCTCGAACTTCAAAGCC」、式中は、ホスホロチオエート結合を示す)を設計した。Cas9をコードするプラスミドを含有する細胞を誘導してCas9を発現させ、エレクトロポレーション用に調製し、その後、変異原性オリゴ、およびWT rpoB配列のCas9切断を標的とするガイドRNA(gRNA)の構成的発現をコードするプラスミドの両方と共にエレクトロポレーションした。エレクトロポレーションした細胞を非選択的培地で一晩回復させ、得られた突然変異染色体の十分な分離を可能にした。プレーティングして、gRNAをコードするプラスミドを選択した後、スクリーニングした10個のコロニーのうちの2つが、所望の突然変異を含有することが示され、残りは、gRNAプラスミド喪失またはCas9プラスミド喪失のプロトスペーサー突然変異により生成されたエスケープ突然変異体であることが示された。
【0159】
Cas9選択によるLambda-Red突然変異誘発
候補微生物CI006およびCI010の突然変異体を、CRISPR-Casによる選択を用いてlambda-red突然変異誘発により生成した。ノックアウトカセットは、転写プロファイリングにより同定された内因性プロモーター(実施例2に記載され、表3に表示されている)および欠失標的を端部に有する約250bp相同性領域を含有した。CI006およびCI010を、アラビノース誘導性プロモーターの制御下にあるLambda-red組換え系(エキソ、ベータ、gam遺伝子)およびIPTG誘導性プロモーターの制御下にあるCas9をコードするプラスミドで形質転換した。得られた形質転換体にてRed組換えおよびCas9系を誘導し、菌株をエレクトロポレーション用に調製した。続いて、ノックアウトカセットおよびプラスミドにコードされた選択gRNAを、コンピテント細胞に形質転換した。Cas9プラスミドおよびgRNAプラスミドの両方に選択的な抗生物質にプレーティングした後、図3に示されるように、スクリーニングされた10個のコロニーのうちの7個が、意図したノックアウト突然変異を示した。
【0160】
(実施例4)
候補分子のin vitro表現型決定
種々の突然変異体のニトロゲナーゼ生合成および活性に対する外来性窒素の影響を評価した。アセチレン還元アッセイ(ARA)(Temmeら、2012年;109巻(18号):7085~7090頁)を使用して、純粋培養条件でのニトロゲナーゼ活性を測定した。菌株を、気密試験チューブ内で増殖させ、アセチレンのエチレンへの還元を、Agilent6890ガスクロマトグラフで定量化した。0~10mMグルタミンで補充された窒素固定培地で増殖させた候補微生物および対応する候補突然変異体のARA活性は、図4A~Bおよび図10A~Cに示されている。
【0161】
嫌気培養条件下で、様々なグルタミンおよびアンモニア濃度を試験して、窒素固定活性に対する影響を定量化した。野生型細胞では、活性は、グルタミン濃度が増加すると共に急速に減少した。しかしながら、一連の初期ノックアウト突然変異では、1種類の突然変異が、そうでなければ野生型では活性を遮断することになるグルタミン濃度下で窒素固定遺伝子の発現を可能にすることが確認された。このプロファイルは、図4Cで見られるように、4つの異なる種のジアゾ栄養生物で生成された。加えて、同定された遺伝子部分を使用して調節ネットワークを書き換えることにより、窒素固定活動レベルが予想通りに調整された。これは、図4Bで見られ、この図には、菌株CM023、CM021、CM015、およびCI006が例示されている。菌株CM023は、進化菌株lowであり、菌株CM021は進化菌株highであり、菌株CM015は、進化菌株midであり、菌株CI006は、野生型(菌株2)である。培養上清に排出されたアンモニアを、酵素に基づくアッセイ(MEGAZYME)を使用して試験した。このアッセイでは、消費されたNADPHの量を、340nmの吸光度で測定した。1E9 CFU/mlの開始密度を有する無窒素嫌気性環境で増殖させた細菌培養物でアッセイを実施した。図4Dで見られるように、6つの進化菌株のパネルのうち1つの菌株が、48時間の期間の経過にわたって、最大100μMのアンモニアを排出した。さらに、図11で見られるように、二重突然変異体は、それが由来した単一突然変異体よりも高いアンモニア排出を示した。これは、その生理学的な必要性よりも過剰なアンモニアを産生する微生物の能力を実証するものである。
【0162】
純粋培養の転写プロファイリング
CI006の転写活性を、Nanostring Elementsプラットフォームを使用して測定した。細胞を無窒素培地で増殖させ、4時間インキュベーションした後、10E8個の細胞を収集した。全RNAを、Qiagen RNeasyキットを使用して抽出した。精製したRNAを、図5に示されているように、プローブハイブリダイゼーションおよびデジタルアナライザ分析のために、Core Diagnostics、パロアルト、CAに提出した。
【0163】
(実施例5)
候補微生物の植物内表現型決定
候補微生物による植物のコロニー化
候補微生物による所望の宿主植物のコロニー化を、短期間植物成長実験により定量化した。プラスミドまたはTn5組込みRFP発現カセットのいずれかに由来するRFPを発現する菌株をトウモロコシ植物に接種した。植物を滅菌砂培地および非滅菌泥炭培地の両方で栽培し、発芽3日後に1mLの細胞培養を、出現しつつある植物子葉鞘に直接ピペットすることにより接種を実施した。適切な抗生物質を含有する溶液で植物を灌水することによりプラスミドを維持した。3週間後に、植物根を収集し、滅菌水で3回すすいで目に見える土壌を除去し、2つの試料に分割した。1つの根試料を蛍光顕微鏡で分析して、候補微生物の局在化パターンを同定した。図6に示されているように、顕微鏡検査は、長さが10mmの最も微細な完全な植物根で実施した。
【0164】
コロニー化を評価するための第2の定量化法を開発した。内部寄生菌を接種した植物の根に由来する全DNA調製物で定量PCRアッセイを実施した。トウモロコシ(Dekalb DKC-66-40)の種子を、2.5インチ×2.5インチ×10インチの鉢の事前にオートクレーブした砂で発芽させた。植栽した1日後に、1mlの内部寄生菌一晩培養物(SOB培地)で、種子が位置していたまさしくそのスポットを浸した。この一晩培養物の1mLは、約10^9cfuとほぼ等しく、使用されている菌株に応じて互いに3倍以内で変動する。各実生を、2.5mMまたは0.25mMのいずれかの硝酸アンモニウムで補充した50mL改変ホーグランド溶液で週3回施肥した。植栽した4週間後、DNAを抽出するために根試料を収集した。加圧水噴霧を使用して土壌残屑を洗い流した。その後、QIAGEN Tissuelyzerを使用して、これら組織試料をホモジナイズしてから、推奨プロトコールに従ってQIAmp DNAミニキット(QIAGEN)を使用して、DNAを抽出した。内部寄生菌のゲノムの各々の遺伝子座に特異的であるように設計した(NCBIのPrimer BLASTを使用して)プライマーを使用し、Stratagene Mx3005P RT-PCRを使用して、これらDNA抽出物のqPCRアッセイを実施した。内部寄生菌のゲノムコピーの存在を定量化した。内部寄生菌の同一性をさらに確認するために、PCR増幅産物を配列決定し、正しい配列を有することを確認する。候補微生物に由来する菌株CI006およびCI008のコロニー化プロファイルの要約は、表5に提示されている。菌株CI008において、10^7×cfu/根g fwと高いコロニー化率が実証された。
【表5】
【0165】
植物内RNAプロファイリング
nif遺伝子の転写を測定することにより、植物内でのnif経路成分の生合成を推定した。CI006接種植物の根植物組織から全RNAを得た(以前に記載されているような植栽方法)。RNA抽出は、推奨プロトコールに従ってRNEasyミニキット(QIAGEN)を使用して実施した。その後、これら植物組織に由来する全RNAを、菌株CI006のゲノムのnif遺伝子に特異的なプローブを使用したNanostring Elementsキット(NanoString Technologies,Inc.)を使用してアッセイした。植物内でのnif遺伝子発現のデータは、表6に要約されている。nifH遺伝子発現は、CM013菌株によって接種された植物では検出されたが、nifH発現は、CI006接種植物では検出されなかった。菌株CM013は、nifL遺伝子がノックアウトされている菌株CI006の誘導体である。
【0166】
CM011の高度に発現された遺伝子を、100万キロ塩基当たりの転写物(TPM)で格付けし、施肥条件下の植物内で測定した。これら高度に発現された遺伝子の幾つかの発現を制御するプロモーターを、標的とする窒素固定および同化遺伝子座への相同組換え用の鋳型として使用した。温室栽培したCM011接種植物に由来するRNA試料を抽出し、Ribo-Zeroキットを使用してrRNAを除去し、IlluminaのTruseqプラットフォームを使用して配列決定し、CM011のゲノムに対してマッピングし戻した。CM011に由来する高度に発現された遺伝子は、表7に列挙されている。
【表6】
【表7-1】
【表7-2】
【0167】
15Nアッセイ
固定を実証するための主要な方法では、14Nに対して一定の割合で大気中に見出される窒素同位体15Nが使用される。富化レベルの15Nを有する肥料または大気のいずれかを補充することにより、15N2ガスで補充された大気から固定された15Nの増加量に比例した固定か(Yoshida、1980年)、または植物組織中で大気N2ガスにより富化肥料が希釈されることによる反比例した固定(Iniguez、2004年)のいずれかが観察され得る。希釈法では、植物成長の経過にわたって累積的な固定窒素を観察することができるが、15Nガス法では、植物を閉鎖大気中で栽培することができる短期間に生じる固定の測定(比率測定)に限定される。したがって、ガス法は、特異性に優れているが(大気中の割合を超える植物におけるあらゆる15Nレベル上昇を、一義的に固定に帰属させることができるため)、累積的な活性を示すことができない。
【0168】
両タイプのアッセイを実施して、野生型および未接種トウモロコシ植物と比べた改良菌株の固定活性を測定し、改良菌株の幾つかで植物内で固定率の上昇が観察された(図12図14A、および図14B)。これらアッセイは、in vitroで観察された菌株の活性が、in vivo結果に変換されることを実証する手段となる。さらに、これらアッセイにより、菌株活性に対する肥料の影響を測定することが可能になり、農業設定での好適な機能性が示唆される。Setaria属植物に野生型および改良菌株を接種した場合も同様の結果が観察された(図13)。図14A~14Cに示されている植物内固定活性は、トランスクリプトームデータによりさらに支持されている。進化した菌株は、野生型相当物と比べてnifH転写レベルの増加を示す。さらに、植物内の微生物由来窒素レベルは、植物ベースによる植物でのコロニー化レベルとも相関している。これらの結果(図12図13図14A~14C、図15A、および図15B)は、微生物が、nif遺伝子クラスターの調節向上により植物組織で見られた大気由来窒素増加の理由である可能性が高いという仮説を支持している。固定を直接測定することに加えて、植物に改良菌株を接種した影響を、窒素ストレス植物バイオマスアッセイで測定した。植物バイオマスは、植物との多くの考え得る微生物相互作用と関連する場合があり、固定窒素の追加は、窒素が制限されると植物表現型に影響を及ぼすことになると予想されるであろう。接種した植物を、窒素の完全な非存在下で栽培した。未接種対照と比べて、接種した植物の葉面積、苗条の生重量および乾燥重量、ならびに根の生重量および乾燥重量の著しい増加が観察された(図14C)。こうした差は、全てを窒素固定だけに帰することはできないが、改良菌株が活発に窒素を植物に供給しているという結論を支持している。トウモロコシおよびSetaria属植物を、上述のように栽培および接種した。1.2%の15Nを含む肥料を、灌水により植物に定期的に供給した。微生物による窒素固定を、植物組織の15Nレベルを測定することにより定量化した。第4の葉組織を、植栽の4週間後に収集および乾燥した。乾燥した葉試料を、ビーズ(QIAGEN Tissuelyzer)を使用してホモジナイズし、IRMS用のスズカプセル(MBL Stable Isotope Laboratory at The Ecosystems Center、ウッズホール、MA)に分取した。大気由来窒素(NDFA)を算出し、CI050およびCM002による窒素産生は、図7に示されている。
【0169】
植物ホルモン産生アッセイ
ドワーフトマト(Solanum lycopersicum栽培品種「Micro-Tom」は、果実成熟に対するインドール-3-酢酸の影響をin vitroアッセイにおいて研究するために以前に使用されている(Cohen、1996年;J Am Soc Hortic Sci、121巻:520~524頁)。候補微生物による植物ホルモン産生および分泌を評価するために、未熟Micro-Tom果実を使用した、プレートに基づくスクリーニングアッセイを開発した。図8に示されているように、ウェルを寒天培地で満たして固化させ、10uLの一晩微生物培養物を寒天表面にスポット播種することにより、12ウェル組織培養試験プレートを調製した。増加量のジベレリン酸(GA)を含有する寒天を有するが、細菌培養物を有していないウェルを陽性対照および標準として使用した。成長中のMicro-Tom植物から離脱させた開花1日後の花を、細菌スポット培養の地点の寒天に、茎を先にして挿入した。これら花を2~3週間モニターした後、果実を回収して計量した。図9に示されているように、幾つかの重複測定にわたって植物果実質量が増加したことは、接種した微生物により植物ホルモンが産生されたことを示している。
【0170】
(実施例6)
循環的宿主-微生物進化
トウモロコシ植物にCM013を接種し、およそV5成長段階へと4週間栽培した。15N分析により微生物源に由来する窒素蓄積の向上を実証したものを引き抜き、加圧水を使用して根を洗浄し、バルク土壌を除去した。根の0.25g区画を切断し、PBS溶液ですすいで、微細土壌粒子および非付着微生物を除去した。組織試料を、QIAGEN TissueLyser IIで3mm鋼ビーズを使用してホモジナイズした。ホモジネートを希釈し、SOB寒天培地にプレーティングした。単一コロニーを液体培地に再懸濁し、16s rDNAおよび接種菌株に固有な突然変異のPCR分析にかけた。微生物単離、突然変異誘発、接種、および再単離のプロセスを反復して繰り返して、微生物形質、植物形質、および微生物のコロニー化能力を向上させることができる。
【0171】
(実施例7)
地理学的特徴にわたる適合性
改良微生物が接種した植物でコロニー化する能力は、圃場条件下での植物の成功に重要である。記載されている単離方法は、トウモロコシ等の作物植物と緊密な関係性を有し得る土壌微生物から選択するように設計されているが、多くの菌株は、様々な植物遺伝子型、環境、土壌タイプ、または接種条件にわたって効果的にコロニー化することができない。コロニー化は、微生物菌株と宿主植物との様々な相互作用を必要とする複雑なプロセスであるため、コロニー化可能能力をスクリーニングすることは、さらなる開発のための優先菌株を選択するための中心的な方法になっている。コロニー化を評価するための初期努力では、菌株の蛍光タグ化が使用され、これは有効ではあるが、時間がかかり、菌株ベース毎に測定可能ではなかった。コロニー化活性は、簡単には向上させ難いため、天然コロニー菌である菌株から有望な産物候補を選択することが是非とも必要である。
【0172】
qPCRと、群生試料で菌株特異的であるように設計されたプライマーとを使用して、任意の所与の宿主植物における野生型菌株のロバストなコロニー化を試験するためのアッセイを設計した。このアッセイは、トウモロコシ組織試料に由来する微生物のコロニー化率を迅速に測定することを目的とする。蛍光顕微鏡法およびプレートに基づく技法を使用してコロニー化の可能性があると評価した菌株を使用した初期試験は、qPCR手法が、定量的かつ測定可能であるだろうということを示した。
【0173】
典型的なアッセイを、以下のように実施する:ほとんどがトウモロコシおよび小麦の品種である植物を、1菌株当たり6つの重複試料を用いて、鉢植え用混合泥炭で温室栽培する。植栽した4日後または5日後に、0.6~1.0のOD590(およそ5E+08 CFU/mL)に希釈した細菌の初期定常期培養の1mL液を、出現しつつある子葉鞘にピペットした。植物を水道水のみで灌水し、4週間栽培してから試料採取した。試料採取時には、植物を引き抜き、根を入念に洗浄して、ほとんどの残留泥炭を除去する。洗浄した根の試料を切除およびホモジナイズして、植物細胞残屑および関連細菌細胞のスラリーを作成する。本発明者らは、植物とqPCRの鋳型として使用するための細菌DNAとの混合物を効果的に産生するハイスループットDNA抽出プロトコールを開発した。細菌細胞スパイクイン実験に基づくこのDNA抽出プロセスは、根の生重量に対して定量化した細菌DNA試料を提供する。各菌株を、Primer BLAST(Ye、2012年)を使用して設計した菌株特異的プライマーを使用して評価し、未接種植物のバックグラウンド増幅と比較した。一部のプライマーは、未接種植物でオフターゲット増幅を示すため、コロニー化は、バックグラウンドレベルと比較した正しい産物の増幅の存在または増幅上昇のいずれかにより決定した。
【0174】
このアッセイを使用して、微生物製品の適合性を様々な土壌地理学的特徴にわたって測定した。圃場土壌特性および圃場条件は、微生物製品の効果に多大な影響を及ぼす場合がある。土壌pH、保水容量、および競合微生物は、接種菌生存およびコロニー化能力に影響を及ぼし得る土壌要因のほんの少数の例である。コロニー化アッセイは、植物生育培地としてカリフォルニアの農業圃場から試料採取した3つの多様な土壌タイプを使用して実施した(図16A)。中程度の接種密度を使用して、現実的な農業条件に近似させた。菌株5は、3週間以内に、全ての植物で1E+06~1E+07 CFU/g FWにてコロニー化した。7週間の植物栽培後、菌株1の進化型は、全ての土壌タイプで高いコロニー化率(1E+06 CFU/g FW)を示した。(図16B)。
【0175】
加えて、複雑な圃場条件でのコロニー化を評価するために、2015年6月にサンルイスオビスポ市にて1エーカー圃場試験を開始して、飼料用トウモロコシの2つの品種における野生型菌株の7つの影響およびコロニー化を評価した。この試験の農耕学的設計および執行は、圃場研究受託会社であるPacific Ag Researchが実施した。接種は、接種法実験で試験したものと同じ泥炭培養種子コーティング技法を用いた。成長季節の期間中に、植物試料を収集して、根および茎内部のコロニー化を評価した。植栽の4週間または8週間後には各処理の3つの重複プロットから、16週目に収穫する直前には各処理の6つの重複プロット全てから、試料を収集した。12週目に、菌株1および菌株2で接種した処理の6つ全ての重複プロットならびに未処理対照から、追加の試料を収集した。qPCRおよび菌株特異的プライマーを用いた他のコロニー化アッセイと同様に、洗浄した根の1グラム生重量当たりの細胞数を評価した。2つの菌株、菌株1および菌株2は、一貫して広範な根コロニー化を示し、12週目でピークに達したが、その後急激に低下した(図16C)。菌株2の存在数は、菌株1よりも1桁少ないように考えられたが、植物によっては数がより一貫していることが見出された。茎内部で効果的にコロニー化する菌株はなかったと考えられる。qPCRコロニー化データを裏付けるものとして、プレーティングおよび16S配列決定を使用して両菌株を根試料から再単離して、配列が一致する単離菌の同定に成功した。
【0176】
本発明を記載する状況(特に、以下の特許請求の範囲の状況)での用語「a」および「an」および「the」および類似の参照対象の使用は、本明細書に別様の指示がない限り、または状況と明らかに矛盾しない限り、単数および複数を両方とも包含すると解釈されるべきである。用語「含む(comprising)」、「有する(having)」、「含む(including)」、および「含有する(containing)」は、別様の指示がない限り、非限定的用語として解釈されるべきである(つまり、「含む(including)が、限定されない」ことを意味する)。本明細書における数値範囲の記載は、本明細書で別様の指示がない限り、各別個の数値がその範囲内に入ることを個々に参照するための簡略的な方法としての役目を果たすことが意図されているに過ぎず、各別個の数値は、それが本明細書にあたかも個々に記載されているが如く、本明細書に組み込まれる。例えば、範囲10~15が開示されている場合、11、12、13、および14も開示されている。本明細書に記載されている方法は全て、本明細書に別様の指示がない限り、または状況と明らかに矛盾しない限り、任意の好適な順序で実施することができる。本明細書で提供されているありとあらゆる例または例示的な文言(例えば、「等」)の使用は、本発明をより良好に説明するためのものに過ぎず、別様に特許請求されない限り、本発明の範囲を限定しない。本明細書中の文言は、任意の特許請求されていない要素を、本発明の実施にとって不可欠なものであることを示すものとして解釈されるべきでない。
【0177】
本発明の好ましい実施形態が、本明細書に表示および記載されているが、そのような実施形態は例示のために提供されているに過ぎないことは、当業者には明白であろう。当業者であれば、本発明から逸脱せずに多数の改変、変更、および置換を起想するであろう。本発明の実施には、本明細書に記載されている本発明の実施形態の種々の代替形態を用いることができることが理解されるべきである。本発明の範囲を規定するのは、以下の特許請求の範囲であり、それら請求項の範囲内にある方法および構造ならびにそれらの等価物が、それにより包含されることが意図されている。
【0178】
【表3A】
【0179】
【表3B】
【0180】
【表3C-1】
【表3C-2】
【表3C-3】
【表3C-4】
【表3C-5】
【表3C-6】
【表3C-7】
【表3C-8】
【表3C-9】
【表3C-10】
【0181】
【表A-1】
【表A-2】
【表A-3】
【表A-4】
【表A-5】
【表A-6】
【表A-7】
【表A-8】
【表A-9】
【表A-10】
【表A-11】
【表A-12】
【表A-13】
【表A-14】
【表A-15】
【表A-16】
【表A-17】
【表B】
特許請求の範囲が添付されるが、本明細書に記載の開示は、以下の項によっても規定される。
1.1つまたは複数の細菌を産生するための方法であって、
(a)第1の植物の組織または土壌から細菌を単離するステップ、
(b)前記細菌のうちの1つまたは複数に遺伝子変異を導入して、1つまたは複数の変異体細菌を産生するステップ、
(c)複数の植物を前記変異体細菌に曝露するステップ、
(d)前記複数の植物の1つの組織または土壌から細菌を単離するステップであって、前記細菌を単離した前記植物が、前記複数の植物中の他の植物と比較して向上された形質を有する、ステップ、および
(e)ステップ(d)で単離された細菌を用いてステップ(b)~(d)を繰り返すステップ
を含む方法。
2.前記向上された形質が、前記細菌を単離した植物における窒素固定増強である、第1項に記載の方法。
3.前記遺伝子変異が、nifA、nifL、ntrB、ntrC、glnA、glnB、glnK、draT、amtB、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQからなる群から選択される遺伝子の変異である、第1項に記載の方法。
4.前記遺伝子変異が、グルタミン合成酵素、グルタミナーゼ、グルタミン合成酵素アデニリルトランスフェラーゼ、転写活性化因子、抗転写活性化因子、ピルビン酸フラボドキシンオキシドレダクターゼ、フラボドキシン、またはNAD+二窒素レダクターゼADP-D-リボシルトランスフェラーゼからなる群から選択される機能性を有するタンパク質をコードする遺伝子の変異である、第1項に記載の方法。
5.前記遺伝子変異が、NifAもしくはグルタミナーゼの発現もしくは活性の増加;NifL、NtrB、グルタミン合成酵素、GlnB、GlnK、DraT、AmtBの発現もしくは活性の減少;GlnEのアデニリル除去活性の減少;またはGlnDのウリジリル除去活性の減少のうちの1つまたは複数をもたらす突然変異である、第1項に記載の方法。
6.前記遺伝子変異が、ノックアウト突然変異である、第1項に記載の方法。
7.前記遺伝子変異が、タンパク質ドメインの活性の排除または消失をもたらす、第1項に記載の方法。
8.前記遺伝子変異が、標的遺伝子の調節配列を変更または消失させる、第1項に記載の方法。
9.前記遺伝子変異が、異種性調節配列の挿入を含む、第1項に記載の方法。
10.前記遺伝子変異が、前記遺伝子変異が導入されている前記細菌に対応する細菌種または属のゲノム内に見出される調節配列の挿入を含む、第1項に記載の方法。
11.前記調節配列が、細菌培養物のまたは植物組織内の遺伝子の発現レベルに基づいて選択される、第10項に記載の方法。
12.前記遺伝子変異が、化学的突然変異誘発により生成される、第1項に記載の方法。13.ステップ(c)が、前記植物を、生物ストレス因子または非生物ストレス因子に曝露することをさらに含む、第1項に記載の方法。
14.ステップ(b)~(d)を1回または複数回繰り返した後で単離された細菌が、前記第1の植物と同じタイプの第2の植物における窒素の1%またはそれよりも多くを産生する、第2項に記載の方法。
15.ステップ(b)~(d)を1回または複数回繰り返した後で単離された細菌が、前記第1の植物から単離された細菌と比較して、少なくとも2倍増の窒素固定を示す、第2項に記載の方法。
16.前記第2の植物が、グルタミン、アンモニア、または窒素の他の化学的供給源で補充された肥料の存在下で栽培される、第14項に記載の方法。
17.前記第1の植物が、農業作物植物である、第1項に記載の方法。
18.前記農業作物植物が、大麦、米、トウモロコシ、小麦、ソルガム、スイートコーン、サトウキビ、タマネギ、トマト、イチゴ、またはアスパラガスから選択される、第17項に記載の方法。
19.前記複数の植物における前記第1または植物が、モデル植物である、第1項に記載の方法。
20.前記モデル植物が、Setaria属、Brachypodium属、またはArabidopsis属から選択される、第19項に記載の方法。
21.前記遺伝子変異が、標的部位に特異的に導入された所定の遺伝子変異である、第1項に記載の方法。
22.前記遺伝子変異が、前記標的部位内のランダム突然変異である、第1項に記載の方法。
23.ステップ(a)が、単離された細菌の遺伝子分析を実施することをさらに含む、第1項に記載の方法。
24.ステップ(b)が、前記遺伝子変異を含む細菌を富化するように選択圧を加えることをさらに含む、第1項に記載の方法。
25.前記選択圧が、標的部位に導入された前記遺伝子変異が欠如したゲノムを切断し、切断が、前記標的部位の100ヌクレオチド内で生じることを含む、第24項に記載の方法。
26.前記選択圧を生き残った細菌を単離することをさらに含む、第24項に記載の方法。
27.切断が、ジンクフィンガーヌクレアーゼ、CRISPRヌクレアーゼ、TALEヌクレアーゼ、またはメガヌクレアーゼからなる群から選択される部位特異的ヌクレアーゼにより指示される、第25項に記載の方法。
28.前記部位特異的ヌクレアーゼが、CRISPRヌクレアーゼである、第27項に記載の方法。
29.前記遺伝子変異が、1つまたは複数のヌクレオチドの挿入または欠失である、第1項に記載の方法。
30.ステップ(b)~(d)を1回または複数回繰り返した後で単離された細菌が、内部寄生性、着生性、または根圏性である、第1項に記載の方法。
31.ステップ(b)~(d)を1回または複数回繰り返した後で単離された細菌が、複数の異なる細菌分類群を含む、第1項に記載の方法。
32.前記細菌が、植物組織から単離される、第1項に記載の方法。
33.ステップ(a)での細菌単離が、前記第1の植物の種子から細菌を単離することを含む、第1項に記載の方法。
34.植物における窒素固定を増加させるための方法であって、前記植物を、窒素固定を調節する1つまたは複数の遺伝子に導入された1つまたは複数の遺伝子変異を含む細菌に曝露することを含み、前記細菌が、前記植物における窒素の1%またはそれよりも多くを産生する、方法。
35.前記細菌が、前記植物における窒素の5%またはそれよりも多くを産生する、第34項に記載の方法。
36.前記細菌が、前記植物における窒素の10%またはそれよりも多くを産生する、第34項に記載の方法。
37.前記細菌が、グルタミン、アンモニア、または補充窒素の他の化学的供給源で補充された肥料の存在下で前記窒素を産生する、第34項に記載の方法。
38.前記遺伝子変異が、nifA、nifL、ntrB、ntrC、グルタミン合成酵素、glnA、glnB、glnK、draT、amtB、グルタミナーゼ、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQからなる群から選択される遺伝子の変異である、第34項に記載の方法。
39.前記遺伝子変異が、NifAもしくはグルタミナーゼの発現もしくは活性の増加;NifL、NtrB、グルタミン合成酵素、GlnB、GlnK、DraT、AmtBの発現もしくは活性の減少;GlnEのアデニリル除去活性の減少;またはGlnDのウリジリル除去活性の減少のうちの1つまたは複数をもたらす突然変異である、第34項に記載の方法。
40.前記遺伝子変異が、(a)ノックアウト突然変異であるか、(B)標的遺伝子の調節配列を変更もしくは消失させるか、または(c)異種性調節配列の挿入を含む、第34項に記載の方法。
41.前記細菌が、Enterobacter属である、第34項に記載の方法。
42.前記細菌が、Rahnella属である、第34項に記載の方法。
43.前記細菌が、内部寄生性、着生性、または根圏性である、第34項に記載の方法。
44.前記細菌が、複数の異なる細菌分類群を含む、第34項に記載の方法。
45.前記植物が、農業作物植物である、第34項に記載の方法。
46.前記植物が、非マメ科植物である、第34から45項のいずれか1項に記載の方法。
47.前記農業作物植物が、ソルガム、キャノーラ、トマト、イチゴ、大麦、米、トウモロコシ、および小麦から選択される、第45項に記載の方法。
48.前記植物が、遺伝子改変生物(GMO)である、第45項に記載の方法。
49.前記植物が、遺伝子改変生物(GMO)ではない、第45項に記載の方法。
50.前記植物が、効率的な窒素使用のために遺伝子操作されているかまたは品種改良されている、第45項に記載の方法。
51.窒素固定を調節する1つまたは複数の遺伝子に導入された1つまたは複数の遺伝子変異を含む細菌を含み、前記細菌が、前記細菌の集団の存在下で栽培された植物における窒素の1%またはそれよりも多くを産生する、細菌集団。
52.前記細菌が、グルタミン、アンモニア、または補充窒素の他の化学的供給源で補充された肥料の存在下で前記窒素を産生する、第51項に記載の細菌集団。
53.前記遺伝子変異が、nifA、nifL、ntrB、ntrC、グルタミン合成酵素、glnA、glnB、glnK、draT、amtB、グルタミナーゼ、glnD、glnE、nifJ、nifH、nifD、nifK、nifY、nifE、nifN、nifU、nifS、nifV、nifW、nifZ、nifM、nifF、nifB、およびnifQからなる群から選択される遺伝子の変異である、第51項に記載の細菌集団。
54.前記遺伝子変異が、nifAまたはグルタミナーゼの発現の増加;nifL、ntrB、グルタミン合成酵素、glnB、glnK、draT、amtBの発現の減少;GlnEのアデニリル除去活性の減少;またはGlnDのウリジリル除去活性の減少のうちの1つまたは複数をもたらす突然変異である、第51項に記載の細菌集団。
55.前記遺伝子変異が、(a)ノックアウト突然変異であるか、(B)標的遺伝子の調節配列を変更もしくは消失させるか、または(c)異種性調節配列の挿入を含む、第51項に記載の細菌集団。
56.前記細菌が、Enterobacter属である、第51項に記載の細菌集団。
57.前記細菌が、Rahnella属である、第51項に記載の細菌集団。
58.前記細菌が、内部寄生性、着生性、または根圏性である、第51項に記載の細菌集団。
59.細菌が、複数の異なる細菌分類群を含む、第51項に記載の細菌集団。
60.第51から59項のいずれか1項に記載の細菌集団を含む組成物。
61.種子の表面にコーティングされた前記細菌集団を含む、第60項に記載の組成物。
62.液剤または粉末として製剤化されている、第60項に記載の組成物。
63.PTA-122293またはPTA-122294のATCC寄託番号を有する細菌。
図1
図2
図3
図4-1】
図4-2】
図5
図6
図7
図8
図9
図10-1】
図10-2】
図11
図12
図13
図14A
図14B
図14C
図15A
図15B
図16A
図16B
図16C
【配列表】
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