(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】音響周波数領域特徴を使用した事象の検出
(51)【国際特許分類】
G01N 29/12 20060101AFI20230511BHJP
G01N 29/036 20060101ALI20230511BHJP
G01N 29/14 20060101ALI20230511BHJP
G01N 29/24 20060101ALI20230511BHJP
G01N 29/46 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
G01N29/12
G01N29/036
G01N29/14
G01N29/24
G01N29/46
(21)【出願番号】P 2020520595
(86)(22)【出願日】2018-10-10
(86)【国際出願番号】 EP2018077568
(87)【国際公開番号】W WO2019072899
(87)【国際公開日】2019-04-18
【審査請求日】2021-10-09
(32)【優先日】2017-10-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】596035972
【氏名又は名称】ビーピー エクスプロレーション オペレーティング カンパニー リミテッド
【氏名又は名称原語表記】BP EXPLORATION OPERATING COMPANY LIMITED
(74)【代理人】
【識別番号】100064012
【氏名又は名称】浜田 治雄
(72)【発明者】
【氏名】ラングネス,トミー
(72)【発明者】
【氏名】ティルヴェンカタナサン,プラディムナ
【審査官】村田 顕一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-008815(JP,A)
【文献】国際公開第2017/135127(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0036627(US,A1)
【文献】特開平07-209263(JP,A)
【文献】特開平11-287788(JP,A)
【文献】特開平10-339721(JP,A)
【文献】特開昭52-123280(JP,A)
【文献】特開2003-149214(JP,A)
【文献】特開平08-285954(JP,A)
【文献】特開2007-218897(JP,A)
【文献】特開2016-028224(JP,A)
【文献】特開2016-099119(JP,A)
【文献】特開平11-271181(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/032367(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 29/00-29/52
G01M 99/00
G01H 1/00-17/00
G01V 1/00-1/52
A61B 8/00-8/15
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
事象を識別するために音響データを処理するためのシステムであって、
プロセッサおよびメモリを含む受信器ユニットを含み、受信器ユニットは
センサ経路に沿って、またはセンサ領域にわたって配置されたセンサから信号を受信するように構成され、処理アプリケーションはメモリに格納され、処理アプリケーションは、プロセッサ上で実行されると、プロセッサを
センサからの信号を受信するよう構成し、信号は
センサ領域のセンサ経路に沿って、またはセンサ領域の一部をわたる1
か所またはそれ以上の
範囲で受信された音響信号の指示を含み、信号は
音響周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、
音響周波数スペクトルにわたる
音響信号の複数の周波数領域特徴を決定し、および
複数の周波数領域特徴のおのおのの周波数領域特徴は音響周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、
複数の周波数領域的特徴を使用して、事象の位置、型、および発生を識別し、
複数の周波数領域特徴を含む出力を生成するように構成すること
を含むシステム。
【請求項2】
音響データを処理
するためのシステムであって、
プロセッサおよびメモリを含む受信器ユニットを含み、受信器ユニットは、
センサ経路に沿って、またはセンサ領域にわたって配置されたセンサから信号を受信するように構成し、センサ経路またはセンサ領域は、センサ領域が抗井を通って延在しないことを条件とし、処理アプリケーションはメモリに格納され、処理アプリケーションは、プロセッサ上で実行されると、プロセッサを
センサ領域のセンサ経路に沿って、またはセンサ領域の一部をわたる1
か所またはそれ以上の
範囲で受信された音響信号の指示を含む信号をセンサから受信し、信号は
音響周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、
音響周波数スペクトルにわたる信号の複数の周波数領域特徴を決定し、
複数の周波数領域特徴を含む出力を生成
し、複数の周波数領域特徴のおのおのの周波数領域特徴が音響周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、
複数の周波数領域的特徴を使用して、事象の位置、型、および発生を識別し、、
複数の周波数領域特徴を含む出力を生成するように構成すること
を含むシステム。
【請求項3】
センサはセンサ経路に沿って配置された光ファイバケーブルと、
光ファイバケーブルに結合された光発生器とを備え、光発生器は、光ビームを発生させ、光ビームを光ファイバケーブルに通すように構成されることをさらに含む請求項1または請求項2に記載のシステム。
【請求項4】
信号の複数の周波数領域特徴は、スペクトル重心を含み、スペクトル重心は音響信号の
音響周波数スペクトルの質量中心を示す請求項1~3のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項5】
信号の複数の周波数領域特徴は、スペクトル拡散を含み、スペクトル拡散はスペクトル重心の周りの音響信号のエネルギ分布を示す請求項1~4のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項6】
信号の複数の周波数領域特徴は、スペクトルロールオフを含み、スペクトルロールオフは周波数スペクトルにわたる信号強度の大きさの所定の割合を含む周波数帯域を示す請求項1~5のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項7】
信号の複数の周波数領域特徴は、スペクトル歪度を含み、スペクトル歪度はスペクトル振幅値の算術平均の周りのスペクトル振幅値の分布の対称性を示す請求項1~6のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項8】
信号の複数の周波数領域特徴は、RMS帯域エネルギを含み、RMS帯域エネルギは周波数スペクトルにわたる所定の周波数帯域内の信号の信号エネルギの測度である請求項1~7のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項9】
所定の周波数帯域の各周波数帯域における信号エネルギは、
音響周波数スペクトルにわたる総RMSエネルギに基づく正規化エネルギである請求項8に記載のシステム。
【請求項10】
信号の複数の周波数領域特徴は、総RMSエネルギを含み、総RMSエネルギは時間領域で計算された信号の波形の二乗平均平方根を含む請求項1~9のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項11】
信号の複数の周波数領域特徴は、スペクトル平坦性を含み、スペクトル平坦性は信号のエネルギスペクトル値の算術平均に対する幾何平均の比率である請求項1~10のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項12】
信号の複数の周波数領域特徴は、スペクトル傾斜を含み、スペクトル傾斜は信号のスペクトルの形状の線形近似を含む請求項1~11のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項13】
信号の複数の周波数領域特徴は、スペクトル尖度を含み、スペクトル尖度は、信号内のスペクトルの平均を中心とするスペクトルの平坦度の指標を含む請求項1~12のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項14】
信号の複数の周波数領域特徴は、スペクトルフラックスを含み、スペクトルフラックスは周波数領域特徴の連続的決定の間の信号内に存在する周波数の少なくとも一部にわたって合計されたスペクトル振幅の変化の測度である請求項1~13のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項15】
信号の複数の周波数領域特徴は、スペクトル自己相関関数を含み、スペクトル自己相関関数は信号とシフトされた信号との間の相関を最大化する信号の遅れを示す請求項1~14のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項16】
信号の複数の周波数領域特徴は、スペクトル重心、スペクトル拡散、スペクトルロールオフ、スペクトル歪度、RMSバンドエネルギ、総RMSエネルギ、スペクトル平坦度、スペクトル傾斜、スペクトル尖度、スペクトルフラックス、またはスペクトル自己相関関数のうちの少なくとも2つを含む請求項1~15のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項17】
信号が第1のデータサイズを含み、出力は第2のデータサイズを含み、第1のデータサイズは第2のデータサイズより大きい請求項1~16のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項18】
音響データを使用して事象を検出するシステムであって、
プロセッサおよびメモリを含むプロセッサユニットを含み、プロセッサユニットは
受信機との信号通信のために適合され、メモリは
解析アプリケーションを含み、プロセッサ上で実行されると、プロセッサを
複数の周波数領域特徴を含む信号を受信器から受信するように構成し、周波数領域特徴は音響信号
から決定され、
複数の周波数領域特徴の
おのおのの周波数領域特徴は
音響周波数スペクトルにわたる音響信号
を示し、
複数の周波数領域特徴と1つまたはそれ以上の事象特徴と整合することを決定し、
複数の周波数領域特徴が少なくとも一つの事象特徴と一致するという決定に基づいて、少なくとも一つの事象特徴の事象の型を識別し、
複数の周波数領域特徴は少なくとも1つの事象特徴と整合するという決定に基づいて、少なくとも1つの事象の発生を決定し、および
決定に基づく少なくとも1つの事象の発生と
型の出力を生成すること
を含むシステム。
【請求項19】
音響データを使用して事象を検出するシステムであって、
プロセッサおよびメモリを含むプロセッサユニットを含み、プロセッサユニットは
受信機との信号通信のために適合され、メモリは
解析アプリケーションを含み、プロセッサ上で実行されると、プロセッサを
複数の周波数領域特徴を含む信号を受信器から受信するように構成し、周波数領域特徴は音響信号が抗井内からの音響信号でないことを条件とする音響信号
から決定され、
複数の周波数領域特徴
のおのおのの周波数領域特徴は周波数スペクトルにわたる音響信号
から決定され、
複数の周波数領域特徴を1つまたはそれ以上の事象特徴と比較し、1つまたはそれ以上の事象特徴は複数の周波数領域特徴のそれぞれに対して閾値または範囲を含み、
複数の周波数領域特徴は1つまたはそれ以上の事象特徴の少なくとも1つの事象特徴に整合することを決定し、
複数の周波数領域特徴が少なくとも一つの事象特徴と一致するという決定に基づいて、少なくとも一つの事象特徴の事象の型を識別し、
複数の周波数領域特徴が少なくとも1つの事象特徴に整合するという決定に基づいて少なくとも1つの事象の発生を決定し、および
その決定に基づいて少なくとも1つの事象の発生
と型の出力を生成することを含むシステム。
【請求項20】
事象特徴が、鉄道車両
用閾値と範囲、交通
用閾値と範囲、セキュリティ
用閾値と範囲、回転または振動機器
用閾値と範囲、建物
用閾値と範囲のうちの少なくとも1つを含む請求項18または請求項19に記載のシステム。
【請求項21】
音響信号が、機械由来、生物由来、流体乱流由来、流体漏洩由来、気象由来、または物体衝突のうちの少なくとも1つによって生成される請求項18~20のいずれか1項に記載のシステム。
【請求項22】
音響データを使用して事象を検出する方法であって、
サンプルデータセットを収集し、
複数の周波数領域特徴のおのおのの周波数領域特徴は音響周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、
サンプルデータセットは
音響センサから発生する音響信号のサンプルであり、サンプルデータセットは
音響周波数スペクトルにわたる音響信号を表し、
サンプルデータセットの複数の周波数領域特徴を決定し、
複数の周波数領域特徴を事象特徴と比較し、事象特徴は複数の周波数領域特徴に対応する複数の閾値、範囲、または両方を含み、
複数の周波数領域特徴が少なくとも一つの事象特徴と一致するという決定に基づいて、少なくとも一つの事象特徴の事象の型を識別し、
複数の周波数領域特徴が事象特徴の閾値、範囲、または両方に整合することを決定し、および
複数の周波数領域特徴が事象特徴の閾値、範囲、または両方に整合するという決定に基づいて、事象の存在を決定すること
を含む方法。
【請求項23】
音響データを使用して事象を検出する方法であって、
サンプルデータセットを収集し、
複数の周波数領域特徴のおのおのの周波数領域特徴は音響周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、
サンプルデータセットは
抗井の内部に位置する音響センサを除く音響センサから生じる音響信号のサンプルであり、サンプルデータセットは
音響周波数スペクトルにわたる音響信号を表し、
サンプルデータセットの複数の周波数領域特徴を決定し、
複数の周波数領域特徴を事象特徴と比較し、事象特徴は複数の周波数領域特徴に対応する複数の閾値、範囲、または両方を含む事象特徴と比較し、
複数の周波数領域特徴が少なくとも一つの事象特徴と一致するという決定に基づいて、少なくとも一つの事象特徴の事象の型を識別し、
複数の周波数領域特徴が事象特徴の閾値、範囲、または両方に整合することを決定し、および
複数の周波数領域特徴が事象特徴の閾値、範囲、または両方に整合するという決定に基づいて、事象の存在を決定すること
を含む方法。
【請求項24】
音響データを処理するためのシステムであって、
プロセッサとメモリと備える受信器ユニットを含み、受信器ユニットは
センサ経路に沿って配置されたセンサから信号を受信するように構成され、処理アプリケーションはメモリに格納され、処理アプリケーションはプロセッサ上で実行されると、プロセッサを
センサからの信号を受信するように構成し、信号はセンサ経路に沿って1
か所またはそれ以上の
範囲で受信された音響信号を含み、
複数の周波数領域特徴のおのおのの周波数領域特徴は音響周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、
周波数スペクトルにわたる信号の複数の周波数領域特徴を決定し、
複数の周波数領域特徴が少なくとも一つの事象特徴と一致するという決定に基づいて、少なくとも一つの事象特徴の事象の型を識別し、
複数の周波数領域特徴を含む出力を生成すること
を含むシステム。
【請求項25】
音響データを処理するためのシステムであって、
プロセッサとメモリとを備える受信器ユニットを含み、受信器ユニットは
センサ経路またはセンサ領域に沿って配置されたセンサから信号を受信するように構成され、センサ経路またはセンサ領域は抗井を通って延在しないことを条件とし、処理アプリケーションはメモリに格納され、処理アプリケーションはプロセッサ上で実行されると、プロセッサを
センサからの信号を受信するように構成し、信号はセンサ経路に沿ってまたはセンサ領域の一部をわたる1
か所またはそれ以上の
範囲で受信された音響信号の表示を含み、
音響周波数スペクトルにわたる信号の複数の周波数領域特徴を決定し、
複数の周波数領域特徴を含む出力を生成し、
複数の周波数領域特徴と事象の特徴とを比較し、
複数の周波数領域特徴が少なくとも一つの事象特徴と一致するという決定に基づいて、少なくとも一つの事象特徴の事象の型を識別し、
複数の周波数領域特徴が事象の特徴と適合するか決定することに基づいて事象の特徴に対応する複数の事象を決定することを含むシステム。
【請求項26】
センサは、鉄道線、道路、パイプライン、フェンス、産業機器の少なくとも1つの内部にまたは沿って配置される請求項24または請求項25に記載のシステム。
【請求項27】
事象を識別するために音響データを処理するためのシステムであって、
プロセッサおよびメモリを含む受信器ユニットを含み、受信器ユニットは
センサ経路に沿って、またはセンサ領域にわたって配置されたセンサから信号を受信するように構成され、センサ経路又はセンサ領域は坑井に延在しないように提供されて、処理アプリケーションはメモリに格納され、処理アプリケーションは、プロセッサ上で実行されると、プロセッサを
センサからの信号を受信するよう構成し、信号は
センサ領域のセンサ経路に沿って、またはセンサ領域の一部をわたる1つまたはそれ以上の長さで受信された音響信号の指示を含み、信号は周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、
音響周波数スペクトルにわたる
音響信号の複数の周波数領域特徴を決定し、および
複数の周波数領域特徴のおのおのの周波数領域特徴は音響周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、
複数の周波数領域的特徴を使用する位置、型、および事象の発生を確認し、
複数の周波数領域特徴を含む出力を生成するように構成すること
を含むシステム。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
炭化水素製造井内では、炭化水素、水、ガス等の種々の流体が、形成部から坑井内に生成され得る。流体の生成は地下層を含む様々なダウンホール領域において、形成部から抗井へ、および抗井内自体での流体の移動をもたらすことができる。例えば一部の地下層は一般に「砂」と呼ばれる固体を放出することがあり、これは流体とともに抗井中に生成され得る。これらの固体は、浸食、井戸内の目詰まり、表面装置の汚染および損傷等を含む多くの問題を引き起こす可能性がある。砂の産出は、圧密強度が低く、圧密が弱い砂石から形成される産出層に現れる傾向がある。このような形成部では砂の制御の失敗が重大な砂の生産につながる可能性があり、その結果砂の生産を許容可能なレベルまで下げるために井戸からの生産を抑える必要が生じる可能性がある。これは石油生産の減少につながり、潜在的には井戸からの生産の75%以上の遅延をもたらす可能性がある。
【0002】
坑井内の粒子を含む種々の流体の動きを検出する努力がなされてきた。例えば砂を検知する努力は井戸の表面に配置され生産パイプにクランプ留めされた音響点センサを用いてなされてきた。生産管を通過する生産された砂粒子は、生産された流体(例えば油、ガスまたは水)と共に、特に生産管の曲がり部およびエルボ部において管の壁に接触する。このような接触はパイプ壁に取り付けられた音響センサによって音信号として捕捉される応力波を作り出す。しかしながらこれらの検出方法は地表装置またはその近傍の砂の存在を捕捉するだけであり質的には最良である(例えば砂のみの存在を示す)。
【0003】
検出/監視システムは抗井環境以外の、例えばパイプライン、設備、建物、車両および境界線の完全性、性能および/またはセキュリティを監視する環境においても一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【0005】
第1の態様では、音響データを処理するためのシステムはプロセッサおよびメモリを含む受信機ユニットを含み、受信機ユニットはセンサ経路に沿って、またはセンサ領域にわたって配置されたセンサから信号を受信するように構成され、処理アプリケーションがメモリに格納される。処理アプリケーションがプロセッサ上で実行されると、プロセッサはセンサからの信号を受信するように設定され、ここで信号はセンサ経路に沿ってまたはセンサ領域の一部にわたって、1つまたは複数の長さで受信された音響信号の表示を含み、ここで信号は周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、周波数スペクトルにわたる信号の複数の周波数領域特徴を決定し、複数の周波数領域特徴を含む出力を生成する。
【0006】
第2の態様では、音響データを処理するためのシステムはプロセッサおよびメモリを含む受信機ユニットを含み、ここで受信機ユニットはセンサ経路またはセンサ領域が抗井を通って延在しないようにし、センサ経路またはセンサ領域に沿って配置されたセンサから信号を受信するように構成される。処理アプリケーションはメモリに格納され、プロセッサ上で実行されると、センサからの信号を受信するようにプロセッサは設定され、信号はセンサ経路に沿ってまたはセンサ領域の一部にわたって、1つまたは複数の長さで受信された音響信号の表示を含み、ここで信号は周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、周波数スペクトルにわたる信号の複数の周波数領域の特徴を決定し、複数の周波数領域の特徴を含む出力を生成する。
【0007】
坑井という用語は、石油、ガス探鉱、生産産業で知られており、地下の炭化水素支持形成部と地表との間に流体流路を提供するために地球を貫通して掘削された穴を指す。
【0008】
第1または第2の態様のシステムはセンサをも含むことができ、センサはセンサ経路に沿って配置された光ファイバケーブルと光ファイバケーブルに結合された光発生器とを含む。光発生器は光ビームを発生させ光ビームを光ファイバケーブルに通すように構成される。
【0009】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、信号の複数の周波数領域特徴はスペクトル重心を含むことができ、スペクトル重心は音響信号の周波数スペクトルの質量中心を示す。
【0010】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、信号の複数の周波数領域特徴はスペクトル拡散を含むことができ、スペクトル拡散はスペクトル重心の周りの音響信号のエネルギ分布を示す。
【0011】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、信号の複数の周波数領域特徴はスペクトルロールオフを含むことができ、スペクトルロールオフは周波数スペクトルにわたる信号強度の大きさの所定の割合を含む周波数帯を示す。
【0012】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、信号の複数の周波数領域特徴はスペクトル歪度を含むことができ、スペクトル歪度はスペクトルマグニチュード値の算術平均を中心としたスペクトルマグニチュード値の分布の対称性を示す。
【0013】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、信号の複数の周波数領域特徴はRMS帯域エネルギを含み、RMS帯域エネルギは周波数スペクトルにわたる所定の周波数帯域内の信号の信号エネルギの測度である。
【0014】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、所定の周波数帯の各周波数帯における信号エネルギは周波数スペクトルにわたる総RMSエネルギに基づく正常化エネルギとすることができる。
【0015】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、信号の複数の周波数領域特徴は総RMSエネルギを含むことができ、総RMSエネルギ、時間領域で計算された信号の波形の二乗平均平方根を含む。
【0016】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、信号の複数の周波数領域特徴はスペクトル平坦性を含むことができ、スペクトル平坦性は信号のエネルギスペクトル値の算術平均に対する幾何平均の比率である。
【0017】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、信号の複数の周波数領域特徴はスペクトル傾斜を含むことができ、スペクトル傾斜は信号のスペクトルの形状の線形近似を含む。
【0018】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、信号の複数の周波数領域特徴はスペクトル尖度を含むことができ、スペクトル尖度は信号内のスペクトルの平均を中心とするスペクトルの平坦度の指標を含む。
【0019】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、信号の複数の周波数領域特徴はスペクトルフラックスを含むことができ、スペクトルフラックスは周波数領域特徴の連続的決定の間の信号内に存在する周波数の少なくとも一部にわたって合計されたスペクトルマグニチュード値の変化の測度である。
【0020】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、信号の複数の周波数領域特徴はスペクトル自己相関関数を含むことができ、スペクトル自己相関関数は信号とシフトされた信号との間の相関関係を最大化する信号の遅れを示す。
【0021】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、信号の複数の周波数領域特徴は、スペクトル重心、スペクトル拡散、スペクトルロールオフ、スペクトル歪度、RMS帯域エネルギ、総RMSエネルギ、スペクトル平坦度、スペクトル傾斜、スペクトル尖度、スペクトルフラックス、またはスペクトル自己相関関数のうちの少なくとも2つを含むことができる。
【0022】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、信号は第1のデータサイズを含み、出力は第2のデータサイズを含み、第1のデータサイズは第2のデータサイズよりも大きくすることができる。
【0023】
第3の態様では、音響データを使用して事象を検出するシステムは、プロセッサとメモリとを含むプロセッサユニットを含み、プロセッサユニットは受信機との信号通信のために適合される。メモリはプロセッサ上で実行されると、受信機から複数の周波数領域特徴を含む信号を受信するようにプロセッサを構成する解析アプリケーションを含み、その周波数領域特徴は音響信号の表示であり、およびその周波数領域特徴は周波数スペクトルにわたる音響信号の表示であり、複数の周波数領域特徴を1つまたはそれ以上の事象特徴と比較し、一つまたはそれ以上の事象特徴はそれぞれの複数の周波数領域特徴の閾値または範囲を含み、複数の周波数領域特徴を1つまたはそれ以上の事象特徴の少なくとも1つの事象特徴と整合することを決定し、複数の周波数領域特徴は少なくとも1つの事象特徴と整合するという決定に基づいた少なくとも1つの事象の発生を決定し、そして、決定に基づいた少なくとも1つの事象の出力を生成する。
【0024】
第4の態様では、音響データを使用して事象を検出するシステムはプロセッサとメモリとを含むプロセッサユニットを含み、プロセッサユニットは受信機との信号通信のために適合される。メモリはプロセッサ上で実行されると、受信機から複数の周波数領域特徴を含む信号を受信するようにプロセッサを構成する解析アプリケーションを含み、信号は複数の周波数領域特徴を含み、その周波数領域は音響信号は抗井内からの音響信号ではない音響信号を提供することを示し、および、周波数領域特徴は周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、複数の周波数領域特徴と1つまたはそれ以上の事象特徴と比較し、1つまたはそれ以上の事象特徴は複数の周波数領域特徴の各々の閾値または範囲を含み、複数の周波数領域特徴を1つまたはそれ以上の事象特徴の少なくとも1つの事象特徴と整合することを決定し、複数の周波数領域特徴が少なくとも1つの事象特徴と整合するという決定に基づいた少なくとも一つの事象の発生を決定し、そして、決定に基づいた少なくとも一つの事象の発生の出力を生成する。
【0025】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、事象特徴は鉄道車両特徴、交通特徴、セキュリティ特徴、回転または振動機器特徴、建物特徴のうちの少なくとも1つを含むことができる。
【0026】
先行する態様のいずれか1つのシステムにおいて、音響信号は機械的由来、生物学的由来、流体乱流由来、流体漏洩由来、気象由来、または物体衝突のうちの少なくとも1つによって生じ得る。
【0027】
第5の態様では、音響データを使用して事象を検出する方法は、サンプルデータセットを収集し、サンプルデータセットは音響センサから発生する音響信号のサンプルであり、サンプルデータセットが周波数スペクトルにわたる音響信号を表す場合、サンプルデータセットの複数の周波数領域特徴を決定することと、複数の周波数領域特徴を事象特徴と比較することであり、事象特徴が複数の周波数領域特徴に対応する複数の閾値、範囲、または両方を含む事象特徴であり、複数の周波数領域特徴が事象特徴の閾値、範囲、または両方に整合することを決定することと、複数の周波数領域特徴が事象特徴の閾値、範囲、または両方に整合することを決定することに基づいた事象の存在を決定することとを含む。
【0028】
第6の態様では、音響データを使用して事象を検出する方法は、サンプルデータセットを収集することであり、サンプルデータセットは、抗井の内部に位置する音響センサを除く音響センサから発生する音響信号のサンプルであり、サンプルデータセットが、周波数スペクトルにわたる音響信号を表す場合、サンプルデータセットの複数の周波数領域特徴を決定することと、複数の周波数領域特徴を事象特徴と比較することであり、事象特徴は複数の周波数領域特徴に対応する複数の閾値、範囲、または両方を含み、複数の周波数領域特徴が事象特徴の閾値、範囲、または両方に整合することを決定することと、複数の周波数領域特徴が事象特徴の閾値、範囲、または両方に整合する決定に基づいた事象の存在を決定することを含む。
【0029】
少なくとも第5、第6の態様では、事象は坑井内での事象ではない。言い換えるとシステムおよび方法は坑井事象を除外した(すなわち他の)事象を検出する。
【0030】
第7の態様では、音響データを処理するシステムはプロセッサおよびメモリを含む受信機ユニットを含み、受信機ユニットはセンサ経路に沿って配置されたセンサから信号を受信するように構成される。処理アプリケーションはメモリに格納され、処理アプリケーションがプロセッサ上で実行されると、センサからの信号を受信するようにプロセッサは設定され、信号はセンサ経路に沿って1つまたはそれ以上の複数の長さで受信された音響信号を含み、周波数スペクトルにわたる信号の複数の周波数領域特徴を決定し、複数の周波数領域特徴を含む出力を生じ、複数の周波数領域特徴を事象特徴と比較し、複数の周波数領域特徴が事象特徴と整合することを決定することに基づいた事象特徴に対応する事象の存在を決定する。
【0031】
第8の態様では、音響データを処理するためのシステムはプロセッサおよびメモリを含む受信器ユニットを含み、ここで受信器ユニットはセンサ経路またはセンサ領域は抗井を通って延在しないようにし、センサ経路またはセンサ領域に沿って配置されたセンサから信号を受信するように構成される。処理アプリケーションはメモリに格納され、処理アプリケーションがプロセッサ上で実行されると、センサからの信号を受信するようにプロセッサは設定され、ここで信号はセンサ経路に沿ってまたはセンサ領域の一部をわたって1つまたはそれ以上の長さで受信された音響信号を含み、周波数スペクトルにわたる信号の複数の周波数領域特徴を決定し、複数の周波数領域特徴を含む出力を生じ、複数の周波数領域特徴を事象特徴と比較し、複数の周波数領域特徴が事象特徴と整合することを決定することに基づいた事象特徴に対応する事象の存在を決定する。
【0032】
上記の態様のいずれか1つにおいて、センサは鉄道線、道路、パイプライン、フェンス、産業機器のうちの少なくとも1つの内部にまたは沿って配置することができる。
【0033】
第9の態様では、音響データを処理する方法はプロセッサおよびメモリを含む受信器ユニットを含み、ここで受信器ユニットはセンサ経路またはセンサ領域は抗井を通って延在しないようにし、センサ経路またはセンサ領域に沿って配置されたセンサから信号を受信するように構成される。処理アプリケーションはメモリに格納され、処理アプリケーションがプロセッサ上で実行されると、プロセッサはセンサからの信号を受信するように設定され、ここで信号はセンサ経路に沿ってまたはセンサ領域の一部をわたる1つまたはそれ以上の長さで受信された音響信号の指示を含み、ここで信号は周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、周波数スペクトルにわたる信号の複数の周波数領域特徴を決定し複数の周波数領域特徴を含む出力を生じる。
【0034】
第9の態様では、音響データは抗井音響データではないことが理解されるべきである。言い換えれば音響データは坑井内から発生するものではない。
【0035】
これらのおよび他の特徴は添付の図面および特許請求の範囲と併せて以下の詳細な説明からより明確に理解されるであろう。
【0036】
本明細書に記載される実施形態は、特定の先行装置、システム、および方法に関連する種々の欠点に対処することを意図した特徴および利点の組み合わせを含む。以上は後述する発明の詳細な説明をより良く理解できるようにするために、発明の特徴と技術的利点をかなり広範囲に概説した。上述の種々の特性ならびに他の特徴は以下の詳細な説明を読みかつ添付図面を参照することによって当業者には容易に明らかであろう。本発明の同じ目的を実行するために他の構造を修正または設計するための基礎として、概念および開示される特定の実施形態を容易に利用することができることは当業者には理解されるべきである。当業者であれば添付の特許請求の範囲で説明したような本発明の精神および範囲からこのような等価な構成が逸脱しないことも認識すべきである。
【0037】
本発明の好ましい実施態様の詳細な説明のために、次に以下の添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0038】
【
図1】一実施形態による、ダウンホール抗井環境の概略断面図である。
【
図2】一実施形態による、砂の浸入を伴う坑井管状の実施形態の概略図である。
【
図3A】それに関連する光ファイバを有する坑井管状の井戸の実施形態の概略断面図である。
【
図3B】それに関連する光ファイバを有する坑井管状の井戸の実施形態の概略断面図である。
【
図4】3つの周波数帯域にわたる、周波数フィルタリングされた音響強度対時間の例示的グラフなである。
【
図5】5つの周波数帯域にわたる、周波数フィルタリングされた音響強度対時間の別の例示的なグラフである。
【
図6】音響信号の概略的な処理手順の一実施形態を示す図である。
【
図7】複数のダウンホール事象に対する音響パワー対周波数の例示的なグラフである。
【
図8】一実施形態による砂ログの一般的説明図である。
【
図9】一実施形態による坑井中の砂の浸入を検出する方法の流れ図である。
【
図10】一実施形態による種々のステップを実行するために使用することができるコンピュータを概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0039】
特に明記されていない限り、用語「連結」、「係合」、「結合」、「取り付け」、または要素間の相互作用を記述する他の用語のいずれの使用も、要素間の直接的相互作用を制限することを意味するものではなく、記載された要素間の間接的相互作用も含み得る。以下の議論および請求項において、「含む」および「備える」という用語は開放端方式で使用され、したがって、「を含むがこれらに限定されない」ことを意味するものと解釈されるべきである。上または下への言及は抗井の上面に向かって「上」、「上向き」、「上流」、「上方」または「真上」の意味を有し、井戸の末端に向かって「下」、「下向き」、「下流」または「真下」の意味を有する説明の目的で使用される。内側または外側への言及は抗井および/または抗井管状の中心縦軸に向かって「内向き」および「外向き」および抗井壁に向かって「外」、「外向き」の意味を含む説明の目的で使用される。本明細書で使用される用語「縦の」または「長手軸方向の」は抗井管状の中心軸に実質的に整列した軸を指し、「放射状の」または「放射状に」は、縦軸に垂直上述の種々の特性、ならびに以下により詳細に説明される他の特徴および特性は実施形態の以下の詳細な説明を読んだ上で、また添付図面を参照することによって本開示を援用して、当業者には容易に明らかであろう。
【0040】
本発明者らは例えば以下に組み込まれる特許文献1に記載されているように抗井中の事象を検出するための信号処理構造を開発した。本発明者らはそれらの先行出願に記載された同じ信号処理を使用して産業間の様々な他の事象を識別することができると判断した。したがって本発明は坑井内の事象以外の事象を検出するために適用できる信号処理解決法を提供する。
【0041】
本発明のシステムは以前の出願に記載されたものと同様のリアルタイム信号処理構造を含むことができ、それゆえリアルタイムまたはほぼリアルタイムで音響特徴または指紋によって特徴付けられる非抗井事象の識別を可能にする。これらのシステム内では種々のセンサ(例えば分散型光ファイバ音響センサ、点音響センサなど)を使用して経路に沿った種々の点における音響サンプルを得ることができる。次に背景雑音から関心のある音響信号を選択的に抽出することを可能にするスペクトル特徴抽出技術を備えた信号処理構造を用いて音響サンプルを処理することができる。また本明細書に記載される信号処理技術は(大まかなデシメーション技術ではなく)データの知的抽出を通してビッグデータ問題に対処し、収集および処理現場におけるリアルタイムデータ量をかなり削減する(例えば100回以上、500回以上、または1000回以上、または10,000回以上削減する)ことを助けることができる。
【0042】
スペクトル特徴は一旦得られると他の周囲音響背景雑音から関心のある事象から生じる雑音を分離することができるようにするために、音響指紋のライブラリまたは関心のある事象のスペクトル特徴と比較することができる。特定のスペクトル特徴は既知の事象に対して1つ以上の周波数領域特徴を考慮することによって、各事象に対して決定することができる。これらの既知の事象から各事象に特有のスペクトル特徴を展開し、各事象を規定するための範囲または閾値を確立することができる。各スペクトル特性の特異性に基づいて、結果として生じるスペクトル特徴はそのような事象の比較的速い識別を可能にするように事象間で十分に区別することを可能にする。次に得られたスペクトル特徴を処理された音響信号データと共に使用して事象が音響センサの経路に沿った関心点で発生しているか否かを判断することができる。本明細書に開示される処理技術のいずれかを使用して最初にスペクトル特徴を決定し、次いでサンプリングされた音響信号におけるスペクトル特徴を処理し、結果として生じるスペクトル特徴と比較することができる。
【0043】
本明細書に記載される音響センサは、領域またはライン全体に分散させることができる。例えば一連の点源センサ(例えばマイクロフォン)はラインで接続されてもよく、または監視される領域を通して分散されてもよい。光ファイバを分散音響センサ(DAS)システムとして使用する場合、ファイバはラインまたは経路に沿って通過できる。例えばファイバはパイプラインレール、フェンスなどを通過するか、または沿って通過することができる。いくつかの態様ではファイバは直線状に通過することに限定されず、エリア全体にわたる非直線状に通過することができる。例えば機器が監視されているときに1本のファイバを1つの機器から次の機器に渡すことができる。従って本明細書に記載されるように、音響センサシステムを使用して、すべての態様において直線的な経路ではない場合がある、ある領域全体またはセンサ経路に沿って音響サンプルを得ることができる。
【0044】
音響センサまたは複数のセンサが領域全体に分散されている場合、所定の音響サンプルを複数のセンサから得ることができる。例えば分散型音響センサがある領域にわたる分散された複数の点型音響センサを含む場合、音響サンプルは1つの特定の点源センサから、または複数のセンサにわたって得ることができる。例えば音響サンプルを様々なセンサにわたって組み合わせることができ、これはいくつかの態様において個々のセンサ間の音の飛行時間を説明することを含むことができる。複数のセンサの使用はスペクトル特徴抽出プロセスにおいて面積効果を考慮に入れることを可能にする音響サンプルを提供することができる。例えばある事象の複数の音響サンプルが領域または経路全体にわたって測定される場合、時間的および空間的効果を考慮に入れることができる。
【0045】
したがってこれらに限らないが、輸送産業(例えば鉄道車両または道路車両のような車両の位置、移動、完全性および/または密度の監視)、セキュリティ(例えば境界警備、パイプライン監視)、監視設備(例えば電動水中ポンプ、風力タービン、コンプレッサのような監視装置)、建物監視(例えば構造監視)等の産業における音響信号は、本明細書に開示されるシステムの使用から利益を得ることができる。例えば鉄道線はレールの長さに沿った音響信号を検出するように監視することができ、例えばレールに接続された光ファイバを(ファイバをレール自体に取り付けることなどによって直接的にまたはレールの下方にファイバを配置することなどによって間接的に)DASユニットと共に使用することができる。レールに沿ったファイバの長さは受信機/発電機(例えばDASユニット)からレールに沿って通過する際のファイバの経路と考えることができる。レールの動き、保守車両の動き、車両の故障検知、交通の動き、歩行者の交通等の様々な音響特徴は、レールおよび/またはファイバの長さに沿って発生する音響信号に基づいて検知することができる。これらの信号は1つまたはそれ以上のスペクトル特徴を抽出するために処理することができ、そのような事象のスペクトル特徴を決定または開発することができる。一旦得られるとスペクトル特徴を用いてファイバの経路に沿って様々な長さの音響信号を処理し、スペクトル特色およびスペクトル特徴を用いて様々な事象の存在を決定することができる。
【0046】
同様にセキュリティシステムは経路または領域にわたる音響信号を検出するために、分散型音響センサ(例えば光ファイバ、個々の音響センサなど)を使用することができる。音声、足音、ガラス破損などの様々なセキュリティ関連事象は音響センサからの音響信号を使用し、それらを処理してスペクトル特徴を抽出し、それらのスペクトル特徴を様々なセキュリティ関連事象に対するスペクトル信号と比較することによって検出することができる。
【0047】
同様に音響監視技術は個々にまたは経路に沿って接続することができる点源と共に使用することができる。例えば産業機器を有する施設は本明細書に記載される音響監視技術を使用して監視することができる。例えばポンプ、タービン、コンプレッサ、または他の装置のような任意の回転装置を有する施設は装置片を監視する音響センサを有することができる。種々の事象のスペクトル特性は装置の種類ごとに決定することができ、装置の状態を監視し、識別するために使用される。例えばポンプはポンプが活性であるか不活性であるか、流体がポンプを通って流れているか、ベアリングが不良であるかなどを、本明細書に記載されるような音響サンプルの使用およびスペクトル特性の整合をすべて通して判定するために監視することができる。複数個の装置が存在する場合、ファイバのような単一の音響センサを装置の各部品に結合することができる。この構成は装置の各部品についてファイバに沿った長さを解決することによって、単一の調査ユニットがスペクトル分析を用いて複数の装置の部品を監視することを可能にし得る。したがって分散型音響監視システムは個々の機器片に相関する複数のプロセッサを必要としない場合がある。
【0048】
同様に本明細書に開示されるように、抗井を監視する方法と同様の方法でパイプラインを監視することができる。この実施形態では、ファイバは、漏洩、閉塞または腐食の上の流水などの様々な事象を検出することができる。これにより、パイプラインの長さに沿った遠隔監視が可能になる。
【0049】
また他の種類の産業はスペクトル特徴抽出を用いて事象を分析および整合させることができる音響サンプルを得るために音響センサを使用することから利益を得ることができる。音響信号を生成する事象を経験する任意の産業は本明細書に記載されるシステムを使用して監視することができる。本明細書に記載されるスペクトル特徴解析プロセスおよびシステムは、異なるメカニズムに従って生成される多数の音を特徴付けるために使用され得る。本明細書に記載される分析プロセスおよびシステムは、機械的音(例えば振動または回転などの機器の動き)、生物学的音(例えば足音、声、音韻など)、流体の乱流(例えば液体の流れ、気体の流れ、混合相の流れなど)、流体の漏洩(例えば液体の漏洩、気体の漏洩など)、天候からの雑音(例えば風、雨、ひょう、みぞれ、雷など)、物体の衝突からの雑音(表面上の粒子など)を検出および識別するために使用され得る。いくつかの態様ではこれらの雑音は同時に存在することができ、信号処理を使用して環境内の個々の音を分離し識別することができる。また識別可能な音の一部は抗井に由来しない場合がある。
【0050】
さらに信号が空間にわたって分配される場合、光ファイバのような単一の音響センサを受信器ユニットと共に使用してセンサ素子の長さまたは経路にわたる音響信号を検出することができ、これにより単一のセンサが広い領域または経路にわたる音響信号を検出することができる。これらの実施形態では信号は坑井から得られないことがある。例えば音響信号は非抗井からまたは地下の形成部の外部から得られてもよい。したがって本明細書に記載されるシステムおよび処理技術は様々な産業および場所にわたる音響信号から得られるスペクトル特徴を使用して事象を識別するために使用可能である。
【0051】
プロセスとシステムをよりよく理解するために以前の出願、特許文献1を参考のために以下に組み込む。したがって本発明のシステムおよび方法はシステムおよび方法の動作および特徴を例示するために抗井環境に関連して以下に説明されるが、教示は上述のような他の環境、または読者には真に明らかであろう他の環境にも等しく適用可能である。
【0052】
本出願に開示されるように新しいリアルタイム信号処理構造は、ガス漏洩検出、ダウンホール漏洩検出、井戸壁完全性監視、流体漏洩、およびリアルタイムまたはほぼリアルタイムでの井戸内砂侵入ゾーンの識別を含む様々なダウンホール事象の識別を可能にする。いくつかの実施形態ではシステムは井戸内砂侵入の相対濃度などの種々の流体流の定量的測定を可能にする。本明細書で使用されるように、「リアルタイム」という用語はシステム内の種々の通信遅延および待ち時間遅延を考慮に入れた時間を指し、約10秒以内、約30秒以内、約1分以内、約5分以内または動作発生の約10分以内に取られる行動を含むことができる。種々のセンサ(例えば分散型光ファイバ音響センサなど)を使用して抗井に沿った種々の点における音響サンプルを得ることができる。次いで音響サンプルは様々な特徴抽出技術(例えばスペクトル特徴抽出技術)を備えた信号処理構造を使用して処理され、背景雑音から関心のある音響信号を選択的に抽出することを可能にし、その結果リアルタイムで流体および/または固体(例えば砂の侵入位置、ガスの漏洩位置、絞り込まれた流体流の位置など)の移動の識別の精度の向上を助ける複数の周波数領域特徴の測度を得ることができる。本明細書で使用されるように種々の周波数領域特徴は音響信号から得ることができ、いくつかの文脈では周波数領域特徴はスペクトル特徴またはスペクトル記述子とも呼ばれ得る。また本明細書に記載される信号処理技術は(大まかなデシメーション技術ではなく)データの知的抽出を通してビッグデータ問題に対処し、収集および処理現場におけるリアルタイムデータ量をかなり削減する(例えば100回以上、500回以上、または1000回以上、または10,000回以上削減する)ことを助けることができる。
【0053】
音響信号は信号が抗井全体または関心のある部分に沿って得られることを可能にする方法で得ることができる。表面クランプオン音響検出器はダウンホールサンディングのような特定の事象が発生していることを示すことができるが、サンディングのような事象に寄与する生産ゾーンの深度に関する情報を提供するものではない。さらに他の音響、背景雑音から事象を識別するためにクランプオン検出器データを処理するために採用された方法論は、定性的かつしばしば矛盾する結果しか得られなかった。多くの他の技術的限界は現在、リアルタイム井戸内音響検出のための技術の直接的適用を妨げている。光ファイバ分散型音響センサ(DAS)は、ガス漏洩、制限を超える流体流、砂の侵入などのダウンホール事象ならびに他の背景音響から生じる音響信号を捕捉する。これにより結果の誤検知を回避するために砂の侵入信号を他のノイズ源から区別する堅牢な信号処理手順が必要となる。これは今度は他の周囲音響背景雑音から関心のある事象から生じる雑音を分離することができるようにするために、関心のある井戸内事象(例えば砂の侵入など)の音響指紋をより明確に理解する必要性をもたらす。本明細書で使用されるように特定の事象の結果として生じる音響指紋も、本明細書でより詳細に説明されるようにスペクトル特徴と呼ぶことができる。
【0054】
さらに砂の侵入のような1つまたはそれ以上の事象に起因する遅延を減らし効果的な修復を容易にすることは、事象の操作員に知らせるためのほぼリアルタイムの決定支援に依存する。現在のところほぼリアルタイムで単独で事象位置の識別と抽出に成功するDASのための技術/信号処理は存在しない。
【0055】
データ処理および負荷に関してDAS収集ユニットは、データ操作、データ転送、データ処理および格納において複雑性を生じる大きなデータ量(典型的には約1TB/時)を生成する。即時の意思決定支援のためにデータ量をリアルタイムで削減するための有用な情報を知的に抽出する方法は現在存在しない。これにより陸上へのリアルタイムデータ転送と既存のITプラットフォームへのデータ統合は複雑になり、これはデータ帯域幅の制限と解釈と分析のために陸上に戻されてハードドライブにデータを格納する必要があるためである。さらにこれによりどのような修復努力でも結果として生産が延期されるまでの解釈の所要時間(通常は数週間から数か月)が長くなる。
【0056】
坑井内の様々な事象を特定する能力により、事象に対応して様々な措置(浄化手順)を講じることができる可能性がある。例えば井戸は特定された事象に基づいて適宜閉鎖され、生産を増加または減少させ、および/または改善手段を抗井において講じることができる。必要であれば有効な応答は井戸内事象の識別のバイナリのはい/いいえ出力からだけでなく、識別されたゾーンの各々からの流体および/または固体の相対量の測定(例えば砂の濃度、ガス漏洩量、制限を超過する流体流量など)からも利益を得られ、流体および/または個体の最大量に寄与するゾーンに最初に作用して生産を改善または最適化できる。例えばある制限を超えて漏洩が検出されると、その漏洩の相対的な流量によってその漏洩を塞ぐための作業のタイミングを特定できる可能性がある(例えば小さな漏洩は修理する必要がないかもしれず、より大きな漏洩は優先権を高くして修理する必要があるかもしれないなど)。
【0057】
本明細書に記載されるように、スペクトル記述子は様々なダウンホール監視アプリケーションを提供するためにリアルタイムでDAS音響データ処理と共に使用することができる。より具体的には、データ処理技術は、流体漏洩/流出検出、流体相偏析、井戸完全性監視、井戸漏洩検出(例えばダウンホールケーシングおよびチュービング漏洩検出、漏洩流体相同定など)、環状流体流診断、土被り監視、ケーシング背後の流体流検出、土被り内の流体誘起液圧破壊検出等のようなダウンホール流体プロファイリングのために様々に適用することができる。ダウンホール監視のためのDASによる信号処理技術の適用はダウンホール流体監視(井戸の完全性および生産漏洩監視)を通しての埋蔵量の効率的な排水の監視による貯水池回収の改善、ドローダウンレベル(例えばガス、砂、水など)の識別を通して井戸操業の外被の改善、効率的な砂管理および井戸の完全性のための目標とした改善措置を容易にすること、井戸壁要素の異常および/または故障の明確な識別を通して操業リスクを低減することを含む多くの利点を提供する。
【0058】
いくつかの実施形態では、本明細書に記載されるシステムおよび方法の使用はサンディングに寄与するゾーンおよびそれらの相対濃度に関する知識を提供し、それによって処理結果に基づく改善された改善措置を可能にする。本明細書に開示される方法およびシステムはまた、異なる生産速度、異なる生産チョーク、およびダウンホール圧力条件の関数として異なる砂流入ゾーンによって生成される砂の量の変動性に関する情報を提供することができ、それによって砂の生産を制御するためのチョーク制御(例えば自動チョーク制御)を可能にする。本明細書に開示されるシステムおよび方法の実施形態は坑井内への砂の侵入の相対的濃度の計算も可能にし、それによってより目標を定められ効果的な浄化の可能性を提供する。
【0059】
本明細書に開示されるように、データ処理技術の実施形態は背景雑音からの砂の侵入から生じる音響信号を分離して抽出するために、一連のリアルタイムデジタル信号処理ステップを使用し、入力データフィードとして分散光ファイバ音響センサデータを使用してダウンホール砂侵入ゾーンのリアルタイム検出を可能にする。
【0060】
次に
図1を参照すると、坑井動作環境100の一例が示される。以下により詳細に説明されるように本明細書に記載される原理による分散型音響センサ(DAS)システムを含む完成アセンブリの実施形態は環境100内に配置可能である。
【0061】
図1に示されるように、例示的な環境100は地下形成部102を横断する坑井114と、坑井114の少なくとも一部を覆うケーシング112と、坑井114およびケーシング112を通って延在する管状120とを含む。複数の離間されたスクリーン要素またはアセンブリ118が管状120に沿って設けられている。さらに複数の離間された帯状隔離装置117およびグラベルパック122が管状120と抗井114の側壁との間に設けられている。いくつかの実施形態では、動作環境100は表面に配置され抗井114の上に延在する抗井改修および/または掘削リグを含む。
【0062】
一般に坑井114は任意の適切な掘削技術を使用して地下形成部102に掘削することができる。坑井114は垂直な坑井部分にわたって地表から実質的に垂直に延在し、逸脱した坑井部分にわたって地表に対して垂直から逸脱し、および/または水平な坑井部分へ移行し得る。一般に坑井の全てまたは一部は垂直であってもよく、任意の適切な角度、水平、および/または湾曲して逸脱してもよい。加えて坑井114は新しい坑井、既存の坑井、直線坑井、拡張リーチ坑井、横道坑井、多面坑井、および1つもしくはそれ以上の生産ゾーンを掘削および完成するための他のタイプの坑井であり得る。図示されているように、坑井114は開孔完結である(すなわちケーシング112が生産部150を通って延在しない)実質的に垂直な生産部150を含む。セクション150は
図1において抗井114の垂直で開孔した穴部分として図示されているが、本明細書に開示される実施形態は任意の方向を有する抗井のセクションおよび抗井の開口またはケーシングされたセクションに用いられ得る。ケーシング112は表面から坑井114内に延在し、セメント111によって坑井114内にセメント固着される。
【0063】
管状120は、削孔、完成、抗井改修、処理、および/または生産プロセスなどの操作を行うために坑井114内に下げることができる。
図1に示す実施形態では、管状120はそれに結合された分散型音響センサ(DAS)を含む完成アセンブリストリングである。しかしながら一般に管状120の実施形態は、ドリルストリング、ケーシング、ライナー、接合管、および/またはコイル管として限定されるものではないが、これを含む抗井における異なる種類の構造として機能することができる。さらに管状120は坑井114の任意の部分(例えば坑井114の垂直、偏位、水平、および/または湾曲した部分)で作動してもよい。本明細書に記載されるDASシステムの実施形態は、
図3Aおよび
図3Bに示されるように、いくつかの実施形態では管状120の外部に結合するかまたは管状120の内部に配置することができる。DASが管状120の外側に結合されると、DASは管状120内の制御ライン、制御チャネル、または凹部内に位置決めすることができる。いくつかの実施態様において、砂制御システムは管状部120を収容し、設置中にシステムを保護するために外側シュラウドを含むことができる。制御線またはチャネルはシュラウド内に形成することができ、DASシステムは制御線またはチャネル内に配置することができる。
【0064】
管状部120は表面から生成ゾーンまで延在し、一般に流体が形成部102から表面に移動するための導管を提供する。管状120を含む完成アセンブリは製造ゾーンからの形成流体の製造を容易にするために種々の他の装置またはダウンホールツールを含むことができる。例えば帯状隔離装置117は坑井114内の様々なゾーンを隔離するために使用される。この実施形態では、各帯状隔離装置117はパッカー(例えば生産パッカー、グラベルパックパッカー、frac―pacパッカーなど)とすることができる。帯状隔離装置117は例えば抗井114に沿って異なるグラベルパックゾーンまたは間隔を互いに隔離するために、スクリーンアセンブリ118の間に配置することができる。一般に隣接する帯状隔離装置117の各対の間の空間は生産間隔を規定する。
【0065】
スクリーンアセンブリ118は砂制御能力を提供する。特に砂制御スクリーン要素118または抗井管状120に関連する他のフィルタ媒体は流体がそこを通って流れることを可能にするが、十分な大きさの粒子状物質がそこを通って流れることを制限および/または防止するように設計することができる。スクリーンアセンブリ118は「ワイヤラップ」として知られるタイプのものとすることができ、ワイヤラップはワイヤラップの間の間隔がワイヤラップの間を通過することから選択されたサイズよりも大きい粒子を保ちながら、フィルタ媒体を通って流体が流れることを可能にするように選択されるとともに、抗井管状の周りに螺旋状に密に巻き付けられたワイヤで構成される。他のタイプのフィルタ媒体も管状120に沿って提供することができ、グラベルパック抗井仕上げで一般的に使用される任意のタイプの構造体を含むことができ、これは粒子の流れを制限および/または阻止しながらフィルタまたはスクリーンを通る流体流を可能にする(例えば他の市販のスクリーン、スロット付きまたは穿孔されたライナーまたはパイプ;焼結―金属スクリーン;焼結―サイズのメッシュスクリーン;遮蔽パイプ;プレパックスクリーンおよび/またはライナー;またはそれらの組み合わせ)。そこを貫通する複数の穿孔部を有する保護外側シュラウドは任意のそのようなフィルタ媒体の外側の周囲に配置されてもよい。
【0066】
グラベルパック122は、開孔完了でスクリーン要素118(または管状120)と坑井114の側壁との間の環状部119に形成される。一般に砂利パック122は坑井壁を支持しながら坑井内への砂の侵入に対して粗いスクリーンを形成するために環状部に配置された比較的粗い粒状材料を含む。グラベルパック122は任意であり全ての補完物に存在するとは限らない。
【0067】
管状120に漏洩する流体は複数の流体成分を含んでもよい。典型的な組成物には、天然ガス、石油、水、蒸気、および/または二酸化炭素が含まれる。これらの構成要素の相対的比率は形成部102および坑井114内の条件に基づいて経時的に変化する。同様に生産ストリング全体の長さ全体にわたる管状120セクションに漏洩する流体の組成物は任意の所与の時間にセクション毎に著しく変化し得る。
【0068】
流体が坑井114内および完成アセンブリストリング内に生成されると、流体(例えば石油、水、天然ガスなど)と共に形成部内に存在する種々の固体粒子を生成することができる。このような固体粒子は本明細書では「砂」と呼ばれ、大きさまたは組成物にかかわらず地下の形成部内に由来する任意の固体を含むことができる。砂が坑井114に入るとDASシステムのような音響センサを使用して検出することができる音響音を生成することができる。同様に坑井114および/または坑井114を通る様々な流体流は、DASシステムのような音響センサを使用して検出することができる音響音を生成することができる。異なる流体流および流体流位置のような各タイプの事象は独特の周波数領域特徴を有する音響特徴を生成することができる。
【0069】
図1においてDASはファイバ162の長さに沿った音響摂動(例えば動的歪み)を検出するために光ファイバに注入された光の光学的後方散乱成分を使用する光ファイバ162ベースの音響センシングシステムを備える。光は光パルスを発生させることができるレーザーのような光発生器または光源166によって発生させることができる。光ファイバ162は光路内に追加の変換器がないセンサ素子として作用し、光ファイバ162全体の長さに沿って測定を行うことができる。次いで測定値はセンサ164などの光受信器によって検出され、所与の深度点または範囲からの測定値を得るために選択的にフィルタリングされ、それによって任意の所与の時間に光ファイバ162に沿った複数のゾーンに対する選択的データを有する分布測定値を提供することができる。このようにして光ファイバ162はダウンホール音響を検出するために、通常抗井114の少なくとも生成ゾーン150にまたがる光ファイバ162の全長に広がるマイクロホンの分散アレイとして有効に機能する。
【0070】
後方散乱の結果として光ファイバ162に反射して戻った光は、信号はセンサ164によって収集され処理される光源に戻ることがでる(例えばプロセッサ168を使用して)。一般に光が集光点に戻るまでに要する時間は光ファイバ162に沿って移動する距離に比例する。光ファイバ162の長さに沿って生じる得られた後方散乱光を使用して光ファイバ162の周囲の環境を特徴付けることができる。制御された光源166(例えば制御されたスペクトル幅および周波数を有する)を使用することにより、後方散乱を収集することができ、光ファイバ162の長さに沿った任意の擾乱を分析することができる。一般に光ファイバ162の長さに沿った任意の音響的または動的歪み擾乱は、後方散乱光の特性の変化をもたらすことができ、音響的大きさ周波数および幾つかの場合には擾乱の相対的位相の両方の分布測定を可能にする。
【0071】
取得装置160は光ファイバ162の一端に結合することができる。本明細書で論じられるように、光源166は光(例えば1つまたはそれ以上の光パルス)を生成することができ、センサ164は光ファイバ162上に戻る後方散乱光を収集し分析することができる。いくつかの文脈では光源166およびセンサ164を含む取得装置160は調査器と呼ぶことができる。光源166およびセンサ164に加えて、取得装置160は一般にセンサ164と信号通信するプロセッサ168を備え、ここでより詳細に説明する種々の分析ステップを実行する。取得装置160内にあるように示されているが、プロセッサは取得装置160から遠隔に配置されることを含む取得装置160の外部に配置することもできる。センサ164は種々の速度でデータを得るために使用することができ、十分な帯域幅で関心のある音響信号を検出するのに十分な速度でデータを得ることができる。実施形態において、約1メートル~約10メートルの深度分解能範囲を達成することができる。本明細書に記載されるシステム100はDASシステムと共に使用して坑井114内の位置または深度範囲の音響信号を収集することができるが、一般に任意の適切な音響信号収集システムを本明細書に開示される処理ステップと共に使用することができる。例えば種々のマイクロホンまたは他のセンサを使用して、本明細書に記載される音響信号処理に基づいて所与の位置に音響信号を提供することができる。DASシステムの使用の利点は音響信号が離散的な位置ではなく、複数の位置にわたっておよび/または抗井114の連続した長さにわたって得られることである。
【0072】
特定のスペクトル特徴は1つまたはそれ以上の周波数領域特徴を考慮することによって各事象に対して決定することができる。次に、得られたスペクトル特徴を処理された音響信号データと共に使用して事象が関心深度範囲で発生しているか否かを判定することができる。スペクトル特徴は坑井内で生じる異なるタイプの動きと流れを考慮し、それぞれのタイプの動きに対する周波数領域特徴を特徴付けることによって決定することができる。
【0073】
まず砂の浸入が考えられる。
図2に概略的に図示され、
図3Aおよび
図3Bの断面図に示されるように、砂202は形成部102から抗井114へ、次いで管状120へと流れることができる。砂202が管状120に流入すると、管状120の内面204に、またファイバが管状部内で変位する場合にはファイバ自体に不規則に衝突する可能性がある。この理論や特定の理論によって制限されることなく、衝突の強さは有効質量と衝突する砂粒子の速度の変化率に依存する。これは限定するものではないが、坑井114および/または管状120内の砂202の進行方向を含む多くの要因に依存することができる。結果として生じる不規則な衝撃は管状部120に結合された(例えばストラップされた)光ファイバ162上に捕捉することができる不規則で広帯域の音響信号を生成することができる。不規則な励起応答は広帯域の音響信号を有し、その励起周波数は砂粒子のサイズに応じて、例えば約5kHzまでおよびそれを超えて高周波数帯まで広がる傾向がある。一般に、より大きな粒子サイズはより高い周波数を生成し得る。音響信号の強度は増加した広帯域パワー強度が、増加した砂202の濃度で期待できるように励起を発生する砂202の濃度に比例してもよい。いくつかの実施形態では、識別可能な得られる広帯域音響信号は約5Hz~約10kHzの範囲の周波数、約5Hz~約5kHzまたは約50Hz~約5kHzの範囲の周波数、または約500Hz~約5kHzの範囲の周波数を含むことができる。下側の周波数値(例えば5Hz、50Hz、500Hz等)と上側の周波数値(例えば10kHz、7kHz、5kHz等)との間の任意の周波数範囲を使用して広帯域音響信号の周波数範囲を規定することができる。
【0074】
坑井114に入る砂202はキャリア流体206内で運ばれることができ、キャリア流体206は管状120に漏洩する流体に関連する乱流によって坑井114に入るときに、高強度の音響背景雑音を発生させることもできる。乱流流体流によって発生するこの背景雑音は、一般により低い周波数領域で卓越することが期待される。例えば流体漏洩音響信号は約0Hz~約500Hz、または代替的に約0Hz~約200Hzであり得る。キャリア流体流の乱れの増加から生じる低周波数では出力強度の増加が期待できる。背景雑音は砂の侵入が発生したときに砂202によって生成される広帯域音響信号に重畳信号として検出することができる。
【0075】
これらの音源が発生する音響信号の種類とともに多数の音響信号源も考慮することができる。一般に種々の信号源は形成部102を通る砂の有無にかかわらず流体流、砂利パック122を通る砂の有無による流体流、管状120および/または砂スクリーン118を通る砂の有無による流体流、管状120および/または砂スクリーン118内または通る砂202を伴う流体流、管状120および/または砂スクリーン118内への砂の無い流体流、気体/液体の漏洩、液体の破砕、制限(例えば気体の漏洩、液体の漏洩など)を通過する流体の漏洩、および調査中の光ファイバケーブル/導管内の亀裂によって引き起こされる、機械的計装および地球物理学的音響雑音およびファイバ内の潜在的点反射雑音を含むと考えられ得る。
【0076】
流体206の流れについては砂202が流れる流体206と共に運ばれる可能性があり、形成部102において任意の結果として生じる音響信号が光ファイバ162によって捕捉される可能性は低いと考えられる。さらに結果として生じる音響信号は乱流流体流から生じる低周波数に支配されるであろう。同様に砂利パック122内を流れる流体は低流速で流れる可能性が高く、したがって砂202によって作り出される任意の音響信号の発生および強度を制限するであろう。したがって音響応答はより低い周波数範囲で発生することが期待されるであろう。
【0077】
砂202が砂利パック122を通過するか否かに関わらず、流体206の流れについては結果として生じる音響信号が音響センサによって捕捉されるであろう可能性も低いと考えられる。さらに結果として生じる音響信号は乱流流体流から生じる低周波数に支配されるであろう。
【0078】
管状120の内部または貫通する砂202を伴うまたは伴わない流体206の流れについては、音響信号を捕捉する可能性は管状120に結合された光ファイバ162への音響信号源の近接性のために高いと考えられる。このタイプの流れは砂202を含む流体206が管状120内を流れるときに発生し得る。そのような流れは管状120の内面204にほぼ平行に流れる任意の砂をもたらし、それは発生される任意の高周波音の強度と同様に高周波音の発生を制限するであろう。管状120および/または砂スクリーン118を通る流体206の流れから生成される音響信号は乱流流体流から生じる低周波数の音響信号によって支配され得ることが期待される。
【0079】
実施形態において、管内に砂202を含む流体206による音響信号は約0Hz~約50Hzの音響強度の上昇を有し、約20Hz~約50Hzの間の電力のロールオフを有することが期待できる。砂202を含む流体206の信号の一例が
図4に示されており、それは3つの周波数ビンについての深度対時間グラフにおける周波数フィルタリングされた音響強度を図示する。図示するように3つの周波数ビンは5Hz~20Hz、20Hz~50Hz、および50Hz~100Hzを表す。音響強度は最初のビンと2番目のビンで確認できる。50Hz~100Hzの周波数範囲ではほぼ検出不可能な音響強度になる。これにより坑井の砂を含む流体流に対する音響ロールオフを実証した。
【0080】
図2~
図3に戻ると、管状120および/または砂スクリーン118内への砂202を全く含まない流体206の流れに対して、光ファイバ162の近傍は発生した任意の音響信号が音響センサによって検出される可能性が高い結果をもたらすことができる。本明細書で論じられるように、砂202を全く含まない流体206単独の流れは、乱流流体流によって生成される音響信号のために低周波数信号によって支配される音響信号を生成することが期待される。
【0081】
砂202を有する流体206が管状120および/または砂スクリーン118に漏洩する場合、光ファイバ162の近傍は発生した任意の音響信号が光ファイバ162によって検出される可能性が高い結果をもたらすことができる。本明細書でさらに議論するように砂202を伴う流体206の流れは、例えば約5kHzまでおよびそれを超えて高周波数帯まで広がる励起周波数を有する広帯域特性を有する音響信号を生じ得る。
【0082】
抗井へのガスの流れに対して、光ファイバ162への近接は発生した任意の音響信号が光ファイバ162によって検出される可能性が高い結果をもたらすことができる。抗井へのガスの流れは広い周波数範囲にわたる乱流をもたらす可能性が高い。例えばガス漏洩音響信号は約0Hz~約1000Hz、または代替的に約0Hz~約500Hzであり得る。増加した電力強度はガス流中の増加した乱流から約300Hz~約500Hzの間で発生し得る。抗井へのガスの漏洩から生じる音響信号の例を
図5に示す。これは5つの周波数ビンについての深度における周波数フィルタリングされた音響強度対時間グラフを図示する。図に示すように5つの周波数ビンは5Hz~50Hz、50Hz~100Hz、100Hz~500Hz、500Hz~2000Hz、および2000Hz~5000Hzを表す。音響強度は周波数範囲が約500Hzまでの最初の3つのビンで確認できる。500Hzを超える周波数範囲ではほぼ検出不可能な音響強度になる。これは周波数領域特徴の少なくとも一部が500Hzを超えて存在しなくてもよく、これはガスの漏洩の特徴を規定するのに役立つことができることを実証する。
【0083】
水圧破砕では種々の形成条件による地下形成部の自己誘起破砕が音響信号を作り出すことができる。このような信号の強度は破壊と光ファイバ162との間の距離に応じて、光ファイバ162によって検出することができる。得られた破壊は約0Hz~約400Hzの周波数帯域に存在する音響エネルギを有する広帯域応答を生成することが期待できる。約1000Hzまではある程度のスペクトルエネルギが期待でき、さらに破砕事象の離散的性質は、ほぼ瞬間的な広帯域高エネルギ事象に続いて破砕に応答して流体流から生じる低エネルギ、低周波数の流体流音響信号として見られる場合がある。
【0084】
抗井内のケーシングの背後の流体流に対して、光ファイバ162への流体流の近接は音響信号が検出される結果となり得る。ケーシングの背後の流れは、一般に存在するほぼ狭いか小さな漏洩経路に基づく1つまたはそれ以上の制限を通る流体流によって特徴付けることができる。このような制限を通る流れは約0Hz~約100Hzの範囲、または約0Hz~約70Hzの範囲の主エネルギ寄与を伴う約0Hz~約300Hzの周波数範囲のスペクトルパワーの増加によって特徴付けることができる。
【0085】
機械計装および地球物理的音響雑音によって生成される音響信号については、音の発生と音の検出に使用される光ファイバ162の部分との間の距離に応じて、場合によっては光ファイバ162によって音を検出することができる。種々の機械的雑音は低周波音を有することが期待されるであろう。例えば種々のモータ、50Hz~60Hzの範囲で動作することができ、得られる音響信号は狭帯域でスペクトルエネルギを有することが期待される。さまざまな地球物理学的な音はさらに低い周波数を持つことがある。その結果、機械計装や地球物理学的音源からの音は低域周波数フィルタに基づいてフィルタリングできることが期待される。
【0086】
点反射型雑音の場合、これらは通常本質的に広帯域であるが、空間的に閉じ込められた深度で発生する可能性があり、通常調査器の予想される空間分解能を広げることはない。これらはファイバの全深度を通してデータを空間的平均化または中央値フィルタリングすることにより前処理ステップの一部として除去することができる。
【0087】
潜在的音響信号源からの期待音響特性に基づいて、各事象の音響特徴を背景雑音寄与に相対的に定義できる。砂の侵入に関して音響特徴は結果として生じる応答における高周波成分の存在とともに、明確な広帯域応答の存在として見ることができる。砂の特徴における一意性は、以下の説明に記載されるように砂の侵入音響に関連する関連情報を抽出するために選択的信号隔離ルーチンの適用を可能にする。さらに砂の侵入から生じる音響信号の部分の特性は、流体中の砂の位置および潜在的にその性質および量を決定することを可能にし得る。また他の事象の音響特徴を決定し処理と共に使用して事象が同じ深度範囲で同時に発生した場合でも、各事象の識別を可能にすることができる。
【0088】
再び
図1を参照すると、取得装置160内のプロセッサ168は抗井114の長さに沿った1つまたはそれ以上の事象の存在を検出するために、様々なデータ処理を実行するように構成することができる。取得装置160はデータ分析を実行するためにアプリケーションまたはプログラムを格納するように構成されたメモリ170を含むことができる。取得装置160内に収容されているように示されているが、メモリ170は1つまたはそれ以上のメモリを備えることができ、そのうちの任意のメモリは取得装置160の外部とすることができる。一実施形態によると、プロセッサ168はプログラムを実行することができ、このプログラムは空間的に音響データセットをフィルタリングし、音響信号の1つまたはそれ以上の周波数領域特徴を決定し、得られた周波数領域特徴値を音響特徴と比較し、解析および比較に基づいて事象が選択位置で発生しているか否かを判断するようにプロセッサ168を構成することができる。分析は坑井114の長さに沿った様々な位置にわたって繰り返され、坑井114の長さに沿った1つまたはそれ以上の事象および/または事象位置の発生を決定することができる。
【0089】
音響センサがDASシステムを含む場合、光ファイバ162は生の光データをリアルタイムで、またはほぼリアルタイムで取得装置160に返すことができる。生の光データの強度は測定対象の音の音響強度に比例する。一実施形態によると、生データはその後の様々な使用のためにメモリ170に格納することができる。センサ164は生の光データを音響データセットに変換するように構成することができる。使用されるDASシステムのタイプに応じて、光データは位相コヒーレントであってもなくてもよく、信号品質を改善するために前処理されてもよい(例えば光電子ノイズ正常化/デトレンディング一点反射ノイズ除去のためになど、または取得ユニットの空間分解能に設定された平均ウィンドウを用いた空間移動平均計算の使用した中央フィルタリング技法の使用を介してなど)。
【0090】
場合によっては生の光学データを含む信号を生成する代わりに、DASシステムが生の光学データの微分を決定して微分信号を生成することも可能である。
【0091】
図6に概略的に示すように、砂の流入を検出するシステムの実施形態データ抽出ユニット402、処理ユニット404、および/または出力または視覚化ユニット406を含むことができる。データ抽出ユニット402は、光データを収集し初期前処理ステップを実行して、抗井から戻された信号から初期音響情報を得ることができる。周波数帯域抽出、周波数分析および/または変換、強度および/またはエネルギ計算、および/または音響データの1つまたはそれ以上の特性の決定を含む様々な分析を実行することができる。データ抽出ユニット402に続いて得られた信号を処理ユニット404に送ることができる。処理ユニット内で音響データは、例えば1つまたはそれ以上の音響特徴と比較されて、関心事象が存在するか否かを決定することによって解析され得る。実施形態では、音響特徴は周波数および/または周波数領域特徴の閾値または範囲を規定することができる。次いで分析は1つまたはそれ以上の閾値または基準を比較して、特定の信号が存在するか否かを判断することを含むことができる。処理ユニット404は1つまたはそれ以上の音響特徴に整合する音響特徴の存在に基づいて、1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上の事象(例えば砂の流入、ガスの漏洩、流体の漏洩など)の存在を決定するために決定を使用することができ、いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の音響特徴に整合する音響特徴の存在を決定する。次いで得られた分析情報は処理ユニット404から出力/視覚化ユニット406に送ることができ、ここで1つまたはそれ以上の事象の位置の視覚化および/または定量化情報を提供する情報(例えば砂の流入量、流体の漏洩の種類、漏洩流体の量など)などの様々な情報を多くの方法で視覚化することができる。一実施形態では、結果として生じる事象情報は事象がどこで起きているかの理解を助けるために、また幾つかの実施形態では、抗井の長さに沿った1つまたはそれ以上の位置で起きる流体および/または砂の流れの相対量を表示するために、井戸の概略図、タイムログ、または任意の他の数の表示上で視覚化することができる。
図6には別個のユニットとして示されているが、
図6に示されているユニットのうちの任意の2つ以上は単一のユニットに組み込むことができる。例えば単一のユニットを井戸現場に存在させて、得られた情報の分析、出力、および任意として、可視化を提供することができる。
【0092】
事象の存在を判定するために多数の特定の処理ステップを実行することができる。一実施形態によると、ノイズ除去された「音響バリアント」データは、存在する場合には前処理ステップに続く任意選択の空間フィルタリングステップにかけることができる。これは任意のステップで主に坑井内の関心のある区間に焦点を合わせるのに役立つ。例えば空間フィルタリングステップを用いて砂の侵入事象が検査されているときに、砂の侵入の最大の可能性がある生産区間に焦点を当てることができる。一実施形態によると、空間フィルタリングは分析の焦点をリザーバ部分に狭めることができ、また典型的には10倍のオーダーのデータの減少を可能にし、それによってデータ分析動作を単純化する。生の光データの変換を通して生成された結果として生じるデータセットは音響サンプルデータと呼ぶことができる。
【0093】
このタイプのフィルタリングはデータセットのサイズ縮小に加えていくつかの利点を提供することができる。音響データセットが空間的にフィルタリングされるか否かに関わらずその結果得られるデータ、例えば分析の次のステップに使用される音響サンプルデータは、規定された深度にわたる音響サンプル(例えば光ファイバの全長、その一部または抗井114内の点源)を示すことができる。いくつかの実施形態では、音響データセットは空間フィルタから生じる複数の音響サンプルを含み、多数の深度範囲にわたるデータを提供することができる。いくつかの実施形態では、音響サンプルは関心のある複数の点を捕捉するのに十分な深度範囲にわたる音響データを含んでもよい。いくつかの実施形態では、音響サンプルデータはサンプルによって表される深度における全周波数範囲にわたる情報を含む。これは空間フィルタリングを含む種々のフィルタリングステップは音響サンプルデータから周波数情報を除去しないということである。
【0094】
プロセッサ168は音響サンプルデータの1つまたはそれ以上の音響特徴への適合性をスペクトル的にチェックするために、ファイバまたはそのセクションに沿った各深度セクションで測定された音響バリアント時間ドメインデータの離散フーリエ変換(DFT)または短時間フーリエ変換(STFT)を実行するようにさらに構成することができる。スペクトル適合性チェックは事象の期待される特徴が音響サンプルデータ内に存在するか否かを決定するために使用することができる。時間および空間を通じたスペクトル特徴抽出を使用してスペクトル適合性を判定し、音響サンプル内に音響特徴(例えば砂の浸入指紋、ガスの漏洩、水圧破砕特徴など)が存在するかどうかを判定することができる。このプロセス内で音響サンプルデータに対して種々の周波数領域特徴を計算できる。
【0095】
1つまたはそれ以上の事象を識別するための周波数領域特徴の使用は多数の特徴を有する。第1に周波数領域特徴の使用は生のDASデータストリームと比較して、有意なデータ低減をもたらす。従って多数の周波数領域特徴を計算して残りのデータを廃棄または他の方法で格納することができる一方で、残りの解析を周波数領域特徴を用いて行うことができる間に事象識別を可能にすることができる。生のDASデータが保存されている場合でさえ、残りの処理能力は生の音響データそのものではなく周波数領域特徴の使用を通して著しく減少する。さらに周波数領域特徴の使用はダウンホール流体監視およびリアルタイム、特定用途向け信号処理に直接使用され得る他の用途に関連する特定の音のスペクトル特性または音響特徴の簡潔で定量的な尺度を提供する。
【0096】
多くの周波数領域特徴は音響サンプルデータについて決定することができるが、各音響信号の特徴付けにおいて全ての周波数領域特徴が使用されてもよいわけではない。周波数領域特徴は音響信号の特定の特性または特徴を表す。事象ごとに周波数ドメイン機能の選択に影響を与える可能性のある多くの要因がある。例えば選択された記述子は、電子工学/光学系からの干渉雑音、同時発生音響、伝送チャネルにおける歪みなどの環境からの干渉影響を比較的受けないままであるべきである。一般に電子/計装雑音はDASまたは任意の他の電子ゲージ上に捕捉された音響信号に存在し、通常信号を妨害する望ましくない成分である。熱雑音は計装(例えば電子増幅器および他のアナログ回路)の一部を形成するアナログ装置による信号の捕捉および処理の間に導入される。これは主に電荷キャリアの熱運動による。デジタルシステムではサンプリングと量子化によって追加の雑音が導入されることがある。周波数ドメイン機能はこれらの由来からの干渉を回避する必要がある。
【0097】
事象に対する周波数領域特徴を選択する際のさらなる考慮として周波数領域特徴の次元性はコンパクトであるべきである。その後の計算の計算量を減らすためにコンパクトな表現が望まれる。周波数領域の特徴も判別力を持つべきである。例えば異なるタイプの音声信号に対しては、選択されたディスクリプタのセットは全く異なる値を提供すべきである。特徴の判別力の尺度は関連する入力信号の集合について結果として得られる特徴ベクトルの分散である。異なるクラスの類似信号が与えられた場合、識別記述子は各クラス内部の分散が低く、異なるクラス上の分散が高いはずである。周波数領域特徴はそれが記述する特性の値の範囲を完全にカバーできるはずである。一例として選択された周波数領域特徴の組は本明細書に記載されるように選択されたダウンホール監視アプリケーションまたは事象に関連する音響信号の各々の特徴を完全かつ一意に識別することができるはずである。このような周波数領域特徴は、スペクトル重心、スペクトル拡散、スペクトルロールオフ、スペクトル歪度、二乗平均平方根(RMS)バンドエネルギ(または正常化サブバンドエネルギ/バンドエネルギ比)、ラウドネスまたは総RMSエネルギ、スペクトルフラックス、およびスペクトル自己相関関数を含むことができるが、これらに限定されない。
【0098】
スペクトル重心は光ファイバ162によって捕捉された音の「明るさ」を示し、音響サンプル内の周波数スペクトルの重心を示す。スペクトル重心は信号内に存在する周波数の加重平均として計算することができる。ここで存在する周波数の大きさは実施形態ではそれらの加重として使用することができる。ファイバ上の空間的位置で捕捉された音響シグナルのithフレームのスペクトル重心Ciの値は次のように書くことができる。
【0099】
【0100】
式中、Xi(k)はithフレームの短時間フーリエ変換の大きさであり、ここで、‘k’は度数係数またはビン指数を示し、Nはビンの総数を示し、f(k)はビンの中心度数を示す。計算されたスペクトル重心は0から1の間の値にスケールすることができる。より高いスペクトル重心は典型的にはより高い周波数の音響の存在を示し、高周波数の雑音の存在を即座に示す助けとなる。計算されたスペクトル重心は、所与の事象に対するスペクトル重心閾値または範囲と比較することができ、スペクトル重心が閾値を満たすか、または超える場合関心事象が存在する
【0101】
スペクトル重心の計算に関連する以下の議論はDASシステムによって生成された光データを含むサンプルデータセットのスペクトル重心の計算に基づく。この場合サンプルデータセットが高周波成分を含むか否かを評価するとき、計算されたスペクトル重心はスペクトル重心閾値と等しいかまたはより大きいべきである。しかしながら上述したようにサンプルデータセットが光データの微分を含む場合、計算されたスペクトル重心はスペクトル重心閾値と等しいかまたはそれ未満であるべきである。
【0102】
計算されたスペクトル重心の絶対的な大きさはゼロと1の間の値を読み取るようにスケールすることができる。流体流および漏洩などの他の由来によって生成される乱流雑音は、典型的にはより低い周波数(例えば約100Hz未満)であってもよく、重心計算は例えば0.1ポストリスケーリングの周囲または下で、より低い値を生成し得る。砂の導入はスペクトルコンテンツをより高い周波数(例えば5,000Hzまでおよびそれを超えて)まで拡張することができる、より広い周波数の音(例えば広帯域応答)の引き金となり得る。これはより高い値(例えば約0.2~約0.7または約0.3~約0.5)の重心を生成することができ、変化の大きさは伝統的な電子ノイズフロア(例えばより低い周波数においてフリッカ雑音が課されたホワイト雑音)を仮定する測定において良好な信号対雑音比があると仮定するとサンディングの全体的な濃度にかなり依存しないままであろう。しかしパイプに衝突する砂粒子の大きさに依存する可能性がある。
【0103】
また音響サンプルについてスペクトルの拡散を決定することができる。スペクトル拡散はスペクトルの形状の尺度であり、スペクトル重心の周囲にスペクトルがどのように分布するかを測定するのに役立つ。スペクトル拡散を計算するために、Siは以下の式(上で定義された他のすべての項)に従って計算された重心からスペクトルの偏差をとらなければならない。
【0104】
【0105】
スペクトル拡散の低い値はスペクトルがスペクトル重心の周りに密に集中している信号に対応する。高い値はスペクトルの大きさの広い拡散を表し広帯域のスペクトル応答の存在を示す。計算されたスペクトル拡散はスペクトル拡散閾値または範囲と比較することができ、スペクトル拡散が閾値を超えるかまたは範囲内に収まる場合、対象事象が存在する可能性がある。スペクトル重心の場合と同様にスペクトル拡散の大きさは、測定において良好な信号対雑音比があると仮定すると、砂の侵入事象についてはサンディングの全体的な濃度にかなり依存しないままであろう。しかしパイプに衝突する砂粒子の大きさと形状に依存することができる。
【0106】
スペクトルロールオフは音声信号の帯域幅の尺度である。ithフレームのスペクトルロールオフは短時間フーリエ変換の累積された大きさがスペクトルの大きさの総和のある割合値(通常85%~95%)に達する以下の周波数ビン「y」として定義される。
【0107】
【0108】
ここで、c=85または95である。ここにスペクトルロールオフ計算の結果はビン指数であり、周波数領域での主要なエネルギ寄与に基づいて音響事象を識別することを可能にした(例えばガス漏洩と流体流の間など)。
【0109】
スペクトル歪度はそれらの算術平均の付近のスペクトル強度値の分布の対称性を測定する。
【0110】
RMSバンドエネルギは規定された周波数ビン内の信号エネルギの測度を提供し、次いで信号振幅ポピュレーションに使用され得る。バンド幅の選択は捕捉された音響信号の特徴に基づいて行うことができる。いくつかの実施形態では、選択された帯域内の上側周波数と選択された帯域内の下側周波数との比率を表すサブバンドエネルギ比率は約1.5:1~約3:1の範囲であり得る。いくつかの実施形態では、サブバンドエネルギ比率は約2.5:1~約1.8:1の範囲であり得るか、または代替的に約2:1であり得る。いくつかの実施形態では、5,000Hzナイキスト取得帯域幅を有する信号の選択された周波数範囲は0Hz~20Hzの間の周波数範囲を有する第1のビン、20Hz~40Hzの間の周波数範囲を有する第2のビン、40Hz~80Hzの間の周波数範囲を有する第3のビン、80Hz~160Hzの間の周波数範囲を有する第4のビン、160Hz~320Hzの間の周波数範囲を有する第5のビン、320Hz~640Hzの間の周波数範囲を有する第6のビン、640Hz~1280Hzの間の周波数範囲を有する第7のビン、1280Hz~2500Hzの間の周波数範囲を有する第8のビン、および2500Hz~5000Hzの間の周波数範囲を有する第9のビンを含むことができる。いくつかの実施形態では、RMSバンドエネルギは取得(ナイキスト)帯域幅にわたる総RMSエネルギに対する定義された周波数ビン内のRMS信号エネルギの比を計算することによって、レシオメトリック測定として表すこともできる。これは雑音および広帯域音の瞬間的な変動に対する依存性を低減または除去するのに役立つ場合がある。
【0111】
時間領域で計算した音響波形の全RMSエネルギは音響信号の音圧を示すことができる。いくつかの実施形態では、雑音についての信号をファイリングした後に時間領域から総RMSエネルギを抽出することもできる。
【0112】
スペクトル平坦性は音響スペクトルの雑音性/調性の尺度である。それは幾何平均とエネルギスペクトル値の算術平均との比率によって計算することができ、広帯域化された信号(例えば砂の侵入によって生じるものなど)を検出するための代替アプローチとして使用することができる。トーン信号の場合スペクトラムの平坦性は0に近くなり、広帯域信号の場合は1に近くなる。
【0113】
スペクトル傾斜は線形回帰線によるスペクトル形状の基本的な近似を提供する。スペクトル傾斜は低周波数から高周波数(例えばスペクトル傾斜)へのスペクトル振幅の減少を表す。傾斜、y交点、および最大および媒体回帰誤差は特徴として使用されてもよい。
【0114】
スペクトル尖度は平均値周辺の分布の平坦性の尺度を提供する。
【0115】
スペクトルフラックスはスペクトルの大きさの瞬間的な変化の尺度である。それは全ての周波数またはスペクトルの選択された部分にわたって合計されたスペクトル強度ベクトルのフレーム間二乗差の測度を提供する。ゆっくり変化する(またはほぼ一定の)スペクトル特性(例えば雑音)を有する信号は低いスペクトルフラックスを有し、一方急激なスペクトル変化を有する信号は高いスペクトルフラックスを有する。スペクトルフラックスは局所スペクトル変化率の直接的な測定を可能にすることができ、その結果音響信号を識別および一意的に分類するために上述の特徴セットを使用してさらに分析され得る音響事象の開始を拾うために使用され得る事象検出スキームとして役立つことができる。
【0116】
スペクトル自己相関関数は信号がシフトされる方法を提供し、各信号シフト(遅れ)に対してシフトされた信号と元のものとの相関または類似性が計算される。これにより自己相関が最大になるような信号が最もよく似ているラグを選択することで基本周期の計算が可能になる。これは探索的特徴解析/監視されるべき井戸バリア要素が配置される特定の深度にわたる井戸完全性監視のための異常検出に対してさえも有用であり得る。
【0117】
これらの周波数領域特徴のいずれかまたはこれらの周波数領域特徴のいずれかの組み合わせを使用して、ダウンホール事象のための音響特徴を提供することができる。一実施形態によると、選択された一組の特性を使用して各事象に対する音響特徴を提供することができ、および/または計算される周波数領域特徴の全ては事象に対する音響特徴を特徴付ける際のグループとして使用することができる。計算される周波数領域特徴に対する特定の値は各周波数領域特徴の絶対値がシステム間で変化し得るように音響信号収集システムの特定の属性に応じて変化し得る。いくつかの実施形態では、周波数領域特徴は音響信号を捕捉するために使用されるシステムに基づいて各事象について計算することができ、および/または値を決定するために使用されるシステムと評価される音響信号を捕捉するために使用されるシステムとの間の各特徴についての周波数領域特徴値を決定する際にシステム間の差異を考慮することができる。
【0118】
図7は特徴の違いを示すために音響パワー対周波数のチャート上に多数の異なる事象を示す図である。示されているように発明の背景機器の雑音、ガス漏洩、坑井へのガス漏洩、砂の侵入または流入、管状内の砂の輸送、自己誘起水圧破壊、ケーシング背後の流れに対する事象特徴が図示されている。複数の周波数領域特徴を使用して事象の各タイプを特徴付けることができる。一実施形態では、少なくとも2つ、代替として少なくとも3つ、代替として少なくとも4つ、代替として少なくとも5つ、代替として少なくとも6つ、代替として少なくとも7つ、または代替として少なくとも8つの異なる周波数領域特徴を備える。
図7は音響パワーのみを表示するが存在する相対的周波数は複数の周波数領域特徴を用いて特徴付けることができる異なる事象から生じる音響信号の一意性を示すための例示的な目的のために図示されている。
【0119】
一実施形態によると、形成部から抗井内に漏洩するガスを含む事象は比較的高い正常化スペクトル重心値を有するより低い周波数範囲(例えば約0Hz~約500Hzの範囲)のスペクトル重心を含む音響特徴によって特徴付けることができる。スペクトル拡散は期待される信号が広帯域信号でない場合があるので相対的に小さくてもよい。加えてRMSバンドエネルギは約500Hzまでの周波数を表すビン内に期待され、一方約500Hzを超える周波数を表すビンは0Hz~約500Hzの周波数を表すビンに対してRMSバンドエネルギ(またはサブバンドエネルギ比)または著しく減少したRMSバンドエネルギを有さないであろう。加えて約300Hz~約500Hzの周波数範囲を表すRMSバンドエネルギは他の周波数範囲を表すビンに関連して最大のRMSバンドエネルギ(またはサブバンドエネルギ比率)を実証し得る。追加の周波数ドメイン特徴はガス漏洩事象についても決定することができ、ガス漏洩特徴の一部として使用することができる。
【0120】
形成部から坑井内へのガス漏洩を含む事象はより低い周波数範囲(例えば約0Hz~約500Hzの範囲)内のスペクトル重心を含む音響特徴によって特徴付けることができる。スペクトル拡散は期待される信号が広帯域信号でない場合があるので相対的に小さくてもよい。加えてRMSバンドエネルギは約500Hzまでの周波数を表すビン内に期待され、一方約500Hzを超える周波数を表すビンは0Hz~約500Hzの周波数を表すビンに対してRMSバンドエネルギまたは著しく減少したRMSバンドエネルギを有さないであろう。加えて約0Hz~約50Hzの周波数範囲を表すRMSバンドエネルギは他の周波数範囲を表すビンに関連するものとして最大のRMSバンドエネルギを実証し得る。追加の周波数領域特徴はガス漏洩事象についても決定することができ、ガス漏洩特徴の一部として使用することができる。
【0121】
砂の流入を含む事象は約500Hzを超えるスペクトル重心を含む音響的特徴によって特徴付けることができる。スペクトル拡散は期待される信号が広帯域信号であるべきであるため相対的に大きくなる場合がある。加えて500Hzを超える周波数を表すビン内のRMSバンドエネルギはゼロを超える値を有することが期待され、それによって広帯域周波数の存在を示す指標を提供するであろう。さらなる周波数領域特徴はまた砂の流入事象について決定することができ、砂の流入サインの一部として使用することができる。
【0122】
形成部から坑井内および/または完成アセンブリ内への高率の流体流を含む事象は、より低い周波数範囲(例えば0Hz~約50Hzの範囲内)でのスペクトル重心を含む音響特徴によって特徴付けることができる。スペクトル拡散は、期待される信号が広帯域信号でない場合があるので、相対的に小さくてもよい。加えて、RMSバンドエネルギは約50Hzまでの周波数を表すビン内に期待され、一方、約50Hzを超える周波数を表すビンは、0Hzから約50Hzの間の周波数を表すビンに対して、RMSバンドエネルギまたは著しく減少したRMSバンドエネルギを有さないであろう。付加的な周波数ドメイン特徴は、高率流体流動事象についても決定することができ、高率流体流動特徴の一部として使用することができる。
【0123】
井戸内の砂の輸送および/または砂スラグの移動を含む事象は低周波数範囲(例えば0Hz~約20Hzの範囲)内のスペクトル重心を含む音響特徴によって特徴付けることができる。スペクトル拡散は期待される信号が広帯域信号でない場合があるので相対的に小さくてもよい。加えてRMSバンドエネルギは約20Hzまでの周波数を表すビン内に期待され、一方約20Hzを超える周波数を表すビンは0Hzから約20Hzの間の周波数を表すビンに対して、RMSバンドエネルギまたは著しく減少したRMSバンドエネルギを有さないであろう。加えて0Hz~約20Hzの間の周波数を表すビン内のRMSエネルギは流体流動雑音の電力またはエネルギに対して増加したエネルギまたは電力レベルを有するであろう。またスペクトルのロールオフは約50Hzで発生する可能性がある。追加の周波数領域特徴は井戸内砂輸送事象について決定することもでき、井戸内砂輸送特徴の一部として使用することができる。
【0124】
坑井管状または生産管内の砂栓または砂丘を含む制限を超える流体流を含む事象は低周波数範囲(例えば約0Hz~約50Hzの範囲内)のスペクトル重心を含む音響特徴によって特徴付けることができる。スペクトル拡散は期待される信号が広帯域信号でない場合があるので相対的に小さくてもよい。加えてRMSバンドエネルギは約50Hzまでの周波数を表すビン内に期待され、一方約50Hzを超える周波数を表すビンは0Hzから約50Hzの間の周波数を表すビンに対して、RMSバンドエネルギまたは著しく減少したRMSバンドエネルギを有さないであろう。さらなる周波数領域特徴はまた制限タイプの事象を超える流体流について決定することができ、制限タイプの特徴を超える流体流の一部として使用することができる。
【0125】
ケーシングの背後(例えばケーシングと形成部との間)の流体流を含む事象は低周波数範囲(例えば約0Hz~約300Hzの範囲)内のスペクトル重心を含む音響特徴によって特徴付けることができる。スペクトル拡散は期待される信号が広帯域信号でない場合があるので相対的に小さくてもよい。加えてRMSバンドエネルギは約300Hzまでの周波数を表すビン内に期待され、一方約300Hzを超える周波数を表すビンは0Hz~約300Hzの周波数を表すビンに対して、RMSバンドエネルギをほとんど~全く持たないかまたは著しく減少したRMSバンドエネルギを有するであろう。加えて0Hz~約70Hzの間の周波数を表すビン内のRMSエネルギは残りの周波数ビン内のRMSエネルギと比較して増加したエネルギまたはパワーレベルを有するであろう。さらなる周波数領域特徴はケーシングの背後の流体流についても決定することができ、ケーシング特徴の背後の流れの一部として使用することができる。
【0126】
坑井近傍領域における流体の動きによって引き起こされ得る自己誘起水圧破砕を含む事象は中周波数範囲(例えば約0Hz~約1000Hzの範囲)内のスペクトル重心を含む音響特徴によって特徴付けることができる。スペクトル拡散は期待される信号が約5000Hzまで広がる周波数を有する広帯域信号を含み得るので相対的に大きくてもよい。さらに約1000Hzまでの周波数を表すビンではRMSバンドエネルギが期待されるであろう。さらにスペクトルフラックスは破砕事象を示す可能性がある。水圧破壊の発生中のスペクトルパワーのほぼ瞬間的な上昇により、破壊の開始時に大きなスペクトルフラックスが期待できる。音響監視中に事象が1フレーム以上発生した場合、スペクトルフラックスは同様に事象の終了を示すことができた。追加の周波数領域特徴は自己誘起水圧破壊事象についても決定することができ、自己誘起水圧破壊特徴の一部として使用することができる。
【0127】
ダウンホール制限またはプラグを超える流体漏洩を含む事象は低周波数範囲(例えば0Hz~約500Hzの範囲)のスペクトル重心を含む音響特徴によって特徴付けることができる。スペクトル拡散は期待される信号が広帯域信号でない場合があるので相対的に小さくてもよい。さらに約500Hzまでの周波数を表すビンではRMSバンドエネルギが期待されるであろう。さらなる周波数領域特徴はまた制限タイプの事象を超える流体漏洩について決定することができ、流体漏洩特徴の一部として使用することができる。
【0128】
岩石破壊伝播を含む事象は高周波数範囲(例えば1000Hz~約5000Hzの範囲)のスペクトル重心を含む音響特徴によって特徴付けることができる。加えてRMSバンドエネルギは約1000Hz~約5000Hzの間の周波数を表すビン内に期待されるであろう。さらにスペクトルフラックスは破砕伝播事象を示す可能性がある。破壊伝播中のスペクトルパワーのほぼ瞬間的な上昇による破壊伝播の開始時に大きなスペクトルフラックスが期待できる。音響監視中に事象が1フレーム以上発生した場合、スペクトルフラックスは同様に事象の終了を示すことができた。さらなる周波数領域特徴は岩石破砕事象に対して決定することもでき、岩石破砕特徴の一部として使用することができる。
【0129】
本明細書では例示的な数値範囲が提供されるが、実際の数値結果はデータ収集システムに応じて変化してもよく、および/または値は正常化されるか、さもなければ処理されて異なる結果を提供してもよい。その結果各事象に対する特徴は複数の周波数領域特徴のそれぞれに対して異なる閾値または値の範囲を有し得る。
【0130】
周波数領域特徴を得るために音響サンプルデータを周波数領域に変換できる。一実施形態によると、生の光データは時間領域において音響データを含んでもよく、またはそれを表してもよい。データの周波数領域表現はフーリエ変換を用いて得ることができる。種々のアルゴリズムを当技術分野で公知のように使用することができる。いくつかの実施形態では、短時間フーリエ変換技術または離散時間フーリエ変換を使用することができる。次いで得られたデータサンプルはそれらが存在するそれらの電力レベルに対する周波数の範囲によって表すことができる。生の光データは空間フィルタを適用する前または適用した後に周波数領域に変換することができる。一般に音響サンプルはスペクトル重心およびスペクトル拡散を決定するために周波数領域内にあるであろう。一実施形態によると、プロセッサ168は時間領域から周波数領域への生の音響データおよび/または音響サンプルデータの変換を実行するように構成することができる。信号を周波数領域に変換するプロセスにおいて音響サンプル内の全ての周波数にわたる電力を解析することができる。変換を実行するためのプロセッサ168の使用はリアルタイムまたはほぼリアルタイムで周波数領域データを提供してもよい。
【0131】
次いでプロセッサ168を使用して周波数領域内の音響サンプルデータを分析し周波数領域特徴の1つまたはそれ以上を得て、さらなる処理のために決定された周波数領域特徴を有する出力を提供することができる。いくつかの実施形態では、周波数領域特徴の出力はあらゆる事象の存在を決定するために使用されない特徴を含むことができる。
【0132】
次に音響サンプルデータに対する周波数領域特徴を有するプロセッサの出力を使用して、音響データが収集またはフィルタリングされる深度間隔に対応する坑井内の1つまたはそれ以上の位置における1つまたはそれ以上の事象の存在を決定することができる。いくつかの実施形態では、1つまたはそれ以上の事象の存在の決定は周波数領域特徴を各事象特徴における周波数領域特徴閾値または範囲と比較することを含むことができる。音響サンプルデータ内の周波数領域特徴が事象特徴のうちの1つまたはそれ以上と整合する場合、事象はリアルタイムであり得るサンプルデータ測定期間中に発生したものであると識別することができる。1つまたはそれ以上の事象の存在を表示または表示するために様々な出力を生成することができる。
【0133】
事象特徴への周波数領域特徴の整合は多くの方法で達成することができる。いくつかの実施形態では、周波数領域特徴の事象特徴閾値または範囲への直接マッチングは複数の周波数領域特徴にわたって実行可能である。いくつかの実施形態では、機械学習またはさらには決定論的技法が組み込まれ、記述子に基づいて新しい信号を自動的にパターン化することができる。一例としてk―meansクラスタリングおよびk―nearest分類技法を用いて事象をクラスタリングし、それらを最近傍に分類して種々の事象に対する探索的診断/監視能力を提供し、場合によっては事象の特徴が確立されていない新しいダウンホール事象を識別することができる。学習アルゴリズムの使用は音響信号が積み重なって結果として生じる音響サンプルデータを形成するように複数の事象が同時に発生する場合にも有用であり得る。一実施形態によると、周波数領域特徴を使用して坑井内の1つまたはそれ以上の位置における砂の浸入の存在を判定することができる。スペクトル重心およびスペクトル拡散の決定および閾値との比較により、抗井中の選択された深度における流体中の粒子の存在の決定が可能となり得る。高周波成分は砂が流体と共に坑井管状に入り込んでいる場所に存在する傾向があるので、スペクトル拡散およびスペクトル重心基準を満たす場所は砂が入り込んでいる場所を示している。これは単に坑井管状(例えば流動流体中に存在する)に砂が存在する位置ではなく、入口点に関する情報を提供することができ、これは流体が坑井114の表面に流れるときに砂の入口位置より上の任意の点で発生し得る。
【0134】
上述のようにスペクトル拡散はスペクトル重心を使用して計算することができ、従って典型的にはスペクトル重心が最初に計算され、続いてスペクトル拡散が計算される。スペクトルの広がりと対応する閾値を持つスペクトル重心の比較は任意の順序で起こり得る。いくつかの実施形態では、両方の値は単独でまたは付加的な周波数領域特徴と共に計算され、対応する閾値または範囲と比較され、砂の侵入が音響サンプルデータによって表される深度に存在するか否かを判断することができる。他の実施形態では、2つの特性のうちの1つのみが最初に決定されてもよい。スペクトル拡散またはスペクトル重心の値のいずれかが最初に決定されたものが対応する閾値を上回っていない場合、音響サンプルデータによって表される深度または深度範囲に対するエネルギ値をゼロに設定することができ別のサンプルを処理することができる。値が対応する閾値より大きい場合、他の特性を決定し対応する閾値と比較することができる。第2の比較が閾値を超える特性をもたらさない場合、音響サンプルデータによって表される深度範囲に対するエネルギ値をゼロに設定することができる。これは結果として生じるログが対応する深度でゼロ値を含み得るようにゼロ値を含むデータ点を生じ得る。両方のプロパティが対応する閾値を満たすまたは超える場合にのみ、井戸のデータログに記録されるエネルギまたは強度値などの別の値となる。エネルギまたは強度についての計算値は深度および時間が合致する、または対応する閾値を超えるそれらの音響サンプルデータセットについてメモリ170内に格納することができ、ゼロの値は対応する閾値の一方または両方を合致または超過しないそれらの音響サンプルデータセットについてメモリ170内に格納することができる。
【0135】
他の事象も砂の浸入の存在と同様の方法で特定することができる。一実施形態によると、ガス漏洩事象は複数のスペクトル記述子のそれぞれに対する閾値範囲(例えばスペクトル拡散、スペクトルロールオフ、スペクトル歪度、二乗平均平方根(RMS)バンドエネルギ(または正常化サブバンドエネルギ/バンドエネルギ比)、ラウドネスまたは総RMSエネルギ、スペクトルフラックス、およびスペクトル自己相関関数)を含むガス漏洩特徴によって特徴付けることができる。ガス漏洩特徴は漏洩経路を通る坑井戸内の形成部からのガス漏洩を示すことができる。プロセッサは分析アプリケーションを使用してスペクトルディスクリプタ値を閾値および/または範囲と比較し、抗井内の形成部から環状部へのガス漏洩が発生したかどうかを判定するように構成することができる。スペクトル記述子値の決定は任意の順序で行うことができ、決定は逐次的に(例えば第1の周波数領域特徴が閾値および/または範囲内にあることを検証すること、および/または第2の周波数領域特徴が続くことなど)、または事象特徴における周波数領域特徴を使用して並列に行うことができる。
【0136】
一実施形態によると、坑井内へのガス漏洩は複数のスペクトル記述子(例えばスペクトル拡散、スペクトルロールオフ、スペクトル歪度、二乗平均平方根(RMS)バンドエネルギ(または正常化サブバンドエネルギ/バンドエネルギ比)、ラウドネスまたは総RMSエネルギ、スペクトルフラックス、および/またはスペクトル自己相関関数)のそれぞれに対する閾値範囲を含むガス漏洩特徴によって特徴付けることができる。ガス漏洩特徴は形成部から坑井へのガス漏洩を示すことができる。プロセッサは分析アプリケーションを使用して複数のスペクトル記述子値を閾値および/または範囲と比較し、坑井内の形成部から環状部へのガス漏洩が生じているかどうかを判定するように構成することができる。スペクトル記述子値の決定は任意の順序で行うことができ、決定は逐次的に(例えば第1の周波数領域特徴が閾値および/または範囲内にあることを検証すること、および/または第2の周波数領域特徴が続くことなど)、または事象特徴における周波数領域特徴を使用して並行して行うことができる。
【0137】
一実施形態によると、抗井内への液体漏洩はスペクトル重心閾値範囲およびRMSバンドエネルギ範囲を含む液体漏洩特徴によって特徴付けることができ、周波数領域特徴は複数のビン内のスペクトル重心およびRMSバンドエネルギを含むことができる。液体漏洩特徴は坑井内への形成部からの液体漏洩を示すことができる。プロセッサは分析アプリケーションを使用して複数のスペクトル記述子値を閾値および/または範囲と比較し、形成部からの液体漏洩が生じているかどうかを判定するように構成することができる。スペクトル記述子値の決定は任意の順序で行うことができ、決定は逐次的に(例えば第1の周波数領域特徴が閾値および/または範囲内にあることを検証すること、および/または第2の周波数領域特徴が続くことなど)、または事象特徴における周波数領域特徴を使用して並行して行うことができる。
【0138】
一実施形態によると、坑井内の砂輸送はスペクトル重心閾値範囲およびスペクトルロールオフ閾値を含む砂輸送特徴によって特徴付けることができ、周波数領域特徴はスペクトル重心およびスペクトルロールオフを含むことができる。砂輸送特徴は坑井内のキャリア流体内を流れる砂を示すことができる。プロセッサは分析アプリケーションを使用して複数のスペクトル記述子値を閾値および/または範囲と比較し、坑井内の砂輸送が生じているかどうかを判定するように構成することができる。スペクトル記述子値の決定は任意の順序で行うことができ、決定は逐次的に(例えば第1の周波数領域特徴が閾値および/または範囲内にあることを検証すること、および/または第2の周波数領域特徴が続くことなど)、または事象特徴における周波数領域特徴を使用して並行して行うことができる。
【0139】
一実施形態では、砂制限を超える流体流はスペクトルパワー閾値範囲を含む砂制限特徴によって特徴付けることができ、周波数領域特徴はスペクトルパワーを含むことができる。砂制限特徴は坑井内の管状の砂制限を超える液体流を示すことができる。プロセッサは分析アプリケーションを使用して複数のスペクトル記述子値を閾値および/または範囲と比較し、砂制限を超える流体流が発生したかどうかを判断するように構成することができる。スペクトル記述子値の決定は任意の順序で行うことができ、決定は逐次的に(例えば第1の周波数領域特徴が閾値および/または範囲内にあることを検証すること、および/または第2の周波数領域特徴が続くことなど)、または事象特徴における周波数領域特徴を使用して並行して行うことができる。
【0140】
一実施形態では、ケーシングの背後の流体流(例えば漏洩経路を通る流体流など)はスペクトルパワー閾値範囲および1つまたはそれ以上のRMSバンドエネルギ範囲を含むケーシング流体流特徴によって特徴付けることができ、周波数領域特徴は複数のビン内のスペクトル重心およびRMSバンドエネルギを含むことができる。ケーシング流体流の特徴はケーシングと形成部との間の流体流を示すことができる。プロセッサは分析アプリケーションを使用して複数のスペクトル記述子値を閾値および/または範囲と比較し、ケーシングの背後の流体流が発生したかどうかを判断するように構成することができる。スペクトル記述子値の決定は任意の順序で行うことができ、決定は逐次的に(例えば第1の周波数領域特徴が閾値および/または範囲内にあることを検証すること、および/または第2の周波数領域特徴が続くことなど)、または事象特徴における周波数領域特徴を使用して並行して行うことができる。
【0141】
一実施形態では、自己誘導水圧破壊の発生はスペクトル重心閾値範囲およびRMSバンドエネルギ範囲を含む自己誘導水圧破砕特徴によって特徴付けることができ、周波数領域特徴は複数のビン内のスペクトル重心およびRMSバンドエネルギを含むことができる。自己誘起水圧破砕特徴は形成部内での自己誘起破砕の形成部を示すことができる。プロセッサは解析アプリケーションを使用して複数のスペクトル記述子値を閾値および/または範囲と比較し、自己誘導水圧破壊が発生したかどうかを判定するように構成することができる。スペクトル記述子値の決定は任意の順序で行うことができ、決定は逐次的に(例えば第1の周波数領域特徴が閾値および/または範囲内にあることを検証すること、および/または第2の周波数領域特徴が続くことなど)、または事象特徴における周波数領域特徴を使用して並行して行うことができる。
【0142】
一実施形態では、流体漏洩の存在はスペクトル重心閾値範囲およびRMSバンドエネルギ範囲を含む流体漏洩特徴によって特徴付けることができ、周波数領域特徴は複数のビン内のスペクトル重心およびRMSバンドエネルギを含むことができる。流体漏洩特徴は坑井内のダウンホールプラグを通過する液体流を示すことができる。プロセッサは分析アプリケーションを使用して複数のスペクトルディスクリプタ値を閾値および/または範囲と比較し、ダウンホールプラグのような制限を超える流体流が発生したかどうかを判定するように構成することができる。スペクトル記述子値の決定は、任意の順序で行うことができ、決定は逐次的に(例えば第1の周波数領域特徴が閾値および/または範囲内にあることを検証すること、および/または第2の周波数領域特徴が続くことなど)、または事象特徴における周波数領域特徴を使用して並行して行うことができる。
【0143】
一実施形態では、形成部内での破砕の発生はスペクトル重心閾値範囲およびRMSバンドエネルギ範囲を含む破砕特徴によって特徴付けることができ、周波数領域特徴は複数のビン内のスペクトル重心およびRMSバンドエネルギを含むことができる。破砕特徴は形成部内に破砕が形成されたことを示している。プロセッサは解析アプリケーションを使用して複数のスペクトル記述子値を閾値および/または範囲と比較し、形成部における破壊が発生したかどうかを判定するように構成することができる。スペクトル記述子値の決定は任意の順序で行うことができ、決定は逐次的に(例えば第1の周波数領域特徴が閾値および/または範囲内にあることを検証すること、および/または第2の周波数領域特徴が続くことなど)、または事象特徴における周波数領域特徴を使用して並行して行うことができる。
【0144】
抗井114内の深度または位置における1つまたはそれ以上の事象の存在を検出することに加えて、プロセッサ168上で実行される分析ソフトウェアを使用して事象位置を視覚化するか、または計算されたエネルギ値を遠隔位置上の視覚化のためにコンピュータネットワーク上で転送することができる。事象の1つまたはそれ以上を可視化するために音響信号のエネルギまたは強度は対象となる深度間隔(例えば砂の浸入位置を決定すべきリザーバ断面)で決定することができる。
【0145】
次に、フィルタリングされたデータセット内の音響信号の強度を計算することができ、ここで強度は音響データ内のエネルギまたはパワーを表すことができる。多くのパワー値または強度値を計算することができる。一実施形態では、フィルタリング済みデータセット周波数帯域幅にわたる二乗平均平方根(RMS)スペクトルエネルギまたはサブバンドエネルギ比は、時間の関数としてファイバの長さの全部または一部にわたる音響エネルギの積分データトレースを計算するために、セット積分時間にわたって同定された事象深度セクションの各々において計算することができる。事象ログのこの計算は毎秒などのように繰り返し行われ、後に個別の期間に対して統合/平均化され―例えばより抗井の減水量が多い時には、生産プロセスの様々な段階(例えばベースライン停止から、井戸の強化から、安定生産から、高い減水量/生産率からなど)において時間的に変化した事象ログを表示することができる。時間間隔は適切なデータを提供するのに十分な長さであり得るが、より長い時間はより大きなデータセットをもたらし得る。一実施形態によると、時間積分は約0.1秒~約10秒の間、または約0.5秒~約数分さらには数時間の間の時間期間にわたって発生し得る。
【0146】
毎秒計算された結果の事象ログはメモリ170に格納されるかまたはコンピュータネットワークを介して転送され、事象データベースに入力することができる。メモリ170に格納/転送されるデータは、1つまたはそれ以上のデータセット深度について、周波数領域特徴、フィルタリングされたエネルギデータセット、および/または時間によるRMSスペクトルエネルギのいずれかを含み得、毎秒格納され得る。このデータを使用して、光ファイバ162の長さに沿って各事象深度サンプルポイントで統合事象ログを生成し、測定時刻を示す同期されたタイムスタンプを生成できる。可視化事象ログを生成する際に1つまたはそれ以上の事象特徴を表示または整合させない深度セクションのRMSスペクトルエネルギをゼロに設定することができる。これにより、1つまたはそれ以上の事象特徴を表示または一致するこれらの深度ポイントまたはゾーンを簡単に識別できる。
【0147】
一例として、プロセッサ168上で実行される分析ソフトウェアを使用して砂の侵入位置を可視化するか、またはコンピュータネットワーク上で計算されたエネルギ値を移送して遠隔位置で可視化することができる。砂の侵入を可視化するために音響信号のエネルギまたは強度または少なくとも音響信号の高周波部分は関心の深度区間(例えば砂の侵入位置が決定されるべきリザーバ区間)で決定することができる。
【0148】
スペクトル記述子が事象特徴において対応する閾値を上回る値を有する場合、音響サンプルデータをフィルタリングして砂侵入音響データを得ることができる。いくつかの実施形態では、対応する閾値を満たすまたは超過する音響サンプルデータのみをさらに分析することができ、残りの音響サンプルデータはゼロに設定された値を有することができる。対応する閾値を満たすまたは超える音響サンプルデータセットは高周波フィルタでフィルタリングできる。一実施形態によると、対応する閾値を満たすまたは超過する音響サンプルデータセットは高周波数フィルタでフィルタリングされ、約0.5kHz未満、約1kHz未満、約1.5kHz未満または約2kHz未満の周波数を除去することができる。上部周波数範囲は約10kHz未満、約7kHz未満、約6kHz未満または約5kHz未満であってもよく、ここでフィルタ帯域幅は下部値のいずれかと上部値のいずれかとの間の周波数範囲を有することができる。一実施形態によると、音響サンプルはフィルタリングされて音響サンプルから約0.5kHz~約10kHzまたは約2kHz~約5kHzの間の周波数を含むフィルタリング済みデータセットを生成することができる。フィルタリングされたデータセットはより高い周波数における広帯域の音響エネルギを隔離することを可能にし、それによって砂侵入音響を流体流および音響信号の機械的原因から生じる音響センサによって捕捉される一般的な低周波数の流体流雑音と区別することを可能にする。
【0149】
次に、フィルタリングされたデータセット内の音響信号の強度を計算することができ、ここで強度、音響データ内のエネルギまたはパワーを表すことができる。一実施形態では、フィルタリング済みデータセット周波数帯域幅にわたる二乗平均平方根(RMS)スペクトルエネルギは時間の関数としてファイバの長さの全部または一部にわたる砂侵入エネルギの積分データトレースを計算するために、セット積分時間にわたる識別されたサンディング深度セクションの各々で計算することができる。「砂の浸入ログ」のこの計算は毎秒などのように繰り返し行われ、後に個別の時間間隔で統合/平均化され―例えばより抗井の減水量が多い時には、砂の浸入ログを生産プロセスの様々な段階(例えばベースライン停止から、井戸強化から、安定生産から、高い現水量/生産率から)を表示することができる。時間間隔は適切なデータを提供するのに十分な長さであり得るが、より長い時間はより大きなデータセットをもたらし得る。一実施形態によると、時間積分は約0.1秒~約10秒の間、または約0.5秒~約数分さらには数時間の間の時間期間にわたって発生し得る。
【0150】
毎秒計算される砂ログはメモリ170に格納されるかまたはコンピュータネットワークを介して転送され事象データベースに入力することができる。メモリ170に格納/転送されたデータはデータセットの深度のうちの1つまたはそれ以上について、測定されたスペクトル重心、測定されたスペクトル拡散、フィルタリングされたエネルギデータセット、および/または時間を通じてのRMSスペクトルエネルギを含むことができ毎秒格納することができる。このデータを使用して測定時間を示す同期されたタイムスタンプと共に光ファイバ162の長さに沿った各事象深度サンプル点で統合された高周波サンディングエネルギログを生成することができる。
【0151】
可視化サンディングログを生成する際にスペクトル適合性を示さない深度セクションのRMSスペクトルエネルギをゼロに設定することができる。これによりスペクトル重心およびスペクトル拡散を有するそれらの深度ポイントまたはゾーンを閾値よりも大きく観察することが容易になる。
図8は深度に対するRMSスペクトルエネルギを示すサンディングログの実施形態の例を表す。図は砂の浸入位置を有する位置を総RMSスペクトルエネルギにおけるピークとして示す。一実施形態では、帯域フィルタリングされたスペクトルエネルギデータ、抗井内の設備および生産ゾーンに対する容易な識別を可能にするために、積分時間間隔でサンディングゾーンを示す抗井完成図またはオープンホール石油物理学的ログに沿ってまたはそれ上で可視化することができる。また砂侵入ログは縦軸(x軸)に沿ったRMSスペクトルエネルギ、y軸に沿ったサンプルポイント深度およびz軸に沿った時間を持つ3Dプロットとして可視化することができる。この実施形態は、ほぼリアルタイムで帯状砂の寄与の可視化を可能にすることができるDASサンディングログを提供する。場合によっては、サンディング事象は連続的でなくてもよく、時間に基づくログは時間に依存する様式で砂の侵入の可視化を可能にしてもよい。
【0152】
したがって砂ログ上のRMSスペクトルエネルギとその可視化を用いて坑井に沿った異なる点での砂の侵入の相対的寄与を特定することができる。例えばどのゾーンが砂の侵入の最も大きな割合に寄与しているか、どのゾーンが砂の侵入の2番目に大きな部分に寄与しているか等を決定することが可能である。
【0153】
いくつかの実施形態では、坑井に入る砂の量の定性的測定は1つまたはそれ以上の位置で起こり得る。坑井に入る砂の定性的な量を測定するためにプロセッサは離散的な時間期間にわたる深度に対する強度またはパワーを表すパワーデータ中の1つまたはそれ以上のピークの積分(累積)大きさおよび品質係数および/または幅を決定するように構成することができる。クオリティファクタまたはハーフパワー帯域幅はピークのシャープネスを表す。各サンディングゾーンでのピークの大きさに加えて、品質係数は、低濃度の砂は高品質係数で低い振幅を生じ、高濃度の砂は相対的に低い品質係数で大きな強度のピークを生じ、中間濃度の砂は相対的に高い品質係数で大きな強度のピークを生じる砂の濃度の定性的な指示を提供する。品質係数、ピークの強度、および/またはピークの相対的な大きさを決定することによって種々のゾーンにおける砂の侵入の相対量を決定することができる。例えば質的な砂の侵入量は、「高、中、低」「大、並、小」または「3;2;1」または類似の用語を用いてピークの品質係数および/または幅に基づいて分類することができる。また各サンディングゾーンにわたるこの定性的な砂強度の推定値は、地表まで生産された砂を持ち上げるのに十分な速度で井戸が操業されている場合に地表で測定された砂とデータを相関させることによりpptb(千バレルあたりの部品)での砂の割り当てに比例して換算することができる。この表層砂の測定は実験室サンプルを採取することにより/他の定量的表層砂検知システムを使用することにより行うことができる。この情報は坑井に侵入する砂の量を減らすための浄化措置の計画に役立つ可能性がある。
【0154】
システムによって出力されるデータは一般に1つまたはそれ以上のサンディング位置または深度、および任意に特定された位置または深度の間に浸入する砂の相対量および/またはある位置で坑井に入る砂の定性的インジケータを示すことができる。生成された流体中に砂の侵入が観察される(表面砂検出器、目視観察などの方法によって決定されるように)が砂の侵入の位置および/または量は本明細書に記載される方法を使用して十分な明瞭さで特定することができない場合、音響データのより良い可視化を得るために様々な行動をとることができる。一実施形態によると、生産速度を一時的に増加させることができる。結果として得られたデータ解析は増産期間中のデータに対して行うことができる。一般に坑井内への流体流量の増加は砂の侵入位置での音響信号強度を増加させることが期待され得る。これは例えばスペクトル適合性を決定することを可能にするために増大した信号強度を提供することによって、1つまたはそれ以上の位置における砂の侵入をより明確に識別するために信号対雑音比を改善することを可能にし得る。また増加した信号出力に基づいて砂エネルギをより明確に計算することができた。関心ゾーンが特定されると砂の侵入位置と侵入量に基づいて生産レベルを調整することができる。経過に伴う砂生産量のあらゆる変化は本明細書に記載される技術を用いて監視することができ、作動条件はそれに応じて調節することができる(例えば動的調節、自動調節、手動調節など)。
【0155】
一部の実施形態では、生産速度の変化を使用して坑井に沿った1つまたはそれ以上の地点における砂の浸入位置および漏洩速度との生産率相関を求めることができる。一般に生産速度の低下は砂の侵入速度を減少させることが期待される。砂の侵入速度との生産率相関を決定することによって、井戸および/または1つまたはそれ以上のゾーンからの生産速度を調整して特定された位置での砂の侵入速度を低減することができる。例えば調整可能な生産スリーブまたはチョークを変更して1つまたはそれ以上の生産ゾーンにおける特定の砂侵入速度を調整することができる。どの生産ゾーンも調整可能でない場合はさまざまな作業手順を使用して特定のゾーンからの生産を変更できる。例えば種々の吸気スリーブを遮断することができ、帯状隔離装置を使用して特定のゾーンからの生産を遮断することができおよび/または砂の侵入量を減らすために他のいくつかの操作(例えば圧密手順など)を行うことができる。
【0156】
同一の解析手順は本明細書に記載される任意の事象特徴と共に使用可能である。例えば1つまたはそれ以上の事象の存在を決定することができる。いくつかの実施態様において、事象間の位置およびまたは区別は明確でないことがある。次いで抗井の1つまたはそれ以上の特性を変更して、音響信号の第2の測定が行われることを可能にすることができる。例えば生産速度を変更することができ、圧力を変更することができ、1つまたはそれ以上のゾーンを閉鎖することができ、または任意の他の適切な生産変更ができる。例えば生産速度を一時的に上げることができる。結果として得られたデータ解析は増産期間中のデータに対して行うことができる。一般に坑井内への流体流量の増加は、ガス漏洩位置、砂の漏洩位置、流体漏洩位置などの特定の事象位置において音響信号強度を増加させることが期待され得る。同様にそのような変化は、流体の漏洩、水圧による破砕、および類似の事象のような他の種類の事象において強度を変化させない場合がある。これは例えば増加した信号強度を提供して事象特徴を結果として生じる音響信号と比較することを可能にすることによって、1つまたはそれ以上の位置における1つの事象をより明確に識別するために信号対雑音比を改善することを可能にし得る。事象エネルギは増加した信号出力に基づいてより明確に計算することもできる。関心ゾーンが特定されると事象の位置と量に基づいて生産レベルを調整することができる。時間の経過に伴う事象の存在における任意の変化は本明細書に記載される技術を用いて監視することができ、動作条件はそれに応じて調整することができる(例えば力学的に調整される、自動的に調整される、手動で調整されるなど)。データ解析はシステム100に関して上述されたが、抗井内の事象(例えば抗井の長さに沿った砂の浸入位置、水圧破砕、ガス漏洩など)を特定する方法も任意の適切なシステムを使用して実施することができる。例えば
図1のシステムは識別方法を実行するために使用することができ、別の時間および/または場所に別のシステムを音響データと共に使用して事象識別方法を実行することができ、および/または方法を実行することができる装置で使用可能な電子形式でデータが得られる異なるタイプの音響センサから得られた音響データを使用して方法を実行することができる。
【0157】
さらなるデータ処理技術を用いて坑井内の事象を検出することもできる。いくつかの実施形態では、プロセッサ168はプログラムを実行することができ、このプログラムは複数の周波数帯域にわたって周波数帯域抽出(FBE)された音響データを提供するように、空間的およびスペクトル的に音響データセットをフィルタリングするようにプロセッサ168を構成することができる。これはRMSエネルギに関して記載した周波数帯に類似することができる。音響データセットは事前処理され、次いでデータ収集の毎秒のような所与の間隔で複数の周波数帯域に周波数フィルタリングされることができる。複数の周波数帯域にはさまざまな範囲を含めることができる。一例として、複数の周波数帯域は約5Hz~約50Hzの第1の帯域、約50Hz~約100Hzの第2の帯域、約100Hz~約500Hzの第3の帯域、約500Hz~約2000Hzの第4の帯域、約2000Hz~約5000Hzの第5の帯域などを含むことができるが、周波数帯域のための他の範囲も使用することができる。
【0158】
次いで得られたFBEデータを交差比較してFBEデータに対応する事象特徴を有するゾーンを識別することができる。例えば複数の周波数帯域の各々における音響振幅を比較してベースライン音響信号に対する応答を有する深度を決定することができる。ベースライン音響信号は井戸が閉ざされたとき(例えば流体を生成することなく)に捕捉される測定音響としてとることができる。いくつかの実施形態では、ベースライン音響信号は抗井の1つまたはそれ以上の部分にわたって時間平均された音響信号を含むことができる。平均を考慮する期間は平均全体にわたる事象の可能性を回避するのに十分な長さをとることができる。その後事象を含む音響信号と時間平均とのいかなる比較も関心のある事象周波数範囲に対応する少なくとも1つの周波数範囲において、増加した信号を示すはずである。
【0159】
砂侵入検知を例として使用すると砂侵入位置を検知するために追加のデータ処理技術を使用することもできる。次いで得られたFBEデータを交差させて代表的な砂ログを計算するために、砂侵入特徴を有するゾーンを識別することができる。例えば複数の周波数帯域のそれぞれにおける音響振幅を比較してベースライン音響信号に対して広帯域応答(例えばすべての帯域における応答が観察されるゾーン)を有する深度を決定することができる。ベースライン音響信号は井戸が閉ざされたとき(例えば流体を生成することなく)に、捕捉される測定音響としてとることができる。いくつかの実施形態ではベースライン音響信号は抗井の1つまたはそれ以上の部分にわたって時間平均された音響信号を含むことができる。時間平均への砂の流入を含む音響信号のいかなる比較も、次いで少なくとも1つの広帯域周波数範囲(例えば0.5kHz~約5kHzのような0.5kHzよりも大きい周波数を有する周波数範囲)において増加した信号を示すべきである。次いで広帯域応答を有するゾーンを識別することができ、識別されたゾーン内のより高い周波数内の音響RMSエネルギは前述の処理手順で行われたように砂雑音強度として登録することができる。本明細書に記載されるシステムに加えて、1つまたはそれ以上の事象の存在を決定する種々の方法も実施可能である。方法は本明細書に記載されるシステムのいずれかまたは任意の他の適切なシステムを使用して実施することができる。一実施形態によると、坑井内の事象を検出する方法はサンプルデータセットを得ることを含むことができる。サンプルデータセットは流体を含む坑井内から発生する音響信号のサンプルとすることができ、周波数スペクトルにわたる音響信号を表す。サンプルデータセットの複数の周波数領域特徴を決定することができ、複数のスペクトル特性は事象特徴を対応する閾値および/または範囲と比較することができる。複数の周波数領域特徴が事象特徴と整合する場合、少なくとも1つのスペクトル特性が事象特徴と整合するという決定に基づいて抗井内の事象の存在を決定することができる。
【0160】
事象特徴は地下から坑井内の地下層へのガス漏洩、坑井形成部から坑井へのガス漏洩、坑井への砂の浸入、坑井内の液体漏洩、坑井内の管状部内の砂輸送、坑井内の管状部の砂栓を超える流体流、ケーシング背後の流体流、地下形成部内の自己誘起水圧破壊、坑井シールを超える流体漏洩、または岩石破壊伝播事象など、本明細書に記載されるもののいずれかを含むことができる。
【0161】
一実施形態によると、本方法は砂侵入特徴を用いて坑井内への砂流入の存在を決定するために使用することができる。サンプルデータセットはサンプルデータセットが約0.5kHzよりも大きい音響周波数を含んでいることを決定するために分析することができ、スペクトル特性はサンプルデータセットのスペクトル重心とサンプルデータセットのスペクトル拡散とを含んでもよい。砂侵入特徴はスペクトル重心閾値およびスペクトル拡散閾値を含むことができる。少なくとも1つのスペクトル特性が事象特徴と整合するという判定はスペクトル重心がスペクトル重心閾値よりも大きいことを判定し、スペクトル拡散がスペクトル拡散閾値よりも大きいことを判定し、少なくとも1つのスペクトル特性が事象特徴と整合することを判定することに基づいて抗井内への砂の流入の存在を判定することによって行うことができる。
【0162】
実施形態において、本方法は坑井内の漏洩経路を通る形成部からのガス漏洩を示すガス漏洩特徴を用いてガス漏洩の存在を決定するために使用することができる。周波数領域特徴は本明細書に記載される複数の周波数領域特徴(例えばスペクトル拡散、スペクトルロールオフ、スペクトル歪度、二乗平均平方根(RMS)バンドエネルギ(または正常化サブバンドエネルギ/バンドエネルギ比)、ラウドネスまたは総RMSエネルギ、スペクトルフラックスおよび/またはスペクトル自己相関関数)を含んでもよい。ガス漏洩の存在の判定は複数の周波数領域特徴を閾値および/または範囲と比較し、坑井内の環状部へのガス漏洩が発生したかどうかを判定することによって行うことができる。
【0163】
一実施形態によると、本方法は複数の周波数領域特徴についての閾値および/または範囲を含むガス漏洩特徴を使用して抗井内へのガス漏洩の存在を決定するために使用可能である。周波数領域特徴は本明細書に記載される複数の周波数領域特徴(例えばスペクトル拡散、スペクトルロールオフ、スペクトル歪度、二乗平均平方根(RMS)バンドエネルギ(または正常化サブバンドエネルギ/バンドエネルギ比)、ラウドネスまたは総RMSエネルギ、スペクトルフラックスおよび/またはスペクトル自己相関関数)を含んでもよい。ガス漏洩の存在の判定は音響サンプル中の複数の周波数領域特徴値を閾値および/または範囲と比較し、抗井中の環状部へのガス漏洩が発生したかどうかを判定することによって行うことができる。
【0164】
一実施形態では、本方法は複数の周波数領域特徴についての閾値および/または範囲を含む液体漏洩特徴を使用して、抗井内への液体漏洩の存在を決定するために使用され得る。周波数領域特徴は本明細書に記載される複数の周波数領域特徴(例えばスペクトル拡散、スペクトルロールオフ、スペクトル歪度、二乗平均平方根(RMS)バンドエネルギ(または正常化サブバンドエネルギ/バンドエネルギ比)、ラウドネスまたは総RMSエネルギ、スペクトルフラックスおよび/またはスペクトル自己相関関数)を含んでもよい。液体漏洩特徴は坑井内への形成部からの液体漏洩を示すことができる。液体漏洩の存在の判定は音響サンプル中の複数の周波数領域特徴値を閾値および/または範囲と比較し、液体漏洩が生じたかどうかを判定することによって行うことができる。
【0165】
一実施形態では、本方法は複数の周波数領域特徴についての閾値および/または範囲を含む砂輸送特徴を用いて輸送流体中に坑井内で輸送される砂の存在を決定するために使用され得る。周波数領域特徴は本明細書に記載される複数の周波数領域特徴(例えばスペクトル拡散、スペクトルロールオフ、スペクトル歪度、二乗平均平方根(RMS)バンドエネルギ(または正常化サブバンドエネルギ/バンドエネルギ比)、ラウドネスまたは総RMSエネルギ、スペクトルフラックス、および/またはスペクトル自己相関関数)を含んでもよい。砂輸送特徴は管状内で輸送されている砂を示すことができる。砂輸送の存在の判定は音響サンプル中の複数の周波数領域特徴値を閾値および/または範囲と比較し、砂輸送が生じたかどうかを判定することによって行うことができる。
【0166】
実施形態において、本方法は砂制限を通過して流れる流体の存在を決定するために使用することができる。複数の周波数領域特徴に対する閾値および/または範囲を含む砂制限特徴を使用すること。周波数領域特徴は本明細書に記載される複数の周波数領域特徴(例えばスペクトル拡散、スペクトルロールオフ、スペクトル歪度、二乗平均平方根(RMS)バンドエネルギ(または正常化サブバンドエネルギ/バンドエネルギ比)、ラウドネスまたは総RMSエネルギ、スペクトルフラックスおよび/またはスペクトル自己相関関数)を含んでもよい。砂制限の存在の判定は音響サンプル中の複数の周波数領域特徴値を閾値および/または範囲と比較し、砂制限が存在するかどうかを判定することによって行うことができる。
【0167】
一実施形態では、本方法は複数の周波数領域特徴についての閾値および/または範囲を含むケーシング流体流特徴を使用して、ケーシングと形成部との間を流れる流体の存在を決定するために使用され得る。周波数領域特徴は本明細書に記載される複数の周波数領域特徴(例えばスペクトル拡散、スペクトルロールオフ、スペクトル歪度、二乗平均平方根(RMS)バンドエネルギ(または正常化サブバンドエネルギ/バンドエネルギ比)、ラウドネスまたは総RMSエネルギ、スペクトルフラックス、および/またはスペクトル自己相関関数)を含んでもよい。液体漏洩特徴は坑井内への形成部からの液体漏洩を示すことができる。ケーシングの背後の流体流の存在の判定は音響サンプル内の複数の周波数領域特徴値を閾値および/または範囲と比較し、ケーシングの背後の流体流が生じているかどうかを判定することによって行うことができる。
【0168】
一実施形態では、本方法は複数の周波数領域特徴についての閾値および/または範囲を含む自己誘起水圧破砕特徴を用いて、形成部内での自己誘発水圧破砕の発生を判定するために使用することができる。周波数領域特徴は本明細書に記載される複数の周波数領域特徴(例えばスペクトル拡散、スペクトルロールオフ、スペクトル歪度、二乗平均平方根(RMS)バンドエネルギ(または正常化サブバンドエネルギ/バンドエネルギ比)、ラウドネスまたは総RMSエネルギ、スペクトルフラックス、および/またはスペクトル自己相関関数)を含んでもよい。自己誘起水圧破砕特徴は形成部内での自己誘起破砕の形成部を示すことができる。自己誘起水圧破壊の存在の判定は音響サンプル中の複数の周波数領域特徴値を閾値および/または範囲と比較し、自己誘起水圧破壊が生じたかどうかを判定することによって行うことができる。
【0169】
一実施形態では、本方法は複数の周波数領域特徴についての閾値および/または範囲を含む流体漏洩特徴を使用して、制限を過ぎて漏洩する流体の存在を判定するために使用され得る。周波数領域特徴は本明細書に記載される複数の周波数領域特徴(例えばスペクトル拡散、スペクトルロールオフ、スペクトル歪度、二乗平均平方根(RMS)バンドエネルギ(または正常化サブバンドエネルギ/バンドエネルギ比)、ラウドネスまたは総RMSエネルギ、スペクトルフラックス、および/またはスペクトル自己相関関数)を含んでもよい。制限を過ぎて漏洩する流体の存在の判定は音響サンプル内の複数の周波数領域特徴値を閾値および/または範囲と比較し、制限を過ぎて流体漏洩が発生したかどうかを判定することによって行うことができる。
【0170】
一実施形態では、本方法は複数の周波数領域特徴についての閾値および/または範囲を含む破砕特徴を使用して、形成部内での破砕の発生を判定するために使用され得る。周波数領域特徴は本明細書に記載される複数の周波数領域特徴(例えばスペクトル拡散、スペクトルロールオフ、スペクトル歪度、二乗平均平方根(RMS)バンドエネルギ(または正常化サブバンドエネルギ/バンドエネルギ比)、ラウドネスまたは総RMSエネルギ、スペクトルフラックス、および/またはスペクトル自己相関関数)を含んでもよい。破壊の存在の判定は音響サンプル中の複数の周波数領域特徴値を閾値および/または範囲と比較し、破壊が発生したかどうかを判定することによって行うことができる。
【0171】
本明細書に記載される他の方法に加えて、坑井内の砂の浸入の存在を決定する方法は坑井内から音響信号を得ることから開始することができる。坑井は砂のための輸送流体として機能する流体を含むことができる。いくつかの実施形態では、砂を運ぶ流体が生産管として機能する坑井または坑井管内を流れるようにおよび/または流体が形成部から坑井に漏洩することができるように、音響信号が得られる間、井戸から流体を生成することができる。
【0172】
音響信号は坑井の全てまたは坑井の一部分のみについてのデータを含むことができる。音響サンプルデータセットは音響信号から得ることができる。一実施形態によると、サンプルデータセットは定義された深度範囲または点に対する音響信号の一部を表してもよい。一部の実施形態では、音響信号は時間領域で得ることができる。例えば音響信号は収集時間に対する音響振幅の形成部であってもよい。サンプルデータセットはまた時間領域内にあってもよく、フーリエ変換のような適当な変換を用いて周波数領域に変換されてもよい。いくつかの実施形態では、サンプルデータセットは音響信号がサンプルデータセットを収集する前に変換され得るように周波数領域で収集され得る。サンプルデータセットは本明細書に記載される方法のいずれかを使用して得ることができるが、サンプルデータセットは他の装置からそれを受け取ることによっても得ることができる。例えば別個の抽出または処理ステップを使用して1つまたはそれ以上のサンプルデータセットを調製し、本明細書に開示される処理方法またはシステムのいずれかを使用して別個の処理のためにそれらを送信することができる。
【0173】
次いで様々な適合性チェックを用いてサンプルデータセットのスペクトル適合性を得ることができる。一実施形態によると、サンプルデータセットのスペクトル重心を決定しスペクトル重心閾値と比較することができる。同様にサンプルデータセットのスペクトル拡散を決定しスペクトル拡散閾値と比較することができる。スペクトル重心またはスペクトル拡散のいずれかが対応する閾値を超えない場合、砂侵入はサンプルデータセットによって表される深度では発生しない可能性がある。実施形態では、スペクトル拡散およびスペクトル重心は連続的に適用可能な閾値と判定して比較することができ、いずれか一方が対応する閾値を満たしていない場合は他方のスペクトル特性が判定されないようにプロセスを停止することができる。スペクトル拡散およびスペクトル重心の両方が適用可能な閾値を満たすかまたは超える場合、流体中の砂の存在(例えば坑井に入る流体中の)は発生していると判断することができる。
【0174】
全体の方法および対応するステップは
図9に示す流れ図として概略的に図示されている。
図9に示すように坑井内への砂の侵入を検出する方法600の実施形態は、ステップ602に示すように、例えば光ファイバ162から音響信号を収集、検出、または受信するDASシステムなどの音響センサから始めることができる。音響信号は本明細書に記載されるように坑井内で生成することができる。ステップ604に示されるように音響センサからの生の光データはセンサによって受信され、生成されて、音響信号を生成することができる。DASシステムのような種々の音響センサによって生成されるデータ速度は大きくすることができる。例えばDASシステムは0.5から約2テラバイト/時のオーダーでデータを生成することができる。この生データは任意にステップ603のメモリに格納することができる。
【0175】
次いでステップ605において生データを任意で事前処理することができる。
図9に示すように前処理は多数の任意のステップを用いて行うことができる。例えばステップ606において空間サンプル点フィルタを適用することができる。このフィルタは抗井中の所望の深度に対応する音響信号の一部を得るためにフィルタを使用する。光ファイバに送られた光パルスが後方散乱光として戻る時間は、移動距離、従って抗井内の深度に対応することができるので、音響データを処理して所望の深度または深度範囲を示すサンプルを得ることができる。これにより坑井内の特定の位置をさらなる分析のために隔離することが可能になり得る。前処理ステップはまた空間的中央値フィルタリングまたは空間的平均化技術を介して特定の深度におけるスプリアス逆反射型雑音の除去を含み得る。
【0176】
ステップ607ではフィルタリングされたデータはフーリエ変換(例えば短時間フーリエ変換または離散フーリエ変換を介する)などの変換を使用して、時間領域から周波数領域に変換され得る。空間フィルタを適用した後にデータを変換することにより、変換で処理されるデータ量を減らすことができる。
【0177】
ステップ608では信号品質を改善するためにデータに対して雑音正常化ルーチンを実行することができる。このステップは使用される収集装置のタイプ、ならびに光源、センサ、および他の処理ルーチンの構成に応じて変えることができる。
図9に特定の順序で示されているが前処理ルーチン内のステップの順序を変えることができ、ステップ606、607、608の任意の順序を使用することができる。結果として生じるサンプルデータセットは生データセットと比較して減少したデータサイズを有し得る。一実施形態によると、前処理後のサンプルデータファイルサイズと前処理前の生データファイルサイズとの比率は約0.05~約0.5、または0.1付近であり、データが空間的/時間的に平均化されている場合にはそれ以下とすることができる。
【0178】
音響信号が事前処理された後サンプルデータセットはステップ610でスペクトル適合性チェックプロセスまたはルーチンで使用することができる。スペクトル適合プロセスはスペクトル重心またはスペクトル拡散の少なくとも1つを最初に決定することを含むことができる。
図9に示すようにスペクトル適合性チェックにおける第1のステップは、サンプルデータセットのスペクトル重心を決定することを含むことができる。次いで比較ステップ614においてスペクトル重心をスペクトル重心閾値と比較することができる。スペクトル重心がスペクトル重心閾値を満たすかまたはそれよりも大きい場合、プロセス、次の比較ステップ618に進むことができる。ステップ618でサンプルデータセットに対するスペクトル拡散を決定することができる。次いでステップ618においてスペクトル拡散はスペクトル拡散閾値と比較され得る。スペクトル拡散がスペクトル拡散閾値を満たすかまたはそれよりも大きい場合プロセスは次のステップ622に進むことができる。サンプルデータセットがスペクトル拡散と対応する閾値を上回るスペクトル重心との両方を有する場合、サンプルデータセットによって表される深度における音響データは砂の侵入を表すと判断することができる。これは深度位置での流体中の砂の存在並びに深度または深度範囲で井戸および/または抗井管に入る砂の存在を含むことができる。したがってスペクトル適合プロセスはそれ自体で井戸内の砂の侵入の存在を識別するために使用することができる。
【0179】
ステップ622に移る前にステップ614において決定されたスペクトル重心とスペクトル重心閾値との間の比較、またはステップ618において決定されたスペクトル拡散とスペクトル拡散閾値との間の比較のいずれかがいずれかの特性が対応する閾値を下回る結果となった場合、プロセスはステップ626においてゼロに設定されたサンプルデータのためのエネルギ値を設定してから、ステップ628においてプロセスがデータ統合ルーチンに進むことを可能にしてもよいことに留意されたい。スペクトル適合性チェックは任意の順序で行うことができ、連続比較はスペクトル適合プロセスまたはルーチンの残りの要素を通過する必要なしに、スペクトル重心またはスペクトル拡散のいずれかの最初の比較に失敗したそれらのサンプルデータセットが後処理ルーチンに進むことを可能にし得る。
【0180】
スペクトル適合プロセスまたはルーチン610に戻ると、サンプルデータセットは任意にサンプルデータセットによって表される深度または深度範囲で抗井に入る砂の相対量の決定を可能にするためにさらに処理され得る。ステップ622ではサンプルデータセットをフィルタリングして、音響データの高周波、広帯域成分を分離することができる。サンプルデータセットは第2のデータセットを生成するためにあらかじめ定義された周波数範囲内でフィルタリングすることができる。一実施形態によると、サンプルデータセットは本明細書に記載されるように帯域幅でフィルタリングされ得る。例えばサンプルデータセットは約0.5kHz~約10kHzまたは約2kHz~約5kHzの周波数帯域幅でフィルタリングすることができる。ステップ622で適用される周波数フィルタは流体流および他の潜在的音響源に起因する低周波数部分を除去しながら砂侵入の音響特徴を隔離してもよい。次いでステップ624において、得られた第2のデータセットを処理して第2のデータセットのスペクトルエネルギを計算することができる。一実施形態によると、スペクトルエネルギは第2のデータセットの二乗平均スペクトルエネルギとして計算することができる。スペクトルエネルギは第2のデータセットによって表される深度における時間期間にわたる音響信号のパワーまたはエネルギを表すことができる。次いで決定されたスペクトルエネルギの値は音響信号の収集時の深度に関連するものとしてメモリに格納することができる。
【0181】
いくつかの実施形態では、スペクトル適合プロセスまたはルーチン610における処理は、第2のデータセットにおける砂の浸入ピークの大きさおよび品質係数を決定することを含むことができる。次いで品質係数を使用してピークの位置における砂の浸入の量または速度を決定または近似することができる。この情報は事象データログの一部として受け渡し保管することができる。
【0182】
次いで得られた決定はステップ628においてデータ積分処理に渡すことができる。一般に処理ステップはサンプルデータセットによって表される深度における砂の浸入の存在を決定する。坑井の長さに沿った分析を得るためにデータ前処理ステップとスペクトル適合性チェックとの間の処理ステップを、坑井に沿った様々な深度を表す複数のサンプルデータセットについて繰り返すことができる。データが分析されると得られた情報は所与の期間にわたって坑井の長さに沿った結果を表す砂ログに統合されるためにデータ統合プロセス628に渡すことができる。坑井の長さに沿ってデータが分析されると、このプロセスは坑井の長さに沿ったデータをその後の時間にわたって分析するために、再び開始することができる。次いでこのプロセスを必要に応じて繰り返し坑井内への砂の浸入を経時的に追跡することができる。
【0183】
データ統合プロセスでは各分析からのデータを受信し、ステップ630で事象データベースを更新するために使用することができる。データを別のデータベースに送信したり、事象データベースを処理場所からリモートに配置したりすることもできる。次いでデータはほぼリアルタイムでまたは後の任意の時間でデータ統合および可視化のために更に分析することができる。データは、スペクトル重心、スペクトル拡散、スペクトルエネルギ(スペクトル重心とスペクトル拡散の両方が対応する閾値を満たすかまたは超えると仮定する)、またはスペクトル重心、スペクトル拡散、または両方が対応する閾値を下回る場合のスペクトルエネルギに対するゼロ値、サンプルデータセットに関連する深度、音響信号収集に関連する時間、またはそれらの任意の組合せを含むことができる。次いでステップ632において複数の分析からのデータを事象データベースまたはログに格納することができる。
【0184】
スペクトル適合および格納ステップにおける処理ステップは、サンプルデータセットに対して格納されるデータの量を減らすために使用することができる。一実施形態では、データ統合プロセスにおける事象データベースに格納されるデータはサンプルデータセットファイルサイズと格納されたデータファイルサイズとの比率が約500:1から約4,000:1の間であり得るように、ファイルサイズを縮小してもよい。前処理ステップ605におけるファイル縮小を考慮すると、全体的なファイルサイズの縮小は約5,000:1から約40,000:1の間、または約10,000:1から約30,000:1の間のデータ統合プロセスにおいて格納されたデータのデータファイルサイズに対する生の音響データファイルサイズの比率をもたらすことができる。従って本明細書に開示されるプロセスは好都合には坑井から得られた生の音響データの量を減らして、砂侵入位置の有用で管理可能な表現、並びに随意に、砂侵入位置での砂侵入の相対量を生成する。
【0185】
データ統合プロセスに格納されたデータはデータ可視化プロセス640に渡すことができる。このプロセスでは生産の異なる時間/段階を通して砂の侵入位置および/または量の可視化および/または表示を可能にするために多数のログを作成することができる。一実施形態では、任意としてデータ統合プロセス628において統合することができるが、統合する必要がないデータはデータ視覚化プロセス640に渡すことができる。ステップ642ではサンプルデータセットについて計算されたスペクトルエネルギを分析してスペクトルエネルギ値がゼロより大きいか否かを判断することができる。この例ではゼロまたはヌル値を使用して砂の浸入が深度で発生していない(または少なくとも検出可能なレベルでは発生していない)ことを示すことができる。ゼロ値が検出されるとプロセスはステップ646に進むことができ、ここでゼロが井戸の概略図または表示に沿って入力され砂侵入がサンプルデータセットによって表される深度で検出されないことを示す。スペクトルエネルギ値がゼロでない場合プロセスはステップ644に進むことができる。ステップ644ではスペクトルエネルギの視覚的表現を井戸の概略図または表示の対応する深度に関連付けることができる。視覚的表現はステップ648で表示することができる。ステップ644またはステップ646のいずれかからステップ649でプロセスを繰り返して、後続のデータセットまたは統合ログ内の別のエントリを処理することができる。一旦統合されたログ内の全てのデータセットおよび/またはエントリが処理されると、砂侵入位置および坑井の長さに沿った相対的な砂侵入速度または量の完全な視覚的表示を所与の時間にわたって提示することができる。このプロセスを複数回にわたって繰り返して抗井の長さに沿った砂の浸入のリアルタイムまたはほぼリアルタイムの表示を提供し、表示することができる。
【0186】
可視化プロセス640は砂侵入ログまたは「砂ログ」の生成および表示装置も含むことができる。砂ログは一般にある軸上の砂の侵入によって生じる全音響パワーまたはスペクトルエネルギと別の軸上のサンプルデータセットによって表される深度を表す。このログデータ統合プロセス628からの統合ログデータを使用して収集することができ、および/またはステップ650で個別のデータセットを繰り返し分析して統合砂ログを作成することができる。この実施形態では、砂の侵入が検出されない位置はゼロに設定されたスペクトルエネルギを有することができる。ステップ622では積分された砂ログをディスプレイ上に表示して砂の浸入を有する位置または深度の表示を提供することができる。複数の砂ログの異なる音響データ収集時間のために作成することができ、これは、複数の砂ログを変化する生産設定に対してリアルタイムまたはほぼリアルタイムで提供し表示するためである。
【0187】
以上のように砂の侵入箇所または侵入していない箇所の特定に基づき様々な措置を講じることができる。いくつかの実施形態では、砂の侵入の識別方法を実行することができ、砂の侵入位置を特定せず、またはある量の砂の侵入を抗井から生成されている流体で観察されたものよりも下に特定することができる。例えば生成された流体内で砂が同定されるが、砂の侵入位置が同定されていない場合、音響信号は検知および位置同定を可能にするのに十分なレベルで砂の音響を検知していないと判断することができる。この場合坑井からの流体の生産速度を一時的に増加させることができる。得られたデータ解析は流体が生産されている間に増加した生産期間の間にデータに対して実行することができる。一般に坑井内への流体流量の増加は砂の侵入位置での音響信号強度を増加させることが期待され得る。これは例えばスペクトル適合性を決定することを可能にするためにより大きな信号強度を提供することによって、1つまたはそれ以上の位置における砂の侵入をより明確に識別するために信号対雑音比を改善することを可能にし得る。また増加した信号出力に基づいて砂エネルギをより明確に計算することができた。関心ゾーンが特定されると砂の侵入位置と侵入量に基づいて生産レベルを調整することができる。
【0188】
本明細書に開示されるシステムおよび方法のいずれも
図1の取得装置160のようなプロセッサを備えるコンピュータまたは他の装置上で行うことができる。
図10は収集装置またはその任意の部分のような本明細書に開示される1つまたはそれ以上の実施形態を実装するのに適したコンピュータシステム780を示す。コンピュータシステム780は補助格納装置784、読取り専用メモリ(ROM)786、ランダムアクセスメモリ(RAM)788、入力/出力(I/O)装置790およびネットワーク接続装置792を含むメモリ装置と通信するプロセッサ782(中央処理装置またはCPUと呼ばれる場合もある)を含む。プロセッサ782は1つまたはそれ以上のCPUチップとして実装可能である。
【0189】
コンピュータシステム780に実行可能な命令をプログラミングおよび/またはロードすることによってCPU782、RAM788、およびROM786のうちの少なくとも1つが変更され、コンピュータシステム780を部分的に本開示によって教示される新規な機能性を有する特定の機械または装置に変換することが理解される。実行可能なソフトウェアをコンピュータにロードすることによって実現できる機能性は、周知の設計ルールによってハードウェア実装に変換できることは電気工学およびソフトウェアエンジニアリング当業者にとって基本である。ソフトウェアとハードウェアの概念を実装するかどうかの決定は、ソフトウェア領域からハードウェア領域への翻訳に関わる問題ではなく、設計の安定性と製造される単位数を考慮することが一般的である。一般的に頻繁に変更を受ける設計はハードウェア実装を再スピンする方がソフトウェア設計を再スピンするよりも高価であるため、ソフトウェアで実装する方が好ましい場合がある。一般に大量に生産されるであろう安定した設計は例えば特定用途向け集積回路(ASIC)でハードウェアに実装されることが好ましい例がある。というのは大規模な生産ではハードウェア実装はソフトウェア実装よりも安価であるからである。しばしば設計はソフトウェア形式で開発され、テストされ、よく知られた設計ルールによってソフトウェアの命令をハード配線する特定用途向け集積回路における同等のハードウェア実装に後で変換され得る。新しいASICによって制御される機械が特定の機械または装置であるのと同じ方法で同様にプログラムされおよび/または実行可能な命令がロードされたコンピュータは特定の機械または装置とみなすことができる。
【0190】
さらにシステム780の電源投入またはブート後にCPU782はコンピュータプログラムまたはアプリケーションを実行してもよい。例えばCPU782はROM786に格納されたソフトウェアやファームウェアを実行したりRAM788に格納したりすることができる。場合によってはブート時および/またはアプリケーションの開始時にCPU782はアプリケーションまたはアプリケーションの一部を補助格納装置784からRAM788またはCPU782自体内のメモリ空間にコピーし、CPU782は次いでアプリケーションが構成される命令を実行してもよい。場合によっては、CPU782はアプリケーションまたはアプリケーションの一部を、ネットワーク接続デバイス792を介してまたはI/Oデバイス790を介してアクセスされるメモリからRAM788またはCPU782内のメモリ空間にコピーすることができ、CPU782は次いでアプリケーションが構成される命令を実行することができる。実行中にアプリケーションは命令をCPU782にロードしてもよく、例えばアプリケーションの命令のいくつかをCPU782のキャッシュにロードしてもよい。状況によっては実行されるアプリケーションは何らかのことを行うようにCPU782を構成する、例えばCPU782を構成してサブジェクトアプリケーションによって促進される機能を実行する、と言うことができる。このようにCPU782がアプリケーションによって構成されると、CPU782は特定目的コンピュータまたは特定目的機器となる。
【0191】
補助格納装置784は典型的には1つまたはそれ以上のディスクドライブまたはテープドライブから構成され、データの不揮発性格納のためおよびRAM788が全ての作動データを保持するのに十分でない場合にオーバーフローデータ格納装置として使用される。補助格納装置784はそのようなプログラムが実行のために選択されたときにRAM788にロードされるプログラムを格納するために使用することができる。ROM786はプログラム実行中に読み出される命令およびおそらくデータを格納するために使用される。ROM786は不揮発性メモリ装置であり、典型的には補助格納装置784のより大きなメモリ容量に比較して小さなメモリ容量を有する。RAM788は揮発性データを格納しおそらく命令を格納するために使用される。ROM786およびRAM788の両方へのアクセスは、典型的には補助格納装置784へのアクセスよりも高速である。補助格納装置784、RAM788および/またはROM786は、ある状況ではコンピュータ読取り可能格納媒体および/または一時的でないコンピュータ読取り可能媒体と呼ばれることがある。
【0192】
入出力装置790は、プリンタ、ビデオモニタ、液晶ディスプレイ(LCD)、タッチスクリーンディスプレイ、キーボード、キーパッド、スイッチ、ダイヤル、マウス、トラックボール、音声認識装置、カードリーダ、紙テープリーダ、または他の周知の入力装置を含んでもよい。
【0193】
ネットワーク接続装置792は、モデム、モデムバンク、イーサネット(登録商標)カード、ユニバーサルシリアルバスインターフェース(UBS)カード、シリアルインターフェース、トークンリングカード、ファイバ分散データインターフェースカード(FDDI)、無線ローカルエリアネットワーク(WLAN)カード、無線トランシーバカードの形成部をとり得、これらはコード分割多元接続(CDMA)、移動通信用グローバルシステム(GSM)、長期進化(LTE)、世界的相互運用性マイクロ波アクセス(WiMAX)、近距離無線通信(NFC)、無線周波数アイデンティティ(RFID)および/または他の無線インターフェース無線トランシーバカードおよび他の周知のネットワーク装置のようなプロトコルを使用して無線通信を促進する。これらのネットワーク接続デバイス792はプロセッサ782がインターネットまたは1つまたはそれ以上のイントラネットと通信することを可能にする。このようなネットワーク接続ではプロセッサ782は上述の方法ステップを実行する過程でネットワークから情報を受け取るか、またはネットワークに(例えば事象データベースに)情報を出力することができると考えられる。プロセッサ782を使用して実行される命令のシーケンスとしてしばしば表されるそのような情報は、例えば搬送波に具現化されたコンピュータデータ信号の形成部でネットワークから受信されネットワークに出力されてもよい。
【0194】
このような情報はプロセッサ782を使用して実行されるデータまたは命令を含み得るが、例えば搬送波に具現化されたコンピュータデータベースバンド信号、または信号の形成部でネットワークから受信されネットワークに出力されてもよい。搬送波に埋め込まれたベースバンド信号または信号または現在使用されているまたはこれから開発される他のタイプの信号は、当業者に周知の幾つかの方法に従って生成することができる。搬送波に埋め込まれたベースバンド信号および/または信号は遷移信号と呼ばれることがある。
【0195】
プロセッサ782は、命令、コード、コンピュータプログラム、ハードディスクからアクセスするスクリプト、フロッピーディスク、光ディスク(これらの種々のディスクベースのシステムは全て補助格納装置784と考えることができる)、フラッシュドライブ、ROM786、RAM788、またはネットワーク接続装置792を実行する。1つのプロセッサ782のみが示されているが複数のプロセッサが存在してもよい。従って命令はプロセッサによって実行されるように論じることができるが、命令は1つまたは複数のプロセッサによって同時に、連続的に、または別の方法で実行することができる。補助格納装置784、例えばハードドライブ、フロッピーディスク、光ディスクおよび/または他の装置からアクセスされ得る命令、コード、コンピュータプログラム、スクリプトおよび/またはデータ、ROM786、および/またはRAM788は状況によっては非一時的命令および/または非一時的情報と呼ばれる場合がある。
【0196】
一実施形態では、コンピュータシステム780はタスクを実行するために協働する互いに通信する2つ以上のコンピュータを含むことができる。例えば限定としてではないが、アプリケーションはアプリケーションの命令の同時処理および/または並列処理を可能にするような方法で分割されてもよい。あるいはアプリケーションによって処理されるデータは2つ以上のコンピュータによってデータセットの異なる部分の同時処理および/または並列処理を可能にするような方法で分割されてもよい。一実施形態では、コンピュータシステム780は仮想化ソフトウェアを使用してコンピュータシステム780内のコンピュータの数に直接結合されていない数多くのサーバの機能を提供することができる。たとえば仮想化ソフトウェアは物理的な4台のコンピュータ上に20台の仮想サーバを提供できる。一実施形態によると、上記で開示した機能性はアプリケーションおよび/またはアプリケーションをクラウドコンピューティング環境で実行することによって提供することができる。クラウドコンピューティングは動的に拡張的なコンピューティングリソースを使用してネットワーク接続を介してコンピューティングサービスを提供することを含むことができる。クラウドコンピューティングは少なくとも部分的には仮想化ソフトウェアによってサポートされる可能性がある。クラウドコンピューティング環境は企業によって確立されおよび/または第三者のプロバイダから必要に応じて採用されることがある。クラウドコンピューティング環境の中には企業が所有または運営するクラウドコンピューティングリソースと第三者プロバイダが採用および/またはリースしたりしたクラウドコンピューティングリソースを含むものがある。
【0197】
一実施形態によると、上述した機能の一部または全部がコンピュータプログラム製品として提供されてもよい。コンピュータプログラム製品は上記で開示した機能を実施するために実施されるコンピュータ使用可能なプログラムコードを有する、1つまたはそれ以上のコンピュータ読み取り可能な格納媒体を含むことができる。コンピュータプログラム製品はデータ構造、実行可能命令および他のコンピュータ使用可能プログラムコードを含むことができる。コンピュータプログラム製品は取り外し可能なコンピュータ格納媒体および/または固定されたコンピュータ格納媒体で実施することができる。取り外し可能なコンピュータ可読格納媒体は限定されるものではないが、紙テープ、磁気テープ、磁気ディスク、光ディスク、固体メモリチップ、例えばアナログ磁気テープ、コンパクトディスクリードオンリーメモリディスク(CD―ROM)、フロッピーディスク、ジャンプドライブ、デジタルカード、マルチメディアカードその他を含むことができる。コンピュータプログラム製品はコンピュータシステム780によってコンピュータプログラム製品の内容の少なくとも一部を補助格納装置784へ、ROM786へ、RAM788へおよび/またはコンピュータシステム780の他の不揮発性メモリおよび揮発性メモリへロードするのに適している。プロセッサ782は、例えばコンピュータシステム780のディスクドライブ周辺装置に挿入されたCD-ROMディスクから読み出すことによって、コンピュータプログラム製品に直接アクセスすることによって、実行可能命令および/またはデータ構造を部分的に処理してもよい。あるいはプロセッサ782は、例えばネットワーク接続装置792を介して遠隔サーバから実行可能命令および/またはデータ構造をダウンロードすることによって、コンピュータプログラム製品に遠隔アクセスすることによって、実行可能命令および/またはデータ構造を処理してもよい。コンピュータプログラム製品は、データ、データ構造、ファイルおよび/または実行可能命令を補助格納装置784、ROM786、RAM788および/またはコンピュータシステム780の他の不揮発性メモリおよび揮発性メモリにロードおよび/またはコピーすることを促進する命令を含むことができる。
【0198】
状況によっては補助格納装置784、ROM786およびRAM788は一時的でないコンピュータ可読媒体またはコンピュータ可読格納媒体と呼ばれる場合がある。同様にRAM788のダイナミックRAMの実施形態は、ダイナミックRAMが電力を受け取りその設計に従って動作される間、例えばコンピュータシステム780に電源が入り動作可能である期間の間、ダイナミックRAMはそれに書き込まれる情報を格納するという点で非遷移型コンピュータ読み取り可能媒体と称されてもよい。同様にプロセッサ782は内部RAM、内部ROM、キャッシュメモリ、および/または非一時的コンピュータ読取可能媒体またはコンピュータ読取可能格納媒体として文脈で言及され得る他の内部非一時的格納ブロック、セクション、または構成要素を含み得る。
【0199】
種々のシステムおよび方法を説明したが開示の特定の態様は以下を含むことができるが、これらに限定されない。
【0200】
第1の態様では、事象を識別するために音響データを処理するシステムであって、プロセッサおよびメモリを含む受信機ユニットを含み、受信機ユニットはセンサ経路に沿ってまたはセンサ領域にわたって配置されたセンサから信号を受信するように構成され、処理アプリケーションはメモリに格納され、処理アプリケーションがプロセッサ上で実行されると、プロセッサはセンサからの信号を受信するように設定され、ここで信号はセンサ経路に沿ってまたはセンサ領域の一部にわたって1つまたはそれ以上の長さで受信された音響信号の表示を含み、信号は周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、周波数スペクトルにわたる信号の複数の周波数領域特徴を決定し、複数の周波数領域特徴を含む出力を生成するシステム。
【0201】
第2の態様では、音響データを処理するためのシステムであって、プロセッサおよびメモリを含む受信器ユニットを含み、受信器ユニットはセンサ経路またはセンサ領域が抗井を通って延在しないようにし、センサ経路またはセンサ領域に沿って配置されたセンサから信号を受信するように構成され、処理アプリケーションはメモリに格納され、処理アプリケーションがプロセッサ上で実行されると、センサからの信号を受信するようにプロセッサは設定され、ここで信号はセンサ経路に沿ってまたはセンサ領域の一部にわたって1つまたはそれ以上の長さで受信された音響信号の表示を含み、信号は周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、周波数スペクトルにわたる信号の複数の周波数領域特徴を決定し、複数の周波数領域特徴を含む出力を生成するシステム。
【0202】
第3の態様では、音響データを使用して事象を検出するシステムであって、プロセッサおよびメモリを含むプロセッサユニットを含み、プロセッサユニットは受信機との信号通信のために適合され、メモリは解析アプリケーションを含み、プロセッサ上で実行されると、複数の周波数領域特徴を含む信号を受信器から受信するようにプロセッサは設定され、周波数領域特徴は音響信号を示し、周波数領域特徴は周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、複数の周波数領域特徴と1つまたはそれ以上の事象特徴を比較し、1つまたはそれ以上の事象特徴は複数の周波数領域特徴のそれぞれに対して閾値または範囲を含み、複数の周波数領域特徴は複数の周波数領域特徴のそれぞれに対して閾値または範囲を含み、複数の周波数領域特徴は少なくとも1つの事象特徴と整合するという決定に基づいて、少なくとも1つの事象の発生を決定し、そして、決定に基づく少なくとも1つの事象の発生の出力を生成するシステム。
【0203】
第4の態様では、音響データを使用して事象を検出するシステムであって、プロセッサおよびメモリを含むプロセッサユニットを含み、プロセッサユニットは受信機との信号通信のために適合され、メモリは解析アプリケーションを含み、プロセッサ上で実行されると、複数の周波数領域特徴を含む信号を受信器から受信するようにプロセッサは設定され、周波数領域特徴は音響信号が抗井内からの音響信号でないことを条件とする音響信号を示し、周波数領域特徴は周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、複数の周波数領域特徴を1つまたはそれ以上の事象特徴と比較し、1つまたはそれ以上の事象特徴は複数の周波数領域特徴のそれぞれに対して閾値または範囲を含み、複数の周波数領域特徴は1つまたはそれ以上の事象特徴の少なくとも1つの事象特徴に整合することを決定し、複数の周波数領域特徴が少なくとも1つの事象特徴に整合するという決定に基づいて少なくとも1つの事象の発生を決定し、そしてその決定に基づいて少なくとも1つの事象の発生の出力を生成することを含むシステム。
【0204】
第5の態様では、音響データを使用して事象を検出する方法であって、サンプルデータセットを収集し、サンプルデータセットは音響センサから発生する音響信号のサンプルであり、サンプルデータセットは周波数スペクトルにわたる音響信号を表し、サンプルデータセットの複数の周波数領域特徴を決定し、複数の周波数領域特徴を事象特徴と比較し、事象特徴は複数の周波数領域特徴に対応する複数の閾値、範囲、または両方を含み、複数の周波数領域特徴が事象特徴の閾値、範囲、または両方に整合することを決定し、複数の周波数領域特徴が事象特徴の閾値、範囲、または両方に整合するという決定に基づいて、事象の存在を決定する方法。
【0205】
第6の態様では、音響データを使用して事象を検出する方法であって、サンプルデータセットを収集し、サンプルデータセットは抗井の内部に位置する音響センサを除く音響センサから生じる音響信号のサンプルであり、サンプルデータセットは周波数スペクトルにわたる音響信号を表し、サンプルデータセットの複数の周波数領域特徴を決定し、複数の周波数領域特徴を事象特徴と比較し、事象特徴は複数の周波数領域特徴に対応する複数の閾値、範囲、または両方を含む事象特徴と比較し、複数の周波数領域特徴が事象特徴の閾値、範囲、または両方に整合することを決定し、複数の周波数領域特徴が事象特徴の閾値、範囲、または両方に整合するという決定に基づいて、事象の存在を決定する方法。
【0206】
第7の態様では、音響データを処理するためのシステムであって、プロセッサとメモリと備える受信器ユニットを含み、受信器ユニットはセンサ経路に沿って配置されたセンサから信号を受信するように構成され、処理アプリケーションはメモリに格納され、処理アプリケーションがプロセッサ上で実行されると、センサからの信号を受信するようにプロセッサは設定され、信号はセンサ経路に沿って1つまたはそれ以上の長さで受信された音響信号を含み、周波数スペクトルにわたる信号の複数の周波数領域特徴を決定し、複数の周波数領域特徴を含む出力を生成し、複数の周波数領域特徴を事象特徴と比較し、複数の周波数領域特徴が事象特徴と整合するという決定に基づいて、事象特徴に対応する事象の存在を決定するシステム。
【0207】
第8の態様では、音響データを処理するためのシステムであって、プロセッサとメモリとを備える受信器ユニットを含み、受信器ユニットはセンサ経路またはセンサ領域に沿って配置されたセンサから信号を受信するように構成され、センサ経路またはセンサ領域は抗井を通って延在しないようにし、処理アプリケーションはメモリに格納され、処理アプリケーションがプロセッサ上で実行されると、センサからの信号を受信するようにプロセッサは設定され、信号はセンサ経路に沿ってまたはセンサ領域の一部にわたって1つまたはそれ以上の長さで受信された音響信号を含み、周波数スペクトルにわたる信号の複数の周波数領域特徴を決定し、複数の周波数領域特徴を含む出力を生成し、複数の周波数領域特徴を事象特徴と比較し、複数の周波数領域特徴が事象特徴と整合するという決定に基づいて、事象特徴に対応する事象の存在を決定するシステム。
【0208】
第9の態様では、音響データを処理するための方法であって、システムはプロセッサおよびメモリを含む受信器ユニットを含み、受信器ユニットはセンサ経路またはセンサ領域に沿って配置されたセンサから信号を受信するように構成され、センサ経路またはセンサ領域が抗井を通って延在しないようにし、処理アプリケーションはメモリに格納され、処理アプリケーションがプロセッサ上で実行されると、センサからの信号を受信するようにプロセッサは設定され、ここで信号はセンサ経路に沿ってまたはセンサ領域の一部にわたって、1つまたはそれ以上の長さで受信された音響信号の表示を含み、その信号は周波数スペクトルにわたる音響信号を示し、周波数スペクトルにわたる信号の複数の周波数領域特徴を決定し、複数の周波数領域特徴を含む出力を生成する方法。
【0209】
第10の態様では、第1から第9の態様のいずれかにおけるシステムは、センサをさらに備えることができ、センサはセンサ経路に沿って配置された光ファイバケーブルと光ファイバケーブルに結合された光発生器とを備え、光発生器は光ビームを生成し、光ビームを光ファイバケーブルに通すように構成されるシステム。
【0210】
第11の態様では、システムは信号の複数の周波数領域特徴がスペクトル重心を含み、スペクトル重心は音響信号の周波数スペクトルの質量中心を示す第1から第10の態様のいずれかを含む。
【0211】
第12の態様では、システムは信号の複数の周波数領域特徴はスペクトル拡散を含み、スペクトル拡散はスペクトル重心の周りの音響信号のエネルギ分布を示す第1から第11の態様のいずれかを含む。
【0212】
第13の態様では、システムは信号の複数の周波数領域特徴はスペクトルロールオフを含み、スペクトルロールオフは周波数スペクトルにわたる信号強度の大きさの所定の割合を含む周波数帯を示す第1から第12の態様のいずれかを含む。
【0213】
第14の態様では、システムは信号の複数の周波数領域特徴がスペクトル歪度を含み、スペクトル歪度はスペクトル強度値の算術平均の周りのスペクトル強度値の分布の対称性を示す第1から第13の態様のいずれかを含む。
【0214】
第15の態様では、システムは信号の複数の周波数領域特徴はRMS帯域エネルギを含み、RMS帯域エネルギは周波数スペクトルにわたる所定の周波数帯における信号の信号エネルギの測度である第1から第14の態様のいずれかを含む。
【0215】
第16の態様では、システムは所定の周波数帯域の各周波数帯域内の信号エネルギが、周波数スペクトルにわたる総RMSエネルギに基づく正常化エネルギである第1から第15の態様のいずれかを含む。
【0216】
第17の態様では、システムは信号の複数の周波数領域特徴は総RMSエネルギを含み、総RMSエネルギは時間領域で計算された信号の波形の二乗平均平方根を含む第1から第16の態様のいずれかを含む。
【0217】
第18の態様では、システムは信号の複数の周波数領域特徴がスペクトル平坦性を含み、スペクトル平坦性は信号のエネルギスペクトル値の算術平均に対する幾何平均の比率である第1から第17の態様のいずれかを含む。
【0218】
第19の態様では、システムは信号の複数の周波数領域特徴がスペクトル傾斜を含み、スペクトル傾斜は信号のスペクトルの形状の線形近似を含む第1から第18の態様のいずれかを含む。
【0219】
第20の態様では、システムは信号の複数の周波数領域特徴はスペクトル尖度を含み、スペクトル尖度は信号内のスペクトルの平均を中心とするスペクトルの平坦度の指標を含む第1から第19の態様のいずれかを含む。
【0220】
第21の態様では、システムは信号の複数の周波数ドメイン特徴がスペクトルフラックスを含み、スペクトルフラックスは周波数領域特徴の連続的決定の間の信号内に存在する周波数の少なくとも一部にわたって合計されたスペクトル強度の変化の測度である第1から第20の態様のいずれかを含む。
【0221】
第20の態様では、システムは信号の複数の周波数領域特徴がスペクトル自己相関関数を含み、スペクトル自己相関関数は信号とシフトされた信号との間の相関を最大化する信号の遅れを示す第1から第21の態様のいずれかを含む。
【0222】
第23の態様では、システムは信号の複数の周波数領域特徴がスペクトル重心、スペクトル拡散、スペクトルロールオフ、スペクトル歪度、RMS帯域エネルギ、総RMSエネルギ、スペクトル平坦度、スペクトル傾斜、スペクトル尖度、スペクトルフラックスまたはスペクトル自己相関関数のうちの少なくとも2つを含む第1から第22の態様のいずれかを含む。
【0223】
第24の態様では、システムは、信号が、第1のデータサイズを含み、出力は第2のデータサイズを含み、第1のデータサイズは第2のデータサイズより大きい第1から第23の態様のいずれかを含む。
【0224】
第25の態様では、システムは、事象特徴が、鉄道車両特徴、交通特徴、セキュリティ特徴、回転または振動機器特徴、建物特徴のうちの少なくとも1つを含む第1から第24の態様のいずれかを含む。
【0225】
第26の態様では、システムは、音響信号が、機械由来、生物由来、流体乱流由来、流体漏洩由来、気象由来、または物体衝突のうちの少なくとも1つによって生成される第1から第25の態様のいずれかを含む。
【0226】
第27の態様では、システムは、センサが、鉄道線、道路、パイプライン、フェンス、産業機器の少なくとも1つの内部または延在して配置される第1から第26の態様のいずれかを含む。
【0227】
第28の態様では、システムは第1から第27の態様のいずれかを含み、複数の周波数領域特徴は周波数スペクトルにわたる信号の少なくとも2つの異なる周波数領域特徴を含むが、本明細書に開示される原理による様々な実施形態を示し上述したが、開示の精神および教示を逸脱することなく当業者によってその修正がなされてもよい。本明細書に記載される実施形態は単に代表的なものであり限定的なものではない。多くの変形、組み合わせ、および修正が可能であり、開示の範囲内である。実施形態の特徴を組み合わせる、統合する、および/または省略することから生じる代替の実施形態も開示の範囲内である。例えば方法ステップとして記載される特徴は上述のシステム実施形態において対応する要素を有してもよく逆も同様である。従って保護範囲は上記に記載された説明によって限定されるものではなく、その範囲に従う特許請求の範囲によって定義され、その範囲には特許請求の範囲の主題のすべての同意義が含まれる。各請求項は更なる開示として明細書に組み込まれ請求項は本発明の実施形態である。更に上述の任意の利点および特徴は特定の実施形態に関するものであってもよいが、そのような発行された請求項の適用を上述の利点の何れかまたは全てを達成するプロセスおよび構造に限定するものではなく、上述の特徴の何れかまたは全てを有するものであってもよい。
【0228】
加えて本明細書で使用するセクションの見出しは、37C.F.R.1.77に基づく提案との整合性のために、またはそれ以外の方法で組織的な手がかりを提供するために設けられている。これらの見出しはこの開示から発行することができる請求項に記載されている発明を限定または特徴付けるものではない。具体的には、かつ、例として見出しは「分野」に言及することができるが、請求項はいわゆる分野を記述するためにこの見出しの下で選択された言語によって限定されるべきではない。さらに「背景」における技術の記述は本開示における任意の発明(複数可)に対する先行技術であると認められるものではない。いずれも発行された請求項に記載された発明(複数可)の限定的特徴付けとみなされるべき「発明の概要」ではない。更に特異点における「発明」への本開示におけるいかなる引用も本開示において単一の新規性の点のみが存在することを主張するために使用されるべきではない。複数の発明は本開示から発行される複数の請求項の限定に従って記載することができ、そのような請求項はそれに応じて保護される発明およびそれらの同意義を規定する。すべての場合において特許請求の範囲はこの開示に照らしてそれ自体の長所で考慮されるがここに記載された見出しによって制約されるべきではない。
【0229】
構成、含む、および有するなどのより広範な用語の使用は、構成され、本質的に含まれ、実質的に有するなど、より狭い用語に対する支援を提供するために理解されるべきである。実施形態の任意の要素に関して「任意選択的に」、「さしつかえない」、「してもよい」、「おそらく」などの用語を使用することは、要素が必要とされないこと、または代替的に要素が必要とされ、両方の代替形態(複数可)が実施形態の範囲内にあることを意味する。例への言及は、単に例示的な目的のために提供されるものであり排他的であることを意図するものではない。
【0230】
好ましい実施形態を示し説明したが本明細書の範囲または教示から逸脱することなくその修正を当業者が行うことができる。本明細書に記載する実施形態は単に例示的なものであり限定的なものではない。本明細書に記載されるシステム、装置、およびプロセスの多くの変形および修正が可能であり開示の範囲内である。例えば種々の部品の相対的寸法、種々の部品が作られる材料、および他のパラメータを変化させることができる。従って保護の範囲は本明細書に記載される実施形態に限定されるものではなく後続する請求項によってのみ限定され、その範囲は請求項の主題の全ての同義物を含むものとする。明示的に別段の記載がない限り方法請求項のステップは任意の順序で実施することができる。方法請求項における工程の前の(a)、(b)、(c)または(1)、(2)、(3)のような識別子の表記は工程に対する特定の順序を意図したものではなく、特定の順序を特定するものではなく、むしろそのような工程の次の引用を単純化するために使用される。
【0231】
また様々な実施形態において個別発明として記載および図示される技術、システム、サブシステム、および方法は、本開示の範囲から逸脱することなく、他のシステム、モジュール、技術、発明方法と発明統合されてもよい。互いに直接連結または通信するように示されまたは議論された他のアイテムは、電気的、機械的または他の方法であろうと何らかのインターフェース、装置または中間構成要素を介して間接的に連結または通信することができる。変更、置換、および変換の他の例は当業者によって確かなものであり、本明細書で開示される精神および範囲から逸脱することなく作成することができる。