IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ オートリブ ディベロップメント エービーの特許一覧

特許7277067サイドエアバッグ装置及び、これに用いられるエアバッグの製造方法
<図1>
  • 特許-サイドエアバッグ装置及び、これに用いられるエアバッグの製造方法 図1
  • 特許-サイドエアバッグ装置及び、これに用いられるエアバッグの製造方法 図2
  • 特許-サイドエアバッグ装置及び、これに用いられるエアバッグの製造方法 図3
  • 特許-サイドエアバッグ装置及び、これに用いられるエアバッグの製造方法 図4
  • 特許-サイドエアバッグ装置及び、これに用いられるエアバッグの製造方法 図5
  • 特許-サイドエアバッグ装置及び、これに用いられるエアバッグの製造方法 図6
  • 特許-サイドエアバッグ装置及び、これに用いられるエアバッグの製造方法 図7
  • 特許-サイドエアバッグ装置及び、これに用いられるエアバッグの製造方法 図8
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】サイドエアバッグ装置及び、これに用いられるエアバッグの製造方法
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/2334 20110101AFI20230511BHJP
   B60R 21/207 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B60R21/2334
B60R21/207
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021550476
(86)(22)【出願日】2020-09-02
(86)【国際出願番号】 JP2020033300
(87)【国際公開番号】W WO2021070526
(87)【国際公開日】2021-04-15
【審査請求日】2022-02-19
(31)【優先権主張番号】P 2019187144
(32)【優先日】2019-10-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】503358097
【氏名又は名称】オートリブ ディベロップメント エービー
(74)【代理人】
【識別番号】100098143
【弁理士】
【氏名又は名称】飯塚 雄二
(72)【発明者】
【氏名】小林 優斗
(72)【発明者】
【氏名】島 弘之
【審査官】村山 禎恒
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-131160(JP,A)
【文献】国際公開第2017/010169(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/033820(WO,A1)
【文献】特開2014-162391(JP,A)
【文献】特開2018-161999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用シートのシートバック内の側部に位置するサイドフレームの乗員側に配置され、膨張ガスを発生するインフレータと;
前記膨張ガスによって膨張し、前記車両用シートに着座した乗員を保護するエアバッグとを備え、
前記エアバッグは、前記シートバックの前方に向かって展開するメインチャンバと;前記インフレータを内部に収容し、前記メインチャンバの乗員側に連結されたプリチャンバとを含む車両用シートのシートバックに収容される構成のサイドエアバッグ装置の製造方法であって、
前記メインチャンバを構成する内側メインパネルと、外側メインパネルと、前記プリチャンバを前記メインチャンバと共に構成するプリチャンバパネルと、を準備する工程と;
前記内側メインパネルと前記外側メインパネルとの間に配置され、前記メインチャンバを前方メインチャンバと後方メインチャンバとに仕切るためのバッフルパネルを準備する工程と;
前記プリチャンバパネルの前記前縁部を前記内側メインパネルに対して仮縫製する第1縫製工程と;
前記第1縫製工程の後、前記プリチャンバパネルの前記前縁部と、前記内側メインパネルと、前記バッフルパネルの内側縁部とを同時に縫製し、一体結合部を形成する第2縫製工程とを含み、
前記一体結合部により、前記プリチャンバの少なくとも前縁部と前記メインチャンバとの間に隙間のない状態とすることを特徴とするエアバッグ装置の製造方法。
【請求項2】
前記メインチャンバは、内側メインパネルと外側メインパネルとを含み、これら2枚のパネルを重ねて外縁同士を縫製することで成形され、
前記プリチャンバは、1枚のプリチャンバパネルを前記内側メインパネルに対して縫製することで成形されることを特徴とする請求項1に記載のサイドエアバッグ装置の製造方法
【請求項3】
前記内側メインパネルには第1のインナーベントが形成され、前記プリチャンバから当該第1のインナーベントを介して前記メインチャンバに膨張ガスが流れるように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のサイドエアバッグ装置の製造方法
【請求項4】
前記バッフルパネルには第2のインナーベントが形成され、前記後方メインチャンバから当該第2のインナーベントを介して前記前方メインチャンバに膨張ガスが流れるように構成されていることを特徴とする請求項1、2又は3に記載のサイドエアバッグ装置の製造方法
【請求項5】
前記バッフルパネルの前記内側縁部が、前記プリチャンバの前記前縁部に沿って配置されることを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置の製造方法
【請求項6】
前記プリチャンバパネルの前記前縁部と前記内側メインパネルの外面とに挟まれるように補強布が設けられ、
前記一体結合部が、当該補強布を含んだ四層が重なった構造であることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置の製造方法
【請求項7】
前記車両用シートの幅方向の側部から見たときに、前記プリチャンバの前記前縁部が湾曲した線を描くように設けられることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置の製造方法
【請求項8】
前記車両用シートの幅方向の側部から見たときに、前記プリチャンバの前記前縁部と前記バッフルパネルの前記内側縁部とが重なって湾曲した線を描くように設けられることを特徴とする請求項1乃至6の何れか1項に記載のサイドエアバッグ装置の製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用シートに搭載されるサイドエアバッグ装置及び、これに用いられるエアバッグの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
車両の事故発生時に乗員を保護するために1つまたは複数のエアバッグを車両に設けることは周知である。エアバッグは、例えば、ステアリングホイールの中心付近から膨張して運転者を保護する、いわゆる運転者用エアバッグ、自動車の窓の内側で下方向に展開して車両横方向の衝撃や横転、転覆事故時に乗員を保護するカーテンエアバッグ、更には、車両横方向の衝撃時に乗員を保護すべく乗員とサイドパネルとの間で展開するサイドエアバッグなどの様々な形態がある。本発明は、車両用シートに備えられるサイドエアバッグ装置に関するものである。
【0003】
サイドエアバッグ装置においては、設置領域における制約が大きいため、装置のコンパクト化の要請が強い。また、展開速度の向上や展開挙動、展開形状の安定化による適切な乗員保護性能が要求される。
【0004】
近年、サイドエアバッグ装置において、複数のチャンバを組み合わせてエアバッグを構成するものが提案されている。例えば、特許文献1に掲載されているように、メインのチャンバの内側(乗員側)に比較的容量の小さいプリチャンバを設けたものがある。しかしながら、エアバッグの展開時に、プリチャンバの前端部分が乗員と干渉して適切な展開を阻害する恐れがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】国際公開WO2017/209192公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような状況に鑑みてなされたものであり、メインチャンバとプリチャンバを有するサイドエアバッグにおいて、プリチャンバの展開挙動を最適化(安定化)できるサイドエアバッグ装置及び、これに用いられるエアバッグの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
以下に、上記課題を解決するための手段に及び、その効果について説明する。なお、本発明において、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員が向いている方向を「前方」、その反対方向を「後方」と称し、座標の軸を示すときは「前後方向」と言う。また、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の右側を「右方向」、乗員の左側を「左方向」と称し、座標の軸を示すときは「左右方向」と言う。更に、乗員が正規の姿勢で座席に着座した際に、乗員の頭部方向を「上方」、乗員の腰部方向を「下方」と称し、座標の軸を示すときは「上下方向」と言う。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、車両用シートのシートバックに収容されるサイドエアバッグ装置であって、前記シートバック内の側部に位置するサイドフレームの乗員側に配置され、膨張ガスを発生するインフレータと;前記膨張ガスによって膨張し、前記車両用シートに着座した乗員を保護するエアバッグとを備える。前記エアバッグは、前記シートバックの前方に向かって展開するメインチャンバと;前記インフレータを内部に収容し、前記メインチャンバの乗員側に連結されたプリチャンバとを含む。そして、前記プリチャンバの少なくとも前縁部と前記メインチャンバとの間に、隙間のない一体結合部が縫製によって形成される。
【0009】
ここで、縫製によって形成される「隙間のない一体結合部」とは、メインチャンバの表面に対してプリチャンバが前縁部に沿って連続的に縫製されることで、プリチャンバの一部(先端側)がメインチャンバから離間して不安定な状態とならない状態を意味する。あるいは、プリチャンバの膨張可能な領域がメインチャンバとの結合部から前方にはみ出していない状態と言うこともできる。
【0010】
本発明においては、プリチャンバの少なくとも前縁部とメインチャンバとの間に隙間のない一体結合部を縫製によって形成しているため、プリチャンバの端部(一部)がブラブラして乗員に引っ掛かるような事態を防止でき、プリチャンバの展開挙動が安定し、乗員の拘束性能向上に寄与することになる。
【0011】
前記メインチャンバは、内側メインパネルと外側メインパネルとを含み、これら2枚のパネルを重ねて外縁同士を縫製することで成形することができる。また、前記プリチャンバは、1枚のプリチャンバパネルを前記内側メインパネルに対して縫製することで成形することができる。
【0012】
前記内側メインパネルには第1のインナーベントが形成され、前記プリチャンバから当該第1のインナーベントを介して前記メインチャンバに膨張ガスが流れるように構成することができる。
【0013】
前記内側メインパネルの内面に連結される内側縁部と、前記外側メインパネルの内面に連結される外側縁部とを有するバッフルパネルを設けることができる。そして、当該バッフルパネルによって、前記メインチャンバが前方メインチャンバと後方メインチャンバとに仕切ることができる。
【0014】
前記バッフルパネルには第2のインナーベントが形成され、前記後方メインチャンバから当該第2のインナーベントを介して前記前方メインチャンバに膨張ガスが流れるように構成することができる。
【0015】
前記バッフルパネルの前記内側縁部が、前記プリチャンバの前記前縁部に沿って配置される構造とすることができる。このような構造とすることにより、構造自体がシンプルになると共に、製造工程の簡素化を図ることが可能となる。
【0016】
前記一体結合部が、前記内側メインパネルと、前記プリチャンバパネルの前記前縁部と、前記バッフルパネルの前記内側縁部との三層が重なった構造とすることができる。
【0017】
前記プリチャンバパネルの前記前縁部と前記内側メインパネルの外面とに挟まれるように補強布を設け、前記一体結合部が、当該補強布を含んだ四層が重なった構造とすることができる。
【0018】
前記車両用シートの幅方向の側部から見たときに、前記プリチャンバの前記前縁部が湾曲した線を描くように設けることができる。また、前記車両用シートの幅方向の側部から見たときに、前記プリチャンバの前記前縁部と前記バッフルパネルの前記内側縁部とが重なって湾曲した線を描くように設けることができる。
【0019】
本発明に係るエアバッグの製造方法は、前記内側メインパネルと、前記外側メインパネルと、前記プリチャンバパネルとを準備する工程と;前記内側メインパネルと前記外側メインパネルとの間に配置され、前記メインチャンバを前方メインチャンバと後方メインチャンバとに仕切るためのバッフルパネルを準備する工程と;前記プリチャンバパネルの前記前縁部を前記内側メインパネルに対して仮縫製する第1縫製工程と;前記第1縫製工程の後、前記プリチャンバパネルの前記前縁部と、前記内側メインパネルと、前記バッフルパネルの内側縁部とを同時に縫製する第2縫製工程とを含む。
【0020】
本発明においては、プリチャンバパネルの前縁部を内側メインパネルに対して仮縫製した後に、プリチャンバパネルの前縁部と、内側メインパネルと、バッフルパネルの内側縁部とを同時に縫製するため、製造工程の簡素化を図ることができる。特に、プリチャンバの前縁部が湾曲した線を描くような場合にも、容易に対応することが可能となる。
【0021】
なお、本発明に係るサイドエアバッグは、シートのドア側(外側)に展開するタイプの他、シートの車両中心側に展開するタイプにも適用可能である。また、シートの車両中心側に展開するタイプのサイドエアバッグは、例えば、ファーサイドエアバッグ、フロントセンターエアバッグ、リアセンターエアバッグ等と称される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1図1は、本発明に係るサイドエアバッグ装置を搭載可能な車両用シートの主に外観形状を示す斜視図であり、エアバッグユニットの図示は省略する。
図2図2は、図1に示す車両用シートの骨組みとして機能する内部構造体(シートフレーム)を示す斜視図であり、エアバッグユニットの図示は省略する。
図3図3は、本発明の実施例に係る車両用シートの概略側面図であり、エアバッグユニットが収容された状態を車幅方向の外側から観察(透視)した様子を示す。
図4図4は、本発明の実施例に係るサイドエアバッグが展開した状態を示す模式図(側面図)である。
図5図5は、本発明に係るエアバッグの展開状態を示す概略図であり、図4のA1-A1方向の断面に対応する。
図6図6(A)~(D)は、本発明に係るエアバッグを構成する主なパネルを示す平面図である。
図7図7(A)~(C)は、本発明に係るエアバッグの製造(縫製)工程を示す平面図であり、乗員側から見た様子を示す。
図8図8(A)、(B)は、本発明に係るエアバッグの製造(縫製)工程を示す平面図であり、図7から続くものであり、乗員の反対側から見た様子を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施形態に係る車両用シートについて、添付図面に基づいて詳細に説明する。なお、各図に表示する「前」とは車両の前方(進行方向)、「後」とは車両の後方(進行方向と反対側)、「内」とは車幅方向の内側(乗員側)、「外」とは車幅方向外側(ドアパネル側)をそれぞれ示す。
【0024】
図1は、本発明に係るサイドエアバッグ装置20が適用可能な車両用シートの主に外観形状を示す斜視図であり、サイドエアバッグ装置(20)の図示は省略する。図2は、図1に示す車両用シートの骨組みとして機能する内部構造体(シートフレーム)を示す斜視図であり、ここでも、サイドエアバッグ装置(20)の図示は省略する。図3は、本発明に係るサイドエアバッグ装置20を搭載した車両用シートの概略側面図であり、例えば、ドアに近い側面(ニアサイド)にサイドエアバッグ装置20が収容された状態を車幅方向の外側から観察した様子を示す。
【0025】
本実施例に係るサイドエアバッグ装置20が適用可能な車両シートは、部位として観たときには、図1及び図2に示すように、乗員が着座する部分のシートクッション2と;背もたれを形成するシートバック1と;シートバック1の上端に連結されるヘッドレスト3とから構成されている。
【0026】
シートバック1の内部にはシートの骨格を形成するシートバックフレーム1fが設けられ、その表面及び周囲にはウレタン発泡材等からなるパッド、表皮(図示せず)が設けられている。シートクッション2についても、シートバック1と同様に、着座フレーム2fの上面及び周囲にはウレタン発泡材等からなるパッド、表皮(図示せず)が設けられている。なお、着座フレーム2fとシートバックフレーム1fとは、リクライニング機構4を介して連結されている。
【0027】
シートバックフレーム1fは、図2に示すように、左右に離間して配置され上下方向に延在するサイドフレーム10と、このサイドフレーム10の上端部を連結する上部フレームと、下端部を連結する下部フレームとにより枠状に構成されている。ヘッドレストフレームの外側にクッション部材を設けることでヘッドレスト3が構成される。
【0028】
図4は、エアバッグ30(32,34)が展開した状態を示す模式図(側面図)である。図4に示すように、エアバッグ30(32,34)は、サイドサポート部12の前方に向かって展開するメインチャンバ32と;メインチャンバ32の車幅方向内側(乗員側)で展開するプリチャンバ34とを備えている。
【0029】
図5は、図4のA1-A1方向の断面に対応するエアバッグ30の展開状態を示す概略図である。図6(A)~(D)は、エアバッグ30(32,34)を構成する主なパネルを示す平面図である。
【0030】
本発明に係るサイドエアバッグ装置20は、サイドフレーム10の乗員側に配置され、膨張ガスを発生するインフレータ35と;膨張ガスによって膨張し、車両用シートに着座した乗員を保護するエアバッグ30(32,34)とを備える。エアバッグ30は、シートバック1の前方に向かって展開するメインチャンバ32と;インフレータ35を内部に収容し、メインチャンバ32の乗員側に連結されたプリチャンバ34とを含む。後に詳細に説明するが、プリチャンバ34の前縁部34bとメインチャンバ32(32a)との間に、隙間のない一体結合部が縫製56aによって形成される。
【0031】
インフレータ35は、例えば、円柱状のシリンダータイプのインフレータを使用することができる。インフレータ35の外周部からは、車幅方向内側に向かってスタッドボルト37が突出している。このようなスタッドボルト37は、ナットによってサイドフレーム10に取り付けられる(締結固定される)。インフレータ35には、周方向に並んだ複数のガス噴出口(図示せず)が形成されており、当該ガス噴出口から放射状にガスが噴出するようになっている。なお、必要に応じて、インフレータ35の周囲にガスの流れを制御するディフューザ等を設けることができる。
【0032】
インフレータ35には、車両に搭載されたエアバッグ制御用ECU(図示せず)が電気的に接続されている。このエアバッグ制御用ECUには、側面衝突を検知するサテライトセンサ(図示せず)が電気的に接続されている。このサテライトセンサからの信号に基づいてエアバッグ制御用ECUが側面衝突を検知した際にインフレータ35を作動するように構成することができる。
【0033】
図5及び図6(A),(B)に示すように、メインチャンバ32は、乗員側に位置する内側メインパネル32aと、乗員と反対側に位置する外側メインパネル32bとを含む。そして、これら2枚のパネル32a,32bを重ねて外縁同士を縫製することで、メインチャンバ32が成形される。
【0034】
図5及び図6(C)に示すように、プリチャンバ34は、1枚のプリチャンバパネル34aを内側メインパネル32aに対して縫製することで成形される。プリチャンバパネル34aは、前縁部34bの上下部分が前方に突出した突出部76a,76bを形成するように湾曲した形状に成形されている。
【0035】
図5及び図6(A)に示すように、内側メインパネル32aには第1のインナーベントV1が3カ所に形成され、プリチャンバ34内部の膨張ガスが当該第1のインナーベントV1を介してメインチャンバ32に流れ込むようになっている。なお、インナーベントV1の周囲には補強用の縫製50が形成されている。
【0036】
内側メインパネル32aの前縁部付近には外部にガスを放出するための外部ベントV3が2カ所に形成されている。また、外側メインパネル32bの後縁部付近には、インフレータ35を挿入するための開口70と、インフレータ35のスタッドボルト37を貫通させるための開口72が形成されている。
【0037】
図5及び図6(D)に示すように、メインチャンバ32の内部には、内側メインパネル32aの内面に連結される内側縁部38aと、外側メインパネル32bの内面に連結される外側縁部38bとを有するバッフルパネル38が設けられている。そして、当該バッフルパネル38によって、メインチャンバ32が前方メインチャンバ32fと後方メインチャンバ32rとに仕切られる。
【0038】
バッフルパネル38には第2のインナーベントV2が2カ所に形成され、後方メインチャンバ32rから当該第2のインナーベントV2を介して前方メインチャンバ32fに膨張ガスが流れるようになっている。なお、インナーベントV2の周囲には補強用の縫製52が形成されている。
【0039】
なお、バッフルパネル38の内側縁部38aが、プリチャンバ34の前縁部34bに沿って連結される。このような構造とすることにより、構造自体がシンプルになると共に、製造工程の簡素化を図ることが可能となる。
【0040】
図5に示すように、一体結合部56aが、内側メインパネル32aの外面(外表面)と、プリチャンバパネル34aの前縁部34bと、バッフルパネル38の内側縁部38aとの三層が重なった構造となっている。正確には、プリチャンバパネル34aの前縁部34bと内側メインパネル32aの外面とに挟まれるように補強布40が設けられており、一体結合部56aは、当該補強布40を含んだ四層が重なった構造となる。なお、補強布40はプリチャンバパネル34aの前縁部34bに沿って配置、縫製される。
【0041】
次に、図5を参照して各パネルの縫製部位について簡単に説明する。符号53は、プリチャンバパネル34aと補強布40とを連結する縫製である。符号54は、プリチャンバパネル34aの前縁部34bと、補強布40と、内側メインパネル32aとを連結する仮縫製である。符号58は、内側メインパネル32aと外側メインパネル32bとを連結する縫製であり、プリチャンバ34にインフレータ35を挿入するための非膨張領域82(図8参照)を形成するものである。符号64は、エアバッグ30の外周を連結する縫製である。
【0042】
(製造方法)
図7(A)~(C)、図8(A),(B)は、本発明に係るエアバッグ30の製造(縫製)工程を示す平面図である。まず、図7(A)に示すように、内側メインパネル32aにおいて、3カ所のインナーベントV1の周囲に縫製(50)を施し、2カ所の外部ベントV3の外周に縫製80a,80bを行う。
【0043】
なお、そもそも、プリチャンバパネル34aの湾曲した縁部とバッフルパネル38の湾曲した縁部とを、平面状の内側メインパネル32aを挟みながら同時に縫製することは非常に困難である。このため、従来においては、プリチャンバとメインチャンバを各々別々にバック状に縫製し、その後、プリチャンバの縁部とバッフルパネルの縁部とが重ならないようにして、プリチャンバとメインチャンバとを接合するようにしていた。
【0044】
そこで、本発明においては、図7(A)の工程に続いて、図5及び図7(B)に示すように、内側メインパネル32aの表面にプリチャンバパネル34aを重ねて、当該プリチャンバパネル34aの前縁部34bに沿って仮縫製54を行う。このとき、補強布40も同時に仮縫製する。
【0045】
次に、図5及び図7(C)に示すように、プリチャンバパネル34aの前縁部34bと、補強布40と、内側メインパネル32aと、バッフルパネル38の内側縁部38aとを同時に縫製し、一体連結部56aを成形する。また、これと同時に、バッフルパネル38の外側縁部38bと外側メインパネル32bとを縫製(56b)する。
【0046】
次に、図5及び図8(A)に示すように、内側メインパネル32aと外側メインパネル32bとを、インフレータ35用の開口70,72の前方において、上下方向に縫製58し、非膨張領域82を形成する。なお、縫製箇所を明確に示すために、図8図7に示す状態を表裏反転して示している。
【0047】
次に、図5及び図8(B)に示すように、インフレータ35用の開口70,72の周囲に補強用の縫製60,84を施す。その後、内側メインパネル32aと外側メインパネル32bの外周全体に縫製64を行う。
【0048】
本発明においては、プリチャンバ34の前縁部34bとメインチャンバ32(32a)との間に隙間のない一体結合部を縫製56aによって形成しているため、エアバッグ30の展開時にプリチャンバ34の端部(一部)がブラブラして乗員に引っ掛かるような事態を防止でき、プリチャンバ34の展開挙動が安定し、乗員の拘束性能向上に寄与することになる。
【0049】
また、プリチャンバパネル34aの前縁部34bを内側メインパネル32aに対して仮縫製(54)した後に、プリチャンバパネル34aの前縁部34bと、内側メインパネル32aと、バッフルパネル38の内側縁部38aとを同時に縫製するため、製造工程の簡素化を図ることができる。特に、プリチャンバ34の前縁部34bが湾曲した線を描くような場合にも、容易に対応することが可能となる。
【0050】
本発明を上記の例示的な実施形態と関連させて説明してきたが、当業者には本開示により多くの等価の変更および変形が自明であろう。したがって、本発明の上記の例示的な実施形態は、例示的であるが限定的なものではないと考えられる。本発明の精神と範囲を逸脱することなく、記載した実施形態に様々な変化が加えられ得る。例えば、発明を実施するための形態では、ニアサイドのサイドエアバッグについて重点的に述べたが、ファーサイドエアバッグ(車両用シートの車両ドアから遠い側の面)や、スモールモビリティなど超小型車両等における単座の車両(ドアの有る無しにかかわらず一列にシートが一つしかない部分を含むような車両)等にも用いることが可能である。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8