(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】回転力出力装置及び回転始動力アシスト付きモータ
(51)【国際特許分類】
H02K 21/16 20060101AFI20230511BHJP
【FI】
H02K21/16 M
(21)【出願番号】P 2015549218
(86)(22)【出願日】2014-11-25
(86)【国際出願番号】 JP2014081013
(87)【国際公開番号】W WO2015076400
(87)【国際公開日】2015-05-28
【審査請求日】2017-11-15
【審判番号】
【審判請求日】2022-02-08
(31)【優先権主張番号】P 2013242860
(32)【優先日】2013-11-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】308030710
【氏名又は名称】株式会社M&Gジャパン
(73)【特許権者】
【識別番号】592157858
【氏名又は名称】生越 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100080160
【氏名又は名称】松尾 憲一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100149205
【氏名又は名称】市川 泰央
(72)【発明者】
【氏名】生越 誠
【合議体】
【審判長】柿崎 拓
【審判官】田合 弘幸
【審判官】冨永 達朗
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2007/105319(WO,A1)
【文献】特開2009-118705(JP,A)
【文献】特開2012-182961(JP,A)
【文献】特開平9-65628(JP,A)
【文献】特開2008-245420(JP,A)
【文献】国際公開第2009/072623(WO,A1)
【文献】特開2012-120280(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 1/00- 1/16
H02K 21/16
H02K 53/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
円柱状に形成されて回転軸(2)に取り付けられ、前記回転軸(2)の回転開始時には外部からの駆動力で回転を始めるロータ(3)と、
永久磁石(4)の隣合う各外端面(4a)の磁極どうしが互いに異なるように、前記ロータ(3)の回転方向に沿って前記永久磁石(4)が複数配置された第一界磁部(5)と、
前記ロータ(3)の回転方向に沿い複数配置され、前記第一界磁部(5)外周面とギャップを介して対向する第一対向面(6a)を有し各々が磁気的に絶縁された複数のコア(6)と、
各々の前記コア(6)に独立して巻回された複数のコイル(7)と、
前記ロータ(3)の回転開始時は電磁誘導により前記コイル(7)に電流が流れないように複数の前記コイル(7)の各々の端末同士をオープンにし前記ロータ(3)の回転開始後は電磁誘導によって前記コイル(7)に電流が流れるように複数の前記コイル(7)の各々の端末同士
をショートさせるスイッチング部(8)と、
前記回転軸(2)の回転開始時に外部からの電力供給を行うことにより、前記回転軸(2)の回転開始動作を行わせる、外部に設けた駆動用モータ(21)と、
強磁性体で断面略U字型に形成され、前記各永久磁石(4)の、前記ロータ(3)の外周面に対面する各内端面と、前記各永久磁石(4)の、前記ロータ(3)の回転方向に臨む両側部と、を囲繞する第一永久磁石囲繞部(16a)と、
を備え、
前記第一界磁部の前記永久磁石の数と前記コアの数とが互いに相手方の数の整数倍でない条件で、前記第一界磁部(5)の前記永久磁石(4)と前記コア(6)が、それぞれ等角度間隔で配置され、
前記駆動用モータ(21)による、外部からの駆動力によって前記回転軸(2)の回転開始動作を行うように構成した
ことを特徴とする回転力出力装置。
【請求項2】
円柱状に形成されて回転軸(2)に取り付けられ、前記回転軸(2)の回転開始時には外部からの駆動力で回転を始めるロータ(3)と、
永久磁石(4)の隣合う各外端面(4a)の磁極どうしが互いに異なるように、前記ロータ(3)の回転方向に沿って前記永久磁石(4)が複数配置された第一界磁部(5)と、
前記ロータ(3)の回転方向に沿い複数配置され、前記第一界磁部(5)外周面とギャップを介して対向する第一対向面(6a)を有し各々が磁気的に絶縁された複数のコア(6)と、
各々の前記コア(6)に独立して巻回された複数のコイル(7)と、
前記ロータ(3)の回転開始時は電磁誘導により前記コイル(7)に電流が流れないように複数の前記コイル(7)の各々の端末同士をオープンにし前記ロータ(3)の回転開始後は電磁誘導によって前記コイル(7)に電流が流れるように複数の前記コイル(7)の各々の端末同士
をショートさせるスイッチング部(8)と、
前記回転軸(2)の回転開始時に外部からの電力供給を行うことにより、前記回転軸(2)の回転開始動作を行わせる、外部に設けた駆動用モータ(21)と、
前記ロータ(3)の、前記第一界磁部(5)形成位置とは反対側の対称位置に、前記第一界磁部(5)と同一の配置状態で並設されるとともに、互いに隣り合う永久磁石(14)の磁極どうしが異なるような逆向きの状態で、前記ロータ (3)の回転方向に沿って前記永久磁石(14)が周設された第二界磁部(15)と、
前記コア(6)の他端部に形成され前記第二界磁部(15)とギャップを介して対向する第二対向面(6b)と、
強磁性体で形成され、前記第二界磁部(15)の、前記各永久磁石(14)の、前記ロータ(3)側に対向する内端面、及び、前記ロータ(3)の回転方向の両側部、を囲繞する第二永久磁石囲繞部(16b)と、
を備え、
前記第一界磁部の前記永久磁石の数と前記コアの数とが互いに相手方の数の整数倍でない条件で、前記第一界磁部(5)の前記永久磁石(4)と前記コア(6)が、それぞれ等角度間隔で配置され、
前記駆動用モータ(21)による、外部からの駆動力によって前記回転軸(2)の回転開始動作を行うように構成した
ことを特徴とする回転力出力装置。
【請求項3】
前記スイッチング部(8)は、
各々の前記コイル(7)の端末間に接続されたブリッジ整流器(9)と、
各々の前記ブリッジ整流器(9)の出力端子を並列に接続する並列回路(10)と、
前記並列回路(10)に配設され複数の前記コイル(7)の各々の端末同士のオープンとショートをまとめて切替える切替部(10a)と、
を備えた
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の回転力出力装置。
【請求項4】
前記永久磁石(4)の内端面が前記ロータ(3)の外周面に対面し、かつ、
常磁性材料で形成されて前記ロータ(3)と共に回転する第一ロータ囲繞部(5a)を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至3の内いずれか1項に記載の回転力出力装置。
【請求項5】
前記第一界磁部(5)は、前記永久磁石(4)が回転する際に前記各永久磁石の隣同士の各外端面の移動軌跡である軌道面に沿うように、強磁性体で表面が山形状又は円弧状に形成され、各々の前記永久磁石(4)の前記外端面に固着されて表面から出る磁束を分散させて均一化させる第一磁束均一化部材(17a)を備えた
ことを特徴とする請求項1乃至4の内いずれか1項に記載の回転力出力装置。
【請求項6】
請求項1乃至
5の内いずれか1項に記載の回転力出力装置と、
前記回転力出力装置の前記回転軸を回転させる駆動用モータと、
備えた
ことを特徴とする回転始動力アシスト付きモータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、永久磁石を配置したロータを小さな力で効率よく安定的に回転させることにより、大きなトルクを得ることができ、省エネルギー性に優れ、特に発電機の駆動に好適に用いることができる回転力出力装置及びそれを用いた回転始動力アシスト付きモータに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、磁石を多数配置したロータと、ステータコイルを有するステータと、を備え、ロータを回転させることによりステータコイルに誘導電圧を生じさせる発電機が知られ ている。
永久磁石を使用した従来の同期発電機の場合、永久磁石が配置された磁極ロータを回転させると、永久磁石がステータコイルのコアの対向面を通過する際にコアから受ける反発力や吸引力の影響により回転が妨げられ、磁極ロータの回転負荷トルクが大きくなり、磁極ロータを回転させる駆動モータの負荷電流が著しく大きくなる結果、磁極ロータを回転させるための消費電力が著しく増大し、発電機の発電効率が大幅に低下するという問題点があった。
よって、発電機の発電効率を向上させるためには、小さな駆動力でロータを回転させる必要があり、そのためにはコアから受ける反発力や吸引力がロータの回転の妨げ(抵抗)とならないようにしなければならないが、逆に、この磁力による反発力や吸引力を上手く利用することができれば、小さな駆動力でロータを回転させることができる。
例えば(特許文献1)には、電磁石のコイルと誘導起電力を発生させるための導体を短絡させたユニットを円周方向に配置したロータと、導体と平行に配置した誘導起電力発生用磁石及び電磁石と垂直に配置したトルク発生用磁石を有し、ロータ又はステータを回転させることで誘導起電力を発生させ、ロータの電磁石を磁化させて、トルク発生用磁石との間に反発力・吸着力を発生させる無電源アシストモーターが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら上記従来の技術においては、以下のような課題を有していた。
(1)(特許文献1)では、誘導起電力発生用磁石及びトルク発生用磁石の磁極の配置が記載されていないため、これらの磁界がどのように作用するのかが不明であり、磁化した電磁石とトルク発生用磁石との間に、どのようなタイミングで反発力や吸着力が働くのか明確に理解することができない。しかし、電磁石とトルク発生用磁石が対向する位置を回転のスタート位置として、ロータを小さな力で回転させるためには、電磁石とトルク発生用磁石との間に反発力が働き、電磁石と誘導起電力発生用磁石との間に吸着力が働く必要があると考えられる。
つまり、トルク発生用磁石と対向した電磁石がトルク発生用磁石から反発を受けると共に、誘導起電力発生用磁石に吸引されることにより、ロータを回転させる力が働くと考えられるが、誘導起電力発生用磁石と対向する位置にある電磁石は誘導起電力発生用磁石に吸引され続けるため、ブレーキがかかり、そこから先に回転することは困難であるものと思われる。
よって、実際には、ロータを回転させることは不可能か、或いは可能であっても極めて大きな駆動力が必要であり、大きなトルク(出力)を得ることはできず、回転の効率性、出力の安定性に欠けるという課題を有していると考えられる。
(2)また、ロータの電磁石の数がトルク発生用磁石の数の4倍(整数倍)の16個で等角度間隔で配置されていることにより、4つのトルク発生用磁石から電磁石に対して、常に同時に反発力又は吸着力が作用すると考えられるので、一度ブレーキがかかって回転が止まってしまうと、そこから回転させることは極めて困難であり、動作の確実性、安定性に欠けるという課題を有していると考えられる。
(3)さらに、誘導起電力発生用磁石及びトルク発生用磁石が必要であるため、構成が複雑で部品点数が多く、量産性、組立て作業性に欠けるという課題を有している。
【0005】
本発明は上記従来の課題を解決するもので、永久磁石がコアの対向面を通過する際にコアからロータの回転を阻害する方向に働く反発力や吸引力が少なく、ロータの回転負荷トルクを減少させ、わずかな駆動力でロータを回転させることができると共に、コイルに発生する磁界の作用によってロータの回転をアシストし、ロータの回転の変動を抑えて常に略一定で安定した回転を行って大きなトルクを得ることができる回転の効率性、均一性、安定性、省エネルギー性に優れた回転力出力装置及びそれを用いた回転始動アシスト付きモータを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記従来の課題を解決するために本発明の回転力出力装置及びそれを用いた回転始動力アシスト付きモータは、以下の構成を有している。
本発明に係る回転力出力装置は、円柱状に形成されて回転軸(2)に取り付けられ、前記回転軸(2)の回転開始時には外部からの駆動力で回転を始めるロータ(3)と、永久磁石(4)の隣合う各外端面(4a)の磁極どうしが互いに異なるように、前記ロータ(3)の回転方向に沿って前記永久磁石(4)が複数配置された第一界磁部(5)と、前記ロータ(3)の回転方向に沿い複数配置され、前記第一界磁部(5)外周面とギャップを介して対向する第一対向面(6a)を有し各々が磁気的に絶縁された複数のコア(6)と、各々の前記コア(6)に独立して巻回された複数のコイル(7)と、前記ロータ(3)の回転開始時は電磁誘導により前記コイル(7)に電流が流れないように複数の前記コイル(7)の各々の端末同士をオープンにし前記ロータ(3)の回転開始後は電磁誘導によって前記コイル(7)に電流が流れるように複数の前記コイル(7)の各々の端末同士をショートさせるスイッチング部(8)と、前記回転軸(2)の回転開始時に外部からの電力供給を行うことにより、前記回転軸(2)の回転開始動作を行わせる、外部に設けた駆動用モータ(21)と、を備え、前記第一界磁部の前記永久磁石の数と前記コアの数とが互いに相手方の数の整数倍でない条件で、前記第一界磁部(5)の前記永久磁石(4)と前記コア(6)が、それぞれ等角度間隔で配置され、
前記駆動用モータ(21)による、外部からの駆動力によって前記回転軸(2)の回転開始動作を行うように構成したことを特徴とする回転力出力装置。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)各々のコアに独立して巻回された複数のコイルと、ロータの回転開始時は複数のコイルの各々の端末同士をオープンにしロータの回転開始後は複数のコイルの各々の端末同士をショートさせるスイッチング部を有するので、回転開始時にコイルの各々の端末同士 をオープンにして電磁誘導によりコイルに電流が流れないようにして、コイルが磁化しないようにすることで、ロータの回転負荷トルクを著しく減少させ、外部からのわずかな駆動力でロータを回転させることができる。
この結果、外部からの駆動力として用いる駆動用モータ等の回転始動駆動装置を小型化することができ、回転始動駆動時の省力性、省電力性に優れると共に、回転開始後はコイルの各々の端末同士をショートさせ電磁誘導によってコイルに流れる電流でコイルを磁化させ、コイルに発生する磁界の作用によって永久磁石との間に発生する反発力及び吸引力によってロータを回転させ、ロータの回転の変動を抑えて常に略一定の安定した回転を行って、出力を高めることができ、回転の効率性、均一性、出力の安定性、省エネルギー性に優れる。
(2)ロータの回転開始時と回転開始後に、スイッチング部により複数のコイルの各々の端末同士のオープンとショートを切替えるだけで、容易に回転開始時のロータの回転負荷トルクを低減させると共に、回転開始後のロータの回転を安定化させることができ、ロータの回転中に複雑な操作などを行う必要がなく、操作を簡素化することができ、量産性、制御の容易性に優れる。
【0007】
ここで、ロータとしては、円柱状や多角柱状等の柱状、板状等に形成されたものを用いることができる。柱状に形成されたロータに対しては、ロータの外周面に永久磁石を配置することができ、板状に形成されたロータに対しては、ロータの平板面に永久磁石を配置することができる。ロータが回転して永久磁石からコアに導かれた磁束が変化すると、電磁誘導によりコイルに電流が流れてコイルが磁化し、永久磁石との間に反発力或いは吸引力が作用する。
ロータの回転軸は、駆動用モータ等の回転駆動装置のほか、風車や水車等の動力発生源に連結することができ、回転駆動装置の駆動力や風力、水力等により、小さな力でロータを回転させて大きな出力(トルク)を得ることができ、省エネルギー性に優れる。よって、自動車,船舶,鉄道,航空機,建設機械等に搭載する発電機等に動力を伝達するための回転装置や工場,店舗,住宅等に電力を供給する自家発電用等の発電機等に動力を伝達するための回転装置として好適に用いて、発電機の発電効率を高めることができる。
【0008】
永久磁石としては、アルニコ磁石、フェライト磁石、Fe-Cr-Co磁石、サマリウム系,ネオジウム系等の希土類磁石等の中から、適宜選択して用いることができる。大きな出力を得る場合には、磁束密度も保磁力も大きな希土類磁石、特にネオジウム系の永久磁石を用いるのが好ましい。
永久磁石は、一つの部材で塊状等に形成したものを用いてもよいし、板状の永久磁石を複数枚吸着させて重ねて塊状に形成したものを用いてもよい。永久磁石のコア側の端面の形状は、特に限定する必要はなく、矩形状、円形状等の種々の形状を採用することができる。
永久磁石の隣合う各外端面の磁極どうしが互いに異なるように、ロータの回転方向に沿って永久磁石が複数配置されて第一界磁部が構成される。
尚、ロータの回転方向に配置する永久磁石及びコア(コイル)の数や配置は、適宜、選択することができるが、等角度間隔で配置することにより、コイルに発生する磁界を円周方向に均等に作用させて、ロータの回転の変動を効果的に抑えることができ、ロータの回転の均一性、安定性、効率性に優れる。
【0009】
スイッチング部は、複数のコイルの各々の端末同士のオープンとショートを切替えることができればよい。複数のコイルの各々の端末間に設けたスイッチでそれぞれのコイルのオープンとショートを個別に切替えてもよいし、各々のコイルの端末間に接続したブリッジ整流器同士を並列に接続して並列回路を形成し、並列回路に設けた1つのスイッチ(切替部)で回路全体のオンとオフを切替えて、全てのコイルのオープンとショートをまとめて切替えてもよい。
尚、スイッチング部は、ロータの回転の有無或いはロータの回転数などを検出してオープンとショートの切替えを自動的に行うものが好適に用いられる。特に、ロータの回転数を検出する回転数検出部を有し、回転数検出部で検出した回転数が予め設定した設定回転数以上になった時に切替部で全てのコイルの各々の端末同士をオープンからショートに切替えるスイッチング部を用いれば、制御の信頼性、動作の安定性、発電の効率性に優れる。
【0010】
また、本発明に係る回転力出力装置は、前記第一界磁部の前記永久磁石の数と前記コアの数とが互いに相手方の数の整数倍でない条件で、前記第一界磁部の前記永久磁石と前記コアが、それぞれ等角度間隔で配置され、外部からの駆動力によって前記回転軸の回転開始動作を行うように構成している。
この構成により、上記の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)永久磁石から各々のコアに導かれる磁束はロータの回転に従って変化するが、第一界磁部の永久磁石とコアが、それぞれ等角度間隔で配置される時に、第一界磁部の永久磁石の数とコアの数とが互いに相手方の数の整数倍でないことにより、全てのコアが同時に永久磁石と重なることや全ての永久磁石が同時にコアと重なることがなく、少しずつタイミングをずらしながら各々のコイルを順次、磁化させることができ、全てのコイルから同時に反発力或いは吸引力が作用することがないので、ロータの回転にブレーキがかかることがなく、いずれかのコイルと永久磁石の間に働く反発力或いは吸引力によってロータの回転を助けて、ロータを安定して回転させることができ、ロータの回転の安定性、効率性、省エネルギー性に優れる。
【0011】
ここで、永久磁石とコアが、それぞれ等角度間隔で配置される時に、永久磁石の数がコアの数の整数倍(等しい場合も含む)になっている場合、各々のコアとそれに対向する永久磁石との位置関係が全て一致するため、ロータの回転時に永久磁石から各々のコアに導かれる磁束の変化も等しくなり、全てのコイルから対向する永久磁石に対して同じタイミングで反発力或いは吸引力が作用することになる。また、コアの数が永久磁石の数の整数倍(等しい場合も含む)になっている場合も、同様に、各々の永久磁石とそれに対向するコアとの位置関係が全て一致するため、ロータの回転時に各々の永久磁石から対向するコアに導かれる磁束の変化も等しくなり、全ての永久磁石に対して対向するコイルから同じタイミングで反発力或いは吸引力が作用することになる。
よって、これらの場合には、その反発力或いは吸引力が全て同時にロータの回転を妨げる方向に作用して大きなブレーキとなることがあるので、これを防止するために、永久磁石の数とコアの数とが互いに相手方の数の整数倍でないようにすることが有効である。特に、永久磁石の数とコアの数とが互いに素になっている場合、両者の間に1以外の公約数がないため、複数の永久磁石とコアが同時に重なることがなく、反発力或いは吸引力の発生のタイミングを均一に分散させることができ、ロータの回転の安定性に優れる。
【0012】
本発明の他の態様は、前記回転力出力装置であって、前記スイッチング部は、各々の前記コイルの端末間に接続されたブリッジ整流器と、各々の前記ブリッジ整流器の出力端子を並列に接続する並列回路と、前記並列回路に配設され複数の前記コイルの各々の端末同士のオープンとショートをまとめて切替える切替部と、を備えている。
この構成により、上記の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)スイッチング部が、各々のコイルの端末間に接続されたブリッジ整流器を有することにより、各々のコイルを流れる交流電流を直流電流に変換して出力することができるので、各々のブリッジ整流器の出力端子を並列に接続して並列回路を形成することができ、並列回路に配設され複数のコイルの各々の端末同士のオープンとショートをまとめて切替える切替部で、全てのコイルの各々の端末同士のショートとオープンを同時に切替えることが可能で、回路を簡素化することができ、動作の簡便性、確実性、安定性に優れる。
【0013】
本発明の他の態様は、前記回転力出力装置であって、強磁性体で断面略U字型に形成され、前記各永久磁石(4)の、前記ロータ(3)の外周面に対面する各内端面と、前記各永久磁石(4)の、前記ロータ(3)の回転方向に臨む両側部と、を囲繞する第一永久磁石囲繞部(16a)を備えている。
この構成により、上記の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)強磁性体で形成され、第一界磁部の永久磁石のロータ側の端部及びロータの回転方向の両側部を囲繞する第一永久磁石囲繞部を有することにより、磁束の漏洩を抑え、永久磁石のコア側の端面での磁束密度を高められるので、コアに導かれる磁束密度も高くなり、コイルで発生する反発力や吸引力も増大させて、ロータの回転を補助することができ、ロータの回転の安定性、駆動の効率性に優れる。
(2)第一界磁部の永久磁石のロータ側の端部及びロータの回転方向の両側部を囲繞する第一永久磁石囲繞部を有することにより、永久磁石の外周を保護できると共に、第一永久磁石囲繞部で永久磁石を簡単かつ確実に固定してロータからの永久磁石の脱落を防ぐことができ、組立作業性、耐久性に優れる。
【0014】
ここで、第一永久磁石囲繞部を形成する強磁性体としては、鉄、ケイ素鉄、パーマロイ、フェライト、アルニコ合金等を用いることができる。
また、第一永久磁石囲繞部は永久磁石のロータ側の端部及びロータの回転方向の両側部を囲繞するものであればよく、その形状は永久磁石の形状に応じて適宜、選択することができる。特に、永久磁石を直方体状や立方体状に形成する場合、第一永久磁石囲繞部を断面略U字型に形成することにより、内周面を永久磁石のロータ側の端部及びロータの回転方向の両側部に密着させることができ、永久磁石の固定安定性、磁束の漏洩防止の信頼性に優れる。
第一永久磁石囲繞部はロータの外面に固着することができるが、ロータの外面の一部を、鉄,ケイ素鉄,パーマロイ等の強磁性体で形成し、第一永久磁石囲繞部の一部として用いてもよい。
【0015】
本発明の他の態様は、前記回転力出力装置であって、常磁性材料で形成され、前記永久磁石(4)の内端面が前記ロータ(3)の外周面に対面し、かつ、前記ロータ(3)と共に回転する第一ロータ囲繞部(5a)を備えている。
この構成により、上記の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)常磁性材料で形成され、第一界磁部の外周を囲繞してロータと共に回転する第一ロータ囲繞部を有することにより、第一ロータ囲繞部にロータの回転方向と同じ向きに力が働き、ロータの回転を加速或いは安定化させることができ、回転の効率性、安定性に優れ、出力されるトルクの増加、安定化を図ることができる。これは、ロータの回転時にコイルに磁界が発生し、その中を第一ロータ囲繞部が通過することにより、渦電流(eddy current)が発生し、その磁界の作用によって第一ロータ囲繞部をロータの回転方向に付勢する力が発生しているためと考えている。
(2)第一界磁部の外周を第一ロータ囲繞部で囲繞することにより、ロータの回転時に、ロータ表面に突出した永久磁石が抵抗となることがなく、ロータをスムーズに回転させることができ、回転の効率性に優れると共に、ロータ外周の気流を安定させて、風切り音を低減することができ、低騒音性に優れる。
(3)第一界磁部の外周を囲繞する第一ロータ囲繞部によって永久磁石の外表面を確実に固定し、永久磁石の落下を防止することができ、永久磁石の固定の安定性、動作の確実性に優れる。
【0016】
ここで、第一ロータ囲繞部は常磁性材料で形成されるが、特にアルミニウムが好適に用いられる。第一ロータ囲繞部は、初めから円筒状などに成型したものを第一界磁部の外周に嵌合するようにして取り付けてもよいし、シート状(帯状)に形成したものを巻き付けるようにして取り付けてもよい。特に、シート状(帯状)で裏面に接着層を有するものは簡単に固定することができ、組立作業性に優れる。尚、ロータの外周面と永久磁石表面との段差を埋めるために永久磁石の側部外周(円周方向に配置される永久磁石と永久磁石の間)にスペーサを配置してもよい。
【0017】
本発明の他の態様は、前記回転力出力装置であって、前記第一界磁部(5)は、前記永久磁石(4)が回転する際に前記各永久磁石の隣同士の各外端面の移動軌跡である軌道面に沿うように、強磁性体で表面が山形状又は円弧状に形成され、各々の前記永久磁石(4)の前記外端面に固着されて表面から出る磁束を分散させて均一化させる第一磁束均一化部材(17a)を備えている。
この構成により、上記の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)第一界磁部が、強磁性体で表面が前記永久磁石の軌道面に沿うように山形状又は円弧状に形成され各々の永久磁石のコア側の端面に固着されて表面から出る磁束を分散させて均一化させる第一磁束均一化部材を備えていることにより、永久磁石の磁束が第一磁束均一化部材に導かれ、第一磁束均一化部材から出た磁束がコアに導かれる際に、磁束は永久磁石の軌道面に沿うように分散してタイミングをずらしながらコアに向かうので、第一磁束均一化部材がコアの第一対向面を通過する際に第一磁束均一化部材が単位時間当たりにコアから受ける吸引力(回転を阻害する力)も分散して小さくなる。これにより、わずかな駆動力でロータを回転させることができ、回転効率を向上させることができる。
【0018】
ここで、第一磁束均一化部材としては、鉄,ケイ素鉄,パーマロイ,フェライト,アルニコ合金(Fe-Al-Ni-Co合金)等の強磁性体で、塊状,板状等に形成されたものを用いることができる。硬磁性体,軟磁性体のいずれも用いることができ、着磁を施したものを用いることもできる。着磁を施した第一磁束均一化部材は、異方性、等方性のいずれも用いることができるが、異方性の第一磁束均一化部材を用いる場合は、配向方向がロータの回転方向に沿って向くように、第一磁束均一化部材を永久磁石に固着するのが望ましい。回転方向に沿って隣り合う第一磁束均一化部材間を結ぶ漏れ磁束を増加させ、ロータの回転負荷トルクを減少させられるからである。
第一磁束均一化部材は、厚いものを永久磁石の端面に一枚固着することができる。また、薄い第一磁束均一化部材を複数枚重ねて、永久磁石の端面に固着することもできる。
永久磁石の種類に応じて、第一磁束均一化部材の材質を適宜選択することができる。材質によって第一磁束均一化部材の透磁率が変わり、磁気飽和を起こす磁束密度が変わり漏洩磁束が生じるからである。特に、保磁力が永久磁石材料の保磁力よりも小さい第一磁束均一化部材の中で、できるだけ保磁力が大きなものが用いられる。例えば、永久磁石として希土類磁石を用いた場合は、フェライト,アルニコ合金等の強磁性体が好適に用いられる。さらに、強磁性体に着磁を施したフェライト磁石,アルニコ磁石等の着磁処理済強磁性体が好適に用いられる。第一磁束均一化部材から出る磁束密度を大きくでき、回転出力を上げられるからである。
【0019】
第一磁束均一化部材の大きさとしては、永久磁石の端面より小さくて、端面の一部を覆うようなものでもよいが、端面と同一の大きさかそれより大きくするのが好ましい。永久磁石の端面を完全に覆うことにより、端面から出る磁束のほとんど全てを第一磁束均一化部材の中に入れるためである。
第一磁束均一化部材の材質や形状、大きさ、厚さ、枚数等を適宜選択することにより、第一磁束均一化部材がコアから受ける反発力や吸引力を設計することができる。
第一磁束均一化部材は、永久磁石の端面に密接して固着してもよいし、適当な間隔をあけて固着してもよい。固着する手段としては、ボルト等の締結部材や接着剤等を用いることができる。また、合成樹脂製等で形成されたケース内に永久磁石と第一磁束均一化部材を収容することもできる。
【0020】
コアの第一対向面と対向する第一磁束均一化部材の表面の形状は、永久磁石の端面の回転軌道面の形状に応じて、第一磁束均一化部材から出る磁束を均一化(分散)させるように適宜、設計することができる。具体的には、柱状に形成されたロータの外周面に永久磁石を配置した場合には、永久磁石の端面の回転軌道面は立体的な円環帯状面となるので、第一磁束均一化部材の表面は、中央部を突き出した円弧状(湾曲状)や山形状等に形成するのが好ましい。また、板状に形成されたロータの平板面に永久磁石を配置した場合には、永久磁石の端面の回転軌道面は平面的な円環状となるので、第一磁束均一化部材の表面は、平坦状に形成するのが好ましい。
コアは、アルミニウム,ステンレス鋼,真鍮等の非磁性材料や合成樹脂等で形成されたケーシングに取り付けられ、磁気的に絶縁される。
【0021】
第一磁束均一化部材と、第一磁束均一化部材と対向する第一対向面と、の間隔(ギャップ)は、回転効率に影響を与える。該間隔(ギャップ)を小さくすることで、回転効率を向上させることができ、回転数が低い場合でも大きなトルクを発生させることができる。このため、第一磁束均一化部材と第一対向面との間隔を調整する間隔調整手段を設けるのが望ましい。第一界磁部の外側にコアを配置して回転力出力装置を組立てる際、第一磁束均一化部材と第一対向面との間隔を、間隔調整手段を用いて所定の範囲内に調整することで、回転効率を高められるからである。
間隔調整手段としては、電動式,油圧式,機械式等の駆動機構を有し、永久磁石やコアを上下方向や左右方向に移動自在にして、第一磁束均一化部材と第一対向面の間隔を調整するものが用いられる。
尚、第一界磁部の外周を第一ロータ囲繞部で囲繞する場合は、第一磁束均一化部材の外表面を第一ロータ囲繞部で囲繞すればよい。
【0022】
本発明の他の態様は、前記回転力出力装置で あって、前記ロータ(3)の、前記第一界磁部(5)形成位置とは反対側の対称位置に、前記第一界磁部(5)と同一の配置状態で並設されるとともに、互いに隣り合う永久磁石(14)の磁極どうしが異なるような逆向きの状態で、前記ロータ(3)の回転方向に沿って前記永久磁石(14)が周設された第二界磁部(15)と、前記コア(6)の他端部に形成され前記第二界磁部(15)とギャップを介して対向する第二対向面(6b)と、
を備え、前記ロータ(3)の回転軸である界磁側中心線(x)と、前記第一対向面(6a)の中心と前記第二対向面(6b)の中心とを結ぶコア側中心線(Y)と、の間にずれ角αが形成されている。
この構成により、上記の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)第一界磁部の永久磁石の端面の中心と第二界磁部の永久磁石の端面の中心とを結ぶ界磁側中心線と、第一対向面の中心と第二対向面の中心とを結ぶコア側中心線と、の間にずれ角αが形成されているので、ロータの回転により、第一界磁部がコアから吸引力(又は反発力)を受けているときに、第二界磁部がコアから反発力(又は吸引力)を受けることになり、ロータのいかなる位相においてもロータの回転を阻害するコアの磁界磁力を軽減させることができ、ロータの回転負荷トルクを軽減させることができる。
【0023】
ここで、第二界磁部における永久磁石は、前述の第一界磁部における永久磁石と同様のものなので、説明を省略する。
回転力出力装置が第一界磁部と並設された第二界磁部を有する場合、コアは略U字型或いは馬蹄形に形成され、コアの一端部に第一界磁部とギャップを介して対向する第一対向面が形成され、他端部に第二界磁部とギャップを介して対向する第二対向面が形成される。そして、各々のコアの一端部側及び他端部側にコイルが巻回されており、上記と同様に、全てのコイルの端末同士のオープンとショートをスイッチング部で切替える。
ずれ角αは、ロータの回転方向と略直交する位置に配置された第一界磁部の永久磁石の端面の中心と第二界磁部の永久磁石の端面の中心とを結ぶ界磁側中心線と、第一対向面の中心と第二対向面の中心とを結ぶコア側中心線と、を求め、ロータの中心軸と界磁側中心線との間に投影面を置き、ロータの中心軸を視点として、界磁側中心線とコア側中心線上の任意の点と視点とを直線(投影線)で結んだ場合に、投影面上に形成された投影図における界磁側中心線とコア側中心線とのなす角である。
ずれ角αとしては、1~20°好ましくは3~10°が好適に用いられる。ずれ角αが3°より小さくなるにつれ、コアの磁界磁力により第一界磁部と第二界磁部が受ける吸引力や反発力によりコッキング(ロータの回転動作がギクシャクする現象)が生じ易くなるとともに、回転負荷トルクの軽減効果が低下する傾向がみられ、10°より大きくなるにつれコイルに生じる電流に位相差が生じ吸引力や反発力が低下する傾向がみられる。特に、1°より小さくなるか20°より大きくなると、これらの傾向が著しくなるため、いずれも好ましくない。
【0024】
本発明の他の態様は、前記回転力出力装置であって、強磁性体で形成され、前記第二界磁部(15)の、前記各永久磁石(14)の、前記ロータ(3)側に対向する内端面、及び、前記ロータ(3)の回転方向の両側部、を囲繞する第二永久磁石囲繞部(16b)を備えた構成を有している。
この構成により、上記の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)強磁性体で形成され、第二界磁部の永久磁石のロータ側の端部及びロータの回転方向の両側部を囲繞する第二永久磁石囲繞部を有することにより、磁束の漏洩を抑え、永久磁石のコア側の端面での磁束密度を高められるので、コアに導かれる磁束密度も高くなり、コイルで発生する反発力や吸引力も増大して、ロータの回転を補助することができ、ロータの回転の安定性、駆動の効率性に優れる。
(2)第二界磁部の永久磁石のロータ側の端部及びロータの回転方向の両側部を囲繞する第二永久磁石囲繞部を有することにより、永久磁石の外周を保護できると共に、第二永久磁石囲繞部で永久磁石を簡単かつ確実に固定してロータからの永久磁石の脱落を防ぐことができ、組立作業性、耐久性に優れる。
【0025】
ここで、第二永久磁石囲繞部の材質、形状、構造などは第一永久磁石囲繞部と同様なので説明を省略する。
尚、第一永久磁石囲繞部と第二永久磁石囲繞部は別々に独立して形成してもよいし、一体に形成或いは連結して形成してもよい。第一永久磁石囲繞部と第二永久磁石囲繞部を一体に形成或いは連結して形成した場合、1つの永久磁石囲繞部の両端側に、第一界磁部の永久磁石の他端面と第二界磁部の永久磁石の他端面とを固着することができ、さらに永久磁石の減磁を抑制することができる。
【0026】
本発明の他の態様は、前記回転力出力装置であって、常磁性材料で形成されて前記ロータ(3)の外周部分に設けられ、前記第二界磁部(15)の外周を囲繞して前記ロータ(3)と共に回転する第二ロータ囲繞部を備えている。
この構成により、上記の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)常磁性材料で形成され、第二界磁部の外周を囲繞してロータと共に回転する第二ロータ囲繞部を備えることにより、第二ロータ囲繞部にロータの回転方向と同じ向きに力が働き、ロータの回転を加速或いは安定化させることができ、回転の効率性、安定性に優れ、出力されるトルクの増加、安定化を図ることができる。これは、ロータの回転時にコイルに磁界が発生し、その中を第二ロータ囲繞部が通過することにより、渦電流が発生するため、その磁界の作用によって第二ロータ囲繞部をロータの回転方向に付勢する力が発生していると考えている。
(2)第二界磁部の外周を第二ロータ囲繞部で囲繞することにより、ロータの回転時に、ロータ表面に突出した永久磁石が抵抗となることがなく、ロータをスムーズに回転させることができ、回転の効率性に優れると共に、ロータ外周の気流を安定させて、風切り音を低減することができ、低騒音性に優れる。
(3)第二界磁部の外周を囲繞する第二ロータ囲繞部によって永久磁石の外表面を確実に固定し、永久磁石の落下を防止することができ、永久磁石の固定の安定性、動作の確実性に優れる。
【0027】
ここで、第二ロータ囲繞部は第一ロータ囲繞部と同様なので説明を省略する。尚、第一ロータ囲繞部と第二ロータ囲繞部は独立して形成してもよいし、一体に形成或いは連結して形成してもよい。
【0028】
本発明の他の態様は、前記回転力出力装置であって、前記第二界磁部(15)は、前記永久磁石(14)が回転する際に前記各永久磁石(14)の隣同士の各外端面(14a)の移動軌跡である軌道面に沿うように、強磁性体で表面が山形状又は円弧状に形成され、各々の前記永久磁石(14)の前記コア(6)側の前記外端面(14a)に固着されて表面から出る磁束を分散させて均一化させる第二磁束均一化部材(17b)を備えている。
この構成により、上記の作用に加え、以下のような作用が得られる。(1)第二界磁部が、強磁性体で表面が前記永久磁石の軌道面に沿うように山形状又は円弧状に形成され各々の永久磁石のコア側の端面に固着されて表面から出る磁束を分散させて均一化させる第二磁束均一化部材を備えていることにより、永久磁石の磁束が第二磁束均一化部材に導かれ、第二磁束均一化部材から出た磁束がコアに導かれる際に、磁束は永久磁石の軌道面に沿うように分散してタイミングをずらしながらコアに向かうので、第二磁束均一化部材がコアの第二対向面を通過する際に第二磁束均一化部材が単位時間当たりにコアから受ける吸引力(回転を阻害する力)も分散して小さくなる。これにより、わずかな駆動力でロータを回転させることができ、回転効率を向上させることができる。
【0029】
ここで、第二界磁部における第二磁束均一化部材としては、前述の第一界磁部における第一磁束均一化部材と同様のものなので、説明を省略する。また、第二磁束均一化部材とコアの第二対向面とのギャップについても、前述の第一磁束均一化部材とコアの第一対向面とのギャップと同様なので、説明を省略する。
尚、第二磁束均一化部材の底面も、第一磁束均一化部材の底面と同様に、永久磁石の端面に密接させるのが好ましい。
また、第一磁束均一化部材と第二磁束均一化部材は独立して形成してもよいし、一体に形成或いは連結して形成してもよい。
【0030】
本発明に係る回転始動力アシスト付きモータは、前記回転力出力装置と、前記回転力出力装置の前記回転軸を回転させる駆動用モータと、を備えた構成を有している。
この構成により、以下のような作用が得られる。
(1)回転力出力装置の回転軸を回転させる駆動用モータを小型化することができ、小さな力で回転力出力装置のロータを回転させて大きな出力(トルク)を得ることができ、省エネルギー性、駆動効率性に優れるので、自動車,船舶,鉄道,航空機,建設機械等に搭載する発電機等の駆動や工場,店舗,住宅等に電力を供給する自家発電用等の発電機等を駆動するのに好適な省エネルギー型のモータとして用いることができる。
【0031】
ここで、回転力出力装置のロータの回転開始時は複数のコイルの各々の端末同士をオープンにすることにより、ロータの回転負荷トルクを著しく減少させ、わずかな駆動力でロータを回転させることができるので、駆動用モータを小型化することができるが、回転開始後に回転力出力装置のコイルの各々の端末同士をショートさせることにより、電磁誘導によってコイルに流れる電流でコイルを磁化させ、コイルと永久磁石との間に発生する反発力及び吸引力でロータの回転をアシストすることができるため、駆動用モータの消費電力を低減させて駆動効率を高めることができ、省エネルギー性に優れる。
【発明の効果】
【0032】
以上のように構成された本発明の回転力出力装置及びそれを用いた回転始動力アシスト付きモータによれば、以下の効果が得られる。
本発明によれば、以下のような効果が得られる。
(1)駆動用モータ等の回転始動させる駆動装置を小型化することができ、始動の際、回転駆動時の省力性、省電力性に優れると共に、回転開始後はコイルの各々の端末同士をショートさせ電磁誘導によってコイルに流れる電流でコイルを磁化させ、コイルに発生する磁界の作用によって永久磁石との間に発生する反発力及び吸引力によってロータを回転させ、ロータの回転の変動を抑えて常に略一定の安定した回転を行って、出力を高めることができる回転の効率性、均一性、出力の安定性、省エネルギー性に優れた回転力出力装置を提供することができる。
【0033】
また、本発明によれば、以下のような効果が得られる。
(1)全てのコアが同時に永久磁石と重なることや全ての永久磁石が同時にコアと重なることがなく、少しずつタイミングをずらしながら各々のコイルを順次、磁化させることができ、全てのコイルから同時に反発力或いは吸引力が作用することがないので、ロータの回転にブレーキがかかることがなく、いずれかのコイルと永久磁石の間に働く反発力或いは吸引力によってロータの回転を助けて、ロータを安定して回転させることができるロータの回転の安定性、効率性、省エネルギー性に優れた回転力出力装置を提供することができる。
【0034】
本発明の他の態様によれば、上記の効果に加え、以下のような効果が得られる。
(1)各々のコイルを流れる交流電流を直流電流に変換して出力することができるので、各々のブリッジ整流器の出力端子を並列に接続して並列回路を形成することができ、1つの切替部で並列回路のオンとオフを切替えるだけで、全てのコイルの各々の端末同士のショートとオープンを同時に切替えることが可能で、回路を簡素化することができる動作の簡便性、確実性、安定性に優れた回転力出力装置を提供することができる。
【0035】
本発明の他の態様によれば、上記の効果に加え、以下のような効果が得られる。
(1)磁束の漏洩を抑え、永久磁石のコア側の端面での磁束密度を高めることができ、コアに導かれる磁束密度も高く、コイルで発生する反発力や吸引力も増大させて、ロータの回転を補助することができるロータの回転の安定性、駆動の効率性に優れた回転力出力装置を提供することができる。
【0036】
本発明の他の態様によれば、上記の効果に加え、以下のような効果が得られる。
(1)第一ロータ囲繞部にロータの回転方向と同じ向きに力が働き、ロータの回転を加速或いは安定化させ、出力されるトルクの増加、安定化を図ることができる回転の効率性、安定性に優れた回転力出力装置を提供することができる。
【0037】
本発明の他の態様によれば、上記の効果に加え、以下のような効果が得られる。
(1)第一磁束均一化部材がコアの第一対向面を通過する際に第一磁束均一化部材が単位時間当たりにコアから受ける吸引力(回転を阻害する力)を分散させて小さくし、わずかな駆動力でロータを回転させることができる回転の効率性に優れた回転力出力装置を提供することができる。
【0038】
本発明の他の態様によれば、上記の効果に加え、以下のような効果が得られる。
(1)ロータのいかなる位相においてもロータの回転を阻害するコアの磁界磁力を軽減させることができ、ロータの回転負荷トルクを軽減させることができる省力性、回転の効率性に優れた回転力出力装置を提供することができる。
【0039】
本発明の他の態様によれば、上記の効果に加え、以下のような効果が得られる。
(1)磁束の漏洩を抑え、永久磁石のコア側の端面での磁束密度を高めることができ、コアに導かれる磁束密度も高く、コイルで発生する反発力や吸引力も増大させて、ロータの回転を補助することができるロータの回転の安定性、駆動の効率性に優れた回転力出力装置を提供することができる。
【0040】
本発明の他の態様によれば、上記の効果に加え、以下のような効果が得られる。
(1)第二ロータ囲繞部にロータの回転方向と同じ向きに力が働き、ロータの回転を加速或いは安定化させ、出力されるトルクの増加、安定化を図ることができる回転の効率性、安定性に優れた回転力出力装置を提供することができる。
【0041】
本発明の他の態様によれば、上記の効果に加え、以下のような効果が得られる。
(1)第二磁束均一化部材がコアの第二対向面を通過する際に第二磁束均一化部材が単位時間当たりにコアから受ける吸引力(回転を阻害する力)も分散させて小さくし、わずかな駆動力でロータを回転させることができる回転の効率性に優れた回転力出力装置を提供することができる。
【0042】
本発明に係る回転始動力アシスト付きモータによれば、以下のような効果が得られる。
(1)回転力出力装置の回転軸を始動回転させる駆動用モータを小型化することができ、小さな力で回転力出力装置のロータを回転させて大きな出力(トルク)を得ることができ、省エネルギー性、駆動効率性に優れ、自動車,船舶,鉄道,航空機,建設機械等に搭載する発電機等の駆動や工場,店舗,住宅等に電力を供給する自家発電用等の発電機等を駆動するのに好適な省エネルギー型のモータを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0043】
【
図1】実施の形態1の回転力出力装置の構成を示す模式図
【
図2】実施の形態1の回転力出力装置を用いた磁力アシスト付きモータを示す模式平面図
【
図5】(a)実施の形態2の回転力出力装置の第一永久磁石囲繞部及び第二永久磁石囲繞部を示す模式斜視図(b)実施の形態2の回転力出力装置の第一磁束均一化部材及び第二磁束
均一化部材を示す模式斜視図
【発明を実施するための形態】
【0044】
以下、本発明を実施するための最良の形態を、
添付図面を参照しながら説明する。
尚、本発 明は以下に説明する実施の形態に限定されるものではない。
(実施の形態1)
図1は実施の形態1の回転力出力装置及びそれを用いた回転始動力アシスト付きモータの構成を示す模式図であり、
図2は実施の形態1の回転力出力装置を備えた回転始動力アシスト付きモータを示す模式平面図である。
図1において、1は本発明の実施の形態1における回転力出力装置、2は回転力出力装置の回転軸、3は非磁性の合成樹脂製やステンレス鋼等で円柱状に形成され回転軸2に取り付けられた回転力出力装置及びそれを用いた回転始動力アシスト付きモータ1のロータ、5は後述するコア6側の隣り合う端面4aの磁極どうしが互いに異なるように(N極とS極が交互になるように)ロータ3の回転方向に沿って永久磁石4が6個配置された回転力出力装置1の第一界磁部、5aは常磁性材料で形成され第一界磁部5の外周を囲繞してロータと共に回転する回転力出力装置1の第一ロータ囲繞部、6は鉄,ケイ素鉄,パーマロイ等の強磁性体で形成され第一界磁部5と間隔をあけて配置されて各々が磁気的に絶縁された回転力出力装置1の8個のコア、6aは各々のコア6の一端部に形成され第一界磁部5とギャップを介して対向するコア6の第一対向面、7は各々のコア6に独立して巻回された複数のコイル、8はロータ3の回転開始時は複数のコイル7の各々の端末同士をオープンにしロータ3の回転開始後は複数のコイル7の各々の端末同士をショートさせる回転力出力装置1のスイッチング部、9は各々のコイル7の端末に接続されたスイッチング部8のブリッジ整流器、10は各々のブリッジ整流器9の出力端子を並列に接続するスイッチング部8の並列回路、10aは並列回路10のオンとオフを切替えるスイッチング部8の切替部である。
尚、コア6はアルミニウム,ステンレス鋼,真鍮等の非磁性材料や合成樹脂等で形成されたケーシング(図示せず)の内側にボルト等の締結部材で磁気的に絶縁された状態で固定される。
【0045】
永久磁石4としては、アルニコ磁石、フェライト磁石、Fe-Cr-Co磁石、サマリウム系,ネオジウム系等の希土類磁石等の中から、適宜選択して用いることができる。大きな出力を得る場合には、磁束密度も保磁力も大きな希土類磁石、特にネオジウム系の永久磁石を用いるのが好ましい。
永久磁石4は直方体や立方体等に形成された1つの塊状の永久磁石を用いてもよいし、板状永久磁石を複数枚重ねて吸着させたものを用いてもよい。
本実施の形態では、第一界磁部5のロータ3の回転方向に6個の永久磁石4を等角度間隔で配置し、それに対して8個のコア6を等角度間隔で対向配置した。永久磁石4の数とコア6の数とが互いに相手方の数の整数倍でないので、
図1に示したように、全ての永久磁石4が同時にコア6と重なることがなく、少しずつタイミングをずらしながら各々のコイル7を順次、磁化させることができ、全てのコイル7から同時に反発力或いは吸引力が作用することがないので、ロータ3の回転にブレーキがかかることがなく、いずれかのコイル7と永久磁石4の間に働く反発力或いは吸引力によってロータ3の回転を助けることができ、小さな力でロータ3を安定して回転させることができる。
尚、永久磁石4の数とコア6の数の組合せはこれに限定されるものではなく、全ての永久磁石4又はコア6が、対向するコア6又は永久磁石4と同時に重ならなければよい。
【0046】
以上のように構成された本発明の実施の形態1における回転
力出力装置の動作(使用方法)について、図面を参照しながら説明する。
図2は実施の形態1の回転
力出力装置を用いた磁力アシスト付きモータを示す模式平面図である。
図2中、20は実施の形態1の回転
力出力装置1を用いた磁力アシスト付きモータ、21は磁力アシスト付きモータ20の回転
力出力装置1を駆動する回転駆動装置としての駆動用モータ、21aは駆動用モータ21の出力軸、22は回転
力出力装置1の回転軸2と駆動用モータ21の出力軸21aとの間に巻掛けられて駆動用モータ21の出力を回転
力出力装置1に伝達するベルトなどの動力伝達部材である。
磁力アシスト付きモータ20は駆動用モータ20で駆動されることにより回転軸2の他端側から大きな出力(トルク)を得ることができるが、
図1において、回転
力出力装置1のロータ3の回転開始時は、スイッチング部8の切替部10aにより、各々のコイル7の端末同士をオープンにしておく。これにより、コイル7には電流が流れないため、ロータ3の回転負荷トルクを減少させることができ、わずかな駆動力でロータ3を回転させることができるので、駆動用モータ20を小型化することができる。
ロータ3の回転開始後は、スイッチング部8の切替部10aにより、各々のコイル7の端末同士を同時にショートさせる。これにより、コイル7に発生する磁界の作用で永久磁石4に対してロータ3の回転を助ける反発力或いは吸引力が働き、ロータ3の回転の変動を抑えて、小さな力で常に略一定の安定した回転を得ることができ、駆動用モータ21の消費電力を低減させて駆動効率を高めることができる。
スイッチング部8は、各々のコイル7の端末同士のオープンとショートを切替えることができればよいが、ロータ3の回転数などを検出して自動的にオープンとショートの切替えを行うものが好適に用いられる。
尚、スイッチング部8は本実施の形態に限られるものではなく、ブリッジ整流器9を用いて並列回路10を形成する代わりに、各々のコイル7の端末間にオープンとショートを切替えるスイッチ(切替部)を設けてもよい。
【0047】
本発明の実施の形態1における回転力出力装置によれば、以下のような作用が得られる。
(1)各々のコアに独立して巻回された複数のコイルと、ロータの回転開始時は複数のコイルの各々の端末同士をオープンにしロータの回転開始後は複数のコイルの各々の端末同士をショートさせるスイッチング部を有するので、回転開始時にコイルの各々の端末同士をオープンにして電磁誘導によりコイルに電流が流れないようにして、コイルが磁化しないようにすることで、ロータの回転負荷トルクを著しく減少させ、わずかな駆動力でロータを回転させることができる。この結果、駆動用モータ等の回転駆動装置を小型化することができ、駆動時の省力性、省電力性に優れると共に、回転開始後はコイルの各々の端末同士をショートさせ電磁誘導によってコイルに流れる電流でコイルを磁化させ、コイルに発生する磁界の作用によって永久磁石との間に発生する反発力及び吸引力によってロータを回転させ、ロータの回転の変動を抑えて常に略一定の安定した回転を行って、出力を高めることができ、回転の効率性、均一性、出力の安定性、省エネルギー性に優れる。
(2)ロータの回転開始時と回転開始後に、スイッチング部により複数のコイルの各々の端末同士のオープンとショートを切替えるだけで、容易に回転開始時のロータの回転負荷トルクを低減させると共に、回転開始後のロータの回転を安定化させることができ、ロータの回転中に複雑な操作などを行う必要がなく、操作を簡素化することができ、量産性、制御の容易性に優れる。
(3)永久磁石から各々のコアに導かれる磁束はロータの回転に従って変化するが、第一界磁部の永久磁石とコアが、それぞれ等角度間隔で配置される時に、第一界磁部の永久磁石の数とコアの数とが互いに相手方の数の整数倍でないことにより、全てのコアが同時に永久磁石と重なることや全ての永久磁石が同時にコアと重なることがなく、少しずつタイミングをずらしながら各々のコイルを順次、磁化させることができ、全てのコイルから同時に反発力或いは吸引力が作用することがないので、ロータの回転にブレーキがかかることがなく、いずれかのコイルと永久磁石の間に働く反発力或いは吸引力によってロータの回転を助けて、ロータを安定して回転させることができ、ロータの回転の安定性、効率性、省エネルギー性に優れる。
(4)スイッチング部が、各々のコイルの端末間に接続されたブリッジ整流器を有することにより、各々のコイルを流れる交流電流を直流電流に変換して出力することができるので、各々のブリッジ整流器の出力端子を並列に接続して並列回路を形成することができ、並列回路に配設され複数のコイルの各々の端末同士のオープンとショートをまとめて切替える切替部で、全てのコイルの各々の端末同士のショートとオープンを同時に切替えることが可能で、回路を簡素化することができ、動作の簡便性、確実性、安定性に優れる。
(5)常磁性材料で形成され、第一界磁部の外周を囲繞してロータと共に回転する第一ロータ囲繞部を有することにより、第一ロータ囲繞部にロータの回転方向と同じ向きに力が働き、ロータの回転を加速或いは安定化させることができ、回転の効率性、安定性に優れ、出力されるトルクの増加、安定化を図ることができる。これは、ロータの回転時にコイルに磁界が発生し、その中を第一ロータ囲繞部が通過することにより、渦電流が発生し、その磁界の作用によって第一ロータ囲繞部をロータの回転方向に付勢する力が発生しているためと考えている。
(6)第一界磁部の外周を第一ロータ囲繞部で囲繞することにより、ロータの回転時に、ロータ表面に突出した永久磁石が抵抗となることがなく、ロータをスムーズに回転させることができ、回転の効率性に優れると共に、ロータ外周の気流を安定させて、風切り音を低減することができ、低騒音性に優れる。
(7)第一界磁部の外周を囲繞する第一ロータ囲繞部によって永久磁石の外表面を確実に固定し、永久磁石の落下を防止することができ、永久磁石の固定の安定性、動作の確実性に優れる。
【0048】
本発明の実施の形態1における回転力出力装置を用いた磁力アシスト付きモータによれば、以下のような作用が得られる。
(1)回転力出力装置の回転軸を回転させる駆動用モータを小型化することができ、小さな力で回転力出力装置のロータを回転させて大きな出力(トルク)を得ることができ、省エネルギー性、駆動効率性に優れるので、自動車,船舶,鉄道,航空機,建設機械等に搭載する発電機等の駆動や工場,店舗,住宅等に電力を供給する自家発電用等の発電機等を駆動するのに好適な省エネルギー型のモータとして用いることができる。
【0049】
(実施の形態2)
図3は実施の形態2の回転力出力装置の模式正面図であり、
図4は
図3のA-A線断面図であり、
図5(a)は実施の形態2の回転力出力装置の第一永久磁石囲繞部及び第二永久磁石囲繞部を示す模式斜視図であり、
図5(b)は実施の形態2の回転力出力装置の第一磁束均一化部材及び第二磁束
均一化部材を示す模式斜視図である。尚、実施の形態1と同様のものは同一の符号を付して説明を省略する。
図3及び
図4において、6bは後述する第二界磁部15と対向するようにコア6の他端部に形成された第二対向面、7a,7bはそれぞれコア6の第一対向面6a及び第二対向面6bの近くに巻回されたコイル、15はロータ3の回転方向に沿って永久磁石14のコア6側の端面14aの磁極が交互に異なるように(N極とS極が交互になるように)複数配置され、ロータ3の回転方向と略直交する位置に配置された永久磁石4の端面4aと永久磁石14の端面14aの磁極が異なるように第一界磁部5と並設された回転力出力装置1の第二界磁部、xはロータ3の回転方向と略直交する位置に配置された第一界磁部5の永久磁石4の端面4aの中心と第二界磁部15の永久磁石14の端面14aの中心とを結ぶ界磁側中心線(
図3)、Yはコア6に形成された第一対向面6aの中心と第二対向面6bの中心とを結ぶコア側中心線(
図3)、αは界磁側中心線xとコア側中心線Yとのずれ角(
図3)である。
本実施の形態においては、界磁側中心線
xはロータ3の回転方向と直交し、コア側中心線Yが界磁側中心線xに対してずれ角α=1~20°の範囲で斜交するようにコア6が配置されてい
る。
【0050】
本実施の形態では、略U字型或いは馬蹄形に形成された各々のコア6の一端部側(第一対向面6aの近く)及び他端部側(第二対向面6bの近く)にコイル7a,7bが巻回されているが、実施の形態1と同様に、各々のコア6に巻回されたコイル7a,7bの端末間にそれぞれブリッジ整流器9を接続し、各々のブリッジ整流器9の出力端子を並列に接続して並列回路10を形成することにより、1つの切替部10aで並列回路10のオン、オフを切替えて、全てのコイル7a,7bの各々の端末同士のショートとオープンを同時に切替えることができる。
尚、ブリッジ整流器9を用いて並列回路10を形成する代わりに、各々のコア6のコイル7a,7bの端末間にオープンとショートを切替えるスイッチを設けてもよい。
【0051】
図5において、16aは鉄,ケイ素鉄,パーマロイ等の強磁性体で断面略U字型に形成されロータ3の外周に固着されて永久磁石4のロータ3側の端部及びロータ3の回転方向の両側部を囲繞する回転力出力装置1の第一永久磁石囲繞部、16bは第一永久磁石囲繞部16aと一体に形成され永久磁石14のロータ3側の端部及びロータ3の回転方向の両側部を囲繞する回転力出力装置1の第二永久磁石囲繞部、17aは鉄,ケイ素鉄,パーマロイ,フェライト,アルニコ合金(Fe-Al-Ni-Co合金)等の強磁性体で円弧状に形成され永久磁石4のコア6側の端面4a側に覆設された回転力出力装置1の第一磁束均一化部材、17bは第一磁束均一化部材17aと一体に形成され永久磁石14のコア6側の端面14a側に覆設された回転力出力装置1の第二磁束
均一化部材、18は各々の永久磁石4,14の端面4a,14aの外側に張り出した第一磁束均一化部材17a及び第二磁束
均一化部材17bの端部に貫設され第一磁束均一化部材17a及び第二磁束
均一化部材17bと第一永久磁石囲繞部16a及び第二永久磁石囲繞部16bとを連結する非磁性のボルト等の締結部材である。
【0052】
本実施の形態では第一界磁部5の永久磁石4を囲繞する第一永久磁石囲繞部16aと、第二界磁部15の永久磁石14を囲繞する第二永久磁石囲繞部16bを一体に形成したが、これらは独立して形成してもよい。
また、本実施の形態では、第一界磁部5の永久磁石4を覆う第一磁束均一化部材17aと、第二界磁部15の永久磁石14を覆う第二磁束均一化部材17bを一体に形成したが、これらは独立して形成してもよい。
尚、第一磁束均一化部材17a及び第二磁束均一化部材17bの外周を実施の形態1の第一ロータ囲繞部5aと同様のロータ囲繞部で囲繞してもよい。このとき、ロータ囲繞部は、第一界磁部5の外周を囲繞する第一ロータ囲繞部と第二界磁部15の外周を囲繞する第二ロータ囲繞部に分割してもよい。また、ロータ囲繞部を設ける場合、第一磁束均一化部材17a及び第二磁束均一化部材17bは省略してもよい。
実施の形態2の回転力出力装置1Aは、第一界磁部5に加え、第二界磁部15が並設されているが、動作や使用方法は実施の形態1と同様なので、説明を省略する。また、実施の形態2の回転力出力装置1Aは、実施の形態1の回転力出力装置1と同様に駆動用モータ21と組合せて磁力アシスト付きモータとして使用することができる。
【0053】
本発明の実施の形態2における発電機によれば、実施の形態1で得られる(1)乃至(4)の作用に加え、以下のような作用が得られる。
(1)強磁性体で形成され、第一界磁部及び第二界磁部の永久磁石のロータ側の端部及びロータの回転方向の両側部を囲繞する第一永久磁石囲繞部及び第二永久磁石囲繞部を有することにより、磁束の漏洩を抑え、永久磁石のコア側の端面での磁束密度を高められるので、コアに導かれる磁束密度も高くなり、コイルで発生する反発力や吸引力も増大して、ロータの回転を補助することができ、ロータの回転の安定性、駆動の効率性に優れる。
(2)第一界磁部及び第二界磁部の永久磁石のロータ側の端部及びロータの回転方向の両側部を囲繞する第一永久磁石囲繞部及び第二永久磁石囲繞部を有することにより、永久磁石の外周を保護できると共に、第一永久磁石囲繞部及び第二永久磁石囲繞部で永久磁石を簡単かつ確実に固定してロータからの永久磁石の脱落を防ぐことができ、組立作業性、耐久性に優れる。
(3)強磁性体で表面が永久磁石の軌道面に沿うように円弧状に形成され第一界磁部及び第二界磁部の各々の永久磁石のコア側の端面に固着されて表面から出る磁束を分散させて均一化させる第一磁束均一化部材及び第二磁束均一化部材を備えていることにより、永久磁石の磁束が第一磁束均一化部材及び第二磁束均一化部材に導かれ、第一磁束均一化部材及び第二磁束均一化部材から出た磁束がコアに導かれる際に、磁束は永久磁石の軌道面に沿うように分散してタイミングをずらしながらコアに向かうので、第一磁束均一化部材及び第二磁束均一化部材がコアの第一対向面及び第二対向面を通過する際に単位時間当たりにコアから受ける吸引力(回転を阻害する力)も分散して小さくなる。これにより、わずかな駆動力でロータを回転させることができ、回転効率を向上させることができる。
(4)第一界磁部の永久磁石の端面の中心と第二界磁部の永久磁石の端面の中心とを結ぶ界磁側中心線と、第一対向面の中心と第二対向面の中心とを結ぶコア側中心線と、の間にずれ角αが形成されているので、ロータの回転により、第一界磁部がコアから吸引力(又は反発力)を受けているときに、第二界磁部がコアから反発力(又は吸引力)を受けることになり、ロータのいかなる位相においてもロータの回転を阻害するコアの磁界磁力を軽減させることができ、ロータの回転負荷トルクを軽減させることができる。
【0054】
尚、実施の形態1においても、本実施の形態と同様に、第一界磁部5の永久磁石4を囲繞する第一永久磁石囲繞部16aや第一界磁部5の永久磁石4を覆う第一磁束均一化部材17aを設けてもよい。但し、第一磁束均一化部材17aを設ける場合、第一磁束均一化部材17aの外周を第一ロータ囲繞部5aで囲繞してもよいし、第一ロータ囲繞部5aを省略してもよい。
また、実施の形態1及び2の回転力出力装置1,1Aでは、コア6の内側でロータ3が回転する内転型の場合について説明したが、これに限定されるものではなく、コアの外側でロータが回転するアウタロータ型即ち外転型とすることもでき、この場合も同様の作用が得られる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明は、永久磁石がコアの対向面を通過する際にコアからロータの回転を阻害する方向に働く反発力や吸引力が少なく、ロータの回転負荷トルクを減少させ、わずかな駆動力でロータを回転させることができると共に、コイルに発生する磁界の作用によってロータの回転をアシストし、ロータの回転の変動を抑えて常に略一定で安定した回転を行って大きなトルクを得ることができる回転の効率性、均一性、安定性、省エネルギー性に優れた回転力出力装置及びそれを用いた磁力アシスト付きモータを提供し、発電機の駆動に用いることにより、効率的に発電を行うことができ、エネルギー不足の解消に貢献できる。
【符号の説明】
【0056】
1,1A 回転力出力装置
2 回転軸
3 ロータ
4,14 永久磁石
4a,14a 端面
5 第一界磁部
5a 第一ロータ囲繞部
6 コア
6a 第一対向面
6b 第二対向面
7,7a,7b コイル
8 スイッチング部
9 ブリッジ整流器
10 並列回路
10a 切替部
15 第二界磁部
16a 第一永久磁石囲繞部
16b 第二永久磁石囲繞部
17a 第一磁束均一化部材
17b 第二磁束均一化部材
18 締結部材
20 磁力アシスト付きモータ
21 駆動用モータ
21a 出力軸
22 動力伝達部材
x 界磁側中心線
Y コア側中心線
α ずれ角