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  • 特許-研磨パッド及びその製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】研磨パッド及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   B24B 37/26 20120101AFI20230511BHJP
   B24B 37/24 20120101ALI20230511BHJP
   B24D 3/00 20060101ALI20230511BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20230511BHJP
   C08J 5/14 20060101ALI20230511BHJP
   H01L 21/304 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B24B37/26
B24B37/24 C
B24D3/00 340
B29C59/02 Z
C08J5/14 CEY
C08J5/14 CFC
C08J5/14 CFD
C08J5/14 CFF
C08J5/14 CFG
H01L21/304 622F
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2018068866
(22)【出願日】2018-03-30
(65)【公開番号】P2019178248
(43)【公開日】2019-10-17
【審査請求日】2021-03-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005359
【氏名又は名称】富士紡ホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100079108
【弁理士】
【氏名又は名称】稲葉 良幸
(74)【代理人】
【識別番号】100109346
【弁理士】
【氏名又は名称】大貫 敏史
(74)【代理人】
【識別番号】100117189
【弁理士】
【氏名又は名称】江口 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100134120
【弁理士】
【氏名又は名称】内藤 和彦
(72)【発明者】
【氏名】中瀬 恵介
【審査官】山内 康明
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-236200(JP,A)
【文献】特開2010-253582(JP,A)
【文献】特開2008-184597(JP,A)
【文献】特開2002-158197(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0087250(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B24B 37/26
B24B 37/24
B24D 3/00
B29C 59/02
C08J 5/14
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
硬化性組成物を硬化してなる研磨層を有する研磨パッドの製造方法であって、
支持体と前記支持体上に設けられた感光性樹脂層とを備える版材の前記感光性樹脂層上にマスクを形成し、前記マスク側から前記感光性樹脂層へ光を照射し、該感光性樹脂層の光が照射された部分又は光が照射されなかった部分を選択的に取り除くことにより凹凸パターンを形成した凹凸版を作製する版作製工程と、
得られた前記凹凸版に形成された前記凹凸パターンに対して、前記硬化性組成物を接触させた状態で硬化させることにより、前記凹凸パターンが転写された前記硬化性組成物の硬化物を得る硬化工程と、
硬化した前記硬化物を前記凹凸版から剥離することにより、研磨層を得る剥離工程と、を有する、
研磨パッドの製造方法。
【請求項2】
前記硬化工程において、前記凹凸版の温度が130℃以下である、
請求項1に記載の研磨パッドの製造方法
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、研磨パッド及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
光学材料、半導体デバイス、ハードディスク用のガラス基板等のラッピングや研磨では、研磨パッドを使用した研磨加工が行われている。研磨パッドとしては、不織布を用いた研磨パッド、発泡又は無発泡ポリウレタンを用いた研磨パッド、固定砥粒を有する研磨パッド、凹凸パターンを有する樹脂層を研磨面として用いた研磨パッドなど、様々な種類のものが知られている。
【0003】
このなかでも凹凸パターンを有する樹脂層を研磨面として用いた研磨パッドは、凹凸パターンが形成する溝が、スラリーの流動性に作用し、結果として被研磨物を均一に研磨できるという利点を有する。このような研磨パッドの製造方法としては、平板状の母材の表面を切削加工して溝を形成する方法や、スクリーン印刷法を応用して基材上の凹凸パターンを形成する方法、凹凸パターンを有する金型を作製し、作製した金型を用いてモールド成形する方法が挙げられる。
【0004】
たとえば、特許文献1には、切削加工して溝を形成する方法においては溝幅や溝の深さなどの寸法の微細化に対して限界があるとし、金属からなるマスター金型を用いてマイクロモールディング法により表面に微細加工を施す研磨パッドの製造方法が開示されている。このようなモールド法を用いる手法では、細かい凹凸パターンを有する金型を用いることにより、従来の切削加工などでは加工困難な微細加工の必要な細かい凹凸パターンを形成することができるとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2005-74614号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1のように金属製の金型を用いる場合には、その金型を作製する際において切削加工などの微細加工を行わなければならず、結局、切削加工を完全に排除するような方法は提供されていない。また、金型は高価であるため、使用しにくいというデメリットのほか、例えば溝の幅や深さなどの凹凸パターンを適宜変更したいような場合には、改めて高価な金型を作製しなおす必要があるため、現実性に欠ける。
【0007】
また、スクリーン印刷法により基材上に凹凸パターンを形成する方法は、切削工程を経ることなく凹凸パターンを形成することが可能であるが、スクリーン印刷によって基材上に形成されたドット状の樹脂(凸部)はその自重と粘度により基材上に広がる傾向にあるため、高さの高い凸部を有する凹凸パターンを得るには限界がある。さらに、研磨パッドの凸部は研磨とともに削れて研磨レートが徐々に低下する傾向にあるが、凸部の高さが低い(溝の深さが浅い)場合には、研磨レートがすぐに低下するため、研磨パッドの製品寿命を十分に確保できないという問題がある。
【0008】
本発明は上記問題点に鑑みてなされたものであり、切削工程を経ることなく、より低コストで簡便に十分な高さのある凹凸パターンを形成することができる研磨パッドの製造方法、及び、当該方法により製造された研磨パッドを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記問題点について鋭意検討した。その結果、感光性樹脂層を備える版材を利用して凹凸版を形成する方法によれば、上記問題点を解決し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0010】
すなわち、本発明は以下のとおりである。
〔1〕
硬化性組成物を硬化してなる研磨層を有する研磨パッドの製造方法であって、
支持体と前記支持体上に設けられた感光性樹脂層とを備える版材の前記感光性樹脂層上にマスクを形成し、前記マスク側から前記感光性樹脂層へ光を照射し、該感光性樹脂層の光が照射された部分又は光が照射されなかった部分を選択的に取り除くことにより凹凸パターンを形成した凹凸版を作製する版作製工程と、
得られた前記凹凸版に形成された前記凹凸パターンに対して、前記硬化性組成物を接触させた状態で硬化させることにより、前記凹凸パターンが転写された前記硬化性組成物の硬化物を得る硬化工程と、
硬化した前記硬化物を前記凹凸版から剥離することにより、研磨層を得る剥離工程と、を有する、
研磨パッドの製造方法。
〔2〕
前記硬化工程において、前記凹凸版の温度が130℃以下である、
〔1〕に記載の研磨パッドの製造方法。
〔3〕
硬化性組成物を硬化してなる研磨層を備え、
前記研磨層の曲げ強さが50MPa以上である、
研磨パッド。
〔4〕
前記研磨層が、支持領域と、該支持領域上に形成された凸部とが一体成型された凹凸パターンを有するものである、
〔3〕に記載の研磨パッド。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、切削工程を経ることなく、より低コストで簡便に十分な高さのある凹凸パターンを形成することができる研磨パッドの製造方法、及び、当該方法により製造された研磨パッドを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本実施形態の研磨パッドの製造方法の工程図である。
図2】硬化工程の他の態様を示す工程図である。
図3】複数の凹凸版を用いた場合の凹凸版の使用の例を示す上面図である。
図4】複数の凹凸版を用いた硬化工程の例を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態(以下、「本実施形態」という。)について詳細に説明するが、本発明はこれに限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変形が可能である。
【0014】
〔研磨パッドの製造方法〕
本実施形態の研磨パッドの製造方法は、硬化性組成物を硬化してなる研磨層を有する研磨パッドの製造方法であって、支持体と前記支持体上に設けられた感光性樹脂層とを備える版材の前記感光性樹脂層上にマスクを形成し、前記マスク側から前記感光性樹脂層へ光を照射し、該感光性樹脂層の光が照射された部分又は光が照射されなかった部分を選択的に取り除くことにより凹凸パターンを形成した凹凸版を作製する版作製工程と、得られた前記凹凸版に形成された前記凹凸パターンに対して、前記硬化性組成物を接触させた状態で硬化させることにより、前記凹凸パターンが転写された前記硬化性組成物の硬化物を得る硬化工程と、硬化した前記硬化物を前記凹凸版から剥離することにより、研磨層を得る剥離工程と、を有する。
【0015】
上記のとおり、従来の金属製の金型を用いる方法においては、切削加工を完全に排除することはできず、コストの観点からの問題があり、また、溝の幅や深さなどの凹凸パターンの変更にも対応し難いという問題がある。また、スクリーン印刷法等を用いた方法では、高さの高い凸部を有する凹凸パターンを得ることが難しいという問題がある。
【0016】
これに対して、本実施形態の研磨パッドの製造方法においては、感光性樹脂層を備える版材から比較的容易に所望の凹凸パターンを有する凹凸版を得て、得られた凹凸版をそのまま型として用いることにより、任意の凹凸パターンを有する研磨層を効率的に得ることが可能となる。また、凹凸パターンを容易に変更することも可能となる。特に、本実施形態の研磨パッドの製造方法においては、一度作製した凹凸版は、硬化工程において繰り返し使用することができ、より一層の製造効率の向上を図ることができる。
【0017】
図1に、本実施形態の研磨パッドの製造方法のフローチャートを示す。図1に示すように、本実施形態の研磨パッドの製造方法においては、感光性樹脂層1と支持体2を備える版材3を用い、当該版材3に対してマスク4を介して光照射をすることで、切削加工などを経ることなく、凹凸版5を得ることができる。得られた凹凸版5は、用いるマスク4に応じて様々な凹凸パターン6を有することができ、また、凹凸パターン6は感光性樹脂層1の厚さに応じた溝を有するものとなる。続く硬化工程において、凹凸版5の凹凸パターン6は、硬化性組成物7の硬化物に精度よく転写される。そのため、本実施形態の製造方法により得られる研磨層9を有する研磨パッド10は、スクリーン印刷に比べてはるかに深い溝を有する凹凸パターン11を形成することができる。なお、図1に示す版作製工程では、光を照射した部分1aが残存して凹凸版5の凹凸パターン6を形成する態様が示されているが、後述するように光を照射していない部分1bが残存して凹凸版5の凹凸パターン6を形成する態様であってもよい。以下、各工程についてより詳細に説明する。
【0018】
〔版作製工程〕
版作製工程は、支持体と支持体上に設けられた感光性樹脂層とを備える版材の感光性樹脂層上にマスクを形成し、マスク側から感光性樹脂層へ光を照射し、該感光性樹脂層の光が照射された部分又は光が照射されなかった部分を選択的に取り除くことにより凹凸パターンを形成した凹凸版を作製する工程である。
【0019】
版材としては、支持体と支持体上に設けられた感光性樹脂層とを備えるものであれば特に制限されない。ここで、感光性樹脂層と上記支持体とを有するものとしては、特に制限されないが、例えば、カバーフィルムを剥離して感光性樹脂層を露出させた後の東洋紡社製のプリンタイト(商品名)、東レ社製のトレリーフ(商品名)などが挙げられる。
【0020】
感光性樹脂としては、光の作用により化学変化を起こし、その結果溶媒に対する溶解度または親和性に変化を生ずるものであれば特に制限さない。本実施形態において、感光性樹脂層を構成する感光性樹脂としては、光によって化学的または構造的な変化を生じる樹脂の他、樹脂自体が感光性をもたない場合でも光増感剤などを混入することにより感光性を発揮し得る樹脂組成物も含まれる。
【0021】
このような感光性樹脂としては、特に制限されないが、例えば、ポリエーテルアミド、ポリエーテルエステルアミド、アンモニウム塩型三級窒素原子含有ポリアミド、アミド結合を1つ以上有するアミド化合物と有機ジイソシアネート化合物の付加重合体、アミド結合を有しないジアミンと有機ジイソシアネート化合物の付加重合体などが例示できる。
【0022】
また、感光性樹脂は、従来公知のもの用いることができ、官能基の光2量化により不溶化する樹脂、官能基の光分解によりラジカルを生成してラジカル再結合で不溶化する樹脂、光照射により低分子モノマーが重合して不溶化する樹脂などの光不溶化系樹脂;光照射により架橋結合の切断により可溶化する樹脂、光照射により極性が変化する官能基を有する樹脂、光照射により主鎖が切断されることにより可溶化する樹脂などの光可溶化系樹脂が挙げられる。感光性樹脂は、1種単独で用いても、2種以上を併用してもよい。
【0023】
支持体としては、特に制限されないが、例えば、ポリエチレンフィルム、ポリエステルフィルムなどのプラスチック板;スチール、アルミニウムなどの金属板;ガラスなどのその他の板が挙げられる。支持体は、凹凸版とした場合において、感光性樹脂層を選択的に取り除いて形成される凹凸パターンを支持する機能を有し得る。
【0024】
マスクは、感光性樹脂層へ照射される光を部分的に遮るものであり、版作製工程においてマスクの有するパターンが、光照射により感光性樹脂層へ転写される。マスクとしては、感光性樹脂層へ照射される光を部分的に遮断できるものであれば特に制限されない。また、カバーフィルムを剥離して感光性樹脂層を露出させた後に所望のパターンを有するマスクを密着させるものでも、感光性樹脂層上に密着させたマスクにパターンを形成するものでもよい。
【0025】
照射する光としては、上記感光性樹脂の性状を変化させることが可能なものであれば特に制限されないが、例えば、紫外線などが挙げられる。また、このような光を発する光源としては、ケミカルランプ又は超高圧水銀灯などが挙げられる。
【0026】
感光性樹脂層の選択的な除去としては、各々の感光性樹脂に適した方法であれば特に制限されないが、例えば、水や有機溶媒を用いた洗い出し処理などが挙げられる。このようにして得られる凹凸版は、感光性樹脂層のうち光が照射された部分又は光が照射されなかった部分が選択的に取り除かれた凹凸パターンを有する。凹凸パターンの形状は、用いるマスクにより適宜変更することができ、また、凹凸パターンの高さh(深さ若しくは厚さ)は、用いた感光性樹脂層の厚み及び照射(露光)した光の強さにより適宜調整することができる。凹凸パターンの高さhは、研磨層の凸部11aの高さと実質的に同等となる(図1)。また、凹凸パターンの高さhは選択的に除去された感光性樹脂層の深さと同義となる。
【0027】
得られた凹凸版は、洗い出し処理などの後に乾燥させ、さらに、凹凸パターンに対して光を照射(後露光)してもよい。後露光をすることにより、支持体と凹凸パターンの密着性を向上させたり、凹凸パターンの硬度をより向上させたりすることができる。
【0028】
〔硬化工程〕
硬化工程は、得られた凹凸版に形成された凹凸パターンに対して、硬化性組成物を接触させた状態で硬化させることにより、凹凸パターンが転写された硬化性組成物の硬化物を得る工程である。この工程で得られる硬化物の凹凸パターンの表面(凸部の表面)は、被研磨物を研磨するための研磨面となる。
【0029】
硬化性組成物としては、特に制限されないが、例えば、熱硬化性樹脂;UV硬化性樹脂;光重合開始剤及び重合性化合物を含む光硬化性組成物;熱重合開始剤及び重合性化合物を含む熱硬化性組成物;2液混合型の硬化樹脂を含む硬化性組成物等が挙げられる。また、硬化性組成物は、必要に応じて、重合性官能基を2以上有する架橋剤等を含んでもよい。
【0030】
上記重合性化合物としては、特に限定されないが、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、イソクロトン酸、及びマレイン酸などの重合性不飽和基を有する不飽和カルボン酸;(メタ)アクリレート、エポキシ(メタ)アクリレート、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレート等の重合性不飽和基を有する不飽和カルボン酸エステル;不飽和基を有するポリエステル;重合性不飽和基を有するポリエーテル;重合性不飽和基を有するポリアミド;重合性不飽和基を有するウレタン;スチレン等の重合性不飽和基を有する芳香族系化合物が挙げられる。
【0031】
上記光重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、チオチサントン系化合物が挙げられる。また、熱重合開始剤としては、特に限定されないが、例えば、2,2’-アゾビスブチロニトリルのようなアゾ化合物;メチルエチルケトンパーオキサイド、過酸化ベンゾイル(BPO)などの過酸化物が挙げられる。
【0032】
熱硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、アクリル樹脂、ウレタン樹脂、ホルムアルデヒド樹脂等が挙げられる。
【0033】
UV硬化性樹脂としては、特に限定されないが、例えば、数平均分子量1000~10000程度のプレポリマーが好ましく、材料としてはアクリル(メタクリル)系エステル樹脂やそのウレタン変性樹脂、チオコール系樹脂等が挙げられ、適宜用途に応じて反応性希釈剤や有機溶剤を用いることができる。
【0034】
また、2液混合型の硬化樹脂としては、特に限定されないが、例えば、異なる物性のプレポリマーを用いることができ、エポキシ樹脂や、不飽和ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂などが挙げられる。
【0035】
このなかでも、凹凸版の耐熱性を考慮する観点から、常温にて硬化が進むものが好ましい。このような硬化性組成物としては、特に制限されないが、例えば、常温にて作用する重合開始剤を含む硬化性組成物、光照射により硬化するUV硬化性樹脂及び光硬化性組成物、2液を混合することにより硬化する混合型の硬化性組成物が挙げられる。
【0036】
凹凸版に形成された凹凸パターンと、硬化性組成物とを接触させる方法としては、凹凸版の凹部に硬化性組成物が充填(流し込み)される態様であれば特に制限されないが、例えば、常温常圧で硬化性組成物自身の重さによって凹部に流し込む重力注型法や、型と樹脂を真空容器に入れて減圧し大気圧で凹部に流し込む真空注型法が挙げられる。
【0037】
また、凹凸版に形成された凹凸パターンと、硬化性組成物とを接触させた後、硬化性組成物を硬化させる前に、硬化性樹脂の凹凸版と接する面と反対側の面に基材を接合させる工程をさらに有していてもよい。基材を用いることにより、基材と凹凸版で硬化性組成物を挟んだ状態で、硬化性組成物を硬化させることになる。これにより、得られる硬化物の厚さの均一性が向上したり、得られる硬化物の裏面(凹凸版と接する面と反対側の面)の平坦性がより向上したりする傾向にある。また、基材と凹凸版との位置関係は、図1に示すように、基材8が凹凸版5の凹凸パターン6に接しないようにしてもよいし、図2に示すように、基材8が凹凸版5の凹凸パターン6に接するようにしてもよい。基材8が凹凸版5の凹凸パターン6に接しないようにした場合には、得られる硬化物は凹凸パターン11を構成する凸部11aと、凸部同士を連結するための支持領域11bとを有するものとなる。また、基材8が凹凸版5の凹凸パターン6に接するようにした場合には、得られる硬化物は凹凸パターン11を構成する凸部11aとなり、該凸部11aが基材8上に形成されるものとなる。
【0038】
硬化性組成物を硬化させる方法としては、各々の硬化性組成物に適した方法であれば特に制限されないが、例えば、紫外線などを照射する光硬化方法、熱を加える熱硬化方法(常温で放置する方法も含む)、又は2液混合型のように混合して放置する方法等が挙げられる。
【0039】
本実施形態の凹凸版の凹凸パターンは、感光性樹脂からなる樹脂材で構成されている。そのため、凹凸版の耐熱性及び耐久性の観点から、硬化性組成物の硬化時における凹凸版の温度は、好ましくは130℃以下であり、より好ましくは100℃以下であり、さらに好ましくは75℃以下である。また、凹凸版の温度の下限は特に制限されないが、15℃以上とすることができる。硬化工程における凹凸版の温度が130℃以下であることにより、熱による凹凸版の変形などを抑制することができる。この凹凸版の温度は、熱硬化方法により凹凸版とそれに接触した硬化性組成物を加熱するような場合のほかにも、光硬化方法及び2液混合型樹脂を用いた場合であって、光照射による昇温や反応による発熱が生じることにより凹凸版が加熱され得る状況においても同様に考慮されることが好ましい。
【0040】
硬化工程は、複数の凹凸版を用いて行ってもよい。複数の凹凸版を用いた場合の凹凸版の使用の例を示す上面図を図3に示し、複数の凹凸版を用いた硬化工程の例を図4に示す。図3に示すように、作製する研磨パッドの大きさが一つの凹凸版5a~5iよりも大きい場合には、複数の凹凸版5a~5iを組み合わせて用いて所望の大きさの凹凸版を作製したうえで(図3)、組み合わせた凹凸版を用いて硬化物(研磨層)を形成することができる(図4)。これにより、研磨パッドの大きさに応じた凹凸版を作製する必要がなく、大小さまざまな凹凸版を作製する工程を省略することが可能となり、製造コストをより低減させることができる。また、上記例では、四角形の凹凸版5a~5iを例示したが、この場合、円形の研磨パッドを得ようとする場合には、得られた硬化物(研磨層)を円形に切り出してもよい。
【0041】
〔剥離工程〕
剥離工程は、硬化した硬化物を凹凸版から剥離することにより、研磨層を得る工程である。この工程で得られる研磨層は凹凸版から転写された凹凸パターンを有し、その凹凸パターンの凸部の表面は、被研磨物を研磨するための研磨面となる。
【0042】
〔研磨パッド〕
本実施形態の研磨パッドは、上記製造方法により得られたものであって、硬化性組成物を硬化してなる研磨層を備え、該研磨層は任意の形状と十分な高さのある凹凸パターンを有するものである。研磨層の曲げ強さは、50MPaであり、好ましくは50~1000MPaであり、より好ましくは55~900MPaであり、さらに好ましくは60~800MPaである。曲げ強さは、JIS K7203に準じて行った測定により得られるものである。曲げ強さが上記範囲内であることにより、剥離工程において凹凸版から研磨層を剥離する際に研磨層の破損や変形を抑制することができる。
【0043】
また、研磨層が、支持領域と、該支持領域上に形成された凸部とが一体成型された凹凸パターンを有するものであることが好ましい。凸部と支持領域を一体成型されたことにより、凸部と支持領域を接合する工程がなくなり、コストを削減することができる。また、凸部と支持領域を接着する場合に比べて、接合強度が高くなり、凸部が支持領域から取れにくくなる。
【実施例
【0044】
以下、凹凸パターンの高さ、凹凸パターンの設計自由度の高さ、及び製法の簡便性(コスト)という観点から、本実施形態により研磨パッドを製造する方法、金型を用いて研磨パッドを製造する方法、スクリーン印刷により研磨パッドを製造する方法について定性的に評価した。
【0045】
その結果、金型を用いる工程が介在する製造方法では、比較的高さのある凹凸パターンを形成できるものの、金型変更を伴う凹凸パターンの設計自由度は低く、また、精巧な金型を作成することが前提となるため、製法上の簡便性も乏しい。なお、これら欠点は金属金型に限られず、感光性樹脂を用いない樹脂型を用いた場合にも同様である。
【0046】
また、スクリーン印刷を使用した方法では、凹凸パターンの高さには限界があり、製品寿命という観点からは求める凹凸パターンを形成することは困難である。
【0047】
これらに比べ、本実施形態により研磨パッドを製造する方法によれば、低コストで簡便に十分な高さのある凹凸パターンを形成することができた。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明の研磨パッドの製造方法は、光学材料、半導体デバイス、ハードディスク用のガラス基板等のラッピングや研磨に用いる研磨パッドを製造する方法として、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0049】
1…感光性樹脂層、1a…光を照射した部分、1b…光を照射していない部分、2…支持体、3…版材、4…マスク、5、5a~i…凹凸版、6…凹凸パターン、7…硬化性組成物、8…基材、9…研磨層、10…研磨パッド、11…凹凸パターン、11a…凸部、11b…支持領域
図1
図2
図3
図4