(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】電力変換装置
(51)【国際特許分類】
H02M 7/48 20070101AFI20230511BHJP
【FI】
H02M7/48 Z
(21)【出願番号】P 2018162336
(22)【出願日】2018-08-31
【審査請求日】2021-07-12
(73)【特許権者】
【識別番号】000003115
【氏名又は名称】東洋電機製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000305
【氏名又は名称】弁理士法人青莪
(72)【発明者】
【氏名】蟹澤 瞭
【審査官】東 昌秋
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-152104(JP,A)
【文献】中国実用新案第204349819(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107070256(CN,A)
【文献】特開2010-035346(JP,A)
【文献】特開平07-007924(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02M 7/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力変換回路を構成する、並設された複数の半導体素子と、電力変換回路の直流端子に接続されて直流電流を平滑するフィルタコンデンサと、半導体素子を収納する筐体とを備え、半導体素子の並設方向をY軸方向とし、Y軸方向と直交するX軸方向の内、半導体素子から遠ざかる方向をX軸プラス方向、X軸プラス方向と反対方向をX軸マイナス方向として、フィルタコンデンサが、そのY軸方向の長さよりも長い固定プレートによって、各半導体素子からX軸プラス方向に所定の間隔を存して対置して固定される電力変換装置であって、
筐体は、各半導体素子及び各半導体素子を冷却する半導体冷却ユニットを収納する本体部と、フィルタコンデンサを固定するフィルタコンデンサ固定部とを備え、本体部はX軸プラス方向に開放され、各半導体素子が本体部のX軸プラス方向の端部に位置し、フィルタコンデンサ固定部は、本体部のX軸プラス方向の端部からX軸プラス方向に延設され、フィルタコンデンサ固定部は、Y軸方向の一方及び他方の端部と、これらの端部の間に位置する、X軸プラス方向に延びる
第1の部分とからなり、且つX軸プラス方向と、
前記第1の部分から遠ざかる方向とが開放され、
X軸プラス方向に延びる複数の固定フレームが、フィルタコンデンサの外側に配置されるように、筐体のフィルタコンデンサ固定部のY軸方向の一方及び他方の端部に支持され、固定プレートが、フィルタコンデンサのX軸プラス方向の端面に締結され、
フィルタコンデンサを各固定フレームの内側に配置し、固定プレートのX軸マイナス方向の端面を各固定フレームのX軸プラス方向の端面に当接させて、各固定フレームのX軸プラス方向の端部に固定プレートが締結され、フィルタコンデンサが、各半導体素子からX軸プラス方向に所定の間隔を存して対置して固定されると共に、フィルタコンデンサと各半導体素子との間が、筐体のフィルタコンデンサ固定部の
前記第1の部分から遠ざかる方向に開放されることを特徴とする電力変換装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力変換回路を構成する、並設された複数の半導体素子と、電力変換回路の直流端子に接続されて直流電流を平滑するフィルタコンデンサと、半導体素子を収納する筐体とを備え、半導体素子の並設方向をY軸方向とし、Y軸方向と直交するX軸方向の内、半導体素子から遠ざかる方向をX軸プラス方向として、フィルタコンデンサが、複数の半導体素子からX軸プラス方向に所定の間隔を存して対置して固定される電力変換装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の電力変換装置として、半導体素子、フィルタコンデンサ、半導体素子を冷却する冷却手段等が固定されて一体化され、筐体内部に収納されるものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
しかしながら、特許文献1には、半導体素子とフィルタコンデンサとを固定し、一体化するための具体的な技術手段は記載されていない。一体化については、例えば、フィルタコンデンサを半導体素子からX軸プラス方向に所定間隔を存して対置させ、フィルタコンデンサ側からボルトを半導体素子に螺入して固定することが考えられる。しかしながら、この場合、フィルタコンデンサと半導体素子との間がボルトによって絶縁破壊され、絶縁状態を保てなくなる虞がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、以上の点に鑑み、半導体素子とフィルタコンデンサとの間の絶縁状態を保って、フィルタコンデンサが、複数の半導体素子からX軸プラス方向に所定の間隔を存して対置して固定される電力変換装置を提供することをその課題としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、電力変換回路を構成する、並設された複数の半導体素子と、電力変換回路の直流端子に接続されて直流電流を平滑するフィルタコンデンサと、半導体素子を収納する筐体とを備え、半導体素子の並設方向をY軸方向とし、Y軸方向と直交するX軸方向の内、半導体素子から遠ざかる方向をX軸プラス方向、X軸プラス方向と反対方向をX軸マイナス方向として、フィルタコンデンサが、そのY軸方向の長さよりも長い固定プレートによって、各半導体素子からX軸プラス方向に所定の間隔を存して対置して固定される電力変換装置であって、筐体は、各半導体素子及び各半導体素子を冷却する半導体冷却ユニットを収納する本体部と、フィルタコンデンサを固定するフィルタコンデンサ固定部とを備え、本体部はX軸プラス方向に開放され、各半導体素子が本体部のX軸プラス方向の端部に位置し、フィルタコンデンサ固定部は、本体部のX軸プラス方向の端部からX軸プラス方向に延設され、フィルタコンデンサ固定部は、Y軸方向の一方及び他方の端部と、これらの端部の間に位置する、X軸プラス方向に延びる第1の部分とからなり、且つX軸プラス方向と、前記第1の部分から遠ざかる方向とが開放され、X軸プラス方向に延びる複数の固定フレームが、フィルタコンデンサの外側に配置されるように、筐体のフィルタコンデンサ固定部のY軸方向の一方及び他方の端部に支持され、固定プレートが、フィルタコンデンサのX軸プラス方向の端面に締結され、フィルタコンデンサを各固定フレームの内側に配置し、固定プレートのX軸マイナス方向の端面を各固定フレームのX軸プラス方向の端面に当接させて、各固定フレームのX軸プラス方向の端部に固定プレートが締結され、フィルタコンデンサが、各半導体素子からX軸プラス方向に所定の間隔を存して対置して固定されると共に、フィルタコンデンサと各半導体素子との間が、筐体のフィルタコンデンサ固定部の前記第1の部分から遠ざかる方向に開放されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、筐体に支持された固定フレームと、フィルタコンデンサに締結した固定プレートとの締結によって、半導体素子とフィルタコンデンサとをボルトで直接連結することなく、フィルタコンデンサを複数の半導体素子からX軸プラス方向に所定間隔を存して対置させて固定できる。このため、フィルタコンデンサと半導体素子との間の絶縁状態が保たれる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本発明の電力変換装置の一実施形態を示した分解斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1及び
図2を参照して、電力変換装置1は、電力変換回路を構成する、並設された3つの半導体素子21,22,23と、電力変換回路の直流端子に接続されて直流電流を平滑するフィルタコンデンサ3と、半導体素子21,22,23を収納する筐体4とを備えている。半導体素子21,22,23には、例えば、U,V,Wの3相分のIGBT(絶縁ゲート型バイポーラトランジスタ)を一般的に採用できる。電力変換装置1では、半導体素子21,22,23の並設方向をY軸方向とし、Y軸方向と直交するX軸方向の内、半導体素子21,22,23から遠ざかる方向をX軸プラス(+)方向として、フィルタコンデンサ3が、半導体素子21,22,23からX軸プラス方向に所定の間隔を存して対置して固定される。筐体4は、半導体素子21,22,23を冷却するための冷却フィン等を有する半導体冷却ユニットを収納する本体部41と、フィルタコンデンサ3を固定するためのフィルタコンデンサ固定部42とを備えている。本体部41はX軸プラス方向に開放され、半導体素子21,22,23が本体部41のX軸プラス方向の端部に位置している。フィルタコンデンサ固定部42は、本体部41のX軸プラス方向の端部からX軸方プラス方向に延設され、本体部41と一体となっている。また、フィルタコンデンサ固定部42はX軸プラス方向と上方とが開放されている。
【0010】
また、電力変換装置1では、X軸プラス方向に延びる4本の固定フレーム51,52,53,54が、フィルタコンデンサ3の外側に配置されるように、筐体4の一部を構成するフィルタコンデンサ固定部42のY軸方向の一方及び他方の端部42a,42bに支持されている。固定フレーム51,52は、フィルタコンデンサ固定部42のY軸方向一方の端部42aの内面の上下に位置し、固定フレーム53,54は、フィルタコンデンサ固定部42のY軸方向他方の端部42bの内面の上下に位置している。固定フレーム51,52,53,54のX軸プラス方向の端面51a,52a,53a,54aは、同一平面上に配置されている。また、各端面51a,52a,53a,54aには、第1ねじ穴51b,52b,53b,54bが設けられている。固定フレーム51,52,53,54の形状は、第1ねじ穴51b,52b,53b,54bを設けることができる限り特に限定的ではない。例えば、ロッド状等であっても構わない。
【0011】
フィルタコンデンサ3のX軸プラス方向の端面31には、Y軸方向の一方及び他方の端部の上下に計4つの第2ねじ穴31a,31b,31c,31dが設けられている。いずれの第2ねじ穴31a,31b,31c,31dも非貫通のねじ穴である。また、フィルタコンデンサ3の上面32には上方に突出する3つの端子部32a,32b,32cが設けられている。フィルタコンデンサ3の端面31にはほぼ平板状の固定プレート6が固定される。固定プレート6は、Y軸方向の長さがフィルタコンデンサ3よりも長くなっている。また、固定プレート6の上下両端縁部はX軸プラス方向に折曲され、折曲部6a,6bが設けられている。折曲部6a,6bは固定プレート6の面強度を所定のものに確保している。さらに、固定プレート6には、固定フレーム51,52,53,54の端面51a,52a,53a,54aに設けられた第1ねじ穴51b,52b,53b,54bに対置する部分に、第1ボルト61を挿通可能とした第1貫通穴が設けられ、フィルタコンデンサ3の端面31に設けられた第2ねじ穴31a,31b,31c,31dに対置する部分には、第2ボルト62を挿通可能とした第2貫通穴が設けられている。
【0012】
固定プレート6のフィルタコンデンサ3の端面31への固定は、上記第2貫通穴の夫々を第2ねじ穴31a,31b,31c,31dの対応する一つと一致させ、各第2ボルト62を各第2ねじ穴31a,31b,31c,31dにX軸プラス方向からマイナス(-)方向に螺入して締結することによって実現される。端面31に固定プレート6が固定されたフィルタコンデンサ3を筐体4のフィルタコンデンサ固定部42に支持された固定フレーム51,52,53,54の内側に配置し、固定プレート6のX軸マイナス方向の端面を固定フレーム51,52,53,54の端面51a,52a,53a,54aに当接させると、フィルタコンデンサ3は、半導体素子21,22,23からX軸方向に所定の間隔を存して対置する。また、固定プレート6の上記第1貫通穴の夫々が固定フレーム51,52,53,54の第1ねじ穴51b,52b,53b,54bの対応する一つと一致する。この状態において、各第1ボルト61を各第1ねじ穴51b,52b,53b,54bからX軸プラス方向からマイナス方向に螺入して締結させると、フィルタコンデンサ3が、半導体素子21,22,23からX軸プラス方向に所定の間隔を存して対置した状態で固定される。
【0013】
上記の如く、電力変換装置1では、筐体4に支持された固定フレーム51,52,53,54と、フィルタコンデンサ3に締結した固定プレート6との締結によって、半導体素子21,22,23とフィルタコンデンサ3とをボルトで直接連結することなく、フィルタコンデンサ3を半導体素子21,22,23からX軸プラス方向に所定間隔を存して対置させて固定できる。このため、フィルタコンデンサ3と半導体素子21,22,23との間の絶縁状態が保たれる。
【0014】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して説明したが、本発明はこれに限定されない。例えば、フィルタコンデンサ固定部42は本体部41と別体とし、相互の連結によって筐体4を構成することが可能である。また、フィルタコンデンサ固定部42の形状は特に限定的ではなく、また、固定フレーム51,52,53,54の本数や形状、固定プレート6の形状等は両者が締結可能である限り任意のものを採用することができる。
【符号の説明】
【0015】
1…電力変換装置、21,22,23…半導体素子、3…フィルタコンデンサ、31…フィルタコンデンサ3のX軸プラス方向の端面、4…筐体、51,52,53,54…固定フレーム、6…固定プレート。