(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2023-05-10
(45)【発行日】2023-05-18
(54)【発明の名称】積層造形コンポーネントを組み込む複合構造体
(51)【国際特許分類】
B32B 37/16 20060101AFI20230511BHJP
B32B 5/10 20060101ALI20230511BHJP
B32B 38/18 20060101ALI20230511BHJP
B64C 1/00 20060101ALI20230511BHJP
【FI】
B32B37/16
B32B5/10
B32B38/18 C
B64C1/00 B
【外国語出願】
(21)【出願番号】P 2018164112
(22)【出願日】2018-09-03
【審査請求日】2021-08-30
(32)【優先日】2017-09-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】500461860
【氏名又は名称】オーロラ フライト サイエンシズ コーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ライリー, ピー.グレイヴズ エイチ.
(72)【発明者】
【氏名】キャンベル, ダニエル エス.
(72)【発明者】
【氏名】コットレル, ダニエル
【審査官】千葉 直紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-100319(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B1/00-43/00
B64C
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合構造体の製造方法であって、
ツールのツーリング面に第1の複合層(106)を適用すること、
前記第1の複合層の少なくとも一部の上に積層造形コンポーネントを配置すること、及び、
前記第1の複合層(106)の少なくとも一部及び前記積層造形コンポーネントの少なくとも一部の上に第2の複合層(120)を適用することを含み、前記積層造形コンポーネントの少なくとも一部は前記第1の複合層(106)と前記第2の複合層(120)との間に埋め込まれて
おり、
前記方法が、
前記第2の複合層の適用後に前記複合構造体を硬化すること、及び
前記積層造形コンポーネントの一部を露出させるため、硬化後、前記第1の複合層(106)と前記第2の複合層(120)のうちの1つの少なくとも一部を取り除くこと
をさらに含む、複合構造体の製造方法。
【請求項2】
前記第1の複合層(106)及び前記第2の複合層(120)のうちの1つの少なくとも一部の硬化後除去を容易にする機能(feature)を、前記積層造形コンポーネントに提供することを更に含む、請求項
1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1の複合層(106)及び前記第2の複合層(120)のうちの1つの少なくとも一部の硬化後除去を容易にするため、前記機能は切断ツールと整合するように構成されている、請求項
2に記載の方法。
【請求項4】
前記複合構造体と第2の構造体とを相互接続するため、前記第2の構造体につながるように構成された機能を、前記積層造形コンポーネントに提供することを更に含む、請求項1から
3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記積層造形コンポーネントは、前記第1の複合層(106)と前記第2の複合層(120)との間に全体的に埋め込まれている、請求項1から
4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記積層造形コンポーネントは印刷される熱可塑性材料を含む、請求項1から
5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
配置ステップ中にツールに対する前記積層造形コンポーネントの配向を容易にするため、前記ツールと前記積層造形コンポーネントへの位置決め機能を提供することを更に含む、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
第1の複合層(106)と第2の複合層(120)、及び、
前記第1の複合層(106)と前記第2の複合層(120)との間に少なくとも部分的に埋め込まれた積層造形コンポーネント
を備
え、
前記積層造形コンポーネントは、前記第1の複合層(106)と前記第2の複合層(120)との間に埋め込まれていない露出部分を含む、複合構造体。
【請求項9】
前記複合構造体と第2の構造体とを相互接続するため、前記露出部分は、前記第2の構造体とつながるように構成された接続機能を含む、請求項
8に記載の複合構造体。
【請求項10】
前記積層造形コンポーネントは、前記第1の複合層(106)及び前記第2の複合層(120)のうちの1つの少なくとも一部の除去を容易にする機能を備える、請求項
9に記載の複合構造体。
【請求項11】
前記機能は、前記第1の複合層(106)及び前記第2の複合層(120)のうちの1つの少なくとも一部の除去を容易にするため、切断ツールと整合するように構成されている、請求項
10に記載の複合構造体。
【請求項12】
前記積層造形コンポーネントは印刷される熱可塑性材料を含む、請求項
9に記載の複合構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[1] 本開示は複合構造体と組み合わせた積層造形(additive manufacturing)の利用に関し、より具体的には、積層造形コンポーネントの複合構造体への組み込みに関する。
【背景技術】
【0002】
[2] ここ数年、複合材料は、航空機構造体にとってますます望ましい材料になってきている。複合材料は一般的に、樹脂と混合した繊維(例えば、ガラス繊維及び/又は炭素繊維)の束を含む。例えば、多くの商用生産された複合材は、ポリマーマトリクス材料を樹脂として使用する。飛行機に使用される一般的な複合材料には、ガラス繊維、炭素繊維、及び繊維強化マトリクス系、或いはこれらの任意の組み合わせが含まれる。実際には、最初の原材料に応じて、多くの様々なポリマーが利用できる。最も一般的なポリマーには、例えば、ポリエステル、ビニールエステル、エポキシ、フェノール、ポリイミド、ポリアミド、ポリプロピレン、及びPEEKなどがある。製造中、繊維は多くの場合、巻かれたり編まれたりして材料シートに加工され、次いで樹脂に含侵(例えば、注入)される。繊維が樹脂に含侵されると、複合材料は次に所望の形状に形成され、適切な硬さになるまで硬化されうる。
【0003】
[3] 複合材料には超軽量で高い強度を有するという利点がある。その結果、複合材料は航空機応用ではとりわけ有用である。加えて、複合構造体は、所望の形状及び構成に成形することができる。複合材料を用いて製造される多くの部品は金属から作ることも可能であるが、同じ強度及び剛性を有する金属部品は非常に重くなりうる。
【0004】
[4] しかしながら、複合材料を使用したコンポーネントを製造することは、特に複雑な構造が必要とされるときには、時間がかかり、労働集約的になりうる。ある種の複合材料の更なる欠点は、複合材料の実際の組み立て、又は結合である。多くの従来の材料(例えば、金属)と異なり、複合材料の組み立てでは様々な考慮がなされなければならない。例えば、ファスナを取り付けるため複合材料に孔を開けることは、材料中の繊維の束を切断するため、材料内に弱点を作り出す。一方、硬化していない繊維の束をずらすことによって複合材料に孔を形成することで、繊維の切断は回避することができるが、このプロセスは時間がかかり、多くの場合実用的ではない。複合材料を組み立てるためのもう1つの代替案は、強度の高いエポキシ樹脂を使用することである。エポキシには、製造ステップ数を限定する利点がある。しかしながら、エポキシの分散と部品の配置は共に、高価な機械と多数の治具(例えば、ツーリング)を必要とする。しかも、このような構造体はルーチンで複数のツールセットを伴い、非常に労働集約的で、一連の使用期限を有するBステージ材料を必要とする。
【0005】
[5] 積層造形技術、すなわち、3D印刷は、複合材料製造技術と比較して、低コストかつ短時間で印刷されるポリマーコンポーネントを迅速に製造し、反復することができる能力を提供する点で、従来の複合材料製造技術にとって有用である。積層造形プロセスはまた、印刷されるコンポーネントに、複合製造方法では製造することが難しい独特の機能(features)を実装することができる。しかしながら、ポリマーが複合材料の機械的な性能に適合することは困難である。その結果、ポリマーは、航空機のコンポーネントを製造する大規模な使用には、多くの場合不向きな材料となっている。
【0006】
[6] したがって、当該技術分野において、上述の欠点を軽減しつつ、複合材料と積層造形コンポーネントの利点を活かす構造体を製造する方法が必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
[7] 本開示は、複合構造体に積層造形コンポーネントの組み込みを提供することを試みている。
【0008】
[8] 第1の態様によれば、複合構造体を製造する方法は、ツールのツーリング面(tooling surface)に第1の複合層を適用すること、第1の複合層の少なくとも一部の上に積層造形コンポーネントを配置すること、並びに、複合層の少なくとも一部及び積層造形コンポーネントの少なくとも一部の上に第2の複合層を適用することを含み、積層造形コンポーネントの少なくとも一部は、第1の複合層と第2の複合層との間に埋め込まれる。
【0009】
[9] ある態様では、方法は更に、第2の複合層を適用した後に、複合構造体を硬化するステップを含む。
【0010】
[10] ある態様では、方法は更に、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部を取り除き、続いて積層造形コンポーネントの一部を露出するために硬化するステップを含む。
【0011】
[11] ある態様では、方法は更に、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部の硬化後除去を容易にする機能を、積層コンポーネントに提供するステップを含む。
【0012】
[12] ある態様では、その機能は、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部の硬化後除去を容易にするため、切断ツールと整合するように構成されている。
【0013】
[13] ある態様では、方法は更に、積層造形コンポーネントに、複合構造体と第2の構造体とを相互接続するため、第2の構造体につながるように構成された機能を提供するステップを含む。第2の構造体は、上述の方法に従って製造された複合構造体を含みうる。
【0014】
[14] ある態様では、積層造形コンポーネントは、第1の複合層と第2の複合層との間に全体的に埋め込まれている。
【0015】
[15] ある態様では、方法は更に、積層造形コンポーネントの一部を露出するため、第1の複合層及び第2の複合層のうちの少なくとも1つの一部を取り除くステップを含む。
【0016】
[16] ある態様では、複合構造体は、第1の複合層及び第2の複合層のうちの少なくとも1つの一部を除去する前に硬化される。
【0017】
[17] ある態様では、除去するステップは、第1の複合層及び第2の複合層のうちの少なくとも1つの一部を切断することを含む。
【0018】
[18] ある態様では、積層造形コンポーネントは、印刷される熱可塑性材料を含む。
【0019】
[19] ある態様では、第1の複合層及び第2の複合層は同じ材料で形成される。
【0020】
[20] ある態様では、複合構造体は航空機のコンポーネントを含む。
【0021】
[21] ある態様では、方法は更に、配置ステップ中にツールに対する積層造形コンポーネントの配向を容易にするため、ツールと積層造形コンポーネントに位置決め機能(locating features)を提供するステップを含む。
【0022】
[22] ある態様では、位置決め機能は磁石を含む。
【0023】
[23] ある態様では、位置決め機能は、ツール及び積層造形コンポーネントのうちの少なくとも1つに装着された磁石を含む。
【0024】
[24] 第2の態様によれば、複合構造体は第1の複合層及び第2の複合層、並びに、第1の複合層と第2の複合層との間に少なくとも部分的に埋め込まれた積層造形コンポーネントを含む。
【0025】
[25] ある態様では、積層造形コンポーネントは、第1の複合層と第2の複合層との間に埋め込まれていない露出部分を含む。
【0026】
[26] ある態様では、方法は更に、複合構造体と第2の構造体とを相互接続するため、第2の構造体につながるように構成された接続機能を提供するステップを含む。
【0027】
[27] ある態様では、積層造形コンポーネントは、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部の除去を容易にする機能を含む。
【0028】
[28] ある態様では、この機能は、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部の除去を容易にするため、切断ツールと整合するように構成されている。
【0029】
[29] ある態様では、積層造形コンポーネントは、印刷される熱可塑性材料を含む。
【0030】
[30] ある態様では、第1の複合層及び第2の複合層は同じ材料で形成される。
【0031】
[31] 第3の態様によれば、複合構造体は、ツールのツーリング面に第1の複合層を適用すること、第1の複合層の少なくとも一部の上に積層造形コンポーネントを配置すること、並びに、複合層の少なくとも一部及び積層造形コンポーネントの少なくとも一部の上に第2の複合層を適用することによって形成され、積層造形コンポーネントの少なくとも一部は、第1の複合層と第2の複合層との間に埋め込まれる。
【0032】
[32] ある態様では、プロセスは更に、第2の複合層を適用した後に、複合構造体を硬化するステップを含む。
【0033】
[33] ある態様では、プロセスは更に、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部を取り除き、続いて積層造形コンポーネントの一部を露出するために硬化するステップを含む。
【0034】
[34] ある態様では、プロセスは更に、積層コンポーネントに、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部の硬化後除去を容易にする機能を提供するステップを含む。
【0035】
[35] ある態様では、その機能は、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部の硬化後除去を容易にするため、切断ツールと整合するように構成されている。
【0036】
[36] 本発明の一実施形態は、ツールのツーリング面に第1の複合層を適用すること、第1の複合層の少なくとも一部の上に積層造形コンポーネントを配置すること、並びに、複合層の少なくとも一部及び積層造形コンポーネントの少なくとも一部の上に第2の複合層を適用することを含み、積層造形コンポーネントの少なくとも一部は、第1の複合層と第2の複合層との間に埋め込まれうる、複合構造体の製造方法を含む。方法はまた、第2の複合層を適用した後、複合構造体を硬化することを含む。方法はまた、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部を取り除き、続いて積層造形コンポーネントの一部を露出するために硬化するステップを含む。方法はまた、積層コンポーネントに、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部の硬化後除去を容易にする機能を提供することを含む。機能は、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部の硬化後除去を容易にするため、切断ツールと整合するように構成されうる。方法はまた、積層造形コンポーネントに、複合構造体と第2の構造体とを相互接続するため、第2の構造体につながるように構成された機能を提供することを含む。積層造形コンポーネントは、第1の複合層と第2の複合層との間に全体的に埋め込まれうる。方法はまた、積層造形コンポーネントの一部を露出するため、第1の複合層及び第2の複合層のうちの少なくとも1つの一部を取り除くことを含む。複合構造体は、第1の複合層及び第2の複合層のうちの少なくとも1つの一部を除去する前に硬化されうる。除去のステップは、第1の複合層及び第2の複合層のうちの少なくとも1つの一部を切断することを含みうる。積層造形コンポーネントは、印刷される熱可塑性材料を含みうる。方法はまた、配置ステップ中にツールに対する積層造形コンポーネントの配向を容易にするため、ツールと積層造形コンポーネントに位置決め機能を提供することを含む。位置決め機能は、ツール及び積層造形コンポーネントのうちの少なくとも1つに装着された磁石を含みうる。
【0037】
[37] 本発明の別の実施形態は、第1の複合層及び第2の複合層を含む複合構造体、及び、第1の複合層と第2の複合層との間に少なくとも部分的に埋め込まれた積層造形コンポーネントを含む。積層造形コンポーネントは、第1の複合層と第2の複合層との間に埋め込まれていない露出部分を含みうる。露出部分は、複合構造体と第2の構造体とを相互接続するため、第2の構造体につながるように構成された接続機能を含みうる。積層コンポーネントは、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部の除去を容易にする機能を含みうる。この形状は、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部の除去を容易にするため、切断ツールと整合するように構成されうる。積層造形コンポーネントは、印刷される熱可塑性材料を含みうる。
【0038】
[38] 本発明の別の実施形態は、ツールのツーリング面に第1の複合層を適用すること、第1の複合層の少なくとも一部の上に積層造形コンポーネントを配置すること、並びに、複合層の少なくとも一部及び積層造形コンポーネントの少なくとも一部の上に第2の複合層を適用することからなるプロセスによって形成され、積層造形コンポーネントの少なくとも一部は、第1の複合層と第2の複合層との間に埋め込まれる、複合構造体を含む。プロセスはまた、第2の複合層を適用した後、複合構造体を硬化するステップを含みうる。プロセスはまた、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部を取り除き、続いて積層造形コンポーネントの一部を露出するために硬化するステップを含みうる。プロセスはまた、積層コンポーネントに、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部の硬化後除去を容易にする機能を提供するステップを含み、前記機能は、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部の硬化後除去を容易にするため、切断ツールと整合するように構成されている。
【0039】
[39] 本開示のこのような様々な利点は、以下の説明及び添付の図面を参照することによって容易に理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【
図1】埋め込まれた積層造形コンポーネントを有する複合構造体の例示的な実施形態を示す。
【
図2A】埋め込まれた積層造形コンポーネントを有する複合構造体の製造方法を示す。
【
図2B】埋め込まれた積層造形コンポーネントを有する複合構造体の製造方法を示す。
【
図2C】埋め込まれた積層造形コンポーネントを有する複合構造体の製造方法を示す。
【
図2D】埋め込まれた積層造形コンポーネントを有する複合構造体の製造方法を示す。
【
図2E】埋め込まれた積層造形コンポーネントを有する複合構造体の製造方法を示す。
【
図2F】埋め込まれた積層造形コンポーネントを有する複合構造体の製造方法を示す。
【
図2G】埋め込まれた積層造形コンポーネントを有する複合構造体の製造方法を示す。
【
図2H】埋め込まれた積層造形コンポーネントを有する複合構造体の製造方法を示す。
【
図3A】例示的な実施形態に従って複合層の間で共硬化される、積層造形された犠牲キャップ(sacrificial cap)及び積層造形された犠牲パイクリップ(sacrificial pi-clip)を示す。
【
図3B】例示的な実施形態に従って複合層の間で共硬化される、積層造形された犠牲キャップ及び積層造形された犠牲パイクリップを示す。
【
図4A】例示的な実施形態に従って複合層の間で共硬化される、積層造形された外板接合器(skin-joiner)を有する積層造形された犠牲キャップを示す。
【
図4B】例示的な実施形態に従って複合層の間で共硬化される、積層造形された外板接合器を有する積層造形された犠牲キャップを示す。
【
図5】A及びBの部分は、例示的な実施形態に従って複合層の間で積層造形されたアンテナとともに共硬化される、積層造形された犠牲キャップのある種の態様を示す。
【
図6A】例示的な実施形態に従って複合層の間で共硬化される、積層造形された外板接合器のある種の態様を示す。
【
図6B】例示的な実施形態に従って複合層の間で共硬化される、積層造形された外板接合器のある種の態様を示す。
【
図6C】例示的な実施形態に従って複合層の間で共硬化される、積層造形された外板接合器のある種の態様を示す。
【
図7A】例示的な実施形態による磁気位置決め機能のある種の態様を示す。
【
図7B】例示的な実施形態による磁気位置決め機能のある種の態様を示す。
【
図7C】例示的な実施形態による磁気位置決め機能のある種の態様を示す。
【
図7D】例示的な実施形態による磁気位置決め機能のある種の態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
[47] 本開示の好ましい実施形態が、添付の図面を参照して説明される。以下の記述では、ある種の周知の機能や構成は、不必要な詳細記述で本開示をわかりにくくすることがあるため、詳しくは説明していない。本願では、以下の用語及び定義が適用される。
【0042】
[48] 本書で使用されているように、「約」及び「およそ」という用語は、値(又は値の範囲)を修飾又は記述するために用いられるときには、当該の値又は値の範囲にかなり近いことを意味する。したがって、本書に記載の実施形態は、記載された値及び値の範囲だけに限定されることはなく、むしろ十分に起こりうる変動を含みうる。
【0043】
[49] 本書で使用されているように、「航空ビークル」及び「航空機」という用語は、限定するものではないが、従来の航空機及び垂直離着陸(VTOL)航空機を含む、飛行可能な機械を意味する。VTOL航空機は、固定翼航空機、回転翼航空機(例えば、ヘリコプタ)、及び/又はチルトローター/チルト翼航空機を共に含む。
【0044】
[50] 本書で使用されているように、「複合材料」という用語は、積層材料とマトリクス材料を含む材料を意味する。例えば、複合材料には、繊維性積層材料(例えば、繊維ガラス、ガラス繊維(GF)、炭素繊維(CF)、アラミド/パラアラミド合成繊維など)、及び、マトリクス材料(例えば、エポキシ、ポリイミド、及びアルミナ、限定するものではないが、熱可塑性物質、ポリエステル樹脂、熱可塑性ポリカーボネート、鋳造用樹脂、ポリマー樹脂、アクリル、化学樹脂を含む)が含まれうる。ある態様では、複合材料は、繊維金属積層板(FML)及びガラス積層板アルミ強化エポキシ(GLARE)を作成するため、アルミニウム及びチタニウムなどの金属を採用しうる。更に、複合材料は、基本的な繊維/エポキシマトリクスに何らかの補完材料(例えば、2つ以上の繊維材料)を添加することによって実現されるハイブリッド複合材料を含みうる。
【0045】
[51] 本書で使用されているように、「複合積層板」という用語は、積層材料及びマトリクス材料の層(すなわち、「プライ」)から組み立てられた複合材料の種類を意味する。
【0046】
[52] 本書で使用されているように「複合構造体」という用語は、限定するものではないが、複合積層板を含む複合材料を少なくとも部分的に用いて製造された構造体又はコンポーネントを意味する。
【0047】
[53] 「例示的な」という用語は、非限定的な実施例、例、又は実例として機能することを意味する。本書で使用されているように、「例として」及び「例えば」という用語は、一又は複数の非限定的な実施例、例、又は実例を設定する。
【0048】
[54] 本書で使用されているように、「ツール」及び「ツーリング」という用語は、複合材料から作られた複合構造体などの構造体を形成するために使用される鋳型又は同様の構造体を意味する。
【0049】
[55] 本書で開示されているのは、積層造形コンポーネントを組み込む複合構造体を製造する技術である。積層造形技術は、複合材料製造技術と比較して、低コストかつ短時間で、印刷される熱可塑性材料コンポーネントを製造し反復する能力を提供する点において、従来の複合材料製造技術よりも有益である。積層造形はまた、複合製造方法では実現が困難な複雑な形状や機能を作ることができる。例えば、上述のように、このような印刷される熱可塑性コンポーネントを取り込む複合構造体の相互接続を容易にするため、機能は印刷される熱可塑性コンポーネントに形成可能である。
【0050】
[56] 印刷される熱可塑性材料コンポーネントは、シングルピースコンポーネントであっても、マルチピースコンポーネントであっても、一又は複数の積層造形技術によって印刷され、3次元(3D)印刷とも称される。積層造形は一般的に、ほぼ任意の形又は幾何形状になりうる3Dオブジェクト(例えば、印刷される材料ツール、印刷される熱可塑性材料部品又はコンポーネントなど)を作るため、材料(例えば、可塑性プラスチック)の連続層がコンピュータ制御下で形成される3Dオブジェクトを製造するために使用されるプロセスを意味する。印刷される熱可塑性材料コンポーネントは、積層造形ファイル(AMF)(例えば、ストラタシスCMBファイル)など、デジタルモデルデータ又は別の電子データ源から製造されうる。言い換えるならば、設計者は、モデリングプログラム(例えば、コンピュータ支援設計(CAD)パッケージ)を用いて、印刷される熱可塑性材料コンポーネントの設計モデルをデジタル空間に作ることができる。(スキャニングとは対照的に)CADによって作成される設計モデルの利点は、3Dオブジェクトの印刷前に修正可能なエラーを減らせることで、これによって、印刷が行われる前にオブジェクトの設計の検証が可能になる。
【0051】
[57] 積層造形技術はオブジェクトを3次元で印刷するため、XY平面(水平解像度)での最小機能サイズ(すなわち解像度)とZ軸での層の高さ(垂直解像度)は共に、プリンタの解像度全体で考慮される。水平解像度は、プリンタの押出機がX軸及びY軸の層内で作り出すことができる最小移動距離で、一方、垂直解像度は、プリンタが1回の通過で作り出す層の最小の厚みである。プリンタの解像度は、層の厚みとXY方向の解像度を1インチ当たりのドット数(dpi)又はマイクロメートル(μm)で表す。水平解像度の粒子(3Dドット)は、直径約50~100μm(510~250DPI)になりうる。典型的な層の厚み(垂直解像度)は約100μm(250DPI)であるが、層は16μm(1600DPI)の薄さになりうる。粒子が小さくなるほど、水平解像度は高くなる(すなわち、プリンタはより緻密な細部を作り出す)。同様に、Z軸での層の厚みが小さくなるほど、垂直解像度は高くなる(すなわち、印刷される面はより滑らかになる)。しかしながら、垂直解像度の高い印刷での印刷プロセスは、プリンタがより多くの層を作り出さなければならないため、長い時間を要する。したがって、印刷される熱可塑性材料コンポーネントは、高い精度で多数の細部まで印刷可能で、これは、例えば、複雑な機能及び/又は精密な機能を要求するコンポーネントの作成には特に有利である。
【0052】
[58]
図1は、埋め込まれた積層造形コンポーネントを有する複合構造体の例示的な実施形態を示す。具体的には、
図1は、説明のために示された、一般的で単純化された航空機胴体の構造体100である。従来の複合材料製造プロセスは高価で労働集約的である。複合構造体に積層造形コンポーネントを選択的に組み込むことによって、航空機部品などの複合構造体の製造に要求される全体的なコスト、時間、及び技能は軽減されうる。例えば、以下で説明されるように、積層造形の利点は、胴体構造体などの複合構造体の製造に利用できることで、胴体構造体を自然な鋳造ラインなどに沿って幾つかの部分に分割し、3D印刷された接合コンポーネントを用いて相互接続し、完成された胴体構造体にすることができる。例えば、3D印刷される接合コンポーネントは、胴体部分の建造中に複合材料の中に埋め込み(共硬化)されうる。ある態様では、接合コンポーネントの一部は、完成した胴体構造体を組み立てるため、3D印刷される接合構造体をつなぐことによって、胴体部分が相互接続できるように(硬化前又は硬化後に)露出されうる。
【0053】
[59]
図2A~
図2Hは、
図1の例示的な胴体構造体100など、埋め込まれた積層造形コンポーネントを有する複合構造体を製造する方法を示している。
図2Aは、本開示の幾つかの態様により、埋め込まれた積層造形された(例えば、3D印刷された可塑性)コンポーネントを有する複合構造体の製造に使用可能な例示的な製造ツール200の断面図を示している。ツール102は、結果として得られる複合構造体の所定の形状を画定するツーリング面104を含む。例えば、例示的な実施形態では、ツーリング面は航空機胴体構造体100の一部分に対応しうる。胴体構造体の他の部分(図示せず)は、同様にして製造可能である。
【0054】
[60] 製造ツール102は、「Increased Utility Composite Tooling through Additive Manufacturing」と題されて2016年10月19日に提出された、同時係属中で同一出願人が所有する米国仮特許出願第62/410,181号に記載された原理に従って作成されうる。ツール102は、高性能熱溶解積層法(FDM)熱可塑性物質などの、印刷される熱可塑性材料から作成されうる。適切な印刷される熱可塑性材料には、優れた強度、熱安定性、及びオートクレーブ処理(高圧及び高温)への耐性を示すポリエーテルイミド(PEI)などが含まれる。ポリカーボネートは、低コストなうえ、要求される250°Fの温度に耐えることができるため、印刷される熱可塑性材料ツールに適した材料ではあるが、材料選択は所定の複合コンポーネントに対する硬化温度によって影響されるため、他の材料も検討される。用途(複合材料のタイプ)に応じて、温度許容誤差がより高い又はより低い他の材料が採用されうる。
【0055】
[61]
図2Bでは、第1の(例えば、外側の)複合層106がツール102のツーリング面104に適用される。第1の複合層106は、任意の数の複合材料の1つであってよい。航空機に適した複合材料には、限定するものではないが、Cytec Industries社から入手可能な977-3樹脂及びIM7/977-3プリプレグなどがあり、これはドライ状態で350°F(177°C)、ウェット状態で270°F(132°C)のサービス能力を有する強化エポキシ樹脂である。しかしながら、他のタイプの複合材料が使用されてもよい。したがって、ツール102は複数の硬化サイクル、例えば、少なくとも350°Fで少なくとも90ポンド/平方インチ(PSI)の圧力で複数の硬化サイクルに耐えることができる。同業者であればわかるように、プリプレグという用語は、エポキシなどの材料が複合繊維内に既に存在する「含侵済みの」複合繊維を意味する。最初、プリプレグには可撓性と粘性があるが、一旦(例えば、硬化プロセス中に)加熱され冷却されると、硬く強靭になる。第1の複合層106は、複合材料の単一層又は複数の層からなりうる。複数の層が使用される場合、第1の複合層106の形成には同一の材料又は異なる材料が使用されうる。
【0056】
[62] 次に、
図2C~
図2Dでは、第1の複合層106の少なくとも一部の選択された箇所に一又は複数の積層造形コンポーネントが配置される。ツール102は、高性能熱溶解積層法(FDM)熱可塑性物質又はポリカーボネートなどの、印刷される熱可塑性材料から作成されうる。上述のように、適切な印刷される熱可塑性材料には、例えば、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリカーボネートなどがある。
【0057】
[63] 例示した実施形態では、積層造形コンポーネントは、第1の複合層106の上端に沿って水平に動く外板接合器110と、第1の複合層の上部と底部との間を垂直に(すなわち、外板接合器110に対して垂直に)動く複数のパイクリップ112とを含む(
図2Cを参照のこと)。第1の複合層の上に設置される追加の積層造形コンポーネントは、コアパネル114(
図2D)と積層造形されたアンテナ116(
図2E)を含みうる。以下で更に詳しく説明するように、第1の複合層の上に積層造形コンポーネントが設置されるとき、ツール(及び第1の複合層)に対する積層造形コンポーネントの配向を容易にするため、位置決め機能がツール102及び/又は積層造形コンポーネント110~116の上に提供されうる。
【0058】
[64] 次に、
図2Fでは、積層造形コンポーネントの少なくとも一部が第1の複合層104と第2の複合層120との間に埋め込まれるように、第2の(すなわち内側の)複合層120は、第1の複合層106の少なくとも一部及び積層造形コンポーネント110~120の少なくとも一部の上に適用される。例示した実施形態では、第2の複合層120は一般的に第1の複合層と共に広がり、積層造形コンポーネント110~120は第1の複合層と第2の複合層との間に完全に、或いはほぼ完全に埋め込まれて(又は、封入されて)いる。第1の複合層106と同様に、第2の複合層120は、同一の又は異なる複合材料の複数の層からなりうる。同様に、第1の複合層106及び第2の複合層120は、同一の又は異なる複合材料を含みうる。
【0059】
[65] 第2の複合層120の以下の応用では、結果として得られる構造体(すなわち、埋め込まれた積層造形コンポーネントを有する複合構造体)及びツール104は、例えば、「Methods For Combining Components Of Varying Stages Of Cure」と題されて2015年6月30日に公開された、同時係属中で同一出願人が所有する米国特許出願公開第2015/0210019A1号に記載されたバギング原理に従って、バギングされ硬化されうる。複合構造体が適切に硬化されると、ツール104から硬化した構造体を取り外すことができるように、ツール104は解体されてもよい(例えば、硬化した複合構造体の断面及び等角図を示す
図2G及び
図2Hを参照)。
【0060】
[66] 硬化に続いて、積層造形コンポーネントの選択された部分を露出するため、複合材料層106、120の一部は(例えば、切断又はトリミングによって)取り除かれる。例えば、例示した実施例では、パイクリップ112、外板接合器110、及びアンテナ116の選択された部分を露出するため、第2の(内側の)複合層120はトリミングされる。適切にトリミングされたパイクリップ及び外板接合器110によって、バルクヘッド124はパイクリップの所定の位置にスライド可能になり(例えば、
図2G及び
図2Hを参照)、エポキシ又はテープによる接着など、適切な手段によって所定の位置に固定される。
【0061】
[67] 本開示の実施形態の幾つかの態様によれば、積層造形されうる犠牲コンポーネントは、複合層の間に埋め込まれ、続いて硬化後に取り除かれてもよい。例えば、
図3A及び
図3Bは、複合層106と複合層120との間でパイキャップ112と共硬化される積層造形された犠牲キャップ126を示している。硬化後、積層造形された犠牲キャップ126の除去を可能にするため、第2の複合層120は切断又はトリミングされる。図示したように、積層造形された犠牲キャップ126は、第2の複合層120の切断を支援するチャネルを画定するように成形されうる。キャップ126が取り除かれると、パイクリップの一部128は露出され(
図4B参照)、一方、パイクリップ112の一部130は、パイクリップ112を所定の場所に固定するため、第1の複合層106と第2の複合層120との間に埋め込まれた状態に留まる。この技術の利点は、様々なコンポーネントがより迅速に接合するのを容易にすることである。
【0062】
[68] パイクリップ112の露出部分128は、バルクヘッド124の1つとつながるように構成されたインターフェース132を示す。幾つかの実施形態によれば、バルクヘッド124は、埋め込まれた積層造形コンポーネントを有する複合構造体としても製造されうる。1つの例示的な実施形態によれば、バルクヘッド124は、胴体部分に対してバルクヘッドを配置するため、パイクリップ112の装着インターフェース(例えば、スロット134及びプロファイル136)に相互につながる装着インターフェースをもたらす積層造形コンポーネントを含む。図示したように、バルクヘッド124はパイクリップ112(例えば、スロット134)の上にスライドされて結合されてもよい。
【0063】
[69] 積層造形された犠牲コンポーネントの別の実施例は
図4A及び
図4Bに示されている。これらの図は、積層造形された外板接合器142と共に、複合層106と複合層120との間で共硬化される積層造形された犠牲キャップ140を示す。積層造形された犠牲キャップ140は、例えば、硬化に続いて、外板接合器142の一部144を露出するため、切断又はトリミングによって取り除かれる。外板接合器の露出部分144は、複合構造体を互いに固定できるようにするため、第2の複合構造体(例えば、胴体部分)(図示せず)上の外板接合器の相互インターフェースにつながるインターフェース146を含む。犠牲キャップ140は硬化プロセス中にインターフェース146を覆い、その後、複合構造体を相互に接続する際に、インターフェースがきれいな状態に保たれるようにする。
【0064】
[70] 同様に、
図5のA及びBは、積層造形されたアンテナ116とともに共硬化される積層造形された犠牲キャップを示している。積層造形された犠牲キャップ150は、硬化に続いて、アンテナの一部(例えば、RFポート)を露出するため、例えば、切断又はトリミングによって取り除かれうる。犠牲キャップ150の利点は、硬化中に埋め込まれたAMアンテナを保護する役割を果たすことにある。しかしながら、硬化されると、アンテナ導管及び電子機器にアクセスできるようにするため、犠牲キャップ150は取り除かれうる。
【0065】
[71] 本開示の実施形態の幾つかの態様によれば、積層造形コンポーネントは、第1の複合層及び第2の複合層のうちの1つの少なくとも一部の硬化後除去を容易にするための機能を組み込みうる。例えば、
図6A~
図6Cに示すように、外板接合器142の露出部分144は、ルーターなどの切断ツール154をガイドするインデックスとして機能することができ、外板接合器のエッジに沿って第1の(外側の)複合層106の正確な除去/トリミングが可能になり、その結果、例えば、胴体部分などの複合構造体をその後互いに接続する際に、インターフェースがきれいになる。
【0066】
[72] 上述のように、複合層に対して積層造形コンポーネントの迅速かつ正確な取り付けを容易にするため、位置決め機能が提供されうる。例えば、積層造形コンポーネントは、製造技術者が積層造形コンポーネントを互いに対して、また、複合層に対して配置するのを支援するため、印刷されたマーク、ピン、止め具、孔、ガイドなどを含みうる。一実施形態によれば、位置決め機能は磁気位置決め機能を含みうる。例えば、ある種の実施形態では、磁石はツール104及び積層造形コンポーネントに装着される。代替的に、磁石はツール104に装着されてよく、金属素子(又は別の磁石)は積層造形コンポーネントに装着されてよく、或いはその逆であってもよい。磁気位置決め機能は、ツール104(したがって、ツーリング面に適用される第1の複合層)に対して、積層造形コンポーネントを適切かつ正確に配向するために使用されうる。
【0067】
[73]
図7A~
図7Cは、磁気位置決め機能の例示的な実施形態を示している。図示したように、磁気素子162のアレイ160はツール102上に配置される。少なくとも幾つかの実施形態では、各磁気素子162は、所定のパターンで配置された複数の磁石168からなる磁気サブアレイ166の形態にある。幾つかの態様によれば、磁気サブアレイは極が反対の関係になるように配置される複数の磁石を含み、少なくとも幾つかの磁石は第1の方向に(例えば、
図7Bのページの平面の外へ)向かうN極に揃えられ、その他の磁石は反対方向に(例えば、
図7Bのページの平面の中へ)向かうN極に揃えられる。特定の実施形態によれば、各磁気サブアレイはX字形に配置された複数の個別の磁石からなる(例えば、
図7B及び
図7D参照)。少なくとも幾つかの実施形態では、X字形のサブアレイは、中心のN極磁石(すなわち、ページの外へ向かうN極)と、N極磁石のエッジに沿って配置された4つのS極磁石(ページの外へ向かうS極)からなる。この磁石配置によって、コンポーネントを所定の位置に正しくスナップすることが容易になる。
【0068】
[74] 幾つかの実施形態では、磁気サブアレイは製造ツール102に形成されたポケット174に取り付けられる。例示した実施形態では、ポケットはツール102の非ツーリング部分に形成される。しかしながら、他の実施形態では、ツールのツーリング面に形成することが望ましい。例示した実施形態では、磁石168及びポケット174は共に正方形である。これは、ポケット内での磁石168の配向及び支持、並びに互いに対しての配向及び支持に役立つ。積層造形された挿入物(例えば、図示していないが、正方形のプラスチック)は、ポケット174内の磁石168の間の空洞を充填するように提供されうる。積層造形された挿入物は、例えば、磁石168とポケットのエッジとの間の空洞にぴったりと収まるように挿入物が押し込むように要求することによって、磁気サブアレイをポケット内に固定的に保護するように構成されうる。
【0069】
[75] 積層造形コンポーネントによって担持される互いの磁気素子(又は、金属素子)は、第1の複合層の用途に従うツールに対して積層造形コンポーネントを配置するため、ツール上の磁気素子に磁気的に整合するように構成されている。ツールと積層造形コンポーネントとの間の磁気インターフェースはまた、その後の第2の複合層の適用中、及び硬化プロセス中に、積層造形コンポーネントの相対位置を維持するように機能する。例えば、パイクリップに取り付けられた磁気素子は、ツールと第1の複合層に対してパイクリップを配向するため、ツール内で磁気素子に磁気的に整合する。幾つかの実施形態では、ツールによって担持される磁気アレイは、垂直に配置された磁気素子を含み、各ペアは第1の複合層に対してパイクリップを配置するように使用される。少なくとも幾つかの実施形態では、積層造形コンポーネントによって担持される各磁気素子は、所定のパターンで配置された複数の磁石168からなる磁気サブアレイ176の形態にある。特定の実施形態によれば、各磁気サブアレイは、X字形に配置された複数の個別の磁石からなる(
図7D参照)。少なくとも幾つかの実施形態では、積層造形コンポーネントがツールの上に正しく配置されたときに、磁気サブアレイ166、172が互いに引き合うように、X字形の各サブアレイは、中心のS極磁石と、N極磁石のエッジに沿って配置された4つのN極磁石からなる。
【0070】
[76] 本開示は現時点で好ましい実施形態とみなされる内容に関して記載されているが、本発明は開示した実施形態に限定されないことを理解されたい。反対に、本発明は、添付の請求項の主旨及び範囲に含まれる様々な修正及び均等物による構成を網羅することが意図されている。このような修正及び均等物による構成及び機能を網羅するため、以下の請求項の範囲は最も広い解釈として認められるべきである。
【0071】
[77] 学術論文又は抄録、公開された又は付随する米国又は海外の特許申請、発行された特許、外国特許、又は他の任意の文書を含む、本書に記載のすべての文書はそれぞれ、引用文献に示されたすべてのデータ、表、図、及び文章を含め、本書での参照によって全体的に組み込まれる。